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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038180
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液晶セル及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20240312BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240312BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02B5/30
C09K11/06
C09K11/06 625
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221707
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2019217363の分割
【原出願日】2019-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山口 留美子
(72)【発明者】
【氏名】森田 陵太郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 典明
(57)【要約】
【課題】本発明は、紫外域においても高いコントラストを示す液晶セル及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも一方が透明電極膜を有し、互いに対向配置された一対の基板と、前記一対の基板の間に配設された液晶層と、を備える液晶セルであって、前記液晶層に含まれる液晶が、365nmにおいて0.05以上0.50以下の複屈折率Δn365を有し、前記液晶層の厚さが1μm以上15μm以下であり、紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に対向配置した状態で、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、前記測定用偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有することを特徴とする、液晶セル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明電極膜を有し、互いに対向配置された一対の基板と、前記一対の基板の間に配設された液晶層と、を備える液晶セルであって、
前記液晶層に含まれる液晶が、365nmにおいて0.05以上0.50以下の複屈折率Δn365を有し、
前記液晶層の厚さが1μm以上15μm以下であり、
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に対向配置した状態で、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有することを特徴とする、液晶セル。
【請求項2】
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で、300nm以上400nm以下の範囲における各波長の透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、紫外域で99%以上の偏光度を有する、請求項1に記載の液晶セル。
【請求項3】
電圧印加時の電圧が4Vであって、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下を満たす、請求項1に記載の液晶セル。
【請求項4】
前記液晶層が、下記式(I)の関係式を満たす、請求項1乃至3までのいずれか1項に記載の液晶セル。
【数1】
(式(I)中、uは、√3、√15、√35、√63又は√99のいずれかであり、Δn365は、365nmにおける液晶の複屈折率を示し、dは、液晶層の厚さ(m)を表す。)
【請求項5】
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板を前記液晶セルの外側に対向配置した状態で、380nm以上780nm以下の範囲における各波長の透過率を測定することにより算出された視感度補正単体透過率Ysが、50%以上であり、
前記測定用偏光板が、紫外域で99%以上の偏光度を有する、請求項1乃至4までのいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項6】
前記液晶が、下記式(II)の関係式を満たす、請求項1乃至5までのいずれか1項に記載の液晶セル。
【数2】
(式(II)中、Δn365は365nmにおける液晶の複屈折率を示し、Δn640は640nmにおける液晶の複屈折率を示す。)
【請求項7】
請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶セルと、紫外域に偏光機能を有する一対の偏光板と、を備え、
前記一対の偏光板のそれぞれが、365nmにおいて70%以上の偏光度を有し、各吸収軸を直交に配置した状態で測定することにより得られる365nmにおける直交透過率Tcが、0%以上10%以下であり、前記一対の偏光板が、前記液晶セルの外側に互いに対向配置されている、液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶セルと、紫外域に偏光機能を有する偏光板と、365nmの光が照射されて可視域の偏光を発光する偏光発光板と、を備え、
前記偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有し、
前記偏光板が、前記一対の基板の一方の外側に配置され、
前記偏光発光板が、前記一対の基板の他方の外側に配置されている、液晶表示装置。
【請求項9】
前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、
前記偏光発光板に365nmにおける偏光した光を入射した時、最も低い透過率を示す軸の透過率が、0%以上10%以下である、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、かつ、
前記偏光発光板が、365nmにおける偏光した光の入射時に透過率が10%以上99%以下である軸と、0%以上5%以下である軸と、を有する、請求項8又は9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記偏光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記偏光発光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、請求項8乃至11までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶セルと、400nm以上700nm以下の範囲において50%以下の単体透過率Tsを有する可視域用偏光板と、を備え、
前記可視域用偏光板が、前記液晶セルの少なくとも一方の外側に配置されている、液晶表示装置。
【請求項14】
前記可視域用偏光板が、400nm以上700nm以下の範囲において99%以上の偏光度を有する、請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
電圧無印加又は電圧印加によって、365nmにおける透過率が40%以上100%以下を示す透過型と、0%以上10%以下を示す非透過型と、に制御可能である請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶セル。
【請求項19】
請求項18に記載の液晶セルを備える液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶セル及び液晶表示装置に関し、詳細には、紫外域において高いコントラストを示す液晶表示装置を提供できる液晶セル及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の代表例の1つである液晶表示装置(LCD)は、薄型で軽量、低消費電力であるため年々その用途が広がっている。液晶表示装置の基本的な構造は、バックライトと呼ばれる光源と、一方向の光のみを通過させる2枚の偏光板と、この2枚の偏光板の間に配設され、液晶材が封止された液晶セルが設けられた構成を成している。
【0003】
液晶表示装置の表示モードの1つに、ツイステットネマチック(TN)型の液晶セルを有する液晶表示装置が知られている。このような液晶表示装置には、視野角の拡大等の光学特性を向上させるため、上記の基本的な構造に加え、液晶セルと偏光板との間に更なる光学部材を配置させることもできる。
【0004】
特許文献1には、TN型の液晶セルと、液晶セルの外側に配置された一対の偏光板と、液晶セルと各偏光板との間に配置された第1及び第2位相差板とを備える液晶表示装置が開示されている。特許文献2には、複屈折効果型の液晶セルと、液晶セルの外側に配置された一対の偏光板と、一対の偏光板間に配置された位相板とを備えるカラー液晶表示装置が開示されている。特許文献3には、TN型の液晶セルと、液晶セルの外側に配置された一対の偏光板と、液晶セルと各偏光板との間に配置された少なくとも1枚の光学補償シートを備える液晶表示装置が開示されている。特許文献4には、液晶セルの両面を、偏光膜とそれを挟む2枚の偏光板保護フィルムとからなる、視認側から第1および第2の偏光板で挟まれた構造を有するTN方式液晶表示装置が開示されている。
【0005】
また、カラーフィルタが用いられる液晶表示装置においては、カラーフィルタの色毎に液晶層の厚さが異なる、いわゆるマルチギャップ構造の液晶セルを備える液晶表示装置が知られている。特許文献5には、カラーフィルタと所定のマルチギャップ構造を有する液晶層とを含む液晶セルと、液晶セルの少なくとも一方の側に配置された偏光板とを備えるTNモード液晶表示装置が開示されている。
【0006】
このように、特許文献1~5のいずれにおいても、TN型の液晶セルを有する液晶表示装置の設計について開示されているものの、TN型の液晶セルは、可視域の光を利用した液晶セルを用いて設計されており、紫外域の光を利用した液晶セルの設計については検討されていない。
【0007】
紫外域の光を利用した液晶ディスプレイとして、紫外線発光ダイオード(LED)を使用した蛍光液晶ディスプレイが知られている。このような蛍光液晶ディスプレイとして、非特許文献1には、液晶セル中に蛍光色素を加え、液晶の配向により発光させる方法が開示されている。非特許文献1に開示されている液晶ディスプレイは、液晶セル中に含まれる蛍光色素を発光させるためのディスプレイであるため、液晶セルの設計は蛍光色素を配向することができれば特に問題はない。一方で、近年の液晶表示装置においては、より高い性能が要求されており、特に高いコントラストを有することが好ましい。非特許文献1には、紫外域の表示コントラスト等について言及されていない。そのため、紫外域の光を利用した高いコントラストを示す液晶表示装置の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-167707号公報
【特許文献2】特開平6-175125号公報
【特許文献3】特開2007-171815号公報
【特許文献4】国際公開公報第2008/075538号
【特許文献5】特開2010-107941号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IDW98、P25-28、R.YAMAGUCHI et al.
