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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038191
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用電解質及び非水電解液
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240312BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20240312BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 10/0563 20100101ALI20240312BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/40
H01M4/48
H01M4/587
H01M10/0563
H01M10/0562
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222146
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2022103955の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000236953
【氏名又は名称】富山薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】寧 太陸
(72)【発明者】
【氏名】清水 和行
(72)【発明者】
【氏名】新田 宏大
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気抵抗を低下させ、かつ充電、放電を繰り返し後も高容量を維持できる、サイクル特性を高めた蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】正極、負極、及び電解質を上記両極間に備える蓄電デバイスであって、前記電解質が、下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表されるリチウム含有錯体化合物を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
(Li)(A)(UF(1)
(Li)(Si)(O)(UF(2)
(Li)(O)(B)(OWF(3)
(Li)(B)(O)n(OR)(OWF(4)
(Li)(O)(B)(OOC-(A)-COO)(OWF(5)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び電解質を上記両極間に備える蓄電デバイスであって、前記電解質が、下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表されるリチウム含有錯体化合物を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
(Li)(A)(UF (1)
(Li)(Si)(O)(UF (2)
(式中、Aは、O、S、P又はNである。Uは、ホウ素原子又はリン原子である。m、nは、それぞれ独立して、1~6である。qは1~12である。xは3又は5である。yは1~6である。)
(Li)(O)(B)(OWF (3)
(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。m、p、xは、それぞれ独立して、1~15である。nは0~15である。qは3又は5である。)
(Li)(B)(O)n(OR)(OWF (4)
(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。nは0~15であり、p、m、x、yは、それぞれ独立して、1~12であり、qは3又は5である。Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルボニル基、又はスルホニル基、であり、これらの基はフッ素原子、酸素原子及び他の置換基を有していてもよい。)
(Li)(O)(B)(OOC-(A)-COO)(OWF (5)
(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。Aは、炭素1~6を有する、アルキレン基、アルケニレン基若しくはアルキニレン基、フェニレン基又は主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基である。m、p、x、yは、それぞれ独立して1~20である。nは0~15である。zは0又は1である。qは3又は5である。)
【請求項2】
前記正極は、リチウム含有遷移金属酸化物、1種類以上の遷移金属を用いたリチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物、又はオリビン型金属リチウム塩からなる正極活物質を含む請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極活物質は、式:Li MO(但し、Mは、Mn、Co、又はNiであり、xは、0.05≦x≦1.20である。)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物である請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属複合酸化物が、前記式:Li MOで表され、かつ、M金属の一部が、当該M金属とは異なり、かつAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、又はYbからなる他の金属で置換された複合酸化物である請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記負極は、炭素、金属リチウム、リチウム含有合金、シリコン、シリコン合金、酸化シリコン、遷移金属酸化物、又は遷移金属窒素化合物からなる負極活物質を含む請求項1~4のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記電解質が、非水電解液又は全固体電解質である請求項1~5のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池である請求項1~5のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイス用電解質、及びそれを含有する蓄電デバイス用非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコンなどに代表される携帯用電子端末等の種々の携帯電子機器の普及に伴い、それらの電源として二次電池は重要な役割を果たしている。これらの二次電池としては、水溶液系電池、非水電解液電池が挙げられる。なかでも、リチウムイオン等を吸蔵、放出できる正極及び負極と、非水電解液とを備える非水電解液二次電池は、高電圧で高エネルギー密度を有し、安全性に優れ、環境問題などの点で、他の二次電池と比較して様々な利点を有している。
【0003】
現在実用化されている非水電解液二次電池としては、例えば、正極活物質としてリチウムと遷移金属との複合酸化物を用い、負極活物質としてリチウムをドープ・脱ドープ可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池の負極活物質では、優れたサイクル特性を有する材料としては、炭素材料が挙げられる。炭素材料のなかでも、黒鉛は単位体積あたりのエネルギー密度を向上できる材料として期待されている。
【0004】
また、リチウム二次電池の特性向上のため、負極/正極の特性のみならず、リチウムイオンの移送を担う非水電解液の特性の向上が求められている。かかる非水電解液としては、非プロトン性有機溶媒に、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCFなどのリチウム塩を溶解した非水溶液が用いられている(非特許文献1)。非プロトン性有機溶媒の代表例として、カーボネート類が知られており、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの各種のカーボネート化合物の使用が提案されている(特許文献1、2)。
【0005】
一方、非水電解液の電解質としては、LiBF、LiPF等が溶解された非水電解液は、リチウムイオンの移送を表す導電率が高く、かつLiBF、LiPFの酸化分解電圧が高いために高電圧で安定であることが知られており、リチウム二次電池の有する高電圧、高エネルギー密度という特性を引き出すことに寄与している。
かかるリチウム二次電池などの非水電解液二次電池を各電源として使用するに当たって、非水電解液に対して、その電気抵抗を低下させてリチウムイオンの伝導性を高め、また、充電、放電を繰り返した後も、電池容量の低下を抑制し、高容量を維持する、所謂サイクル特性を高める高寿命化が求められている。
【0006】
かかる目的を達成するため、非水電解液について、含有される電解質であるリチウム塩の構造を変性せしめることや、特定の化合物を添加することが提案されている。例えば、特許文献3には、非水電解液中に、特定構造を有するビニルスルホン誘導体を添加することが提案されている。また、特許文献4には、特定の構造を有する二官能酸リチウム塩以外のリチウム塩であって、ホウ素原子を有さないリチウム塩を添加することが提案されている。
【0007】
一方、従来から、非水電解液における有機溶媒が可燃性あることによる電池の発火などの懸念のない全固体系のリチウム電池が知られており、そこにおけるリチウムイオン伝導性固体電解質として、硫化リチウムなどのリチウム塩を、硫化ホウ素、硫化リン、硫化ケイ素などと反応させた非晶質化合物が知られている(特許文献5、6)。しかし、これらのリチウム化合物は、一般的に、非水電解液に対する溶解性に欠けるため、蓄電デバイス用電解液として使用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4-184872号公報
【特許文献2】特開平10-27625号公報
【特許文献3】特開平11-329494号公報
【特許文献4】特開2014-22334号公報
【特許文献5】特開平11-219722号公報
【特許文献6】特開2003-68361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蓄電デバイスの非水電解液における既知の電解質であるリチウム塩に代えて使用でき、また、既知のリチウム塩とも併用することもでき、更には、発火のなどの危険性のない非水溶媒を使用しない全固体系の固体電解質としても使用できるリチウム二次電池などの畜電デバイス用電解質の提供を目的にする。
