(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038389
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】パイプライン内の流体のエネルギー及び燃焼特性を推論するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 9/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01N9/00 E
G01N9/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024004282
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2022520393の分割
【原出願日】2019-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド, ジョージ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ライト, トニー
(72)【発明者】
【氏名】ペグ, ティモシー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ローウェンヒース, ハンス クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】パンクラッツ, アンソニー ウィリアム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体状態の流体のエネルギー含有量を推論する方法が開示される。
【解決手段】この方法は、プロセッサ(210)およびメモリ(220)を有するコンピュータシステム(200)によって実行され、メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、この方法は、前記推論モジュール(204)によって、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論することを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(210)およびメモリ(220)を有するコンピュータシステム(200)によって、気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための方法であって、前記メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、前記推論モジュール(204)によって、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論することを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの測定値が、測定密度を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの測定値が、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項が、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
それぞれの項が、その項に対応する係数を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性が少なくとも1つの項固有の係数定数を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記関係が少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項が、
シフト項、
前記測定密度を有する測定密度項、
前記測定密度の高次値を有する高次密度項、
一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、
並びに
一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つ
を有する、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記流動流体が天然ガス混合物である、請求項1から7のいずれかに記載の方法
【請求項9】
前記エネルギー含有量が、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つである請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータシステム(200)が振動センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上を測定する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための装置であって、コンピュータシステム(200)を有し、
前記コンピュータシステム(200)がプロセッサ(210)及びメモリ(220)を有し、前記メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、前記推論モジュール(204)が前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論するように構成される、装置。
【請求項12】
前記少なくとも一つの測定値が、測定密度を含む、請求項11に記載の装置
【請求項13】
前記少なくとも1つの測定値が、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項が、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有する、請求項11から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
それぞれの項が、その項に対応する係数を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性が少なくとも1つの項固有の係数定数を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記関係が少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項が、
シフト項、
前記測定密度を有する測定密度項、
前記測定密度の高次値を有する高次密度項、
一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、
並びに
一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つ
を有する、請求項14から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記流動流体が天然ガス混合物である、請求項11から17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記エネルギー含有量が、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つである請求項11から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記装置が振動センサ(102)であり、前記コンピュータシステム(200)が、前記振動流量センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記少なくとも1つの測定値のうちの1つまたは複数を測定する、請求項11から19のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される実施形態は、エネルギー含有量の決定に関し、より具体的には、推論エネルギー含有量の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(以下、「LNG」)は、高いエネルギー含有量により輸送を効率的にすることから、ますます重要な燃料となっている。LNGとは、低温まで冷却することにより、液化した天然ガスである。典型的な輸送条件は、例えば、約-162℃及び126.3キロパスカル(絶対圧力)である。LNGの組成は、供給元ごとに、またLNGに施される処理に基づいて、大きく異なる。典型的な組成物は、窒素、メタン、エタン、プロパン、および高次炭化水素(鎖中に4個以上の炭素を有する)を含む。この組成のばらつきのために、異なるLNG混合物のエネルギー含有量および燃焼特性を出荷の時点で知ることは困難である。LNG組成は、LNG混合物の価値に大きく影響する可能性があり、購入前にLNG含有量を評価する必要がある。
【0003】
排出されたLNGのエネルギー含有量を決定するために現在実施されているのは、LNGの体積を測定し、ガスクロマトグラフによる組成分析から平均密度および平均発熱量を計算することである。一般に使用されている方程式は、次の式(1)である。
ELNG=VLNG×δLNG×HLNG (1)
式(1)において、VLNGはLNG運搬船のタンク内で測定されたLNGの体積であり、δLNGはLNGのクロマトグラフィー分析および温度に基づいて計算されたLNGの密度であり、HLNGはLNGのクロマトグラフィー分析によって計算されたLNGの平均質量ベースの総発熱量(GCV)である。
【0004】
見て分かるように、既存のシステムは、ガスの相対組成を決定するために、クロマトグラフを使用する必要がある。ガスクロマトグラフは、サンプリング及び分析プロセスが遅いため、測定を行うのにかなりの時間を要する。さらに、クロマトグラフィーは高価であり、リアルタイムで実行することができない。試料の分析にかかる間に、流動するLNGの組成が劇的に変化することがあり、評価中のLNGのエネルギー含有量を決定する目的でのクロマトグラフィーの使用を、非実用的にしている。典型的なLNG及びその他の液体のライン測定は、密度、粘度、圧力、および音速(以下、「SOS」)などのより単純なパラメータを含む。これらのパラメータの測定は、より実用的なオンラインで行われる。しかし、これらの測定は、エネルギー含有量の直接的な測定ではない。推論的決定は、測定しようしているパラメータと、測定されたパラメータから計算される変数との間に直接的な関係がないものである。ライン条件で行われた典型的な流体測定値を、エネルギー含有量を推論するための推論関係に適用できれば、結果として得られる推論は、より高いサンプリングレート及び最新性との恩恵を得ることができる。この方法はまた、費用のかかるサンプリング及びクロマトグラフィーの手順を回避することからも恩恵を受けるであろう。
【0005】
従って、典型的なLNG測定値と推論関係とを用いて、生のエネルギー含有量値を決定するシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論する方法の、いくつかの実施形態が開示される。この方法は、プロセッサ(210)およびメモリ(220)を有するコンピュー
タシステム(200)により実行することができ、メモリ(220)は推論モジュール(204)を有し、この方法は、推論モジュール(204)によって、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と、液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論することを含む。
【0007】