【非特許文献2】液晶学会誌第6巻、第3号、2002年 297ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、紫外域においても高いコントラストを示す液晶セル及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、365nmの波長において所定の複屈折率を有する液晶を含む液晶セルにおいて、セルギャップ(液晶層の厚さ)、さらには、紫外域に偏光機能を有する一対の偏光板を液晶セルの外側に対向配置した状態で測定した365nmにおける電圧印加時の透過率と電圧無印加時の透過率において、これらの透過率の差が、紫外域における液晶セルのコントラストに対して影響を及ぼすとの知見を得た。そして、当該知見に基づき、液晶層の厚さ及び365nmにおける電圧印加の有無に基づく透過率の差の範囲を制御することにより、紫外域で高いコントラストを示す液晶セル及び液晶表示装置が得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1] 少なくとも一方が透明電極膜を有し、互いに対向配置された一対の基板と、前記一対の基板の間に配設された液晶層と、を備える液晶セルであって、
前記液晶層に含まれる液晶が、365nmにおいて0.05以上0.50以下の複屈折率Δn365を有し、
前記液晶層の厚さが1μm以上15μm以下であり、
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に対向配置した状態で、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有することを特徴とする、液晶セル。
[2] 紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で、300nm以上400nm以下の範囲における各波長の透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、紫外域で99%以上の偏光度を有する、上記[1]に記載の液晶セル。
[3] 電圧印加時の電圧が4Vであって、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下を満たす、上記[1]に記載の液晶セル。
[4] 前記液晶層が、下記式(I)の関係式を満たす、上記[1]乃至[3]までのいずれか1つに記載の液晶セル。
【数1】
(式(I)中、uは、√3、√15、√35、√63又は√99のいずれかであり、Δn365は、365nmにおける液晶の複屈折率を示し、dは、液晶層の厚さ(m)を表す。)
[5] 紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板を前記液晶セルの外側に対向配置した状態で、380nm以上780nm以下の範囲における各波長の透過率を測定することにより算出された視感度補正単体透過率Ysが、50%以上であり、
前記測定用偏光板が、紫外域で99%以上の偏光度を有する、上記[1]乃至[4]までのいずれか1つに記載の液晶セル。
[6] 前記液晶が、下記式(II)の関係式を満たす、上記[1]乃至[5]までのいずれか1つに記載の液晶セル。
【数2】
(式(II)中、Δn365は365nmにおける液晶の複屈折率を示し、Δn640は640nmにおける液晶の複屈折率を示す。)
[7] 上記[1]乃至[6]までのいずれか1つに記載の液晶セルと、紫外域に偏光機能を有する一対の偏光板と、を備え、
前記一対の偏光板のそれぞれが、365nmにおいて70%以上の偏光度を有し、各吸収軸を直交に配置した状態で測定することにより得られる365nmにおける直交透過率Tcが、0%以上10%以下であり、前記一対の偏光板が、前記液晶セルの外側に互いに対向配置されている、液晶表示装置。
[8] 上記[1]乃至[6]までのいずれか1つに記載の液晶セルと、紫外域に偏光機能を有する偏光板と、365nmの光が照射されて可視域の偏光を発光する偏光発光板と、を備え、
前記偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有し、
前記偏光板が、前記一対の基板の一方の外側に配置され、
前記偏光発光板が、前記一対の基板の他方の外側に配置されている、液晶表示装置。
[9] 前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、
前記偏光発光板に365nmにおける偏光した光を入射した時、最も低い透過率を示す軸の透過率が、0%以上10%以下である、上記[8]に記載の液晶表示装置。
[10] 前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、かつ、
前記偏光発光板が、365nmにおける偏光した光の入射時に透過率が10%以上99%以下である軸と、0%以上5%以下である軸と、を有する、上記[8]又は[9]に記載の液晶表示装置。
[11] 前記偏光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、上記[8]に記載の液晶表示装置。
[12] 前記偏光発光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、上記[8]乃至[11]までのいずれか1つに記載の液晶表示装置。
[13] 上記[1]乃至[6]までのいずれか1つに記載の液晶セルと、400nm以上700nm以下の範囲において50%以下の単体透過率Tsを有する可視域用偏光板と、を備え、
前記可視域用偏光板が、前記液晶セルの少なくとも一方の外側に配置されている、液晶表示装置。
[14] 前記可視域用偏光板が、400nm以上700nm以下の範囲において99%以上の偏光度を有する、上記[13]に記載の液晶表示装置。
[15] 前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、上記[8]に記載の液晶表示装置。
[16] 前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、上記[8]に記載の液晶表示装置。
[17] 前記偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、上記[8]に記載の液晶表示装置。
[18] 電圧無印加又は電圧印加によって、365nmにおける透過率が40%以上100%以下を示す透過型と、0%以上10%以下を示す非透過型と、に制御可能である上記[1]乃至[6]までのいずれか1つに記載の液晶セル。
[19] 上記[18]に記載の液晶セルを備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、液晶セルが、少なくとも一方が透明電極膜を有し、互いに対向配置された一対の基板と、前記一対の基板の間に配設された液晶層と、を備えている。液晶層に含まれる液晶は、365nmの波長において0.05以上0.50以下の複屈折率Δn365を有しており、液晶層の厚さが1μm以上15μm以下である。このような液晶セルにおいて、紫外域で偏光機能を有する偏光板として365nmにおいて99%以上の偏光度を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を液晶セルの外側に平行に対向配置した状態で365nmにおける透過率を測定することにより算出された、電圧無印加時の透過率と、電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以内を示す。このような液晶セルは、紫外域の波長において、電圧印加時と電圧無印加時で透過率が大きく異なるため、紫外域で高いコントラストを示す液晶セル及びこれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る液晶セルの一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態を示す概略図である。
図3図3は、本発明に係る液晶表示装置の他の実施形態を示す概略図である。
図4図4は、実施例で作製した紫外域用偏光板A~Cの各波長における単体透過率Tsと直交透過率Tcのスペクトルデータを示す。
図5A図5Aは、実施例で作製した偏光発光板A~Cの各波長における単体透過率Tsと直交透過率Tcのスペクトルデータを示す。
図5B図5Bは、実施例で作製した偏光発光板A~Cの各波長における平行透過率(Tp)を算出する際に用いた偏光入射透過率KyとKzのスペクトルデータを示す。
図6図6は、実施例で作製した偏光発光板A~Cの各波長における偏光度(DOPを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の液晶セル及び液晶表示装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施態様は、本発明を具体的に説明するために用いた代表的な実施態様を例示したにすぎず、本発明の範囲において、種々の実施態様をとり得る。
【0016】
また、以下において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
<液晶セル>
図1に示されるように、本実施形態に係る液晶セルは、互いに対向配置された一対の基板1と、一対の基板の間に配設された液晶層5とを備えている。一対の基板1のうち、少なくとも一方の基板1はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極膜2を有しており、当該透明電極膜2を介して液晶セルに電圧が印加される。透明電極膜2は、両方の基板1が対向する面、すなわち、液晶セルの内側の面に形成され、両方の基板1が透明電極膜2を有する場合、各透明電極膜2は対向するように形成される。また、一対の基板1上、あるいは、一方の又は両方の基板1に形成されている透明電極膜2上には、液晶を配向させるための配向膜3が形成されてもよい。配向膜3には、必要に応じて、光配向処理、ラビング処理等の配向処理がされていてもよく、このような配向膜3は、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール等の材料を用いて形成される。このようにして、透明電極膜2を有する基板1上に配向膜3が形成された導電性基板4を備える液晶セルが作製される。
【0018】
液晶セルの駆動モードとして、TN型、STN型、VA型、IPS型、OCB型、ECB型等の種々の方式が挙げられるが、TN型の液晶セルが好ましい。TN型の液晶セルでは、電圧が無印加の時は、一方の基板に隣接する液晶分子の配向方向が、他方の基板に隣接する液晶分子の配向方向に対して90°ねじれている。電圧の印加に伴い徐々に液晶分子が垂直に立ち上がり、それにより、明(白)表示から暗(黒)表示へと変化する。TN型の液晶セルは、電圧が無印加の時における液晶分子の配向のねじれ角が、両面の基板の間で180°~270°となるように作製されたSTN型の液晶セルであってもよい。
【0019】
[基板]
基板1は、透明であれば特に制限されるものではなく、例えば、ガラス基板であっても、プラスチック基板であってもよい。プラスチック基板は、フィルムまたはシートであってもよい。プラスチック基板の材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートおよびトリアセチルセルロース等の樹脂が挙げられる。特に、プラスチック基板が可撓性樹脂で作製されたフレキシブル基板であれば、プラスチック基板を任意の形状に曲げて使用することもできる。
【0020】
[液晶層]
液晶層5に含まれる液晶は、365nmにおいて0.05以上0.50以下、好ましくは0.09以上0.20の複屈折率Δn365を有する。複屈折率Δn365が0.05以上0.50以下であることにより、365nmで偏光機能を有する偏光板を液晶セルに設けた時に高コントラストな液晶セルを提供することができる。また、液晶の材料は、液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶(TN型液晶)であることが好ましい。液晶がねじれネマチック液晶であることにより、安価でありながら高コントラストな液晶セルを提供できる。ねじれネマチック液晶を使用する場合、一対の基板は、ラビング処理等により配向方向が互い直交するように対向配置された配向膜をそれぞれ有していることが好ましく、各配向膜の間に挟持されるねじれネマチック液晶は、2つの配向膜のラビング方向によって所定のツイスト角をもって封入される。このようなねじれネマチック液晶としては、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、ジシクロヘキサン系液晶、トラン系液晶、テルフェニル系液晶等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、このようなねじれネマチック液晶の市販品として、例えば、メルク社製のZLI-1083(Δn365:0.150)、ZLI-2471(Δn365:0.170)、ZLI-4792(Δn365:0.130)、ZLI-5092(Δn365:0.096)、MLC-2053(Δn365:0.321)等が挙げられる。
