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特開2024-38186インサイチュ又はインビトロでのマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ用の計算システムパソロジー空間分析プラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038186
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】インサイチュ又はインビトロでのマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ用の計算システムパソロジー空間分析プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/50 20180101AFI20240312BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240312BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240312BHJP
   G16H 30/20 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
G16H50/50
G06T7/00 630
G01N33/48 M
G16H30/20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222063
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2021535632の分割
【原出願日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】62/781,759
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506147560
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ-オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケーション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF PITTSBURGH OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェナブホットラ,シュリニーバス シー.
(72)【発明者】
【氏名】プラーラ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ダグラス エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インサイチュ又はインビトロでの高次元細胞及び細胞内解像画像データを統合し、視覚化し、モデル化することができる包括的計算システムパソロジー空間分析コンピュータプラットフォームを提供する。
【解決手段】コンピュータシステムパソロジー空間分析プラットフォームにおいて、処理装置25は、空間的不均一性定量化コンポーネント30と、マイクロドメイン識別コンポーネント35と、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データについて重み付きグラフを構築する重み付きグラフコンポーネント40と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、疾患の進行を分析する方法であって、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおいて、幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の全体的定量化を生成する工程と、
前記全体的定量化に基づいて、前記複数の組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定する工程であって、各マイクロドメインは前記複数の組織サンプルの個々の1つに関連している、工程と、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データについて重み付きグラフを構築するステップであって、前記重み付きグラフは、複数のノードと、各々がノードの対の間に位置する複数のエッジとを有し、前記重み付きグラフにおいて、各ノードは、前記複数のマイクロドメインの特定の1つであり、前記重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対の間のエッジは、マイクロドメインのその対間の類似度の度合いを示す、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記複数のマイクロドメインにおけるマイクロドメインの各対について、その対のマイクロドメイン間の重み付き類似度を決定する工程を更に含んでおり、前記重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対間のエッジは、マイクロドメインのその対について決定された重み付き類似度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特定された各マイクロドメインについて、細胞間空間的不均一性の局所的定量化を決定する工程を更に含んでおり、各対のマイクロドメイン間の重み付き類似度の決定は、その対の各マイクロドメインの局所的定量化に基づいている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記全体的定量化は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データの空間マップである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記空間マップは、ポイントワイズ相互情報(PMI)マップである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データが、多重化又はハイパープレックス化された免疫蛍光画像データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記幾つかの所定の表現型は、支配的なバイオマーカーの強度パターンの所定のセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特定のマイクロドメインの幾つかは、再発までの時間という形態で予後特異的変数と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
特定のマイクロドメインの幾つかは、疾患の進行を示す予後特異的変数と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記予後特異的変数に基づいて治療戦略を提案する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の組織サンプルは腫瘍サンプルであり、前記予後特異的変数は転移可能性を示すものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させる命令を含む、1又は複数のプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、疾患の進行を分析するためのシステムであって、
処理装置を備えており、前記処理装置は、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおいて、幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の全体的定量化を生成するように構成された空間的不均一性定量化コンポーネントと、
前記全体的定量化に基づいて、前記複数の組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定するように構成されたマイクロドメイン識別コンポーネントであって、各マイクロドメインは前記複数の組織サンプルの個々の1つに関連している、マイクロドメイン識別コンポーネントと、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データについて重み付きグラフを構築する重み付きグラフコンポーネントであって、前記重み付きグラフは、複数のノードと、各々がノードの対の間に位置する複数のエッジとを有し、前記重み付きグラフにおいて、各ノードはマイクロドメインの特定の1つであり、前記重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対の間のエッジは、マイクロドメインのその対間の類似度の度合いを示す、重み付きグラフコンポーネントと、
を含む、システム。
【請求項14】
前記重み付きグラフコンポーネントは、前記複数のマイクロドメインにおけるマイクロドメインの各対について、その対のマイクロドメイン間の重み付き類似度を決定するように更に構成されており、前記重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対間のエッジは、マイクロドメインのその対について決定された重み付き類似度である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記重み付きグラフコンポーネントは、特定のマイクロドメインの各々について、細胞間の空間的不均一性の局所的な定量化を決定するように更に構成されており、各対のマイクロドメイン間の重み付き類似度の決定は、その対のマイクロドメインの局所的な定量化に基づいて行われる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記全体的定量化は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データの空間マップである、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記空間マップは、ポイントワイズ相互情報(PMI)マップである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データが、多重化又はハイパープレックス化された免疫蛍光画像データを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記幾つかの所定の表現型は、支配的なバイオマーカーの強度パターンの所定のセットを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
特定のマイクロドメインの幾つかは、再発までの時間という形態で予後特異的変数と関連している、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
