(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003811
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】液処理装置およびその運用方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20230101AFI20240109BHJP
【FI】
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103094
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】松崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB01
4D003DA21
4D003EA15
4D003EA30
4D003FA01
4D003FA05
(57)【要約】
【課題】膜装置に備えられた複数の膜体のうちのいずれかの膜体が破損しても、処理効率が大幅に低下するのを防止することが可能な液処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽2内の被処理液3に浸漬された膜装置6と、膜装置6に酸素含有気体7を供給する気体供給部8と、酸素含有気体7を膜装置6から排出する気体排出部9とを備え、膜装置6は複数の膜体14a~14fを備え、膜体14a~14fは、気体透過膜と、気体透過膜の外表面に形成されて酸素含有気体7を消費する生物膜とを備え、気体供給部8は給気管21から分岐して各膜体14a~14fに接続される複数の給気分岐管22a~22fを備え、気体排出部9は排気管28から分岐して各膜体14a~14fに接続される複数の排気分岐管29a~29fを備え、給気分岐管22a~22fに第1開閉装置33a~33fが設けられ、排気分岐管29a~29fに、排気管28から膜体14a~14fへの酸素含有気体7の逆流を阻止する逆流阻止装置35a~35fが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内の被処理液を好気性生物処理する液処理装置であって、
処理槽内の被処理液に浸漬された膜装置と、
膜装置に酸素含有気体を供給する気体供給部と、
膜装置に供給された酸素含有気体を膜装置から排出する気体排出部とを備え、
膜装置は複数の膜体を備え、
膜体は、気体透過性を有する気体透過膜と、気体透過膜の外表面に形成されて膜体に供給される酸素含有気体を消費する生物膜とを備え、
気体供給部は、給気管と、給気管から分岐して各膜体に接続される複数の給気分岐管とを備え、
気体排出部は、排気管と、排気管から分岐して各膜体に接続される複数の排気分岐管とを備え、
給気分岐管に、給気分岐管を開閉する第1開閉装置が設けられ、
第1開閉装置は処理槽内の被処理液の液面よりも上方に位置し、
排気分岐管に、排気管から膜体への酸素含有気体の逆流を阻止する逆流阻止装置が設けられていることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
給気管に、給気管を開閉する第2開閉装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液処理装置。
【請求項3】
膜装置の下方に散気装置が備えられていることを特徴とする請求項1記載の液処理装置。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置の運用方法であって、
全第1開閉装置を開いて、酸素含有気体を、給気管から全給気分岐管を通して全膜体に供給し、
いずれかの膜体から気泡が噴出した場合、いずれかの第1開閉装置を閉じて、気泡の噴出が解消されると、上記閉じた第1開閉装置を閉状態に保ち、いずれかの第1開閉装置を閉じても、引き続き気泡が噴出していると、気泡の噴出が解消されるまで、上記閉じた第1開閉装置を開いて別の第1開閉装置を閉じることを繰り返すことを特徴とする液処理装置の運用方法。
【請求項5】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置の運用方法であって、
全第1開閉装置を開いて、酸素含有気体を、給気管から全給気分岐管を通して全膜体に供給し、
いずれか複数の膜体から気泡が噴出した場合、気泡の噴出が解消されるまで複数の第1開閉装置を閉じ、
