(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038116
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】リチウムバッテリーのためのポリマー結合剤及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240312BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240312BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240312BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240312BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240312BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240312BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240312BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/52
H01M4/40
H01M4/13
H01M10/058
H01M10/052
H01M12/08 K
H01B1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023219173
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2019546030の分割
【原出願日】2018-02-01
(31)【優先権主張番号】15/442,278
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パン,バオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウムバッテリーのためのアノード活物質層を提供する。
【解決手段】アノード活物質層は、高弾性ポリマーであって、ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、10%以上の回復可能な又は弾性引張歪み及び室温において10
-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含む結合剤によって一緒に結合される複数のアノード活物質粒子及び任意選択的な導電性添加剤を含む。アノード活物質は、好ましくは、372mAh/gより大きいリチウム貯蔵比容量を有する(例えば、Si、Ge、Sn、SnO
2、Co
3O
4粒子など)。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムバッテリーのためのアノード活物質層において、高弾性ポリマーであって、前記ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含む結合剤によって一緒に結合される複数のアノード活物質粒子及び任意選択的な導電性添加剤を含むことを特徴とするアノード活物質層。
【請求項2】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の架橋ネットワークであって、前記ポリマー鎖の架橋ネットワーク中において、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はそれらの組合せを有するポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項3】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はそれらの組合せから選択されるポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項4】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記アノード活物質は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びカドミウム(Cd);(b)、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物並びにそれらの混合物、複合物又はリチウム含有複合物;(d)Snの塩及び水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)それらのプレリチウム化変種;(g)Li、Li合金又は少なくとも60重量%のリチウム元素をその中に有する表面安定化Liの粒子;及び(h)それらの組合せからなる群から選択されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項5】
請求項4に記載のアノード活物質層において、前記Li合金は、0.1重量%~10重量%の、Zn、Ag、Au、Mg、Ni、Ti、Fe、Co、V又はそれらの組合せから選択される金属元素を含有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項6】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記アノード活物質は、プレリチウム化Si、プレリチウム化Ge、プレリチウム化Sn、プレリチウム化SnOx、プレリチウム化SiOx、プレリチウム化酸化鉄、プレリチウム化VO2、プレリチウム化Co3O4、プレリチウム化Ni3O4又はそれらの組合せを含有し、式中、x=1~2であることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項7】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記アノード活物質は、0.5nm~100nmの厚さ又は直径を有するナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンの形態であることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項8】
請求項7に記載のアノード活物質層において、前記アノード活物質は、20nmより小さい寸法を有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項9】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記粒子の1つ又は複数は、炭素又はグラフェンの層でコーティングされることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項10】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記導電性添加剤は、黒鉛、グラフェン若しくは炭素又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項11】
請求項10に記載のアノード活物質層において、前記黒鉛又は炭素材料は、ポリマー炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nmより小さい寸法を有する微細膨張黒鉛粒子、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項12】
請求項7に記載のアノード活物質層において、前記ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンは、炭素材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコーティングされるか又はそれによって包含されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項13】
請求項12に記載のアノード活物質層において、前記ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンは、リチウムイオンでプレインターカレート又はプレドープされて、プレリチウム化アノード活物質であって、前記プレリチウム化アノード活物質の0.1重量%~54.7重量%%のリチウムの量を有するプレリチウム化アノード活物質を形成することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項14】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、10-4S/cm以上のリチウムイオン導電率を有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項15】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、10-3S/cm以上のリチウムイオン導電率を有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項16】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、添加剤又は充填剤がその中に分散されていないニートポリマーであることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項17】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、0.1重量%~50重量%の、その中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するか、又はその中に0.1重量%~10重量%の、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン若しくはそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項18】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ペルフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー又はそれらの組合せから選択されるエラストマーとの混合物を形成することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項19】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、リチウムイオン導電性添加剤と混合されて複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLi2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4であることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項20】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、リチウムイオン導電性添加剤と混合されて複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ホウフッ化リチウムLiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウムLiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、硝酸リチウムLiNO3、Li-フルオロアルキル-リン酸塩LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミドLiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドLiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項21】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらのスルホン化誘導体又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーと混合されることを特徴とするアノード活物質層。
