(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038450
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光トモグラフィを使用する経腹的胎児オキシメトリの遂行
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024007089
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020571607の分割
【原出願日】2019-07-03
(31)【優先権主張番号】62/694,122
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,130
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,135
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,146
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,170
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,199
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,261
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,184
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520498365
【氏名又は名称】レイディアント オキシメトリ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ニール パダリア
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェーコブズ,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ザリンス,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ホルト,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ケイナーストーファー,ジャナ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ,デイビッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】胎児のヘモグロビン酸素飽和度レベル及び/又は胎児の組織酸素化レベルを求めるためのシステム、方法、及びデバイスを提供する。
【解決手段】胎児組織酸素化は、例えば妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられ検出器によって検出されて被検出電子信号へ変換された光に対応している複数の被検出電子信号を受信することによって経腹的に遂行されることができる。妊娠哺乳動物の腹部内の胎児の深さの示度が受信され、胎児の深さの示度に応じ、例えば被検出電子信号に対応している光子の飛行時間を使用して、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分が単離されることになる。次いで、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルが求められることになる。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサによって、当該プロセッサへ通信可能に連結された検出器からの複数の被検出電子信号を受信する段階であって、前記複数の被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光であって前記検出器によって検出され当該被検出電子信号へ変換された光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、複数の被検出電子信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の腹部内の前記胎児の深さの示度を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記胎児の深さの示度に応じて、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している単離された前記部分を使用して胎児組織酸素飽和度レベルを求める段階と、
前記プロセッサによって、ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にする段階と、
を備えている方法。
【請求項2】
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成する段階、
を更に備えている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、二次的信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記胎児についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記短い距離間隔における信号に対応している部分を除去する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサによって、当該プロセッサへ通信可能に連結された検出器からの複数の被検出電子信号を受信する段階であって、前記複数の被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光であって前記検出器によって検出され当該被検出電子信号へ変換された光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、複数の被検出電子信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信する段階と、
前記複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルを求める段階と、
前記プロセッサによって、ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にする段階と、
を備えている方法。
【請求項13】
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成する段階、
を更に備えている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、二次的信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記胎児についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
複数の光信号を受信し、前記複数の光信号を個々の複数の被検出電子信号へ変換し、前記複数の被検出電子信号をプロセッサへ伝達するように構成された検出器であって、前記複数の光信号は妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、検出器と、
前記検出器及びメモリへ通信可能に連結されたプロセッサと、
前記メモリであって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物の腹部内の前記胎児の深さの示度を受信するように、
前記胎児の前記深さの前記示度に応じて、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を求めるように、
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記単離された部分を使用して胎児組織酸素飽和度レベルを求めるように、及び、
ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にするように、仕向ける命令のセットを記憶させた前記メモリと、
を備えているシステム。
【請求項23】
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに、
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成するように仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
二次的信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の前記処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記命令のセットは、更に、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記胎児についての心拍数信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
前記命令のセットは、更に、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記短い距離間隔における信号に対応している部分を除去するように、更に仕向ける、請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、請求項22に記載のシステム。
【請求項31】