更に、本発明は、上記電解質を使用する非水電解液系及び全固体系のリチウム二次電池などの蓄電デバイス、また、それに使用される非水電解液及び固体電解質の提供を目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々研究を重ねたところ、上記の目的を達成し得る、蓄電デバイス用の新規な電解質を見出した。この電解質は、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイス用の非水溶媒に溶解性を有するために、電気抵抗が低い非水電解液が得られ、かつ、良好な初期特性、サイクル特性に優れたリチウム二次電池が得られ、更には、それ自体が優れたリチウムイオン伝導性を有するために、全固体系のリチウム二次電池が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
本発明は、下記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表されるリチウム含有錯体化合物を含むことを特徴とする蓄電デバイス用電解質にある。
(Li)(A)(UF (1)
(Li)(Si)(O)(UF (2)
(式中、Aは、O、S、P又はNである。Uは、ホウ素原子又はリン原子である。m、nは、それぞれ独立して、1~6である。qは1~12である。xは3又は5である。yは1~6である。)
(Li)(O)(B)(OWF (3)
(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。m、p、xは、それぞれ独立して、1~15である。nは0~15である。qは3又は5である。)
(Li)(B)(O)n(OR)(OWF (4)
(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。nは0~15であり、p、m、x、yは、それぞれ独立して、1~12であり、qは3又は5である。Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルボニル基、スルホニル基、シリル基であり、これらの基はフッ素原子、酸素原子及び他の置換基を有していてもよい。)
(Li)(O)(B)(OOC-(A)-COO)(OWF (5)(式中、Wは、ホウ素原子又はリン原子である。Aは、炭素1~6を有する、アルキレン基、アルケニレン基若しくはアルキニレン基、フェニレン基又は主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基である。m、p、x、yは、それぞれ独立して1~20である。nは0~15である。zは0又は1である。qは3又は5である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓄電デバイス用電解質によれば、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイス用有機溶媒に溶解性を有するために、電気抵抗が低い非水電解液が得られ、かつ、良好な初期特性、サイクル特性に優れたリチウム二次電池などの蓄電デバイス用電解質が得られ、更には、それ自体が優れたリチウムイオン伝導性を有するために、全固体系のリチウム二次電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<電解質>
本発明は、下記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表されるリチウム含有錯体化合物を含むことを特徴とする蓄電デバイス用電解質にある。
(Li)(A) (UF (1)
(Li)(Si)(O)(UF (2)
(式中、A、U、、m、n、q、x、yの定義は、上記したとおりである。)
(Li)(O)(B)(OWF (3)
(式中、W、m、p、x、n、qの定義は、上記したとおりである。)
(Li)(B)(O)n(OR)(OWF (4)
(式中、W、R、n、p、m、x、y、qの定義は、上記したとおりである。)
(Li)(O)(B)(OOC-(A)-COO)(OWF (5)(式中、W、A、m、p、x、y、n、z、qの定義は、上記したとおりである。)
【0014】
上記式(1)、式(2)において、Aは、なかでも、安定したリチウム塩が作りやすく、溶媒への溶解性の理由で、酸素原子、硫黄原子、リン原子又は窒素原子が好ましく、特に、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。Uは、なかでも、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子との結合が作りやすいため、ホウ素原子、リン元素又はヒ素原子が好ましく、特に、ホウ素原子又はリン元素が好ましい。
【0015】
m、nは、なかでも、1~6が好ましく、特に、2~6が好ましい。qは、なかでも、電解質の溶媒への溶解性の理由で2~8が好ましく、特に、3~8が好ましい。
xは、なかでも、電解質の溶媒への溶解性の理由で3又は5が好ましい。yは、なかでも、酸素原子、硫黄原子、リン原子又は窒素原子との結合が作りやすいため1~6が好ましく、特に、1~5が好ましい。
【0016】
上記リチウム含有錯体化合物の例としては、O-(BFLi)(Li)、O-(BFLi)、S-(BFLi)(Li)、S-(BFLi)、N-(BFLi)(Li)、N-(BFLi)3、P-( BFLi)(Li)、P-(BFLi)、SiO(BFLi)(Li)、SiO(BFLi)、O-(PFLi)(Li)、O-(PFLi)、S-(PFLi)(Li)、又はS-(PFLi)が挙げられる。
なお、リチウム含有錯体化合物は、便宜上、上記のように記載されているが、例えば、O-(BFLi)(Li)は、Li-O(-BF Li)の構造を有する錯体であり、他も同様である。
【0017】
リチウム含有錯体化合物としては、なかでも、リチウム含有錯体化合物の安定性及び溶媒への溶解性の理由により、O-(BFLi)(Li)、O-(BFLi)、S-(BFLi)(Li)、S-(BFLi)、N-(BFLi)3、P-(BFLi)、SiO(BFLi)(Li)又はSiO(BFLi)が好ましく、O-(BFLi)(Li)、O-(BFLi)、S-(BFLi)(Li)、S-(BFLi)、SiO(BFLi)(Li)、SiO(BFLi)、O-(PFLi)(Li)、O-(PFLi)、S-(PFLi)(Li)、又はS-(PFLi)、N-(PFLi)3が特に好ましい。
【0018】
上記リチウム含有錯体化合物は、前記リチウム含有錯体化合物が、下記式(6)又は式(7)で表されるリチウム化合物(A)と、三フッ化ホウ素及び三フッ化ホウ素錯体からなる群から選択される一種以上のフッ化ホウ素化合物(B)又は五フッ化リン及び五フッ化リン錯体からなる群から選択される一種以上のフッ化リン化合物(C)と、を反応させて得られる。
(Li)(A) (6)
(Li)(Si)(O) (7)
式(6)、式(7)において、A、m、n、qは、上記式(1)、式(2)における定義と同じであり、また、好ましいものも同じである。
【0019】
式(3)で表されるリチウム化合物(A)としては、酸化リチウム、炭酸リチウム、硫化リチウム、リン化リチウム、窒化リチウム、などが挙げられる。なかでも、酸化リチウム、炭酸リチウム、硫化リチウムが好ましい。
【0020】
式(6)で表されるリチウム化合物(A)としては、ケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムなどの鎖状イノケイ酸リチウム、環状構造のサイクロケイ酸リチウム、層状構造のフィロケイ酸リチウム、三次元構造のテクトケイ酸リチウムなどが例示される。なかでも、ケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムが好ましい。
【0021】
前記フッ化ホウ素化合物(B)としては、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素錯体が挙げられる。三フッ化ホウ素錯体は、三フッ化ホウ素のホウ素原子と酸素含有化合物の酸素とから形成され、三フッ化ホウ素を酸素含有化合物と接触させることによって得られる。酸素含有化合物としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが例示される。
【0022】
フッ化ホウ素化合物(B)の具体例としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn-ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジtert-ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素tert-ブチルメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素エタノール錯体、三フッ化ホウ素プロパノール錯体、三フッ化ホウ素ブタノール錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素エチレンカーボネート錯体、三フッ化ホウ素エチルメチルカーボネート錯体、三フッ化ホウ素ジメチルカーボネート錯体、三フッ化ホウ素ジエチルカーボネート錯体が例示される。なかでも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素エタノール錯体、三フッ化ホウ素プロパノール錯体などが好ましい。
【0023】
前記五フッ化リン化合物(C)としては、五フッ化リン又は五フッ化リン錯体が挙げられる。五フッ化リン錯体は、五フッ化リンと酸素含有化合物の酸素とから形成され、五フッ化リンを上記酸素含有化合物と接触させることによって得られる。
五フッ化リン化合物(C)の具体例としては、五フッ化リン、五フッ化リンエチレンカーボネート錯体、五フッ化リンジメチルメチルカーボネート錯体、五フッ化リンジエチルメチルカーボネート錯体、五フッ化リンエチルメチルカーボネート錯体が挙げられる。なかでも、五フッ化リン、五フッ化リンジメチルメチルカーボネート錯体、五フッ化リンジエチルメチルカーボネート錯体、又は五フッ化リンエチルメチルカーボネート錯体が好ましい。
【0024】