【請求項22】
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項23】
リチウムバッテリーのためのアノード活物質層において、高弾性ポリマーであって、前記ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーの薄層によって被覆及び保護される集積アノード層を形成するために結合剤によって一緒に結合される複数のアノード活物質粒子及び任意選択的な導電性添加剤を含み、前記薄層は、1nm~10μmの厚さを有することを特徴とするアノード活物質層。
【請求項24】
リチウムバッテリーにおいて、任意選択的なアノード集電体と、請求項1に記載のアノード活物質層と、カソード活物質層と、任意選択的なカソード集電体と、前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層とイオン接触する電解質と、任意選択的な多孔性セパレーターとを含有することを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項25】
請求項24に記載のリチウムバッテリーにおいて、リチウムイオンバッテリー、リチウム金属バッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、リチウム-セレンバッテリー又はリチウム空気バッテリーであることを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項26】
リチウムバッテリーにおいて、任意選択的なアノード集電体と、請求項23に記載のアノード活物質層と、カソード活物質層と、任意選択的なカソード集電体と、前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層とイオン接触する電解質と、任意選択的な多孔性セパレーターとを含有することを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項27】
請求項26に記載のリチウムバッテリーにおいて、リチウムイオンバッテリー、リチウム金属バッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、リチウム-セレンバッテリー又はリチウム空気バッテリーであることを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項28】
リチウムバッテリーを製造する方法において、
(a)カソード活物質層及び前記カソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと、
(b)アノード活物質層及び前記アノード活物質層を支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと、
(c)前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に分離する任意選択的なセパレーターを提供することと
を含み、
前記アノード活物質層を提供する作業は、添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含有する結合剤樹脂により、アノード活物質の複数の粒子及び任意選択的な導電性添加剤を一緒に結合して前記層を形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
リチウムバッテリーを製造する方法において、
(a)カソード活物質層及び前記カソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと、
(b)アノード活物質層及び前記アノード活物質層を支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと、
(c)前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に分離する任意選択的な多孔性セパレーターを提供することと
を含み、
前記アノード活物質層を提供する作業は、結合剤樹脂により、アノード活物質の複数の粒子及び任意選択的な導電性添加剤を一緒に結合して前記アノード活物質層を形成することと、前記アノード活物質層を被覆及び保護するために高弾性ポリマーの薄膜を適用することとを含み、前記高弾性ポリマーは、添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な又は弾性引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有し、及び前記薄膜は、1nm~10μmの厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記高弾性ポリマーの薄膜は、前記アノード活物質層と前記多孔性セパレーターとの間で実施されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーは、1×10-5S/cm~2×10-2S/cmのリチウムイオン導電率を有することを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーは、10%~300%の回復可能な引張歪みを有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の架橋ネットワークであって、前記ポリマー鎖の架橋ネットワーク中において、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はそれらの組合せを有するポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーは、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はそれらの組合せから選択されるポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーは、エラストマー、電子導電性ポリマー、リチウムイオン導電性材料、強化材料又はそれらの組合せとの混合物を形成することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記リチウムイオン導電性材料は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLi2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記リチウムイオン導電性材料は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ホウフッ化リチウムLiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウムLiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、硝酸リチウムLiNO3、Li-フルオロアルキル-リン酸塩LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミドLiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドLiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項28に記載の方法において、前記アノード活物質は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びカドミウム(Cd);(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物並びにそれらの混合物、複合物又はリチウム含有複合物;(c)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(d)それらのプレリチウム化変種;(e)炭素、グラフェン又は黒鉛材料とのその混合物;(f)Li、Li合金又は少なくとも60重量%のリチウム元素をその中に有する表面安定化Liの粒子;(f)及びそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項28に記載の方法において、前記アノード活物質粒子の1つ又は複数は、炭素又はグラフェンの層でコーティングされることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項28に記載の方法において、前記アノード活物質粒子の1つ又は複数は、炭素、グラフェン又は黒鉛材料と混合されて混合物を形成し、及び前記混合物は、グラフェンシートの1つ又は複数によって包含されることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項29に記載の方法において、前記アノード活物質粒子の1つ又は複数は、炭素材料、黒鉛材料及び/又はグラフェンシートと混合されて、外部グラフェンシートによって包含される混合物を形成してグラフェン包含アノード活物質粒子を形成し、前記グラフェン包含アノード活物質粒子は、次いで、前記結合剤樹脂によって結合されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月24日に出願された米国特許出願公開第15/442278号明細書(その内容を参照によって本明細書に組み入れる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、再充電可能なリチウムバッテリー、より特にリチウムバッテリーアノード及びセル並びにそれを製造する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリーの単位セル又は構成ブロックは典型的に、アノード集電体、アノード又は陰極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するアノード活物質、導電性添加剤及び樹脂結合剤を含有する)、電解質及び多孔性セパレーター、カソード又は陽極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するカソード活物質、導電性添加剤及び樹脂結合剤を含有する)並びに別個のカソード集電体から構成される。電解質は、アノード活物質及びカソード活物質の両方とイオン接触している。電解質がソリッドステート電解質である場合、多孔性セパレーターは必要とされない。
【0004】
アノード層中の結合剤を使用して、アノード活物質(例えば、黒鉛又はSi粒子)と導電性充填剤(例えば、カーボンブラック粒子又はカーボンナノチューブ)とを一緒に結合して構造統合性のアノード層を形成すると共にアノード層を別個のアノード集電体に結合し、それは、バッテリーが放電されるときにアノード活物質から電子を集めるように作用する。換言すれば、バッテリーの陰極(アノード)側において、典型的に4つの異なった材料:アノード活物質、導電性添加剤、樹脂結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン、PVDF又はブタジエンスチレンゴム、SBR)及びアノード集電体(典型的にCu箔のシート)が必要とされる。典型的に前者の3つの材料は、別個の、離散アノード活物質層(又は単にアノード層)を形成し、後者の1つの材料は別の離散層を形成する。
【0005】
カソード活物質及び導電性添加剤粒子を一緒に結合させて構造完全性のカソード活性層を形成するために、カソード中に結合剤樹脂(例えば、PVDF又はPTFE)も使用される。同樹脂結合剤は、このカソード活性層をカソード集電体に結合させるためにも作用する。
【0006】
リチウムイオンバッテリーのための最も一般的に使用されるアノード活物質は、リチウムでインターカレートされ得る天然黒鉛及び合成黒鉛(又は人工黒鉛)であり、得られた黒鉛内位添加化合物(GIC)は、LixC6(xが典型的に1未満である)として表わされ得る。完全な黒鉛結晶のグラフェン面間の間隔に可逆的にインターカレートされ得るリチウムの最大量は、372mAh/gの理論比容量を規定する、x=1に相当する。
【0007】
