(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038141
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】待ち時間推定装置、待ち時間推定方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240312BHJP
【FI】
G06T7/00 660Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220242
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2022508690の分割
【原出願日】2020-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】世古 和希
(72)【発明者】
【氏名】小島 健史
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 稔郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】行列の待ち時間の推定精度を高めるコンピュータプログラム、待ち時間推定方法及び待ち時間推定装置を提供する。
【解決手段】待ち時間推定装置は、行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像から、前記行列に並んでいる人に関する行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報を属性情報として取得する取得部と、前記行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、前記属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整した時間を、前記行列に並んだ場合における待ち時間として推定する推定部と、推定された前記行列の待ち時間を、当該待ち時間を報知する報知装置に向けて出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の体温を取得する処理と、
取得した体温に基づいて、前記人物が並ぶ行列の待ち時間を算出する処理と、
前記待ち時間を出力する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記行列の待ち時間を算出する処理は、前記体温が閾値以上である場合、前記体温が閾値以上でない場合に比べて前記行列の待ち時間を長く算出する処理を含む
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記人物の体温は、赤外線を用いて取得される
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
コンピュータによって、
人物の体温を取得し、
取得した体温に基づいて、前記人物が並ぶ行列の待ち時間を算出し、
前記待ち時間を出力する
待ち時間推定方法。
【請求項5】
前記行列の待ち時間を算出する場合であって前記体温が閾値以上である場合、前記体温が閾値以上でない場合に比べて前記行列の待ち時間を長く算出する
請求項4に記載の待ち時間推定方法。
【請求項6】
前記人物の体温は、赤外線を用いて取得される
請求項4に記載の待ち時間推定方法。
【請求項7】
人物の体温を取得する取得部と、
取得した体温に基づいて、前記人物が並ぶ行列の待ち時間を算出する推定部と、
前記待ち時間を出力する出力部と
を備える待ち時間推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記体温が閾値以上である場合、前記体温が閾値以上でない場合に比べて前記行列の待ち時間を長く算出する
請求項7に記載の待ち時間推定装置。
【請求項9】
前記人物の体温は、赤外線を用いて取得される
請求項7に記載の待ち時間推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行列の待ち時間を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
長蛇の行列は、利用者の不満に繋がる。このため、行列の待ち時間を推定し当該推定した待ち時間の情報を利用者に提示することにより、利用者の不満を和らげる対策が行われる場合がある。
【0003】
特許文献1には、自動取引装置に並んでいる待機顧客の待ち時間を、待機顧客の性別と年齢に基づいて算出する技術が開示されている。特許文献2には、行列の長さを算出し、算出した行列の長さに基づいて行列の待ち時間を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-133372号公報