前記リチウム含有錯体化合物は、溶媒の存在下又は不存在下に、リチウム化合物(A)と、フッ化ホウ素化合物(B)及び/又はフッ化リン化合物(C)とを、好ましくは不活性雰囲気中で接触させ、好ましくは0~80℃、より好ましくは、10~30℃で反応させることによって得ることができる。上記溶媒としては、反応に不活性である限り限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0025】
具体的には、例えば、フッ化ホウ素化合物(B)及び/又はフッ化リン化合物(C)をメタノールなどの溶媒中に溶解若しくは分散させた液に対し、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で好ましくは、0~50℃で、リチウム化合物(A)を徐々に添加する。次いで、好ましくは30~80℃にて、1~24時間攪拌することにより反応せしめられる。反応液を濃縮し、溶媒であるメタノールを除去することによりリチウム含有錯体化合物の粗体が得られる。
得られるリチウム含有錯体化合物の粗体は、エーテルなどにより洗浄し、得られる精製物を減圧乾燥することによりが高純度のリチウム含有錯体化合物が得られる。
【0026】
一方、式(3)、式(4)、式(5))においては、一部のホウ素に結合されている酸素を介し、Wと錯体結合を形成し安定してホウ素含有錯体化合物を形成できることを特徴としている。リチウム含有ホウ素錯体化合物中のホウ素の一部または全数が錯体形成することができる。ここでその結合形式を限定するものではないが、溶媒への溶解性の観点から8のホウ素原子に一つ以上のWと結合が形成されていることが好ましい。また、同一ホウ素上に一つ以上のWと錯体結合を形成することができる。
【0027】
Wは、なかでも、酸素原子との結合が作りやすいため、ホウ素原子、リン元素又はヒ素原子が好ましく、特に、ホウ素原子又はリン元素が好ましい。また、前記リチウム含有ホウ素錯体化合物中のリチウム原子のモル数100に対し、前記Wのモル数30~100の比率が好ましい。
Aは、なかでも、炭素数が1~6を有するアルキレン基が好ましく、炭素数が2~6を有するアルケニレン基、又は炭素数が2~6を有するアルキニレン基が好ましい。
アルキレン基の好ましい例としては、メチレン、エチレン、ジフルオロメチレン、テトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロヘキシレン等が挙げられる。主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基の好ましい例としては、酸素原子又は硫黄原子に炭素数が1~4のアルキレン基を結合されていることが好ましい。
アルケニレン基の好ましい例としては、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレンなどが挙げられる。特に、二重結合有する炭素数が2~6を有するアルケニレン基が好ましい。
アルキニレン基の好ましい例としては、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレン等が挙げられる。特に、炭素数が3~6を有するアルキニレン基が好ましい。
フェニレン基の好ましい例としては、フェニレン、ジフルオロフェニレンなどが挙げられる。
式(3)中、Aが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、又は主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基である場合、これらの基の有する水素原子は、ハロゲン、ヒドロキシル基、シアノ基又はニトロ基などで任意に置換されていてもよい。
【0028】
Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルボニル基、スルホニル基、シリル基、含ホウ素基又は含リン基が好ましく、アルキル基、カルボニル基、スルホニル基、フェニル基、シリル基、含ホウ素基、又は含リン基が特に好ましい。
nは、0~15が好ましく、m、p、yは、なかでも、1~20が好ましく、特に、1~12が好ましい。qは、3又は5が好ましい。xは、なかでも、電解質の溶媒への溶解性の理由で1~8が好ましく、特に、2~8が好ましい。
【0029】
上記式(3)で表されるリチウム含有ホウ素錯体化合物の例としては、BO(OBFLi)、B(OBFLi)、LiB(OBFLi),B13(OBFLi)、B(OBFLi)、B(OBFLi)、B(OBFLi)、B10(OBFLi)、BO(OBFLi)、LiBO(OBFLi)、LiBO(OBFLi)、BO(OBFLi)、Li(OBFLi)、B(OBFLi)、B(OBFLi)、Li(OBFLi)、LiO(OBFLi)、Li(OBFLi)、Li(OBFLi)、Li(OBFLi)、Li(OBFLi)、Li6O7(OBFLi)、Li(OBFLi)が挙げられる。
【0030】
上記式(4)で表されるリチウム含有ホウ素錯体化合物の例としては、B(OC(=O)CH(OBFLi)、B(OC(=O)CF(OBFLi)、BO(OCH(OBFLi)、BO(OCHCH(OBFLi)、BO(OCFCF(OBFLi)、BO(OC(=O)CH(OBFLi)、BO(OC(=O)CF(OBFLi)、LiB(OC(=O)CF(OBFLi)、BO(OSOCH(OBFLi)、BOOSOCF(OBFLi)、LiB(OSO2CF3)(OBFLi)、BO(OSi(CH(OBFLi)が挙げられる。
【0031】
上記式(5)で表されるリチウム含有ホウ素錯体化合物の例としては、BO(OOC-COO)(OBFLi)、BO(OOCCH2COO)(OBFLi)、BO(OOC(CH22COO)(OBFLi)、BO(OOC(CF22COO)(OBFLi)、BO(OOC(CH23COO)(OBFLi)、BO(OOC(CH2C(=CH2))COO)(OBFLi)、BO(OOC(C(CH23)COO)(OBFLi)、BO(OOCCH2OCH2COO)(OBFLi)、BO(OOCCH2SCH2COO)(OBFLi)、BO(OOCC24SC24COO)(OBFLi)、B43(OOC-COO)2(OBFLi)、lib44(OOC-COO)2(OBFLi)、B43(OOCCH2COO)2(OBFLi)、B43(OOCCH2SCH2COO)2(OBF3Li)、LiB44(OOCCH2SCH2COO)2(OBFLi)、B43(OOC(CH2C(=CH2))COO)2(OBFLi)、Li2O(OOC-COO)2(OBFLi)、Li2O(OOCCH2COO)2(OBFLi)、Li2O(OOCCH2SCH2COO)2(OBFLi)、Li2O(OOC(CH2C(=CH2))COO)2(OBFLi)等が挙げられる。
なお、リチウム含有ホウ素錯体化合物の上記表現は、錯体の結合構造を示すものではなく、便宜上、上記のように元素比率を記載されている。
【0032】
本発明の非水電解液における上記リチウム含有ホウ素錯体化合物の含有量は、好ましくは0.01~30質量%、さらに好ましくは0.1~25質量%、特に好ましくは0.1~5質量%が好適である。濃度が0.01質量%未満では、抵抗低減効果が少なくなってしまう。一方、30重量%を超えた場合では、抵抗成分が高くなり、寿命性能が悪くなり、好ましくない。
【0033】
上記リチウム含有ホウ素錯体化合物は、前記リチウム含有錯体化合物が、下記式(8)、式(9)又は式(10)で表されるリチウム含有ホウ素化合物(D)と、三フッ化ホウ素及び三フッ化ホウ素錯体からなる群から選択される一種以上のフッ化ホウ素化合物(E)又は五フッ化リン及び五フッ化リン錯体からなる群から選択される一種以上のフッ化リン化合物(F)と、を反応させて得られる。
(Li)m(B)p(O)n (8)
(Li)m(B)p(O)n(OR)y (9)
(Li)[(-O-)B(OOC-(A)z-COO)[B(-O-)(10)
式(8)、式(9)、式(10)において、A、R、m、n、p、q、x、y、zは、上記式(3)、式(4)、式(5)における定義と同じであり、また、好ましいものも同じである。
【0034】
式(8)で表されるリチウム含有ホウ素化合物としては、m、p、nは、それぞれ独立して、1~20である。
式(8)で表されるリチウム含有ホウ素化合物好ましい具体例としては、LiBO、Li、Li17、Li11、Li11、LiBO8、LiB11、LiBO、Li、Li、Li、Li、Li13等が挙げられる。
【0035】
式(9)で表されるリチウム含有ホウ素化合物としては、n、m、x、yは、それぞれ独立して、1~12であり、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルボニル基、スルホニル基、シリル基、これらの基はフッ素原子、酸素原子及び他の置換基を有していてもよい。
Rとしては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルボニル基、スルホニル基、シリル基、含ホウ素基又は含リン基が好ましく、アルキル基、カルボニル基、スルホニル基、フェニル基、シリル基、含ホウ素基又は含リン基が特に好ましい。
【0036】
アルキル基としては、炭素数が1~8の鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。炭素数が1~8の鎖状又は環状のアルキル基が例えば、メチル基、エチル基、プルピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、二重結合が含有する炭素数が2~5のアルケニル基が好ましく、が例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。
【0037】
アリール基の好ましい例としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
カルボニル基の好ましい例としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロブチルカルボニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基等が挙げられる。
【0038】
スルホニル基の好ましい例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、ペンタフルオロエチルスルホニル基等が挙げられる。
シリル基の好ましい例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
含ホウ素基の好ましい例としては、ジメチルボリル基、ジメトキシボリル基が挙げられる。
【0039】
式(9)で表されるリチウムホウ素化合物の好ましい具体例としては、LiBO(OC(=O)CH、LiBO(OC(=O)CF、Li(OCH、Li(OCHCH、Li(OCFCF、Li(OC(=O)CH、Li(OC(=O)CF、Li(OSOCH、Li(OSOCF、Li(OSi(CH等が挙げられる。
