(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038269
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】固体構造の加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240312BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240312BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
B23K26/00 N
B23K26/00 P
B23K26/064 A
H01L21/78 B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000681
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2022078893の分割
【原出願日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/188,478
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/302,974
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111117035
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
(72)【発明者】
【氏名】葉文勇
(57)【要約】
【課題】固体構造の加工装置及び加工方法を提供する。
【解決手段】固体構造の加工装置及び加工方法であって、固体構造に対して加工手順を実行することに用いられる。本発明の固体構造の加工装置は、様々な電磁放射源によりエネルギーを上記固体構造に提供して、固体構造に質的な変化又は欠陥を発生させ、すなわち改質層を形成する。改質層の応力及び/又は硬度は、他の非加工領域とは異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工手順を実行するための固体構造の加工装置であって、
前記加工手順の改質ステップでレーザーエネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供するためのレーザー源と、
前記加工手順の前記改質ステップでマイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造の前記加工対象領域と他の領域の両方に提供するためのマイクロ波又は高周波源と、を含み、
前記固体構造の前記加工対象領域は、前記レーザーエネルギーを照射され、前記固体構造の前記他の領域よりも多くの、前記マイクロ波又は高周波源によって提供される前記マイクロ波又は高周波エネルギーを吸収し、
前記固体構造の前記加工対象領域は、前記レーザーエネルギー及び前記マイクロ波又は高周波エネルギーによって質的な変化又は欠陥を発生させて改質層を形成し、前記レーザー源は、少なくとも1つのパルス光を生成することによって前記レーザーエネルギーを提供し、前記マイクロ波又は高周波源は、電磁波を連続的又は断続的に生成することによって前記マイクロ波又は高周波エネルギーを提供し、
前記マイクロ波又は高周波源は、マイクロ波発生器及び同軸共振器を有し、前記マイクロ波発生器はマイクロ波を生成し、前記固体構造は前記同軸共振器の開口部を介して前記同軸共振器に入り、それによって、前記マイクロ波を、前記同軸共振器を介して前記固体構造に伝達する、ことを特徴とする固体構造の加工装置。
【請求項2】
前記加工手順の前記改質ステップで前記固体構造を加熱するための熱源をさらに含む、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項3】
前記熱源は、前記レーザー源、前記マイクロ波又は高周波源、加熱液体タンク、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源、及び/又は赤外線光源である、請求項2に記載の固体構造の加工装置。
【請求項4】
前記固体構造は、加熱可能な液体に浸漬される、請求項1、2又は3に記載の固体構造の加工装置。
【請求項5】
前記加工手順の検出及び制御ステップで前記固体構造の前記改質層の形成状態を検出し、さらに前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又は前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御するための検出及び制御ユニットをさらに含む、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項6】
前記レーザー源は、前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーに応じて、提供する前記レーザーエネルギーを調整する、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項7】
前記マイクロ波又は高周波源は、前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーに応じて、提供する前記マイクロ波又は高周波エネルギーを調整する、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項8】
前記レーザー源と前記マイクロ波又は高周波源は、前記固体構造の前記加工対象領域に前記改質層を形成するように、前記レーザーエネルギーと前記マイクロ波又は高周波エネルギーをそれぞれ順番に又は同時に提供する、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項9】
前記レーザー源は、前記固体構造の形態に応じて、前記レーザー源によって生成される前記パルス光の集束点が照射する前記固体構造の深さを調整する、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項10】
