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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038129
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】製造装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240312BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219520
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2019539371の分割
【原出願日】2018-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2017165283
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511150506
【氏名又は名称】ファーマバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】宮内 英征
(72)【発明者】
【氏名】草野 仁
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クオリティ・バイ・デザイン(Quality-by-Design:QbD)の手法を用いた「再生医療等製品」の製造を容易にする製造装置、システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様においては、医療用製品の製造及び原材料の分析等を行う製造装置と、当該製造装置における加工条件を決定する中央管理装置とを別個に設ける。そして、当該製造装置と当該中央管理装置データの間において当該原材料に関するデータ等を送受信することで、連続的に製造条件を最適化しながら当該医療用製品を製造する。これにより、細胞又は組織の経時変化、並びに、輸送の際の振動の影響及び温度変化等の周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して医療用製品を製造すること、及び、原材料に個体差が存在する場合であっても、所望の医療用製品を製造することが容易になる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の初期分析データを生成する分析部と、
前記初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、製造装置。
【請求項2】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の初期分析データ、及び、前記人又は前記動物の臨床データを生成する分析部と、
前記初期分析データ及び前記臨床データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データ及び前記臨床データに基づいて前記中央管理装置が最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、製造装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記原材料を加工して得られる中間生成物の中間分析データを生成し、
前記通信部は、前記中間分析データを前記中央管理装置に送信し、且つ、前記中間生成物の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記中間分析データに基づいて最適化した前記中間生成物の加工条件を示す中間加工データを受信し、
前記加工部は、前記中間加工データに従って前記中間生成物を加工する、請求項1又は請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記原材料の生細胞数及び生細胞率の少なくとも一方を測定する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項5】
前記加工部は、前記細胞又は前記組織を培養する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項6】
少なくとも前記分析部及び前記加工部の一方から前記分析部及び前記加工部の他方へ前記原材料を輸送する移送部を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項7】
前記医療用製品は、自家製品である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項8】
前記分析部は、前記原材料から製造された前記医療用製品の最終分析データを生成し、
前記通信部は、前記中央管理装置において前記最終分析データを前記初期分析データ及び前記初期加工データと関連付けて記録させるために、前記中央管理装置に前記最終分析データを送信する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造装置を複数含み、
前記中央管理装置は、
複数の前記製造装置のそれぞれから送信される前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを関連付けて記録する中央記憶部と、
複数の前記製造装置のいずれか一である対象製造装置において新たに生成された最新の初期分析データを前記対象製造装置が送信した場合に、前記中央記憶部において関連付けて記録されている前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを参照して、前記最新の初期分析データに最適な最新の初期加工データを生成する中央解析部と、
