IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

特開2024-3810リング体およびリング体を用いた管の接合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003810
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】リング体およびリング体を用いた管の接合方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20240109BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F16L21/08 B
F16L21/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103093
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小丸 維斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小田 圭太
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015AA01
3H015BA02
3H015BB04
3H015BC01
3H015FA01
(57)【要約】
【課題】リング体を受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入する際、リング体の挿入量が不足した場合であっても、シールリングが管径方向において過剰に圧縮されるのを防止する。
【解決手段】リング体40は、受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に挿入可能な円環状のリング本体部41と、受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挿入可能な複数の間隔維持部42とを有し、間隔維持部42は、管周方向において所定間隔をあけてリング本体部41に設けられているとともに、受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挟まれることによって、受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間隔52を、シールリングを押し込み可能な所定の大きさに保ち、隣り合う一方の間隔維持部42と他方の間隔維持部42との間で且つリング本体部41よりも受口開口端側に、圧縮されたシールリングが入り込むことが可能な逃込みスペースが形成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の挿し口が他方の管の受口に挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングよりも受口の開口端側において、管径方向に圧縮されて挿し口の外周と受口の内周との間をシールするシールリングが設けられ、
受口は、内周に、シールリングの外周面が全周にわたり圧接される受口シール面と、受口シール面の奥部から管径方向内側へ突出する受口突部とを有し、
受口シール面の内径が受口突部の内径よりも大きく、
挿し口の外周に挿し口係合部が形成され、
挿し口係合部が挿し口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿し口が受口から離脱することを防止可能な管継手のロックリングとシールリングとの間に備えられるリング体であって、
受口突部の内周面と挿し口の外周面との間に挿入可能な円環状のリング本体部と、受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入可能な複数の間隔維持部とを有し、
間隔維持部は、管周方向において所定間隔をあけてリング本体部に設けられているとともに、受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれることによって、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔を、シールリングを押し込み可能な所定の大きさに保ち、
管周方向において隣り合う一方の間隔維持部と他方の間隔維持部との間で且つリング本体部よりも受口開口端側に、圧縮されたシールリングが入り込むことが可能な逃込みスペースが形成されることを特徴とするリング体。
【請求項2】
間隔維持部の外径はリング本体部の外径よりも大きく、
間隔維持部は挿し口の挿入方向において受口突部に係合する係合面を有し、
係合面はリング本体部の外周面から管径方向における外側へ張り出していることを特徴とする請求項1記載のリング体。
【請求項3】
間隔維持部の係合面が受口突部に係合した状態で、管軸方向におけるリング本体部の奥端が受口突部の奥端よりも受口開口端側に位置することを特徴とする請求項2記載のリング体。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリング体を用いた管の接合方法であって、
ロックリングをロックリング収容溝に収容し、
挿し口を受口に挿入して、挿し口係合部をロックリングの受口開口端側から受口奥側へ通過させ、
リング体を受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入し、
シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に押し込むことを特徴とする管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックリングとシールリングとを有する管継手のロックリングとシールリングとの間に備えられるリング体、および、リング体を用いた管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリング体としては、図21図22に示すように、管継手201のロックリング202とシールリング203との間に備えられるリング体204がある。この管継手201は、一方の管206の挿し口207が他方の管208の受口209に挿入されている。ロックリング202は、受口209の内周に形成されたロックリング収容溝210に収容されている。
