(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003813
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240109BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240109BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240109BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240109BHJP
B32B 23/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65D65/40 A
C09K3/10 E
C09K3/10 Z
B32B27/10
B32B27/00 H
B32B23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103097
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4H017
【Fターム(参考)】
3E086AB01
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4F100AJ04C
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4H017AA04
4H017AB01
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4H017AB10
(57)【要約】
【課題】本発明は、全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートシール層、紙基材(A)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、前記紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含み、前記表面保護層が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含み、前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、紙基材(A)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、
前記紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)を含み、
前記表面保護層が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含み、
前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材。
【請求項2】
ヒートシール層が、アクリル樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
ヒートシール層が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、10~90℃である、請求項2に記載の包装材。
【請求項4】
ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、前記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度が、60~100℃である、請求項2に記載の包装材。
【請求項5】
紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項6】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)、及び平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)の総含有量が、包装材100質量%中、0.5~50質量%である、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)が、ビスコース由来である、請求項5に記載の包装材。
【請求項8】
表面保護層が、更にポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項9】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)とポリアミド樹脂との質量比率が、99:1~15:85である、請求項8に記載の包装材。
【請求項10】
表面保護層が、更にアマイドワックスを含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項11】
表面保護層が、更に、可塑剤を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項に記載の包装材から形成されてなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムが用いられ、透明であるため中身を視認できる使用方法もあり、特にラミネート包装材が用いられることが多かった。例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、そもそもラミネート型包装材は、石油由来プラスチックフィルムの使用量が多い。そのため、環境対応、カーボンニュートラルであり、更にプラスチックの使用量を削減可能な紙化包装材が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
紙基材を用いた包装材は、紙基材が空隙を有するため酸素等の物質を透過しやすい。また、セルロース繊維と空気の屈折率の差が大きいため、中身を視認できない(全光透過率が低い)ため、使用形態が限られていた。また一般的に紙基材を用いた包装材は耐水性に課題があり、これが用途を限定する要因にもなっていた。
【0005】
例えば、特許文献2には、表面保護層、印刷層、紙基材、樹脂層を順次有する包装材料に関する発明が記載されている。しかしながら、上記紙基材を用いた包装材料は、通常の紙基材が使用されているため、上記構成の包装材は内容物の視認性(全光線透過率)、耐水性及び酸素バリア性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-051796号公報
【特許文献2】特開2020-55167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙基材を用いた包装材であって、全光透過率、耐水性及び酸素バリア性等に優れた包装材として満足できるものは未だ見出されていない。また、紙基材を用いた包装材に実用性を付与するためには、上記課題解決に加え、包装材に求められる耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性を満たす必要がある。
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ヒートシール層、紙基材(A)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、
前記紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)を含み、
前記表面保護層が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含み、
前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材に関する。
【0009】
また、本発明は、ヒートシール層が、アクリル樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記包装材に関する。
【0010】
また、本発明は、ヒートシール層が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、10~90℃である、上記包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、前記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度が、60~100℃である、上記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)を含む、上記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)、及び平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)の総含有量が、包装材100質量%中、0.5~50質量%である、上記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)が、ビスコース由来である、上記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、表面保護層が、更にポリアミド樹脂を含む、上記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)とポリアミド樹脂との質量比率が、99:1~15:85である、上記包装材に関する。
【0017】
また、本発明は、表面保護層が、更にアマイドワックスを含む、上記包装材に関する。
【0018】
また、本発明は、表面保護層が、更に、可塑剤を含む、上記包装材に関する。
【0019】
また、本発明は、上記包装材から形成されてなる包装袋に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、全光透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0022】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を単に「積層体」と略記する場合があるが同義である。
また、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいう。「オーバーコート剤」とは、表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0023】
[包装材]
ヒートシール層、紙基材(A)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、前記紙基材(A)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)を含み、前記表面保護層が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含み、前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材に関する。
【0024】
<包装材の全光線透過率>
本発明の包装材の全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠し、上記包装材を2cm角に切り出し、日本電色工業社製、Spectral haze meter SH7000を用いて、上記包装材の表面保護層側から光を入射させて測定することができる。上記包装材の全光線透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70~90%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、後述の包装体として利用した際に、内容物の視認性が良好となる。
当該構成において、紙繊維に樹脂を充填した紙基材(A)を用いることが好ましく、光の屈折が減少するため、全光線透過率に優れ、また、酸素透過度も減少するため、酸素バリア性に優れる。さらに表面保護層に平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含むことにより全光線透過率を維持したまま、耐水摩擦性に優れる。
【0025】
[ヒートシール層]
本発明におけるヒートシール層は、紙基材(A)において、表面保護層を具備した面とは反対の面上に位置する。ヒートシール層の膜厚は、1~20μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0026】