【特許文献2】特開2007-317052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、行列に並んでいる顧客の年齢と性別の組み合わせに応じて当該顧客が自動取引装置の操作に要する取引時間が算出され、行列に並んでいる顧客たちの取引時間が合算されることにより、行列の待ち時間が算出される。
【0006】
しかしながら、年齢と性別が同じであっても、自動取引装置の操作が早い人と、手間取る人とがいて、取引時間は同じとは限らず、年齢と性別が同じ人たちの取引時間として想定される時間の幅は広い。このため、特許文献1に開示されている技術を用いて算出された行列の待ち時間と、実際の行列の待ち時間との差が大きい場合があることが懸念される。また、特許文献2に関しても同様に、行列の長さが同じでも、実際の行列の待ち時間は同じとは限らず、算出された行列の待ち時間と、実際の行列の待ち時間との差が大きい場合があることが懸念される。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の主な目的は、行列の待ち時間の推定精度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る待ち時間推定装置は、その一態様として、
行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像から、前記行列に並んでいる人に関する行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報を属性情報として取得する取得部と、
前記行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、前記属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整した時間を、前記行列に並んだ場合における待ち時間として推定する推定部と、
推定された前記行列の待ち時間を、当該待ち時間を報知する報知装置に向けて出力する出力部と
を備える。
【0009】
本発明に係る待ち時間報知システムは、その一態様として、
上述したような待ち時間推定装置と、
前記撮影画像を前記待ち時間推定装置に提供する撮影装置と、
前記待ち時間推定装置により推定された前記待ち時間を報知する報知装置と
を備える。
【0010】
本発明に係る待ち時間推定方法は、その一態様として、
行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像から、前記行列に並んでいる人に関する行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報を属性情報として取得し、
前記行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、前記属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整した時間を、前記行列に並んだ場合における待ち時間として推定し、
推定した前記行列の待ち時間を、当該待ち時間を報知する報知装置に向けて出力する。
【0011】
本発明に係るプログラム記憶媒体は、その一態様として、
行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像から、前記行列に並んでいる人に関する行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報を属性情報として取得する処理と、
前記行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、前記属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整した時間を、前記行列に並んだ場合における待ち時間として推定する処理と、
推定した前記行列の待ち時間を、当該待ち時間を報知する報知装置に向けて出力する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、行列の待ち時間の推定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の待ち時間報知システムの構成を説明する図である。
【
図2】第1実施形態の待ち時間報知システムを構成する待ち時間推定装置の機能構成を表すブロック図である。
【
図3】属性情報と調整時間の具体例を表す図である。
【
図4】第1実施形態の待ち時間推定装置の動作例を表すフローチャートである。
【
図5】本発明に係る第2実施形態の待ち時間推定装置の機能を説明する図である。
【
図6】本発明に係る第3実施形態の待ち時間報知システムの構成を説明するブロック図である。
【
図7】第3実施形態における待ち時間推定装置の機能構成を表すブロック図である。
【