【0003】
シールリング203は、ロックリング202よりも受口209の開口端側において、管径方向211に圧縮されて挿し口207の外周面と受口209の内周面との間をシールする。
【0004】
受口209は、内周に、シールリング203の外周面が全周にわたり圧接される受口シール面212と、受口シール面212の奥部から管径方向内側へ突出する受口突部213とを有している。
【0005】
リング体204は、受口突部213の内周面と挿し口207の外周面との間に挿入可能な円環状のリング本体部214と、リング本体部214が受口209の開口端側へずれるのを防止するずれ止め部材215とを有している。
【0006】
管206,208を接合する場合、先ず、ロックリング202をロックリング収容溝210に収容し、次に、挿し口207を受口209に挿入し、その後、リング体204を受口209の開口端から受口シール面212と挿し口207の外周面との間に挿入し、リング体204のリング本体部214を受口突部213の内周面と挿し口207の外周面との間に押し込む。
【0007】
その後、シールリング203を受口209の開口端から受口シール面212と挿し口207の外周面との間に押し込む。この際、図22に示すように、リング体204のリング本体部214が受口突部213の内周面と挿し口207の外周面との間に挿入されているため、管径方向211における受口シール面212と挿し口207の外周面との間隔216はシールリング203を押し込み可能な所定の大きさに保たれる。
【0008】
尚、上記のようなリング体204は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-67282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記の従来形式では、管206,208を接合する際、図23に示すように、リング体204の挿入量が不足し、リング本体部214が、受口突部213の内周面と挿し口207の外周面との間に到達せず、受口突部213よりも手前の受口シール面212と挿し口207の外周面との間にセットされてしまう虞がある。この場合、管径方向211における受口シール面212と挿し口207の外周面との間隔216はシールリング203を押し込み可能な所定の大きさよりも狭くなる。このため、シールリング203を受口シール面212と挿し口207の外周面との間に押し込む際、シールリング203が管径方向211において過剰に圧縮されてしまい、シールリング203を受口シール面212と挿し口207の外周面との間に押し込む作業が困難になるといった問題がある。
【0011】
本発明は、リング体を受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入する際、リング体の挿入量が不足した場合であっても、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔を、シールリングを押し込み可能な所定の大きさ(適正な大きさ)に保つことで、シールリングが管径方向において過剰に圧縮されるのを防止することができるリング体およびリング体を用いた管の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、一方の管の挿し口が他方の管の受口に挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングよりも受口の開口端側において、管径方向に圧縮されて挿し口の外周と受口の内周との間をシールするシールリングが設けられ、
受口は、内周に、シールリングの外周面が全周にわたり圧接される受口シール面と、受口シール面の奥部から管径方向内側へ突出する受口突部とを有し、
受口シール面の内径が受口突部の内径よりも大きく、
挿し口の外周に挿し口係合部が形成され、
挿し口係合部が挿し口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿し口が受口から離脱することを防止可能な管継手のロックリングとシールリングとの間に備えられるリング体であって、
受口突部の内周面と挿し口の外周面との間に挿入可能な円環状のリング本体部と、受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入可能な複数の間隔維持部とを有し、
間隔維持部は、管周方向において所定間隔をあけてリング本体部に設けられているとともに、受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれることによって、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔を、シールリングを押し込み可能な所定の大きさに保ち、
管周方向において隣り合う一方の間隔維持部と他方の間隔維持部との間で且つリング本体部よりも受口開口端側に、圧縮されたシールリングが入り込むことが可能な逃込みスペースが形成されるものである。
【0013】
これによると、管同士を接合する際、挿し口を受口に挿入し、リング体を受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入し、リング体のリング本体部を受口突部の内周面と挿し口の外周面との間に押し込む。これにより、リング体が正規の位置にセットされ、リング体の間隔維持部が受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれることによって、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔はシールリングを押し込み可能な所定の大きさに保たれる。
【0014】