気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論する装置の、いくつかの実施形態が開示される。この装置は、コンピュータシステム(200)を有し、コンピュータシステム(200)はプロセッサ(210)及びメモリ(220)を有し、メモリ(220)は推論モジュール(204)を有し、推論モジュール(204)は気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論するように構成される。
【0008】
[態様]
一態様によれば、気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための方法が開示される。この方法は、プロセッサ(210)およびメモリ(220)を有するコンピュータシステム(200)により実行することができ、メモリ(220)は推論モジュール(204)を有し、この方法は、推論モジュール(204)によって、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と、液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論することを含む。
【0009】
好ましくは、前記少なくとも1つの測定値は、測定密度を含む。
【0010】
好ましくは、前記少なくとも1つの測定値は、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む。
【0011】
好ましくは、前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項は、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有する。
【0012】
好ましくは、それぞれの項は、その項に対応する係数を有する。
【0013】
好ましくは、それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性は少なくとも1つの項固有の係数定数を有する。
【0014】
好ましくは、前記関係は少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項は、シフト項、前記測定密度を有する測定密度項、前記測定密度の高次値を有する高次密度項、一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、並びに一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つを有する。
【0015】
好ましくは、前記流動流体が天然ガス混合物である。
【0016】
好ましくは、前記エネルギー含有量は、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つである。
【0017】
好ましくは、前記コンピュータシステム(200)が振動センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上を測定する。
【0018】
一態様によれば、気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための装置が開示される。この装置はコンピュータシステム(200)を有し、前記コンピュータシステム
(200)はプロセッサ(210)及びメモリ(220)を有し、前記メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、前記推論モジュール(204)が前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論するように構成される。
【0019】
好ましくは、前記少なくとも一つの測定値は、測定密度を含む。
【0020】
好ましくは、前記少なくとも1つの測定値は、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む。
【0021】
好ましくは、前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項は、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有する。
【0022】
好ましくは、それぞれの項は、その項に対応する係数を有する。
【0023】
好ましくは、それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性は少なくとも1つの項固有の係数定数を有する。
【0024】
好ましくは、前記関係が少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項は、シフト項、前記測定密度を有する測定密度項、前記測定密度の高次値を有する高次密度項、一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、並びに一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つを有する。
【0025】
好ましくは、前記流動流体は天然ガス混合物である。
【0026】
好ましくは、前記エネルギー含有量は、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つである。
【0027】
好ましくは、前記装置が振動センサ(102)であり、前記コンピュータシステム(200)が、前記振動センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記少なくとも1つの測定値のうちの1つまたは複数を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
すべての図面において、同じ参照番号は同じ要素を表す。図面は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。
【
図1】
図1は、一実施形態に係る流動流体測定システムのブロック図を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るコンピュータシステム200のブロック図を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るエネルギー含有量を推論するための方法300のフローチャートを示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るエネルギー含有量を推論するための方法400のフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、一実施形態に係るエネルギー含有量を推論するための方法500のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、測定されたウォッベ指数値と、推論関係の実施形態から推論された推論ウォッベ指数値との間の適合のグラフ600を示す。
【
図7】
図7は、測定されたメタン価と、推論関係の実施形態から推論された推論メタン価との間の適合のグラフ700を示す
【
図8】
図8は、測定された可燃下限界と、推論関係の実施形態から推論された推論可燃下限界との間の適合のグラフ800を示す。
【
図9】
図9は、測定された総発熱量と、推論関係の実施形態から推論された推論総発熱量との間の適合のグラフ900を示す。
【
図10】
図10は、測定された真発熱量と、推論関係の実施形態から推論された推論真発熱量との間の適合のグラフ1000を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1-
図10および以下の説明は、エネルギー含有量を推論する実施形態の最良モードをどのように作成し使用するかを当業者に教示するための、特定の例を示している。本発明の原理を教示する目的で、一部の従来の態様が単純化又は省略されている。当業者は、本明細書の範囲内にあるこれらの例から、バリエーションの存在を理解するであろう。当業者であれば、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて、エネルギー含有量推論の複数のバリエーションが形成できることを理解するであろう。結果として、以下に記載される実施形態は、以下に記載される特定の例に限定されず、特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ限定される。
【0030】
たとえば、天然ガス混合物など、特定のクラスに液体の種類を分離した場合、流体流の一般的な測定量間のシンプルな関係を使用して、流体のエネルギー含有量を推論できることが分かる。これは、気体状態のエネルギー含有量を推論するために、測定値および推論関係が液体状態の量に基づいて決定される場合に特に当てはまる。「推論」または「推論すること」との用語が動詞形式で使用される場合、これは、推論的な関連を使用して、例えば、推論関係を使用して決定することを意味することを理解されたい。この推論は、例えば、熱伝導率、熱容量、および熱拡散率など、熱関連の指標を直接測定せずに行うことができる。さらに、推論は、誘電率、層流抵抗、乱流抵抗、および屈折率等の、エネルギー含有量を決定するための、従来の他の考慮事項を用いることなしに行うことができる。また、推論は、典型的な流量測定装置と流体との相互作用に関連する温度及び圧力低下の域を超えて、測定装置全体にわたって温度および/または圧力低下を人為的に発生させることなく、行うことができる。
【0031】
これらの関係は、特定のクラスのガス、例えば、天然ガス混合物に対して比較的単純であるので、推論関係は、液体状態における単純な測定値及び関連する係数の線形結合として表すことができる可能性がある。例えば、推論関係は単に、液体状態、おそらくライン状態における流体の測定値の加算になる程度に、非常に単純でありうる。この関係には、液体状態の流体の測定に対応する係数を組み込むことができる。一実施形態では、対応する係数が液体状態の流体の測定温度によって変動するように、温度依存関係を有することができる。一実施形態では、推論関係で使用される、流体状態の液体の測定値(潜在的に温度を除く)のそれぞれが、異なる対応する温度依存係数を有することができる。天然「ガス」と呼ばれる混合物にもかかわらず、天然ガスという用語を使用する場合、液体(すなわち、LNG)および気体状態の両方の天然ガス混合物を指しうることに留意されたい。本明細書は、天然ガス混合物に限定されず、液体および気体状態となりうるエネルギー含有量を有する他のクラスの流体に適用できることに、留意されたい。
【0032】
推論関係はさらに、エネルギー含有量の基準値関係の役割を果たすシフト項(A)を有しうる。シフト項は、温度依存性(K1(T))であってもよい。一実施形態では、液体状態の流体の測定値の1つは、液体状態の流体の測定密度である。測定密度は、推論関係の密度項(B)の要素となりうる。密度項(B)は、測定密度と、測定密度に対応する係数との積であってもよい。一実施形態では、この関係は、シフト項と密度項との和であってもよい。
【0033】
他の実施形態では、液体状態の流体の測定値は、液体状態の流体の測定音速をさらに含むことができる。この関係は、測定音速をさらに考慮することができる。例えば、この関係は、測定音速を組み込んだ音速項を更に有し得る。この実施形態では、音速項は、測定音速に、音速に対応する、対応係数を乗じたものであってもよい。一実施形態では、この関係は、シフト項、密度項、および音速項の合計であってもよい。さらに他の実施形態では、音速は、粘度測定値で置き換えることができる。例えば、この関係は、測定粘度を組み込んだ粘度項を有することができる。この実施形態では、粘度項は、測定粘度に、測定粘度に対応する対応係数を乗じたものであってもよい。一実施形態では、この関係は、シフト項、密度項、および粘度項の合計となりうる。