【0040】
式(10)で表されるリチウム含有ホウ素化合物としては、Aは、炭素1~6を有する、アルキレン基、アルケニレン基若しくはアルキニレン基、フェニレン基、又は主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基である。n、pは、それぞれ独立して、1又は2であり、qは0~3であり、m、x、y、zは、それぞれ独立して、0~10である。
なかでも、Aは、炭素数が好ましくは1~6、より好ましくは2~6を有するアルキレン基、アルケニレン基若しくはアルキニレン基が好ましい。
アルキレン基の好ましい例としては、メチレン、エチレン、テトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロヘキシレン等が挙げられる。
【0041】
アルケニレン基としては、二重結合が含有する炭素数が2~5のアルケニレン基が好ましい。二重結合が含有する炭素数が2~4のアルケニレン基が例えば、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレンなどが例示できる。
フェニレン基の好ましい例としては、フェニレン、ジフルオロフェニレンなどが挙げられる。主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基の好ましい例としては、酸素原子又は硫黄原子に炭素数が1~4のアルキレン基を結合されていることが好ましく、アルキレン基として、メチレン、エチレン、テトラフルオロエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロプロピレン、シクロブチレン等が挙げられる。
【0042】
Aが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、又は主鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するアルキレン基である場合、これらの基の有する水素原子は、ハロゲン、ヒドロキシル基、シアノ基又は ニトロ基などで任意に置換されていてもよい。
また、式(6)における、n、pは、それぞれ独立して、好ましくは1又は2であり、m、x、y、zは、それぞれ独立して、好ましくは0~10である。
【0043】
上記リチウムホウ素化合物の好ましい具体例としては、LiBO(OOC-COO)、LiBO(OOCCH2COO)、LiBO(OOC(CH22COO)、LiBO(OOC(CF22COO)、LiBO(OOC(CH23COO)、LiBO(OOC(CH2 C(=CH2))COO)、LiBO(OOC(C(CH23)COO)、LiBO(OOCCH2OCH2COO)、LiBO(OOCCH2SCH2COO)、LiBO(OOCC24SC24COO)、Li245(OOC-COO)2、Li245(OOCCH2COO)2、Li245(OOCCH2SCH2COO)2、Li245(OOC(CH2C(=CH2))COO)2、Li423(OOC-COO)2、Li423(OOCCH2COO)2、Li423(OOCCH2SCH2COO)2、Li423(OOC(CH2C(=CH2))COO)2が挙げられる。
【0044】
上記リチウムホウ素化合物は、四ホウ酸リチウム等のリチウム塩と同様の製造方法により容易に得ることができる。例えば、ホウ酸と、水酸化リチウムや炭酸リチウム等のリチウム化合物と、対応するカルボン酸化合物の水溶液を20~80℃に保ち、容易に前駆体結晶が得ることができる。得た結晶を200~400℃の条件下で脱水させ、当該リチウムホウ素化合物を好適に得られる。
【0045】
前記フッ化ホウ素化合物(E)としては、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素錯体が挙げられる。三フッ化ホウ素錯体は、三フッ化ホウ素のホウ素原子と酸素含有化合物の酸素とから形成され、三フッ化ホウ素を酸素含有化合物と接触させることによって得られる。酸素含有化合物としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルブメチルカーボネートなどが例示される。
【0046】
前記五フッ化リン化合物(F)としては、五フッ化リン又は五フッ化リン錯体が挙げられる。五フッ化リン錯体は、五フッ化リンと酸素含有化合物の酸素とから形成され、五フッ化リンを上記酸素含有化合物と接触させることによって得られる。
五フッ化リン化合物(F)の具体例としては、五フッ化リン、五フッ化リンエチレンカーボネート錯体、五フッ化リンエチルメチルカーボネート錯体が挙げられる。なかでも、五フッ化リン、五フッ化リンエチルメチルカーボネート錯体が好ましい。
【0047】
前記リチウム含有ホウ素錯体化合物は、溶媒の存在下又は不存在下に、リチウム含有ホウ素化合物(D)と、フッ化ホウ素化合物(E)及び/又はフッ化リン化合物(F)とを、好ましくは不活性雰囲気中で接触させ、好ましくは0~80℃、より好ましくは、10~30℃で反応させることによって得ることができる。上記溶媒としては、反応に不活性である限り限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルブメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0048】
具体的には、例えば、フッ化ホウ素化合物(E)及び/又はフッ化リン化合物(F)をメタノールなどの溶媒中に溶解若しくは分散させた液に対し、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で好ましくは、0~50℃で、リチウム含有ホウ素化合物(D)を徐々に添加する。次いで、好ましくは30~80℃にて、1~24時間攪拌することにより反応せしめられる。反応液を濃縮し、溶媒であるメタノールを除去することによりリチウム含有ホウ素錯体化合物の粗体が得られる。
得られるリチウム含有ホウ素錯体化合物の粗体は、エーテルなどにより洗浄し、得られる精製物を減圧乾燥することによりが高純度のリチウム含有ホウ素錯体化合物が得られる。
【0049】
<非水溶媒>
本発明の電解質を非水電解液として使用する場合、非水溶媒としては、種々の有機溶媒を用いることができる。例えば、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートになどの環状カーボネート;γープチロラクトン及びγーバレロラクトンなどのラクトン;スルホランなどの環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロビルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンなどの鎖状グリコールエーテル;1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、エトキシ-2,2,2-トリフルオロエトキシ-エタン等の含フッ素エーテルが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
非水溶媒としては、イオン伝導性の観点から、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどのカーボネート系溶媒を用いることがより好ましい。カーボネート系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを組合せて用いることがさらに好ましい。環状カーボネートとしては、上記のなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。鎖状カーボネートとしては、上記のなかでも、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが好ましい。カーボネート系溶媒を用いる場合、電池物性改善の点から、必要に応じて、ニトリル系化合物、スルホン系等の別の非水溶媒をさらに添加することができる。
【0051】
非水溶媒として、特に、鎖状炭酸エステル、飽和環状炭酸エステル、及び不飽和環状炭酸エステルを含有するのが好ましい。かかる3種の炭酸エステルを含有する場合には、特に好ましい。非水溶媒は、非水電解液中で、鎖状炭酸エステル、飽和環状炭酸エステル、及び不飽和環状炭酸エステルが、それぞれ、30~80重量%、10~50重量%、及び0.01~5重量%含まれることが好ましく、なかでも、それぞれ、50~70重量%、20~30重量%、及び0.1~2重量%含まれることがより好ましい。
【0052】
上記鎖状炭酸エステルが30重量%よりも小さい場合には、電解液の粘度が上昇し、加えて、低温で凝固してしまうため、充分な特性が得られなくなり、逆に80重量%よりの大きい場合には、リチウム塩の解離度/溶解度が低下し電解液のイオン電導度が低下してしまう。飽和環状炭酸エステルが10重量%よりも小さい場合には、リチウム塩の解離度/溶解度が低下し、電解液のイオン電導度が低下し、逆に50重量%よりの大きい場合には、電解液の粘度が上昇し、加えて、低温で凝固してしまうため、充分な特性が得られなくなる。
【0053】
また、不飽和環状炭酸エステルが0.01重量%よりも小さい場合には、負極表面に良好な被膜が形成されなくなるためサイクル特性が低下し、逆に5重量%より大きい場合には、例えば、高温保存時に電解液がガス発生しやすい状態となり、電池内の圧力が上昇するなど実用上好ましくない状態になる。
【0054】
鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭素数が3~9の鎖状カーボネートが挙げられる。具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート、n-ブチルイソブチルカーボネート、n-ブチル-t-ブチルカーボネート、イソブチル-t-ブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート、n-ブチル-n-プロピルカーボネート、イソブチル-n-プロピルカーボネート、t-ブチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルイソプロピルカーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、t-ブチルイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。これらのなかで、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましいが、特に限定されるものではない。またこれら鎖状炭酸エステルは2種類以上混合してもよい。