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、「母体心拍数及び/又は胎児心拍数を使用する経腹的胎児オキシメトリ(酸素飽和度測定)及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING MATERNAL AND/OR FETAL HEART RATE”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願号62/694,122号の非仮特許出願であり、本願は、「短い距離間隔における計測法を使用する経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING SHORT SEPARATION MEASUREMENTS”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,130号の非仮特許出願であり、本願は、「拡散光トモグラフィ(断層撮影)を使用する経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING DIFFUSE OPTICAL TOMOGRAPHY”)と題された2019年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,135号の非仮特許出願であり、本願は、「経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリの観点からパルスオキシメータについての複数比のうちの個別化された比を求めるためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR DETERMINING AN INDIVIDUALIZED RATIO OF RATIOS FOR A PULSE OXIMETER IN THE CONTEXT OF TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,146号の非仮特許出願であり、本願は、「広域スペクトル光源を使用する経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING A BROAD SPECTRUM LIGHT SOURCE”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,170号の非仮特許出願であり、本願は、「周波数ドメインスペクトロスコピーを使用する経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING FREQUENCY-DOMAIN SPECTROSCOPY”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,184号の非仮特許出願であり、本願は、「時間ドメイン拡散相関スペクトロスコピーを使用する経腹的胎児オキシメトリ及び/又は経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL FETAL OXIMETRY AND/OR TRANS-ABDOMINAL FETAL PULSE OXIMETRY USING TIME-DOMAIN DIFFUSE CORRELATION SPECTROSCOPY”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,199号の非仮特許出願であり、本願は、「経腹的胎便検出を遂行するためのシステム、デバイス、及び方法」(“SYSTEMS, DEVICES, AND METHODS FOR PERFORMING TRANS-ABDOMINAL MECONIUM DETECTION”)と題された2018年7月5日出願の米国仮特許出願第62/694,261号の非仮特許出願であり、上記仮特許出願全てをここに参考文献としてそれぞれそっくりそのまま援用する。
【0002】
本発明は、医療デバイスの分野であり、より具体的には経腹的胎児オキシメトリ、経腹的胎児パルスオキシメトリ、拡散光トモグラフィ、及び胎児組織酸素化の分野である。
【背景技術】
【0003】
オキシメトリは、哺乳動物の血中ヘモグロビンの酸素飽和度を求めるための方法である。典型的には、成体のヒトではヘモグロビンの90%(又はそれ以上)が酸素で飽和される(即ち酸素へ結合される)のに対し、胎児の血液は30%~60%しか酸素で飽和されない。パルスオキシメトリは、心拍動周期を通しての血液体積の変化を使用して動脈血のヘモグロビン酸素飽和度計測を内的に較正するオキシメトリの一型式である。
【0004】
胎児の心拍数をモニターするという様な胎児の健康をモニターする現在の方法は、胎児切迫仮死のレベルを求める場合に非効率的であり、往々にして、胎児切迫仮死を示唆する偽陽性の結果をもたらして不必要な帝王切開出産の遂行を生じさせることもあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮特許出願号62/694,122号
【特許文献2】米国仮特許出願第62/694,130号
【特許文献3】米国仮特許出願第62/694,135号
【特許文献4】米国仮特許出願第62/694,146号
【特許文献5】米国仮特許出願第62/694,170号
【特許文献6】米国仮特許出願第62/694,184号
【特許文献7】米国仮特許出願第62/694,199号
【特許文献8】米国仮特許出願第62/694,261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書には、胎児のヘモグロビン酸素飽和度レベル及び/又は胎児の組織酸素化レベルを、例えば経腹的な胎児オキシメトリ、経腹的な胎児パルスオキシメトリ、及び/又は拡散光トモグラフィ(DOT)を使用して求めるためのシステム、方法、及びデバイスが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、プロセッサが、プロセッサへ通信可能に連結された1つ又はそれ以上の検出器からの複数の被検出電子信号を受信するようになっている。検出器は1つ又はそれ以上の光源と共にアレイ状に配置されていてもよい。被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児へ投射されそこから(例えば後方散乱及び/又は透過を介して)発せられた2つ又はそれ以上の波長の光に対応していて、その様な光が(単数又は複数の)検出器によって検出され1つ又はそれ以上のデジタル信号へ変換されたものが複数の被検出電子信号ということになる。発せられ検出される光は、1つ又はそれ以上の光源によって妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分ということになる。幾つかの実施形態では、受信された複数の被検出電子信号は、信号のそれぞれが時間的に互いに対応する(例えば同じ開始時間、同じ終了時間、などを有する)ように時間ドメインで同期される。この同期化は、複数の被検出電子信号に存在するタイムスタンプの整列又は相関を介して実現されてもよい。被検出信号にはこれら個々の信号のそれぞれが共通の開始時間を有するように被検出電子信号のそれぞれに同時又はほぼ同時に割り込むタイムスタンプ刻印デバイス(例えば電気的接地のソース)によってタイムスタンプが導入されるようになっていてもよい。
【0008】
随意的に、妊娠哺乳動物の腹部内の胎児の深さの示度が受信されるようになっていてもよい。胎児の深さは、例えば、特定の場所での、妊娠哺乳動物の表皮と胎児の表皮との間の距離又は妊娠哺乳動物の表皮と胎児の脳の間の距離に対応していてもよい。胎児の深さは、例えば、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び/又は妊娠哺乳動物の腹部の画像(例えばMRI)から受信されてもよい。
【0009】
胎児の深さに応じて、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分(又は複数部分)が被検出電子信号から単離されることになる(本明細書では、時に、「単離された胎児信号」又は「胎児信号」と呼ばれる)。この単離は、例えば、胎児に入射したと予想される光子についての飛行時間及び/又は検出された光子又は一連の光子と関連づけられる場所、方向、及び/又は位置を使用して遂行されてもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、二次的信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を、二次的信号を使用して分析して、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0011】
追加的又は代替的には、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、妊娠哺乳動物についての心拍数信号を例えばECG機械及び/又はパルスオキシメータから受信する段階を含んでいてもよい。次いで、受信された複数の被検出電子信号が妊娠哺乳動物についての心拍数信号を使用して分析及び/又は処理されて、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分が単離されることになる。
【0012】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を妊娠哺乳動物についての呼吸信号を使用して分析/処理して、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0013】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、胎児についての心拍数信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を、胎児についての心拍数信号を使用して分析して、受信された複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0014】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、妊娠哺乳動物の腹部にのみ入射した(即ち胎児に入射したと予想されない)光に対応し得る1つ又はそれ以上の短い距離間隔における信号(short separation signals)を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を、短い距離間隔における信号を使用して分析して、被検出電子信号の(単数又は複数の)短い距離間隔における信号に対応している部分を除去する段階と、を含んでもよい。
【0015】
次いで、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルが求められることになる。次いでユーザへの胎児組織酸素飽和度レベルの提供が、例えば胎児組織酸素飽和度レベルをモニター又は他のディスプレイデバイスへ提供することによって容易にされてもよい。
【0016】
幾つかの実施形態では、被検出電子信号及び/又は単離された胎児信号は、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を使用して胎児又は胎児の一部分の画像を生成するのに使用されることもできる。画像は、例えば、胎児及び/又は妊娠哺乳動物についての検出された光の強度及び/又は組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示すものであってもよい。
【0017】
別の実施形態では、プロセッサが、プロセッサへ通信可能に連結された1つ又はそれ以上の検出器からの複数の被検出電子信号を受信するようになっている。検出器は1つ又はそれ以上の光源と共にアレイ状に配置されていてもよい。被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児へ投射されそこから(例えば後方散乱及び/又は透過を介して)発せられた2つ又はそれ以上の波長の光に対応していて、その様な光が(単数又は複数の)検出器によって検出され1つ又はそれ以上のデジタル信号へ変換されたものが複数の被検出電子信号ということになる。発せられ検出される光は、1つ又はそれ以上の光源によって妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分ということになる。幾つかの実施形態では、受信された複数の被検出電子信号は、信号のそれぞれが時間的に互いに対応する(例えば同じ開始時間、同じ終了時間、などを有する)ように時間ドメインで同期される。
【0018】
