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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000383
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】シール蓋剥離装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01N35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099135
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】508188237
【氏名又は名称】精研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515286232
【氏名又は名称】株式会社コスモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】豊沢 幸克
(72)【発明者】
【氏名】村山 孝志
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
2G058CB08
2G058CB15
(57)【要約】
【課題】シール蓋を剥離する際にシール蓋に作用する力を小さくしてシール蓋が破損しにくくなるようにしたシール蓋剥離装置を提供すること
【解決手段】シール蓋剥離装置10は、検体容器2を保持する容器保持ユニット14と、シール蓋3のタブ4を把持するようにされたタブ把持ユニット16と、タブ把持ユニット16を、検体容器2の横方向でタブ把持している初期把持位置から、シール蓋3が容器上縁6から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置にまで、弧状経路Aに沿って移動させる枢動装置18と、部分剥離位置にあるタブ把持ユニット16を、シール蓋3が容器上縁6から完全に剥離された状態となる完全剥離位置にまで移動させる直動装置20手段と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器の上端開口部を画定している容器上縁に接着されて前記上端開口部を密封しているシール蓋を剥離するためのシール蓋剥離装置であって、
検体容器を上端開口部を上にして保持する容器保持手段と、
前記容器保持手段に保持された検体容器の容器上縁から横方向に突出しているシール蓋のタブを把持するようにされたタブ把持手段と、
前記タブ把持手段を、前記検体容器の横方向での第1の側で前記タブを把持している初期把持位置から、前記タブが前記第1の側の反対側の第2の側に向かって上方に引っ張られて前記シール蓋が前記容器上縁から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置にまで、弧状経路に沿って移動させる枢動手段と、
前記部分剥離位置にある前記タブ把持手段を、前記シール蓋が前記容器上縁から完全に剥離された状態となる完全剥離位置にまで前記第2の側に移動させる直動手段と、
を備える、シール蓋剥離装置。
【請求項2】
前記枢動手段が、前記上端開口部の開口面に略平行な仮想平面上を通る枢動中心軸線の周りで前記タブ把持手段を枢動させるようにされた、請求項1に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項3】
前記枢動中心軸線が、前記開口面の中心を通る、請求項2に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項4】
前記初期把持位置から前記部分剥離位置までの枢動角度が略90度である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項5】
前記容器保持手段が、前記検体容器を前記検体容器の長手軸線の周りで回転させる回転機構と、前記タブの位置を検知するタブ位置検知手段と、を備え、前記回転機構と前記タブ位置検知手段とによって前記タブが前記第1の側に位置するように前記検体容器を位置決めした状態で前記検体容器を保持するようにされ、
前記タブ把持手段が、前記初期把持位置にあるときに、前記容器保持手段に保持されている前記検体容器の前記シール蓋の一部に上方から接触又は近接する押さえ部を有する、請求項1に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項6】
