(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038270
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】パーキンソン病およびその他の神経変性疾患を処置するためのルビジウムおよび/または亜鉛化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/30 20060101AFI20240312BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K33/30
A61K45/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P43/00 121
A61K31/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000684
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2022522035の分割
【原出願日】2019-10-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522145959
【氏名又は名称】ヴェクター ヴィターレ アイピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ノヴァク
(72)【発明者】
【氏名】マキシム テムニコフ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドル バラキン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パーキンソン病(PD)およびその他の神経変性疾患(NDD)を処置する、予防する、または疾患の進行を遅延させるための組成物を提供する。
【解決手段】64Zneの化合物もしくは錯体を含み、前記64Zneが少なくとも80%の64Znである、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を処置する、予防する、または神経変性疾患の進行を遅延させることを必要とする対象における神経変性疾患を処置する、予防する、または神経変性疾患の進行を遅延させるための組成物であって、64Zneの化合物もしくは錯体を含み、前記
64
Zn
e
が少なくとも80%の
64
Znである、組成物。
【請求項2】
前記64Zneが少なくとも95%の64Znである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記神経変性障害がパーキンソン病である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記対象に静脈内投与される、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記対象に腹腔内投与される、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記対象に経口投与される、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、神経変性障害を処置するための1つまたは1つよりも多くのその他の治療剤を含む製剤が投与されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、1つまたは1つよりも多くのその他の抗パーキンソン病剤を含む製剤が投与されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記64Zneの化合物または錯体が、亜鉛フィンガーペプチドの一部分である、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記対象がヒト対象である、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記64Zneの化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、0.1から1.5mgの純粋な64Zneの範囲である64Zne
範囲の用量と等価な量で存在する、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記64Zne
の化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、1から15mgの純粋な64Zneの範囲である、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、薬および薬理学の分野に関し、より詳細には、神経変性障害(NDD)、特にパーキンソン病(PD)を処置する方法、化合物、および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
パーキンソン病(PD)を含む神経変性障害(NDD)は、炎症プロセスにより誘発された病理学的状態である。治療法は見い出されておらず、有効な薬が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
一態様において、本開示は、神経変性障害(NDD)、特にパーキンソン病(PD)を処置するために、64Zn濃縮亜鉛錯体、塩、および化合物、ならびに/またはある特定の85Rb濃縮ルビジウム化合物を含む組成物を提供する。本開示は、64Zn濃縮亜鉛を含む化合物(互いに別々にまたは組み合わせて)、塩、および錯体、例えば64Zn濃縮アスパラギン酸亜鉛、および85Rb濃縮ルビジウム有機塩(構造を以下に示す)を提供する。開示される組成物は、同位体濃縮化合物の1つまたは1つよりも多くを、NDDを処置するのに有用なその他の活性成分と必要に応じて組み合わせて含む。開示される組成物は、個々に、および他の抗NDD治療と組み合わせて使用することができる。開示される化合物は、患者に対して低毒性を有する。
【0004】
ある特定の実施形態では、本開示は、神経変性障害(NDD)、特にパーキンソン病(PD)を処置するために式1の化合物を含む組成物を提供する。
【化1】
【0005】
式1の化合物はルビジウム塩であり、このルビジウムは85Rbに富み、R1からR14までのそれぞれは独立して、H、OH、F、Cl、Br、I、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、およびNO2から選択される。
【0006】
ある特定の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R1
1、およびR13が全てHであり、ならびに
【0007】
a)R3はCH3であり、R7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物1)、
【0008】
b)R3、R7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物2)、
【0009】
c)R3はCH3であり、R14はClであり、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物3)、
【0010】
d)R3はCH3であり、R14はOHであり、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物4)、
【0011】
e)R14はOHであり、R3、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物5)、
【0012】
f)R3はOHであり、R7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物6)、
【0013】
g)R14はNO2であり、R3、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物7)、
【0014】
h)R12はBrであり、R14はNO2であり、R3、R7、およびR9は全てHである(化合物8)、
【0015】
i)R3およびR9は共にOCH3であり、R12はBrであり、R14はNO2であり、R7はHである(化合物9)、または
【0016】
j)R3およびR9は共にOCH3であり、R14はNO2であり、R7およびR12は共にHである(化合物10)。
【0017】
式1の上記化合物のいずれかにおいて、一部の実施形態では、ルビジウムが少なくとも75%の85Rb、少なくとも85%の85Rb、または少なくとも95%の85Rbであり、一部の実施形態では、少なくとも99%の85Rb、例えば99.8%の85Rbである。「N%の85RbであるRb」は、Rb原子のN%が同位体85RbであるRbを指す。
【0018】
ある特定の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、残りのR基は上記にて定義された通りである。他の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、R3は、H、CH3、OCH3、およびNO2から選択され、R7およびR9はそれぞれ独立してHおよびOCH3から選択され、R12およびR14はそれぞれ独立して、H、Br、I、およびNO2から選択される。別の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、R3は、H、CH3、OH、OCH3、およびNO2から選択され、R7およびR9はそれぞれ独立して、HおよびOCH3から選択され、R12は、H、Br、I、およびNO2から選択され、R14は、H、OH、Cl、Br、I、およびNO2から選択される。
【0019】
組成物のタイプは、静脈内またはその他の非経口投与に向けて製剤化された液体組成物、局所投与用に製剤化された組成物、および経口投与用に製剤化された組成物、例えば錠
剤、丸薬、カプセル、ロゼンジ、顆粒などを含むがこれらに限定されない当技術分野で公知のいずれかを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、開示される化合物を0.4ミリモルから30ミリモルの間、例えば1ミリモルから10ミリモルの間、または例えば1、2、5、10、20、25、もしくは30ミリモル含む。開示される組成物は、製剤に適切な1つまたは1つよりも多くの賦形剤をさらに含んでいてもよい。静脈内製剤は、適切な溶媒、例えば水;塩またはイオン、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、カリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオン;グルコースおよびスクロースなどの糖;緩衝剤;DMSOなどの他の賦形剤のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。局所製剤は、限定するものではないが、軟膏、クリーム、ローション、膏薬を含んでいてもよく、適切なビヒクル;透過増強剤、例えばDMSOおよび関連ある類似体;ならびに乳化剤のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。錠剤は、少なくとも1つの賦形剤、例えば、充填剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース);崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、アルギン酸、炭酸ナトリウム);湿潤剤(例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール、ラウリル硫酸ナトリウム);緩衝剤;滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム);およびコーティングなどを含んでいてもよい。
【0020】
ある特定の実施形態において、組成物は64Zne-aspを含み;さらなる実施形態では、組成物は、Rb-85を含有する10%ルビジウム塩をさらに含む。
【0021】
別の態様では、本開示は、NDD、特にPDを処置するために、治療有効量の開示組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本開示は、それを必要とする患者を処置する方法であって、前記患者に治療有効量の開示組成物を投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、処置される状態は、パーキンソン病などの神経変性疾患である。ある実施形態では、パーキンソン病などの神経変性疾患を処置するまたは神経変性疾患の進行を遅延させる方法であって、従来の形のNDDまたはPD治療と共にまたはそのような治療なしで、式1の85Rb濃縮ルビジウム化合物、および/または64Zneを含有する塩、錯体、もしくは化合物を含む、治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が開示される。ある特定の実施形態では、方法は、64Zneを含有する化合物、塩、または錯体を含む治療有効量の組成物;式1の85Rb濃縮ルビジウム化合物を含む治療有効量の組成物;および64Zneを含有する化合物、塩、または錯体と、85Rb濃縮ルビジウム化合物との両方を含む組成物を、投与することを含む。さらなる実施形態では、そのような組成物は、少なくとも1つの賦形剤を含む。ある特定の実施形態では、64Zneを含有する化合物および85Rb濃縮ルビジウム化合物は、互いにある特定の比で存在し、例えば90%の64Zneを含有する化合物と式1の10%の85Rb濃縮ルビジウム化合物、例えば90%の64Zne-aspと10%の85Rbe-E2であり、このパーセンテージは、元素の質量に対するものである。他の実施形態では、64Zneを含有する塩、錯体、または化合物は、64Zne-アルパルテートである。一部の実施形態では、化合物は、最大20アミノ酸の長さのペプチドである。
【0023】
本発明の第1の態様によれば、神経変性疾患を処置する、予防する、または神経変性疾患の進行を遅延させる方法であって、
下記の式:
【化2】
(式中、R
1からR
14までのそれぞれは独立して、H、OH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、およびNO
2であり、
85Rb
eが少なくとも75%の
85Rbである)
の
85Rb
e化合物、および塩、
ならびに/または
64Zn
eの化合物もしくは錯体
を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0024】
85Rbeが少なくとも90%の85Rbであり、および/または64Zneが少なくとも90%の64Znである、[0023]に記載の方法。
【0025】
R1、R2、R4~R6、R8、R10、R11、およびR13が全てHである、[0023]または[0024]に記載の方法。
【0026】
R3が、H、CH3、OCH3、およびNO2から選択され、R7およびR9はそれぞれ独立して、HおよびOCH3から選択され、R12およびR14はそれぞれ独立して、H、Br、I、およびNO2から選択される、[0023]~[0025]のいずれかに記載の方法。
【0027】
a)R3はCH3であり、そしてR7、R9、R12、およびR14は全てHである、
b)R3、R7、R9、R12、およびR14は全てHである、
c)R3はCH3であり、R14はClであり、そしてR7、R9、およびR12は全てHである、
d)R3はCH3であり、R14はOHであり、そしてR7、R9、およびR12は全てHである、
e)R14はOHであり、そしてR3、R7、R9、およびR12は全てHである、
f)R3はOHであり、そしてR7、R9、R12、およびR14は全てHである、
g)R14はNO2であり、そしてR3、R7、R9、およびR12は全てHである、
h)R12はBrであり、R14はNO2であり、そしてR3、R7、およびR9は全てHである、
i)R3およびR9は共にOCH3であり、R12はBrであり、R14はNO2であり、そしてR7はHである、または
j)R3およびR9は共にOCH3であり、R14はNO2であり、そしてR7およびR12は共にHである、[0023]から[0025]のいずれかに記載の方法。
【0028】
組成物が、少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、[0023]~[0027]のいずれかに記載の方法。
【0029】
R3はCH3であり、そしてR7、R9、R12、およびR14は全てHである、[0023]~[0025]に記載の方法。
【0030】
神経変性障害がパーキンソン病である、[0023]~[0029]のいずれかに記載の方法。
【0031】
組成物が、対象に静脈内投与される、[0023]~[0030]のいずれかに記載の方法。
【0032】
組成物が、対象に腹腔内投与される、[0023]~[0030]のいずれかに記載の方法。
【0033】
組成物が、対象に経口投与される、[0023]~[0030]のいずれかに記載の方法。
【0034】
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、神経変性障害を処置するための1つまたは1つよりも多くのその他の治療剤を含む製剤を投与することをさらに含む、[0023]~[0033]のいずれかに記載の方法。
【0035】
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、1つまたは1つよりも多くのその他の抗パーキンソン病剤を含む製剤を投与することをさらに含む、[0030]に記載の方法。
【0036】
64Zneの化合物または錯体が、亜鉛フィンガーペプチドの部分である、[0023]~[0035]のいずれかに記載の方法。
【0037】
対象がヒト対象である、[0023]~[0036]のいずれかに記載の方法。
【0038】
85Rbe化合物が、40mgの85Rbeから2400mgの85Rbeの間の量と等価な量で存在する、[0023]~[0037]のいずれかに記載の方法。
【0039】
64Zneの化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、0.1から1.5mgの純粋な64Zneの範囲である64Zne(金属による(by metal))範囲の用量と等価な量で存在する、[0023]~[0038]のいずれかに記載の方法。
【0040】
64Zne(金属による)の化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、1から15mgの純粋な64Zneの範囲である、[0023]~[0038]のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】
図1Aおよび
図1Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるミクログリアの食細胞活動に対する影響を示す。
図1A - 食作用細胞の相対数。
図1B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対偽手術された動物の群;##-p≦0.01対偽手術された動物の群;^-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。^^-p≦0.01対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図1B】
図1Aおよび
図1Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるミクログリアの食細胞活動に対する影響を示す。
図1A - 食作用細胞の相対数。
図1B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対偽手術された動物の群;##-p≦0.01対偽手術された動物の群;^-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。^^-p≦0.01対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0042】
【
図2】
図2は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるミクログリアの酸化的代謝に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対偽手術された動物の群;##-p≦0.01対偽手術された動物の群;^-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群;^^-p≦0.01対パーキンソニズムの動物モデルの対照群;&-p≦0.05対非刺激試料における該当指数;&&-p≦0.01対非刺激試料における該当指数。
【0043】
【
図3】
図3は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリア細胞によるNO合成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0044】
【
図4】
図4は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリアのアルギナーゼ活性に対する影響を示す。アルギナーゼ活性は、mM尿素/mgタンパク質/時を単位として表される。
【0045】
【
図5A】
図5Aおよび
図5Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリアの集団におけるCD14の発現を示し、CD14
+細胞画分(%)に関して表され(
図5A)、CD14発現(GMean)に関して表される(
図5B)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対偽手術された動物の群;##-p≦0.01対偽手術された動物の群;^-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群;^^-p≦0.01対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図5B】
図5Aおよび
図5Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリアの集団におけるCD14の発現を示し、CD14
+細胞画分(%)に関して表され(
図5A)、CD14発現(GMean)に関して表される(
図5B)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対偽手術された動物の群;##-p≦0.01対偽手術された動物の群;^-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群;^^-p≦0.01対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0046】
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリアの集団におけるCD206の発現を示し、CD206
+細胞画分(%)に関して表され(
図6A)、CD206発現(Gmean)に関して表される(
図6B)。凡例:#-p≦0.05対偽手術された動物の群。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルでのミクログリアの集団におけるCD206の発現を示し、CD206
+細胞画分(%)に関して表され(
図6A)、CD206発現(Gmean)に関して表される(
図6B)。凡例:#-p≦0.05対偽手術された動物の群。
【0047】
【
図7A】
図7Aおよび
図7Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、パーキンソン病のラットモデルのヘモグラム値を示す。結果は、細胞数×10
3/μl(またはmkl)として表され(
図7A)、細胞画分(%)として表される(
図7B)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の値;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの値。
【
図7B】
図7Aおよび
図7Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとによる予防的処置を受けた、パーキンソン病のラットモデルのヘモグラム値を示す。結果は、細胞数×10
3/μl(またはmkl)として表され(
図7A)、細胞画分(%)として表される(
図7B)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の値;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの値。
【0048】
【
図8A】
図8Aおよび
図8Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける単球の食細胞活動に対する影響を示す。
図8A - 食作用細胞の相対数(蛍光を放出する細胞のパーセンテージとして表される)、
図8B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【
図8B】
図8Aおよび
図8Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける単球の食細胞活動に対する影響を示す。
図8A - 食作用細胞の相対数(蛍光を放出する細胞のパーセンテージとして表される)、
図8B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0049】
【
図9】
図9は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける循環単球での酸化的代謝に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激試料における該当指数;#-p≦0.05対無傷動物の群;&-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0050】
【
図10A】
図10Aおよび
図10Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける好中球の食細胞活動に対する影響を示す。
図10Aは、食作用細胞の相対数を示す(蛍光を放出する細胞のパーセンテージとして表される)。
図10Bは、食細胞活動を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群。凡例:#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【
図10B】
図10Aおよび
図10Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける好中球の食細胞活動に対する影響を示す。
図10Aは、食作用細胞の相対数を示す(蛍光を放出する細胞のパーセンテージとして表される)。
図10Bは、食細胞活動を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群。凡例:#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0051】
【
図11】
図11は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
6
4Zn
e-aspとの、それらを予防的に投与した後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける循環好中球での酸化的代謝に対する影響を示す(結果は、ROS、相対蛍光として表される)。凡例:
*-p≦0.05対非刺激試料における該当指数;#-p≦0.05対無傷動物の群;&-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0052】
【
図12A】
図12Aおよび
図12Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢血食細胞の集団でのCD14発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図12B】
図12Aおよび
図12Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢血食細胞の集団でのCD14発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0053】
【
図13A】
図13Aおよび
図13Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢血食細胞の集団でのCD206発現を示す(13A、CD206
+細胞画分、%;13B、CD206発現、Gmean)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図13B】
図13Aおよび
図13Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢血食細胞の集団でのCD206発現を示す(13A、CD206
+細胞画分、%;13B、CD206発現、Gmean)。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0054】
【
図14A】
図14Aおよび
図14Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらの予防的投与後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける腹腔マクロファージの食細胞活動に対する影響を示す。
図14A - 食作用細胞の相対数、
図14B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群。#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【
図14B】
図14Aおよび
図14Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとの、それらの予防的投与後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける腹腔マクロファージの食細胞活動に対する影響を示す。
図14A - 食作用細胞の相対数、
図14B - 食細胞活動。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群。#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0055】
【
図15】
図15は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
6
4Zn
e-aspとの、それらの予防的投与後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける腹腔マクロファージの酸化的代謝に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激試料での該当指数。
【0056】
【
図16】
図16は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
6
4Zn
e-aspとの、それらの予防的投与後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるミクログリア細胞によるNO合成に対する影響を示す。
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0057】
【
図17】
図17は、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
6
4Zn
e-aspとの、それらの予防的投与後の、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける腹腔マクロファージのアルギナーゼ活性に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの群。
【0058】
【
図18A】
図18Aおよび
図18Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢マクロファージの集団でのCD14発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図18B】
図18Aおよび
図18Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢マクロファージの集団でのCD14発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0059】
【
図19A】
図19Aおよび
図19Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけCD14+腹腔マクロファージの集団でのCD206発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【
図19B】
図19Aおよび
