(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038335
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】神経障害を処置するのに使用するためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240312BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/242 20190101ALI20240312BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240312BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/787 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/745 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/795 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/22 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240312BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240312BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/00
A61K9/51
A61K33/242
A61K33/243
A61K31/785
A61K31/787
A61K31/745
A61K31/795
A61K33/00
A61K33/06
A61K33/22
A61K33/42
A61K33/24
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61P9/00
A61P27/16
A61P39/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024002499
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2020533801の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】17306826.3
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506377178
【氏名又は名称】ナノビオティックス
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOTIX
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】メイル,マリー-エディット
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ポティエ,アニエス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体を提供する。
【解決手段】ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体であって、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を提供する。更に、該ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る支持体と、を含む組成物であって、該組成物は、前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するための組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料、及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、
ここで、
i)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの集団についての最大サイズ中央値は、該材料が導体材料、半導体材料又は200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料である場合、少なくとも30nmであり、ここで、
ii)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、電解質濃度0.001~0.2M、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度0.01~10g/L及びpH6~8を有する水溶液中で測定された場合に、中性又は負の表面電荷を提供する生体適合性コーティングによりコーティングされている、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項2】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、0.2超の標準還元電位E°を有する金属及び、構造中に連続するsp2混成炭素中心を有する有機材料から選択される導体材料である、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項3】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、金属元素がIr、Pd、Pt、Auである金属ナノ粒子又はそれらの混合物、並びにポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール及び/もしくはポリピレンからなる有機ナノ粒子から選択される、請求項2記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項4】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、3.0eVを下回るバンドギャップEgを有する半導体材料である、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項5】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素、又はメンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成、又はメンデレエフ周期表のII族及びVI族からの元素の混合組成からなる、請求項4記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項6】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素からなり、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアによりドーピングされている、請求項5記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項7】
前記材料が、3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、比誘電率εijkが、20℃~30℃及び102Hz~赤外周波数までの間で測定される、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項8】
前記材料が、3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、比誘電率εijkが、200以上であり、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、BaTiO3、KTaNbO3、KTaO3、SrTiO3及びBaSrTiO3から選択される混合金属酸化物である誘電体材料である、請求項7記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項9】
前記材料が、3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料であり、比誘電率εijkが100以下であり、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、ReO2、ZrO2及びHfO2から選択される金属酸化物である、請求項7記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項10】
前記神経疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、強迫性障害、自閉症圏障害、抑うつ障害、ジストニア、トゥーレット症候群、統合失調症、脳卒中、失語症、認知症、耳鳴り、ハンチントン病、本態性振戦、双極性障害、不安障害、中毒障害、意識植物状態(consciousness vegetative state)及びそれらの少なくとも1つの症状から選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る支持体と、を含む組成物であって、
該組成物は、前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも2種の異なる、請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、請求項11記載の使用のための組成物。
【請求項13】
少なくとも2種の異なる、請求項1~9のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、キット。
【請求項14】
前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するための、請求項13記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、特に、神経障害の処置に関する。より具体的には、本発明は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体に関するものであり、該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料が、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。更に、本発明は、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、このようなナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む組成物及びキット、並びにそれらの使用に関する。
【0002】
背景
神経障害は、主要な健康上の懸念事項である(Neurological disorders public health challenges. WHO, 2006)。神経ネットワーク機能の障害は、異なる起源を有する場合がある。パーキンソン病は、中脳に位置する黒質におけるドーパミンニューロンの死により引き起こされる運動障害である。脳卒中は、脳の血液供給の遮断に対応する。酸欠により影響を受けた領域のニューロンは死滅し、これらの細胞により制御される身体の部分は機能することができなくなる。ハンチントン病は、遺伝性障害である。てんかんは、種々の脳領域における多くのニューロン群の異常な興奮により引き起こされる障害である。アルツハイマー病は、海馬、大脳皮質及び他の脳領域におけるニューロンの死を特徴とする神経変性障害である。自閉症圏障害の原因は、遺伝性、環境性等の多因性である。
【0003】
神経障害は、患者に影響を及ぼす主要な症状に応じて分類することができる。本明細書において以下で更に説明されるように、運動障害、精神(心的状態/社交)障害及び認知障害の3つの主要なタイプの症状が観察される。
【0004】
運動障害は、振戦、運動機能低下症、例えば、運動緩徐(bradykinesia)又は運動機能異常(dyskinesia)、筋捻転、硬直、姿勢不安定性、すくみ足歩行等を包含する。運動障害を呈する疾患は、典型的には、パーキンソン病、ジストニア、てんかん、ハンチントン病及びトゥーレット症候群を含む。
【0005】
精神障害は、心的状態/社交障害の症状を呈する各種の疾患を構成する。自閉症圏障害、統合失調症障害、双極性障害、抑うつ障害、不安障害、強迫性障害、物質関連障害及び/又は中毒障害を含むが、これらに限定されない(the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 2013, fifth edition, the American Psychiatric Associationからの定義による)。運動障害、例えば、パーキンソン病及びジストニアを患う患者の中には、疾患の後期に精神障害を発症する場合がある。
【0006】
認知障害は、全てではないにしても多くの精神障害(例えば、統合失調症、双極性障害)に存在する。基本的特徴が認知性である障害のみが、認知障害カテゴリーに含まれる。認知障害は患者の日常生活に影響を及ぼし、単純な仕事を達成することが困難である。認知症は代表的な認知障害であり、日常生活に支障をきたすほどの重度の精神能力低下の総称である。アルツハイマー病は、神経変性局面を伴う特有なタイプの認知症である。
【0007】
神経障害は、可能な場合、脳における神経伝達物質レベルの調節、及びそれらの特定の神経伝達物質レセプターとの相互作用の制御の役割を果たす薬剤により処置される。関与する主な神経伝達物質は、グルタメート、γ-アミノ酪酸(GABA)、ドーパミン及びアセチルコリンである。グルタメート及びGABA神経伝達物質が特に興味深い。それらは、神経興奮性の増大(Platt et al., The Veterinary Journal, 2007, 173, 278-286: The role of glutamate in central nervous system health and disease - a review)及び神経興奮性の低下(Holmes et al., Mental Retardation and Developmental Disabilities, 1995, 1, 208-219: Role of glutamate and GABA in the pathophysiology of epilepsy)のそれぞれにおいて主要な役割を果たすためである。ドーパミンはいくつかの脳機能に関与する。すなわち、基底核を介した運動の制御(基底核における不適切なドーパミンのレベルによる抑えきれない運動の帰結)、快楽報酬を求める行動(障害による機能不全中毒がもたらされるおそれ)、認知(前頭葉におけるドーパミンの障害による神経認知機能の低下のおそれ)等である(Alcaro et al., Brain Res. ReV., 2007, 56(2), 283-321: Behavioral functions of the mesolimbic dopaminergic system: an affective neuroethological perspective)。アセチルコリンは、中枢神経系レベルにおける学習及び記憶に関与する神経伝達物質である(Hasselmo et al., Curr Opin Neurobiol, 2006, 16(6), 710-715: The role of acetylcholine in learning and memory)。
【0008】
パーキンソン病の運動症状を軽減するための一般的な薬剤はレボドパであり、レボドパは脳内でドーパミンに変換され、このようにして、ドーパミンの欠乏のバランスをとるのに役立つ。レボドパは、カルビドパに関連しており、カルビドパは、レボドパが全身においてドーパミンに変換されるのを回避するのに役立つ。レボドパ処置の1つの問題は、「オン-オフ」現象であり、同現象により、高揚への緩和(jubilant thaw)と交互に起こる、うつ病に関連する停滞期及び作業不能期がもたらされる(Lees et al., J Neurology Neurosurgery Psychiatry, Special Supplement, 1989, 29-37: The on-off phenomenon)。この処置に対する後期パーキンソン病患者の無反応性が問題である(Fabbri et al., Parkinsonism and related disorders, 2016: Do patients with late-stage Parkinson’s disease still respond to levodopa?)。統合失調症における「陽性」症状、妄想及び幻覚等の神経精神障害の症状を処置するための他の一般的な薬剤は、抗精神病剤である。
【0009】
しかしながら、これらの薬剤による神経障害の症状の治療的処置は、非特異的であるため、重篤な有害事象を誘発するおそれがある。加えて、使用された薬剤に対する不応性が現れる場合がある。
【0010】
神経科学の理解が進むにつれて、脳は、その電線であるニューロンを介して情報を符号化し伝送する電気ネットワークと考えることができる。ニューロン間の接続性は、単純であると同時に複雑である。単純であるとは、ニューロン内でのイオンの流入/流出により、活動電位(又は電気活動の「スパイク」)が生じるためである。複雑であるとは、脳ネットワークが数千億のニューロンから構成され、これらがノード、ハブ及びモジュールを形成して、種々の空間的及び時間的スケールで、協調した相互作用を示すためである(Fornito et al., Nature Reviews Neuroscience, 2015, 16, 159-172: The connectomics of brain disorders)。神経伝達は、個々のニューロンを接続する解剖学的コンポーネント(構造)と、情報を伝達するプロセス(機能)とにより決まる。両方の側面が、神経系の性能全体に影響を及ぼす。神経相互作用は、脳電気活動パターンの振動により伝えられる。この振動は、典型的には脳波図(EEG)により測定可能である。振動の異なる周波数帯域、すなわちデルタ、シータ、アルファ、ベータ、ガンマ周波数帯域が観察される(Ward et al., Trends in Cognitive Sciences, 2003, 7(12), 553-559: Synchronous neural oscillations and cognitive processes)。構造的には、脳の最も顕著な神経解剖学的特徴は、ニューロン間の豊富な接続性であり、これは、神経伝達の重要性を反映している。1つの脳領域と別の脳領域との間の振動の同期(「同期性」)により、時空間協調をもたらす最高度の情報符号化レベル[第1のレベル(ニューロン):活動電位;第2のレベル(ニューロンネットワーク):ニューロン振動]が構成されると考えられる(Engel et al., Nature Reviews Neuroscience, 2001, 2, 704-716: Dynamic predictions: oscillations and synchrony in top-down processing)。空間及び時間における同期及び非同期の微妙にバランスのとれたパターンが、神経系の機能的性能にとっての基本であるという証拠が出現していることは重要である(Schnitzler et al., Nature Reviews Neuroscience, 2005, 6, 285-296: Normal and pathological oscillatory communication in the brain)。
【0011】
異常な同期プロセス(高すぎる及び/もしくは長すぎる同期性(すなわち、過同期とも呼ばれる)又は低すぎる同期(すなわち、同期障害とも呼ばれる))は、幾つかの脳障害、例えば、てんかん、統合失調症、認知症及びパーキンソン病に関連している(Schnitzler et al., Nature Reviews Neuroscience, 2005, 6, 285-296: Normal and pathological oscillatory communication in the brain)。
【0012】
現在、ニューロンの電気活動パターンの変調(神経変調)は、電気刺激により誘発することができる。脳内に電気刺激を生成するための現在の技術は、直接電気刺激、又は磁気コイルを通る電流の印加による電場誘発のいずれかを利用する。特定の神経障害は脳深部の領域に影響を及ぼし、電場の浸透深さが弱いため、電気刺激を連続的に送達するように、脳内への電極の外科的埋め込みが実施されており、「脳深部刺激」(DBS)技術を構成する。その有効性は、刺激に使用されるパラメータ、特に、周波数により決まる。1987年に、埋め込まれた電極による腹側中間部(VIM)の高周波刺激(≧100Hz)により、パーキンソン病を患う患者の振戦症状が軽減されることが見出された(Benabid et al., Applied Neurophysiology, 1987, 50, 344-346: Combined (thalamotomy and stimulation) stereotactic surgery of the VIM thalamic nucleus for bilateral Parkinson disease)。また、サルでは、高周波刺激(>100Hz)により、低周波刺激(<50Hz)と比較して、外側淡蒼球(GPe)及び内側淡蒼球(GPi)におけるニューロンの一時性の放電パターンの変化(刺激に同期した規則的な放電パターン)が可能となり、この変化により、視床及び脳幹におけるそのターゲット構造への、基底核における神経活動の変化したパターンの伝達が遮断されるため、運動緩徐状及び硬直症状が軽減されることが示されている(Hashimoto et al., The Journal of Neuroscience, 2003, 23(5), 1916-1923: Stimulation of the subthalamic nucleus changes the firing pattern of pallidal neurons)。DBSは、現在、幾つかの運動障害(パーキンソン病、ジストニア、本態性振戦、てんかん)及び精神障害(強迫性障害、うつ病)を処置するために承認されている。
【0013】
しかしながら、幾つかの欠点が、DBSに関連している場合がある。第1の欠点は、この技術の侵襲性及び種々の合併症、例えば、出血、てんかん発作、感染、導線移動、導線破損等のリスクである(Fenoy et al., J Neurosurg, 2014, 120, 132-139: Risks of common complications in DBS surgery: management and avoidance)。
【0014】