【0055】
飽和環状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。このなかで、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートがより好ましく、プロピレンカーボネートを使用することにより、幅広い温度範囲にて安定した非水電解液を提供することができる。これら飽和環状炭酸エステルは2種類以上混合してもよい。
【0056】
また、不飽和環状炭酸エステルとしては、下記の一般式(I)で表されるビニレンカーボネート誘導体が挙げられる。
【化1】
上記一般式(I)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数が1~12のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基である。なかでも、R及びRが水素(ビニレンカーボネートである)であるのが好ましい。
【0057】
上記ビニレンカーボネート誘導体の具体例として、以下の化合物を挙げられる。ビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネートなどであるが、これらに限定されるものではない。
なかでも、ビニレンカーボネートが効果的であり、かつコスト的にも有利である。なお、上記ビニレンカーボネート誘導体に関しては、少なくとも1種であり、単独又は混合することも可能である。
また、別の不飽和環状炭酸エステルとしては、下記の一般式(II)で表されるアルケニルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0058】
【化2】
【0059】
上記式(II)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~12のハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は炭素数が2~12のアルケニル基であり、その内少なくとも一つは炭素数が2~12のアルケニル基である。なかでも、R~Rのうちの一つがビニル基であり、残りが水素である場合 上記アルケニルエチレンカーボネートの具体例としては、4-ビニルエチレンカーボネート、4-ビニル-4-メチルエチレンカーボネート、4-ビニル-4-エチルエチレンカーボネート、4-ビニル-4-n-プロピルエチレンカーボネートなどの化合物を挙げられる。
【0060】
非水溶媒には、上記の成分のほかに他の各種溶媒が含まれていてもよい。これらの他の各種溶媒として、例えば、環状カルボン酸エステル、炭素数3~9の鎖状エステル、炭素数3~6の鎖状エーテルなどが挙げられる。これらの他の各種溶媒は、非水電解液中、好ましくは0.2~10重量%、特に好ましくは0.5~5重量%含有される。
【0061】
環状カルボン酸エステル(炭素数が3~9のラクトン化合物)としては、例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができる。これらのなかで、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンがより好ましい。また、これら環状カルボン酸エステルは2種類以上混合してもよい。
【0062】
また、炭素数3~9の鎖状エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸-イソプロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチルを挙げることができる。なかでも、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルが好ましい。
【0063】
また、炭素数3~6の鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等を挙げることができる。なかでも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンがより好ましいができる。
【0064】
さらに、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどを使用することができる。
【0065】
<リチウム塩>
非水電解液には、上記した本発明の電解質とともに、従来、知られているリチウム塩が溶解されていてもよい。かかるリチウム塩の具体例は、以下の通りである。
(A)無機リチウム塩:
LiPF、LiAsF、LiBF等の無機フッ化物塩、LiClO、LiBrO、LiIO、等の過ハロゲン酸塩など。
【0066】
(B)有機リチウム塩:
LiCFSO等の有機スルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルキルスルホン酸イミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルキルスルホン酸メチド塩;LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(n-C、LiPF(n-C、LiPF(n-C、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C、LiB(CF、LiBF(CF、LiBF(CF、LiBF(CF)、LiB(C、LiBF(C、LiBF(C、LiBF(C)、LiB(n-C、LiBF(n-C、LiBF(n-C、LiBF(n-C)、LiB(iso-C、LiBF(iso-C、LiBF(iso-C、LiBF(iso-C)等の一部のフッ素をパーフルオロアルキル基で置換した無機フッ化物塩フルオロホスフェートや、パーフルオロアルキルの含フッ素有機リチウム塩が挙げられる。
【0067】
上記のなかでも、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)又はLiN(CFSO)(CSO)がより好ましい。これらリチウム塩は2種以上混合してもよい。
【0068】
非水電解液における本発明の電解質の含有量は、好ましくは0.01~10モル/リットル、特には、より好ましくは、0.01~3.0モル/リットルが好適である。この濃度が低すぎると、絶対的な濃度不足により非水電解液のイオン伝導率で不十分であり、濃度が濃すぎると、粘度上昇のためイオン伝導率が低下し、また低温での析出が起こりやすくなるなども問題も生じるため非水電解液電池の性能が低下し好ましくない。
【0069】
また、非電解液に上記した既知のリチウム化合物が含有される場合、かかるリチウム塩は、非水電解液中に、好ましくは0.5~3モル/リットル、特には、0.7~2モル/リットルが好適である。この濃度が低すぎると、絶対的な濃度不足により非水電解液のイオン伝導率で不十分であり、濃度が濃すぎると、粘度上昇のためイオン伝導率が低下し、また低温での析出が起こりやすくなるなども問題も生じるため、非水電解液電池の性能が低下し好ましくない。
【0070】
<他の添加物質>
非水電解液中には、蓄電デバイスの寿命性能や抵抗性能を改善するために、上記リチウム塩及びリチウムホウ素化合以外に、他の添加物質が含有されていてもよい。かかる他の添加物質としては、例えば、含硫黄化合物、環状酸無水物、カルボン酸化合物、及び含ホウ素化合物からなる群より選ばれる1種以上が使用できる。
【0071】
上記含硫黄化合物としては、1,3-プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン-2-オキシド(1,2-シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5-ビニル-ヘキサヒドロ1,3,2-ベンゾジオキサチオール-2-オキシド、1,4-ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3-ブタンジオールジメタンスルホネート、メチレンメタンジスルホン酸、エチレンメタンジスルホン酸、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、ジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホ二ル)メタン等が挙げられる。
【0072】
上記環状酸無水物としては、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、2-フェニルグルタル酸無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フルオロコハク酸無水物、テトラフルオロコハク酸無水物等のカルボン酸無水物、1,2-エタンジスルホン酸無水物、1,3-プロパンジスルホン酸無水物、1,4-ブタンジスルホン酸無水物、1,2-ベンゼンジスルホン酸無水物、テトラフルオロ-1,2-エタンジスルホン酸無水物、ヘキサフルオロ-1,3-プロパンジスルホン酸無水物、オクタフルオロ-1,4-ブタンジスルホン酸無水物、3-フルオロ-1,2-ベンゼンジスルホン酸無水物、4-フルオロ-1,2-ベンゼンジスルホン酸無水物、3,4,5,6-テトラフルオロ-1,2-ベンゼンジスルホン酸無水物等が挙げられる。
【0073】
上記カルボン酸化合物としては、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、ジフルオロマロン酸リチウム、コハク酸リチウム、テトラフルオロコハク酸リチウム、アジピン酸リチウム、グルタル酸リチウム、アセトンジカルボン酸リチウム、2-オキソ酪酸リチウム、オキサル酢酸リチウム、2-オキソグルタル酸リチウム、アセト酢酸リチウム、3-オキソシクロブタンカルボン酸、3-オキソシクロペンタンカルボン酸、2-オキソ吉草酸リチウム、ピルビン酸リチウム、グリオキシル酸リチウム、3,3-ジメチル-2-オキソ酪酸リチウム、2-ヒドロキシプロピオン酸リチウム、2-メチル乳酸リチウム、酒石酸リチウム、シアノ酢酸リチウム、2-メルカプトプロピオン酸リチウム、メチレンビス(チオグリコール酸)チオジこはく酸リチウム、3-(メチルチオ)プロピオン酸リチウム、3,3'-チオジプロピオン酸リチウム、ジチオジグリコール酸リチウム、2,2'-チオジグリコール酸リチウム、チアゾリジン-2,4-ジカルボン酸リチウム、アセチルチオ酢酸リチウム等が挙げられる。
【0074】