前記レーザー源の前記少なくとも1つのパルス光は、複数の集束点を形成して前記固体構造の前記加工対象領域を照射する単一又は複数のパルス光である、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項11】
前記レーザー源の前記少なくとも1つのパルス光は、異なる波長の複数のパルス光で前記固体構造の前記加工対象領域を照射する、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項12】
前記マイクロ波又は高周波源が前記マイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向と同じである、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項13】
前記マイクロ波又は高周波源が前記マイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向とは異なる、請求項1に記載の固体構造の加工装置。
【請求項14】
加工手順を実行するための固体構造の加工方法であって、
改質ステップを実行するステップを含み、前記改質ステップは、レーザー源によりレーザーエネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供することと、マイクロ波又は高周波源によりマイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造の前記加工対象領域と他の領域の両方に提供することと、を含み、
前記固体構造の前記加工対象領域は、前記レーザーエネルギーを照射され、前記固体構造の前記他の領域よりも多くの、前記マイクロ波又は高周波源によって提供される前記マイクロ波又は高周波エネルギーを吸収し、
前記固体構造の前記加工対象領域は、前記レーザーエネルギー及び前記マイクロ波又は高周波エネルギーによって質的な変化又は欠陥を発生させて改質層を形成し、
前記マイクロ波又は高周波源は、マイクロ波発生器及び同軸共振器を有し、前記マイクロ波発生器はマイクロ波を生成し、前記固体構造は前記同軸共振器の開口部を介して前記同軸共振器に入り、それによって、前記マイクロ波を、前記同軸共振器を介して前記固体構造に伝達する、ことを特徴とする固体構造の加工方法。
【請求項15】
前記改質ステップの実行中又は後に、熱源を用いて前記固体構造を加熱する加熱ステップを実行するステップをさらに含む、請求項14に記載の固体構造の加工方法。
【請求項16】
前記固体構造の前記改質層の硬度又は応力は、前記固体構造の前記他の領域とは異なる、請求項14に記載の固体構造の加工方法。
【請求項17】
前記改質ステップの実行後に、前記固体構造に対して後続ステップを実行するステップをさらに含み、前記後続ステップは、分割、薄型化、研磨、コーティング、蒸着、黄色光照射、フォトリソグラフィー、エッチング及び拡散からなる群から選択される、請求項14に記載の固体構造の加工方法。
【請求項18】
前記加工対象領域は、前記固体構造の深さ又は表面に位置する、請求項14に記載の固体構造の加工方法。
【請求項19】
前記加工対象領域は、前記固体構造の一部の領域に位置する、請求項18に記載の固体構造の加工方法。
【請求項20】
前記レーザー源は、前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーに応じて、前記加工対象領域を改質するために提供する前記レーザーエネルギーを調整し、又は、前記マイクロ波又は高周波源は、前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーに応じて、前記加工対象領域を加熱するために提供する前記マイクロ波又は高周波エネルギーを調整する、請求項14に記載の固体構造の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置及び加工方法に関し、特に固体構造の加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の継続的な発展により、科技製品は大きく進歩している。半導体プロセスでは、加工素子を用いてウエハなどの材料に対して切断、研削又は磨きなどの加工手順を実行する場合が多い。炭化ケイ素(SiC)などの半導体材料は、エネルギーバンドギャップが広く、硬度が高く、熱伝導率が高く、及び化学的に不活性であるなどの利点を有するため、高温電子部品、高周波高出力素子を製造するための理想的な材料である。しかしながら、半導体材料の硬度が高いため、スライシング、研削又は磨きなどの加工手順を実行することは困難であり、加工素子などの刃物も摩耗する。従って、如何に改質により半導体材料の加工効率及び品質を向上させるかは、現在の重要な研究開発トピックの1つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに鑑みて、本発明の1つ又は複数の目的は、上記従来技術の課題を解決するために、固体構造の加工装置及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記1つ又は複数の目的を達成するために、本発明は、加工手順を実行するための固体構造の加工装置であって、前記加工手順の改質ステップでレーザーエネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供するためのレーザー源と、前記加工手順の前記改質ステップでマイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供するためのマイクロ波又は高周波源と、を含み、前記固体構造の前記加工対象領域は、前記加工手順の前記改質ステップで、前記レーザーエネルギー及び前記マイクロ波又は高周波エネルギーによって質的な変化又は欠陥を発生させて改質層を形成し、前記レーザー源は、少なくとも1つのパルス光を生成することによって前記レーザーエネルギーを提供し、前記マイクロ波又は高周波源は、電磁波を連続的又は断続的に生成することによって前記マイクロ波又は高周波エネルギーを提供する、ことを特徴とする固体構造の加工装置を提供する。
【0005】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記加工手順の前記改質ステップで前記固体構造を加熱するための熱源をさらに含む。