ヒートシール層が含む樹脂として、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられ、ヒートシール性、バリア性の観点から、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ヒートシール層の樹脂の含有量は、ヒートシール層100質量%中、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0027】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂とは、アクリルモノマー由来の構成単位を含む樹脂である。アクリル樹脂はカルボキシル基その他の酸性基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、20~100mgKOH/gであることが好ましく、30~80mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度は、10~90℃であることが好ましく、25~70℃であることがより好ましい。アクリル樹脂の酸価及びガラス転移温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。また、アクリル樹脂はアクリルモノマーの単独重合体や、アクリルモノマーと酸性モノマーからなる共重合体、エチレンとアクリルモノマーからなる共重合体などが好適に挙げられる。
【0028】
前記(メタ)アクリルモノマーを含む不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物、
N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリル酸アミド誘導体、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類の(メタ)アクリル酸のモノ又はジエステル類、
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物、
アクリル酸、メタクリル酸、
マレイン酸、イタコン酸等の酸基を有するビニル化合物が挙げられる。
ヒートシール性の面から、アクリル樹脂は、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するものが好ましく、アクリル樹脂が水酸基を有する場合、アクリル樹脂を構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物を含有するものが好ましい。
【0029】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 JONCRYL PDX7356、PDX-7326、PDX-7430、星光PMC社製 PE-1126、JE-1113、KE1148を使用することができる。
【0030】
<エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂中の酢酸ビニル含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂100質量%中、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが特に好ましく。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度は、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。酢酸ビニル含有量、及び最低造膜温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0031】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は例えば、ジャパンコーティングレジン社製 アクアテックスECシリーズ、住友化学工業社製 スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755を使用することができる。
【0032】
(酸価の測定)
本願において酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0033】
(ガラス転移温度の測定)
本願においてガラス転移温度は、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定した。詳細には、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0034】
(重量平均分子量の測定)
本願において重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができ、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることが可能である。測定器としてはGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex OHpak LB-805などが挙げられる。検出器としては例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5.0mL/分である。
【0035】
(最低造膜温度の測定)
本願において最低造膜温度は、 JIS K 6828-1:2003に準拠し、テスター産業社製 TP-801MFTテスター等で測定することができる。
【0036】
<ヒートシール層の形成>
ヒートシール層は、最終的に、ヒートシール層、紙基材(A)、及び表面保護層を順次有する包装材となるよう、例えば、表面保護層と反対側の紙基材(A)面上に、ヒートシール剤を用いて印刷した後、揮発成分を乾燥して除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでヒートシール層を得ることができる。
【0037】
(グラビア印刷)
《グラビア版》
グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーによって各色の凹部を形成する。彫刻とレーザーの使用に制限はなく、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
【0038】
《グラビア印刷機》
グラビア印刷機においては、一つの印刷ユニットが、上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキ及び絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0039】
[紙基材(A)]
本発明の紙基材(A)は、紙繊維(平均繊維径10μm以上の植物由来繊維のセルロース繊維)により構成された基材であるが、更に紙繊維以外の、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)を含むことが好ましく、包装材により高い全光透過率の透明性を与える。なお平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)とは平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の繊維・粒子・コロイド又は、有機溶剤及び/又は水に溶解・分散可能な樹脂である。平均繊維径あるいは平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがなお好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
なお、上記平均繊維径あるいは平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて無作為に10~20点程度の平均を取ることで算出可能である。
また、樹脂が溶解している場合などは、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定不能であるが、GPCなどで、分子量の測定できる樹脂が存在する場合は、明らかに、繊維状あるいは粒子状の形態のものが存在し、その平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。さらに、溶解していた樹脂が溶剤揮発により、乾固した場合も、走査型電子顕微鏡(SEM)では、平均繊維径も平均粒子径も、測定不能できないが、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂である樹脂の溶液由来であるので、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。このように定義する主旨は、紙繊維とは異なる樹脂であることを文言上区別するためである。
紙基材が平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含む一実施形態において、紙基材のセルロース繊維間の空隙に上記樹脂を含む態様の紙基材(A)であることが好ましい。
【0040】
<包装材中の紙基材(A)の割合>
上記包装材のうち、紙基材(A)の割合は、リサイクル性、透明性及びバリア性の観点から、包装材100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがなお好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0041】
<紙基材(A)の製造に用いられる紙繊維>
紙基材(A)に用いられる紙繊維(以下、単に「紙」ともいう)としては、平均繊維径10μm以上の植物由来繊維(セルロース繊維)により構成されていれば特に制限はなく、例えば、クラフト紙等が挙げられる。なお、紙基材(A)としては、坪量が、50~150g/m2であることが好ましく、60~120g/m2であることがなお好ましく、60~90g/m2であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率が良好となる。
【0042】
<紙基材(A)に含まれる平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂(a)>
紙基材(A)に含まれる樹脂は、平均繊維径又は平均粒子径10μm未満の繊維・粒子・コロイド・溶液となった樹脂であり、有機溶剤及び/又は水に溶解・分散可能な樹脂である。当該樹脂は、例えば、セルロース系樹脂(a1)、パラフィン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられ、屈折率の観点から、セルロース系樹脂(a1)が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、紙繊維以外の平均繊維径又は平均粒子径10μm以上の樹脂繊維・樹脂粒子を含むことを排除するものではない。
【0043】
紙基材(A)中の樹脂(a)の含有量は、紙基材(A)100質量%中、0.5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~35質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0044】
<平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)>
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)として、酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂、セルロースキサントゲン酸ナトリウム由来(ビスコース由来)のセルロース樹脂、その他のセルロース系樹脂、などが挙げられる。セルロースキサントゲン酸ナトリウム(ビスコース)由来のセルロース樹脂であることが更に好ましい。
本発明で用いられるセルロース系樹脂(a1)の重量平均分子量は、20,000~900,000であることが好ましく、50,000~700,000であることがより好ましく、100,000~500,000であることが更に好ましい。また、セルロース系樹脂(a1)の平均粒子径は、上記範囲である場合、光透過性と酸素透過性の両立が可能になるため、全光線透過率及び酸素バリア性が良好となる。
【0045】
セルロース系樹脂(a1)は、分散性・透明性の観点から、セルロースナノファイバーやビスコース(再生セルロース)を用いることが好ましく、ビスコースからなるセロファンを用いることがより好ましい。
【0046】