特定のマイクロドメインの幾つかは、疾患の進行を示す予後特異的変数と関連している、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記予後特異的変数に基づいて治療戦略を提案するように構成されたコンポーネントを更に備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記複数の組織サンプルは腫瘍サンプルであり、前記予後特異的変数は転移可能性を示すものである、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記重み付きグラフに基づいて細胞型、並びに活性化及び進化の状態を特定することに基づいて治療戦略を案内するように構成されたコンポーネントを更に備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成する方法であって、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ内の幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成して、前記定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程であって、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、工程と、
前記マイクロドメインのコミュニケーショングラフを構築する工程であって、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、工程と、
と含む方法。
【請求項26】
前記コミュニケーショングラフの各表現型は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから得られたデータベクトルによって表され、
表現型の各対について、その対の表現型のデータベクトル間の相関係数値を決定することで、その対の表現型間の数値関係を確立する工程と、各数値関係について方向性を確立する工程とを含んでおり、表現型の各対間のエッジは、その対における表現型間の数値関係と、その対における表現型間の数値関係の方向性と示す、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
各相関係数値は線形又は非線形の相関係数値である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
各データベクトルは、幾つかの所定のバイオマーカーの発現値のベクトルであり、前記幾つかの所定のバイオマーカーは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データを生成する際に使用されたものである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
発現値の各ベクトルは、前記幾つかの所定のバイオマーカーのバイオマーカー強度パターンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
各数値関係について方向性を確立する工程は、前記幾つかの所定のバイオマーカーについて、幾つかの受容体-リガンドデータベースに基づいて行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
各データベクトルを解釈して、各表現型について幾つかの活性化の状態を決定する工程と、前記幾つかの活性化の状態の各々を前記コミュニケーショングラフに含める工程とを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
その対の表現型のデータベクトル間の相関係数値を決定する工程は、その対の表現型以外の表現型の交絡効果を除去する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項25に記載の方法を実行させる命令を含む、1又は複数のプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項34】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項26に記載の方法を実行させる命令を含む、1又は複数のプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項35】
幾つかの患者からの幾つかの組織サンプル又は幾つかの多細胞インビトロモデルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成するためのコンピュータシステムであって、
処理装置を備えており、前記処理装置は、
前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成するように構成された空間的不均一性定量化コンポーネントであって、前記幾つかの異なる所定の表現型を特定するために前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データで細胞フェノタイピングを実行する、空間的不均一性定量化コンポーネントと、
前記定量化に基づいて、前記幾つかの組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定するように構成されたマイクロドメイン識別コンポーネントであって、各マイクロドメインは、前記幾つかの組織サンプルの1つに関連している、マイクロドメイン識別コンポーネントと、
前記複数のマイクロドメインの選択された一つについてコミュニケーショングラフを構築するように構成されているコミュニケーションネットワークコンポーネントであって、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、コミュニケーションネットワークコンポーネントと、
を含む、コンピュータシステム。
【請求項36】
前記コミュニケーショングラフの各表現型は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから得られたデータベクトルによって表され、前記コミュニケーションネットワークコンポーネントは、
表現型の各対について、その対の表現型のデータベクトル間の相関係数値を決定することで、その対の表現型間の数値関係を確立する工程と、各数値関係について方向性を確立する工程とを含んでおり、表現型の各対間のエッジは、その対における表現型間の数値関係と、その対における表現型間の数値関係の方向性と示すように構成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
各相関係数値は、線形又は非線形の相関係数値である、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
各データベクトルは、幾つかの所定のバイオマーカーの発現値のベクトルであり、前記幾つかの所定のバイオマーカーは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データを生成する際に使用されたものである、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
発現値の各ベクトルは、前記幾つかの所定のバイオマーカーのバイオマーカー強度パターンである、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
各数値関係について方向性を確立する工程は、前記幾つかの所定のバイオマーカーについて、幾つかの受容体-リガンドデータベースに基づいて行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記コミュニケーションネットワークコンポーネントは、各データベクトルを解釈して、各表現型について幾つかの活性化の状態を決定する工程と、前記幾つかの活性化の状態の各々を前記コミュニケーショングラフに含める工程とを更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
その対の表現型のデータベクトル間の相関係数値を決定する工程は、その対の表現型以外の表現型の交絡効果を除去する工程を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
特定の患者のための個別化医療戦略を作成する方法であって、前記特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、前記幾つかの患者は、前記幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられており、
前記特定の患者に関連する前記幾つかの組織サンプルの1つにおける複数のマイクロドメインを特定する工程であって、前記複数のマイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている、工程と、
前記複数のマイクロドメインの各々について異種細胞間コミュニケーションネットワークを生成する工程であって、各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、そのマイクロドメインの空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を含む、工程と、
複数の異種細胞間コミュニケーションネットワークに基づいて、前記複数のマイクロドメインの空間的及び時間的な相互依存関係を定量化する工程と、
前記定量化に基づいて、前記特定の患者について個別化医療を設計する工程と、
を含む方法。
【請求項44】
各マイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成し、前記定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程によって特定され、その工程は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記マイクロドメインのコミュニケーショングラフを備えており、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
各マイクロドメインは、関心のある予後変数の低いリスクをもたらすが、マイクロドメイン間の空間的な近接性及び関係性は、前記関心のある予後変数の全体的なリスクを高める、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記複数のマイクロドメイン内でどの経路が活性化されているか、そして、前記複数のマイクロドメインにわたる前記複数の異種細胞間コミュニケーションネットワーク間の関係がどうなっているかを知らせる、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記特定の患者の疾患の進行を遅らせる又は反転させるために、薬剤によって阻害される必要がある情報の流れを明らかにする、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
