IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ先端素材株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-帯電防止シリコーン離型フィルム 図1
  • 特開-帯電防止シリコーン離型フィルム 図2
  • 特開-帯電防止シリコーン離型フィルム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038254
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】帯電防止シリコーン離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240312BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20240312BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B27/00 L
C08J7/044 CER
C08J7/044 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000199
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2021556630の分割
【原出願日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0031569
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】501380081
【氏名又は名称】東レ先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA, INC.
【住所又は居所原語表記】93-1, Imsu-dong, Gumi-si, Gyeongsangbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】アン, ビョン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム, キル-ジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた帯電防止機能で粘着剤との剥離時に静電気現象による副作用がなく、硬化層の基剤との付着力が優れており、硬化層の架橋度が高くて安定した離型特性を有する帯電防止シリコーン離型フィルムを提供する。
【解決手段】帯電防止シリコーン離型フィルムは、基材フィルム110と、基材フィルムの少なくとも一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層120を含むものであり、硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと、帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si-/S-)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層を含むものであり、
前記硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含む、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項2】
前記硬化層のインテンシティ比(Si/S)は、前記基材フィルムとの境界と最も遠い最上部において10~10,000で、前記基材フィルムの境界である最下部において0.001~1である請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止領域と前記シリコーン離型領域との厚さ割合は、下記の数式1を満たし、
[数式1]
1/10<AV/RV<1/3
式中、AVは、帯電防止領域の厚さで、RVは、シリコーン離型領域の厚さである、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項4】
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、導電性ポリマー樹脂、バインダー化合物及び白金キレート触媒を含む、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項5】
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、前記アルケニルポリシロキサン100重量部に対して前記ハイドロジェンポリシロキサン2.5ないし7.5重量部、前記導電性ポリマー樹脂1ないし10重量部、前記バインダー化合物5ないし20重量部及び前記白金キレート触媒10ppmないし1,000ppmを含む、請求項4に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、陽イオンと陰イオンを同時に有するイオン性界面活性剤をさらに含むものであり、
前記イオン性界面活性剤は、sulfo-、phosphor-あるいはcarboxyl-基から選択される陰イオン基を有するイオン性界面活性剤である、請求項4に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項7】
前記イオン性界面活性剤は、前記アルケニルポリシロキサン100重量部対比0.01重量部ないし5重量部を含む、請求項6に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項8】
前記バインダー化合物は、シラン系化合物と非シラン系多官能性化合物を含む、請求項4に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項9】
前記シラン系化合物は、エポキシシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、メタクリルオキシシラン系及びイソシアネートシラン系のうち、少なくとも一つ以上の化合物であり、
前記非シラン系多官能性化合物は、エポキシ官能基を有するエポキシ系多官能性化合物である、請求項8に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項10】
前記エポキシ系多官能性化合物は、アミノ系、ヒドロキシ系、アルデヒド系、エステル系、ビニル系、アクリル系、イミド系、シアノ系及びイソシアネート系からなる群から選択されるいずれか一つ以上の官能基を有し、一つの分子内に3個以上の官能基を有する、請求項9に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項11】
前記シラン系化合物対比前記非シラン系多官能性化合物の重量割合は、2ないし20である、請求項8に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項12】
前記導電性ポリマー樹脂は、平均粒径が10ないし90nmで、ポリ陰イオンとポリチオフェンが含まれた水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体が含まれた水分散体である、請求項4に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項13】