セルロースナノファイバーは、粉砕機を用いた解砕や、TEMPO酸化法等の公知の方法でセルロース系樹脂(a1)を処理することによって得られる。上記セルロースナノファイバーの繊維幅(繊維径)は、1~200nmであることが好ましく、1~50nmであることがより好ましく、1~20nmであることが特に好ましい。
【0047】
一実施形態として、樹脂(a)としてセルロース繊維を水酸化ナトリウム、及び二硫化炭素と反応させて得たセルロースキサントゲン酸ナトリウム(ビスコース)を用いることが好ましい。前記ビスコースは希硫酸に浸漬することで再度セルロース(再生セルロース、セロファンともいう)を得ることができる。前記ビスコースはコロイド分散液のため、塗工性に優れる。そのため、紙に樹脂(a)として再生セルロースを含ませる場合は、ビスコースを紙に塗工し、塗工後に再生セルロースへ変化させることが好ましい。あるいは、紙繊維とともにビスコースをスラリー化して塗工乾燥後に再生セルロースとして紙基材(A)を得ることが好ましい。
【0048】
<包装材中の紙繊維の割合>
上記包装材のうち、紙繊維の割合は、リサイクル性の観点から、包装材100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがなお好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0049】
<紙基材(A)の製造方法>
紙に樹脂を含ませる方法は、例えば、樹脂(a)を含む樹脂液を用い、前記樹脂液を紙に塗工して紙基材(A)を製造する方法、及び前記樹脂液に紙を浸漬させて紙基材(A)を製造する方法、植物繊維と上記樹脂との混合物を膠着させ製紙して紙基材(A)を製造する方法等が挙げられる。樹脂液としては、前記樹脂を媒体に溶解させた樹脂溶液、微細な樹脂粒子を媒体に分散した樹脂分散液等が挙げられる。
【0050】
《樹脂液を紙に塗工して紙基材(A)を製造する方法》
樹脂液を紙に塗工する方法は、例えば、紙面上に、樹脂液を用いて塗工した後、揮発成分を除去する方法が挙げられる。塗工方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗工される。その後、オーブン等による乾燥によって樹脂を含んだ紙を得ることができる。
【0051】
《樹脂液に紙を浸漬させて紙基材(A)を製造する方法》
樹脂液に紙を浸漬する方法は、例えば、紙を樹脂液中に浸漬させ、ニップロール等によって余分な樹脂液を絞り出した後、オーブン等による乾燥によって揮発成分を除去することで、樹脂を含んだ紙を得ることができる。
【0052】
《植物繊維と上記樹脂との混合物を膠着させ製紙して紙基材(A)を製造する方法》
例えば、紙繊維であるセルロース繊維と樹脂(a)のスラリー状混合物を塗工・乾燥してシートを得て、酸・アルカリ処理などで当該樹脂を固体化して透明紙とする方法などが挙げられる。
【0053】
以下の説明において、ヒートシール層、紙基材(A)及び表面保護層を順次有し、表面保
護層及びヒートシール層を下記態様とすることで酸素、酸素バリア性が向上して、かつ
、透明な包装材を得ることができる効果を奏する。
【0054】
[表面保護層]
本願において表面保護層は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含む。なお、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)は、平均繊維径又は平均粒子径10μm未満の繊維・粒子・コロイド・溶液となった樹脂であり、有機溶剤及び/又は水に溶解・分散可能な樹脂である。表面保護層は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含むオーバーコート剤により形成することができ、形成方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはグラビア印刷方式である。オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。
表面保護層の厚みは、0.3~10μmであることが好ましく、より好ましくは1~7μmである。表面保護層の厚みが0.3μm以上である場合、表面保護層の均一性が向上するため、耐ブロッキング性が良好となり、厚みが10μm以下である場合、表面保護層内の残留溶剤量が減少するため、耐ブロッキング性が良好となる。
【0055】
<平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)>
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)としては、木材繊維や綿花等、非可食性植物由来のセルロース樹脂のエステル化やニトロ化により得られる樹脂であり、例えば、酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セル酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられ、耐水摩擦性の観点から、ニトロセルロース樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、紙繊維以外の平均繊維径又は平均粒子径10μm以上の樹脂繊維・樹脂粒子を排除するものではない。
また、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)は、紙基材(A)に含まれる平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)と同じものであっても、異なっていてもよい。
【0056】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)は、JIS K 6703-1995に準拠して測定した粘度が、以下の(1)~(3)の少なくても1つを満たすことが好ましい。上記粘度は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)のイソプロパノール溶液中を、鋼球が落下する時間(鋼球落下時間(秒))である。
(1)溶液濃度12.2%における粘度が、1.5~16秒である。
(2)溶液濃度20%における粘度が、3~40秒である。
(3)溶液濃度25%における粘度が、0.1~22秒である。
中でも、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)の粘度は、上記(3)を満たすことが好ましい。上記(3)において、溶液濃度25%における粘度は、好ましくは0.5~15秒であり、より好ましくは0.5~9秒である。粘度が上記範囲であると、表面保護層の耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0057】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは8,000~100,000、さらに好ましくは10,000~80,000である。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
また、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)のガラス転移温度は80℃~160℃であることが好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0058】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)がニトロセルロース樹脂である場合、ニトロセルロース樹脂の窒素分は、ニトロセルロース樹脂の全固形分中、10~13質量%であることが好ましく、より好ましくは10.7~12.2質量%である。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0059】
ニトロセルロース樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3,000~40,000、より好ましくは4,000~25,000であることが好ましく、5,000~15,000であることがより好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
ニトロセルロース樹脂の市販品として、例えば、NOBEL社製(DHX3-5、DHX5-10、DHX8-13)が挙げられる。
【0060】
耐ブロッキング性の観点から、表面保護層は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)に加えて、更にポリアミド樹脂、可塑剤、及び/又はアマイドワックスを含有することが好ましい。
【0061】
<包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)、及び平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)の含有量>
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)、及び平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を合わせた総含有量は、包装材100質量%中、0.5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0062】
<ポリアミド樹脂>
本発明の表面保護層は、上述のように、耐ブロッキング性を向上させる観点から、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)に加えて、更にポリアミド樹脂を含有することが好ましい。
ポリアミド樹脂は特に制限されないが、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドであることが好ましく、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物が好適に用いられる。
中でも、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂が好ましく、一級及び二級モノアミンを一部含有するものがより好ましい。
【0063】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸が挙げられる。中でも、ダイマー酸、重合脂肪酸が好適に用いられる。
ポリアミド樹脂は、重合脂肪酸に由来する構造を有することが好ましく、ダイマー酸及び重合脂肪酸に由来する構造を、ポリアミド樹脂中に50質量%以上含有することが好ましい。
ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。重合脂肪酸を使用する場合、不飽和脂肪酸を含む一塩基性脂肪酸あるいは、そのエステル重合によって得られたものが好ましく、炭素数が16~22の不飽和脂肪酸又はそのエステルの重合により得られるものが好ましい。重合脂肪酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
なお、ダイマー酸又は重合脂肪酸を構成する脂肪酸は、大豆油、パーム油、米糠油等天然油に由来するものが好ましく、オレイン酸及びリノール酸がより好ましい。
その他塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0064】
その他アミンとしては、例えば、ポリアミン、一級又は二級モノアミンを挙げることができる。
上記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン;キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンを挙げることができる。
一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂は、接着性、耐ブロッキング性、耐油性、耐熱性の観点から、分子内に水酸基を有することが好ましく、一級又は二級モノアミン成分としてアルカノールアミンを用いることが好ましい。
【0065】
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、ベジケムグリーンシリーズ(築野食品工業社製)、ニューマイドシリーズ(ハリマ化成社製)等を使用することができる。
【0066】
ポリアミド樹脂は、軟化点が80~140℃であることが好ましく、90~120℃であることがより好ましい。軟化点が80℃以上の場合、表面保護層の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを抑制できる。軟化点が140℃以下の場合、表面保護層が柔軟となり、表面保護層と印刷層間の密着性が向上する。
ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂の溶解性の観点から重量平均分子量が2,000~70,000の範囲であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、耐ブロッキング性が向上する。重量平均分子量が50,000以下の場合、オーバーコート剤の粘度を低くすることができ、貯蔵安定性が良好となる。
なお、軟化点はJIS K 2207(環球法)に準拠して測定することができる。
【0067】
表面保護層における、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)とポリアミド樹脂との質量比は、好ましくは99:1~15:85、より好ましくは50:50~15:85、更に好ましくは30:70~15:85である。上記範囲内であると、耐ブロッキング性及び耐水摩擦性に優れる。
【0068】
<その他樹脂>
表面保護層は、本発明の効果を損なわない範囲で、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)及びポリアミド樹脂以外のその他樹脂を含んでもよい。その他樹脂としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-アリルアルコール樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、ダンマル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。
【0069】
<添加剤>
表面保護層は、可塑剤、アマイドワックス、炭化水素ワックス、及びキレート架橋剤等の任意の添加剤を含むことができ、耐ブロッキング性の観点から、可塑剤、及び/又はアマイドワックスを含むことが好ましい。
【0070】
《可塑剤》
本発明の表面保護層は、上述のように、耐ブロッキング性の観点から、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)に加えて、更に可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤としては、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)のほか、表面保護層に含まれるその他樹脂成分との相溶性に優れ、また揮発性の低いものが好適に用いられ、例えば、クエン酸エステル、フタル酸エステル、リン酸エステル、トリメット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、グリコールエーテル及びスルホン酸アミド系、ひまし油より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0071】
クエン酸エステルとしては、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリn-ブチル、クエン酸アセチルトリn-ブチル、アセチルクエン酸-2-エチルヘキシル等のクエン酸アセチルトリアルキルが挙げられる。当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましい。中でも、クエン酸アセチルトリn-ブチル、クエン酸アセチルトリエチル等がより好ましい。
フタル酸エステルとしては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル等のフタル酸ジアルキルが挙げられ、当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましい。中でも、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等がより好ましい。
リン酸エステルとしては、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチル等のリン酸エステルが好適に挙げられ、リン酸トリブチルが好ましい。
トリメット酸エステルとしては、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメット酸トリオクチル、トリメット酸トリイソノニル等のトリメリット酸トリアルキルが挙げられる。当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましい。中でも、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシル等がより好ましい。
脂肪族二塩基酸エステルとしては、脂肪酸ジアルキルエステル好ましく、当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましい。脂肪酸ジアルキルエステルとしては、アジピン酸エステル、セバシン酸エステルが挙げられ、中でも、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシルがより好ましい。
スルホン酸アミド系としては、N-ブチルベンゼンスルフォン酸アミドやN-エチルトルエンスルフォン酸アミド等が好ましい。
また、グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0072】
本発明における表面保護層は、ひまし油、グリコールエーテル、脂肪族二塩基酸エステル及びクエン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の可塑剤を含むことが好ましく、グリコールエーテルがより好ましい。
表面保護層における可塑剤の含有量は、0.1~15質量%であることが好ましく、3~12質量%であることがより好ましく、5~9質量%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が向上する。
【0073】
《アマイドワックス》
本発明の表面保護層は、上述のように、耐ブロッキング性の観点から、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)に加えて、更にアマイドワックスを含有することが好ましい。
アマイドワックスとは脂肪酸アミドであり、脂肪酸残基とアミド基を有するものが好ましい。脂肪酸アミドは印刷後には表面保護層の表面に配向し、滑り性を発現させて耐ブロッキング性を向上させると考えられる。なお本説明は技術的考察に基づくものであり、発明を何ら限定するものではない。
【0074】
脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミドが好適に挙げられ、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0075】
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
融点が50℃~150℃のモノアミドとしては、ラウリン酸アミド(融点87℃)、パルミチン酸アミド(融点100℃)、ステアリン酸アミド(融点101℃)、ベヘン酸アミド(融点110℃)、ヒドロキシステアリン酸アミド(融点107℃)、オレイン酸アミド(融点75℃)、エルカ酸アミド(融点81℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃の置換アミドとしては、N-オレイルパルミチン酸アミド(融点68℃)、N-ステアリルステアリン酸アミド(融点95℃)、N-ステアリルオレイン酸アミド(融点67℃)、N-オレイルステアリン酸アミド(融点74℃)、N-ステアリルエルカ酸アミド(融点69℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃のビスアミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド(融点142℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド(融点135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点110℃)、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド(融点141℃)、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド(融点136℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(融点118℃)、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド(融点113℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃のメチロールアミドとしては、例えば、メチロールステアリン酸アミド(融点110℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃のエステルアミドとしては、例えば、ステアロアミドエチルステアレート(融点82℃)が挙げられる。
中でも、耐ブロッキング性向上の観点から、分子量が200~800のものが好ましい。更に好ましくは250~700である。
【0076】
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であり、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
中でも、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸からなる脂肪酸アミドが好ましく、パルチミン酸アミド、エルカ酸アミド、及びエチレンビスオレイン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸アミドがより好ましく、エチレンビスオレイン酸アミドが特に好ましい。
【0077】
表面保護層に含まれるアマイドワックスの含有量は、好ましくは0.1~22.5質量%であり、より好ましくは0.1~15質量%、更に好ましくは0.1~7.5質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が向上する。
【0078】
《炭化水素ワックス》
表面保護層は、炭化水素ワックスを含むことが好ましい。炭化水素ワックスを含むことで、表面保護層の耐水摩擦性が向上する。
炭化水素ワックスは、硬度(針入度)が0.5~12である炭化水素系ワックス粒子であることが好ましい。炭化水素ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられる。中でもポリエチレンワックスを含む炭化水素系ワックスが好ましい。
オーバーコート剤において、炭化水素系ワックスは液状でも粒子状でも使用することができ、粒子状であることが好ましい。炭化水素系ワックス粒子の平均粒子径は、0.3~10μmであることが好ましく、0.8~7μmであることがより好ましい。当該炭化水素系ワックス粒子の含有量は、表面保護層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%である。
【0079】
《キレート架橋剤》
表面保護層は、キレート架橋剤を含むことが好ましい。キレート架橋剤を含むことで、表面保護層の耐水摩擦性が向上する。キレート架橋剤としては、例えば、チタンキレート、ジルコニウムキレートが挙げられる。チタンキレートとしては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテトナート、チタニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシチタン、チタニウムエチルアセトアセテテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、n-ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)等を挙げることができる。ジルコニウムキレートとしては、ジルコニウムプロピオネート、ジルコニウムアセチルアセテート等が挙げられる。中でも、架橋反応後にアセチルアセトンを発生しないキレート架橋剤が、環境上の観点から好ましい。
【0080】