図19Bは、
64Zn
e-aspと、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspとで予防的処置を受けた、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけCD14+腹腔マクロファージの集団でのCD206発現を示す。凡例:
*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0060】
【
図20】
図20は、
64Zn
e-aspの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージによる細胞内ROS生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞。
【0061】
【
図21】
図21は、
64Zn
e-aspの、ニトロブルーテトラゾリウムに対する影響を示す(非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージの、NBT試験指数)。
【0062】
【
図22】
図22は、
64Zn
e-aspの、非感作の腹腔マクロファージの食作用に対する影響を示す。
【0063】
【
図23】
図23は、
64Zn
e-aspの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージのアルギナーゼ活性に対する影響を示す。
【0064】
【
図24】
図24は、
64Zn
e-aspの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージによりNO生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖により刺激された細胞。
【0065】
【
図25】
図25は、E2+
85Rb
eの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージによる細胞内ROS生成に対する影響を示す。注記:
*-p≦0.05対非刺激細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0066】
【
図26】
図26は、E2+
85Rb
eの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージのNBT試験指数に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0067】
【
図27】
図27は、E2+
85Rb
eの、非感作腹腔マクロファージの食作用に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞。
【0068】
【
図28】
図28は、E2+
85Rb
eの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージのアルギナーゼ活性に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0069】
【
図29】
図29は、E2+
85Rb
eの、非感作のおよび細菌性リポ多糖で処置された腹腔マクロファージによるNO合成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0070】
【0071】
【
図31】
図31は、冷却剤を使用した機械的分解による脳組織のホモジネートの作製を示す。
【0072】
【
図32】
図32は、Percoll勾配での脳組織のホモジネートの分画を示す。
【0073】
【0074】
【
図34】
図34は、
64Zn
e-aspの、非感作ラットミクログリア細胞による細胞内ROS生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0075】
【
図35】
図35は、
64Zn
e-aspの、非感作ラットミクログリア細胞による食細胞活動に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞。
【0076】
【
図36】
図36は、
64Zn
e-aspの、非感作ラットミクログリア細胞によるNO生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0077】
【
図37】
図37は、
64Zn
e-aspの、非感作ラットミクログリア細胞のアルギナーゼ活性に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0078】
【
図38】
図38は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血単球による細胞内ROS生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0079】
【
図39】
図39は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血単球のNBT試験指数に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対非刺激細胞。
【0080】
【
図40】
図40は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット単球の食細胞活動に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞。
【0081】
【
図41】
図41は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血単球によるNO生成に対する影響を示す。凡例:#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0082】
【
図42】
図42は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血単球のアルギナーゼ活性に対する影響を示す。
【0083】
【
図43】
図43は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血好中球による細胞内ROS生成に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0084】
【
図44】
図44は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血好中球のNBT試験指数に対する影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0085】
【
図45】
図45は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血好中球の食細胞活動に対する影響を示す。
【0086】
【
図46】
図46は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血好中球によるNO生成に対する影響を示す。凡例:#-p≦0.05対細菌性リポ多糖刺激細胞。
【0087】
【
図47】
図47は、
64Zn
e-aspの、非感作ラット末梢血好中球のアルギナーゼ活性に対する影響を示す。
【0088】
【
図48】
図48は、
64Zn
e-aspおよびE2+
85Rb
e調製物の、ヒトTリンパ球の自発的なおよびPHA刺激による増殖活性に対するin vitroでの影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対PHA刺激細胞。
【0089】
【
図49】
図49は、
64Zn
e-aspおよびE2+
85Rb
e調製物の、ヒトTリンパ球の活性化誘発型アポトーシスに対するin vitroでの影響を示す。凡例:
*-p≦0.05対未処置細胞;#-p≦0.05対PHA刺激細胞。
【0090】
【
図50A】
図50Aは軌道マップを示し、
図50Bは、5分間にわたる、オープンフィールド内の所与の場所で動物によって費やされた累積時間のマップを示す。
【
図50B】
図50Aは軌道マップを示し、
図50Bは、5分間にわたる、オープンフィールド内の所与の場所で動物によって費やされた累積時間のマップを示す。
【0091】
【
図51A】
図51Aは軌道マップを示し、
図51Bは、5分間にわたる、装置内の所与の場所で動物によって費やされた累積時間のマップを示す。
【
図51B】
図51Aは軌道マップを示し、
図51Bは、5分間にわたる、装置内の所与の場所で動物によって費やされた累積時間のマップを示す。
【0092】
【
図52】
図52は、64Zn-aspの、実験的パーキンソニズムでの行動および運動機能ならびにアポモルフィン誘発型回転行動に対する治療効果の研究における、実験のスキームのグラフ表示である(実施例7)。
【0093】
【
図53】
図53Aおよび
図53Bは、64Zn-aspの投与の前および後での、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおけるアポモルフィン試験の結果を示す。
図53A:第1および第2のアポモルフィン試験における平均回転数/30分、M±SD;
図53B:第1および第2のアポモルフィン試験間での、30分当たりの増加および減少した回転数でのラットのパーセンテージ比。
【0094】
【
図54-1】
図54A~
図54Oは、64Zn-aspを投与した後の、パーキンソニズムのLPSラットモデルの中脳におけるチロシンヒドロキシラーゼ活性を持つニューロンの免疫組織的同定を示す。TH陽性染色(褐色)。Oc.40、ob.10。
図54A(動物1)、
図54B(動物2)、
図54C(動物3)、I群 - 無傷のラット(n=3);
図54D(動物1)、
図54E(動物2)、
図54F(動物3)、II群 - 偽手術されたラット+H2O(n=3);
図54G(動物1)、
図54H(動物2)、
図54I(動物3)、III群 - 偽手術されたラット+64Zn-asp(n=3);
図54J(動物1)、
図54K(動物2)、
図54L(動物3)、V群 - LPS+H2O(n=3);
図54M(動物1)、
図54N(動物2)、
図54O(動物3)、VI群 - LPS+64Zn-asp(n=3)。
【
図54-2】
図54A~
図54Oは、64Zn-aspを投与した後の、パーキンソニズムのLPSラットモデルの中脳におけるチロシンヒドロキシラーゼ活性を持つニューロンの免疫組織的同定を示す。TH陽性染色(褐色)。Oc.40、ob.10。
図54A(動物1)、
図54B(動物2)、
図54C(動物3)、I群 - 無傷のラット(n=3);
図54D(動物1)、
図54E(動物2)、
図54F(動物3)、II群 - 偽手術されたラット+H2O(n=3);
図54G(動物1)、
図54H(動物2)、
図54I(動物3)、III群 - 偽手術されたラット+64Zn-asp(n=3);
図54J(動物1)、
図54K(動物2)、
図54L(動物3)、V群 - LPS+H2O(n=3);
図54M(動物1)、
図54N(動物2)、
図54O(動物3)、VI群 - LPS+64Zn-asp(n=3)。
【0095】
【
図55】
図55は、
64Zn-aspの、実験的パーキンソニズムの中脳におけるTH陽性ニューロンの数に対する治療効果のグラフである。M±SD、P<0.001。
【0096】
【
図56A】
図56Aは、64Zn-aspの、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける体重に対する治療効果のグラフである。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001対実験1日目の値。
図56Bは、LPSラットモデルの、64Zn-aspによる処置の過程での体重変化をグラフで示す、M±SD、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001対LPS群における値。
【
図56B】
図56Aは、64Zn-aspの、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける体重に対する治療効果のグラフである。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001対実験1日目の値。
図56Bは、LPSラットモデルの、64Zn-aspによる処置の過程での体重変化をグラフで示す、M±SD、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001対LPS群における値。
【0097】
【
図57】
図57は、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける糞便の含水量を表示する、M+SD。
【0098】
【
図58】
図58は、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける糞便の含水量に対する、64Zn-aspの治療効果を表示する、M±SD。
【0099】
【0100】
【0101】
【
図61】
図61は、64Zn-aspの、ピックアップ試験で測定された行動応答パラメーターに対する影響を表示する。
【0102】
【
図62】
図62は、64Zn-aspの、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける循環白血球のレベルに対する影響を表示する、M±SD。注記:#p<0.05対無傷の動物、$p<0.05対偽手術された動物。
【0103】
【
図63】
図63は、
64Zn-aspの、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける様々な集団の循環白血球の絶対数に対する影響を示す、M±SD。注記:#p<0.05対無傷の動物、$p<0.05対偽手術された動物、
*p<0.05対パーキンソン病の動物モデル。
【0104】
【
図64】
図64は、64Zn-aspの、パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける様々な集団の循環白血球の相対数に対する影響を示す、M±SD。注記:#p<0.05対無傷の動物、$p<0.05対偽手術された動物、
*p<0.05対パーキンソン病の動物モデル。
【0105】
【
図65A】
図65Aおよび
図65Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおけるミクログリアの食細胞活動に対する治療効果を示す。
図65A - 食細胞の相対数、
図65B - 食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【
図65B】
図65Aおよび
図65Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおけるミクログリアの食細胞活動に対する治療効果を示す。
図65A - 食細胞の相対数、
図65B - 食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【0106】
【
図66】
図66は、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおけるミクログリアの酸化的代謝に対する治療効果を示す。#-p<0.05対無傷の動物;$p≦0.05対偽手術された動物、
*p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル、@-p≦0.05対非刺激試料。
【0107】
【
図67A】
図67Aおよび
図67Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルでのミクログリア集団における表現型マーカーの発現を示す。
図67A - 分析された集団における発現細胞の数、
図67B - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【
図67B】
図67Aおよび
図67Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルでのミクログリア集団における表現型マーカーの発現を示す。
図67A - 分析された集団における発現細胞の数、
図67B - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【0108】
【
図68A】
図68Aおよび
図68Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける循環単球および顆粒球の食細胞活動に対する治療効果を示す。
図68A - 食細胞の相対数、
図68B-食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【
図68B】
図68Aおよび
図68Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける循環単球および顆粒球の食細胞活動に対する治療効果を示す。
図68A - 食細胞の相対数、
図68B-食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【0109】
【
図69A】
図69Aおよび
図69Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける循環単球(
図69A)および顆粒球(
図69B)の酸化的代謝に対する治療効果を示す。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル、@-p≦0.05対非刺激試料
【
図69B】
図69Aおよび
図69Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける循環単球(
図69A)および顆粒球(
図69B)の酸化的代謝に対する治療効果を示す。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル、@-p≦0.05対非刺激試料
【0110】
【
図70A】
図70Aおよび
図70Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける循環食細胞による表現型マーカーの発現を示す。
図70A - 分析された集団における発現細胞の数、
図70B - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル
【
図70B】
図70Aおよび
図70Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける循環食細胞による表現型マーカーの発現を示す。
図70A - 分析された集団における発現細胞の数、
図70B - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル
【0111】
【
図71A】
図71Aおよび
図71Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける腹腔マクロファージの食細胞活動に対する治療効果を示す。
図71A - 食細胞の相対数、
図71B - 食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【
図71B】
図71Aおよび
図71Bは、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける腹腔マクロファージの食細胞活動に対する治療効果を示す。
図71A - 食細胞の相対数、
図71B - 食細胞活動。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【0112】
【
図72】
図72は、64Zn-aspの、パーキンソン病のLPSラットモデルにおける腹腔マクロファージの酸化的代謝に対する治療効果を示す。#-p<0.05対無傷の動物、$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル、@-p≦0.05対非刺激試料。
【0113】
【
図73A】
図73Aおよび
図73Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける腹腔マクロファージによる表現型マーカーの発現を示す。
図73A - 分析された集団における発現細胞の数、
図73A - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【
図73B】
図73Aおよび
図73Bは、64Zn-aspで処置した実験的パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける腹腔マクロファージによる表現型マーカーの発現を示す。
図73A - 分析された集団における発現細胞の数、
図73A - 発現レベル。#-p<0.05対無傷の動物;$-p≦0.05対偽手術された動物、
*-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。
【0114】
【
図74】
図74は、64Zn-aspで処置したパーキンソニズムのLPSラットモデルにおけるアストロサイトでの神経型一酸化窒素シンターゼ発現を示す。@-p≦0.05対パーキンソン病の対照動物モデル。1は対照である;2は、偽手術された+H
2O;3は、偽手術された+Zn-asp 1.5mg/kg;4は、LPS+Н
2O;5は、LPS+Zn-asp 1.5mg/kg。
【発明を実施するための形態】
【0115】
詳細な説明
本明細書で使用される場合、名詞の前の「1つの(a)」または「複数の」という単語は、特定の名詞の1つまたは1つよりも多くを表す。
【0116】
「例えば」および「~など」という用語ならびにそれらの文法上の均等物に関し、他に
明示されない限り、「および限定するものではない」という文言が続くと理解される。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、実験誤差に起因するばらつきを説明するものとする。本明細書で報告される全ての測定値は、他に明示しない限り、この用語が明らかに使用されていてもされていなくても「約」という用語によって修飾されると理解される。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が他に明示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0117】
本明細書で使用される場合、同位体記号に添付される添え字「e」は、その同位体濃縮元素を指す。例えば「64Zne」は、64Zn濃縮亜鉛を指し、「85Rbe」は、85Rb濃縮ルビジウムを指す。
【0118】
「化合物1」は、本明細書では、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンの85Rb濃縮ルビジウム有機塩と呼び、「E2+85Rbe」または「85Rbe-E2」と呼ばれる。「E2」は、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンを指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、64Zneは、少なくとも50%の64Znの亜鉛である。好ましくは、開示される方法で使用される組成物の亜鉛化合物、錯体、および塩は、少なくとも75%の64Zn、例えば少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%の64Znである、64Zneを含む。
【0120】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、患者に対して有益な効果をもたらす薬剤の量を指す。「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的、および/または予防的結果をもたらす薬剤の量を指す。その結果は、患者における疾患または障害の徴候、症状、または原因のうちの1つまたは1つよりも多くの低減、改善、緩和、減少、遅延、および/もしくは軽減、または生物系の任意のその他の所望の変化であり得る。有効量は、1回または1回よりも多くの投与で投与することができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「患者」および「対象」は、同義の用語であり、ヒト患者または動物対象を指してもよい。
【0122】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明で使用するために本明細書に記述され;当技術分野で公知のその他の適切な方法および材料を使用することもできる。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定しようとするものではない。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース、エントリー、およびその他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先されることになる。
【0123】
神経変性障害
【0124】
パーキンソン病(PD)を含む神経変性障害(NDD)は、炎症プロセスにより誘発された病理学的状態である。Calabrese V, et al. Free Radic Biol Med. 2017;115:80-91. doi: 10.1016/j.freeradbiomed.2017.10.379.1;Franceschi C, et al.,
Trends Endocrinol Metab. 2017;28(3):199-212. doi: 10.1016/j.tem.2016.09.005;Monti D, et al.. Mech Ageing Dev. 2017;165(Pt B):129-138. doi: 10.1016/j.mad.2016.12.008。NDDの発症は、高齢者に特徴的である。この現象の病態生理的基礎は、「インフラメージング」と呼ばれており、これは組織、臓器、および体液での炎症メディエーターの高い発現、ならびに免疫系細胞、特に自然免疫のエフェクター、例えば単核および多形核食細胞(単球、マクロファージ、および好中球)の代謝プロファイ
ルでの炎症誘発性シフトを伴う、慢性の低度全身炎症プロセスである。Franceschi C, Campisi J. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014 Jun;69 Suppl 1:S4-9.
doi: 10.1093/gerona/glu057。最も重要な炎症メディエーターの1つは、正常な状態
および病理学的状態の発症の両方でいくつかの重要な生物学的機能を発揮する反応性酸素種(ROS)である。免疫系のミエロイド細胞(単球、好中球、およびマクロファージ)は、ROSの主な供給源である。単球および好中球は、末梢血中を常に循環するミエロイド細胞である。マクロファージは、例外なしに全ての組織に存在する常在細胞であり、免疫系のセンチネルとして働く。それらは単球の分化を介して形成される。正常な状態では、ROSは、細胞代謝を制御するシグナル伝達分子として機能する。これは血管形成の刺激および組織病変の再構築に必要な幹組織要素の分化に関連した組織の修復プロセスに関わるROS媒介型シグナル伝達である。ROSは、殺菌機能を有し、病原性微生物の細胞内および細胞外の両方での死滅のエフェクター分子である。しかしながら、ROS生成の増強は、異常な細胞シグナル伝達の発生をもたらし、タンパク質の特性に対して著しい作用をもたらし、そのフォールディング(それらの機能的3次構造の形成)における問題、タンパク質凝集体の形成、ならびにその結果としてそれらの生理的機能の異常性/損失および/または病理的機能の獲得を引き起こす。体内の全てのタンパク質の中で、硫黄含有アミノ酸、つまりシステインおよびメチオニンが組み込まれたものが、ROSの最も重要な標的である。Ahmad S, et al. Front Biosci (Schol Ed). 2017;9:71-87。Luo
S, Levine RL. et al., FASEB J. 2009;23(2):464-72. doi: 10.1096/fj.08-118414。システインおよびメチオニンは、ROSスカベンジャーとして働き、したがって酸化ストレスの発症が防止される。これらのアミノ酸の抗酸化作用のメカニズムは、身体の全ての細胞に存在するレダクターゼによる、それら酸化形態の即座の修復にある。例えば、メチオニンの酸化形態は、メチオニンスルホキシドレダクターゼ(MSR)によって修復される。しかしながら、加齢と共に、MSRを含むレダクターゼの合成は著しく低減し、これが、ROSの病原性効果の実現およびインフラメージングの発症の理由の1つになる。
【0125】
ROSは、PDの病原因子でもある。パーキンソニズムにおけるROSの病原性作用の標的は、例えばα-シヌクレイン、チロシンヒドロキシラーゼ、ミトコンドリア複合体I、PINK1(PTEN誘発性キナーゼ1)、抗酸化DJ-1などの、脳内のいくつかのメチオニン含有タンパク質である[Herrero MT, et al., Front Neuroanat. 2015;9:32. doi: 10.3389/fnana.2015.00032;Glaser CB, et al., Biochimica et Biophysica Acta 2005; 1703; 157- 169;Danielson SR, Andersen JK. Free Radic Biol Med. 2008 May 15;44(10):1787-94. doi: 10.1016/j.freeradbiomed.2008.03.005]。例えば、α-シヌクレインの一部としてのメチオニンのROS媒介型酸化
は、プロトフィブリルの形で存在するその能力の低下を引き起こし、このタンパク質の病理形態の形成と共にモノマーの凝集を促進させる。当初、PDの発症を伴う炎症プロセスは、活性化ミクログリア細胞(脳の常在マクロファージ)がROSの供給源である脳内にのみ局在化すると考えられていた。しかしながら最近の研究は、食細胞の関与を伴うPDでの炎症プロセスの全身的性質が、疾患の病因において脳外に局在化することを、説得力をもって実証している。ヒトおよび実験動物の両方におけるPDの発症は、末梢血(単球および好中球)中を循環するミエロイド細胞の炎症誘発性活性化を伴うことが証明されている。これらの細胞では、定量的および機能的な変化に2つのタイプの病理学的変化がある。単球機能の炎症誘発性シフトを伴う、好中球減少症に対する単球増加症、ならびに単球減少症に対する好中球増加症、および好中球酸化的代謝の急な増加である。さらに、循環ミエロイド細胞の定量的および機能的特徴は、PD過程をモニターしこの病状の処置の有効性を評価する情報提供マーカーと見なされる。Funk N, et al., Mov Disord. 2013;28(3):392-5. doi: 10.1002/mds.25300。Grozdanov V, et al., Acta Neuropathol. 2014;128(5):651-63. doi: 10.1007/s00401-014-1345-4。PDの発症はまた
、腹腔マクロファージを含む胃腸管内に局在化した食細胞に密接に関連付けられる。過去
数年にわたり実施された研究は、パーキンソニズムの発症と腸管微生物叢のジスバイオシス障害との間の関係を、説得力を持って実証している。PDの発症におけるジスバイオシスに関わる単純化されたスキームは、下記の通りに見える。腸におけるジスバイオシス変化は、局所ROS生成の源になる、腸壁および腹腔食細胞のミエロイド細胞の炎症誘発性活性化を伴う。ROS濃度の増加は、腸管微生物叢における好気性/嫌気性比の病理学的変化をもたらし、免疫寛容メカニズムがないものに対して微生物の好気性形態の相対数が増加する。病原性好気性微生物の数の増加は、ミエロイド細胞の炎症誘発性活性化をさらに高める。ROS合成の加速は、腸におけるα-シヌクレインのポリマー形態の形成をもたらす。α-シヌクレインの凝集は、腸の神経系に病理学的変化を引き起こし、全身に拡がって、プリオン様メカニズムを介して脳に到達する。Felice VD, et al., Parkinsonism Relat Disord. 2016;27:1-8. doi: 10.1016/j.parkreldis.2016.03.012。Obata Y, Pachnis V. Gastroenterology. 2016 v;151(5):836-844. doi: 10.1053/j.gastro.2016.07.044。Yoo BB, Mazmanian SK. T Immunity. 2017;46(6):910-926.
doi: 10.1016/j.immuni.2017.05.011. Mukherjee A, Biswas A, Das SK. World J Gastroenterol. 2016 ;22(25):5742-52. doi: 10.3748/wjg.v22.i25.5742。PDの病因におけるジスバイオシス障害の最も重要な役割は、この疾患を予防するただ1つの方法が、正常な腸管微生物叢の代謝を安定化させる高含量の複合炭水化物および強力な抗酸化剤の機能を発揮するポリ不飽和植物脂肪酸を特徴とするいわゆる地中海食であるという事実によって証明される。Cassani E., et al. Parkinsonism Relat Disord.