特定の患者における疾患の時間発展を表現する方法であって、前記特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、前記幾つかの患者は、前記幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられており、
前記特定の患者について疾患のランドスケープの幾何学的表現を生成する工程であって、前記幾何学的表現は複数の点を含み、前記幾何学的表現の各点は、(i)特定の時点における前記特定の患者の疾患状況を記述し、前記選択された患者に関連する幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つに基づいており、(ii)前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つにおけるマイクロドメインに基づいており、(iii)前記マイクロドメインについて空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を含む前記マイクロドメインについての異種細胞間コミュニケーションネットワークを含む、工程を含む方法。
【請求項50】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、常微分方程式の系を含むシステムバイオロジーモデルに関連付けられている、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークについて、前記常微分方程式の系は、前記特定の患者について前記疾患のランドスケープの時間発展を予測するための前記疾患のランドスケープのキネティクスを規定している、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
各マイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成し、前記定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程によって特定され、その工程は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記マイクロドメインのコミュニケーショングラフを備えており、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記幾つかの多細胞インビトロモデルは、2D培養物、3Dスフェロイド、オルガノイド、及び生体模倣微小生理学システムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記幾つかの多細胞インビトロモデルは、2D培養物、3Dスフェロイド、オルガノイド、及び生体模倣微小生理学システムからなる群から選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項56】
前記幾つかの多細胞インビトロモデルは、2D培養物、3Dスフェロイド、オルガノイド、及び生体模倣微小生理学システムからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項57】
前記幾つかの多細胞インビトロモデルは、2D培養物、3Dスフェロイド、オルガノイド、及び生体模倣微小生理学システムからなる群から選択される、請求項35に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルパソロジーに関しており、特に、インサイチュ又はインビトロでの高次元細胞及び細胞内解像画像データを統合し、視覚化し、モデル化することができる包括的計算システムパソロジー空間分析(CSPSA)コンピュータプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルパソロジーとは、組織学的に染色された組織サンプルを取得、保存、及び表示することを指しており、セカンドオピニオンテレパソロジー、免疫染色の解釈、術中テレパソロジーなどのニッチな用途で当初は注目を集めている。通常、3~50枚のスライドで構成される大量の患者データが生検標本から生成されて、病理医によって顕微鏡で視覚的に評価されるが、デジタル技術を用いると高解像度モニターを見て評価できる。手作業が含まれることから、現在のワークフローの実務は時間がかかり、エラーが発生しやすく、主観的である。
【0003】
癌は不均一性疾患(heterogeneous disease)である。ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色組織画像では、不均一性は、上皮内癌、浸潤癌、脂肪組織、血管や正常管のような様々な組織学的構造の存在によって特徴付けられる。更に、多くの悪性腫瘍では、分子及び細胞の不均一性は、異なる患者における腫瘍間で、同じ患者における異なる腫瘍形成(neoplasia)の部位間で、そして単一の腫瘍内での顕著な特徴となっている。腫瘍内不均一性は、表現型の異なる癌細胞クローン亜集団と、腫瘍微小環境(TME)を備える他の細胞型とを伴う。これらの癌細胞クローン亜集団及び他の細胞型には、局所的な骨髄由来ストロマ的幹細胞及び前駆細胞と、腫瘍促進又は腫瘍致死の何れかである免疫炎症性細胞のサブクラスと、癌関連線維芽細胞と、内皮細胞と、周皮細胞とがある。TMEは、発展する生態系と見ることができ、そこでは、癌細胞がこれら他の細胞型との異型相互関係に関わり、利用可能な資源を使用して増殖し、生き延びる。このような観点から、TME内の細胞型の間の空間的相互関係(即ち、空間的不均一性)は、疾患進行及び治療抵抗の主な要因の1つであると考えられる。従って、TME内の空間的不均一性を明らかにして、特定の疾患サブタイプを正しく決定し、個々の患者の最適な治療コースを特定することは是非とも必要なことである。
【0004】
今日まで、腫瘍内不均一性は、3つの主要なアプローチを使用して調査されてきた。第1のアプローチは、腫瘍の特定領域からコア試料を採取し、集団平均を測定することである。試料の不均一性は、全エクソーム解析、エピジェネティクス、プロテオミクス、及びメタボロミクスなどの複数の技術を使用して、腫瘍内の複数のコアを分析することにより測定される。第2のアプローチは、組織からの細胞の分離後に、上記の方法、RNASeq、画像化又はフローサイトメトリーを使用する「単一細胞分析」を含んでいる。第3のアプローチは、光学顕微鏡画像化の空間分解能を利用して空間コンテクストを維持し、分子特異的標識と組み合わせて細胞のバイオマーカーをインサイチュで測定するものである。バイオマーカーは、細胞型、活性化の状態(例えば、標的タンパク質のリン酸化)、及び細胞内機能を特定することができる。これらのアプローチは、各々が一定レベルの効果を発揮する一方で、様々な欠点と限界を有している。
【0005】
更に、腫瘍不均一性の臨床的意義を評価する上での最大の問題の1つは、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データの空間的解析のための高度なツールがないことである。
【発明の概要】
【0006】
ある実施形態では、複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、疾患の進行を分析する方法が提供される。本発明の方法は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおいて、幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の全体的定量化を生成する工程と、全体的定量化に基づいて、複数の組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定する工程であって、各マイクロドメインは複数の組織サンプルの個々の1つに関連している、工程と、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データについて重み付きグラフを構築する工程と、を含む。重み付きグラフは、複数のノードと、各々が前記ノードの対の間に位置する複数のエッジとを有し、重み付きグラフにおいて、各ノードはマイクロドメインの特定の1つであり、重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対の間のエッジは、マイクロドメインのその対の間の類似度の度合いを示す。
【0007】
別の実施形態では、複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、疾患の進行を分析するためのシステムが提供される。本発明のシステムは、(i)マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおいて、幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の全体的定量化を生成するように構成された空間的不均一性定量化コンポーネントと、(ii)全体的定量化に基づいて、複数の組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定するように構成されたマイクロドメイン識別コンポーネントであって、各マイクロドメインは複数の組織サンプルの個々の1つに関連している、マイクロドメイン識別コンポーネントと、(iii)マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データについて重み付きグラフを構築する重み付きグラフコンポーネントであって、重み付きグラフは、複数のノードと、各々がノードの対の間に位置する複数のエッジとを有し、重み付きグラフにおいて、各ノードはマイクロドメインの特定の1つであり、重み付きグラフにおけるマイクロドメインの各対の間のエッジは、マイクロドメインのその対の間の類似度の度合いを示す、重み付きグラフコンポーネントとを含む処理装置を含む。
【0008】
更に別の実施形態では、複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成する方法が提供される。本発明の方法は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ内の幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成して、定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程であって、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、工程と、マイクロドメインについてコミュニケーショングラフを構築する工程とを含む。各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す。
【0009】
