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特開2024-38237エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上
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  • 特開-エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上 図1
  • 特開-エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上 図2
  • 特開-エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上 図3
  • 特開-エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上 図4
  • 特開-エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038237
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】エネルギー回収装置で使用するためのSMA材料性能向上
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F03G7/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000048
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2019569460の分割
【原出願日】2018-06-14
(31)【優先権主張番号】1709594.4
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516357166
【氏名又は名称】エクサジン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXERGYN LIMITED
【住所又は居所原語表記】DCU Cleantech Innovation Campus,Old Finglas Road,Glasnevin,Dublin 11, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】ケビン オトゥール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギー回収方法と装置とを提供する。
【解決手段】同装置は、第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、エンジンを収容し、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填する浸漬チャンバとを備える。冷却および加熱サイクル中に、SMA要素の少なくとも1つに応力を加える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、
前記エンジンを収容し、前記SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填する浸漬チャンバと、
前記エンジンと組み合わされ、前記加熱サイクルおよび/または冷却サイクル中に、前記SMA要素の少なくとも1つに応力を加えるように構成されるパワーモジュールと、
を備える、エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記加えられる応力は、前記冷却サイクル中に、前記少なくとも1つのSMA要素をさらに伸長させる、
請求項1に記載のエネルギー回収装置。
【請求項3】
前記SMA要素を伸長させることにより、回復に利用可能なひずみの量を増加させ、その結果、パワーサイクルからの正味パワー出力を増加させる、
請求項2に記載のエネルギー回収装置。
【請求項4】
前記パワーモジュールは、前記加熱サイクル中に生成される少量のパワーを保存し、前記パワーを前記冷却サイクルにフィードバックして、前記SMA要素への応力を増加させるように構成される、
請求項1から3のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項5】
前記パワーモジュールは、制御された応力を加えるように構成される、
請求項1から4のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項6】
前記パワーモジュールは、前記冷却サイクル中に、より多くの制御されたステップで徐々に応力を加えるように構成される、
請求項1から5のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項7】
より多くのステップで応力を加えることにより、前記コールドサイクル中に前記SMA要素を最大に伸長させる、
請求項6に記載のエネルギー回収装置。
【請求項8】
前記加えられる応力は、前回のパワーサイクルで生成されたエネルギーからパワーを供給される、
請求項1から7のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項9】
