(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038432
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータを決定する方法及び眼鏡管理システム
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20240312BHJP
G02C 1/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C1/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006088
(22)【出願日】2024-01-18
(62)【分割の表示】P 2021526620の分割
【原出願日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】18315040.8
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・ボーダルト
(72)【発明者】
【氏名】マギー・ペリエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼鏡の仕上がり(及び特にフレームと各レンズの相性)は選択されたフレームに依存し、着用者はフレームとレンズの相性に関してフレーム設計者の選択を受け入れるしかない。
【解決手段】眼鏡管理システムが、レンズ及びフレームを含む眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータPを決定する。電子システム8は以下を含む:-初期レンズを記述しているレンズデータL及び初期フレームを記述するフレームデータFを取得する受信部14と、-レンズデータL及びフレームデータFに基づいて、初期レンズと初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別する処理部6と、-識別された変更パラメータに基づいて変更案Mのリストを送信する送信部16。受信部14は少なくとも1つの変更案への応答を取得し、処理部6は取得した応答に基づいて、レンズ又はフレームを製造する付加製造工程の加工パラメータPを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ及びフレームを含む眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータ(P)を決定する方法であって、受信部(14)及び送信部(16)を含む電子システムに実装された以下のステップ、すなわち
- 初期レンズを記述しているレンズデータ(L)を取得するステップ(S4)と、
- 初期フレームを記述しているフレームデータ(F)を取得するステップと(S12)、
- 前記レンズデータ(L)及び前記フレームデータ(F)に基づいて、前記初期レンズと前記初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別するステップ(S14)と、
- 前記識別するステップで識別された変更パラメータに基づいて変更案のリストを決定するステップであって、前記変更案のそれぞれは、前記識別するステップで識別された変更パラメータのうち1個の変更後の値に対応する、ステップと、
- 前記送信部(16)を用いて、変更案(M)の前記リストを遠隔システム(2)に送信するステップ(S16)と、
- 前記遠隔システム(2)から、前記受信部(14)を用いて、各々の変更案に対して、注目する変更が受容又は拒否されたかを示す応答(C)を受信するステップ(S26)と、
- 前記取得した応答(C)に基づいて、前記応答で受容されたものとして規定された変更案を含む前記レンズ又は前記フレームを製造する付加製造工程の加工パラメータ(P)を決定するステップ(S32)と、
を含む方法。
【請求項2】
フレームデータ(F)を取得する前記ステップが、以下のサブステップ、すなわち
- エンドユーザーシステム(2)からフレーム基準(R)を受信するステップ(S4)と、
- 前記フレーム基準(R)をフレーム設計者電子システム(12)に送信するステップ(S6)と、
- 前記送信されたフレーム基準に応答して、前記フレーム設計者電子システムから前記フレームデータ(F)を受信するステップ(S12)と、
を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のステップ、すなわち
- 前記フレーム又は前記変更案に対するユーザーフィードバックを記述しているデータ(C)を受信するステップ(S26)と、
- 前記データ(C)をフレーム設計者電子システム(12)に送信するステップ(S28)と、
を更に含んでいる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