【0006】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記熱源は、前記レーザー源、前記マイクロ波又は高周波源、加熱液体タンク、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源、及び/又は赤外線光源である。
【0007】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記固体構造は、液体に浸漬される。
【0008】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記加工手順の検出及び制御ステップで前記固体構造の前記改質層の形成状態を検出し、さらに前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又は前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御するための検出及び制御ユニットをさらに含む。
【0009】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記レーザー源は、前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーに応じて、提供する前記レーザーエネルギーを調整する。
【0010】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記マイクロ波又は高周波源は、前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーに応じて、提供する前記マイクロ波又は高周波エネルギーを調整する。
【0011】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記レーザー源と前記マイクロ波又は高周波源は、前記固体構造の前記加工対象領域に前記改質層を形成するように、前記レーザーエネルギーと前記マイクロ波又は高周波エネルギーをそれぞれ順番に又は同時に提供する。
【0012】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記レーザー源は、前記固体構造の形態に応じて、前記レーザー源によって生成される前記パルス光の集束点が照射する前記固体構造の深さを調整する。
【0013】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記レーザー源の前記少なくとも1つのパルス光は、複数の集束点を形成して前記固体構造の前記加工対象領域を照射する単一又は複数のパルス光である。
【0014】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記レーザー源の前記少なくとも1つのパルス光は、異なる波長の複数のパルス光で前記固体構造の前記加工対象領域を照射する。
【0015】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記マイクロ波又は高周波源が前記マイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向と同じである。
【0016】
本発明に係る固体構造の加工装置によると、前記マイクロ波又は高周波源が前記マイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供する方向は、前記レーザー源が前記レーザーエネルギーを前記固体構造に提供する方向とは異なる。
【0017】
前記1つ又は複数の目的を達成するために、本発明は、加工手順を実行するための固体構造の加工方法であって、改質ステップを実行するステップを含み、前記改質ステップは、レーザー源によりレーザーエネルギーを前記固体構造の加工対象領域に提供することと、マイクロ波又は高周波源によりマイクロ波又は高周波エネルギーを前記固体構造に提供することと、を含み、前記固体構造の前記加工対象領域は、前記レーザーエネルギー及び前記マイクロ波又は高周波エネルギーによって質的な変化又は欠陥を発生させて改質層を形成する、ことを特徴とする固体構造の加工方法を提供する。
【0018】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記改質ステップの実行中又は後に、熱源を用いて前記固体構造を加熱する加熱ステップを実行するステップをさらに含む。
【0019】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記固体構造の前記改質層の硬度又は応力は、前記固体構造の他の領域とは異なる。
【0020】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記改質ステップの実行後に、前記固体構造に対して後続ステップを実行するステップをさらに含み、前記後続ステップは、分割、薄型化、研磨、コーティング、蒸着、黄色光照射、フォトリソグラフィー、エッチング及び拡散からなる群から選択される。
【0021】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記加工対象領域は、前記固体構造の深さ又は表面に位置する。
【0022】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記加工対象領域は、前記固体構造の一部の領域に位置する。
【0023】
本発明に係る固体構造の加工方法によると、前記レーザー源は、前記マイクロ波又は高周波源によって提供された前記マイクロ波又は高周波エネルギーに応じて、前記加工対象領域を改質するために提供する前記レーザーエネルギーを調整し、又は、前記マイクロ波又は高周波源は、前記レーザー源によって提供された前記レーザーエネルギーに応じて、前記加工対象領域を加熱するために提供する前記マイクロ波又は高周波エネルギーを調整する。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、本発明による固体構造の加工装置及び加工方法は、以下の1つ又は複数の利点を有する。
【0025】