前記コールドサイクル中の要素の伸長に使用される前記応力は、前記ホットサイクルの加熱部分中に加えられる応力よりも小さい、
請求項1から8のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項10】
複数の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素は、コアを形成するために互いに略平行に配置された複数のワイヤとして配置される、
請求項1から9のいずれかに記載のエネルギー回収装置。
【請求項11】
第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を配置するステップと、
前記SMA要素をチャンバに収容し、加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填するステップと、
前記冷却および/または加熱サイクル中に、前記SMA要素の少なくとも1つに応力を加えるステップと、
を含む、エネルギー回収方法。
【請求項12】
前記加えられる応力は、前記冷却サイクル中に、前記少なくとも1つのSMA要素をさらに伸長させる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記SMA要素を伸長させることにより、回復に利用可能なひずみの量を増加させ、その結果、パワーサイクルからの正味パワー出力を増加させる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱サイクル中に生成された少量のパワーを保存し、前記パワーを前記冷却サイクルにフィードバックして、前記SMA要素の少なくとも1つへの応力を増加させるステップを含む、
請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
制御された応力を加えるステップを含む、
請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記冷却サイクル中に、より多くの制御されたステップを徐々に適用するステップを含む、
請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
より多くのステップで応力を加えることにより、前記コールドサイクル中に前記要素を最大に伸長させる、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前回のパワーサイクルで生成されたエネルギーから、前記加えられる応力にパワーを供給するステップを含む、
請求項11から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記コールドサイクル中の要素の伸長に使用される前記応力は、前記ホットサイクルの加熱部分中に加えられる応力よりも小さい、
請求項11から18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はエネルギー回収の分野に関し、特に、形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、100度未満と考えられている低質熱は、産業プロセス、発電、および輸送用途においてかなりのエネルギー浪費の流れをつくる。かかる浪費の流れを回収したり再利用することが望ましい。この目的のために提案された技術の例に、熱電発電機(TEG)がある。残念ながら、TEGは、比較的高価である。かかるエネルギーを回収するために提案されたもう一つの方法であって、主に実験的な方法として、形状記憶合金を採用するものがある。
【0003】
形状記憶合金(SMA)は、元の冷間加工形状を「記憶」する合金で、変形されても、加熱により変形前の形状に戻る。この材料は、油圧式、空気圧式、モーターを中心とするシステムなど、従来のアクチュエータに代わる軽量でソリッドステートの代替品である。
【0004】
形状記憶合金の3つの主要なタイプは、銅-亜鉛-アルミニウム-ニッケル、銅-アルミニウム-ニッケル、およびニッケル-チタン(NiTi)合金であるが、SMAは、例えば亜鉛、銅、金および鉄の合金により生成できる。これらの列挙はすべてではない。
【0005】
かかる材料の記憶は、1970年代初頭から熱回収プロセスでの使用のため採用され、あるいは提案されてきた。特に熱からエネルギーを動力として回収するSMAエンジンの構築がある。エネルギー回収装置に関する最近の公報として、本発明の譲受人に譲渡された国際公開第2013/087490号がある。エネルギー回収装置は、束状に配置された、または密に詰められた複数の細長のワイヤを有するエンジンコアからなる。SMAまたはNTEワイヤ材料の収縮を効率的な方法で機械的な力に変換することが望ましい。SMA材料は、複雑な応力-ひずみ-温度の関係を示す。通常、応力と温度の組み合わせは、「非双晶」(de-twinned)のマルテンサイト相からオーステナイト相へのSMA材料の変態に関係する。
【0006】
英国特許出願公開第2,533,357(Exergyn)号明細書は、拡張マルテンサイト状態の材料を戻す力を提供するコアと、拮抗配置でスムーズな動作における偏向を減衰させるスプリングとを扱う。米国特許出願公開第2014/007572(GM G