キレート架橋剤の含有量は、表面保護層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。含有量が0.1質量%以上であると耐熱性、耐油性、耐塩ビブロッキング性が向上し、5質量%以下の場合、オーバーコート剤の貯蔵安定性に優れる。これらのキレート架橋剤を使用することによって、形成された皮膜の耐水摩擦性が向上するという効果を奏する。
【0081】
<オーバーコート剤>
オーバーコート剤は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含み、さらに有機溶剤、及び上述の添加剤を含有してもよい。
【0082】
<有機溶剤>
オーバーコート剤は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン等の炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチル等のエステル系;メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、イソプロパノ-ル(IPA)、ブタノ-ル等のアルコ-ル系;の非芳香族系有機溶剤を使用することができる。有機溶剤は、印刷後の皮膜に残留する溶剤量低減等を考慮して適宜選択すればよく、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤の含有量は、オーバーコート剤100質量%中、30~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが特に好ましい。
【0083】
印刷時の網点再現性を向上させるために、グリコールエーテル系の溶剤を使用するのが好ましい。グリコールエーテル系の溶剤の溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール系エーテル、プロピレングリコール系エーテルが挙げられる。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、より好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテルである。グリコールエーテル系の溶剤は、有機溶剤100質量%中、5~25質量%であることが好ましく、5~15質量%であることが特に好ましい。
<表面保護層の形成>
表面保護層は、ヒートシール層がある面と反対側の紙基材(A)上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。また、ヒートシール層がある面と反対側の紙基材(A)上に印刷層がある場合は、印刷層上に、印刷層がない場合と同様に表面保護層を形成することができる。オーバーコート剤印刷方法としてはフレキソ印刷方式が挙げられ、例えば、オーバーコート剤がグラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで表面保護層を得ることができる。
【0084】
本発明の包装材は、装飾又は美感の付与、内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者の表示等の観点から、更に印刷層を有することが好ましい。また、酸素バリア性の観点から、更に、バリア層を有することが好ましい。
【0085】
[印刷層]
本発明における印刷層は、顔料及びバインダー樹脂を含む層であり、後述する印刷インキを用いて、紙基材(A)のヒートシール層を具備した面とは反対の面に印刷することで形成できる。印刷層は、印刷インキを用いて形成され、印刷方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはグラビア印刷である。印刷層の厚みは、0.1~10μmであることが好ましく、0.3~6μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることが特に好ましい。
本明細書において「印刷層」とは、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が積層した層も含み、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0086】
<顔料>
顔料としては、例えば、有機顔料、無機顔料、体質顔料が挙げられる。
《有機顔料》
有機顔料としては、有機化合物、有機金属錯体が挙げられ、例えば、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系が挙げられる。
また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0087】
有機顔料の色相としては、黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、及び茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。さらには、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0088】
有機顔料の具体例を、カラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0089】
《無機顔料》
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、カオリン、クレー、炭酸マグネシウム等アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0090】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、特に制限されず、印刷インキに使用する公知の樹脂から適宜選択できる。このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、ウレタン樹脂、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、ダンマル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの変性樹脂が挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
印刷層は、バインダー樹脂として平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)を含むことが好ましく、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)と、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むことがより好ましく、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)と、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、及びスチレン-マレイン酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むことが更に好ましく、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)と、ウレタン樹脂とを含むことが特に好ましい。
【0091】
<平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)>
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した(平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’))の項の記載を援用することができる。
また、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)は、紙基材(A)に含まれる平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a1)、あるいは、表面保護層に含まれる平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)と同じものであっても、異なっていてもよい。
【0092】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000のものが好ましく、より好ましくは20,000~80,000である。ガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、より好ましくは-60~0℃、更に好ましくは-40~-5℃である。上記範囲である場合、全光線透過率が良好となる。
また、ウレタン樹脂は、アミン価及び/又は水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’’)との混合時の褐色変化を鑑み、0~10mgKOH/g以下であることが好ましく、0~5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0~3mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。上記範囲であると、全光線透過率が良好となる。
【0093】
上記アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数である。アミン価の測定方法は、下記の通りである。
[アミン価の測定方法]
試料を5~10g精秤(S試料の固形分質量g))する。精秤した試料にトルエン25mL及びn-ブタノール25mLを加え充分溶解させる。これに、メタノール30mLを加え、0.1mol/L塩酸水溶液(力価:f)で電位差滴定を行なう。この時の滴定量(AmL)を用い次の(式1)によりアミン価を求めることができる。
【0094】
(式1)
アミン価=(A×f×0.1×56.108)/S [mgKOH/g]
【0095】
上記水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰のアセチル化試薬にてアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に準拠する。
【0096】
ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール由来の構成単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ウレタン樹脂固形分100質量%中、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更に好ましくは5~80質量%である。上記範囲である場合、全光線透過率が良好となる。
ウレタン樹脂は、限定されるものではないが、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖延長剤としてポリアミンを反応させて得られるウレタン樹脂が挙げられる。
【0097】
上記ポリオールとしては、例えば、各種公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができ、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、飽和又は不飽和の低分子ポリオールと多価カルボン酸あるいはこれらの無水物を脱水縮合又は重合させて得られるポリエステルポリオール;環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記飽和又は不飽和の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールが挙げられる。上記多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランの重合体又は共重合体が挙げられる。
ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールは、いずれも分岐構造を持つものが好ましい。
【0098】
上記ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造を形成していてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0099】
鎖延長剤としてのポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等が挙げられる。また、ポリアミンとして、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン等の、分子内に水酸基を有するポリアミンを用いてもよい。これらの鎖伸長剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、特にイソホロンジアミンが好ましい。