【0034】
測定温度を有さない、液体状態の流体の1つの測定量が組み込まれた関係は、式(2)の形をとることができる。
IECGas=A+B (2)
式(2)において、IECGasは、ガス状の流体の推論エネルギー含有量値である。Aはシフト項である。Bは、ここに示されるように密度項であるが、これに代えて、他の測定された項を式(2)で使用してもよいことが理解されるべきである。
【0035】
すべての実施形態において、シフト項(A)は、定数として表されてもよく、または、温度依存量(K1(T))として表されてもよく、その場合はおそらく、以下の式(3)に表されるように、単純な関係となる。
A=K1(T) (3)
【0036】
密度項(B)は、以下の式(4)に表されるように、液体状態の流体の測定密度(ρliquid)と、測定密度に対応する係数(K2)との積として表すことができる。
B=K2×ρliquid (4)
【0037】
一実施形態によると、測定密度に対応する係数(K2)は、式(4)が以下の式(5)
となるように、温度依存の係数(K2(T))であってもよい。
B=K2(T)×ρliquid (5)
【0038】
一実施形態によると、式(2)は、式(6)の形式をとることができる。
IECGas=K1(T)+K2(T)×ρliquid (6)
【0039】
係数およびシフト項の一部または全てが定数であり、温度によって変化しない実施形態を理解されたい。
【0040】
液体状態の流体の複数の測定量(項には測定温度を含まないが、温度に潜在的に依存する係数を有する複数の測定量)が推論関係で使用される実施形態では、推論関係は、式(7)の形をとることができる。
IECGas=A+B+C (7)
【0041】
シフト項(A)および密度項(B)は、式(3)から(6)で表されるとおりである。液体状態における流体の音速が、推論関係において使用される複数の測定量の1つである実施形態において、その関係は、式(7)に示されるように、音速項(C)を有しうる。
【0042】
式(8)で表されるとおり、音速項(C)は、液体状態における流体の測定音速(SOSliquid)と、測定音速に対応する係数(K3)との積として表すことができる。
C=K3×SOSliquid (8)
一実施形態では、測定音速に対応する係数(K3)は、式(8)が以下の式(9)となるように、温度依存の係数(K3(T))であってもよい。
C=K3(T)×SOSliquid (9)
【0043】
一実施形態によると、式(7)で表される関係は、式(10)で表されてもよい。
IECGas=K1(T)+K2(T)×ρliquid+K3(T)
×SOSliquid (10)
【0044】
液体状態の流体の複数の測定量(項には測定温度を含まないが、温度に潜在的に依存する係数を有する複数の測定量)が存在する様々な実施形態では、音速の代わりに、またはそれに加えて、液体状態の流体の粘度測定量が使用されうる。この実施形態では、音速項(C)に加えて、またはその代わりに、粘度項(D)を使用することができる。
【0045】
式(11)で表されるとおり、粘度項(D)は、液体状態における流体の測定粘度(ηliquid)と、測定粘度に対応する係数(K4)との積として表すことができる。
D=K4×ηliquid (11)
一実施形態では、測定音速に対応する係数(K4)は、式(11)が以下の式(12)となるように、温度依存の係数(K4(T))であってもよい。
D=K4(T)×ηliquid (12)
【0046】
一実施形態では、式(13)に示されるように、推論関係は、粘度項(D)を密度項(B)及びシフト項(A)と加算し、音速項(C)とは加算しない、合計値とすることができる。
IECGas=A+B+D (13)
【0047】
一実施形態によると、式(13)で表される関係は、式(14)で表されうる。
IECGas=K1(T)+K2(T)×ρliquid+K4(T)
×ηliquid (14)
【0048】
さらに別の実施形態では、シフト項(A)、密度項(B)、音速項(C)、および粘度項(D)のすべてが、推論関係で考慮されうる。 例えば、式(15)に示されるように
、推論関係は、シフト項(A)、密度項(B)、音速項(C)、および粘度項(D)の合計であってもよい。
IECGAS=A+B+C+D (15)
【0049】
一実施形態によると、式(13)で表される関係は、式(16)で表されうる。
IECGAS=K1(T)+K2(T)×ρliquid+K3(T)
×SOSliquid+K4(T)×ηliquid (16)
【0050】
推論関係は、さらに、使用される測定パラメータの二乗またはより高次の指数(以下、「高次の測定値」)、例えば、液体状態における流体の測定密度、液体状態における流体の測定音速、および液体状態における流体の粘度のうちの1つまたは複数の二乗またはより高次の指数、を伴う、任意の数の項(以下、「高次の項」)を考慮することができる。推論関係は、高次の測定値のそれぞれに対して、対応する係数を有し得る。高次の測定値に対応する係数は、それぞれ温度依存性を有し得る。高次の測定値は、推論関係において高次の項で表れうる。様々な実施形態では、高次の項は、それぞれの高次の測定値と、それぞれ対応する係数との積とすることができる。例えば、式(2)、(6)、(7)、(10)、(13)、(14)、(15)、および(16)のいずれかの右辺に、和の項として追加される高次の項など、1つまたは複数の高次の項を、さらなる和の項として推論関係に組み込むことができる。
【0051】
一実施形態では、推論関係は特定の二次の項があってもよく、式(17)の形をとるこ
とができる。
【数1】
式(17)において、K
5(T)およびK
6(T)は、それぞれ二乗密度および二乗粘度測定値に対する温度依存係数である。係数が温度によって変化しない定数である(すなわち、K
1-K
6が定数である)、他の実施形態が考えられる。これは、密度及び粘度のそれぞれと、ガスの推論エネルギー含有量との間の二次関係を提供する。
【0052】
一実施形態では、推論関係の各項は、測定値および高次の測定値のうちの一方のみを有してもよい。
【0053】
温度依存係数(例えば、K1(T)、K2(T)、K3(T)、K4(T)、K5(T)および/またはK6(T))のうちの1つまたは複数の温度依存性は、任意の数の関係によって決定することができる。例えば、係数と温度との関係は、線形であることができ、その一実施形態は、式(18)に示される。
KX(T)=G+H×T (18)
式(18)において、GおよびHは、さまざまな温度範囲でいくつかの異なるガス混合物にわたって分析手段、例えば回帰によって決定されうる定数(以下、「係数定数」)である。それぞれの項は、温度依存係数を有することができ、係数の各温度依存性は、少なくとも1つの項固有の係数定数を有することができる(例えば、Gおよび/またはHは、式(19)の例示的な「x番目」の項の、項固有の係数定数となりうる)。「x」の添え字は、単に、式(18)で記載される係数関係が、推論関係において、任意の対応する測定値(または高次の測定値、例えば、測定密度の二乗)に対して、一般的なものであることを示す。「関係要素」とは、係数および係数定数のうちの1つまたは複数を含みうる。本明細書の目的のために推論関係の構成が決定されると、例えば式(2)-(19)のうちの一つ以上の式の形の構成が決定されると、推論関係は、この構成及び関係要素によって特徴付けられうる。
【0054】
別の実施形態では、温度依存係数(例えば、K1(T)、K2(T)、K3(T)、K4(T)、K5(T)および/またはK6(T))の1つまたは複数の温度依存性は、温度との二次関係によって決定することができ、その一実施形態は、式(19)に示される。
KX(T)=G+H×T+I×T2 (19)
式(19)において、G、H及びIは、さまざまな温度範囲でいくつかの異なるガス混合物にわたって分析手段、例えば回帰によって決定されうる定数である。上記のとおり、「x」の添え字は、単に、式(19)に記載される係数関係が、推論関係において、任意の対応する測定値(または高次の測定値、例えば、測定密度の二乗)に対して、一般的なものであることを示す。温度依存係数(例えば、K1(T)、K2(T)、K3(T)、K4(T)、K5(T)および/またはK6(T))のそれぞれは、G、H及びIのうちの1つまたは複数の異なる値を有することができ、および/または、係数のそれぞれについて温度において異なる次数の多項式を有することができ、より多くのまたはより少ない係数が使用されうる。式(2)-(19)で表される関係の一つ又は複数は、ライン条件で取得される一般的な測定値から、MN、LFL、WI、GHV、およびNHVのうちの1つまたは複数の値を推論するために使用できる。
【0055】
これらの実施例は、
図6-10及び対応するこれらの説明で示される。
【0056】
係数およびシフト項の一部または全部が定数であり、温度によって変化しない実施形態
を理解されたい。
【0057】
図1は、一実施形態に係る流動流体測定システムのブロック図を示す。このシステム100は、振動センサ102、オプションである音速センサ106、およびオプションである追加振動センサ199を有する。任意の振動センサ102のシステム、例えば、コリオリ流量計、フォークデンシトメータ、フォーク粘度計、および/または同様のものを使用できることが、理解されるべきである。オプションの振動センサ106についても同様である。様々な実施形態では、同じまたは異なるタイプの複数の振動センサ102を連続して使用して、エネルギー含有量の推論決定に使用される測定値を決定することができる。
【0058】
振動センサ102および/または199は、振動センサと相互作用する流体の、典型的な流動流体および/または流体流の測定値を提供するために、使用できる。振動センサ102および/または199によって提供される典型的な測定値は、例えば、液体状態の流体の密度、粘度、音速、質量流量、および体積流量のうちの1つまたは複数を含みうる。振動センサ102およびオプションの振動センサ199は、異なる種類の振動センサであってもよく、その結果、これらは異なる構造を有し、および/または互いに異なる測定値を提供しうる。例えば、振動センサ102はフォーク粘度計であってもよく、オプションの振動センサ199は、コリオリ流量センサであってもよい。これは単なる例示であり、可能な流量センサ102及び/または流量センサ102とオプションの流量センサ199との組み合わせの、すべてのバリエーションが考慮される。
【0059】
振動センサ102および/または199は、パイプまたは導管、タンク、コンテナ、または他の流体容器に取り付けることができる。また、振動センサ102および/または199は、流体の流れを誘導するマニホルドまたは同様の構造物に取り付けることができる。しかしながら、他の取り付け構成も考えられ、これらは明細書および特許請求の範囲の範囲内である。
【0060】
一実施形態では、振動センサ102および/または199は、フォークメータ、例えば、フォーク粘度計またはフォーク密度計でありうる。振動センサ102および/または199は、メータ電子機器110、ドライバ103、第1のタイン104a、第2のタイン104b、応答センサ105、温度センサ108、および通信リンク26を有しうる。振動センサ102は、流体の測定値を提供するように動作する。振動センサ102は、流動または非流動流体を含む流体の、例えば、流体密度(ρ)、流体温度(T)、流体粘度(η)、質量流量、体積流量、および圧力(P)のうちの1つまたは複数を含む、流体測定値を提供することができる。このリストは網羅的なものではなく、振動センサ102および/または199は、他の流体特性を測定または決定してもよい。
【0061】