lobal)明細書は、マルテンサイト状態で適量の戻り力を提供することにより、さまざまな高い環境温度で材料の性能を向上させる方法を説明する。米国特許出願公開第2008/022674(Brown)号明細書は、材料が高温状態でオーステナイトに変化するときに変位と高い力を得るために、マルテンサイト状態のSMA材料を1つまたは2つのタイプの戻り機構を使用して拡張する方法を説明する。
【0007】
完全なマルテンサイト(または完全なオーステナイト)相の間にワイヤに負荷がかかると、ヤング率に従ってひずむ。外部応力が加えられなくても、オーステナイトおよび双晶マルテンサイト状態はワイヤ内で自然に発生する。荷重がかかっていない形状記憶合金の欠点は、ワイヤが特定のたわみを得ておらず、転移が温度差のみに基づいて起こるということである。ワイヤのサイクリングから有益な出力を得るには、応力をかける必要がある。応力の大きさは、望ましい変形に依存する。一部の形状記憶合金またはNTE材料と組み合わせたSMAワイヤの伸長を制限すると問題が発生することがわかっている。さらに、冷却/緩和サイクル中にワイヤ温度が十分に低くならないことにより、伸長が制限され
る。パワーストローク中の回復に利用できるこのワイヤのひずみ量の制限は、パワー出力に制限が課されることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、エネルギー回収装置で使用するためのSMAまたはNTEエンジンコアからより大きなパワーを出力するために改善されたシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されるように、次のエネルギー回収装置が提供される。エネルギー回収装置は、第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、エンジンを収容し、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填する浸漬チャンバとを備え、冷却および加熱サイクル中に、SMA要素の少なくとも1つに応力を加える。
【0010】
本発明は、形状記憶合金またはNTE材料を組み合わせたワイヤの伸長が制限されるという問題を解決する。この問題は、限定的ではないが、有限の温度槽(ホットソースとコールドソースでのポテンシャルの制限)、特定の合金設計における回復ひずみ量の制限、目標出力を得るため利用可能なサイクル時間の制限など、多くの制限要因によるものである。パワーストローク中の回復に利用できるワイヤのひずみ量のこれらの制限は、パワー出力に制限が課されることを意味する。冷却/緩和ストローク中にワイヤをさらに伸長させることにより、回復に利用できるひずみの量を増加させ、SMAサイクルからの正味出力を増加させる。
【0011】
一つの実施形態では、本発明は、材料を伸長状態に戻すために小さな負荷を与えることにより、低温のマルテンサイト状態の変形を向上させるシステムおよび方法を提供する。材料が完全に冷却され伸長されると、少なくとも一つの段階でより大きい負荷がかけられ、その初期伸長を向上させる。その後に適用される負荷は、初期の負荷よりも大きい。このようにして、材料の変形は、疲労寿命に有害ではない制御された方法で増大させる。
【0012】
パワーストローク中にワイヤのストローク長を大きくすると、ワイヤ単位の応力を減らすなどの副次的な利点があり、疲労寿命にとって良い。さらに、本発明は、同等の出力で束/コアエンジン内のワイヤの量を減らすことを可能にし、それにより製造コストが削減
される。
【0013】
一つの実施形態において、加えられる応力は、冷却サイクル中に少なくとも1つのSMA要素をさらに伸長させる。
【0014】
一つの実施形態では、上記SMA要素を伸長させることにより、回復に利用可能なひずみの量が増加させ、その結果、パワーサイクルからの正味パワー出力を増加させる。
【0015】
一つの実施形態では、パワーモジュールは、加熱サイクル中に生成される少量のパワーを保存し、そのパワーを冷却サイクルにフィードバックして、SMA要素への応力を増加させるように構成される。
【0016】
一つの実施形態では、パワーモジュールは、制御された応力を加えるように構成される。
【0017】
一つの実施形態では、パワーモジュールは、冷却サイクル中により多くの制御されたステップで徐々に応力を加えるように構成される。
【0018】
一つの実施形態では、より多くのステップで応力を加えることにより、上記コールドサイクル中に要素を最大に伸長させる。
【0019】
一つの実施形態では、加えられる応力は、前回のパワーサイクルで生成されたエネルギーから、パワーを供給されることができる。
【0020】
一つの実施形態では、コールドサイクル中の要素の伸長に使用される応力は、ホットサイクルの加熱部分中に与えられる応力よりも小さい。
【0021】
一つの実施形態では、複数の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素は、コアを形成するために互いに略平行に配置された複数のワイヤとして配置される。
【0022】