前記タブ把持手段が、第1把持部材と前記第1把持部材に対して開閉動作する第2把持部材とを有し、前記第1把持部材に設けられた第1把持面と前記第2把持部材に設けられた第2把持面とで前記シール蓋のタブを把持するようにされ、前記第1把持部材には前記第1把持面を通る第1光通過孔が形成され、前記第2把持部材には前記第2把持面を通る第2光通過孔が形成されており、
前記タブ位置検知手段が、投光器と受光器とからなる透過型の光電センサであり、前記投光器と前記受光器は、前記タブ把持手段が前記初期把持位置にあるときに、前記投光器から前記受光器に向かって放射される計測光が前記第1光通過孔と前記第2光通過孔を通って前記受光器に至るように配置されている、請求項5に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項7】
検体容器の上端開口部を画定している容器上縁に接着されて前記上端開口部を密封しているシール蓋を剥離するためのシール蓋剥離装置であって、
一列に並べた複数の検体容器のそれぞれを上端開口部を上にして保持する容器保持手段であって、各検体容器を前記検体容器の長手軸線の周りで回転させる回転機構、及び各検体容器のシール蓋のタブの位置を検知する複数のタブ位置検知手段を有し、各タブが各検体容器の横方向での所定の第1の側に位置するように各検体容器を位置決めした状態で各検体容器を保持する容器保持手段と、
前記容器保持手段に保持された各検体容器の容器上縁から横方向に突出している各シール蓋のタブを把持するようにされたタブ把持手段と、
前記タブ把持手段を、前記検体容器の横方向での第1の側で各タブを把持している初期把持位置から、前記タブが前記第1の側の反対側の第2の側に向かって上方に引っ張られて各シール蓋が前記容器上縁から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置にまで、弧状経路に沿って移動させる枢動手段と、
前記部分剥離位置にある前記タブ把持手段を、各シール蓋が各容器上縁から完全に剥離された状態となる完全剥離位置にまで前記第2の側に向かって移動させる直動手段と、
を備える、シール蓋剥離装置。
【請求項8】
前記直動手段によって前記タブ把持手段と共に移動する複数の仕切り板であって、各仕切り板が、前記タブ把持手段が少なくとも前記初期把持位置から前記部分剥離位置に移動する間、前記容器上縁の近くで各検体容器の間に位置するようにされた、複数の仕切り板をさらに備える、請求項7に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項9】
前記容器保持手段が、相互に離れた開放位置と相互に近づいた把持位置との間で変位するようにされた第1及び第2ガイドユニットを有し、前記第1ガイドユニットが複数のモータと各モータによって回転駆動される複数の操作用歯車を有し、該第2ガイドユニットが回転可能且つ当該第1及び第2ガイドユニットの移動方向で変位可能に保持された複数のガイドローラと、各ガイドローラを前記第1ガイドユニットの側に付勢する付勢部材とを有し、前記第1及び第2ガイドユニットが前記把持位置となったときに、各検体容器が、対応する前記操作用歯車と前記ガイドローラとによって挟まれて保持され、前記操作用歯車の回転に伴って前記検体容器が前記長手軸線の周りで回転するようにされた、請求項7又は8に記載のシール蓋剥離装置。
【請求項10】
前記複数の検体容器を一列に並べて収容したラックを保持するラック保持部と、前記ラック保持部と前記容器保持手段を、前記ラックを前記ラック保持部に対して配置及び取り出し可能となる第1位置と前記複数の検体容器が前記容器保持手段によって保持可能となる第2位置との間で、相対的に移動させるラック移動手段と、をさらに備える、請求項7に記載のシール蓋剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの検体が入れられた検体容器の容器上縁に接着されたシール蓋を剥離するようにされたシール蓋剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関等で採取された血液などの検体は、通常、その上端開口部がシール蓋で密封された細長い筒状の検体容器に入れられた状態とされ、検査機関等において遠心分離などの必要な処理を施した上で検体容器から取り出されて各種の検査や試験にかけられる。多くの場合には、検体容器から検体を取り出す際に人がシール蓋のタブを把持してシール蓋を一つずつ剥離して開栓するが、このような手作業によるシール蓋の剥離は特に多数の検体容器の開栓が必要となる場合には煩雑な作業となる。そこで、シール蓋の剥離を自動で行なうようにした装置が開発されている。
【0003】