前記最新の初期加工データを前記対象製造装置に送信する中央通信部とを含む、システム。
【請求項10】
中央管理装置によって制御される製造装置において医療用製品を製造するための方法であって、
前記製造装置が、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の初期分析データを生成するステップと、
前記製造装置が、前記初期分析データを前記中央管理装置に送信するステップと、
前記中央管理装置が、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを生成するステップと、
前記中央管理装置が、前記初期加工データを前記製造装置に送信するステップと、
前記製造装置が、前記初期加工データに従って前記原材料を加工するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置、システム及び方法に関する。例えば、本発明の一態様は、人又は動物の細胞又は組織に加工を施したものであって、身体の構造若しくは機能の再建、修復若しくは形成を目的として、又は、疾病の治療若しくは予防を目的として使用される製品を製造するための製造装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、医薬品の承認を受けるために大量且つ長期に渡る非臨床試験及び臨床試験(治験)を実施することが必要とされることが多い。そのため、有効な医薬品が発明された場合であっても、患者はその承認が得られるまで待たなければならないことが多い。
【0003】
2014年に日本の薬事法が改正された。当該改正によって、薬事法に「再生医療等製品」というカテゴリーが新設された。新たに導入された「再生医療等製品」については、安全性が確認され、有効性が推定されれば早期に承認され得る条件付承認制度が導入されている。これにより、様々な疾病に対する新たな治療薬を早期に提供できる可能性が広がった。
【0004】
「再生医療等製品」のうち生物由来の細胞又は組織を原材料とする製品は、「自家製品」と「他家製品」に大別される。「自家製品」は、患者から採取した原材料を加工することによって製造され、且つ、同一の患者によって使用されるものである。「他家製品」は、(患者とは異なる)健常人から採取した原材料を加工することによって製造され、且つ、患者によって使用されるものである。そして、細胞又は組織には個体差が存在し、また、それは経時的に、又は、輸送に伴う振動などの外力若しくは周囲環境の変化が加えられることによって性能および品質が変化する可能性もある。よって、均一な性能及び品質を備えた原材料を大量に用意することは不可能又は著しく困難である。また、原材料が不均一なものとなる場合、適切な製造条件を設定することも困難である。よって、研究段階(少量又は専用的な製造)で良好な結果を示したプロセス(例えば、細胞培養法)を、商用段階(大量又は汎用的な製造)に転用した場合に、同様に、良好な結果を示すとは限らない。最悪の場合には、当該プロセス中に、当該細胞又は当該組織の性能及び品質が逸脱し、「再生医療等製品」の製造が不可能となる可能性もある。
【0005】
「再生医療等製品」の製造プロセスを確立するために、クオリティ・バイ・デザイン(Quality-by-Design:QbD)の手法を用いることが提案されている(非特許文献1参照)。QbDの手法とは、科学的知見とリスクマネジメントに基づく医薬品の品質マネジメント手法である(医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use:ICH)で定められた安全性と品質保持のための運用ガイドラインQ8(製剤開発)、Q9(品質リスクマネジメント)及びQ10(医薬品品質システム)参照)。
【0006】
端的には、QbDの手法においては、以下の順序で製造プロセスを体系的に管理する。
(I) 最終製品の目標製品品質プロファイル(Quality Target Product Profile:QTPP)とQTPPに強い影響を及ぼす最終製品の重要品質特性(Critical Quality Attribute:CQA)を設定する。
(II) リスクアセスメント及び多変量実験に基づいて最終製品の性能及び品質に影響する重要プロセスパラメータ(Critical Process Parameter:CPP)を特定する。
(III) QTPPを担保するために必要となるCQA及びCPPの範囲(以下「デザインスペース」という。)を定める。
【0007】
なお、本明細書において、QTPPとは、製品の設計基準をしたものである。すなわち、QTPPとは、製剤の安全性及び有効性を考慮した場合に要求される品質を保証するために達成されるべき、製剤の期待される品質特性の要約を意味する。また、CQAとは、要求される製品品質を保証するため、適切な限度内、範囲内、分布内であるべき物理学的、化学的、生物学的、微生物学的特性又は性質を意味する。また、CPPとは、プロセスパラメータのうち、その変動がCQAに影響を及ぼすもの、したがって、そのプロセスで要求される品質が得られることを保証するためにモニタリングや管理を要するものを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yonatan Y Lipsitz他2名著、「Quality cell therapy manufactureing by design」、nature biotechnology、2016年4月、第34巻、第4号、p.393-400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通り、均一な性能及び品質を備えた原材料(細胞又は組織)を大量に用意することは不可能又は著しく困難であるため、QbDの手法を「再生医療等製品」に適用することは容易ではない。そこで、本発明の一態様は、QbDの手法を用いた「再生医療等製品」の製造を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様においては、医療用製品の製造及び原材料の分析等を行う製造装置と、当該製造装置における加工条件を決定する中央管理装置とを別個に設ける。そして、当該製造装置と当該中央管理装置データの間において当該原材料に関するデータ等を送受信して当該医療用製品を製造する。