2017;42:40-46. doi: 10.1016/j.parkreldis.2017.06.007。
【0126】
米国特許公開第2019/0105345号および第2016/0153957号;ならびに米国特許第10,226,484号、第9,861,659号、および第10,183,041号も参照されたい。
【0127】
開示される化合物、組成物、および方法
【0128】
本開示は、パーキンソン病など、対象における神経変性疾患を処置するための、方法、化合物、および組成物に関する。
【0129】
本開示は、64Zn濃縮亜鉛を含む化合物(互いに別々にまたは組み合わせて)、塩、および錯体、例えば64Zn濃縮亜鉛アスパルテート、または任意の64Zn濃縮亜鉛アミノ酸、および85Rb濃縮ルビジウム有機塩(構造は以下に示す)を、パーキンソン病など、対象の神経変性疾患の処置に使用するために提供する。
【0130】
別の態様では、本開示は、神経変性障害(NDD)、特にパーキンソン病(PD)を処置するための、64Zn濃縮亜鉛錯体、塩、および化合物、ならびに/またはある特定の85Rb濃縮ルビジウム化合物を含む組成物を提供する。開示される組成物は、同位体濃縮化合物のうちの1つまたは1つよりも多くを、NDDの処置に有用なその他の活性成分と必要に応じて組み合わせて含む。開示される組成物は、個々におよびその他の抗NDD治療と組み合わせて使用することができる。開示される化合物は、患者に対して低毒性を有する。
【0131】
ある特定の実施形態において、本開示は、神経変性障害(NDD)、特にパーキンソン病(PD)を処置するための、式1の化合物を含む組成物を提供する。
【化3】
【0132】
式1の化合物はルビジウム塩であり、ルビジウムは85Rbに富み、R1からR14までのそれぞれは独立して、H、OH、F、Cl、Br、I、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、およびNO2から選択される。
【0133】
ある特定の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は、全てHであり、ならびに
【0134】
a)R3はCH3であり、そしてR7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物1)、
【0135】
b)R3、R7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物2)、
【0136】
c)R3はCH3であり、R14はClであり、そしてR7、R9、およびR12は全てHである(化合物3)、
【0137】
d)R3はCH3であり、R14はOHであり、そしてR7、R9、およびR12は全てHである(化合物4)、
【0138】
e)R14はOHであり、そしてR3、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物5)、
【0139】
f)R3はOHであり、そしてR7、R9、R12、およびR14は全てHである(化合物6)、
【0140】
g)R14はNO2であり、そしてR3、R7、R9、およびR12は全てHである(化合物7)、
【0141】
h)R12はBrであり、R14はNO2であり、そしてR3、R7、およびR9は全てHである(化合物8)、
【0142】
i)R3およびR9は共にOCH3であり、R12はBrであり、R14はNO2であり、そしてR7はHである(化合物9)、または
【0143】
j)R3およびR9は共にOCH3であり、R14はNO2であり、そしてR7およびR12は共にHである(化合物10)。
【0144】
式1の上記化合物のいずれかにおいて、ルビジウムは好ましくは、少なくとも75%の85Rbであり、より好ましくは少なくとも85%の85Rb、さらにより好ましくは少なくとも95%の85Rbであり、一部の実施形態では、少なくとも99%の85Rb、例えば99.8%の85Rbである。「N%の85RbであるRb」は、Rb原子のN%が同位体85RbであるRbを指す。
【0145】
ある特定の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、残りのR基は上記にて定義された通りである。他の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、R3はH、CH3、OCH3、およびNO2から選択され、R7およびR9はそれぞれ独立してHおよびOCH3から選択され、R12およびR14はそれぞれ独立してH、Br、I、およびNO2から選択される。別の実施形態では、式1のR1、R2、R4、R5、R6、R8、R10、R11、およびR13は全てHであり、R3はH、CH3、OH、OCH3、およびNO2から選択され、R7およびR9はそれぞれ独立してHおよびOCH3から選択され、R12はH、Br、I、およびNO2から選択され、R14はH、OH、Cl、Br、I、およびNO2から選択される。
【0146】
ある特定の実施形態では、組成物は64Zne-aspを含み;さらなる実施形態では、組成物は、Rb-85を含有する10%のルビジウム塩をさらに含む。
【0147】
例示的な実施形態では、本発明の化合物1は、R3がCH3であり、残りのR基がHである。この化合物を、本明細書では、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンの85Rb濃縮ルビジウム有機塩ならびに「85Rbe-E2」および「E2+85Rbe」とも呼ぶ。「E2」は、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンを指す(図中、「E2+85Rb」、「E2Rb85」、および「85RbE2」という用語は、85Rbe-E2を指す)。
【0148】
開示される化合物は、本明細書に開示されるように、および/または当技術分野で公知の化学合成法を使用して調製される。
【0149】
ルビジウムは、周期律表の第5周期、1族のメインサブグループの化学元素であり、原子番号37である。85Rbは、安定な同位体であり、その天然存在比%は72.2%である。即ち、天然に存在するルビジウムは、ルビジウム同位体の混合物からなる。天然に存在するルビジウムの試料において、ルビジウム原子の72.2%が同位体85Rbである。
【0150】
本明細書で使用される場合、「85Rb濃縮ルビジウム」は、72.2%よりも多くの85Rbからなるルビジウムである。したがって開示される化合物において、ルビジウムは、72.2%よりも高い85Rbであり、例えば少なくとも約75%(例えば、少なくとも75%)、少なくとも約80%(例えば、少なくとも80%)、少なくとも約85%(例えば、少なくとも85%)、少なくとも約90%(例えば、少なくとも90%)、または少なくとも約95%の85Rb(例えば、少なくとも95%の85Rb)である。
【0151】
開示される化合物、組成物、および方法のある特定の実施形態において、ルビジウムは少なくとも約90%の85Rb(例えば、少なくとも90%の85Rb)であり、99%を超える85Rb、例えば約99.8%の85Rb(例えば、99.8%の85Rb)であってもよい。開示される組成物は、そのような85Rb濃縮化合物を含み、開示される方法は、そのような組成物を投与することを必要とする。
【0152】
本明細書で使用される「約」という用語は、対象の量のプラスマイナス3%を示す(例えば「約80%」は、77.6%から82.4%の範囲を指す)。
【0153】
別の態様では、本開示は、パーキンソン病などの神経変性疾患を処置するまたは神経変性疾患の進行を遅延させる方法であって、式1の85Rb濃縮ルビジウム化合物および/または64Zne含有塩、錯体、もしくは化合物を単独でまたは従来の形のNDDもしくはPD治療と組み合わせて含む治療有効量の組成物を投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、64Zne含有化合物、塩、もしくは錯体を含む治療有効量の組成物;式1の85Rb濃縮ルビジウム化合物を含む治療有効量の組成物;または64Zne含有化合物、塩、もしくは錯体と、85Rb濃縮ルビジウム化合物との両方を含む組成物を投与することを含む。さらなる実施形態では、そのような組成物は、少なくとも1つの賦形剤を含む。ある特定の実施形態では、64Zne含有化合物および85Rb濃縮ルビジウム化合物は、互いに対してある特定の比で存在し、例えば90%の64Zne含有化合物および式1の10%の85Rb濃縮ルビジウム化合物であり、例えば90%の64Zne-aspおよび10%の85Rbe-E2であり、このパーセンテージは元素の質量に対するものである。他の実施形態では、64Zne含有塩、錯体、または化合物は、64Zne-アスパルテートである。一部の実施形態では、化合物は、最大20アミノ酸長のペプチドである。
【0154】
ある特定の実施形態では、開示される組成物は、64Zne-アスパルテートキレート錯体を含む。一部の実施形態では、化合物は、亜鉛フィンガーの形をとるタンパク質またはペプチドであり、1つまたは2つの亜鉛イオンと、1つまたは約20アミノ酸を含有する。そのような構造では、亜鉛は構造安定化剤として働いてもよい。
【0155】
64Zneおよび85Rbeの両方の化合物を含む組成物では、ある特定の実施形態において、64Zneおよび85Rbe成分の比は、64Zneが9部(重量で)であり85Rbeが1部であり;他の実施形態では、比は、64Zneが7部(重量で)および85Rbeが3部である。一部の実施形態では、比は、64Zneおよび85Rbeの両方の化合物を含む組成物中、64Zneが1から7部(重量で)であり85Rbeが3から9部(重量で)である。
【0156】
両方を含む1つの組成物の代わりに、64Zneまたは85Rbeのいずれかの化合物をそれぞれ含む2つの組成物も提供される。ある特定の実施形態では、これらが2つの別々の組成物であっても、64Zneおよび85Rbe成分の比は、64Zneが9部(重量で)であり85Rbeが1部であり;他の実施形態では、比は、64Zneが7部(重量で)および85Rbeが3部である。一部の実施形態では、比は、64Zneおよび85Rbeの両方の化合物を含む組成物中、64Zneが1から7部(重量で)であり85Rbeが3から9部(重量で)である。
【0157】
ある特定の実施形態では、化合物1~10のいずれかなど(例えば、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンの85Rb濃縮ルビジウム塩)の、式1の1つまたは1つよりも多くの化合物を含み、必要に応じて1つまたは1つよりも多くのその他の抗NDD薬、例えば1つまたは1つよりも多くの抗PD薬も含有する、組成物が提供される。
【0158】
一部の実施形態では、開示される組成物は、式1の化合物に加え、64Zne含有化合物、塩、または錯体、例えば64Zneアスパルテート(本明細書では、「64Zne-asp」とも呼ぶ)、64Zneグルタメート、または別のアミノ酸の64Zne塩、例えば18の他の最も一般的な天然に存在するアミノ酸のいずれかを含む。
【0159】
開示される化合物または組成物と、必要に応じて少なくとも1つのその他の形の抗NDD治療薬とを、ヒトまたは獣医学的動物に投与することを含む方法が開示される。方法は、疾患を有する患者において、NDD(例えば、PD)を処置するのにまたは疾患の進行を遅延させるのに使用されてもよい。
【0160】
ある特定の実施形態では、N-ベンゾイル-N’-(4-トルエンスルホニル)-o-フェニレンジアミンの85Rb濃縮ルビジウム塩(化合物1)を含む化合物が開示され、その濃縮ルビジウムは99.8%の85Rbである。
【0161】
併用療法
【0162】
様々な実施形態で、開示される組成物は、別のNDDまたはPD治療または処置の投与の前に、同時に、または後に投与される。ある実施形態において、同時に投与されない場合、投与間の間隔は約48時間またはそれよりも短く、例えば48時間もしくはそれよりも短く、36時間もしくはそれよりも短く、または24時間もしくはそれよりも短い。
【0163】
他の実施形態では、開示される組成物は、64Zne含有化合物、塩、または錯体、例えば64Zneアスパルテート、64Zneグルタメート、または別のアミノ酸の64Zne塩、例えば18のその他の最も一般的な天然に存在するアミノ酸のいずれかを含み、式1の化合物を含有しない。一部の実施形態では、そのような組成物は、抗PD剤などの1つまたは1つよりも多くの追加の抗NDD剤を含有する。
【0164】
ある特定の実施形態では、式Iの85Rb濃縮ルビジウム塩および抗PD薬の両方を含有する組成物において、適切な用量の85Rbe塩と、これまでの従来技術の抗NDD薬、例えばこれまでの従来技術の抗PD薬は、例えば認可された投薬量の0.05から2.5倍の間の用量で(または開示される化合物と併せて投与されない場合に抗NDD薬が処方されたであろう投薬量で)存在する。
【0165】
抗PD薬は、任意の抗PD薬、例えば抗PD剤、例えばL-ドーパ(必要に応じてカルビドーパと組み合わせて)、メレボドーパ、またはエチレボドーパ;ドーパミンアゴニスト、例えばロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、ジヒドロエルゴクリプチンメシレート、カベルゴリン、ピリベジル、およびアポモルフィン;モノアミンオキシダーゼB阻害剤、例えばラサギリン、セレギリン、オピカポン、およびサフィナミド;カテコールーO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばエンタカポン、トルカポン;抗コリン作動薬、例えばトリヘキシフェニジル、ベンズトロピンビペリデン、メチキセン、プロシクリジン、プロフェナミン、デキセチミド、フェングルタリミド、マザチコール、ボルナプリン、トロパテピン、エタナウチン、オルフェナドリン(塩化物)、エチベンザトロピン、ブジピン;ならびにアマンタジンから選択される1つまたは1つよりも多くの薬物などであってもよい。抗PD薬組成物は、必要に応じて1つまたは1つよりも多くのアジュバント剤を含有する。
【0166】
組成物の製剤化および投与
【0167】
開示される組成物は、ヒトまたは動物に投与するための、当技術分野で公知の従来の形のものを含む。
【0168】
一部の実施形態では、開示される組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤を含む。これらには、必要に応じて例えば希釈剤、充填剤、崩壊剤、可溶化剤、分散剤、保存剤、湿潤剤、保存剤、安定化剤、緩衝剤(例えばホスフェート、シトレート、アセテート、タルトレート)、懸濁剤、乳化剤、および浸透促進剤、例えばD
MSOが含まれる。
【0169】
ある特定の実施形態では、組成物はさらに、適切な希釈剤、滑剤、滑沢剤、酸味料、安定化剤、充填剤、結合剤、可塑剤、または剥離助剤、およびその他の薬学的に許容される賦形剤を含有していてもよい。
【0170】
開示される組成物は、一部の実施形態において、静脈注射などの注射用の溶液である。水は、好ましくは投薬ビヒクルおよび希釈剤として、注射組成物中で使用される。他の薬学的に許容される溶媒および希釈剤は、水の他にまたは水の代わりに生理食塩液、グリセロール、およびエタノールなどを使用してもよい。
【0171】
薬学的に許容される賦形剤の完全な記述は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub., Co., N.J. 1991)またはその他の標準的な薬学の教科書、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients (Shesky et al. eds., 8th ed. 2017)に見い出すことができる。
【0172】
組成物のタイプには、静脈内またはその他の非経口投与用に製剤化された液体組成物、局所投与用に製剤化された組成物、および経口投与用に製剤化された組成物、例えば錠剤、丸薬、カプセル、ロゼンジ、顆粒などを含むがこれらに限定することのない、当技術分野で公知の任意のタイプが含まれる。
【0173】
ある特定の実施形態では、組成物は、開示される化合物を0.4ミリモルから30ミリモルの間、例えば1ミリモルから10ミリモルの間、または例えば1、2、5、10、20、25、もしくは30ミリモル含む。組成物は、製剤に適切な1つまたは1つよりも多くの賦形剤をさらに含む。
【0174】
静脈内製剤は、水などの適切な溶媒;塩化ナトリウム、塩化カリウム、カリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどの塩またはイオン;グルコースおよびスクロースなどの糖;緩衝剤;DMSOなどのその他の賦形剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0175】
局所製剤は、限定するものではないが、軟膏、クリーム、ローション、膏薬を含み、適切なビヒクル;浸透促進剤、例えばDMSOおよび関連ある類似体;ならびに乳化剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0176】
錠剤は、少なくとも1つの賦形剤、例えば、充填剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース);崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、アルギン酸、炭酸ナトリウム);湿潤剤(例えば、セチルアルコール、およびグリセロールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム);緩衝剤;滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム);およびコーティングを含む。
【0177】
タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、およびアミノ酸のコポリマーなど、ゆっくり代謝される大きい高分子は、開示される薬剤および組成物用のビヒクルとして使用することもできる。
【0178】
任意の開示される化合物の場合、治療有効用量は、細胞培養または動物モデルアッセイから最初に推定することができる。マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、またはブタが、動物試験のモデルとして一般に使用される。動物モデルは、適切な範囲の濃度および投与経路を決定するのに使用することができる。次いでそのような情報は、ヒトにお
ける適切な用量および投与経路を決定するのに使用することができる。ヒト等価用量を推定するために、産業界のためのガイダンスおよび査読者文書(the Guidance for Industry and the Reviewers document)(2002, U.S. Food and Drug Administration, Rockville, MD, USA)で与えられた投薬量変換表を使用することが推奨される。患者に対する正確な有効用量は、病気の重症度、患者の全身の健康、患者の年齢、体重、および性別、栄養、投与の時間および頻度、投与経路、医薬の組合せ、反応感受性、ならびに治療に対する耐容性/応答を含む様々な考慮事項に依存することになる。正確な用量は、通常の実験により、および主治医の専門的判断および裁量に従い決定することができる。ある実施形態では、本発明の式1の化合物の全用量が、約1.25mg 85Rbe/kg体重から約12.5mg 85Rbe/kg体重の間である。64Zne(金属による)の予防的用量は、ヒトの体重1kg当たり、0.1から1.5mgの純粋な64Zneの範囲である。64Zne(金属による)の治療用量は、ヒトの体重1kg当たり、1から15mgの純粋な64Zneの範囲である。
【0179】
ある特定の実施形態では、85Rbe(金属による)の予防的用量は、ヒトの体重1kg当たり、0.1から1.25mgの純粋な85Rbeの範囲である。ある特定の実施形態では、85Rbe(金属による)の治療的用量は、ヒトの体重1kg当たり、1.25から12.5mgの純粋な85Rbeの範囲である。
【0180】
一部の実施形態では、開示される組成物は、静脈内、腹腔内、経口、または筋肉内投与される。IVに関し、剤形は溶液であってもよい。限定するものではないがその他の注射経路を含む、ならびに経口および局所投与を介した、その他の従来の投与経路が使用されてもよい。
【0181】
開示される化合物を作製するための例示的な方法
【0182】
開示される組成物は、例えばRemington's Pharmaceutical Science Handbook, Mack Pub. N.Y., USAの最新版に例示された方法など、製薬業界で適用される一般的な慣
行の範囲内の方法を使用して調製される。
【0183】
軽同位体は購入されてもよい。必要な濃縮度にあるZn-64酸化物およびRb-85Clは、例えばOak Ridge National laboratory, Oak Ridge, TN, USAから購入されてもよい。
【0184】
式1の化合物であって、R
9がHである化合物は、以下に図式化されるように調製することができる。
第1段階.アリールスルホン化:
【化4】
第2段階.アシル化:
【化5】
【0185】
第3段階.ルビジウム錯体を得る。
85Rb濃縮化合物を調製するため、
85Rb
eCl(例えば、
85Rb
eは99%の
85Rbである)を、以下に示される最終ステップで使用する。
【化6】
【0186】
式1の化合物は、上記中間体(v)またはその塩を、式1の化合物の合成における出発材料としてまたは中間体として使用して、調製することができる。
【0187】
ある実施形態において、中間体(v)の化合物およびその塩のR基は、式1の化合物の該当するR基と同じである。ある実施形態において、合成方法は以下に概説するように進行する:
【化7】
【0188】
この合成は、中間体としてのカリウム塩と、生成物としてのルビジウム塩とを生成する。類似の方法では、ルビジウムが85Rbに関して濃縮された生成物を得るのに、85RbeClをRbClの代わりに使用することができる。
【0189】
R
9がHである、ある特定の開示される化合物を調製するための合成スキームについて、以下に述べる。
第1段階.o-フェニレンジアミンのアリールスルホン化:
【化8】
第2段階.N-R
3-フェニルスルホニル-o-フェニレンジアミンのアシル化:
【化9】
【0190】
第3段階.N-(R12,R14-ベンゾイル)-N’-(R3-フェニルスルホニル)-o-フェニレンジアミンルビジウム錯体を得ること。
85Rb濃縮化合物を調製するために、
85Rb
eCl(例えば、
85Rb
eは99%の
85Rbである)は、以下に示す最終ステップで使用される。
【化10】
【0191】
化合物1~10は、上記合成によって調製されてもよい。
【実施例0192】
実施例
【0193】
本発明をより良く理解するために、下記の実施例について述べる。これらの実施例は、単なる例示を目的とし、いかなる手法によっても本発明の範囲を限定すると解釈するものではない。
【0194】
(実施例1)
64Zne-aspおよび64Zne-asp+10%E285Rbe調製物の予防的投与の、パーキンソン病のラットモデルにおける異なる局在化の食細胞の機能的プロファイルに対する影響。
【0195】
方法:成体の成熟したげっ歯類を、研究に使用した。実験開始前に、それらを重量によって無作為化し、それぞれ8匹ずつの7グループに分けた:グループ1 - 無傷の動物;グループ2 - 偽手術した動物;グループ3 - 64Zne-aspが投与された、偽手術した動物;グループ4 - 6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)の脳内定位投与により誘発させたパーキンソン病の動物モデル;グループ5 - 64Zne-aspの予防的注射を受けたパーキンソニズムの動物モデル;グループ6 - 64Zne-asp+10%E285Rbeの注射を受けた、偽手術した動物;グループ7 - 64Zne-asp+10%E285Rbeの予防的注射を受けたパーキンソニズムの動
物モデル。実験薬の予防的投与の前に、動物をオープンフィールド試験に供して、それらの全般的な自発運動活性レベルおよび不安を評価した。予防的経過は、薬物の10回の毎日の腹腔内注射からなった(併用薬の場合、その成分を2時間の間隔で投与した)。予防的経過が終わった後、パーキンソン病を動物でモデル化した。黒質中のニューロンの破壊の程度は、疾患開始から7および14日後のアポモルフィン試験中に動力学的に研究した。最後(第2)のアポモルフィン試験から10日後、動物の行動応答を、オープンフィールド試験で評価し、その後、安楽死させ、異なる局在化の食細胞の機能的(代謝および表現型)プロファイルを分析した。このように、パーキンソン病のラットモデルにおける食細胞の機能的プロファイルの研究は、実験薬による予防的処置の過程の終わりから28日後に行った。常在腹腔マクロファージを、腹腔滲出液の滅菌細胞懸濁液から単離し;懸濁液の濃縮を2時間の接着により実施した。非接着および死細胞を遠心分離によって分離した。循環食細胞(単球および好中球)の機能的特徴を、抗凝固剤として使用されるEDTAを含有する試験管内に採取した全血中で評価した。単核および多形核食細胞を、ゲーティング法を使用してフローサイトフルオリメーターで分析した。ミクログリアの食細胞を、Percoll密度勾配を使用して単離した。食細胞の表現型プロファイルを評価するため、pan-食細胞マーカーCD14(細菌性リポ多糖の共受容体)および食細胞CD206の代替極性化のマーカー(マンノース受容体1)の発現指数を使用した。代謝プロファイルを特徴付けるため、ミクログリアの酸化的代謝および食細胞活動ならびにアルギニン代謝の経路を、フローサイトメトリーおよび分光測定法をそれぞれ使用して研究した。FITC標識されたStaphylococcus aureus wood 46を、食作用の対象として使用した。ヘモグラムパラメーターを、ラットおよびマウスの血球の研究に適合させた、血液学的分析器である粒子カウンターモデルPCE 210(エルマ販売株式会社、日本)で分析した。
【0196】
結果:実験の終了時(薬物による予防的過程の終わりから14日後)、黒質中のニューロンの破壊度の低減を、両方の実験群で記録した。黒質中のニューロンの100%片側破壊を持つ対照群の動物の数は75%に達し、それに対して、動物が64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspを受けた群では、それぞれ動物のわずか35%(対照の場合より50%超少ない)および30%(対照の場合より60%少ない)で、黒質中のニューロンの完全な損失を持つ状態が観察された。さらに、ドーパミン作動性ニューロンの86%の破壊を、64Zne-asp+10%E285Rbe群(表1)の動物の14%で記録した。
【0197】
【0198】
対照の黒質の100%のニューロン破壊を持つ動物におけるアポモルフィン試験中の回転運動速度は、64Zne-aspの予防的投与後の実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるよりも2.2倍速いことにも留意すべきである。
【0199】
黒質におけるドーパミン作動性ニューロンに対する損傷の程度を低減させる薬物の、記録された影響は、異なる局在化の食細胞の機能的プロファイルにおける以下の変化を伴う。
【0200】
ミクログリア
【0201】
ミクログリアの食細胞活動の増大は、修復プロセスおよび炎症発症プロセスの両方で、その活性化の指標である。炎症の最終段階は、抗原提示細胞の特性のミクログリア細胞による獲得に関連した食作用と、適応性炎症誘発性免疫応答の活性化とに対する、ミクログリア細胞の能力の完全な損失を伴う。例えば、Janda E, Boi L, Carta AR. Front
Mol Neurosci. 2018;11:144. doi: 10.3389/fnmol.2018.00144;Fu R, Shen Q,
Xu P, Luo JJ, Tang Y. Mol Neurobiol. 2014;49(3):1422-34. doi: 10.1007/s12035-013-8620-6を参照されたい。パーキンソニズムの発症は、6-OHDAの毒性
効果におそらくは起因して、偽手術された動物と比較して、食作用細胞の数の減少とそれらの食細胞活動の僅かな減少とを伴った。薬物による予防的処置を受けた動物のミクログリア内の食作用細胞の数は、それらのエンドサイトーシス活動が低下する間、著しく増加した。この代謝プロセスの変化は、併用薬を使用したときに、より顕著であった(
図1A&
図1B)。
【0202】
無傷動物のミクログリア細胞の食細胞活動に対する64Zne-aspのモジュレート効果(in vitro)は、in vivoで観察された場合とは正反対であった。ミクログリア細胞の食細胞活動に対するこの薬物のモジュレート効果は、その基本レベルに依存すると仮定することができ、その効果の性質は恒常的である(常態)。
【0203】
ミクログリアの酸化的代謝の増強は、修復および破壊的炎症プロセスの両方で生じるそれらの活性化状態にも特徴的である。パーキンソニズムの発症(および6-OHDAを投与しない手術)は、実験室動物のミクログリアの酸化的代謝の低下を伴った。薬物による予防的過程を受けたパーキンソン病の動物モデルでは、ミクログリアの酸化的代謝の指標は、パーキンソン病の対照ラットモデルにおけるよりも著しく高かった(亜鉛ベースの薬物を受けた動物に関して2倍、および併用薬を受けた動物に関しては4.5倍)。
【0204】
同時に、
64Zn
e-aspを受けた群では、この指数は対照の無傷動物のレベルにあり、10%のE2
85Rb
eを含有する
64Zn
e-aspを受けた群では、反応性酸素種(ROS)生成の指数は、無傷動物の場合よりも2倍高かった(
図1.1.2)。臨床上の予防的効果の性質を考えると、薬物の作用後のミクログリアの酸化的代謝の増強は、ミクログリア細胞により媒介された修復プロセスの活性化に起因すると仮定することができる。
【0205】
酸化的代謝の基本レベルに加え、この機能の代謝リザーブも分析した。この目的のため、細胞を、in vitroでホルボールミリステートアセテート(PMA)で処置した。ミクログリア細胞の酸化的代謝の代謝リザーブは、全ての動物で存在しなかった。
図2。
【0206】
反応性窒素種、特にNOの、増大した合成は、NOシンターゼの使用により食細胞におけるアルギニン代謝経路を特徴付け、破壊的炎症プロセスを伴うミクログリアの炎症誘発性(M1)活性化の基準である。このアポトーシスメディエーターの合成の減少は、ミク
ログリアの場合を含む、食細胞での抗炎症性代謝シフトを示す。
【0207】
パーキンソニズムの発症は、ミクログリアの食細胞による反応性窒素種の生成の増加を伴い、これらの細胞の炎症誘発性活性化を示す(
図3)。
【0208】
薬物が与えられたパーキンソン病の動物モデルの群では、NO合成のレベルは、無傷動物の場合と異ならなかった。これは、ミクログリア細胞に対する薬物の抗炎症性免疫調節効果の証拠である。そのような仮定は、NO合成がROS合成とは逆の関係にあるという事実によって裏付けられる。Singh AK, et al., Nitric Oxide. 2016;58:28-41. doi: 10.1016/j.niox.2016.06.002。ROSの増大した合成が、薬物を与えたパーキンソニズムの動物モデルの群で記録されたという事実を考慮すれば、この状況が、ミクログリア細胞によるアポトーシス誘導反応性窒素種の合成の減少に至り、および黒質中のニューロンの破壊の低減に関連付けられたと仮定することは、論理的である。
【0209】
in vitro研究では、両方の薬物が、無傷動物における非感作ミクログリア細胞による反応性窒素種の合成に対して阻害効果を有したことに留意すべきであり、これは上記仮定を裏付けるものである。
【0210】
アルギナーゼ活性は、食細胞によるアルギニンの利用のための、第2のまたは代替の経路である。アルギニン代謝経路は、両方の指数(NO合成レベルおよびアルギナーゼ活性)の変化によって、常に特徴付けられる。アルギナーゼ活性は、種々の群の動物において統計的に有意ではなかった。
図4。
【0211】
種々の群の動物のミクログリア細胞によるNO合成レベルの変化の性質に加えて、これは、薬物の予防的投与後の実験的パーキンソニズムのラットモデルにおけるミクログリア食細胞の抗炎症性代謝シフトに関する仮定をさらに確認する。
【0212】
薬物は、無傷動物の非感作ミクログリア細胞のアルギナーゼ活性に対し、いかなる統計的に有意な効果も発揮しなかった。これは、アルギニン代謝に対する薬物の効果が媒介され、食細胞の酸化的代謝の変化に依存することを示す。
【0213】
CD14は、pan-食細胞マーカーである(ミクログリアを含む全ての食細胞により発現される)。その発現レベルは、それらの活性化に関連した細胞の機能的成熟と共に増大する(炎症誘発性および抗炎症性の両方)。パーキンソニズムの発症は、ミクログリアにおけるCD14+細胞の数の増加を伴っており、これは、神経変性疾患の発症に関する血液網膜関門特性の破壊の結果として、循環血液中の食細胞が脳に移行した結果と考えられる(
図5Aおよび
図5B)。
【0214】
a.