シール蓋は、通常、薄いアルミニウム箔でできているため、シール蓋を剥離する際にシール蓋に無理な力が作用するとタブがちぎれるなどしてシール蓋が破損することがある。そのため、自動装置でシール蓋の開栓を行なう際にはシール蓋に無理な力が作用しないようしなければならない。例えば特許文献1に開示されている装置においては、水平方向に自由に移動できるようにされた抑えパッドと抱持片でシール蓋のタブを挟持し、その状態で抑えパッドと抱持片を上方に移動させることで検体容器からシール蓋を完全に剥離するようにしている。当該装置では、抑えパッドと抱持片が水平方向に自在に移動できるようになっているため、タブを上方に引っ張るのに応じてシール蓋から受ける水平方向への力により抑えパッドと抱持片は水平方向の移動していく。これにより、タブを単純に上方に引っ張る場合に比べて、シール蓋に無理な力が作用しにくいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-294329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の装置では、水平方向に自在に移動するユニットには、抑えパッド及び抱持片だけでなくそれらを駆動するためのシリンダ装置やベアリング、シャフトなどの多くの機械部品も含まれており、比較的に大きな重量を有するものとなっている。そのため、ボールベアリングで支持されているとはいえ、タブを引っ張ることにより生じる下方への荷重がかかっている状態でこのような重量のあるユニットを水平方向に移動させるのにはそれなりの力が必要となるが、その力は開栓途中のシール蓋に作用することになる。また、シリンダ装置にはその駆動のためにエアチューブや電気配線などを繋いでおく必要があるが、これらがユニットの水平移動に対する抵抗になることも考えられる。このように上述の従来の装置においては、シール蓋に無駄な力が作用したり、シール蓋に加わる荷重が不安定になったりすることがあり、これにより特にシール蓋のタブが破損する虞がある。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、シール蓋を剥離する際にシール蓋に作用する力を小さくしてシール蓋が破損しにくくなるようにしたシール蓋剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
検体容器の上端開口部を画定している容器上縁に接着されて前記上端開口部を密封しているシール蓋を剥離するためのシール蓋剥離装置であって、
検体容器を上端開口部を上にして保持する容器保持手段と、
前記容器保持手段に保持された検体容器の容器上縁から横方向に突出しているシール蓋のタブを把持するようにされたタブ把持手段と、
前記タブ把持手段を、前記検体容器の横方向での第1の側で前記タブを把持している初期把持位置から、前記タブが前記第1の側の反対側の第2の側に向かって上方に引っ張られて前記シール蓋が前記容器上縁から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置にまで、弧状経路に沿って移動させる枢動手段と、
前記部分剥離位置にある前記タブ把持手段を、前記シール蓋が前記容器上縁から完全に剥離された状態となる完全剥離位置にまで前記第2の側に移動させる直動手段と、
を備える、シール蓋剥離装置を提供する。
【0008】
当該シール蓋剥離装置においては、シール蓋の剥離動作を、シール蓋が容器上縁から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置までの弧状経路に沿った移動と、シール蓋が容器上縁から完全に剥離された状態となる完全剥離位置までの直動の2つの安定した動作を組み合わせて行なうようになっているため、シール蓋に無駄な力が作用しないような軌道とすることができ、またその軌道に沿った安定した動作を確保することができる。これにより、シール蓋が破損することをより確実に防止することが可能となる。
【0009】
また、前記枢動手段が、前記上端開口部の開口面に略平行な仮想平面上を通る枢動中心軸線の周りで前記タブ把持手段を枢動させるようにすることができる。さらには、前記枢動中心軸線が、前記開口面の中心を通るようにすることができる。
【0010】
枢動中心軸線をこのような位置に設定することにより、特にシール蓋を部分的に剥離する際にシール蓋に無駄な力が作用しないようにすることができる。
【0011】
また、前記初期把持位置から前記部分剥離位置までの枢動角度が略90度であるようにすることができる。
【0012】
さらには、