最初のいくつかの充電-放電サイクル中にリチウムと電解質との間(又はリチウムとアノード表面/エッジ原子又は官能基との間)の反応から得られる、保護固体-電解質境界面層(SEI)の存在のために黒鉛又は炭素アノードは長いサイクル寿命を有することができる。この反応におけるリチウムは、本来は電荷移動の目的のためのものであったリチウムイオンの一部に由来する。SEIが形成されるとき、リチウムイオンは、不活性SEI層の一部になって不可逆的になり、すなわち充電/放電中にアノードとカソードとの間でこれらの陽イオンをもう往復させることはできない。したがって、有効なSEI層の形成のために最小量のリチウムを使用することが望ましい。SEI形成に加えて、不可逆的な容量損失Qirは、電解質/溶媒の共インターカレーション及び他の副反応によって引き起こされた黒鉛剥離にも帰せられ得る。
【0008】
炭素ベース又は黒鉛ベースのアノード材料に加えて、可能なアノード用途のために評価されている他の無機材料には、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等並びにリチウム原子/イオンを受け入れることができるか又はリチウムと反応することができる広範な金属、金属合金及び金属間化合物が含まれる。これらの材料の中でも、Li
aA(Aは、Al及びSiなどの金属又は半導体元素であり、「a」は、0<a≦5を満たす)の組成式を有するリチウム合金、例えばLi
4Si(3,829mAh/g)、Li
4.4Si(4,200mAh/g)、Li
4.4Ge(1,623mAh/g)、Li
4.4Sn(993mAh/g)、Li
3Cd(715mAh/g)、Li
3Sb(660mAh/g)、Li
4.4Pb(569mAh/g)、LiZn(410mAh/g)及びLi
3Bi(385mAh/g)は、それらの高い理論容量のために非常に重要である。しかしながら、
図2に図解的に説明されるように、これらの高容量アノード活物質から構成されるアノードにおいて、極度な微粉砕(合金粒子の破砕)及び樹脂結合剤からの活物質粒子の剥離が充電及び放電サイクル中に起こる。これは、これらの粒子への及びそれらからのリチウムイオンの挿入及び抽出によって引き起こされるアノード活物質粒子の極度な膨張及び収縮に起因する。活物質粒子の膨張及び収縮、生じた微粉砕並びに樹脂結合剤からの剥離は、活物質粒子と導電性添加剤との間の接触の低下及びアノード活物質とその集電体との間の接触の低下をもたらす。これらの悪影響は、著しく短縮された充電-放電サイクル寿命をもたらす。
【0009】
このような機械的崩壊に伴う問題のいくつかを克服するために、3つの技術的方法が提案された:
(1)粒子の亀裂形成の推進力である、おそらく、粒子中に貯蔵され得る全歪エネルギーを低減する目的のために、活物質粒子の粒度を低減すること。しかしながら、低減された粒度は、可能性として液体電解質と反応してより高量のSEIを形成するために利用可能なより大きい表面積を意味する。このような反応は、不可逆的な容量損失の原因であるために望ましくない。
(2)薄膜形態の電極活物質を銅箔などの集電体上に直接に堆積させる。しかしながら、極端に小さい厚さ方向寸法(典型的に500nmよりはるかに小さく、多くの場合に必要に応じて100nmより薄い)を有するこのような薄膜構造物は、(同じ電極又は集電体表面積が与えられたとすると)ごく少量の活物質を電極に混入することができ、(単位質量当たりの容量が大きいことができても)低い全リチウム貯蔵容量及び単位電極表面積当たり低いリチウム貯蔵容量を提供することを意味する。このような薄膜は、サイクル経過によって引き起こされるクラッキングにいっそう耐性であるために100nm未満の厚さを有さなければならず、全リチウム貯蔵容量及び単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量をさらに減少させる。このような薄膜バッテリーは適用範囲が非常に限定されている。望ましい及び典型的な電極厚さは100μm~200μmである。(<500nm又はさらに<100nmの厚さを有する)これらの薄膜電極は、必要とされる厚さの1/3ではなく、3桁下回る。
(3)より活性でない又は非活性母材によって保護された(中に分散されるか又はそれによって封入された)小さい電極活性粒子、例えば炭素でコーティングされたSi粒子、ゾルゲル黒鉛で保護されたSi、金属酸化物でコーティングされたSi又はSn及びモノマーでコーティングされたSnナノ粒子から構成される複合物を使用する。おそらく、保護母材は粒子の膨張又は収縮のための緩衝作用を提供し、電解質が電極活物質と接触して反応するのを防ぐ。高容量アノード活性粒子の例はSi、Sn及びSnO2である。残念なことに、Si粒子などの活物質粒子がバッテリーの充電工程中に(例えば、380%の体積膨脹まで)膨張するとき、保護コーティングは、保護コーティング材料の機械的弱さ及び/又は脆性のために容易に破断される。それ自体リチウムイオン導電性でもある入手可能な高強度及び高靭性材料はなかった。
【0010】
活性粒子(例えば、Si及びSn)を保護するために使用されるコーティング又は母材材料は炭素、ゾルゲル黒鉛、金属酸化物、モノマー、セラミック及び酸化リチウムであることをさらに指摘し得る。これらの保護材料は全て非常に脆く、弱く(低強度)且つ/又は不導性である(例えば、セラミック又は酸化物コーティング)。理想的には、保護材料は、以下の要件を満たし得る:(a)コーティング又は母材材料は、電極活物質粒子が、リチウム化されるときに過度に膨張しないのを助けるように高い強度及び剛性を有し得る。(b)保護材料は、反復されるサイクル経過中の砕解を避けるために高い破壊靭性又は亀裂形成に対する高い耐性も有し得る。(c)保護材料は、電解質に対して不活性でなければならないが、良いリチウムイオン導体でなければならない。(d)保護材料は、リチウムイオンを不可逆的に捕捉する相当量の欠陥部位を一切提供してはならない。(e)保護材料は、リチウムイオン導電性並びに電子導電性でなければならない。先行技術の保護材料は全て、これらの要件が不十分である。したがって、得られたアノードは典型的に、予想されるよりもはるかに低い可逆的な比容量を示すことを観察するのは驚くべきことではなかった。多くの場合、第1サイクル効率は極度に低い(主に80%より低く、さらに60%より低いものもある)。さらに、多くの場合、電極は、多数のサイクル数にわたって運転することができなかった。さらに、これらの電極の大部分は、高率性でなく、高い放電率で容認し難いほど低い容量を示す。
【0011】
これらの及び他の理由のために、先行技術の複合電極及び電極活物質の大部分は、いくつかの仕方で欠陥を有し、例えば、多くの場合、あまり良くない可逆的な容量、不十分なサイクル経過安定性、高い不可逆的な容量、リチウムイオン挿入及び抽出工程中の内部応力又は歪の低減の無効性並びに他の望ましくない副作用を有する。
【0012】
特に重要な複雑な複合粒子は、炭素母材中に分散された別個のSiと黒鉛粒子との混合物である;例えば、Mao,et al.[“Carbon-coated Silicon Particle Powder as the Anode Material for Lithium Batteries and the Method of Making the Same,”米国特許出願公開第2005/0136330号明細書(2005年6月23日)]によって調製された複合粒子。また、炭素母材を含有する、そのなかに分散された複合ナノSi(酸化物によって保護される)及び黒鉛粒子並びに黒鉛粒子の表面上に分布された炭素でコーティングされたSi粒子も重要である。また、これらの複雑な複合粒子は、低い比容量をもたらすか又は少しのサイクル数までのみ通用した。炭素自体が比較的弱く脆性であり、ミクロンサイズの黒鉛粒子の存在は、黒鉛粒子自体が比較的弱いため、炭素の機械的結着性を改良しないと考えられる。黒鉛は、これらの場合おそらく、アノード材料の電気導電率を改良する目的のために使用された。さらに、ポリマー炭素、非晶質炭素又は予備黒鉛状炭素は、最初の数サイクルにわたってリチウムを不可逆的に捕捉する非常に多くのリチウム捕獲部位を有する場合があり、過度の不可逆性をもたらす。
【0013】
要約すると、従来技術では、リチウムイオンバッテリーにおいてアノード活物質の膨張/収縮によって誘導される問題を効果的に減少又は排除することができる複合材料及び他の方法が実証されていない。したがって、リチウムイオンバッテリーが長いサイクル寿命を示すことができるようにする新規の保護又は結合剤材料の緊急且つ継続的な必要性が存在する。また、このような材料を大量に直ちに又は容易に製造する方法も必要とされている。
【0014】
このように、これらの必要を満たして高容量アノード活物質を含有するリチウムバッテリーの急速な容量減衰に伴う問題に対処することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0015】
本明細書では、結合剤樹脂の非常にユニークな分類を含有するリチウムバッテリーのためのアノード活物質層が報告される。この結合剤樹脂は、Si、Sn及びSnO2などの高容量アノード活物質を特徴とするリチウムイオンバッテリーに一般的に伴う急速な容量減衰問題を克服することができる高弾性ポリマーを含有する。
【0016】
特に、本発明は、リチウムバッテリーのためのアノード活物質層を提供する。この層は、構造完全性のアノード活性層を形成するように結合剤樹脂によって一緒に結合される複数のアノード活物質粒子及び任意選択的な導電性添加剤(例えば、カーボンブラック、アセチレンブラックの粒子、膨張黒鉛フレーク、カーボンナノチューブ、グラフェンシート、カーボンナノ繊維など)を含む。この結合剤樹脂は、高弾性ポリマーであって、ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%以上の回復可能な引張歪み(弾性歪み)及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含む。
【0017】
高弾性ポリマーは、一方向引張下でポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%以上(典型的に10~700%、より典型的に30~500%、さらにより典型的且つ望ましくは>50%、最も望ましくは>100%)の回復可能な引張歪みを有する。このポリマーは、室温において10-5S/cm以上(好ましくは且つより典型的に10-4S/cm以上、より好ましくは且つ典型的に10-3S/cm以上)のリチウムイオン導電率も有する。アノード活物質は、好ましくは、黒鉛の理論容量である372mAh/gより大きいリチウム貯蔵の比容量を有する。
【0018】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で(ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で)測定される場合、少なくとも5%である弾性変形を示すポリマーであって、典型的に軽度に架橋したポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復プロセスが本質的に瞬間的である(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。弾性変形は、好ましくは、30%より高く、より好ましくは50%より高く、さらにより好ましくは100%より高く、なおより好ましくは150%より高く、最も好ましくは200%より高い。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークであって、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中において、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はそれらの組合せを有するポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを含有する。これらのネットワーク又は架橋ポリマーは、高弾性(高い弾性変形歪み)及び高いリチウムイオン導電率のユニークな組合せを示す。
【0020】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はそれらの組合せから選択されるポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを含有する。