妊娠哺乳動物の腹部にのみ入射した光に対応する短い距離間隔における信号が受信され、短い距離間隔における信号に応じて、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分又は複数部分が被検出電子信号から単離されることになる(本明細書では、時に、「単離された胎児信号」又は「胎児信号」と呼ばれる)。
【0019】
幾つかの実施形態では、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、更に、二次的信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を、二次的信号を使用して分析して、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0020】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、妊娠哺乳動物についての心拍数信号を例えばECG機械及び/又はパルスオキシメータから受信する段階を含んでいてもよい。次いで、受信された複数の被検出電子信号が妊娠哺乳動物についての心拍数信号を使用して分析及び/又は処理されて、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分が単離されることになる。
【0021】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を妊娠哺乳動物についての呼吸信号を使用して分析/処理して、複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0022】
追加的又は代替的に、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を求める段階は、胎児についての心拍数信号を受信する段階と、受信された複数の被検出電子信号を、胎児についての心拍数信号を使用して分析して、受信された複数の被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、を含んでもよい。
【0023】
次いで、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルが求められることになる。次いでユーザへの胎児組織酸素飽和度レベルの提供が、例えば胎児組織酸素飽和度レベルをモニター又は他のディスプレイデバイスへ提供することによって容易にされてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、被検出電子信号及び/又は単離された胎児信号は、被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を使用して胎児又は胎児の一部分の画像を生成するのに使用されることもできる。画像は、例えば、胎児組織酸素飽和度レベル及び/又は妊娠哺乳動物の局所的ばらつきを示すものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビンについての酸素飽和度のレベル及び/又は妊娠哺乳動物の羊水中に胎便が存在するかどうかを判定するための或る例示としてのシステムを描いているブロック線図である。
【
図1B】本発明の幾つかの実施形態に一致する、或る例示としての胎児プローブを描いているブロック線図である。
【
図1C】本発明の幾つかの実施形態に一致する、或る例示としての胎児プローブを描いているブロック線図である。
【
図2A】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児を有する母体腹部内の組織の層についての例示的寸法の説明図を提供している。
【
図2B】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児を有する異なる母体腹部内の組織の層についての例示的寸法の説明図を提供している。
【
図3】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児プローブがその上に位置決めされた状態の妊娠哺乳動物の腹部の正中矢状平面図を提供している。
【
図4】本発明の幾つかの実施形態による、胎児ヘモグロビンについての酸素飽和度のレベルを求めるためのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の幾つかの実施形態による、胎児信号を生成するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の幾つかの実施形態による、胎児信号を生成するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の幾つかの実施形態による、胎児信号を生成するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の幾つかの実施形態による、胎児信号を生成するための及び/又は妊娠哺乳動物の羊水中に胎便が存在するかどうかを判定するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の幾つかの実施形態に一致する、ここに開示されているプロセスのためのデータを記憶し及び/又は命令を実行する或る例示としてのプロセッサベースのシステムのブロック線図である。
【
図10】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図11】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図12】本発明の幾つかの実施形態に一致する、パルスオキシメータについての複数比のうちの個別化された比(R)値を求めるためのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図13】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビンについての酸素飽和度のレベルを求めるためのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図14A】本発明の幾つかの実施形態に一致する、妊娠哺乳動物の腹部との接触時に短い距離間隔における信号と長い距離間隔における信号を検出するように構成された或る例示としての胎児プローブを描いており、母体腹部の諸層は単一層として描写されている。
【
図14B】本発明の幾つかの実施形態に一致する、妊娠哺乳動物の腹部との接触時に短い距離間隔における信号と長い距離間隔における信号を検出するように構成された或る例示としての胎児プローブを描いており、母体組織の異なる諸層を示している。
【
図15A】本発明の幾つかの実施形態に一致する、妊娠哺乳動物の腹部との接触時に2つの短い距離間隔における信号と1つの長い距離間隔における信号を検出するように構成された或る例示としての胎児プローブを描いており、母体腹部の諸層は単一層として描写されている。
【
図15B】本発明の幾つかの実施形態に一致する、妊娠哺乳動物の腹部との接触時に2つの短い距離間隔における信号と1つの長い距離間隔における信号を検出するように構成された或る例示としての胎児プローブを描いており、母体腹部の諸層のそれぞれが示されている。
【
図16】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるのに使用され得る胎児信号を生成するべく短い距離間隔における信号のセットを使用するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図17】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるのに使用され得る胎児信号を生成するべく2つの短い距離間隔における計測値を使用するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図18】本発明の幾つかの実施形態に一致する、拡散光トモグラフィ(DOT)を使用して妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児の画像を生成し、画像から胎児組織酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図19】本発明の幾つかの実施形態に一致する、DOTを使用して妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児の画像を生成し、画像から胎児組織酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図20】本発明の幾つかの実施形態による、マルチソース周波数ドメインスペクトロメータを使用して非侵襲的に胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるためのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図21】本発明の幾つかの実施形態に一致する、受信された時間ドメイン拡散イメージング相関スペクトロスコピー(TD-DCS)信号を処理して胎児信号を生成するための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図22】本発明の幾つかの実施形態に一致する、胎児血流の示度及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセスを説明するフローチャートである。
【
図23】
図8中のステップ1815の実行を介して生成される画像2300の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書には、経腹的な胎児オキシメトリ(酸素飽和度測定)、胎児パルスオキシメトリ、及び拡散光トモグラフィ(DOT)を遂行するためのシステム、デバイス、及び方法が記載されている。胎児オキシメトリ及び/又は胎児パルスオキシメトリの出力は、胎児の血液の酸素飽和度のレベル(本明細書では「胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベル」及び「酸素飽和度レベル」とも呼ばれる)であり、これはまた胎児の血液中に存在するヘモグロビンで酸素へ結合されているヘモグロビンのパーセンテージと理解されてもよい。DOTの出力は、胎児の組織(例えば脳、皮膚、筋肉など)の酸素飽和度のレベルである。胎児の血液の酸素飽和度レベル及び/又は胎児組織酸素化レベルは、胎児の健康を評定するために(例えば訓練を受けた医療専門家によって)使用されるとともに、例えば、分娩及び娩出過程、子宮内胎児処置、及び/又は妊娠哺乳動物に施される処置又は治療の間に被る可能性のある酸素欠乏ストレスのレベルを評定するのにも使用されることがある。典型的には、胎児血液については酸素飽和度の値は30%~60%の範囲内に入り、30%より低ければ胎児が切迫仮死にあることが示唆される。時として、酸素飽和度レベルは、光が母体組織及び/又は胎児組織をどのように通過するかについての指標を提供する複数の比のうちの所定の比(「R」)を使用して求められてもよい。
【0027】