前記容器保持手段が、前記検体容器を前記検体容器の長手軸線の周りで回転させる回転機構と、前記タブの位置を検知するタブ位置検知手段と、を備え、前記回転機構と前記タブ位置検知手段とによって前記タブが前記第1の側に位置するように前記検体容器を位置決めした状態で前記検体容器を保持するようにされ、
前記タブ把持手段が、前記初期把持位置にあるときに、前記容器保持手段に保持されている前記検体容器の前記シール蓋の一部に上方から接触又は近接する押さえ部を有するようにすることができる。
【0013】
このような構成により、下方に向かってやや先細形状であることが多い検体容器が回転機構によって回転されたときに上方に変位してしまうことを押さえ部で防止することが可能となる。
【0014】
また、
前記タブ把持手段が、第1把持部材と前記第1把持部材に対して開閉動作する第2把持部材とを有し、前記第1把持部材に設けられた第1把持面と前記第2把持部材に設けられた第2把持面とで前記シール蓋のタブを把持するようにされ、前記第1把持部材には前記第1把持面を通る第1光通過孔が形成され、前記第2把持部材には前記第2把持面を通る第2光通過孔が形成されており、
前記タブ位置検知手段が、投光器と受光器とからなる透過型の光電センサであり、前記投光器と前記受光器は、前記タブ把持手段が前記初期把持位置にあるときに、前記投光器から前記受光器に向かって放射される計測光が前記第1光通過孔と前記第2光通過孔を通って前記受光器に至るように配置されているようにすることができる。
【0015】
このような構成とすることで、タブを第1把持面と第2把持面との間に直接位置決めすることができる。これにより、第1把持面と第2把持面に対するタブの位置ずれを最小限に抑えることが可能となる。また、タブの位置決め後すぐにタブ把持手段でタブを把持してシール蓋の剥離動作に移行できるため、シール蓋の剥離までに要する時間を短くすることが可能となる。
【0016】
本発明はさらに、
検体容器の上端開口部を画定している容器上縁に接着されて前記上端開口部を密封しているシール蓋を剥離するためのシール蓋剥離装置であって、
一列に並べた複数の検体容器のそれぞれを上端開口部を上にして保持する容器保持手段であって、各検体容器を前記検体容器の長手軸線の周りで回転させる回転機構、及び各検体容器のシール蓋のタブの位置を検知する複数のタブ位置検知手段を有し、各タブが各検体容器の横方向での所定の第1の側に位置するように各検体容器を位置決めした状態で各検体容器を保持する容器保持手段と、
前記容器保持手段に保持された各検体容器の容器上縁から横方向に突出している各シール蓋のタブを把持するようにされたタブ把持手段と、
前記タブ把持手段を、前記検体容器の横方向での第1の側で各タブを把持している初期把持位置から、前記タブが前記第1の側の反対側の第2の側に向かって上方に引っ張られて各シール蓋が前記容器上縁から部分的に剥離された状態となる部分剥離位置にまで、弧状経路に沿って移動させる枢動手段と、
前記部分剥離位置にある前記タブ把持手段を、各シール蓋が各容器上縁から完全に剥離された状態となる完全剥離位置にまで前記第2の側に向かって移動させる直動手段と、
を備える、シール蓋剥離装置を提供することができる。
【0017】
当該シール蓋剥離装置においては、複数の検体容器のシール蓋を同時に剥離することができるため、多くの検体容器の開栓作業を短時間に効率よく行なうことが可能となる。
【0018】
また、前記直動手段によって前記タブ把持手段と共に移動する複数の仕切り板であって、各仕切り板が、前記タブ把持手段が少なくとも前記初期把持位置から前記部分剥離位置に移動する間、前記容器上縁の近くで各検体容器の間に位置するようにされた、複数の仕切り板をさらに備えるようにすることができる。
【0019】
このような仕切り板を備えることで、シール蓋の剥離の際に検体容器内の検体が飛散した場合に、その飛散した検体が隣接する他の検体容器内に混入してしまうことを防止することが可能となる。
【0020】
さらに、前記容器保持手段が、相互に離れた開放位置と相互に近づいた把持位置との間で変位するようにされた第1及び第2ガイドユニットを有し、前記第1ガイドユニットが複数のモータと各モータによって回転駆動される複数の操作用歯車を有し、該第2ガイドユニットが回転可能且つ当該第1及び第2ガイドユニットの移動方向で変位可能に保持された複数のガイドローラと、各ガイドローラを前記第1ガイドユニットの側に付勢する付勢部材とを有し、前記第1及び第2ガイドユニットが前記把持位置となったときに、各検体容器が、対応する前記操作用歯車と前記ガイドローラとによって挟まれて保持され、前記操作用歯車の回転に伴って前記検体容器が前記長手軸線の周りで回転するようにすることができる。