64Zn
e-aspの予防的投与は、その発現レベルの増大と共にCD14+細胞の相対数の減少を伴ったが(
図5B)、これはおそらくは、炎症誘発性および抗炎症性の両方であり得るそれらの機能的成熟の刺激と同時に、血液網膜関門崩壊および/または食細胞の移行の出現を低減させる薬物の能力を示す。本発明者ら自身の経験に基づき、本発明者らは、ミクログリアにおけるCD206+細胞の数の増加は、全体としてそれらの集団の活性化の証拠であると考える。発現のレベルにおけるそのような増加は、脳食細胞の代替(抗炎症性)の代謝極性の証拠である。本発明者らの研究結果によれば、パーキンソニズムの発症は、その発現の平均レベルの有意な増加なしに(
図6B)、CD206+細胞の画分の増加を伴い(
図6A)、これは疾患の病因を考慮して、炎症誘発性ミクログリアの活性化の証拠である。
64Zn
e-aspの予防的投与は、その発現レベルの増大と共に、ミクログリアにおけるCD206+細胞の相対数の有意な増加を引き起こし、これらの細胞の機能的プロファイルの抗炎症性シフトを示している。この群の動物における両
方の指数に、有意な個々のばらつきがあったことに留意すべきである。
b.パーキンソニズムの動物モデルにおけるミクログリアの表現型プロファイルに対する、
64Zn
e-asp+10%E2
85Rb
eの影響は、僅かに異なる特徴を有していた。実験の終了時、予防的過程を経た動物のミクログリアにおけるCD14+細胞の相対数は、パーキンソン病の動物モデルの対照群の場合と著しく異ならなかった(
図5B)。しかしながら、このマーカーの発現レベルは著しく増大した(
図6B)。両方の事実は、薬物がおそらくは、脳への末梢食細胞の移行に対して効果を発揮せず、常在ミクログリア細胞の機能的成熟を刺激することを示す。この薬物の投与後のミクログリアにおけるCD206+細胞の相対数は、パーキンソニズムの対照動物モデルの場合と著しく異ならなかった(
図6A)。同時に、その発現レベルは著しく増大し(
図6B)、脳食細胞の抗炎症性活性化を引き起こす薬物の能力を、説得力を持って実証する。
【0215】
循環食細胞
【0216】
パーキンソン病は、ミクログリアと呼ばれる常在脳食細胞での代謝における炎症誘発性シフトのバックグラウンドに対して生ずるドーパミン作動性ニューロンの不可逆的破壊に基づく多系統神経変性障害である。しかしながら、最近の実験研究および臨床観察の数の増大は、パーキンソン病の炎症プロセスが全身的な性質を有し、ならびに循環単核および多形核食細胞を含む脳の末梢に局在化する食細胞の炎症誘発性機能的シフトを伴うことを示す。Smith AM, et al., Mov Disord. 2018;33(10):1580-1590. doi: 10.1002/mds.104。パーキンソニズムの発症は、単球増加症と、骨髄における単球前駆体の発生の
増加とに関連付けられる。Raj T, Rothamel K et al. Science. 2014;344(6183):519-23. doi: 10.1126/science.1249547。パーキンソン病での単球増加症は、循環顆粒球の数の減少に関連付けられる(第1の場所における好中球)。Wijeyekoon RS, et al. Front Neurol. 2018 Oct 16;9:870. doi: 10.3389/fneur.2018.00870。パーキンソン病における循環単球は、アポトーシスマーカーの発現の増大(活性化により誘発されたアポトーシス)によって証明されるように、活性化状態によって特徴付けられる。Wijeyekoon RS, et al., Front Neurol. 2018 Oct 16;9:870. doi: 10.3389/fneur.2018.00870;Lin WC, et al., Biomed Res Int. 2014;2014:635923. doi: 10.1155/2014/635923)。パーキンソニズムの患者における末梢血単球の食細胞活動の低下に関するデータもある。Grozdanov V, et al., Acta Neuropathol. 2014;128(5):651-63. doi: 10.1007/s00401-014-1345-4。単球機能の崩壊は、LRRK2キナーゼ(
ロイシンに富む反復キナーゼ2)の発現において遺伝的に決定された欠陥に関連付けられる。Bliederhaeuser C, et al., Acta Neuropathol Commun. 2016;4(1):123。
【0217】
パーキンソニズムの発症は、統計的に有意な白血球増加症を伴った(
図7Aおよび
図7B)。主要な白血球集団(リンパ球、単球、顆粒球(好中球))のパーセンテージの分析は、パーキンソン病のラットモデルにおいてこれら食細胞の画分が統計的に有意に増加するので、おそらくはパーキンソニズムにおける白血球増加症の原因が単球増加症であることを示した(
図7B)。白血球増加症は、偽手術した動物でも観察された。しかしながらこの場合、研究が偽手術後に長く実施されたことを考慮し、炎症プロセスの解消の自然の徴候として、リンパ球の画分の増加によって引き起こされると見なされた。微量元素を含む薬物を与えたパーキンソン病の動物モデルでは、絶対循環白血球カウントは、パーキンソン病のラットモデルの対照群の同じ値と著しく異ならなかった。しかしながら、薬物の投与後に、末梢血白血球の集団組成物では有意な変化は記録されず、単球増加症の減少と、相対循環リンパ球カウントの正常化とがあったが、これはそれらの抗炎症性全身効果を示している。
【0218】
実験の終わりの、パーキンソニズムのラットモデルにおける循環単球の食細胞活動は、無傷動物と比較して低減しており(
図8)、これは上記臨床観察の結果に相関する。
【0219】
薬物として亜鉛を与えた動物では、単球の食細胞活動が、無傷動物の場合と異ならなかった。併用薬を与えたラットでは、単球の食細胞活動が著しく低減した。微量元素による予防的処置を受けた動物での食作用細胞の数も低減し(
図8B)、これは薬物による予防的過程の後の単球カウントの低減に関するデータに相関するものである(
図7Aおよび
図7B)。
【0220】
パーキンソン病の動物モデルにおける単球の酸化的代謝は、無傷動物の場合と比較して、統計的に有意に低かった(
図9)。微量の元素での予防的過程を受けたラットでは、循環単球での酸化的代謝は正常範囲内であった。
【0221】
酸化的代謝の機能的保存は、全ての群の動物細胞で存在した。in vitro研究において、微量元素を含む薬物は、無傷のラットの末梢血の非合成単球における細胞内酸化的代謝を僅かに阻害したことに、留意すべきである。この場合、
図9からわかるように、in vivo研究で弱くなった酸化的代謝の状態において、薬物は正常化効果をもたらした。単核食細胞の未熟な形態による反応性酸素種の細胞内生成に対する亜鉛およびルビジウム薬の影響の性質は、細胞内のこの指数の初期値に依存するようである。
【0222】
パーキンソニズムのラットモデルの末梢血中の顆粒球(好中球)の機能に関する微量元素を含む薬物のモジュレート効果も記録した。実験群の全ての動物における循環好中球の相対数は、無傷動物の場合よりも低かった(
図7B)。同時に、パーキンソン病のラットモデルにおけるこれら細胞の食細胞機能は、無傷動物におけるものと同じであった(
図1.1.10)。微量元素による予防的過程を経たパーキンソニズムの動物モデルの群において、末梢血好中球の食細胞活動は、パーキンソン病の対照動物モデルと比較して、および無傷動物に対して、著しく低下した。得られた結果は、無傷ラットの末梢血における非感作好中球の食細胞機能に対する、微量元素を含む薬物のin vitroモジュレート効果の特徴と一致する。
図10Aおよび
図10B。
【0223】
パーキンソン病の発症では、末梢血好中球の細胞内酸化的代謝は、無傷動物と比較して低減した(
図11)。
【0224】
64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的投与は、実験的パーキンソニズムのラットモデルにおいて、酸化的代謝のいかなる妨害も存在しない状態を伴った。好中球酸化的代謝の機能的リザーブは、全ての群の動物で存在した。
【0225】
動物における末梢血食細胞の表現型プロファイルの評価に関するデータは、それらの代謝特性の評価結果を確認する。パーキンソニズムの対照動物モデルにおけるCD14+末梢血食細胞の画分は、無傷動物の場合と比較して統計的に著しく低く、おそらくは単球増加症に関連した未熟細胞形態の循環を示している(
図12Aおよび
図12B)。パーキンソン病のラットモデルにおけるこのマーカーの発現レベルも、無傷動物の場合より低く、これは未熟形態の循環食細胞の存在によって確認される。
図12Aおよび
図12B。
【0226】
CD206を発現する循環食細胞の相対数、およびパーキンソニズムのラットモデルにおけるこの表現型マーカーの発現レベルは、無傷動物の場合よりも高かったが、これは骨髄から動員された未熟食細胞の活性化の徴候と見なすべきである。
図13Aおよび
図13B。
【0227】
実験の終わりに、微量元素を含む薬物による予防的過程を経た動物の循環食細胞集団におけるCD206発現は、パーキンソン病の動物モデルの対照群および無傷動物の群の場
合よりも著しく低かった。これは、循環血液によって運ばれた食細胞に対する、薬物の抗炎症性効果の追加の証拠である。一般に、循環食細胞の代謝および表現型特性の分析は、パーキンソニズムの特徴的徴候である、単球増加症に関連付けられた全身性炎症応答の出現を低減させる、薬物の能力を実証する。
【0228】
腹腔マクロファージ
【0229】
64Zne-aspと10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspとの予防的過程を経たパーキンソン病の動物モデルにおける腹腔マクロファージの機能的および表現型プロファイルの分析は、3つの状況に起因した。第1に、薬物を腹腔内投与し、腹腔マクロファージは、微量元素を含む調製物の作用に曝露されることになる免疫系の最初の細胞であった。第2に、血液脳関門は、脳と末梢免疫系との間の相互関係に対する絶対関門ではないこと、ならびに脳抗原は、中枢神経系のリンパ管を経て、粘膜関連リンパ球性組織(MALT)の部分である領域リンパ節、鼻、および深頚部に輸送されることが公知である(Louveau A, et al., Trends Immunol. 2015 Oct;36(10):569-577. doi:
10.1016/j.it.2015.08.006;Raper D, et al., Trends Neurosci. 2016 Sep;39(9):581-586. doi: 10.1016/j.tins.2016.07.001)。MALTは、腹膜腔も含む。MALTでの免疫応答の活性化スキームによれば、その区画のいずれかにおける抗原性刺激の存在は、全体としてMALTの活性化を伴ってもよい。第3に、証明された事実は、神経変性疾患と、正常な腸管微生物叢の障害、つまりジスバイオシスとの間の相関関係であり、その発症は、腸に隣接する腹膜腔内の食細胞の活性化を伴う。Kishimoto Y, et al., Neuromolecular Med. 2019 May 11. doi: 10.1007/s12017-019-08539-5。
【0230】
パーキンソン病の発症は、ラットの腹腔マクロファージの活性化を伴った。したがって、パーキンソニズムの動物モデルにおける腹腔食細胞は、無傷動物と比較して統計的に有意に増大したエンドサイトーシス活性を特徴とした。
図14Aおよび
図14B。
【0231】
64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的投与は、パーキンソニズムにおける腹腔マクロファージによる食作用の増大を防止した。
【0232】
パーキンソン病のラットモデルにおける腹腔マクロファージの酸化的代謝も、無傷動物の場合よりも高かった。
図15。
【0233】
微量元素を含む薬物の予防的投与は、パーキンソニズムの動物モデルにおけるこの指数に影響を及ぼさなかった。
【0234】
大幅に増強された反応性窒素種の生成も、パーキンソニズムにおける腹腔マクロファージの炎症誘発性活性化を示す。
図16。
【0235】
64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的投与は、パーキンソニズムの動物モデルにおける腹腔マクロファージによるNO合成の増大を防止した。
【0236】
パーキンソン病における腹腔マクロファージのアルギニン代謝の炎症誘発性シフトを防止する、微量元素を含む薬物の能力の別の証拠も、これらの細胞のアルギナーゼ活性に関するデータによって提供される。上述のように、アルギナーゼおよびNOシンターゼは、食細胞によってアルギニンを代謝する2つの酵素である。アルギニン代謝経路は、食細胞の機能的極性化の主な代謝基準である。アルギナーゼ活性の増大は、これらの細胞における代謝の抗炎症性シフトの徴候であり、一方、反応性窒素種の生成の増大は、それらの炎
症誘発性活性化の基準である。本発明者らの結果によれば、パーキンソニズムのラットモデルにおける腹腔マクロファージのアルギナーゼ活性は無傷動物の場合と異なっていなかったが、これは、NO生成の増大と共にこれらの細胞の代謝における炎症誘発性シフトを示すものである。
図17。
【0237】
10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspは、腹腔食細胞のアルギナーゼ活性を著しく増大させたが、これは、反応性窒素種の生成の減少と共に、これらの細胞の抗炎症性代謝プロファイルを示すものである。亜鉛ベースの薬物は、NO合成が減少しおよびアルギナーゼ活性の任意の変化がないことにより証明されるように、腹腔食細胞によるアルギニン代謝の抗炎症性シフトにも寄与した。
【0238】
腹腔マクロファージの表現型プロファイルの分析は、それらの疾患の発症に対する関与を確認した。腹腔マクロファージの表現型プロファイルを評価するため、本発明者らは、ミクログリアの食細胞および循環食細胞で分析された同じ表現型マーカーを使用した。本発明者らの研究結果によれば、腹腔食細胞によるCD14の発現は、疾患発症の条件下または微量元素を含む薬物の影響下のいずれかで統計的に有意に変化しなかったが、これは、膜上でのCD14発現が生理的に最大になっているので、常在組織食細胞に典型的なものである(
図18Aおよび
図18B)。
【0239】
64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的処置を受けた実験的パーキンソニズムのラットモデルにおける末梢マクロファージの集団でのCD14発現。*-p≦0.05対無傷動物の群;#-p≦0.05対パーキンソニズムの動物モデルの対照群。
【0240】
腹膜腔におけるCD206+細胞の画分は非常に低く;したがって本発明者らは、CD14+腹腔食細胞の集団でこのマーカーを発現する細胞の数を分析した。分析の結果は、CD206を発現する腹腔CD14+食細胞の画分が、パーキンソニズムの発症で変化しないことを示した(
図19A)。しかしながら、このマーカーの発現レベルは、無傷動物と比較して、パーキンソン病の動物モデルで低減した。
【0241】
64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的投与は、腹腔食細胞の集団におけるこのマーカーの発現レベルのさらなる低下を伴っており、これは、細胞の代謝プロファイルの変化と矛盾する。
【0242】
実施例1の知見:
【0243】
1.実験的パーキンソニズムの発症は、それらの炎症性活性化の徴候と共に異なる局在化の食細胞の機能的および表現型プロファイルの変化を伴う。
【0244】
2.64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの予防的全身投与は、パーキンソニズムの動物モデルにおける異なる局在化の食細胞の代謝および表現型プロファイルをモジュレートし、動物におけるドーパミン作動性ニューロンの破壊レベルの低下のバックグラウンドに対して生じた、細胞での炎症性代謝シフトを低減させた。
【0245】
3.食細胞に対する、微量元素を含む薬物のモジュレート効果の性質は、それらの局在化および成熟度に応じて異なった。薬物を受けた動物におけるミクログリア細胞は、抗炎症性(修復)経路の活性化によって特徴付けられた。薬物の予防的投与は、神経変性障害中に通常は脳に動員される循環食細胞での代謝および表現型シフトを防止しており、これも、黒質でのニューロンの破壊の低減をもたらす理由の1つであった。薬物の投与は、腹
膜腔内での食細胞の炎症誘発性活性化を防止した。この現象のメカニズムは複雑である可能性があり、免疫系の細胞に対する、ならびに微生物叢および腸上皮細胞に対する薬物の影響が関わり、病理学的腸脳軸の形成の防止をもたらし得る。そのような複雑な影響の分析は、腸バリア完全性、腸内細菌の転位、およびそれらの代謝に対する薬物の影響の研究を必要とする。
【0246】
4.末梢血食細胞の機能的状態および定量的パラメーターは、神経変性障害における64Zne-aspおよび10%のE285Rbeを含有する64Zne-aspの有効性をモニターする感受性ある基準と見なすことができる。これらの計算では、純粋な元素の質量特性が使用される(64Zneおよび85Rbe)。例えば、混合物中の64Zneが9部および85Rbeが1部とは、計算が、純粋な元素の質量に基づくことを意味する(64Zneの純粋な元素が9部および85Rbeの純粋な元素が1部)。
【0247】
(実施例2)
非感作マウス腹腔マクロファージの代謝プロファイルに対する64Zne-aspおよびE2+85Rbe調製物の影響
【0248】
材料および方法:腹腔マクロファージ(PM)を、前もって感作することなく、平均体重22gのc57/B6系のオスマウスの腹膜腔から単離した。食細胞の代謝プロファイルは、アルギニン代謝経路(光比色法を使用して測定されたアルギナーゼ活性およびNO合成のレベルによる)、エステラーゼによる細胞内反応性酸素種(ROS)の形成およびフローサイトメトリーを使用して測定された食細胞活動のレベル、ならびにNBT試験で決定されたようなNADHおよびNADPHオキシダーゼ活性化のレベルによって特徴付けた。腹膜腔からの非感作マクロファージの標準化懸濁液の処置の持続時間は、代謝応答の方法論的特性に応じて様々であった。Kim DK, Pfeifer J. Surg Forum. 1977;28:85-7による薬物への90分の曝露は、それらの酸化的代謝および食細胞活動に対する影
響を分析するのに使用した。Lastra MD, et al., J Trace Elem Med Biol. 2001;15(1):5-10による18時間の曝露は、アルギニン代謝経路に対する影響を分析するのに使用した。食細胞の誘発(刺激)された代謝活性に対する研究中の薬物の影響を分析するため、細胞を、Haddad JJ. Mol Immunol. 2009;47(2-3):205-14. doi: 10.1016/j.molimm.2009.09.034に従いE.coli(Sigma、USA)からのリポ多糖(LPS)で処置した。
【0249】
結果:
【0250】
90分間の
64Zn
e-aspによるPM処置は、マクロファージによる自発的なおよびLPS刺激によるROS生成に対して穏やかな刺激効果を有した(
図20)。10μg/mlの濃度の薬物による処置は、LPSによる処置後よりも表出的なROS発生の刺激を引き起こした。明らかな用量-応答関係はなかった。
【0251】
薬物による90分の細胞処置は、腹腔マクロファージでのヘキソースモノホスフェートシャントの自発的なまたは誘発された状態のいずれかに対して(NADHおよびNADPHオキシダーゼの活性化)、統計的に有意な効果を有しなかった(
図21)。
【0252】
PMの曝露の90分後、LPSの作用は、腹腔食細胞によってNADHおよびNADPHオキシダーゼ活性化レベルを変化しなかったことに留意すべきであり、これは、不十分な処置の持続時間に起因する可能性がある。
【0253】
亜鉛の安定な同位体を含む薬物は、非感作PMの食細胞活動に有意な効果を有しなかった(
図22)。
【0254】
処置された細胞のエンドサイトーシスの強度の僅かな低下に向かう傾向は、最低濃度の薬物を使用した後にのみ観察された。
【0255】
その傾向のレベルでのアルギナーゼ活性に対する多方向の弱い効果を発揮する薬物の能力は、薬物でのPMの処置の18時間後に観察された(
図23)。実験の各選択肢の範囲内で光学密度の値に有意なばらつきがあったことに留意すべきである。5~20μg/mlの濃度範囲で、処置された細胞のアルギナーゼ活性における非有意な用量依存的減少の傾向が、観察された。濃度のさらなる低下は、用量-応答関係の損失を伴った。前記効果の統計的有意性は存在しなかった。
【0256】
64Zn
e-aspは、腹腔食細胞による反応性窒素種の生成に対して、最も顕著なモジュレート効果をもたらした(
図24)。
【0257】
1.25から10μg/mlの濃度範囲の薬物に対する細胞の18時間の曝露は、PMによる反応性窒素種の自発的生成の、統計的に有意な阻害をもたらした。用量-応答関係はなかった。亜鉛の安定な同位体を含む調製物による細菌性LPS刺激細胞の処置は、NO合成の統計的に有意な低減も引き起こした。食細胞により誘発された反応性窒素種の生成に対する亜鉛ベースの薬物の阻害効果の反比例的用量依存性に向かう傾向を、記録した。
【0258】
腹腔食細胞の代謝活性に対するE2+
85Rb
e化合物のモジュレート効果は、
64Zn
e-aspの場合よりもさらに顕著であった。62~500μg/mlの濃度範囲の薬物への、非感作PMの90分の曝露は、エステラーゼの活性化の結果として、それらによる自発的ROS生成の急激な阻害を引き起こした(
図25)。用量-応答関係は観察されなかった。8、15.5、および31μg/mlの濃度の薬物(E2+
85Rb
e)の添加は、細胞による代謝機能の自発的な実現化に、いかなる統計的有意な変化も引き起こさなかった。
【0259】
同じ濃度範囲で使用されるE2+
85Rb
eは、腹腔食細胞による、誘発された(細菌性LPS刺激による)細胞内ROS発生の、急激な阻害を引き起こした。用量-応答関係は観察されなかった。
図25。
【0260】
PMのNADHおよびNADPHオキシダーゼの活性化に対する、E2+
85Rb
eの効果の性質は(
図26)、エステラーゼによる酸素の反応性代謝の創出に対する場合とは異なった(
図26)。500μg/mlの濃度で使用すると、薬物は、食細胞のオキシダーゼ活性の僅かな増大を引き起こした。500μg/mlよりも低い薬物の全ての濃度は、PMの代謝活性のこの指数に対して統計的に有意な効果を発揮しなかった。誘発された(LPS刺激による)オキシダーゼ活性に対する薬物の効果の性質は、細胞によるこの機能の自発的実現の場合に類似した。より低い濃度で使用した場合、薬物は、オキシダーゼによる反応性酸素種の形成を低減させる能力に向かう傾向を実証した。しかしながら、その効果の非有意なレベルおよび濃度に依存するその方向の不均衡な変動を考慮すると、それは非特異的であり、および光学密度のばらつきに起因すると見なすべきである。
図26。
【0261】
ルビジウムの安定な同位体を含む薬物は、非感作腹腔食細胞の食細胞活動に、類似の効果を発揮した(
図27)。500および250μg/mlの濃度で使用したとき、腹腔食細胞のエンドサイトーシスを穏やかに強化した。薬物濃度の減少は、PMでの代謝のこの指数に対するその影響がない状態を伴った。
【0262】
18時間の曝露による500および250μg/mlの濃度でのE2+
85Rb
eの使用は、PMアルギナーゼ活性の統計的に有意な増大を引き起こした(
図28)。食細胞のこの代謝指標に対する薬物の刺激効果は、細菌性LPSによる細胞の追加の処置に依存せず、細胞の食細胞機能に対する影響と比較して、より表出的であった。PMのアルギナーゼ活性に対するE2+
85Rb
eのモジュレート効果の用量依存性は、統計的に有効ではなかった。
【0263】
E2+
85Rb
eの最も表出的な効果は、
64Zn
e-aspの場合のように、18時間の曝露後にPMによる反応性窒素種の発生にもたらされたと記録した(
図29)。
【0264】
8μg/ml以外の上述の濃度の全てで使用すると、薬物は、PMによる反応性窒素種の自発的生成を阻害した。用量-応答関係は観察されなかった。薬物は、細菌性LPSで処置された細胞によるNOの誘発された生成を弱める傾向も示し、やはり用量-応答関係はなかった。
【0265】
実施例2に関する知見。
【0266】
1.研究中の両方の薬物は、非感作および細菌性LPS刺激腹腔食細胞の代謝プロファイルに対して抗炎症調節効果がある。この結論は、誘発型NOシンターゼ(iNOS)によるアルギニン代謝の生成物である反応性窒素種の発生の急激な低下に向かう、食細胞でのアルギニン代謝経路に対する薬物の効果の変化によって、正当化される。反応性酸素種は、炎症反応の強力なメディエーターであり、アポトーシスの活性化に関わるシグナル伝達分子である。iNOSの低減した活性は、代替の表現型(M2)の食細胞を特徴付ける。明らかな用量-応答関係はない。
【0267】
2.より顕著な効果は、強力な抗酸化活性も示す、ルビジウムの安定な同位体を含有する薬物によってもたらされることが記録された。
【0268】
3.研究中のいくつかの変数の高レベルのばらつきは、極性溶媒(生理食塩液)中の両方の調製物、特に亜鉛ベースの調製物の不安定な溶解度の結果となり得る。
【0269】
亜鉛ベースの調製物の免疫調節効果の欠如は、薬物に対する細胞の不十分な曝露によって引き起こされる可能性もある。これに関連して、in vitro研究は方法論的条件により限定されるので、この細胞機能に対する因子のより長い効果が可能になる無傷動物を使用して、食細胞の酸化的代謝に対する薬物の効果の追加のin vivo研究を実施することが推奨可能である。
【0270】
(実施例3)
健康なラットの非感作ミクログリア細胞、循環単球、および好中球の代謝プロファイルに対する64Zne-aspおよびE2+85Rbe調製物の効果
【0271】
材料および方法:ラットのミクログリア細胞を、脳組織の機械的(細胞篩)分解によって単離し(
図30A、
図30B、および
図30C)、その後、組織ホモジネートの分画をPercoll密度勾配(Microglia: Methods and Protocols, Edited by Bertrand Josef and Jose Luis Venero, Springer protocol. Humana Press, 2013,
350 p.)(
図31)で行った。脳組織の収集前に、断頭を行って、試料採取中の脳へ
の出血を回避した(
図32)。断頭を麻酔直後に行って、ミクログリア細胞を含む脳組織の死滅を最小限に抑えた。ミクログリア細胞の単離のための全ての操作は、冷却剤を使用して実施した。循環好中球は、2ステップPercoll勾配で、EDTAを含有する試験管内に採取された静脈血から単離した(Alsharif KF et al. Vascul Pharmacol.