変更後のフレームを規定するデータを前記フレーム設計者電子システムから受信するステップを更に含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遠隔システム(2)が、前記初期レンズ及び前記初期フレームを含み、前記変更案の少なくとも1つにより変更された変更後の眼鏡の表現を表示(S20)するよう画面を制御すべく適合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
変更パラメータを識別する前記ステップ(S14)が、以下のサブステップ、すなわち
- 前記初期レンズと前記初期フレームとの機械的界面のモデルに基づいて、以下の特性、すなわち前記初期フレームと前記初期レンズとの機械的干渉、前記レンズのエッジと前記フレームのリムとの接触、前記初期フレームに取り付けられた場合に前記初期レンズが提供する視野のうち改良可能な特性を決定するステップと、
- 変更パラメータとして用いられた場合に前記改良可能な特性の改良につながるパラメータを選択するステップと、
を含んでいる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記変更パラメータが、以下のパラメータ、すなわちレンズのエッジ厚、フレームのリム厚、前記レンズの傾斜エッジの形状、前記リムの傾斜エッジの形状、前記フレームのノーズパッドの種類、前記フレームの前記ノーズパッドの位置、前記フレームの分岐の種類、前記フレームの前記分岐のヒンジの位置、前記レンズの形状、前記フレームの前記リムの内形のうち少なくとも1個を含んでいる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記レンズ又は前記フレームを製造する更なるステップ(S38)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記レンズ又は前記フレームが、前記決定された加工パラメータを用いる付加製造により製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
レンズ及びフレームを含む眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータ(P)を決定すべく適合されていて、以下の要素、すなわち
- 初期レンズを記述しているレンズデータ(L)及び初期フレームを記述しているフレームデータ(F)を取得すべく適合された受信部(14)と、
- 前記レンズデータ(L)及び前記フレームデータ(F)に基づいて、前記初期レンズと前記初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別すべく適合された処理部(6)であって、前記処理部(6)によって識別された前記変更パラメータに基づいて変更案のリストを決定するように適合され、前記変更案のそれぞれは、前記処理部(6)によって識別された前記変更パラメータのうち1個の変更後の値に対応する、処理部(6)と、
- 変更案(M)の前記リストを遠隔システム(2)に送信すべく適合された送信部(16)と、
を含む電子システム(8)を含み、
前記受信部(14)が更に、各々の変更案(M)に対して、注目する変更が受容又は拒否されたかを示す応答(C)を前記遠隔システムから受信すべく適合されていて、前記処理部(6)が更に、前記取得した応答(C)に基づいて、前記応答で受容されたものとして規定された変更案を含む前記レンズ又は前記フレームを製造する付加製造工程の加工パラメータ(P)を決定すべく適合されている眼鏡管理システム。
【請求項11】
前記レンズ又は前記フレームを製造すべく適合された製造機械(10)を含む、請求項10に記載の眼鏡管理システム。
【請求項12】
前記製造機械(10)が、前記決定された加工パラメータ(P)を用いて前記レンズ又は前記フレームを製造すべく適合された付加製造機械である、請求項11に記載の眼鏡管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレーム及び少なくとも1個のレンズを含む眼鏡の製造に関する。
【0002】
より正確には、本発明は眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータを決定する方法及び眼鏡管理システムに関する。
【背景技術】
【0003】
今日、眼鏡の将来の着用者は眼科医でフレームを選択する。着用者に必要な矯正を提供するレンズは次いで、選択されたフレームに取り付けるべくフレームの形状にエッジを合わせられる。
【0004】