(1)本発明は、改質ステップで様々な電磁放射源を用いて固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させて、他の領域との間の応力差を発生させる。
【0026】
(2)本発明は、改質ステップでレーザー源のパルス光を用いて固体構造の加工対象領域にホットスポットを形成して、固体構造の加工対象領域に原子結合の弱体化、構造の弱体化、又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させる。本発明は、改質ステップでマイクロ波又は高周波源を同時に用いてマイクロ波又は高周波エネルギーを固体構造に提供し、固体構造の加工対象領域は、レーザーエネルギーの提供により自由電子を生成し、前記自由電子の生成は、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収できるため、加工対象領域の温度を上昇させ、さらに、温度が上昇するため、加工対象領域がより多くのレーザーエネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成して、マイクロ波又高周波放射源によって提供されたより多くの電磁エネルギーを吸収し、それにより正のサイクルを形成することに寄与する。
【0027】
(3)本発明は、改質ステップで熱源により固体構造を加熱し、固体構造の温度を上昇させることができ、温度を上昇させることによって放射源のエネルギーの吸収率を向上させることができる。
【0028】
(4)本発明は、検出及び制御ステップで固体構造の改質層の形成状態を検出し、さらにレーザー源によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などを制御する。
【0029】
本発明の技術的特徴および達成し得る技術的効能の理解を深めるために、より良い実施例と詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明の固体構造の加工方法によって実行される加工手順の模式図である。
【
図2】
図2は本発明の固体構造の加工装置が改質ステップを実行する第1実施例の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の固体構造の加工装置が改質ステップを実行する第2実施例の模式図である。
【
図4】
図4は本発明の固体構造の加工装置が改質ステップを実行する第3実施例の模式図である。
【
図5】
図5は本発明のレーザーエネルギーとマイクロ波(又は高周波)エネルギーの出力周波数の模式図である。
【
図6】
図6は本発明の検出及び制御ユニットを用いて改質層の形成状態を検出する模式図である。
【
図7】
図7は本発明の固体構造の加工装置が加熱液体タンク内で加熱ステップを実行する模式図である。
【
図9a】本発明の固体構造の単一の加工対象領域が一部の領域に位置する上面図である。
【
図9b】本発明の固体構造の単一の加工対象領域が一部の領域に位置する断面側面図である。
【
図9c】本発明の固体構造の複数の加工対象領域が一部の領域に位置する上面図である。
【
図9d】本発明の固体構造の複数の加工対象領域が一部の領域に位置する断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0032】
さらに、明細書全体および実用新案登録請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0033】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0034】
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0035】
本発明は、固体構造の加工装置及び加工方法を提供し、この加工装置及び加工方法は、加工される固体構造(すなわち、加工される対象物)に対して加工手順を実行することに用いられ、且つ、例えば、SOI(絶縁膜上の半導体)プロセス、インゴットスライシング(Slicing)プロセス、ウエハ薄型化(Thinning)プロセス又はパッケージング(Packaging)プロセスなどの多くの半導体プロセスに適用できるが、これらに限定されない。上記固体構造は、例えば、ウエハ又はインゴットなどの結晶構造など、上記半導体プロセスにおける半導体材料を含有する固体物体であるが、これらに限定されない。上記半導体材料は、例えば、Si、SiC、SiGe、Ge、GaAs、GaN又はInPなどの基板材料であるが、これらに限定されず、結晶構造は、例えば、単結晶、多結晶又はアモルファス構造であるが、これらに限定されない。本発明の加工方法によって実行される加工手順は、上記固体構造の加工対象領域に改質層を形成する改質ステップを実行するステップを少なくとも含む。
【0036】
図1に示すように、本発明の加工手順の改質ステップS10で、本発明の固体構造の加工装置は、様々な電磁放射源により様々な電磁エネルギーを上記固体構造の加工対象領域に提供し、これらの電磁エネルギーは、固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させ、すなわち改質層を形成するように、改質エネルギーとして機能する。例えば、本発明は、固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させて改質層を形成するように、2種類の電磁放射源を用いて2種類の電磁エネルギーを固体構造の加工対象領域にそれぞれ提供することができる。
【0037】
図2~
図4に示すように、固体構造100がウエハであることを例として、ウエハは、加工対象領域110がウエハの径方向断面(Radial Section)又は軸方向断面(Axial Section)に位置するように定義されており、この径方向断面又は軸方向断面は、例えば、ウエハの任意の深さ又は表面に位置してもよい。固体構造100は、例えば、載置ステージ150に載置されており、この載置ステージ150は、例えば、可動載置ステージであるが、これに限定されない。また、固体構造100の加工手順は、加熱液体タンク80(
図7に示される)などのチャンバ内で実行されるか、又は加熱液体タンク(