図8】第3実施形態の待ち時間推定装置の動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の待ち時間報知システムの構成を説明する図である。第1実施形態の待ち時間報知システム1は、行列7に並んだ場合(行列7の最後尾に付いた場合)における待ち時間を報知するシステムである。第1実施形態では、行列7は、空港における入国審査ゲート(イミグレーション(イミグレ))の審査窓口8に人が並ぶことにより生じる行列を想定している。
【0016】
第1実施形態の待ち時間報知システム1は、待ち時間推定装置3と、撮影装置4と、報知装置5とを備えている。撮影装置4は、例えばビデオカメラであり、可視光による動画を生成し撮影により得られた画像(撮影画像)を出力する機能を備えている。第1実施形態では、撮影装置4は、入国審査ゲートの審査窓口8に生じる行列を撮影する撮影装置である。審査窓口8が1つである場合には、撮影装置4は、当該撮影装置4の視野を考慮しつつ、審査窓口8に生じると想定される行列全体を撮影することができる位置に設置される。審査窓口8が複数並設されている場合には、複数の審査窓口8のそれぞれに対応する複数の撮影装置4が、それぞれ、対応する審査窓口8に生じると想定される行列全体を撮影できる位置に設置される。あるいは、審査窓口8が複数並設されている場合には、並んでいる審査窓口8が複数に区分され各区分に対応する複数の撮影装置4が、対応する区分の審査窓口8に生じると想定される行列全体を撮影できる位置に設置される。あるいは、審査窓口8が複数並設されている場合に、全ての審査窓口8に共通の撮影装置4が、全ての審査窓口8に生じると想定される行列全体を撮影できる位置に設置される。
【0017】
さらに、第1実施形態では、撮影装置4は、行列に並んでいる人を拡大して撮影するためにズーム機能とパン機能とチルト機能を備えている。撮影装置4におけるズームの性能は、待ち時間推定装置3が実行する撮影画像に係る処理を考慮して定められる要件を満たす性能を持つとする。また、撮影装置4におけるパン機能とチルト機能を実現する可動部の可動範囲は、行列に並んでいる人をズーム機能によって予め定められた拡大状態で撮影しつつ、行列の先頭から、想定される行列の最後尾まで撮影範囲を動かすことができる範囲となっている。
【0018】
撮影装置4の撮影動作には、上述したように、行列全体を撮影する全体撮影動作と、行列の先頭から後方に向けて撮影範囲を移動させながら行列に並んでいる人を拡大して撮影する個別撮影動作とがある。このような撮影装置4の撮影動作は、例えば、待ち時間推定装置3により制御される。撮影装置4の撮影動作を制御する場合に用いる情報として、例えば、全体撮影動作を行っている期間と、個別撮影動作を行っている期間とのそれぞれの長さの情報がある。また、撮影装置4の撮影動作を制御する場合に用いる情報として、個別撮影動作を行っている期間における行列の先頭から後方に向かって撮影範囲を動かすという移動撮影の繰り返し回数の情報もある。これらのような撮影制御に利用する情報は、待ち時間推定装置3による撮影画像に係る処理を考慮して適宜に設定される情報である。なお、撮影装置4の撮影動作の制御手法には、様々な手法があり、ここでは、何れの手法を採用してもよく、その説明は省略する。
【0019】
なお、上述した例では、撮影装置4は、行列全体を撮影する機能と、行列に並んでいる人を拡大して撮影する機能とを備えている。これに対し、例えば、装置の性能や、想定される行列の長さによっては、それら両方の機能を1つの撮影装置に持たせることが難しい場合がある。このような場合には、待ち時間報知システム1において、行列全体を撮影する撮影装置と、行列に並んでいる人を拡大して撮影する撮影装置との二種類の撮影装置が設けられてもよい。この場合において、ここでは、それら二種類の撮影装置を区別せずに撮影装置4として記載する。
【0020】
撮影装置4は、待ち時間推定装置3に接続されており、撮影装置4による撮影画像は、待ち時間推定装置3に向けてリアルタイムで出力される。撮影装置4から待ち時間推定装置3に出力される撮影画像には、例えば、撮影時刻の情報と、撮影位置を表す情報(撮影装置4を識別する識別情報など)と、全体撮影動作と個別撮影動作の何れの動作による撮影であるかを表す情報とが関連付けられる。
【0021】
待ち時間推定装置3は、例えばコンピュータ装置(サーバ)により構成され、撮影装置4から撮影画像を受信すると、当該撮影画像を利用して、行列の待ち時間を推定する機能を備える。
図2は、待ち時間推定装置3の機能構成を表すブロック図である。待ち時間推定装置3は、演算装置10と、記憶装置11とを備えている。記憶装置11は、データやコンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)12を記憶する記憶媒体である。記憶媒体には様々な種類があり、記憶装置11は、何れの記憶媒体により構成されてもよい。また、待ち時間推定装置3には、複数種の記憶媒体が備えられていてもよく、この場合には、複数種の記憶媒体をまとめて記憶装置11として表すこととする。記憶装置11の構成および動作の説明は省略する。