従って、眼鏡の仕上がり(及び特にフレームと各レンズの相性)は選択されたフレームに依存し、着用者は例えばフレームとレンズの相性に関してフレームの設計者が行った選択を受け入れるしかない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レンズ及びフレームを含む眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータを決定する方法を提供するものであり、前記方法は電子システムに実装された以下のステップを含んでいる。
- 初期レンズを記述しているレンズデータを取得するステップと、
- 初期フレームを記述しているフレームデータを取得するステップと、
- レンズデータ及びフレームデータに基づいて、初期レンズと初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別するステップと、
- 識別された変更パラメータに基づいて変更案のリストを送信するステップと、
- 少なくとも1つの変更案への応答を取得するステップと、
- 取得した応答に基づいて、レンズ又はフレームを製造する付加製造工程の加工パラメータを決定するステップ。
【0006】
初期レンズと初期フレームの相性に由来するいくつかの矯正を従って(例えば眼鏡の将来の着用者により)選択することができ、選択された変更を考慮しながら、決定された加工パラメータを用いて付加製造工程を開始することができる。
【0007】
このように得られた眼鏡は、レンズとフレームの相性が向上している一方、応答において(例えば将来の着用者により)行われた選択が奏功して、変更は制御下にある。
【0008】
可能な一実施形態によれば、フレームデータを取得するステップは、以下のサブステップを含んでいてよい。
- (例えば眼科医に配置された)エンドユーザーシステムからフレーム基準を受信するステップと、
- フレーム基準をフレーム設計者電子システムに送信するステップと、
- 送信されたフレーム基準に応答して、フレーム設計者電子システムから前記フレームデータを受信するステップ。
【0009】
上述の方法はまた、以下のステップを含んでいてよい。
- フレーム又は変更案に対するユーザーフィードバックを記述しているデータを受信するステップと、
- 前記データをフレーム設計者電子システムに送信するステップ。
【0010】
本方法はいくつかの実施形態において更に、変更後のフレームを規定するデータを設計者電子システムから受信するステップを含んでいてよい。このような状況において、設計者電子システムは、変更案を記述しているデータに規定された変更をフレームに対して行うことができる。
【0011】
実際、変更案のリストは、画面を含む遠隔システムに送信することができ、遠隔システムは次いで、初期レンズ及び初期フレームを含み、且つ前記変更案の少なくとも1つにより変更された変更後の眼鏡の表現を表示するよう画面を制御すべく適合されている。
【0012】
可能な一実施形態によれば、変更パラメータを識別するステップは、以下のサブステップを含んでいる。
- 初期レンズと初期フレームとの機械的界面のモデルに基づいて、以下の特性、すなわち初期フレームと初期レンズとの機械的干渉、レンズのエッジとフレームのリムとの接触、初期フレームに取り付けられた場合に初期レンズが提供する視野のうち改良可能な特性を決定するステップと、
- 変更パラメータとして用いられた場合に改良可能な特性の改良につながるパラメータを選択するステップ。
【0013】
変更パラメータは、実際には以下のパラメータのうち少なくとも1個を含んでいてよい。レンズのエッジ厚、フレームのリム厚、レンズの傾斜エッジの形状、リムの傾斜エッジの形状、フレームのノーズパッドの種類、フレームのノーズパッドの位置、フレームの分岐の種類、フレームの分岐のヒンジの位置、レンズの形状、フレームのリムの内形。
【0014】
上述の方法はまた、レンズ又はフレームを製造する更なるステップを含んでいてよく、製造されたレンズ又はフレームは、取得した応答において受容されたものとして規定された変更案を含んでいる。レンズ又はフレームは例えば、決定された加工パラメータを用いて付加製造により製造される。
【0015】
本発明はまた、レンズ及びフレームを含む眼鏡の少なくとも一部を製造するための加工パラメータを決定すべく適合されていて、以下を含む電子システムを含む眼鏡管理システムを提供する。
- 初期レンズを記述しているレンズデータ及び初期フレームを記述しているフレームデータを取得すべく適合された受信部と、
- レンズデータ及びフレームデータに基づいて、初期レンズと初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別すべく適合された処理部と、
- 識別された変更パラメータに基づいて変更案のリストを送信すべく適合された送信部。
【0016】
受信部は更に少なくとも1つの変更案への応答を取得すべく適合されていてよく、処理部は更に、取得した応答に基づいて、レンズ又はフレームを製造する付加製造工程の加工パラメータを決定すべく適合されていてよい。
【0017】