更に別の実施形態では、複数の患者又は幾つかの多細胞インビトロモデルからの複数の組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成するためのコンピュータシステムが提供される。本発明のシステムは、(i)マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成するように構成された空間的不均一性定量化コンポーネントであって、特定の異なる所定の表現型を特定するためにマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データで細胞フェノタイピングを実行する、空間的不均一性定量化コンポーネントと、(ii)定量化に基づいて、幾つかの組織サンプルについて複数のマイクロドメインを特定するように構成されたマイクロドメイン識別コンポーネントであって、各マイクロドメインは、幾つかの組織サンプルの1つに関連している、マイクロドメイン識別コンポーネントと、(iii)複数のマイクロドメインの選択された一つについてコミュニケーショングラフを構築するように構成されているコミュニケーションネットワークコンポーネントであって、各表現型は、コミュニケーショングラフのノードであって、コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、コミュニケーションネットワークコンポーネントとを含む処理装置を含む。
【0010】
更に別の形態では、特定の患者のための個別化医療戦略を作成する方法であって、特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、幾つかの患者は、前記幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられている方法が提供される。本発明の方法は、特定の患者に関連する幾つかの組織サンプルの1つにおける複数のマイクロドメインを特定する工程であって、複数のマイクロドメインは、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている、工程と、複数のマイクロドメインの各々について異種細胞間コミュニケーションネットワークを生成する工程であって、各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、マイクロドメインの空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を含む、工程と、異種細胞間通信ネットワークに基づいて、マイクロドメインの空間的及び時間的な相互依存関係を定量化する工程と、その定量化された結果に基づいて、特定の患者のための医療戦略を立てる工程とを含む。
【0011】
更に別の実施形態では、特定の患者における疾患の時間発展を表現する方法が提供され、特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、幾つかの患者は、幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられている。本発明の方法は、特定の患者について疾患のランドスケープの幾何学的表現を生成する工程であって、幾何学的表現は複数の点を含み、幾何学的表現の各点は、(i)特定の時点における特定の患者の疾患状況を記述し、選択された患者に関連する幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つに基づいており、(ii)マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つにおけるマイクロドメインに基づいており、(iii)マイクロドメインについて空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションネの表現を含むマイクロドメインについての異種細胞間コミュニケーションネットワークを含む、工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、開示される概念の一実施形態に基づいた、インサイチュ又はインビトロのマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データのための例示的な計算システムパソロジー空間分析(CSPSA)プラットフォームの概略図である。
図2図2は、例示的なハイパープレックス(hyperplexed)画像スタックの模式図である。
図3図3は、患者コホートからの複数の腫瘍切片から得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから腫瘍の進行/進展を分析する方法を示すフローチャートであって、当該方法は、開示される概念の例示的実施形態に基づいて図1のCSPSAプラットフォームに実装できる。
図4図4は、例示的な全体的空間マップの模式図である。
図5図5は、開示される概念の例示的実施形態における所定の支配的バイオマーカー強度パターンの各々の模式図である。
図6図6は、開示される概念の1つの特定の例示的実施形態に基づく、細胞空間依存性画像の概略図である。
図7図7は、開示される概念の1つの例示的実施形態に基づく例示的組織切片の例示的マイクロドメインの模式図である。
図8図8は、開示される概念の例示的一実施形態に基づいて、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ用に構成された重み付けマイクロドメイングラフの模式図である。
図9図9は、開示される概念の別の例示的実施形態に基づいて、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成する方法を示すフローチャートである。
図10図10は、開示される概念の1つの例示的実施形態に基づく例示的コミュニケーショングラフの模式図である。
図11図11は、表現型が腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ、ストロマ及びネクローシスである特定の例示的実施形態に基づいて生成された特定のコミュニケーショングラフの模式図である。
図12図12は、開示される概念の一態様に基づく個別化医療戦略の模式図である。
図13図13は、開示される概念の一態様に基づく、例示的な癌のランドスケープの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、「ある」や「その」の単数形は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数への言及を含む。
【0014】
本明細書では、2つ以上の部品又は構成要素が「結合」されている旨の記載は、繋がりが発生する限りにおいて、直接又は間接的に、即ち1又は複数の中間部品又は構成要素を介して部品が結合される、又は一緒に動作することを意味する。
【0015】
本明細書では、用語「幾つか」は、1又は1よりも大きい整数(即ち、複数)を意味する。
【0016】
本明細書では、用語「構成要素」及び「システム」は、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、ソフトウェア、又は実行中のソフトウェアの何れかであるコンピュータ関連エンティティに言及することを意図している。例えば、構成要素は、プロセッサ上で実行されるプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラム、及び/又はコンピュータであってよく、また、これらに限定されない。例えば、サーバー上で実行されているアプリケーションとサーバーの両方が構成要素とされてよい。1又は複数の構成要素は、プロセス及び/又は実行スレッド内に常駐することができ、構成要素は、1つのコンピュータに局在し、及び/又は、2つ以上のコンピュータ間で分散することができる。ユーザーに情報を表示する幾つか方法は、スクリーンショットとして特定の図又はグラフで示されて説明されているが、関連する技術分野の当業者は、他の様々な代替手段が採用できることを認識であろう。
【0017】
本明細書では、「マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ」という用語は、組織の幾つかの切片から幾つかの画像を生成して得られたデータであって、組織のそれら切片における細胞又細胞内レベルの複数の測定可能パラメータに関する情報を提供するデータを意味する。マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データは、幾つかの異なる画像技術によって作成されてよく、画像技術としては、例えば、(1)幾つかのバイオマーカーを使用したIHCによる透過光イメージング、(2)マルチプレックスイメージング(1~7つのバイオマーカー)とハイパープレックスイメージング(7つを超えるバイオマーカー)の両方を含む免疫蛍光イメージング、(3)トポノームイメージング(toponome imaging)、(4)マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析イメージング(MALDI MSI)、(5)相補的空間イメージング、例えば、FISH、MxFISH、FISHSEQ、又はCyTOF、(6)マルチパラメータイオンビームイメージング、(7)実験モデルのインビトロイメージングが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、例えば、限定ではないが、組織の各切片を複数の異なるバイオマーカーで標識することによって組織の幾つかの切片から幾つかのバイオマーカー画像を生成することで、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データが生成されてよい。
【0018】
本明細書では、用語「空間マップ」は、マルチパラメータの細胞及び細胞内イメージングデータのセットにおける異なる所定の表現型の細胞間の関係を示す幾つかの定量化された空間統計の表現、例えばデータの集まり及び/又は視覚的に知覚可能な形式での空間統計の表現を意味する。例えば、限定ではないが、空間マップは、PCT出願第PCT/US2016/036825及び米国特許出願公開第2018/0204085に記載されている方法で生成されたポイントワイズ相互情報(PMI)マップであってよく、それらの名称は両方とも「Systems and Methods for Finding Regions of Interest in Hematoxylin and Eosin(H&E)Stained Tissue Images and Quantifying Intratumor Cellular Spatial Heterogeneity in Multiplexed/Hyperplexed Fluorescence Tissue Images」であり、それらの開示内容は参照により本明細書の一部となる。
【0019】