【0100】
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂は特に制限されないが、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドであることが好ましく、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物が好適に用いられる。
中でも、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂が好ましく、一級及び二級モノアミンを一部含有するものがより好ましい。
ポリアミド樹脂及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した<ポリアミド樹脂>の項の記載を援用することができる。
【0101】
<スチレン-マレイン酸共重合樹脂>
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、例えば、スチレンモノマーとマレイン酸モノマーをラジカル共重合させることで得られる。スチレンモノマーとマレイン酸モノマーの固形分質量比率は、スチレンモノマー:マレイン酸モノマー=1:9~6:4であることが好ましく、2:8~5:5であることがより好ましい。
【0102】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、酸価が好ましくは150~300mgKOH/gであり、より好ましくは215~270mgKOH/gである。上記範囲である場合、耐水摩擦性に優れる。なお、酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠する。
【0103】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂のガラス転移温度は、60~125℃が好ましく、70~105℃がより好ましい。重量平均分子量は、6,000~16,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~15,000である。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐水摩擦性に優れる。
【0104】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂の市販品としては、例えば、XIRANシリーズ(川原油化社製)、アラスターシリーズ(荒川化学社製)が挙げられる。
【0105】
<スチレン-アリルアルコール共重合樹脂>
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂は、例えば、スチレンモノマーとアリルアルコールモノマーをラジカル共重合させることで得られる。スチレンモノマーとアリルアルコールモノマーの固形分質量比率は、スチレンモノマー/アリルアルコールモノマー=1/9~6/4であることが好ましく、2/8~5/5であることがより好ましい。
【0106】
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂は、水酸基価が好ましくは150~300mgKOH/gであり、より好ましくは180~250mgKOH/gである。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0107】
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂のガラス転移温度は、40~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。重量平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、2,000~4,000であることがより好ましい。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐水摩擦性に優れる。酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、100~200mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0108】
スチレン-アリルアルコール樹脂の市販品としては、例えば、SAAシリーズ(Iyondellbasell社製)が挙げられる。
【0109】
<アクリル樹脂>
印刷層における、アクリル樹脂としては、上述の[ヒートシール層]で説明した<アクリル樹脂>の項の記載を援用することができる。
印刷層における、アクリル樹脂のガラス転移温度は、40~110℃であることが好ましく、60~90℃がより好ましい。重量平均分子量は、5,000~100,000が好ましく、8,000~40,000がより好ましい。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0110】
印刷層における、アクリル樹脂の市販品としては、例えば、ダイヤナールシリーズ(三菱レイヨン社製)、ACRYDICシリーズ(DIC社製)が挙げられる。
【0111】
印刷層における、セルロース系樹脂(a’’)とセルロース系樹脂(a’’)以外のバインダー樹脂との質量比は、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50、更に好ましくは99:1~80:20である。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキングが良好となる。
【0112】
印刷層に含まれるバインダー樹脂の含有量は、印刷層中、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~60質量%である。上記範囲である場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0113】
<添加剤>
印刷インキ及び印刷層は、本発明の効果を損なわない範囲でさらに、顔料分散剤、イソシアネート系硬化剤、キレート架橋剤、炭化水素ワックス、マット化剤、気相法シリカ、湿式法シリカ、有機処理シリカ、アルミナ処理シリカ等の微粉末シリカ、脂肪酸アマイドワックス、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の添加剤を使用することができる。
【0114】
《顔料分散剤》
顔料分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性等の界面活性剤を使用することができる。
【0115】
《イソシアネート系硬化剤》
イソシアネート系硬化剤としては、ポリイソシアネート及びそれらの変性化合物を利用できる。具体的には、ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体が好適であり、ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;が好適に用いられる。
イソシアネート系硬化剤の市販品としては、例えば、24A-100、22A-75、TPA-100、TSA-100、TSS-100、TAE-100、TKA-100、P301-75E、E402-808、E405-70B、AE700-100、D101、D201、A201H(旭化成社製)、マイテックY260A(三菱化学社製)、コロネート CORONATE HX、コロネート CORONATE HL、コロネート CORONATE L(日本ポリウレタン社製)、デスモデュール N75MPA/X(バイエル社製)が挙げられる。中でも、イソホロンジイソシアネートと、イソホロンジイソシアネートのアダクト体及び/又はイソシアヌレート体が好ましい。
【0116】
《キレート架橋剤》
印刷インキ及び印刷層は、キレート架橋剤を含むことが好ましい。キレート架橋剤としては、上述の[オーバーコート剤]で説明した《キレート架橋剤》の項の記載を援用することができる。
キレート架橋剤の含有量は、印刷層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0117】
《炭化水素ワックス》
印刷インキ及び印刷層は、炭化水素ワックスを含むことが好ましい。炭化水素ワックスを含むことで、紙基材(A)への接着性及び印刷層の耐摩擦性が向上する。炭化水素ワックスとしては、上述の[表面保護層]で説明した《炭化水素ワックス》の項の記載を援用することができる。
印刷インキにおいて、炭化水素系ワックスは液状でも粒子状でも使用することができ、粒子状であることが好ましい。粒子の平均粒子径は、0.3~10μmであることが好ましく、0.8~7μmであることがより好ましい。当該炭化水素系ワックス粒子の含有量は、印刷層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0118】
《可塑剤》
印刷インキ及び印刷層は、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤は、少ない添加量で、有機溶剤の揮発性を促進させ、印刷層に柔軟性を付与し紙基材(A)への密着性を高める役割を有する。可塑剤としては、上述の[表面保護層]で説明した《可塑剤》の項の記載を援用することができる。
本発明における印刷層は、可塑剤として、ひまし油、グリコールエーテル、脂肪族二塩基酸エステル、及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくとも一種の可塑剤を含むことが好ましく、ひまし油がより好ましい。
印刷層中における可塑剤の含有量は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは5~15質量%、更に好ましくは11~15質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0119】
<印刷インキ>
印刷インキは、顔料及びバインダー樹脂を含み、さらに有機溶剤及び任意の添加剤を含有してもよい。印刷インキは、顔料分散性及び作業性の観点から、25℃における粘度が50~1,000mPa・sであることが好ましい。
【0120】
<有機溶剤>
印刷インキにおける、有機溶剤及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した<有機溶剤>の項の記載を援用することができる。
【0121】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材(A)面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0122】
[バリア層]
本発明の包装材は、更に、バリア層を有することが好ましい。包装材がバリア層を有する場合、バリア層は、ヒートシール層と紙基材(A)の間、もしくは紙基材(A)と表面保護層の間に位置することが好ましく、上記包装材が印刷層を含む場合は、紙基材(A)と印刷層の間に位置することも好ましい。バリア層は、真空蒸着法や、スパッタリング法、Tダイキャスト法、バリアコート剤の塗工・乾燥等によって形成することができ、バリア層に含まれる成分として、例えば、シリカ、アルミナ、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、バリアナイロン樹脂(MXD)等が挙げられる。バリア層は、単層構成でも複層構成でもよく、1つの層中に2種以上の化合物を含んでも良い。バリア層の厚さは、酸素バリア性の観点から、10~300nmであることが好ましい。
【0123】
<真空蒸着法>
真空蒸着法は、アルミニウム等の金属を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、又はエレクトロンビーム加熱等により、1200~1500℃、10-1~10-2Pa程度の条件下で蒸着させる方法である。被蒸着物は、真空蒸着前に、表面へのコロナ放電処理等による密着性向上処理を行うことができる。
【0124】
<スパッタリング法>
スパッタリング法は、10-1~10-2Pa程度の条件下で、Ar等の不活性ガスを導入し、電圧負荷することで実施される
<バリアコート剤の塗工・乾燥>
バリアコート剤の塗工・乾燥は、例えば、紙基材(A)面上に、バリアコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでバリア層を得ることができる。
