(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038153
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】セルスタック装置、モジュール、モジュール収容装置および導電部材
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20240312BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240312BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/0206
H01M8/0215
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220535
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2022503730の分割
【原出願日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2020034268
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和輝
(72)【発明者】
【氏名】小材 剛史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲朗
(57)【要約】
【課題】性能の低下を低減することができるセルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置を提供する。
【解決手段】セルスタック装置は、少なくとも1つのセルと、少なくとも1つの導電部材とを備える。セルは、素子部を有する。導電部材は、クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、基材と第1層との界面に位置する亜鉛スピネル部とを有する。第1層は、素子部に面する第1領域を有する。第1領域と基材との間の第1界面に位置する亜鉛スピネル部が第1界面と重なる第1面積率は、第1層の表面が酸化雰囲気に露出する第2領域と基材層との間の第2界面に位置する亜鉛スピネル部が第2界面と重なる第2面積率よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子部を有する少なくとも1つのセルと、
クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と前記第1層との界面に位置し、Alを含む亜鉛スピネル部とを有する少なくとも1つの導電部材と
を備え、
前記第1層は、前記素子部に面する第1領域を有し、
前記第1領域と前記基材との間の第1界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第1界面と重なる第1面積率は、前記第1層の表面が酸化雰囲気に露出する第2領域と前記基材との間の第2界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第2界面と重なる第2面積率よりも小さい
セルスタック装置。
【請求項2】
前記第1面積率は、10面積%以上50面積%以下である
請求項1に記載のセルスタック装置。
【請求項3】
前記基材は、酸化クロムを含み、前記第1層との間に位置する第2層を備える
請求項1または2に記載のセルスタック装置。
【請求項4】
前記導電部材は、空気流入口に近い第1部位と、空気流出口に近い第2部位とを有し、
前記界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記界面と重なる面積率は、前記第2部位の方が前記第1部位よりも大きい
請求項1~3のいずれか1つに記載のセルスタック装置。
【請求項5】
前記導電部材は、空気流入口に近い第1部位と、空気流出口に近い第2部位とを有し、
前記界面に位置する前記亜鉛スピネル部の前記界面と交差する方向の厚さは、前記第2部位の方が前記第1部位よりも大きい
請求項1~3のいずれか1つに記載のセルスタック装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【請求項8】
クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と前記第1層との界面に位置し、Alを含む亜鉛スピネル部とを有し、
前記第1層は、第1領域および第2領域を有し、
前記第1領域と前記基材との間の第1界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第1界面と重なる第1面積率は、前記第2領域と前記基材との間の第2界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第2界面と重なる第2面積率よりも小さい
導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セルスタック装置、モジュール、モジュール収容装置および導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数有する燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの1種である。
【0003】
かかる燃料電池セルスタック装置では、複数のセルがたとえばCrを含有する合金からなる集電部材によりそれぞれ電気的に直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
実施形態の一態様に係るセルスタック装置は、少なくとも1つのセルと、少なくとも1つの導電部材とを備える。セルは、素子部を有する。導電部材は、クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と前記第1層との界面に位置する亜鉛スピネル部とを有する。前記第1層は、前記素子部に面する第1領域を有する。前記第1領域と前記基材との間の第1界面に位置する亜鉛スピネル部が前記第1界面と重なる第1面積率は、前記第1層の表面が酸化雰囲気に露出する第2領域と前記基材との間の第2界面に位置する亜鉛スピネル部が前記第2界面と重なる第2面積率よりも小さい。
