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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038425
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240312BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L29/78 655B
H01L29/78 652J
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005569
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2022563745の分割
【原出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020190971
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 美佐稀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 尚
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 博
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竣太郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 晴司
(72)【発明者】
【氏名】桜井 洋輔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バッファ領域等におけるドーピング濃度の分布を、所定の形状に制御する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ドーピング濃度Dがバルク・ドナー濃度Dよりも高いバッファ領域と、バッファ領域に配置される第1低濃度水素ピーク125-1と、バッファ領域において第1低濃度水素ピークよりも下面に近い位置に配置される第2低濃度水素ピーク125-2と、バッファ領域において第2低濃度水素ピークよりも下面に近い位置に配置され、第2低濃度水素ピークよりも水素化学濃度が高い高濃度水素ピーク115-1、115-2と、第1低濃度水素ピーク及び第2低濃度水素ピークの間の領域131と、第2低濃度水素ピークが設けられた領域を含み、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高く、ドーピング濃度の平均値が第2低濃度水素ピークと高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下である平坦領域130と、を備える。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、バルク・ドナーおよび酸素を含む半導体基板と、
少なくとも一部分が前記半導体基板の前記下面側に設けられ、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高いバッファ領域と、
前記バッファ領域に配置された第1低濃度水素ピークと、
前記バッファ領域において前記第1低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第2低濃度水素ピークと、
前記バッファ領域において前記第2低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置され、前記第2低濃度水素ピークよりも水素化学濃度が高い高濃度水素ピークと、
前記第1低濃度水素ピークおよび前記第2低濃度水素ピークの間の領域と、前記第2低濃度水素ピークが設けられた領域を含み、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高く、且つ、前記ドーピング濃度の変動が±30%以下であり、前記ドーピング濃度の変動比率が水素化学濃度の変動比率よりも小さく、水素化学濃度分布の水素濃度ピークに対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、前記水素化学濃度分布の前記水素濃度ピークの幅よりも大きい平坦領域と
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記平坦領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、前記第2低濃度水素ピークに対応する前記濃度ピークを有し、
前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも緩やかに濃度が変化する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも前記半導体基板の前記下面側に配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
深さ方向において、前記平坦領域の長さは、前記バッファ領域の長さの半分以上である
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が、前記半導体基板の酸素化学濃度の0.01%以上、3%以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の酸素化学濃度は、前記第1低濃度水素ピークの水素化学濃度の10倍以上である
請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔(μm)は、前記半導体基板の酸素化学濃度(atoms/cm)の3/1016(μm/(atoms/cm))倍以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1低濃度水素ピークの水素化学濃度が1.0×1016atoms/cm以下であり、
前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔が100μm以下である
請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バッファ領域は、前記バッファ領域の中央よりも前記下面側の下面側領域と、前記バッファ領域の中央よりも前記上面側の上面側領域とを有し、
前記バッファ領域は、前記第1低濃度水素ピークおよび前記第2低濃度水素ピークを含む複数の低濃度水素ピークを有し、
前記上面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数は、前記下面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数よりも多い
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記低濃度水素ピークの水素化学濃度は、1×1016/cm以下である
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記平坦領域のドーピング濃度が、前記バルク・ドナー濃度の2倍以上である
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記平坦領域のドーピング濃度が、0.7×1013/cm以上である
請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1低濃度水素ピークおよび前記第2低濃度水素ピークのそれぞれは、ピークの頂点から前記半導体基板の前記下面に向かう下側裾と、前記頂点から前記半導体基板の前記上面に向かう上側裾とを有し、
前記上側裾は、前記下側裾よりも急峻に水素化学濃度が低下する
請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板の酸素化学濃度が1.0×1017atoms/cm以上である
請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が水素イオンのドーズ量が1.0×1012ions/cm以下である
請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第2低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が水素イオンのドーズ量が1.0×1012ions/cm以下である
請求項1から15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記平坦領域のドーピング濃度の平均値が前記第2低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下である
請求項1から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記バッファ領域において、前記高濃度水素ピークよりも前記上面側であって、前記第2低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第3低濃度水素ピークを有し、
前記平坦領域が前記第3低濃度水素ピークを含み、
前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が前記第3低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下である
請求項1から17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記平坦領域において、前記ドーピング濃度の変動比率は前記水素化学濃度の変動比率の半分以下である
請求項1から18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィールドストップ層として機能するバッファ領域を備える半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
(特許文献1)米国特許出願公開第2016/0141399号明細書
【解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、バッファ領域等におけるドーピング濃度の分布を、所定の形状に制御することが好ましい。
【一般的開示】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、上面および下面を有し、バルク・ドナーおよび酸素を含む半導体基板を備えてよい。半導体装置は、少なくとも一部分が半導体基板の下面側に設けられ、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高いバッファ領域を備えてよい。半導体装置は、バッファ領域に配置された第1低濃度水素ピークを備えてよい。半導体装置は、バッファ領域において第1低濃度水素ピークよりも下面に近い位置に配置された第2低濃度水素ピークを備えてよい。半導体装置は、バッファ領域において第2低濃度水素ピークよりも下面に近い位置に配置され、第2低濃度水素ピークよりも水素化学濃度が高い高濃度水素ピークを備えてよい。半導体装置は、第1低濃度水素ピークおよび第2低濃度水素ピークの間の領域と、第2低濃度水素ピークが設けられた領域を含み、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高く、且つ、ドーピング濃度の変動が±30%以下であり、ドーピング濃度の変動比率が水素化学濃度の変動比率よりも小さく、水素化学濃度分布の水素濃度ピークに対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、水素化学濃度分布の水素濃度ピークの幅よりも大きい平坦領域を備えてよい。