これにより、シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に押し込む際、シールリングが管径方向において過剰に圧縮されることはなく、シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に容易に押し込むことができる。
【0015】
また、リング体の挿入量が不足し、リング本体部が、受口突部の内周面と挿し口の外周面との間に到達せず、受口突部よりも手前の受口シール面と挿し口の外周面との間にセットされても、間隔維持部が受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれるため、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔はシールリングを押し込み可能な所定の大きさに保たれる。
【0016】
これにより、リング体の挿入量が不足した場合であっても、シールリングが管径方向において過剰に圧縮されることはなく、シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に容易に押し込むことができる。
【0017】
また、管同士を屈曲して接合する際、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔が上記所定の大きさより狭くなる箇所が発生し、受口シール面と挿し口の外周面との間に押し込まれたシールリングの一部が管径方向に過剰に圧縮されても、シールリングの過剰に圧縮された部分がリング体の逃込みスペースに入り込むことにより、シールリングの押し込み不足を防ぐことができる。
【0018】
また、本発明におけるリング体は、間隔維持部の外径はリング本体部の外径よりも大きく、
間隔維持部は挿し口の挿入方向において受口突部に係合する係合面を有し、
係合面はリング本体部の外周面から管径方向における外側へ張り出しているものである。
【0019】
これによると、管同士を接合する際、リング体を受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入し、リング本体部を受口突部の内周面と挿し口の外周面との間に押し込む。この際、リング体の係合面が挿し口の挿入方向において受口突部に係合することにより、リング体が正規の位置にセットされ、リング体の位置が正規の位置よりも受口の奥側にずれてしまうことは無い。
【0020】
また、本発明におけるリング体は、間隔維持部の係合面が受口突部に係合した状態で、管軸方向におけるリング本体部の奥端が受口突部の奥端よりも受口開口端側に位置するものである。
【0021】
これによると、リング体が正規の位置にセットされた場合、間隔維持部の係合面が受口突部に係合し、リング本体部の奥端が受口突部の奥端よりも受口開口端側に位置するため、リング本体部とロックリングとの接触が防止され、リング本体部が損傷するのを防ぐことができる。
【0022】
また、本発明は、上記リング体を用いた管の接合方法であって、
ロックリングをロックリング収容溝に収容し、
挿し口を受口に挿入して、挿し口係合部をロックリングの受口開口端側から受口奥側へ通過させ、
リング体を受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入し、
シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に押し込むものである。
【0023】
これによると、リング体を受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入して正規の位置にセットすることで、リング体の間隔維持部が受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれ、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔はシールリングを押し込み可能な所定の大きさに保たれる。
【0024】
また、リング体の挿入量が不足しても、間隔維持部が受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれるため、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔はシールリングを押し込み可能な所定の大きさに保たれる。
【0025】
これにより、リング体の挿入量が不足した場合であっても、シールリングを受口の開口端から受口シール面と挿し口の外周面との間に容易に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によると、リング体を受口シール面と挿し口の外周面との間に挿入する際、リング体の挿入量が不足した場合であっても、間隔維持部が受口シール面と挿し口の外周面との間に挟まれるため、管径方向における受口シール面と挿し口の外周面との間隔はシールリングを押し込み可能な所定の大きさに保たれる。これにより、シールリングを受口シール面と挿し口の外周面との間に容易に押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態における管継手の断面図であって、リング体の間隔維持部の断面を示す。
図2】同、管継手の断面図であって、リング体のリング本体部の断面を示す。
図3】同、管継手に備えられるロックリングを拡径するときの図である。
図4】同、管継手に備えられるリング体の立体図である。
図5】同、管継手に備えられるリング体の正面図である。
図6】同、管継手に備えられるリング体の側面図である。
図7図5におけるX-X矢視図である。
図8図5におけるY-Y矢視図である。
図9図5におけるZ-Z矢視図である。
図10】同、管継手に備えられたリング体の間隔維持部の拡大断面図であって、リング体を正規の位置にセットしたときの様子を示す。
図11】同、管継手に備えられたリング体のリング本体部の拡大断面図であって、リング体を正規の位置にセットしたときの様子を示す。
図12】同、リング体を用いた管の接合方法を示す図であり、ロックリングを拡径して、挿し口を受口に挿入したときの様子を示す。