このようなシステムはまた、レンズ又はフレームを製造すべく適合された製造機械を含んでいてよく、製造されたレンズ又はフレームは次いで取得した応答において受容されたものとして規定された変更案を含んでいてよい。
【0018】
上述のように、当該製造機械は、決定された加工パラメータを用いてレンズ又はフレームを製造すべく適合された付加製造機械であってよい。
【0019】
非限定的な例として与える添付の図面に関する以下の説明により、本発明の構成要素及び実施方法に対する理解が深まろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明による加工パラメータを決定する方法の一例の主なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す眼鏡管理システムは、ECP装置2(ECPは「眼科医(Eye Care Practitioner)」の略)、電子システム8、付加製造機械10及びフレームデータベースを保存するフレーム設計者電子システム12を含んでいる。
【0022】
電子システム8は、通信回路4及び処理部6を含んでいる。
【0023】
通信回路4は、処理部6が他の電子装置とデータ交換を行えるよう、(可能性としてインターネット等の広域ネットワークを含む)1又は数個の電子ネットワークを介して、他の電子装置(ECP装置2及び/又は付加製造機械10及び/又はフレーム設計者電子システム12等)との接続を確立することができる。
【0024】
特に、通信回路4は、処理部6に宛てられたデータを別の電子装置から受信する受信部14、及び処理部6から別の電子装置にデータを送信する送信部16を含んでいる。
【0025】
通信回路4により確立された別の装置との接続の少なくとも一部は(例えば安全なチャネルを介して実装及び/又は暗号化されていることにより)実際にはセキュリティが保証されていてよい。
【0026】
処理部6は典型的に、マイクロプロセッサ及びメモリ(ランダムなメモリ及び/又は不揮発性メモリ)を実際に含んでいてよい。メモリは特に、これらのプログラム命令がマイクロプロセッサにより実行された際に、
図2を参照しながら以下に述べるように処理部6により実装されたステップを実行するよう処理部6を制御するのに適したプログラム命令を保存する。メモリはまた、
図2を参照しながら以下に述べるように、処理部6により実行されるステップのいずれかを実行中に、処理部6により処理されたデータを(少なくとも一時的に)保存することができる。
【0027】
ECP装置2は、コンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ又はタブレットコンピュータ)等の電子装置であり、例えば眼科医の敷地内に存在し、初期眼鏡レンズを記述するレンズデータL及びフレーム基準Rを(少なくとも一時的に)保存することを意図している。
【0028】
初期眼鏡レンズを記述しているこのようなデータLは例えば、球面屈折力及び/又は円柱屈折力及び/又は円柱矯正の円柱軸等、少なくとも初期眼鏡レンズが提供する屈折矯正を規定する処方データを含んでいる。
【0029】
初期眼鏡レンズを記述しているデータLはまた、初期眼鏡レンズを規定する以下のような更なるデータを含んでいてよい。
- (例:単焦点、累進、多焦点のうち)初期眼鏡レンズの種類を規定するデータ、及び/又は
- 単焦点レンズの場合はレンズが球面又は非球面であるか、累進多焦点レンズの場合は残留球面屈折力及び/又は不要な乱視の分布、多焦点レンズの場合はレンズの種類(二焦点、三焦点、セグメント)及び付加領域のサイズ等、初期眼鏡レンズの設計特性を規定するデータ、及び/又は
- 初期眼鏡レンズの材料を規定するデータ。
【0030】
初期眼鏡レンズを記述しているデータLは例えば、(初期眼鏡レンズの将来の着用者の視力検査の後で)眼科医により作成された処方に基づいて決定され、及び/又はECP装置2のユーザーインターフェースを介して(少なくとも一時的に保存すべく)ECP装置2に入力される。
【0031】
フレーム基準Rは例えば、眼鏡の将来の着用者によりECP建屋内で予め選択された初期フレームの識別子である。
【0032】
(上述のようにフレーム設計者電子システム12により保存された)フレームデータベースは、注目するフレームのフレーム基準Fに関連付けられたフレームデータF(注目するフレームの3D表現を含むファイル等)を含んでいる。フレームデータベースは実際には注目するフレーム設計者が設計した複数のフレームの各々のフレームデータFを保存することができる。
【0033】
付加製造機械10は制御部102及び、付加製造方法により製造された眼鏡の少なくとも一部(例えば眼鏡レンズ及び/又はフレーム)が取り付けられる製造支持部材112を含んでいる。
【0034】
製造支持部材112は、製造面を備えた本体を含み、その全体的ジオメトリの全部又は一部は、付加製造により製造された眼鏡レンズ及び/又はフレームの少なくとも1面のジオメトリから独立しているか又は依存している。ここで述べる例において、製造表面は平坦であるが、一変型例として例えば凸又は凹面であってよい。