【0011】
例えば、本発明の一態様は、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の初期分析データを生成する分析部と、当該初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、当該原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、当該中央管理装置が当該初期分析データに基づいて最適化した当該原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、当該初期加工データに従って当該原材料を加工する加工部とを含む、製造装置である。
【0012】
また、中央管理装置によって制御される製造装置において医療用製品を製造するための方法であって、当該製造装置が、当該医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞の初期分析データを生成するステップと、当該製造装置が、当該初期分析データを当該中央管理装置に送信するステップと、当該中央管理装置が、当該原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、当該初期分析データに基づいて最適化した当該原材料の加工条件を示す初期加工データを生成するステップと、当該中央管理装置が、当該初期加工データを製造装置に送信するステップと、当該製造装置が、当該初期加工データに従って当該原材料を加工するステップとを含む、方法も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様においては、医療用製品の製造及び原材料の分析等を行う製造装置と、当該製造装置における加工条件を決定する中央管理装置が別個に設けられる。これにより、当該原材料となる細胞又は組織を採集した場所での医療用製品の製造(オンサイト製造)が可能となる。その結果、細胞又は組織の経時変化、並びに、輸送の際の振動の影響及び温度変化等の周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して医療用製品を製造することが容易になる。また、当該医療用製品は、当該医療用製品を使用する患者の近くで製造されることも可能である。その結果、当該医療用製品を構成する細胞又は組織の経時変化、並びに、輸送の際の振動の影響及び温度変化等の周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して当該医療用製品を患者に提供することが容易になる。
【0014】
また、本発明の一態様においては、製造装置と中央管理装置データの間において当該原材料に関するデータ等を送受信して当該医療用製品を製造する。これにより、当該原材料の加工条件を当該原材料自体の性能及び品質に基づいて決定することが可能となる。その結果、原材料に個体差が存在する場合であっても、所望の医療用製品を製造することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様のシステムの一例を示す図。
図2図1に示される製造装置の構成要素の一例を示す図。
図3図1に示される製造装置の機能部の一例を示す図。
図4図1に示される中央管理装置の構成要素の一例を示す図。
図5図1に示される中央管理装置の機能部の一例を示す図。
図6図1に示されるシステムのシーケンスの一例を示す図。
図7図1に示されるシステムのシーケンスの一例を示す図。
図8図1に示されるシステムのシーケンスの一例を示す図。
図9図1に示されるシステムのシーケンスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1 システムの構成
図1は、本発明の一態様のシステムの一例を示す図である。図1に示されるシステムは、複数の製造装置10と、ネットワークを介して複数の製造装置10のそれぞれと通信可能な中央管理装置20とによって構成されている。なお、当該ネットワークは、有線接続又は無線接続のいずれによって構築されてもよく、また、一部を有線接続で構築し且つ残部を無線接続で構築しても良い。
【0017】
図1に示される製造装置10及び中央管理装置20のそれぞれは、ネットワークを介して通信可能であれば、どこに設置されてもよい。例えば、製造装置10を病院、診療所又は薬局等の医療機関に設置すること、及び、中央管理装置20を企業の本社等に設置することが可能である。
【0018】
(1)製造装置