図13】同、リング体を用いた管の接合方法を示す図であり、ロックリングを縮径して挿し口の外周に抱き付かせたときの様子を示す。
図14】同、リング体を用いた管の接合方法を示す図であり、リング体を挿入して正規の位置にセットしたときの様子を示す。
図15】同、管継手に備えられるリング体の間隔維持部の拡大断面図であって、リング体の挿入量が不足したときの様子を示す。
図16】本発明の第2の実施の形態における管継手の断面図である。
図17】同、管継手に備えられたリング体の拡大断面図であって、リング体を正規の位置にセットしたときの様子を示す。
図18】同、管継手に備えられたリング体の拡大断面図であって、シールリングを押し込んだときの様子を示す。
図19】本発明の第3の実施の形態における管継手の断面図であって、リング体の間隔維持部の断面を示す。
図20】同、管継手の断面図であって、リング体のリング本体部の断面を示す。
図21】従来のリング体を備えた管継手の断面図である。
図22】同、管継手に備えられたリング体の拡大断面図であって、リング体を正規の位置にセットしたときの様子を示す。
図23】同、管継手に備えられたリング体の拡大断面図であって、リング体の挿入量が不足したときの様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1図2に示すように、1は離脱防止機能を有する管継手であり、一方の管2の挿し口3が他方の管4の受口5に挿入されている。これら管2,4には例えばダクタイル鉄管等が使用されている。
【0030】
受口5の内周面にはロックリング収容溝7が全周にわたり形成されている。ロックリング収容溝7にはロックリング8が収容されている。図3に示すように、ロックリング8は、一箇所が切断された一つ割構造のリングであり、切断部分11の幅12を拡大器13で拡大することによって拡径し、拡大器13を切断部分11から取り外すことによって縮径して元の径に戻るような弾性を有している。
【0031】
図1図2に示すように、挿し口3の外周には挿し口突起15(挿し口係合部の一例)が全周にわたり形成されている。挿し口突起15が挿し口3の離脱方向6において受口奥側からロックリング8に係合することにより、挿し口3が受口5から離脱するのを防止できる。
【0032】
ロックリング8よりも受口5の開口端側において、管径方向17に圧縮されて挿し口3の外周面3aと受口5の内周面との間をシールするシールリング19が設けられている。シールリング19はゴム製のリング(ゴム輪)である。
【0033】
受口5は、内周に、シールリング19の外周面が全周にわたり圧接される受口シール面21と、受口シール面21の奥部から管径方向内側へ突出する受口突部22とを有している。
【0034】
図1図10に示すように、受口シール面21は、受口5の開口端面24から奥側へ次第に縮径するテーパー部25と、テーパー部25の奥端から奥側へ延びるストレート部26とを有している。ストレート部26は、管軸方向27において同一の内径で形成されており、挿し口3の外周面3aに対して平行である。
【0035】
受口突部22は、受口シール面21のストレート部26とロックリング収容溝7との間に全周にわたり円環状に形成されており、ストレート部26の奥端から受口突部22の内周面22aに至る一端面22bと、内周面22aからロックリング収容溝7に面する他端面22cとを有している。
【0036】
受口突部22の一端面22bは、ストレート部26の奥端から受口突部22の内周面22aに近付くほど縮径するテーパー状の面である。また、受口突部22の他端面22cは、受口奥方へ向いた面であり、管軸方向27における受口突部22の奥端に位置している。受口シール面21のストレート部26の内径は受口突部22の内径よりも大きく設定されている。
【0037】
図1図2に示すように、受口5の開口端部には、シールリング19を受口奥側へ押し込む押輪30が設けられている。押輪30は、シールリング19の挿入方向31において受口5の開口端面24に当接する当接部32を有しており、複数のボルト33およびナット34によって受口5の開口端部に連結されている。
【0038】
管軸方向27におけるロックリング8とシールリング19との間には、リング体40が備えられている。図4図6に示すように、リング体40は、弾性を有する樹脂等の材質で製造されており、受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に挿入可能な円環状のリング本体部41と、受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間に挿入可能な複数の間隔維持部42とを有しており、いずれか1つの間隔維持部42が切断された一つ割り構造のリングである。
【0039】
図7に示すように、リング本体部41は四角形の断面を有している。また、図4図6に示すように、間隔維持部42は、管周方向44において所定間隔をあけてリング本体部41に一体的に設けられており、図8図9に示すように、リング本体部41から受口開口端側へ突出するとともにリング本体部41よりも管径方向外側へ突出した突部であり、挿し口3の挿入方向31において受口突部22の一端面22bに係合する係合面45を有している。
【0040】
係合面45は、リング本体部41の外周面から管径方向17における外側へ張り出しており、リング本体部41の外周面から間隔維持部42の外周面に近付くほど拡径するテーパー状の面である。
【0041】
間隔維持部42の内径d1はリング本体部41の内径d2と同じであり、間隔維持部42の外径D1はリング本体部41の外径D2よりも大きい。
【0042】
管周方向44において隣り合う一方の間隔維持部42と他方の間隔維持部42との間で且つリング本体部41よりも受口開口端側には、圧縮されたシールリング19が入り込むことが可能な逃込みスペース46が形成されている。
【0043】
図10図11に示すように、間隔維持部42の係合面45が受口突部22の一端面22bに当接して係合した状態で、リング本体部41の奥端面41aが受口突部22の他端面22c(奥端)よりも受口開口端側に位置する。
【0044】
上記のような管継手1における管2,4の接合方法を以下に説明する。