【0006】
また、本開示のモジュールは、上記に記載のセルスタック装置と、前記セルスタック装置を収納する収納容器とを備える。
【0007】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、前記モジュールの運転を行うための補機と、前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備える。
【0008】
また、本開示の導電部材は、クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と第1層との界面に位置する亜鉛スピネル部とを有する。前記第1層は、第1領域および第2領域を有する。前記第1領域と前記基材との間の第1界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第1界面と重なる第1面積率は、前記第2領域と前記基材との間の第2界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記第2界面と重なる第2面積率よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係るセルの一例を示す横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係るセルの一例を空気極側からみた側面図である。
【
図1C】
図1Cは、実施形態に係るセルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る導電部材の一例を示す横断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る導電部材の一例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例1に係るセルを示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例1に係る導電部材の拡大断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例2に係る平板型セルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するセルスタック装置、モジュール、モジュール収容装置および導電部材の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0011】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
<セルの構成>
まず、
図1A~
図1Cを参照しながら、実施形態に係るセルスタック装置を構成するセルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
【0013】
図1Aは、実施形態に係るセル1の一例を示す横断面図であり、
図1Bは、実施形態に係るセル1の一例を空気極5側からみた側面図であり、
図1Cは、実施形態に係るセル1の一例をインターコネクタ6側からみた側面図である。なお、
図1A~
図1Cは、セル1の各構成の一部を拡大して示している。
【0014】
図1A~
図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは1mm~5mmである。
【0015】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、発電素子と、インターコネクタ6とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0016】
発電素子は、支持基板2の平坦面n1上に設けられている。かかる発電素子は、燃料極3と、固体電解質層4と、空気極5とを有している。また、
図1Aに示す例では、平坦面n2上にインターコネクタ6が設けられている。
【0017】
また、
図1Bに示すように、空気極5はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層4のみが表面に露出している。また、
図1Cに示すように、インターコネクタ6がセル1の下端まで延びている。セル1の下端部では、インターコネクタ6および固体電解質層4が表面に露出している。なお、
図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層4が露出している。
【0018】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0019】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。
図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aに流れる燃料ガスを燃料極3まで透過させる。支持基板2は導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、発電素子で生じた電気をインターコネクタ6に集電する集電体でもある。
【0020】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。たとえば、鉄族金属成分はNi(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば特定の希土類元素酸化物であってもよい。
【0021】