図2は、図1に示される製造装置10の構成要素の一例を示す図である。図2に示される製造装置10は、中央処理装置(CPU)101と、回線終端装置102と、記憶装置103と、入出力装置104と、分析装置105と、加工装置106とを備える。そして、これらの構成要素は、バス107を介して互いに電気的に接続されている。なお、本発明の一態様の製造装置は、図2に示される製造装置10の構成要素のみを備えるものに限定されない。例えば、本発明の一態様の製造装置として、図2に示されている構成要素に加えて、分析装置105及び加工装置106の一方の内部に配置されている原材料、中間生成物又は医療用製品を分析装置105及び加工装置106の他方の内部に移送する移送装置(例えば、ロボットアーム)を備えてもよい。
【0019】
中央処理装置(CPU)101は、記憶装置103に記憶されたソフトウェアに含まれる命令を実行するために用いられる。具体的には、中央処理装置(CPU)101は、中央管理装置20に送信される各種の情報を含む信号の生成、操作者による入出力装置104(の入力装置)の操作に基づく演算処理及び特定の情報を当該操作者に提示するための入出力装置104(の出力装置)の制御、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の分析、当該原材料を加工して得られる中間生成物の分析及び/又は当該医療用製品の分析を行うための分析装置105の制御、並びに、当該原材料の加工及び/又は当該中間生成物の加工を行うための加工装置106の制御等のために用いられる。
【0020】
回線終端装置102は、中央処理装置(CPU)101が生成した各種の信号を中央管理装置20へ送信し、また、中央管理装置20が送信する上記の原材料の加工条件を含む信号及び/又は上記の中間生成物の加工条件を含む信号を受信するために用いられる。例えば、回線終端装置102としては、モデム及び光回線終端装置(ONU)等が挙げられる。
【0021】
記憶装置103は、中央処理装置101によって実行される命令を含むソフトウェア及び中央処理装置101が生成する各種のデータを格納するために用いられる。例えば、記憶装置103としては、DRAM(Dynamic Random Access memory)、SRAM(Static Random Access memory)、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はフラッシュメモリ、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。また、記憶装置103は、DRAM等によって構成される揮発性記憶部と、HDD等によって構成される不揮発性記憶部を含んでいてもよい。この場合、例えば、中央処理装置101によって実行される命令を含むソフトウェアを記憶するために当該不揮発性記憶部を用い、且つ、中央処理装置101が生成する各種のデータを一時的に記憶するために当該揮発性記憶部を用いることが可能である。
【0022】
入出力装置104は、操作者が製造装置10を操作し、また、操作者へ情報を提示するために用いられる。例えば、入出力装置104としては、タッチパネル等が挙げられる。また、入出力装置104は、入力装置と出力装置に分離されていてもよい。例えば、当該入力装置としては、タッチパッド及びマウス等のポインティングデバイス、キーボード、ボタン並びにマイク、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。また、当該出力装置としては、ディスプレイ(モニタ)及びスピーカ、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0023】
分析装置105は、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織、当該原材料を加工して得られる中間生成物及び医療用製品、並びに、当該原材料を提供した人又は動物から採集される血液及び唾液等の体液、髪等の体毛及び爪等を分析するために用いられる。例えば、分析装置105としては、凍結乾燥装置、検体分取装置、血液分析装置、フローサイトメーター、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析装置、画像分析装置、細胞分析装置、遺伝子増幅装置、遺伝子解析装置、酵素免疫反応装置、分光光度計、吸光光度計、重量計、温度計、濃度計、浸透圧計、pHメーター、光電センサー、電圧計、電流計、画像撮影装置、微生物培養装置、微生物分析装置、核磁気共鳴装置、X照射装置、コンピューター断層撮影装置、超音波断層撮影装置及びX線撮影装置、並びに、これら2つ以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0024】
加工装置106は、上記の原材料及び中間生成物を加工(例えば、培養)するために用いられる。例えば、加工装置106としては、凍結乾燥装置、レーザーマイクロダイセクション装置、分散装置、破砕装置、遠心分離(エルトリエーションを含む)装置、付着又は磁気ビーズによる分離装置を含む各種の細胞分離装置、細胞分取装置、遺伝子増幅装置、電気穿孔法、リポフェクション法、パーティクルガン法、超音波法若しくはウイルスベクター法を用いる方法又はこれらを用いない方法を利用する遺伝子導入装置、ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変装置、恒温装置、液体培地透析装置、吸着装置、液体培地循環装置、微量物質添加装置、加減圧装置、振盪装置、振動発生装置、超音波発生装置、磁場発生装置、プログラム冷凍装置、細胞解凍装置、加温装置、冷却装置、無菌的充填装置、無菌維持装置、空調装置及び放射線照射装置、並びに、これら2つ以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