ターゲット内に生成された電場の焦点性(すなわち、空間解像能)は、別の懸念事項である。電気刺激の広がりは、抑うつ等の副作用にも関連している。多くの研究では、刺激をシフトさせ、特定の領域内に閉じ込めることができる新たなタイプの電極を設計することに専念してきた(Luan et al., Frontiers in Neuroengineering, 2014, 7(27), 1-9: Neuromodulation: present and emerging methods)。他の技術的側面:電極(又は導線)、そのサイズ、DBS装置の侵襲性、導線を構成する材料、(磁気共鳴)撮像技術との適合性、連続刺激の必要性に関連する内部パルス発生器(IPG)のバッテリー寿命は、評価中である。
【0015】
他の主要な既存のタイプの電気刺激、すなわち、経頭蓋電気刺激又は経頭蓋磁気刺激は、侵襲性ではないという利点を有するが、電場の浸透深さが弱い。したがって、それらの用途は、大脳皮質の刺激に限定される(脳深部には到達できない)。更に、空間解像能は低いままである。
【0016】
本発明は、神経疾患(典型的には、ニューロンネットワークの障害)又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための使用/これらの予防又は処置における使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体(ナノ粒子の凝集体)を扱う。
【0017】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体により、ニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間並びに脳の異なる領域内及び/又は領域間のニューロン振動の同期が正常化される(同期性が改善される)。このため、本発明者らにより本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、対象体/患者が健康/正常な状態に戻るのに役立つ。
【0018】
本発明者らにより本明細書に記載されたナノ粒子及びナノ粒子凝集体は、電流又は電場/電気刺激の印加/誘導を必要とせず、好ましくは、それらの機能を発揮する(すなわち、効率的である)ために、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源への曝露を必要としない。本明細書に記載されたナノ粒子及びナノ粒子凝集体は、本明細書に記載された使用の文脈において機能的であるために、電流又は電場/電気刺激への暴露を必要とせず、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源への曝露を必要としない。本発明者らは、これらのナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電流又は電場/電気刺激に晒されることなく、すなわち、それらが投与される対象体への電流又は電場/電気刺激への暴露なしに、典型的には、例えば、脳深部刺激(DBS)、経頭蓋電気刺激(TES)又は経頭蓋磁気刺激(TMS)により印可される電流又は電場/電気刺激の前記対象体への暴露なしに、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源への曝露なしに、有利に、かつ驚くべきことに効率的に使用することができることを発見した。このことは、本発明により、処置される対象が、電流もしくは電場/刺激、又は任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場もしくは超音波源への曝露の負の副作用を被らないであろうことを意味する。
【0019】
当業者に周知のように、ナノ粒子は、向上した/高い表面/体積比を有し、典型的には、約35%~40% 原子が10nmナノ粒子の表面に局在しており、30nm超のサイズを有するナノ粒子では20%未満であるのと対比できる。この高い表面/体積比は、サイズに依存する強い表面反応性に関連する。その結果、ナノ粒子(特に、20nm未満 ナノ粒子)は、バルク材料と比較して優れた特性を示す場合がある。例えば、金粒子は巨視的スケールでは、化学的に不活性であり、酸化に対して抵抗性であることが公知であるが、10nm未満のサイズを有する金粒子は、化学的に活性な表面を有する。金属ナノ粒子の化学的不安定化に関連する毒性メカニズムは、(i)溶液中での金属の直接放出(溶解プロセス)、(ii)金属ナノ粒子の触媒特性及び(iii)タンパク質を酸化し、反応性酸素種(ROS)を発生させ、酸化ストレスを誘発し得る、ナノ粒子表面の酸化還元性の発生であろう(参照.M. Auffan et al., Environmental Pollution 157 (2009) 1127-1133: Chemical Stability of metallic nanoparticles: a parameter controlling their potential cellular toxicity in vitro)。
【0020】
触媒特性を示す本明細書で上記された金ナノ粒子に加えて、酸化セリウム(7nm-CeO2粒子)又は酸化鉄(20nm-Fe3O4粒子)ナノ粒子は、管内(in vitro)で酸化ストレスに関連する細胞傷害作用につながる表面上の酸化還元性の変容を示した(参照.M. Auffan et al., Environmental Pollution 157 (2009) 1127-1133: Chemical Stability of metallic nanoparticles: a parameter controlling their potential cellular toxicity in vitro)。同様に、11nmシリカナノ構造は、生物学的媒体により浸蝕される(参照.S-A Yang et al., Scientific Reports 2018 8:185: Silica nanoparticle stability in biological media revisited)。
【0021】
このため、本発明者らにより以下に説明されるように、30nm未満のサイズを有するナノ粒子は、対象体、典型的には、ほ乳類、特に、ヒトにおいて体内(in vivo)での使用が意図される場合、注意深く選択されるべきである。
【0022】
簡単な説明
本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、予防又は処置を必要とする対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための使用/これらの予防又は処置における使用のための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の有益性について、初めて記載される。ナノ粒子材料又はナノ粒子凝集体材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0023】
本明細書において、本発明者らは、特定の態様において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場、又は任意の他の外部活性化源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体を記載する。該ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、ここで、
i)集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値が、該材料が導体材料、半導体材料又は200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料である場合、少なくとも30nmであり、ここで、
ii)ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、電解質濃度0.001~0.2M、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度0.01~10g/L及びpH6~8を有する水溶液中で測定された場合に、中性又は負の表面電荷を提供する生体適合性コーティングによりコーティングされている。
【0024】
また、本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、予防又は処置を必要とする対象体における本明細書に記載された神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための組成物を製造するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体の使用も記載される。
【0025】
また、本明細書において、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置に使用するための/対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置する際の使用のための組成物であって、該組成物が、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と薬学的に許容し得る支持体とを含むか、又はこれらからなり、ここで、ナノ粒子材料又はナノ粒子凝集体材料が、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択され、ここで、該予防又は処置が、該組成物を介して対象体に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく行われる、組成物も記載される。
【0026】
更に、本明細書において、少なくとも2種の異なるナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含むか又はこれらからなり、各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から典型的に選択される異なる材料からなる、キット及び、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置/これらを予防し又は処置するための方法におけるその使用が記載される。
【0027】
詳細な説明
ヒト神経系は、およそ800億~1200億個の神経細胞からなると推定される(Herculano-Houzel S. Frontier in Human Neuroscience (2009), 3(31): 1-11, The human brain in numbers: a linearly scaled-up primate brain)。ニューロン(又は神経細胞)を定義する特性は、活動電位の形態で電気信号を伝達するその能力である。
【0028】
ニューロン/神経細胞は、脳の基本ノードを構成する。神経細胞は、高度に構造化された様式で互いに伝達して、ニューロンネットワークを形成することができる。ニューロンは、シナプス結合を介して情報伝達する。ニューロン内では、ナノ回路が、重要なニューロン特性、例えば、学習及び記憶並びにニューロン周期性の発生を媒介するための基礎となる生化学的機構を構成する。
【0029】
マイクロ回路は、ほんの数個の相互接続されたニューロンにより形成することができ、高度な作業、例えば、媒介反射、プロセス感覚情報、運動開始並びに学習及び記憶の媒介を行うことができる。マクロ回路は、複数の埋め込みマイクロ回路からなるより複雑なネットワークである。マクロ回路は、より高い脳機能、例えば、物体認識及び認知を媒介する。したがって、複数のレベルのネットワークが神経系を占めている。
【0030】
神経ネットワークの興奮性
ニューロンは、電気化学的にメッセージを送信する(すなわち、化学物質/イオンにより、電気信号が生じる)。神経系における重要なイオンは、ナトリウム及びカリウム、カルシウム及び塩化物である。ニューロンが信号を送信していない時は、「静止状態」である。ニューロンが静止している時は、ニューロンの内部は外部に対して負である。種々のイオンの濃度は膜の両側で釣り合わせようと試みられるが、釣り合わすことはできない。細胞膜により、一部のイオンのみがチャンネル(イオンチャンネル)を通過することができるためである。これらの選択的イオンチャンネルに加えて、エネルギーを使用して、ニューロンに入った2つのカリウムイオン毎にニューロンから3つのナトリウムイオンを外に移動させるポンプが存在する。最後に、これらの力が全て釣り合い、ニューロンの内部と外部との間の電圧の差が測定された場合、ニューロンの静止膜電位(また「静止電位」)は、約-70mVである。これは、ニューロンの内部が外部よりも70mV低いことを意味する。静止時には、ニューロンの外部には、比較的多くのナトリウムイオンが存在し、そのニューロンの内部には、より多くのカリウムイオンが存在する。活動電位(「スパイク」又は「インパルス」としても特定される)は、ニューロンが細胞体から離れて軸索を下って情報を送信する時に生じる。これは、何らかの事象(刺激)が静止電位を0mVに向かって移動させることを意味する。脱分極が約-55mVに達すると、ニューロンは、活動電位によって放電する。脱分極がこの臨界閾値レベルに達しない場合には、活動電位によっては放電しない(オン/オフ機構)。また、閾値レベルに達すると、固定された大きさの活動電位により、常に放電する。したがって、脱分極が閾値に達しないか又は完全な活動電位が生成されるかのいずれかである。
【0031】
活動電位の伝播速度には、大きな変動が見られる。実際に、神経における活動電位の伝播速度は、毎秒100メートルから毎秒10分の1メートル未満まで変化することができる。時定数は、膜が刺激に対して時間的にどのくらい迅速に応答するであろうかの指標であるが、空間定数(また長さ定数)は、電位が距離の関数としての軸索に沿ってどのくらい良好に広がるであろうかの指標である。
【0032】
ニューロンネットワーク内及びニューロンネットワーク間の接続性
脳内及び脳を横切る伝達を調査するために使用される3つの接続性ネットワークタイプが存在する。構造的接続性は、脳の領域を物理的に接続する繊維構造径路の検出に基づいている。これらは、信号が脳内を移動することができる可能性のある経路を示す解剖学的ネットワークマップである。機能的接続性は、相関する活動の類似の周波数、位相及び/又は振幅を有する脳領域における活動を特定する。効果的接続性は、機能的な接続性情報を使用し、更に一工程進み、1つの神経系が別の神経系に対して有することができる直接的又は間接的な影響、より具体的には脳内の動的な情報フローの方向を決定する(Bowyer et al., Neuropsychiatric Electrophysiology, 2016, 2(1), 1-12: Coherence a measure of the brain networks: past and present)。
【0033】
ニューロンネットワーク内の同期された活動は、脳磁気図(MEG)、脳波図(EEG)、機能的磁気共鳴撮像(FMRI)又はポジトロン放射断層撮影(PET)、ついで、画像をネットワーク接続性分析に使用して、検出することができる。MEG(脳磁気図)又はEEG(脳波図)が好ましい。情報の動的なフローを解像するのに高い時間解像能を有するためである。脳の接続性分析は、脳が機能するのに必要な伝達ネットワークをマッピングするために行われる。脳内の特定の領域は、特定のタイプの情報を処理するために特化している。画像化技術は、これらの領域が脳内のネットワークを横切って他の特化した領域と接続され、伝達することを明らかにした。「コヒーレンス」(Bowyer et al., Neuropsychiatric Electrophysiology, 2016, 2(1), 1-12: Coherence a measure of the brain networks: past and present.)は、振動する脳活動のニューロンパターンの同期性(同期している状態又は同期された状態)の周波数及び振幅を定量化する数学的技法である。ニューロンの同期活動の検出は、ヒトの脳における機能的接続性の健全性又は完全性を決定するのに使用することができる。機能的接続性マップを構造的接続性画像上に重ね合わせ、有効接続性から導出された情報フローの方向を使用することにより、脳がどのように機能するかの包括的な理解が提供される。これらの技法は、処置前後の脳接続性画像化に基づいて、治療処置を評価するのに役立つ。
【0034】
損傷を受けていない(すなわち、「正常」又は「健康」な)脳は、遅いデルタ波(0.5~4Hz)からシータ(4~8Hz)、アルファ(8~12Hz)、ベータ(15~30Hz)及びガンマ(30~70Hz)波までの、生物の異なる「状態」に関連する(「正常」又は「健康」な)同期活動の複雑なパターンを表わす。興味深いことに、皮質構造の分離された培養物は、緻密に相互接続されたニューロンの集団におけるネットワーク放電(スパイク)及びネットワークバースト(一団のスパイク)の出現、発生及び広がりを制御する規則性の試験のための便利なシステムを提供する。ネットワーク活動は、非侵襲的な様式で、多電極アレイを使用して有限の時間解像能により、長期間記録することができる。二次元分離培養物は、脳におけるネットワーク活動の形成及び維持を制御する規則性を研究するための実行可能な試験システムとして使用することができ、このシステムにより、損傷を受けていない脳において対処することができない仮説の試験が可能となる(Cohen E. et al., Brain Research, 2008, 1235, 21-30: Determinants of spontaneous activity in networks of cultured hippocampus)。
【0035】
本明細書において初めて、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、予防又は処置を必要とする対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための使用/これらの予防又は処置における使用のための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の利点が記載される。(治療的又は診断的)電場へのこのような暴露、又は任意の他の(治療的又は診断的)外部活性化源、例えば、光源、磁場もしくは超音波源へのこのような暴露は、典型的には、本明細書において、医療スタッフにより、例えば、医師又は看護師により典型的に行われる治療的又は診断的暴露であると理解されたい。
【0036】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0037】
「処置」という用語は、本明細書に記載された疾患、障害又は機能不全状態を予防し、軽減し又は治癒することができる治療的処置又は手段を指す。このような処置は、同処置を必要とするほ乳類の対象体、好ましくは、ヒトの対象体に対して意図される。このように、本明細書に記載された疾患、障害もしくは機能不全状態を患っていると既に特定されている(診断されている)対象体、又は処置が予防的処置、又は予防を意図する処置であるこのような疾患、障害もしくは機能不全状態に「進行するリスクがある」と考えられる対象体が考えられる。
【0038】
特定の態様では、対象体は、てんかんを患っている対象体ではない。
【0039】
ニューロン間の振動伝達の異常な変調は、実際には、異なるタイプの神経疾患又は障害(本明細書では、「神経(neural)疾患又は障害」としても特定される)に存在する(Uhlhaas et al., Neuron, 2006, 52, 155-168: Neural synchrony in brain disorders: relevance for cognitive dysfunctions and pathophysiology;Basar E. et al. International Journal of Psychophysiology 103 (2016) 135-148, What does the broken brain say to the neuroscientist? Oscillations and connectivity in schizophrenia, Alzheimer’s disease, and bipolar disorder)。
【0040】
ヒトの神経系は、中枢神経系(CNS)と末梢神経系(PNS)とに分けられる。次に、CNSは脳と脊髄とに分けられ、それぞれ頭蓋の頭蓋腔と脊柱管に存在する。CNS及びPNSは協調して動作し、感覚情報を統合し、運動及び認知機能を制御する。
図1に、脳構造の簡略図を示す。
【0041】
ニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間の同期(又は同期化)、脳の異なる領域内及び/又は領域間における同期(又は同期化)は、ニューロン振動の協調を通じて時間的に行われる(Buzsaki et al., Science, 2004, 304, 1926-1929: Neuronal oscillations in cortical networks)。
【0042】
運動障害は、典型的には、過同期によるものであり、過同期は、脳波図(EEG)において典型的に観察される脳の異なる領域内及び/又は領域間におけるニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間の振動の同期化が、健康/正常な対象体と比較した場合、高すぎる及び/又は長すぎる(過剰である)ことを意味する。
【0043】
対象体における精神障害及び認知障害は、典型的には、同期障害によるものであり、同期障害は、EEGにおいて典型的に観察される脳の異なる領域内及び/又領域間におけるニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間の振動の同期が、健康/正常な対象体と比較した場合、低下し(典型的には、活性の低下を示し)又は消失さえする、すなわち、検出できないことを意味する[参照.表1:神経障害における異常な神経同期(Uhlhaas et al., Neuron, 2006, 52, 155-168: Neural synchrony in brain disorders: relevance for cognitive dysfunctions and pathophysiologyから採用)]。
【0044】
【0045】
「コヒーレンス」は、振動する脳活動のニューロンパターンの対象体における同期性(同期している状態または同期された状態)の周波数および振幅を定量化する数学的技法であるため、健康/正常な対象体と比較した場合、高すぎるコヒーレンス及び低すぎるコヒーレンスはそれぞれ、運動障害及び精神/認知障害に関与すると考えることができる(Bowyer et al., Neuropsychiatric Electrophysiology, 2016, 2(1), 1-12: Coherence a measure of the brain networks: past and present)(参照.