【0021】
また、液晶層の厚さ(セルギャップ)は、1μm以上15μm以下に制御されるが、2μm以上11μm以下であることが好ましく、4μm以上10μm以下であることがより好ましい。液晶層の厚さが1μm以上15μm以下であり、かつ上記液晶において365nmにおける複屈折率Δn365が0.05以上0.50以下であることにより、紫外域で高い透過率を有する液晶セルを提供でき、それにより紫外域、特に365nmの波長において高いコントラストを示す液晶セルを提供することができる。
【0022】
液晶層の厚さは、Gooch-Tarryの式をベースにTN型方式の液晶セルにおける液晶層の厚さの関係式に変形した下記式(I)の関係式を満たすことが好ましい。下記式(I)の関係式により、365nmにおいて高いコントラストを示す液晶セルを提供しうる液晶層の最適な厚さの範囲を算出することができる。
【0023】
【数1】
【0024】
上記式(I)中、uは、√3、√15、√35、√63又は√99のいずれかであり、Δn365は365nmにおける液晶の複屈折率を示し、dは液晶層の厚さ(m)を表す。液晶層の厚さdは一般的にはセルギャップともいう。非特許文献2には、TN型方式の液晶セルの液晶層の厚さ等を考慮した最適な設計方法について記載されている。その設計方法から、365nmで機能する液晶セルにおいて最適な厚さの値を算出できるように応用すると、式(I)が与えられる。上記式(I)において、0.8および1.2は、算出される液晶層の厚さの最適値(u×365×10-9/(2×△n365))から本実施形態に係る液晶セルに用いることができる液晶層の厚さの下限および上限を表す比率(倍率)を意味する。このように、上記式(I)で算出される液晶層の厚さdが、当該算出される液晶層の厚さの最適値の0.8倍~1.2倍の範囲内であることで、365nmにおいて高いコントラストを示す液晶セルを提供し得る。上記式(I)で算出される液晶層の厚さdは、算出される液晶層の厚さの最適値の0.85倍~1.15倍の範囲内であることが好ましく、0.90倍~1.10倍の範囲内であることがより好ましくは、0.95倍~1.05倍の範囲内であることがさらに好ましい。
【0025】
紫外域における液晶の複屈折率と可視域における液晶の複屈折率との関係式として、複屈折率Δn365を有する液晶は、下記式(II)の関係式を満たすことが好ましい。下記式(II)の関係式を満たす液晶を紫外域に偏光機能を有する一対の偏光板を配設された液晶表示装置の液晶セルに使用することにより、紫外域で高コントラストな液晶表示装置を得ることができる。また、下記式(II)の関係式を満たす液晶を後述する偏光発光板が配設された液晶表示装置の液晶セルに使用することにより、明状態において偏光発光の発光強度を高めることができ、さらには消光時において発光量を著しく低下させることができるため、発光と消光のコントラストが高い液晶表示装置を得ることができる。
【0026】
【数2】
【0027】
上記式(II)中、Δn365は365nmにおける液晶の複屈折率を示し、Δn640は640nmにおける液晶の複屈折率を示す。上記式(II)においてΔn365/Δn640の値の範囲は1.0~1.5が好ましく、1.1~1.4であることがより好ましい。
【0028】
[液晶セルの光学特性]
(紫外域における透過率)
本実施形態に係る液晶セルの光の透過性において、紫外域の光の高透過時の透過率と消光時の透過率との差が大きいほど、高コントラストな液晶セルを提供しうる。紫外域における透過率は、紫外域に偏光機能を有する測定用偏光板を液晶セルの外側に配設して測定することにより測定される。本実施形態に係る液晶セルにおいては、例えば、電圧印加時における透過率と電圧無印加時における透過率との差が大きい程、高透過時の透過率と消光時の透過率との差が大きいため、高いコントラストを示す液晶セルが得られることを示す。本実施形態に係る液晶セルにおいて、紫外域に偏光機能を有する偏光板であって、365nmにおいて99%以上の偏光度を有する偏光板を測定用偏光板として用いる。このような測定用偏光板の各吸収軸を液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で測定することにより得られた、電圧無印加時の365nmにおける透過率と、電圧印加時(例えば電圧が4V)の365nmにおける透過率との差の絶対値は、10%以上100%以下であり、より好ましくは30%以上95%以下であり、さらに好ましくは60%以上90%以下である。電圧印加時と電圧無印加時の365nmにおける透過率が異なるため、365nmの波長において高いコントラストを示す液晶セルを提供することができる。尚、電圧無印加時は消光時を、電圧印加時は高透過時をそれぞれ意味しており、電圧無印加時の365nmにおける透過率と電圧印加時の365nmにおける透過率との差をコントラストとして例示しているが、この限りではない。例えば、液晶の設計、印加電圧によっては電圧無印加時ではなく特定の電圧印加時に消光時の透過率を示すこともあり、電圧無印加時に高透過時の透過率を示すこともある。いずれにしても、特定の電圧(一方が0Vである電圧を含む)間における透過率の差が大きいことで、高コントラストの液晶セルが提供される。ただし、電圧無印加時に消光時を、電圧印加時に高透過時を示す設計の方が、一般的な液晶セルと同様な設計であり、安価に作製できるため好ましい。
【0029】
本実施形態に係る液晶セルにおいて、紫外域に偏光機能を有する偏光板であって、紫外域で99%以上の偏光度を有する偏光板を測定用偏光板として使用する際、一対の測定用偏光板の各吸収軸を液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で測定することにより得られた、電圧無印加時の300nm以上400nm以下の範囲における透過率と、電圧印加時(例えば電圧が4V)の300nm以上400nm以下における透過率との差の絶対値は、好ましくは10%以上100%以下であり、より好ましくは30%以上95%以下であり、さらに好ましくは50%以上90%以下である。このような透過率の差を示す液晶セルを使用することにより、紫外~近紫外可視域の広い領域において高いコントラストを示す液晶セルを提供することができる。
【0030】
(可視域における透過率)
液晶セルが、紫外域において所定の光透過性を示すだけでなく、可視域でも光透過性を示すことにより、可視域において液晶セルに透明性および視認性が付与される。可視域における透過率は、紫外域に偏光機能を有する偏光板であって、紫外域で99%以上の偏光度を有する偏光板を測定用偏光板として使用し、この測定用偏光板を液晶セルの外側に配設することにより測定される。本実施形態に係る液晶セルにおいて、紫外域に偏光機能を有する偏光板であって、紫外域で99%以上の偏光度を有する一対の測定用偏光板を液晶セルの外側に対向配置した状態で測定することにより得られた、380nm以上780nm以下の範囲における視感度補正透過率Ysが、好ましくは50%以上99.9%以下であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、よりさらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。ここで、視感度補正単体透過率Ysは、可視域における380~780nmの波長領域で、所定波長間隔(dλ)に測定した単体透過率Tsについて、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを下記式(III)に代入して算出する。なお、下記式(III)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布、τλは2度視野等色関数を表し、単体透過率Tsは、紫外域に偏光機能を有する1枚の偏光板における380~780nmの波長領域の各透過率を測定して得られた透過率を意味する。
【0031】
【数3】
【0032】
<液晶表示装置>
本実施形態に係る液晶表示装置は、上述した液晶セルと、液晶セルの外側に2枚の偏光板を備えている。このような構成を有する一実施形態における液晶表示装置は、図2に示されるように、上述した液晶セルと、紫外域で偏光機能を有する一対の偏光板6とを備え、一対の偏光板6が、液晶セルの外側に互いに対向配置されている。液晶セルは、図1と同様、互いに対向配置された一対の基板1と、一対の基板の間に配設された液晶層5とを備えており、一対の基板1のうち、少なくとも一方の基板1はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極膜2を有している。一対の基板1又は透明電極膜2上には、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール等の材料を用いて配向膜3が形成されていてもよい。このようにして、導電性基板4を備える液晶セルの外側に、紫外域で偏光機能を有する偏光板6のそれぞれが互いに対向配置された液晶表示装置が作製される。
【0033】
図2に示されるような液晶表示装置に使用される偏光板は、365nmにおいて70%以上の偏光度を有しており、また、このような偏光板の光学特性として、365nmにおいて特定の偏光度と直交透過率を有することが好ましい。365nmにおける偏光度は、好ましくは70~100%であり、より好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは98~100%であり、特に好ましくは99~100%である。一対の偏光板の各透過軸を直交に配置した状態で測定することにより得られた365nmにおける透過率、すなわち直交透過率(Tc)は、好ましくは0%以上10%以下であり、より好ましくは0%以上1.0%以下であり、さらに好ましくは0.0001%以上0.3%以下である。液晶表示装置が、365nmにおいて所定の偏光度を有し、紫外域で偏光機能を発揮する一対の偏光板と、上述の高いコントラストを示す液晶セルとを備えるため、紫外光を利用して高いコントラストを示す液晶表示装置を提供することができる。ここで、365nmにおける直交位透過率Tcは、各紫外域に偏光機能を有する2枚の偏光板をその透過軸が直交するように重ね合せて測定した365nmにおける分光透過率であり、例えば、分光光度計を用いて測定することができる。
【0034】
他の実施形態における液晶表示装置は、図3に示されるように、上述した液晶セルと、紫外域で偏光機能を有する偏光板6と、紫外~近紫外可視域の光、例えば365nmの光が照射されて可視域の偏光を発光する偏光発光板7と、を備えている。紫外域で偏光機能を有する偏光板6は、液晶セルにおける一対の基板1の一方の外側に配置され、偏光発光板7は、液晶セルにおける一対の基板1の他方の外側に配置されている。液晶セルは、図1と同様、互いに対向配置された一対の基板1と、一対の基板の間に配設された液晶層5とを備えており、一対の基板1のうち、少なくとも一方の基板1はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極膜2を有している。一対の基板1又は透明電極膜2上には、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール等の材料を用いて配向膜3が形成されていてもよい。このようにして、導電性基板4を備える液晶セルの外側に、紫外域で偏光機能を有する偏光板6と、偏光発光板7とが互いに対向して配置された液晶表示装置が作製される。
【0035】
図3に示されるような液晶表示装置は、紫外域において偏光性能を示す偏光板と、紫外光の照射により可視域で偏光発光を示す偏光発光板と、上述の高いコントラストを示す液晶セルとを備えるため、紫外光~近紫外可視域の光を利用して、高いコントラストを示す自己発光型の液晶表示装置を提供することができる。尚、紫外域で偏光機能を有する偏光板の偏光度は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは99%以上であり、特に好ましくは99.9%以上である。特に、偏光板が99%以上の偏光度を有することにより、より高いコントラストを示す自己発光型の液晶表示装置を提供することができる。
【0036】