上記含ホウ素化合物としては、LiBF2(C24)、LiB(C242、LiBF2(CO2CH2CO2)、LiB(CO2CH2CO22、LiB(CO2CF2CO22、LiBF2(CO2CF2CO2)、LiBF3(CO2CH3)、LiBF3(CO2CF3)、LiBF2(CO2CH32、LiBF2(CO2CF32、LiBF(CO2CH33、LiBF(CO2CF33、LiB(CO2CH34、LiB(CO2CF34、Li227、Li22等が挙げられる。
上記の他の添加物質は、それぞれの1種、又は2種以上を併用してもよい。また、非水電解液が添加物質を含有する場合、非水電解液におけるその含有量は、0.01~5質量%が、好ましくは、0.1~2質量%が好ましい。
【0075】
<蓄電デバイス>
本発明の電解質は、前記したように、非水電解液系蓄電デバイス、及び全固体系蓄電デバイスの何れも使用できる。蓄電デバイスとしては、リチウム(イオン)二次電池、電気二重層キャパシタ、正極又は負極の一方が電池であり、他方の電極が二重層であるハイブリッド型電池などの種々のデバイスが挙げられる。これらの蓄電デバイスにおいて本発明の電解質は、いずれも、既知の方法や方式で使用することができる。
以下は、その代表例である非水電解液系リチウムイオン二次電池について説明する。
【0076】
リチウムイオン二次電池で負極を構成する負極活物質としては、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能な炭素材料、金属リチウム、リチウム含有合金、又はリチウムとの合金化が可能なシリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能な酸化スズ、酸化シリコン、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能な遷移金属酸化物、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能な遷移金属窒素化合物、あるいはこれらの混合物のいずれをも用いることができる。
【0077】
なお、負極は、銅製の箔やエキスパンドメタルなどの集電体上に、負極活物質が形成された構成が一般的である。負極活物質の集電体への接着性を向上させるために例えば、ポリフッ化ビニリデン系バインダー、及びラテックス系のバインダーなどを含有してもよく、導電助剤としてカーボンブラック、アモルファスウイスカーカーボンなどを加えて使用してもよい。
【0078】
負極活物質を構成する炭素材料としては、例えば、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。炭素材料は、黒鉛化したものでもよい。炭素材料としては、特にX線回折法で測定した(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましく、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が望ましい。このような炭素材料を使用すると、非水電解液電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0079】
さらに、上記炭素材料中にホウ素を含有するものや、金、白金、銀、銅、Sn、Si等金属で被覆したもの、あるいは非晶質炭素で被覆したもの等を使用することができる。これらの炭素材料は、1種類を使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせ混合使用してもよい。
【0080】
また、リチウムとの合金化が可能なシリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金、リチウムイオンのド-プ・脱ドープが可能な酸化スズ、酸化シリコン、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属酸化物を用いた場合は、いずれも上述の炭素質材料よりも重量あたりの理論容量が高く、好適な材料である。
【0081】
一方、正極を構成する正極活物質は、充放電が可能な種々の材料から形成できる。例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、1種類以上の遷移金属を用いたリチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物、オリビン型金属リチウム塩等が挙げられる。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnOなどのLixMO(ここで、Mは1種以上の遷移金属であり、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.20である)で表されるリチウムと一種以上の遷移金属との複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)が挙げられる。
【0082】
更には、上記のリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Yb等の他の金属で置換した複合酸化物、FeS、TiS、V、MoO、MoSなどの遷移元素のカルコゲナイド或いはポリアセチレン、ポリピロール等のポリマー等を使用することができる。なかでも、Liのドープ及び脱ドープが可能なリチウム遷移金属複合酸化物及び遷移金属原子の一部置換された金属複合酸化物材料が好ましい。
【0083】
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0084】
また、正極は、アルミニウム、チタン、若しくはステンレス製の箔、又はエキスパンドメタルなどの集電体上に、正極活物質が形成された構成が一般的である。正極活物質の集電体への接着性を向上させるために、例えば、ポリフッ化ビニリデン系バインダー、及びラテックス系のバインダー、正極内の電子伝導性を向上させるためにカーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどを含有してもよい。
【0085】
セパレ-タは、正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜が好ましく、例えば、微多孔性高分子フィルムなどの多孔性膜が使用される。微多孔性高分子フィルムとしては、特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、さらに具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムなどが好ましい。さらにセパレ-タとして、高分子電解質を使用することもできる。高分子電解質としては、例えばリチウム塩を溶解した高分子物質や、電解液で膨潤させた高分子物質なども使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
非水電解液は、該非水電解液により高分子物質を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよく、また、多孔性ポリオレフィンフィルムと高分子電解質を併用した形のセパレータに非水電解液を浸み込ませてもよい。
本発明の非水電解液を使用したリチウムイオン二次電池の形状については特に限定されることはなく、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、ボタン型などの種々の形状にすることができる。
【実施例0087】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内での変更が可能である。
<電池の作製>
下記する正極と下記する負極とを使用し、正極、負極が厚み23μmのセパレータ(F23DHA、東レバッテリセパレータフィルム社製)を介して巻回された扁平巻状電極群をケースに収納して、縦30mm×横30mm×厚さ2.0mmの直方体形状を有する電池セルを作製した。
正極:結着剤であるポリフッ化ビニリデン5質量%と、導電剤であるアセチレンブラック4質量%と、リチウム、ニッケル、マンガン及びコバルトの複合酸化物粉末である正極活物質LiNi0.6Mn0.2Co0.2 91質量%と、を混合してなる正極合材に、N-メチルピロリドンを加えてペースト状に調製し、これを厚さ18μmのアルミニウム箔集電体両面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延することによって作製した。
【0088】
負極:人造黒鉛化性炭素粉末95.8質量%、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)2.0質量%及びカルボキシメチルセルロース2.2質量%水溶液を混合し、分散媒に水を用いてスラリーを調製し、このスラリーを厚さ12μmの銅箔の両面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延することによって作製した。
【0089】
上記で作製した電池セルを用いて、以下のa~cの手順でリチウムイオン二次電池を作製した。
a.各種電解液を0.55g量り採り、電池セルの注液口に注液し、減圧した後、注液口を封口した。
b.封口した電池セルを25℃雰囲気下に保った状態で、4.2Vまで8mAで充電した後、3.0Vまで8mAで放電した。
c.3.0Vまで放電した電池セルの内部ガスを減圧除去し、電池を作製した。
【0090】
<電池評価>
上記で作製した電池について、以下のようにして充放電特性を測定した。
a.抵抗変化率
高温サイクル試験前、25℃にて、SOC(State of Charge)50%まで充電し、其々の環境下にて、それぞれ0.2C、0.5C、1.0C、2.0Cで10秒間放電して、初期直流抵抗値を求めた。
そして、45℃雰囲気中、1Cレートで4.2Vまで充電した後、同雰囲気下で、1Cレートで3.0Vまで放電し、200サイクルに達するまで繰り返した後、上記高温サイクル試験前と同様の条件でサイクル後の直流抵抗値を求めた。この初期直流抵抗値及びサイクル後の直流抵抗値より下記式(1)を用いて抵抗変化率(%)を求めた。
抵抗変化率=(サイクル後の抵抗値/初期抵抗値)×100 (1)
【0091】
b.容量維持率
45℃雰囲気中、1Cレートで4.2Vまで充電した後、同雰囲気下で、1Cレートで3.0Vまで放電し、その放電容量値を初期容量値とした。次いで、同条件で、200サイクルに達するまで繰り返した。この初期容量値及びサイクル後の容量値より下記式(2)を用いて容量維持率(%)を求めた。
容量維持率=(サイクル後の容量値/初期容量値)×100 (2)
<実施例Aシリーズ>
【0092】
<製造例1>