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、0.5ないし15重量%の固形分を含む、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項14】
前記硬化層対比前記基材フィルムの表面張力は、1.0~1.5倍である、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項15】
請求項1ないし14のうち、いずれか1項に記載の前記基材フィルムの厚さは、15ないし300μmで、前記硬化層の厚さは、0.01ないし10μmである、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項16】
請求項1ないし14のうち、いずれか1項に記載の前記硬化層は、下記の条件1ないし3を同時に満たすものであり、
(1)5≦RF≦30
(2)80≦SA≦100
(3)10^4≦SR≦10^10
ここで、RFは、硬化層の剥離力(g/inch)で、SAは、硬化層の残留接着率(%)であり、SRは、硬化層の表面抵抗(Ω/sq)である、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項17】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層と、
前記基材フィルムの他の一面に位置するシリコーン離型層とを含むものであり、
前記硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)とが1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含む、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止シリコーン離型フィルムに関し、さらに詳細には、優れた帯電防止機能で粘着剤との剥離時に静電気現象による副作用がなく、硬化層の基剤との付着力が優れており、硬化層の架橋度が高くて安定した離型特性を有する帯電防止シリコーン離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体、電機電子及びディスプレイ分野の産業化発達が急激に増加するに伴い、これらの分野に合成樹脂あるいは合成繊維の使用が急増しており、これにより加工工程での静電気問題が台頭している。
【0003】
一般に、粘着剤層を保護する機能のために使用される離型フィルム分野でも帯電防止機能に対する要求が増加しつつある。従来では、離型フィルムを粘着剤層から分離する時に発生する静電気によって発生される汚染現象、剥離不良などの問題を解決するために、粘着剤に帯電防止機能を付与したが、帯電防止成分と粘着剤成分間の非相溶性により十分な帯電防止性能を具現するのに難しさがあった。そのため、最近では粘着剤以外に離型層に帯電防止機能を付与するケースが多くなっている。
【0004】
一方、精密素材分野用途の離型フィルムに要求される離型物性には、粘着剤の種類及び用途に応じる適切な範囲の剥離力と離型層が粘着剤層に転写されて粘着剤層の機能を低下させないように高い残留接着率と粘着剤に用いられる有機溶媒により離型層が損傷しないように、耐溶剤性、そして加工工程での摩擦により離型層が脱落しないように、離型層と基材との高い付着力などが要求されている。また、粘着剤層の薄膜化によって離型フィルムが粘着剤キャリヤフィルムの用途でも使用されることによって、温度及び時間の経過による変化の少ない安定した離型物性も確保されなければならない。
【0005】
また、従来の帯電防止技術には、陰イオン化合物を利用した内部添加法、金属化合物を蒸着する方法、導電性無機粒子を塗布する方法、低分子のイオン性化合物を塗布する方法及び導電性高分子を塗布する方法などが使用されており、このような帯電防止技術を応用してシリコーン組成物内に金属を含有させることによって、帯電防止離型フィルムを製造する方法が使用されてきた。
【0006】
しかしながら、このような従来の技術は、経済的な側面において不利であり、かつ十分な帯電防止性能を具現するのに限界があり、均一なコーティング層が形成されないという問題点がある。また、帯電防止組成物がイオン性化合物を利用する場合には、シリコーン離型組成物の硬化反応に妨害になって、安定した離型物性が確保されないという問題点があり、帯電防止離型層と基材との付着力が低下して離型層が脱落するか、または粘着剤の性能が低下するという問題点があった。
【0007】
また、このような離型層に帯電防止機能を付与するためには、主に帯電防止層と離型層を別にコーティングするオフライン製造工程で製造している。そのため、各々の工程によるコーティング加工時、異物及びスクラッチによる品質問題が多く発生し、製造原価が多く発生するという問題がある。
【0008】
それが故に、本発明者らは、離型フィルムを製造するためのシリコーン離型コーティング組成物に相溶性に優れた導電性ポリマー樹脂及び反応性に優れたバインダー化合物を混合することによって、1回のコーティング工程で帯電防止シリコーン離型フィルムを製造できることを確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許情報第10-2015-0104477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決し従来の要求事項に応えるために案出されたものであって、本発明の目的は、インライン製造工程を経て優れた帯電防止特性を有することによって、半導体、電機電子用及びディスプレイ用途の離型フィルムとして使用する場合、粘着剤との剥離時に静電気現象による製品汚染現象と剥離不良などの副作用を減らすことができる帯電防止シリコーン離型フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、優れた剥離力及び高い水準の残留接着率を有することによって、粘着剤層の性能を低下させないながら、用途に合うように適切に使用されることができ、また緻密な硬化層を構成することで、硬化層の耐久性及び耐溶剤性に優れており、硬化層と基材との高い付着力を有し、温度及び時間の経過による物性変化が少なくて安定した離型物性を有する帯電防止シリコーン離型フィルムを提供することにある。
【0012】
本発明の前記及び他の目的と利点は、好ましい実施例を説明した下記の説明からより明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層を含むものであり、硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含む、帯電防止シリコーン離型フィルムにより達成される。
【0014】
ここで、硬化層のインテンシティ比(Si/S)は、基材フィルムとの境界と最も遠い最上部において10~10,000で、基材フィルムの境界である最下部において0.001~1であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、帯電防止領域とシリコーン離型領域との厚さ割合は、下記の数式1を満たし、
[数式1]
1/10<AV/RV<1/3