図6に示される)などのチャンバ内で実行されないことに限定されない。上記2種類の電磁放射源のうちの第1種類の電磁放射源は、第1種類の電磁エネルギーを固体構造100の加工対象領域110に提供して、この固体構造100の加工対象領域110に原子結合の弱体化、構造の弱体化又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させ、すなわち改質層120を形成する。固体構造100の厚さは、例えば、約50μm~約1,800μmの範囲であるが、これに限定されない。加工対象領域110は、例えば、固体構造100の深さX又は表面に位置する。本発明で形成された改質層120が固体構造100を占める面積、厚さ、分布方向及び分布方法は特に限定されず、例えば、実際のプロセス要件に応じて決定されてもよい。固体構造100がインゴットである場合、その厚さの範囲は、例えば、800μmよりも大きいが、これに限定されない。
【0038】
本発明で使用される第1種類の電磁放射源は、例えば、上記加工手順の改質ステップS10でレーザーエネルギーを有するパルス光を生成して、固体構造100の加工対象領域110を照射するレーザー源20である。固体構造100の厚さが1,800μmであることを例として、加工対象領域110の深さXは、約0μm~約1,800μmの間であってもよい。レーザー源20は、レーザー発生器22によってパルス光23を生成し、このパルス光23は、レンズ群24を介して固体構造100に伝達される。レーザー源20のパルス光23は、集束点で非線形吸収効果及び熱効果を形成してホットスポット(Hot Spot)を形成するため、集束点での固体構造100はイオン化されて自由電子を生成し、自由電子のエネルギーも集束点での固体構造100に伝達されて、集束点での固体構造100の温度を上昇させ、すなわち集束点の吸収係数を増加させて、レーザー源20によって提供されたより多くのレーザーエネルギーを吸収し、さらに改質効果を向上させる。従って、レーザー源20によって生成されるパルス光23の集束点が固体構造100の加工対象領域110に集束される場合、レーザーエネルギーをこの固体構造100の加工対象領域110に提供して、原子結合の弱体化、構造の弱体化、又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させる。
【0039】
上記2種類の電磁放射源のうちの第2種類の電磁放射源は、第2種類の電磁エネルギーを固体構造100の加工対象領域110に提供し、第1種類の電磁放射源によって提供された第1種類の電磁エネルギーは、固体構造100の加工対象領域110に自由電子を生成させることができ、前記自由電子の生成は、第2種類の電磁放射源によって提供された第2種類の電磁エネルギーを吸収して加工対象領域110の温度を上昇させることに寄与し、温度が上昇することは、加工対象領域110がより多くの第1種類の電磁エネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成して、第2種類の電磁放射源によって提供されたより多くの第2種類の電磁エネルギーを吸収し、さらに正のサイクルを形成することに寄与する。
【0040】
本発明では、第2種類の電磁放射源は、例えば、上記加工手順の改質ステップS10で電磁波を連続的又は断続的に生成することによってマイクロ波又は高周波エネルギーを固体構造100に提供するマイクロ波又は高周波源30である。第2種類の電磁放射源がマイクロ波源であることを例として、マイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波発生器32(マグネトロンなど)によってマイクロ波33を生成し、同軸共振器(Coaxial Resonator)34を介して固体構造100に伝達する。アイソレータ(Isolator)36は、好ましくは、マイクロ波発生器32と同軸共振器34との間に設けられ、マイクロ波の一方向伝送効果を有し、整合器38は、好ましくは、マイクロ波の伝送経路(同軸共振器34など)に設けられ、マイクロ波の反射量を低減させることができ、それにより、マイクロ波は、同軸共振器34に効果的に入って固体構造100に伝達され得る。整合器38は、例えば、同軸管38a、金属板38b及び金属棒38cからなるが、上記マイクロ波又は高周波源30の構造は、本発明を限定するものではなく、好ましい例に過ぎない。紫外線光又は赤外線光と比較して、本発明で使用されるマイクロ波源によって提供されたマイクロ波は、ウエハ/インゴットなどの固体構造100を貫通でき、マイクロ波は、ウエハ/インゴットの原子(シリコン原子など)間の結合を振動させることができ、結合が往復移動して内部摩擦熱を発生させるため、ウエハ/インゴット物質の内外を同時に加熱昇温して、より多くの自由電子を生成する。マイクロ波は、波長が約1mm~約1mの範囲であり、周波数が約300GHz~約0.3GHzの範囲である。マイクロ波の出力モードは、連続的マイクロ波源、又はパルス幅が約1μs~約1msの範囲である断続的マイクロ波源であってもよい。上記レーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーと上記マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーは、固体構造100の加工対象領域110に質的な変化又は欠陥などの現象を発生させて改質層120を形成することができる。
【0041】
また、固体構造100の加工対象領域110(すなわち、改質層120が位置する場所)は、レーザー源20のパルス光の集束点で、固体構造100の他の領域(非加工対象領域)よりも多くの自由電子を有し、前記自由電子の生成は、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収でき、加工対象領域110の温度を上昇させることができ、温度が上昇することは、加工対象領域110がより多くの第1種類の電磁エネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成して、第2種類の電磁放射源によって提供されたより多くの第2種類の電磁エネルギーを吸収し、さらに正のサイクルを形成することに寄与し、それにより他の非加工対象領域との熱差を大きく発生させ、従って、それに応じて、固体構造100の加工対象領域110を効果的に改質するように、応力及び/又は硬度などの性質の差がさらに多くなる。上記温度は、例えば、温度センサ92(赤外線温度センサなど)によって検出され得る。改質ステップS10の実行中に、固体構造100の加工対象領域110は、レーザーエネルギー及びマイクロ波エネルギーを吸収して熱効果を発生できるため、固体構造100の加工対象領域110の硬度は、他の非加工対象領域よりも低くてもよい。