【0125】
上記包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができる。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/紙基材(A)/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材(A)/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(A)/バリア層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(A)/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材(A)/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(A)/バリア層/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(A)/印刷層/バリア層/表面保護層
【0126】
<包装袋>
本発明における包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしたり、2枚以上の包装材をヒートシールしたりすることで包装袋を形成できる。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールすることでも包装袋を形成できる。この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例0127】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0128】
<調整例1>ニトロセルロース樹脂溶液NC1の調整
ニトロセルロースnc1(NOBEL社製、製品名NC DHX 5-10、NV.70%(溶媒:イソプロピルアルコール)、重量平均分子量:10,000、溶液濃度25.0%における粘度:2秒)72部を、酢酸エチル33.6部とイソプロピルアルコール33.6部に混合溶解させて、固形分30%のニトロセルロース樹脂溶液(NC1)を得た。
【0129】
<調整例2~4>ニトロセルロース樹脂溶液NC2~4の調整
以下に記載した原料を使用した以外は調整例1と同様の方法で、ニトロセルロース樹脂溶液NC2~4を得た。なお、nc4は、上述の好ましい粘度範囲(1)~(3)をいずれも満たさない。
・(NC2)ニトロセルロースnc2(NOBEL社製、製品名NC DHX 4-6、NV.70%(溶媒:イソプロピルアルコール)、溶液濃度25.0%における粘度:1.2秒)
・(NC3)ニトロセルロースnc3(NOBEL社製、製品名NC DHX 30-50、NV.70%(溶媒:イソプロピルアルコール)、溶液濃度25.0%における粘度:10秒)
・(NC4)ニトロセルロースnc4(NOBEL社製、製品名NC DHL 120-170、NV.70%(溶媒:イソプロピルアルコール)、溶液濃度12.2%における粘度:20秒、)
【0130】
<調整例5>セルロースアセテートブチレート樹脂溶液CAB1の調整
セルロースアセテートブチレート(EASTMAN CHEMICAL社製、製品名CAB553-0.4、NV.70%(溶媒:イソプロピルアルコール)、ガラス転移温度:136℃、重量平均分子量20,000、溶液濃度25.0%における粘度:5秒)72部を、酢酸エチル33.6部とイソプロピルアルコール33.6部に混合溶解させて、固形分30%のセルロースアセテートブチレート樹脂溶液(CAB1)を得た。
【0131】
<調整例6>ポリアミド樹脂溶液PA1の調整
ポリアミド樹脂pa1(築野食品工業社製、製品名ベジケムグリーン725、NV.100%、軟化点116℃、重量平均分子量8,000)30部、及びイソプロピルアルコール70部を仕込み、窒素気流下に50℃で2時間溶解し、固形分30%のポリアミド樹脂溶液(PA1)を得た。
【0132】
<調整例7>ポリアミド樹脂溶液PA2およびPA3の調整)
以下に記載した原料を使用した以外は調整例4と同様の方法で、固形分30%のポリアミド樹脂溶液PA2及びPA3を得た。
・(PA2)ポリアミド樹脂pa2(ハリマ化成社製、製品名ニューマイド846、NV.100%、軟化点110℃)
・(PA3)ポリアミド樹脂pa3(ハリマ化成社製、製品名ニューマイド872、NV.100%、軟化点112℃)
【0133】
<調整例8>ウレタン樹脂溶液PU1の調整
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリ(1,2-プロピレングリコール)(水酸基価56.1mgKOH/g)257.86部、イソホロンジイソシアネート18.01部、ジフェニルメタンジイソシアネート20.27部、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.03部、酢酸エチル200部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液496.14部を得た。次いでイソホロンジアミン3.86部、イソプロピルアルコール280部、酢酸エチル220部を混合したものを、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液に室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量78,000、アミン価未検出(0.1mgKOH/g未満)のウレタン樹脂溶液(PU1)を得た。
【0134】
<調整例9>塩素化ゴム樹脂溶液CG1の調整
塩素化ゴム樹脂cg1(住化バイエルウレタン社製、製品名ペルグードS20、NV.100%)30部、酢酸エチル70部を仕込み、窒素気流下に50℃で2時間溶解し、固形分30%の塩素化ゴム樹脂溶液(CG1)を得た。
【0135】
<調整例10>ポリエチレン樹脂エマルジョンPE1の調整
フローセンUF80(住友精化製、ポリエチレン、密度:0.919、NV.=100%) 50部に水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量%比率1:1) 50部を添加、撹拌混合してポリエチレン樹脂エマルジョンPE1を得た。
【0136】
<調整例11>ロジン樹脂溶液R1の調整
マルキードNo1(荒川化学社製、マレイン酸ロジン、酸価:25mgKOH/g、重量平均分子量:300、NV.=100%) 50部に酢酸エチル 50部を添加、攪拌混合してロジン樹脂溶液R1を得た。
【0137】
<調整例12>ヒートシール剤HS1の調整
アクリル樹脂エマルジョンAC1(BASF社製 JONCRYL PDX7356、酸価:78mgKOH/g、ガラス転移温度:25℃、NV.=50%) 91.7部、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比率1:1) 8.2部、BYK-024(BYK社製、消泡剤) 0.1部となるように添加、撹拌混合してヒートシール剤HS1を得た。
<調整例13~19>ヒートシール剤HS2~8の調整
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例12と同様の方法で、ヒートシール剤HS2~8を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・アクリル樹脂エマルジョンAC2(BASF社製、JONCRYL PDX-7430、酸価:30mgKOH/g、ガラス転移温度:34℃、NV.=50%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC3(星光PMC社製、PE-1126、酸価:50mgKOH/g、ガラス転移温度:-12℃、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA1(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスMC3800、最低造膜温度:100℃、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA2(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスEC1200,最低造膜温度:80℃、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA3(住友化学社製、スミカフレックス305HQ,最低造膜温度:0℃、NV.=50%)
・ウレタン樹脂溶液PU1(重量平均分子量:38,000、NV.=50%)
・ポリエチレン樹脂エマルジョンPE1(NV.=50%)
【0138】
【0139】
<調整例20>オーバーコート剤V1の製造
ニトロセルロース樹脂溶液NC1を13.5部、ポリアミド樹脂溶液PA1 52.1部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.9部、ヘキサメンレンビスオレイン酸アミド 3部、ポリエチレンワックス 8.3部、酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロパノール混合溶剤(質量比率=1/1/1) 14部、メチルシクロヘキサン/メチルプロピレングリコール混合溶剤(質量比率=1/1) 6.3部、 水 0.9部を攪拌混合し、オーバーコート剤V1を得た。
【0140】
<調整例21~32>オーバーコート剤V2~13の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例20と同様の方法で、オーバーコート剤V2~13を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
【0141】
<比較調整例1及び2>オーバーコート剤V14及び15の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例20と同様の方法で、オーバーコート剤V14及び15を得た。
【0142】
【0143】
<紙基材(A)の製造>
以下製造例にて紙基材(A)の製造方法を示す。
【0144】
<紙基材(A)の樹脂(a)含有量の算出>
得られた紙基材(A)について、以下に示す方法で紙基材の樹脂(a)含有量を算出した。
クラフト紙及び得られた紙基材から、10cm角(100cm2)のサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出して質量測定を行い、5サンプル平均のクラフト紙質量、及び5サンプル平均の紙基材(A)質量をそれぞれ算出し、以下の計算式で紙基材(A)の樹脂(a)含有量を算出した。前記クラフト紙は、浸漬前のクラフト紙である。
(式2)
紙基材(A)の樹脂(a)含有量=(5サンプル平均の紙基材(A)質量)-(5サンプル平均のクラフト紙質量)[mg]
【0145】
<製造例1>紙基材(A)S1の製造
ビスコース液B1(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)にクラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)を1分間浸漬し、ニップロール(テスター産業社製)を用いて100KPaで絞り、次に濃度10質量%の硫酸水溶液に1分浸漬させ、水洗を経て、0.6質量%の水酸化ナトリウムと0.6質量%の硫化ナトリウムとの混合水溶液に1分間浸漬し、最後に水洗、乾燥させることで、紙基材(A)S1を得た。S1から切り出した10cm角サンプル中の樹脂(a)の平均含有量は、24mgであった(紙基材中の樹脂量比率は、30%)。
また、走査型電子顕微鏡(SEM)では、ビスコース液B1由来の樹脂は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂である樹脂の溶液由来であるので、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。
<製造例2及び3>紙基材(A)S2及び3の製造
以下のビスコース液を使用した以外は、製造例1と同様の手順で、紙基材(A)S2及び3をそれぞれ作製した。
・ビスコース液B2(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:200,000、媒体:水)
・ビスコース液B3(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:600,000、媒体:水)