紫外域に偏光機能を有する偏光板は、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有することが好ましく、視感度補正単体透過率Ysは、70%以上99%以下であることがより好ましく、80%以上99%以下であることがさらに好ましい。60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する偏光板は、視感的に透明であるため、このような偏光板を備える自己発光型の液晶表示装置は、透明ディスプレイへの応用に適している。視感度補正単体透過率Ysは、上記式(III)を利用して算出できる。
【0037】
自己発光型の液晶表示装置において、偏光発光板の2枚を互いの透過軸が直交するように配置した状態で測定することにより得られた365nmにおける透過率、すなわち直交透過率Tcは0%以上10%以下であることが好ましく、0%以上1.0%以下であることがより好ましく、0%以上0.3%以下であることがさらに好ましく、0%以上0.1%以下であることがさらにより好ましく、0%以上0.05%以下であることが特に好ましい。偏光発光板が、紫外域において0%以上10%以下の直交透過率Tcを有することにより、紫外域に偏光機能を有する偏光板を透過した紫外域の偏光の透過を抑制することができ、透過した紫外域の偏光を利用して発光量が高い、即ち高コントラストな液晶表示装置を提供することができる。ここで、365nmにおける直交位透過率Tcは、2枚の各偏光発光板をその透過軸が直交するように重ね合せて測定した365nmにおける分光透過率であり、例えば、分光光度計を用いて測定することができる。
【0038】
偏光発光板は、365nmにおいて偏光機能を有し、該偏光発光板に365nmにおける偏光した光を入射した時、最も低い透過率を示す軸の透過率が0%以上10%以下であることが好ましく、0%以上1.0%以下であることがより好ましく、0%以上0.1%以下であることがさらに好ましい。最も低い透過率を示す軸の透過率が0%以上10%以下であることにより、高い発光性を有する液晶表示装置を提供できる。
【0039】
また、偏光発光板が365nmにおいて偏光機能を有し、かつ、365nmにおける偏光した光の入射時に透過率が10%以上99%以下である軸と、0%以上5%以下である軸と、を有することが好ましい。これにより、強く発光する軸と弱く発光する軸との差が大きくなり、高コントラストな液晶表示装置を実現できる。より高コントラストな液晶表示装置を実現するため、偏光発光板は、透過率が60%以上99%以下である軸と、0以上1.0%以下である軸とを有することが好ましく、透過率が70%以上99%以下である軸と0%以上0.5%以下である軸とを有することがより好ましく、透過率が80%以上99%以下であること軸と0以上0.1%以下である軸とを有することがさらに好ましい。
【0040】
偏光発光板は、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有することが好ましく、視感度補正単体透過率Ysは、70%以上99%以下であることがより好ましく、80%以上99%以下であることがさらに好ましく、90%以上99%以下であることが特に好ましい。60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する偏光発光板は、視感的に透明であるため、このような偏光発光板を備える自己発光型の液晶表示装置は、透明ディスプレイへの応用に適している。視感度補正単体透過率Ysは、上記式(III)を利用して算出できる。
【0041】
他の実施形態における液晶表示装置は、上述した液晶セルと、400nm以上700nm以下の範囲において50%以下の単体透過率Tsを有する可視域用偏光板とを備え、可視域用偏光板が液晶セルの少なくとも一方の外側に配置されている構成も好適な構成として例示される。このような可視域用偏光板は、例えば、400nm以上700nm以下の範囲において、99%以上100%以下の偏光度を有している。液晶表示装置に、400nm以上700nm以下の波長領域において高い偏光度を有する偏光板を設けることによって、可視域において高いコントラストを示す液晶表示装置を提供することができる。また、液晶表示装置が、液晶セルの一方の外側に偏光発光板を備える場合、偏光発光板は、400~700nm、またはその一部の可視域の偏光を発光するため、その発光を制御する偏光板として可視域用偏光板を液晶セルの他方の外側に設けることも好ましい一つの形態として挙げられる。尚、可視域用偏光板は400以上700nm以下の波長領域において偏光機能を有していればよく、400以上700nm以下の波長領域以外の波長においても偏光機能を有していてもよい。
【0042】
自己発光型の液晶表示装置において、所定の光学特性を示す紫外域で偏光機能を有する偏光板および偏光発光板のそれぞれの配置関係をより厳密に制御することにより、高輝度発光型の液晶表示装置または高コントラスト発光型の液晶表示装置を提供することができる。本実施形態に係る高輝度発光型の液晶表示装置において、紫外域に偏光機能を有する偏光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、紫外域に偏光機能を有する偏光板の2枚が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有している。また、偏光発光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸とを有している。液晶セルに含まれる液晶として、ねじれネマチック液晶(TN型液晶)が使用される。紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸と、一対の基板の一方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とは、互いに平行に配置される。一方、偏光発光板の吸収軸と、一対の基板の他方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とは、互いに直交に配置される。このような高輝度発光型の液晶表示装置では、紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である。
【0043】
高輝度発光型の液晶表示装置は、紫外域に偏光機能を有する偏光板/TN型液晶セル/偏光発光板の順で構成されており、紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸および偏光発光板の吸収軸のそれぞれの軸が、液晶層に含まれるTN型液晶が液晶セルの各基板に配向している配向軸に対して、所定の配置関係を有している。このような構成では、紫外域に偏光機能を有する偏光板を透過した偏光の軸と偏光発光板の吸収軸とが一致する。これにより、透過した偏光が効率よく発光に変換され、高輝度な自己発光型液晶表示装置を提供できる。尚、単体透過率Tsおよび直交透過率Tcは上述の方法で測定される。
【0044】
高コントラスト発光型の一実施形態に係る液晶表示装置において、紫外域に偏光機能を有する偏光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、紫外域に偏光機能を有する偏光板の2枚が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有している。また、偏光発光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有している。液晶セルに含まれる液晶として、ねじれネマチック液晶(TN型液晶)が使用される。紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸と、一対の基板の一方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とは、互いに直交に配置される。一方、偏光発光板の吸収軸と、一対の基板の他方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とは、互いに平行に配置される。このような高コントラスト発光型の液晶表示装置では、紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である。
【0045】
他の実施形態に係る高コントラスト発光型の液晶表示装置として、紫外域に偏光機能を有する偏光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、紫外域に偏光機能を有する偏光板の2枚が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有している。また、偏光発光板は、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有している。液晶セルに含まれる液晶として、ねじれネマチック液晶(TN型液晶)が使用される。紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸と、一対の基板の一方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とは、互いに平行に配置される。一方、偏光発光板の吸収軸と、一対の基板の他方において電圧無印加時にTN型液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置される。このような高コントラスト発光型の液晶表示装置では、紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である。
【0046】
高コントラスト発光型の液晶表示装置も、高輝度発光型の液晶表示装置と同様に、紫外域に偏光機能を有する偏光板/TN型液晶セル/偏光発光板の順で構成されており、紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸および偏光発光板の吸収軸のそれぞれの軸が、液晶層に含まれるTN型液晶が液晶セルの各基板に配向している配向軸に対して、所定の配置関係を有している。このような構成でも、紫外域に偏光機能を有する偏光板から透過する紫外域の偏光が液晶により90°変換された偏光のみが偏光発光板の強い発光軸の光、即ち強い吸収を有する軸に吸収されるため、高コントラストな自己発光型液晶表示装置を提供できる。尚、単体透過率Tsおよび直交透過率Tcは上述と同様の方法で測定される。
【0047】
(透過制御構造)
液晶セルは、電圧の印加の有無により紫外光の透過を制御可能な構造を有していてもよい。このような液晶セルは、電圧無印加又は電圧印加によって、365nmにおける透過率が40%以上100%以下を示す透過型と、0%以上10%以下を示す非透過型と、に制御可能である。透過型モードでは、365nmの透過率は60%以上であることが好ましく、非透過型モードでは、365nmの透過率は1%以下であることが好ましい。他の実施形態に係る液晶表示装置は、このような液晶セルを備えており、電圧の印加に基づきコントラストを制御することが可能である。
【0048】
[紫外域で偏光機能を有する偏光板]
紫外域で偏光機能を有する偏光板は、少なくとも300~400nm、すなわち、紫外~近紫外可視域またはその一部で偏光機能を発揮する偏光板であり、可視域では透明であってもよく可視域における偏光はあってもなくてもよい。液晶セルに用いる液晶が可視域でも透明性を有し、かつ紫外域で偏光機能を発揮する偏光板が可視域、すなわち400~780nmでも透明性を有する場合、紫外域で偏光機能を有する偏光板を使用することにより、紫外~近紫外可視域で液晶表示装置として機能しながらも、外観上は透明性の高い液晶表示装置を提供しうる。さらに、液晶セルに用いる液晶が可視域でも透明性を有し、上記式(II)を満たし、かつ紫外域で偏光機能を発揮する偏光板が可視域、すなわち400~780nmでも機能する場合、紫外域で偏光機能を有する偏光板を使用することにより、紫外域~可視域、すなわち300~780nmの全波長領域、または300~400nmの波長領域の一部かつ400~780nmの波長領域の一部で機能する液晶表示装置を提供しうる。
【0049】
(紫外域用偏光板)
紫外域用偏光板は、紫外光を偏光に変換しうる機能を有し、可視域において高い透過率を有するため、透過する可視光はほぼ偏光制御されることがないか、もしくは著しく偏光度が低い可視光を透過させる機能を有する。すなわち、紫外域用偏光板は、紫外域では偏光を有し、可視域では透明な偏光板を意味する。尚、紫外域用偏光板は、前記紫外域に偏光機能を有する偏光板に含まれる。このような紫外域用偏光板は、当該機能を有してれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外光偏光機能を有する水溶性化合物が延伸された偏光膜、例えば国際公開第2005/015275号等に記載されている偏光膜を備える偏光板を使用することができる。このような水溶性化合物として、例えば、C.I.Direct Yellow 28等が挙げられる。上述の機能とは、具体的には、可視域の視感度補正単体透過率Ysが60%以上である場合、紫外域の偏光度が80%以上であり、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。特に好ましい態様として、可視域の視感度補正単体透過率Ysが80%以上である場合、紫外域の偏光度が90%以上であり、より好ましくは99%以上である。