上記閉じた第1開閉装置のうちのいずれかの第1開閉装置を開き、気泡の噴出が確認された場合、上記開いた第1開閉装置を閉じ、気泡の噴出が確認されない場合、残りの上記閉じた第1開閉装置のうちのいずれかの第1開閉装置を開くことを繰り返すことにより、破損した複数の膜体を特定し、破損した複数の膜体のみへの給気を停止することを特徴とする液処理装置の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽内の被処理液を好気性生物処理する液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液処理装置としては、例えば
図6に示すように、反応槽101内に複数の酸素溶解膜モジュール102a~102dが並列に設置されており、各膜モジュール102a~102dに空気103を供給する空気供給部104と、各膜モジュール102a~102dに供給された空気103を各膜モジュール102a~102dから排出する空気排出部105とが備えられている。
【0003】
これら膜モジュール102a~102dは反応槽101内の被処理水106に浸漬されており、膜モジュール102a~102dには酸素溶解膜として中空糸膜を用いており、中空糸膜の外側に生物膜が付着している。
【0004】
空気供給部104は、給気管107と、給気管107から分岐して各膜モジュール102a~102dの上端部に接続される複数の給気分岐管108a~108dとを備えている。空気排出部105は、排気管109と、排気管109から分岐して各膜モジュール102a~102dの下端部に接続される複数の排気分岐管110a~110dとを備えている。各給気分岐管108a~108dには、給気分岐管108a~108dを開閉するバルブ111a~111dが備えられている。
【0005】
これによると、全てのバルブ111a~111dを開き、空気103を、給気管107から全ての給気分岐管108a~108dを通して全ての膜モジュール102a~102dに供給する。これにより、空気103が各膜モジュール102a~102dの中空糸膜を通じて生物膜に供給され、生物膜が空気103中の酸素を消費して好気性生物処理を行う。
【0006】
各膜モジュール102a~102dに供給された空気103は、その後、各膜モジュール102a~102dから各排気分岐管110a~110dを通って排気管109に合流し、反応槽101の外部へ排出される。
【0007】
尚、上記のような液処理装置は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、経年劣化や被処理水106中に混入した異物が衝突して、例えば
図7に示すようにいずれかの膜モジュール102cの中空糸膜が破損した場合、この膜モジュール102cの破損箇所から気泡114が噴出する。この場合、空気103は、給気管107から破断した膜モジュール102cに集中して流れ込んで気泡114となって噴出され、破断した膜モジュール102c以外の他の膜モジュール102a,102b,102dにはほとんど供給されず、処理効率が大幅に低下するといった問題がある。
【0010】
本発明は、膜装置に備えられた複数の膜体のうちのいずれかの膜体が破損しても、処理効率が大幅に低下するのを防止することが可能な液処理装置およびその運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本第1発明は、処理槽内の被処理液を好気性生物処理する液処理装置であって、
処理槽内の被処理液に浸漬された膜装置と、
膜装置に酸素含有気体を供給する気体供給部と、
膜装置に供給された酸素含有気体を膜装置から排出する気体排出部とを備え、
膜装置は複数の膜体を備え、
膜体は、気体透過性を有する気体透過膜と、気体透過膜の外表面に形成されて膜体に供給される酸素含有気体を消費する生物膜とを備え、
気体供給部は、給気管と、給気管から分岐して各膜体に接続される複数の給気分岐管とを備え、
気体排出部は、排気管と、排気管から分岐して各膜体に接続される複数の排気分岐管とを備え、
給気分岐管に、給気分岐管を開閉する第1開閉装置が設けられ、
第1開閉装置は処理槽内の被処理液の液面よりも上方に位置し、
排気分岐管に、排気管から膜体への酸素含有気体の逆流を阻止する逆流阻止装置が設けられているものである。
【0012】
これによると、全ての第1開閉装置を開き、酸素含有気体を、給気管から各給気分岐管を通して各膜体の気体透過膜に供給する。これにより、酸素含有気体が各膜体の気体透過膜を通じて生物膜に供給され、生物膜が酸素含有気体の酸素を消費して好気性生物処理を行う。
【0013】