図2)。
【0046】
特定の態様では、本発明の文脈においてターゲットとされる神経疾患又は障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、強迫性障害、自閉症圏障害、抑うつ障害、ジストニア、トゥーレット症候群、統合失調症、脳卒中、失語症、認知症、耳鳴り、ハンチントン病、本態性振戦、双極性障害、不安障害、中毒障害、意識植物状態(consciousness vegetative state)から選択され、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、強迫性障害、自閉症圏障害、抑うつ障害、ジストニア、トゥーレット症候群、統合失調症、脳卒中、失語症、認知症、耳鳴り、ハンチントン病、本態性振戦、双極性障害、中毒障害、意識植物状態及びそれらの少なくとも1つの症状から選択される。
【0047】
本明細書において上記で既に説明されたように、神経疾患又は障害は、本明細書において以下で更に詳述されるように、運動障害、精神(心的状態/社交)障害及び認知障害である患者に影響を及ぼす主要な症状に応じて分類することができる。
【0048】
運動障害の例
パーキンソン病
パーキンソン病(PD)は、世界中で約700万~1,000万人が罹患し、振戦、運動機能異常、運動緩徐、すくみ足歩行等を特徴とする。PDは、ゆっくり進行する脳の変性疾患である。PDは、基底核及び黒質と呼ばれる脳の領域の神経細胞に影響を及ぼす。黒質における神経細胞はドーパミンを産生し、ドーパミンは、身体運動を意図し制御するのに重要な脳回路内の化学メッセンジャーとして作用する神経伝達物質である。PDでは、黒質のドーパミン産生神経細胞は、一部の個体において早期に死滅する(Corti et al., Physiol Rev, 2011, 91, 1161-1218: What genetics tells us about the causes and mechanisms of Parkinson’s disease)。線条体におけるドーパミンレセプターが十分に刺激されない場合、基底核の一部は、過少刺激又は過剰刺激のいずれかとなる。特に、視床下核(STN)は過剰活性になり、内側淡蒼球(GPi)上の促進体として作用する。GPiの過剰刺激は、視床に対して過剰阻害作用を有し、この作用により、次に、その出力が低下し、運動の減速及び硬直が生じる(Guo et al., Frontiers in Computational Neuroscience, 2013, 7, 124, 1-11: Basal ganglia modulation of thalamocortical relay in Parkinson’s disease and dystonia)。
【0049】
PDにおけるドーパミンの欠如は、皮質-基底核運動ネットワーク全体にわたるベータ周波数における過剰な振動同期に関連している。実際に、基底核におけるドーパミンレベルは、β同期性を抑制すると予測され、同抑制は、次に、運動の事前処理に必要なドーパミン作動性の関与を調節する(Jenkinson et al., Trends in Neuroscience, 2011, 34(12), 611-618: New insights into the relationship between dopamine, beta oscillations and motor function)。基底核におけるドーパミンレベルが十分に高くない場合には、ベータ振動の同期性がもはや制御されず、運動の遅延が現れる場合がある。パーキンソン病患者における別の観察から、ベータ帯域における皮質振動が、基底核におけるベータ振動をもたらし、駆動するという結論が導かれる(Lalo et al., The Journal of Neuroscience, 2008, 28(12), 3008-3016: Patterns of bidirectional communication between cortex and basal ganglia during movement in patients with Parkinson disease)。
【0050】
深部脳刺激(DBS)は、振戦及び硬直の症状を処置するのに使用することができる(Eusebio et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry, 2011, 82, 569-573: Deep brain stimulation can suppress pathological synchronization in parkinsonian patients)。DBSによるPD症状の処置は、2002年からFDAにより承認されている(本態性振戦については1997年から)。電気刺激は典型的には、基底核、STN及びGPiにおいて行われる。上記で言及したように、皮質ベータ振動も、疾患の病態生理に関与するため、皮質の経頭蓋刺激(例えば、経頭蓋磁気刺激-TMS)を使用して、パーキンソン病の症状を処置することもできる(Cantello et al., Brain Research Reviews, 2002, 38, 309-327: Transcranial magnetic stimulation and Parkinson’s disease)。
【0051】
ジストニア
ジストニアは、運動系機能の障害を反映する、異常な、不随意の捻転及び回転運動を特徴とする神経障害である。症状に冒された身体の部分、それらの遺伝的起源、関与する神経伝達物質のタイプ等に応じて、幾つかの形態のジストニアが存在する。ジストニアの中枢神経系(CNS)の抑制が不完全となり、これにより、対向する筋肉間の相互脊椎抑制喪失が引き起こされる。例えば、上部ジストニアの場合、入力信号を前腕拮抗筋に与えるニューロン/神経の異常な同期により、これらの拮抗筋の共収縮(ジストニアの症状)がもたらされる(Farmer et al., Brain, 1998, 121, 801-814: Abnormal motor unit synchronization of antagonist muscles underlies pathological co-contraction in upper limb dystonia)。
【0052】
興味深い抗ジストニア作用を示すDBS標的点は、内側淡蒼球である(GPi-DBS)。GPi-DBSは、慢性の医学的難治性ジストニアを患う患者に対して2003年にFDAにより承認された(Hu et al., Translational Neurodegeneration, 2014, 3(2), 1-5: Deep brain stimulation for dystonia)。視床の腹側部中間(VIM)核の刺激(VIM-DBS)の効果は、はるかに弱い。視床下核を使用する刺激(STN-DBS)は、経験的なものであった。GPi-DBSにより、ジストニアの主な症状が軽減されるが、治療効果が完全に発現するのには、数週間から数ヶ月かかる場合がある(Dressler et al., J Neural Transm, 2015, DOI 10.1007/s00702-015-1453-x: Strategies for treatment of dystonia)。
【0053】
てんかん
てんかんは、世界中で約5000万人が罹患する脳障害であり主に、てんかん発作と呼ばれる正常な脳機能の再発性かつ予測不能な中断により特徴付けられる。てんかんは単独の疾患実体ではなく、多くの異なる原因(遺伝的突然変異、脳腫瘍、頭部外傷、脳卒中、アルコール中毒、脳の炎症;髄膜炎、HIV又はウイルス性脳炎等の感染症)に起因するであろう基礎脳機能障害を反映する各種の障害である(Fisher et al., Neurology, 2015, 28(2), 130-135: Redefining epilepsy)。てんかん発作は、脳における過剰な同期性ニューロン活動による徴候及び/又は症状の一過性の発生と定義される(Fisher et al., Epilepsia, 2005, 46(4), 470-472: Epileptic seizures and epilepsy: definitions proposed by the International League Against Epilepsy (ILAE) and the International Bureau for Epilepsy (IBE))。大脳皮質は、てんかん発作の発生における主要な要素であり、多くの人々は、限局性前頭葉発作又は内側側頭葉発作と診断される(National Institute of Neurological Disorders and Stroke: http://www.ninds.nih.gov/disorders/epilepsy/detail_epilepsy.htm#3109_7)。皮質における上昇した局所同期領域又は「過同期」領域の特定から、局所過同期が発作発生領域のマーカーである場合があることが示唆される(Schevon et al., Neuroimage, 2007, 35(1), 140-148: Cortical abnormalities in epilepsy revealed by local EEG synchrony)。
【0054】
てんかんの処置のための神経刺激は、末梢神経刺激、例えば、迷走神経刺激(VNS)、脊髄刺激、経頭蓋脳刺激(TES又はTMS)又は深部脳刺激(DBS)の形態をとることができる。応答性神経刺激は、別の戦略である。この場合、刺激は、発作開始が検出された場合にのみ実行される。VNS及び応答性神経刺激は両方とも、米国において特定のタイプのてんかんの処置について、FDAにより承認されている。視床前核(ANT)のDBSは、欧州連合諸国で承認されている(Fisher et al., Nature Reviews Neurology, 2014, 10, 261-270: Electrical brain stimulation for epilepsy)。
【0055】
精神障害(心的状態/社交障害)の例
強迫性障害(OCD)
強迫性障害(OCD)は、多くの場合、慢性的で、重度で、極端に衰弱する一般的な精神障害である。また、強迫性障害は、通常、処置に対して無反応であり、かなりの割合の患者が、応答しないか又は部分的な軽減を得るのみである。
【0056】
機能的神経画像処理研究により、眼窩前頭皮質、基底核及び線条体における機能不全が実証されている。
【0057】
ある研究により、急性OCD症状が視床下核(STN)、特に、左半球及びデルタ-アルファ(1~12Hz)周波数範囲における異常な高振動活動に関連する場合があることが示された(Bastin et al., Cortex, 2014, 60, 145-150: Changes of oscillatory activity in the subthalamic nucleus during obsessive-compulsive disorder symptoms: two case reports)。更に、一部の視床下ニューロンは、確認作業の間に疑いが生じた場合に、それらの放電速度を特異的に増加させた(Burbaud et al., brain, 2013, 136(1), 304-317: Neuronal activity correlated with checking behavior in the subthalamic nucleus of patients with obsessive-compulsive disorder)。
【0058】
内包の腹側前脚(VC)及び隣接する腹側線条体(VS)のDBSは、重症かつ高度処置抵抗性OCD(VC/VS-DBS)の処置についてEUにおいて承認された。
【0059】
自閉症圏障害
自閉症は、社会的相互関係及びコミュニケーションの欠損、並びに異常に制限された反復行動により定義される神経発達症候群である。自閉症は、通常、乳児期、遅くとも生後3年以内に始まる障害である。自閉症は、不均一な状態であり(自閉症を患っているどの2名の小児又は成人も同様のプロファイルを有することはない)、この状態から、「自閉症圏障害」の概念がもたらされ、言語欠損の程度又は全体的な認知遅延に従って、及び社会的又は行動的症状の重症度に従って、疾患をいくつかのレベルに分類する(Lord et al., Neuron, 2000, 28, 355-363: Autism spectrum disorders)。この圏内の一端では、自閉症を有する個体は高機能であり、自分自身で生活し、雇用を維持することが可能である。低機能として特徴付けられる個体は、より重篤な症状、すなわち、言語(又は非言語も)に対する困難、貧弱な社会的コミュニケーション、自傷行動(SIB)、癇癪及び潜在的に生命を脅かすおそれがある攻撃性を示す。社会感情的処理のためのネットワークの関与、すなわち辺縁系、顔面処理系及びミラーニューロンネットワークの関与が、自閉症における脳の構造的及び機能的研究における重要な傾向となっている。ガンマ帯域振動の同期性の欠損は、症状の出現に関与することが示されている(Sinha et al., Neurosurgery Focus, 2015, 38(6), E3: Deep brain stimulation for severe autism: from pathophysiology to procedure)。
【0060】
重度の自閉症における処置を必要とする場合がある2つの主要な症状範囲は、会話に対する非言語性及び非応答性、並びに生命を脅かすおそれがあるSIBを含む、社会的欠損である。扁桃体は、これらの異常な病態生理において重要な役割を果たしていると考えられる。興奮性又は抑制性制御の変化は、自閉症の病態生理の異常を含意している。DBSによる扁桃体をターゲットとする神経変調は、重度の自閉症患者に対する治療的介在に相当するといえる。3例のDBS処置が文献に報告された。処置の目的は、主に、疾患に関連する運動障害、例えば、定型行動(反復運動パターン)及び自傷行動(SIB)を軽減することであった(Sinha et al., Neurosurgery Focus, 2015, 38(6), E3: Deep brain stimulation for severe autism: from pathophysiology to procedure;Stocco et al., Parkinsonism and related disorders, 2014, 20, 1035-1036: Deep brain stimulation for severe secondary stereotypies)。3例のうち1例では、外側基底核におけるDBSにより、自閉症関連症状、例えば、社会的接触の顕著な改善がもたらされ、変調及び夜間睡眠に影響を及ぼすことが報告された(Sturm et al., Frontiers in Human Neuroscience, 2013, 6, 341, 1-10)。
【0061】
統合失調症
統合失調症は、とりわけ、下記症状、すなわち、異常な精神活動を反映する陽性症状(幻覚及び妄想);通常存在する精神機能の欠損に対応する陰性症状(思考障害、感情鈍化、言語困難)により特徴付けられる慢性精神疾患である。生涯にわたる障害の原因として、統合失調症は、上位10位以内に位置する。
【0062】
脳表面上での顕著な脳室拡大及び脳脊髄液の増加から、脳が萎縮していることが示唆される。この灰白質の喪失及びニューロン上のシナプス構造数の減少から、統合失調症が神経発達障害であることが示唆される、このことは、脳の異常が(神経変性障害とは対照的に)初期症状を有する患者に既に存在することを意味する。
【0063】
統合失調症患者において、観察された神経回路の障害は、ガンマ帯域同期化の機能不全に起因することが実証されている(Spencer et al., The Journal of Neuroscience, 2003, 23(19), 7407-7411: Abnormal neural synchrony in schizophrenia;Gallinat et al., Clinical Neurophysiology, 2004, 115, 1863-1874: Reduced oscillatory gamma-band responses in unmedicated schizophrenic patients indicate impaired frontal network processing)。
【0064】
電気痙攣療法(ECT)、すなわちショック処置は、統合失調症における最も成功した非薬理学的処置の1つであることが実証されている(Payne et al., J. Psychiatr. Pract., 2009, 15(5), 346-368: Electroconvulsive therapy part I: a perspective on the evolution and current practice of ECT)。電気痙攣療法(ECT)は、脳への電流の連続的な印加を含み、この印可により、てんかん発作に匹敵する発作が引き起こされる。
【0065】
統合失調症の対症療法のための電気刺激も、DBSにより可能である。例えば、抑うつ状態における側坐核(NAcc)のDBSにより、無快感の寛解傾向、すなわち、快感の回復がもたらされる(Schlaepfer et al., Neuropsychopharmacology, 2008, 33, 368-377: Deep brain stimulation to reward circuitry alleviates anhedonia in refractory major depression)。
【0066】
認知障害の例
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、神経変性障害であり、精神的、行動的、機能的低下及び学習能力の進行性喪失をもたらす。2013年現在、推定520万人の米国人が、ADを患っており、約200,000人が、65歳未満であり、500万人が、65歳以上である(Alzheimers Dement. 2013, 9(2), 208-245: 2013 Alzheimer’s disease facts and figures)。
【0067】
近年の証拠から、アルツハイマー病に見られる認知障害が神経-認知ネットワークの機能的切断に関連することが示されている。大域的EEG同期化の分析から、デルタ帯域同期化の増加に付随して、アルファ帯域、ベータ帯域及びガンマ帯域同期化の広範な減少が明らかとなっている。軽度のアルツハイマー病の患者において、ベータ帯域同期化の喪失は、認知障害と相関することが示されている(Schnitzler et al., Nature Reviews Neuroscience, 2005, 6, 285-296: Normal and pathological oscillatory communication in the brain)。アルツハイマー病の処置のためのDBSの可能性を評価するために、臨床研究が進行中である。
【0068】
ナノ粒子
本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための/これらの予防又は処置における使用のための本発明に従った使用のための、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が記載される。ここで、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0069】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の寸法又はサイズ
本発明の趣旨において、「ナノ粒子」又は「ナノ粒子凝集体」という用語は、ナノメートル範囲、典型的には、1nm~1000nm又は1nm~500nm、例えば、少なくとも10nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも30nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも40nm~約500nmもしくは約1000nm、少なくとも45nm~約500nmもしくは約1000nm、好ましくは、500nm未満のサイズを有する製品、特に、合成製品を指す。
【0070】
「ナノ粒子凝集体」又は「ナノ粒子凝集体」という用語は、互いに強く結合、典型的には、共有結合したナノ粒子の集合体を指す。
【0071】
電子顕微鏡、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は低温TEMを使用して、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズ、より具体的には、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体のコア、すなわち、その生体適合性コーティングを含まないナノ粒子又はナノ粒子凝集体のサイズを測定することができる。実際に、生体適合性コーティングは、一般的には、主に軽い構成要素からなる化合物(ポリマー又は有機化合物)から調製され、そのエネルギー電子との弾性相互作用は比較的弱く、その結果、画像コントラストが低くなる。TEMは、電子透過性基板上に堆積した粒子の投影像を測定する。典型的には、サンプル当たりに約50超、好ましくは、約100、150又は200超 ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の記録を、サイズ評価のために測定するべきである。したがって、約50超又は好ましくは約100、150もしくは200超 のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の記録により、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアサイズを確認することが可能となる。典型的なアッセイプロトコールは、「NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-7; Measuring the size of using transmission electron microscopy (TEM); version 1.1 December 2009」に見出すことができる。
