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特開2024-38292電池監視装置、集積回路、及び、電池監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038292
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電池監視装置、集積回路、及び、電池監視システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240312BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240312BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240312BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240312BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240312BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240312BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/387
G01R31/389
G01R31/392
H02J7/02 H
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H02J7/10 N
H02J7/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001351
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020527293の分割
【原出願日】2019-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018122507
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松川 和生
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 良和
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
(72)【発明者】
【氏名】美作 岳志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 圭一
(57)【要約】
【課題】電池が充放電中であるかどうかによらず電池の交流インピーダンスを計測することができる電池監視装置を提供する。
【解決手段】電池監視装置100は、電池から負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置された第一参照抵抗103と、電池から第一参照抵抗103へ電流を流すためのトランジスタ104と、集積回路105とを備える。集積回路105は、第一参照抵抗103に流れる第一電流を計測する電流計測部112と、電池Bの電圧を計測する電圧計測部115と、計測された第一電流、及び、計測された第一電圧に基づいて電池の交流インピーダンスを計算する第一計算部118とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池から負荷に流れる電流の経路とは別の経路上に配置された抵抗と、前記電池から前記抵抗へ電流を流すためのトランジスタと、集積回路と、を備え、
前記集積回路は、
前記抵抗に流れる第一電流を計測する電流計測部と、
前記電池の第一電圧を計測する電圧計測部と、
計測された前記第一電流、及び、計測された前記第一電圧に基づいて前記電池の交流インピーダンスを計算する第一計算部と、を有する
電池監視装置。
【請求項2】
前記集積回路は、さらに、前記トランジスタの制御端子に制御信号を印加する信号印加部を備え、
前記信号印加部は、複数の周波数成分を有する前記制御信号を前記制御端子に印加する
請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記信号印加部は、前記制御信号の周波数および電圧値を変更可能である
請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記制御信号は、バースト波形を有する
請求項2または3に記載の電池監視装置。
【請求項5】
前記集積回路は、さらに、
正弦波である第一信号を生成する信号生成部と、
前記第一信号の位相を90度シフトすることにより第二信号を生成する位相シフト部と、を有する
請求項1~4のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項6】
前記第一計算部は、
生成された前記第一信号及び前記第二信号のそれぞれと計測された前記第一電流とを乗算することにより前記第一電流を複素電流である第二電流に変換し、
前記第二電流に基づいて前記交流インピーダンスを計算する
請求項5に記載の電池監視装置。
【請求項7】
前記第一計算部は、
生成された前記第一信号及び前記第二信号のそれぞれと計測された前記第一電圧とを乗算することにより前記第一電圧を複素電圧である第二電圧に変換し、
前記第二電圧に基づいて前記交流インピーダンスを計算する
請求項5または6に記載の電池監視装置。
【請求項8】
前記集積回路は、さらに、計算された前記交流インピーダンスを用いて前記電池のSOC(State of Charge)及びSOH(State of Health)の少なくとも一方を計算する第二計算部を有する
請求項1~7のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項9】
前記第一計算部は、さらに、前記電池を充電するときの充電電流、及び、前記電池を放電するときの放電電流の少なくとも一方を用いて低周波交流インピーダンスを計算するカルマンフィルタ部を有する
請求項1~8のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項10】
前記集積回路は、さらに、前記抵抗の温度を計測する第二温度計測部を有し、
前記第一計算部は、計測された前記抵抗の温度をさらに用いて前記交流インピーダンスを計算する
請求項1~9のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項11】