【0035】
本実施形態において、付加製造機械10は少なくとも1個のノズル113も含んでいる。付加製造機械10で用いる付加製造技術はこの場合、例えばポリマー噴射であってよい。
【0036】
ノズル113は、アクチュエータにより移動されて、任意選択的付加処理(光重合ステップ)の後で製造中の眼鏡の当該部分の基本部分(例:眼鏡レンズ及び/又はフレーム)を形成する材料の要素体積(すなわちボクセル)を配送すべく制御部102により制御される。
【0037】
しかし、可能な変型例によれば、例えばステレオリソグラフィ(SLA)、可能性としてDLP-SLA(DLPは「デジタル光処理(Digital Light Processing)」の略)等、他の付加製造技術を用いてもよい。例えばDLP-SLAの場合、貯槽がプロジェクタにより選択的に照明される樹脂を含んでいる。プロジェクタから受光している樹脂の部分だけが重合するため、プロジェクタにより(例えばプロジェクタの1個のマイクロミラーにより)光が照射されている箇所に、すなわちプロジェクタのマトリクスのピクセルに対応して、複数のボクセルの各々が形成される。従って特にこのような場合、付加製造機械はノズルを含んでいない。
【0038】
制御部102は、特にマイクロプロセッサ及び(例:不揮発性の)メモリ(ここでは読出し専用メモリすなわちROMに一体化された)を含むデータ処理システムを備えている。このようなメモリは、マイクロプロセッサにより実行された場合に、付加製造機械10を制御可能にし、従って付加製造方法を実行可能にする(ソフトウェアを形成する)コンピュータプログラム命令を保存する。
【0039】
制御部102は更に、変更可能メモリ、ここではソフトウェアの実行及び付加製造方法の実行中に用いるデータが保存される揮発性のランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでいる。
【0040】
一変型例として、不揮発性メモリ及び/又は変更可能メモリは、書き換え可能な不揮発性メモリ、例えば電気的消去可能プログラム可能リードオンリーメモリ(EEPROM)であってよい。
【0041】
眼鏡の部分(例:眼鏡レンズ及び/又はフレーム)を製造する場合、変更可能メモリは特に対応する加工パラメータPを以下に更に述べるように保存する。
【0042】
本発明は、付加製造機械10の特定の位置に限定されない。
【0043】
例えば、
図1に模式的に示すように、付加製造機械10はECP建屋及び電子システム8の位置から離れた建屋に配置されていてよい。
【0044】
可能な一変型例によれば、付加製造機械10及び電子システム8は、同じ建物(例えば、製造機械10及び電子システム8は研究室の一部をなす)に配置されていてよい。
【0045】
更に別の解決策によれば、付加製造機械10はECP建屋内に配置されていてよい。
【0046】
図2に、本発明による加工パラメータPを決定する方法の主なステップを示す。
【0047】
図2の方法は、ECP建屋内の着用者による初期フレーム(フレーム基準Rを有する)の選択の後で開始される。
【0048】
着用者の屈折異常の矯正に適した初期レンズを記述しているフレーム基準R及びレンズデータLがECP装置2に入力されてECP装置2のメモリに(少なくとも一時的に)保存される。
【0049】
レンズデータLの可能な種類は上述の通りである。
【0050】
フレーム基準R及びレンズデータLは従って、ECP装置2から電子システム8に送信することができる(ステップS2)。(例えばECP建屋で顔をスキャンすることにより得られた)将来の着用者の顔の形状を記述しているデータ、及び(例:ECPにより整形及び取り付けが行われた場合に)ECP建屋内で使用可能な設備を記述しているデータ等の追加的なデータもまたステップS2で送信することができる。
【0051】
フレーム基準R及びレンズデータLは(可能性として直前に述べた追加的データと共に)、ステップS4で受信部14により(従って処理部6により)受信される。
【0052】
処理部6は従って、初期レンズを記述しているレンズデータLを取得して、これらのレンズデータLを処理部6のメモリに保存する。
【0053】
本例では、直前に述べたように、フレーム基準R及びレンズデータLはECP装置から受信される。他の実施形態では、フレーム基準R及び/又はレンズデータLは、別のエンドユーザーシステム、例えば(着用者が専用ウェブサイトにアクセスすることにより初期フレームを選択した、及び/又はレンズデータLを形成する処方データを入力した可能性がある)パーソナルコンピュータにより受信されてよい。
【0054】
図2の方法において、処理部6は次いで、送信部16を用いてフレーム基準Rをフレーム設計者電子システム12に送信する(ステップS6)。
【0055】