【0005】
平坦領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、第2低濃度水素ピークに対応する濃度ピークを有してよい。濃度ピークは、第2低濃度水素ピークよりも緩やかに濃度が変化してよい。
【0006】
濃度ピークは、第2低濃度水素ピークよりも半導体基板の下面側に配置されてよい。
【0007】
深さ方向において、平坦領域の長さは、バッファ領域の長さの半分以上であってよい。
【0008】
平坦領域のドーピング濃度の平均値が、半導体基板の酸素化学濃度の0.01%以上、3%以下であってよい。
【0009】
半導体基板の酸素化学濃度は、第1低濃度水素ピークの水素化学濃度の10倍以上であってよい。
【0010】
第1低濃度水素ピークと、第2低濃度水素ピークとの間隔(μm)は、半導体基板の酸素化学濃度(atoms/cm)の3/1016(μm/(atoms/cm))倍以下であってよい。
【0011】
第1低濃度水素ピークの水素化学濃度が1.0×1016atoms/cm以下であってよい。第1低濃度水素ピークと、第2低濃度水素ピークとの間隔が100μm以下であってよい。
【0012】
バッファ領域は、バッファ領域の中央よりも下面側の下面側領域と、バッファ領域の中央よりも上面側の上面側領域とを有してよい。バッファ領域は、第1低濃度水素ピークおよび第2低濃度水素ピークを含む複数の低濃度水素ピークを有してよい。上面側領域に配置された低濃度水素ピークの個数は、下面側領域に配置された低濃度水素ピークの個数よりも多くてよい。
【0013】
低濃度水素ピークの水素化学濃度は、1×1016/cm以下であってよい。
【0014】
平坦領域のドーピング濃度が、バルク・ドナー濃度の2倍以上であってよい。
【0015】
平坦領域のドーピング濃度が、0.7×1013/cm以上であってよい。
【0016】
第1低濃度水素ピークおよび第2低濃度水素ピークのそれぞれは、ピークの頂点から半導体基板の下面に向かう下側裾と、頂点から半導体基板の上面に向かう上側裾とを有してよい。上側裾は、下側裾よりも急峻に水素化学濃度が低下してよい。
【0017】
酸素化学濃度が1.0×1017atoms/cm以上であってよい。
【0018】
第1低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が水素イオンのドーズ量が1.0×1012ions/cm以下であってよい。
【0019】
第2低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が水素イオンのドーズ量が1.0×1012ions/cm以下であってよい。
【0020】
平坦領域のドーピング濃度の平均値が第2低濃度水素ピークと高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下であってよい。
【0021】
バッファ領域において、高濃度水素ピークよりも上面側であって、第2低濃度水素ピークよりも下面に近い位置に配置された第3低濃度水素ピークを有してよい。平坦領域が第3低濃度水素ピークを含んでよい。平坦領域のドーピング濃度の平均値が第3低濃度水素ピークと高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下であってよい。
【0022】
平坦領域において、ドーピング濃度の変動比率は水素化学濃度の変動比率の半分以下であってよい。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】半導体装置100の一例を示す上面図である。
図2図1における領域Dの拡大図である。
図3図2におけるe-e断面の一例を示す図である。
図4A図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図4B】バッファ領域20におけるドーピング濃度Dおよび水素化学濃度Cの、深さ方向の分布例を示す図である。
図5A図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図5B図5Aのバッファ領域20におけるドーピング濃度Dおよび水素化学濃度Cの、深さ方向の分布例を示す図である。
図6】実施例および比較例における、バッファ領域20のドーピング濃度分布を示す図である。
図7】実施例および比較例における、バッファ領域20のドーピング濃度分布を示す図である。
図8図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図9】隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125を拡大した図である。
図10】隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125の他の例を示す図である。
図11】隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0027】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0028】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0029】
また、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0030】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0031】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0032】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0033】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥を水素ドナーと称する場合がある。
【0034】
本明細書において半導体基板は、N型のバルク・ドナーが全体に分布している。バルク・ドナーは、半導体基板の元となるインゴットの製造時に、インゴット内に略一様に含まれたドーパントによるドナーである。本例のバルク・ドナーは、水素以外の元素である。バルク・ドナーのドーパントは、例えばリン、アンチモン、ヒ素、セレンまたは硫黄であるが、これに限定されない。本例のバルク・ドナーは、リンである。バルク・ドナーは、P型の領域にも含まれている。半導体基板は、半導体のインゴットから切り出したウエハであってよく、ウエハを個片化したチップであってもよい。半導体のインゴットは、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加型チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)のいずれかで製造されよい。本例におけるインゴットは、MCZ法で製造されている。MCZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は、例えば1×1017~7×1017/cmである。FZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は、例えば1×1015~5×1016/cmである。酸素濃度が高い方が水素ドナーを生成しやすい傾向がある。バルク・ドナー濃度は、半導体基板の全体に分布しているバルク・ドナーの化学濃度を用いてよく、当該化学濃度の90%から100%の間の値であってもよい。また、半導体基板は、リン等のドーパントを含まないノンドープ基板を用いてもよい。その場合、ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D)は例えば1×1010/cm以上、5×1012/cm以下である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D)は、好ましくは1×1011/cm以上である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D)は、好ましくは5×1012/cm以下である。尚、本発明における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)のときの値を用いてよい。
【0035】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。
【0036】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0037】
また、ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。本明細書において、単位体積当りの濃度表示にatоms/cm、または、/cmを用いる。この単位は、半導体基板内のドナーまたはアクセプタ濃度、または、化学濃度に用いられる。atоms表記は省略してもよい。
【0038】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0039】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0040】
図1は、半導体装置100の一例を示す上面図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0041】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板であるが、半導体基板10の材料はシリコンに限定されない。
【0042】
半導体基板10は、上面視において端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺162を有する。図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺162と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0043】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが図1では省略している。
【0044】
活性部160には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。図1の例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。他の例では、活性部160には、トランジスタ部70およびダイオード部80の一方だけが設けられていてもよい。