前記集積回路は、さらに、前記抵抗の温度を一定に制御する温度制御部を有する
請求項1~10のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項12】
前記第一計算部は、前記電池の充電中に前記交流インピーダンスを計算する
請求項1~11のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項13】
前記第一計算部は、前記電池の放電中に前記交流インピーダンスを計算する
請求項1~12のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項14】
前記第一計算部は、前記電池の充電及び放電の停止中に前記交流インピーダンスを計算する
請求項1~13のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項15】
前記電池は、組電池に含まれる複数の電池のうちの1つである
請求項1~14のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項16】
電池から負荷に流れる電流の経路とは別の経路上に配置された抵抗へ前記電池から電流を流すためのトランジスタの制御端子に制御信号を印加する信号印加部と、
前記抵抗に流れる第一電流を計測する電流計測部と、
前記電池の第一電圧を計測する電圧計測部と、
計測された前記第一電流、及び、計測された前記第一電圧に基づいて前記電池の交流インピーダンスを計算する第一計算部と、を有する
集積回路。
【請求項17】
前記電池は、組電池に含まれる複数の電池のうちの1つであり、
前記電圧計測部は、前記複数の電池のそれぞれの電圧を計測するための複数のAD(Analog to Digital)変換器を有し、
前記集積回路は、さらに、前記複数のAD変換器に共通の基準電圧を供給する基準バイアス生成部を有する
請求項16に記載の集積回路。
【請求項18】
前記電池は、組電池に含まれる複数の電池のうちの1つであり、
前記電圧計測部は、前記複数の電池のそれぞれの電圧を計測するための複数のAD変換器を有し、
前記集積回路は、さらに、前記複数のAD変換器の計測タイミングの同期をとるためのタイミング信号を前記複数のAD変換器のそれぞれに供給するタイミング信号生成部を有する
請求項16または17に記載の集積回路。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電池監視装置を複数備え、
複数の前記電池監視装置それぞれから前記交流インピーダンスを取得する統合制御部を備える
電池監視システム。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電池監視装置と、
前記電池監視装置と離れた場所に配置されたサーバ装置と、を備え、
前記サーバ装置は、前記電池監視装置から前記交流インピーダンスを取得する
電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の状態を監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HEV(Hybrid Electric Vehicle)、または、EV(Electric Vehicle)など、二次電池を電源として走行する自動車の開発が行われている。また、二次電池を安全に使用するためにバッテリーマネージメントシステム(BMS:Battery Management System)によって電池残量推定、及び、異常検知などを行う技術が知られている。このようなBMSとして、特許文献1には、電池の状態をリアルタイムに監視することができる電池監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5403437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電池が充放電中であるかどうかによらず電池の交流インピーダンスを計測することができる電池監視装置、集積回路、及び、電池監視システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る電池監視装置は、電池から負荷に流れる電流の経路とは別の経路上に配置された抵抗と、前記電池から前記抵抗へ電流を流すためのトランジスタと、集積回路と、を備え、前記集積回路は、前記抵抗に流れる第一電流を計測する電流計測部と、前記電池の第一電圧を計測する電圧計測部と、計測された前記第一電流、及び、計測された前記第一電圧に基づいて前記電池の交流インピーダンスを計算する第一計算部と、を有する。
【0006】
本開示の一態様に係る集積回路は、電池から負荷に流れる電流の経路とは別の経路上に配置された抵抗へ前記電池から電流を流すためのトランジスタの制御端子に制御信号を印加する信号印加部と、前記抵抗に流れる第一電流を計測する電流計測部と、前記電池の第一電圧を計測する電圧計測部と、計測された前記第一電流、及び、計測された前記第一電圧に基づいて前記電池の交流インピーダンスを計算する第一計算部と、を有する。
【0007】
本開示の一態様に係る電池監視システムは、前記電池監視装置を複数備え、複数の前記電池監視装置それぞれから前記交流インピーダンスを取得する統合制御部を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る電池監視システムは、前記電池監視装置と、前記電池監視装置と離れた場所に配置されたサーバ装置と、を備え、前記サーバ装置は、前記電池監視装置から前記交流インピーダンスを取得する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、電池が充放電中であるかどうかによらず電池の交流インピーダンスを計測することができる電池監視装置、集積回路、及び、電池監視システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る電池監視装置の機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、電池の等価回路を示す図である。
図3図3は、電池の交流インピーダンスの変化と電池の劣化との関係を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る電池監視装置の動作のフローチャートである。
図5図5は、制御信号の生成方法を説明するための図である。