【0072】
同様に、動的光散乱(DLS)を使用して、溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の流体力学的直径(すなわち、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のそのコア及びその生体適合性コーティングの両方を含む直径)を測定することができる。流体力学的直径は、分析物と同じ速度で拡散する等価硬質球体の直径である。典型的なアッセイプロトコールは、「NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-1; Measuring the size of nanoparticles in aqueous media using batch-mode dynamic light scattering; version 1.1 February 2010」に見出すことができる。DLS測定から得られる粒径の結果は、他の技術(例えば、電子顕微鏡法)から得られる結果と一致しない場合がある。これは部分的には、実際に測定される物性の違い(例えば、流体力学的拡散 対 投影面積)による。更に、DLSは、少量の大粒子又は小粒子の集合体の存在に敏感である。一方、電子顕微鏡法は典型的には、一次粒子のサイズ(すなわち、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアサイズ)を反映する(参照.NIST - NCL Joint Assay Protocol, PCC-1; Measuring the size of nanoparticles in aqueous media using batch-mode dynamic light scattering; version 1.1 February 2010)。
【0073】
これらの2つの方法、DLS及び電子顕微鏡法は、更に、サイズ測定値を比較し、前記サイズを確認するために、次々に使用することができる。ナノ粒子及びナノ粒子凝集体のサイズを測定するのに好ましい方法は、DLSである(参照.International Standard ISO22412 Particle Size Analysis- Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation (ISO) 2008)。溶液中のDLSにより測定されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径は、強度によるサイズ分布として表わされ(光散乱強度は粒径に比例する)、室温(約25℃)で測定される。
【0074】
典型的には、最大寸法又はサイズは、丸形もしくは球形のナノ粒子の直径又は卵形もしくは楕円形のナノ粒子の最長の長さである。
【0075】
本明細書で定義されたナノ粒子又は凝集体の最大寸法は、典型的には、約2nm~約250nm又は約500nm、好ましくは、約4nm又は10nm~約100nm又は約200nm、更により好ましくは、約(好ましくは少なくとも)10nm~約150nm、約(好ましくは少なくとも)30nm~約150nm、約(好ましくは少なくとも)40nm~約500nm、約(好ましくは少なくとも)45nm~約500nm、好ましくは、500nm未満である。
【0076】
溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径が測定される場合、DLS技術が典型的に使用される。DLSを使用すると、溶液中のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の平均流体力学的直径は、典型的には、約10nm~約500nm、好ましくは、約10nm又は約30nm~約100nm又は約500nm、更により好ましくは、約10nm又は約30nm~約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm又は約500nmである。
【0077】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが測定される場合、電子顕微鏡技術が典型的に使用される。電子顕微鏡法を使用すると、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値(本明細書において、「最大寸法中央値」とも特定される)は、典型的には、約5nm~約250nm又は約500nm、好ましくは、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm又は約45nm~約75nm、約76nm、約77nm、約78nm、約79nm、約80nm、約81nm、約82nm、約83nm、約84nm、約85nm、約86nm、約87nm、約88nm、約89nm、約90nm、約91nm、約92nm、約93nm、約94nm、約95nm、約96nm、約97nm、約98nm、約99nm、約100nm、約101nm、約102nm、約103nm、約104nm、約105nm、約106nm、約107nm、約108nm、約109nm、約110nm、約111nm、約112nm、約113nm、約114nm、約115nm、約116nm、約117nm、約118nm、約119nm、約120nm、約121nm、約122nm、約123nm、約124nm、約125nm、約130nm、約140nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm又は約500nmである。
【0078】
典型的には、電子顕微鏡ツールを使用して、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを測定する場合、ナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズは、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm又は約45nm~約75nm、約76nm、約77nm、約78nm、約79nm、約80nm、約81nm、約82nm、約83nm、約84nm、約85nm、約86nm、約87nm、約88nm、約89nm、約90nm、約91nm、約92nm、約93nm、約94nm、約95nm、約96nm、約97nm、約98nm、約99nm、約100nm、約101nm、約102nm、約103nm、約104nm、約105nm、約106nm、約107nm、約108nm、約109nm、約110nm、約111nm、約112nm、約113nm、約114nm、約115nm、約116nm、約117nm、約118nm、約119nm、約120nm、約121nm、約122nm、約123nm、約124nm、約125nm、約130nm、約140nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm又は約520nmに含まれる。
【0079】
ナノ粒子の組成
導体材料から調製されるナノ粒子
導体材料から調製されるナノ粒子は、有機ナノ粒子又は無機ナノ粒子である。
【0080】
導体材料から調製される無機ナノ粒子は、典型的には、標準水素電極に対して25℃及び圧力1atmで典型的に測定された場合(「reduction reactions having E° values more positive than that of the standard hydrogen electrode」, 8-25, Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88thEditionの表2を参照のこと)、約0.01以上、より好ましくは、約0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5以上の標準還元電位E°値を有する金属元素により調製される。ナノ粒子を調製するのに使用される代表的な金属元素は、Tl、Po、Ag、Pd、Ir、Pt、Au及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、ナノ粒子を調製するための導体材料として使用可能な金属元素は、Ir、Pd、Pt、Au及びそれらの混合物から選択され、更により好ましくは、Au、Pt、Pd及びそれらの任意の混合物から選択される。特に好ましい材料は、Au及びPtである。
【0081】
典型的には、金ナノ粒子が、それらのサイズが数nmに小さくなった場合に、触媒活性を示した(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。表面/体積比を小さくすることにより、触媒活性に対する無機ナノ粒子の表面の寄与を最小にするために、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値が、少なくとも30nm、典型的には、少なくとも40nm又は少なくとも45nmであることが好ましい。興味深いことに、本発明者らは、集団のナノ粒子もしくはナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値が45nmに等しい、及び/又はナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子もしくはナノ粒子凝集体のコアサイズが42nm~49nmの金ナノ粒子が、試験された金ナノ粒子が同じ金濃度を含有する(参照.実施例9及び10)にも拘らず、集団のナノ粒子のコアの最大サイズ中央値が15nmに等しい、及び/又はナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子もしくはナノ粒子凝集体のコアサイズが14nm~16nmの金ナノ粒子よりも、ニューロンネットワークに対するMPP+誘発機能的効果を予防し/該MPP+誘発機能的効果から救済するのに、より効率的であったことを発見した。
【0082】
導体材料から調製される有機ナノ粒子は、典型的には、その構造中に連続するsp2混成炭素中心(すなわち、炭素二重結合又又は芳香環であって、芳香環内もしくは芳香環外に、ヘテロ原子、典型的には、NもしくはSを含む)を有する有機材料により調製される。好ましい有機材料は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリピレン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及び/又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネートから選択される。
【0083】
特定の態様では、該材料が本明細書に上記された導体材料である場合、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値は、本明細書に上記されたように、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満、例えば、45nmであり;前記導体材料は特に、金属材料、典型的には0.2超の標準還元電位E°を有する金属、又は有機材料、典型的には、その構造中に連続するsp2混成炭素中心を有する有機材料、好ましくは、本明細書に上記された金属材料、特に、Au、Pt、Pdのいずれか1つ及びそれらの任意の混合物である。
【0084】
半導体材料から調製されるナノ粒子
半導体材料から調製されるナノ粒子は、典型的には、無機ナノ粒子である。
【0085】
無機ナノ粒子は、典型的には、その価電子帯と伝導帯との間に比較的小さいエネルギーバンドギャップ(Eg)を示す半導体材料により調製される。典型的には、半導体材料は、室温(約25℃)で典型的に測定された場合、3.0eV未満のバンドギャップEgを有する(例えば、Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Editionの表12~77、表3を参照のこと)。特定の態様では、該材料は、本明細書において以下で更に説明されるように、真性半導体材料又は外因性半導体材料である。
【0086】
真性半導体材料は、典型的には、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素、例えば、ケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)、メンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成、例えば、AlSb、AlN、GaP、GaN、InP、InN等、又はメンデレエフ周期表のII族及びVI族からの元素の混合組成、例えば、ZnSe、ZnTe、CdTe等からなる。
【0087】
外因性半導体材料は、典型的には、高度の化学純度で調製された真正半導体を含み又はそれからなり、ここで、真正半導体材料がドーパントを含む。特定の態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の外因性半導体材料が、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素からなる場合、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアによりドーピングされる。このような外因性半導体材料は、負の電荷キャリアが優勢であるn型、又は正の電荷キャリアが優勢であるp型のいずれかであることができる。典型的な外因性p型半導体材料は、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)から選択される荷電キャリアによりドーピングされたケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)からなる。典型的な外因性p型半導体材料は、リン(P)により典型的にドーピングされたケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)からなる。
【0088】
典型的には、ナノ粒子のサイズが10nm未満に減少した場合、半導体ナノ粒子のバンドギャップエネルギーは増大することが示された(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。低い表面/体積比を確保し、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のバルクバンドギャップを3.0eV未満で維持するために、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値が、少なくとも30nm、好ましくは、少なくとも40nmであるのが好ましい。
【0089】
このため、特定の態様では、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値は、該材料が本明細書に上記された半導体材料である場合、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満であり、前記半導体材料は、特に、バンドギャップEgが3.0eV未満の半導体材料、典型的には、メンデレエフ周期表のIVA族からの元素、特に、Al、B、Ga、In及びPから選択される電荷キャリアでドーピングされたメンデレエフ周期表のIVA族からの元素、又はメンデレエフ周期表のIII族及びV族からの元素の混合組成もしくはメンデレエフ周期表のII及びVI族からの元素の混合組成からなる材料である。
【0090】
高い比誘電率(比誘電率(relative permittivity))、すなわち、200以上の比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるナノ粒子
高い比誘電率εijk(比誘電率とも呼ばれる)を有する絶縁体材料から調製され又はそれからなるナノ粒子は、典型的には、室温(約25℃)で典型的に測定された場合、3.0eV以上のバンドギャップEgと、20℃~30℃及び102Hz~赤外周波数で典型的に測定された(例えば、「Permittivity (dielectric constant) of inorganic solid」; Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Edition; Compilation of the static dielectric constant of inorganic solid. K.F. Young and H.P.R. Frederikse. J. Phys. Chem. Ref. Data, Vol. 2, No. 2, 1973の表12~45を参照のこと)200以上の比誘電率εijkとを有する材料により調製される。
【0091】
このようなナノ粒子は、典型的には混合金属酸化物である誘電体材料により調製され、該混合金属酸化物は、好ましくはBaTiO3、PbTiO3、KTaNbO3、KTaO3、SrTiO3、BaSrTiO3等から選択される。
【0092】
典型的には、ペロブスカイトベースの構造であるPbTiO3ナノ粒子は、20nm~30nm未満のナノ粒子サイズについて、それらの常誘電体から強誘電体への転移温度の変化を示す(参照.M. Auffan et al., Nature Nanotechnology 2009, 4(10), 634-641: Towards a definition of inorganic nanoparticles from an environmental, health and safety perspective)。低い表面/体積比を確保し、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の誘電特性を維持するために、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値は、少なくとも30nm、典型的には、少なくとも40nmであるのが好ましい。
【0093】
このため、特定の態様では、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値は、該材料が200以上の高比誘電率εijkを有する本明細書に上記された絶縁体材料、特に、3.0eV以上のバンドギャップEgを有する絶縁体材料、好ましくは、BaTiO3、KTaNbO3、KTaO3、SrTiO3及びBaSrTiO3から選択される混合金属酸化物である場合、少なくとも30nm又は少なくとも40nm、好ましくは、500nm未満である。
【0094】
低い比誘電率(比誘電率)、すなわち、100以下の比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるナノ粒子
低い比誘電率を有する絶縁体材料から調製されるか又はそれからなるナノ粒子は、通常、室温(25℃)で測定された場合の3.0eV以上のバンドギャップEgと、通常、20℃~30℃及び102Hz~赤外周波数で測定された場合(例えば、「Permittivity (dielectric constant) of inorganic solid」; Handbook of chemistry and physics; David R. Lide; 88th Edition; Compilation of the static dielectric constant of inorganic solid. K.F. Young and H.P.R. Frederikse. J. Phys. Chem. Ref. Data, Vol. 2, No. 2, 1973の表12~45を参照のこと)の100以下、好ましくは、50以下又は20以下の比誘電率εijkとを有する材料により、調製されるのが典型的である。
【0095】
このようなナノ粒子は、典型的には、金属酸化物、混合金属酸化物(前記化合物の金属元素は、メンデレエフ周期表の周期3、5もしくは6からの金属元素又はランタニドに由来)及び炭素材料から選択される誘電体材料を用いて調製される。誘電体材料は、好ましくは、Al2O3、LaAlO3、La2O3、SiO2、SnO2、Ta2O5、ReO2、ZrO2、HfO2及びカーボンダイヤモンドから選択される。より好ましくは、誘電体材料は、ReO2、ZrO2、HfO2及びこれらの任意の混合物から選択される金属酸化物である。ZrO2及びHfO2から選択される誘電体材料が特に好ましい。特定の好ましい態様では、誘電体材料又は金属酸化物は、CeO2(酸化セリウム)、Fe3O4(酸化鉄)、SiO2(シリカ)や、これらの任意の混合物ではない。
【0096】
ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の両元素は、4+酸化状態にあり、Zr4+及びHf4+の元素は、サイズ及び化学的性質がほぼ同一である。このため、これら2つのイオンは、それらの水溶性化学を確証する際に共に考慮される(chapter 8, section 8.2 Zr4+ and Hf4+, p. 147 「The hydrolysis of cations」, Baes C.F. & Mesmer R.E.; John Wiley and Sons, Inc. reprint Edition 1986を参照のこと)