【0045】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0046】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0047】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0048】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺162の近傍に配置されている。端辺162の近傍とは、上面視における端辺162と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0049】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0050】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線101と、活性側ゲート配線102とを有している。外周ゲート配線101は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺162との間に配置されている。本例の外周ゲート配線101は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線101に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、外周ゲート配線101は、ゲートパッド164と接続されている。外周ゲート配線101は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線101は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0051】
活性側ゲート配線102は、活性部160に設けられている。活性部160に活性側ゲート配線102を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド164からの配線長のバラツキを低減できる。
【0052】
活性側ゲート配線102は、活性部160のゲートトレンチ部と接続される。活性側ゲート配線102は、半導体基板10の上方に配置されている。活性側ゲート配線102は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0053】
活性側ゲート配線102は、外周ゲート配線101と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線102は、Y軸方向の略中央で一方の外周ゲート配線101から他方の外周ゲート配線101まで、活性部160を横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線102により活性部160が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0054】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0055】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線101と端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0056】
図2は、図1における領域Dの拡大図である。領域Dは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線102を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線102を備える。エミッタ電極52および活性側ゲート配線102は互いに分離して設けられる。
【0057】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線102と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図2においては、それぞれのコンタクトホール54に斜線のハッチングを付している。
【0058】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。
【0059】
活性側ゲート配線102は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線102は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線102は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0060】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0061】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線102と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線102と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線102側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0062】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0063】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。図2における延伸方向はY軸方向である。
【0064】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0065】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0066】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0067】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0068】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線102に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。図2においては、それぞれのメサ部の延伸方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0069】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0070】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0071】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0072】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0073】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。コンタクトホール54は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0074】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。カソード領域82およびコレクタ領域22は、半導体基板10の下面23と、バッファ領域20との間に設けられている。図2においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0075】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、コンタクトホール54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とコンタクトホール54との間に配置されていてもよい。
【0076】
図3は、図2におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、エミッタ領域12およびカソード領域82を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0077】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0078】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0079】
半導体基板10は、N型またはN-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。
【0080】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0081】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0082】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0083】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。蓄積領域16は、リンまたは水素ドナー等のドナーの濃度ピークを有してよい。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0084】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【0085】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0086】
バッファ領域20は、水素(プロトン)またはリン等のN型ドーパントをイオン注入することで形成してよい。本例のバッファ領域20は水素をイオン注入して形成される。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0087】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。
【0088】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。カソード領域82のドナーは、例えば水素またはリンである。なお、各領域のドナーおよびアクセプタとなる元素は、上述した例に限定されない。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0089】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達している。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0090】