本明細書では、用語「マイクロドメイン」は、組織サンプルにおける表現型的に異なる細胞の空間的配置(又はモチーフ)を意味しており、当該空間的配置は、空間的な腫瘍内不均一性から生じ、そして、1又は複数の予後特異的(outcome specific)変数(例えば、再発までの期間)と関連している。マイクロドメインは、既知の又は今後開発される幾つかの方法の何れかに従って、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データから特定されてよい。このような方法としては、参照により本明細書の一部となる米国仮出願第62/675,832号「Predicting the Recurrence Risk of Cancer Patients From Primary Tumors with Multiplexed Immunofluorescence Biomarkers and Their Spatial Correlation Statistics」及びPCT出願第PCT/US2019/033662号「System and Method for Predicting the Risk of Cancer Recurrence From Spatial Multi-Parameter Cellular and Sub-Cellular Imaging Data for Tumors by Identifying Emergent Spatial Domain Networks Associated With Recurrence」、及び/又は、「Spagnolo、et al、Platform for Quantitative Evaluation of Spatial Intratumoral Heterogeneity in Multiplexed Fluorescence Images、CancerRes.2017 Nov 1;77(21):e71-e74」に記載されている方法、及び/又は、前記Spagnoloらの参考文献に記載されているパブリックドメインTHRIVE(Tumor Heterogeneity Research Interactive Visualization Environment)ソフトウェアに実装されている方法であるが、これらに限定されない。その方法では、予後データ(例えば、再発)の多変数生存モデルの共変量としてのバイオマーカー間の空間分解相関を用いて、多重化組織サンプルにおける癌再発の空間的組織化のマップを構築する。これらのマップは、再発や転移の進行に関連するマイクロドメインを描写する。
【0020】
例えば、上、下、左、右、上側、下側、前、後、及びそれらの派生語など、本明細書で使用される方向に関する語句は、図面に示された要素の方向に関しており、明示的に記載されていない限り、特許請求の範囲を限定しない。
【0021】
以下、開示される概念を、本発明の完全な理解を提供するために、説明目的で、多くの具体的な詳細に関して説明する。しかしながら、開示される概念は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、これらの具体的な詳細を伴わずに実施することができることは明らかであろう。
【0022】
開示される概念は、高次元のインサイチュ細胞及び細胞内分解画像データを統合すること、視覚化すること、及び/又はモデル化することができる包括的な計算システムパソロジー空間分析(CSPSA)プラットフォームを提供する。開示される概念のCSPSAプラットフォームは、細胞フェノタイピング(phenotyping)及び空間分析のための既存のツールのコアセットを、空間的異種細胞間コミュニケーション(細胞間)及び細胞内コミュニケーションパターンを推測するための、そして、癌の場合に、前癌の起源から転移の終点までの腫瘍(又は他の疾患)の進化系統樹を構築するための高度なツールセットと組み合わせている。これらのツールを組み合わせることで、組織サンプルとインビトロモデルにおける空間的な腫瘍内不均一性を定量化して、それを予後データと相関させること、診断及び予後診断アプリケーションを構築すること、個別化治療戦略及び創薬を設計することなど、研究と臨床の両方の目的に応用することができる。更に、インサイチュの細胞及び細胞内高精細画像に、領域特異的ゲノミクスと空間的トランスクリプトミクスのデータを追加することで、このプラットフォームを強化することができる。
【0023】
図1は、開示される概念の実施形態に基づくインサイチュマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データのための例示的な計算システムパソロジー空間分析(CSPSA)プラットフォーム5の概略図であり、そこでは、本明細書に記載されている様々な方法を実施することができる。図1に示されているように、CSPSAプラットフォーム5は、(例えば、再発及び非再発の癌の腫瘍を含む大規模な患者コホートに関する、或いは、個々の患者又は個々の腫瘍に関する)特定のマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10を受け取って格納し、本明細書に記載されているようにしてそのデータ10を処理するように構成されたコンピュータデバイスである。非限定的で例示的な実施形態では、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10は、多重化又はハイパープレックス化された免疫蛍光イメージングを用いて生成されるが、本明細書の他の箇所に記載されているもののような、他のイメージング技術も使用できることは理解されるであろう。例えば、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10は、図2に表されているような、コホートにおける全患者データに関する例示的なハイパープレックス画像スタック12に基づいてよい。
【0024】
CSPSAプラットフォーム5は、例えば、PC、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、又は、本明細書に記載された機能を実行するように構成された他の適切なコンピュータデバイスであってよいが、これらに限定されない。CSPSAプラットフォーム5は、入力装置15(キーボードなど)と、ディスプレイ20(LCDなど)と、処理装置25とを含む。ユーザーは、入力装置15を使用して処理装置25に入力を提供することが可能であり、処理装置25は、本明細書で詳細に説明されるように、ディスプレイ20がユーザーに情報(例えば、空間マップ又は他の空間依存性画像、マイクロドメイン画像、重み付きグラフ画像及び/又はコミュニケーションネットワークグラフ画像)を表示できるように、出力信号をディスプレイ20に提供する。処理装置25は、プロセッサ及びメモリを備えている。プロセッサは、例えば、限定ではないが、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はその他の適切な処理デバイスであって、メモリとインターフェースしている。メモリは、コンピュータの内部ストレージ領域のようなデータストレージの場合、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、FLASH(登録商標)や、ストレージレジスタを提供するその他のもの、例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体のような様々なタイプの内部及び/又は外部ストレージメディアの1又は複数であってよく、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってよい。メモリには、プロセッサによって実行可能な幾つかのルーチンが格納されており、本明細書に記載されているように、開示された概念を実施するためのルーチンを含んでいる。特に、処理装置25は、本明細書に記載されているように、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10における幾つかの異なる所定の表現型の細胞間空間的不均一性の全体的定量化を生成するように構成された空間的不均一性定量化コンポーネント30と、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10から、空間的不均一性定量化コンポーネント30によって生成された全体的定量化に基づいて、複数の腫瘍切片について、本明細書に記載されているようにして複数のマイクロドメインを識別するために構成されたマイクロドメイン識別コンポーネント35と、本明細書に記載されているようにして、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の重み付きグラフを構築するために構成された重み付きグラフコンポーネント40と、本明細書で記載されているようにして、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10についてコミュニケーションネットワークグラフを構築するように構成されたコミュニケーションネットワークコンポーネント45とを含む。
【0025】
図3は、患者コホートの複数の腫瘍切片から得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10から腫瘍の進行/進展を分析する方法を示すフローチャートであって、当該方法は、開示される概念の例示的実施形態に基づいてCSPSAプラットフォーム5に実装できる。しかしながら、これは単なる例示であることが意図されており、図3に示された方法のステップは、他の構成及び/又はプラットフォームで実装され得ることは理解されるであろう。
【0026】
その方法は、ステップ50で始まり、空間的不均一性定量化コンポーネント30が、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10における空間的不均一性の全体的定量化をもたらす。例示的な実施形態では、ステップ50でもたらされた全体的定量化は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の全体的空間マップである。ある特定の実施態様では、全体的空間マップは、図4に示すように、グローバルPMIマップ52であって、本明細書の他の箇所で言及されており、参照により本明細書の一部となるPCT出願第PCT/US2016/036825号及び米国特許出願公開第2018/0204085号に記載されている方法で生成される。この例示的な実施態様では、組織の各切片を複数の異なるバイオマーカー(例えば、ER、PR、及びHER2)で標識して、組織の幾つかの切片から幾つかのバイオマーカー画像を生成することによって、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10が作成される。前述の出願で説明されているように、PMIマップ52は、最初に、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10に対して(即ち、その「スライド」の各々に対して)細胞のセグメンテーションを行うことによって生成される。既知の又は今後開発される適切な細胞セグメンテーションアルゴリズムの幾つかのうちの何れも採用され得る。そして、各細胞について空間的位置及びバイオマーカー強度のデータが得られて、細胞のバイオマーカー強度構成に基づいて、各細胞が、所定の表現型の一つ(各表現型は所定の支配的バイオマーカー強度パターンである)に割り当てられる。図5は、例示的な実施形態における、1乃至8の符号を付された所定の優勢なバイオマーカー強度パターンの各々の模式的表現56を示す。例示的な実施形態では、各模式的表現56は、模式的表現を互いに容易に区別することができるように、固有の色で提供される。ここで説明された細胞割り当てと図5に示された概略表現とが使用されて、対象組織サンプルの不均一性を視覚的に示す細胞空間依存性画像を生成することができる。図6は、開示される概念の1つの特定の例示的な実施形態に基づく細胞空間依存性画像58を示す。図6に示されているように、細胞空間依存性画像58は、模式的表現56を用いて、被験者のスライドの細胞間の空間依存性を示している。次に、空間ネットワークが構築されて、被験者のスライドにおける主要なバイオマーカーの強度パターンの構成を表現する。そして、図4のようなPMIマップ52を生成することで、被験者のスライドの不均一性が定量化される。例示的な実施形態では、空間ネットワーク及びPMIマップ52は、以下に示すように生成される。