別の実施形態では、次のエネルギー回収装置が提供される。エネルギー回収装置は、第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、エンジンを収容し、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填する浸漬チャンバとを備え、冷却サイクル中に、SMA要素の少なくとも1つに対し制御された応力を加える。
【0023】
別の実施形態では、次のステップを含むエネルギー回収の方法が提供される。エネルギー回収方法は、第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を配置するステップと、前記要素をチャンバに収容し、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填させるステップと、冷却および/または加熱サイクル中に、SMA要素の少なくとも1つに応力を加えるステップとを含む。
【0024】
一つの実施形態において、加えられる応力は、冷却サイクル中に、少なくとも1つのSMA要素をさらに伸長させる。
【0025】
一つの実施形態では、上記SMA要素を伸長させることにより、回復に利用可能なひずみの量を増加させ、その結果、パワーサイクルからの正味パワー出力を増加させる。
【0026】
一つの実施形態では、加熱サイクル中に生成された少量のパワーを保存し、同パワーを冷却サイクルにフィードバックして、SMA要素への応力を増加させるステップが提供される。
【0027】
一つの実施形態では、制御された応力を加えるステップが提供される。
【0028】
一つの実施形態では、冷却サイクル中に、より多くの制御されたステップを徐々に適用するステップが提供される。
【0029】
一つの実施形態では、より多くのステップで応力を加えることにより、コールドサイクル中に要素を最大に伸長させる。
【0030】
一つの実施形態では、前回のパワーサイクルで生成されたエネルギーから、加えられる応力にパワーを供給するステップが提供される。
【0031】
一つの実施形態では、コールドサイクル中の要素の伸長に使用される応力は、ホットサイクルの加熱部分中に加えられる応力よりも小さい。
【0032】
本発明は、特定のSMA材料の仕事量を増加させる他の方法が存在しないため、現在の技術よりも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、添付の図面を参照し、例示に過ぎない実施形態の以下の説明より、より明確に理解される。
図1図1は、加熱サイクルと冷却サイクルの間のSMA材料の仕事サイクルを示す。
図2図2は、SMAコアに加えられるさまざまな応力レベルの非線形温度-ひずみヒステリシスを示す。
図3図3は、高応力-低応力サイクルの関数としてのひずみの減少を示す。
図4図4は、温度‐ひずみ面でのSMA要素のSMA向上の例を示し、効率の向上を示す。
図5図5は、応力‐ひずみ面に関する図4に示した方法と同じ効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、形状記憶合金(SMA)または他の負熱膨張材料(NTE)のいずれかを使用して加熱流体からより大きなパワー出力を生成できる熱回収システムで使用するためのワイヤの生成に関する。
【0035】
かかるエネルギー回収装置は、本発明の譲受人に譲渡された国際公開第2013/087490号に記載されており、参照により本明細書にすべて組み込まれる。
【0036】
かかる用途では、熱源にさらされた材料の収縮が取得され、使用可能な機械的仕事に変換される。かかるエンジンの作業要素に有用な材料として、ニッケルチタン合金(NiTi)があることは証明されている。この合金は、公知の形状記憶合金であり、さまざまな業界で多くの用途がある。任意の適切なSMAまたはNTE材料を使用できることは、本発明の文脈において理解されるであろう。
【0037】
力は、ピストンおよび伝達機構を介して、作動中のコア内で(複数のワイヤとして示されている)ホットサイクルおよびコールドサイクル中のSMA材料の収縮および膨張を通じて生成される。このシステムの重要な側面は、信頼性の高いアセンブリがつくられ、最大数の仕事サイクルで力強い低変位の作動を可能にすることである。したがって、特定の構成要件および必要なSMA材料の質量に応じて、複数のSMAワイヤを一緒に使用し、互いに実質的に平行に間隔を空けて配して、単一のコアを形成することができる。
【0038】
図1は、加熱サイクルと冷却サイクルの間とのSMA材料の仕事サイクルを示す。本明細書で説明する発明は、ホットおよびコールドサイクル中に形状記憶合金ワイヤおよび/またはワイヤ束の仕事量を増加させるシステムおよび方法の概要を示している。これは、同サイクルのパワー/加熱部分中にワイヤ/ワイヤ束に加えられる応力と、同サイクルの冷却部分中にワイヤをリセット/緩和するために必要なより低い応力における差を最大化することによって行われる。サイクルの仕事量は、高応力値と低応力値の相対的な差と、収縮フェーズにおいて達成された回復ひずみの関数である。
【0039】
図2は、さまざまな応力レベルに対する非線形温度-ひずみヒステリシスを示す。SMA材料は、異なる応力値において静的な温度-ひずみの関係を示していない。
【0040】