【0022】
演算装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを備えている。プロセッサは、記憶装置11に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、当該プログラムに基づいた様々な機能を持つことができる。例えば、第1実施形態では、演算装置10は、検知部21と、標準時間算出部22と、取得部23と、推定部24と、出力部25という機能部を有している。
【0023】
検知部21は、行列の全体が撮影されている撮影画像から、行列と、その行列に並んでいる人数あるいは当該人数に応じた値を検知人数として検知する機能を備える。審査窓口8が複数並設されている場合であって複数の行列が生じている場合には、検知部21は、それぞれの行列と、行列のそれぞれについての検知人数とを検知する。検知人数としての、人数に応じた値としては、例えば、画像において行列が占める占有面積(あるいは画素数)が挙げられる。
【0024】
検知部21の上述したような検知動作は、予め設定された時間間隔毎に実行される。なお、撮影画像から、行列を検知する手法や、行列に並んでいる検知人数(人数あるいは人数に応じた値)を検知する手法は、ここでは、限定されない。それら検知手法は、例えば、行列が生じる場所(撮影画像に映る背景)や、撮影画像の解像度などの様々な事項を考慮して適宜設定されるものであり、その説明は省略する。
【0025】
検知部21により検知された行列の検知人数の情報には、例えば、当該情報を検知した撮影画像を識別する情報(画像識別情報(例えば撮影時刻の情報やフレーム画像の番号))と、行列を識別する情報(行列識別情報)とが関連付けられる。行列を識別する情報としては、例えば、行列の元である審査窓口8を識別する情報が利用される。
【0026】
標準時間算出部22は、検知部21により検知される検知人数と、記憶装置11に予め格納されている標準時間データとを利用して、行列に並んだ場合(行列の最後尾に付いた場合)における標準の待ち時間を標準待ち時間として算出する機能を備えている。標準時間データとは、検知人数の人が並んでいる行列に並んだ場合における標準待ち時間を表すデータであり、検知人数と、標準待ち時間とが関連付けられているデータである。例えば、行列に並んでいる人の数(検知人数)が8人であった場合に、標準待ち時間が32分であるとすると、標準時間データには、検知人数『8人』(あるいは8人に応じた値)と、標準待ち時間『32分』とが関連付けられているデータが含まれている。標準時間データは、例えば、検知人数の人が並んでいる行列に並んだ場合における実際の待ち時間のデータを多数取得し、当該データに基づいて生成されたデータである。
【0027】
標準時間算出部22により算出された標準待ち時間の情報には、算出に利用した検知人数の情報に関連付けられている情報、つまり、画像識別情報と行列識別情報が関連付けられる。
【0028】
取得部23は、行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像(第1実施形態では、撮影装置4の個別撮影動作により撮影された撮影画像)から、行列に並んでいる人を検知する機能を備えている。この機能により検知された人を識別する情報には、当該情報を検知した撮影画像を識別する情報(画像識別情報)と、検知された人が並んでいる行列の識別情報(行列識別情報)とが関連付けられる。
【0029】
さらに、取得部23は、行列に並んでいる人たちのそれぞれについての属性情報を取得する機能を備えている。ここでの属性情報とは、行列に並んでいる人の特徴を表す情報のうち、審査窓口8での応対に要する時間に関係する特徴を表す情報である。例えば、高齢になると、審査窓口8での応対に要する時間が長くなる傾向があるというように、年齢は、審査窓口8での応対に要する時間に関係があると想定されることから、年齢は、属性情報の1つと考えられる。また、キョロキョロし不安げな表情である場合には、入国審査に不慣れであることが考えられ、このように不慣れな人は、審査窓口8での入国審査に要する時間が長くなる傾向にある。このことにより、行動の内容と、表情とは、それぞれ、審査窓口8での応対に要する時間に関係があると想定されることから、行動の内容と、表情とは、それぞれ、属性情報と考えられる。
【0030】
また、杖や、ベビーカーを所持している人は、審査窓口8での応対に要する時間が長くなる傾向があるというように、行列に並んでいる人の付属物は、審査窓口8での応対に要する時間に関係があると想定されることから、付属物も、属性情報の1つと考えられる。さらに、家族連れや、学校の修学旅行などの集団である場合には、審査窓口8での応対に要する一人当たりの時間が短くなる傾向があり、行列に並んでいる人が集団を構成している人か否かの情報も、属性情報の1つと考えられる。