式中、AVは、帯電防止領域の厚さで、RVは、シリコーン離型領域の厚さであることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、導電性ポリマー樹脂、バインダー化合物及び白金キレート触媒を含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン100重量部に対してハイドロジェンポリシロキサン2.5ないし7.5重量部、導電性ポリマー樹脂1ないし10重量部、バインダー化合物5ないし20重量部及び白金キレート触媒10ppmないし1,000ppmを含むことを特徴とする。
【0018】
好ましくは、帯電防止シリコーン離型組成物は、陽イオンと陰イオンを同時に有するイオン性界面活性剤をさらに含むものであり、イオン性界面活性剤は、sulfo-、phosphor-あるいはcarboxyl-基から選択される陰イオン基を有するイオン性界面活性剤であることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、イオン性界面活性剤は、アルケニルポリシロキサン100重量部対比0.01重量部ないし5重量部を含むことを特徴とする。
【0020】
好ましくは、バインダー化合物は、シラン系化合物と非シラン系多官能性化合物を含むことを特徴とする。
【0021】
好ましくは、シラン系化合物は、エポキシシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、メタクリルオキシシラン系及びイソシアネートシラン系のうち、少なくとも一つ以上の化合物であり、非シラン系多官能性化合物は、エポキシ官能基を有するエポキシ系多官能性化合物であることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、エポキシ系多官能性化合物は、アミノ系、ヒドロキシ系、アルデヒド系、エステル系、ビニル系、アクリル系、イミド系、シアノ系及びイソシアネート系からなる群から選択されるいずれか一つ以上の官能基を有し、一つの分子内に3個以上の官能基を有することを特徴とする。
【0023】
好ましくは、シラン系化合物対比前記非シラン系多官能性化合物の重量割合は、2ないし20であることを特徴とする。
【0024】
好ましくは、導電性ポリマー樹脂は、平均粒径が10ないし90nmで、ポリ陰イオンとポリチオフェンが含まれた水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体が含まれた水分散体であることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、帯電防止シリコーン離型組成物は、0.5ないし15重量%の固形分を含むことを特徴とする。
【0026】
好ましくは、硬化層対比前記基材フィルムの表面張力は、1.0~1.5倍であることを特徴とする。
【0027】
好ましくは、基材フィルムの厚さは、15ないし300μmで、硬化層の厚さは、0.01ないし10μmであることを特徴とする。
【0028】
好ましくは、硬化層は、下記の条件1ないし3を同時に満たすものであり、
(1)5≦RF≦30
(2)80≦SA≦100
(3)10^4≦SR≦10^10
ここで、RFは、硬化層の剥離力(g/inch)で、SAは、硬化層の残留接着率(%)であり、SRは、硬化層の表面抵抗(Ω/sq)であることを特徴とする。
【0029】
また、前記目的は、基材フィルムと、基材フィルムの一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層と、基材フィルムの他の一面に位置するシリコーン離型層とを含むものであり、硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)とが1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含む帯電防止シリコーン離型フィルムにより達成される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、帯電防止性能を具備しているから、離型フィルムが粘着剤層から分離する時に発生する静電気による汚染現象と剥離不良などの問題を解決できる等の効果を有する。
【0031】
なお、優れた剥離力及び高い水準の残留接着率を具備することによって、粘着剤層の機能を低下させないながらも用途に合うように適切に使用されることができ、また硬化層の耐久性に優れているから、有機溶媒に対する耐溶剤性を有し、基材との高い付着力を有しているから摩擦による硬化層の脱落が少ないなどの効果を有する。
【0032】
なお一層、緻密な硬化層を構成することによって、温度及び時間の経過による変化が少ない安定した離型物性を有する等の効果を有する。
【0033】
ただし、本発明の効果らは、以上で言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果らは、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である。
図2】本発明の他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である。
図3】本発明のさらに他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であるはずである。
【0036】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により通常に理解されることと同じ意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細書が優先するはずである。また、本明細書において説明されることと類似または同等な方法及び材料が本発明の実施または試験に使用されうるが、適合した方法及び材料が本明細書に記載される。
【0037】
本明細書に使用されたように、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「備える(include)」、「備えている(including)」、「含有している(containing)」、「~を特徴とする(characterized by)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語またはこれらの任意のその他変形は、排他的でないを含みをカバーしようとする。例えば、要素らの目録を含む工程、方法、用品、または器具は必ずそういう要素だけに制限されず、明確に列挙されないか、またはそういう工程、方法、用品、または器具に内在的な他の要素を含むこともできる。また、明確に反対に述べられない限り、「または」は、包括的な「または」のことを意味し、排他的な「または」を意味することではない。
【0038】
本発明を説明し/するか、または請求するにおいて、用語「共重合体」は、二つ以上の単量体の共重合により形成された重合体を言及するために使用される。そういう共重合体は、二元共重合体、三元共重合体またはさらに高次の共重合体を含む。
【0039】
まず、本発明の好ましい実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である図1を参考にして、本発明の一様相による帯電防止シリコーン離型フィルムについて詳細に説明する。
【0040】