【0097】
特定の態様では、集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値は、該材料が本明細書に上記されたように、ReO2、ZrO2、HfO2、好ましくは、ZrO2及びHfO2並びにこれらの任意の混合物から選択される場合、本明細書に上記されたように、少なくとも10nm、好ましくは、500nm未満である。
【0098】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の形状
該粒子又は凝集体の形状は、その「生体適合性」に影響を及ぼす可能性があるため、極めて均質な形状を有する粒子又は凝集体が好ましい。このため、薬物動態学的理由から、形状が本質的に球形、円形又は卵形であるナノ粒子又は凝集体が好ましい。このような形状は、ナノ粒子もしくは凝集体の細胞との相互作用又は細胞による取り込みにも有利である。球形又は円形が特に好ましい。
【0099】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の形状は、典型的には、電子顕微鏡法、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して評価される。
【0100】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の生体適合性コーティング
好ましい実施態様では、目的の組成物を調製するために本発明の文脈において使用されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、ステルス特性を示す薬剤から選択される生体適合性材料によりコーティングすることができる。ステルス特性を示す薬剤は、立体基を示す薬剤であることができる。このような基は、例えば、ポリアクリレート;ポリアクリルアミド(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド));ポリカルバミド;生体高分子;多糖類、例えば、デキストラン又はキシラン;及びコラーゲンから選択することができる。別の好ましい実施態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、生物学的ターゲットとの相互作用を可能にする薬剤から選択される生体適合性材料によりコーティングすることができる。このような薬剤は、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に正又は負の電荷をもたらすことができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に正電荷を形成する薬剤は、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン又はポリリシンであることができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面上に負電荷を形成する薬剤は、例えば、ホスフェート(例えば、ポリホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェート等)、カルボキシレート(例えば、クエン酸塩又はジカルボン酸、特に、コハク酸)又はサルフェートであることができる。
【0101】
好ましい実施態様では、本発明の文脈において使用されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、親水性中性表面電荷を与え、又はナノ粒子に中性表面電荷を付与する親水性剤から選択される生体適合性材料(すなわち、コーティング剤)によりコーティングされる。実際に、本発明のナノ粒子が対象体に投与される場合、親水性中性表面電荷を与えるナノ粒子、又はナノ粒子に中性表面電荷を付与する親水性剤から選択される生体適合性剤によりコーティングされたナノ粒子のコアは、神経疾患を処置するための本明細書に記載されたナノ粒子の使用を最適化するのに特に有利である。
【0102】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、アルコール(R-OH)、アルデヒド(R-COH)、ケトン(R-CO-R)、エステル(R-COOR)、酸(R-COOH)、チオール(R-SH)、糖(例えば、グルコース、フルクトース、リボース)、酸無水物(RCOOOC-R)及びピロールから選択される官能基を示す薬剤であることができる。ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー又はコポリマーであることができる。該薬剤がオリゴマーである場合、オリゴマーは、オリゴ糖、例えば、シクロデキストリンであることができる。該薬剤がポリマーである場合、ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ(乳酸)又はポリヒドロキシアルカン酸)、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン;多糖類、例えば、セルロース;ポリピロール等であることができる。
【0103】
加えて、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面と相互作用可能な特定の基(R-)を示す薬剤であることができる。Rは、典型的には、チオール、シラン、カルボン酸基及びホスフェート基から選択される。
【0104】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが、導体又は半導体及び金属ナノ粒子である場合、Rは、好ましくは、チオール、チオエーテル、チオエステル、ジチオラン又はカルボン酸基である。好ましくは、親水性中性コーティング剤は、チオグルコース、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、チオジグリコール及びヒドロキシ酪酸から選択される。
【0105】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアが、絶縁体及び酸化物又は混合酸化物ナノ粒子である場合、Rは、好ましくは、シラン又はホスフェート基である。好ましくは、親水性中性コーティング剤は、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、フルクトース 6-ホスフェート又はグルコース 6-ホスフェート化合物である。
【0106】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアに中性表面電荷を付与する親水性剤は、双性イオン化合物、例えば、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ビタミン又はリン脂質であることができる。
【0107】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、当業者に周知のように、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度0.01~10g/L、pH6~8及び典型的には、電解質濃度(水中)0.001~0.2M、例えば、0.01M又は0.15Mを有する水(水溶液)中で、ゼータ電位測定により決定されるのが通常である。本明細書において上記定義された条件下で、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-10mV~+10mV(中性表面電荷に対応)、-20mV~+20mV又は-35mV~+35mVに含まれる。中性の場合、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-10mV、-9mV、-8mV、-7mV、-6mV、-5mV、-4mV、-3mV、-2mV又は-1mV~1mV、2mV、3mV、4mV、5mV、6mV、7mV、8mV、9mV又は10mVに含まれる。負の場合、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の表面電荷は、典型的には、-11mV、-12mV、-13mV、-14mV、-15mV、-16mV、-17mV、-18mV、-19mV、-20mV、-21mV、-22mV、-23mV、-24mV、-25mV、-26mV、-27mV、-28mV、-29mV、-30mV、-31mV、-32mV、-33mV、-34mV又は-35mV未満である。
【0108】
ナノ粒子又は凝集体の完全な生体適合性コーティングは、ナノ粒子が親水性中性表面電荷を示す場合、本発明の文脈において、ナノ粒子の表面上のいかなる電荷をも回避するのに有利であることができる。「完全なコーティング」とは、粒子の表面上に少なくとも完全な単層を形成可能なほどの、生体適合性分子の非常に高い密度/緊密さの存在を意味する。
【0109】
生体適合性コーティングにより、特に、生理学的流体(血液、血漿、血清等)等の流体又は医薬品投与に必要な任意の等張性媒体もしくは生理学的媒体中での、ナノ粒子の安定化が可能となる。
【0110】
安定性は、乾燥オーブンを使用する乾燥抽出物定量化により確認することができ、典型的には、0.45μmフィルターでのろ過前後のナノ粒子懸濁液において測定することができる。
【0111】
コーティングにより、体内(in vivo)での粒子の完全性が保存され、その生体適合性を保証又は改善し、その任意の機能化(例えば、スペーサー分子、生体適合性ポリマー、ターゲット化剤、タンパク質等による)が容易になる利点がある。
【0112】
本発明の生体適合性ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、体内(in vivo)投与(すなわち、生理学的pHでの投与)後に、毒性種を溶解放出すべきではなく、酸化還元挙動を示すべきでもない。典型的には、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が生体適合性であると考えられるように、すなわち、対象体、特にほ乳類、好ましくは、ヒトに安全に使用されると考えられるようにするためである。
【0113】
本明細書に記載された別の特定の目的は、上記定義されたナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含み、好ましくは、更に薬学的に許容し得る担体又は媒体を共に含む、組成物、特に、医薬組成物に関する。
【0114】
特に、本明細書において、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における本明細書に記載された神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための使用/これらの予防又は処置における使用のための組成物が記載される。ここで、該組成物は、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る支持体とを含み又はこれらからなり、ここで、ナノ粒子材料又はナノ粒子凝集体材料は、典型的には、本明細書の上記で説明された、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0115】
好ましい態様では、該組成物は、少なくとも2種の異なるナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含み又はこれらからなり、異なる材料からなる各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、典型的には、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される。
【0116】
本発明の典型的な態様では、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、(活性)治療化合物又は薬剤の担体としては使用されない。
【0117】
特定の態様では、該組成物は、本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含み、更に治療剤を共に含むことができる。本発明の文脈において、このような治療剤は、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体ではない。治療剤は、神経障害処置に使用される任意の薬剤から選択することができる。治療剤は、典型的には、抗精神病剤、抗ドーパミン作動剤、ドーパミン作動剤、抗コリン作動剤、コリン作動剤、抗グルタミン酸作動剤、グルタミン酸作動剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、N-メチル D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)アゴニスト、ボツリヌス毒素、抗ジストニア剤、抗てんかん剤、抗痙攣剤、気分安定剤、抗うつ剤及び鎮静剤から選択される。
【0118】
該組成物は、固体、液体(懸濁液中の粒子)、エアロゾル、ゲル、ペースト等の形態にあることができる。好ましい組成物は、液体又はゲルの形態にある。特に好ましい組成物は、液体形態にある。
【0119】
利用される薬学的に許容し得る支持体又は担体は、当業者に任意の古典的な支持体、例えば、生理食塩水、等張性無菌緩衝溶液、非水性媒体溶液等であることができる。
【0120】
また、該組成物は、安定剤、甘味料、界面活性剤、ポリマー等も含むことができる。
【0121】
該組成物は、例えば、アンプル、エアロゾル、ボトル、錠剤、カプセル剤として、当業者に公知の医薬製剤の技術を使用して製剤化することができる。
【0122】
本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、種々の可能な経路、例えば、頭蓋内、静脈内(IV)、気道(吸入)、髄腔内、眼内又は経口経路(経口)、脳室内(ICV)を使用し、好ましくは、頭蓋内又は髄腔内を使用して、対象体に投与することができる。
【0123】
ナノ粒子の反復注射又は投与を、必要に応じて行うことができる。好ましくは、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、1回で投与されるべきである。
【0124】
ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体が投与されると、典型的には、ニューロンの対象体と相互作用する。好ましい態様では、この相互作用は、延長された相互作用、すなわち、数時間、数日、数週間又は数か月の相互作用である。特定の態様では、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、対象体内に留まる。
【0125】
本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体、及びこのようなナノ粒子又はナノ粒子凝集体を含む組成物は、対象体において、典型的には、動物において、好ましくは、ほ乳類において、更により好ましくは、ヒトにおいて、典型的には、ヒトの患者において、その年齢又は性別にかかわらず、使用するためのものである。
【0126】
対象体の大脳皮質、海馬及び/又は偏桃体に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、105~1017個、105~1016個又は105~1015個、好ましくは、107~1014個、より好ましくは、109~1012個である。また、対象体の大脳皮質、海馬及び/又は偏桃体に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、1cm3あたりにナノ粒子又はナノ粒子凝集体102~1012個である。
【0127】
対象体の脳深部に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、104~1017個、104~1016個、104~1015個又は104~1014個、好ましくは、106~1012個、より好ましくは、108~1011個である。また、対象体の脳深部に投与されるナノ粒子又はナノ粒子凝集体の典型的な量は、1cm3あたりにナノ粒子又はナノ粒子凝集体101~1011個である。
【0128】
また、本明細書において、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための方法であって、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体のいずれか1つを対象に投与する工程を含む、方法が記載される。この方法は、典型的には、対象体、より正確には、前記対象体に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場に曝す工程を何ら含まず、好ましくは、対象体、より正確には、前記対象体に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝す工程も何ら含まない。
【0129】
本明細書に記載された更なる目的は、本明細書に記載された少なくとも2種の異なるナノ粒子及び/又は少なくとも2種の異なるナノ粒子凝集体を含み、又はこれらからなり、異なる材料からなる各ナノ粒子又はナノ粒子凝集体が、典型的には、本明細書に記載された、導体材料、半導体材料、200以上の誘電率εijkを有する絶縁体材料及び100以下の誘電率εijkを有する絶縁体材料から選択される、キットに関する。
【0130】
特定の実施態様では、キットは、異なる容器内に、本明細書に記載された異なるナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体(これらは、接触する、典型的には、そのままの位置(in situ)、すなわち、ターゲット部位上での混合;又はターゲット部位での混合物の堆積前に管内(in vitro)もしくは体外(ex vivo)での混合、のいずれかとされることが意図される)を含む。
【0131】
更なる目的は、本明細書に記載されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体とは異なる、少なくとも1種の更なる治療剤を更に含むキットに関する。該治療剤は、例えば、抗精神病剤、抗ドーパミン作動剤、ドーパミン作動剤、抗コリン作動剤、コリン作動剤、抗グルタミン酸作動剤、グルタミン酸作動剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、N-メチル D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)アゴニスト、ボツリヌス毒素、抗ジストニア剤、抗てんかん剤、抗痙攣剤、気分安定剤、抗うつ剤及び鎮静剤であり、当業者であればターゲット疾患の性質に応じて選択することができるであろう。本明細書において、上記説明されたように、このような更なる治療剤は、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体ではない。
【0132】
また、本明細書において、対象体に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における本明細書に記載された神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための方法における、このようなキットの体内(in vivo)、管内(in vitro)又は体外(ex vivo)での使用が記載される。また、本明細書において、対象体に投与されたナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、対象体における神経疾患又はその少なくとも1つの症状の予防又は処置における使用のための、本明細書に記載されたキットが開示される。
【0133】
ニューロンレベルでは、ナノ粒子は、ニューロンの電気的興奮性を向上させ、又は阻害するように記載されている。例えば、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ及び金ナノ粒子は、ニューロンの電気的興奮性を向上させることが見出され、一方、酸化銅、銀、カーボンブラック、酸化鉄及び酸化チタンは、ニューロンの電気的興奮性を阻害することが見出された(Polak P & Shefi O. Nanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicine 11 (2015) 1467-1479, Nanometric agents in the service of neuroscience: Manipulation of neuronal growth and activity using nanoparticles)。
【0134】
コーティングされた銀ナノ粒子(cAgNP)-両親媒性ポリマーであるポリエチレングリコールを使用-[純水中での流体力学的直径13nm±2nm(動的光散乱技術)及びゼータ電位-69mV(Zetasizer Nano)を有するcAgNP]のニューロン系での全身的影響に関する研究から、ナノ粒子が、興奮性に影響する機構の変化を誘発することが示された。その上、ニューロンネットワークシミュレーションから、局所的にcAgNP誘発された変化により、ネットワーク全体においてネットワーク活性の変化がもたらされ、このことから、cAgNPの局所適用により、ネットワーク全体の活性が影響を受ける場合があることが示された(Busse M. et al. International Journal of Nanomedicine 2013:8 3559-3572, Estimating the modulatory effects of nanoparticles on neuronal circuits using computational upscaling)。