【0031】
上述したように、取得部23が撮影装置4による撮影画像から取得する属性情報には複数種の情報が考えられ、行列における先頭からの並び順の進み具合に関係する適宜な情報が属性情報として設定される。ただ、ここでの属性情報は、行列に並んでいる人の行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報が含まれる。また、行列に並んでいる全ての人に関して、属性情報が取得されるとは限らない。
【0032】
また、撮影画像から人の顔の表情を検知する手法や、人の付属物を検知する手法や、人の行動の内容を検知する手法や、集団であるか否かを判別する手法というような、取得部23が属性情報を撮影画像から取得する手法は、ここでは、限定されず、その説明は省略する。
【0033】
取得部23により取得された属性情報は、当該属性情報に対応する人を識別する情報に関連付けられる。つまり、画像識別情報と、行列を識別する情報(審査窓口8を識別する情報)と、行列に並んでいる人たちを識別する情報とが関連付けられているデータにおける人を識別する情報に、取得部23により取得された属性情報が関連付けられる。
【0034】
さらに、
図2の点線に表されているような赤外線カメラ6が、例えば、撮影装置4と同様に設置されていてもよく、取得部23は、赤外線カメラ6による撮影画像から、行列に並んでいる人の属性情報を取得する機能をも備えていてもよい。つまり、赤外線カメラ6は、待ち時間を推定する対象の行列に並んでいる人を赤外線により撮影し赤外線画像を撮影画像として出力する機能を備えている。赤外線カメラ6による赤外線画像には、人が発する熱の情報が含まれる。赤外線カメラ6は待ち時間推定装置3に接続されており、赤外線カメラ6による赤外線画像は、待ち時間推定装置3に出力される。
【0035】
そのように、待ち時間推定装置3が赤外線画像を受信する場合には、取得部23は、赤外線画像に映っている人のうち、予め定められた体温(例えば37.5度)以上の熱を発している人を検知する機能を備える。そのような発熱している人を赤外線画像から例えば赤外線の周波数を利用して検知する手法は、限定されず、ここでは、その説明は省略する。
【0036】
取得部23は、上述したような発熱している人を検知した場合には、発熱していることを表す情報を属性情報として、取得する機能を備える。
【0037】
図3には、取得部23により取得される属性情報の具体例が表されている。なお、
図3における属性情報『ESTA(Electronic System for Travel Authorization (電子渡航認証システム))手続き機に立ち寄ったにも関わらず、ESTA未申請者用行列に並んでいる』は、米国の入国審査ゲートに関わる属性情報の具体例である。また、属性情報『指名手配犯』は、指名手配犯であることを表す情報であり、この属性情報を取得する場合には、待ち時間推定装置3は、例えば警察庁から指名手配犯の顔写真のデータを例えば定期的に取得して更新する機能を持つ。さらに、取得部23は、行列に並んでいる人の特徴を抽出し、抽出した顔の特徴を、指名手配犯の顔写真から抽出した顔の特徴に照合することにより、行列に並んでいる人が指名手配犯であるか否かを判断する機能を持つ。さらにまた、取得部23は、指名手配犯を検知した場合には、指名手配犯であると検知した人の識別情報に、属性情報『指名手配犯』を関連付けるだけでなく、予め定められた通報装置に、指名手配犯を検知したことを通報する機能を持つ。通報装置としては、空港内を監視している監視員が利用する監視装置(デスクトップ型コンピュータ装置や、携帯端末など)を通報装置として機能させる例が挙げられる。
【0038】
なお、取得部23の取得動作には休止期間があってもよい。例えば、検知部21による検知結果の情報を利用して、行列が殆ど発生していない,あるいは、行列が短いと判断された場合には、取得部23は、取得動作を休止してもよい。このように、取得部23を休止させることにより、待ち時間推定装置(サーバ)3の負荷を軽減することができる。
【0039】
推定部24は、行列に並んだ場合における標準待ち時間から、属性情報に基づき算出した調整時間を利用して変更した時間を、行列に並んだ場合における待ち時間として推定する機能を備えている。例えば、推定部24は、取得部23によって撮影画像から属性情報が取得されると、その属性情報を、
図3に表されているような属性情報と調整時間の情報とが関連付けられている調整時間データに照合する。つまり、行列に並んでいる人の属性によって審査窓口8での応対に要する時間が異なると想定されることから、行列の待ち時間を推定する精度を高めるためには、行列に並んでいる人の属性に応じた時間を利用して標準待ち時間を変更することが好ましい。このことを考慮し、ここでは、行列に並んでいる人の属性に応じた時間を利用して標準待ち時間を変更することとする。調整時間とは、その標準待ち時間の変更に利用する時間であり、行列に並んでいる人の属性に応じて予め設定される時間である。