2015 Aug;71:201-7. doi: 10.1016/j.vph.2015.02.006)(
図33Aおよび
図33B)。循環単球は、2ステップHypaque勾配で、ヘパリンを含有する試験管に収集された静脈血から単離した(Macrophages and dendritic cells: Methods and Protocols, Edited by Neil E. Reiner, NY, Humana Press, 2009: 368 P)。食細胞の代謝プロファイルは、アルギニン代謝の経路(光比色法を使用して測定されたアルギナーゼ活性およびNO合成のレベル)、エステラーゼによる細胞内反応性酸素種(ROS)の形成のレベル、およびフローサイトフルオリメトリーにより決定された食細胞活動の指数に基づいて、ならびにNBT試験で決定されたNADHおよびNADPHオキシダーゼの活性化レベルに従って、特徴付けられた。上述の全ての集団の食細胞の処置の持続時間は、代謝応答の方法論的特徴に応じて様々であった。Kim et al., 1977(上記で引
用)による薬物への90分の曝露を使用して、それらの酸化的代謝および食細胞活動に対する効果を分析した。Lastra et al., 2001(上記で引用)による18時間の曝露を使用して、アルギニン代謝経路に対する薬物効果を分析した。食細胞の誘発された(刺激を受けた)代謝活性に対する研究中の薬物の効果を分析するために、細胞を、Haddad et al., 2009(上記で引用)に従いE.coli(Sigma、USA)からのリポ多糖(LPS)で処置した。
【0272】
結果:
【0273】
ミクログリア
【0274】
64Zn
e-aspによる非感作ミクログリア細胞の処置は、明らかな用量-応答関係がない状態での細胞内ROSの自発的なおよびLPS刺激を受けた発生に対し、多方向的効果を有した(
図34)。20および10μg/mlの濃度で、薬物は、ミクログリア細胞内でエステラーゼ依存性の酸化的代謝を刺激し、それに対して≦5μg/mlの濃度では、この指数に対する統計的に有意な効果はなかった。20および5μg/mlの濃度で、薬物は、LPSによる刺激を受けたROS生成を著しく阻害した。その他の濃度で使用したとき、研究中の細胞で誘発されたエステラーゼ依存性の酸化的代謝に対し、いかなる効果も有しなかった。
【0275】
研究された全ての濃度で、薬物は、集団内の食細胞の数に影響を及ぼすことなく、ミクログリア細胞の食細胞活動を穏やかに増大させた(
図35)。明らかな用量-応答関係は観察されなかった。
【0276】
正常な状態で、ミクログリアの常在食細胞は、低レベルの食細胞活動により特徴付けられる。その増大は、これらの細胞の機能的活性化の徴候である。
【0277】
濃度とは無関係に、薬物は、グリア細胞による自発的な一酸化窒素の生成を低減させた(
図36)。弱く発現した反比例用量-応答関係があった。10μg/mlの濃度で、薬物は、亜硝酸塩の合成の低下により証明されるように、NOシンターゼの刺激活性も統計的に有意に低下させた。
【0278】
濃度とは無関係に、薬物は、ミクログリア細胞の自発的アルギナーゼ活性に対して事実上効果がなかった(
図37)。LPS処置のバックグラウンドで、2.5μg/mlの濃度では、薬物は、脳食細胞のこの代謝機能を穏やかに強化した。
【0279】
亜硝酸塩の合成に対する阻害効果と組み合わせて、アルギナーゼ活性に対する効果がないことは、食細胞のこの集団に対する薬物の抗炎症調節効果を示す。
【0280】
末梢血単球
【0281】
64Zn
e-aspによる末梢血単球の処置は、細胞による自発的エステラーゼ依存性細胞内ROS生成の低下をもたらした。弱く発現した反比例用量-応答関係が観察された(
図38)。
【0282】
10μg/mlの濃度で、薬物は、細菌性LPSで処置された細胞のこの代謝機能を、統計的に有意に低減させた。
【0283】
同じ濃度で、薬物は、NADHおよびNADPHオキシダーゼに応じて末梢血単球での自発的な酸化的代謝を僅かに増大させた(
図39)。
【0284】
薬物は、単球のLPS刺激オキシダーゼ依存性呼吸バーストに対して効果がなかった。
【0285】
≦5μg/mlの濃度で、薬物は、単球の食細胞活動を低減させた(
図40)。研究された指標の著しいばらつきがあったことに留意すべきであり、これは等張生理食塩液中の
64Zn
e-aspの不完全な溶解度または単球の不十分な機能的成熟度により引き起こされたと考えられる。これらの仮定を確認するため、これらの細胞の膜における細胞の食作用機能と1つまたは1つよりも多くのエンドサイトーシス受容体の発現との並行研究が、推奨される。
【0286】
使用される濃度とは無関係に、それらの薬物による処置後に、感作循環単球による亜硝酸塩の自発的生成に著しい変化はなかった。しかしながら、薬物は、LPSで処置した後に一酸化窒素単球の生成を穏やかに増大させた(
図41)。この作用のメカニズムは、細胞内ROS生成に対する薬物の影響によって媒介される。反応性酸素種の合成は、特に、単球を含む機能的に未成熟の細胞において、単核食細胞による反応性窒素種の合成に対して負の影響を及ぼすことが公知である。したがって、一酸化窒素の合成の僅かな増大は、ROS生成に対する薬物の阻害効果に起因し得る。
【0287】
単球のアルギナーゼ活性に対する
64Zn
e-aspの統計的に有意な効果は、休止細胞の処置後および細菌性LPS細胞処置のバックグラウンドに対する薬物の添加後の両方で、存在しなかった(
図42)。単球のアルギナーゼおよびNOシンターゼ活性への研究の結果は、これらの細胞でのアルギニン代謝経路に対する薬物の有意な影響が全く存在しないことを示す。成熟度および機能的可塑性によれば、ミクログリアの食細胞は循環単球とは異なる。常在ミクログリア細胞は、卵黄嚢に由来する機能的に成熟した組織の食細胞であり、自己再生が可能であり、非常に保存的な代謝を持つ細胞として文献で特徴付けられる。循環単球は、機能的に未成熟な細胞である(研究で使用される方法によって分離されない内皮壁に沿って巡回する単球の下位集団以外)。
【0288】
多くの代謝反応(シグナル伝達経路を含む)は、不活性および/または半活性状態にあるこれらの細胞にあり、単球の代謝可塑性を著しく増大させるものである。
【0289】
末梢血好中球
【0290】
64Zn
e-aspによる循環非感作好中球の処置は、これらの細胞による細胞内ROS生成の急激な低下をもたらした(
図43)。モジュレート効果は、反比例的用量依存性を有していた。細菌性LPSによるそれらの処置のバックグラウンドに対する細胞への薬物の添加は、好中球でのエステラーゼ依存性酸化的代謝の急激な低下も引き起こした。好中球は、
64Zn
e-aspの抗酸化作用に最も感受性である細胞であったことに留意すべきである。好中球は、その機能的特性が、全てのこれまでの食細胞とは異なる。好中球は、非常に反応性である代謝を持つ機能的に成熟した細胞であり、それらの寿命の短い持
続時間を引き起こす。これらは排他的に循環する細胞であり、炎症反応の主なエフェクターのうちの最初の1つである(共に感染プロセスおよび無菌炎症に関連付けられる)。好中球の代謝可塑性は最も研究がなされていない。
【0291】
薬物は、細菌性LPSによる細胞の処置とは無関係に、NADHおよびNADPHオキシダーゼに依存するROS生成に対して強力な負の影響も及ぼした(
図44)。
【0292】
しかしながら、この場合に用量-応答関係はなかった。研究された指標の低いばらつきにも留意すべきである。
【0293】
好中球の食細胞活動に対する薬物の統計的に有意な効果は観察されなかった(
図45)。
【0294】
好中球の食細胞活動の指数は低かったことに留意すべきである。ラットの血液の特異的な特徴は、他の実験室のげっ歯類と比較して、その循環好中球の数が少ないことである。これらの動物における好中球によるエンドサイトーシスの強度の特異的な特徴に関する文献データは、見い出されなかった。
【0295】
64Zne-aspは、休止好中球による反応性窒素種の合成に対して著しい効果がなく、LPSによる細胞の処置後にこの代謝反応に対して中程度の負の影響をもたらした(
図46)。
【0296】
休止および細菌性の両方のLPSで処理された好中球のアルギナーゼ活性は、薬物の作用の下で実際に変化しないままであった(
図47)。
【0297】
図47は、非感作ラット末梢血好中球のアルギナーゼ活性に対する
64Zn
e-aspの影響を示す。
【0298】
これらのデータ全ては、薬物が、循環好中球におけるアルギニン代謝の経路に対して穏やかな効果しか有しないことを示す。
【0299】
実施例3の知見:
【0300】
1.食細胞の4集団の代謝プロファイルに対する64Zne-aspの効果の比較分析は、薬物の作用に対して最も感受性があるのがミクログリア細胞であることを明らかにした(薬物による処置は、研究された機能のほとんど全てに変化を引き起こした)。腹腔マクロファージは、感受性が最も少なかった。
【0301】
2.研究された全ての代謝反応の中で、薬物は、研究された集団の全ての細胞の酸化的代謝に最大の効果を有した;アルギナーゼ活性には効果がなく、事実上、細胞のエンドサイトーシス活性に対する効果はない。
【0302】
3.薬物は、研究された食細胞集団全ての細胞での誘発性酸化的代謝を阻害し、事実上全ての細胞における反応性窒素種の誘発された生成を阻害し、その免疫調節効果の抗炎症特性を示すものである。最大の抗酸化効果は、好中球の場合に記録された。
【0303】
薬物に対するミクログリア常在食細胞の応答は、末梢局在化(腹腔マクロファージ)の組織食細胞の場合に大部分が類似している。
【0304】
(実施例4)
ヒト末梢血単核細胞の自発的およびフィトヘマグルチニン誘発型増殖活性に対する64Zne-aspおよびE2+85Rbe調製物の影響。
【0305】
序論:マイトジェン刺激型Tリンパ球が、細胞内への亜鉛流入を促進させるトランスフェリン受容体の発現を活性化することは、関連文献から公知である(Mathe G, et al., Med Oncol Tumor Pharmacother. 1985;2(3):203-10;F Flynn A. Nutrition Research. 1985; 5(5):487-495.)。亜鉛-トランスフェリン錯体は、活性化Tリンパ
球でのDNAの合成を刺激し、事実上、休止リンパ球でのこのプロセスには効果がない(Rosenkranz E, et al. Eur J Nutr. 2017 Mar;56(2):557-567. doi: 10.1007/s00394-015-1100-1;Barnett JB, et al., Am J Clin Nutr. 2016 Mar;103(3):942-51. doi: 10.3945/ajcn.115.115188)。公表されたデータによれば、ルビジウム塩(塩化物)は、骨髄中の血球のリンパ球およびミエロイド系列の分化のプロセスを刺激し、したがって、それらの増殖に負の影響を有する(Hammarstroem L, Smith CI. Exp
Cell Res. 1979 Mar 15;119(2):343-8;Petrini M, et al., Haematologica.