【0050】
[偏光発光板]
偏光発光板は、紫外光を吸収して可視域に偏光を発光させる機能を有している。このような偏光発光板は、例えば、フィルム等の基材に発光を示す材料となる偏光発光色素を吸着配向させることにより製造される。また、偏光発光板から直接発する偏光は、特定の軸に偏光を有する発光、即ち直線偏光として発光し得るが、特定の軸だけでなく楕円偏光、円偏光を有する発光にも設計可能である。その処方は、偏光発光色素を含浸した基材を一軸延伸だけでなく、斜め延伸、二軸以上の軸で延伸することによって実現し得るが、偏光発光板は、一軸に一定の偏光を発光し得ることが好ましい。偏光発光板は、吸収された紫外光の光エネルギーを、別の波長の光、すなわち可視域の光を発光させるエネルギーに変換することにより偏光を発光させる機能を示す。そのため、ある特定の波長の光を、その波長のまま円偏光として反射させるコレステリック液晶は、このような特性を示す偏光発光板の素材には含まれない。
【0051】
(基材)
偏光発光板の基材には、偏光発光性を示す材料となる偏光発光色素が含まれる。そのため、当該基材は、偏光発光色素を吸着し得る親水性高分子等を製膜して得られるフィルムであることが好ましい。このような親水性高分子は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂及びポリアクリル酸塩系樹脂等が挙げられる。このような樹脂の中でも、偏光発光色素の染色性、加工性及び架橋性等の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体であることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂又はその誘導体としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルアルコール又はその誘導体のいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィン、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸のような不飽和カルボン酸等で変性した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、二色性を有する偏光発光色素の吸着性及び配向性の点から、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが好ましい。基材は、例えば、市販品であってもよく、ポリビニルアルコール系樹脂の製膜により作製してもよい。また、基材の厚さは適宜設計することができるが、5μm~150μmの範囲が好ましく、20μm~100μmの範囲がより好ましい。偏光発光板は、例えば、基材としてポリビニルアルコール系樹脂をフィルム状に形成し、次いで、当該フィルムに偏光発光性を示す材料となる偏光発光色素を含有させる。その後、得られたフィルムに延伸等の配向処理を適用し、さらには、ホウ酸処理、洗浄処理、乾燥処理を施すことによって偏光発光板を作製することができる。
【0052】
(偏光発光色素)
次に、上記基材に吸着配向させる偏光発光色素について説明する。偏光発光板に偏光発光性を付与するための材料として、分子中にスチルベン骨格およびビフェニル骨格の少なくとも1つを有し、かつアゾ基を有さない化合物又はその塩を使用することが好ましい。偏光発光色素が分子中にアゾ基を有すると、従来の染料系偏光素子のように高い偏光度は実現できるものの、アゾ基により発光が吸収され、発光光量が著しく低下してしまう。そのため、偏光発光色素として、分子中にアゾ基を有さない化合物又はその塩が使用されることが好ましい。このような偏光発光色素は、蛍光発光を示すと共に、二色比を有するため、偏光発光が可能である。そのため、分子中にスチルベン骨格およびビフェニル骨格の少なくとも1つを有する偏光発光色素は、蛍光発光特性に優れ、かつ、基材に配向させることにより高い二色比を有する特性を兼ね備える。これらの特性は、スチルベン骨格およびビフェニル骨格の各骨格に起因するため、上記の各骨格に、さらに任意の置換基を導入し、吸収波長、発光波長、耐光、耐湿、耐オゾンガス等の各種堅牢性、溶解度等、各種特性等を調整することも可能である。この置換基の導入は、置換基の種類、置換基の位置によって、従来の染料系偏光板のように高い偏光度を実現することができるものの、発光光量が著しく低下してしまう場合もある。そのため、蛍光発光特性に優れ、かつ、高い二色比を実現するためには、置換基の種類、置換基の位置の選択が重要となる。また、上記の偏光発光色素は、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0053】
アゾ基を有さないスチルベン骨格を有する化合物の1つは、好ましくは式(1)で示される化合物またはその塩である。式(1)中、基L及びMは、各々独立して、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換を有していてもよいウレイド基、または置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいカルボニル基を表すが、これらに限定されるものではない。式(1)で示されるスチルベン骨格を有する化合物は、蛍光発光を示し、また、配向させることによって二色性が得られる。発光特性は、スチルベン骨格に起因するものであるため、基L及びMの各基が結合し得る置換基はアゾ基を有していなければ、特に限定されるものではなく、任意の置換基であってよい。
【0054】
【化1】
【0055】
置換基を有してもよいアミノ基としては、例えば、非置換のアミノ基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ターシャリブチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルアミノ基;
フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N-フェニル-N-ナフチルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールアミノ基;
メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-ブチル-カルボニルアミノ基等の置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基;
フェニルカルボニルアミノ基、ビフェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基;
メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチル-スルホニルアミノ基等の炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基等の置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ等が挙げられる。これらの中でも、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基が好ましい。
【0056】
置換基を有してもよいカルボニルアミド基としては、例えば、N-メチル-カルボニルアミド基(-CONHCH)、N-エチル-カルボニルアミド基(-CONHC)、N-フェニル-カルボニルアミド基(-CONHC)等が挙げられる。
【0057】
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等の直鎖状のC-C12アルキル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分岐鎖状のC-C10アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状のC-Cアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0058】
置換基を有していてもよいビニル基として、例えば、エテニル基、スチリル基、アルキル基を有するビニル基、アルコキシ基を有するビニル基、ジビニル基、ペンタジエン基等が挙げられる。
【0059】
置換基を有していてもよいアミド基として、例えば、アセトアミド基(-NHCOCH)、ベンズアミド基(-NHCOC)等が挙げられる。
【0060】
置換基を有していてもよいウレイド基として、例えば、モノアルキルウレイド基、ジアルキルウレイド基、モノアリールウレイド基、ジアリールウレイド基等が挙げられる。
【0061】
置換基を有していてもよいアリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられ、好ましくはC-C12アリール基である。アリール基は、環構成原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1~3つのヘテロ原子を含む5員環又は6員環の複素環基であってもよい。このような複素環基の中でも、窒素原子および硫黄原子から選択される原子を環構成原子として含む複素環基であることが好ましい。
【0062】
置換基を有してもよいカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-ブチル-カルボニル基、フェニルカルボニル基等が挙げられる。
【0063】
上述した置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニトロ基、シアノ基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0064】
カルボキシアルキル基としては、例えば、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0065】
式(1)で示される化合物として、例えば、Kayaphorシリーズ(日本化薬社製)、Whitex RP等のホワイテックスシリーズ(住友化学社製)等が挙げられる。下記に式(1)で示される化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
[化合物例1]
【化2】
【0067】
アゾ結合を有さないスチルベン骨格を有する他の化合物として、下記式(2)または式(3)で示される化合物またはその塩であることが好ましい。これらの化合物を用いることによって、より鮮明な白色発光をする偏光発光素子を得ることができる。さらに、下記式(2)および式(3)で示される化合物もスチルベン骨格に起因して蛍光発光を示し、また、配向させることによって二色性が得られる。
【0068】
【化3】
【0069】
上記式(2)において、基Xは、ニトロ基または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。置換基を有してもよいアミノ基は、上記式(1)における置換基を有してもよいアミノ基と同様に定義され、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキルカルボニルアミノ基、置換基を有してもよいアリールカルボニルアミノ基、炭素数1~20のアルキルスルホニルアミノ基、または置換基を有してもよいアリールスルホニルアミノ基であることが好ましい。これらの中でも基Xは、ニトロ基であることが好ましい。
【0070】
上記式(2)中、基Rは、水素原子、塩素原子、臭素原子またはフッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、置換基を有してもいてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または置換基を有していてもよいアミノ基を表す。置換基を有していてもよいアルキル基としては、上記式(1)における置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基と同様に定義される。置換基を有してもいてもよいアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、又はエトキシ基等である。置換基を有していてもよいアミノ基は、上記式(1)における置換基を有してもよいアミノ基と同様に定義され、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、またはフェニルアミノ基等である。基Rは、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素に結合していてよいが、トリアゾール環と縮合している炭素を1位、及び2位とした場合、3位、5位、又は8位に結合していることが好ましい。