【0021】
このような構成により、複数の検体容器の位置決めを同時に行なうことが可能となる。
【0022】
また、前記複数の検体容器を一列に並べて収容したラックを保持するラック保持部と、前記ラック保持部と前記容器保持手段を、前記ラックを前記ラック保持部に対して配置及び取り出し可能となる第1位置と前記複数の検体容器が前記容器保持手段によって保持可能となる第2位置との間で、相対的に移動させるラック移動手段と、をさらに備えるようにすることができる。
【0023】
このような構成により、当該シール蓋剥離装置への複数の検体容器のセット及び取り出しをラックごと行なうことが可能となる。
【0024】
以下、本発明に係るシール蓋剥離装置の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るシール蓋剥離装置の概略図であり、初期状態における側面断面図である。
図2】複数の検体容器がラックに収容された状態を示す図である。
図3】検体容器把持前の状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
図4図3の状態における容器保持ユニットの上面図である。
図5】検体容器把持後の状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
図6図5の状態における容器保持ユニットの上面図である。
図7】検体容器位置決め後の状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
図8図7の状態における容器保持ユニットの上面図である。
図9】タブ把持ユニットがシール蓋のタブを把持した状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
図10】シール蓋を部分的に剥離した状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
図11】シール蓋を完全に剥離した状態におけるシール蓋剥離装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係るシール蓋剥離装置10は、図1に示すように、ラック1に収容された複数の検体容器2(図1には1つのみが示されている)を搬送する容器搬送ユニット12と、各検体容器2を保持するための容器保持ユニット(容器保持手段)14と、各検体容器2に接着されたシール蓋3のタブ4を把持するためのタブ把持ユニット(タブ把持手段)16と、タブ把持ユニット16を移動させるための枢動装置(枢動手段)18及び直動装置(直動手段)20と、を備える。当該シール蓋剥離装置10は、後述するように、複数の検体容器2のシール蓋3を自動的に剥離して検体容器2を開栓するようにした装置である。
【0027】
容器搬送ユニット12は、検体容器2が収容されたラック1を保持するラック保持部22と、ラック保持部22を前後方向(図で見て左右方向)での前方位置(図1)と後方位置(図3等)との間で移動させる直動機構24とを備える。図2に示すように、ラック1には複数の検体容器2がシール蓋3を上にして一列に並べて収容され、ラック1はその状態でラック保持部22にセットできるものとされている。検体容器2は下方に向かってやや先細とされた細長い筒状の容器であり、その上端開口部5を画定している容器上縁6にシール蓋3が接着されている。このシール蓋3により、検体容器2の上端開口部5は密封されている。シール蓋3には、容器上縁6から横方向に突出するようにしてタブ4が形成されている。シール蓋3のタブ4は、図2に示すように、多くの場合には下方に折曲げられた状態とされるが、取り扱いの仕方によっては上方に向いた状態にもなり得る。また、検体容器2がラック1に収容された状態において、タブ4の周方向での位置は通常は揃えられていない。よって、シール蓋3のタブ4は、別々の方向を向いている。
【0028】
容器保持ユニット14は、図1図3、及び図4に示すように、後方側(図でみて右方側)の第1ガイドユニット25と、前方側(図で見て左方側)の第2ガイドユニット26を備える。これら第1ガイドユニット25及び第2ガイドユニット26は、図示しない駆動装置によって、相互に離れた開放位置(図1図3図4)と相互に近づいて検体容器2を把持する把持位置(図5図6)との間で前後方向に変位するようにされている。第1ガイドユニット25は、上部プレート28と下部プレート30からなる第1ガイド本体32と、第1ガイド本体32に対して固定配置されたモータ34とを備える。第1ガイドユニット25はさら、モータ34の回転軸に取り付けられたモータ歯車36と、モータ歯車36に噛み合う伝達歯車38と、伝達歯車38に噛み合う操作用歯車40とを備える。