図6図6は、第一計算部の具体的構成を示す図である。
図7図7は、変形例に係る制御信号の生成方法を説明するための第一図である。
図8図8は、変形例に係る制御信号の生成方法を説明するための第二図である。
図9図9は、バースト波形の生成方法を説明するための図である。
図10図10は、単一の電池を監視対象とする電池監視装置の機能構成を示すブロック図である。
図11図11は、実施の形態2に係る電池監視システムの機能構成を示すブロック図である。
図12図12は、実施の形態3に係る電池監視システムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る電池監視装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る電池監視装置の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示される電池監視装置100は、組電池101の状態を監視する装置である。組電池101は、複数の電池B0~B7(以下、電池B0~B7のうち任意の1つを電池Bと記載する)を含む。電池Bは、言い換えれば、電池セルである。電池Bは、具体的には、リチウムイオン電池であるが、ニッケル水素電池などその他の電池であってもよい。組電池101は、負荷102の電源として機能し、負荷102に電力を供給する。負荷102は、例えば、EVのモータであるが、特に限定されない。なお、負荷102に代えて、組電池101を充電するための充電装置が負荷102の位置に接続される場合もある。
【0015】
電池監視装置100は、具体的には、電池Bの交流インピーダンスを計算、及び、監視することができる。図2は、電池Bの等価回路を示す図である。
【0016】
図2に示されるように、電池Bは、抵抗R0、並列接続された抵抗R1及び容量素子C1、並列接続された抵抗R2及び容量素子C2・・・が直列接続された回路構成であると考えることができる。この回路構成における回路パラメータ(抵抗の抵抗値または容量素子の容量値)は、電池Bが劣化することにより変化する。つまり、電池Bの交流インピーダンスは、電池Bが劣化することにより変化する。図3は、電池Bの交流インピーダンスの変化と電池Bの劣化との関係を示す図である。図3は、Cole-Coleプロットと呼ばれる図であり、ナイキストプロットとも呼ばれる。
【0017】
電池Bの交流インピーダンスは、図3において実線で示される初期特性を有する。電池Bの電極性能が劣化すると、電池Bの交流インピーダンスは図3において破線で示される特性に変化する。また、電池Bの電解質性能が劣化すると、電池Bの交流インピーダンスは図3において一点鎖線で示される特性に変化する。
【0018】
このように、電池Bの劣化度と電池Bの交流インピーダンスとは関連性があり、電池監視装置100は、電池Bの交流インピーダンスを計算及び監視することで電池Bの劣化度を判定することができる。劣化度が判定されれば、劣化した電池Bの交換を促すメッセージを提示するなどの情報処理が可能となる。なお、電池Bの劣化度は、例えば、SOH(State of Health)と呼ばれるパラメータで表現される。
【0019】
上記図1に示されるように、電池監視装置100においては、組電池101から負荷102に流れる電流の経路P1(言い換えれば、第一経路)とは別の経路P2(言い換えれば、第二経路)上に配置された第一参照抵抗103を用いて交流インピーダンスを計測する。これにより、電池監視装置100は、電池Bが充放電中であるかどうかによらず電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。例えば、電池監視装置100は、電池Bの充電中に充電と並行して現在の電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。また、電池監視装置100は、電池Bの放電中に放電と並行して現在の電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。電池監視装置100は、電池の充電及び放電の停止中に、現在の電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。
【0020】
以下、このような電池監視装置100の具体的な構成について、上記図1を参照しながら説明する。電池監視装置100は、第一参照抵抗103と、トランジスタ104と、集積回路(電池監視回路)105と、負荷抵抗106と、温度センサ107と、ヒータ108とを備える。
【0021】
第一参照抵抗103は、組電池101から負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置された抵抗である。つまり、第一参照抵抗103は、負荷102に流れる電流が流れない抵抗である。第一参照抵抗103は、例えば、集積回路105の外部に設けられるディスクリート部品である。
【0022】
トランジスタ104は、組電池101から第一参照抵抗103へ電流を流すためのトランジスタである。トランジスタ104は、例えば、FET(Field Effect Transistor)であるが、バイポーラトランジスタであってもよい。トランジスタ104のドレインは、負荷抵抗106に接続され、トランジスタ104のソースは、第一参照抵抗103に接続され、トランジスタ104のゲート(つまり、制御端子)は、信号印加部109に接続される。
【0023】
集積回路105は、信号印加部109と、電流計測部112と、電圧計測部115と、基準バイアス生成部116と、タイミング信号生成部117と、第一計算部118と、第二計算部119と、第一温度計測部120と、第二温度計測部121と、第一温度制御部122と、負荷電流計測部123と、第三温度計測部127と、第二温度制御部129と、通信インターフェース部131とを備える。
【0024】
信号印加部109は、トランジスタ104の制御端子に制御信号を印加する。信号印加部109は、信号生成部110と、波形生成部111とを有する。
【0025】
電流計測部112は、第一参照抵抗103に流れる電流Iac(第一電流の一例)を計測する。電流計測部112は、具体的には、第一参照抵抗103の両端の電圧を計測する。第一計算部118は、第一参照抵抗103の抵抗値に基づいて第一参照抵抗103の両端の電圧を電流Iacとして認識することができる。
【0026】