【0040】
推定部24は、属性情報を調整時間データに照合することにより、属性情報に関連付けられている調整時間の情報を取得する。推定部24は、同じ行列に関連する属性情報が複数有る場合には、それぞれの属性情報に関連付けられている調整時間の情報を調整時間データから取得する。また、推定部24は、属性情報の取得に利用した撮影画像の撮影時刻を含む予め定められた時間範囲内で撮影された行列全体が撮影されている撮影画像の一つを利用した検知部21と標準時間算出部22による標準待ち時間の情報を取得する。
【0041】
さらに、推定部24は、取得した標準待ち時間に調整時間を加算することにより得られた時間を行列の待ち時間として推定する。具体的には、例えば、標準待ち時間として『32分』が算出され、調整時間として『-1分』が取得された場合には、推定部24は、標準待ち時間『32分』に調整時間『-1分』を加算して得られた『31分』を行列の待ち時間として推定する。なお、同じ行列に関する調整時間が複数有る場合には、それら全ての調整時間が標準待ち時間に加算される。
【0042】
出力部25は、推定部24により推定された行列の待ち時間の情報を報知装置5に向けて出力する機能を備える。
【0043】
報知装置5は、待ち時間推定装置3により推定された行列の待ち時間を報知する装置である。報知装置5は、例えば、ディスプレイ装置であり、行列に並ぶ人が見えやすい位置に設置される。複数の行列が発生することが想定される場合には、それら行列のそれぞれに対応する複数の報知装置5が設置されてもよいし、それら行列の待ち時間の情報を一括表示する報知装置5が設置されてもよい。また、行列の待ち時間の情報を聴覚的に報知する例えばスピーカも報知装置5とし設置してもよい。
【0044】
以下に、待ち時間推定装置3における行列の待ち時間の推定および通知に係る動作の一例を
図4のフローチャートを利用して説明する。
【0045】
例えば、待ち時間推定装置3は、撮影装置4から、全体撮影動作による撮影画像を受信する(ステップS101)。演算装置10の検知部21が、その撮影画像から、行列に並んでいる人数あるいは当該人数に応じた値を検知人数として検知する(ステップS102)。そして、標準時間算出部22が、検知人数に対応する行列の標準待ち時間を算出する(ステップS103)。
【0046】
一方、全体撮影動作による撮影画像に引き続いて、個別撮影動作による撮影画像を撮影装置4から待ち時間推定装置3が受信すると、演算装置10の取得部23が、行列に並んでいる人に関する属性情報を取得する(ステップS104)。さらに、推定部24は、属性情報に関連付けられている調整時間の情報を調整時間データから取得する(ステップS105)。さらに、推定部24は、取得した調整時間と、標準時間算出部22による行列の標準待ち時間とを加算することにより、標準待ち時間を調整した時間を行列の待ち時間として推定する(ステップS106)。
【0047】
然る後に、出力部25が、推定された待ち時間を報知装置5に向けて出力する(ステップS107)。上述したようなステップS101からステップS107までの一連の動作は、予め設定されたタイミングで(例えば、予め設定された時間間隔毎に)繰り返し実行される。
【0048】
第1実施形態の待ち時間報知システム1および待ち時間推定装置3は上述したような構成を備えている。つまり、待ち時間推定装置3は、行列に並んでいる人の数(人数)あるいはそれに応じた値である検知人数を利用した標準の待ち時間を、並んでいる人の属性情報に応じた調整時間で調整し、調整した時間を行列の待ち時間として出力している。その待ち時間の調整に利用される人の属性情報として、行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報が含まれている。それら行動の内容や、付属物の種類や、表情や、集団であるか否かは、行列の元になっている事柄に関わる人の動きの早さの推定に有効な情報である。このような情報を属性情報として取得し、当該属性情報に応じた調整時間で標準待ち時間を調整して待ち時間を推定することは、行列の検知人数に基づいて単に待ち時間を推定する場合に比べて、待ち時間の推定精度を高めることができる。
【0049】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の待ち時間報知システムおよび待ち時間推定装置を構成する構成要素と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0050】
第2実施形態の待ち時間報知システムは、第1実施形態の待ち時間報知システム1の構成に加えて、行列の待ち時間の情報を携帯端末にも通知可能にする構成を備えている。すなわち、第2実施形態の待ち時間報知システム1においては、