図3は、図1に示される製造装置10の機能部の一例を示す図である。図3に示される製造装置10は、入出力部121と、記憶部122と、分析部123と、通信部124と、加工部125とを備える。なお、本発明の一態様の製造装置は、図3に示される製造装置10の機能部のみを備えるものに限定されない。例えば、本発明の一態様の製造装置として、図3に示されている機能部に加えて、製造装置10の内部において、原材料、中間生成物又は医療用製品を所望の場所(例えば、分析部及び加工部の一方から分析部及び加工部の他方)に移送する機能を備える移送部を設けてもよい。
【0026】
入出力部121は、操作者から医療用製品の製造に関する指示等を受領し、また、操作者に医療用製品の製造に関する情報を提示する機能を備える。例えば、入出力部121は、操作者に、現在、製造装置10において医療用製品の製造が行われていないことを提示するとともに、それを開始するか否かの選択肢を提示し、且つ、操作者が医療用製品の製造を開始することを選択した場合に、その指示を受領する機能を備えることができる。なお、入出力部121の機能は、図2に示される中央処理装置101及び入出力装置104等によって具現される。
【0027】
記憶部122は、医療用製品の製造に必要なデータを記憶し、また、既存のデータを更新する機能を備える。例えば、記憶部122は、原材料、中間生成物及び医療用製品を分析して得られた分析データ、及び、中央管理装置20から送られてきた原材料及び中間生成物の加工条件を示す加工データを記憶し、また、これらの分析を行う際の条件を変更する信号及び/又は特定の製造プロセスにおいて設定されているデザインスペースを変更するための信号が中央管理装置20から送られてきた場合にそれらを更新する機能を備えることができる。なお、記憶部122の機能は、図2に示される中央処理装置101及び記憶装置104等によって具現される。
【0028】
分析部123は、原材料、中間生成物及び医療用製品(本段落において「原材料等」という。)を分析する機能を備える。例えば、分析部123は、原材料等を構成する細胞又は組織の大きさ、色調、重量、細胞粒度、各種細胞表面抗原の発現率、各種遺伝子発現量、生細胞数、生細胞率及び発現遺伝子、並びに、原材料等に含まれる病原微生物及び増殖性ウイルス等の少なくとも一を分析する機能を備えることができる。さらに、分析部123は、血液及び唾液等の体液、髪等の体毛及び爪等(本段落において「体液等」という。)を構成する細胞又は組織の性状、組成、薬剤濃度及び遺伝子、並びに、体液等に含まれる増殖性ウイルスの少なくとも一を分析する機能を備えることができる。なお、分析部123の機能は、図2に示される中央処理装置101及び分析装置105等によって具現される。
【0029】
通信部124は、中央管理装置20に対して信号を送信し、また、中央管理装置20が送信する信号を受信する機能を備える。例えば、通信部124は、原材料の分析結果を示す信号、及び、それに対する最適な加工条件を教示することを求める信号を送信し、また、中央管理装置20が送信する原材料の加工条件を示す信号を受信する機能を備えることができる。なお、通信部124の機能は、図2に示される中央処理装置101及び回線終端装置102等によって具現される。
【0030】
加工部125は、中央管理装置20から送られた加工条件に従って原材料及び/又は中間生成物を加工する機能を備える。例えば、加工部125は、原材料又は中間生成物となる人又は動物の細胞又は組織を加工(具体的には、組織の分散、破砕、レーザーマイクロダイセクション、遠心分離(エルトリエーションを含む)、付着又は磁気ビーズによる分離を含む各種細胞分離、電気穿孔法、リポフェクション法、パーティクルガン法、超音波法、ウイルスベクター法を用いる方法又はこれらを用いない方法での遺伝子導入、各種ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変、培養、加減圧、振盪、振動の照射、超音波照射、磁場発生、凍結、解凍、加温、冷却、培地の全部又は一部の交換、培養容器内表面積の調整、培地の量の調節による細胞濃度の制御、温度、照度、振動、電流、磁場、気圧及び雰囲気の制御、溶媒又は添加物の追加、並びに、無菌的充填等)し、その能力を修飾する機能を備えることができる。なお、加工部125の機能は、図2に示される中央処理装置101及び加工装置106等によって具現される。
【0031】
(2)中央管理装置
図4は、図1に示される中央管理装置20の構成要素の一例を示す図である。図4に示される中央管理装置20は、中央処理装置(CPU)201と、回線終端装置202と、記憶装置203と、入出力装置204と、並列処理装置205とを備える。そして、これらの構成要素は、バス206を介して互いに電気的に接続されている。なお、本発明の一態様の製造装置は、図4に示される中央管理装置20の構成要素のみを備えるものに限定されない。例えば、本発明の一態様の中央管理装置として、図4に示されている構成要素に加えて、製造装置10が備える分析装置105及び加工装置106と同様の装置を実験用に備えてもよい。
【0032】
中央処理装置(CPU)201は、記憶装置203に記憶されたソフトウェアに含まれる命令(並列処理装置205によって実行されるものを除く)を実行するために用いられる。具体的には、中央処理装置(CPU)201は、製造装置10に送信される各種の情報を含む信号(並列処理装置205によって生成されるものを除く)の生成、並びに、操作者による入出力装置204(の入力装置)の操作に基づく演算処理及び特定の情報を当該操作者に提示するための入出力装置204(の出力装置)の制御等を行うために用いられる。
【0033】