電流計測部112は、具体的には、第一参照抵抗103の両端の電圧(つまり、アナログ信号)をデジタル信号に変換するAD(Analog to Digital)変換器113(図中ではADCと記載)と、AD変換器113の出力に接続されるフィルタ114とを有する。AD変換器113は、例えば、デルタシグマ型のAD変換器であり、フィルタ114は、デシメーションフィルタである。AD変換器113には、例えば、複数のAD変換器0~7と同一のAD変換特性を有する(つまり、製品として同一の)AD変換器が用いられる。これにより、AD変換器0~7とAD変換器113との間で生じる、AD変換に起因する計測誤差を低減することができる。
【0027】
電圧計測部115は、組電池101を構成する複数の電池B0~B7の電圧V0~V7(第一電圧の一例)を計測する。電圧計測部115は、複数の電池B0~B7の電圧V0~V7をデジタル信号に変換するAD変換器0~7と、AD変換器0~7の出力に接続されるフィルタ0~7とを有する。AD変換器0~7のそれぞれは、例えば、デルタシグマ型のAD変換器であり、フィルタ0~7のそれぞれは、デシメーションフィルタである。
【0028】
集積回路105においては、複数のAD変換器0~7は、同一のAD変換特性を有する。AD変換特性とは、分解能(ビット数)などの各種パラメータである。複数のAD変換器0~7には、具体的には、製品として同一のAD変換器が用いられる。これにより、電圧V0~V7の間で生じる、AD変換に起因する計測誤差を低減することができる。
【0029】
基準バイアス生成部116は、複数のAD変換器0~7、AD変換器113、及び、AD変換器125に共通の基準電圧を供給する。基準バイアス生成部116によれば、基準電圧のばらつきに起因するAD変換の誤差を低減することができる。
【0030】
タイミング信号生成部117は、複数のAD変換器0~7、AD変換器113、及び、AD変換器125の計測タイミングの同期をとるためのタイミング信号を複数のAD変換器0~7、AD変換器113、及び、AD変換器125のそれぞれに供給する。タイミング信号生成部117によれば、同じタイミングにおける電圧V0~V7、電流Iac、及び、電流Icdを計測することが可能となる。
【0031】
第一計算部118は、電流計測部112によって計測された電流Iac、及び、電圧計測部115によって計測された電圧V0~V7に基づいて電池B0~B7の交流インピーダンスを計算する。第一計算部118は、言い換えれば、交流インピーダンス計算部である。第一計算部118の具体的構成については後述する。
【0032】
第二計算部119は、第一計算部118によって計算された交流インピーダンスを用いて電池B0~B7のSOC(State of Charge)及びSOHの少なくとも一方を計算する。第二計算部119は、言い換えれば、SOC/SOH計算部である。
【0033】
第一温度計測部120は、複数の電池B0~B7に1対1で対応して設けられた温度センサS0~S7を用いて複数の電池B0~B7の温度Tcell0~Tcell7を計測する。温度センサS0~S7は、例えば、サーミスタを用いた温度センサであるが、熱電対などのその他の素子を用いた温度センサであってもよい。
【0034】
第二温度計測部121は、第一参照抵抗103の近傍に設けられた温度センサ107を用いて第一参照抵抗103の温度Tref1を計測する。温度センサ107は、例えば、サーミスタを用いた温度センサであるが熱電対などのその他の素子を用いた温度センサであってもよい。
【0035】
第一温度制御部122は、第一参照抵抗103の温度を一定に制御する。第一温度制御部122は、具体的には、第二温度計測部121によって計測された第一参照抵抗103の温度Tref1を取得し、取得した温度Tref1が一定になるようにヒータ108を制御する。
【0036】
負荷電流計測部123は、負荷102に流れる電流Icdを計測する。負荷電流計測部123は、具体的には、第二参照抵抗124の両端の電圧を計測する。第一計算部118は、第二参照抵抗124の抵抗値に基づいて第二参照抵抗124の両端の電圧を電流Icdとして認識することができる。
【0037】
負荷電流計測部123は、具体的には、第二参照抵抗124の両端の電圧(つまり、アナログ信号)をデジタル信号に変換するAD変換器125と、AD変換器125の出力に接続されるフィルタ126とを有する。AD変換器125は、例えば、デルタシグマ型のAD変換器であり、フィルタ126は、デシメーションフィルタである。AD変換器125には、例えば、複数のAD変換器0~7と同一のAD変換特性を有する(つまり、製品として同一の)AD変換器が用いられる。これにより、AD変換器0~7とAD変換器125との間で生じる、AD変換に起因する誤差を低減することができる。
【0038】
第三温度計測部127は、第二参照抵抗124の近傍に設けられた温度センサ128を用いて第二参照抵抗124の温度Tref2を計測する。温度センサ128は、例えば、サーミスタを用いた温度センサであるが熱電対などのその他の素子を用いた温度センサであってもよい。
【0039】
第二温度制御部129は、第二参照抵抗124の温度を一定に制御する。第二温度制御部129は、具体的には、第三温度計測部127によって計測された第二参照抵抗124の温度Tref2を取得し、取得した温度Tref2が一定になるようにヒータ130を制御する。
【0040】
通信インターフェース部131は、電池監視装置100が他の電池監視装置または外部装置と通信を行うための通信回路である。通信インターフェース部131は、例えば、第二計算部によって計算されたSOHなどを外部装置に送信するために用いられる。通信インターフェース部131によって行われる通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。通信インターフェース部131によって行われる通信の通信規格についても特に限定されない。
【0041】
[動作]
次に、電池監視装置100の動作について説明する。図4は、電池監視装置100の動作のフローチャートである。
【0042】
まず、信号印加部109は、トランジスタ104の制御端子に制御信号を印加する(S11)。この結果、トランジスタ104がオンし、第一参照抵抗103に電流が流れる。
【0043】
本動作において、信号印加部109は、複数の周波数成分を有する制御信号を生成する。図5は、制御信号の生成方法を説明するための図である。
【0044】
信号印加部109の信号生成部110は、例えば、周波数f1の正弦波、周波数f2の正弦波、及び、周波数f3の正弦波を生成し、合成して出力する。合成後の信号をフーリエ変換すると、周波数f1、周波数f2、及び、周波数f3の3つの周波数成分が現れる。