上述したように、トランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられている。ダイオード部80には、ダミートレンチ部30が設けられ、ゲートトレンチ部40が設けられていない。本例においてダイオード部80とトランジスタ部70のX軸方向における境界は、カソード領域82とコレクタ領域22の境界である。
【0091】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0092】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0093】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0094】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0095】
図4Aは、図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の一例を示す図である。図4Aの縦軸は、対数軸である。図4Aにおいては、半導体基板10の深さ方向における中央位置をZcとしている。
【0096】
エミッタ領域12は、N型ドーパントの濃度ピークを有する。N型ドーパントは例えばリンであるが、これに限定されない。ベース領域14は、P型ドーパントの濃度ピークを有する。P型ドーパントは例えばボロンであるが、これに限定されない。蓄積領域16は、N型ドーパントの濃度ピークを有する。N型ドーパントは、例えば水素またはリンであるが、これに限定されない。
【0097】
ドリフト領域18は、ドーピング濃度がほぼ一定であってよい。ドリフト領域18のドーピング濃度は、バルク・ドナー濃度Dと同一であってよく、バルク・ドナー濃度Dより高くてもよい。
【0098】
バッファ領域20は、バルク・ドナー濃度Dよりもドーピング濃度が高いN型の領域である。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高くてよい。バッファ領域20は、少なくとも一部分が半導体基板10の下面23側に設けられる。下面23側とは、下面23と、中央位置Zcとの間の領域である。本例のバッファ領域20におけるドーピング濃度分布は、濃度ピーク25を有してよい。バッファ領域20は、深さ方向において異なる位置に設けられた複数の濃度ピーク25を有していてもよい。
【0099】
バッファ領域20は、平坦領域130を有する。平坦領域130は、濃度ピーク25と、ドリフト領域18との間に配置されていてよい。平坦領域130は、ドーピング濃度がほぼ一定の領域である。
【0100】
図4Bは、バッファ領域20におけるドーピング濃度Dおよび水素化学濃度Cの、深さ方向の分布例を示す図である。本例の半導体基板10は、バルク・ドナーおよび酸素を含む。図4Bにおいては、バルク・ドナー濃度をD、酸素化学濃度をCOXとする。バルク・ドナー濃度Dは、半導体基板10の深さ方向において均一であってよい。酸素化学濃度COXは、半導体基板10の深さ方向において均一であってよく、単調に増加してよく、単調に減少してもよい。酸素化学濃度COXは、1.0×1017atoms/cm以上であってよく、3.0×1017atoms/cm以上であってよく、5.0×1017atoms/cm以上であってよく、7.0×1017atoms/cm以上であってよい。酸素化学濃度COXは、3.0×1018atoms/cm以下であってよく、2.0×1018atoms/cm以下であってよく、1.0×1018atoms/cm以下であってよい。
【0101】
なお、半導体基板10の表面近傍の酸素は、半導体基板10の外部に放出される場合がある。このため、半導体基板10の表面近傍においては、酸素化学濃度COXは、1.0×1017atoms/cmより小さくなっていてもよい。酸素化学濃度COXは、半導体基板10の全体における酸素化学濃度COXの平均値を用いてよい。他の例では、酸素化学濃度COXは、バッファ領域20における酸素化学濃度を用いてよい。例えばバッファ領域20における酸素化学濃度の最小値を、酸素化学濃度COXとしてよい。酸素化学濃度COXは、平坦領域130における酸素化学濃度を用いてもよい。例えば平坦領域130における酸素化学濃度の最小値を、酸素化学濃度COXとしてよい。
【0102】
本例のバッファ領域20は、半導体基板10の下面23から水素イオンを注入して形成される。バッファ領域20のドーピング濃度Dは、水素ドナーの濃度と、バルク・ドナー濃度Dとの和であってよい。
【0103】
水素イオンは、濃度ピーク25の頂点の近傍と、平坦領域130に注入される。水素イオンの一部は、平坦領域130とドリフト領域18との間に注入されてもよい。本例においては、バッファ領域20内の深さ位置Z11、Z12、Z32およびZ31のそれぞれに水素イオンが注入される。深さ位置Z11、Z12、Z32およびZ31のそれぞれには、水素化学濃度Cのピークが形成される。深さ位置Z11、Z12、Z32、Z31は、この順番で、下面23からの距離が大きい。
【0104】
本例では、水素化学濃度Cのピークのうち、水素イオンのドーズ量が所定値以下のピークを低濃度水素ピーク125とする。また、水素イオンのドーズ量が当該所定値より大きいピークを高濃度水素ピーク115とする。また、低濃度水素ピークおよび高濃度水素ピークをまとめて、水素ピークと称する場合がある。上述した所定値は、1.0×1012ions/cmである。当該所定値は、5.0×1011ions/cmであってもよい。水素ピークにおける水素イオンのドーズ量は、水素ピークの半値全幅の範囲に渡って水素化学濃度Cを積分した値を用いてよい。また、低濃度水素ピーク125に対する水素イオンのドーズ量は、1.0×1010ions/cm以上であってよく、1.0×1011ions/cm以上であってもよい。低濃度水素ピーク125に対する水素イオンのドーズ量は、5.0×1012ions/cm以下であってよく、3.0×1012ions/cm以下であってよく、2.0×1012ions/cm以下であってよい。酸素化学濃度が例えば5.0×1017atoms/cm以上の場合には、低濃度水素ピーク125に対する水素イオンのドーズ量は、3.0×1012ions/cm以上、1.0×1013ions/cm以下であってよい。
【0105】
また、水素化学濃度Cのピークのうち、頂点における水素化学濃度Cが所定値以下のピークを低濃度水素ピーク125としてもよい。頂点における水素化学濃度Cが当該所定値より大きいピークを高濃度水素ピーク115としてよい。上述した所定値は、1.0×1016atoms/cmである。当該所定値は、5.0×1015atoms/cmであってもよい。また、低濃度水素ピーク125の頂点における水素化学濃度Cは、1.0×1014atoms/cm以上であってよく、1.0×1015atoms/cm以上であってもよい。
【0106】
バッファ領域20は、第1低濃度水素ピーク125-1と、第2低濃度水素ピーク125-2とを有する。本例の第1低濃度水素ピーク125-1は、深さ位置Z11に配置されている。本例の第2低濃度水素ピーク125-2は、深さ位置Z12に配置されている。つまり第2低濃度水素ピーク125-2は、バッファ領域20において第1低濃度水素ピーク125-1よりも下面23に近い位置に配置される。本明細書では、それぞれの水素ピークの頂点の位置を、水素ピークの深さ位置とする。本例において、水素イオンの注入位置と、水素ピークの頂点の位置は同一である。
【0107】
バッファ領域20は、1つ以上の高濃度水素ピーク115を有してよい。本例のバッファ領域20は、第1高濃度水素ピーク115-1と、第2高濃度水素ピーク115-2とを有する。本例の第1高濃度水素ピーク115-1は、深さ位置Z31に配置されている。本例の第2高濃度水素ピーク115-2は、深さ位置Z32に配置されている。本例の第1低濃度水素ピーク125-1は、バッファ領域20に形成された水素ピークのうち、最も上面21側に配置されたピークである。また、本例の第1高濃度水素ピーク115-1は、バッファ領域20に形成された水素ピークのうち、最も下面23側に配置されたピークである。
【0108】
下面23から水素イオンを注入した場合、注入位置から下面23までの領域にも水素が分布する。このため、それぞれの水素ピークの頂点から下面23に向かう下面側裾127の傾きは緩やかになり、水素ピークの頂点から上面21に向かう上面側裾126の傾きは、下面側裾127よりも急峻になる。
【0109】
半導体基板10に水素イオン等の荷電粒子を照射すると、荷電粒子が通過した通過領域には、荷電粒子が通過したことにより、単原子空孔(V)、複原子空孔(VV)等の、空孔を主体とする格子欠陥が形成される。本例では、半導体基板10の下面23から、第1低濃度水素ピーク125-1の頂点近傍までの領域に格子欠陥が形成される。空孔に隣接する原子は、ダングリング・ボンドを有する。格子欠陥には格子間原子や転位等も含まれ、広義ではドナーやアクセプタも含まれ得るが、本明細書では空孔を主体とする格子欠陥を空孔型格子欠陥、空孔型欠陥、あるいは単に格子欠陥と称する場合がある。また、半導体基板10への荷電粒子注入により、格子欠陥が多く形成されることで、半導体基板10の結晶性が強く乱れることがある。本明細書では、この結晶性の乱れをディスオーダーと称する場合がある。
【0110】
また、半導体基板10の全体には酸素が含まれる。当該酸素は、半導体のインゴットの製造時において、意図的にまたは意図せずに導入される。バッファ領域20に注入された水素が熱処理等により拡散することで、半導体基板10の内部では、水素(H)、空孔(V)および酸素(O)が結合し、VOH欠陥が形成される。
【0111】
VOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥を単に水素ドナーと称する場合がある。半導体基板10に水素ドナーを形成することで、ドリフト領域18よりも高濃度のバッファ領域20を形成できる。
【0112】
水素イオンの注入位置の近傍には水素および格子欠陥が多く存在するので、水素ドナーが多く形成されやすい。このため、ドーピング濃度Dの分布には、注入位置の近傍に濃度ピーク25が形成される場合がある。
【0113】
バッファ領域20に濃度ピーク25を形成することで、上面21側から広がる空乏層がコレクタ領域22等に到達することを抑制できる。一方で、水素イオンを注入して通過領域に水素ドナーを形成するが、水素イオンの注入位置近傍に大きな濃度ピーク25を形成したくない場合もある。例えば、ドリフト領域18の近くに大きな濃度ピーク25を形成すると、半導体装置100のターンオフ時等において空乏層が濃度ピーク25に到達したときに、電圧または電流波形が発振する場合がある。
【0114】
本例においては、バッファ領域20に複数の低濃度水素ピーク125を形成する。これにより、バルク・ドナー濃度よりも高濃度のバッファ領域20を形成しつつ、低濃度水素ピーク125の近傍において大きな濃度ピーク25が形成されるのを防ぐことができる。
【0115】