従来、パルスオキシメトリは、それぞれが異なる波長又は異なる波長範囲である2つの異なる光のビームを使用することによって遂行されている。多くの場合、赤色スペクトル内の光のビームと近赤外(NIR)内の光のビームが使用されるか、又はNIRスペクトル内の2つのビームが使用される。これら2つの波長は、組織透過時の異なる経路長(即ち組織の中への浸透の深さ)を有しており、経路長(l1又はl2)に関係づけられる較正係数と共に勘案されなくてはならない。従来、標準的な較正係数はパルスオキシメトリ機器について機器製造者によって提供されている。一方で、その様な標準的な較正係数の使用は、指や耳たぶの場合の様に(厚さ、組成などが)比較的均質である組織を光が通過するという状況ではうまくいくが、(妊娠哺乳動物の腹部の場合の様に)組織が不均質である場合、この標準的な較正係数を使用してなされる計算の堅牢性は下がり、生成される値の正確さの信頼度は受容可能なレベルより下に落ちることもある。
【0028】
但し、光ビームの波長が組織を通る光の経路長を決めるのであるから、2つの光のビームの波長同士が十分に近ければ、個々それぞれのビームについての経路長は、オキシメトリ計算に対する経路長の効果がゼロ又はほぼゼロ近くまで小さくなるよう十分に互いに似通ったものとなるだろう。これは、本明細書に記載されている胎児ヘモグロビン酸素飽和度の決定に寄与するオキシメトリ計算をより正確でより遂行しやすいものにするだろう。
【0029】
胎児ヘモグロビン酸素飽和度は様々なやり方で求められ、例えば本明細書に開示されている様々な入力及び方程式の例を使用して求められてもよい。これらの例は解説として提供されており限定としてではない。幾つかの実施形態では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求める2つ又はそれ以上の方法が、例えばより精度の高い胎児ヘモグロビン酸素飽和度を実現するように、及び/又は、信頼度及び/又は統計学的堅牢さの高いレベルを有する胎児ヘモグロビン酸素飽和度値を実現するように、組み合わされてもよい。幾つかの事例では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度はオキシメトリを介して求められ、また他の事例では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度はパルスオキシメトリを使用して求められてもよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、胎児組織の酸素飽和度を求めるのに拡散光トモグラフィ(断層撮影)即ちDOT(Diffuse Optical Tomography)が使用されることもある。DOTは、組織の光吸収特性及び光散乱特性における空間的時間的ばらつき及び酸素濃度の局所的ばらつきを計測するのに使用され得る組織画像化技法である。これらの計測値に基づき、例えばモデルベースの再構成アルゴリズムを使用して、総酸素濃度やどのように組織又は細胞が入射光を散乱させるのかという様な組織の特性の空間的マップを得ることができる。本明細書に開示されている実施形態では、画像化される組織は、母体の腹部組織並びに限定するわけではないが胎児の皮膚、筋肉、及び/又は脳組織を含む胎児組織である。
【0031】
DOTは、低エネルギー電磁放射(典型的にはNIR光)を身体の表面の1つ又はそれ以上の場所へ投射し、1つ又はそれ以上の光電気検出器によって検出される透過光及び/又は後方反射光の強度(例えば光子の数)を計測することによって遂行されてもよい。DOTシステムは、典型的には、複数のレーザ(例えば同期ピコ秒パルス式ダイオードレーザ)又は1つ又はそれ以上のレーザへ連結された光ファイバと、複数の高感度光電検出器(例えば単一光子感応検出器)と、光電検出器の出力を処理するように構成されたプロセッサとを含んでいる。複数のレーザ又は光ファイバと光電検出器は、妊娠哺乳動物の腹部の中の胎児を画像化することができるように腹部の部分をカバーし沿うように構成されたアレイ状に配置されていてもよい。
【0032】
入射レーザ光又はパルスが腹部に進入すると、それらは母体組織層及び胎児組織層によって拡げられ減衰し、これらの組織層からの入射光の反射及び/又はこれらの組織を通過する光は光検出器によって検出されることになる。次いで、検出された光/光子の特性(例えば形状、飛行時間、検出の場所、パワー、強度など)が、検討中の組織(例えば胎児組織)の画像を生成するために分析される。分析は物理モデル(例えば母体腹部についての組織層のモデルであり、それは一般モデル又は検討中の妊娠哺乳動物に固有のモデルであってもよい)の適用を含んでもよい。多くの場合、組織を通る光の伝播は、組織の散乱特性及び吸収特性に依存し、又は組織の特定の層に依存する(複数層の画像化時)。この散乱の効果は、例えば、検出される光/光子に対し散乱係数、吸収係数、及び他の特性を採用したモデルの使用を通して理解されることができるだろう。それは組織の特定の種類(例えば脂肪、皮膚、筋肉など)に固有であってもよい。幾つかの事例では、散乱係数及び/又は吸収係数は、検討中の特定の妊娠哺乳動物及び/又は胎児に固有であってもよい。
【0033】
幾つかの実施形態では、胎児の健康の指標及び/又は胎児アシドーシスの可能性の指標であると解釈され得る胎児組織酸素飽和度を求めるため、胎児を表現した画像の諸部分の酸素濃度を調べるべく母体腹部を画像化するのにDOTが使用されてもよい。胎児の場所が(例えば超音波を通して)知られている一部の事例では、DOT画像の胎児の場所に対応している部分のみが、胎児組織酸素飽和度のレベルを求めるのに検討されてもよい。幾つかの実施形態では、DOT画像及び/又はDOTを介して集められた他の情報で母体組織に対応している部分は無視されてもよい。他の実施形態では、DOT画像及び/又はDOTを介して集められた他の情報で母体組織に対応している部分は、DOT画像及び/又はDOTを介して集められた他の情報で胎児組織に対応している部分をDOT画像及び/又はDOTを介して集められた他の情報で母親に対応している部分から分離するのに使用されてもよい。
【0034】
追加的又は代替的に、胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求めるのに拡散イメージング相関スペクトロスコピー(DCS: diffuse imaging correlation spectroscopy)が使用されてもよい。DCSは、光を被写体へ投射し、被写体から(例えば透過及び/又は後方散乱を介して)出射する光を光検出器によって検出するという画像化技法である。出射光/光子の分析(例えば動いている血液細胞によって生じ得る組織から出現する明視野(light field)の時間的変動の定量化)は、例えば被写体の血流及び/又はヘモグロビン酸素化の決定を可能にするだろう。往々にして、関心領域に重なる組織(例えば皮膚、筋肉、脂肪など)が信号を交絡させないとも限らない。本発明に関しては、関心領域は母体腹部内の胎児であり、DCSシステムと胎児の間に位置する母体組織の諸層の交絡効果は望ましくない。母体組織の交絡効果を軽減する方途は、時間ドメイン(TD)DCSシステム(TD-DCS)を使用することである。
【0035】
TDシステムが使用される場合、DCSは、短い(例えば10ps~50psの)光パルスを用い、それを例えば100MHzと1000MHzの間の周波数で正弦波変調させ、例えば1MHz~50MHzの繰返し率で妊娠哺乳動物の腹部に投射することにより遂行されてもよい。これらのパルスは、画像化される組織内部に光子密度波を現出させるだろう。そこから、入射光と被検出光の間の振幅差及び位相シフトを時間の関数として求めることができる。発せられた光子(例えば後方散乱又は透過した)は次いで光ファイバによって収集され、検出器(例えば光電子倍増管)へ案内されるか又はマイクロチャネルプレート光電子倍増管(MCP-PMT)である検出器によって直接検出されることになる。次いでMCP-PMT信号が増幅され及び/又は減衰され、コンスタントフラクション弁別器(CFD:Constant Fraction Discriminator)へ入力され、その出力が時間-振幅変換器(TAC)へ提供されるようになっていてもよい。TACの出力は、パルス-高さ分析器(PHA)によって個別イベントとして数えられ、ピークカウント(例えば100,000カウント、1,000,000カウントなど)に達するまで累積されることになる。この情報は、妊娠哺乳動物の腹部の画像を生成するために及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求めるために用いられる時間応答曲線を生成するのに使用することができる。
【0036】
DCS計装は、3つの主要な構成要素、つまり、光を組織へ送達するようにNIRで動作する長いコヒーレンス長さ(>5m)のレーザと、受信される光子1つ1つについて電子パルスを出力する単一光子計数型アバランシェフォトダイオード(APD)検出器と、APDによって検出される全ての光子の到着時間を追跡し、全ての光子対の時間的隔たりから強度相関関数を導出する光子相関器と、から成る。相関器は、ハードウェアであってもよく、及び/又は時間的相関関数のソフトウェア演算処理であってもよい。
【0037】
本明細書に開示されているシステム、デバイス、及び方法は、妊娠中の及び/又は分娩及び娩出過程中の胎児の健康をモニターするのに使用することができる。追加的又は代替的に、本明細書に開示されているシステム、デバイス、及び方法は、妊娠哺乳動物がストレスを受けている及び/又は妊娠に関係があるかないかに関わらず医療処置を受けている間の胎児の健康をモニターするのに使用することができる。追加的又は代替的に、本明細書に開示されているシステム、デバイス、及び方法は、子宮内胎児処置(例えば羊水穿刺又は手術)中の胎児の健康をモニターするのに使用することができる。
【0038】
図1Aは、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを検出し及び/又は求めるための或る例示としてのシステム100を提供している。システム100の諸構成要素はワイヤード及び/又はワイヤレスの通信リンクを介して一体に連結されていてもよい。幾つかの事例では、システム100の1つ又はそれ以上の構成要素のワイヤレス通信は、以下に説明されている様に、比較的短い距離を跨いで通信するように設計されている近距離ワイヤレス通信プロトコル(例えばBLUETOOTH(登録商標)、ニアフィールド通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、及びWi-Fi)を、例えばコンピュータ又はパーソナル電子機器(例えばタブレットコンピュータ又はスマートフォン)と共に使用して可能にすることができる。
【0039】
システム100は、光源105と検出器160を含み、それらは、場合により、胎児プローブ115と呼ばれる単一のハウジングに収容されていてもよい。光源105は単一光源又は複数光源を含むことができ、検出器160は単一検出器又は複数検出器を含むことができる。
【0040】