メータ電子機器110は、測定値の取得および/またはプログラミングモジュールの処理をするための、生の信号データを処理する処理回路である。メータ電子機器110は、
図2に示すコンピュータ200の一実施形態であってもよい。メータ電子機器110は、振動センサ102のドライバ103および応答センサ105の動作を制御し、ドライバ103および応答センサ105に電力を供給することができる。例えば、メータ電子機器110は、駆動信号を生成し、生成した駆動信号をドライバ103に供給して、第1のタイン104aに振動を発生させることができる。第1のタイン104aは、振動センサ102の浸漬要素である。生成された駆動信号は、第1のタイン104aの振動振幅および周波数を制御することができる。生成された駆動信号はまた、振動持続時間及び/又は振動タイミングを制御することができる。メータ電子機器110は、全体が一体として使用されるがおそらくは別々に販売される、複数の構成要素および製品を表しうることに留意されたい。例えば、メータ電子機器110は、計器の電子機器と、他の通信可能に結合された要素の電子機器、例えば、送信機、またはその使用に計器およびその電子機器を必要と
する他のデバイスとを備えることができる。
【0062】
ドライバ103は、動きを駆動する素子である。第1のタイン104aは、振動し流体と相互作用する素子である。ドライバ103は、第1のタイン104aを振動させるために、メータ電子機器110から駆動信号を受信することができる。第2のタイン104bは、おそらく第1のタイン104aの振動によって駆動され、その結果振動を生じるもう一つの浸漬要素である。第2のタイン104bは、第2のタイン104bの振動応答を測定する応答センサに結合され、第2のタイン104bの振動応答と、第1のタイン104aを駆動するドライバ103に印加されるドライバ信号との関係が、流体の特性を表すようになっている。これらの振動は、流動流体および/または流体流の測定値がメータ電子機器110によって決定できるように、駆動されうる。温度センサ108は、温度を測定するデバイスである。流動流体および/または流体流の測定値は、温度依存性を有することがあり、このため、温度センサ108は、測定に使用できるように、温度データをメータ電子機器110に提供することができる。
【0063】
メータ電子機器110は、第2のタイン104bの動きおよび/または振動を検出する応答センサ105から、1つまたは複数の振動信号を受信することができる。一実施形態によると、メータ電子機器110は、ドライバ103に提供する指令信号と応答センサ105から受信する応答信号とが位相ロックされるように、この振動要素を位相ロックで駆動することができる。メータ電子機器110は、1つまたは複数の振動信号を処理して、例えば、密度(ρ)測定値を生成することができる。メータ電子機器110は、応答センサ105から受信した1つまたは複数の振動信号を処理して、この1つまたは複数の信号の周波数を決定する。さらに、またはそれに加えて、メータ電子機器110は、1つまたは複数の振動信号を処理して、粘度(η)などの流体の他の特性を決定する。他の実施形態では、メータ電子機器110は、上流信号と下流信号との位相差を決定することができ、これは例えば、流体流量を決定するために処理される。理解され得るように、位相差は、典型的には、度またはラジアンなどの空間単位で測定または表現されるが、時間ベースの単位などの任意の適切な単位を使用することができる。時間ベースの単位が使用される場合、位相差は、当業者により、振動信号と駆動信号との間の時間遅延と呼ばれることがある。その他の振動応答特性および/または流体測定が考えられるが、それらは明細書および特許請求の範囲の範囲内のものである。
【0064】
メータ電子機器110は、通信リンク26とさらに結合することができる。メータ電子機器110は、振動信号を通信リンク26を介して通信することができる。メータ電子機器110はまた、受信した振動信号を処理して1つまたは複数の測定値を生成することができ、この1つまたは複数の測定値を通信リンク26を介して通信することができる。さらに、メータ電子機器110は、通信リンク26を介して情報を受信することができる。例えば、メータ電子機器110は、通信リンク26を介して、命令、更新、動作値または動作値の変更、および/またはプログラミング更新または変更を受信することができる。様々な実施形態では、通信リンク26は、通信カップラ240の形態であってもよく、通信カップラ240に通信可能に結合されていてもよい。
【0065】
振動センサ102及び/又は199は、閉ループ回路を使用してドライバ103のための駆動信号を提供することができる。駆動信号は、通常、受信された振動信号に基づいている。閉ループ回路は、振動信号または振動信号のパラメータを、修正すること、または駆動信号に組み込むことができる。例えば、駆動信号は、増幅、変調、または他の方法で変更された受信振動信号であってもよい。したがって、受信された振動信号は、閉ループ回路が目標周波数または位相差を達成できるようにする、フィードバックを含むことができる。フィードバックを使用して、閉ループ回路は、駆動周波数を段階的に変化させ、目標位相に到達するまで振動信号を監視し、駆動周波数および振動信号が目標位相またはそ
の近傍で位相ロックされるようにする。
【0066】
流体の粘度(η)および密度(ρ)などの流体特性は、駆動信号と振動信号との位相差が、135°および45°である周波数から決定することができる。これらの所望の位相差は、第1の非共振位相差φ1および第2の非共振位相差φ2と表され、半値電力または3dB周波数に対応しうる。第1の非共振周波数ω1は、第1の非共振位相差φ1が135°である周波数として定義される。第2の非共振周波数ω2は、第2の非共振位相差φ2が45°である周波数として定義される。第2の非共振周波数ω2で行われる密度(ρ)測定は、流体粘度(η)に無関係にできる。従って、第2の非共振位相差φ2が45°である場合に行われる密度(ρ)測定は、他の位相差で行われる密度(ρ)測定よりも正確にすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、振動センサ102は密度(ρ)および粘度(η)の一方のみを決定でき、他の器具が密度(ρ)および粘度(η)の他方を決定でき、この他の器具は、おそらく、異なる振動計である。
【0068】
振動センサ102の様々な実施形態を考えることができ、
図1に示される実施形態は、単なる例示的な目的のためのものである。任意の振動センサ102、例えば、記載のフォークメータまたはコリオリ流量センサを、使用することができる。
【0069】
オプションである音速センサ106は、流体の音速を検出するセンサである。オプションである音速センサ106は、気体状態の流体のエネルギー含有量を決定するために、液体状態の流体の音速を決定することができる。オプションである音速センサ106は、音送信機を使用して、測定される液体流体を介して音を送信し、音波センサで応答を送信することができる。音速は、通過時間及び音送信機と音波センサとの間の距離に基づいて決定されてもよい。これは単なる例示であり、オプションの音速センサ106による、音速の他の測定方法が考えられる。
【0070】
図示されないが、振動センサ102および/または199のうちの1つまたは複数は、コリオリ流量センサであってもよい。コリオリ流量センサは、コリオリ力による測定振動の位相差を決定し、流体、おそらく液体状態の流体および/または気体状態の流体の質量流量および/または密度を決定することができる。一実施形態によると、振動センサ102およびオプションの振動センサ199のいずれも、フォークメータではない(
図1に示される振動センサ102は、この実施形態の振動センサ102と異なる)。別の実施形態では、振動センサ102は、振動に依存するガス密度計であってもよい。振動センサ102および/または199、ならびにオプションの音速センサ106が測定し、測定量を決定する方法は、当技術分野において十分に確立されており、簡潔性の目的でさらなる開示は省略する。
【0071】
コンピュータシステム、例えば、振動センサ102のメータ電子機器110は、1つ以上の典型的な流動流体および/または流体流測定値を使用して、例えば、式(2)から(19)及びこの明細書で教示される他の例で表される関係のいずれかを用い、気体状態の流体のエネルギー含有量の指標の値を推論するように構成することができる。
【0072】
典型的なエネルギー含有量の指標の例には、メタン価(以下、「MN」)、可燃下限界(以下、「LFL」)、ウォッベ指数(以下、「WI」)、総発熱量(以下、「GHV」)、および真発熱量(以下、「NHV」)が含まれる。本明細書に開示される実施形態では、推論エネルギー含有量は、MN、LFL、WI、GHV、およびNHVのうちの1つまたは複数でありうる。
【0073】
MNは、燃焼時の流体のノックポテンシャルを表すことができるエネルギー含有量測定値である。これは、燃料が制御不能に燃焼する可能性を表す。MNを得るための関係式の一実施形態を、式(20)に示す。
【数2】
式(19)において、MNはメタン価であり、(H/C)は炭素に対する水素の原子比率である(例えば、4個の水素と1個の炭素を有するメタンでは、(H/C)は4である)。これを直接決定するためには、流体混合物の組成を知る必要があり、これはライン条件で決定するのは困難である。
【0074】
LFLは、燃焼が起こる、空気との混合物中のガスの最小配合量を表す、エネルギー含有量測定値である。LFLを得るための関係式の一実施形態を、式(21)に示す。
【数3】
式(21)において、LFLは可燃下限界であり、iは混合物の各成分を参照するインデックスであり、xiは成分iの相対比率であり、LFLiは成分iの可燃下限界である。この関係を使用する方法は、組成を知る必要があることによって制限される。組成は、ライン条件で決定することが困難な場合がある。
【0075】
WIは、可燃ガスの互換性を表す、エネルギー指標である。WIは比重の平方根に対する発熱量である。式(22)は、WIを決めるための関係式の一実施形態を示す。
【数4】
式(22)において、WIはウォッベ指数であり、Cvは発熱量であり、SGは流体の比重である。繰り返しとなるが、発熱量を決定するための従来の測定は、混合物の相対組成を知ることを必要とし、組成決定を必要とする。ライン条件での生の測定値を決定または推論する場合、組成の決定は非実用的であり得る。
【0076】
GHVおよびNHVはいずれも発熱量であり、しばしばカロリフィク量と呼ばれる。GHVとNHVとの差は、NHVが、混合物中の任意の蒸気を凝縮させることから生じる熱量によって減少することである。GHVを決定する方法の一実施形態が、式(23)に示されている。
【数5】
式(23)において、GHVvは総発熱量(体積単位)であり、%CO2は混合物の体積による二酸化炭素配合であり、%N2は混合物の体積による窒素配合である。式(23)は、体積単位でのAGA5等式の関係である。なお、二酸化炭素および窒素の項のみが示されているが、簡潔性のために省略されている他の物質に関し、より多くの元素が式中に存在することに留意されたい。いくつかのシステムでは、式(23)は、1平方インチあたり14.73ポンドの気圧および60°Fの条件で、1立方フィートあたりのBTU単位の発熱量を、計算する。
【0077】
また、AGA5に相当する、質量単位での式を使用してもよい。質量単位での同等の式が、式(23A)に示されている。
【数6】
式(23A)において、GHV
Mは総発熱量(質量単位)であり、M
Cは質量による二酸化炭素配合であり、M
Nは質量による窒素配合であり、SGは比重である。
【0078】
NHVを得るために、式(23)または(23A)のいずれかの結果として得られるGHVを使用し、それから混合物の水蒸気の凝縮熱を差し引くことができる。繰り返しとなるが、これは、組成決定を必要とする。ライン条件での生の測定値を決定または推論する場合、組成の決定は非実用的であり得る。