【0027】
被験者のスライドのバイオマーカー画像(即ち、組織/腫瘍サンプル)におけるバイオマーカーパターンの空間的構成を表現するために、被験者のスライドについて、ネットワークが構築される。腫瘍サンプルについての空間ネットワークの構築は、細胞バイオマーカーの強度データ(ネットワークのノード)と空間データ(ネットワークのエッジ)を本質的に結びつける。ネットワーク構築における前提は、細胞がある特定の限界、たとえば最大250μmまで近くの細胞とコミュニケーションする能力を有しており、細胞がその限界内でコミュニケーションする能力は細胞の距離に依存するということである。従って、例示的な実施形態における確率分布は、被験者のスライドにおける細胞とその10個の最近傍細胞との間の距離について計算される。ハード限界は、(標準偏差を推定するために)この分布の中央値(median value)に1.5を掛けた値に基づいて選択され、ネットワークの細胞はこの制限内でのみ接続された。そして、ネットワークの細胞間のエッジが、隣接する細胞間の距離で重み付けされる。
【0028】
次に、例示的な実施形態では、ポイントワイズ相互情報(PMI)を用いて、被験者のスライドについて、ディクショナリにおけるバイオマーカーパターンの各対の間の、ひいては異なる細胞表現型の間の関連性が評価される。このメトリックは、線形と非線形の両方の一般的な統計的関連性をキャプチャし、これまでの研究は、Spearmanのrho係数などの線形メトリックを使用している。バイオマーカーのパターンの各対についてPMIが計算されると、被験者のスライドのデータにおける全ての関連性の尺度がPMIマップ52に表示される。本実施形態におけるPMIの使用は例示的なものに過ぎず、空間的関係を規定する他の方法、例えば、Spagnolo DM,Al-Kofahi Y,Zhu P,Lezon TR, Gough A, Stern AM, Lee AV,Ginty F,Sarachan B, Taylor DL,Chennubhotla SC,Platform for Quantitative Evaluation of Spatial Intratumoral Heterogeneity in Multiplexed Fluorescence Images, Cancer Res.2017 Nov 1と、Nguyen,L.,Tosun,B.,Fine,J.,Lee,A.,Taylor,L.,Chennubhotla,C.(2017),Spatial statistics for segmenting histological structures in H&E stained tissue images,IEEE Trans Med Imaging.2017 Mar 16とに記載された方法が、開示されている概念に関して採用されてよい。
【0029】
例示的なPMIマップ52は、被験者のスライドの微小環境内における異なる細胞表現型の関係を記述している。特に、PMIマップ52のエントリは、(行と列の番号で参照される)2つの表現型の間の特定の空間的相互作用が、全ての表現型にわたったランダムな(又はバックグラウンドの)分布によって予測される相互作用と比較した場合に、データセットにおいてどのくらいの頻度で発生するかを示している。赤のような第1の色のエントリは、表現型間の強い空間的関連性を示し、黒のような第2の色のエントリは、共局在性の欠如(表現型間の弱い空間的関連性)を示す。他の色が、他の関連性を示すために使用されてよい。例えば、緑のような第3の色で色付けされたPMIエントリは、データセット全体にわたる細胞表現型のランダムな分布よりも優れていない関連性を示す。更に、PMIマップ52は、(例えば、表現型1が表現型3の近くで空間的にめったに発生しない場合)青のような第4の色で示されたエントリで反関連(anti-associations)を表現できる。
【0030】
再び図3を参照すると、ステップ50に続いて、本方法は、次にステップ55に進む。ステップ55において、マイクロドメイン識別コンポーネント35は、ステップ50でもたらされた全体的定量化に基づいて、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10における腫瘍切片の各々において、(例えば、本明細書の他の箇所に記載されているようにして)1又は複数のマイクロドメインを識別し、位置を特定する。例えば、ある癌細胞型とそれと共在する特定の免疫細胞型とは、高い空間共起値(co-occurrence value)を有することがある。癌と免疫細胞の組合せをシードポイントとして使用して、全体的定量化(空間マップなど)をマイニングして、表現型の関連性を伝播させることで、任意の組織切片において、距離のカットオフに基づいてシードの周りに細胞の空間ネットワークを成長させることによって(例えば、約100個の細胞)、マイクロドメインを生成することができる。このような例示的なマイクロドメイン62は、図7に示す例示的な組織切片64に示されている。
【0031】
次に、ステップ60では、ステップ55で特定された各マイクロドメインについて、空間的不均一性の局所的定量化(例えば、局所PMIマップなどの局所的空間マップ)が求められる。更に、各組織切片で決定された局所的定量化の各々が使用されて、組織切片におけるマイクロドメインの対間の類似度の度合いが規定される。特に、例示的な実施形態では、2つのマイクロドメインA及びマイクロドメインBが与えられると、(i)マイクロドメインA及びマイクロドメインBにおける細胞の相対存在量の差と、(ii)それらの局所的定量化(例えば、PMI及びPMIなどの局所的空間マップであるか、本明細書で述べたように、他の方法が使用されてもよい)の差との組合せである距離関数が規定される。この手順は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の全てにわたって、マイクロドメインの全ての対について繰り返される。このプロセスにより、各組織切片のマイクロドメインの対ごとに、重み付き類似度が決定される。
【0032】
次に、ステップ65で、図8に例示的な形式で示された重み付きマイクロドメイングラフ66が、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10について構築される。重み付きマイクロドメイングラフ66の各ノード68は、ステップ55で生成されたマイクロドメインの1つであって、マイクロドメインの各対を接続するエッジ72は、それらの決定された類似度(例えば、上述の重み付けされた類似度の値)によって重み付けされる。その後、重み付きマイクロドメイングラフ66はディスプレイ20に表示されてよい。
【0033】
次に、図3のステップ70に示されているように、重み付きマイクロドメイングラフ66を更に分析することで、転移の過程中における表現型の進行を理解することができる。再発(R)又は非再発(NR)患者の何れかに由来するものとして、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の各組織切片全体についてグランドトゥルースラベルが存在するが、アプリオリには、どのマイクロドメインが2つのカテゴリーを最も区別するかを確認するための知識は利用できないことに留意のこと。例示的な実施形態では、ラベルR及びラベルNRは、組織切片から対応するマイクロドメインへと移される。その後、確率伝搬を数回繰り返してラベルを改善し、そして、一様にR又はNRである重み付きマイクロドメイングラフ66のマイクロドメインのクリーク(clique)を分離する。ラベル割り当ての信頼性が改善したことで、中間中心性尺度(betweenness centrality measure)を使用して、NRからRへの経路で最も一般的に移されるマイクロドメインを特定することができる。進化軌跡を模倣するために、重み付きマイクロドメイングラフ66のランダムウォークを行うことができ、一部のマイクロドメインは、観測された又は観測されていない転移データの何れかにのみ見られることは知られている。NRからRへの経路の相対確率を比較することで、転移に重要なイベントのクラスを特定することができる。次に、ランダムウォークの平均最初の通過時間を使用して、ランダムウォークがR又はNRの何れかに到達する確率が0.5であるノードのセットとして、転移する傾向のあるマイクロドメインを特定することができる。転移の可能性があるマイクロドメインは、NRからRへの進化軌跡の中間点であることに留意のこと。例示的な実施形態では、先ほど説明したステップがCSPSAプラットフォーム5の構成要素によって実行され、その結果がCSPSAプラットフォーム5のディスプレイ20でユーザーに表示されることに留意のこと。このように、開示される概念のこの態様は、本明細書に記載されているようにして、転移に重要な表現型(表現型の進化(phenotypic evolution))を規定し、特定し、比較する能力をもたらす。加えて、癌は開示される概念が適用できる分野の一例にすぎず、開示される概念は、特に神経変性疾患、代謝性疾患、炎症性疾患などの他の疾患組織にも適用できることは理解されるであろう。
【0034】
図9は、本実施形態では患者からの幾つかの腫瘍切片から得られ得るマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10から、空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を生成する方法を示すフローチャートであって、開示される概念の別の例示的な実施形態に従ってCSPSAプラットフォーム5に実装されてよい。しかしながら、これは単なる例示であることが意図されており、図9に示された方法のステップは、他の構成及び/又はプラットフォームで実装され得ることは理解されるであろう。
【0035】