燃料極3の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極3は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物としては、たとえば、Y2O3などが用いられる。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含む。
【0022】
固体電解質層4は、電解質であり、燃料極3と空気極5との間のイオンの橋渡しをする。同時に、固体電解質層4は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0023】
固体電解質層4の材料は、たとえば、3モル%~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2であってもよい。この希土類元素酸化物としては、たとえば、Y2O3などが用いられる。なお、上記特性を有する限りにおいては、固体電解質層4の材料に他の材料などを用いてもよい。
【0024】
空気極5の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極5の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物などの導電性セラミックスであってもよい。
【0025】
空気極5の材料は、たとえば、AサイトにSrとLaが共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0026】
また、空気極5は、ガス透過性を有している。空気極5の開気孔率は、たとえば20%以上、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0027】
インターコネクタ6の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)などを用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされない。
【0028】
また、インターコネクタ6は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ6は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0029】
<セルスタック装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係るセルスタック装置10について、
図2A~
図2Cを参照しながら説明する。
図2Aは、実施形態に係るセルスタック装置10の一例を示す斜視図であり、
図2Bは、
図2Aに示すX-X線の断面図であり、
図2Cは、実施形態に係るセルスタック装置10の一例を示す上面図である。
【0030】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(
図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。なお、セルスタック11は、セル1を1つ以上有していればよい。セル1を1つだけ有する場合も、便宜的にセルスタック11、セルスタック装置10と呼ぶ。
【0031】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、金属製であり導電性を有している。
【0032】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0033】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0034】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(
図10参照)で生成される。
【0035】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0036】
図2Aに示す例は、2列のセルスタック11、2つの支持体15、およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11は、複数のセル1をそれぞれ有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
【0037】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(
図1A参照)の長さよりも大きい。
【0038】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部には、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0039】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0040】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO2-CaO系、MgO-B2O3系、La2O3-B2O3-MgO系、La2O3-B2O3-ZnO系、SiO2-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO2-MgO系の材料を用いてもよい。
【0041】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極3と他方のセル1の空気極5とを電気的に直列に接続する。より具体的には、隣接する一方のセル1の燃料極3と電気的に接続されたインターコネクタ6と、他方のセル1の空気極5とを接続している。なお、隣接するセル1に接続された導電部材18の詳細については、後述する。
【0042】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、
図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0043】
また、