このようにして各膜体の気体透過膜に供給された酸素含有気体は、各膜体から各排気分岐管を通って排気管に合流し、排気管から処理槽の外部へ排出される。
【0014】
また、経年劣化や被処理液中に混入した異物が衝突して例えばいずれかの膜体の気体透過膜が破損した場合、この膜体の破損箇所から気泡が噴出する。この場合、破損した膜体に対応する第1開閉装置を閉じて、破損した膜体に接続されている給気分岐管を閉鎖する。
【0015】
これにより、酸素含有気体が給気管から破損した膜体に供給されず、気泡の噴出が解消される。この際、破損した膜体に対応する第1開閉装置以外の残りの第1開閉装置は開状態に保たれているため、酸素含有気体は、給気管から破損した膜体以外の残りの膜体に供給され、残りの膜体に接続されている各排気分岐管を通って排気管に合流し、排気管から処理槽の外部へ排出される。
【0016】
また、上記のように破損した膜体に対応する第1開閉装置を閉じた状態において、排気管内の酸素含有気体が破損した膜体に接続されている排気分岐管を通って破損した膜体に逆流しようとしても、破損した膜体に接続されている排気分岐管の逆流阻止装置によって、酸素含有気体の逆流が阻止される。
【0017】
これにより、破損した膜体には酸素含有気体が供給されないため、破損した膜体は好気性生物処理に寄与しないが、破損した膜体以外の残りの膜体には酸素含有気体が供給されるため、破損した膜体以外の残りの膜体によって好気性生物処理が行われる。これにより、処理効率が大幅に低下するのを防止することができる。
【0018】
本第2発明における液処理装置は、給気管に、給気管を開閉する第2開閉装置が設けられているものである。
【0019】
本第3発明における液処理装置は、膜装置の下方に散気装置が備えられているものである。
【0020】
これによると、散気装置で散気を行うことにより上向流が発生し、上向流によって各膜体の生物膜が洗浄される。
【0021】
本第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれかに記載の液処理装置の運用方法であって、
全第1開閉装置を開いて、酸素含有気体を、給気管から全給気分岐管を通して全膜体に供給し、
いずれかの膜体から気泡が噴出した場合、いずれかの第1開閉装置を閉じて、気泡の噴出が解消されると、上記閉じた第1開閉装置を閉状態に保ち、いずれかの第1開閉装置を閉じても、引き続き気泡が噴出していると、気泡の噴出が解消されるまで、上記閉じた第1開閉装置を開いて別の第1開閉装置を閉じることを繰り返すものである。
【0022】
これによると、全ての第1開閉装置を開いた状態で液面に気泡が噴出している場合、気泡噴出付近のいずれかの第1開閉装置を閉じる。これにより、気泡の噴出が解消されると、閉じた第1開閉装置に対応する膜体が破損していると判断し、残りの第1開閉装置を開いたままにして、引き続き好気性生物処理を行う。
【0023】
また、気泡噴出付近のいずれかの第1開閉装置を閉じても、引き続き気泡が噴出している場合、閉じた第1開閉装置に対応する膜体以外のいずれかの膜体が破損していると判断し、気泡の噴出が解消されるまで、閉じた第1開閉装置を開き、別の第1開閉装置を閉じることを繰り返す。これにより、全ての膜体の中から破損した膜体を容易且つ正確に特定することができる。
【0024】
本第5発明は、上記第1発明から第3発明のいずれかに記載の液処理装置の運用方法であって、
全第1開閉装置を開いて、酸素含有気体を、給気管から全給気分岐管を通して全膜体に供給し、
いずれか複数の膜体から気泡が噴出した場合、気泡の噴出が解消されるまで複数の第1開閉装置を閉じ、
上記閉じた第1開閉装置のうちのいずれかの第1開閉装置を開き、気泡の噴出が確認された場合、上記開いた第1開閉装置を閉じ、気泡の噴出が確認されない場合、残りの上記閉じた第1開閉装置のうちのいずれかの第1開閉装置を開くことを繰り返すことにより、破損した複数の膜体を特定し、破損した複数の膜体のみへの給気を停止するものである。
【0025】
これによると、全ての膜体の中から破損した複数の膜体を容易且つ正確に特定することができ、破損した複数の膜体に対応する第1開閉装置のみを閉じて、破損した複数の膜体のみへの給気を停止することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によると、破損した膜体には酸素含有気体が供給されないため、破損した膜体は好気性生物処理に寄与しないが、破損した膜体以外の残りの膜体には酸素含有気体が供給されるため、破損した膜体以外の残りの膜体によって好気性生物処理が行われる。これにより、処理効率が大幅に低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における液処理装置の図である。