本方法は、ステップ75で開始し、空間的不均一性定量化コンポーネント30は、本明細書の他の箇所で詳細に説明されているように、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10における空間的不均一性の定量化をもたらす。本明細書の他の箇所で述べたように、ステップ75で実行される空間的不均一性の定量化は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10に対して細胞フェノタイピングを実行して、異なる所定の表現型を特定することを含む。例示的な実施形態では、ステップ75でもたらされた定量化は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の空間マップである。ある特定の実施態様では空間マップは、本明細書の他の箇所で言及されており、参照により本明細書の一部となるPCT出願第PCT/US2016/036825号及び米国特許出願公開第2018/0204085号に記載されている方法で生成される。この例示的な実施態様では、組織の各切片を複数の異なるバイオマーカー(例えば、ER、PR、及びHER2)で標識することによって組織の幾つかの切片から幾つかのバイオマーカー画像を生成することで、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10が生成されてよい。非限定的で例示的な実施形態では、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10は、多重化又はハイパープレックス化された免疫蛍光イメージングを用いて生成されるが、本明細書の他の箇所に記載されているもののような、他のイメージング技術も使用できることは理解されるであろう。
【0036】
次に、ステップ80にて、マイクロドメイン識別コンポーネント35は、ステップ75でもたらされた定量化に基づいて、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10の腫瘍切片の各々において、本明細書に記載されているようにして1又は複数のマイクロドメインを識別し、位置を特定する。次に、ステップ85にて、識別されたマイクロドメインの1又は複数が選択される。その後、本方法はステップ90に進む。
【0037】
ステップ90で、コミュニケーションネットワークコンポーネント45は、選択されたマイクロドメインの各々について、コミュニケーショングラフを構築する。コミュニケーショングラフはディスプレイ20に表示されてよい。例示的なコミュニケーショングラフ92が図10に示されている。図10に示されているように、例示的な実施形態では、表現型の各々は、コミュニケーショングラフ92のノード94であって、コミュニケーショングラフ92の表現型の各対(ノード94の各対)の間のエッジ96は、対の一方の表現型が対の他方の表現型の存在に与える影響を示している。例示的な実施形態では、コミュニケーショングラフ92の各表現型(各ノード94)は、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10から得られるデータベクトルによって表される。また、例示的な実施形態のコミュニケーショングラフ92のエッジ96は、表現型の各対について、対の表現型のデータベクトル間の線形又は非線形の相関係数の値を決定して、対の表現型間の数値関係を確立することによって、(対の表現型以外の表現型の交絡効果を取り除いた後)生成される。加えて、数値関係の各々について、好ましくは、関連するバイオマーカーの幾つかの受容体-リガンドデータベースに基づいて、方向性が確立される。このようにして、本実施形態では、ノード94の各対の間のエッジ96は、決定された数値関係と決定された方向性とを示している。例示的な実施形態では、エッジ96は、特定の相関係数の値(例えば、正又は負の相関の度合い)を表すように色付けされてよい。
【0038】
加えて、例示的な実施形態では、各ノード94の各データベクトルは、幾つかの所定のバイオマーカーの発現値のベクトルであって、それら所定のバイオマーカーは、マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データ10を生成する際に使用された特定のバイオマーカーである。例えば、発現値の各ベクトルは、ステップ75で決定された所定のバイオマーカーのバイオマーカー強度パターンであってよい。また、各データベクトルが分析されて、生物学的に解釈して、表現型の各々(各ノード94)について幾つかの活性化状態98が決定されてよく、その活性化状態98はコミュニケーショングラフ92に含まれる。例えば、バイオマーカーのALDH1は腫瘍細胞のステムネス(stemness)のサロゲート(surrogate)であり、バイオマーカーのPD-L1は変異の負担を決定する。
【0039】
図11は、表現型(ノード94)が腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ、ストロマ及びネクローシスである特定の例示的実施形態に基づいて生成された特定のコミュニケーショングラフの模式図である。様々なエッジの影響96と様々な活性化状態98もまた示されている。
【0040】
本明細書に記載されているマッピングの成果の1つは、局所的腫瘍微小環境(TME)に基づいて疾患の進行経路を推測し、続いてその経路における既知の分子標的をリストアップすることである。これに続いて、機械学習ツール(例えば、Balestra Web)を用いて、空間的関係性に基づいて薬剤標的の相互作用を予測することができる。これは、新たな治療法の開発だけでなく、薬剤の再利用につながる可能性がある。更に、以下に詳細に記載されているのは、開示された概念の様々な態様を組み込むことができる例示的な幾つかの臨床用途(例えば、CSPAプラットフォーム5の用途)であって、次を含む:(1)空間変調計算システムパソロジーを用いた創薬及び個別化医療戦略、(2)患者の癌/疾患状態のマルチパラメトリックな読み出しの幾何学的表現である癌/疾患ランドスケープ、及び(3)基礎研究及び臨床翻訳のためのインビトロモデル用のCSPAプラットフォームの用途。
【0041】
ある特定の例示的な実施形態では、開示された概念は、空間変調計算システムパソロジーを用いた創薬及び個別化医療戦略に使用することができる。より具体的には、空間的腫瘍内不均一性は、癌の時間発展と患者の運命を決定する上で重要な特徴である。この不均一性は、マイクロドメインに組み込まれた異種細胞間コミュニケーションネットワークの多様性に反映されることから、結果として得られるシステムバイオロジーは患者に依存する。現在の治療戦略は、平均的な患者を対象に設計されているため、患者特有のシステムバイオロジーを反映していない。患者特有のシステムパソロジーは、関心のあるマイクロドメイン/領域を特定し、その根底にあるコミュニケーションネットワークの特性を明らかにし、マイクロドメインの相互依存性を空間的にも時間的にも正確に定量化することから始まる。この知識はまた、新薬設計戦略に不可欠である。この戦略はまた、領域特異的ゲノミクスを利用することでも強化できる。
【0042】
図12は、開示された概念のこの態様に基づく個別化医療戦略の模式図であり、組織切片から個別化治療処置に及んでいる。図12は、左から順に、i)細胞/細胞内解像度でのマルチパラメータ画像、ii)画像内の関心領域(マイクロドメイン)の特定、iii)特定の接続の重みと細胞/マイクロドメイン間の空間的関係を使用したマイクロドメイン内コミュニケーションネットワークの再構築、iv)正確なシステムバイオロジーを抽出するために情報を組み合わせること、v)個別化治療戦略の規定、を示す。
【0043】
図12に示すように、図示した例示的実施形態では、個々の患者について、サンプルのマイクロドメイン1とマイクロドメイン2とが表現型的に異なることがわかった。この組織サンプルについては、本明細書に記載されているようなフェノタイピングアルゴリズムが適用される。次に、異種細胞間ネットワークが、本明細書に記載されているようにして各マイクロドメインについて構築される。マイクロドメイン1とマイクロドメイン2に別々に適用された予後検査は、両方のマイクロドメインが再発のリスクが低いことを明らかにしている。しかしながら、それらのマイクロドメインが近接している場合には、再発のリスクは劇的に高くなり、マイクロドメイン1とマイクロドメイン2の間で情報が流れていることが示唆される。故に、開示された概念のこの態様では、異種細胞間ネットワークは、どの経路が活性化されており、2つのネットワークの間にどのような関係があるかを知らせる。例えば、WNTシグナルは、マイクロドメイン2ではアップレギュレートされるが、マイクロドメイン1ではダウンレギュレートされ、また、TGFβは、マイクロドメイン1ではアップレギュレートされるが、マイクロドメイン2ではダウンレギュレートされる。
【0044】
開示された概念のこの態様では、経路及びマイクロドメインネットワークが特定され、故に、特定の個人の癌の進行を遅らせるために抑制されなければならない情報の流れも更に特定される。これらの情報を用いて、個別化医療戦略を立てることができる。別の特定の例示的実施形態では、開示された概念は、特定の患者における癌などの疾患の時間発展を正確に記述するために使用できる。故に、開示された概念は、患者の癌状態のマルチパラメトリック読出しの幾何学的表現である癌のランドスケープを規定する。癌のランドスケープの各ポイントは、前癌、初期段階、浸潤のような患者の癌の状態を表している。このランドスケープで辿った経路は、その特定の患者の疾患の時間発展を記述する。現在の治療法は、患者集団にわたって平均化された癌のランドスケープを使用している。個々の患者のプロファイルが平均的プロファイルと完全に一致しない限り、平均的モデルで行われた予測は不正確であり得る。
【0045】
図13は、幾何学的表現を含む例示的な癌のランドスケープを示しており、ランドスケープ上の位置は、特定の例示的な患者状態を表す。図13では、大腸癌の進行を例としており、ラベル1が付されたくぼみは前癌状態を、ラベル2が付されたくぼみは小ポリープ状態を、ラベル3が付されたくぼみは大ポリープ状態を、ラベル4が付されたくぼみは浸潤性大腸癌状態を表している。幾何学的表現内の矢印は、前癌から浸潤癌まで患者が辿る経路を示す。このモデルから、癌の進展のダイナミクスを推測できる。
【0046】
開示された概念のこの実施形態の一態様によれば、前癌から転移までの組織の進化について、本明細書に記載されたマイクロドメインの包括的なライブラリを構築するために、遡及的患者コホートが求められる。本明細書で記載したような特定の異種細胞間コミュニケーションネットワークが、各マイクロドメインに関連付けられる。加えて、各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、常微分方程式の系の形態を取ったシステムバイオロジーモデルを有する。常微分方程式の系は、癌のランドスケープのキネティクスを規定する。前向きな研究では、このキネティクスは、前癌状態から転移までのマイクロドメインの時間発展を予測するのに役立つ。また、キネティックモデルは、合成組織の発生モデルの代用となる。
【0047】
更に別の特定の例示的実施形態では、開示された概念は、基礎研究及び臨床翻訳のためにインビトロモデルと組み合わせて使用されてよい。より具体的には、先ほど説明した開示された概念の2つの特定の用途では、開示された概念のプラットフォームは、インサイチュのハイパープレックスな単一細胞解像度の固体腫瘍画像に適用された。本実施形態では、同じプラットフォームが、インビトロ微小生理学的(microphysiological)モデルからの画像データに適用される。多細胞インビトロモデルは、インビトロでの疾患進行のメカニズムの調査と、薬物のテストと、移植で使用可能なこれらのモデルの構造的構成及び内容の特徴付けとに適用可能なヒト組織を要約している時空間的細胞不均一性と異種細胞間コミュニケーションの研究を可能する。