【0021】
このアノード活物質層において、アノード活物質は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びカドミウム(Cd);(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物並びにそれらの混合物、複合物又はリチウム含有複合物;(d)Snの塩及び水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)それらのプレリチウム化変種;(g)少なくとも60重量%のリチウム元素をその中に有するLi、Li合金又は表面安定化Liの粒子;及び(h)それらの組合せからなる群から選択され得る。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、アノード活物質は、プレリチウム化Si、プレリチウム化Ge、プレリチウム化Sn、プレリチウム化SnOx、プレリチウム化SiOx、プレリチウム化酸化鉄、プレリチウム化VO2、プレリチウム化Co3O4、プレリチウム化Ni3O4又はそれらの組合せを含有し、式中、x=1~2である。
【0023】
アノード活物質のプレリチウム化は、この材料がリチウム化生成物中において0.1%~54.7%のLiの重量分率までリチウムイオンでプレインターカレート又はドープされていることを意味することを指摘し得る。
【0024】
アノード活物質は、好ましくは、100nmより小さい厚さ又は直径を有するナノ粒子(球形、楕円及び不規則な形状)、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンの形態である。これらの形状は、特に断りがない限り又は上記の種の特定のタイプが望ましいのでなければ一括して「粒子」と称することができる。さらに好ましくは、アノード活物質は、50nmより小さい、さらにより好ましくは20nmより小さい、最も好ましくは10nmより小さい寸法を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーベースの結合剤樹脂によって複数の粒子を結合させる。樹脂結合剤によって結合させる前にアノード活物質粒子を包含するために炭素層を堆積させ得る。
【0026】
アノード活物質層は、アノード活物質層内で活物質粒子と混合された黒鉛又は炭素材料をさらに含有し得る。炭素、グラフェン又は黒鉛材料は、ポリマー炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nmより小さい寸法を有する微細膨張黒鉛粒子、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子又はそれらの組合せから選択される。グラフェンは、純粋(pristine)グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、グラフェンフルオリド、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、官能化グラフェンなどから選択され得る。
【0027】
アノード活物質粒子は、炭素材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコーティングされるか又は囲まれ得る。好ましくは、ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンの形態のアノード活物質がリチウムイオンでプレインターカレートされるか又はプレドープされて、前記プレリチウム化アノード活物質の0.1重量%~54.7重量%のリチウムの量を有するプレリチウム化アノード活物質を形成する。
【0028】
好ましくは且つ典型的に、高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、最も好ましくは10-3S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。選択されたポリマーのいくつかは、10-2S/cmより高いリチウムイオン導電率を示す。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、その中に分散された添加剤又は充填剤を含有しないニートポリマーである。他において、高弾性ポリマーは、0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)の、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するポリマー母材複合物である。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、0.1重量%~10重量%の、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン又はそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、天然ポリイソプレン(例えば、シス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えば、ネオプレン、Baypren等)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー及びそれらの組合せから選択されるエラストマーと混合される。
【0030】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤(0.1重量%~50重量%)を含有するポリマー母材複合物であり、リチウムイオン導電性添加剤は、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である。
【0031】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するポリマー母材複合物であり、リチウムイオン導電性添加剤は、過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ホウフッ化リチウムLiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウムLiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、硝酸リチウムLiNO3、Li-フルオロアルキル-リン酸塩LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミドLiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドLiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択されるリチウム塩を含有する。
【0032】
高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらの誘導体(例えば、スルホン化変種)又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成し得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス(phosphazenex)、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成し得る。スルホン化は、ここで、改良されたリチウムイオン導電率をポリマーに与えることが見出されている。
【0034】
また、本発明は、任意選択のアノード集電体と、上に記載されたような本発明のアノード活物質層と、カソード活物質層と、任意選択のカソード集電体と、アノード活物質層及びカソード活物質層とイオン接触する電解質と、任意選択の多孔性セパレーターとを含有するリチウムバッテリーを提供する。リチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリー、リチウム金属バッテリー(主なアノード活物質としてリチウム金属又はリチウム合金を含有し、インターカレーションをベースとするアノード活物質を含有しない)、リチウム-硫黄バッテリー、リチウム-セレンバッテリー又はリチウム空気バッテリーであり得る。
【0035】
本発明は、リチウムバッテリーを製造する方法も提供する。本方法は、(a)カソード活物質層及びカソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと、(b)アノード活物質層及びアノード活物質層を支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと、(c)アノード活物質層及びカソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に分離する任意選択的なセパレーターを提供することとを含み、アノード活物質層を提供する作業は、添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含有する結合剤樹脂により、アノード活物質の複数の粒子及び任意選択的な導電性添加剤を一緒に結合して層を形成することを含む。
【0036】
好ましくは、高弾性ポリマーは、1×10-5S/cm~2×10-2S/cmのリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、10%~300%(より好ましくは>50%、最も好ましくは>100%)の回復可能な引張歪みを有する。
【0037】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の架橋ネットワークであって、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中において、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はそれらの組合せを有するポリマー鎖の架橋ネットワークを含有する。
【0038】
好ましくは、本方法において、高弾性ポリマーは、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はそれらの組合せから選択されるポリマー鎖の架橋ネットワークを含有する。
【0039】
特定の実施形態において、結合剤樹脂は、エラストマー、電子導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、そのスルホン化誘導体又はそれらの組合せ)、リチウムイオン導電性材料、強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維及び/若しくはグラフェン)又はそれらの組合せとの高弾性ポリマーの混合物/ブレンド/複合物を含有する。
【0040】
この混合物/ブレンド/複合物において、リチウムイオン導電性材料は、高弾性ポリマー中に分散され、且つ好ましくはLi2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である。
【0041】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン導電性材料は、高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウム、LiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF6、ホウフッ化リチウム、LiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウム、LiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、LiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、LiBF2C2O4、硝酸リチウム、LiNO3、Li-フルオロアルキル-リン酸塩、LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド、LiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、LiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択される。