図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0044】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0045】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0046】
<導電部材の詳細>
つづいて、実施形態に係る導電部材18の詳細について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る導電部材の一例を示す横断面図である。
【0047】
図3に示すように、導電部材18は、隣接する一方のセル1に接合される接合部18aと、他方のセル1に接合される接合部18bとを有する。また、導電部材18は、幅方向Wの両端に接続部18cを有しており、接合部18a,18bを接続する。これにより、導電部材18は、厚み方向Tに隣り合うセル1同士を接続することができる。なお、
図3では、セル1の形状を単純化して図示している。
【0048】
また、接合部18a,18bは、セル1と向かい合う第1面181と、接合部18b,18aと向かい合う第2面182とを有している。以下、
図4を参照して、導電部材18についてさらに説明する。
【0049】
図4は、
図3に示す領域Aの拡大図である。導電部材18(接合部18a)は、接合材50を介してセル1の素子部と接合されてもよい。素子部は、上記した発電素子、集電体およびインターコネクタ6を含む。
図4に示すように、接合材50は、第1面181の接触面181aとセル1の素子部との間に位置しており、導電部材18とセル1の素子部とを接合してもよい。接合材50は、導電性および耐熱性を有しており、導電部材18を介したセル1間の導通が適切に行われる。接合材50は、たとえば、インターコネクタ6に接着される接着剤である。また、接合材50は、たとえば、セル1の空気極5に接合される接合材であってもよい。なお、素子部は、接合材50を含んでもよい。
【0050】
導電部材18は、基材42と、被覆層43a,43bと、亜鉛スピネル部48とを有している。基材42は、導電性および耐熱性を有する。基材42は、クロムを含有する。基材42は、たとえば、ステンレス鋼である。基材42は、たとえば、金属酸化物を含有してもよい。
【0051】
また、基材42は、積層構造を有してもよい。
図4に示す例では、基材42は、基材層40と、中間層41a,41bとを有する。中間層41a,41bは、たとえば、酸化クロム(Cr
2O
3)を含有する。中間層41a,41bは、第2層の一例である。このように基材42と被覆層43a,43bとの間に中間層41a,41bを位置させることにより、導電部材18の耐久性が高まる。なお、基材42は、中間層41a,41bを有さなくてもよい。また、基材42は、さらなる積層構造を有してもよい。
【0052】
被覆層43a,43bは、基材42を被覆する。被覆層43aは、基材42とセル1との間、すなわち導電部材18の第1面181側に位置している。被覆層43bは、基材42を挟んで被覆層43aと反対側、すなわち導電部材18の第2面182側に位置している。被覆層43a,43bは、第1層の一例である。
【0053】
被覆層43a,43bは、亜鉛を含む酸化物を含有する。亜鉛を含む酸化物は、たとえば、ZnCr2O4である。被覆層43a,43bは、たとえば、ZnMnCoO4であってもよい。また、被覆層43a,43bは、その他の元素、たとえばFe、Co、Alを含有してもよい。
【0054】
また、被覆層43aは、領域431,432を有する。領域431は、セル1の素子部に面している部分である。より詳しくは、領域431は、第1面181のうち、接合材50に接触する接触面181aと、基材42と被覆層43aとの界面44のうち、接触面181aと略平行な界面441との間の部分である。領域432は、第1面181のうち、たとえば空気など、酸化雰囲気に露出する露出面181bと、界面44のうち、露出面181bと略平行な界面442との間の部分である。領域431は、第1領域の一例である。領域432は、第2領域の一例である。第1領域は、セル1または接合材50と電気的に接触する領域といってもよい。
【0055】
亜鉛スピネル部48は、基材42と被覆層43a,43bとの界面44,45に位置している。「界面44,45に位置する」とは、界面44,45に沿った断面に亜鉛スピネル部48が存在することをいう。亜鉛スピネル部48は、基材42側に位置していてもよく、被覆層43a,43b側に位置していてもよい。また、亜鉛スピネル部48は、界面44,45を挟んで基材42および被覆層43a,43bの両方に跨るように位置していてもよい。
【0056】
亜鉛スピネル部48は、ZnAl2O4を含有する。亜鉛スピネル部48は、Al2O3を含有してもよい。亜鉛スピネル部48を界面44,45に位置させることにより、基材42に含まれるCrの拡散が低減する。一方、亜鉛スピネル部48の含有量が増加すると、導電部材18としての電気抵抗が増大し、電池性能が低下する。
【0057】
そこで、実施形態では、導電部材18が接合材50を介してセル1に接する、すなわち、導電部材18がセル1の素子部に面することでCrが拡散しにくい領域に位置する亜鉛スピネル部48が界面44,45と重なる面積率を、酸化雰囲気に曝されてCrが拡散しやすい領域に位置する亜鉛スピネル部48が界面44,45と重なる面積率よりも小さくすることとした。たとえば、実施形態では、亜鉛スピネル部48が界面441と重なる面積率は、亜鉛スピネル部48が界面442と重なる面積率よりも小さい。界面441は、第1界面の一例である。界面442は、第2界面の一例である。
【0058】
これにより、亜鉛スピネル部48の存在に伴う電気抵抗の増大を抑えることができる。したがって、実施形態によれば、導電部材18の性能を高めることができることから、セルスタック装置10の電池性能の低下を低減することができる。
【0059】