図1を参考すると、本発明の一実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムは、本発明の一様相による帯電防止シリコーン離型フィルム100は、基材フィルム110と基材フィルムの少なくとも一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層120とを含む。
【0041】
硬化層120は、帯電防止特性とシリコーン離型特性を同時に有し、このような帯電防止特性とシリコーン離型特性は、離型フィルムの製造時、帯電防止シリコーン離型組成物を基材フィルムに1回インラインコーティングすることで同時に具現されることを特徴とする。
【0042】
本発明の一実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの硬化層120を形成する帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、導電性ポリマー樹脂、バインダー化合物及び白金キレート触媒を含むことができる。また、一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は、陽イオンと陰イオンを同時に有するイオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0043】
一実施例において、アルケニルポリシロキサンは、下記化1の構造を有することができる。
【0044】
【化1】
【0045】
式中、mとnは、それぞれ独立的に10~500の整数である。このとき、mとnは、ブロック結合を意味するものではなく、これらは、ただそれぞれ単位の和がmとnであることを意味するものに過ぎない。
【0046】
よって、化1における各単位は、ランダム結合あるいはブロック結合している。またR1、R2、R3は、それぞれ-CH、-CH=CH、-CHCH=CH、-CHCHCHCHCH=CHから選択されるアルキルあるいはアルケニル基であり、アルケニル基は、分子中のどちらの部分に存在しても良いが、最小2個以上存在することが好ましい。
【0047】
一実施例において、ハイドロジェンポリシロキサンは、下記化2の構造を有することができる。
【0048】
【化2】
【0049】
式中、aは1~200の整数で、bは1~400の整数である。このとき、aとbはブロック結合を意味することでなく、これらは、ただそれぞれの単位の和がaとbであることを意味するものに過ぎない。よって、化2における各単位は、ランダム結合あるいはブロック結合している。
【0050】
化1で表示されるアルケニルポリシロキサン及び化2で表示されるハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分枝状、放射状、あるいは環状のどちらでも良く、これらの混合物も良い。また、アルケニルポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンとの混合割合は、アルケニルポリシロキサン100重量部に対してハイドロジェンポリシロキサンが2.5ないし7.5重量部で使用することが好ましい。ハイドロジェンポリシロキサンが2.5重量部未満である場合には、未反応アルケニルポリシロキサンの量が多くなることによって、十分な硬化性を得ることができないから、安定した離型物性を具現できず、7.5重量部を超過する場合には、未反応ハイドロジェンポリシロキサンの量が多くなることによって、剥離特性が悪くなることができるためである。
【0051】
一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は、帯電防止性能を付与するために導電性ポリマー樹脂が使用されるが、導電性ポリマー樹脂は、ポリ陰イオンとポリチオフェンが含まれた水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体が含まれた水分散体であることが好ましい。
【0052】
ポリ陰イオンは、酸性ポリマーであり、高分子カルボン酸または高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などである。高分子カルボン酸の一例には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などがあり、高分子スルホン酸の一例には、ポリスチレンスルホン酸などがあるが、これに限定されるものではない。
【0053】
ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体に対して、ポリ陰イオンの固形分重量比が過剰に存在することが導電性を付与する側面において好ましい。本発明の実施例では、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸0.8重量%を含有する水分散体を使用するが、これに限定されるものではない。好ましくは、ポリチオフェンあるいはポリチオフェン誘導体対比ポリ陰イオンの重量比が1を超過し5未満である範囲、さらに好ましくは、1を超過し3未満である範囲において使用することが好ましい。
【0054】
また、導電性ポリマー樹脂は、平均粒径が10ないし90nm粒子大きさの水分散体を使用して、安定した帯電防止性能を発現できるようにすることが好ましい。導電性ポリマー樹脂の平均粒径が90nmを超過する場合は、硬化層の内部に均一に分布しないから表面抵抗の偏差が非常に大きくなって、帯電防止性能を正しく具現できなくなる。また、導電性ポリマー樹脂の平均粒径が10nm未満である場合、分子量が小さくなるにつれて、分子間の特定距離以上遠ざかると、帯電防止性能を具現できなくなり、インラインへの延伸時には、平均粒径が小さいほど帯電防止性能が低下する。
【0055】
導電性ポリマー樹脂は、アルケニルポリシロキサン100重量部に対して1ないし10重量部を含むことが好ましい。導電性ポリマー樹脂の含有量がアルケニルポリシロキサン100重量部対比1重量部未満である場合、帯電防止特性が不足して表面抵抗物性が低下し、10重量部を超過する場合、シリコーンの硬化妨害による離型物性が低下するためである。
【0056】
一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は、架橋密度を調節して安定した離型特性及び帯電防止特性を導き出し、導電性高分子樹脂の相溶性を高めて均一な帯電防止特性を具現し、硬化層の耐溶剤性及び耐久性を向上させ、硬化層と基材との付着力を高めるためにバインダー化合物を含むことができる。
【0057】
バインダー化合物は、シラン系化合物と非シラン系多官能性化合物を含むことでありうる。さらに具体的にバインダー化合物は、シラン系化合物対比非シラン系多官能性化合物の重量割合が2ないし20であることが好ましい。シラン系化合物は、エポキシシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、メタクリルオキシシラン系及びイソシアネートシラン系のうち、少なくとも一つ以上の化合物であり、非シラン系多官能性化合物は、エポキシ官能基を有するエポキシ系多官能性化合物でありうる。
【0058】
エポキシ系多官能性化合物は、エポキシ系が導電性高分子との相溶性及び延伸性に優れているから好ましい。すなわち、N、C、O含有量によって相溶性が差があり、導電性高分子の機能基にアルケニル基がついてスウェルリング効果による延伸性が良くなる。エポキシ系多官能性化合物は、アミノ系、ヒドロキシ系、アルデヒド系、エステル系、ビニル系、アクリル系、イミド系、シアノ系及びイソシアネート系からなる群から選択されるいずれか一つ以上の官能基を有し、一つの分子内に3個以上の官能基を有することが好ましい。