【0042】
本発明の方法において、アノード活物質は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びカドミウム(Cd);(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物並びにそれらの混合物、複合物又はリチウム含有複合物;(c)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(d)それらのプレリチウム化変種;(e)炭素、グラフェン又は黒鉛材料とのその混合物;(f)少なくとも60重量%のリチウム元素をその中に有するLi、Li合金又は表面安定化Liの粒子;及び(f)それらの組合せからなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、アノード活物質粒子は、高弾性ポリマーによって結合される前に炭素又はグラフェンの層でコーティングされる。好ましくは、アノード活物質粒子及び炭素又は黒鉛材料の粒子は、高弾性ポリマーによって一緒に結合される。好ましくは、アノード活物質粒子は、可能な場合、炭素又は黒鉛材料と、且つ/又はいくつかの内部グラフェンシートと一緒にグラフェンシートによって包含されてアノード活物質粒状物を形成し、次いで高弾性ポリマーによって結合される。グラフェンシートは、清純グラフェン(例えば、CVD又は直接超音波を使用する液相剥離によって調製される)、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド(RGO)、グラフェンフルオリド、ドープドグラフェン、官能化グラフェンなどから選択され得る。
【0044】
本発明は、リチウムバッテリーを製造する別の方法も提供する。本方法は、(a)カソード活物質層及びカソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと、(b)アノード活物質層及びアノード活物質層を支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと、(c)アノード活物質層及びカソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に分離する多孔性セパレーターを提供することとを含み、アノード活物質層を提供する作業は、結合剤樹脂により、アノード活物質の複数の粒子及び任意選択的な導電性添加剤を一緒に結合してアノード活物質層を形成することと、アノード活物質層を被覆及び保護するために高弾性ポリマーの薄膜を適用することとを含み、高弾性ポリマーは、添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~700%の回復可能な又は弾性引張歪み及び室温において10-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有し、及び薄膜は、1nm~10μmの厚さを有する。この高弾性ポリマーの薄膜は、アノード活物質層と多孔性セパレーターとの間で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1(A)は、アノード層がアノード活物質自体の薄いコーティングである、先行技術のリチウムイオンバッテリーセルの概略図である。
図1(B)は、別の先行技術のリチウムイオンバッテリーの概略図である。アノード層は、アノード活物質の粒子、導電性添加剤(図示せず)及び樹脂結合剤(図示せず)から構成される。
【
図2】
図2は、従来技術のリチウムイオンバッテリーの充電中のリチウムのインターカレーション時、Si粒子の膨張は、Si粒子の微粉砕、粒子からの樹脂結合剤の剥離、及び導電性添加剤によって形成される導電路の遮断、及び集電体との接触の低下をもたらし得るという考えを概略的に説明する。
【
図3A】
図3(A)は、4つのBPO開始架橋ETPTAポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線である。
【
図3B】
図3(B)は、(1)ETPTAポリマー結合剤結合Co
3O
4粒子及びSBRゴム結合Co
3O
4粒子を特徴とするアノード活物質を有する2つのリチウムバッテリーセルの比容量値である。
【
図4A】
図4(A)は、4つのPF5開始架橋PVA-CNポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線である。
【
図4B】
図4(B)は、それぞれ(1)高弾性PVA-CNポリマー結合剤結合SnO
2粒子、及び(2)PVDF結合SnO
2粒子を特徴とするアノード活物質を有する2つのリチウムバッテリーセルの比容量値である。
【
図5A】
図5(A)は、3つの架橋PETEAポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線である。
【
図5B】
図5(B)は、4つの異なるタイプのアノード活性層:(1)高弾性PETEAポリマー結合剤結合炭素コーティングSn粒子;(2)高弾性PETEAポリマー結合剤結合Sn粒子;(3)SBRゴム結合炭素コーティングSn粒子;及び(d)PVDF結合Sn粒子を有する4つのコインセルの放電容量曲線である。
【
図6】
図6は、それぞれアノード活物質としてSiナノワイヤー(SiNW):高弾性ポリマー結合剤結合SiNW及びSBRゴム結合剤結合SiNWを有する2つのリチウムイオンセルの比容量である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、非水電解質、ポリマーゲル電解質、イオン性液体電解質、疑似固体電解質又はソリッドステート電解質に基づいた二次バッテリーであるのが好ましい、リチウム二次バッテリーのための高容量アノード材料を含有するアノード活物質層(アノード集電体を含めない、陰極層)を目的としている。リチウム二次バッテリーの形状は、円筒形、四角形、ボタン状等々であり得る。本発明は、任意のバッテリー形状又は形態また任意のタイプの電解質に限定されない。便宜上、我々は第一に、高容量アノード活物質の例示的な実施例としてSi、Sn及びSnO2を使用する。これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0047】
図1(B)において説明されるように、リチウムイオンバッテリーセルは典型的に、アノード集電体(例えば、Cu箔)、アノード又は陰極活物質層(すなわち典型的にアノード活物質の粒子と、導電性添加剤と、結合剤とを含有するアノード層)、多孔性セパレーター及び/又は電解質成分、カソード又は陽極活物質層(カソード活物質と、導電性添加剤と、樹脂結合剤とを含有する)及びカソード集電体(例えば、Al箔)から構成される。より具体的には、アノード層は、アノード活物質(例えば、黒鉛、Sn、SnO
2又はSi)の粒子、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)及び樹脂結合剤(例えば、SBR又はPVDF)から構成される。このアノード層は、単位電極面積当たり十分な量の電流を生じるために典型的に厚さ50~300μm(より典型的に100~200μm)である。
【0048】
図1(A)において説明されるように、それほど一般的に使用されないセル形態において、アノード活物質は、銅箔のシート上に堆積されたSiコーティングの層など、薄膜の形でアノード集電体上に直接に堆積される。これは、バッテリー産業において一般的に使用されず、したがって、さらに考察されない。
【0049】
より高いエネルギー密度のセルを得るために、
図1(B)のアノードは、Li
aA(Aは、Al及びSiなどの金属又は半導体元素であり、「a」は0<a≦5を満たす)の組成式を有するより高容量のアノード活物質を含有するように設計され得る。これらの材料、例えばLi
4Si(3,829mAh/g)、Li
4.4Si(4,200mAh/g)、Li
4.4Ge(1,623mAh/g)、Li
4.4Sn(993mAh/g)、Li
3Cd(715mAh/g)、Li
3Sb(660mAh/g)、Li
4.4Pb(569mAh/g)、LiZn(410mAh/g)及びLi
3Bi(385mAh/g)は、それらの高い理論容量のために非常に重要である。しかしながら、背景技術の欄において考察されたように、これらの高容量アノード活物質の実施に伴ういくつかの問題がある。
【0050】
図2に図解的に説明されるように、1つの重大な問題は、これらの高容量材料から構成されるアノードにおいて、これらの粒子への及びそれらからのリチウムイオンの挿入及び抽出によって引き起こされるアノード活物質粒子の極度な膨張及び収縮のために極度な微粉砕(合金粒子の破砕)が充電及び放電サイクル中に起こるという考えである。活物質粒子の膨張及び収縮は、活物質粒子の微粉砕及び粒子からの結合剤樹脂の剥離を導き、これにより活物質粒子と導電性添加剤との間の接触の低下及びアノード活物質とその集電体との間の接触の低下がもたらされる。これらの悪影響は、著しく短縮された充電-放電サイクル寿命をもたらす。
【0051】
30年超にわたってバッテリーの設計者及び電気化学者を等しく煩わせてきたこれらの厄介な問題は、アノード活物質の粒子を一緒に保持するための新規分類の結合剤樹脂を開発することによって解決された。
【0052】
アノード活物質層は、一方向引張下でポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%以上の回復可能な引張歪み及び室温において10-5S/cm以上(好ましくは且つ典型的に10-4S/cm以上、より好ましくは且つ典型的に10-3S/cm以上)のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーの薄層によって一緒に結合される複数のアノード活物質粒子及び導電性添加剤粒子を含む。アノード活物質は、好ましくは、黒鉛の理論容量である372mAh/gより大きいリチウム貯蔵の比容量を有する高容量アノード物質である。
【0053】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で(ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で)測定される場合、少なくとも5%である弾性変形を示すポリマーであって、典型的に軽度に架橋したポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復が本質的に瞬間的である(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。弾性変形は、好ましくは、30%より高く、より好ましくは50%より高く、さらにより好ましくは100%より高く、なおより好ましくは150%より高く、最も好ましくは200%より高い。高容量ポリマーの好ましいタイプは、後述される。
【0054】
アノード活物質は、(a)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びカドミウム(Cd);(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Ni、Co又はCdと他の元素との合金又は金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Fe、Ni、Co、V又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物並びにそれらの混合物、複合物又はリチウム含有複合物;(d)Snの塩及び水酸化物;(e)チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、アルミン酸リチウム、リチウム含有酸化チタン、リチウム遷移金属酸化物、ZnCo2O4;(f)それらのプレリチウム化変種;(g)Li、Li合金又は表面安定化Liの粒子;及び(h)それらの組合せからなる群から選択され得る。Li又はLi合金(0.1重量%~10重量%のZn、Ag、Au、Mg、Ni、Ti、Fe、Co又はV元素を含有するLi合金)の粒子、特に表面安定化Li粒子(例えば、ワックスによってコーティングされたLi粒子)は、そのままで良いアノード活物質であるか又はほかの場合ならカソード活物質のみから供給されるLiイオンの減少を補償する余分のリチウム源であることがわかった。エラストマーシェル内に封入されたこれらのLi又はLi合金粒子の存在は、リチウムセルのサイクル性能を著しく改良することがわかった。