【0079】
推論関係が液体状態の流体の音速に依存しない実施形態では、単一の振動計102、おそらくフォーク粘度計(以下、「FVM」)を使用して、液体状態の流体の測定値に基づいて、気体状態の流体の推論エネルギー含有量を決定することができる。FVMによって行われる測定は、測定密度及び測定粘度を含むことができる。液体状態の流体のこれらの測定量は、気体状態の流体のエネルギー含有量を推論するために使用できる。FVM(例えば、振動センサ102)が使用される実施形態では、別のコリオリ流量センサ(例えば、オプションの振動センサ199)が、なお液体状態の流体の質量流量を決定するために使用されうる。本明細書に開示されるシステムのいずれかによって質量流量およびエネルギー含有量の両方が決定される場合、システムは、さらに、液体状態の流体の質量流量およびエネルギー含有量から流体のエネルギー流量を導出することができ、その結果、液体状態の流体の流量は、流れる流体が単位時間当たりに気体状態において提供できるエネルギーで測定される。
【0080】
他の実施形態では、推論関係は、液体状態の流体の測定音速に依存する。この実施形態では、オプションの音速センサ106を使用して、液体状態の流体の音速を決定することができる。液体状態の流体の音速が使用され、かつ液体状態の流体の密度が使用される実施形態では、オプションの音速センサ106によって決定される液体状態の流体の音速測定値は、別のコンピュータにおいての気体状態の流体のエネルギー含有量を推論するために、別のコンピュータ、おそらく振動センサ102および/または199のメータ電子機器に送信されうる。この実施形態では、液体状態の流体の密度および粘度のうちの1つ以上は、振動センサ102および/または199によって決定することができ、気体状態の流体のエネルギー含有量を推論するために、送信された液体状態の流体の音速測定値とともに使用され得る。
【0081】
複数の振動センサ102および/または199がそれぞれ、液体状態の流体の質量流量、密度、および粘度のうちの1つまたは複数を測定するために使用され、および/またはオプションの音速センサ106が、液体状態の流体の音速を測定するために使用される、さらなる実施形態が想定される。開示されたセンサの種類及びエネルギー含有量の推論において使用される可能性のある測定値に基づく、可能なハードウェアおよびソフトウェア構成の全ての組合せが、本明細書によって想定される。
【0082】
図2は、一実施形態に係るコンピュータシステム200のブロック図を示す。一実施形態によると、コンピュータシステム200は、メータ電子機器、例えば、前述のメータ電子機器110であってもよい。様々な実施形態において、コンピュータシステム200は、特定用途向け集積回路から構成されてもよく、または個別のプロセッサ要素およびメモリ要素を有してもよく、このプロセッサ要素は、メモリ要素からの命令を処理し、メモリ
要素上にデータを格納する。コンピュータシステム200は、他から分離された物理システムでもよく、仮想マシンであってもよく、および/またはクラウドコンピューティング環境に置かれていてもよい。コンピュータシステム200は、この明細書で提示される任意の方法手順を実現するように構成することができ、開示されたモジュールに関連するすべての機能を実行することができる。
【0083】
コンピュータシステムは、プロセッサ210、メモリ220、インターフェース230、および通信カップラ240を備えうる。メモリ220は、例えば、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206を実現する集積回路を記憶すること、かつ/または有することができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム200は、前述のコンピュータ要素に統合された、またはこれらのコンピュータ要素に加えて、またはこれらと通信する、他のコンピュータ要素、例えば、バス、他の通信プロトコル等を有することができる。
【0084】
プロセッサ210は、データ処理の要素である。プロセッサ210は、中央演算装置、特定用途向け集積回路、他の集積回路、アナログコントローラ、グラフィックス処理装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ、これらまたは他の一般的な処理要素の任意の組合せなど、処理に使用できる任意の要素でありうる。プロセッサ210は、処理データを記憶するためのキャッシュメモリを有してもよい。プロセッサ210は、本明細書の方法が、ここで示された本発明の構成を使用して計算の分解能を向上させ、これらの計算の誤差を低減することができるので、本明細書の方法から恩恵を受けうる。
【0085】
メモリ220は、電子記憶用のデバイスである。メモリ220は、任意の非一時的な記憶媒体であることができ、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、揮発性メモリ、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ、キャッシュメモリなどのうちの1つ、いくつか、またはすべてを含むことができる。プロセッサ210は、メモリ220に格納された命令を実行しデータを使用することができる。
【0086】
コンピュータシステム200は、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206によって使用される任意のデータを格納するように構成されてもよく、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206によって受信または使用された任意のパラメータを表す任意の期間の履歴データを、おそらくデータがいつ取得または決定されたかを表すタイムスタンプとともに、メモリ220に格納してもよい。コンピュータシステム200はまた、任意の媒介物の決定を表す任意のデータをメモリ220に記憶することができる。分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206は、3つの別々のモジュールとして表示されているが、本明細書は、本明細書で現された方法を達成するために協調して動作する任意の数(指定されたように1つまたは3つであっても)の様々なモジュールを想定している。
【0087】
分析モジュール202は、気体状態にある流体のエネルギー含有量と、流体が液体状態にある間に測定された流体のパラメータとの間の推論関係を決定するプログラミングモジュールである。分析モジュール202は、推論関係を決定するために、本明細書で開示された任意の方法、例えば、
図1および式(2)-(19)の説明で開示された方法および式を使用することができる。分析モジュールは、評価手順、例えば、回帰または機械学習アルゴリズムを使用して、存在するデータを用いて推論関係を決定することができる。例えば、分析は、液体状態の流体の様々な測定パラメータを組み込んだ様々な関係のもとに実行され、結果として得られる推論エネルギー含有量を、気体状態の流体の既知の測定エネルギー含有量に収束させることができる。例えば、分析モジュール202は、液体状態
における流体の測定密度、液体状態における流体の測定音速、および/または液体状態における流体の測定粘度、並びに気体状態における同じ流体のエネルギー含有量の対応する測定値のうちの1つまたは複数を表すデータを受け取り、液体状態における流体の測定パラメータを気体状態における同じ流体の測定エネルギー含有量値に関連付ける推論関係の、推論関係要素の値を決定することができる。様々な実施形態では、推論関係は温度依存性の要素を有し、従って分析モジュール202による推論関係の決定は液体状態の流体の測定温度の値を受け取ることも必要とし、測定温度は、おそらく他の測定値と同時に、または実質的に同時に取得される。推論関係要素は、測定パラメータ、測定パラメータの高次値、係数(おそらく、測定パラメータの、または測定パラメータの高次値の1つまたは複数に対応する、対応係数)、様々な係数の温度依存性などを含むことができる。推論関係は、式(2)-(19)のうちの1つまたは複数によって記述することができ、分析モジュールは、推論関係の決定のために、式(2)-(19)で表される関係のうちの1つまたは複数を使用することができる。分析モジュール202は、さらに、本明細書に教示されているように、測定値の高次項(例えば、二次項)を有する方程式を使用して、推論的関係を決定することができる。
【0088】
分析モジュール202は、推論関係を決定するために、いくつかの測定値のみを使用してもよい。例えば、一実施形態では、分析モジュール202は、液体状態の流体の測定量の値を受け取り、測定量に対応する項(例えば、A、B、C、および/またはD)を決定することができる。分析モジュール202は、係数、及びおそらくはシフト項(A)の温度依存性を規定するために、液体状態の流体の温度測定値を取り込むことができる。この実施形態では、分析モジュール202は、測定量値に対応する対応係数を決定し、この測定量値に対応する対応係数を測定量値に乗算して、測定量値に対応する項を生成することができる。分析モジュール202は、液体状態の流体の測定量値および気体状態の流体の測定エネルギー含有量を使用して、測定値に対応する係数を決定するための評価手順を実行することができる。一実施形態では、対応係数および/またはシフト項は温度依存性とされ、この対応係数および/またはシフト項は定数ではない。この実施形態では、分析モジュール202は、評価手順を実行することにより、液体状態の流体の測定温度と、対応係数および/またはシフト項との関係を決定することができる。
【0089】
分析モジュール202は、推論エネルギー含有量のタイプのそれぞれに対して、どの測定値及び項がその推論エネルギー含有量のタイプのそれぞれに適切であるかに応じて、異なる推論関係を使用することができる。例えば、測定密度、測定温度、測定粘度、測定音速、測定値の高次値などのうちの1つまたは複数を推論関係で使用することができる。推論関係要素(例えば、係数定数)を決定する際に使用される1つ以上の測定量の測定は、コンピュータシステム200を使用するシステム100によって達成されてもよく、および/または、コンピュータシステム200は、既に決定された測定値および対応する測定されたエネルギー含有量値を有するソースから測定データを受信してもよい。
【0090】
分析モジュール202は、要素を有する推論関係、例えば、推論関係の構成(例えば、式(2)-(19)で表される関係)および関係要素(例えば、係数、係数定数、並びに、式(2)-(19)で表される関係に反映される可能性のある係数を決定するための、温度および/または圧力依存関係)を決定し又はユーザから受け取ることができる。式の係数および/または係数定数、および/または係数を決定するために使用される要素は、例えば、回帰または他の統計的または確率的技法を使用して、分析モジュール202によって決定できる。推論関係の構成は、分析モジュール202によって決定されてもよく(例えば、それぞれのエネルギー含有量指標に対して最良の関係を決定してもよい)、またはユーザまたはメータ電子機器110によって供給されてもよい。結果として得られる推論関係要素は、分析モジュール202によって、既に決定されているエネルギー指標のうちの1つまたは複数、流動流体、および流動流体がメンバーである流動流体のクラスと、