1990 Jan-Feb;75(1):27-31)。文献には、分化したTリンパ球の増殖活性に対するル
ビジウム塩の影響に関するデータはない。
【0306】
材料および方法:末梢血単核細胞を、Histopaque-1077(Sigma、USA)での密度勾配遠心分離によって健康なドナーから単離した。フィトヘマグルチニン(PHA)(Sigma、USA)を使用して、Tリンパ球の増殖活性を活性化した。細胞を48時間、両方の調製物の作用に曝露した。刺激(単一成分として薬物を添加する)および共刺激(PHAと組み合わせて薬物を添加する)効果を評価した。CD3表現型マーカーを使用して、Tリンパ球の増殖活性を選択的に測定した。T細胞増殖活性は、フローサイトメトリー技法を使用して、CD3+細胞のDNA状態を分析することによって評価した。結果は、下記の式により計算された増殖指数の形で提示される:
【0307】
PI=((S+G2M)/(G0G1+G2M))×100(Peng X, et al., Biol Trace Elem Res. 2011 Dec;144(1-3):688-94. doi: 10.1007/s12011-011-9077-y)。
【0308】
結果:
【0309】
PHAとは別にin vitroで使用する場合、
64Zn
e-aspは、公開されたデータによれば非刺激T細胞の増殖に対して効果のない塩化亜鉛とは対照的に、CD3+Tリンパ球に対して用量依存的に弱い刺激効果を有した(
図48)。
【0310】
PHA、Tリンパ球の古典的なマイトジェンと組み合わせて使用する場合、調製物は、マイトジェンのみで処置した試料および未処置の試料と比較して、細胞の増殖活性を増大させた。用量-応答関係は追跡されなかった。得られたデータは、T細胞増殖に対する塩化亜鉛の共刺激効果に関して公開されたデータと一致する。
【0311】
E2+85Rbeは、Tリンパ球の自発的増殖活性に対していかなるin vitro効果ももたらさず、細胞のマイトジェン誘発型増殖を著しく阻害した。その結果、薬物の効果は、公開されたデータによれば休止および活性化リンパ球の両方の増殖に対して阻害効果を有する塩化ルビジウムの場合とは異なる。
【0312】
T細胞アポトーシス(活性化誘発型アポトーシス)(Brenner D, et al., Crit Rev Oncol Hematol. 2008 Apr;66(1):52-64. doi: 10.1016/j.critrevonc.2008.01.002)は、T細胞活性化に関する追加の基準である。これに関連して、PHAとは別にお
よびPHAと組み合わせて試験薬物で処置したTリンパ球の活性化誘発型アポトーシスの
レベルを、測定した。
図49からわかるように、単独で使用した
64Zn
e-aspは、活性化誘発型T細胞アポトーシスに対していかなる効果も有しなかった。しかしこの薬物をマイトジェン(10μg/ml)と組み合わせて使用した場合、活性化誘発型T細胞アポトーシスのレベルは著しく低下し、これは活発に増殖する細胞のアポトーシスを阻害するその能力を示している。前記薬物の抗腫瘍特性を調査する場合、この効果に注意を払う必要がある。
【0313】
500μg/mlの濃度のE2+85Rbe調製物は、マイトジェンとは別におよび組み合わせて使用されるその両方の場合に、顕著なアポトーシス促進性効果を有した。これは、薬物が、少なくとも悪性Tリンパ球に関して抗新生物特性を有することを示唆する。さらに、T細胞増殖の活性化(自己免疫疾患、アレルギー病態)を伴う炎症性病理学的プロセスに対する薬物の正の影響が、可能である。
【0314】
実施例4の知見:
【0315】
1.64Zne-aspは、Tリンパ球増殖に対して刺激および共刺激効果を有し、それと共に活発に増殖するT細胞のアポトーシスを阻害する。
【0316】
2.E2+85Rbeは、Tリンパ球の自発的増殖活性に対して効果がなく、活発に増殖するT細胞のアポトーシスの刺激と共に、マイトジェン誘発型細胞増殖を阻害する。
【0317】
全体的な結論
【0318】
このように、異なる局在化の食細胞の代謝プロファイルに対する64Zne-aspおよびE2+85Rbeの効果に関するin vitro研究の結果は、下記の内容を実証した。ミクログリア細胞、循環食細胞(単球および好中球)、ならびに腹腔マクロファージは、両方の薬物に感受性がある。ミクログリア細胞は、亜鉛ベースの調製物に対して最大の感受性を示した。ミクログリアの食細胞活動は、その作用の下で強化されており、その活性化の徴候である。64Zne-aspは、休止(非刺激)ミクログリア細胞によるROS生成を高めており、これは脳食細胞の修復活性を活性化する薬物の能力を示している。同時に、活性化ミクログリア細胞によるROS生成(炎症プロセスをシミュレートした状況)は、薬物の作用の下で低下した。ミクログリア細胞でのアルギニン代謝経路は、薬物の作用の下でアルギナーゼ活性を高める方向にシフトしたが、これはやはり、その免疫調節作用の抗炎症性を確認するものである(アルギナーゼを介したアルギニン代謝は、修復プロセスに必要な細胞外マトリックス成分の前駆体である分子の形成をもたらし、それに対してNOシンターゼを介したアルギニン代謝は、細胞毒性機能を持つ反応性窒素種であるNO形成をもたらす)。64Zne-aspの作用の下での循環食細胞の代謝の変化の性質は、ミクログリアの場合とは異なった。薬物は、休止および刺激単球ならびに好中球の両方によるROS生成の低下を引き起こし、これらの細胞における食作用およびアルギニン代謝に対して弱い効果を有した。64Zne-aspに対する腹腔マクロファージの応答は、ミクログリア細胞の場合に類似しており、これは骨髄由来の循環食細胞とは対照的に、両方の細胞集団が個体発生由来の常在組織成熟食細胞を表しているとすれば完全に論理的である。言い換えれば、腹腔食細胞は、64Zne-aspの作用の下でROS生成を強化し、それと同時に反応性窒素種の合成を急激に低減させたが、これは、それらの代謝における抗炎症(修復)シフトを示すものである。
【0319】
異なる局在化の食細胞と64Zne-aspおよびE2+85Rbe調製物との併用処置は、それらの代謝に僅かに異なる変化を引き起こした。ミクログリアの食細胞活動はそのような処置により低下し、休止および刺激細胞の両方によるROS合成も、反応性窒素種の生成の減少と共に低下したが、これらを全て合わせると、微量元素を含む調製物の組
合せによるこれら細胞の機能の抗炎症調節が示される。64Zne-aspおよびE2+85Rbeによる循環食細胞の併用処置の効果の性質は、単独治療としての亜鉛ベースの薬物の使用の場合と原則的に異ならなかった。薬物は、単球および好中球の両方によるROS生成を低減させ、さらに、循環食細胞による反応性窒素種の生成を低減させたが、これは、それらの抗炎症効果を示すものである。
【0320】
E2+85Rbeによる腹腔マクロファージの処置は、単独治療として使用したときの亜鉛ベースの薬物によるそれらに処置よりも、これらの細胞での代謝においてより顕著な抗炎症性シフトをもたらした。
【0321】
これらin vitro研究の結果は、in vivo研究でのPDの開始に先駆けて、異なる局在化の食細胞機能の予防的抗炎症調節が有利であることを示唆する。本発明者らの意見では、脳、末梢血、および腹膜腔内の食細胞のそのような先進の調製物は、疾患の発症を伴うそれらの炎症活性化を阻害することができ、動物における黒質内のドーパミン作動性ニューロンの破壊の程度を弱め/低減させることができることになる。
【0322】
この仮定は、ラットでPDを誘発させる前の薬物の予防的投与に関する結果によって確認された。単独治療としておよびルビジウムを含有する調製物と組み合わせて使用した両方の亜鉛ベースの薬物は、PDの発症中、動物でのドーパミン作動性ニューロンの破壊の程度の低下を引き起こした。ドーパミン作動性ニューロンの破壊の程度のそのような低下は、微量元素を含む調製物の予防的投与によって大部分が消失(level)した異なる局在化の食細胞の炎症誘発性活性化を特徴とするPDの対照動物モデルとは対照的に、予防的投薬として研究中の薬物を受けた動物における異なる局在化の食細胞の正の変化を伴った。PDの対照動物モデルにおけるミクログリアは、低下したROS生成により無傷動物の場合とは異なり、同時に、黒質中のニューロンに対して大きな破壊効果を有する反応性窒素種の合成が高められた。薬物の予防的投与は、反応性窒素種の合成の低下と同時にミクログリア細胞による増大したROS生成を伴った。上述のように、高められたROS合成は、修復プロセスの活性化に必要な条件である。したがって、その抗炎症極性化(増大したスカベンジャー受容体発現および反応性窒素形態の低減した合成)と組み合わせたミクログリア細胞での酸化的代謝の増強は、その全身性腹腔内投与に供されたPDの動物モデルの脳内の修復プロセスを活性化する、微量元素をベースにした調製物の能力を示す。パーキンソニズムのラットモデルにおける循環食細胞は、顕著な炎症誘発性極性化によって特徴付けられており、これは、PDの発症を伴う全身性炎症でのこれら細胞の関与に関する文献データを確認するものである。微量元素をベースにした調製物の予防的投与は、これらの細胞の炎症活性化を防止した。同じことが、微量元素をベースにした調製物の予防的投与後のPDのラットモデルにおける腹腔マクロファージの代謝の変化に関して言える。
【0323】
亜鉛を含む薬物の予防的効果はより顕著であったが、時間的にはそれほど安定せず、それに対して、亜鉛およびルビジウムをベースにした薬物の併用使用の効果は、それほど表出的ではなかったが、経時的に安定であった。
【0324】
(実施例5)
開示される化合物の低減された毒性
【0325】
正常なヒト線維芽細胞の代謝活性に対するE2+85Rbeの効果のin vitro評価(MTTアッセイ)。
【0326】
E2系列 E2+Rb参照薬物 E2+85Rbeの化合物の濃度
【0327】
細胞の代謝活性、%*
【0328】
150μg/ml 99.3±3.2 72.8±2.1
【0329】
75μg/ml 97.7±7.5 67.4±4.7
【0330】
38μg/ml 98.8±7.1 68.5±1.8
【0331】
20μg/ml 96.8±9.8 74±1.3
【0332】
10μg/ml 104.6±14.2 82.5±1.3
【0333】
5μg/ml 103.4±9.3 82.3±3
【0334】
2.5μg/ml 128.2±8.3 84.4±4.6
【0335】
1.25μg/ml - 105.1±2.3
【0336】
*対照群 - 生細胞100%と比較
【0337】
細胞の増殖および代謝活性を、比色法により決定した。
【0338】
細胞の代謝活性(即ち、生細胞の数)を、MTT染色により評価した。
【0339】
最後の試薬から24時間後、細胞を、10%FBSおよび40μg/mlゲンタマイシンを含む完全DMEM栄養培地中に、細胞1×104個/ウェルの濃度で96ウェルプレートのウェルに播種した。細胞を、5%CO2および37℃の加湿雰囲気中で24時間培養した。24時間後、様々な用量の実験物質をそれぞれのウェルに添加した。細胞を、37℃および5%CO2で、さらに72時間インキュベートした。
【0340】
調製物によるインキュベーションの完了後、実験の細胞の増殖および代謝活性を、MTT細胞を染色することによる比色法によって評価した:
【0341】
10μlのMTT溶液(リン酸緩衝生理食塩液中5mg/mlの色素)を、プレートの各ウェルに添加し;プレートを、CO2インキュベーターで、37℃で3時間インキュベートした。その後、培地をウェルから取り出し、形成されたテトラフォルマザン結晶をジメチルスルホキシド100μlに溶解した。
【0342】
MTTを使用した場合、結果を、マルチウェル分光光度計を使用して、540nmの励起波長で評価した。生細胞のパーセンテージを、式により計算した:
【0343】
IR=(A 540(実験)/A540(対照))×100%。
【0344】
(実施例6)
【0345】
化合物7を下記の通り調製した。所望の生成物を得るために、85RbeClを必要に応じて使用し、ならびに出発材料および適切な置換基を含む中間体と共に使用することにより、同じ手順を使用して式1のその他の化合物を調製することができる。代替の合成は、R9がOCH3である場合に関して、以下に提供される。
【0346】
第1相
【0347】
10.8gのo-フェニレンジアミン塩基を、100mlのイソプロピルアルコールに溶解し、室温で混合物を維持する間、塩化ベンゼンスルホニル(17.65g)のアルコール溶液200mlを添加した。得られた混合物を室温で1時間、および65~70℃で0.5時間撹拌した。冷却後、得られた薄い色の沈殿物を、冷水で完全に洗浄することによって濾過して、未反応のo-フェニレンジアミンの残留物を除去した。フィルターからの沈殿物を、10%塩酸中で沸騰させ、熱いうちに濾過して、副生成物であるビス-ジベンゼンスルホニル-o-フェニレンジアミンを除去した。濾液を活性炭で清澄化し、冷却後、微細な針状結晶の形をとるN-ベンゼンスルホニル-o-フェニレンジアミン塩酸塩を濾別した(乾燥物質当たりの重量7.11g。収率25%)。
【化11】
【0348】
第2相
【0349】
第1相で得られたN-ベンゼンスルホニル-o-フェニレンジアミン塩酸塩(7.11g)をトルエン50ml中に懸濁し、5.1gの塩化o-ニトロベンゾイルおよび5.32g(7.1ml)のトリエチルアミンを添加した。反応混合物を、油浴中、還流下で3時間沸騰させ、冷却後、形成された沈殿物を濾別した。得られた物質を、イソプロピルアルコールから再結晶し、活性炭で精製した。乾燥N-ベンゼンスルホニル-N’-2-ニトロベンゾイル-o-フェニレンジアミンの収率は、6.45g(65%)であった。
【化12】
【0350】
第3相
【0351】
85Rb
eが0.001g/mlの濃度であるN-ベンゼンスルホニル-N’-2-ニトロベンゾイル-o-フェニレンジアミンのルビジウム塩の水溶液の調製:
0.073gのKOHおよび0.467gのN-ベンゼンスルホニル-N’-2-ニトロベンゾイル-o-フェニレンジアミンを、90mlの脱イオン水に溶解した。溶液を加熱しながら撹拌して、沈殿物を完全に溶解した。室温に冷却した後、溶液を濾過し、0.1417gの
85Rb
eCl(
85Rb
eは99%の
85Rbであった)を添加して素早く
溶解した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、再び濾過した。濾液を、脱イオン水で100mlにし、さらなる研究に使用した。
【化13】
【0352】
とりわけ下記の方法は、新たに合成された化合物を同定するのに使用することができる:DMSO-d6中のTMSに対するVarian VXR 200分光計でのPMRスペクトルの測定;ATRアクセサリーを使用するBruker ALPHA FT-IR分光計でのIRスペクトル(4000~600cm-1)の測定;シリカゲル60 F254プレートでのTLC(溶出液:クロロホルム);Kratos MS 890質量分光計を使用した質量スペクトルの決定であり、180~250℃のイオン化チャンバー温度および70eVのイオン化電子エネルギーでイオン源への試料の直接注入がなされる。
【0353】
R
9がOCH
3である場合、下記の代替合成が使用されてもよい。最後のステップで、
85Rb
eClは、
85Rb濃縮生成物を調製するためにRbClの代わりに使用することができる。
【化14】
【0354】
(実施例7)
LPS誘発型実験的パーキンソニズムを持つラットにおける局所および全身免疫反応性、行動および運動機能に対する、64Zn-aspの影響
【0355】
亜鉛は、ヒトの健康に必要とされる必須の微量金属として理解され、その欠乏は、ニューロンおよび免疫系欠陥に強く関連付けられる。Znは、免疫応答の強力なモジュレーターとしても働く。
【0356】
細菌性エンドトキシン(リポ多糖、LPS)は、TLR4アゴニストであり、自然免疫の細胞の強力な炎症誘発性アクチベーターであり、脳の常在単核食細胞であるミクログリアが含まれる。Subramanian Vignesh K, Deepe GS Jr. Arch Biochem Biophys.
2016;611:66-78. doi: 10.1016/j.abb.2016.02.020;Liu M, Bing G. Parkinsons Dis. 2011;2011:327089. doi: 10.4061/2011/327089。
【0357】
TLR4は、自然免疫および適応免疫の全ての細胞、ならびに脂肪細胞、上皮細胞、および多くのその他の細胞によって発現する。TLR4とLPSとの相互作用は、NFκB-依存的シグナル伝達経路を活性化し、その結果、何よりもまず、サイトカイン、ケモカイン、エイコサノイドなどを含む炎症誘発性メディエーターの合成の活性化がもたらされる。Hersoug LG, et al. Obes Rev. 2016;17(4):297-312. doi: 10.1111/obr.12370;Vergadi E, et al. Front Immunol. 2018;9:2705. doi: 10.3389/fimmu.2018.02705。増大した数の循環LPS分子は、神経変性プロセスの活性化における最も重要な因子の1つであり、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)などの病因の必須の成分と見なされる。Sfera A, et al., Front Neurol. 2018;9:1062. doi:
10.3389/fneur.2018.01062;Perez-Pardo P, et al., Gut. 2018. pii: gutjnl
-2018-316844. doi: 10.1136/gutjnl-2018-316844。
【0358】
上記に基づき、PDのLPSモデルは、α-シヌクレイン症の研究において特に関心が持たれているが、それは、疾患の発症における炎症成分の評価が可能になるからであり、それと共に、抗炎症薬の治療有効性の最も適切な評価がこの病理学的状態の処置に関して提示されたからである。
【0359】
実験的パーキンソニズムのLPS誘発型モデルの発生のための条件は、最適化された:文献に記載されるエンドトキシンの注入のための2つの定位座標の中から、最大限の神経炎症をおよびその後の黒質のニューロンに対する高度な損傷を確実にする座標が、選択された。
【0360】
材料および方法
【0361】
実験動物
【0362】
オスWistarラット(220~250g)を使用した。動物を、動物飼育施設内で標準条件下、食物および水に制限なく届く状態で維持した。
【0363】
ラットの片側パーキンソニズムのモデル化
【0364】
左半球の慢性ドーパミン欠乏症を、脳の黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの片側破壊によってモデル化した。これは、2μlの滅菌0.9%NaCl(Infuzia CJSC、Ukraine)に溶解した10μgのエンドトキシン(リポ多糖)(Escherichia coli O111:B4、cat.L2630 Sigmaからのリポ多糖)の定位マイクロインジェクションによって誘発させた。溶液は、外科処置の日に調製した。得られた溶液を含有するフラスコを、1滴のシリコーン油(STEP-ELECTRONICA LLC、Ukraine)で封止し、冷蔵庫に入れた。
【0365】
総体積1mlで腹腔内投与したケタミン(75mg/kg、注射用に滅菌水で希釈、Sigma、USA)および2%キシラジン(100μl/ラット、Alfasan International B.V.、Netherlands)の混合物を使用して麻酔をかけた動物を、ラット用に修正した定位装置(SEZH-4)内に入れた。次いで動物の頭皮を剥ぎ、トレフィン開口を注射針で黒質内に直接作製した(AP=-5.3;ML=±2.0;DV=-7.2)。溶解したLPSを、自家製の微量注入器内に収集し、その先端をトレフィン開口内に落とした。
【0366】
2μlの体積中10μgの用量で、エンドトキシンを、1μl/分の速度で(15秒ごとに)脳組織に注入した。エンドトキシンを投与した後、微量注入器の先端を、脳組織内に5分間残したままにした。次いで微量注入器を除去し、動物の頭皮軟組織を何針か縫った。対照動物には、LPSの代わりに2μlの滅菌0.9%NaClを投与した(偽手術した動物)。
【0367】
アポモルフィン試験
【0368】
破壊されたドーパミン作動性ニューロンのパーセンテージを、アポモルフィン試験を使用して計算した。エンドトキシンが注入された半球の反対側への動物の回転運動の強度を評価した。類似の運動活性は、アポモルフィン、ドーパミン受容体アゴニストの全身腹腔内投与(0.5mg/kg、Sigma、USA)によって誘発された。30分間にわたるそのような回転運動の強度は、黒質線条体ドーパミン系の分解の程度を示した(SA Ta
lanov et al., Neurophysiology 38 (2), 128-133)。アポモルフィン試験IとI
Iとの間で、30分以内に回転数が増加し、減少し、または変化しないままの動物の数を、定量した。
【0369】
ドーパミンニューロンの免疫組織化学的同定
【0370】
LPS誘発型変性を、免疫組織化学的チロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体染色を使用して評価した[Walsh, S., Finn, D.P., Dowd, E., 2011. Neuroscience 175,
251-261]。5μmのパラフィン包埋された中脳切片の免疫組織化学的染色を、1:2
00希釈(Millipore、AB152)で一次TH抗体を使用して実施した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、内因性ペルオキシダーゼを遮断する溶液を使用してクエンチ処理した(Dako、EnVision Flex、DM821)。抗体の非特異的結合を、0.2%Triton X-100を含有するTris緩衝生理食塩液(TBS)に乾燥ミルクを溶かした4%溶液で遮断した。
【0371】
一次抗体を、0.2%Triton X-100を含有するTBS中に希釈し、切片に適用し、一晩インキュベートした(+4℃)。二次抗体(ビオチン化抗ウサギ、1:200)を60分間インキュベートした。免疫反応は、ジアミノベンジジン(Dako、EnVision)を5分間適用して発色させた。TH染色の評価を、Primo Star顕微鏡、Zeizzを使用して、軽度光レベルで行った。ペルオキシダーゼマーク(最大発現のある領域内)の強度を評価した。受容体の発現を、スコアリングシステムを使用して評価した。染色強度を0から3までスコアし:
0-染色なし;
1-弱い染色;
2-中程度の染色;
3-強い染色強度
であった。
【0372】
糞便の含水量の測定
【0373】
糞便を、実験の8日目、21日目、および28日目に収集した。それらを計量し(湿潤重量mww)、サーモスタットでt=60℃で24時間乾燥させ、次いで再び計量した(乾燥重量mdw)。糞便の含水量(M)を、下式:M=100-(mdw×100%/mww)に従い、糞便の湿潤および乾燥重量の間差のパーセンテージとして計算した。
【0374】
行動試験
【0375】
オープンフィールド試験
【0376】
方法。オープンフィールド試験は、げっ歯類の自発運動活性およびそれらの馴染みのない環境での探査活性を測定するのに、ならびにげっ歯類における新奇性恐怖症、不安症、または向きの応答(orientation response)の増大のレベルを評価するのに、一般に使用される技法である(Denenberg VH, et al., Physiology and
Behavior, 1969;4:403-406.;Pellow S et al., J Neurosci Methods. 1985;14(3):149-67)。オープンフィールド試験で測定された行動パターンは、外周および内周
を移動した距離、外周および内周で費やした持続時間、移動した総距離、ならびに四角形の総数に対する、横断した内部四角形の数のパーセンテージを含む。
【0377】
オープンフィールドは、高さ60cmの壁を持つサイズが100×100cmの正方形のチャンバーであった。チャンバーを、2mの高さに吊るしたそれぞれ60ワットの2個
のLED電球で照明した。IPカメラを使用して、げっ歯類の運動を記録した。MATLAB(登録商標)ベースのソフトウェアを使用して、パラメーターを分析した。統計的分析を、GraphPad Prismを使用して行った。有意性は、<0.005に設定した。オープンフィールドから収集したデータを、一元配置ANOVA(Tukey検定またはDunnett検定)および独立t検定またはMann-Whitneyを使用して分析した。
【0378】
データ分析および解釈。動物自身が気付く新規な環境は、恐れとこの環境を探る欲求との間で葛藤を引き起こす。これら2つの行動傾向は、種々の時間的ばらつきと種々の空間的利点とを特徴とする。分析では、活動領域を2つのゾーン:内側および外側に分ける。内側および外側ゾーンでの全自発運動活性および費やされた時間は、ラットの不安のレベルを評価するための最も有意なパラメーターである。5分間の試験中に動物がその時間のほとんどを壁の近くで、外周で費やし、内側の「オープン」ゾーン内部にほとんど入らない場合には、正常と見なされる。内側ゾーンに入った状態の増加は、動物の不安が減少したと解釈される。動物の情動および探査行動は、海馬および扁桃体のような脳領域での様々な障害によって影響を受ける。さらに、抗不安、刺激、および筋弛緩効果を持つ様々な物質は、実験の結果に影響を及ぼす可能性がある。
図50Aおよび
図50Bは、実験活動領域におけるラットの軌跡の分析の例を示す。
【0379】
高架式十字迷路
【0380】