【0055】
アノード活物質のプレリチウム化は、いくつかの方法(化学インターカレーション、イオン注入及び電気化学インターカレーション)によって実施され得る。これらの中でも、電気化学インターカレーションは最も有効である。リチウムイオンは、非Li元素(例えば、Si、Ge及びSn)及び化合物(例えば、SnO
2及びCo
3O
4)中に54.68%の重量パーセントまでインターカレートされ得る(以下の表1を参照のこと)。エラストマーシェル内にZn、Mg、Ag及びAuを封入するために、Liの量は99重量%に達することができる。
【0056】
アノード活物質の粒子は、ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノプレートレット、ナノディスク、ナノベルト、ナノリボン又はナノホーンの形態であり得る。それらは、(アノード活物質層中に混入されるとき)リチウム化されないか又は所望の程度に(特定の元素又は化合物について可能な最大容量までプレリチウム化され得る。
【0057】
好ましくは及び典型的に、高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、添加剤又は充填剤がその中に分散されていないニートポリマーである。他の例では、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)を含有するポリマー母材複合物である。高弾性ポリマーは、高弾性(弾性変形歪み値>10%)を有さなければならない。弾性変形は、完全に回復可能である変形であり、回復プロセスは、本質的に瞬間的である(著しい時間遅れはない)。高弾性ポリマーは、5%から1,000%まで(その元の長さの10倍)、より典型的に10%~800%、さらにより典型的に50%~500%、最も典型的に及び望ましくは70%~300%の弾性変形を示すことができる。金属は典型的に高い延性を有するが(すなわち破断せずにかなりの程度伸長され得る)、変形の大部分は塑性変形であり(回復可能でない)且つごく少量の弾性変形である(典型的に<1%及びより典型的に<0.2%)ことを指摘し得る。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークであって、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中において、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はそれらの組合せを有するポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを含有する。これらのネットワーク又は架橋ポリマーは、高弾性(高い弾性変形歪み)及び高いリチウムイオン導電率のユニークな組合せを示す。
【0059】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ニトリル含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はそれらの組合せから選択されるポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを含有する。
【0060】
典型的に、高弾性ポリマーは、元来、硬化して高弾性である架橋ポリマーを形成することが可能なモノマー又はオリゴマー状態にある。硬化前、これらのポリマー又はオリゴマーは、有機溶媒に可溶性でありポリマー溶液を形成する。アノード活物質の粒子(例えば、SnO2ナノ粒子及びSiナノワイヤー)をこのポリマー溶液中に分散させて活物質粒子-ポリマー(モノマー又はオリゴマー)混合物の懸濁液(分散体又はスラリー)を形成することができる。次に、個別粒子が互いに実質的に分離したままで、この懸濁液を溶媒除去処理に供することができる。ポリマー(又はモノマー若しくはオリゴマー)が沈殿して、これらの活物質粒子の表面上に堆積する。これは、例えば、噴霧乾燥、超音波噴霧、空気補助噴霧、エアロゾール適用及び他の二次粒子形成手順によって達成することができる。
【0061】
例えば、エトキシル化トリメチロプロパントリアクリレートモノマー(ETPTA、Mw=428、化学式は、下記に示される)は、開始剤と一緒に、炭酸エチレン(EC)又は炭酸ジエチル(DEC)などの有機溶媒中に溶解されることが可能である。次いで、アノード活物質粒子(Si、Sn、SnO
2及びCo
3O
4粒子など)をETPTAモノマー/溶媒/開始剤溶液中に分散させてスラリーを形成することが可能であり、これを噴霧乾燥してETPTAモノマー/開始剤包含アノード粒子を形成することができる。次いで、これらの包含された粒子を熱硬化し、高弾性ポリマーの薄層によって封入されるアノード粒子から構成される粒状物を得ることができる。このモノマーの重合及び架橋反応は、開始剤モノマーの熱分解によってベンゾイルペルオキシド(BPO)又はAIBNから誘導されるラジカル開始剤によって開始されることができる。ETPTAモノマーは、次の化学式を有する。
【0062】
別の例として、封入のための高弾性ポリマーは、スクシノニトリル(SN)中でのシアノエチルポリビニルアルコール(PVA-CN、式2)のカチオン重合及び架橋に基づき得る。
【0063】
この手順は、混合物溶液を形成するために、PVA-CNをスクシノニトリル(NCCH2CH2CN)中に溶解することによって開始され得る。続いて、混合物溶液中に開始剤を添加する。例えば、重量比(20:1~2:1の好ましい範囲から選択される)においてLiPF6をPVA-CN/SN混合物溶液中に添加して、前駆体溶液を形成することができる。次いで、選択されたアノード活物質の粒子を混合物溶液中に導入し、スラリーを形成する。次いで、スラリーにマイクロ封入手順を受けさせて、反応塊、PVA-CN/LiPF6の包含層によってコーティングされたアノード活物質粒子を作成し得る。次いで、これらの包含粒子を温度(例えば、75~100℃)において2~8時間加熱して、高弾性ポリマー封入アノード活物質粒子を得ることができる。このプロセス中、PVA-CN上のシアノ基のカチオン重合及び架橋は、そのような高温でのLiPF6の熱分解から誘導されるPF5によって開始され得る。
【0064】
活物質粒子と化学的に結合したポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを形成することは、これらの材料に不可欠である。換言すれば、ネットワークポリマー又は架橋ポリマーは、高弾性変形を与えるために比較的低い架橋度又は低い架橋密度を有するべきである。
【0065】
ポリマー鎖の架橋ネットワークの架橋密度は、架橋中の分子量(Mc)の逆と定義され得る。架橋密度は、式Mc=ρRT/Ge(式中、Geは、動的機械分析において温度スイープによって決定される平衡弾性率であり、ρは、物理的密度であり、Rは、J/モル*Kの普通気体定数であり、及びTは、Kの絶対温度である)によって決定することができる。Ge及びρが実験的に決定されると、Mc及び架橋密度を算出することができる。
【0066】
Mcの大きさは、架橋鎖又は連鎖結合中の特徴的な反復単位の分子量でMc値を割って、2つの架橋点間の反復単位の数である数Ncを得ることによって標準化され得る。弾性変形歪みがMc及びNcと非常に関連することが見出された。架橋ポリマーの弾性は、架橋間の多数の反復単位(大きいNc)から誘導される。反復単位は、ポリマーが応力を受けない場合、より緩い立体配座(例えば、ランダムコイル)を想定することができる。しかしながら、ポリマーが機械的に応力を受ける場合、連結鎖は、ほどけるか又は伸張して、大きい変形をもたらす。架橋点間の長鎖連結(より大きいNc)により、より大きい弾性変形が可能となる。負荷の解放時、連結鎖は、より緩いか又はコイル状態に戻る。ポリマーの機械的負荷時、架橋は、塑性変形(回復不可能)を形成する連鎖のすべり(slippage)を防ぐ。
【0067】
好ましくは、高弾性ポリマーにおけるNc値は、5より高く、より好ましくは10より高く、さらにより好ましくは100より高く、なおより好ましくは200より高い。これらのNc値は、異なる官能性を有する異なる架橋剤を使用することにより、及び異なる期間、異なる温度で進行するように重合及び架橋反応を設計することにより、異なる弾性変形値を達成するために容易に制御され、且つ変更可能である。
【0068】
代わりに、架橋度を決定するために、ムーニー-リブリン(Mooney-Rilvin)法を使用し得る。膨潤実験によって架橋を測定することもできる。膨潤実験では、架橋した試料を特定の温度で相当する線形ポリマーに対して良好な溶媒中に配置し、質量の変化又は体積の変化が測定される。架橋度が高いほど、少ない膨潤が達成可能である。膨潤度、フローリー相互作用パラメーター(Flory Interaction Parameter)(試料との溶媒相互作用と関連する、フローリー・ハギンズ(Flory Huggins)方程式)及び溶媒の密度に基づき、フローリーのネットワーク説(Flory’s Network Theory)に従って理論的な架橋度を計算することができる。フローリー-レーナー方程式(Flory-Rehner Equation)は、架橋の決定において有用となることが可能である。
【0069】
高弾性ポリマーは、2つの架橋鎖が互いに巻き付く同時相互貫入ネットワーク(SIN)ポリマー又は架橋ポリマー及び線形ポリマーを含有する半相互貫入ネットワークポリマー(半IPN)を含有し得る。半IPNの例は、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)及びエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)オリゴマーから構成されるUV硬化可能/重合可能三価/一価アクリレート混合物である。三価ビニル基を有するETPTAは、架橋鎖のネットワークを形成することが可能な光(UV)架橋性モノマーである。一価ビニル基を有するEGMEAもUV重合可能であり、オリゴマーエチレンオキシド単位の存在のため、高い可撓性を有する線形ポリマーが誘導される。ETPTAの架橋度が中程度であるか又は低い場合、結果として生じるETPTA/EGMEA半IPNポリマーは、良好な機械的可撓性又は弾性及び適切な機械的強度をもたらす。このポリマーのリチウムイオン導電率は、10-4~5×10-3S/cmの範囲である。
【0070】
上記高弾性ポリマーは、アノード活物質粒子に化学的に結合するために単独で使用され得る。代わりに、高弾性ポリマーは、広範囲の一連のエラストマー、導電性ポリマー、リチウムイオン導電性材料及び/又は強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維又はグラフェンシート)と混合することができる。
【0071】
アノード活物質粒子を一緒に結合するために、広範囲にわたる一連のエラストマーを高弾性ポリマーと混合させることができる。エラストマー材料は、天然ポリイソプレン(例えば、シス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えば、ネオプレン、Baypren等)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー及びそれらの組合せから選択され得る。
【0072】
ウレタン-尿素コポリマーフィルムは、通常、2つのタイプのドメイン、軟質ドメイン及び硬質ドメインからなる。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)単位からなる絡み合い直鎖主鎖は、軟質ドメインを構成するが、反復メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びエチレンジアミン(EDA)単位は、硬質ドメインを構成する。リチウムイオン導電性添加剤を軟質ドメイン又は他のより非晶質の領域に混入することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するポリマー母材複合物を形成することができ、リチウムイオン導電性添加剤は、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である。