【
図3】同、液処理装置の膜モジュールの中空糸膜と生物膜との一部拡大断面図である。
【
図4】同、液処理装置のいずれか1枚の膜モジュールが破損したときの様子を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態における液処理装置のいずれか2枚の膜モジュールが破損したときの様子を示す図である。
【
図7】同、液処理装置のいずれかの膜モジュールが破損したときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1,
図2に示すように、1は、下水処理場や産業排水処理場等において、処理槽2内の被処理液3(有機性排水、汚泥等)を好気性生物処理する液処理装置である。液処理装置1は、処理槽2と、処理槽2内の被処理液3に浸漬された膜ユニット6(膜装置の一例)と、膜ユニット6に空気7(酸素含有気体の一例)を供給する気体供給部8と、膜ユニット6に供給された空気7を膜ユニット6から排出する気体排出部9と、膜ユニット6の下方に備えられた散気装置10とを備えている。
【0029】
処理槽2には、被処理液3を槽内に供給する供給経路4と、被処理液3を槽外に排出する排出経路5とが接続されている。
【0030】
膜ユニット6は複数枚の膜モジュール14a~14f(膜体の一例)を備えている。尚、
図1では、一例として6枚の膜モジュール14a~14fが所定間隔をあけて並列に配置されているが、6枚に限定されるものではなく、実際には多数(例えば数十枚から数百枚)の膜モジュールを備えている。
【0031】
図2,
図3に示すように、各膜モジュール14a~14fはそれぞれ、気体透過性を有する複数(多数)の中空糸膜15(気体透過膜の一例)と、中空糸膜15の外表面に形成されて膜モジュール14a~14fに供給される空気7を消費する生物膜16と、上部および下部ヘッダー17,18とを備えている。
【0032】
複数の中空糸膜15はシート状に形成され、中空糸膜15の上端部が上部ヘッダー17の内部空間に開口し、中空糸膜15の下端部が下部ヘッダー18の内部空間に開口している。
【0033】
図1,
図2に示すように、気体供給部8は、膜ユニット6の上方に設けられた給気管21と、給気管21から分岐して各膜モジュール14a~14fの上部ヘッダー17に接続される複数の給気分岐管22a~22fとを備えている。給気管21には、上流側から空気7を送る第1ブロワ装置23と、給気管21を開閉する給気元弁24(第2開閉装置の一例)とが設けられている。
【0034】
気体排出部9は、膜ユニット6の下方に設けられた排気管28と、排気管28から分岐して各膜モジュール14a~14fの下部ヘッダー18に接続される複数の排気分岐管29a~29fとを備えている。排気管28の下流側には排気弁30が接続されている。
【0035】
各給気分岐管22a~22fには、これら給気分岐管22a~22fを個々に開閉する複数の給気コック弁33a~33f(第1開閉装置の一例)が設けられている。これら給気コック弁33a~33fは、処理槽2内の被処理液3の液面3aよりも上方に位置している。
【0036】
各排気分岐管29a~29fには、排気管28から各膜モジュール14a~14fへの空気7の逆流を阻止する逆止弁35a~35f(逆流阻止装置の一例)が設けられている。
【0037】
散気装置10は、複数本の散気管40と、散気管40に接続された第2ブロワ装置41および散気弁42とを有している。
【0038】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0039】
図1に示すように、給気元弁24と全ての給気コック弁33a~33fを開いた状態で、第1ブロワ装置23を駆動することにより、空気7が、第1ブロワ装置23から給気管21を流れ、各給気分岐管22a~22fを通って各膜モジュール14a~14fに供給される。これにより、空気7が各膜モジュール14a~14fの中空糸膜15を通じて生物膜16に供給され、生物膜16が空気7中の酸素を消費して好気性生物処理を行う。
【0040】
このようにして各膜モジュール14a~14fの中空糸膜15に供給された空気7は、各膜モジュール14a~14fから各排気分岐管29a~29fを通って排気管28に合流し、排気管28から処理槽2の外部へ排出される。
【0041】