回線終端装置202は、中央処理装置(CPU)201及び並列処理装置205が生成した各種の信号を製造装置10へ送信し、また、製造装置10が送信する原材料の分析結果を示す信号及び/又は中間生成物の分析結果を示す信号を受信するために用いられる。例えば、回線終端装置202としては、モデム及び光回線終端装置(ONU)等が挙げられる。
【0034】
記憶装置203は、中央処理装置201及び並列処理装置205によって実行される命令を含むソフトウェア及び中央処理装置201及び並列処理装置205が生成する各種のデータを格納するために用いられる。例えば、記憶装置203としては、DRAM、SRAM、HDD及び/又はフラッシュメモリ、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。また、記憶装置203は、DRAM等によって構成される揮発性記憶部と、HDD等によって構成される不揮発性記憶部を含んでいてもよい。この場合、例えば、中央処理装置201によって実行される命令を含むソフトウェアを記憶するために当該不揮発性記憶部を用い、且つ、中央処理装置201が生成する各種のデータを一時的に記憶するために当該揮発性記憶部を用いることが可能である。
【0035】
入出力装置204は、操作者が中央管理装置20を操作し、また、操作者へ情報を提示するために用いられる。例えば、入出力装置204としては、タッチパネル等が挙げられる。また、入出力装置204は、入力装置と出力装置に分離されていてもよい。例えば、当該入力装置としては、タッチパッド及びマウス等のポインティングデバイス、キーボード、ボタン並びにマイク、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。また、当該出力装置としては、ディスプレイ(モニタ)及びスピーカ、又は、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
並列処理装置205は、記憶装置203に記憶されたソフトウェアに含まれる命令(中央処理装置201によって実行されるものを除く)を実行するために用いられる。例えば、並列処理装置205は、製造装置10から送られた原材料又は中間生成物の分析結果に基づいて当該原材料又は当該中間生成物に最適な加工条件を予め定められたデザインスペースの範囲内で決定し、また、原材料、中間生成物及び医療用製品の分析結果を資料として機械学習を行うために用いられる。
【0037】
図5は、図1に示される中央管理装置20の機能部の一例を示す図である。図5に示される中央管理装置20は、入出力部221と、記憶部222と、解析部223と、通信部224とを備える。なお、本発明の一態様の中央管理装置は、図5に示される中央管理装置20の機能部のみを備えるものに限定されない。例えば、本発明の一態様の中央管理装置として、図5に示されている機能部に加えて、中央管理装置20の内部において、原材料、中間生成物又は医療用製品のサンプルを分析する機能を備える分析部、及び、原材料及び中間生成物のサンプルを加工する機能を備える加工部を設けてもよい。
【0038】
入出力部221は、操作者から医療用製品の製造に関する指示等を受領し、また、操作者に医療用製品の製造に関する情報を提示する機能を備える。例えば、入出力部221は、並列処理装置205による機械学習の結果として特定の製造プロセスのデザインスペースを変更する選択肢を操作者に提示し、また、操作者による当該特定の製造プロセスのデザインスペースを変更するための指示を受領する機能を備えることができる。なお、入出力部221の機能は、図4に示される中央処理装置201及び入出力装置204等によって具現される。
【0039】
記憶部222は、医療用製品の製造に必要なデータを記憶し、また、既存のデータを更新する機能を備える。例えば、記憶部222は、これまでに複数の製造装置10から送られてきた原材料、中間生成物及び医療用製品の分析データ、及び、並列処理装置205を用いて決定された原材料及び中間生成物の加工条件を示す加工データを記憶し、また、操作者から特定の製造プロセスのデザインスペースを変更するための指示を受領した場合にそれを更新する機能を備えることができる。なお、記憶部222の機能は、図4に示される中央処理装置201及び記憶装置204等によって具現される。
【0040】
解析部223は、原材料又は中間生成物に対して最適な加工条件を導出する機能を備える。例えば、解析部223は、製造装置10から原材料又は中間生成物の分析結果を示す信号が送られてきた場合に、その加工条件を決定し、また、原材料又は中間生成物の分析データ、それに対する加工データ、及び、その結果得られた医療用製品の分析データを資料として機械学習する機能を備える。なお、解析部223の機能は、図4に示される並列処理装置205等によって具現される。
【0041】
通信部224は、製造装置10に対して信号を送信し、また、製造装置10が送信する信号を受信する機能を備える。例えば、通信部224は、原材料の加工条件を示す信号、及び、それにしたがって当該原材料を加工することを指示する信号を製造装置10送信し、また、製造装置10が送信する原材料の分析結果を示す信号を受信する機能を備えることができる。なお、通信部224の機能は、図2に示される中央処理装置201及び回線終端装置202等によって具現される。
【0042】
2 システムのシーケンス
図6~9は、図1に示されるシステムのシーケンスの一例を示す図である。以下、それぞれのシーケンスについて具体的に説明する。
【0043】
(1)図6に示されるシーケンスについて