【0048】
インビトロモデルには、2D培養物、3Dスフェロイド、オルガノイド、及び生体模倣微小生理学システムの形態がある。これらのシステムの目標は、生理的に適切なバイオミメティックスに近づくことであった。2D培養物は、表面付着で増殖する細胞培養物である。それらは2Dコミュニケーションネットワークを展開するので、情報の交換は二次元に制限される。3Dスフェロイドは、空間的に成長する細胞のクラスターである。細胞は人工的な環境で成長するが、それらは、細胞は全ての方向で相互作用して成長することができることから、インビボでの成長条件をより良く模倣する。オルガノイドとは、非常に小さいながらも自己組織化された三次元組織培養物である。それらは通常、幹細胞から作られる。オルガノイドは、臓器の複雑さの大半を再現するように作製すること、又は、特定の種類の細胞のみの生成のように臓器の選択した側面を表現するように誘導することができる。臓器機能の再生は、たとえ部分的であっても、インビトロで制御された条件でのシステムバイオロジーと異種細胞間コミュニケーションの再生を意味する。生体模倣微小生理学的システムは、オルガノイドに関して臓器機能を模倣する上での第一歩である。3Dマイクロ流体チャネル細胞培養チップは、臓器全体の全ての活動、メカニックス、及び生理学的反応を模倣する。これにより、システムバイオロジーや異種細胞間ミュニケーションネットワークをより正確に表現することが可能となる。
【0049】
この特定の実施形態の1又は複数の態様では、画像のタイムラインを構築し、モデルにおける推測されたネットワークの進展を比較することによって、時空間的な細胞不均一性及び異種細胞間コミュニケーションが監視されてよい。2D培養物からバイオミメティックMPSまでのインビトロシステムの複雑さのレベルは、開発可能なシステムバイオロジーモデルの複雑さに反映される。全てのインビトロモデルに適用可能であるが、適切な3D組織で様々な細胞型を階層化又はバイオプリンティングすることによって構築された生体模倣モデルは、モデル内で空間的関係を規定することによって最も恩恵を受けるであろう。先ほど説明した開示された概念の2つの特定の用途で規定された同じタイプのシステムパソロジーがここでも有効であろう。目標は、インビトロモデルが、検討中のインサイチュ組織/臓器で特定された組織的及び空間的関係を反映していることと、システムバイオロジーをインビトロで再現できることとを実証することである。モデルは確立されて、「正常な」健康状態で研究されるか、或いは、疾患のある患者の細胞を、及び/又は、モデルに必要な細胞型に分化及び成熟した患者からの人工多能性幹細胞(iPSC)を使用して疾患モデルとして確立されてよい。異なる時点で、選択された治療の後、モデルは、患者の組織と同じように、固定され、埋め込まれて、切片化され、標識化される。次に、ハイパープレックス撮像方式が標識化された組織切片に適用される。そして、モデルから得られた組織切片に、本明細書に記載されている開示概念の計算システムパソロジー解析が適用されてよい。
【0050】
最後に、これまで腫瘍の切片から得られた画像データについて説明してきたが、この開示された概念は、他の種類の組織切片から得られた画像データや、固体の未切片(un-sectioned)サンプルに入り込むことができる撮像方式を用いて未切片サンプルから得られた画像データにも適用できることは理解されるであろう。
【0051】
特許請求の範囲において、括弧の間に置かれた符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。「備える」又は「含む」という言葉は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の要素又は工程の存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙している装置請求項では、これらの手段の幾つかが、1つの同じハードウェアによって具現化されてよい。要素に先行する「ある」という言葉は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。幾つかの手段を列挙している任意の装置請求項では、これらの手段のうちの幾つかが、1つの同じハードウェアによって具現化されてよい。ある要素が相互に異なる従属形式請求項に記載されているという事実だけで、これらの要素を組み合わせては使用できないことを示しているわけではない。
【0052】
本発明は、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられている実施形態に基づいて説明することを目的として、詳細に説明されてきたが、そのような詳細はあくまでもその目的のためのものであり、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある変更及び均等な構成を含むことが意図されていることを理解のこと。例えば、本発明は、可能な範囲で、任意の実施形態の1又は複数の特徴を、任意の他の実施形態の1又は複数の特徴と組み合わせることができることを意図していることを理解のこと。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の患者のための個別化医療戦略を作成する方法であって、前記特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、前記幾つかの患者は、前記幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられており、
前記特定の患者に関連する前記幾つかの組織サンプルの1つにおける複数のマイクロドメインを特定する工程であって、前記複数のマイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている、工程と、
前記複数のマイクロドメインの各々について異種細胞間コミュニケーションネットワークを生成する工程であって、各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、そのマイクロドメインの空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を含む、工程と、
複数の異種細胞間コミュニケーションネットワークに基づいて、前記複数のマイクロドメインの空間的及び時間的な相互依存関係を定量化する工程と、
前記定量化に基づいて、前記特定の患者について個別化医療を設計する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
各マイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成し、前記定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程によって特定され、その工程は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記マイクロドメインのコミュニケーショングラフを備えており、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、請求項に記載の方法。
【請求項4】
各マイクロドメインは、関心のある予後変数の低いリスクをもたらすが、マイクロドメイン間の空間的な近接性及び関係性は、前記関心のある予後変数の全体的なリスクを高める、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記複数のマイクロドメイン内でどの経路が活性化されているか、そして、前記複数のマイクロドメインにわたる前記複数の異種細胞間コミュニケーションネットワーク間の関係がどうなっているかを知らせる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記特定の患者の疾患の進行を遅らせる又は反転させるために、薬剤によって阻害される必要がある情報の流れを明らかにする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
特定の患者における疾患の時間発展を表現する方法であって、前記特定の患者は幾つかの患者のうちの1人であり、前記幾つかの患者は、前記幾つかの患者からの幾つかの組織サンプルから得られたマルチパラメータ細胞及び細胞内画像データと関連付けられており、
前記特定の患者について疾患のランドスケープの幾何学的表現を生成する工程であって、前記幾何学的表現は複数の点を含み、前記幾何学的表現の各点は、(i)特定の時点における前記特定の患者の疾患状況を記述し、前記選択された患者に関連する幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つに基づいており、(ii)前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データに基づいている幾つかの組織サンプルのうちの特定の1つにおけるマイクロドメインに基づいており、(iii)前記マイクロドメインについて空間情報に基づく異種細胞間コミュニケーションの表現を含む前記マイクロドメインについての異種細胞間コミュニケーションネットワークを含む、工程を含む方法。
【請求項8】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、常微分方程式の系を含むシステムバイオロジーモデルに関連付けられている、請求項に記載の方法。
【請求項9】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークについて、前記常微分方程式の系は、前記特定の患者について前記疾患のランドスケープの時間発展を予測するための前記疾患のランドスケープのキネティクスを規定している、請求項に記載の方法。
【請求項10】
各マイクロドメインは、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにおける幾つかの異なる所定の表現型の細胞間の空間的不均一性の定量化を生成し、前記定量化に基づいて前記幾つかの組織サンプルの1つについてマイクロドメインを特定する工程によって特定され、その工程は、前記マルチパラメータ細胞及び細胞内画像データにフェノタイピングを実行して前記幾つかの異なる所定の表現型を特定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
各異種細胞間コミュニケーションネットワークは、前記マイクロドメインのコミュニケーショングラフを備えており、各表現型は、前記コミュニケーショングラフのノードであって、前記コミュニケーショングラフの表現型の各対の間のエッジは、その対における一方の表現型がその対における他方の表現型の存在に与える影響を示す、請求項に記載の方法。
【外国語明細書】