【0059】
バインダー化合物は、アルケニルポリシロキサン100重量部に対してバインダー化合物5ないし20重量部を含むことが好ましい。バインダー化合物の含有量が5重量部未満である場合には、硬化層が基材との付着力が低くて硬化層がむけるか、または導電性高分子樹脂の相溶性が低下して不均一な帯電防止性能を表す問題点があり、バインダー化合物が含有量が20重量部を超過する場合には、剥離力及び残留接着率などに影響を与えて離型物性が悪くなるという問題点が発生するためである。
【0060】
一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は、白金キレート触媒を含み、化1と化2の付加反応に役に立つ機能を行い、帯電防止シリコーン離型組成物内に白金キレート触媒は1ppmないし1,000ppmを含むことが好ましい。
【0061】
一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は、界面活性剤として陽イオン(陽イオン基)と陰イオン(陰イオン基)を同時に有するイオン性界面活性剤をさらに含むことができる。このようなイオン性界面活性剤は、例えば解離可能な陽イオンを有し、陰イオン基を含むエステル化合物で構成されるイオン性界面活性剤でありうる。
【0062】
陰イオン基を有さない非イオン性界面活性剤を適用する場合には、帯電防止シリコーン離型組成物の表面張力を適切に調節し難いという問題があって、基材フィルムに塗布される過程で十分な濡れ性を見せないから、帯電防止シリコーン離型フィルムの外観に欠点が多数視認される問題があり、特にシロキサンを含むシリコーン系の非イオン性界面活性剤を適用する場合には、帯電防止離型組成物の表面張力が適切に調節されないことはもちろん、導電性ポリマー樹脂との相溶性も不足するから、凝集物を形成することによって外観欠点を発生させる問題があるから、このような問題点を解決するために、本発明では陽イオンと陰イオンを同時に有するイオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0063】
また、本発明による界面活性剤は、陰イオン基を含むイオン性界面活性剤の中でもsulfo-、phosphor-、あるいはcarboxyl-基から選択される陰イオン基、すなわちスルホン酸、亜りん酸またはカルボン酸から由来する陰イオン基を有するイオン性界面活性剤を含む帯電防止離型組成物を適用することによって、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン及び導電性ポリマー樹脂との相溶性を維持しながらも基材フィルムに最適の濡れ性を確保することができる。本発明の実施例では、イオン性界面活性剤としてジオクチルスルホサクシネートソジウム塩とジオクチルホスホサクシネートソジウム塩を使用して説明しているが、これに制限されるものではない。
【0064】
イオン性界面活性剤は、アルケニルポリシロキサン100重量部対比0.01重量部ないし5重量部を含むことができ、好ましくは0.05~1重量部を含むことができる。これはイオン性界面活性剤の含有量が0.01重量部未満の場合には、界面活性剤としての役割をするのに含有量が充分でないから帯電防止シリコーン離型フィルムの外観改善効果が現れず、イオン性界面活性剤の含有量が5重量部を超過する場合には、粘着剤との相互作用が促進されて剥離力が上昇する等不安定な離型物性を表す問題があるためである。
【0065】
一実施例において、帯電防止シリコーン離型組成物は0.5ないし15重量%の固形粉が含まれるように希釈した後、ポリエステル基材フィルムにコーティングすることが好ましい。帯電防止シリコーン離型組成物の固形分含有量が0.5重量%未満の場合には、均一な硬化層が得られないから、安定した離型特性及び帯電防止特性を得ることができず、15重量%を超過する場合には、フィルム間のブロッキング現象が発生し、コーティング組成物の基材密着性が悪くなって、シリコーン転写問題を引き起こし、コーティング外観が不良となるという問題点がある。
【0066】
また、帯電防止シリコーン離型組成物の溶媒は、本発明の固形分を分散させてポリエステル基材フィルム上に塗布させることができるものであれば種類の制限はないが、好ましくは、水を主媒体とする水性コーティング液の状態でコーティングする。
【0067】
本発明の一実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの硬化層120は、基材フィルム110に上述した帯電防止シリコーン離型組成物をバーコート法、リバースロールコート法、グラビアロールコート法などの公知の方法により1回以上塗布して形成できる。
【0068】
本発明の一実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムは、硬化層対比基材フィルムの表面張力が1.0ないし1.5倍であることが好ましい。このとき、硬化層対比基材フィルムの表面張力が1.0倍未満であると、コーティング液の濡れ性が悪くなり、1.5倍を超過すると、コーティング液の凝集が起きて外観欠点が発現するという問題点がある。
【0069】
また、本発明に使用される帯電防止シリコーン離型組成物に対する塗布性の向上、透明性の向上などの目的として、本発明の効果を阻害しない程度の適当な有機溶媒をさらに含有でき、好ましい有機溶媒には、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メタノール、エタノールなどを使用することができる。しかしながら、コーティング組成物中に多量の有機溶媒を含有させると、インラインコーティング法に適用する場合に、乾燥、延伸及び熱処理工程において爆発の危険性があるので、有機溶媒の含有量は、コーティング組成物中に10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下に制限することが好ましい。
【0070】
また、本発明の一実施例による基材フィルム110は、ポリエステル基材フィルムであることが好ましく、厚さは、15ないし300μmであることが好ましい。基材フィルムの厚さが15μm未満の場合は、外力による変形の程度が大きくなることによって、キャリヤフィルムとしての用途を充足できず、フィルムの厚さが300μm超過した場合は、経済性が落ちるという問題点がある。
【0071】
また、本発明の一実施例による硬化層120の厚さは、0.01ないし10μmであることが好ましい。これは、硬化層の厚さが0.01μm未満である場合、均一な硬化層が形成されない可能性もあり、10μmを超過する場合、硬化層120が位置するポリエステル基材フィルム110の一面と背面との間にブロッキングが発生できるためである。
【0072】
また、本発明では、オフライン工法で2回コーティングを介して得られた帯電防止離型フィルムと類似の形態である帯電防止領域と剥離領域とを区分するためには、イオン性界面活性剤の適用により、導電性ポリマー樹脂とシリコーンとの相溶性を確保し、優れた濡れ性及び帯電防止領域とシリコーン離型領域(剥離領域)とを区分することによって、技術的目標を達成できる。
【0073】