【0045】
信号生成部110から出力される信号はデジタル信号であり、出力されたデジタル信号は波形生成部111によってアナログ信号に変換される。つまり、波形生成部111は、例えば、DA(Digital to Analog)変換器である。
【0046】
このような制御信号によれば、第一参照抵抗103には、複数の周波数成分を含む電流が流れる。このため、第一計算部118は、複数の周波数のそれぞれにおける交流インピーダンスを計算することができる。
【0047】
次に、電流計測部112は、第一参照抵抗103に流れる電流Iacを計測する(S12)。電流計測部112は、具体的には、第一参照抵抗103の両端の電圧を計測する。第一参照抵抗103の両端の電圧は、AD変換器113によってデジタル信号に変換され、フィルタ114を介して第一計算部118に出力される。
【0048】
次に、電圧計測部115は、電池B0~B7の電圧V0~V7を計測する(S13)。電圧V0~V7は、AD変換器0~7によってデジタル信号に変換され、フィルタ0~7を介して第一計算部118に出力される。
【0049】
そして、第一計算部118は、計測された電流Iac、及び、計測された電圧V0~V7に基づいて電池B0~B7の交流インピーダンスを計算する(S14)。図6は、第一計算部118の具体的構成を示す図である。
【0050】
図6に示されるように、第一計算部118は、具体的には、位相シフト部118aと、変換部118bと、積分部118cと、インピーダンス計算部118dと、温度補正部118eと、カルマンフィルタ部118fとを有する。また、図6では、信号生成部110、及び、第二計算部119も図示されている。
【0051】
信号生成部110は、正弦波(第一信号の一例)を生成する。位相シフト部118aは、正弦波の位相を90度シフトすることにより余弦波(第二信号の一例)を生成する。位相シフト部118aは、例えば、遅延回路によって実現される。電池監視装置100では、信号印加部109に含まれる信号生成部110(つまり、制御信号を生成するための信号生成部110)を複素電流及び複素電圧を得るための正弦波を生成する信号生成部としても使用しているが、複素電圧を得るための正弦波は信号生成部110とは別の信号生成部によって生成されてもよい。
【0052】
変換部118bは、信号生成部110によって生成された正弦波及び位相シフト部118aによって生成された余弦波のそれぞれと電流Iacとを乗算することにより電流Iacを複素電流(第二電流の一例)に変換する。また、変換部118bは、信号生成部110によって生成された正弦波及び位相シフト部118aによって生成された余弦波のそれぞれと電圧V0~V7とを乗算することにより電圧V0~V7を複素電圧(第二電圧の一例)に変換する。変換部118bは、例えば、乗算回路によって実現される。
【0053】
積分部118cは、複素電流の平均化処理および複素電圧の平均化処理を行う。積分部118cは、例えば、積分回路によって実現される。
【0054】
インピーダンス計算部118dは、平均化処理後の複素電流及び平均化処理後の複素電圧に基づいて交流インピーダンス(図6では高周波インピーダンスと記載)を計算する。インピーダンス計算部118dは、平均化処理後の複素電圧を平均化処理後の複素電流で除算することにより交流インピーダンスを計算する。例えば、電池B0の交流インピーダンスとしては、インピーダンス実部Z0re、及び、インピーダンス虚部Z0imが出力される。インピーダンス計算部118dは、例えば、除算回路によって実現される。
【0055】
温度補正部118eは、第二温度計測部121によって計測される第一参照抵抗103の温度Tref1に基づいて交流インピーダンスを補正する。温度補正部118eは、例えば、温度Tref1の環境下における交流インピーダンスを基準温度環境下相当の交流インピーダンスに補正する。
【0056】
以上説明したように、電池監視装置100は、第一参照抵抗103が電池Bから負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置されているため、電池Bが充放電中であるかどうかによらず電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。なお、電池Bの交流インピーダンスは、例えば、定常的に計測されるが、定期的(つまり、断続的)に計測されてもよいし、外部装置(例えば、後述の統合制御部)からの指示に基づいて行われてもよい。
【0057】
[SOH及びSOCの計算]
第二計算部119は、第一計算部118によって計算された交流インピーダンスに基づいて電池B0~B7の等価回路の回路パラメータを推定することにより、電池B0~B7のSOHを計算する。回路パラメータの推定に基づくSOHの計算には、公知の各種計算方法が用いられる。
【0058】
SOHの計算(つまり、回路パラメータの推定)においては、交流インピーダンス(言い換えれば、高周波インピーダンス)に加えて、低周波インピーダンスが用いられてもよい。低周波インピーダンスは、第一計算部118によって計算された交流インピーダンスよりも低い周波数に対する交流インピーダンスである。これにより、低周波インピーダンスを考慮して回路パラメータの推定が行われるため、SOHの計算精度を向上することができる。
【0059】
低周波インピーダンスは、カルマンフィルタ部118fによって計算される。カルマンフィルタ部118fは、電池B0~B7を充電するときの充電電流、及び、電池B0~B7を放電するときの放電電流の少なくとも一方を用いて低周波交流インピーダンスを計算する。
【0060】
また、SOHの計算(つまり、回路パラメータの推定)においては、第一温度計測部120によって計測された複数の電池B0~B7の温度Tcell0~Tcell7が用いられてもよい。これにより、複数の電池B0~B7の温度Tcell0~Tcell7を考慮して回路パラメータの推定が行われるため、SOHの計算精度を向上することができる。
【0061】
また、第二計算部119は、第一計算部118によって計算された交流インピーダンスに基づいて電池B0~B7の等価回路の回路パラメータを推定することにより、電池B0~B7のSOCを計算することもできる。回路パラメータの推定に基づくSOCの計算には、公知の各種計算方法が用いられる。
【0062】
[制御信号の生成方法の変形例]
信号印加部109による複数の周波数成分を有する制御信号の生成方法は、図5のような方法に限定されない。図7は、変形例に係る制御信号の生成方法を説明するための第一図である。