本例のバッファ領域20は、平坦領域130を有する。平坦領域130は、第1低濃度水素ピーク125-1および第2低濃度水素ピーク125-2の間の領域131と、第2低濃度水素ピーク125-2が設けられた領域とを含む。平坦領域130は、第1低濃度水素ピーク125-1が設けられた領域の少なくとも一部を更に含んでよい。平坦領域130には、高濃度水素ピーク115が設けられないので、大きな濃度ピーク25が形成されていない。
【0116】
本例の第1低濃度水素ピーク125-1は、深さ方向において連続して配置された複数の低濃度水素ピーク125のうち、最も上面21側に配置された低濃度水素ピークである。また、第2低濃度水素ピーク125-2は、深さ方向において連続して配置された複数の低濃度水素ピーク125のうち、最も下面23側に配置された低濃度水素ピークである。第1低濃度水素ピーク125-1と第2低濃度水素ピーク125-2の間に、1つ以上の低濃度水素ピーク125が形成されていてもよい。
【0117】
領域131は、第1低濃度水素ピーク125-1の半値全幅FWHM1と、第2低濃度水素ピーク125-2の半値全幅FWHM2の間の領域であってよい。領域131は、第1低濃度水素ピーク125-1の頂点の位置Z11と、第2低濃度水素ピーク125-2の頂点の位置Z12との間の領域であってもよい。
【0118】
第2低濃度水素ピーク125-2が設けられた領域は、第2低濃度水素ピーク125-2の半値全幅FWHM2の領域であってよく、第2低濃度水素ピーク125-2を深さ方向において挟む2つの谷部124の間の領域であってもよい。谷部124-1は、位置Z12から上面21に向かう方向において、水素化学濃度Cが最初に極小値となる箇所である。谷部124-2は、位置Z12から下面23に向かう方向において、水素化学濃度Cが最初に極小値となる箇所である。第1低濃度水素ピーク125-1が設けられた領域は、第1低濃度水素ピーク125-1の半値全幅FWHM1の領域であってよい。
【0119】
平坦領域130は、ドーピング濃度Dがバルク・ドナー濃度Dよりも高く、且つ、ドーピング濃度Dの変動が±30%以下である。平坦領域130におけるドーピング濃度Dの平均値をDDave、最大値をDDmax、最小値をDDminとする。最大値DDmaxは、平均値DDaveの1.3倍以下であってよい。最小値DDminは、平均値DDaveの0.7倍以上であってよい。
【0120】
平坦領域130の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、1つ以上の濃度ピーク128を有してよい。濃度ピーク128は、ドーピング濃度Dが極大値を示す箇所である。濃度ピーク128の振幅は、濃度ピーク25の振幅よりも小さい。それぞれの濃度ピーク128は、いずれかの低濃度水素ピーク125に対応している。本例の平坦領域130は、第1低濃度水素ピーク125-1に対応する第1濃度ピーク128-1と、第2低濃度水素ピーク125-2に対応する第2濃度ピーク128-2とを有する。それぞれの濃度ピーク128は、対応する低濃度水素ピーク125の半値全幅FWHMの範囲内に配置されてよい。
【0121】
また、平坦領域130は、1つ以上の極小部129を有してよい。極小部129は、ドーピング濃度Dが極小値を示す箇所である。それぞれの極小部129は、水素化学濃度Cの谷部124に対応している。本例では、第1濃度ピーク128-1と、第2濃度ピーク128-2の間に、谷部124-1に対応する極小部129が配置されている。
【0122】
濃度ピーク128は、対応する低濃度水素ピーク125よりも、深さ方向に緩やかに濃度が変化する。例えば、濃度ピーク128-2から極小部129までのドーピング濃度Dの変化の傾きは、第2低濃度水素ピーク125-2から谷部124-1までの水素化学濃度Cの変化の傾きよりも小さい。
【0123】
平坦領域130におけるドーピング濃度の平均値DDaveを計算する場合に、下面23からの深さ位置の範囲は以下のように定義してよい。平均値を計算する平坦領域130の上面21側の端の位置をR21、下面23側の位置をR22とする。位置R21は、位置Z21よりも上面21側において、ドーピング濃度が、濃度ピーク128-1と濃度ピーク128-2の間における極小部129のドーピング濃度と同じ値となる位置としてよい。位置R22は、濃度ピーク25-2の上面21側の裾におけるドーピング濃度が、濃度ピーク128-2の位置Z22におけるドーピング濃度と同じ値となる位置としてよい。平坦領域130におけるドーピング濃度の平均値DDaveは、位置R21から位置R22までにわたってドーピング濃度を積分した値を、位置R21から位置R22までの間の長さで割った値としてよい。
【0124】
濃度ピーク25-1と濃度ピーク25-2の間におけるドーピング濃度分布は、極小値Dm1を有してよい。平坦領域130の平均値DDaveは、極小値Dm1以下か、極小値Dm1よりも小さくてよい。平坦領域130の最大値DDmaxは、極小値Dm1以上であってもよいし、極小値Dm1以下か、極小値Dm1よりも小さくてよい。
【0125】
平坦領域130におけるドーピング濃度分布の濃度ピーク128のピーク幅は、水素化学濃度分布の対応する低濃度水素ピーク125のピーク幅より大きくてよい。平坦領域130におけるドーピング濃度分布の濃度ピーク128のピーク幅は、濃度ピーク128の上面21側の極小部と、下面23側の極小部との距離としてよい。平坦領域130では、ドーピング濃度の最大値DDmaxは最小値DDminの50%以上の場合もあってよい。この場合に極小部129の濃度は最大値DDmaxの50%以上となり、濃度ピーク128の半値全幅FWHMが定義できない。濃度ピーク128の半値全幅FWHMが定義できる場合は、濃度ピーク128のピーク幅として半値全幅FWHMを用いてよい。
【0126】
また、低濃度水素ピーク125の水素化学濃度Cのうち、最も高いものをCHmaxとする。低濃度水素ピーク125に挟まれる谷部124の水素化学濃度Cのうち、最も低いものをCHminとする。水素化学濃度CHminに対する水素化学濃度CHmaxの比率CHmax/CHminを変動比率R1とする。同様に、平坦領域130におけるドーピング濃度Dの最小値DDminに対する最大値DDmaxの比率DDmax/DDminを変動比率R2とする。変動比率R2は、変動比率R1より小さい。変動比率R2は、変動比率R1の半分以下であってよく、1/4以下であってよく、1/10以下であってもよい。
【0127】
本例の半導体基板10は、比較的に酸素化学濃度COXが高い。また、低濃度水素ピーク125が配置された領域では、水素化学濃度が比較的に低くなる。このため、低濃度水素ピーク125が配置された領域における水素ドナーの濃度は、酸素化学濃度COXの影響を受けて変動が小さくなる。これにより、低濃度水素ピーク125を配置した領域に、バルク・ドナー濃度Dよりも高濃度で、且つ、ドーピング濃度Dの変動が小さい平坦領域130を形成できる。
【0128】
水素ドナー濃度NVOHは、水素イオンの通過によって生じる空孔濃度Nと、半導体基板10の酸素化学濃度COX、酸素化学濃度COXが実際にNVOHの生成に寄与する割合である酸素寄与率ξを用いて、以下の式1で表されてよい。
VOH=N+ξCOX ・・・ (式1)
酸素寄与率ξは、1×10-5以上、1×10-3以下であってよい。空孔濃度Nは、1×1012(/cm)以上1×1014(/cm)以下であってよい。酸素寄与率ξは、下面23から最も離れた低濃度水素ピーク125-1のドーズ量D(ions/cm)に対して、以下の式2で表されてよい。
ξ=aD ・・・ (式2)
ここで、aは1×10-11以上、1×10-10以下であってよい。bは、4×10-1以上、6×10-1以下であってよい。
【0129】
本例の半導体基板10は、比較的に炭素化学濃度Cが高い。水素ドナー濃度NVOHは、水素イオンの通過によって生じる空孔濃度Nと、半導体基板10の酸素化学濃度COX、酸素化学濃度COXが実際にNVOHの生成に寄与する割合である酸素寄与率ξ、半導体基板10の炭素化学濃度C、炭素化学濃度Cが実際にNVOHの生成に寄与する割合である炭素寄与率ηを用いて、以下の式2で表されてもよい。
VOH=N+ξCOX+ηC ・・・ (式2)
酸素寄与率ξおよび空孔濃度Nは、上記の値の範囲であってよい。炭素寄与率ηは、0.01%~10%(すなわち0.0001以上、0.1以下)の値であってよい。
【0130】
それぞれの濃度ピーク128は、対応する低濃度水素ピーク125よりも、半導体基板10の下面23側に配置されてよい。本例では、第1濃度ピーク128-1は、第1低濃度水素ピーク125-1よりも下面23側に配置され、第2濃度ピーク128-2は、第2低濃度水素ピーク125-2よりも下面23側に配置されている。第1濃度ピーク128-1の深さ位置は、ドーピング濃度Dが極大値を示す深さ位置Z21であり、第2濃度ピーク128-2の深さ位置は、ドーピング濃度Dが極大値を示す深さ位置Z22である。
【0131】
図4Bに示したドーピング濃度Dの分布は、SR法で測定されたキャリア濃度である。本例では、低濃度水素ピーク125における水素化学濃度Cが低い。一方で、水素イオンを注入した深さ位置Z11、Z12には、比較的に多くの格子欠陥が形成される。このため、深さ位置Z11、Z12の近傍では水素に結合しない格子欠陥が多く残留する場合がある。格子欠陥が多く存在することで、深さ位置Z11、Z12の近傍におけるキャリア濃度が低くなる場合がある。また、それぞれの水素ピークの下面側裾127は、上面側裾126よりも傾きが小さい。このため、深さ位置Z11、Z12の下面23側には、上面21側よりも多くの水素イオンが存在する。深さ位置Z11、Z12の下面23側で、比較的に多くの水素ドナーが形成されやすい。このため、濃度ピーク128が、低濃度水素ピーク125よりも下面23側に配置される場合がある。平坦領域130においては、SR法で測定されたキャリア濃度は、隣り合う測定点のキャリア濃度が±10%程度異なる場合があり、測定されたキャリア濃度が測定点毎に変動するように見えることがある。このような場合は、一例として、測定点におけるキャリア濃度と、その前後の測定点におけるキャリア濃度の、計3点の測定値を平均した平均値を、当該測定点のキャリア濃度として用いてよく、さらに測定点の前後2点ずつ等のように、測定点の前後の複数点の測定値における平均値を用いてもよい。
【0132】
半導体基板10の深さ方向において、平坦領域130の長さは、バッファ領域20の長さの半分より小さくてよく、半分以上であってもよい。平坦領域130の長さは、低濃度水素ピーク125の個数、間隔等により調整できる。
【0133】
平坦領域130のドーピング濃度の平均値DDaveは、半導体基板10の酸素化学濃度COXの0.01%以上、3%以下であってよい。平均値DDaveは、酸素化学濃度COXの0.05%以上であってよく、0.1%以上であってもよい。平均値DDaveは、酸素化学濃度COXの2%以下であってよく、1%以下であってもよい。平坦領域130のドーピング濃度の平均値DDaveは、低濃度水素ピーク125の水素イオンのドーズ量に依存する。上述した条件を満たすように水素イオンを注入することで、平坦領域130を形成しやすくなる。
【0134】