ここで、亜鉛スピネル部48が界面441,442と重なる面積率は、以下のようにして算出することができる。まず、導電部材18の断面を研磨し、HAADF-STEM(High-Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)(日本電子製:JEM-ARM200F)およびEDS(エネルギー分散型X線分光)を用いて、界面44およびその近傍の元素分析を行う。元素分析によりZn(亜鉛)とAl(アルミニウム)が同時に検出された部位にZnAl2O4が存在するとみなす。さらに、界面44およびその近傍のAl元素マッピングを、倍率:3000倍、加速電圧:200kV、最大輝度:100で行い、Al元素マッピング像を得る。次に、ヒューリンクス社製解析ソフトIgorを用いて256階調でAl元素マッピング像におけるAlの検出強度を算出する。強度の閾値を60として、強度が60以上の部分を亜鉛スピネル部48とみなし、その有無を判定する。以上の処理を、所定範囲において複数回繰り返し、平均することにより、亜鉛スピネル部48が界面441および界面442と重なる面積率を算出することができる。
【0060】
なお、界面441に位置する亜鉛スピネル部48が界面441と重なる面積率(第1面積率)は、たとえば、10面積%以上50面積%以下としてもよい。これにより、電気抵抗の増大を抑えることができる。
【0061】
一方、界面442に位置する亜鉛スピネル部48が界面442と重なる面積率(第2面積率)は、たとえば、50面積%以上としてもよく、100面積%であってもよい。ただし、第2面積率は、第1面積率よりも大きな値であれば特に制限されるものではない。
【0062】
また、亜鉛スピネル部48が界面45と重なる面積率も、上記した界面44における亜鉛スピネル部48の面積率と同様に測定、算出することができる。界面45におけるかかる面積率は、第1面積率よりも大きい。これにより、第2面182側からのCrの拡散を低減することができる。このため、セルスタック装置10の電池性能の低下を低減することができる。界面45におけるかかる面積率は、第2面積率の一例である。なお、界面442および界面45における面積率は、互いに同じであってもよく、異なってもよい。
【0063】
なお、上記では、導電部材18の接合部18aを例に挙げて説明したが、接合部18bも同様であり、詳細な説明は省略する。
【0064】
また、
図4では、領域431および領域432は、接触面181aと露出面181bとの境界部181cを境に区分されたが、これに限らず、たとえば領域431と領域432との間に中間領域(不図示)を有してもよい。かかる場合、中間領域に位置する界面44では、たとえば、界面441と同じ面積率の亜鉛スピネル部48を位置させてもよく、また、界面442と同じ面積率の亜鉛スピネル部48を位置させてもよい。さらに、中間領域に位置する界面44では、たとえば、界面441,442の中間に位置する面積率の亜鉛スピネル部48を位置させてもよい。
【0065】
また、上記では、導電部材18は被覆層43a、中間層41a、基材層40、中間層41bおよび被覆層43bを有する積層構造であるとして説明したが、これに限らない。たとえば、中間層41a,41bは、基材層40の周囲を連続して覆う中間層41であってもよい。また、被覆層43a,43bは、基材42の周囲を連続して覆う被覆層43であってもよい。以下では、中間層41および被覆層43を有する導電部材18について、
図5、
図6を参照して、さらに説明する。
【0066】
図5は、
図3に示すB-B線に沿った断面図である。
図6は、
図5に示す領域Cの拡大図である。
【0067】
導電部材18は、セル1の長さ方向Lに延在している。
図5に示すように、導電部材18の接合部18a,18bは、セル1の長さ方向Lに沿って互い違いに複数位置している。導電部材18は、接合部18a,18bのそれぞれでセル1と接触している。
【0068】
また、
図6に示すように、導電部材18(接合部18b)は、接合材50を介してセル1と接合されている。接合材50は、導電部材18の第1面181とセル1との間に位置しており、導電部材18とセル1とを接合する。
【0069】
導電部材18は、基材42と、被覆層43と、亜鉛スピネル部48とを有している。また、基材42は、基材層40と、中間層41とを有する。
【0070】
被覆層43は、セル1の厚み方向Tおよび長さ方向Lの全体にわたって基材42を被覆する。被覆層43は、第1層の一例である。
【0071】
また、被覆層43は、領域431~領域434を有する。領域431は、セル1の素子部に面している部分である。より詳しくは、領域431は、第1面181と、基材42と被覆層43との界面44のうち、第1面181と基材42との間に位置する界面441との間の部分である。領域432~領域434は、第2面182~第4面184と、界面44のうち、第2面182~第4面184と基材42との間にそれぞれ位置する界面442~界面444との間の部分である。
【0072】
亜鉛スピネル部48は、界面44、すなわち界面441~界面444にそれぞれ位置している。ここで、実施形態では、亜鉛スピネル部48が第1界面としての界面441と重なる面積率は、第2界面としての界面442~界面444と重なる面積率よりも小さい。
【0073】
これにより、亜鉛スピネル部48の存在に伴う電気抵抗の増大を抑えることができる。したがって、実施形態によれば、導電部材18の性能を高めることができることから、セルスタック装置10の電池性能の低下を低減することができる。
【0074】
なお、界面441に位置する亜鉛スピネル部48が界面441と重なる面積率は、たとえば、10面積%以上50面積%以下としてもよい。これにより、電気抵抗の増大を抑えることができる。
【0075】
一方、界面442~界面444に位置する亜鉛スピネル部48が界面442~界面444とそれぞれ重なる面積率は、たとえば、50面積%以上としてもよく、100面積%であってもよい。ただし、かかる面積率は、界面441と重なる亜鉛スピネル部48の面積率よりも大きな値であれば特に制限されるものではない。なお、かかる面積率は、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0076】