操作用歯車40は、伝達歯車38とモータ歯車36を介して、モータ34によって回転駆動される。第2ガイドユニット26は、第2ガイド本体42と、第2ガイド本体42に対して回転可能且つ前後方向に移動可能に保持されたガイドローラ44と、ガイドローラ44を第1ガイドユニット25の側に付勢するスプリング(付勢部材)46とを備える。後述するように、第1ガイドユニット25と第2ガイドユニット26が把持位置になると、その間にある各検体容器2が操作用歯車40と2つのガイドローラ44とによって挟まれて保持される。これらのモータ34、モータ歯車36、伝達歯車38、操作用歯車40、及び2つのガイドローラ44により回転機構が構成されており、この回転機構は検体容器2の数に合わせて10組配置されている(図1等にはそのうちの1つ、図3等にはそのうちの3つのみが示されている)。また、第2ガイドユニット26は、後述するように各検体容器2のシール蓋3の下方に折れ曲がったタブ4を水平方向に向けるためのタブ位置矯正部材47を備えている。なお、本実施形態においては、10個の検体容器2を同時に扱うように構成されているが、それよりも多い又は少ない数の検体容器2を扱うように構成してもよい。
【0029】
タブ把持ユニット16は、第1把持部材48と第2把持部材50を備える。第2把持部材50は、第1把持部材48に固定配置されたシリンダ装置52によって、枢動軸54を中心に枢動して第1把持部材48に対して開閉動作するようになっている。タブ把持ユニット16は、後述するように、枢動装置18によって90度の回転動作をするとともに、直動装置20によって前後方向に直線的に移動するようになっている。これらタブ把持ユニット16、枢動装置18、及び直動装置20は、図示しない上下移動機構によって上下方向に移動するようになっている。また、容器保持ユニット14も上下移動機構によって一緒に上下方向に移動するようになっている。
【0030】
当該シール蓋剥離装置10によるシール蓋3の剥離動作について以下に説明する。当該シール蓋剥離装置10は、複数の検体容器2をラック1に収容してラック保持部22に載置した状態として動作を開始すると、以下に説明する一連の動作を連続的に自動で行うようになっている。
【0031】
ラック1をラック保持部22に載置した状態(図1)で動作が開始されると、ラック保持部22が、直動機構24によって後方(図で見て右方)に移動して、各検体容器2が第1ガイドユニット25と第2ガイドユニット26との間に位置する後方位置となる。続いて、上下移動機構によってタブ把持ユニット16、枢動装置18、及び直動装置20が下方に移動して、図3及び図4に示す状態となる。本実施形態においては、直動機構24によってラック保持部22を後方に移動させるとともに、上下移動機構によって容器保持ユニット14等を下方に移動させることにより、図1の状態から図3の状態となるようにしている。すなわち、容器保持ユニット14等に対してラック保持部22を図1の第1位置と図4の第2位置との間で相対的に移動させるためのラック移動手段として、直動機構24と上下移動機構を用いている。しかしながら、ラック保持部22を容器保持ユニット14に対して相対的に移動させるためのラック移動手段はこのような形態に限定されず、例えばラック保持部22を後方及び上方に移動させるようにしたり、容器保持ユニット14等を前方及び下方に移動させるようにしたりしてもよい。
【0032】
次に、容器保持ユニット14の第1ガイドユニット25と第2ガイドユニット26が開放位置から相互に近づいて把持位置に移動し、それと同時に、タブ把持ユニット16が直動装置20によって前方に移動するとともに枢動装置18によって前方に向かって図で見て反時計回りに枢動する。これにより図5及び図6の状態となる。各検体容器2は、容器保持ユニット14の対応する操作用歯車40と2つのガイドローラ44とによって把持される。ガイドローラ44は検体容器2によって前方にやや押し込まれ、これにより検体容器2はガイドローラ44を付勢しているスプリング46によって操作用歯車40に押し付けられた状態となる。タブ把持ユニット16がこの初期把持位置にあるときには、その第1把持部材48の先端にある押さえ部55が、容器保持ユニット14に保持されている検体容器2のシール蓋3の一部に上方から接触又は近接した位置となるようになる。また、直動装置20には複数の仕切り板56が取り付けられており、タブ把持ユニット16が前方に移動したときに、各仕切り板56が容器上縁6の近くで各検体容器2の間に位置するようになっている。
【0033】