<製造例4>紙基材(A)S4の製造
パラフィン樹脂溶液W1(パラフィン濃度:25質量%、パラフィン融点:50℃、パラフィン重量平均分子量:400、媒体:イソパラフィン)にクラフト紙を1分間浸漬し、ニップロール(テスター産業社製)を用いて100KPaで絞り、乾燥させることで、紙基材(A)S4を得た。
<製造例5~8>紙基材(A)S5~8の製造
R1及び以下のビスコース液を使用した以外は、製造例1と同様の手順で、紙基材(A)S5~8をそれぞれ作製した。
・ビスコース液B4(セルロース濃度:5%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
・ビスコース液B5(セルロース濃度:15%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
・ビスコース液B6(セルロース濃度:40%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
【0146】
S2~8の樹脂(a)含有量を表3に示す。
【0147】
【0148】
<包装材の製造>
以下実施例にて包装材の製造方法を示す。
【0149】
<印刷層の質量の算出>
得られた第一の中間積層体について、以下に示す方法で印刷層の質量を算出した。
得られた第一の中間積層体、及び紙基材(A)から、10cm角(100cm2)のサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出して質量測定を行い、5サンプル平均の第一の中間積層体質量、及び5サンプル平均の紙基材(A)質量をそれぞれ算出し、以下の計算式で印刷層の質量を算出した。
(式3)
印刷層の質量=(5サンプル平均の第一の中間積層体質量)-(5サンプル平均の紙基材(A)質量)[mg]
【0150】
<表面保護層の質量の算出>
得られた第二の中間積層体について、以下に示す方法で表面保護層の質量を算出した。
得られた第二の中間積層体、及び第一の中間積層体から、10cm角(100cm2)のサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出して質量測定を行い、5サンプル平均の第二の中間積層体質量、及び5サンプル平均の第一の中間積層体質量をそれぞれ算出し、以下の計算式で表面保護層の質量を算出した。
(式4)
表面保護層の質量=(5サンプル平均の第二の中間積層体質量)-(5サンプル平均の第一の中間積層体質量)[mg]
【0151】
<包装材中の樹脂(a)比率>
得られた包装材から10cm角(100cm2)のサンプルを5枚切り出して、質量測定を行い、5サンプル平均の包装材質量を算出し、以下の計算式で包装材中の樹脂(a)比率を算出した。なお、(紙基材(A)の樹脂含有量)は上述の<紙基材(A)の樹脂含有量の算出>で算出した値を用いた。
(式5)
包装材中の樹脂(a)比率=(紙基材(A)の樹脂含有量)/(5サンプル平均の包装材質量)[質量%]
【0152】
<実施例1>包装材P1の製造
印刷インキ(エコカラーHR23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)及びオーバーコート剤V1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
次に、紙基材(A)S1に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したエコカラーHR23黄を印刷して印刷層を形成し、紙基材(A)/印刷層の構成である第一の中間積層体p’1を得た。第一の中間積層体p’1から切り出した10cm角サンプルの印刷層の質量は2.6mgであった。
次に、第一の中間積層体p’1の印刷層上に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、オーバーコート剤V1を印刷し、紙基材(A)/印刷層/表面保護層の構成である第二の中間積層体p’’1を得た。第二の中間積層体p’’1から切り出した10cm角サンプルの表面保護層の質量は4.9mgであった。
第二の中間積層体p’’1における、紙基材(A)の印刷層の反対面に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度重ね印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/紙基材(A)/印刷層/表面保護層の構成である包装材P1を得た。包装材P1から切り出した10cm角サンプルの平均質量は、83mgであった。
【0153】
上記印刷インキエコカラーHR23黄が含む樹脂は以下の通りである。
・ニトロセルロース樹脂溶液NC5(重量平均分子量:11,000、溶液濃度25.0%における粘度:3秒)
・ウレタン樹脂溶液PU2(重量平均分子量:50000、ガラス転移温度:-20℃、アミン価未検出(0.1mgKOH/g未満))
なお、上記NC5とPU2の固形分比率は、NC5:PU2=90:10である。
【0154】
<実施例2~33>包装材P2~33の製造
表4に示したヒートシール剤、紙基材(A)、印刷インキ、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~33をそれぞれ作製した。
<比較例1>包装材P34の製造
比較例1では、紙基材(A)にクラフト紙を使用した。前記クラフト紙は樹脂を含まないため、本発明における紙基材(A)の定義に該当しないので、以下紙基材(A’)と表記する。
印刷インキ(エコカラーHR23黄、東洋インキ社製、黄インキ)及びオーバーコート剤V1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比率)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
次に、紙基材(A’)に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したエコカラーHR23黄を印刷して印刷層を形成し、紙基材(A’)/印刷層の構成である第一の中間積層体p’34を得た。第一の中間積層体p’34から切り出した10cm角サンプルの印刷層の質量は2.6mgであった。
次に、第一の中間積層体p’34の印刷層上に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、オーバーコート剤V1を印刷し、紙基材(A’)/印刷層/表面保護層の構成である第二の中間積層体p’’34を得た。第二の中間積層体p’’34から切り出した10cm角サンプルの表面保護層の質量は4.9mgであった。
中間積層体p’’34における、紙基材(A’)の印刷層の反対面に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度重ね印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/紙基材(A’)/印刷層/表面保護層の構成である包装材P’1を得た。
<比較例2~5>包装材P35~38の製造
表5に示したヒートシール剤、紙基材(A)、印刷インキ、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P35~38をそれぞれ作製した。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
[包装材の評価]
実施例1~33、比較例1~5で得られた包装材P1~38について、以下に記載の評価を行った。結果を表4、表5に示す。
【0159】
<全光線透過率>
得られた包装材を20mm角に切り出し、JIS K 7361-1に準拠し、日本電色工業社製、Spectral haze meter SH7000を用いて、上記包装材の表面保護層側から光を入射させて測定し、以下基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.全光線透過率が70%以上。
B.全光線透過率が60%以上、70%未満。
C.全光線透過率が40%以上、60%未満。
D.全光線透過率が40%未満。
【0160】
<酸素バリア性評価>
得られた包装材について、JIS K 7126-2:2006に準拠した方法で酸素透過度測定を行い、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.酸素透過度が100g/m2・24h未満である。
B.酸素透過度が100g/m2・24h以上、1000g/m2・24h未満である。
C.酸素透過度が1000g/m2・24h以上、10000g/m2・24h未満である。
D.酸素透過度が10000g/m2・24h以上である。
【0161】
<耐水摩擦性>
得られた包装材を25mm×150mmの大きさに切り出し、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて、以下基準にて耐水摩擦性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《試験条件》
荷重:200g、往復回数:2回、当紙:カナキン布に水を5滴滴下したもの
《評価基準》
A.印刷層が取られることがなく、原紙の露出面積比率が1%未満であるもの。
B.当紙にわずかにインキが付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が1%以上5%未満であるもの。
C.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が5%以上10%未満であるもの。
D.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がほとんど取られて、原紙の露出面積比率が10%以上であるもの。
【0162】
<耐ブロッキング性評価>
得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、1枚の包装材片のヒートシール層面と、もう1枚の包装材片の表面保護層面を完全に重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重100N/cm2の環境下で圧着した。24時間静置したのち、2枚重ねた包装材同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%である。
B.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%超、10面積%未満である。
C.ヒートシール層面への印刷層の転移量が10面積%以上、30面積%未満である。
D.ヒートシール層面への印刷層の転移量が30面積%以上である。
【0163】
<ヒートシ-ル性評価>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm2、
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、
剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が3.5N以上である。
B.ヒートシール強度が2.5N以上、3.5N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、2.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0164】
上記結果から、比較例1は、紙基材(A)が樹脂を含まないクラフト紙であるため、全光線透過率及び酸素バリア性を満たさなかった。また、比較例2及び3は、表面保護層にそれぞれウレタン樹脂と塩素化ゴム樹脂を含むため、耐水摩擦性を満たさなかった。
一方実施例は、紙基材(A)に樹脂を含み、表面保護層が平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂(a’)を含むため、全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性が良好である。例えば、実施例1は、ヒートシール層がアクリル樹脂を含み、ヒートシール層の膜厚が15μmであり、紙基材(A)に含まれる樹脂が、再生セルロース(重量平均分子量:400,000)であり、紙基材(A)100質量%中の再生セルロース含有量が、33質量%であり、表面保護層がニトロセルロース樹脂(重量平均分子量:10,000、溶液濃度25.0%における粘度:2秒)を含み、表面保護層の膜厚が4μmであるので、優れた全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性を有していた。