方法。高架式十字迷路は、薬剤の鎮静または不安惹起効果を評価し不安関連行動の基礎をなすメカニズムを定め、およびオープンフィールド試験で収集されたデータに相関し得るラットの運動活性およびその探査活性のレベルを評価するのを可能にする、げっ歯類に関して広く使用される行動アッセイである。Campos AC, et al., Braz J Psychiatry. 2013;35 Suppl 2:S101-11. doi: 10.1590/1516-4446-2013-1139;Braun AA, et al., Neurobiol Learn Mem. 2012;97(4):402-8. doi: 10.1016/j.nlm.2012.03.004)。行動は、下記の主なパラメーターに従い評価した:移動した総距離、各アームに進入した数、各アームで費やされた時間、進入した総数、および進入のパーセント。各動物を、迷路の4つのアームの接合部に置き、上記パラメーターを5分間、観察した。実験の全体を通して、動物は食物および水に自由に触れることができた。測定開始前、ストレスが低減するように、新しい環境に適応するための時間を動物に与えた。
【0381】
高架式十字迷路で使用される装置は、互いに交差しおよび2つのクローズドアーム(50×10×30cm)に直交する2つのオープンアーム(50×10cm)を含む、十字形構造を有した。装置全体は、床から50cm上方の高さであった。接合部の中心部は10平方cmの中心領域であり、そこで動物はオープンアームと対面し始めた。装置を、2mの高さに吊るされたそれぞれ60ワットの2個のLED電球で照明した。IPカメラを使用してラットの場所を記録し、後でMATLAB(登録商標)ベースのソフトウェアを使用してスコアリングを終了した。統計的分析を、GraphPad Prismを使用して行った。有意性は、<0.005に設定した。オープンフィールドから収集したデータを、一元配置ANOVA(Tukey検定またはDunnett検定)および独立t検定またはMann-Whitneyを使用して分析した。
【0382】
データ分析および解釈。検定は、オープン領域に関するラットの自然の嫌悪と、装置のクローズド領域に関するラットの好みとに基づく。動物の不安のレベルを、オープンおよびクローズドアームで費やされた全時間として評価する。オープンアームでより多くの時間を費やした動物は、クローズドアームを好む動物と比較して不安のレベルが低い。さらに、オープンフィールド試験におけるように、動物自身が気付いた新規な環境は、恐れとこの環境を探る欲求との間の葛藤を引き起こす。したがって、これら2つの試験から収集
したデータは、移動した距離ならびに外周および内周で費やした時間に相関し得る。5分間の試験中に動物がその時間のほとんどをクローズドアームで費やしたが探査のためにオープンアームへの数回の進入も行った場合、正常と見なされる。したがって、オープンアームへの進入の増加は、動物の不安が減少したと解釈される。
図51Aおよび
図51Bは、実験活動領域におけるラットの軌跡の分析の例を示す。
【0383】
ピックアップ試験
【0384】
ピックアップ試験は、易刺激性の増大に関する試験である。動物を、身体を掴むことによってピックアップする。応答を、1、非常に容易;2、鳴きながら容易;3、いくらか困難、ラットは後ろ足で立ち手に対向する;4、ラットは身動きせず(鳴きながらまたは鳴かずに);5、困難、ラットは遠くに離れて手を避ける;および6、非常に困難、ラットは防御的に行動し、手を攻撃し得る(Brandt C et al., Neuropharmacology. 2006 Sep;51(4):789-804)。
【0385】
実験のスキーム
【0386】
動物を7群に割り当てた:I(n=12) - 標準的な飼育施設条件下で維持され、およびいかなる操作も受けていない、無傷の動物;II(n=12) - 0.1mlの超軽水を手術後毎日、10日間にわたり静脈内(i.v.)投与したラット、ラットは偽手術された;III-(n=12) - 手術後
64Zn-asp(1.5mg/kg、i.v.、10日間)溶液を毎日投与されたラット、ラットは偽手術された;IV(n=15) - 手術後、0.1mlの超軽水(i.v.、10日間)を毎日投与されたラット、その後、LPS誘発型パーキンソン病モデルが生成された;V(n=15) - 手術後、
64Zn-asp(1.5mg/kg、i.v.、10日間)溶液が毎日投与されたラット、その後、LPS誘発型パーキンソン病モデルが生成された;VI(n=15)
- 手術後、
64Zn-asp+10%E2+
85Rb(1.5mg/kg、i.v.、10日間)溶液が毎日投与されたラット、ラットは偽手術された、VII(n=15)
- 手術後、
64Zn-asp+10%E2+
85Rb(1.5mg/kg、i.v.、10日間)溶液が毎日投与されたラット、その後、LPS誘発型パーキンソン病モデルが生成された(
図52)。
【0387】
1.実験の1日目、ラットに、片側パーキンソニズムをモデル化するように手術し、または偽手術した。実験の9日目から18日目に、それらの群への割当てに従い、10日間にわたり動物に超軽水または試験物質のいずれかを注射した。実験の8日目(処置開始前
- アポモルフィン試験I)および実験の21日目(試験物質の投与が終わった後 -
アポモルフィン試験II)、動物にアポモルフィン試験に供して、破壊されたドーパミン作動性ニューロンの数に相関する片側パーキンソニズムの発症を分析した。さらに、糞便含水量の追跡分析を、即ち手術後8日目に処置を開始する前、ならびに21日目(処置が終わった後)および28日目(剖検前)に実施した。実験の24日目、行動試験を全ての群で実施した。全ての動物を、剖検前に計量した。剖検中、各群からの動物の2/3を、頚椎脱臼により犠牲にし、脳および血液試料を、さらなる生化学および免疫学試験のために収集した。動物の1/3を、脳のさらなる免疫組織化学研究のために使用した;この目的のため、麻酔下で、動物の全身の迅速で制御された均一固定の手順を、ラットの心臓を通して潅流された4%パラホルムアルデヒドを使用して行って、免疫組織化学のために脳構造の最良の保存を得た。Gage GJ, et al., J Vis Exp. 2012 Jul 30;(65)
。
【0388】
血液学的評価
【0389】
血球カウント値を、実験終了時(28日目)に分析した。白血球の絶対数、ならびにリンパ球、単球、および好中性顆粒球の絶対および相対数を計算した。
【0390】
様々な局在化の食細胞の単離
【0391】
試験物質の抗炎症および免疫調節効果を評価するため、ミクログリアおよび腹腔マクロファージを単離した。末梢血食細胞の表現型および機能的特徴を、それらを分画することなく評価した(全血を使用して)。ミクログリアを単離するため、脳組織ホモジネートを手動の均質化によって得、その後、セルストレーナー(No 70)を使用して、解離していない集塊を除去した。ミクログリア細胞を、2ステップPercoll勾配の遠心分離によって、得られたホモジネートから単離した。腹腔マクロファージを、ラットの腹膜腔内に氷冷成長培地を潅流させることにより、前もって感作させずに単離した。腹腔滲出細胞の接着画分を、実験で使用した。
【0392】
様々な局在化の食細胞の食細胞活動の評価
【0393】
ミクログリア、腹腔マクロファージ、および末梢血食細胞の食細胞活動を、食作用の対象としてFITC標識されたS.aureus Wood 46細胞を使用して、フローサイトメトリーで分析した。S.aureus細胞は、the National Taras Shevchenko Universityのthe ERC Institute of Biology and Medicineのthe Department of Microbiology and Immunologyの微生物収集から得た。
【0394】
様々な局在化の食細胞の酸化的代謝
【0395】
様々な局在化の食細胞の酸化的代謝を、細胞内エステラーゼにより非蛍光膜不透過性カルボキシ-H2DCF形態に変換される細胞透過性2’7’-ジクロロジヒドロフルオレセイン-ジアセテート(DHP)(カルボキシ-H2DCFDA、Invitrogen、USA)を使用してフローサイトメトリーにより分析した。
【0396】
様々な局在化の食細胞の表現型プロファイルの評価
【0397】
様々な局在化の食細胞の表現型プロファイルは、機能的成熟度および代謝極性化のマーカー(CD206、CD80、およびCD86)の発現を特徴とし、これはフローサイトメトリーによって、および蛍光色素(Abcam、Becton Dickinson)でマークされた適切な特異性のモノクローナル抗体の使用によって決定された。
【0398】
統計的データ分析法
【0399】
行動試験から収集されたデータ以外の数値結果を、Statistica 8.0ソフトウェアパッケージを使用した統計的データ分析法を使用して処理した。各群により示される結果間の信頼性ある差の統計的有意性を決定するため、スチューデントt検定を使用した。有意性は、p<0.05に設定した。
【0400】
行動試験の統計的データ処理は、GraphPad Prism 7統計ソフトウェアパッケージを使用して行った。非パラメーター試験は、統計データ処理のために使用した。各群の中央値は、水平線により示される。Kruskel-Wallis一因子検定および事後解析Dunn検定を使用して、群間の有意差を決定した。有意性は、p<0.05に設定した。
【0401】
結果
【0402】
パーキンソン病のラットモデルにおけるアポモルフィン誘発型回転行動に対する64Zn-aspの治療効果
【0403】
予備研究では、パーキンソン病のLPS動物モデルは、6OHDA誘発方PDモデルと比較して、著しく低い顕著な回転行動を有することを観察し、この事実は、より大きい数の動物(IV、V、VII群)に関するこの研究で確認された。この実施例では、パーキンソン病の44匹のLPSモデルのうち38匹のラット(86%)(1匹のラットは、麻酔から覚めなかった)は、30分当たり100回転より少ない回転であった。
【0404】
1回目および2回目のアポモルフィン試験の間での、回転運動の数の生理的減少は、LPS誘発型パーキンソニズムを有しおよびH
2Oが注射された対照群(IV群)のラットの33.3%(動物15匹のうち5匹)で観察され、一方、回転数の増加は、この群のラットの66.6%(動物15匹のうち10匹)で観察されたが、平均回転数は、1回目(35.3±25.5回転/30分)および2回目(43.4±36.1回転/30分)のアポモルフィン試験間で著しく異ならなかった(
図53Aおよび
図53B)。
【0405】
64Zn-aspの効果
【0406】
64Zn-aspの投与が1回目のアポモルフィン試験の翌日に開始され、および2回目のアポモルフィン試験が試験物質の最後の注射の3日後に行われた事実を考慮すれば、2回目のアポモルフィン試験で1回目のアポモルフィン試験よりも少ない回転数をもたらした動物の数は、ドーパミン作動性ニューロンの破壊を防止する際の試験物質効力の関連あるマーカーである。1回目(91.2±107.7回転/30分)および2回目(86.7±106.3回転/分)のアモポルフィン試験間の平均回転数に有意差はなかった(
図53A)。しかしながら、超軽水が注射されたラットとは対照的に、
64Zn-aspで処置したラットの85.7%(14匹の動物のうち12匹)は、1回目と2回目のアポモルフィン試験間でより少ない回転数をもたらし、ラットの14.3%(14匹の動物のうち2匹)は回転数を増加させたが(
図53B)、これは、左半球の黒質でのドーパミン作動性ニューロンの変性プロセスの強度を予防する際の
64Zn-aspの有意な効力を示している。
【0407】
パーキンソン病のラットモデルにおける中脳のTH陽性ニューロンの数に対する64Zn-aspの治療効果
【0408】
ドーパミンニューロンの変性を予防する際の試験物質の正の治療効果をさらに確認するため、本発明者らは、中脳におけるTH陽性ニューロンの数の免疫組織化学的研究を実行した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、ドーパミンの合成を制限する酵素であり、ドーパミンニューロンの古典的マーカーである。研究結果は、無傷群(I群)および偽手術群(II群)からの動物の黒質の色が顕著であり、およびスコア3に該当することを示した。同時に、LPSを投与してPDモデルを生成することにより、無傷群および偽手術群と比較して、中脳におけるTH陽性ニューロンの数に著しい減少がもたらされた(スコア1)(
図54A~
図54O、表2)。
【0409】
偽手術された動物への
64Zn-aspの投与は、無傷動物および水を注射した偽手術動物と比較して、TH陽性染色の強度にいかなる変化も引き起こさなかった。同時に、
64Zn-aspで処置したLPSラットモデル(VI群)は、水が投与されたLPS動物モデル(V群)と比較して、中脳におけるTH陽性ニューロンの数の増加を示した(
図5
4A~
図54O、
図55)。これらのデータは、アポモルフィン試験データと相関し(
図53Aおよび
図53B)、左半球の黒質におけるドーパミンニューロンの変性の強度を防止する際の
64Zn-aspの著しい有効性を確認する。
【0410】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける体重変化に対する64Zn-aspの治療効果
【0411】
動物の体重は、その生理的状態の評価を可能にする古典的臨床指標である。豊富な研究は、体重減少が、年毎にパーキンソン病の診断に先行し得ること、ならびに疾患の重症度および持続期間にも関連付けられることを報告している[26]。さらに、PD関連の運動および非運動症状は、患者のボディマス指数に影響を及ぼし得る。体重減少は、独立した病理学的因子ではなく、パーキンソン病およびアルツハイマー病の病因に関連付けられる[Joly-Amado A et al., (2016). Neurobiol. Aging 44, 62-73]。アルツハ
イマー病では、体重減少は、認知症の臨床診断のための基準の1つである。同様に、パーキンソン病の文脈で、体重減少は、運動症状に先行する場合があり、疾患の発症の指標として見なされ得る。Kai Ma, et al., Current Knowledge and Future Prospects// Front Aging Neurosci. 2018; 10: 1。
【0412】
これらの実験において、無傷動物は、実験の1日目と28日目との間の期間で(4週以内)、ボディマスが約39%増えた。偽手術されたラットも、平均して30%の体重増加があった。
【0413】
しかしながら、パーキンソニズムのLPSラットモデルは、実験の1日目(手術の日)と28日目(剖検の日)の間で2%しか体重が増加せず、これは、全体的な臨床状態を評価するための動物の体重と、パーキンソン病におけるそれらの状態に対する試験物質の影響との関係を示すことに、留意すべきである(
図57)。
【0414】
パーキンソン病のLPSラットモデルへの
64Zn-aspの投与は、それらの体重の著しい増加を引き起こした(実験の1日目と28日目でのこの群における値の差(
図56A)、および実験28日目の、超軽水が与えられたLPSラットモデルの群における値に関連して(
図56B))。
【0415】
【0416】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける糞便含水量に対する64Zn-aspの治療効果
【0417】
震え、運動機能低下、筋硬直、姿勢動揺などのパーキンソン病の主な臨床徴候にも関わらず、患者のクオリティオブライフに明らかに影響を及ぼすのはパーキンソン病の早期非
運動症状である。Karaban I.N. Non-motor symptoms in the clinical picture of Parkinson's disease / I.N. Karaban., O.V. Shalenko, S.A. Krizhanovsky // International Neurological Journal. - 2017. - No.1(87). - P. - 58-63。非運動症状の中で主な不快感は、胃の運動障害、便秘、および肛門直腸不全を含
む胃腸(GI)不全によって引き起こされる。胃不全麻痺に進行する胃排出遅延は、PDの患者の最大100%で報告され、患者のクオリティオブライフに対する深刻な結果となる疾患の全ての段階で生じる[Gastric motor dysfunctions in Parkinson's disease: Current pre-clinical evidence / C. Pellegrini [et al.]. // Parkinsonism Relat Disord.- 2015. - Vol. 21(12). - P.1407-14]。糞便の含水量は
、食餌摂取にではなく消化機能に依存し、これは正確に反映するものである。腸蠕動および吸水度は関連しており、さらに吸水量と腸血液循環が関連している。全ての場合において、糞便の水分過剰は、結腸粘膜の刺激の最初の徴候の1つである。Jensen R, et al. Clin Chem. 1976 ;22(8):135。
【0418】
この研究では、偽手術された(SO)群のラットにおける糞便の含水量の増加を、無傷動物と比較して記録した。これらの障害は経時的に安定しており、手術から28日後であっても有意であった(
図57)。パーキンソニズムのLPSラットモデルでは、偽手術された動物と比較して著しく少ない糞便含水量が、手術から8日後に観察された。しかしながら、実験の28日目までに、LPSラットモデルで糞便の含水量の増加傾向が観察されたことに留意すべきである(
図57)。この事実は、病像、即ちパーキンソン病のGI不全に対するこのモデルの関連性を確認する。
【0419】
この研究で、パーキンソニズムを誘発させるよう動物にLPSを注射した後10日間にわたり、
64Zn-aspを投与すると(
図58)、その糞便の含水量にはいかなる有意な変化も生じなかった。
【0420】
オープンフィールド試験でのパーキンソン病のLPSラットモデルにおける行動応答に対する64Zn-aspの効果
【0421】
CNSの機能に対する
64Zn-aspの効果を評価するため、一般に許容されるオープンフィールド試験を使用した。この試験でのラットの行動反応の観察は、動物の運動活性および探査活性、向きの応答、ならびに情動反応性に対する試験物質の影響の程度を決定することを可能にする。試験結果を表3および
図59A~
図59Eに示す。
【0422】
【0423】
オープンフィールド試験の結果は、SO群(II群)からの動物の行動パラメーターに、無傷対照(I群)からの動物の場合と著しく異なるものはないことを示した。
【0424】
有意群、即ちII群(SO)ならびにIII群(SO+64Zn-asp)およびIV群(LPS)間の比較を行うのに使用したKruskal-Wallis検定は、下記を明らかにした:
- 動物によりカバーされた総距離の僅かな減少(P=0.0505);
- 外周で費やされた時間の増加および内周で費やされた時間の減少(P=0.0020)であり、II群(SO)とIII群(SO+64Zn-asp)との間に有意差がある(Dunnの多重比較検定P=0.0193);
- 群ごとの後ろ足で立つ全回数の低減(P=0.0160)であり、II群(SO)とIII群(SO+64Zn-asp)との間に有意差がある(Dunnの多重比較検定P=0.0053)。
【0425】
さらに、オープンフィールド試験における行動パラメーターに対する64Zn-aspの影響を分析するため、有意群、即ちIV群(LPS)およびV群(LPS+64Zn-asp)間で比較を行い、下記を示した:試験物質の投与は、移動した総距離(Kruskal-Wallis検定 - P値=0.7031)、外周(左のチャート)および内周(右のチャート)で費やされた時間(Kruskal-Wallis検定 - P値=0.2319)、後ろ足で立つ全回数(Kruskal-Wallis検定 - P値=0.7001);毛繕いの回数(Kruskal-Wallis検定 - P値=0.3022)。
【0426】
64Zn-aspで処置したPDのLPSラットモデルの排便の頻度は、超軽水を注射したPDのLPSラットモデルと比較して増加したことに、留意すべきである(Dunnの多重比較P=0.0030)。
【0427】
高架式十字迷路でのパーキンソン病のLPSラットモデルにおける行動応答に対する64Zn-aspの影響
【0428】
高架式十字迷路を使用して、実験動物におけるCNSの機能に対する
64Zn-aspの影響を分析した。この試験は、行動応答を観察することにより、ラットの不安レベルに対する試験物質の影響の程度を評価するのを可能にした。試験結果を、表4および
図60A~
図60Dに提示する。
【0429】
【0430】
高架式十字迷路の結果は、SO群(II群)からの動物の行動パラメーターに、無傷対照(I群)からの動物の場合と著しく異なるものはないことを示した。
【0431】
有意群、即ちII群(SO)ならびにIII群(SO+64Zn-asp)およびIV群(LPS)間を比較するのに使用したKruskal-Wallis検定およびANOVA検定は、分析されたパラメーターのいずれかにおいて著しい変化がないことを明らかにした。しかしながら、定量データ(表4)は、IV群(LPS)での移動した総距離、オープンアームで費やされた時間、および進入回数が、II群(SO)と比較したときにそれぞれ1.3分の1、1.4分の1、および1.6分の1に低減したことを示す。
【0432】
高架式十字迷路でのラットの行動パラメーターに対する64Zn-aspの影響をさらに分析するため、有意群、即ちIV群(LPS)とV群(LPS+64Zn-asp)との間で比較を行い、試験物質の投与は実験動物の行動パラメーターにいかなる影響も及ぼさなかったことが明らかにされた。定量データ(表4)は、64Zn-aspが、V群での移動した総距離および進入回数を、IV群(LPS)と比較したときにそれぞれ1.2および1.3倍増大させたことを示す。
【0433】
ピックアップ試験におけるパーキンソン病のLPSラットモデルの行動応答に対する64Zn-aspの影響
【0434】
ピックアップ試験は、易刺激性の増大に関する試験である。動物を、その体の周りを掴むことによってピックアップした。応答を、1から6までスコアを付けた。試験結果を
図61に提示する。
【0435】
ピックアップ試験の結果は、SO群(II群)からの動物の行動パラメーターには、無傷対照(I群)からの動物の場合と著しく異なるものがないことを示した。
【0436】
有意群、即ちII群(SO)ならびにIII群(SO+
64Zn-asp)およびIV群(LPS)間を比較するのに使用したKruskal-Wallis検定およびANOVA検定は、動物の行動応答の著しい変化がないことを明らかにした。
図61。
【0437】
ピックアップ試験で観察された行動パラメーターに対する64Zn-aspの影響をさらに分析するため、比較を有意群、即ちIV群(LPS)およびV群(LPS+64Zn-asp)間で行い、IV群(LPS)と比較して、V群(LPS+64Zn-asp)での刺激の統計的に有意な上昇が明らかにされた(Dunnの多重比較検定P=0.0136)。
【0438】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける血球カウント値に対する64Zn-aspの治療効果
【0439】
パーキンソン病は、現在、全身性メタ炎症を伴う疾患と見なされる。全身性炎症の原因には、周辺への炎症誘発性脳メディエーターの排出による血液脳関門の妨害、グリンファティック系を経た炎症メディエーターのトランスポート、ならびに胃腸不全(消化性潰瘍、損なわれた腸運動性など)およびジスバイオシスを含む、神経変性を伴う周辺障害が含まれる。Grozdanov V, et al. Acta Neuropathol. 2014 Nov;128(5):651-63. doi: 10.1007/s00401-014-1345-4;Akil E, et al., Neurol Sci. 2015 Mar;36(3):423-8. doi: 10.1007/s10072-014-1976-1。血球カウントの分析は、実験の終了後、即ち試験物質による処置の終わりから10日後に実施されたことに留意すべきである。
【0440】
パーキンソン病のLPS動物モデルからの血液試料の分析は、無傷のおよび偽手術された動物と比較して、これらラットでの循環白血球の絶対数に統計的に有意な変化がないことを示した(
図62)。
【0441】
試験物質の治療的投与は、このヘモグラムパラメーターに影響を及ぼさなかった。主な集団における白血球の絶対数の分析は、僅かに異なる像を示した(
図63)。偽手術は、軽度の単球増加症を伴った。亜鉛調製物の投与は、この炎症現象を消失させた。
【0442】
パーキンソニズムの誘発は、好中球のリンパ球に対する比が増大する、好中球増加を伴ったが、これは、特発性パーキンソニズムをもたらす血球カウントの典型的な特徴であり、疾患進行の早期マーカーの1つであり、およびその重症度に関する重要な予後基準である。Wijeyekoon RS, et al., Front Neurol. 2018;9:870. doi: 10.3389/fneur.2018.00870。亜鉛調製物の治療的投与は、制御性細胞に関わる炎症の消散の基準である、主にリンパ球レベルの増大に起因した、好中球のリンパ球に対する比の正常化に関連付けられた。
【0443】
いくらか異なる像が、様々な集団の白血球の相対数の分析で得られた(
図66)。
【0444】
偽手術は、単球の相対数の増加を引き起こしたが、これは、手術に応答した全身性炎症の存在を確認するものである。試験物質の使用は、単球増加症を消失させた。好中球のリンパ球に対する比の増大に加え、パーキンソニズムの発症は単球増加症も伴ったが、その事実は、主な集団の白血球の相対数の分析の結果によって実証される。試験物質の治療的投与は、末梢性炎症を低減させた。
【0445】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおけるミクログリアの機能および表現型特性に対する64Zn-aspの治療効果