フレーム設計者電子システム12は、フレーム基準Rを受信して、フレームデータベース内で当該フレーム基準Rに関連付けられているフレームデータFを取り出す(ステップS8)。
【0056】
上述のように、フレームデータFは例えば、初期フレームの3D表現を含むファイルである。
【0057】
取り出されたフレームデータFは次いで、フレーム設計者電子システム12により処理部6に送信される(ステップS10)。
【0058】
受信部14及び結果的に処理部6は次いで、ステップS12でフレーム設計者電子システム12からフレームデータFを受信する。
【0059】
処理部6は次いで、レンズデータL及びフレームデータF(及び可能性として上述のように追加的なデータ)を用いて初期レンズと初期フレームの相性に由来する変更パラメータを識別することができる(ステップS14)。
【0060】
ステップS14の変更パラメータの識別は、例えば以下のように実行することができる。
- レンズデータLに基づいて初期レンズの3D表現を生成し、
- 初期レンズの当該3D表現及びフレームデータFに含まれるフレームの3D表現を用いて初期レンズと初期フレームとの機械的界面のモデルを構築し、
- 当該モデルに基づいて少なくとも1個の改良可能な特性を決定し、
- 変更パラメータとして用いられた場合に改良可能な特性の改良につながるパラメータを識別された変更パラメータとして選択する。
【0061】
改良可能な特性は以下の特性の1個又は数個であってよい。初期フレームと初期レンズの機械的干渉、レンズのエッジとフレームのリムの接触、初期フレームに取り付けられた場合に初期レンズが提供する視野。
【0062】
改良可能な特性の改良につながる可能な変更パラメータは以下のパラメータのうち少なくとも1個を含んでいる。レンズのエッジ厚、フレームのリム厚、レンズの傾斜エッジの形状、リムの傾斜エッジの形状、フレームのノーズパッドの種類、フレームのノーズパッドの位置、フレームの分岐の種類、フレームの分岐のヒンジの位置、レンズの形状、フレームのリムの内形。
【0063】
処理部6は次いで、ステップS14で識別された変更パラメータに基づいて変更案Mのリストを決定することができる。変更案Mは各々、識別された変更パラメータのうち1個の変更後の値に対応し、当該変更後の値は初期レンズ又はフレームにおいて注目する識別された変更パラメータの値とは異なる。
【0064】
例えば、改良可能な特性は、レンズエッジとフレームリムの厚さの差異であってよく、変更パラメータは従ってフレームのリム厚及び/又はレンズのエッジ厚であってよい(可能性としてレンズの形状及び/又はフレームのリムの内形であってもよい)。
【0065】
別の例において、改良可能な特性は、レンズをフレームに保持するのに充分なレンズのエッジ厚を有するためにレンズのエッジ厚であってよく、変更パラメータは従ってレンズのエッジ厚である。
【0066】
別の可能性によれば、改良可能な特性は、傾斜を利用するフレームとレンズのフィッティングであってよく、変更パラメータは従ってレンズの傾斜エッジの形状及び/又はリムの傾斜エッジの形状である。変更案Mは、リムの傾斜エッジに正確に対応(すなわち嵌合)するレンズの傾斜エッジをもたらす。
【0067】
可能な一実施形態によれば、改良可能な特性は、眼鏡が提供する視野であってよく、変更パラメータは従ってレンズの形状及びフレームのリムの内形である。
【0068】
処理部6は送信部16を用いて、変更案Mのリストを遠隔システム、ここではECP装置2に送信する(ステップS16)。
【0069】
次いで、変更案MのリストがステップS18で遠隔システム(ここではECP装置2)により受信される。
【0070】
遠隔システム(ここではECP装置2)は画面を含んでいてよく、画面を制御して眼鏡の将来の着用者に提示すべく変更後の眼鏡の表現を表示(ステップS20)すべく適合されていてよい。
【0071】
上述の変更後の眼鏡は初期レンズ及び初期フレームを含み、変更は変更案Mのリストに規定された通りである。
【0072】
可能な一実施形態によれば、ユーザー(例えば将来の着用者又は眼科医)が(遠隔システムのユーザーインターフェースを用いて)変更案Mのリスト内のいくつかの変更を選択することができ、表示された変更後の眼鏡は従って選択された変更だけが施された初期レンズ及び初期フレームを含んでいてよい。
【0073】
本実施形態において、遠隔システムはECP装置2である。しかし、他の実施形態では、遠隔システムはECP建屋以外の他の任意の場所に配置されたパーソナルコンピュータであってよい。遠隔システムは例えば、眼鏡の将来の着用者が所有するパーソナルコンピュータであってよい。
【0074】
遠隔システムのユーザーは次いで変更案Mのリストの各変更に対して、注目する変更を自身が受容又は拒否するかを選択することができる(ステップS22)。選択は例えば、遠隔システム、ここではECP装置2のユーザーインターフェースで実行される。