なお、上記では、導電部材18の接合部18bを例に挙げて説明したが、接合部18aも同様であり、詳細な説明は省略する。
【0077】
図7は、実施形態に係る導電部材の一例を示す平面図である。
図7に示すように、導電部材18は、セル1の長さ方向Lに延在している。導電部材18は、空気流入口(不図示)に近い第1部位S1と、空気流出口に近い第2部位S2とを有している。
【0078】
ここで、界面44(
図6参照)に位置する亜鉛スピネル部48(
図6参照)が界面44と重なる面積率は、第2部位S2の方が第1部位S1よりも大きくてもよい。
【0079】
空気流入口と比較して高温になりやすい空気流出口側では、空気流入口側と比較して電流が大きくなりやすい。このため、第2部位S2における亜鉛スピネル部48が界面44と重なる面積率を、第1部位S1よりも大きくすることにより、たとえば、電流の偏りを小さくすることができる。
【0080】
また、界面44(
図6参照)に位置する亜鉛スピネル部48(
図6参照)の界面44と交差する方向の厚さは、第2部位S2の方が第1部位S1よりも大きくてもよい。
【0081】
空気流入口と比較して高温になりやすい空気流出口側では、空気流入口側と比較してCrが蒸発しやすい。このため、第2部位S2における亜鉛スピネル部48の厚さを、第1部位S1よりも大きくすることにより、たとえば、Crの蒸発に伴う不具合を小さくすることができる。
【0082】
ここで、セル1の長さ方向Lに位置する導電部材18の全長hに対し、第1部位S1の長さh1と第2部位S2の長さh2との比(h1:h2)は、たとえば、1:5~5:1とすることができる。
【0083】
なお、導電部材18は、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1と、端部集電部材17との間に介在して、最も外側に位置するセル1と端部集電部材17とを電気的に接続してもよい。その場合、上記の説明における隣接するセル1のうち、たとえば「他方のセル1」を「端部集電部材17」と読み替え、「セル1の素子部に面している部分」を「端部集電部材17に面している部分」と読み替えればよい。
【0084】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本開示の実施形態に係るモジュール100について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図であり、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0085】
図8に示すように、モジュール100は、収納容器101内に、セルスタック装置10を収納して構成される。また、セルスタック装置10の上方には、セル1に供給する燃料ガスを生成するための改質器102が配置されている。
【0086】
かかる改質器102では、天然ガス、灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成し、セル1に供給する。原燃料は、原燃料供給管103を通じて改質器102に供給される。なお、改質器102は、水を気化させる気化部102aと、改質部102bとを備えていてもよい。改質部102bは、図示しない改質触媒を備えており、原燃料を燃料ガスに改質する。このような改質器102は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる。
【0087】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20、ガスタンク16、および固定部材12を通じて、セル1のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。
【0088】
また、上述の構成のモジュール100においては、ガスの燃焼およびセル1の発電に伴い、通常発電時におけるモジュール100内の温度は500℃~1000℃程度となる。
【0089】
このようなモジュール100においては、上述したように、電池性能の低下を低減するセルスタック装置10を収納して構成されることにより、電池性能の低下を低減するモジュール100とすることができる。
【0090】
<モジュール収容装置>
図9は、実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケース111と、
図8で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補器は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補器は、外装ケース111内に収容されている。なお、
図9においては一部構成を省略して示している。
【0091】
図9に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、
図9では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0092】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0093】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、電池性能の低下を低減するモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、電池性能の低下を低減するモジュール収容装置110とすることができる。
【0094】
<各種変形例>
つづいて、実施形態の各種変形例に係る端部集電部材について、
図10~
図13を参照しながら説明する。
【0095】
上述の実施形態では、支持基板の表面に燃料極、固体電解質層および空気極を含む素子部が1つのみ設けられた所謂「縦縞型」を例示したが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う素子部の間が電気的に接続されたいわゆる「横縞型」のセルを積層した横縞型セルスタック装置に適用することができる。