【0042】
また、本発明のマイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波エネルギーを有するマイクロ波又は高周波電磁波を提供する方向は特に限定されず、マイクロ波又は高周波源30は、レーザー源20がレーザーエネルギーを固体構造100に提供する方向とは異なる方向(
図2に示される反対側)、同じ方向(
図3に示される同じ側)又は垂直な方向(
図4、
図8に示される)から、マイクロ波又は高周波電磁波を提供することができる。本発明では、二重マイクロ波又は高周波源を用いてマイクロ波又は高周波エネルギーを提供することができ、
図4及び
図8に示すように、2組のマイクロ波又は高周波源30は、同じ同軸共振器34を共有し、固体構造100の左右両側にそれぞれ設けられ、レーザー源20がレーザーエネルギーを提供する方向に垂直な方向にマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。
図4及び
図8に示される同軸共振器34は、より選択的に開口部35を有し、それにより、載置ステージ150は、この開口部35を用いて固体構造100上で処理される領域を同軸共振器34に送り込むことができる。同軸共振器34は、例えば、透明又は不透明な材料であってもよい。また、前記反対側方向、同じ側方向、垂直方向に加えて、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する方向と、レーザー源がレーザーエネルギーを提供する方向とは、夾角をなしてもよく、この夾角は、約0度~約180度の範囲である。また、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波電気エネルギーを提供する方向も調整可能であり、例えば、固体構造100の表面形態又は組成に応じて、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する方向とレーザー源がレーザーエネルギーを提供する方向及び/又は前記夾角を調整する。
【0043】
また、レーザー源20によって提供されたパルス光は、例えば、径方向断面(Radial Section)又は軸方向断面(Axial Section)の方向に沿って走査してエネルギーを固体構造100に提供し、固体構造100の質的な変化又は欠陥の形成方向は、径方向断面又は軸方向断面に平行な方向であり、パルス光が径方向断面又は軸方向断面の方向に沿って走査するときの走査経路は特に限定されず、レーザーエネルギーを固体構造100の加工対象領域110に提供できる限り、本発明に適用できる。マイクロ波又は高周波電磁波は、ウエハ/インゴットなどの固体構造100を貫通できるため、マイクロ波又は高周波源30は、径方向断面又は軸方向断面に平行な方向、径方向断面又は軸方向断面に垂直な方向、又は他の方向から、マイクロ波又は高周波電磁波を提供することができ、固体構造100について、選択的に、レーザー源20がエネルギーを提供することに起因して質的な変化又は欠陥が発生した固体構造100の加工対象領域110のみは、非加工対象領域110よりも多くのマイクロ波又は高周波エネルギーを吸収する。マイクロ波又は高周波源30がどの方向からマイクロ波又は高周波電磁波を提供するかに関わらず、いずれも反対側に吸収素子40が設けられて、不要な散乱を回避し、吸収の均一性を向上させることができる(
図2に示される)。レーザー源20及びマイクロ波又は高周波源30の設置方法及びそれらの作動原理は、当業者に知られているものであるため、本発明では詳細な説明が省略される。
【0044】
本発明のマイクロ波又は高周波源30の電力は、例えば、約200ワット~約5,000ワットの範囲であり、本発明のレーザー源20によって出力されるレーザーエネルギーは、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波エネルギーよりも高いか、低いか、又は等しいことに限定されない。本発明のレーザー源20は、例えば、マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーに応じて、加工対象領域110を改質するために提供するレーザーエネルギーを調整できるが、これに限定されず、マイクロ波又は高周波源30は、例えば、レーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーに応じて、固体構造100の加工対象領域110を加熱するために提供するマイクロ波又は高周波エネルギーを調整できるが、これに限定されず、固体構造100の加工対象領域110に改質層120を形成できる限り、本発明に適用できる。前記正のサイクルの効果によれば、例えば、マイクロ波又は高周波源30が固体構造100の加工対象領域110に提供するマイクロ波又は高周波エネルギーを増加させる場合、レーザー源20は、それに応じて、固体構造100の加工対象領域110に提供するレーザーエネルギーを低減させることができる。又は、レーザー源20が固体構造100の加工対象領域110に提供するレーザーエネルギーを一定にする場合、マイクロ波又は高周波源30は、固体構造100の加工対象領域110に提供するマイクロ波又は高周波エネルギーを低減させ又は増加させて、前記正のサイクルの効果を達成する。
【0045】
また、本発明のレーザー源20は、パルス光を生成することによってレーザーエネルギーを提供し、マイクロ波又は高周波源30は、電磁波を連続的又は断続的に生成することによってマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。それにより、本発明のレーザー源20とマイクロ波又は高周波源30は、固体構造100の加工対象領域110に改質層120を形成するように、パルス光とマイクロ波又は高周波電磁波をそれぞれ順番に又は同時に出力してレーザーエネルギーとマイクロ波又は高周波エネルギーを提供する。