【0045】
図12に示すように、予め、一方の管2にリング体40とシールリング19と押輪30を外嵌しておく。また、他方の管4のロックリング収容溝7にロックリング8を収容(セット)する。そして、図3に示すように、ロックリング8の切断部分11の幅12を拡大器13で拡大して、ロックリング8を拡径する。次に、図12に示すように、ロックリング8の切断部分11にL形状の拡径保持具50を挿入するとともに、拡大器13を取り外し、ロックリング8を拡径した状態に維持する。
【0046】
その後、挿し口3を受口5に挿入して、挿し口突起15をロックリング8の受口開口端側から受口奥側へ通過させる。この際、ロックリング8は拡径保持具50によって拡径状態に維持されているため、挿し口突起15は容易にロックリング8の内周を通過する。
【0047】
次に、図13に示すように、拡径保持具50を取り外して、ロックリング8を縮径させる。これにより、ロックリング8が挿し口3の外周に抱き付く。
【0048】
この際、一方の管2の管軸心が他方の管4の管軸心に対して管径方向17へずれた場合、管径方向17における受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52がシールリング19を押し込むのに必要な所定の大きさよりも狭くなる箇所(以下、狭小箇所と称する)が発生する。尚、狭小箇所から管周方向44へ180°隔てた反対側の箇所においては、上記間隔52が所定の大きさよりも拡大する。
【0049】
例えば、図13では、狭小箇所が管2,4の上部に発生した様子を示しており、この場合、管2,4の下部において上記間隔52が所定の大きさよりも拡大する。
【0050】
その後、図14に示すように、リング体40を、管軸方向27に移動して、受口5の開口端から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挿入し、正規の位置にセットする。
【0051】
これにより、図10図11に示すように、リング体40のリング本体部41が受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に挿入され、リング体40の係合面45が受口突部22の一端面22bに当接して係合する。
【0052】
この際、リング体40の間隔維持部42が受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間に挟まれることによって、管径方向17における受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52が、シールリング19を押し込むのに必要な所定の大きさに保たれる。
【0053】
これにより、上記図13に示したように挿し口3を受口5に挿入した状態で狭小箇所が発生しても、その後、上記図14に示したようにリング体40を正規の位置にセットすることにより、図10図11に示すように、管径方向17における受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52を、シールリング19を押し込むのに必要な所定の大きさに保つことができる。
【0054】
また、リング体40の係合面45が受口突部22の一端面22bに係合することにより、リング体40が正規の位置にセットされ、リング体40の位置が正規の位置よりも受口5の奥側にずれてしまうことは無い。
【0055】
その後、シールリング19を受口5の開口端部から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挿入し、ボルト33およびナット34を用いて押輪30を受口5の開口端部に連結し、押輪30の当接部32が受口5の開口端面24に当接するまで、ボルト33およびナット34を締め込む。
【0056】
この際、上記のように受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52はシールリング19を押し込むのに必要な所定の大きさに保たれているため、シールリング19を受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に押し込む際、シールリング19が管径方向17において過剰に圧縮されることはなく、シールリング19を受口5の開口端部から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に容易に押し込むことができる。
【0057】
これにより、図1図2に示すように、管2,4同士が接合され、シールリング19を装着することにより、一方の管2が他方の管4に対して心出しされ、一方の管2の管軸心が他方の管4の管軸心と一致する。このような心出し状態では、リング体40のリング本体部41の外周面と受口突部22の内周面22aとの間および間隔維持部42の外周面と受口シール面21のストレート部26との間に、僅かな隙間が全周にわたりほぼ均等に発生する。
【0058】
このようなリング体40を用いた管2,4の接合方法において、リング体40を受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挿入した際、図15に示すように、リング体40の挿入量が不足し、リング本体部41が、受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に到達せず、受口突部22よりも手前の受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間にセットされても、間隔維持部42が受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間に挟まれるため、管径方向17における受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52はシールリング19を押し込むのに必要な所定の大きさに保たれる。
【0059】