アルゴン雰囲気下で、500mlの三角フラスコに、100mlのメタノールを入れ、30gの酸化リチウムを加えた後、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。次に、上記混合液を10℃に保ち、撹拌しながら、290gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を5時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
続いて、反応液を濃縮し、メタノールを除去し、酸化リチウム/2BF錯体の粗体を得た。得られた酸化リチウム/2BF錯体の粗体を其々50mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄し、過剰の三フッ化ホウ素メタノール錯体を除去した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、157gの酸化リチウムと2BF錯体であるO-(BFLi)を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が99.5であった。
【0093】
<製造例2>
290gの三フッ化ホウ素メタノール錯体の代わりに、132gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を使用した他は、製造例1と同様に実施することにより、91gの酸化リチウム/BF錯体である(O-(BFLi)(Li))を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が48であった。
【0094】
<製造例3>
アルゴン雰囲気下で、500mlの三角フラスコに、100mlのメタノールを入れ、23gの硫化リチウムを加えた後、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。
次に、上記混合液を10℃に保ち、155gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を5時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
続いて、反応液よりジエチルエーテルを除去し、硫化リチウム/2BF錯体の粗体を得た。得られた硫化リチウム/2BF錯体の粗体を其々50mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、87gの硫化リチウム/2BF錯体である(S-(BFLi))を得た。得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が99.8であった。
【0095】
<製造例4>
アルゴン雰囲気下で、155gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の代わりに、76gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用した他は、製造例3と同様に実施することにより、53gの硫化リチウム/BF錯体である(S-(BFLi)(Li))を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が51であった。
【0096】
<製造例5>
300mlのビーカーに、其々50mlのメタノールと44gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を入れ、混合液を作製した。
次に、アルゴン雰囲気下でこの混合液を10℃に保ち、撹拌しながら、3.4gの窒化リチウムを5時間かけて加えた。
続いて、反応液を濃縮し、メタノールを除去し、窒化リチウム/3BF錯体の粗体を得た。得られた窒化リチウム/3BF錯体の粗体を其々20mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、18gの窒化リチウム/3BF錯体である(N-(BFLi))を得た。得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が98.5であった。
【0097】
<製造例6>
44gの三フッ化ホウ素メタノール錯体の代わりに、29.5gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を使用した他は、製造例5と同様に実施することにより、14.5gの窒化リチウム/2BF錯体である(N-(BFLi)2(Li))を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が68であった。
【0098】
<製造例7>
300mlのビーカーに、其々50mlのメタノールと44gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を入れ、混合液を調製した。
次に、アルゴン雰囲気下でこの混合液を10℃に保ち、撹拌しながら、5.2gのリン化三リチウムを5時間かけて加えた。続いて、反応液を濃縮し、メタノールを除去し、リン化リチウム/3BF錯体の粗体を得た。得られたリン化リチウム/3BF錯体の粗体を其々20mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、19gのリン化リチウム/3BF錯体である(P-(BFLi))を得た。得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が90であった。
【0099】
<製造例9>
アルゴン雰囲気下で、300mlの三角フラスコに、50mlのメタノールを入れ、27gのメタケイ酸リチウムを加えた後、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。
次に、上記混合液を10℃に保ち、86gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を5時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
続いて、反応液よりメタノールを除去し、メタケイ酸リチウム/2BF錯体の粗体を得た。得られたメタケイ酸リチウム/2BF錯体の粗体を其々50mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、62gのメタケイ酸リチウム/2BF錯体である(SiO-(BFLi))を得た。得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が99.5であった。
【0100】
<製造例10>
86gの三フッ化ホウ素メタノール錯体の代わりに、43gの三フッ化ホウ素メタノール錯体を使用した他は、製造例9と同様に実施することにより、14.5gのメタケイ酸リチウム/2BF錯体である((SiO-(BFLi)(Li))を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム100に対して、ホウ素元素が49であった。
【0101】
<実施例1~4>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の混合溶媒(体積比が30:68:2)中に、電解質である、O-(BFLi)又はS-(BFLi)を添加したところ良好に溶解し、これにより表1に示す実施例1~4で使用する各電解液を調製した。
上記で調製した各電解液を用いて、上記した電池の作製手順に従って、実施例1~4の電池を作製した後、上記した抵抗変化率及び容量維持率を求めた。それらの結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
表1に示すように、実施例1~4の電池は、サイクル容量維持率を高く維持すると共に、抵抗変化率も低く抑える効果を示した。
【0103】
<実施例5~8、比較例1>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比が30:70)に、リチウム塩としてLiPFを1mol/リットルの濃度になるように溶解させた基準電解液1を調製した。
次に、この基準電解液1に、表2に示す各添加量になるように、O-(BFLi)を添加し各電解液を調製した。表2中の添加量(%)は、基準電解液1と電解質の総質量(100質量%)に対する添加した電解質の質量%である。
上記で調製した各電解液を用いて、上記した電池の作製手順に従って、実施例5~8のラミネート電池を作製した後、上記した抵抗変化率及び容量維持率を求めた。それらの結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示すように、リチウム化合物と三フッ化ホウ素錯体を添加することで、高温サイクルの抵抗変化率を大幅に減少させるとともに、サイクル後の容量維持率の向上効果がある。
【0106】
<実施例9~17、比較例2>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)の混合溶媒(体積比が30:67:3)に、リチウム塩としてLiPFを1mol/リットルの濃度になるように加えた後、溶解させて基準電解液2を調製した。
次に、この基準電解液2に、表3に示した各電解質を、表3に示す各添加量になるように添加し各電解液を調製した。表3中の添加量(%)は、基準電解液1と電解質の総質量(100質量%)に対する添加した電解質の質量%である。
【0107】
表3に示した電解液9~17及び比較例2のラミネート電池を作製した後、上記抵抗変化率と容量維持率を求め、その結果を表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示すように、リチウム含有錯体化合物を添加することで、高温サイクルの抵抗変化率を大幅に減少させるとともに、特に、実施例7、8、12、13は、その改善幅が大きかった。
また、サイクル後の容量維持率の向上効果がある。中には、O、S、Si元素を有する化合物Aは大幅に改善できる。
【0110】
<実施例18~17>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比が30:70)に、リチウム塩としてLiPFを1mol/リットルの濃度になるように加えた後溶解させて基準電解液3を調製した。
次に、上記基準電解液3に、S-(BFLi)を添加量が0.3質量%になるように添加し、更に、表4中の添加量(%)になるように表4に示す添加剤を加え、実施例18~21の各電解液を調製した。なお、比較例3の電解液には、S-(BFLi)を無添加であった。添加量は、基準電解液3とS-(BFLi)と添加剤との総質量(100質量%)に対する質量%である。
【0111】