【0063】
図7の例では、信号生成部110は、制御信号として矩形波を出力する。この場合の信号生成部110は、パルスジェネレータと同様の構成であり、制御信号の周波数および電圧値を変更可能である。矩形波をフーリエ変換すると、複数の周波数成分が現れる。
【0064】
信号生成部110から出力される信号はデジタル信号であり、出力されたデジタル信号は波形生成部111によってアナログ信号に変換される。なお、図7の例では、波形生成部111は省略されてもよい。
【0065】
また、図8は、変形例に係る制御信号の生成方法を説明するための第二図である。図8の例では、信号生成部110は、制御信号として正弦波を出力する。
【0066】
波形生成部111は、バースト波形生成部111aを有し、バースト波形生成部111aは、信号生成部110から出力される正弦波に基づいてバースト波形を有する制御信号を生成する。図9は、バースト波形の生成方法を説明するための図である。
【0067】
バースト波形は、時間領域の一部にのみ矩形波を含む波形である。図9に示されるように、バースト波形生成部111aは、例えば、正弦波が正の値となる第一期間及び矩形波が負の値となる第二期間のうち第一期間にのみ選択的に矩形波を出力する。つまり、バースト波形においては、矩形波が出力される第一期間と、矩形波が出力されない第二期間とが交互に現れる。この場合、制御信号は、第一期間において複数の周波数成分を有する。
【0068】
このようなバースト波形を有する制御信号によれば、矩形波が間欠的に出力されるため、消費電力が低減される。
【0069】
[電池の数の変形例]
組電池101は、8個の電池B0~B7を含むが、組電池101に含まれる電池の数は9個以上であってもよいし、7個以下であってもよい。また、電池監視装置100は、単一の電池Bを監視対象としてもよい。図10は、単一の電池B0を監視対象とする電池監視装置100cの機能構成を示すブロック図である。
【0070】
つまり、任意数の集積回路105と電池監視装置100で任意数の電池セルを測定する構成をスケーラブルに実施することができる。
【0071】
[効果等]
以上説明したように、電池監視装置100は、電池Bから負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置された第一参照抵抗103と、電池Bから第一参照抵抗103へ電流を流すためのトランジスタ104と、集積回路105とを備える。集積回路105は、トランジスタ104の制御端子に制御信号を印加する信号印加部109と、第一参照抵抗103に流れる第一電流を計測する電流計測部112と、電池Bの電圧を計測する電圧計測部115と、計測された第一電流、及び、計測された第一電圧に基づいて電池Bの交流インピーダンスを計算する第一計算部118とを有する。
【0072】
このような電池監視装置100は、第一参照抵抗103が電池Bから負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置されているため、電池Bが充放電中であるかどうかによらず電池Bの交流インピーダンスを計測することができる。
【0073】
また、信号印加部109は、複数の周波数成分を有する前記制御信号を前記制御端子に印加する。
【0074】
このような信号印加部109によれば、第一計算部118は、複数の周波数に対する交流インピーダンスを計算することができる。
【0075】
また、例えば、信号印加部109は、制御信号の周波数および電圧値を変更可能である。
【0076】
このような信号印加部109によれば、第一参照抵抗103に流れる電流を任意に調整することができる。
【0077】
また、例えば、制御信号は、バースト波形を有する。
【0078】
このようなバースト波形を有する制御信号によれば、矩形波が間欠的に出力されるため、消費電力が低減される。
【0079】
また、例えば、集積回路105は、正弦波である第一信号を生成する信号生成部110と、第一信号の位相を90度シフトすることにより第二信号を生成する位相シフト部118aとを有する。第一計算部118は、生成された第一信号及び第二信号のそれぞれと計測された第一電流とを乗算することにより第一電流を複素電流である第二電流に変換し、生成された第一信号及び第二信号のそれぞれと計測された第一電圧とを乗算することにより第一電圧を複素電圧である第二電圧に変換し、第二電流及び第二電圧に基づいて交流インピーダンスを計算する。
【0080】
このような電池監視装置100は、複素電圧及び複素電流に基づいて交流インピーダンスを計算することができる。
【0081】
また、例えば、第一計算部118は、第二電流の平均化処理および第二電圧の平均化処理を行い、平均化処理後の第二電流及び平均化処理後の第二電圧に基づいて交流インピーダンスを計算する。
【0082】
このような電池監視装置100は、平均化により交流インピーダンスの計算精度を向上することができる。
【0083】
また、例えば、集積回路105は、さらに、計算された交流インピーダンスを用いて電池BのSOC及びSOHの少なくとも一方を計算する第二計算部119を有する。
【0084】
このような電池監視装置100は、SOC及びSOHの少なくとも一方を計算することができる。
【0085】
また、例えば、第一計算部118は、複数の周波数に対する交流インピーダンスを計算し、第二計算部119は、複数の周波数に対する交流インピーダンスを用いてSOHを計算する。
【0086】
このような電池監視装置100は、複数の周波数に対する交流インピーダンスを用いてSOHを計算することができる。
【0087】
また、例えば、集積回路105は、さらに、電池Bの温度を計測する第一温度計測部120を有する。第二計算部119は、計算された交流インピーダンス、及び、計測された電池Bの温度を用いてSOHを計算する。
【0088】
このような電池監視装置100は、電池Bの温度を考慮して電池Bの等価回路の回路パラメータの推定を行うことで、SOHの計算精度を向上することができる。
【0089】
また、例えば、第一計算部118は、さらに電池Bを充電するときの充電電流、及び、電池Bを放電するときの放電電流の少なくとも一方を用いて低周波交流インピーダンスを計算するカルマンフィルタ部118fをさらに有し、第二計算部119は、計算された交流インピーダンス、及び、計算された低周波交流インピーダンスを用いてSOHを計算する。
【0090】
このような電池監視装置100は、電池Bの低周波交流インピーダンスを考慮して電池Bの等価回路の回路パラメータの推定を行うことで、SOHの計算精度を向上することができる。