これにより、リング体40の挿入量が不足した場合であっても、シールリング19を受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に押し込む際、シールリング19が管径方向17において過剰に圧縮されることはなく、シールリング19を受口5の開口端部から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に容易に押し込むことができる。
【0060】
また、上記図15に示したようにリング体40の挿入量が不足した場合であっても、シールリング19を受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に押し込むことにより、リング本体部41が受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に到達するまで、リング体40がシールリング19によって受口奥側へ押し込まれる。
【0061】
また、図10図11に示すように、リング体40が正規の位置にセットされた場合、間隔維持部42の係合面45が受口突部22の一端面22bに係合し、リング本体部41の奥端面41aが受口突部22の他端面22c(奥端)よりも受口開口端側に位置するため、リング本体部41とロックリング8との接触が防止され、リング本体部41が損傷するのを防ぐことができる。
【0062】
上記第1の実施の形態では、図13に示すように、狭小箇所が管2,4の上部に発生し、管2,4の下部において上記間隔52が所定の大きさよりも拡大した場合を例示しているが、狭小箇所が管2,4の上部以外(例えば下部)に発生し、管2,4の下部以外(例えば上部)において上記間隔52が所定の大きさよりも拡大した場合も、同様の作用および効果が得られる。
【0063】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図2に示すように、一方の管2を他方の管4に対して真直ぐに接合する場合を示したが、以下に示す第2の実施の形態では、図16に示すように一方の管2を他方の管4に対して上方へ屈曲させて接合する場合を説明する。
【0064】
図14に示すように、挿し口3を受口5に挿入し、その後、リング体40を、管軸方向27に移動して、受口5の開口端から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に挿入し、正規の位置にセットする。
【0065】
これにより、図10図11に示すように、リング体40のリング本体部41が受口突部22の内周面22aと挿し口3の外周面3aとの間に挿入され、リング体40の係合面45が受口突部22の一端面22bに当接して係合する。
【0066】
その後、図17に示すように、一方の管2を他方の管4に対して上方へ屈曲させる。これにより、受口シール面21のストレート部26と挿し口3の外周面3aとの間隔52は、管2,4の上部において上記所定の大きさよりも狭くなり、管2,4の下部において広くなる。
【0067】
その後、シールリング19を受口5の開口端部から受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に押し込んだ際、図18に示すように、管2,4の上部においてシールリング19が管径方向17に過剰に圧縮されても、シールリング19の過剰に圧縮された部分がリング体40の逃込みスペース46に入り込むことにより、シールリング19の押し込み不足を防ぐことができる。
【0068】
上記第2の実施の形態では、一方の管2を他方の管4に対して上方へ屈曲させた場合を例示しているが、一方の管2を他方の管4に対して下方(或いはそれ以外の方向)へ屈曲させた場合も、同様の作用および効果が得られる。
【0069】
(第3の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1に示すように、リング体40を正規の位置まで挿入した場合、リング体40とシールリング19との間に隙間が発生するように設定されているが、以下に説明する第3の実施の形態では、図19に示すように、受口5の開口端面24から受口突部22までの距離Cを第1の実施の形態よりも短縮し、リング体40を正規の位置まで挿入した場合、シールリング19がリング体40に当接するように設定されている。
【0070】
この場合、シールリング19は、管径方向17に圧縮されるとともに、リング体40の間隔維持部42と押輪30との間に挟まれて管軸方向27においても圧縮される。この際、リング体40に逃込みスペース46が形成されているため、シールリング19の圧縮に必要な十分に広い空間が受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間に確保されており、図20に示すように、シールリング19の先端部がリング体40の逃込みスペース46に入り込むことによって、シールリング19が受口シール面21と挿し口3の外周面3aとの間で過剰に圧縮されるのを防止することができる。
【0071】
これにより、第1の実施の形態よりも、受口5の開口端面24から受口突部22までの距離Cを短縮して、管軸方向27における受口5の長さを短縮することができる。
【0072】
上記各実施の形態では、リング体40を一つ割り構造にしているが、リング体40を複数の円弧形状のリング片に分割し、隣接するリング片同士を連結部材でつなぎ合わせて円環状のリング体40を組み立てる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 管継手
2 一方の管
3 挿し口
3a 挿し口の外周面
4 他方の管
5 受口
6 離脱方向
7 ロックリング収容溝
8 ロックリング
15 挿し口突起(挿し口係合部)
17 管径方向
19 シールリング
21 受口シール面
22 受口突部
22a 受口突部の内周面
22c 受口突部の他端面(受口突部の奥端)
24 開口端面
31 挿入方向
40 リング体
41 リング本体部
41a リング本体部の奥端面
42 間隔維持部
44 管周方向
45 係合面
46 逃込みスペース
52 間隔
D1 間隔維持部の外径
D2 リング本体部の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23