光源105は、光を、NIRを含む1つ又はそれ以上の波長の光で、妊娠哺乳動物の腹部へ送る。典型的には、光源105によって発せられる光は、妊娠哺乳動物の腹部への進入時の光の拡がりを抑えるために集束され又は細いビームとして発せられるだろう。光源105は、例えば、LEDであってもよいし、及び/又は、光ファイバケーブルへ連結されているレーザ、調整可能な電球、及び/又は調整可能なLEDであってもよい。場合により、光源は、光学的にレーザへ連結されていてアレイ状に配置されている1つ又はそれ以上の光ファイバケーブルであってもよい。一部の事例では、光源105は調整可能であるか若しくはユーザが構成できるようになっているのに対し、他の事例では、光源の1つ又はそれ以上が事前に定義された波長範囲内の光を発するように構成可能であってもよい。追加的又は代替的に、1つ又はそれ以上のフィルタ(図示せず)及び/又は偏光器が、光源105によって発せられる光をフィルタリング/偏光して1つ又はそれ以上の好適な波長にさせることもできる。これらのフィルタ/偏光器も調整可能であるか又はユーザが構成できるようになっていてもよい。
【0041】
或る例示としての光源105は、比較的小さいフォームファクタを有し高効率で動作するようになっていて、空間を節約する及び/又は光源105によって発せられる熱を制限するのに役立つだろう。1つの実施形態では、光源105は770nm~850nmの範囲の光を発するように構成されている。光源についての一例としてのフラックス比は、限定するわけではないが175mW~260mWの光束/放射束、300mW~550mWの全放射束、及び0.6W~3.5Wの電力定格を含む。
【0042】
検出器160は、妊娠哺乳動物及び/又は胎児から、例えば透過及び/又は後方散乱を介して発せられる光信号を検出するように構成されることができる。検出器160は、この光信号を電子信号へ変換し、電子信号はコンピュータ又はプロセッサへ伝達され、及び/又はコンピュータ/プロセッサへ信号を伝達することのできるオンボードトランシーバへ伝達されることになる。この発せられた光は、次いで、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めることができるように、様々な波長のどれほど多くの光が胎児を通過したか、及び/又は、様々な波長のどれほど多くの光が胎児酸素化ヘモグロビン及び/又は脱酸素化ヘモグロビンによって反射及び/又は吸収されたかを求めるために処理されることができる。この処理は後段で更に詳しく論じられている。幾つかの実施形態では、検出器160は単一光子を検出/計数するように構成されていてもよい。
【0043】
例示としての検出器は、限定するわけではないが、カメラ、従来式光電子倍増管(PMT)、シリコンPMT、アバランシェフォトダイオード、及びシリコンフォトダイオードを含む。幾つかの実施形態では、検出器は比較的低費用(例えば50ドル以下)、低電圧要件(例えば100ボルト未満)、及び非ガラス(例えばプラスチック)というフォームファクタを有しているだろう。他の実施形態では、(例えば非接触パルスオキシメトリ)高感度カメラが妊娠哺乳動物の腹部によって発せられる光を受け取るように配備されてもよい。例えば、検出器160は、胎児心筋収縮に伴う心臓血管圧力の変化によって生じる胎児皮膚の色調の細かい変化を捕捉するように適合された高感度カメラであってもよい。これらの実施形態では、検出器160及び/又は胎児プローブ115は、妊娠哺乳動物の腹部と接触していてもよいし又は接触していなくてもよく、接触しない実施形態はいわゆる非接触パルスオキシメトリを遂行するために使用されるだろう。これらの実施形態では、検出器160が妊娠哺乳動物の腹部及び胎児によって発せられる光を受信/検出できるように、光源105は妊娠哺乳動物の腹部に向かって方向決めされた光(例えば可視スペクトル、近赤外などの光)を提供するように適合されてもよい。検出器160によって捕捉される発せられた光は、例えば本明細書に記載されているプロセスのうちの1つ又はそれ以上に従って画像を胎児ヘモグロビン酸素飽和度の計測値へ変換する処理のためにコンピュータ150へ伝達されることができる。
【0044】
胎児プローブ115、光源105、及び/又は検出器160は、何れの適切なサイズであってもよく、また状況によっては、妊娠哺乳動物のサイズに適応するように何れかの適切なサイジングシステム(例えばウエストサイズ及び/又は小、中、大など)を使用してサイズ設定されていてもよい。胎児プローブ115の例示としての長さは、4cm~40cmの長さ及び2cm~10cmの幅を含む。状況によっては、胎児プローブ115又はその構成要素のサイズ及び/又は構成は、妊娠哺乳動物及び/又は胎児の皮膚色素沈着に応じたものであってもよい。幾つかの事例では、胎児プローブ115は、機構(例えばスナップ、ループなど)(図示せず)と協働するテープ又はストラップを介して妊娠哺乳動物の皮膚へ適用されるようになっていてもよい。幾つかの事例では、胎児プローブ115は、被検出信号を前処理又はフィルタリングするよう機能することができる。
【0045】
システム100は、母体及び/又は胎児の健康の様々な態様をモニターするように設計された複数の随意的な独立センサ/プローブを含んでおり、妊娠哺乳動物と接触するようになっていてもよい。これらのプローブ/センサは、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、及び子宮収縮計測デバイス140である。システム100の全ての実施形態がこれらの構成要素全てを含むとは限らない。幾つかの実施形態では、システム100は、更に、妊娠哺乳動物及び/又は胎児の心拍数を求めるのに使用することのできる心電図(ECG)機械(図示せず)、及び/又は、胎児の心拍数を求めるのに使用することのできる子宮内パルスオキシメトリプローブ(図示せず)を含んでいてもよい。ドップラー及び/又は超音波プローブ135は、妊娠哺乳動物の腹部上に設置されるように構成されていて、銀の米ドル硬貨に近似するサイズ及び形状であり、胎児の位置、向き、及び/又は心拍数に関する情報を提供することができる。パルスオキシメトリプローブ130は、妊娠哺乳動物ヘモグロビン酸素飽和度を計測するために妊娠哺乳動物の手及び/又は手指上に設置される従来式パルスオキシメトリプローブであってもよい。NIRS成体ヘモグロビンプローブ125は、例えば妊娠哺乳動物の第二指上に設置され、例えば成体酸素化ヘモグロビン対成体脱酸素化ヘモグロビンの比を計算するために近赤外スペクトロスコピーを使用するように構成されていてもよい。NIRS成体ヘモグロビンプローブ125は、更に妊娠哺乳動物の心拍数を求めるのに使用されてもよい。
【0046】
随意的に、システム100は、妊娠哺乳動物の子宮収縮の強さ及び/又はタイミングを計測するように構成された子宮収縮計測デバイス140を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、子宮収縮は、経時的な圧力(例えばmmHgで計測)の関数として子宮収縮計測デバイス140によって計測されるだろう。幾つかの事例では、子宮収縮計測デバイス140は、子宮活動を計測するべく腹部輪郭の変化を検出する圧力感知区域を含む器械であってこのやり方で収縮の頻度及び持続時間をモニターするトコトランスデューサである及び/又はトコトランスデューサを含んでいる。
【0047】
別の実施形態では、子宮収縮計測デバイス140は、妊娠哺乳動物に電流を通し、子宮が収縮する毎に電流の変化を計測するように構成されていてもよい。追加的又は代替的に、子宮収縮は、更に、近赤外スペクトロスコピーを介し、例えば検出器160によって受信/検出される光を使用して計測されることもでき、というのも筋収縮である子宮収縮は収縮状態と弛緩状態の間の子宮筋の振動であるからだ。これらの両方の段階中は、子宮筋の酸素消費量が異なり、これらの差はNIRSを使用して検出可能であるだろう。
【0048】
NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、及び/又は子宮収縮計測デバイス140からの計測値及び/又は信号は、コンピュータ150への伝達及びディスプレイデバイス155上の表示のために受信器145へ伝達されてもよく、それら計測値及び/又は信号は幾つかの事例では二次的信号と考えられてもよい。以下に論じられている様に、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、子宮収縮計測デバイス140によって提供される計測値は、母体パルス信号及び/又は母体心拍数から胎児パルス信号及び/又は胎児心拍数を単離するために胎児プローブ115と関連づけて使用されてもよい。受信器145は、限定するわけではないが胎児プローブ115、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、及び/又は子宮収縮計測デバイス140を含むシステム100の1つ又はそれ以上の構成要素からの信号及び/又はデータを受信するように構成されていてもよい。受信器145とシステムの他の構成要素との通信は、ワイヤード通信又はワイヤレス通信を使用して行うことができる。
【0049】
幾つかの事例では、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、子宮収縮計測デバイス140のうちの1つ又はそれ以上は、計測値を例えばユーザへ又は医学的治療提供者へ提供する専用のディスプレイを含んでいてもよい。これらのプローブ全てがあらゆる事例で用いられるとは限らない、ということに留意することが肝心である。例えば、妊娠哺乳動物が病院又は治療施設以外の環境(例えば自宅又は職場)で胎児プローブ115を使用しようとする場合、プローブ(例えばNIRS成体ヘモグロビンプローブ125、パルスオキシメトリプローブ130、ドップラー及び/又は超音波プローブ135、子宮収縮計測デバイス140)のうちの幾つかは使用されない可能性がある。
【0050】
幾つかの事例では、受信器145は、例えば、信号をコンピュータ150と互換性のあるものにする(例えば光信号を電気信号へ変換する)、信号対ノイズ比(SNR)を改善する、受信された信号を増幅するなどのために、受信された信号を前処理するように構成されていてもよい。幾つかの事例では、受信器145は、コンピュータ150の構成要素内に常在していてもよい。幾つかの実施形態では、コンピュータ150は、受信された被検出信号を増幅するか又はそれ以外にコンディショニングして例えば信号対ノイズ比を改善することができる。
【0051】
受信器145は、受信された、前処理された、及び/又は処理された信号をコンピュータ150へ伝達するようになっていてもよい。コンピュータ150は、以下に更に詳しく論じられている様に受信された信号を処理し、ディスプレイデバイス155への結果の提供を容易にするよう機能することができる。例示としてのコンピュータ150は、デスクトップコンピュータ及びラップトップコンピュータ、サーバ、タブレットコンピュータ、パーソナル電子デバイス、モバイルデバイス(例えばスマートフォン)などを含む。例示としてのディスプレイデバイス155は、コンピュータモニタ、タブレットコンピュータデバイス、及びシステム100の構成要素の1つ又はそれ以上によって提供されるディスプレイである。幾つかの事例では、ディスプレイデバイス155は受信器145及び/又はコンピュータ150に常駐していてもよい。コンピュータ150は、データベース170へ通信可能に連結されていてもよく、データベース170は、妊娠哺乳動物及び/又はその胎児の生理学的特性及び/又は生理学的特性の組合せ、光の振る舞いに対する生理学的特性の影響、ヘモグロビン酸素飽和度レベルの計算に関する情報、較正係数、などを記憶するように構成されていてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、妊娠哺乳動物は、例えば電気アイソレータ120によって、システム100の1つ又はそれ以上の構成要素から電気的に絶縁されていてもよい。例示としての電気アイソレータ120は、サーキットブレーカ、地絡スイッチ、及びヒューズを含む。