図5は本発明のレーザーエネルギーとマイクロ波(又は高周波)エネルギーの出力周波数の模式図である。
図5に示すように、レーザー源20は、パルス光でレーザーエネルギーを提供するが、マイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波又は高周波電磁波を連続的に生成してマイクロ波又は高周波エネルギーを提供することができ(
図5の(a)、(b)及び(c)に示される)、又は、マイクロ波又は高周波源30は、マイクロ波又は高周波電磁波を断続的に生成してマイクロ波又は高周波エネルギーを提供することができる(
図5の(d)、(e)、(f)、(g)及び(h)に示される)。
図5の横座標Tは時間を表し、縦座標Eはパルスエネルギー(Pulse Energy、E)を表し、実際のエネルギーの大きさではなく、出力周波数を表している。
【0046】
続いで、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波電磁波を断続的に生成することを例として、オン時間について、マイクロ波又は高周波源30は、レーザー源20がパルス光を出力する前にオンにされ得、パルス光がオフになった後にオフにされ得る。マイクロ波又は高周波源30は、レーザー源20がパルス光を出力した後にオンにされ得、パルス光がオフになった後にオフにされ得る。又は、マイクロ波又は高周波源30は、レーザー源20がパルス光を出力すると同時にオンにされ得、パルス光がオフになった後にオフにされ得る。出力周波数について、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波電磁波は、例えば、レーザー源20によって出力されるパルス光の周波数と同じであってもよく、且つ提供時間が同じである。又は、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波電磁波は、例えば、レーザー源20によって出力されるパルス光の周波数と同じであってもよく、且つ提供時間がレーザーのパルス幅よりも長く、例えばn倍長くなり、nは、例えば正整数又は小数にすることができる。また、マイクロ波又は高周波源30がマイクロ波又は高周波電磁波を連続的に生成することを例として、出力周波数について、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波電磁波は、例えば、レーザー源20によって出力されるパルス光の周波数と異なってもよく、且つマイクロ波又は高周波電磁波の出力周波数は、パルス光の出力周波数よりも低いか又は高い。又は、マイクロ波又は高周波源30によって出力されるマイクロ波又は高周波電磁波は、例えば、レーザー源20によって出力されるパルス光の周波数と異なってもよく、且つマイクロ波又は高周波電磁波の出力周波数は、レーザーのパルス光の出力周波数のn倍であり、nは、例えば正整数又は小数にすることができる。
【0047】
本発明で使用されるレーザー源20は、例えば、Nd:YAGパルスレーザー、Nd:YVO4パルスレーザー又はTi-Sapphireパルスレーザーである。レーザー源20によって生成されるパルス光は、欠陥密度が約100ea/mm
2~約1,000,000ea/mm
2の範囲であるように、固体構造100の加工対象領域110を走査照射し、パルス光の移動速度は約10mm/sec~約1,000mm/secの範囲であり、パルス光の波長は、約700nmよりも大きく、好ましくは約700nm~約1,600nmの範囲であり、パルス幅は約1,000nsよりも小さく、繰り返し周波数(Repetition Frequency)は、約5KHz~約10MHzの範囲であり、パルスエネルギー(Pulse Energy、E)は、例えば、約0.1μJ~約1,000μJの範囲であり、スポット径(Spot Diameter)の範囲は、例えば、約1μm~約50μmの範囲である。本発明は、例えば、パルス光が固体構造100の加工対象領域110を水平に走査照射するように、可動載置ステージを用いて固体構造100を水平に移動させるか(例えば、
図2又は
図3の水平方向の二重矢印C1に示される)、又は、レーザー源20がパルス光を水平に移動させることができる(
図2又は
図4の水平方向の二重矢印L1に示される)。また、本発明はさらに、例えば、パルス光が固体構造100の加工対象領域110を垂直に走査照射するように、例えば、可動載置ステージを用いて固体構造100を垂直に移動させるか(すなわち、レーザー源は垂直方向に固定されるが、載置ステージは垂直方向に移動可能であり、
図2又は
図3の右側の垂直方向の二重矢印C2に示される)、又は、レーザー源20がパルス光を垂直に移動させることができる(すなわち、レーザー源20は垂直方向に移動可能であるが、載置ステージは垂直方向に固定され、
図2又は
図4の垂直方向の二重矢印L2に示される)。換言すると、本発明は、選択的に、加工手順で固体構造100の形態(外観など)に応じて、レーザー源20によって生成されるパルス光の集束点が照射する固体構造100の深さを上下に調整して、好適な改質効果を達成することができる。また、固体構造100の断面が反り形状である場合、本発明は、集束点を調整することで、反り形状に沿って固体構造100の表面又は深さXに均一な厚さを有する改質層120を形成することができる。本発明のレーザー源は、例えば、単一のパルス光で単一の集束点を形成して固体構造100を照射することができる。そして、本発明は、例えば、単一のパルス光で複数の集束点を形成して固体構造100を照射してもよく、又は、例えば、複数のパルス光で複数の集束点又は単一の集束点を形成して固体構造100を照射してもよい。上記複数のパルス光は、異なる半導体材料に適用できるように、同じ波長又は異なる波長を有してもよい。例えば、レーザー源には2つ以上の波長のパルス光が含まれるため、異なる組成の固体構造に応じて、適切なレーザー源の波長を選択することができる。また、他の実施形態では、上記可動載置ステージによる移動方法は、固体構造100の垂直移動又は水平移動に限定されず、可動載置ステージは、例えば、回転、傾斜又は他の方法で固体構造100を移動させてもよく、すなわち、パルス光の集束点が照射する固体構造100の位置を調整できる限り、本発明に適用できる。また、パルス光の集束点が照射する固体構造100の位置を調整することで、固体構造の加工対象領域110は、固体構造の全領域に完全に分布することに限定されず、例えば、径方向断面及び/又は縦断面の一部にのみ分布する。例えば、1つの加工対象領域110(