【0091】
また、例えば、集積回路105は、さらに、第一参照抵抗103の温度を計測する第二温度計測部121を有する。第一計算部118は、計測された第一参照抵抗103の温度をさらに用いて交流インピーダンスを計算する。
【0092】
このような電池監視装置100は、第一参照抵抗103の温度を用いて交流インピーダンスを補正することができる。
【0093】
また、例えば、集積回路105は、第一参照抵抗103の温度を一定に制御する第一温度制御部122を有する。
【0094】
このような電池監視装置100は、第一参照抵抗103の温度を一定にした状態で交流インピーダンスを計算することができる。
【0095】
また、例えば、第一計算部118は、電池Bの充電中に交流インピーダンスを計算する。
【0096】
このような電池監視装置100は、電池Bの充電中に交流インピーダンスを計算することができる。
【0097】
また、例えば、第一計算部118は、電池Bの放電中に交流インピーダンスを計算する。
【0098】
このような電池監視装置100は、電池Bの放電中に交流インピーダンスを計算することができる。
【0099】
また、例えば、第一計算部118は、電池Bの充電及び放電の停止中に交流インピーダンスを計算する。
【0100】
このような電池監視装置100は、電池Bの充電及び放電の停止中に交流インピーダンスを計算することができる。
【0101】
また、例えば、電池Bは、組電池101に含まれる複数の電池B0~B7のうちの1つである。
【0102】
このような電池監視装置100は、組電池101に含まれる電池Bの交流インピーダンスを計算することができる。
【0103】
また、集積回路105は、電池Bから負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置された第一参照抵抗103へ電池Bから電流を流すためのトランジスタ104と、集積回路105とを備える。集積回路105は、トランジスタ104の制御端子に制御信号を印加する信号印加部109と、第一参照抵抗103に流れる第一電流を計測する電流計測部112と、電池Bの電圧を計測する電圧計測部115と、計測された第一電流、及び、計測された第一電圧に基づいて電池Bの交流インピーダンスを計算する第一計算部118とを有する。
【0104】
このような集積回路105は、第一参照抵抗103が電池Bから負荷102に流れる電流の経路P1とは別の経路P2上に配置されているため、電池Bが充放電中であるかどうかによらず電池Bの交流インピーダンスを計測することができる。
【0105】
また、例えば、電池Bは、組電池101に含まれる複数の電池B0~B7のうちの1つであり、電圧計測部115は、複数の電池B0~B7のそれぞれの電圧を計測するための複数のAD変換器0~7を有する。集積回路105は、さらに、複数のAD変換器0~7に共通の基準電圧を供給する基準バイアス生成部116を有する。
【0106】
このような集積回路105は、基準電圧のばらつきに起因するAD変換の誤差を低減することができる。
【0107】
また、例えば、電池Bは、組電池101に含まれる複数の電池B0~B7のうちの1つであり、電圧計測部115は、複数の電池B0~B7のそれぞれの電圧V0~V7を計測するための複数のAD変換器0~7を有する。集積回路105は、さらに、複数のAD変換器0~7の計測タイミングの同期をとるためのタイミング信号を複数のAD変換器0~7のそれぞれに供給するタイミング信号生成部117を有する。
【0108】
このような集積回路105は、同じタイミングにおける電圧V0~V7を計測することが可能となる。
【0109】
また、例えば、複数のAD変換器0~7は、同一のAD変換特性を有する。
【0110】
このような集積回路105は、AD変換器0~7のAD変換のばらつきを低減することができる。
【0111】
(実施の形態2)
[構成及び動作]
実施の形態2では、少なくとも複数の電池監視装置100を備える電池監視システムについて説明する。図11は、実施の形態2に係る電池監視システムの機能構成を示すブロック図である。
【0112】
図11に示されるように、電池監視システム200は、複数の電池監視装置(具体的には、電池監視装置100、電池監視装置100a、及び、電池監視装置100b)と、統合制御部201と、スイッチ202とを備える。電池監視装置100は、組電池101を監視対象とし、電池監視装置100aは、組電池101aを監視対象とし、電池監視装置100bは、組電池101bを監視対象とする。組電池101、組電池101a、及び、組電池101bは直列接続されている。
【0113】
電池監視装置100が備える集積回路105には通信インターフェース部131が含まれる。電池監視装置100aは、電池監視装置100と同様の構成であり、電池監視装置100aが備える集積回路105aには通信インターフェース部131aが含まれる。電池監視装置100bは、電池監視装置100と同様の構成であり、電池監視装置100bが備える集積回路105bには通信インターフェース部131bが含まれる。
【0114】
通信インターフェース部131、通信インターフェース部131a、及び、通信インターフェース部131bはデイジーチェーン接続されている。通信インターフェース部131は、通信線203によって通信インターフェース部131aに接続され、通信インターフェース部131aは、通信線204によって通信インターフェース部131bに接続されている。通信インターフェース部131bは、通信線205によって統合制御部201に接続されている。
【0115】
このような通信線203、通信線204、及び、通信線205によれば、統合制御部201は、電池監視装置100から組電池101の交流インピーダンスを取得し、電池監視装置100aから組電池101aの交流インピーダンスを取得し、電池監視装置100bから組電池101aの交流インピーダンスを取得することができる。なお、統合制御部201は、電池監視装置100、電池監視装置100a、及び、電池監視装置100bから交流インピーダンスと異なる、交流インピーダンスに基づく情報(例えば、SOHなど)を取得してもよい。
【0116】