【0053】
幾つかの実施形態では、システム100は、妊娠哺乳動物の心拍数及び/又はパルスの特性を確定するように及び/又は妊娠哺乳動物の心拍数及び/又はパルスを計測するように構成された心電図(ECG)機械175を含んでいてもよい。これらの特性は、例えば本明細書に開示されている二次的信号及び/又は母体心拍数信号として使用されてもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、システム100は、妊娠哺乳動物の呼吸速度をモニターし、妊娠哺乳動物の呼吸速度を示す呼吸信号を例えばコンピュータ150へ提供するように構成され得る換気/呼吸信号源180を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、換気/呼吸信号源180は、例えば換気機械との協働を介して得られる換気信号の源であってもよい。例示としての換気/呼吸信号源180は、限定するわけではないが二酸化炭素計測デバイス、聴診器、及び/又は電子音響聴診器、妊娠哺乳動物について胸部運動(chest excursion)を計測するデバイス、及びパルスオキシメータを含む。パルスオキシメータからの信号が分析されて、妊娠哺乳動物について呼吸に対応するPPG信号のばらつきが求められてもよい。追加的又は代替的に、換気/呼吸信号源180は、例えば外科処置中にガス(例えば空気、麻酔薬など)が妊娠哺乳動物へ提供される頻度に対応した呼吸信号を提供するようになっていてもよい。この呼吸信号は、例えば妊娠哺乳動物についての呼吸数を求めるのに使用されてもよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、システム100はタイムスタンプ刻印デバイス185を含んでいてもよい。タイムスタンプ刻印デバイス185は、例えば胎児プローブ115、ドップラー/超音波プローブ135、パルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ、子宮収縮計測デバイス140、ECG175、及び/又は換気/呼吸信号源180によって提供される信号に、例えばイベント(例えば時間又はt、=0、10、20など)及び/又は年代順の時間(例えば日付と時刻)を表現するタイムスタンプを刻印するように構成されていてもよい。タイムスタンプ刻印デバイス185は、例えば接地信号をシステム100へ導入することを介して信号にタイムスタンプを刻印するようになっていて、例えば胎児プローブ115、ドップラー/超音波プローブ135、パルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ、子宮収縮計測デバイス140、ECG175、及び/又は換気/呼吸信号源180のうちの1つ又はそれ以上によって生成される信号へ同時に又はほぼ同時に割り込むか又はそれ以外のやり方でスタンプ又は他の指標を導入するようになっていてもよい。追加的又は代替的に、タイムスタンプ刻印デバイス185は、例えば光信号をシステム100へ導入することを介して信号にタイムスタンプを刻印するようになっていて、例えば胎児プローブ115、パルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ、子宮収縮計測デバイス140のうちの1つ又はそれ以上によって生成される信号へ同時に又はほぼ同時に割り込むか又はそれ以外のやり方でスタンプ又は他の指標を導入するようになっていてもよい。追加的又は代替的に、タイムスタンプ刻印デバイス185は、例えば音響信号をシステム100へ導入することを介して信号にタイムスタンプを刻印するようになっていて、例えば胎児プローブ115、ドップラー/超音波プローブ135、及び/又は換気/呼吸信号源180のうちの1つ又はそれ以上によって生成される信号へ同時に又はほぼ同時に割り込むか又はそれ以外にやり方でスタンプ又は他の指標を導入するようになっていてもよい。
【0056】
タイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されるタイムスタンプは、例えば胎児プローブ115、ドップラー/超音波プローブ135、パルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ、子宮収縮計測デバイス140、ECG175、及び/又は換気/呼吸信号源180からの信号を処理する、計測する、同期させる、相関づける、及び/又は分析するための、同時又はほぼ同時の開始点又はベンチマークの働きをすることができる。幾つかの事例では、タイムスタンプは、例えば胎児プローブ115、ドップラー/超音波プローブ135、パルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ、子宮収縮計測デバイス140、ECG175、及び/又は換気/呼吸信号源180によって生成される2つ又はそれ以上の信号が例えば時間ドメインで整列するように信号同士を相関づける及び/又は同期させるために使用することができる。
【0057】
図1Bは、例示的なアレイ状に配置された光源及び複数の検出器を収容しているハウジング111を有する或る例示としての胎児プローブ115Aを描いているブロック線図である。ハウジング111は、光源及び複数の検出器向けに構成された何れのハウジングであってもよく、一部の事例では、電源121(例えばバッテリ)、通信デバイス(例えばアンテナ)、プロセッサ151、パワーポート141、及び/又は通信ポート131を含んでいてもよい。例示としての胎児プローブ115Aは、X軸に沿って4つの検出器160A-160Dと実質的に整列した光源105を含んでいる。幾つかの実施形態では、検出器160A-160Dのゲイン又は感度は、例えば光源105からより遠く離れた位置にある検出器がより大きなゲイン/感度を有するように、光源105に対する個々の位置と共に変わってもよい。
【0058】
1つの実施例では、胎児プローブ115Aは、735nm、760nm、810nm、及び850nmの様な複数の波長の光を発するように構成された光源105を含んでおり、検出器160A-160Dのそれぞれはこれらの波長のそれぞれの光/光子を検出するように構成されていてもよい。光源105と検出器160Aの間の例示的距離は3cmであり、光源105と検出器160Bの間の例示的距離は5cmであり、光源105と検出器160Cの間の例示的距離は7cmであり、光源105と検出器160Dの間の例示的距離は10cmである。
【0059】
図1Cは、例示的なアレイ状に配置された複数の光源及び複数の検出器を有する或る例示としての胎児プローブ115A’を描いているブロック線図である。例示としての胎児プローブ115A’は、X軸に沿って互いに実質的に整列した3つの光源105を一行含んでおり、光源105より上に9つの検出器160T-160Q及び160E-160Iが3行3列に配置され、光源105より下に9つ検出器160J-160Sが3行3列に配置されている。幾つかの実施形態では、検出器160E-160S及び160T-160Qのゲイン又は感度は、例えば光源105からより遠く離れた位置にある検出器がより大きなゲイン/感度を有するように、光源105に対する個々の位置と共に変わってもよい。
【0060】
図1B及び
図1Cの光源と検出器の配列は、単に一例として提供されているものであり、光源105及び/又は検出器160のアレイを限定する意図はない。光信号を検出し、それらを本明細書に論じられている(単数又は複数の)被検出電子信号へ変換するのに光源と検出器の何れの配列が使用されてもよい。
【0061】
図2A及び
図2Bは、2つの異なる母体腹部に存在する組織の層の説明
図201及び202をそれぞれ提供しており、説明図には各自の胎児が含まれている。説明
図201及び202を生成するのに使用される情報は、例えば超音波画像化デバイス(例えばドップラー/超音波プローブ135)及び/又はMRI画像から受信されてもよい。
【0062】
説明
図201及び202は、胎児プローブ115の設置位置に近接して位置する母体組織の層並びに胎児について、各妊娠哺乳動物の腹部内の胎児の深さを含め、例示としての寸法を提供している。胎児の深さは、例えば、妊娠哺乳動物の表皮と胎児の表皮の間の距離及び/又は母体組織層と羊水を合わせた幅であると理解されてもよい。説明
図201は、妊娠29週に達した胎児についての母体腹部組織を示している。説明
図201に示されている組織の層は、皮下脂肪層205A、腹筋(骨格筋)層210A、腹腔内脂肪層215A、子宮壁(平滑筋)層220A、羊水層225A、及び胎児230Aを含んでいる。これらの層それぞれの幅についての計測値は、胎児プローブ115に近接した(例えば真下の)位置にて取られている。どこで幅計測値が取られたかについての大凡の場所は関心層の上面と下面をつなぐ線によって表されている。例えば
図2Aでは、皮下脂肪層205Aの幅が線1で表され、腹筋層210の幅が線2で表され、腹腔内脂肪層215Aの幅が線3で表され、子宮壁層220Aの幅が線4で表され、羊水層225Aの幅が線5で表されている。胎児プローブ115に近接して(例えば真下に)位置する母体組織のこれらの層についての近似寸法は以下の通りであり、
皮下脂肪層205A:10.2mm(線1によって表現);
腹筋層210A:7.1mm(線2によって表現);
腹腔内脂肪層215A:2.0mm(線3によって表現);
子宮壁層220A:3.1mm(線4によって表現);
羊水層225A:3.6mm(線5によって表現);及び
胎児230A、である。
この例では、母体表皮から胎児230Aの表皮までの総距離(即ち胎児の深さ)は28mmである。
【0063】
図2Bの説明
図202に示されている胎児は妊娠35週に達している。説明
図202に示されている組織の層は、皮下脂肪層205B、腹筋(骨格筋)層210B、腹腔内脂肪層215B、子宮壁(平滑筋)層220B、及び胎児230Bを含んでいる。これらの層それぞれの幅についての計測値は、胎児プローブ115に近接した(例えば真下の)位置にて取られている。どこで幅計測値が取られたかについての大凡の場所は関心層の上面と下面をつなぐ線によって表されている。例えば
図2Bでは、皮下脂肪層205Bの幅が線1で表され、腹筋層210の幅が線2で表され、腹腔内脂肪層215Bの幅が線3で表され、子宮壁層220Bの幅が線4で表されている。胎児プローブ115に近接して(例えば真下に)位置する母体組織の層についての近似寸法は以下の通りであり、
皮下脂肪層205B:11.3mm(線1によって表現);
腹筋層210B:3.1mm(線2によって表現);
腹腔内脂肪層215B:3.1mm(線3によって表現);
子宮壁層220B:2.3mm(線4によって表現);及び、
胎児230B、である。
【0064】
この例では、母体の皮膚から胎児までの総距離(即ち胎児の深さ)は19.8mmである。妊娠35週では胎児はより発育していてより大きいので、羊水の幅は無視できるほどであり、この例には含まれていない。加えて、説明