また、経年劣化や被処理液3中に混入した異物が衝突する等して、例えば
図4に示すようにいずれかの膜モジュール14cが破損した場合、この膜モジュール14cの破損箇所から気泡45が発生する。この場合、破損した膜モジュール14cに対応する給気コック弁33cを閉じて、破損した膜モジュール14cに接続されている給気分岐管22cを閉鎖する。
【0042】
これにより、空気7が給気管21から破損した膜モジュール14cに供給されず、気泡45の噴出が解消される。この際、破損した膜モジュール14cに対応する給気コック弁33c以外の残りの給気コック弁33a,33b,33d~33fは開状態に保たれているため、空気7は、給気管21から破損した膜モジュール14c以外の残りの膜モジュール14a,14b,14d~14fに供給され、これら残りの膜モジュール14a,14b,14d~14fに接続されている各排気分岐管29a,29b,29d~29fを通って排気管28に合流し、排気管28から処理槽2の外部へ排出される。
【0043】
また、上記のように破損した膜モジュール14cに対応する給気コック弁33cを閉じた状態において、排気管28内の空気7が破損した膜モジュール14cに接続されている排気分岐管29cを通って破損した膜モジュール14cに逆流しようとしても、この排気分岐管29cの逆止弁35cによって、空気7の逆流が阻止される。
【0044】
これにより、破損した膜モジュール14cには空気7が供給されないため、破損した膜モジュール14cは好気性生物処理に寄与しないが、破損した膜モジュール14c以外の残りの膜モジュール14a,14b,14d~14fには空気7が供給されるため、破損した膜モジュール14c以外の残りの膜モジュール14a,14b,14d~14fによって好気性生物処理が行われる。これにより、処理効率が大幅に低下するのを防止することができる。
【0045】
また、所定時間毎に散気装置10の第2ブロワ装置41を駆動するとともに散気弁42を開くことにより、散気管40から空気を噴出させて散気を行う。これにより、被処理液3に上向流が発生し、上向流によって各膜モジュール14a~14fの生物膜16が洗浄(スカーリング)され、生物膜16を適切な膜厚に調整することができる。
【0046】
上記のような液処理装置1の運用方法を以下に説明する。
【0047】
図1に示すように、第1ブロワ装置23を駆動し、給気元弁24と全ての給気コック弁33a~33fを開いて、空気7を、給気管21から全ての給気分岐管22a~22fを通して全ての膜モジュール14a~14fに供給する。これにより、全ての膜モジュール14a~14fによって好気性生物処理が行われる。この際、空気7は各膜モジュール14a~14fの中空糸膜15内を上から下へ流れ、各膜モジュール14a~14fから気泡45が噴出していなければ、全ての膜モジュール14a~14fは破損しておらず正常であると判断する。
【0048】
また、
図4に示すように、膜モジュール14a~14fのいずれか1つ(例えば膜モジュール14c)から気泡45が噴出した場合、給気コック弁33a~33fのいずれか1つ(例えば給気コック弁33c)を閉じて、気泡45の噴出が解消されると、閉じた給気コック弁33cに対応する膜モジュール14cが破損していると判断し、給気コック弁33cを閉状態に保つとともに、残りの給気コック弁33a,33b,33d~33fを開いたままにして、引き続き好気性生物処理を行う。
【0049】
また、給気コック弁33a~33fのいずれか1つ(例えば給気コック弁33cではなく、その隣の給気コック弁33d)を閉じても、引き続き気泡45が噴出している場合、閉じた給気コック弁33dに対応する膜モジュール14d以外のいずれかの膜モジュール14a~14c,14e,14fが破損していると判断し、気泡45の噴出が解消されるまで、閉じた給気コック弁33dを開いて別の給気コック弁33a~33c,33e,33fを1つずつ閉じることを繰り返す。
【0050】
これにより、全ての膜モジュール14a~14fの中から破損した膜モジュール14cを容易且つ正確に特定することができる。
【0051】
上記第1の実施の形態では、
図4に示すように、破損した1枚の膜モジュール14cに空気7を供給せず、破損していない残りの膜モジュール14a,14b,14d~14fに空気7を供給して好気性生物処理を行っているが、破損した膜モジュールの数が増加し、膜モジュール14a~14fの全数に対する所定割合の数の膜モジュールが破損した時点で、膜ユニット6を処理槽2内から外部へ引上げ、破損した膜モジュールを新品の膜モジュールに交換してもよい。例えば、膜ユニット6に備えられた膜モジュールの全数を100枚とし、所定割合を10%とすると、100枚のうちの10枚の膜モジュールが破損した時点で、膜ユニット6を処理槽2内から外部へ引上げ、破損した10枚の膜モジュールを新品の膜モジュールに交換する。