【0074】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーを、過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ホウフッ化リチウムLiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウムLiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、硝酸リチウム(LiNO3)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミドLiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドLiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択されるリチウム塩を含有するリチウムイオン導電性添加剤と混合することができる。
【0075】
高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらの誘導体(例えば、スルホン化変種)又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成し得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらの誘導体(例えば、スルホン化変種)又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、ブレンド又は半相互貫入ネットワークポリマーを形成し得る。
【0077】
高弾性ポリマーと混合され得る不飽和ゴムには、天然ポリイソプレン(例えば、シス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えば、ネオプレン、Baypren等)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)が含まれる。
【0078】
いくつかのエラストマーは、硫黄加硫によって硬化させることができない飽和ゴムである。それらは、例えば、他の直鎖を一緒に保持するコポリマードメインを有することによって異なった手段によってゴム又はエラストマー材料に製造される。これらのエラストマーの各々を使用して、いくつかの手段の1つによってアノード活物質の粒子を封入することができる:溶融混合(その後に例えばペレット化及びボールミル粉砕)、溶液混合(有機溶媒を使用して又は使用せずに、アノード活物質粒子を未硬化ポリマー、モノマー又はオリゴマー中に溶解する)、その後に乾燥(例えば、噴霧乾燥)、アノード活物質粒子の存在下でエラストマーの界面重合又はin situ重合。
【0079】
このカテゴリーの飽和ゴム及び関連エラストマーには、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン及びタンパク質エラスチンが含まれる。ポリウレタン及びそのコポリマー(例えば、尿素-ウレタンコポリマー)は、アノード活物質粒子を封入するための特に有用なエラストマーシェル材料である。
【0080】
結合剤配合物は、典型的に、高弾性ポリマー又はその前駆体(モノマー又はオリゴマー)が溶媒中に不溶性であることを必要とする。幸いにも、本明細書で使用される全ての高弾性ポリマー又はそれらの前駆体は、いくつかの一般的な溶媒中に可溶性である。未硬化ポリマー又はその前駆体は、一般的な有機溶媒中に容易に溶解可能であり、溶液を形成する。次いで、この溶液を使用して、以下で議論される結合剤適用法のいくつかにより、固体粒子を結合することができる。活物質粒子との接触時、次いで前駆体を重合及び架橋させる。
【0081】
第1の方法は、ポリマー前駆体溶液中にアノード活物質粒子を分散させ、集電体(例えば、Cu箔)の表面上に次いでコーティングされるスラリーを形成することを含む。コーティングされるスラリーの液状媒体は、ポリマー前駆体(モノマー又はオリゴマー)でそれぞれ部分的にコーティングされた活物質粒子及び導電性添加剤粒子を含有する乾燥させた層を形成するために次いで除去される。この手順は、本質的に、リチウムイオンバッテリーにおいて現在一般に使用されるスラリーコーティングプロセスと同一又は非常に類似である。したがって、製造装置又は設備を変更する必要がない。結合剤樹脂を硬化させ、固体粒子を一緒に結合させる重合及び架橋反応を開始するために、この乾燥させた層を熱及び/又はUV光に暴露する。好ましくは、ポリマーの量は、結合剤樹脂が活物質粒子の外部表面の50%未満(好ましくは<20%)のみを被覆するような様式で選択される。
【0082】
ポリマー前駆体と固体活物質粒子との間の所望の量の接触が達成されるまで前駆体溶液がゆっくりと適用される間に活物質粒子をパン又は同様のデバイス内で混転することを必要とする、変更されたパンコーティングプロセスを使用し得る。溶液中のモノマー/オリゴマーの濃度は、活性粒子の結合を補助するために十分なポリマーを保証するが、活物質粒子の外部表面全体を被覆しないように選択される。好ましくは、活物質粒子の外部表面全体の大部分は、ポリマーによって被覆されない。
【0083】
固体基材によって支持された活物質粒子の表面に結合剤樹脂を適用するために溶液噴霧も使用され得る。ポリマー前駆体溶液は、活物質及び導電性添加剤の粒子と一緒に集電体の表面上に噴霧コーティングされ得る。液体溶媒の除去時、乾燥部分は、熱的又はUV誘導重合及び架橋を受ける。
【実施例0084】
実施例1:高弾性ポリマーによって結合された酸化コバルト(Co3O4)アノード粒状物
適切な量の無機塩Co(NO3)2・6H2O及びアンモニア溶液(NH3・H2O、25重量%)を一緒に混合した。得られた懸濁液をアルゴン流下で数時間にわたって撹拌して、完全な反応を確実にした。得られたCo(OH)2前駆物質懸濁液を2時間にわたって空気中で450℃において焼成して、層状Co3O4の粒子を形成した。次いで、以下の手順に従って、Co3O4粒子の部分をETPTAベース高弾性ポリマーで結合剤を使用してアノード活物質層とした。
【0085】
エトキシル化トリメチロプロパントリアクリレートモノマー(ETPTA、Mw=428、Sigma-Aldrich)を、3/97(w/w)のETPTA/溶媒の重量ベース組成比で炭酸エチレン(EC)/炭酸ジエチル(DEC)の溶媒混合物中に溶解した。その後、アノード粒子との混合後に熱架橋反応を可能にするラジカル開始剤としてベンゾイルペルオキシド(BPO、ETPTA含有量に対して1.0重量%)を添加した。次いで、アノード活物質粒子(Co3O4粒子)及び(導電性添加剤として)いくつかのCNTをETPTAモノマー/溶媒/開始剤溶液中に分散してスラリーを形成し、これをCu箔表面上に噴霧コーティングし、ETPTAモノマー/開始剤、CNT及びCo3O4粒子の混合物の層を形成した。次いで、この層を60℃で30分間熱硬化し、高弾性ポリマーベース結合樹脂によって一緒に結合されるCo3O4粒子及びCNTから構成されるアノード活物質層を得た。
【0086】
個々の基準でいくらかの量のETPTAモノマー/溶媒/開始剤溶液をガラス表面上にキャストして湿潤膜を形成し、これを熱的に乾燥させ、次いで60℃で30分間硬化し、架橋ポリマーの膜を形成した。この実験において、BPO/ETPTA重量比は、いくつかの異なるポリマー膜で架橋度を変更させるために0.1%~4%で様々であった。硬化ポリマー試料のいくつかに動的機械試験を行い、架橋度を特徴づけるための手段として、2つの架橋点間の数平均分子量及び相当する反復単位数(Nc)の決定のための平衡動的弾性率Geを得た。
【0087】
いくつかの引張試験試験片をそれぞれの架橋膜から切り取り、万能試験機で試験した。4つのBPO開始架橋ETPTAポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線を
図3(A)に示す。これは、この一連のネットワークポリマーが約230%~700%の弾性変形を有することを示す。上記は、何れの添加剤も含まないニートのポリマーに関する。30重量%までのリチウム塩の添加により、この弾性は、典型的に、10%から100%の可逆性引張歪みまで減少する。
【0088】
電気化学試験のために、従来の結合剤樹脂を使用する比較のための電極も調製した。作業電極は、85重量%の活物質(Co3O4粒子)、7重量%のCNT及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解された8重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤を混合して全固形分5重量%のスラリーを形成することによって作製された。スラリーをCu箔上にコーティングした後、電極を2時間にわたって真空中で120℃において乾燥させて、加圧前に溶媒を除去した。次いで、電極をディスク(φ=12mm)に切断し、真空中で24時間にわたって100℃で乾燥させた。
【0089】
対向/参照電極としてリチウム金属、セパレーターとしてCelgard2400膜及びエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1MのLiPF6電解質溶液を有するCR2032(3V)コイン型セルを使用して電気化学測定を実施した。セルの組立をアルゴン充填グローブボックス内で行なった。CV測定は、1mV/sの走査速度でCH-6電気化学ワークステーションを使用して実施された。
【0090】
高弾性ポリマー結合剤を特徴とするセル及びPVDF結合剤を含有するセルの電気化学的性能は、LAND電気化学ワークステーションを使用して50mA/gの電流密度で定電流充電/放電サイクル経過によって評価された。
図3(B)に要約されるように、第1サイクルのリチウム挿入容量値は、それぞれ756mAh/g(SBR結合剤)及び757mAh/g(BPO開始ETPTAポリマーベース結合剤)であり、それらは、黒鉛の理論値(372mAh/g)よりも高い。両方のセルは、いくらかの第1サイクル不可逆性を示す。初期容量損失は、固体電解質境界面(SEI)層の形成による不完全な変換反応及び部分的に不可逆的なリチウム損失の結果として得られた可能性がある。
【0091】
サイクル数が増加すると、SBR結合Co3O4電極の比容量は、急激に低下する。約756mAh/gのその初期容量値と比較して、その容量は、175サイクル後に20%の損失及び260サイクル後に27.51%の損失がある。対照的に、本発明の高弾性ポリマー結合剤は、大きいサイクル数に対して有意により安定な且つ高い比容量を有するバッテリーセルを提供し、260サイクル後に9.51%の容量損失を受けた。これらのデータは、明らかに本発明の高弾性ポリマー結合剤の驚くべき且つ優れた性能を実証した。
【0092】
その初期値の80%まで比容量が減衰する充電-放電サイクル数が一般的にリチウムイオンバッテリーの有用なサイクル寿命として定義されることを指摘し得る。
【0093】
高弾性ポリマー結合剤は、アノード活物質粒子が膨張及び収縮するときに破損することなく、逆戻り可能なように変形することができるように思われる。また、ポリマーは、これらの粒子が膨張又は収縮するとき、アノード活物質粒子に化学的に結合したままである。それとは対照的に、SBR結合剤は、崩壊するか又は活物質粒子のいくつかから剥離する。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後にバッテリーセルから再生された電極の表面を調査することによって観察された。
【0094】
実施例2:高弾性ポリマーと結合剤によって結合された酸化スズ粒状物
酸化スズ(SnO2)ナノ粒子は、以下の手順を使用してNaOHによるSnCl4・5H2Oの制御された加水分解によって得られた:SnCl4・5H2O(0.95g、2.7m-mol)及びNaOH(0.212g、5.3m-mol)をそれぞれ50mLの蒸留水中に溶解した。NaOH溶液を強力な撹拌下で塩化スズ溶液に1mL/分の速度で滴下した。この溶液を5分間にわたって超音波処理によって均質化した。その後、得られたヒドロゾルをH2SO4と反応させた。この混合溶液に、0.1MのH2SO4の数滴を添加して生成物を凝集させた。沈殿した固体を遠心分離によって集め、水及びエタノールで洗浄し、真空中で乾燥させた。乾燥された生成物をAr雰囲気下で2時間にわたって400℃で熱処理した。
【0095】