半導体基板10の酸素化学濃度COXは、第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度の10倍以上であってよい。つまり、第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度は、半導体基板10の酸素化学濃度COXの10%以下であってよい。これにより、平坦領域130のドーピング濃度Dに対する酸素化学濃度COXの影響を強くして、平坦領域130のドーピング濃度分布を平坦化しやすくなる。本例では、深さ位置Z11において、酸素化学濃度COXと水素化学濃度とを比較してよい。半導体基板10の酸素化学濃度COXは、第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度の20倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。なお、他の低濃度水素ピーク125についても、第1低濃度水素ピーク125-1と同様である。
【0135】
第1低濃度水素ピーク125-1と、第2低濃度水素ピーク125-2との間隔、すなわち、Z11-Z12(μm)は、半導体基板10の酸素化学濃度COX(atoms/cm)の3/1016(μm/(atoms/cm))倍以下であってよい。本例の間隔Z11-Z12は、深さ方向において隣り合う低濃度水素ピーク125の間隔である。例えば酸素化学濃度COXが1.0×1017atoms/cmの場合、間隔Z11-Z12は30μm以下である。間隔Z11-Z12(μm)は、酸素化学濃度COX(atoms/cm)の1/1016(μm/(atoms/cm))倍以下であってよく、5/1017(μm/(atoms/cm))倍以下であってもよい。
【0136】
第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度Cが1.0×1016atoms/cm以下であってよい。他の低濃度水素ピーク125の水素化学濃度Cも1.0×1016atoms/cm以下であってよい。間隔Z11-Z12は、100μm以下であってよく、50μm以下であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってもよい。隣り合う低濃度水素ピーク125の間隔Z11-Z12が大きすぎると、谷部124の水素化学濃度Cが低くなりすぎて、極小部129のドーピング濃度が低くなってしまう。間隔Z11-Z12は、5μm以上であってよい。
【0137】
平坦領域130のドーピング濃度Dが、バルク・ドナー濃度Dの2倍以上であってよい。平坦領域130のドーピング濃度Dは、最小値DDminを用いてよく、平均値DDaveを用いてもよい。平坦領域130のドーピング濃度Dは、バルク・ドナー濃度Dの5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。
【0138】
平坦領域130のドーピング濃度Dが、0.7×1013/cm以上であってよい。最小値DDminを用いてよく、平均値DDaveを用いてもよい。平坦領域130のドーピング濃度Dは、1.0×1014/cm以上であってよい。平坦領域130のドーピング濃度Dは、1.0×1015/cm以下であってよく、3.0×1014/cm以下であってもよい。
【0139】
図5Aは、図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。図4Aの例とは、濃度ピーク25が1つである点で異なる。他の部分の分布は、図4Aの例と同様である。
【0140】
図5Bは、図5Aのバッファ領域20におけるドーピング濃度Dおよび水素化学濃度Cの、深さ方向の分布例を示す図である。図4Bの例における濃度ピーク25-2が、本例では平坦領域130の濃度ピーク128-3となっている。図4Bの例における第2高濃度水素ピーク115-2は、本例では第3低濃度水素ピーク125-3である。他の分布は、図4Bの例と同様である。
【0141】
第3低濃度水素ピーク125-3の水素化学濃度を、第2低濃度水素ピーク125-2と同等の濃度とすることで、濃度ピーク128-3のドーピング濃度を濃度ピーク128-2と同等にしている。第3低濃度水素ピーク125-3の水素化学濃度は第2低濃度水素ピーク125-2より高くてよく、高濃度水素ピーク115-1よりは低くてよい。濃度ピーク128-3のドーピング濃度は、濃度ピーク128-2よりは高くてよく、濃度ピーク25-1よりは低くてよい。
【0142】
本例において、平坦領域130のドーピング濃度の平均値を計算する場合、平坦領域130の下面23側の端の位置を、図4Bにおいて説明した位置R22としてよく、図5Bに示す位置R23としてもよい。位置R23は、濃度ピーク25-1の上面21側の裾におけるドーピング濃度が、濃度ピーク128-3の位置Z23におけるドーピング濃度と同じ値となる位置である。本例において、平均値を計算する平坦領域130の上面21側の端の位置は、図4Bの例と同様でよい。平坦領域130を位置R23から位置R21までとした場合の、平坦領域130におけるドーピング濃度の平均値DDave2は、位置R21から位置R23までにわたってドーピング濃度を積分した値を、位置R21から位置R23までの間の長さで割った値としてよい。他の例では、図4Bと同様に、平坦領域130の下面23側の端の位置をR22として、平坦領域130におけるドーピング濃度の平均値DDaveを計算してもよい。
【0143】
濃度ピーク25-1と濃度ピーク128-3の間におけるドーピング濃度分布は極小値Dm1を有してよい。平坦領域130の平均値DDave2は、極小値Dm1以下か、極小値Dm1よりも小さくてよい。平坦領域130の最大値DDmaxは、極小値Dm1以下か、極小値Dm1よりも小さくてよい。平坦領域130の最小値DDminは、極小値Dm1以下か、極小値Dm1よりも小さくてよい。
【0144】
図6は、実施例および比較例における、バッファ領域20のドーピング濃度分布を示す図である。実施例は、図4Bに示したドーピング濃度分布と同様である。実施例において、深さ位置Z11に対する水素イオンのドーズ量は、1.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z12に対する水素イオンのドーズ量は、5.0×1011ions/cmであり、深さ位置Z32に対する水素イオンのドーズ量は、4.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z31に対する水素イオンのドーズ量は、5.0×1014ions/cmである。実施例では、深さ位置Z11およびZ12の近傍において、ドーピング濃度の大きなピークは見られなかった。
【0145】
比較例1において、深さ位置Z11に対する水素イオンのドーズ量は、2.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z12に対する水素イオンのドーズ量は、1.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z32に対する水素イオンのドーズ量は、4.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z31に対する水素イオンのドーズ量は、5.0×1014ions/cmである。比較例1では、深さ位置Z11およびZ12の近傍において、ドーピング濃度の濃度ピーク25が見られた。特に、深さ位置Z11において比較的に大きな濃度ピーク25が存在する。
【0146】
比較例2において、深さ位置Z11に対する水素イオンのドーズ量は、3.0×1012ions/cmであり、深さ位置Z12に対する水素イオンのドーズ量は、1.5×1012ions/cmであり、深さ位置Z32に対する水素イオンのドーズ量は、1.0×1013ions/cmであり、深さ位置Z31に対する水素イオンのドーズ量は、3.0×1014ions/cmである。比較例2では、深さ位置Z11およびZ12の近傍において、ドーピング濃度の濃度ピーク25が見られた。図6に示すように、水素イオンのドーズ量を1.0×1012ions/cm以下にすることで、ドーピング濃度の濃度ピーク25が形成されるのを抑制できた。
【0147】
図7は、実施例および比較例における、バッファ領域20のドーピング濃度分布を示す図である。実施例は、図6に示したドーピング濃度分布と同様である。比較例3において、各位置の水素イオンのドーズ量は、実施例と同様である。ただし、比較例3における水素イオンの注入位置は、実施例と相違している。また、実施例の半導体基板10の酸素化学濃度COXが1.0×1017atoms/cmであるのに対し、比較例3の半導体基板の酸素化学濃度COXは、1.0×1016atoms/cm程度である。実施例の半導体基板はMCZ基板であり、比較例3の半導体起案はFZ基板である。
【0148】
図7に示すように、水素イオンのドーズ量が1.0×1012ions/cmであっても、半導体基板の酸素化学濃度が低い比較例3では、ドーピング濃度の濃度ピーク25が形成された。一方で、実施例においては、半導体基板10の酸素化学濃度COXを1.0×1017atoms/cm以上にすることで、ドーピング濃度の濃度ピーク25が形成されるのを抑制できた。
【0149】
図8は、図3のF-F線の位置における、深さ方向のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例では、バッファ領域20における水素化学濃度Cおよびドーピング濃度Dの分布が、図4Aの例と相違する。他の構造は図4Aの例と同様である。本例の平坦領域130は、深さ方向における長さが、バッファ領域20の半分以上である。
【0150】
本例では、バッファ領域20の深さ方向における中央の位置をZcbとする。バッファ領域20のうち、中央位置Zcbよりも下面23側を下面側領域133、上面21側を上面側領域132とする。
【0151】
バッファ領域20は、第1低濃度水素ピーク125-1および第2低濃度水素ピーク125-2を含む複数の低濃度水素ピーク125を有している。本例では、上面側領域132に配置された低濃度水素ピーク125の個数は、下面側領域133に配置された低濃度水素ピーク125の個数よりも多い。図8の例では、上面側領域132に第1低濃度水素ピーク125-1、第2低濃度水素ピーク125-2、および、第3低濃度水素ピーク125-3が配置されている。下面側領域133には、低濃度水素ピーク125が配置されなくてよく、破線で示すように、1つ以上の低濃度水素ピーク125が配置されていてもよい。
【0152】
本例の上面側領域132には、高濃度水素ピーク115が配置されていない。下面側領域133には、1つ以上の高濃度水素ピーク115が配置されてよい。このような構成により、上面側領域132におけるドーピング濃度を平坦化できる。また、下面側領域133の濃度ピーク25により、空乏層がコレクタ領域22等に到達することを抑制できる。
【0153】
平坦領域130は、上面側領域132の80%以上の領域に設けられてよく、全体に設けられてもよい。平坦領域130は、下面側領域133の一部にも設けられてよい。例えば平坦領域130は、下面側領域133において、最も上面21側に配置された濃度ピーク25よりも上面21側に配置されてよい。
【0154】
平坦領域130は、半導体基板10の中央位置Zcを越えて、上面21側の領域まで形成されてよい。平坦領域130は、蓄積領域16まで形成されていてもよい。この場合、低濃度水素ピーク125は、蓄積領域16内に配置されてよい。