統合制御部201は、電池監視装置100、電池監視装置100a、及び、電池監視装置100bから取得した交流インピーダンスに基づく各種制御を行う。統合制御部201は、例えば、交流インピーダンスに基づいて、組電池101、組電池101a、及び、組電池101bの少なくとも1つが所定の基準よりも劣化していると判定した場合に、スイッチ202を開放し、負荷102と、組電池101、組電池101a、及び、組電池101bとの電気的な接続を解除する。これにより、劣化した組電池が使用されることによる組電池の発火等の事故の発生を抑制することができる。統合制御部201は、例えば、プロセッサ及びメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。
【0117】
なお、電池監視システム200においては通信インターフェース部131、通信インターフェース部131a、及び、通信インターフェース部131bはデイジーチェーン接続されたが、このような接続方式は一例である。電池監視システム200においては、通信インターフェース部131、通信インターフェース部131a、及び、通信インターフェース部131bのそれぞれが直接統合制御部201と通信を行ってもよい。つまり、通信インターフェース間の接続方式は特に限定されない。
【0118】
[効果等]
以上説明したように、電池監視システム200は、電池監視装置を複数備え、複数の電池監視装置それぞれから交流インピーダンスを取得する統合制御部201を備える。
【0119】
これにより、統合制御部201は、複数の電池監視装置から取得した交流インピーダンスに基づく各種制御を行うことができる。
【0120】
(実施の形態3)
[構成及び動作]
実施の形態3では、クラウドサーバを備える電池監視システムについて説明する。図12は、実施の形態3に係る電池監視システムの概要を示す図である。
【0121】
図12に示されるように、電池監視システム300は、電池監視装置100と、サーバ装置301とを備える。サーバ装置301は、電池監視装置100と離れた場所に配置されたサーバ装置である。サーバ装置301は、いわゆるクラウドサーバである。サーバ装置301は、例えば、他のサーバ装置とクラウドネットワーク302によって通信接続されている。
【0122】
電池監視装置100は、例えば、EVなどの自動車400に搭載され、自動車400のモータ401を駆動するための組電池101を監視対象とする。電池監視装置100が備える通信インターフェース部131は、例えば、計算した組電池101の交流インピーダンスを無線通信によってサーバ装置301に送信する。なお、通信インターフェース部131とサーバ装置301との間には、図示されない中継装置が介在する場合がある。
【0123】
サーバ装置301は、電池監視装置100から交流インピーダンスを取得し、サーバ装置301が備える記憶部(図示せず)に記憶する。サーバ装置301は、電池監視装置100から取得した交流インピーダンスに基づく各種制御を行う。
【0124】
サーバ装置301は、例えば、交流インピーダンスに基づいて、組電池101が所定の基準よりも劣化していると判定した場合に、組電池101の使用を停止させるための情報を電池監視装置100に送信する。これにより、劣化した組電池101が使用されることによる組電池101の発火等の事故の発生を抑制することができる。
【0125】
[効果等]
以上説明したように、電池監視システム300は、電池監視装置100と、電池監視装置100と離れた場所に配置されたサーバ装置301とを備える。サーバ装置301は、電池監視装置100から交流インピーダンスを取得する。
【0126】
これにより、サーバ装置301は、電池監視装置100から取得した交流インピーダンスに基づく各種制御を行うことができる。
【0127】
(他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0128】
例えば、上記実施の形態では、EVなどの自動車に用いられる電池を監視対象とする電池監視装置について説明されたが、電池監視装置は、どのような用途の電池を監視対象としてもよい。
【0129】
また、上記実施の形態で説明された回路構成は、一例であり、本開示は上記回路構成に限定されない。つまり、上記回路構成と同様に、本開示の特徴的な機能を実現できる回路も本開示に含まれる。例えば、上記回路構成と同様の機能を実現できる範囲で、ある素子に対して、直列又は並列に、スイッチング素子(トランジスタ)、抵抗素子、または容量素子等の素子が接続されたものも本開示に含まれる。
【0130】
また、上記実施の形態において、集積回路に含まれる構成要素は、ハードウェアによって実現された。しかしながら、集積回路に含まれる構成要素の一部は、当該構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。集積回路に含まれる構成要素の一部は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0131】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、上記実施の形態において説明された動作において、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して行われてもよい。
【0132】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
100、100a、100b、100c 電池監視装置
101、101a、101b 組電池
102 負荷
103 第一参照抵抗
104 トランジスタ
105、105a、105b 集積回路(電池監視回路)
106 負荷抵抗
107、128 温度センサ
108、130 ヒータ
109 信号印加部
110 信号生成部
111 波形生成部
111a バースト波形生成部
112 電流計測部
113、125 AD変換器
114、126 フィルタ
115 電圧計測部
116 基準バイアス生成部
117 タイミング信号生成部
118 第一計算部
118a 位相シフト部
118b 変換部
118c 積分部
118d インピーダンス計算部
118e 温度補正部
118f カルマンフィルタ部
119 第二計算部
120 第一温度計測部
121 第二温度計測部
122 第一温度制御部
123 負荷電流計測部
124 第二参照抵抗
127 第三温度計測部
129 第二温度制御部
131、131a、131b 通信インターフェース部
200、300 電池監視システム
201 統合制御部
202 スイッチ
203、204、205 通信線
301 サーバ装置
302 クラウドネットワーク
400 自動車
401 モータ
B、B0~B7 電池
Iac、Iad 電流
V0~V7 電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12