まず、製造装置10において、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の分析が行われる(S11)。なお、当該分析としては、例えば、当該原材料となる人又は動物の細胞又は組織の大きさ、色調、重量、細胞粒度、各種細胞表面抗原の発現率、各種遺伝子発現量、生細胞数若しくは生細胞率の測定、発現遺伝子若しくは発現蛋白の定性及び定量、又は、当該原材料の含有薬剤濃度の測定、又は、当該原材料に含まれる病原微生物若しくは増殖性ウイルスの検出及び同定等が挙げられる。そして、製造装置10は、原材料の分析結果を示す信号(初期分析データ)を中央管理装置20に送信する。
【0044】
次いで、中央管理装置20において、初期分析データに基づいて原材料の加工条件が決定される(S21)。なお、当該加工条件は、予め設定されたデザインスペースの範囲内において決定される。そして、中央管理装置20は、原材料の加工条件を示す信号(初期加工データ)を製造装置10に送信する。
【0045】
次いで、製造装置10において、初期加工データに基づいて原材料の加工が行われる(S12)。なお、当該加工としては、例えば、乾燥、浸漬、分散、破砕、遠心分離(エルトリエーションを含む)、付着若しくは磁気ビーズによる分離を含む各種の細胞分離、電気穿孔法、リポフェクション法、パーティクルガン法、超音波法、ウイルスベクター法を用いる方法若しくはこれらを用いない方法での遺伝子導入、各種ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変、培養、加減圧、振盪、振動の照射、超音波照射、磁場発生、凍結、解凍、加温、冷却、培地の全部若しくは一部の交換、培養容器内表面積の調整、培地の量の調節による細胞濃度の制御、温度、照度、振動、電流、磁場、気圧及び雰囲気の制御、溶媒若しくは添加物の追加、又は、無菌的充填が挙げられる。
【0046】
図6に示されるシーケンスでは、以上のプロセスによって医療用製品が完成する(S13)。
【0047】
図6に示されるシーケンスにおいては、別個に設けられた製造装置10と加工条件を決定する中央管理装置20と別個に設けられた製造装置10が医療用製品を製造する。これにより、医療用製品の製造場所の自由度が増加する。その結果、原材料となる人又は動物の細胞又は組織の経時変化、並びに、輸送の際の振動の影響及び温度変化等の周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して医療用製品を製造することが容易になる。また、当該医療用製品は、当該医療用製品を使用する患者の近くで製造されることも可能である。その結果、当該医療用製品を構成する細胞又は組織の経時変化、並びに、輸送の際の振動の影響及び温度変化等の周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して当該医療用製品を患者に提供することが容易になる。
【0048】
また、図6に示されるシーケンスにおいては、原材料の加工条件が当該原材料の分析結果に基づいて決定される。これにより、当該原材料に最適な加工条件を設定することが容易になる。その結果、原材料に個体差が存在する場合であっても、所望の医療用製品を製造することが容易になる。
【0049】
なお、図6に示されるシーケンスによって製造される医療用製品は、「自家製品」及び「他家製品」のいずれであってもよい。もっとも、当該医療用製品が「自家製品」である場合には、患者から採集される細胞又は組織(原材料)が病状や病態の違いに伴って、その品質に大きな違いがある可能性がある。このような場合であっても、図6に示されるシーケンスにおいては、当該原材料の分析データに基づいて加工条件が決定されるため、精度よく医療用製品を製造することができる。
【0050】
(2)図7に示されるシーケンスについて
まず、製造装置10において、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織の分析(以下「前者の分析」という。)のみならず、それを提供した人又は動物から採集される血液及び唾液などの体液、髪などの体毛及び爪等(本段落において「体液等」という。)の分析(以下「後者の分析」という。)が行われる(S14)。なお、前者の分析としては、例えば、細胞又は組織の大きさ、色調、重量、細胞粒度、各種細胞表面抗原の発現率、各種遺伝子発現量、生細胞数又は生細胞率の測定、及び、発現遺伝子の分析、並びに、当該原材料に含まれる病原微生物の検出及び同定、及び、増殖性ウイルスの検出及び同定等の少なくとも一が挙げられる。また、後者の分析としては、例えば、細胞又は組織の性状、組成、薬剤濃度、遺伝子等の分析、並びに、体液等に含まれる増殖性ウイルスの検出及び同定等の少なくとも一が挙げられる。そして、製造装置10は、前者の分析の結果を示す信号(初期分析データ)及び後者の分析の結果を示す信号(臨床データ)を中央管理装置20に送信する。
【0051】
次いで、中央管理装置20において、初期分析データ及び臨床データに基づいて原材料の加工条件が決定される(S22)。なお、当該加工条件は、予め設定されたデザインスペースの範囲内において決定される。そして、中央管理装置20は、加工条件を示す信号(初期加工データ)を製造装置10に送信する。
【0052】
次いで、図7に示されるシーケンスでは、図6に示されるシーケンスと同様のプロセスが行われ(S12)、医療用製品が完成する(S13)。
【0053】
図7に示されるシーケンスは、図6に示されるシーケンスと同様の利点を備える。また、図7に示されるシーケンスによって製造される医療用製品は、「自家製品」及び「他家製品」のいずれであってもよい。そして、当該医療用製品が「自家製品」である場合、図7に示されるシーケンスには上述の利点もある。
【0054】