【0446】
ミクログリアの食細胞活動は、その活性化状態の指標であり、その任意の変化は、他の機能的および表現型特徴の変化の文脈で見るべきである。この研究の結果は、偽手術された動物における食細胞性ミクログリア細胞の数およびそれらのエンドサイトーシス活性が、無傷動物におけるよりも著しく高かったことを示し、これは、この群の動物の満足のいく生理的状態を考慮すると、外科的介入後の修復炎症プロセスの活性化の徴候と見なされるべきである(
図65Aおよび
図65B)。偽手術された動物への亜鉛調製物の投与は、食細胞性ミクログリアの相対数の減少とそれらのエンドサイトーシス(食作用)活性の低下とを伴い、これは抗炎症効果があることを示している。PDの進行は、ミクログリアの食細胞活動の低下を伴ったが、これは、疾患の症候が出現していることを考慮すると、脳内の組織常在マクロファージのスカベンジャーまたは恒常性の巡視機能の抑制の徴候と見なすことができる。亜鉛調製物の治療的投与は、PDのLPS動物モデルにおけるミクログリアのこの機能的指標に対し、種々の効果を有した。本発明者らは、亜鉛が与えられた動物のミクログリアの食細胞活動の急激な増大を観察し、この群の動物の生理的状態を考慮すると、脳内の修復プロセスの活性化の徴候と見なすことができる。
【0447】
ミクログリアの酸化的代謝のこの研究の結果は、これらの細胞の食細胞活動に関するデータによって裏付けられる(
図66)。無傷動物のミクログリアは。in vitro刺激に対する顕著な応答がないことにより特徴付けられたが、これは、代謝的に保守的な食細胞、即ち常在単核食細胞の、休止状態を示す。
【0448】
偽手術された動物の酸化的代謝は、実験時に強化されたが、これは、永続的な修復炎症プロセスに関する本発明者らの仮定を確認するものである。そのようなプロセスに関する追加の基準は、in vitro PMA処置に対する統計的に有意な正の応答によって証明されるように、この群の動物におけるミクログリアでの機能的保存の存在である。機能的保存の存在は、分析された集団での、動員された循環単核食細胞の存在の徴候と見なすことができる。
【0449】
偽手術された動物への亜鉛調製物の投与は、ミクログリアの酸化的代謝の低下を伴っており、その抗炎症性作用に関する本発明者らの結論を確認するものである。PDの動物モデルにおける酸化的代謝は、偽手術された動物の場合と比較して急激に低減した。動物の生理的状態およびこの群のラットが手術も受ける事実を考慮すると、反応性酸素種の活性化された発生の欠如は、ミクログリアの機能的欠如の徴候と見なすことができる。試験物質の投与は、僅かにしかし統計的に有意に、ミクログリアの酸化的代謝を増大させており、この調製物が修復プロセスを活性化するという本発明者らの早期の示唆を裏付けるものである。
【0450】
ミクログリアの表現型プロファイルの分析の結果を、
図67Aおよび
図67Bに提示する。
【0451】
表現型プロファイルを特徴付けるため、下記のマーカーを選択した:CD206(スカベンジャー受容体、脳外局在化の食細胞の代替極性化のマーカー、および活性化常在ミクログリアのマーカーでもある(先のプロジェクトの報告参照)およびCD80/86(抗原提示のプロセスに関わる共刺激性分子であり、これは脳外局在化の食細胞の炎症誘発性活性化のマーカーであり、ミエロイド由来の抑制細胞、先天的および適応的免疫性の炎症誘発性反応の負のレギュレーターによって過発現したものでもある)。この研究の結果によれば、全ての分析されたマーカーの発現は、偽手術された動物で増大したが、これは、ミクログリアの活性化状態を示すものである。亜鉛調製物の投与は、研究中の全ての表現
型マーカーの発現の減少を伴った。しかしながら、この群の動物でのCD206+およびCD80+細胞の数は、急激に増大した。明らかに、これは高められた修復プロセスのマーカーでもある。ミクログリアは卵黄嚢に由来し、ミクログリアプールは胚発生の早期において脳に定着する。常在食細胞のこの独自の集団は、自己治癒(幹組織要素の増殖および分化)によりそれらの数を維持し、未成熟の骨髄前駆体を循環から動員する必要がない。任意の表現型マーカーの増大した発現は、細胞分化プロセスの徴候であり、CD206+およびCD80+画分の増大は、未成熟の常在組織要素の分化の結果として生じたという結論を可能にする。
【0452】
PDのLPSラットモデルの表現型プロファイルは、6-OHDA誘発性疾患のラットの場合とは異なった。PDのLPS動物モデルにおけるミクログリアは、研究されたマーカーの全ての、有意に低減した(偽手術された動物と比較して)発現レベルを特徴としたが、これは、長期炎症プロセスにより引き起こされたこれら細胞の機能的欠如に関する本発明者らの仮定を確認するものである。しかしながら、CD206+細胞の画分は非常に大きく、任意の治癒、修復炎症を示し得る(全ての食細胞免疫反応性指標の分析は、実験の終わり、即ち疾患の誘発から28日後に実施されたことに留意すべきである)。亜鉛調製物の投与は、ミクログリアによる食作用の代替の(抗炎症性、修復)活性化のマーカーであるCD206の増大した発現、およびCD86、ミエロイド由来の抑制細胞に固有のマーカーの発現の著しい増大を伴った。亜鉛調製物は、制御性炎症細胞の分化および/または動員を促進させると仮定することができる。しかしながら、示唆される仮定は、研究プロトコールによれば本発明者らはミエロイド由来の抑制細胞を表現型により分化させることができなかったので、追加の実験確認を必要とする。
【0453】
したがって、LPSで誘発されたパーキンソン病の発症は、十中八九、長期局所炎症プロセスにより引き起こされたミクログリアの機能的欠如を伴う。正の治療効果を伴う亜鉛調製物の使用は、その食細胞機能の有意な活性化が修復プロセスに関わるミクログリアの代謝活性の増大に関連付けられており、これは、試験物質の修復恒常性効果を示し得るものである。
【0454】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける循環食細胞の機能および表現型特性に対する64Zn-aspの治療効果
【0455】
上述のように、PDの発症は、神経炎症プロセスの永続性を増大させ維持する全身性炎症の形成を伴う。この状況は、全身性炎症プロセスのエフェクター細胞を、常在脳内炎症エフェクターよりも、PDに関する抗炎症治療のそれほど魅力のない標的にする。これは、循環食細胞の機能的および表現型特性を分析するための理由の1つであった。分析に関する別の理由は、亜鉛調製物が静脈内投与され、これにより、循環食細胞が応答細胞の最前線になるという事実であった。上述のように、血球カウントの結果は、有意な好中球増加および好中球-リンパ球の比の増大、全身性炎症応答の有効な指標を持つ、PDのLPS動物モデルにおける全身性炎症プロセスの存在を示した。循環食細胞の機能的および表現型特性の分析は、これらの観察内容を確認した(
図68Aおよび
図68B)。偽手術を受けた動物の末梢血中の食細胞の数は、無傷動物の場合を超え、これはおそらくは、炎症修復プロセスに関連した造血の活性化を示している。亜鉛は、このパラメーターに対していかなる効果も有しなかった。
【0456】
偽手術を受けた動物の末梢血中の単球および顆粒球の食細胞活動は、無傷ラットの場合と著しく異ならなかった。試験物質の投与は、このパラメーターに対していかなる効果も有しなかった。偽手術を受けた動物の循環食細胞の酸化的代謝は、無傷動物の場合と比較して著しく低減した(
図69Aおよび
図69B)。
【0457】
亜鉛調製物は、このパラメーターに対していかなる有意な効果も有しなかった。一般に、この群の動物の循環食細胞の代謝プロファイルは、抗炎症特徴を有しており(外科的介入後の永続的修復プロセスの証拠となり得る)、試験物質投与により著しい影響を受けなかったと結論付けることができる。
【0458】
PDの動物モデルの血液中の食細胞のレベルは、偽手術されたラットの場合よりも低かった。修復の活性化を必要とする外科手技を考慮すると、これらの動物から得られた結果は、疾患の進行によって引き起こされた造血(骨髄造血)の欠乏/阻害を示し得る。亜鉛治療は、循環単球の相対数の僅かな減少を伴い、前述の顆粒球指数に対するいかなる影響ももたらさなかった。
【0459】
PDのラットモデルにおける循環単球および顆粒球の食細胞活動は、偽手術されたおよび無傷のラットの場合と比較して、著しく低かった。同時に、これらの細胞の酸化的代謝の値は、対照群の場合を著しく超えた。これは細胞の炎症誘発性代謝シフトの証拠であり、全身性炎症プロセスのマーカーである。亜鉛調製物で処置したPDの動物モデルの両方の集団の循環食細胞は、急激に低減した酸化的代謝を特徴とし、これは試験物質によって示される全身調節効果の抗炎症特徴を示すものである。亜鉛調製物は、循環食細胞の酸化的代謝の機能的保存を修復する能力を有することに、留意すべきである。
【0460】
全ての群の動物における循環食細胞による表現型マーカーの発現の分析は、下記を明らかにした(
図70Aおよび
図70B)。CD206(脳外食細胞の代替の抗炎症極性化のマーカー)の発現は、無傷ラットと比較すると偽手術した動物において著しく高かった。陽性細胞の数は、健康な動物の場合と異ならなかった。明らかにされた現象は、外科的介入後のこれら動物における炎症プロセスの修復性に関する上述の仮定を裏付ける。共刺激分子CD80/86(脳外食細胞の古典的な炎症誘発性極性化のマーカーである)の発現レベルも、偽手術した動物で増大した。この群の動物の生理的状態と、最近の文献に記述されるおよび上述の[Wang W, et al. Eur J Immunol. 2015;45(2):464-73. doi: 10.1002/eji.201444799]ミエロイド由来抑制細胞(全身性炎症プロセスを示す動物の循環血液中に見い出される)の集団のマーカーの事実とを考慮して、これらマーカーの発現および循環食細胞の集団における陽性細胞の数の増大は、これら動物における修復プロセスの活性化により引き起こされたミエロイド由来抑制食細胞の数の増大に起因し得ると仮定することができる。亜鉛調製物で処置した、偽手術された動物は、無傷動物により示されたレベル(およびこのレベルのさらに下)までのこれらマーカーの発現の減少を示し、これは試験物質の作用の下、血液食細胞の表現型プロファイルの恒常的修復を示し得るものである。PDの動物モデルでの3つ全ての分析済み表現型マーカーの発現レベルは、偽手術された動物の場合よりも著しく低く、このことは、この群の動物の生理的状態を考慮すれば、まず、これら細胞の機能的欠如を示すものである。亜鉛調製物の投与は、3つ全てのマーカーの発現レベルの増大を促進させており、これは、PDの動物モデルの循環食細胞の抗炎症機能シフトを示唆するものである。
【0461】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおける腹腔食細胞の機能的および表現型特性に対する64Zn-aspの治療効果
【0462】
MALT(粘膜関連リンパ組織)免疫細胞の部分である、腹腔食細胞の表現型および機能的プロファイルの分析は、全実験群の動物でそれらの変動を明らかにしており、これは、神経変性病状の発症および基礎をなす炎症プロセスの全般的性質におけるこの免疫系区分の関与を示すものである。
【0463】
腹腔マクロファージの食細胞活動および偽手術された動物の腹腔滲出液中の食細胞の相対数は、無傷ラットの場合よりも高く、これは全般的炎症プロセスにおける粘膜免疫系の
関与と見なされるべきである(
図71Aおよび
図71B)。亜鉛調製物の投与は、前述の値を無傷動物のレベルまで低減させており、これはその免疫調節効果の恒常的性質を示すものである。PDの動物モデルにおける腹腔マクロファージの食細胞活動の値は、無傷ラットのレベルにあり、および偽手術された動物の場合よりも著しく低かった。この群の動物の生理的状態を考慮すれば、本発明者らは、修復特性の全身性炎症プロセスが存在しないと仮定することができる。試験物質の投与は、腹腔浸出液細胞の食細胞活動の活性化に寄与しており、これは、全身性炎症修復プロセスの開始に起因すると考えることができるものである。
【0464】
偽手術されたラットにおける腹腔マクロファージの酸化的代謝は、無傷動物の場合よりも著しく高く、これは粘膜食細胞が全般的修復炎症プロセスに関与するという仮定を確認するものである(
図72)。亜鉛調製物の投与は、腹腔食細胞による反応性酸素種の生成を低減させており、これはそれらの免疫調節効果の抗炎症特性を示すものである。
【0465】
PDの動物モデルにおける腹腔食細胞の酸化的代謝は、偽手術された動物の場合よりも著しく低かった。亜鉛調製物の投与は、腹腔滲出液細胞の酸化的代謝の減少を伴っており、これは試験物質により生成された作用の抗炎症性を示すものである。
【0466】
腹腔食細胞の表現型プロファイルの分析は、循環細胞に関して記録されたものとは部分的に異なる、実験動物の群で研究されたマーカーの発現の多様な変化を明らかにした。これはおそらくは、腹膜腔の食細胞(胚性由来)および末梢血食細胞(骨髄由来)の異なる由来に起因する可能性がある。偽手術を受けた動物の腹腔マクロファージにおける3つ全ての研究されたマーカーの発現レベルは、無傷ラットの場合と僅かに異なるだけであった(
図73Aおよび
図73B)。亜鉛調製物の投与は、全ての表現型マーカーの発現に急激な増大を引き起こした。
【0467】
類似の状況が、PDの動物モデルにおける腹腔マクロファージの表現型プロファイルの比較分析で観察された。パーキンソン病ラットで研究された全ての表現型マーカーの発現レベルは、対照動物の場合と僅かに異なるだけであった。亜鉛調製物の投与は、全てのマーカーの発現の著しい増大を引き起こした。その他の局在化の食細胞の表現型パラメーターと比較された、試験物質で処置した動物の臨床スコアの文脈において、本発明者らは、全身性炎症応答に関わるMALT食細胞の抗炎症特性の代謝の活性化について主張することができる。
【0468】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおけるアストロサイトでのニューロン一酸化窒素シンターゼ発現に対する64Zn-aspの治療効果
【0469】
この酵素の最も高い活性は、小脳ニューロンおよびアストロサイトに見い出される。その活性のさらに低いレベルは、視床下部、中脳、線条体、皮質、海馬、および延髄で観察される。神経組織において、この酵素は、ニューロンの振動活性、侵害受容などを制御する神経伝達物質の機能を主に発揮する。脳の血管緊張および神経組織における栄養メカニズムを制御する際のその役割は、極めて重要である。本発明者らの研究の結果は、偽手術を行うことおよびLPS誘発型PDの発症が、アストロサイトにおける一酸化窒素シンターゼ酵素の発現レベルの僅かな低下を伴ったことを示す(
図74)。亜鉛調製物の投与は、その発現の増大を引き起こしたが、これはニューロンシグナル伝達に対する試験物質の正の効果を示すものであり、その障害は、神経変性プロセスの特徴である。
【0470】
知見
【0471】
パーキンソニズムのLPSラットモデルにおいて、1回目と2回目のアポモルフィン試
験の間での平均回転数に著しい変化はない。しかしながら、絶対回転数の増加は、ラットの66.6%で観察され、回転数の減少は、ラットの33.3%で観察された。免疫組織化学的研究は、偽手術した動物と比較して、LPSラットモデルの中脳におけるTH陽性ニューロンの数が3分の1に減少したことを示した。
【0472】
パーキンソニズムを誘発させるように動物にLPSを与えてから9日目に開始した64Zn-aspの投与は、1回目と2回目のアポモルフィン試験間で30分当たりの平均回転数に著しい変化を引き起こさなかったが、1回目と2回目のアポモルフィン試験間でより小さい絶対回転数をもたらした動物の数は、85.7%増加した。これは、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの変性プロセスの強度を防止する際の、64Zn-aspの有意な効力を示し、中脳でのTH陽性ニューロンの数の著しい増加を示す免疫組織化学データにより確認されるものである。
【0473】
LPS誘発型パーキンソニズムの進行は、無傷および偽手術された動物と比較して、LPS動物モデルでの体重の著しい(最大30%)損失に関連付けられる。64Zn-aspの投与は、LPS動物モデルの体重の統計的に有意な増加をもたらした。
【0474】
パーキンソニズムを誘発させるよう動物にLPSを与えてから10日間にわたる64Zn-aspの投与は、LPSラットモデルの糞便の含水量のいかなる有意な変化も引き起こさなかった。
【0475】
研究の部分として実行された行動試験は、試験物質が、実験動物の自発運動活性、不安、または易刺激性のレベルに著しい影響を及ぼさなかったことを示した。
【0476】
LPS誘発型パーキンソン病の進行は、長期化した局所炎症プロセスにより引き起こされたミクログリアの食細胞の機能的欠如を伴う。正の治療効果を伴う亜鉛調製物の使用は、ミクログリアの代謝活性の増大に関連付けられ、その食細胞機能の有意な活性化は修復プロセスに関与しており、これは試験物質の修復の恒常的効果を示し得るものである。
【0477】
LPS誘発型パーキンソニズムの進行は、好中球-リンパ球の比の増大と組み合わせて単球増加症により証明されるように、顕著な周辺炎症を伴う。亜鉛調製物の治療的投与は、全身性炎症応答を低減させる。
【0478】
循環食細胞の表現型および代謝特徴は、それらの機能的活性における炎症誘発性シフトと同時に、長期にわたる全身性炎症プロセスにより引き起こされたそれらの機能的欠如を示す。亜鉛調製物の投与は、それらの代謝における抗炎症性シフトと共に循環食細胞の機能的修復を伴う。
【0479】
LPS誘発性パーキンソニズムの進行は、その炎症誘発性活性化と共に全般的炎症プロセスでのMALT免疫細胞の関与を伴う。亜鉛調製物の投与は、その炎症誘発性代謝シフトと共にこれらの細胞における代謝の恒常的変化を誘発させる。
【0480】
LPS誘発性パーキンソニズムの進行は、ニューロン一酸化窒素シンターゼ発現のレベルの低減を伴う。亜鉛調製物での処置の過程は、この神経伝達物質の恒常性を修復させる。
【0481】
結論
【0482】
この研究の結果は、PD進行が、黒質での生存可能な(チロシンヒドロキシラーゼを発現)ドーパミンニューロンの数の3分の1の減少を伴う、ミクログリアでの炎症プロセス
の活性化によって引き起こされ得ることを示す。この炎症プロセスは全身に拡がり、血液およびMALTのような免疫系の脳外区分をカバーする。免疫反応性パラメーターの研究が、試験物質による処置過程の終わりに実施された事実を考慮して、本発明者らは、長期化した炎症プロセスの後に動物でそれらを評価した。亜鉛調製物の治療的投与(非常に大きな、PD進行の記録の事実の後)は、黒質における生存可能なドーパミンニューロンの数の統計的に有意な増加をもたらしており、これは、実験的PDモデルを使用して研究された薬物の治療効力の最も有効な指標である。亜鉛調製物の顕著な治療効果は、様々な局在化の免疫細胞の正(抗炎症性)の変化を伴っており、これはPD進行を伴う局所(脳内)および全身性炎症プロセスに対する、全身投与された試験物質の正の効果を示すものである。粘膜免疫細胞に対する試験物質の効果を考慮すれば、本発明者らは、同様に、腸内細菌叢に対するその効果も、直接的な効果(微量元素の恒常性に大きく依存する、細菌叢での代謝に影響を及ぼすことによって)および媒介された効果(好気性および嫌気性条件の比に影響を及ぼすことによって)のいずれも排除することはできない。腸内細菌叢に影響を及ぼす試験物質の能力は、神経変性疾患の処置におけるその効力に関して重要なメカニズムであり得、これは腸-脳軸障害に密接に関連するものである。さらに本発明者らは、炎症性腸疾患の処置におけるこの調製物の効力を排除することができず、その普及率の増大は、有効な多重標的治療剤の探索を現実化する。
【0483】
本発明について、その詳細な記述と併せて述べてきたが、前述の記述は本発明を例示するものであり本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は添付される特許請求の範囲により定められることを理解されたい。その他の態様、利点、および修正例は、添付される特許請求の範囲内にある。したがって、本発明のある特定の特徴のみが例示され記述されてきたが、多くの修正および変更が、当業者なら思い浮かべるであろう。したがって、添付される特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に包含されるとしてそのような修正および変更の全てをカバーするものとすることを理解されたい。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
神経変性疾患を処置する、予防する、または神経変性疾患の進行を遅延させる方法であって、下式:
【化15】
(式中、R
1からR
14までのそれぞれは独立して、H、OH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、およびNO
2から選択され、前記
85Rb
eが少なくとも75%の
85Rbである)
の
85Rb
e化合物、および塩、
ならびに/または
64Zn
eの化合物もしくは錯体
を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記
85Rb
eが少なくとも90%の
85Rbであり、および/または前記
64Zn
eが少なくとも90%の
64Znである、項目1に記載の方法。
(項目3)
R
1、R
2、R
4~R
6、R
8、R
10、R
11、およびR
13が全てHである、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
R
3が、H、CH
3、OCH
3、およびNO
2から選択され、R
7およびR
9がそれぞれ独立して、HおよびOCH
3から選択され、R
12およびR
14がそれぞれ独立して、H、Br、I、およびNO
2から選択される、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
a)R
3がCH
3であり、そしてR
7、R
9、R
12、およびR
14が全てHである、
b)R
3、R
7、R
9、R
12、およびR
14が全てHである、
c)R
3がCH
3であり、R
14がClであり、そしてR
7、R
9、およびR
12が全てHである、
d)R
3がCH
3であり、R
14がOHであり、そしてR
7、R
9、およびR
12が全てHである、
e)R
14がOHであり、そしてR
3、R
7、R
9、およびR
12が全てHである、
f)R
3がOHであり、そしてR
7、R
9、R
12、およびR
14が全てHである、
g)R
14がNO
2であり、そしてR
3、R
7、R
9、およびR
12が全てHである、
h)R
12がBrであり、R
14がNO
2であり、そしてR
3、R
7、およびR
9が全てHである、
i)R
3およびR
9が共にOCH
3であり、R
12がBrであり、R
14がNO
2であり、そしてR
7がHである、または
j)R
3およびR
9が共にOCH
3であり、R
14がNO
2であり、そしてR
7およびR
12が共にHである、
項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記組成物が、少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
R
3がCH
3であり、そしてR
7、R
9、R
12、およびR
14が全てHである、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記神経変性障害がパーキンソン病である、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記組成物が、前記対象に静脈内投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記組成物が、前記対象に腹腔内投与される、項目1から8のいずれかに記載の方法。(項目11)
前記組成物が、前記対象に経口投与される、項目1から8のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、神経変性障害を処置するための1つまたは1つよりも多くのその他の治療剤を含む製剤を投与することをさらに含む、項目1から11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記組成物を投与する前に、投与と同時に、または投与した後に、1つまたは1つよりも多くのその他の抗パーキンソン病剤を含む製剤を投与することをさらに含む、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記
64Zn
eの化合物または錯体が、亜鉛フィンガーペプチドの部分である、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記対象がヒト対象である、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記
85Rb
e化合物が、40mgの
85Rb
eから2400mgの
85Rb
eの間の量と等価な量で存在する、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記
64Zn
eの化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、0.1から1.5mgの純粋な
64Zn
eの範囲である
64Zn
e(金属による)範囲の用量と等価な量で存在する、先行項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記
64Zn
e(金属による)の化合物または錯体が、ヒト体重1kg当たり、1から15mgの純粋な
64Zn
eの範囲である、項目1から16のいずれかに記載の方法。