【0052】
上記第1の実施の形態では、
図4に示すように、膜モジュール14cが破損した場合を例にして説明したが、膜モジュール14c以外の膜モジュール14a,14b,14d~14fのいずれか1つが破損した場合も同様である。
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、
図4に示すように、複数の膜モジュール14a~14fのいずれか1枚(例えば膜モジュール14c)が破損した場合の運用方法を示したが、第2の実施の形態では、複数の膜モジュール14a~14fのいずれか2枚が破損した場合の運用方法を以下に説明する。
【0053】
例えば、
図5に示すように、複数の膜モジュール14a~14fのうちの2枚の膜モジュール14c,14eが破損して、膜モジュール14c,14eから気泡45が噴出した場合、先ず、気泡45の噴出が解消されるまで複数の給気コック弁を閉じる。例えば、4つの給気コック弁33b~33eを閉じた時点で、気泡45の噴出が解消されたとする。
【0054】
次に、上記閉じた4つの給気コック弁33b~33eのうちのいずれかの1つの給気コック弁を開き、気泡45の噴出の有無を確認する。例えば、給気コック弁33bを開いた場合、給気コック弁33bに対応する膜モジュール14bは破損していないので、気泡45の噴出が確認されない。
【0055】
次に、残りの上記閉じた3つの給気コック弁33c~33eのうちのいずれか1つを開き、気泡45の噴出の有無を確認する。例えば、給気コック弁33cを開いた場合、給気コック弁33cに対応する膜モジュール14cは破損しているので、膜モジュール14cから気泡45が噴出する。これにより、気泡45の噴出が確認され、その後、上記開いた給気コック弁33cを閉じる。これにより、膜モジュール14cが破損していることがわかる。
【0056】
その後、残りの上記閉じた2つの給気コック弁33d,33eのうちのいずれか1つを開き、気泡45の噴出の有無を確認する。例えば、給気コック弁33dを開いた場合、給気コック弁33dに対応する膜モジュール14dは破損していないので、気泡45の噴出が確認されない。
【0057】
さらに、残りの上記閉じた給気コック弁33eを開き、気泡45の噴出の有無を確認する。この場合、給気コック弁33eに対応する膜モジュール14eは破損しているので、膜モジュール14eから気泡45が噴出する。これにより、気泡45の噴出が確認され、その後、上記開いた給気コック弁33eを閉じる。これにより、膜モジュール14eが破損していることがわかる。
【0058】
以上により、全ての膜モジュール14a~14fの中から破損した2枚の膜モジュール14c,14eを容易且つ正確に特定することができ、2つの給気コック弁33c,33eのみを閉じて、破損した2枚の膜モジュール14c,14eのみへの給気を停止することができる。
【0059】
上記第2の実施の形態では、全ての膜モジュール14a~14fのうちの2枚の膜モジュール14c,14eが破損した場合を示したが、これら膜モジュール14c,14e以外の2枚の膜モジュールが破損した場合も同様である。また、2枚の膜モジュールが破損した場合に限定されるものではなく、3枚以上の複数枚の膜モジュールが破損した場合も同様である。
【0060】
上記各実施の形態では、説明を解り易くするため、
図1,
図4,
図5に示すように、6枚の膜モジュール14a~14fを示したが、6枚に限定されるものではなく、多数(例えば数十枚から数百枚)の膜モジュールを備えているものであってもよい。
【0061】
上記実施の形態では、開閉装置の一例として給気コック弁33a~33fを用いたが、コック弁以外の型式の弁を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 液処理装置
2 処理槽
3 被処理液
3a 液面
6 膜ユニット(膜装置)
7 空気(酸素含有気体)
8 気体供給部
9 気体排出部
10 散気装置
14a~14f 膜モジュール(膜体)
15 中空糸膜(気体透過膜)
16 生物膜
21 給気管
22a~22f 給気分岐管
24 給気元弁(第2開閉装置)
28 排気管
29a~29f 排気分岐管
33a~33f 給気コック弁(第1開閉装置)
35a~35f 逆止弁(逆流阻止装置)
45 気泡