さらに、図7に示されるシーケンスにおいては、原材料の加工条件が、当該原材料の分析結果のみならず、当該原材料を提供した人又は動物の体液等に基づいて決定される。これにより、当該原材料に最適な加工条件を設定することがより容易になる。その結果、原材料に個体差が存在する場合であっても、所望の医療用製品を製造することが容易になる。
【0055】
(3)図8に示されるシーケンスについて
まず、図6に示されるシーケンスと同様のプロセスが行われ(S11、S21及びS12)、中間生成物が生成される(S15)。
【0056】
次いで、中間生成物の分析が行われる(S15)。なお、当該分析としては、例えば、当該中間生成物における生細胞数又は生細胞率の測定、細胞表面抗原の分析、各種発現遺伝子の分析、各種発現遺伝子量の分析、培養液中に存在する物質の濃度、並びに、当該中間生成物に含まれる病原微生物の検出及び同定、及び、増殖性ウイルスの検出及び同定等の少なくとも一が挙げられる。そして、製造装置10は、中間生成物の分析結果を示す信号(中間分析データ)を中央管理装置20に送信する。
【0057】
次いで、中央管理装置20において、中間分析データに基づいて中間生成物の加工条件が決定される(S23)。なお、当該加工条件は、予め設定されたデザインスペースの範囲内において決定される。そして、中央管理装置20は、中間生成物の加工条件を示す信号(中間加工データ)を製造装置10に送信する。
【0058】
次いで、製造装置10において、中間加工データに基づいて中間生成物の加工が行われる(S17)。なお、当該加工としては、例えば、乾燥、浸漬、分散、破砕、遠心分離(エルトリエーションを含む)、付着若しくは磁気ビーズによる分離を含む各種の細胞分離、電気穿孔法、リポフェクション法、パーティクルガン法、超音波法、ウイルスベクター法を用いる方法若しくはこれらを用いない方法での遺伝子導入、各種ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変、培養、加減圧、振盪、振動の照射、超音波照射、磁場発生、凍結、解凍、加温、冷却、培地の全部若しくは一部の交換、培養容器内表面積の調整、培地の量の調節による細胞濃度の制御、温度、照度、振動、電流、磁場、気圧及び雰囲気の制御、溶媒若しくは添加物の追加、又は、無菌的充填が挙げられる。
【0059】
図8に示されるシーケンスでは、以上のプロセスによって医療用製品が完成する(S13)。
【0060】
図8に示されるシーケンスは、図6に示されるシーケンスと同様の利点を備える。また、図8に示されるシーケンスによって製造される医療用製品は、「自家製品」及び「他家製品」のいずれであってもよい。そして、当該医療用製品が「自家製品」である場合、図8に示されるシーケンスには上述の利点もある。
【0061】
さらに、図8に示されるシーケンスにおいては、医療用製品の製造プロセスが、原材料の分析結果のみならず、中間生成物の分析結果に基づいて決定される。これにより、当該中間生成物にとって最適な加工条件を設定することが可能となる。その結果、製造プロセス中に、中間生成物の性能及び品質が逸脱する蓋然性を低減することが可能となる。
【0062】
(4)図9に示されるシーケンスについて
まず、図6に示されるシーケンスと同様のプロセスが行われ(S11、S21及びS12)、医療用製品が完成する(S13)。
【0063】
次いで、医療用製品の分析が行われる(S17)。なお、当該分析としては、例えば、当該医療用製品における生細胞数又は生細胞率の測定、細胞表面抗原の分析、各種発現遺伝子の分析、各種発現遺伝子量の分析、各種細胞機能の分析、溶媒中の物質の濃度の測定、浸透圧の測定、細胞の形態及び粒度とその分布の分析、色調の分析、重量の測定、並びに、当該医療用製品に含まれる病原微生物の検出及び同定、及び、増殖性ウイルスの検出及び同定等の少なくとも一が挙げられる。そして、製造装置10は、医療用製品の分析結果を示す信号(最終分析データ)を中央管理装置20に送信する。
【0064】
次いで、中央管理装置20において、今回のシーケンスで受信又は生成した初期分析データ、初期加工データ及び最終分析データを関連付けて記憶する(S24)。そして、新たに記憶されたこれらのデータは、中央管理装置20における機械学習の資料として利用される(S25)。
【0065】
図9に示されるシーケンスは、図6に示されるシーケンスと同様の利点を備える。また、図9に示されるシーケンスによって製造される医療用製品は、「自家製品」及び「他家製品」のいずれであってもよい。そして、当該医療用製品が「自家製品」である場合には、図9に示されるシーケンスには上述の利点もある。
【0066】
さらに、図9に示されるシーケンスにおいては、中央管理装置20が、新たに得られた分析データ及び加工データを機械学習の資料とする。これにより、中央管理装置20に蓄積される分析データ及び加工データの数に比例して、中央管理装置20によって決定される加工条件の精度を向上させることが可能となる。その結果、製造プロセス中に、原材料となる人又は動物の細胞又は組織の性能及び品質が逸脱する蓋然性を低減することが可能となる。
【0067】
(5)変形例について
本発明の一態様のシステムのシーケンスは、図6図9のいずれかに示されたシーケンスに限定されない。例えば、図6図9に示されたプロセスの全て(S11~S17及びS21~25)を行うシーケンスも本発明の一態様のシステムのシーケンスに含まれる。また、図8に示される中間生成物の分析及び加工に関するプロセス(S16、S23及びS17)を複数回行うことも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析して初期分析データを生成する分析部と、
前記初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、
製造装置。