関連付けることができる。エネルギー指標、流体タイプ、および流体クラスのうちの1つまたは複数に関するデータは、ユーザによって供給されてもよく、または分析モジュール202によって決定および/または識別されてもよい。結果として得られる推論関係、関係要素、およびそれらとのデータ関連は、分析モジュール202とともに推論関係を決定したコンピュータシステム200に格納されてもよく、または異なるコンピュータシステム200、おそらく振動センサ102のメータ電子機器110(または直接結合されたハードウェア)に送信されてもよい。
【0091】
推論モジュール204は、推論エネルギー含有量値を推論するために、既定の要素を有する推論関係(例えば、項及び/又は既定の係数定数の間の既定の関係)を使用する。保存された推論関係は、既定のおよび/または予め記憶された要素、例えば、係数を決定するための推論関係(例えば、式(2)~(19)で表される関係)および関係要素(例えば、係数、係数定数、並びに、式(2)~(19)で表される関係に反映される可能性のある係数を決定するための、温度および/または圧力依存関係)を有することができる。式の係数および/または係数を決定するために使用される要素は、予め決定され、コンピュータシステム200(または直接結合されたハードウェア)に予め記憶されてもよい。推論関係要素は、データによって、決定されるエネルギー指標、流動流体、および流動流体がメンバーである流動流体のクラスのうちの1つまたは複数と関連付けることができる。エネルギー指標、流体タイプ、および流体クラスのうちの1つまたは複数に関するデータは、ユーザによって供給されてもよく、または推論モジュール204によって決定および/または識別されてもよい。このデータ関連付けは、推論モジュール204が特定のアプリケーションのための最良の推論関係要素およびエネルギー含有量指標を使用することを、保証しうる。推論モジュール204は、メモリ220から、特定の流動流体およびアプリケーションのための適切な関係要素を取り出すことができる。これを用いて、推論モジュール204は、推論関係を評価して、液体状態の流体の測定値から気体状態の流体のエネルギー含有量を決定することができる。
【0092】
一実施形態では、推論関係の要素(例えば、項および/または既定の係数定数間の既定の関係)の決定が第1のシステムによって行われ、その第1のシステムにおいて決定された既定の要素が第2のシステムにおけるエネルギー含有量の生での推論において使用されてもよいことを理解されたい。この実施形態では、第1のシステムのためのコンピュータシステム200は、分析モジュール202および測定モジュール206のうちの1つまたは複数を有することができるが、推論モジュール204を有していない可能性がある。この実施形態では、第2のシステムのためのコンピュータシステム200は、推論モジュール204および測定モジュール206のうちの1つまたは複数を有することができるが、分析モジュール202を有していない可能性がある。
【0093】
別の実施形態では、コンピュータシステム200は、推論関係要素(例えば、項及び/又は既定の係数定数の間の既定の関係)を決定すること、及び推論関係を展開して生のライン状態での測定値からエネルギー含有量値を推論することの両方に使用できる。この実施形態では、コンピュータシステム200は、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206のうちの1つまたは複数を有することができる。
【0094】
測定モジュール206は、センサから生のデータを取り出し、生のデータを処理して流体および/または流体流量測定値を決定するプログラミングモジュールである。流動流体および/または流動流体の測定値は、測定密度、圧力、粘度、音速、温度、質量流量などのうちの1つまたは複数を含むことができる。様々な実施形態では、様々なハードウェア要素をシステムに組み込むことができる。システム100内の異なるハードウェア要素のそれぞれは、測定モジュール206の異なる実施形態で実現することができる。例えば、振動センサ102は、測定モジュール206の一形態を使用して、密度および粘度のうち
の1つまたは複数を測定することができる。オプションの音速センサ106は、測定モジュール206自体の実施形態を使用して、流動流体の音速を測定できる。オフジョンの追加振動センサ199は、測定モジュール206自体の実施形態を使用して、流動流体の質量流量および/または体積流量を決定できる。
【0095】
分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206の機能が企図され、これは、提示されたフローチャートで実行される方法を反映するものである。本明細書のすべての方法は、指定された各フローチャートおよび順序に関して考えられたものであるか、または順序が問題でないことが指定された場合フローチャートに情報を提供するものであるが、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206のすべての方法および機能は、この明細書に続く任意の方法クレームの目的のために、考えられたものである。
【0096】
また、コンピュータシステム200がメータ電子機器110である実施形態では、メータ電子機器110は、多数の通信可能に結合された要素を含んでもよい。メータ電子機器110である結合型コンピュータシステム200を形成するために相互作用するハードウェアは、異なる構成要素、例えば、対応するおよび/または互換性のある送信機に通信可能に結合された従来のメータ電子機器アレイであってもよい。一実施形態によると、メータ電子機器110は、振動センサ102の一体型メータ電子機器要素内にプロセッサ210の少なくともいくつかの要素を有し、振動センサ102に結合された送信器にメモリ220の少なくともいくつかの要素を有することができる。
【0097】
インターフェース230は、データコンピュータシステム200を外部の計算要素に通信可能に結合するために使用される入出力デバイスである。インターフェース230は、例えば、ユニバーサルシリアルバス、Prolink、シリアル通信、シリアルATA、HPCタイプ接続、ギガビットイーサネット、インフィニバンド等を含む公知の技術を用いて、コンピュータシステム200を外部要素に接続することができる。インターフェース230は、通信カップラ240を有することができる。通信カップラ240は、コンピュータシステム200を、例えば、外部計算デバイス、または、1つまたは複数の振動センサ102、オプションの音速センサ106及びオプションの追加振動センサ199間のデータ転送を容易にする、コンピュータシステム200の外部構成要素と結合するために使用される。コンピュータシステム200が、複数の、互換性がありかつ分離可能な結合要素(例えば、振動センサ102の従来のメータ電子機器および送信機)から構成されるメータ電子機器110である実施形態では、通信カップラ240は、これらの要素を通信可能に結合することができる。一実施形態では、通信カプラ240は、通信リンク26の一実施形態とすることができる。
【0098】
[フローチャート]
図3-5は、いくつかの実施形態に係る、エネルギー含有量を推論し使用する方法のフローチャートを示す。フローチャートに開示された方法は、網羅的なものではなく、単にステップおよび順序の可能性のある実施形態を示しているに過ぎない。これらの方法は、
図1および
図2の説明に開示された要素、
図1および
図2に開示されたシステム100およびコンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および/または測定モジュール206を含む、本明細書全体の文脈で解釈されなければならない。
【0099】
図3は、一実施形態に係るエネルギー含有量を推論するための方法300のフローチャートを示す。方法300で参照される又は暗黙的に使用される、システム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、および分析モジュール202、推論モジュール204、測定モ
ジュール206は、
図1および
図2に開示されるとおりの、方法300で参照されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206とすることができるが、別の実施形態では、任意の適切な、方法300で参照される又は暗黙に使用されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206を採用してもよい。システム100の全ての機能を含む、本明細書に開示されるこれらのステップを達成するための全ての方法が、考慮される。
【0100】
ステップ302は、推論モジュール204によって、気体状態にある流体の推論エネルギー含有量と、液体状態にある流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、気体状態にある流体の推論エネルギー含有量を推論する。ステップ302は、振動センサ102および/またはオプションの追加振動センサ199の推論モジュール204によって実行されてもよい。推論は、式(2)-(19)のうちの1つまたは複数で表される関係に基づきうる。推論のための入力パラメータの値は、振動センサ102、オプションの音速センサ106、およびオプションの追加振動センサ199のうちの1つまたは複数によって提供することができる。
【0101】
他の実施形態では、
図3に示す方法は、上に挙げたステップに加えて、またはその代わりに、他のステップを有することができる。
図3に示される方法の一部として上に挙げたステップのサブセットは、それら自体の方法を形成するために使用されてもよい。方法300のステップは、任意の組み合わせおよび順序で任意の回数繰り返すことができ、例えば、生のまたは連続したライン状態の推論エネルギー含有量値を提供するために、連続的にループすることができる。
【0102】
図4は、一実施形態に係るエネルギー含有量を推論するための方法400のフローチャートを示す。方法400で参照される又は暗黙的に使用される、システム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、および分析モジュール202、推論モジュール204、測定モジュール206は、
図1および
図2に開示されるとおりの、方法400で参照されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206とすることができるが、別の実施形態では、任意の適切な、方法400で参照される又は暗黙に使用されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206を採用することができる。システム100の全ての機能を含む、本明細書に開示されるこれらのステップを達成するための全ての方法が、考慮される。方法400は、ステップ302の一実施形態であってもよく、ステップ302は、方法400の一実施形態であってもよい。
【0103】
ステップ402は、推論モジュール204によって、液体状態の流体の関連する入力パラメータの測定値を受け取る。一実施形態では、関連する入力パラメータは、密度、粘度、温度、圧力、および音速のうちの1つまたは複数とすることができる。一実施形態によると、推論モジュール204は、振動センサ102に格納されてもよい。振動センサ102は、それ自体の測定モジュール206を使用して、例えば、流動流体の密度、粘度、および温度のうちの1つまたは複数の量を測定することができる。振動センサ102は、推論関係の実施形態が音速量の使用を必要とする場合、オプションの音速センサ106から測定音速を受け取ることができる。一実施形態によると、振動センサ102は、オプショ
ンとして、オプションの追加振動センサ199から質量流量を受け取ることができる。
【0104】