本発明の一実施例による硬化層は、シリコーン離型特性を表すシリコンイオン(Si)と帯電防止特性を表す硫黄イオン(S)のインテンシティ(Intensityまたはcounts)比(Si/S)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコーン離型領域とを含むことができる。このようなインテンシティ比は、TOF-SIMSで測定でき、単一硬化層内のシリコンイオンと硫黄イオンとの相対割合値である。
【0074】
好ましくは、硬化層のインテンシティ比(Si/S)は、基材フィルムとの境界と最も遠い最上部において10~10,000で、基材フィルムの境界である最下部において0.001~1であることが好ましい。これによって単一硬化層において優れた帯電防止物性とシリコーン離型物性を同時に具現できる。好ましくは、最上部でのインテンシティ比は100~5,000でありうる。これは相分離構造のように、シリコーン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンとが積層形態で具現化することによって、両物性を同時に具現できる。
【0075】
また、硬化層の帯電防止領域とシリコーン離型領域との厚さ割合は、下記の数式1を満たし、AVは、帯電防止領域の厚さであり、RVは、シリコーン離型領域の厚さであることが好ましい。
[数式1]
1/10<AV/RV<1/3
【0076】
数式1の値が1/10以下である場合、表面抵抗物性が低下し、1/3以上である場合、離型物性が低下するためである。
【0077】
また、本発明の一実施例による硬化層は、下記の条件1ないし3を同時に満たし、RFは、硬化層の剥離力(g/inch)であり、SAは、硬化層の残留接着率(%)であり、SRは、硬化層の表面抵抗(Ω/sq)であることが好ましい。
(1)5≦RF≦30
(2)80≦SA≦100
(3)10^4≦SR≦10^10
【0078】
本発明の他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である図2から、本発明の他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルム200は、基材フィルム210と基材フィルムの一面に位置する上述した帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層220と他の一面にも上述した帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層230が位置できる。この場合、硬化層230を構成するためのコーティング組成物は、剥離力調節剤を含まなくても良い。
【0079】
また、本発明のさらに他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルムの断面図である図3から、本発明のさらに他の実施例による帯電防止シリコーン離型フィルム300は、基材フィルム310と基材フィルムの一面に位置する上述した帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層320と他の一面にシリコーン離型層330が位置できる。この場合、シリコーン離型層330を構成するためのコーティング組成物は、導電性ポリマー樹脂を含まなくても良い。
【0080】
以下、実施例と比較例にて本発明の構成及びそれによる効果をさらに詳細に説明しようとする。しかしながら、本実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0081】
(実施例1)
コロナ処理されたポリエステル基材フィルム(東レ先端素材社製、Excell-50μm)の一面に帯電防止シリコーン離型層を形成するために、固形分としてアルケニルポリシロキサン(ダウコーニング社製)100重量部に対して、ハイドロジェンポリシロキサン(ダウコーニング社製)3重量部、導電性ポリマー樹脂(ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含有する水分散体、平均粒径50nm)2.5重量部、エポキシ系バインダー化合物(Esprix Technologies社製)10重量部及び白金キレート触媒(ダウコーニング社製品)50ppm、イオン性界面活性剤(ジオクチルスルホサクシネートソジウム塩)0.2重量部を水に混合して、帯電防止シリコーン離型組成物を製造した。
【0082】
製造された帯電防止シリコーン離型組成物の固形分含有量が5重量%になるように、水に希薄してポリエステル基材フィルムの一面に塗布した。塗布後、180℃で50秒間乾燥して帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0083】
(実施例2)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂10重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0084】
(実施例3)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂2重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0085】
(実施例4)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂7重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0086】
(実施例5)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂5重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0087】
(実施例6)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂1重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0088】
(実施例7)
イオン性界面活性剤としてジオクチルホスホサクシネートソジウム塩を使用したことを除いては、実施例1と同じ過程を介して帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0089】
(実施例8)
イオン性界面活性剤としてジオクチルスルホサクシネートソジウム塩0.2重量部とジオクチルホスホサクシネートソジウム塩0.2重量部とを混用したことを除いては、実施例1と同じ過程を介して帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0090】
(実施例9)
エポキシ系バインダー化合物15重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0091】
(実施例10)
エポキシ系バインダー化合物20重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0092】
(実施例11)
製造された帯電防止シリコーン離型組成物の固形分含有量が2.5重量%になるように水に希釈すること以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0093】
(比較例)