SnO2ナノ粒子の結合のための高弾性ポリマーは、スクシノニトリル(SN)中でのシアノエチルポリビニルアルコール(PVA-CN)のカチオン重合及び架橋に基づくものであった。この手順は、混合物溶液を形成するために、PVA-CNをスクシノニトリル中に溶解することによって開始された。このステップに続いて、溶液中に開始剤を添加した。高弾性ポリマーにいくつかのリチウム種を組み込む目的でLiPF6を開始剤として使用することを選択した。LiPF6及びPVA-CN/SN混合物溶液間の比率は、一連の前駆体溶液を形成するために重量で1/20~1/2まで種々であった。その後、選択されたアノード活物質(SnO2及びグラフェン包含SnO2粒子)の粒子及び(導電性添加剤としての)アセチレンブラック粒子をこれらの溶液中に導入し、一連のスラリーを形成した。次いで、スラリーを別々にCu箔表面上にコーティングして、アノード活物質層を作成した。次いで、この層を75~100℃の温度において2~8時間加熱して、高弾性ポリマー結合アノード活物質粒子の層を得た。
【0096】
加えて、反応塊、PVA-CN/LiPF
6をガラス表面上にキャストして、いくつかの膜を形成し、これを重合及び架橋して、異なる架橋度を有する架橋ポリマーを得た。これらの膜上で引張試験も実行され、いくつかの試験結果は、
図4(A)に要約される。この一連の架橋ポリマーは、約80%(より高い架橋度)~400%(より低い架橋度)まで柔軟に伸張可能である。
【0097】
高弾性ポリマー結合粒子(ナノ35μmスケールのSnO
2粒子)及びPVDF結合SnO
2粒子からのバッテリーセルを実施例1に記載された手順を使用して作製した。
図4(B)は、本発明の高弾性ポリマー結合剤の方法に従って作製されたアノードが、PVDF結合SnO
2粒子をベースとしたアノードと比較して有意により安定な且つより高い可逆的な容量を提供することを示す。高弾性ポリマーは、アノード活物質粒子及び導電性添加剤を一緒に保持し、活物質電極の構造完全性を有意に改善することがより可能である。
【0098】
実施例3:PETEAベースの高弾性ポリマーによって結合されたスズ(Sn)ナノ粒子
樹脂結合剤としてSnナノ粒子を一緒に結合するために、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)、式3をモノマーとして使用した。
【0099】
前駆体溶液は、1,2-ジオキソラン(DOL)/ジメトキシメタン(DME)(体積比で1:1)の溶媒混合物中に溶解された1.5重量%のPETEA(C17H20O8)モノマー及び0.1重量%のアゾジイソブチロニトリル(AIBN、C8H12N4)開始剤から構成された。Snのナノ粒子(直径76nm)を前駆体溶液中に添加し、これをCu箔上にコーティングした。PETEA/AIBN前駆体溶液を70℃で30分間重合及び硬化し、アノード層を得た。
【0100】
反応塊、PETEA/AIBN(Sn粒子なし)をガラス表面上にキャストして、いくつかの膜を形成し、これを重合及び硬化して、異なる架橋度を有する架橋ポリマーを得た。これらの膜上で引張試験も実行され、いくつかの試験結果は、
図5(A)に要約される。この一連の架橋ポリマーは、約25%(より高い架橋度)~80%(より低い架橋度)まで柔軟に伸張可能である。
【0101】
比較のために、Snナノ粒子のいくらかの量をSBR結合剤によって結合させ、アノードを製造した。
図5(B)において、4つの異なるタイプのSnベースのアノード層:(1)高弾性PETEAポリマー結合剤結合炭素コーティングSn粒子;(2)高弾性PETEAポリマー結合剤結合Sn粒子;(3)SBRゴム結合炭素コーティングSn粒子;及び(d)PVDF結合Sn粒子を有する4つのコインセルの放電容量曲線を示す。これらの結果は、高弾性ポリマー結合剤戦略が、高容量アノード活物質(炭素によって封入されたか又は非封入粒子)を特徴とするリチウムイオンバッテリーの容量減衰に対して優れた保護を提供することを明らかに実証した。炭素封入のみでは、容量減衰に対して必要な保護を提供することにおいて効果がない。
【0102】
高弾性ポリマー結合剤は、アノード活物質粒子が膨張及び収縮するときに破損することなく、逆戻り可能なように変形することができるように思われる。また、ポリマーは、これらの粒子が膨張又は収縮するとき、アノード活物質粒子に化学的に結合したままである。それとは対照的に、2つの従来の結合剤樹脂であるSBR及びPVDFの両方は、崩壊するか又は活物質粒子のいくつかから剥離する。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後にバッテリーセルから再生された電極の表面を調査することによって観察された。
【0103】
実施例4:高弾性ポリマーによって保護されたSiナノワイヤーベースの粒状物
Siナノ粒子及びSiナノワイヤーSiナノ粒子は、Angstron Energy Co.(Dayton,Ohio)から入手可能である。次いで、Siナノワイヤー、Si及び炭素の混合物並びにそれらのグラフェンシート包含型を、それぞれ(導電性添加剤としての)アセチレンブラックの粒子と混合し、結合剤樹脂としてインスタントポリマー(実施例1のように、ETPTA/EGMEAの半相互貫入ネットワークポリマー及び架橋BPO/ETPTAポリマー)を使用して活物質層に形成した。
【0104】
ETPTA半IPNポリマーによる種々のアノード粒子との結合のために、ETPTA(Mw=428g/モル、三価アクリレートモノマー)、EGMEA(Mw=482g/モル、一価アクリレートオリゴマー)及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(HMPP、光開始剤)を溶媒(炭酸プロピレン、PC)中に溶解し、溶液を形成した。HMPP及びETPTA/EGMEA混合物間の重量比は、0.2%~2%で様々であった。溶液中のETPTA/EGMEA比は、異なる封入層厚さを生じるために1%~5%で様々であった。アクリレート混合物中のETPTA/EGMEA比は、10/0~1/9で様々であった。
【0105】
噴霧コーティングを使用して、Cu箔のシート上に電極を作成した。次いで、ETPTA/EGMEA/HMPPを含有する活物質層を20秒間、UV照射に暴露した。UV重合/架橋は、電極の表面上に約2000mW/cm2の放射ピーク強度を有するHg UVランプ(100W)を使用して実行された。
【0106】
上記手順は、架橋ETPTA/EGMEAポリマーによって結合された電極層を作成するために実行された。比較目的で、SBR結合剤によって結合されたSiナノワイヤーを含有する電極も調製し、別のリチウムイオンセルに導入した。これらの2つのセルのサイクル挙動は、
図6に示されており、これにより、高弾性ポリマー結合剤結合Siナノワイヤーが有意により安定なサイクル応答を提供することが示される。
【0107】
実施例5:高弾性ポリマーシェルにおけるリチウムイオン導電性添加剤の効果
電極の構造完全性を維持するための結合剤樹脂材料を調製するために、多様なリチウムイオン導電性添加剤をいくつかの異なるポリマーマトリックス材料に添加した。これらのポリマー複合物材料が適切な結合剤材料であることが見出された。高弾性ポリマーは、活物質粒子表面の有意な部分を被覆することができるため、(リチウムイオン導電性添加剤の有無にかかわらず)このポリマーは、リチウムイオンが容易に拡散することを可能にすることができるはずである。したがって、ポリマーは、室温で10
-5S/cm以上のリチウムイオン導電率を有するであろう。
【0108】
実施例6:様々な再充電可能なリチウムバッテリーセルのサイクル安定性
リチウムイオンバッテリー産業において、必要とされる電気化学的形成後に測定された初期容量に基づき、容量の20%減衰をバッテリーが受ける充電-放電サイクル数としてバッテリーのサイクル寿命を定義することが慣例である。種々の結合剤材料によって結合されたアノード活物質粒子を含有する本発明の電極を特徴とする広範囲にわたる一連のバッテリーのサイクル寿命データを以下の表3に要約する。
【0109】
これらデータから、高弾性ポリマー結合剤戦略がアノード膨張/収縮誘導容量減衰問題を軽減することに驚くほど効果があることがさらに確認される。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記アノード活物質は、0.5nm~100nmの厚さ又は直径を有するナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートレット又はナノホーンの形態であることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記導電性添加剤は、黒鉛、グラフェン若しくは炭素又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、添加剤又は充填剤がその中に分散されていないニートポリマーであることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、0.1重量%~50重量%の、その中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するか、又はその中に0.1重量%~10重量%の、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン若しくはそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有することを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ポリクロロプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ペルフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー又はそれらの組合せから選択されるエラストマーとの混合物を形成することを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、リチウムイオン導電性添加剤と混合されて複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLi2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S、LixSOy又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4であることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、リチウムイオン導電性添加剤と混合されて複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤は、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウムLiClO4、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6、ホウフッ化リチウムLiBF4、ヘキサフルオロヒ化リチウムLiAsF6、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウムLiN(CF3SO2)2、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムLiBF2C2O4、硝酸リチウムLiNO3、Li-フルオロアルキル-リン酸塩LiPF3(CF2CF3)3、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミドLiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミドLiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩又はそれらの組合せから選択されることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらのスルホン化誘導体又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーと混合されることを特徴とするアノード活物質層。
請求項1に記載のアノード活物質層において、前記高弾性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成することを特徴とするアノード活物質層。