ステップ404では、推論モジュール204によって、液体状態の流動流体について取得された測定値と、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量との間の推論関係がロードされる。メータ電子機器110に格納された推論関係は、既定のおよび/または予め記憶された要素、例えば、推論関係の構成(例えば、式(2)~(19)で表される関係)および関係要素(例えば、係数、係数定数、並びに、式(2)~(19)で表される関係に反映される可能性のある係数を決定するための、温度および/または圧力依存関係)を有してもよい。式の係数及び/又は係数を決定するために使用される要素は、予め決定され、振動センサ102(または直接結合されたハードウェア)のメータ電子機器110に予め記憶されてもよい。これらの推論要素のうちの1つ以上は、以前に実行された方法、例えば、
図5に示されるような方法500の実施形態において決定されていてもよい。これらの要素は、分析モジュール202を有する異なるコンピュータシステムにおいて規定されていてもよい。これらの係数、構成、および/または要素は、例えば、係数、係数定数、構成、および/または要素のうちの少なくとも1つと、流動流体又は流動流体がメンバーであるクラスの1つまたは複数との間の関連付けを表すデータが記憶されているコンピュータシステム200によって、流動流体、または流動流体がメンバーである流体のクラスの1つまたは複数に固有のものとすることができる。ローディングは、ユーザが、流動流体または流動流体がメンバーである流体のクラスを指定し、推論関係を表す関連データをローディングすることを伴いうる。例えば、推論関係は、天然ガス混合物のエネルギー含有量の推論に使用される、天然ガス混合物に関連付けられうる。別の実施形態では、振動センサ102は、特定の流体のためにロードされた推論関係を有する、特定の流体又は流体のクラスのための、目的が固定された計器であってもよい。さらに別の実施形態では、メータ電子機器110は、流動流体を動的に識別し、識別された流動流体、流動流体がメンバーである流体のクラス、および特定の用途に使用されるエネルギー含有量指標のうちの1つまたは複数に関連する、適切な推論関係を適用しうる。
【0105】
ステップ406は、推論モジュール204によって、液体状態の流動流体の測定値に基づいて、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論する。推論は、推論関係、例えば、予め記憶された及び/又は既定の関係を使用することができる。推論関係は、式(2)-(19)に示される関係のうちの1つまたは複数に基づくことができる。推論モジュール204は、ステップ406の推論を達成するために、本明細書で教示する推論モジュール204の機能のいずれかを使用することができる。ステップ406は、ステップ302および/または方法300の一実施形態であってもよい。
【0106】
ステップ408は、オプションで、推論モジュール204によって、推論エネルギー含有量流量を推論する。質量または体積流量のように、エネルギー含有量流量は、基準(基準は、典型的には、質量または体積のうちの1つまたは複数である)を用いてエネルギー含有量を決定し、それを基準の流量に適用することによって決定することができる。例えば、基準が質量である場合、エネルギー含有量は質量の単位に基づいていると推論され、推論エネルギー含有量流量を生成するために、単位質量当たりの推論エネルギー含有量が測定質量流量に適用されうる。
【0107】
一実施形態では、
図4に示す方法の各ステップは、別々のステップである。他の実施形態では、
図4では別々のステップとして示されているが、ステップ402-408は別々のステップではない可能性がある。他の実施形態では、
図4に示す方法は、上記のステップの全てを有していなくてもよく、および/または上記に列挙したステップに加えて、またはその代わりに、他のステップを有していてもよい。
図4に示される方法のステップは、別の順序で実行されてもよい。
図4に示される方法の一部として上に列挙されたステップのサブセットは、それら自体の方法を形成するために使用されうる。方法400のステ
ップは、任意の組み合わせおよび順序で任意の回数繰り返すことができ、例えば、生のまたは連続したライン状態の推論エネルギー含有量値を提供するために、連続的にループすることができる。
【0108】
図5は、一実施形態に係る、エネルギー含有量を推論するための方法500のフローチャートを示す。方法500で参照される又は暗黙的に使用される、システム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、および分析モジュール202、推論モジュール204、測定モジュール206は、
図1および
図2に開示されるとおりの、方法500で参照されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206とすることができるが、別の実施形態では、任意の適切な、方法500で参照される又は暗黙に使用されるシステム100、振動センサ102、オプションの音速センサ106、オプションの追加振動センサ199、コンピュータシステム200、分析モジュール202、推論モジュール204、および測定モジュール206を採用することができる。システム100の全ての機能を含む、本明細書に開示されるこれらのステップを達成するための全ての方法が、考慮される。
【0109】
ステップ502は、分析モジュール202によって、関連する入力パラメータの測定値を受け取る。一実施形態では、関連する入力パラメータは、密度、粘度、温度、圧力、(おそらく気体状態の流体の)エネルギー含有量、および音速のうちの1つまたは複数とすることができる。一実施形態によると、推論モジュール204は、振動センサ102に格納されてもよい。振動センサ102は、それ自体の測定モジュール206を使用して、例えば、流動流体の密度、粘度、および温度のうちの1つまたは複数の量を測定することができる。振動センサ102は、推論関係の実施形態が音速量の使用を必要とする場合、オプションの音速センサ106から測定音速を受け取ることができる。
【0110】
ステップ504は、分析モジュール202によって、気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と、液体状態の流動流体の受信した測定値との間の推論関係の構成を、受信または決定する。分析モジュール202は、推論関係のためにユーザ提供の好ましい構成を格納しておくことができ、または、分析モジュール202は、推論関係の様々な異なる構成を試し、結果の比較に基づいて(おそらく、流動流体またはこの流動流体がメンバーである流体のクラスに特有の関係の最適構成を決定するために、異なる流動流体でこの方法を複数回実施することにより)どれが最良であるかを決定することによって、推論関係のための最良の構成を最適化し、決定することができる。推論関係の例となる構成は、式(2)-(19)に示されている。
【0111】
ステップ506は、分析モジュール202によって、受信された測定値及び受信された又は決定された構成から、関係要素を決定する。これらの関係要素は、式(2)~(19)の1つまたは複数によって表される関係により表される、関係係数および係数定数を含むことができる。これらの関係要素は、流動流体、又は流動流体がメンバーである又は流動流体がその他関係するクラスに特有であってもよい。ステップ506は、推論関係の決定の核でありうる。決定された推論関係は、おそらく与えられた流体についての、構成および関係要素によって特徴付けることができる。
【0112】
ステップ506は、測定値が入力される構成に対して行われる、回帰または他の分析技術が使用できる。この分析は、入力の測定値を用いて、関係要素を決定するために使用することができ、この関係要素は、選択された構成を有する推論関係が、推論関係によって出力された推論エネルギー含有量を、入力された実際の測定値に対応する気体状態における流体の測定エネルギー含有量に、最も良く収束させることを可能にする。気体状態の流
体の測定エネルギー含有量を、液体状態の流体に対して行われた測定に基づき、推論関係によって求めた推論エネルギー含有量に収束させることによって、後のエネルギー含有量推論で使用することが可能な関係要素を決定することが可能となる。
【0113】
ステップ508は、オプションで、分析モジュール202によって、決定された関係要素および/または構成を流動流体と関連付ける。さらなる関連付け、例えば、使用されているエネルギー含有量指標の関係との関連付けが含まれてもよい。関連付けは、関係要素および/または構成が、流動流体、流動流体がメンバーであるかまたは流動流体が関連する流体のクラス、および/または使用される特定のエネルギー含有量指標のうちの1つ以上に関連付けられるように、コンピュータシステム200に格納されうる。関係要素および構成のうちの1つまたは複数を表すデータは、流量流体、関連する流体のクラス、または使用されるエネルギー指標のうちの1つまたは複数を識別するデータと、記憶され及び/または関連付けられうる。この関連付けは、メモリ220に記憶されてもよい。
【0114】
ステップ510は、オプションとして、分析モジュール202によって、1つ以上の構成、関係要素、および関連付けを表すデータを、異なるコンピュータシステム200に送信している。この異なるコンピュータシステム200は、分析モジュール202を有していなくてもよい。異なるコンピュータシステム200は、振動センサ102のメータ電子機器110であってもよい。異なるコンピュータシステム200は、このデータを既定のおよび/または予め記憶されたデータとして使用して、流動流体のエネルギー含有量の推論、おそらくそれの生の推論も行うことができる。
【0115】
一実施形態では、
図5に示す方法のそれぞれのステップは、別々のステップである。別の実施形態では、
図5では別々のステップとして示されているが、ステップ502-510は、別々のステップでなくてもよい。他の実施形態では、
図5に示す方法は、上記のステップの全てを有していなくてもよく、および/または上記に列挙したステップに加えて、またはその代わりに、他のステップを有していてもよい。
図5に示される方法のステップは、別の順序で実行されてもよい。
図5に示される方法の一部として上に列挙されたステップのサブセットは、それら自体の方法を形成するために使用されうる。方法500のステップは、任意の組み合わせおよび順序で任意の回数繰り返すことができ、例えば、生のまたは連続したライン状態の推論エネルギー含有量値を提供するために、連続的にループすることができる。
【0116】
[グラフ]
図6-10は、本明細書に記載されるエネルギー含有量推論の推論関係の実施形態を説明するグラフを示す。これらのグラフは、液体状態の流動流体の測定に基づいた、気体状態の流動流体のエネルギー含有量の推論の効果を示す。
【0117】
天然ガス混合物は、典型的には、主にメタンから構成され、少量のエタンおよびプロパンのうちの1つまたは複数を含む。より少量の他の石油物質、例えば、高次炭化水素および他の物質が存在し得る。天然ガスは、典型的には、80%~99%のメタンから構成され、エタン含量の範囲は1%~14%で変化する。組成物は、これらの比較的一貫した関係を有するため、推論関係は、液相中で行われる測定に基づくことができる。
【0118】
液体状態の塩基性アルカンの温度および密度は、ほぼ線形の関係でありうる。粘度と温度と塩基性アルカンとの関係は、より二次的な特性を有しうる。推論関係は、これらの相関関係を用い、それぞれの構成要素の直接的に導出された熱特性よりも流動流体の相対的な組成に関連性がより高い、流動流体の測定値を使用して、流動流体のエネルギー含有量を推論しうる。すべてのグラフについて、推論関係の係数は、式(19)に示されるように、2次の温度依存性を有すると推定される。2次温度依存性を使用する実施形態にもか