【0135】
また、細胞内金ナノ粒子に関連するニューロンの興奮性の向上は、病理学的状態、例えば、発作下でニューロンに対して有害な効果を潜在的に有することが記載されている(Jung S, et al. PLOS ONE 2014, 9(3) e91360, Intracellular gold nanoparticles increase neuronal excitability and aggravate seizure activity in the mouse brain)。
【0136】
本発明のナノ粒子又はナノ粒子凝集体は、脳の異なる領域内及び/又は領域間におけるニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間での振動の同期化を正常化することにより、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を、電場に曝すことなく、好ましくは、任意の他の外部活性化源、例えば、光源、磁場又は超音波源に曝すことなく、神経疾患又はその少なくとも1つの症状を予防し又は処置するための使用/これらの予防又は処置における使用のためのものである。
【0137】
図2及び
図3に図示するように、脳の異なる領域内及び/又は領域間の伝達は、神経疾患において影響を受ける。神経障害及び関連症状によれば、本発明のナノ粒子への脳の特定領域の曝露により、脳の異なる領域内及び/又は領域間におけるニューロンネットワーク内及び/又はニューロンネットワーク間での振動の同期化の正常化(すなわち、コヒーレンスの正常化)により、伝達が改善されるであろう(
図4及び
図5)。
【0138】
下記実施例及びそれらの対応する図面は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図2】
図2.2つのニューロンネットワーク間の過同期及び同期障害。
【
図4】
図4.ナノ粒子(NP)の過同期(運動障害)の正常化についての効果。
【
図5】
図5.ナノ粒子(NP)の同期障害(精神障害及び認知障害)の正常化についての効果。
【
図6】
図6.MPP
+処理及び電気活動記録を伴うパーキンソン病誘発の実験スキーム。マウス腹側中脳/皮質共培養物をE14.5 NMRIマウスから調製し、48ウェルのMEAにおいて3週間培養した(総培養期間)。この培養物を培養7日後(7日目)、ナノ粒子懸濁液(「ナノ粒子」群)、GDNF(20ng/ml)(「参照」群)又は水(「対照」群及び「MPP
+」群)で処理し、8日目に、MPP
+(20μM)(「ナノ粒子」群、「参照」群及び「MPP
+」群)又は水(「対照」群)で処理した。自発活動を21日目に記録した。
【
図7】
図7.電気活動記録から抽出することができる幾つかのパラメータを概説する2つの単純化されたバーストのスキーム。全体的な活動(スパイク、バースト、バースト間隔(IBI)及びバースト周期)及びバースト構造(バースト持続時間、バースト安定期、バースト振幅、バースト間スパイク間隔(ISI)及びバースト面積)を説明するパラメータを示す。これらのパラメータの標準偏差(SD)はそれぞれ、全体的な活動及びバースト構造の規則性の尺度である。時間の変動係数(CVtime)は、各単位の活動パターンの時間的規則性を反映する。CVtimeは、パラメータの標準偏差と平均との比により計算される。ネットワーク間の変動係数(CVnet)は、ネットワーク内のニューロン間の同期を反映する。CVnetは、ネットワークにわたる平均によるパラメータの標準偏差の比により計算される。大きなCVnet値は、ネットワーク全体にわたる活動の広範囲の変動を意味し、より少ない同期化を意味する。
【
図8-1】
図8-1.中脳/皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「MPP
+」群と比較した「ナノ粒子」群(実施例1からのナノ粒子)及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、MPP
+誘発機能的効果が示され、本発明のナノ粒子又はGDNFにより可能となる予防/救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を予防し/救済する能力)が実証される。
【
図8-2】
図8-2.中脳/皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「MPP
+」群と比較した「ナノ粒子」群(実施例2からのナノ粒子)及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、MPP
+誘発機能的効果が示され、本発明のナノ粒子又はGDNFにより可能となる予防/救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を予防し/救済する能力)が実証される。
【
図9】
図9.中脳/皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「MPP
+」群と比較した「ナノ粒子」群(実施例5及び6からのナノ粒子)で観察された機能的効果。データから、MPP
+誘発機能的効果が示され、本発明のナノ粒子により可能となる予防/救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を予防し/救済する能力)が実証される。
【
図10】
図10.「ナノ粒子」群、「参照」群、「対照」群及び「MPP
+」群についての効果スコア分析。
【
図11】
図11.アミロイドベータ1-42(Aベータ1-42)を用いたアルツハイマー病の誘発、処置及び電気活動記録の実験スキーム。4週間の培養(培養期間)後、Aベータ1-42(100nM)(「ナノ粒子」群、「参照」群及び「Aベータ」群)又は水(「対照」群)(T0)をニューロンネットワークに加えた。4時間後、ナノ粒子懸濁液(「ナノ粒子」群)、ドネペジル(300nM)(「参照」群)又は水(「対照」群及び「Aベータ」群)を加えた。自発活動を下記のように記録した。 -T0(Aベータ1-42の添加前) -T0+1h、+2h、+3h、+4h(ナノ粒子、ドネペジル又は水の添加前)、+5h及び+6h
【
図12-1】
図12-1.皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「Aベータ1-42」群と比較した「ナノ粒子」群及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、Aベータ1-42機能的効果が示され、本発明のナノ粒子(実施例1)又はドネペジルにより可能となる救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を救済する能力)が実証される。
【
図12-2】
図12-2.皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「Aベータ1-42」群と比較した「ナノ粒子」群及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、Aベータ1-42機能的効果が示され、本発明のナノ粒子(実施例2,3)又はドネペジルにより可能となる救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を救済する能力)が実証される。
【
図12-3】
図12-3.皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「Aベータ1-42」群と比較した「ナノ粒子」群及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、Aベータ1-42機能的効果が示され、本発明のナノ粒子(実施例4,5)又はドネペジルにより可能となる救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を救済する能力)が実証される。
【
図12-4】
図12-4.皮質ネットワーク活動における「対照」群及び「Aベータ1-42」群と比較した「ナノ粒子」群及び「参照」群で観察された機能的効果。データから、Aベータ1-42機能的効果が示され、本発明のナノ粒子(実施例6) 又はドネペジルにより可能となる救済効果(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を救済する能力)が実証される。
【
図13】
図13.「ナノ粒子」群、「参照」群、「対照」群(効果スコア=0)及び「Aベータ」群(効果スコア=1)についての効果スコア分析。
【
図14】
図14.実施例9からの金ナノ粒子の代表的なTEM画像。集団のナノ粒子のコアの最大サイズ中央値は、それぞれ108nm(金-110)、83nm(金-80)、45nm(金-45)、34nm(金-30)及び15nm(金-15)に等しい。
【
図15】
図15.「ナノ粒子」群(実施例9からの金-45及び金-15ナノ粒子)、「対照」群(効果スコア=0)及び「MPP
+」群(効果スコア=1)についての効果スコア分析。
【
図16】
図16.実施例11からのPEDOTナノ粒子の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【
図17】
図17.「ナノ粒子」群(実施例11からのPEDOTナノ粒子)、「対照」群(効果スコア=0)及び「MPP
+」群(効果スコア=1)についての効果スコア分析。
【0140】
実施例
ニューロンの管内(in vitro)研究
ニューロンレベルでは、パッチクランプ技術が、ニューロンの膜電位の同時直接測定及び制御が可能であるため、活動電位を検出するのに非常に有用である。
【0141】
この技術を使用して、単一のニューロンにおけるナノ粒子の効果を評価する。
【0142】
ニューロンネットワークの管内(in vitro)研究
多電極アレイ(MEA)に結合した分離されたニューロン培養物は、脳ネットワークの複雑さをより良好に理解するのに広く使用されている。加えて、分離されたニューロン集合の使用により、ネットワークの接続性の操作及び制御が可能となる。MEAシステムにより、リアルタイムでのニューロンネットワークにおける複数の部位からの非侵襲的で、長期間持続する同時細胞外記録が可能となり、空間解像能が向上し、もってネットワーク活動の安定した測定が提供される。長期間にわたる活動電位及び電場電位データの同時収集により、時空間パターン生成を担う全ての細胞機構の相互作用から生じるネットワーク機能のモニタリングが可能となる(Johnstone A. F. M. et al., Neurotoxicology (2010), 31: 331-350, Microelectrode arrays: a physicologically based neurotoxicity testing platform for the 21st century)。パッチクランプ及び他の単一電極記録技術と比較して、MEAにより、ネットワーク全体の応答が測定され、ネットワークに存在する全てのレセプター、シナプス及びニューロン型の相互作用に関する全体的な情報が統合される(Novellino A. et al., Frontiers in Neuroengineering. (2011), 4(4), 1-14, Development of micro-electrode array based tests for neurotoxicity: assessment of interlaboratory reproducibility with neuroactive chemicals.)。したがって、MEA記録は、ニューロン培養におけるニューロン伝達、情報符号化、伝播及び処理を理解するのに利用されてきた(Taketani,M and Baudry,M.(2006). Advances in Network Electrophysiology. New York, NY: Springer;Obien et al., Frontiers in Neurosciences, 2015, 8(423): Revealing neuronal functions through microelectrode array recordings)。MEA技術は、電気的に活性な細胞の培養におけるネットワーク活動の機能的変化を特徴付けるための高度な表現型ハイコンテンツ・スクリーニング法であり、神経発生並びに神経再生及び神経変性の局面に対して非常に精度が高い。更に、MEA上で成長したニューロンネットワークは、損傷を受けていないほ乳類の神経系の機能を変化させるのとほぼ同じ濃度範囲で、神経活性化合物又は神経毒性化合物に応答可能であることが公知である(Xia et al., Alcohol, 2003, 30, 167-174: Histiotypic electrophysiological responses of cultured neuronal networks to ethanol;Gramowski et al., European Journal of Neuroscience, 2006, 24, 455-465: Functional screening of traditional antidepressants with primary cortical neuronal networks grown on multielectrode neurochips;Gramowski et al., Frontiers in Neurology, 2015, 6(158): Enhancement of cortical network activity in vitro and promotion of GABAergic neurogenesis by stimulation with an electromagnetic field with 150MHz carrier wave pulsed with an alternating 10 and 16 Hz modulation)。
【0143】
この技術を使用して、ニューロンネットワークにおけるナノ粒子の効果を評価する。
【0144】
ニューロンネットワークの体内(in vivo)研究
本発明のナノ粒子の、動物のニューロンネットワークにおける効果を評価するのに適した動物モデルが考慮される。
【0145】
例えば、パーキンソン病のマウスモデルを使用して、行動障害(運動障害)の軽減について、ナノ粒子の効果を評価する。また、アルツハイマー病のラット又はマウスモデルを使用して、動物の空間学習及び記憶機能障害(認知障害)について、ナノ粒子の効果を評価する。
【0146】
実施例1.導体材料により調製されたナノ粒子:中性表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた金ナノ粒子の合成
金ナノ粒子を、塩化金塩(HAuCl4)をキャップ剤(クエン酸ナトリウム)で還元することにより合成した(プロトコールは、G. Frens Nature Physical Science 241 (1973) 21から適応させた)。典型的な実験では、HAuCl4溶液を加熱して沸騰させた。続けて、クエン酸ナトリウム溶液を加えた。得られた溶液を沸騰下で更に5分間維持した。ナノ粒子懸濁液の0.22μmろ過(フィルターメンブレン:ポリ(エーテルスルホン)(PES))を行い、懸濁液中での金濃度を530nmでのUV-可視分光分析アッセイにより決定した。
【0147】
表面コーティングを、α-メトキシ-ω-メルカプトポリ(エチレングリコール)20kDa(「チオール-PEG 20kDa」)を使用して行った。十分な量の「チオール-PEG 20kDa」をナノ粒子懸濁液に加えて、金ナノ粒子表面上の単層被覆の少なくとも半分に達した(2.5分子/nm2)。pHを7~7.2に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌した。
【0148】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(最終濃度:[Au]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。このようにして得られた生体適合性金ナノ粒子の懸濁液中での流体力学的直径は、118nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.13であることが見出された。
【0149】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[Au]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-1mVに等しいことが見出された。
【0150】
実施例2.導体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた金ナノ粒子の合成
金ナノ粒子を実施例1に記載されたように調製した(同じ金無機コア)。
【0151】
PESメンブレンフィルターでの0.22μmろ過を行い、懸濁液中での金濃度を530nmでのUV-可視分光分析アッセイにより決定した。
【0152】
生体適合性表面コーティングを、メソ-2、3-ジメルカプトコハク酸(DMSA)を使用して行った。十分な量のDMSAをナノ粒子懸濁液に加えて、表面上の単層被覆の少なくとも半分に達した(2.5分子/nm2)。pHを7~7.2に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌した。
【0153】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(最終濃度:[Au]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。このようにして得られたナノ粒子の懸濁液中での流体力学的直径は、76nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.46であった。
【0154】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[Au]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-23mVに等しいことが見出された。
【0155】
実施例3.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:中性表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
酸化ジルコニウム(ZrO2)ナノ粒子を、塩基性pHにおいて、塩化ジルコニウム(ZrCl4)を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)を用いて沈殿させることにより合成した。得られた懸濁液をオートクレーブに移し、110℃超の温度で加熱した。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄し、酸性にした。
【0156】
集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ10nm及び8nm~12nmに等しいことが見出された。446個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0157】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(ZrO2)ナノ粒子濃度を、水溶液を粉末に乾燥させ、かつ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。生体適合性コーティングを、シラン-ポリ(エチレン)グリコール 2kDa(「Si-PEG 2kDa」)を使用して調製した。十分な量の「Si-PEG 2kDa」をナノ粒子懸濁液に加えて、表面上の単層被覆の少なくとも半分に達した(2.5分子/nm2)。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
【0158】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(ナノ粒子のコアを構成するZrO2の最終濃度:[ZrO2]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。ナノ粒子の流体力学的直径は55nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.1であることが見出された。
【0159】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[ZrO2]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-1mVに等しいことが見出された。
【0160】
実施例4.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
酸化ジルコニウムナノ粒子を実施例3に記載されたように調製した(同じ無機コア)。