【0071】
上記式(2)中、nは0~3の整数であり、好ましくは1である。また、上記式(2)中、-(SOH)は、ナフトトリアゾール環中のナフタレン環の任意の炭素原子に結合していてよい。-(SOH)のナフタレン環における位置は、トリアゾール環と縮合している炭素原子を1位、2位とした場合、n=1であれば、4位、6位、または7位であることが好ましく、n=2であれば、5位と7位、および6位と8位であることが好ましく、n=3であれば、3位と6位と8位の組み合わせであることが好ましい。これらのうち、基Rが水素原子であり、かつnが1であることが特に好ましい。
【0072】
式(3)中、基Yは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよいビニル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表す。これらの中でも、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、置換基を有してもよいナフチル基であることがさらに好ましく、置換基としてアミノ基とスルホ基が置換したナフチル基であることが特に好ましい。
【0073】
式(3)中、基Zは、上記式(2)における基Xと同様に定義され、ニトロ基であることが好ましい。
【0074】
アゾ基を有さないビフェニル骨格を有する化合物は、好ましくは下記式(4)で示される化合物またはその塩である。
【0075】
【化4】
【0076】
上記式(4)において、基P及びQは、それぞれ独立に、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいカルボニルアミド基、置換基を有してもよいナフトトリアゾール基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいウレイド基、または置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいカルボニル基を表すが、これらに限定されるものではない。ただし、ビフェニル骨格のP位置、および/または、Q位置にアゾ基を有する場合、蛍光発光は著しく小さくなるため好適ではない。
【0077】
上記式(4)で表される化合物は、好ましくは、下記式(5)で表される化合物である。
【0078】
【化5】
【0079】
上記式(5)中、jは0~2の整数を示す。また、-(SOH)が結合される位置は、-CH=CH-が結合されている炭素原子を1位とした場合、2位、4位、6位が好ましく、4位が特に好ましい。
【0080】
上記式(5)中、基R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~4のアルキル基、炭素数が1~4のアルコキシ基、アラルキロキシ基、アルケニロキシ基、炭素数が1~4のアルキルスルホニル基、炭素数が6~20のアリールスルホニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルボキシアルキル基である。基R~Rが結合される位置は、特に限定されるものではないが、ビニル基を1位とした場合、2位、4位、6位が好ましく、4位が特に好ましい
【0081】
炭素数が1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
【0082】
炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
【0083】
アラルキロキシ基としては、例えば、炭素数7~18のアラルキロキシ基等が挙げられる。
【0084】
アルケニロキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルケニロキシ基等が挙げられる。
【0085】
炭素数1~4のアルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、ターシャリブチルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0086】
上記炭素数6~20のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0087】
上記式(5)で表される化合物は公知の方法で作製可能であり、例えば、4-ニトロベンズアルデヒド-2-スルホン酸をホスホネートと縮合させ、次いでニトロ基を還元することによって合成することができる。
このような式(5)で示される化合物の具体例は、例えば、特開平4-226162号公報に記載されている下記の化合物等が挙げられる。
【0088】
【化6】
【0089】
式(1)~(5)で示される化合物の塩とは、上記各式で示される各化合物の遊離酸が無機陽イオン又は有機陽イオンと共に塩を形成している状態を意味する。無機陽イオンとしては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の各陽イオン、又は、アンモニウム(NH )等が挙げられる。また、有機陽イオンとしては、例えば、下記式(6)で表される有機アンモニウム等が挙げられる。
【0090】
【化7】
【0091】
式(6)中、基Z1~Z4は、各々独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表し、かつ、Z1~Z4の少なくともいずれか1つは水素原子以外の基である。
【0092】
基Z1~Z4の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC-Cアルキル基、好ましくはC-Cアルキル基;ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシC-Cアルキル基、好ましくはヒドロキシC-Cアルキル基;並びに、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル基、好ましくはヒドロキシC-CアルコキシC-Cアルキル基等が挙げられる。
【0093】
これらの無機陽イオン又は有機陽イオンの中でも、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アンモニウム等の各陽イオンがより好ましく、リチウム、アンモニウム又はナトリウムの各無機陽イオンが特に好ましい。
【0094】
上記のような構造を有する偏光発光色素は、分子中にアゾ基を有さないため、アゾ結合に起因する光の吸収が抑制される。特に、スチルベン骨格を有する化合物は、紫外光の照射により発光作用を示し、また、スチルベン骨格の強い炭素-炭素二重結合の存在により分子が安定する。そのため、このような特定構造を有する偏光発光色素を用いた偏光素子は、紫外光を吸収し、そのエネルギーを利用して、可視域に偏光発光作用を示すことができる。
【0095】
[可視域用偏光板]
可視域用偏光板は、偏光板の偏光軸と同軸に入射する可視光を偏光し透過させるが、偏光板の吸収軸と同軸に入射する可視光は透過しないか又は殆ど透過しない機能を有する。すなわち、可視光において直線偏光に変換させることができる一般の偏光板を意味する。可視域用偏光板は紫外光をカットする機能を有してもよい。このような可視域用偏光板は、当該機能を有してれば特に限定されるものではなく、一般的に市販されている偏光板、即ち一般的なヨウ素系偏光板等を利用することができる。このような可視域用偏光板は、例えば、ポラテクノ社製のヨウ素系偏光板SKNシリーズ、KNシリーズ、ポラテクノ社製の染料系偏光板 THCシリーズ、SHCシリーズ等を使用することができる。
【0096】
[光源]
本実施形態に係る各液晶表示装置には、少なくとも紫外光を発する光源を介して偏光板の一方に紫外光が照射される。このような光源として、紫外光を照射する光源、紫外光と可視光の両方を照射する光源を使用できる。紫外光を照射する光源は、例えば、ブラックライト、UVランプ、UV-LED等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、種々の照射装置、照射機器を使用できる。紫外光と可視光の両方を照射する光源は、例えば、紫外域用の重水素ランプと可視域用のタングステンランプを備えた紫外-可視ファイバ光源等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、種々の照射装置、照射機器を使用できる。このような光源は、液晶表示装置にさらに組み込まれていてもよい。
また、紫外光と可視光の両方を照射する光源として、外光の紫外光を利用することもできる。
【0097】
[他の機能性層]
本実施形態に係る各液晶表示装置には、必要に応じて、カラーフィルタ、ハードコート層、防眩層及び帯電防止層等の公知の各種機能性層を適宜備えていてもよい。このような各種機能性層を作製する場合、各種機能性を有する材料を各液晶表示装置に使用される構成部材の露出面に塗工する方法が好ましく、一方、そのような機能を有する層又はフィルムを接着剤若しくは粘着剤を介して構成部材の露出面に貼合せることも可能である。
【実施例0098】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明を限定するものではない。また、下記に記載されている「%」及び「部」は、特に言及されない限り質量基準である。なお、各実施例及び比較例で使用した化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形態で記載した。
【0099】
[評価方法]
下記の実施例及び比較例で作製した各紫外域用偏光板および偏光発光板を測定試料として、以下の測定および評価を行った。
【0100】
(a)各波長における透過率の測定
分光光度計(日立ハイテクテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて紫外域用偏光板および偏光発光板の透過率ならびに吸光度を測定した。各実施例および比較例で作製した各偏光板(測定試料)に、220nm~2600nmの波長領域において100%の偏光を有する光(以下、「絶対偏光」とも称する)を照射できるグラムトムソン偏光子を設置し、各測定試料に、絶対偏光を照射した際の各波長における光の透過率を測定した。グラムトムソン偏光子より絶対偏光を照射し、各測定試料に対して、最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した際に測定された光の透過率をKy、絶対偏光を照射して最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した際に測定された光の透過率をKzとして、各透過率を測定した。
【0101】
得られたKyおよびKzの値から。各測定試料における各波長の単体透過率(Ts)、直交透過率(Tc)、および偏光度(ρ)を下記計算式より算出した。
【0102】
【数4】
【0103】
【数5】
【0104】
【数6】
【0105】
(b)視感度補正単体透過率Ys
各測定試料の視感度補正単体透過率Ysは、可視領域における380~780nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)毎に求めた上記Ky及びKzの値を、上記記式(IV)に代入して各波長の単体透過率Tsを算出し、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを上記式(III)に代入して算出した。なお、式(III)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、τλは2度視野等色関数を表す。
【0106】
(c)偏光発光板の偏光度の測定
各測定試料の偏光発光強度、発光した光の偏光度については、発光分光光度計(東京インスツルメンツ社製 分光ポラリメーターPoxi-Spectra)を用いて、ストークスパラメータ法により測定した。紫外線の光を測定試料に入射した時に発光分光光度計より得られる発光強度(S)において、最大発光波長の発光強度を「1」とし、各波長の比率を算出した。算出した各波長の強度比率(Sr)と、分光光度計より得られる発光した光の直線偏光度(DOLP)より、下記式(VII)により偏光した発光の偏光度(DOP)を算出した。
【0107】
【数7】
【0108】