(比較例1)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂0.5重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0094】
(比較例2)
アルケニルポリシロキサン100重量部対比導電性ポリマー樹脂15重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0095】
(比較例3)
界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(ダウコーニング社製品)を0.2重量部使用したことを除いては、実施例1と同じ過程を介して帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0096】
(比較例4)
バインダー混合物を混合しないこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0097】
(比較例5)
導電性ポリマー樹脂を混合しないこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0098】
(比較例6)
エポキシ系バインダー化合物25重量部を混合したこと以外には、実施例1と同様にして帯電防止シリコーン離型フィルムを製造した。
【0099】
前記実施例1ないし11及び比較例1ないし6による離型フィルムを使用して、次のような実験例にて物性を測定し、その結果を次の表1に表した。
【0100】
(実験例)
1.帯電防止領域と剥離領域(シリコーン離型領域)の厚さ測定
エリプソメーター(Ellipso Technology社製、Elli-SE)を利用して硬化層全体厚を測定する。
【0101】
XRF(Panalytical社製、Minipal 4)を利用してシリコーンコーティング層の厚値を測定して、これを剥離領域値とする。
【0102】
帯電防止領域の厚さは、下記の数式2によって算出した。
[数式2]
帯電防止領域=硬化層全体厚(エリプソメーター測定)-シリコーンコーティング層厚(XRF測定)
【0103】
2.硬化層内のSiイオンとSイオンのIntensity(counts)比(Si/S)測定
飛行時間型二次イオン質量分析;TOF-SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry;ION-TOF、Germany)で測定した。
【0104】
測定条件は、Ar-cluster 5KeVのエネルギー強度でNegativeModeで進行した。
【0105】
3.帯電防止特性
表面抵抗測定器(Mitsubishi社製、MCP-T600)を利用して温度23℃、湿度50%RHの環境下に試料を設置した後、JIS K7194に基づいて硬化層に対する表面抵抗を測定した。
【0106】
4.剥離力測定
冷間圧延ステンレス板に両面粘着テープで硬化層が上にくるように離型フィルムを付着した後、粘着テープ(TESA 7475)を離型層上に載せ、2kgの圧着ローラで圧着して1日~7日間常温で放置した後に剥離力を測定した。
【0107】
剥離力測定は、AR-1000(Chem-Instrument)を使用して剥離角度180゜及び剥離速度0.3mpmで測定し、5回測定して平均値(g/inch)を算出し、小数点第一位を四捨五入した。
【0108】
5.残留接着率の測定
硬化層に粘着テープ(Nitto 31B)を載せ、2kgの圧着ローラで圧着して30分間常温で放置した後、粘着テープを硬化層から剥離した後に冷間圧延ステンレス板に付けた後剥離力を測定した。
【0109】
また、比較のために使用したことのない粘着テープ(Nitto 31B)を冷間圧延ステンレス板に付けた後に剥離力を測定した。
【0110】
剥離力測定は、AR-1000(Chem-Instrument)を使用して剥離角度180゜及び剥離速度0.3mpmで測定し、5回測定して平均値を算出した。
【0111】
残留接着率は、下記の数式3によって算出した。
[数式3]
残留接着率=硬化層から剥離した粘着テープの剥離力/使用したことのない粘着テープの剥離力×100(%)
【0112】
6.欠点面積測定
5cm×5cmの離型フィルムサンプルの面積対比気泡性欠点の面積を測定した。5cm×5cmの離型フィルムサンプル内の気泡性欠点の最も長い長さを測定して円で面積を計算した後、全体を合せて気泡性欠点の面積(cm)を求めた。
【0113】
気泡性欠点の程度(コーティング外観)は、下記の数式4によって気泡性欠点面積比を算出し、以下の基準で評価した。
[数式4]
気泡性欠点面積比(%)=気泡性欠点の面積/25cm×100(%)
◎:0%以上1%未満の場合
○:1%以上2%未満の場合
△:2%以上5%未満の場合
×:5%以上の場合
【0114】
7.耐溶剤性測定
フィルム上面の溶剤に対する抵抗性を測定した。
【0115】
測定は、綿棒をイソプロピルアルコールに浸した後、綿棒の角度を45度に維持しながら硬化層を100gの荷重で10回往復した後に、コーティング面の耐溶剤性状態を以下の基準で評価した。
◎:優秀
○:良好
△:普通
×:未逹
【0116】
8.押され性測定
母指で硬化層を5回往復撫でた後肉眼で確認して、以下の基準で評価した。
◎:評価後変化無し(No smear)
○:微細に押されるが使用上問題無し(Slightly smear)
△:オイルが押されたかの様に硬化層が白くかすむ(smear)
×:硬化層がかたまって落ちだす(Rub-off)
【0117】
【表1】
【0118】
表1から分かるように、本発明の実施例1ないし実施例11による帯電防止シリコーン離型フィルムは欠点がほぼないから、コーティング外観が優秀でありながらも硬化層の押され性も優れており、表面抵抗及び剥離力が適正な範囲の値を有する同時に残留接着率も優れていることを確認することができる。本発明の実施例8による帯電防止シリコーン離型フィルムの場合、外観及び物性が最も優れていることを確認することができる。
【0119】
また、実施例1ないし11及び比較例1ないし6による離型フィルムでの硬化層内の帯電防止領域とシリコーン離型領域の厚さ比及び最上部及び最下部のシリコンイオンと硫黄イオンとの割合により、帯電防止物性である表面抵抗値と離型物性である剥離力、残留接着率及び外観が相関関係を有し変化されることを確認することができる。
【0120】
また、本発明の実施例9による帯電防止シリコーン離型フィルムの場合、物性が同じ含有量の導電性ポリマーに基づいてバインダーの含有量増加に応じる、表面抵抗物性が優れていることを確認できる。
【0121】
また、本発明の実施例10及び11では、導電性ポリマー及びアルケニルシロキサンの絶対含有量が変わっても、帯電防止領域と剥離領域の割合が大きく変わらないならば、離型物性も優れていることを確認することができる。
【0122】
これに反し、比較例1及び2による離型フィルムの場合、導電性ポリマー樹脂の含有量があまり少ないか、またはあまり多いから帯電防止特性である表面抵抗が過度に上昇するか、離型物性である残留接着率が過度に低下することを確認することができる。
【0123】
また、比較例3による離型フィルムは、イオン性界面活性剤が含まれない場合、コーティング外観が不良で、剥離力物性が悪くなることを確認することができる。
【0124】
また、比較例4及び5による離型フィルムは、エポキシ系バインダー化合物または導電性ポリマー樹脂が含まれない場合、表面抵抗物性を得ることができないことを確認することができる。
【0125】