【0161】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(ZrO2)ナノ粒子濃度を、水性懸濁液を粉末に乾燥させ、かつ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。
【0162】
表面官能化を、ヘキサメタリン酸ナトリウムを使用して行った。十分な量のヘキサメタリン酸ナトリウムをナノ粒子懸濁液に加えて、表面上の単層被覆の少なくとも半分に達した(2.5分子/nm2)。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
【0163】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(ナノ粒子のコアを構成するZrO2の最終濃度:[ZrO2]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。ナノ粒子の流体力学的直径は70nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.11であることが見出された。
【0164】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[ZrO2]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-33mVに等しいことが見出された。
【0165】
実施例5.半導体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされたケイ素(Si)ナノ粒子
【0166】
ケイ素(Si)ナノ粒子(粉末)をUS Research Nanomaterials Inc.から入手した。それらをPVP(1重量%)によりコーティングし、これは表面上に0.1分子/nm2未満を表わす。
【0167】
それらを(プローブによる)超音波処理下、30g/Lで水中に分散させた。
【0168】
PESメンブレンフィルター上での0.22μmろ過を行い、(Si)ナノ粒子濃度を、懸濁液を粉末に乾燥させ、かつ、得られたままの質量を秤量することにより測定した。
【0169】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(ナノ粒子のコアを構成するSiの最終濃度:[Si]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。ナノ粒子の流体力学的直径は、164nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.16であることが見出された。
【0170】
集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ53nm及び45nm~61nmに等しいことが見出された。71個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0171】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[Si]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-19mVに等しいことが見出された。
【0172】
実施例6.200以上の高い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされたチタン酸バリウムナノ粒子
チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノ粒子の懸濁液(水中の20重量%)をUS Reseach Materials Inc.(US3835)から入手した。
【0173】
表面官能化を、シラン-ポリ(エチレン)グリコール 10kDa(「Si-PEG 10kDa」)を使用して行った。簡潔には、「Si-PEG 10kDa」をエタノール/水溶液(1/3v/v)に、まず溶解させ、BaTiO3懸濁液(水中の20重量%)に加え、ナノ粒子の表面上に完全な単層被覆を達成した。この懸濁液を超音波処理し、続けて、一晩撹拌した。0.22μmろ過(フィルターメンブレン:ポリ(エーテルスルホン))後、未反応の「Si-PEG 10kDa」ポリマーを除去するために、洗浄工程を行った。
【0174】
ナノ粒子懸濁液を水中で希釈し(ナノ粒子のコアを構成するBaTiO3の最終濃度:[BaTiO3]=0.1g/L)、633nmで発光するレーザーによる、173°の散乱角でのNano-Zetasizer(Malvern)による動的光散乱(DLS)により、室温(約25℃)で、流体力学的直径(強度の尺度)を決定した。ナノ粒子の流体力学的直径は164nmに等しく、多分散性指数(サイズについてのナノ粒子の集団の分散)は、0.16であることが見出された。
【0175】
pH7において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終濃度:[BaTiO3]=0.1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより、ゼータ電位を決定した。pH7でのゼータ電位は、-11mVであることが見出された。
【0176】
集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、透過型電子顕微鏡法を使用して評価し、それぞれ67nm及び60~77nmに等しいことが見出された。51個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した。
【0177】
実施例7.表現型MEAスクリーニング技術を使用する、MPP+誘発ニューロンネットワークにおける、実施例1、2、5及び6からのナノ粒子の予防/救済効力の評価
48ウェルMEA上で3週間培養した、MPP+処理マウスの腹側中脳/皮質共培養物上で、本発明のナノ粒子の予防/救済効力を試験した。このモデルは、MEA上で増殖している障害を有する中脳/皮質培養物を使用したドーパミン作動性ニューロンの機能的救済に基づいて、化合物をスクリーニングするための管内(in vitro)パーキンソンモデルを表わす。中脳は、黒質を含む脳領域であり、黒質は基底核の一部であり、ドーパミン作動性ニューロンの大部分を含む。ナノ粒子の予防/救済効果の評価を、微小電極アレイ(MEA)チップ上に播種されたニューロンの共培養物の細胞外電気活動の測定により行った。
【0178】
マウスニューロンにおけるパーキンソン表現型の管内(in vitro)誘発を1-メチル-4-フェニルピリジニウムヨウ化物(MPP+)を用いて行った。ミトコンドリア障害がパーキンソン病(PD)の病因において役割を果たすという強力な証拠が存在する。MPP+は、電子伝達酵素複合体I(NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ)の遮断を介して細胞呼吸を阻害するミトコンドリア毒であることが見出された。PD患者の死後組織の黒質中のミトコンドリア電子伝達鎖の複合体Iに選択的欠損が存在し、初期PD患者の血小板にも複合体I活性が低下していることが、幾つかの研究室から報告されている。薬剤、例えば、グリア細胞系神経栄養因子(GDNF)は神経保護剤として作用し、MPP+の効果を予防し/救済する良好な前臨床結果を得ている。GDNFは、多くの場合、実験的な前臨床プロトコールにおいて参照として使用されている(Peng J. et al., Journal of Biomolecular screening, 2013, 18(5), 522-533: Using human pluripotent stem cell-derived dopaminergic neurons to evaluate candidate Parkinson’s disease therapeutic agents in MPP+ and rotenone models.)。
【0179】
材料及び方法
初代細胞培養、処理条件
中脳及び前頭皮質組織を、胎生期14.5日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3 Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し;ラミニン(10μg/ml)、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEMの20μl滴中において、MEA上に播種した。MEA上での培養物を使用の準備ができるまで、10% CO2雰囲気中、37℃でインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを培養培地に週2回補充した。
【0180】
「ナノ粒子」群において、ウェルを7日目に、実施例1([Au]=800μM)、2([Au]=800μM)、5([Si]=800μM)からのナノ粒子懸濁液及び実施例6([BaTiO3]=2000μM)からのナノ粒子懸濁液、続けて8日目に、20μM MPP+で処理した。「対照」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に水を加えた。「MPP+」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に20μM MPP+を加えた。「参照」群では、7日目に、GDNF(20ng/ml)をウェルに加え、続けて、8日目に20μM MPP+を加えた。
【0181】
MPP+(又は「対照」群については水)添加の24時間後に、培地を交換して、MPP+の洗い落しを達成した。その後、培地を週2回交換した。GDNFを各培地交換において、「参照」群のみに加えた。
【0182】
21日目に、120分のニューロン活動を記録し、30分の安定活動を分析した(
図6)。
【0183】
微小電極アレイ・ニューロチップ
48ウェルの微小電極アレイ・ニューロチップをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸バッファー中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0184】
多重チャンネル記録、及び多重パラメータ・データ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)による多重チャンネルMAESTRO記録システムを使用した。細胞外記録には、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。DMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で記録を行った。10% CO2を含むろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。
【0185】
各単位は、1つの電極で記録された1つのニューロンから生じる活動を表わす。記録の開始時に単位を分離する。各単位について、活動電位(すなわち、スパイク)をスパイク列として記録した。同スパイク列は、いわゆる「バースト」と呼ばれる状態の群である。バーストを、プログラムSpike WrangLer及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany製)を使用する直接スパイク列分析により定量的に記述した。バーストを、短いスパイク事象の開始及び終了により定義した(
図7)。
【0186】
ネットワーク活動パターンの多重パラメーター・ハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的活動、バースト構造、振動挙動及び同期性における活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
-「全体的活動パラメータ」の変化は、活動電位放電速度(スパイク速度)、バースト速度及びバースト間の時間としてのバースト周期についての効果を記述する。
-「バースト構造パラメータ」は、高周波スパイク期(「バースト」)内のスパイクの内部構造、例えば、バースト内のスパイク頻度、バースト内のスパイク速度及びバーストスパイク密度だけでなく、バーストの全体構造、例えば、持続時間、面積及び安定期も定義する。
-「振動パラメータ」は、バーストの発生又は構造の規則性を定量化し、この規則性は、実験事例内のパラメータ(全体的活動、バースト構造)の変動性を記述する主要な活動パラメータの変動係数により計算される(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity in murine spinal cord networks on microelectrode arrays)。より高い値は、より規則的でないバースト構造又はより規則的でない全体的活動(例えば、スパイク、バースト)を示す。
-スパイク列における同期性の尺度として、「CVnetパラメータ」は、ネットワーク内のニューロン間の「同期化」を反映する(Gramowski A. et al., Eur. J. Neurosci., 2004, 19, 2815-2825: Substance identification by quantitative characterization of oscillator activity in murine spinal cord networks on microelectrode arrays)。CVnetは、ネットワーク全体ににわたる変動係数である。大きなCVnet値は、ネットワーク全域にわたる活動の広範囲の変動を意味し、より少ない同期化を意味する(Gramowski A. et al., Frontiers in Neurology, 2015, 6(158): Enhancement of cortical network activity in vitro and promotion of GABAergic neurogenesis by stimulation with an electromagnetic field with 150MHz carrier wave pulsed with an alternating 10 and 16 Hz modulation)。
【0187】
MPP+により、ニューロンネットワーク上に誘発される機能的効果及び本発明のナノ粒子の予防/救済効力を、上記パラメータを介して評価した(また、それらのいくつかについては、以下の表2に要約する)。
【0188】
【0189】
21日目における自発的自然活動に関連する値を、30分間の活動安定化後、30分の時間範囲から得られた60秒の区分データから得た。結果(パラメータ値)を独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。各「ナノ粒子」群については、少なくとも8個のアクティブウェル、「対照」群については、少なくとも30個のアクティブウェル、「MPP+」群については、少なくとも26個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布の正常性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0190】
図8及び9に、下記カテゴリー:全体的活動、振動挙動及び同期性からの幾つかの代表的なパラメータを示す。これらのパラメータにより、MPP
+誘発機能的効果及び本発明のナノ粒子又はGDNFの予防/救済効力(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を予防し/救済する能力)が特徴付けられる。
【0191】
化合物の効果を評価するために、204のパラメータの選択である多重パラメーターの結果を「効果スコア」と呼ばれる単一パラメータに表現した。これは、選択された特徴の線形結合であり、データセットを「0」の平均値の「対照」群と、「1」の平均値の「MPP+」群とを有するベクトルに変換する。効果スコアのZ因子の計算は、204のパラメータのうち18の特徴の選択により行われ、「対照」群と「MPP+」群との間の最良の区別を見出すように最適化された(Kuemmel A, et al. J Biomol Screen., 2010, 15(1), 95-101: Integration of multiple readouts into the z' factor for assay quality assessment)。
【0192】
【0193】
本発明のナノ粒子の予防/救済効力を表3に示す。
【0194】
【0195】
図8、9及び10並びに表3に、本発明のナノ粒子によるニューロンネットワークの前処理により、ニューロンネットワークにおけるMPP
+誘発機能的効果が予防され/救済されることを示す。興味深いことに、予防/救済効力は、振動挙動及び同期性に関連するカテゴリーのパラメータについて観察され、「対照」群で観察されるレベルまで達することができる。これらの振動挙動及び同期化パラメータを、典型的には、変更されたネットワーク発達の尺度としてモニタリングする。これらのパラメータにより、本発明のナノ粒子の存在下で救済することができるので有利である。
【0196】
これらの結果は、ニューロンネットワークにおけるMPP+誘発機能的効果を予防し/救済する、本願に記載されたナノ粒子の有利な性能を際立たせている。
【0197】
実施例8:表現型MEAスクリーニング技術を使用する、初代マウスニューロンネットワークにおけるアミロイドベータ1-42誘発機能的効果における実施例1、2、3、4、5及び6からのナノ粒子の効果の評価
本発明のナノ粒子の救済効力を、マウスニューロンの前頭皮質培養物におけるアルツハイマー病のアミロイドベータ1-42(Aベータ1-42)誘導モデルにおいて、MEAを介して管内(in vitro)で試験した。
【0198】
アルツハイマー病(AD)患者にみられる神経斑の主要構成成分であるβ-アミロイドペプチド1-42は、大グリア細胞グルタメート・トランスポーターを阻害することにより、シナプス間隙中に過剰量のグルタメートを誘発し、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプター活性の向上を介して、細胞内Ca2+レベルを上昇させることが公知である。興奮毒性を引き起こす他の機序は、酸化ストレスの誘引、及びグルタミン酸作動性NMDAレセプターに対するaベータの直接的な影響を含むことができる。正確な基礎的病因過程が何であれ、グルタメート及び細胞内カルシウム蓄積による神経細胞の過剰刺激により、最終的にニューロンのアポトーシスが引き起こされ、シナプス可塑性が破壊され、このような調節異常の結果、学習及び記憶機能が著しく損なわれるであろう(Nyakas C. et al., Behavioural Brain Research, 2011, 221, 594-603: The basal forebrain cholinergic system in aging and dementia. Rescuing cholinergic neurons from neurotoxic amyloid-β42 with memantine.)。現在、FDA承認の抗AD剤は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤及びNMDAレセプターアンタゴニストに限られている。伝統的なAChE阻害剤は、主にAChEの中枢作用部位に作用するドネペジルを含む。
【0199】
材料及び方法
初代細胞培養
前頭皮質組織を胎生期15/16日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し、ラミニン(10μg/ml)、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEMの20μl滴中において、MEA上に播種した。MEA上での培養物を、使用の準備ができるまで、10% CO2雰囲気中、37℃でインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを培養培地に週2回補充した。発育中の共培養物を、播種後5日目に有糸分裂阻害剤である5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(25μM)及びウリジン(63μM)により処理して、更なるグリア細胞増殖を防止した。
【0200】
アルツハイマー関連機能表現型を誘発するために、合成HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)処理Aベータ1-42ペプチド(HFIP処理によりアミロイドベータのモノマーが生成される)を亜毒性用量(100nM)で使用した。
【0201】
「ナノ粒子」群において、まず、ウェルをAベータ1-42(合成HFIP処理アミロイド-ベータ1-42ペプチド)により、T0時(T0は、28日間の管内(in vitro)培養期間の最後である)に処理した。ついで、独立及び平行実験において、ウェルを実施例1([Au]=800μM)、2([Au]=800μM)、3([ZrO2]=800μM)、4([ZrO2]=800μM)、5([Si]=800μM)及び実施例6([BaTiO3]=2000μM)からのナノ粒子懸濁液で、T0+4時間時に処理した。「対照」群では、T0、ついで、T0+4時間時に、水をウェルに加えた。「Aベータ」群では、Aベータ1-42をウェルにT0時に加え、ついで、水をウェルにT0+4時間時に添加した。「参照」群では、Aベータ1-42をウェルにT0時に加え、ドネペジル(300nM)をウェルにT0+4時間時に添加した。
【0202】
ニューロン活動を下記のように記録した(参照.