図201及び202について、妊娠哺乳動物の皮膚の幅も大凡1mm~1.5mmで無視できるほどである。
【0065】
幾つかの実施形態では、胎児230A及び/又は胎児層230Bは、1つ又はそれ以上の追加の層(図示せず)へ分割されてもよい。これらの層は、例えば、1つ又はそれ以上の胎脂、毛髪、皮膚、骨などに関連していてもよい。幾つかの実施形態では、これらの層の1つ又はそれ以上に関する情報(例えば胎児の皮膚のメラニン含有量及び/又は毛髪の色)が、例えば胎児の親子関係、胎児の遺伝子検査、及び/又は、例えばスコープ及び/又は経膣診察を介しての胎児の直接観察から推定されてもよい。
【0066】
図3は、胎児プローブ115がその上に位置決めされた状態の妊娠哺乳動物の腹部305の正中矢状平面図を描いている。
図3に示されている様に、妊娠哺乳動物の腹部305は、胎児310、子宮340、及び母体組織(例えば皮膚、筋肉など)330の近似を含んでいる。胎児プローブ115は、妊娠哺乳動物の腹部のどこにでも位置決めされることができ、場合により、1つより多い胎児プローブ115が妊娠哺乳動物の腹部上に設置されることもあるだろう。
図3は、更に、第1の光信号315が妊娠哺乳動物の腹部へ投射されていることを示しており、第1の光信号315の浸透の深さは子宮壁340の縁部までに限られていて、第1の光信号315は次いで後方散乱し又は透過して胎児プローブ115の検出器160の様な検出器へ入ってくる。
図3はまた、第2の光信号320が妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、検出器160によって検出される前に胎児310に浸透していることを示している。第1の光信号315及び/又は第2の光信号320は、例えば赤色、NIR、及び/又は広帯域スペクトル内とされ得る単一波長又は複数波長の光を含むことができる。第1の光信号315及び/又は第2の光信号320内に含まれる波長についての例示としての範囲は700nm~900nmの光を含む。幾つかの実施形態では、第1の光信号315及び/又は第2の光信号320は、2つ又はそれ以上の相異なる波長又は波長範囲の光、つまり一方が赤色で一方がNIRの光を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、第2の光信号320の(単数又は複数の)波長は、第1の光信号315とは異なっていてもよい。追加的又は代替的に、第1の光信号315及び第2の光信号320それぞれの被検出部分の処理中に第2の光信号320を第1の光信号315から区別できるように、第1の光信号315及び第2の光信号320は異なる時点にて妊娠哺乳動物の腹部に投射されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の光信号315と第2の光信号320は2つの相異なる波長又は波長範囲の光、つまり互いにわずかに異なる一方の赤色と一方のNIRの光を含んでいてもよい。例えば、第1の光信号315は赤色スペクトル内の波長の光を含み、第2の光信号320はNIRスペクトル内の波長の光を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、幾つかの実施形態では、第1の光信号315と第2の光信号320の波長は、各々の経路長の差が小さいか又は無視できるほどになるように選択されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の光信号315及び2の光信号320に含まれる2つ又はそれ以上の波長は、例えば、本明細書に幾つかの例が論じられている様にランベルト-ベールの方程式又は修正型ランベルト-ベールの方程式を用いた光信号の吸収及び/又は散乱における差を使用するパルスオキシメトリ計算のための入力とすることもできる。
【0067】
図4は、胎児モグロビンについて酸素飽和度のレベルを非侵襲的に求めるためのプロセス400を説明するフローチャートである。プロセス400は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0068】
最初に、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から出射する光信号に対応している被検出電子信号が、例えばコンピュータ150の様なコンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる(ステップ405)。光信号は、例えば光源105の様な1つ又はそれ以上の光源によって妊娠哺乳動物の腹部へ投射され例えば反射、後方散乱、及び/又は透過(即ち母体腹部を通過すること)を介して出射する1つ又はそれ以上の波長の光信号に対応しているとしてもよい。幾つかの実施形態では、光信号は、広帯域光信号(例えば白色光及び/又は10、15、又は20の波長の範囲)であり、受信される被検出信号は複数の波長の光信号に対応しているとしてもよい。妊娠哺乳動物の腹部から出る光信号は、光信号(場合により単一光子)を被検出電子信号である電子信号へ変換するように構成された検出器160の様な検出器によって検出されてもよい。時として、被検出電子信号は、光信号に対応する光の異なる波長について強度の規模を含んでいてもよい。次いで、検出器は、被検出電子信号をコンピュータ150の様なコンピュータに収納されているプロセッサヘ直接的及び/又は間接的に伝達することができる。
【0069】
(単数又は複数の)被検出電子信号に対応している(単数又は複数の)光信号は、例えば1つ又はそれ以上の単色光源、1つ又はそれ以上の広帯域光源であってもよい例えば光源105の様な光源によって生成される光の1つ又は複数の波長の光を含んでもよい。幾つかの実施形態では、(単数又は複数の)光信号はフィルタリングされ及び/又は偏光されてもよい。(単数又は複数の)光信号についての波長の例示としての範囲は600nmと1000nmの間である。
【0070】
随意的に、ステップ407にて、被検出電子信号は、例えば信号からノイズを除去するために、及び/又は例えば第1及び/又は第2の被検出電子信号への妊娠哺乳動物の解剖学的又は生理学的信号の交絡効果を除去するために、前処理されてもよい。前処理の実行は、限定するわけではないが、被検出電子信号へのフィルタリング技法の適用、被検出電子信号への増幅技法の適用、被検出電子信号へのロックインアンプの利用などを含む。ステップ407の前処理が被検出電子信号へのフィルタ(例えばバンドパス又はカルマン)の適用を含んでいるとき、フィルタリングは、例えば被検出電子信号を生成する機器及び/又は検出する機器によって発生する電子ノイズ、及び/又は一部の事例では妊娠哺乳動物へ連結されている環境機器によって発生する電子ノイズ、によって引き起こされ得る被検出信号中のノイズ又はハムを低減することができるだろう。場合により、ステップ407の前処理する段階は、母体組織及び/又は血液の光学的特性及び/又は酸素化を求めるための、例えば超音波画像及び/又はMRI画像に基づいた妊娠哺乳動物の組織及び/又は組織の層に関する情報を用いた被検出電子信号の分析、妊娠哺乳動物の短い距離間隔における分析(short separation analysis)、及び/又は妊娠哺乳動物の二重の短い距離間隔における分析を含むこともある。追加的又は代替的に、被検出電子信号は、拡散光トモグラフィ、周波数ドメインスペクトロスコピー、及び/又は時間ドメイン拡散相関スペクトロスコピーを使用して生成されてもよく、これらの技術の使用はステップ407の前処理を支援することができるだろう。
【0071】
ステップ410にて、胎児心拍数信号が例えばドップラー/超音波プローブ135から受信されることになる。幾つかの実施形態では、胎児心拍数信号は受信された被検出信号から導出されるようになっていてもよい。ステップ415にて、母体心拍数信号が例えばパルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、及び/又は血圧感知デバイスから受信されることになる。随意的に、ステップ420にて二次的信号が受信されてもよい。例示としての二次的信号は、限定するわけではないが、妊娠哺乳動物についての呼吸信号、妊娠哺乳動物についての換気信号、妊娠哺乳動物の羊水中に胎便が検出されたかどうかを示すこと、子宮緊張(uterine tone)を示す信号、妊娠哺乳動物のヘモグロビン酸素飽和度レベルを示す信号、妊娠哺乳動物のパルスオキシメトリ信号、及びそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では、呼吸信号は、妊娠哺乳動物へ空気、酸素、及び/又は他のガスを提供している換気デバイスから受信されてもよい。多くの場合、空気、酸素、及び/又は他のガスのこの送達は周期的な頻度で(例えば1秒毎、2秒毎、5秒毎に)起こり、この周期的な頻度は、随意的に換気が妊娠哺乳動物へ送達される時間(例えば時間=0秒、2秒、4秒など)と併せて、二次的信号とされてもよい。
【0072】
ステップ425にて、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号(受信される場合)を相関づける及び/又は同期させるかべきか否かが判定されることになる。幾つかの実施形態では、受信された被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号のうちの2つ又はそれ以上は、例えば、絶対時間(年代順の時間)と関連づけられる基準開始時間(例えば日付、時刻など)及び/又はそれぞれの受信される被検出電子信号、母体心拍数信号、胎児心拍数信号、及び/又は二次的信号をもたらす計測を取る同時開始点(例えば時間=0)の時間スタンプを刻印されるようになっていてもよい。このタイムスタンプ刻印は、ステップ425の同期化を援助することができるだろう。幾つかの実施形態では、タイムスタンプ刻印は、例えば、受信される被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号のうちの2つ又はそれ以上へ導入される電気的接地、光信号、及び/又は音響信号の形態を取っていてもよい。1つの実施例では、受信される被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号を計測及び/又は提供しているデバイスの動作時の電気的接地又他の割り込み(例えば意図的に導入される光学的及び/又は音響的なノイズ及び/又は制御信号のバースト)が同期化タイムスタンプとして動作することができる。このタイムスタンプは、異なる時間スケールで動作する異なるデバイスによって記録される信号のための時間的な同期点を提供する働きをするだろう。この同期化は2つ又はそれ以上の信号の整列を支援することができ、例えば、母体心拍数信号によって提供される心拍動を被検出電子信号の同時生成部分と整列させることができるので、被検出電子信号から胎児信号を単離するのに母体心拍数が用いられる実施形態では、被検出電子信号の正しい部分が適正な母体心拍数信号と整列されるのである。信号は、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によってタイムスタンプ刻印されてもよい。
【0073】
そうするべきという場合には同期化及び/又は相関プロセスが遂行されることになる(ステップ430)。場合により、ステップ430の実行は、時間ドメインでの信号の同期化及び/又は信号を記録させる計測の1つ又はそれ以上のスケールの相関を含んでもよい。