また、比較例6では、バインダー化合物が過度に多い場合、表面抵抗物性は良くなるが、離型物性が致命的に悪くなることを確認することができる。
【0126】
上述したように、本発明による帯電防止シリコーン離型フィルムは、所望の用途に合うように適切に適用できるが、これに制限されるものではない。また、本発明は、精密素材分野の用途として使用されるための優れた品質の帯電防止シリコーン離型フィルムを提供でき、これは適切な範囲の剥離力及び高い水準の残留接着率を有することによって粘着剤層の機能を低下させないながら用途に合うように適切に使用されることができる。
【0127】
さらに、本発明による帯電防止シリコーン離型フィルムは、硬化層の耐久性が優れているから、有機溶媒に対する耐溶剤性が優れており、基材との高い付着力を有しており、摩擦による硬化層の脱落が少ないという特性を有している。また、優れた帯電防止性能を有することによって、静電気現象による汚染現象と剥離不良などの問題を解決することができる等の効果を有していることが分かる。
【0128】
本明細書では、本発明者らが行った多様な実施例のうち、いくつかの例のみを挙げて説明しているが、本発明の技術的思像はこれらに限定または制限されず、当業者により変形されて多様に実施できることはもちろんである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層を含むものであり、
前記硬化層のTOF-SIMSで測定されるインテンシティ比(Si/S)は、前記基材フィルムとの境界と最も遠い最上部において10~10,000で、前記基材フィルムの境界である最下部において0.001~1であり、
前記硬化層は、シリコン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコン離型領域とを含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、導電性ポリマー樹脂、バインダー化合物及び白金キレート触媒を含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、前記アルケニルポリシロキサン100重量部に対して前記ハイドロジェンポリシロキサン2.5ないし7.5重量部、前記導電性ポリマー樹脂1ないし10重量部、前記バインダー化合物5ないし20重量部及び前記白金キレート触媒10ppmないし1,000ppmを含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、sulfo-、phosphor-あるいはcarboxyl-基から選択される陰イオン基を有するイオン性界面活性剤をさらに含むものであり、ただし当該イオン性界面活性剤はシリコーン系界面活性剤ではなく、
前記バインダー化合物は、エポキシ系バインダー化合物であり、且つ
導電性ポリマー樹脂は、ポリ陰イオンとポリチオフェンが含まれた水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体が含まれた水分散体である、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項2】
前記イオン性界面活性剤は、前記アルケニルポリシロキサン100重量部対比0.01重量部ないし5重量部を含む、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項3】
前記非シラン系多官能性化合物は、エポキシ官能基を有するエポキシ系多官能性化合物である、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項4】
前記エポキシ系多官能性化合物は、アミノ系、ヒドロキシ系、アルデヒド系、エステル系、ビニル系、アクリル系、イミド系、シアノ系及びイソシアネート系からなる群から選択されるいずれか一つ以上の官能基を有し、一つの分子内に3個以上の官能基を有する、請求項3に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項5】
前記導電性ポリマー樹脂は、平均粒径が10ないし90nmの水分散体である、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、0.5ないし15重量%の固形分を含む、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項7】
前記硬化層対比前記基材フィルムの表面張力は、1.0~1.5倍である、請求項1に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムの厚さは、15ないし300μmで、前記硬化層の厚さは、0.01ないし10μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項9】
前記硬化層は、下記の条件1ないし3を同時に満たすものであり、
(1)0.197≦RF≦1.18
(2)80≦SA≦100
(3)3.56×10^5≦SR≦3.56×10^11
ここで、RFは、硬化層の剥離力(g/mm)で、SAは、硬化層の残留接着率(%)であり、SRは、硬化層の表面抵抗(Ω/m)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の帯電防止シリコーン離型フィルム。
【請求項10】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一面に位置する帯電防止シリコーン離型組成物の硬化層と、
前記基材フィルムの他の一面に位置するシリコーン離型層とを含むものであり、
前記硬化層のTOF-SIMSで測定されるインテンシティ比(Si/S)は、前記基材フィルムとの境界と最も遠い最上部において10~10,000で、前記基材フィルムの境界である最下部において0.001~1であり、
前記硬化層は、シリコン離型特性を表すシリコンイオンと帯電防止特性を表す硫黄イオンのインテンシティ比(Si/S)が1未満である帯電防止領域と10超過であるシリコン離型領域とを含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、アルケニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、導電性ポリマー樹脂、バインダー化合物及び白金キレート触媒を含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、前記アルケニルポリシロキサン100重量部に対して前記ハイドロジェンポリシロキサン2.5ないし7.5重量部、前記導電性ポリマー樹脂1ないし10重量部、前記バインダー化合物5ないし20重量部及び前記白金キレート触媒10ppmないし1,000ppmを含み、
前記帯電防止シリコーン離型組成物は、sulfo-、phosphor-あるいはcarboxyl-基から選択される陰イオン基を有するイオン性界面活性剤をさらに含むものであり、ただし当該イオン性界面活性剤はシリコーン系界面活性剤ではなく、
前記バインダー化合物は、エポキシ系バインダー化合物であり、且つ
導電性ポリマー樹脂は、ポリ陰イオンとポリチオフェンが含まれた水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体が含まれた水分散体である、帯電防止シリコーン離型フィルム。
【外国語明細書】