<紫外域用偏光板Aの作製>
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS#7500)を40℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、C.I.Direct Yellow 28を1.0部、芒硝を1.0部、水を1500部含有する45℃の水溶液に、4分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬しながら5倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、70℃で9分間乾燥して紫外域用偏光素子を得た。一方で、紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、70℃で10分乾燥させ、作製した紫外域用偏光素子の両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートし、83.24%の視感度補正単体透過率(Ys)を有する紫外域用偏光板Aを作製した。
【0109】
<紫外域用偏光板Bの作製>
上記紫外域用偏光板Aの作製で用いたC.I.Direct Yellow 28 1.0部を0.2部に変えた以外は同様にして88.20%の視感度補正単体透過率(Ys)を有する紫外域用偏光板Bを作製した。
【0110】
<紫外域用偏光板Cの作製>
上記紫外域用偏光板Aの作製で用いたC.I.Direct Yellow 28 1.0部を0.1部に変えた以外は同様にして88.83%の視感度補正単体透過率(Ys)を有する紫外域用偏光板Cを作製した。
【0111】
得られた紫外域用偏光板A~Cの365nm、およびそのλmax(405nm)における単体透過率(Ts)、直交透過率(Tc)、偏光度(ρ)および視感度補正単体透過率(Ys)を表1に示し、図4に、得られた紫外域用偏光板A~Cの各波長のTsおよびTcを示す。表1および図4より、得られた紫外域用偏光板A~Cは350~470nmの波長領域において高い偏光特性を有していることがわかる。
【0112】
【表1】
【0113】
[偏光発光色素の合成]
(合成例1)
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム41.4部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸34.4部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製し、4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄し、得られたウェットケーキを乾燥することにより、中間反応体である式(7)の化合物83.8部を得た。
【0114】
【化8】
【0115】
得られた式(7)の中間反応体83.8部を水300部に加え撹拌し、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0とした。得られた溶液に28%アンモニア水20部、及び硫酸銅五水和物9.0部を加え、90℃で2時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム25部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、ウェットケーキ40.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(8)で表される化合物20.0部を得た。
【0116】
【化9】
【0117】
<偏光発光素子及び偏光発光板の作製>
(偏光発光素子Aの作製)
厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PE#6000)を35℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、式(8)の化合物を0.03部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に5分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、6.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子Aを作製した。
【0118】
(偏光発光板Aの作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子Aの両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板Aを作製した。得られた偏光発光板Aは、偏光発光素子Aと同等の光学特性を示した。
【0119】
(偏光発光素子Bの作製)
厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PE#6000)を35℃の温水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル2ナトリウム水溶液(BASF社製 Tinopal NFW Liquid)を0.03部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に2分間浸漬させた。得られたフィルムを3%ホウ酸水溶液中に50℃で5分間浸漬し、6.0倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、乾燥して偏光発光素子Bを作製した。
【0120】
(偏光発光板Bの作製)
紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)の両面を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で10分間処理し、水洗し、次いで、70℃で10分乾燥させた。水酸化ナトリウムで処理したトリアセチルセルロースフィルムを、上記で作製した偏光発光素子Bの両面に4%のポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビポバール社製 NH-26)を含む水溶液を介してラミネートして偏光発光板Bを作製した。得られた偏光発光板Bは、偏光発光素子Bと同等の光学特性を示した。
【0121】
(偏光発光素子Cおよび偏光発光板Cの作製)
偏光発光素子Bの作製において、4,4’-ビス-(スルホスチリル)ビフェニル2ナトリウム水溶液を0.03部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、芒硝1.0部、水1000部を含む45℃の水溶液に10分間浸漬した以外は同様にして、偏光発光素子Cおよび偏光発光板Cを作製した。
【0122】
得られた各偏光発光板の365nmおよび405nmにおける単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)、直交透過率(Tc)、偏光度(ρ)および視感度補正単体透過率(Ys)を表2に示し、図5Aに、得られた偏光発光板A~Cの各波長のTsおよびTcを示す。平行透過率(Tp)は式(VIII)より算出し、図5Bに、各偏光発光板における平行透過率(Tp)を算出するための偏光入射透過率KyおよびKzを示す。表2及び図5Aより、偏光発光板は350~470nmの波長領域において高い偏光特性を有していることがわかる。
【0123】
【数8】
【0124】
【表2】
【0125】
得られた各偏光発光板について、上記式(VII)により算出された各波長における偏光した発光の偏光度(DOP)を図6に示す。偏光発光板Aは、465nmにおいて最大DOP 92.0%かつ430~590nmの波長領域まで偏光を示す光を発光していることがわかる。また、偏光発光板Bおよび偏光発光板Cは437nmで最大DOP 94.6%かつ400~570nmの波長領域まで偏光を示す光を発光していることがわかる。
【0126】
<液晶空セルの作製>
液晶セルを作製するに際し、以下の評価用セル(EHC社製)を液晶空セルとして用いた。
・液晶空セルA:KSRS-02/B111M1NSS05、セルギャップ 2μm
・液晶空セルB:KSRS-05/B111M1NSS05、セルギャップ 5μm
・液晶空セルC:KSRS-10/B111M1NSS05、セルギャップ 10μm
・液晶空セルD:KCRK-03X、セルギャップ 最大3μm、くさび形セル
【0127】
液晶セルは、ガラス基板上に、ITO透明電極膜、ポリイミドである配向膜が順に設けられた基板を対向配置し、液晶が封入できる開口が設けられるように各基板の淵をエポキシ樹脂のシール材でシール処理することにより作製される。尚、配向膜におけるラビング方向は一方の面の配向膜のラビング方向を0°とした場合、もう一方の面は90°でラビング処理されており、ラビング方向はそれぞれの配向膜面で直交方向にラビングされている。すなわち、液晶セルがTN型液晶セルになるように配向膜のラビング方向を調整した。
【0128】
<液晶>
ねじれネマチック液晶(TN型液晶:Twisted Nematic液晶)として、メルク社製のZLI-1083、ZLI-2471、ZLI-4792、ZLI-5092、およびMLC-2053を使用した。それぞれの液晶での365nm、640nmの各波長における複屈折(Δn)を下記表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
<実施例A1~A8>
ZLI-1083、ZLI-2471、ZLI-4792、ZLI-5092の各液晶を液晶空セルC(セルギャップ 10μm)に、ZLI-1083、ZLI-2471、ZLI-4792の各液晶を液晶空セルB(セルギャップ 5μm)に、ZLI-1083の液晶を液晶空セルA(セルギャップ 2μm)にそれぞれ封入し、各実施例における液晶セルを作製した。
【0131】
<比較例1>
ZLI-1083を液晶空セルD(楔形セル、セルギャップ 最大3μm)に封入し、セルギャップが0.9μmの位置で透過率を測定した。
【0132】
光源として、365nmの波長における紫外光を照射するLED光源(THORLABS社製 マウント付LED M365L2)を使用した。上記で作製した紫外域用偏光板Aを2枚用い、それぞれの吸収軸が平行になるよう、各実施例A1~A8および比較例1における液晶セルの外側両面に設置した。光源から紫外光を照射し、2枚の紫外域用偏光板の吸収軸が平行な状態における透過率を100%の透過率とし、下記の条件下で液晶セルの透過率を測定した。
【0133】
液晶セルの入射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板の吸収軸と直交位(偏光板の透過軸と平行位)方向になるように一方の紫外域用偏光板を設置した。また、液晶セルの出射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板の吸収軸と平行位(偏光板の透過軸と直交位)方向になるように他方の紫外域用偏光板を設置した。この配置関係において、液晶セルに電圧を印加して透過率を測定した。電圧無印加時は0Vとし、電圧印加時には2V、4Vの電圧をそれぞれ印加し、それぞれの透過率を測定した。
【0134】
液晶セルに電圧無印加時および電圧印加時の365nmにおける透過率、並びに各実施例A1~A8および比較例1における液晶セルが有する最大コントラストの値を下記の表4に示す。尚、表4中、「-」は未測定であることを示す。
【0135】
【表4】
【0136】
さらに、400nmの光も発光する光源として、紫外線LED(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」:375nmハンドライトタイプ ブラックライト)を用いて、上記で作製した紫外域用偏光板Aを2枚用い、それぞれの吸収軸が平行になるよう、各実施例A1~A8および比較例1における液晶セルの外側両面に設置した。光源から紫外光を照射し、2枚の紫外域用偏光板の吸収軸が平行な状態における透過率を100%の透過率とし、下記の条件下で液晶セルの透過率を測定した。
【0137】
液晶セルの入射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板の吸収軸と直交位(偏光板の透過軸と平行位)方向になるように一方の紫外域用偏光板を設置した。また、液晶セルの出射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板の吸収軸と平行位(偏光板の透過軸と直交位)方向になるように他方の紫外域用偏光板を設置した。この配置関係において、液晶セルに電圧を印加して透過率を測定した。電圧無印加時は0Vとし、電圧印加時には4Vの電圧を印加し、それぞれの透過率を測定した。