図5に表されるように、待ち時間推定装置3の演算装置10は、配信部26を備える。なお、
図5では、待ち時間推定装置3において、
図2に表されている記憶装置11と、演算装置10の検知部21と標準時間算出部22と取得部23との図示が省略されている。
【0051】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、推定部24による行列の待ち時間の情報は、出力部25から、報知装置5に出力される。
【0052】
一方、配信部26は、推定部24による行列の待ち時間の情報を、携帯端末15に向けて配信する機能を備える。携帯端末15は、例えば、行列を整備するサポート要員が所持する端末であり、情報を報知するディスプレイ装置とスピーカを備えている。
【0053】
また、配信部26は、そのような行列の待ち時間の情報を待ち時間推定装置3から受信し当該受信した情報を表示画面等に出力させる機能を携帯端末15に持たせるためのアプリケーション(アプリ)18を配信する機能を備える。配信部26から情報が配信される携帯端末15は、その配信部26からのアプリ18がインストールされている端末である。つまり、携帯端末15は、CPU等のプロセッサを含む演算装置16と、記憶装置17とを備え、記憶装置17に記憶されているアプリ18を演算装置16が実行することにより、配信部26からの行列の待ち時間の情報を受信し当該受信した情報を報知する。
【0054】
第2実施形態の待ち時間報知システム1は、第1実施形態の待ち時間報知システム1と同様の構成を備えるので、第1実施形態の待ち時間報知システム1と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態の待ち時間報知システム1は、携帯端末15にも行列の待ち時間の情報を配信する構成を備えているので、携帯端末15からも行列の待ち時間の情報を報知でき、これにより、当該システムの利便性を高めることができる。
【0055】
また、第2実施形態の待ち時間報知システム1では、複数の行列が生じる場所において、行列を整備するサポート要員が、携帯端末15を利用して行列のそれぞれの待ち時間を知ることが可能となる。これにより、複数の行列の待ち時間が同様となるように、サポート要員が行列に並ぶ人あるいは並んでいる人を誘導することが容易となる。複数の行列の待ち時間が同様となることによって、複数の行列の待ち時間にばらつきある場合に比べて、行列に並んでいる人の不満が緩和されることが想定される。
【0056】
なお、第2実施形態では、配信部26は、推定部24による行列の待ち時間の情報を携帯端末15に配信している。これに加えて、待ち時間推定装置3は、サポートを必要としている人が行列に並んでいることを携帯端末15から報知させる構成をさらに備えていてもよい。すなわち、ここでは、行列に並んでいる人の属性情報として、サポートが必要と想定される人の特徴を表す属性情報(例えば高齢、付属物が車いすや杖)がサポート要の属性情報として設定される。取得部23は、行列に並んでいる人の属性情報として、サポート要の属性情報を取得した場合には、そのサポート要の属性情報と、当該属性情報に対応する人を識別する情報と、行列を識別する情報とを関連付ける。配信部26は、それら関連付けられた情報を携帯端末15に向けて出力する。携帯端末15では、アプリ18に基づいた演算装置16によって、サポートが必要な人の情報が報知される。
【0057】
なお、第1と第2の実施形態では、行列は、入国審査ゲートの審査窓口に生じる行列であるとして、待ち時間報知システムおよび待ち時間推定装置の構成および動作について説明しているが、行列は、入国審査ゲートの審査窓口に生じる行列に限定されない。つまり、第1と第2の実施形態における待ち時間報知システムおよび待ち時間推定装置は、入国審査ゲートの審査窓口に生じる行列以外の行列に関しても、その待ち時間の推定や報知に適用可能である。また、例えば、行列を整備するサポート要員などによって計数された行列の人数に基づき行列に並んだ場合における標準の待ち時間を算出する装置が、待ち時間推定装置とは別にある場合には、待ち時間推定装置は、その装置から標準の待ち時間を取得してもよい。この場合には、待ち時間推定装置は、検知部と標準時間算出部を省略してもよい。また、待ち時間推定装置は、その取得した標準の待ち時間の情報を、取得部により撮影画像から取得された属性情報を利用して調整することにより、行列の待ち時間を推定する。
【0058】