図3は、高応力-低応力サイクルの関数としてのひずみの減少を示す。SMAワイヤのひずみは、非線形関係の結果として、典型的な高応力/低応力の付加サイクルで減少する。これにより、高応力は収縮制限(材料特性の関数)を引き起こし、低応力はワイヤ伸長の減少をもたらす。高いレベルの応力が加熱/収縮サイクルで加えられるほど、最大回復ひずみは減少し続ける。
【0041】
本発明に適用可能なエネルギー回収装置は、第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を含むエンジンコアを提供する。浸漬チャンバは、エンジンを収容し、流体で順次満たされ、SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させることができるように適合される。有益なパワー出力を得るためには、エンジンは、差圧で動作する必要がある。加熱と冷却のサイクル中に応力をかけることができ、ホットサイクルでは応力が高くなり、冷却サイクルでは応力が低くなる(高応力-低応力=dP)。パワーモジュールは、加熱サイクル中に生成された少量のパワーを保存し、そのパワーを冷却サイクルにフィードバックしてSMA要素への応力を増加させる。パワーモジュールは、一例では油圧を使用してワイヤの負荷を提供する。通常のエンジン運転用に1本の高圧ラインと1本の低圧ラインのみを使用する代わりに、負荷を増加させる複数の低圧ラインがあることにより、SMAの伸長と応力の増加を生じさせる。運転において、パワーサイクル中に生成された少量の仕事を緩和/冷却サイクルに入力し、SMA要素またはワイヤの伸長(またはひずみ)を増加させることにより、エンジンのコア要素またはワイヤから仕事を抽出できる。これは、一定の低応力を負荷した場合に得られるよりも大きい。コールドサイクルでのSMA要素への応力付加は、制御可能なパワーモジュールの適切な機械的メカニズムまたは張力メカニズムを使用することにより可能である。
【0042】
パワーモジュールは、冷却サイクル中に、より多くの制御されたステップで徐々に応力を加えるように構成される。これを行うには、ワイヤ/ワイヤ束の伸長により特定の低応力が達成されたら、低応力レベルを徐々にラチェットアップする。これにより、次の応力ステップが適用される前に、より低い応力値で、ワイヤの伸長量を最大にすることができる。例えば、10MPaの応力で1%の総ワイヤ伸長を達成でき、20MPaの応力付加で1.5%の総ワイヤ伸長を達成できる場合、20MPaの応力レベルを適用する前に、10MPaで1%の伸長を達成し、追加の0.5%を達成することが非常に重要である。
【0043】
ワイヤの伸長に使用される応力値が、この「伸び」を回復させるサイクルのパワー/加熱部分中に加えられる応力よりも小さい限り、生成される仕事という面においての正味の有利性は依然として確かである。伸ばすのに必要な応力が増加するため、ワイヤが追加的に伸びるごとに正味のパワー/仕事量が比例して減少する。これは、収縮と伸長の応力差が小さくなることを意味する。
【0044】
図4は、温度-ひずみ面でのSMA要素のSMA向上の例を示し、効率の向上を示す。図4は、100MPaと150MPa(σcと表示)を使用して2つの伸びが達成される仕事の例をそれぞれ示す。加熱回復サイクル中の応力の差は、それぞれ100MPaおよび50MPaとなる(Δσと表示)。
【0045】
図5は、本発明の応力技術を組み込んだ方法の、応力-ひずみ面での同じ結果を示す。本発明によるSMA向上を使用した追加の仕事量は、段階的方法を示すコールドサイクルでの制御された応力の適用に応じて示される。
【0046】
また、ワイヤ/ワイヤ束の「伸び」を実行するのに必要な時間に注意することも重要である。なぜなら、この時間により、入力パワーの要件が決まるからである。この時間は、SMA材料合金のタイプとコアに含まれる要素の数に応じて制御や選択ができる。これは
、性能向上を使用して達成されるパワー出力の増大可能性よりも確実に低くすることが重要である。
【0047】
本明細書において、用語「備える(comprise, comprises)、備えた(comprised)、備えている(comprising)」またはその任意の変形、および用語「含む(include, includes)
、含んだ(included)、含んでいる(including)」またはその任意の変形は、すべて交換可能であるとみなされ、それらの用語はすべて可能な限り広い解釈を与えられるべきであり、その逆も可能である。
【0048】
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、構造においても具体的な内容においても変形可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部で固定され、第2端部で駆動機構に接続された複数の細長の形状記憶合金(SMA)要素または負熱膨張(NTE)要素を備えるエンジンと、
前記エンジンを収容し、前記SMA要素の加熱サイクルおよび冷却サイクルがSMA要素を膨張および収縮させるように流体を順次充填する浸漬チャンバと、
前記エンジンと組み合わされ、前記加熱サイクルおよび/または冷却サイクル中に、前記SMA要素の少なくとも1つに応力を加えるように構成されるパワーモジュールと、
を備える、エネルギー回収装置。