図9a及び
図9bを参照)又は複数の加工対象領域110(
図9c及び
図9dを参照)は、固体構造100の一部の領域に位置してもよく、加工対象領域110の断面形状は特に限定されず、実際の必要に応じて決定されてもよく、例えば、
図9a~
図9dに示されるU字形であってもよく、
図9bは
図9aの断面線I-I’に沿った断面側面図であり、
図9dは
図9cの断面線II-II’に沿った断面側面図である。
【0048】
また、
図7に示すように、本発明の加工装置は、例えば、上記加工手順の改質ステップS10の実行中に固体構造100を加熱する加熱ステップS50を実行するための熱源70をさらに含む。熱源70は、例えば、レーザー源20、マイクロ波又は高周波源30、加熱液体タンク80、別のレーザー源、別のマイクロ波又は高周波源、及び/又は赤外線光源である。
図7に示される加熱液体タンク80は、前記熱源として機能でき、固体構造100は、ウエハによって例示される。また、レーザー源20、マイクロ波又は高周波源30は、熱源70としても機能できる。上記加熱液体タンク80には液体を有するため、固体構造100が液体に浸漬される。加熱液体タンク80は、例えば、熱油タンクであってもよく、油82、好ましくは熱油、より好ましくはフッ素油などの耐高温油を有し、上記加工手順のステップの全部又はステップの一部で、固体構造100を油82に浸漬できるため、熱衝撃に起因する不要な亀裂又は亀裂の拡大を低減させ、熱均一性を向上させることができ、また、加熱液体タンク80には上記油82を有することに限定されず、必要に応じて、熱源として加熱可能な液体を選択してタンクに入れることができる。
【0049】
また、本発明の加工装置は、例えば、加工手順の検出及び制御ステップS40で固体構造100の改質層120の形成状態を検出し、例えば、自由電子の量を検出することによってその光伝導減衰の変化及び欠陥の発生状態を得て、さらにレーザー源20によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源30によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などをリアルタイムに制御するための検出及び制御ユニット90をさらに含む(
図6又は
図7を参照)。上記検出及び制御ステップS40は、例えば、改質ステップS10の実行中に同時に実行されてもよい。
【0050】
本発明の加工手順は、1つ又は複数の後続ステップS60を実行するステップをさらに含んでもよく、上記後続ステップS60は、例えば、分割(分離)、薄型化、研磨、コーティング、蒸着、黄色光照射、フォトリソグラフィー、エッチング及び拡散からなる群から選択されるが、これらに限定されない。後続ステップS60は、例えば、改質ステップS10の後に実行されてもよく、又は、後続ステップS60は、改質ステップS10の後に加熱ステップS50が実行された後に実行されてもよい。
【0051】
上記のように、本発明による固体構造の加工装置及び加工方法は、以下の1つ又は複数の利点を有する。
【0052】
(1)本発明は、改質ステップで様々な電磁放射源を用いて固体構造の加工対象領域に質的な変化又は欠陥を発生させて、他の領域との間の応力差を発生させる。
【0053】
(2)本発明は、改質ステップでレーザー源のパルス光を用いて固体構造の加工対象領域にホットスポットを形成して、固体構造の加工対象領域に原子結合の弱体化、構造の弱体化、又は単結晶形態から多結晶形態又はアモルファス形態への変換などの質的な変化又は欠陥などの改質現象を発生させる。本発明は、改質ステップでマイクロ波又は高周波源を同時に用いてマイクロ波又は高周波エネルギーを固体構造に提供し、固体構造の加工対象領域は、レーザーエネルギーの提供により自由電子を生成し、前記自由電子の生成は、他の領域(非加工対象領域)よりも多くのマイクロ波エネルギーを吸収できるため、加工対象領域の温度を上昇させ、さらに、温度が上昇するため、加工対象領域がより多くのレーザーエネルギーを吸収してより多くの自由電子を生成して、マイクロ波又高周波放射源によって提供されたより多くの電磁エネルギーを吸収し、それにより正のサイクルを形成することに寄与する。
【0054】
(3)本発明は、改質ステップで熱源により固体構造を加熱し、固体構造の温度を上昇させることができ、温度を上昇させることによって放射源のエネルギーの吸収率を向上させることができる。
【0055】
(4)本発明は、検出及び制御ステップで固体構造の改質層の形成状態を検出し、さらにレーザー源によって提供されたレーザーエネルギーをフィードバック制御するか、及び/又はマイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーをフィードバック制御し、例えば、マイクロ波又は高周波源によって提供されたマイクロ波又は高周波エネルギーの大きさ、周波数又は加工送り速度などを制御する。
【0056】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、添付の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
S10:改質ステップ
S40:検出及び制御ステップ
S50:加熱ステップ
S60:後続ステップ
20:レーザー源
22:レーザー発生器
23:パルス光
24:レンズ群
30:マイクロ波又は高周波源
32:マイクロ波発生器
33:マイクロ波
34:同軸共振器
35:開口部
36:アイソレータ
38:整合器
38a:同軸管
38b:金属板
38c:金属棒
40:吸収素子
70:熱源
80:加熱液体タンク
82:油
90:検出及び制御ユニット
92:温度センサ
100:固体構造
110:加工対象領域
120:改質層
150:載置ステージ
X:深さ
L1:水平方向の二重矢印
L2:垂直方向の二重矢印
C1:水平方向の二重矢印
C2:垂直方向の二重矢印
I-I’、II-II’:断面線