【0155】
上面側領域132を深さ方向に2等分した領域のうち、上面21側の領域を先端領域134とする。先端領域134に、2つ以上の低濃度水素ピーク125が配置されてよい。先端領域134の複数の深さ位置に水素イオンを分散して注入することで、先端領域134における単一の深さ位置に水素イオンを注入する場合に比べて、先端領域134におけるドーピング濃度Dの分布を平坦化できる。また、下面23から先端領域134までを通過する水素イオンの量を確保して、格子欠陥を形成しやすくなる。このため、平坦領域130を高濃度化できる。上面側領域132において、先端領域134に配置された低濃度水素ピーク125の個数は、先端領域134ではない領域に配置された低濃度水素ピーク125の個数よりも多くてよい。
【0156】
図9は、隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125を拡大した図である。本例の複数の低濃度水素ピーク125は、例えば図8の先端領域134に配置されてよく、上面側領域132に配置されてよく、バッファ領域20に配置されてもよい。
【0157】
それぞれの低濃度水素ピーク125の頂点における水素化学濃度P11、P12、P13は、同一であってよく、異なっていてもよい。図9の例では、水素化学濃度P11、P12、P13は同一である。
【0158】
それぞれの低濃度水素ピーク125の頂点の間隔Z11-Z13、Z13-Z12は、同一であってよく、異なっていてもよい。図9の例では、間隔Z11-Z13と、間隔Z13-Z12は同一である。
【0159】
図10は、隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125の他の例を示す図である。本例の複数の低濃度水素ピーク125は、例えば図8の先端領域134に配置されてよく、上面側領域132に配置されてよく、バッファ領域20に配置されてもよい。
【0160】
本例では、最も上面21側に配置された第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度P11は、他の低濃度水素ピーク125の水素化学濃度よりも大きい。最も下面23側に配置された第2低濃度水素ピーク125-2の水素化学濃度P12は、他の低濃度水素ピーク125の水素化学濃度よりも小さい。それぞれの低濃度水素ピーク125の水素化学濃度は、上面21に近づくほど大きくてよい。
【0161】
図11は、隣り合って配置された複数の低濃度水素ピーク125の他の例を示す図である。本例の複数の低濃度水素ピーク125は、例えば図8の先端領域134に配置されてよく、上面側領域132に配置されてよく、バッファ領域20に配置されてもよい。
【0162】
本例では、最も上面21側に配置された第1低濃度水素ピーク125-1の水素化学濃度P11は、他の低濃度水素ピーク125の水素化学濃度よりも小さい。最も下面23側に配置された第2低濃度水素ピーク125-2の水素化学濃度P12は、他の低濃度水素ピーク125の水素化学濃度よりも大きい。それぞれの低濃度水素ピーク125の水素化学濃度は、上面21に近づくほど小さくてよい。
【0163】
図10および図11の例において、低濃度水素ピーク125の間隔は、上面21に近づくほど大きくてよい。低濃度水素ピーク125の間隔は、上面21に近づくほど小さくなってもよい。
【0164】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0165】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0166】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、25・・・濃度ピーク、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、101・・・外周ゲート配線、102・・・活性側ゲート配線、115・・・高濃度水素ピーク、124・・・谷部、125・・・低濃度水素ピーク、126・・・上面側裾、127・・・下面側裾、128・・・濃度ピーク、129・・・極小部、130・・・平坦領域、131・・・領域、132・・・上面側領域、133・・・下面側領域、134・・・先端領域、160・・・活性部、162・・・端辺、164・・・ゲートパッド
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、バルク・ドナーおよび酸素を含む半導体基板と、
少なくとも一部分が前記半導体基板の前記下面側に設けられ、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高いバッファ領域と、を有し、
前記バッファ領域は、
水素化学濃度分布における複数の低濃度水素ピークと、
前記複数の低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置され、前記複数の低濃度水素ピークよりも水素化学濃度が高い高濃度水素ピークと
を含み、
前記複数の低濃度水素ピークのうちの少なくとも一つの低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されている
半導体装置。
【請求項2】
前記複数の低濃度水素ピークのうち、最も前記上面側に配置された前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の低濃度水素ピークのうち、全ての前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されている
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バッファ領域は、
前記複数の低濃度水素ピークが設けられた領域と、前記複数の低濃度水素ピークの間の領域と、を含み、前記複数の低濃度水素ピークのうちの少なくとも一つの低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、前記低濃度水素ピークの幅よりも大きい平坦領域を更に備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記平坦領域の、前記複数の低濃度水素ピークのうち、全ての前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、前記低濃度水素ピークの幅よりも大きい
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の低濃度水素ピークは、
第1低濃度水素ピークと、
前記第1低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第2低濃度水素ピークと、
を含み、
前記平坦領域は、
前記第1低濃度水素ピークおよび前記第2低濃度水素ピークの間の領域と、
前記第2低濃度水素ピークが設けられた領域と、
を含む
請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記平坦領域は、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高い
請求項4から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記平坦領域は、
前記ドーピング濃度の変動が±30%以下であり、
前記ドーピング濃度の変動比率が水素化学濃度の変動比率よりも小さい
請求項4から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記平坦領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、前記第2低濃度水素ピークに対応する前記濃度ピークを有し、
前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも緩やかに濃度が変化する
請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも前記半導体基板の前記下面側に配置されている
請求項に記載の半導体装置。
【請求項11】
深さ方向において、前記平坦領域の長さは、前記バッファ領域の長さの半分以上である
請求項から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が、前記半導体基板の酸素化学濃度の0.01%以上、3%以下である
請求項から11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板の酸素化学濃度は、前記複数の低濃度水素ピークの水素化学濃度の10倍以上である
請求項から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔(μm)は、前記半導体基板の酸素化学濃度(atoms/cm)の3/1016(μm/(atoms/cm))倍以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1低濃度水素ピークの水素化学濃度が1.0×1016atoms/cm以下であり、
前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔が100μm以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記バッファ領域は、前記バッファ領域の中央よりも前記下面側の下面側領域と、前記バッファ領域の中央よりも前記上面側の上面側領域とを有し、
前記上面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数は、前記下面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数よりも多い
請求項から15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記低濃度水素ピークの水素化学濃度は、1×1016/cm以下である
請求項1から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記平坦領域のドーピング濃度が、前記バルク・ドナー濃度の2倍以上である
請求項から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記平坦領域のドーピング濃度が、0.7×1013/cm以上である
請求項から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記複数の低濃度水素ピークのそれぞれは、ピークの頂点から前記半導体基板の前記下面に向かう下側裾と、前記頂点から前記半導体基板の前記上面に向かう上側裾とを有し、
前記上側裾は、前記下側裾よりも急峻に水素化学濃度が低下する
請求項1から19のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記半導体基板の酸素化学濃度が1.0×1017atoms/cm以上である