表4に示した電解液14~17及び基準電解液3の電解液を用いて、上記の電池作製手順を用いて、実施例14~17及び比較例3のラミネート電池を作製した後、上記抗変化率と容量維持率を求め、その結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
表4に示すように、リチウム化合物Aと三フッ化ホウ素錯体を添加することで、高温サイクルの容量維持率を大幅に向上させるとともに、サイクル後の抵抗変化率を大幅に減少させる効果がある。
【0114】
<実施例Bシリーズ>
<製造例1>
200mlのビーカーに、50mlのイオン交換水を入れ、6.2gのホウ酸を加えた後、撹拌しながら混合液を60℃に加熱した。次に、上記混合液を60℃に保ち、撹拌しながら、10質量%の水酸化リチウムを72g加え、さらに60℃に保ちながら12時間撹拌した。
次いで、反応液を濃縮乾固し200℃雰囲気下で12時間減圧乾燥した後、粉砕してホウ酸三リチウムの白色粉末を得た。
そして、アルゴン雰囲気下で、100mlの三角フラスコに、上記ホウ酸三リチウムの白色粉末と30mlのジエチルエーテルを入れ、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。次に、上記混合液を20℃に保ち撹拌しながら、45gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を3時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
次いで、ジエチルエーテルを除去し、B-(OBFLi)錯体の粗体を得た。得られた粗体を10mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄し、過剰の三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を除去した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、ホウ酸リチウムと3BF錯体であるB-(OBFLi)を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は3:4であった。
【0115】
<製造例2>
45gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の代わりに、29gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用した他は、製造例1と同様に実施することにより、ホウ酸リチウムと2BF錯体であるLiBO-(OBFLi)を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は1:1であった。
【0116】
<製造例3>
72gの10質量%の水酸化リチウムの代わりに、50gの10質量%の水酸化リチウムを使用した他は、製造例1と同様に実施することにより、ホウ酸二リチウムの白色粉末を得た。
45gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の代わりに、29gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用した他は、製造例1と同様に実施することにより、ホウ酸二リチウムと2BF錯体であるBO-(OBFLi)を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は2:3であった。
【0117】
<製造例4>
300mlのビーカーに、100mlのイオン交換水を入れ、31gのホウ酸を加えた後、撹拌しながら混合液を60℃に加熱した。次に、上記混合液を60℃に保ち、撹拌しながら、10質量%の水酸化リチウムを30g加え、さらに60℃に保ちながら12時間撹拌した。次いで、反応液を濃縮乾固し、200℃雰囲気下で12時間減圧乾燥した後、粉砕して白色粉末を得た。
そして、アルゴン雰囲気下で、300mlの三角フラスコに、得られた白色粉末と50mlのジエチルエーテルを入れ、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。次に、上記混合液を20℃に保ち撹拌しながら、16gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を3時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
次いで、ジエチルエーテルを除去し、B-(OBFLi)錯体の粗体を得た。
得られた錯体の粗体を50mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄し、過剰の三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を除去した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、B-(OBFLi)錯体を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は1:6であった。
【0118】
<製造例5>
200mlのビーカーに、50mlのイオン交換水を入れ、6.2gのホウ酸を加え、混合液を25℃に保ち、撹拌しながら22.8gのトリフルオロ酢酸をゆっくり加えた後、60℃に保ちながら12時間撹拌した。
そして、反応液を25℃に保ち10質量%の水酸化リチウムを24g加え、さらに60℃に保ちながら12時間撹拌した。次いで、反応液を濃縮乾固し、120℃雰囲気下で6時間減圧乾燥した後、粉砕して白色粉末を得た。
そして、アルゴン雰囲気下で、200mlの三角フラスコに、得られた白色粉末と50mlのジエチルエーテルを入れ、撹拌しながら混合液を10℃に冷却した。次に、上記混合液を20℃に保ち撹拌しながら、16gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を3時間かけて加えた後、反応液を50℃に保ち、3時間撹拌した。
【0119】
次いで、ジエチルエーテルを除去し、B(OC(=O)CF(OBFLi)錯体の粗体を得た。得られた粗体を50mlのジブチルエーテルを用いて3回洗浄し、過剰の三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を除去した。そして、得られた固形物を110℃の雰囲気下で10時間減圧乾燥し、B(OC(=O)CF(OBFLi)錯体を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は1:2であった。
【0120】
<製造例6~8>
22.8gのトリフルオロ酢酸の代わりに、それぞれ、9gのシュウ酸(製造例6)、10.4gのマロン酸(製造例7)、15gのチオ二酢酸(製造例8)、を使用した他は、製造例1と同様に実施することにより、B(OOC-COO)(OBFLi)錯体(製造例6)、B(OOCCHCOO)(OBFLi)錯体(製造例7)、B(OOCCHSCHCOO)(OBFLi)錯体(製造例8)を得た。
得られた固形物についてICPを用いて分析した結果、リチウム原子とホウ素原子の比率は1:2であった。
【0121】
<実施例1~6>
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とビニレンカーボネート(VC)の混合溶媒(体積比が30:30:38:2)中に、表5に示す各電解質を、表5に示す添加量になるように添加することにより表5に示す実施例1~4で使用する各電解液を調製した。なお、表5中の電解質の添加量は、リチウム基準のモル/リットルである。
上記で調製した各電解液を用いて、上記した電池の作製手順に従って、実施例1~6の電池を作製した後、上記した抵抗変化率及び容量維持率を求めた。それらの結果を表5に示す。
【0122】
【表5】
表5に示すように、実施例1~6の電池は、サイクル容量維持率を高く維持すると共に、抵抗変化率も低く抑える効果を示した。
【0123】
<実施例7~19>
基準電解液1として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比が30:70)に、リチウム塩としてLiPFを1mol/リットルの濃度になるように溶解させた溶液99gに対して、さらに、ビニレンカーボネートを1g添加して調製した。
次に、この基準電解液1に、表6に示すリチウム含有ホウ素錯体化合物を表6に示す添加量になるように添加し、実施例7~20及び比較例1で使用する各電解液を調製した。
表6中の添加量(%)は、基準電解液1と当該化合物の総質量(100質量%)に対する質量%である。
【0124】
上記で調製した各電解液を用いて、上記の電池作製手順に従って、実施例7~20及び比較例1の電池を作製した後、上記抵抗変化率及び容量維持率の手順に従って、それぞれ、抵抗変化率と容量維持率を求めた。結果を表6に示す。
【0125】
【表6】
【0126】
表6に示すように、リチウム含有ホウ素錯体化合物を添加することで、高温サイクルの抵抗変化率を大幅に減少させた。また、サイクル後の容量維持率の向上効果がある。
【0127】
<実施例21~24>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比が30:70)に、リチウム塩としてLiPFを1mol/リットルの濃度になるように加えて溶解させて基準電解液2を調製した。
次に、上記基準電解液2に、B-(OBFLi)を添加量が0.5質量%になるように添加し、更に、表7中の添加量%になるように表7に示す添加剤を加え、実施例20~23の各電解液を調製した。なお、比較例2の電解液には、B-(OBFLi)を無添加であった。添加量は、基準電解液2とB-(OBFLi)と添加剤との総質量(100質量%)に対する質量%である。
【0128】
表7に示した電解液21~24及び基準電解液2の電解液を用いて、上記の電池作製手順を用いて、実施例21~24及び比較例2の電池を作製した後、上記抗変化率と容量維持率を求め、その結果を表7に示す。
【0129】
【表7】
【0130】
表7に示すように、リチウム含有ホウ素錯体化合物を添加することで、高温サイクルの容量維持率を向上させるとともに、サイクル後の抵抗変化率を大幅に減少させた。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の蓄電デバイス用電解質を使用する非水電解液系又は全固電解質系リチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコなどの各種民生用機器用電源、産業機器用電源、蓄電池、自動車用電源などの蓄電デバイス用に広く使用される。