図11)。
-T0時、Aベータ1-42(又は「対照」群における水)の添加前。
-T0+1h時、T0+2h時、T0+3h時、T0+4h時(<<ナノ粒子>>群ではナノ粒子添加前;「参照」群ではドネペジル添加前;対照群では「水」添加前)、T0+5h時及びT0+6h時。
【0203】
30分の活動安定後、30分の時間範囲から採られた60秒の区分データから値を得た。
【0204】
微小電極アレイ・ニューロチップ
48ウェルの微小電極アレイ・ニューロチップをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸緩衝液中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0205】
多重チャンネル記録及び多重パラメーター・データ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)からの多重チャンネルMAESTRO記録システムを使用した。細胞外記録のために、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。DMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で記録を行った。10% CO2を含むろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。活動電位又は「スパイク」をスパイク列で記録した。同スパイク列は、いわゆる「バースト」と呼ばれる状態の群である。プログラムSpike WrangLer及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany)を使用する直接スパイク列分析により、バーストを定量的に記述した。バーストは、短いスパイク事象の開始及び終了により定義した。
【0206】
ネットワーク活動パターンの多重パラメーター・ハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的活動、バースト構造、振動挙動及び同期性における、活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
【0207】
ニューロンネットワークにおけるアミロイドベータ1-42の機能的効果及び本発明のナノ粒子によるニューロンネットワークの機能的効果の救済効力を、上記パラメータを通して評価した(また、それらの幾つかについては、以下の表4に要約する)。
【0208】
【0209】
30分間の活動安定化後、30分の時間範囲から得られた60秒の区分データから、自発的な自然活動に関連する値を得た。結果(パラメータ値)を、独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。各「ナノ粒子」群については、少なくとも9個のアクティブウェル、「対照」群については、少なくとも18個のアクティブウェル、「Aベータ」群については、少なくとも18個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布の正常性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0210】
図12に、下記カテゴリー:全体的活動、バースト構造、振動挙動及び同期性からの幾つかの代表的なパラメータを示す。これらのパラメータにより、本発明のナノ粒子又はドネペジルにより可能となるAベータ1-42機能的効果及び救済効力(すなわち、「対照」群の効果と同様のレベルまで機能的効果を救済する能力)が特徴付けられる。
【0211】
化合物効果を評価するために、204のパラメータを選択する多重パラメーター結果を「効果スコア」と呼ばれる単一パラメータに表現した。これは、選択された特徴の線形結合であり、データセットを、「0」の平均値の「対照」群と、「1」の平均値の「Aベータ」群とを有するベクトルに変換する。効果スコアのZ因子の計算は、204のパラメータから15の特徴を選択することにより行われ、「対照」群と「Aベータ」群との間の最良の区別を見出すように最適化されたし、(Kuemmel A, et al. J Biomol Screen., 2010, 15(1), 95-10: Integration of multiple readouts into the z' factor for assay quality assessment)。
【0212】
【0213】
本発明のナノ粒子の救済効力を表5に示す。
【0214】
【0215】
図12及び13並びに表5に、本発明のナノ粒子によるニューロンネットワークの処理により、ニューロンネットワークのAベータ1-42誘発機能的効果が救済されることを示す。救助効力は、振動挙動及び同期性に関連するカテゴリーのパラメータについて観察され、「対照」群で観察されるレベルまで有利に達することができる。これらの振動挙動及び同期化パラメータは、古典的には、変更されたネットワーク発達を検出するのに評価される。振動挙動及び同期化は、本発明のナノ粒子の存在下で救済することができる。
【0216】
これらの結果は、ニューロンネットワークにおけるAベータ1-42誘発機能的効果を救済する際の、本願に記載されたナノ粒子の有利な性能を際立たせている。
【0217】
実施例9:中性表面電荷を有する異なるサイズの金ナノ粒子の合成及び物理化学的特性決定
水溶液中でのクエン酸ナトリウムによる塩化金の還元により、金ナノ粒子を得る。プロトコールは、G. Frens Nature Physical Science 241(1973)21から適合させた。
【0218】
典型的な実験では、HAuCl4溶液を加熱して沸騰させる。続けて、クエン酸ナトリウム溶液を加える。得られた懸濁液を沸騰下にさらに5分間維持する。
【0219】
ナノ粒子サイズは、クエン酸塩と金前駆体との比を注意深く変更することにより、約15nm~約110nmで調整する(参照.表6)。
【0220】
ついで、調製したままの金ナノ粒子懸濁液を、適切な分子量排除(MWCO)機能を有するセルロースメンブレンを備えた限外ろ過装置(Millipore製のAmicon撹拌セルモデル8400)を使用して濃縮し、層流フード下で、0.22μm排除メンブレンフィルター(Millipore製のPESメンブレン)を通してろ過する。
【0221】
表面コーティングを、α-メトキシ-ω-メルカプトポリ(エチレングリコール)20kDa(「チオール-PEG 20kDa」)を使用して行う。十分な量の「チオール-PEG 20kDa」をナノ粒子懸濁液に加えて、金ナノ粒子表面上の単層被覆を得る。pHを6.8~7.4に調節し、ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌する。過剰のチオール-PEG 20kDaを、適切なMWCOメンブレンを有する限外ろ過遠心分離フィルター(Sartorius製のVivaspin又はMerck Millipore製のAmicon Ultra)を使用して、層流フード下で除去し、最終懸濁液を4℃で保存する。
【0222】
透過型電子顕微鏡を使用して、少なくとも200個のナノ粒子を計数し、サイズ測定のために最大のナノ粒子寸法をとることにより、粒径を測定する。集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの最大サイズ中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアサイズを、表6に報告する。誘導結合発光分光法(ICP-OES)により測定された金([Au])の濃度、及びナノ粒子の懸濁液を1mM NaCl溶液中で、金濃度([Au])0.01~0.05g/L及びpH約7に希釈してナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより決定されたゼータ電位も共に、表6に報告する。
【0223】
【0224】
図14に、表6に記載された金ナノ粒子の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【0225】
実施例10.表現型MEAスクリーニング技術を使用した、MPP+誘発ニューロンネットワークに対する、実施例9からのナノ粒子金-15及び金-45の予防/救済効力の評価
本発明のナノ粒子の予防/救済効力を、48ウェルMEAで3週間培養されたMPP+処理マウス腹側中脳/皮質共培養物で試験した。ナノ粒子の予防/救助効果の評価を、微小電極アレイ(MEA)チップ上に播種されたニューロンの共培養物の細胞外電気活動の測定により行った。
【0226】
マウスニューロンにおけるパーキンソン表現型の管内(in vitro)誘発を、1-メチル-4-フェニルピリジニウムヨウ化物(MPP+)により行った。
【0227】
材料及び方法
初代細胞培養、処理条件
中脳及び前頭皮質組織を胎生期14.5日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し、ラミニン(10μg/ml)、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEMの20μl滴中において、MEA上に播種した。使用の準備ができるまで、10% CO2雰囲気中、37℃で、MEA上での培養物をインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを、培養培地に週2回補充した。
【0228】
「ナノ粒子」群において、ウェルを7日目に、実施例9(金-15及び金-45)からのナノ粒子懸濁液([Au]=310+/-40μM)、続けて8日目に、20μM MPP+で処理した。「対照」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に水を加えた。「MPP+」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に20μM MPP+を加えた。
【0229】
MPP+(又は「対照」群については水)添加の24時間後に、培地を交換して、MPP+の洗い落としを達成した。その後、培地を週2回交換した。
【0230】
21日目に、120分のニューロン活動を記録し、30分の安定活動を分析した。
【0231】
微小電極アレイ・ニューロチップ
48ウェルの微小電極アレイ・ニューロチップをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸緩衝液中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0232】
多重チャンネル記録及び多重パラメーター・データ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)製の多重チャンネル記録システムを使用した。細胞外記録には、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。記録をDMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で行った。10% CO2を含むろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。
【0233】
各単位は、1つの電極で記録された1つのニューロンから生じる活動を表わす。単位を記録の開始時に分離する。各単位について、活動電位(すなわち、スパイク)をスパイク列として記録した。同スパイク列は、いわゆる「バースト」と呼ばれる状態の群である。プログラムSpike Wrangler及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany)を使用する直接スパイク列分析により、バーストを定量的に記述した。バーストを短いスパイク事象の開始及び終了により定義した。
【0234】
ネットワーク活動パターンの多重パラメーター・ハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的活動、バースト構造、振動挙動及び同期性、における活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
【0235】
ニューロンネットワークにMPP+により誘発される機能的効果、及び本発明のナノ粒子の予防/救済効力を、上記パラメータを通して評価した
【0236】
21日目に、自発的な自然活動に関連する値を活動安定化30分後の30分の時間範囲から得られた60秒区分のデータから得た。結果(パラメータ値)を、独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。各「ナノ粒子」群、「対照」群及び「MPP+」群については、少なくとも19個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布の正常性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0237】
化合物効果を評価するために、204のパラメータを選択する多重パラメーター結果を「効果スコア」と呼ばれる単一パラメータに表現した。これは、選択された特徴の線形結合であり、データセットを、「0」の平均値の「対照」群と、「1」の平均値の「MPP+」群とを有するベクトルに変換する。効果スコアのZ因子の計算は、測定された204のパラメータから20の特徴を選択することによって行い、「対照」群と「MPP+」群との間の最良の区別を見出すように最適化された(Kuemmel A, et al. J Biomol Screen., 2010, 15(1), 95-101: Integration of multiple readouts into the z' factor for assay quality assessment)。
【0238】
【0239】
本発明のナノ粒子の予防/救済効力を表7に示す。
【0240】
【0241】
図15及び表7に、本発明のナノ粒子によるニューロンネットワークの前処理により、ニューロンネットワークにおけるMPP
+誘発機能的効果が予防され/救済されることを示す。興味深いことに、15nmに等しい集団のナノ粒子のコアの最大サイズ中央値を有する金ナノ粒子は、45nmに等しい集団のナノ粒子のコアの最大サイズ中央値を有する金ナノ粒子より、ニューロンネットワークにおけるMPP
+誘発機能的効果を予防し/救済する際の効率が低い。
【0242】
これらの結果から、ニューロンネットワークにおけるMPP+誘発機能的効果を予防し/救済する際の、両金ナノ粒子の能力が際立っている。ここで、45nmの最大サイズ中央値を有する金ナノ粒子は、15nmの最大サイズ中央値を有する金ナノ粒子より効率的である。
【0243】
実施例11.導体材料により調製されたナノ粒子の合成:負の表面電荷を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ナノ粒子(PEDOTナノ粒子)
水中のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ナノ粒子(PEDOTナノ粒子)分散液(1.1重量%)をSigma(Sigma675288)から入手し、そのまま使用した。
【0244】
ゼータ電位を、pH7.3において1mM NaCl溶液中でナノ粒子懸濁液を希釈し(最終PEDOT濃度:1g/L)、ナノ粒子の電気泳動移動度(Nano-Zetasizer, Malvern)を測定することにより決定した。pH7.3でのゼータ電位は、-53mVに等しいことが見出された。
【0245】
集団のナノ粒子又はナノ粒子凝集体の最大寸法中央値、並びにナノ粒子及びナノ粒子凝集体の集団の30%~70%を表わすナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアのサイズを、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して評価し、それぞれ408nm及び311nm~518nmに等しかった(56個のナノ粒子を計数し、それらの最大寸法を測定した)。
【0246】
実施例12.表現型MEAスクリーニング技術を使用する、MPP+誘発ニューロンネットワークにおける、実施例11からのPEDOTナノ粒子の予防/救済効力の評価
本発明のナノ粒子の予防/救済効力を、48ウェルMEA上で3週間培養した、MPP+処理マウスの腹側中脳/皮質共培養物で試験した。ナノ粒子の予防/救済効果の評価を、微小電極アレイ(MEA)チップ上に播種されたニューロンの共培養物の細胞外電気活動の測定により行った。
【0247】
マウスニューロンにおけるパーキンソン表現型の管内(in vitro)誘発を1-メチル-4-フェニルピリジニウムヨウ化物(MPP+)により行った。
【0248】
材料及び方法
初代細胞培養、処理条件
中脳及び前頭皮質組織を胎生期14.5日目のchr:NMRIマウス(Charles River)から採取した。マウスを頸椎脱臼により殺処分した。組織を酵素消化(133,3Kunitz単位/ml DNase;10単位/ml パパイン)及び機械的粉砕により解離し、計数し、生命力を制御し、ラミニン(10μg/ml)、10% ウシ胎児血清及び10% ウマ血清を含有するDMEMの20μl滴中において、MEA上に播種した。MEA上での培養物を使用の準備ができるまで、10% CO2雰囲気中、37℃でインキュベーションした。10% ウマ血清を含有するDMEMを培養培地に週2回補充した。
【0249】
「ナノ粒子」群において、ウェルを7日目に、実施例11からのナノ粒子懸濁液([PEDOT]=500μM)、続けて8日目に、20μM MPP+で処理した。「対照」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に水を加えた。「MPP+」群では、7日目に、水をウェルに加え、続けて、8日目に20μM MPP+を加えた。
【0250】
MPP+(又は「対照」群については水)添加の24時間後に、培地を交換して、MPP+の洗い落としを達成した。その後、培地を週2回交換した。
【0251】
21日目に、120分のニューロン活動を記録し、30分の安定活動を分析した。
【0252】
微小電極アレイ・ニューロチップ
48ウェルの微小電極アレイ・ニューロチップをAxion Biosystems Inc.から購入した。これらのチップは、ウェルあたりに16個の受動電極を有する。表面をポリエチレンイミン(PEI、ホウ酸緩衝液中の50%)により1時間コーティングし、洗浄し、風乾した。
【0253】
多重チャンネル記録及び多重パラメーター・データ分析
記録には、Axion Biosystems(USA)による多重チャンネルMAESTRO記録システムを使用した。細胞外記録には、48ウェルのMEAをMAESTRO記録ステーションに入れ、37℃に維持した。記録をDMEM/10% 熱不活化ウマ血清中で行った。10% CO2を含むろ過され、加湿された気流の継続的な流れにより、pHを7.4に維持した。
【0254】
各単位は、1つの電極で記録された1つのニューロンから生じる活動を表わす。単位を記録の開始時に分離する。各単位について、活動電位(すなわち、スパイク)をスパイク列として記録した。同スパイク列は、いわゆる「バースト」と呼ばれる状態の群である。バーストを、プログラムSpike WrangLer及びNPWaveX(両方ともNeuroProof GmbH, Rostock, Germany製)を使用する直接スパイク列分析により定量的に記述した。バーストを短いスパイク事象の開始及び終了により定義した。
【0255】
ネットワーク活動パターンの多重パラメーター・ハイコンテンツ分析により、204の活動記述スパイク列パラメータを抽出した。これらのパラメータにより、以下の4つのカテゴリー:全体的活動、バースト構造、振動挙動及び同期性における、活動変化の正確な記述を得ることが可能となる。
【0256】
MPP+により誘発されるニューロンネットワーク上の機能的効果、及び本発明のナノ粒子の予防/救済効力を、上記パラメータを通して評価した
【0257】
21日目に、自発的な自然活動に関連する値を、30-90分の活動安定化後の30分の時間範囲から得られた、60秒の区分データから得た。結果(パラメータ値)を独立したネットワークの平均±SEMとして表わした。「ナノ粒子」群については、少なくとも5個のアクティブウェル、「対照」群については、少なくとも20個のアクティブウェル、「MPP+」群については、少なくとも20個のアクティブウェル(「アクティブ」は、電気活動を測定するのに十分な数の電極を有するウェルを意味する)を分析に含めた。絶対パラメータ分布の正常性について試験し、群間の統計的有意差を一方向ANOVAにより評価した。
【0258】
化合物効果を評価するために、204のパラメータの選択の多重パラメーター結果を、「効果スコア」と呼ばれる単一パラメータに表現した。これは、選択された特徴の線形結合であり、データセットを「0」の平均値の「対照」群と、「1」の平均値の「MPP+」群とを有するベクトルに変換する。効果スコアのZ因子の計算は、204のパラメータのうち20の特徴選択を通して行い、「対照」群と「MPP+」群との間の最良の区別を見出すように最適化された(Kuemmel A, et al. J Biomol Screen., 2010, 15(1), 95-101: Integration of multiple readouts into the z' factor for assay quality assessment)。
【0259】
【0260】
本発明のナノ粒子の予防/救済効力を表8に示す。
【0261】
【0262】
図17及び表8に、本発明のPEDOTナノ粒子によるニューロンネットワークの前処理により、ニューロンネットワークにおけるMPP
+誘発機能的効果が予防され/救済されることを示す。
【0263】
これらの結果は、ニューロンネットワークにおけるMPP+誘発機能的効果を予防し/救済する際の、本願に記載されたナノ粒子の能力を際立たせている。
【0264】
実施例13.100以下の低い比誘電率を有する絶縁体材料により調製されたナノ粒子の合成:負の表面電荷を有する生体適合性コーティングでコーティングされた酸化ハフニウムナノ粒子の合成
塩基性pHにおいて、塩化ハフニウム(HfCl4)を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)を使って沈殿させることにより、酸化ハフニウム(HfO2)ナノ粒子を合成した。得られた懸濁液をオートクレーブに移し、110℃超の温度で加熱した。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄し、酸性にした。
【0265】
表面官能化を、ヘキサメタリン酸ナトリウムを使用して行った。十分な量のヘキサメタリン酸ナトリウムをナノ粒子懸濁液に加えて、表面上の単層被覆の少なくとも半分に達した(2.5分子/nm2)。ナノ粒子懸濁液を一晩撹拌し、続けて、pHを7に調節した。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体を電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体におけるパーキンソン病又はアルツハイマー病の予防又は処置に使用するためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体であって、
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、
BaTiO
3
である、3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、200以上の誘電率ε
ijk
を有する絶縁体材料、
及び
ZrO
2
、HfO
2
及びそれらの混合物から選択される、3.0eV以上のバンドギャップEgを有し、比誘電率ε
ijk
が100以下である絶縁体材料
から選択され;
ここで、
i) 該材料が200以上の誘電率ε
ijk
を有する絶縁体材料である場合、前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアの集団についての最大サイズ中央値は、少なくとも30nmであり、
ii) 前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体のコアは、電解質濃度0.001~0.2M、ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料濃度0.01~10g/L及びpH6~8を有する水溶液中で測定された場合に、中性又は負の表面電荷を提供する生体適合性コーティングによりコーティングされており、
そして
iii)前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体治療化合物又は薬剤の担体としては使用されない、
ナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項2】
前記比誘電率εijkが、20℃~30℃及び102Hz~赤外周波数までの間で測定される、請求項1記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項3】
前記負の表面電荷を提供する生体適合性コーティングは、ホスフェート、クエン酸塩、ジカルボン酸、コハク酸又はサルフェートを提供する薬剤から選択され、そして前記中性の表面電荷を提供する生体適合性コーティングは、ポリアクリルアミド、ポリカルバミド、生体高分子、多糖類、コラーゲン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン及びポリピロールから選択されるポリマーである、
請求項1又は2記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項4】
前記ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の材料は、ZrO
2
である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のためのナノ粒子又はナノ粒子凝集体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体と、薬学的に許容し得る支持体と、を含む組成物であって、
前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体におけるパーキンソン病又はアルツハイマー病の予防又は処置に使用するための組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも2種の異なる、請求項1~4のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、請求項5記載の使用のための組成物。
【請求項7】
少なくとも2種の異なる、請求項1~4のいずれか一項記載のナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を含む、
前記ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集体を、電場にも、任意の他の外部活性化源にも曝すことなく、対象体におけるパーキンソン病又はアルツハイマー病の予防又は処置に使用するための、キット。
【外国語明細書】