【0138】
液晶セルに電圧無印加時および電圧印加時の400nmにおける透過率、並びに各実施例A1~A8および比較例1における液晶セルが有するコントラストの値を下記の表5に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
実施例A2に示す液晶セルに、紫外域用偏光板A~Cの各偏光板を直交位で最小透過率を示すように貼合し、紫外域用偏光板/液晶セル/紫外域用偏光板の構成の液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置の片面から紫外線LED(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」:375nmハンドライトタイプ ブラックライト)を照射しながら365nmおよび400nmの最大コントラストを測定した。該紫外線LEDの光量を透過率100%とし、上記紫外域用偏光板/液晶セル/紫外域用偏光板の構成の液晶表示装置における365nmと400nmの電圧印加時および電圧無印加時の透過率をそれぞれ測定した。得られた液晶表示装置の透過率および最大コントラストの結果を表6に示す。
【0141】
【表6】
【0142】
表4~表6の結果から、実施例A1~A8の液晶セルは、紫外域(365nm)及び近紫外可視域(400nm)において、電圧印加時と電圧無印加時とで透過率に差があり、高いコントラストを有している。そのため、実施例A1~A8では、紫外域の波長である365nmおよび400nmにおいて高いコントラストを有する液晶セルおよびこれを用いた液晶表示装置を提供することができた。
【0143】
また、実施例B1~B3の結果から、紫外域用偏光板A~Cを用いることによって高コントラストな液晶セルおよび液晶表示装置を提供することができた。実施例B3では、365nmにおけるコントラストの値は5.1であり、他の紫外域用偏光板を用いた場合とはコントラストは低いものの、機械、センサー等で認識できるコントラストが得られていた。
【0144】
<偏光発光表示装置Aの作製>
光源として、365nmの波長における紫外光を照射するLED光源(THORLABS社製 マウント付LED M365L2)を使用した。上記で作製した紫外域用偏光板A、液晶セル、偏光発光板をこの順に配置し、下記の条件で各部材が配置された構成を有する偏光発光表示装置Aを作製した。光源からの紫外光を偏光発光表示装置Aの紫外域用偏光板A側から照射し、液晶駆動時の明状態(強偏光時の発光量)と暗状態(強偏光時の発光量)の各発光強度(輝度)を、2次元色彩輝度計(コニカミノルタ株式会社製 ProMetric IC-PMI2)を用いて測定した。液晶セルには、液晶空セルC(セルギャップ:10μm)を使用した。
【0145】
液晶セルの入射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板Aの吸収軸と直交位(紫外域偏光板の透過軸と平行位)方向になるように紫外域用偏光板Aを設置した。また、液晶セルの出射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、偏光発光板の紫外域吸収軸と直交位(偏光発光板の透過軸と平行位)方向になるように偏光発光板を設置した。この配置関係において、液晶セルに電圧を印加して透過率を測定した。電圧無印加時は0Vとし、電圧印加時には4Vの電圧を印加し、それぞれの透過率を測定した。
【0146】
<偏光発光表示装置Bの作製>
光源として、365nmの波長における紫外光を照射するLED光源(THORLABS社製 マウント付LED M365L2)を使用した。上記で作製した紫外域用偏光板A、液晶セル、偏光発光板をこの順に配置し、下記の条件で各部材が配置された構成を有する偏光発光表示装置Bを作製した。光源からの紫外光を偏光発光表示装置Bの紫外域用偏光板A側から照射し、液晶駆動時の明状態(強偏光時の発光量)と暗状態(強偏光時の発光量)の各発光強度(輝度)を、2次元色彩輝度計(コニカミノルタ株式会社製 ProMetric IC-PMI2)を用いて測定した。液晶セルには、液晶空セルC(セルギャップ:10μm)を使用した。
【0147】
液晶セルの入射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板Aの吸収軸と平行位(紫外域偏光板の透過軸と直交位)方向になるように紫外域用偏光板Aを設置した。また、液晶セルの出射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、偏光発光板の紫外域吸収軸と直交位(偏光発光板の透過軸と平行位)方向になるように偏光発光板を設置した。この配置関係において、液晶セルに電圧を印加して透過率を測定した。電圧無印加時は0Vとし、電圧印加時には4Vの電圧を印加し、それぞれの透過率を測定した。
【0148】
<偏光発光表示装置Cの作製>
光源として、365nmの波長における紫外光を照射するLED光源(THORLABS社製 マウント付LED M365L2)を使用した。上記で作製した紫外域用偏光板A、液晶セル、偏光発光板をこの順に配置し、下記の条件で各部材が配置された構成を有する偏光発光表示装置Cを作製した。光源からの紫外光を偏光発光表示装置Cの紫外域用偏光板A側から照射し、液晶駆動時の明状態(強偏光時の発光量)と暗状態(強偏光時の発光量)の各発光強度(輝度)を、2次元色彩輝度計(コニカミノルタ株式会社製 ProMetric IC-PMI2)を用いて測定した。液晶セルには、液晶空セルC(セルギャップ:10μm)を使用した。
【0149】
液晶セルの入射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、紫外域用偏光板Aの吸収軸と直交位(紫外域偏光板の透過軸と平行位)方向になるように紫外域用偏光板Aを設置した。また、液晶セルの出射側ガラス基板面の配向膜におけるラビング軸が、偏光発光板の紫外域吸収軸と平行位(偏光発光板の透過軸と直交位)方向になるように偏光発光板を設置した。この配置関係において、液晶セルに電圧を印加して透過率を測定した。電圧無印加時は0Vとし、電圧印加時には4Vの電圧を印加し、それぞれの透過率を測定した。
【0150】
<実施例C1~C18>
上記で作製した偏光発光表示装置A~Cにおいて、液晶空セルに注入する液晶として、ZLI-1083またはMLC-2053を使用し、偏光発光板として、上記で得た偏光発光板A~Cをそれぞれ使用した。各組合せにおける液晶駆動時(電圧印加時と電圧無印加時)において液晶セルから発光した光について、明状態と暗状態でのコントラスト(CR)を測定した。また、光源から紫外光を照射しない場合における液晶表示装置の視感度補正単体透過率Ysを、分光光度計U-4100を用いて測定した。その結果を実施例C1~C18として下記表7および8に示す。
【0151】
【表7】
【0152】
【表8】
【0153】
実施例C1~C18の結果から、液晶セルに対して、紫外域用偏光板と偏光発光板を所定の配置関係になるように設置することにより、高いコントラストを示すだけでなく、80%以上の高い視感度補正単体透過率(Ys)を有する自己発光型の液晶表示装置を提供することができた。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルと、紫外域に偏光機能を有する偏光板と、365nmの光が照射されて可視域の偏光を発光する偏光発光板と、を備える液晶表示装置であって、
前記液晶セルが、少なくとも一方が透明電極膜を有し、互いに対向配置された一対の基板と、前記一対の基板の間に配設された液晶層と、を備えるTN型の液晶セルであって、
前記液晶層に含まれる液晶が、365nmにおいて0.05以上0.50以下の複屈折率Δn365を有し、
前記液晶層の厚さが1μm以上15μm以下であり、
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有し、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が、365nmにおいて99%以上の偏光度を有し、前記一対の基板の一方の外側に配置され、
前記偏光発光板が、前記一対の基板の他方の外側に配置されていることを特徴とする、液晶表示装置
【請求項2】
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で、300nm以上400nm以下の範囲における各波長の透過率が測定された波長のうち少なくとも1波長において算出された電圧無印加時の透過率と4Vの電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下であり、かつ、
前記測定用偏光板が、300nm以上400nm以下の範囲の紫外域で99%以上の偏光度を有する、請求項1に記載の液晶表示装置
【請求項3】
電圧印加時の電圧が4Vであって、365nmにおける透過率を測定することにより算出された電圧無印加時の透過率と電圧印加時の透過率との差の絶対値が、10%以上100%以下を満たす、請求項1に記載の液晶表示装置
【請求項4】
前記液晶層が、下記式(I)の関係式を満たす、請求項1乃至3までのいずれか1項に記載の液晶表示装置
【数1】
(式(I)中、uは、√3、√15、√35、√63又は√99のいずれかであり、Δn365は、365nmにおける液晶の複屈折率を示し、dは、液晶層の厚さ(m)を表す。)
【請求項5】
紫外域に偏光機能を有する一対の測定用偏光板の各吸収軸を前記液晶セルの外側に直交に対向配置した状態で、380nm以上780nm以下の範囲における各波長の透過率を測定することにより算出された視感度補正単体透過率Ysが、50%以上であり、
前記測定用偏光板が、300nm以上400nm以下の範囲の紫外域で99%以上の偏光度および60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、請求項1乃至4までのいずれか1項に記載の液晶表示装置
【請求項6】
前記液晶が、下記式(II)の関係式を満たす、請求項1乃至5までのいずれか1項に記載の液晶表示装置
【数2】
(式(II)中、Δn365は365nmにおける液晶の複屈折率を示し、Δn640は640nmにおける液晶の複屈折率を示す。)
【請求項7】
前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、
前記偏光発光板に365nmにおける偏光した光を入射した時、最も低い透過率を示す軸の透過率が、0%以上10%以下である、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光発光板が、365nmにおいて偏光機能を有し、かつ、
前記偏光発光板が、365nmにおける偏光した光の入射時に透過率が10%以上99%以下である軸と、0%以上5%以下である軸と、を有する、請求項1乃至7までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光発光板が、60%以上の視感度補正単体透過率Ysを有する、請求項乃至までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに直交に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長で20%以上の単体透過率Tsを有し、かつ、2枚の前記紫外域に偏光機能を有する偏光板が直交するように対向配置した状態で300~400nmの領域内のいずれかの波長における透過率を測定することにより算出された直交透過率Tcが0~5%である透過軸を有し、
前記偏光発光板が、少なくとも300~400nmの領域内のいずれかの波長において、偏光入射時の透過率が50~100%である透過軸と、偏光入射時の透過率が0~5%である吸収軸と、を有し、
前記液晶セルに含まれる液晶が、ねじれネマチック液晶であり、
前記偏光板の透過軸と、前記一対の基板の一方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記偏光発光板の吸収軸と、前記一対の基板の他方において電圧無印加時に前記ねじれネマチック液晶が配向している軸とが、互いに平行に配置され、
前記紫外域に偏光機能を有する偏光板側から300~400nmの領域内の光が入射されることによって液晶表示が可能である、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶セルが、電圧無印加又は電圧印加によって、365nmにおける透過率が40%以上100%以下を示す透過型と、0%以上10%以下を示す非透過型と、に制御可能な構造を有する液晶セルである請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置