【0096】
また、本実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。また、後述するように、いわゆる「平板型」のセルを厚み方向に積層した平板型セルスタック装置に適用することもできる。
【0097】
また、上記実施形態では、支持基板上に燃料極が設けられ、空気極がセルの表面に配置された例を示したが、これとは逆の配置、すなわち支持基板上に空気極が設けられ、燃料極がセルの表面に配置されたセルスタック装置に適用することもできる。
【0098】
また、上記実施形態では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。
【0099】
図10は、実施形態の変形例1に係るセルを示す断面図である。
図11は、実施形態の変形例1に係る導電部材の拡大断面図である。
図10に示すように、セル1Aは、燃料ガスを流通させる配管73から複数の支持基板71が長さ方向Lに延びている。支持基板71の内部には、配管73からのガスが流れるガス流路74が設けられている。各セル1Aは、導電部材78を介して互いに電気的に接続されている。導電部材78は、各セル1Aがそれぞれ有する素子部の間に位置しており、隣り合うセル1Aを電気的に接続している。具体的には、隣り合うセル1Aのうち一方のセル1Aの素子部の空気極と電気的に接続された集電体またはインターコネクタと、他方のセル1Aの燃料極と電気的に接続された集電体またはインターコネクタとを接続している。
【0100】
図11に示すように、導電部材78は、接合材50a,50bを介して互いに隣り合うセル1Aの素子部とそれぞれ接合されている。接合材50aは、導電部材78の面781aと一方のセル1Aとの間に位置しており、導電部材78とセル1Aとを接合する。接合材50bは、導電部材78の面781bと他方のセル1Aとの間に位置しており、導電部材78とセル1Aとを接合する。導電部材78は、例えば
図10、
図11における断面がU字状、N字状などの形状を有してもよい。
【0101】
導電部材78は、基材82と、被覆層83と、亜鉛スピネル部88とを有している。また、基材82は、基材層80と、第2層としての中間層81とを有する。導電部材78を構成する各部位は、たとえば、先に述べた導電部材18と同様の材料で構成することができる。また、導電部材78は、導電部材18とは異なる材料で構成されてもよい。
【0102】
被覆層83は、セル1Aの配列方向および長さ方向Lの全体にわたって基材82を被覆する。被覆層83は、第1層の一例である。
【0103】
また、被覆層83は、領域831a,831b,833,834を有する。領域831a,831bはそれぞれ、互いに異なるセル1Aの素子部に面している部分である。より詳しくは、領域831aは、基材82と被覆層83との界面84のうち、面781aと基材82との間に位置する界面841と、面781aとの間の部分である。領域831bは、界面84のうち、面781bと基材82との間に位置する界面842と、面781bの間の部分である。領域833,834は、界面84のうち、面783,784と基材82との間にそれぞれ位置する界面843,844と、面783,784との間の部分である。
【0104】
亜鉛スピネル部88は、界面84、すなわち界面841~界面844にそれぞれ位置している。
【0105】
被覆層83の面783,784は、酸化雰囲気に露出している。一方、面781a,781bは、接合材50a,50bを介してセル1Aに接しており、Crが拡散しにくい。ここで、実施形態では、亜鉛スピネル部88が第1界面としての界面841,842と重なる面積率は、第2界面としての界面843,844と重なる面積率よりも小さい。
【0106】
これにより、亜鉛スピネル部88の存在に伴う電気抵抗の増大を抑えることができる。したがって、実施形態によれば、導電部材78の性能を高めることができることから、セルスタック装置10Aの電池性能の低下を低減することができる。
【0107】
なお、界面841,842に位置する亜鉛スピネル部88が界面841,842とそれぞれ重なる面積率は、たとえば、10面積%以上50面積%以下としてもよい。これにより、電気抵抗の増大を抑えることができる。なお、界面841,842における各面積率は、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0108】
一方、界面843,844に位置する亜鉛スピネル部88が界面843,844とそれぞれ重なる面積率は、たとえば、50面積%以上としてもよく、100面積%であってもよい。ただし、かかる面積率は、界面841,842と重なる亜鉛スピネル部88の面積率よりも大きな値であれば特に制限されるものではない。なお、界面843,844における各面積率は、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0109】
図12は、実施形態の変形例2に係る平板型セルを示す斜視図である。
図13は、
図12に示す平板型セルの部分断面図である。
【0110】
図12に示すように、セル1Bは、燃料極3、固体電解質層4および空気極5が積層された素子部90を有している。複数の平板型セルを積層させたセルスタック装置は、たとえば複数のセル1Bが、互いに隣り合う金属層である導電部材91,92により電気的に接続されている。導電部材91,92は、隣接するセル1B同士を電気的に接続するとともに、燃料極3または空気極5にガスを供給するガス流路を有している。
【0111】
図13に示すように、本変形例では、導電部材92は、空気極5にガスを供給するガス流路99を有している。導電部材92は、接合材50cを介して素子部90(空気極5)と接合されている。なお、導電部材92は、接合材50cを介さず直接素子部90(空気極5)と接触していてもよい。
【0112】