続いてモータ34により操作用歯車40が回転されて、各検体容器2がその長手軸線Lの周りで上から見て時計回りに回転される。このとき、下方に折れ曲がっているシール蓋3のタブ4は、各検体容器2のすぐ横に位置しているタブ位置矯正部材47に当たって上方に曲げられ、検体容器2の容器上縁6から横方向に延びる向きに矯正される。また、シール蓋3のタブ4が上方に折れ曲がっている場合には、タブ把持ユニット16の第1把持部材48の傾斜した側面に当たって下方に曲げられ、検体容器2の容器上縁6から横方向に延びる向きとされる。
【0034】
当該シール蓋剥離装置10は、第1把持部材48に取り付けられた投光器58と、第2ガイドユニット26に取り付けられた受光器60とで構成される透過型の光電センサ(タブ位置検知手段)を更に備えている。タブ把持ユニット16が図5の初期把持位置にあるときに、投光器58から受光器60に向かって放射される計測光は、第1把持部材48に形成された第1光通過孔62、第2把持部材50に形成された第2光通過孔64、及び第2ガイド本体42に形成された第3光通過孔66を通って、受光器60にまで至るようになっている。第1光通過孔62は、第1把持部材48においてタブ4を把持するようにされた第1把持面68を通る位置に形成されている。また第2光通過孔64は、第2把持部材50においてタブ4を把持するようにされた第2把持面70を通る位置に形成されている。検体容器2が容器保持ユニット14の回転機構により回転されて、横方向に延びる向きに矯正されたタブ4が投光器58と受光器60の間の計測光の経路P上に至ると、計測光がタブ4によって遮られて受光器60に届かなくなる。計測光が遮断されたことを光電センサが検知したことに応じて、タブ4が計測光の経路P上、すなわち第1把持面68と第2把持面70との間にあると判断する。光電センサがタブ4を検知すると、モータ34が停止して検体容器2がその向きに保持される。このようにして、モータ34及び操作用歯車40等によって構成される各回転機構と光電センサとによって、タブ4が検体容器2に対して前方の側(第1の側)で第1把持面68と第2把持面70との間となるように各検体容器2の向きが位置決めされる(図7図8)。なお、検体容器2は、下方に向かってやや先細な形状であるため、操作用歯車40とガイドローラ44とによって横方向から把持した状態で回転させると、上方に持ち上げられるような力を受ける。しかしながら、上述の通り第1把持部材48の押さえ部55がシール蓋3の一部の上方に近接又は接触して位置しているため、検体容器2は回転操作を受けても上方には移動せず、よって各検体容器2の上下方向での位置にばらつきが生じることが防止される。
【0035】
各検体容器2のシール蓋3のタブ4が前方の側に位置決めされると、第2把持部材50がシリンダ装置52によって枢動され、第1把持部材48の第1把持面68と第2把持部材50の第2把持面70との間にタブ4が把持される(図9)。そして、タブ把持ユニット16は、枢動装置18によって、図9の初期把持位置から弧状経路Aに沿って90度回転した部分剥離位置(図10)にまで移動する。このときのタブ把持ユニット16の枢動中心となる枢動中心軸線Cは、検体容器2の上端開口部5の開口面に略平行であり実質的に開口面上にある仮想平面上において開口面の中心を通る位置となっている。タブ把持ユニット16が初期把持位置から部分剥離位置に移動していくと、タブ4が後方の側(第1の側の反対側の第2の側)に向かって上方に引っ張られて、シール蓋3が容器上縁6から部分的に剥離された状態となる。
【0036】
続いてタブ把持ユニット16は、直動装置20によって後方の側の完全剥離位置(図11)にまで移動する。これにより、すでに部分的に剥離されていたシール蓋3は後方に引っ張られて容器上縁6から完全に剥離される。
【0037】
なお、本実施形態では、タブ把持ユニット16は初期把持位置から部分剥離位置にまで90度枢動するが、その枢動角度は例えば60度や100度とするなど、シール蓋3が部分的に剥離される範囲内であれば90度以外の他の角度とすることもできる。また、タブ把持ユニット16の枢動中心軸線Cは、開口面の中心から前後にずれた位置としてもよいし、枢動中心軸線Cが通る仮想平面が開口面からずれた位置となるようにしてもよい。
【0038】
各仕切り板56は、タブ把持ユニット16が初期把持位置(図9)から部分剥離位置(図10)に移動する間、及び部分剥離位置から完全剥離位置(図11)に移動する間の少なくとも一部の間、各検体容器2の間に位置している。そのため、シール蓋3を剥離しているときに検体容器2内の検体が飛散したとしても、その飛散した検体が隣接する他の検体容器2内に混入してしまうことを仕切り板56によって防止することができる。