【0075】
遠隔システム(ここではECP装置2)は次いで処理部6に、各々の変更案Mに対して、注目する変更が受容又は拒否されたかを示す応答Cを送信することができる。可能性として、フレームに対するユーザーフィードバック(フレームで美観評価)を記述しているデータが応答Cに含まれていてよい。
【0076】
処理部6は、各々の変更案Mに対して、注目する変更が受容又は拒否されたかを示す応答Cを(受信部14を介して)受信する(ステップS26)。応答Cはまた、直前で述べたように、フレームに対するユーザーフィードバックを記述しているデータを含んでいてよい。
【0077】
処理部6はこのように、各々の変更案Mに対して、注目する変更が受容又は拒否されたかを示す応答Cを取得して(及び少なくとも一時的に保存している)。
【0078】
次いで応答Cの少なくとも一部(例えば、フレームに対するユーザーフィードバックを記述しているフレーム及び/又はデータに関する変更を受容又は拒否した)をフレーム設計者電子システム12に送信することができる(ステップS28)。
【0079】
応答Cの送信された部分はステップS30でフレーム設計者電子システム12により受信される。フレーム設計者は従って新規フレームを設計する際にユーザーフィードバックを考慮に入れることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、フレーム設計者電子システム12は、応答Cで規定された、受容された変更を考慮に入れて変更後のフレーム(すなわち、初期フレームと一致するが受容された変更毎に変更されたフレーム)を規定するデータを生成することができる。これらの実施形態において、フレームの変更はこのようにフレーム設計者により管理される。
【0081】
変更後のフレームを規定するデータはこの場合、後述するように付加製造によりフレームを将来製造すべくフレーム設計者電子システム12により処理部6に送信される。変更後のフレームを規定するデータは次いで(受信部14を介して)処理部により受信される。
【0082】
処理部6は次いで、ステップS32で取得した応答C(及び可能性としてフレーム設計者電子システム12から受信した変更後のフレームを規定するデータ)を用いて、レンズ及び/又はフレームを製造すべく実行される付加製造工程の加工パラメータPを決定する。
【0083】
このため、処理部6は例えば以下のように処理を進めることができる。
- 応答Cに記述されているレンズの受容された変更に基づく可能な変更により、初期レンズの3D表現(上記参照)に基づいてレンズの変更された3D表現を構築し、
- 応答Cで規定されたフレームの受容された変更に基づく可能な変更により(又は、上述の複数の実施形態では変更後のフレームを規定するデータを当該フレームの変更された3D表現として用いて)、初期フレームの3D表現(フレームデータFに含まれている)に基づいて、フレームの変更された3D表現を構築し、
- フレームの変更後の3D表現で規定された形状を有する対象及び/又はレンズの変更後の3D表現で規定された形状を有する対象の付加製造による製造に適した加工パラメータPを決定する。
【0084】
加工パラメータPは例えば以下のパラメータの任意のものを含んでいる。形成(例:堆積)するボクセルの層の数、形成(例:堆積)するボクセルの層の厚さ、形成(例:堆積する)各々のボクセルの位置、形成(例:堆積)する複数ボクセル(又は各ボクセル)の材料、ボクセルの重合に用いるエネルギーの種類及び/又は量、実行する後処理ステップ(後硬化、研磨又はコーティング等)の記述。
【0085】
決定された加工パラメータPは次いで送信部16を用いて付加製造機械10に送信される(ステップ34)。
【0086】
加工パラメータPは次いで付加製造機械10により受信されて、制御部102のメモリに(少なくとも一時的に)保存される(ステップS36)。
【0087】
付加製造機械10は次いで、加工パラメータPを用いて付加製造によりレンズ及び/又はフレームを製造することができる(ステップS38)。
【0088】
具体的には、この場合、制御部102がノズル113を制御して移動させる、及び/又は特に加工パラメータPに基づいてボクセルを形成する材料を配送させる。DLP-SLAを用いる上述の可能な別の実施形態において、制御部102がプロジェクタから照射された光を制御して加工パラメータに基づいてボクセルを形成する。
【0089】
上で説明したように、取得した応答Cで示すように受容された変更を考慮に入れて加工パラメータPを決定しており、生成されたレンズ及び/又はフレームは従って、取得した応答Cで受容されたものとして規定された変更案を含んでいる。
【符号の説明】
【0090】
2 ECP装置
4 通信回路
6 処理部
8 電子システム
10 製造機械
12 フレーム設計者電子システム
14 受信部
16 送信部
102 制御部
112 製造支持部材
113 ノズル
【外国語明細書】