請求項1から2のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記第1低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量1.0×1012ions/cm以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記第2低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量1.0×1012ions/cm以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記平坦領域のドーピング濃度の平均値が前記第2低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記バッファ領域において、前記高濃度水素ピークよりも前記上面側であって、前記第2低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第3低濃度水素ピークを有し、
前記平坦領域が前記第3低濃度水素ピークを含み、
前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が前記第3低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下である
請求項6、9または10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記平坦領域において、前記ドーピング濃度の変動比率は前記水素化学濃度の変動比率の半分以下である
請求項から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記平坦領域は、前記半導体基板の深さ方向における中央位置よりも前記上面側まで形成されている
請求項4から16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、バルク・ドナーおよび酸素を含む半導体基板を有してよい。上記いずれかの半導体装置は、少なくとも一部分が前記半導体基板の前記下面側に設けられ、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高いバッファ領域を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域は、水素化学濃度分布における複数の低濃度水素ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域は、前記複数の低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置され、前記複数の低濃度水素ピークよりも水素化学濃度が高い高濃度水素ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置の前記複数の低濃度水素ピークのうちの少なくとも一つの低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されていてよい。上記いずれかの半導体装置の前記複数の低濃度水素ピークのうち、最も前記上面側に配置された前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されていてよい。上記いずれかの半導体装置の前記複数の低濃度水素ピークのうち、全ての前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの深さ位置が、前記低濃度水素ピークの深さ位置よりも前記下面側に配置されていてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域は、前記複数の低濃度水素ピークが設けられた領域と、前記複数の低濃度水素ピークの間の領域と、を含み、前記複数の低濃度水素ピークのうちの少なくとも一つの低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、前記低濃度水素ピークの幅よりも大きい平坦領域を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域の、前記複数の低濃度水素ピークのうち、全ての前記低濃度水素ピークについて、対応するドーピング濃度分布の濃度ピークの幅が、前記低濃度水素ピークの幅よりも大きくてよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、前記複数の低濃度水素ピークは、第1低濃度水素ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数の低濃度水素ピークは、前記第1低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第2低濃度水素ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域は、前記第1低濃度水素ピークおよび前記第2低濃度水素ピークの間の領域と、前記第2低濃度水素ピークが設けられた領域とを含んでよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域は、ドーピング濃度がバルク・ドナー濃度よりも高くてよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域は、前記ドーピング濃度の変動が±30%以下であり、前記ドーピング濃度の変動比率が水素化学濃度の変動比率よりも小さくてよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布は、前記第2低濃度水素ピークに対応する前記濃度ピークを有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも緩やかに濃度が変化してよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記濃度ピークは、前記第2低濃度水素ピークよりも前記半導体基板の前記下面側に配置されていてよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記いずれかの半導体装置の深さ方向において、前記平坦領域の長さは、前記バッファ領域の長さの半分以上であってよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が、前記半導体基板の酸素化学濃度の0.01%以上、3%以下であってよい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の酸素化学濃度は、前記複数の低濃度水素ピークの水素化学濃度の10倍以上であってよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔(μm)は、前記半導体基板の酸素化学濃度(atoms/cm )の3/10 16 (μm/(atoms/cm ))倍以下であってよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1低濃度水素ピークの水素化学濃度が1.0×10 16 atoms/cm 以下であってよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1低濃度水素ピークと、前記第2低濃度水素ピークとの間隔が100μm以下であってよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域は、前記バッファ領域の中央よりも前記下面側の下面側領域と、前記バッファ領域の中央よりも前記上面側の上面側領域とを有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記上面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数は、前記下面側領域に配置された前記低濃度水素ピークの個数よりも多くてよい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記低濃度水素ピークの水素化学濃度は、1×10 16 /cm 以下であってよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域のドーピング濃度が、前記バルク・ドナー濃度の2倍以上であってよい。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域のドーピング濃度が、0.7×10 13 /cm 以上であってよい。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
上記いずれかの半導体装置において、前記複数の低濃度水素ピークのそれぞれは、ピークの頂点から前記半導体基板の前記下面に向かう下側裾と、前記頂点から前記半導体基板の前記上面に向かう上側裾とを有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記上側裾は、前記下側裾よりも急峻に水素化学濃度が低下してよい。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
上記いずれかの半導体装置において、前記半導体基板の酸素化学濃度が1.0×10 17 atoms/cm 以上であってよい。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が1.0×10 12 ions/cm 以下であってよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第2低濃度水素ピークの水素イオンドーズ量が1.0×10 12 ions/cm 以下であってよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域のドーピング濃度の平均値が前記第2低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下であってよい。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
上記いずれかの半導体装置の前記バッファ領域において、前記高濃度水素ピークよりも前記上面側であって、前記第2低濃度水素ピークよりも前記下面に近い位置に配置された第3低濃度水素ピークを有してよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域が前記第3低濃度水素ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域の前記ドーピング濃度の平均値が前記第3低濃度水素ピークと前記高濃度水素ピークの間のドーピング濃度の極小値以下であってよい。上記いずれかの半導体装置の前記平坦領域において、前記ドーピング濃度の変動比率は前記水素化学濃度の変動比率の半分以下であってよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平坦領域は、前記半導体基板の深さ方向における中央位置よりも前記上面側まで形成されていてよい。