かわらず、係数が一定値であるか、または異なる次数の温度依存性を有する実施形態が考慮されることを理解されたい。係数が圧力にも依存する実施形態が考慮されるが、わずかしか圧縮できない液体に対して行われる測定のために、圧力の影響は小さくなりうる。
【0119】
図6は、測定されたウォッベ指数値と推論関係の実施形態から推論された推論ウォッベ指数値との間の適合のグラフ600を示す。グラフ600は、推論および測定されたウォッベ指数の相対値を表す複数のデータ点602と、傾向線604と、測定された流量流体のウォッベ指数を表す横座標610と、推論関係を使用して推論された流量流体の推論されたウォッベ指数を表す縦座標620とを有する。
【0120】
推論的関係の実施形態は、式(17)の変形であり、式(24)で表される推論関係である。
【数7】
式(24)において、WI
Gasは気体状態の流動流体のウォッベ指数であり、K値(すなわち、K
1(T)、K
2(T)、K
5(T)、K
4(T)、K
6(T))は係数(すな
わち、この実施形態では温度依存性)であり、ρ
liquidは液体状態の流動流体の密度であり、η
liquidは液体状態の流動流体の粘度である。決定係数(R
2値)が0.996であり、優れた適合性があることが分かる。
【0121】
図7は、測定されたメタン価と、推論関係の実施形態から推論される推論メタン価との間の適合のグラフ700を示す。グラフ700は、推論メタン価及び測定されたメタン価の相対値を表す複数のデータ点702と、傾向線704と、流量流体の測定されたメタン価を表す横座標710と、推論関係を使用して推論された流量流体の推論メタン価を表す縦座標720とを有する。
【0122】
推論的関係の実施形態は、式(17)の変形であり、式(25)で表される推論関係である。
【数8】
式(25)において、MN
Gasは気体状態の流動流体のメタン価であり、K値(すなわち、K
1(T)、K
2(T)、K
5(T)、K
4(T)、K
6(T))は係数(すなわち
、この実施形態では温度依存性)であり、ρ
liquidは液体状態の流動流体の密度であり、η
liquidは液体状態の流動流体の粘度である。決定係数(R
2値)が0.9
94であり、優れた適合性があることが分かる。
【0123】
図8は、測定された可燃下限界と、推論関係の実施形態から推論された推論可燃下限界との間の適合のグラフ800を示す。グラフ800は、推論可燃性下限および測定された可燃性下限の相対値を表す複数のデータ点802と、傾向線804と、測定された流動流体の可燃性下限を表す横座標810と、推論関係を使用して推論された流動流体の推論可燃性下限を表す縦座標820とを有する。
【0124】
推論的関係の実施形態は、式(17)の変形であり、式(26)で表される推論関係である。
【数9】
式(26)において、LFL
Gasは気体状態の流動流体の可燃性下限であり、K値(すなわち、K
1(T)、K
2(T)、K
5(T)、K
4(T)、K
6(T))は係数(すな
わち、この実施形態では温度依存性)であり、ρ
liquidは液体状態の流動流体の密度であり、η
liquidは液体状態の流動流体の粘度である。決定係数(R
2値)が0.978であり、優れた適合性があることが分かる。
【0125】
図9は、測定された総発熱量と、推論関係の実施形態から推論される推論総発熱量との間の適合のグラフ900を示す。グラフ900は、推論総発熱量及び測定された総発熱量の相対値を表す複数のデータ点902と、傾向線904と、測定された流動流体の総発熱量を表す横座標910と、推論関係を使用して推論された流動流体の推論総発熱量を表す縦座標920とを有する。
【0126】
推論的関係の実施形態は、式(17)の変形であり、式(27)で表される推論関係である。
【数10】
式(27)において、GHV
Gasは気体状態の流動流体の総発熱量であり、K値(すなわち、K
1(T)、K
2(T)、K
5(T)、K
4(T)、K
6(T))は係数(すなわ
ち、この実施形態では温度依存性)であり、ρ
liquidは液体状態の流動流体の密度であり、η
liquidは液体状態の流動流体の粘度である。決定係数(R
2値)が0.
997であり、優れた適合性があることが分かる。
【0127】
図10は、測定された真発熱量と、推論関係の実施形態から推論される推論真発熱量との間の適合のグラフ1000を示す。グラフ1000は、推論真発熱量および測定された真発熱量との相対値を表す複数のデータ点1002と、傾向線1004と、測定された流動流体の真発熱量を表す横座標1010と、推論関係を使用して推論された流動流体の推論真発熱量を表す縦座標1020とを有する。
【0128】
推論的関係の実施形態は、式(17)の変形であり、式(28)で表される推論関係である。
【数11】
式(28)において、NHV
Gasは気体状態の流動流体の真発熱量であり、K値(すなわち、K
1(T)、K
2(T)、K
5(T)、K
4(T)、K
6(T))は係数(すなわ
ち、この実施形態では温度依存性)であり、ρ
liquidは液体状態の流動流体の密度であり、η
liquidは液体状態の流動流体の粘度である。決定係数(R
2値)が0.
997であり、優れた適合性があることが分かる。
【0129】
上記の実施形態の詳細な説明は、本発明者が本明細書の範囲内にあると考えるすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際に、当業者は、上述の実施形態の特定の要素は、さらなる実施形態を生むために様々に組み合わされ、または削除されてもよく、そのようなさらなる実施形態は、本明細書の範囲および教示内に入ることを認識するであろう。ま
た、当業者は、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせて、本説明の範囲および教示内で追加の実施形態を作成できることも明らかであろう。パラメータ値を表す特定の数値が特定される場合、これらの数値の全ての間の範囲、ならびにこれらの数値より上側の範囲および下側の範囲が考慮され、開示される。
【0130】
したがって、特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば認識するように、本明細書の範囲内で様々な同等の修正が可能である。本明細書で提供される教示は、上述され、添付の図面に示された実施形態だけでなく、液体状態の流体の測定値から気体状態の流体の発熱量を推論するための他の方法および装置に適用することができる。したがって、上述の実施形態の範囲は、特許請求の範囲から決定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(210)およびメモリ(220)を有するコンピュータシステム(200)によって、気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための方法であって、前記メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、前記推論モジュール(204)によって、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論することを含み、
前記推論エネルギー含有量が、前記少なくとも1つの測定値の項を含み、
前記少なくとも1つの測定値が測定密度を含み前記エネルギー含有量が燃焼時の流体のエネルギーであり、
前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項が、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有し、それぞれの項が、その項に対応する係数を有し、
前記関係が少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項が、
シフト項、
前記測定密度を有する測定密度項、
前記測定密度の高次値を有する高次密度項、
一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、
並びに
一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つ
を有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの測定値が、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性が少なくとも1つの項固有の係数定数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー含有量が、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つであり、前記流動流体が天然ガス混合物である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータシステム(200)がコリオリ流量計、フォークデンシトメータ又はフォーク粘度計を備える振動センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記密度を測定する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
気体状態の流動流体のエネルギー含有量を推論するための装置であって、コンピュータシステム(200)を有し、
前記コンピュータシステム(200)がプロセッサ(210)及びメモリ(220)を有し、前記メモリ(220)が推論モジュール(204)を有し、前記推論モジュール(204)が前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量と液体状態の流動流体の少なくとも1つの測定値との間の推論関係から、前記気体状態の流動流体の推論エネルギー含有量を推論するように構成され、
前記少なくとも1つの測定値が測定密度を含み前記エネルギー含有量が燃焼時の流体のエネルギーであり、
前記推論関係が項の合計であり、それぞれの項が、少なくとも1つの測定値のうちの1つ以上と、少なくとも1つの測定値のうちの1つの高次値とを有し、それぞれの項が、その項に対応する係数を有し、
前記関係が少なくとも5つの項を有し、前記少なくとも5つの項が、
シフト項、
前記測定密度を有する測定密度項、
前記測定密度の高次値を有する高次密度項、
一つ以上の前記測定粘度及び前記測定音速を対応して有する測定粘度項及び測定音速項の少なくとも一つ、
並びに
一つ以上の前記測定粘度と前記測定音速の一つ以上の高次値を対応して有する高次粘度項または高次音速項の少なくとも一つ
を有する、装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの測定値が、測定粘度および測定音速のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
それぞれの係数が温度依存性であり、それぞれの係数の温度依存性が少なくとも1つの項固有の係数定数を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記エネルギー含有量が、メタン価、可燃下限界、ウォッベ指数、総発熱量、および真発熱量のうちの1つであり、前記流動流体が天然ガス混合物である、請求項6から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記装置がコリオリ流量計、フォークデンシトメータ又はフォーク粘度計を備える振動センサ(102)であり、前記コンピュータシステム(200)が、前記振動センサ(102)のメータ電子機器(110)であり、前記振動センサ(102)が、前記密度を測定するように構成されている、請求項6から9のいずれかに記載の装置。
【外国語明細書】