【0039】
シール蓋3が完全に剥離されると、タブ把持ユニット16はさらに後退して図示しないダストボックス内に剥離したシール蓋3を捨てる。また、容器保持ユニット14は開放位置となって上下移動機構によって上方に移動する。その後、開栓された検体容器2は、ラック保持部22とともに前方に移動して、図1の初期位置に戻る。これで当該シール蓋剥離装置10の一連の動作が終了する。開栓された検体容器2はラック1ごと取り出すことができ、必要に応じて次に開栓が必要とされる検体容器がラックごとセットすることができる。
【0040】
なお、当該シール蓋剥離装置10においては、異なる大きさの検体容器についてもそのシール蓋の剥離を行なうことができるようになっている。具体的には、例えば図示の検体容器2よりも短くて細い検体容器の開栓を行なう場合には、その長さに合わせて上下移動機構により容器保持ユニット14をより低い位置にまで下降させるとともに、その太さに合わせて容器保持ユニット14の第1ガイドユニット25と第2ガイドユニット26を相互により近い位置にまで移動させることにより、そのような短くて細い検体容器を適切に保持して位置決めし、シール蓋の剥離作業を行なうことができる。
【0041】
上述の通り、当該シール蓋剥離装置10においては、シール蓋3をまず枢動動作によって部分的に剥離し、それに続いて直動動作によって完全に隔離するようになっている。このように2つの動作を組み合わせてシール蓋3を剥離するようにすることにより、シール蓋3の特にタブ4に無理な力が加わらない軌道でタブを引っ張るようにすることができる。また、上述の2つの動作は枢動装置18及び直動装置20による安定した動作とすることができるため、機械部品の摩擦などにより不要な力がシール蓋3に作用する虞もない。これにより、タブ4が破損することをより確実に防止することが可能となる。
【0042】
また上記実施形態においては、複数の検体容器2のシール蓋3を同時に剥離するようになっているため、効率よく短時間で多くの検体容器2を開栓することができる。さらには、検体容器2を収容したラック1ごと当該シール蓋剥離装置10にセットできるようになっているため、検体容器2を1つずつセットする必要がなく、検体容器の交換を素早く行なうことができる。また、投光器58と受光器60とからなる透過型の光電センサを上述のように配置することにより、タブ4を第1把持面68と第2把持面70との間に直接位置決めすることができるため、第1把持面68と第2把持面70に対するタブ4の位置ずれの発生を最小限に抑えることができる。さらには、タブ4の位置決め後すぐにタブ4を把持してシール蓋3の剥離動作に移行できるため、シール蓋3の剥離までに要する時間を短くすることができる。なお、タブ位置検知手段は、上述のような透過型の光電センサに代えて、反射型の光電センサとしたり、他の非接触式又は接触式のセンサとしたりするなど、種々の他の手段により構成してもよい。
【0043】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、複数の検体容器のシール蓋を同時に剥離するように構成されているが、一度に1つの検体容器のみを取り扱うように構成してもよい。また、検体容器をラックに収容したままラックごと装置にセットできるようになっているが、検体容器を直接セットするようにしてもよい。各ユニットを動作させる装置は例示的に示したものであり、他の形態の装置等を用いても良いし、必ずしも各動作が自動で連続的に行なわれるようになっている必要はない。
【符号の説明】
【0044】
1 ラック
2 検体容器
3 シール蓋
4 タブ
5 上端開口部
6 容器上縁
10 シール蓋剥離装置
12 容器搬送ユニット
14 容器保持ユニット(容器保持手段)
16 タブ把持ユニット(タブ把持手段)
18 枢動装置
20 直動装置(直動手段)
22 ラック保持部
24 直動機構
25 第1ガイドユニット
26 第2ガイドユニット
28 上部プレート
30 下部プレート
32 第1ガイド本体
34 モータ
36 モータ歯車
38 伝達歯車
40 操作用歯車
42 第2ガイド本体
44 ガイドローラ
46 スプリング(付勢部材)
47 タブ位置矯正部材
48 第1把持部材
50 第2把持部材
52 シリンダ装置
54 枢動軸
55 押さえ部
56 仕切り板
58 投光器
60 受光器
62 第1光通過孔
64 第2光通過孔
66 第3光通過孔
68 第1把持面
70 第2把持面
A 弧状経路
C 枢動中心軸線
L 長手軸線
P 計測光の経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11