導電部材92は、基材95と、被覆層96と、亜鉛スピネル部98とを有している。また、基材95は、基材層93と、第2層としての中間層94とを有する。導電部材92を構成する各部位は、たとえば、先に述べた導電部材18,78と同様の材料で構成することができる。また、導電部材92は、導電部材18,78とは異なる材料で構成されてもよい。
【0113】
被覆層96は、ガス流路99と向かい合う全体にわたって基材95を被覆する。被覆層96は、第1層の一例である。
【0114】
亜鉛スピネル部98は、基材95と被覆層96との界面97に位置している。界面97のうち、被覆層96が接合材50cを介して素子部90に面する領域(第1領域)に位置する界面973では、界面973と重なる亜鉛スピネル部98の面積率が、被覆層96が空気の流れるガス流路99に面する領域(第2領域)に位置する界面971,972において界面971,972と重なる亜鉛スピネル部98の面積率よりも小さい。なお、導電部材92が、接合材50cを介さず直接素子部90(空気極5)と接触する場合、被覆層96が素子部90(空気極5)に接触する領域を第1領域とする。
【0115】
これにより、亜鉛スピネル部98の存在に伴う電気抵抗の増大を抑えることができる。したがって、実施形態によれば、導電部材92の性能を高めることができることから、セル1Bを積層させたセルスタック装置の電池性能の低下を低減することができる。
【0116】
なお、界面973に位置する亜鉛スピネル部98が界面973と重なる面積率は、たとえば、10面積%以上50面積%以下としてもよい。これにより、電気抵抗の増大を抑えることができる。
【0117】
一方、界面971,972に位置する亜鉛スピネル部98が界面971,972とそれぞれ重なる面積率は、たとえば、50面積%以上としてもよく、100面積%であってもよい。ただし、かかる面積率は、界面973と重なる亜鉛スピネル部98の面積率よりも大きな値であれば特に制限されるものではない。なお、界面971,972における各面積率は、それぞれ同じであってもよく、異なってもよい。
【0118】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0119】
以上のように、実施形態に係るセルスタック装置10は、少なくとも1つのセル1と、少なくとも1つの導電部材18とを備える。セル1は、素子部を有する。導電部材18は、クロムを含有する基材42と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層(被覆層43)と、基材42と第1層との界面44に位置する亜鉛スピネル部48とを有する。第1層は、素子部に面する第1領域(領域431)を有する。第1領域と基材42との間の第1界面(界面441)に位置する亜鉛スピネル部48が第1界面と重なる第1面積率は、第1層の表面が酸化雰囲気に露出する第2領域(領域432)と基材42との間の第2界面(界面442)に位置する亜鉛スピネル部48が第2界面と重なる第2面積率よりも小さい。これにより、セルスタック装置10の電池性能の低下を低減することができる。
【0120】
また、実施形態に係るモジュール100は、上記に記載のセルスタック装置10と、セルスタック装置10を収納する収納容器101とを備える。これにより、電池性能の低下を低減するモジュール100とすることができる。
【0121】
また、実施形態に係るモジュール収容装置110は、上記に記載のモジュール100と、モジュール100の運転を行うための補機と、モジュール100および補機を収容する外装ケース111とを備える。これにより。電池性能の低下を低減するモジュール収容装置110とすることができる。
【0122】
また、実施形態に係る導電部材18は、クロムを含有する基材42と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層(被覆層43)と、基材42と第1層との界面44に位置する亜鉛スピネル部48とを有する。第1層は、第1領域(領域431)および第2領域(領域432)を有する。第1領域と基材42との間の第1界面(界面441)に位置する亜鉛スピネル部48が第1界面と重なる第1面積率は、第2領域と基材42との間の第2界面(界面442)に位置する亜鉛スピネル部48が第2界面と重なる第2面積率よりも小さい。これにより、導電部材18の性能低下を低減することができる。
【0123】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 セル
10 セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 導電部材
100 モジュール
110 モジュール収容装置
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子部を有する少なくとも1つのセルと、
クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と前記第1層との界面に位置し、Alを含む亜鉛スピネル部とを有する少なくとも1つの導電部材と
を備えるセルスタック装置。
【請求項2】
前記基材は、前記第1層との間に、酸化クロムを含む第2層を備える
請求項1に記載のセルスタック装置。
【請求項3】
前記導電部材は、空気流入口に近い第1部位と、空気流出口に近い第2部位とを有し、
前記界面に位置する前記亜鉛スピネル部が前記界面と重なる面積率は、前記第2部位の方が前記第1部位よりも大きい
請求項1または2に記載のセルスタック装置。
【請求項4】
前記導電部材は、空気流入口に近い第1部位と、空気流出口に近い第2部位とを有し、
前記界面に位置する前記亜鉛スピネル部の前記界面と交差する方向の厚さは、前記第2部位の方が前記第1部位よりも大きい
請求項1または2に記載のセルスタック装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【請求項7】
クロムを含有する基材と、亜鉛を含む酸化物を含有する第1層と、前記基材と前記第1層との界面に位置し、Alを含む亜鉛スピネル部とを有する
導電部材。