また、第1と第2の実施形態では、撮影装置4は、審査窓口8に生じると想定される行列全体を撮影できるように設置され、行列に並んでいる人を拡大して撮影するためにズーム機能等を備えている装置である。これに代えて、例えば、複数の撮影装置4が、審査窓口8に生じると想定される1つの行列における互いに異なる箇所を撮影するように設置され、当該複数の撮影装置4によって行列全体が撮影される構成としてもよい。この場合には、待ち時間推定装置3は、1つの行列における互いに異なる箇所を撮影する複数の撮影装置4からそれぞれ出力される撮影画像を合成することにより、行列全体が撮影されている撮影画像を得る機能を備える。また、検知部21は、そのように合成により得られた行列全体の撮影画像から、行列と、その行列に並んでいる人数あるいは当該人数に応じた値を検知人数として検知する。さらに、取得部23は、そのような合成による撮影画像から、行列に並んでいる人を検知し、さらに、その検知した人の属性情報を取得する。上述したように、1つの行列における互いに異なる箇所を複数の撮影装置4により撮影する構成とすることにより、それら撮影装置4は、ズーム機能を持たなくとも、行列に並んでいる人の表情などの属性情報を取得できる程度に人を明瞭に撮影できる。また、このような構成は、1つの撮影装置4が行列全体を撮影できないと想定される場合にも有効である。
【0059】
<第3実施形態>
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0060】
図6は、第3実施形態の待ち時間報知システムの構成を表すブロック図である。待ち時間報知システム30は、行列に並んだ場合(行列の最後尾に付いた場合)における待ち時間を推定し当該推定した待ち時間を報知するシステムである。待ち時間報知システム30は,撮影装置31と、待ち時間推定装置32と、報知装置33とを備えている。
【0061】
撮影装置31は、待ち時間を推定する対象の行列に並んでいる人を撮影できる位置に設置され、その行列に並んでいる人を撮影し、当該人が撮影されている撮影画像を出力する機能を備えている。撮影装置31の一具体例としては、ビデオカメラを挙げることができる。
【0062】
待ち時間推定装置32は、例えば、コンピュータ装置により構成される。
図7は、待ち時間推定装置32の機能構成の一例を表すブロック図である。待ち時間推定装置32は、機能部として、取得部35と、推定部36と、出力部37とを備えている。
【0063】
取得部35は、撮影装置31から受信した撮影画像から、行列に並んでいる人に関する行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報を属性情報として取得する機能を備える。
【0064】
推定部36は、行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整した時間を、行列に並んだ場合における待ち時間として推定する機能を備える。
【0065】
出力部37は、推定された行列の待ち時間を、報知装置33に向けて出力する機能を備える。
【0066】
報知装置33は、待ち時間推定装置32により推定された行列の待ち時間の情報を報知する装置である。報知装置33は、例えば、これから行列に並ぼうとしている人に向けて報知できる位置に設置される。報知装置33は、例えば、待ち時間を視覚的に報知するディスプレイ装置、あるいは、聴覚的に報知するスピーカにより構成される。
【0067】
第3実施形態の待ち時間報知システムおよび待ち時間推定装置は上述したように構成されている。次に、待ち時間推定装置32における待ち時間の推定および出力に係る動作の一例を
図8を利用して説明する。
【0068】
例えば、待ち時間推定装置32が撮影装置31から、行列に並んでいる人が撮影されている撮影画像を受信すると、取得部35は、その撮影画像から、行列に並んでいる人に関する属性情報を取得する(ステップS301)。属性情報には、行列に並んでいる人の行動の内容と、付属物の種類と、表情と、集団を構成しているか否かの情報とのうちの少なくとも1つの情報が含まれる。
【0069】
その後、推定部36が、行列に並んだ場合における標準の待ち時間を、属性情報に基づき設定されている調整時間を利用して調整する(ステップS302)。推定部36は、その調整した時間を行列の待ち時間として推定する(ステップS303)。出力部37は、推定された待ち時間の情報を報知装置33に向けて出力する(ステップS304)。
【0070】
第3実施形態の待ち時間報知システム30と待ち時間推定装置32は、第1と第2の実施形態と同様に、標準の待ち時間を、行列に並んでいる人の属性情報に基づいて設定されている調整時間を利用して調整し、調整後の時間を行列の待ち時間として推定している。これにより、第3実施形態の待ち時間報知システム30および待ち時間推定装置32は、第1や第2の実施形態と同様に、行列の待ち時間の推定精度の向上を図ることができる。
【0071】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1,30 待ち時間報知システム
3,32 待ち時間推定装置
4,31 撮影装置
5,33 報知装置
21 検知部
22 標準時間算出部
23,35 取得部
24,36 推定部
25,37 出力部