【0074】
追加的又は代替的に、幾つかの実施形態では、被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号は、年代順の時間(例えば時計又は多デバイス間で年代順の時間を同期させる他の方法によって決められる)をタイムスタンプ刻印されてもよい。追加的又は代替的に、幾つかの実施形態では、被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号は、単一事象(例えば被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号のそれぞれについての計測の同時開始)に対比的である相対時間をタイムスタンプ刻印されてもよい。追加的又は代替的に、被検出電子信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号を生成及び/又は伝達するのに使用される機器の計測タイムラグ又は他のタイミング的な特徴が、例えば開始時間を同期させるのに使用される、及び/又は異なる機器によって初期に受信/処理された信号を経時的に相関づけるのに使用されるようになっていてもよい。
【0075】
信号が同期され及び/又は相関づけられなくてもよいとされた場合、及び/又は同期化及び/又は相関づけの段階に続いて、プロセス400はステップ435へ進むことができる。ステップ435では、胎児信号が受信された信号のうちの2つ又はそれ以上を使用して生成され、2つの信号のうちの少なくとも一方は被検出電子信号とすることができる。幾つかの事例では、ステップ435の実行は、妊娠哺乳動物についての呼吸信号、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は1つ又はそれ以上の二次的信号を使用して、受信された被検出電子信号の胎児によって寄与されている信号部分の様な部分を単離する、増幅する、及び/又は抽出することを伴う。ステップ435で妊娠哺乳動物の呼吸信号が使用される場合、例えば1つ又はそれ以上の線形回帰方程式及び/又はモデルの利用を介して、それを被検出電子信号から減算及び/又は逆進(regress)させてもよい。
【0076】
例示としての方途であるステップ435に関する更なる詳細は本明細書で論じられ、
図3-
図6に提供されている。幾つかの実施形態では、ステップ430及び/又はステップ435の実行は、例えば信号対ノイズ比を小さくするため又は被検出電子信号の胎児に入射した光に対応している部分を増幅するための1つ又はそれ以上の手続きの実行を含んでもよい。これらのプロセスは、限定するわけではないが、フィルタの適用、既知のノイズ成分の減算、2つの信号の乗算、正規化、及び母体呼吸信号の除去を含む。幾つかの事例では、ステップ435の実行は、被検出信号の選好部分を増幅するように及び/又は被検出電子信号中のノイズを小さくするようにロックインアンプを用いて被検出電子信号を処理する段階を含んでいてもよい。信号の選好部分は、一部の事例では、妊娠哺乳動物の腹部へ入射した光の既知の数量(例えば波長又は周波数)に対応していてもよい。
【0077】
幾つかの実施形態では、胎児信号を生成するためのステップ435の実行は、例えば、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号使用して被検出電子信号をフィルタリングする段階を含んでいてもよい。1つの実施例では、胎児心拍数信号がステップ410で受信され、ステップ430で被検出電子信号と相関づけられることになる。そのとき、胎児心拍数に対応する又は近似する(例えば+/-5%、+/-10%、+/-15%、又は+/-20%である)周波数の範囲を捕捉するフィルタ(例えばバンドパス及び/又はカルマン)が被検出電子信号に適用されてもよく、その結果、被検出電子信号中に含まれる周波数で胎児心拍数(又はその近似)に対応していない全ての周波数が被検出電子信号から除去される。例えば胎児の心拍数が3Hzである場合、フィルタは信号の5Hzより上と1Hzより下の部分をフィルタリングで除くように設定されてもよい。別の例では、胎児の心拍数が3Hzである場合、フィルタは信号の4Hzより上と2Hzより下の部分をフィルタリングで除くように設定されてもよい。別の例では、胎児の心拍数が3Hzである場合、フィルタは信号の3.8Hzより上と2.2Hzより下の部分をフィルタリングで除くように設定されてもよい。
【0078】
追加的又は代替的に、別の実施例では、母体心拍数信号がステップ415で受信され、ステップ430で被検出電子信号と相関づけられることになる。そのとき、母体心拍数周波数に対応する又は近似する(例えば+/-10%、+/-15%、又は+/-20%である)周波数の範囲を捕捉するフィルタが被検出電子信号へ適用されてもよく、その結果、被検出電子信号中に含まれる周波数で母体心拍数(又はその近似)に対応する全ての周波数が被検出電子信号から除去される。
【0079】
追加的又は代替的に、別の実施例では、母体呼吸及び/又は換気信号の形態をしている二次的信号がステップ415で受信され、ステップ430で被検出電子信号と相関づけられることになる。そのとき、母体呼吸及び/又は換気周波数/信号に対応する又は近似する(例えば+/-5%、+/-10%、+/-15%、又は+/-20%である)周波数の範囲を捕捉するフィルタが被検出電子信号へ適用されてもよく、その結果、被検出電子信号中に含まれる周波数で母体呼吸及び/又は換気速度に対応する全ての周波数が被検出電子信号から除去される。
【0080】
幾つかの実施形態では、被検出電子信号からフィルタリングで除かれる周波数の範囲は、胎児心拍数、母体心拍数、及び/又は二次的信号がどれほど動的又は不規則であるかに応じたものであってもよく、その結果、例えば胎児信号の完全(又はほぼ完全)な範囲が単離され、及び/又は母体信号の完全(又はほぼ完全)な範囲が除去される。例えば60秒間隔のコースに亘って、胎児心拍数、母体心拍数、及び/又は二次的信号がほとんど変化しないなら、その場合、フィルタリング対象の周波数帯域は当該60秒間隔について比較的狭くてもよい。代わりに、別の例では、例えば60秒間隔のコースに亘って、胎児心拍数、母体心拍数、及び/又は二次的信号がほとんど変化しないなら、その場合、フィルタリング対象の周波数帯域は当該60秒間隔について比較的狭くてもよい。
【0081】
次いで、胎児信号は分析され、例えばベール-ランベルトの法則を胎児信号へ適用することによって、修正型ベール-ランベルトの法則(例えば本明細書に提供されている方程式を参照)を胎児信号へ適用することによって、及び/又は、胎児信号の成分(例えば光の強度、波長など)を一部の事例では実験的に求められている胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベル値に対応する既知の値と相関づけることによって、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルが求められてもよい(ステップ440)。次いで、ユーザ(例えば医師、看護師、又は患者)への胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベル値の示度の提供が、例えば、ディスプレイデバイス(例えばディスプレイデバイス155)へ又は例えばコンピュータ150によって提供されるコンピュータディスプレイへ又はデバイス(例えば胎児プローブ115)のスクリーンへ示度を提供することを介して容易にされてもよい(ステップ445)。
【0082】
図5は、胎児信号を生成するための或る例示としてのプロセス500を説明するフローチャートである。プロセス500は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0083】
ステップ425及び/又はステップ430の実行後、胎児心拍数信号は正規化され(ステップ505)、次いで正規化された胎児心拍数信号が被検出電子信号で乗算されて胎児信号が生成されてもよい(ステップ510)。幾つかの実施形態では、ステップ510で生成される胎児信号は「乗算信号(multiplied signal)」と呼ばれることもある。幾つかの実施形態では、ステップ505の正規化は、異なった値をより簡単に評価及び/又は分析できるように、1つ又はそれ以上の計測値の値及び/又は被検出電子信号の1つ又はそれ以上の成分(例えば光の異なる波長についての強度の規模)を調節して類似又は共通のスケールにする段階を含んでいてもよい。
【0084】
図6は、プロセス500の一部として実行され得る胎児信号を生成するための例示としてのプロセス600を説明するフローチャートである。プロセス600は、例えば、システム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0085】
ステップ510の実行に続き、乗算信号が分析されて、乗算信号の、妊娠哺乳動物の心拍動信号に対応している部分が求められてもよい(ステップ605)。時として、この分析は乗算信号を妊娠哺乳動物の心拍動信号と比較する段階を含むこともある。次いで、乗算信号の、妊娠哺乳動物の心拍動信号に対応している部分が、乗算信号の部分から減算され、例えば線形回帰式により逆進され、或いは減じられ、又は乗算信号から除去され(ステップ610)、乗算信号の残部分を使用して胎児信号が生成されることになる(ステップ615)。幾つかの実施形態では、ステップ605の実行は、例えば母体心拍数信号によって提供されるところの特定の母体パルスが乗算信号及び/又は受信された被検出信号と時間的に相関づけられて、その結果、正しい母体パルスが乗算信号及び/又は受信された被検出信号から減算されるように、母体心拍数信号を乗算信号及び/又は受信された被検出電子信号と同期させる段階及び/又はそれ以外のやり方で相関づける段階を含んでいてもよい。このやり方では、プロセス600の実行は周期的な母体心拍数信号に依拠することはなく、代わりに、乗算信号及び/又は受信された被検出信号への各母体拍動の影響をリアルタイムで及び/又はパルス毎に減算することができる。
【0086】
図7は、プロセス500の一部として実行され得る胎児信号を生成するための第3の例示的としてのプロセス700を説明するフローチャートである。プロセス700は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0087】
ステップ510の実行に続き、乗算信号が分析されて、乗算信号の、二次的信号に対応している部分が求められてもよい(ステップ705)。幾つかの実施形態では、ステップ705の実行は、例えば二次的信号の一部分が乗算信号及び/又は受信された被検出信号と時間的に相関づけられて、その結果、乗算信号及び/又は受信された被検出信号の正しい部分(二次的信号に対応している)が乗算信号及び/又は受信された被検出電子信号から減算されるように、二次的信号を乗算信号及び/又は受信された被検出電子信号と同期させる段階及び/又はそれ以外のやり方で相関づける段階を含んでいてもよい。このやり方では、プロセス700の実行は周期的な二次的信号に依拠することはなく、代わりに、例えば線形回帰式を介して、二次的信号の各変分を乗算信号及び/又は受信された被検出信号からリアルタイムで減算し又は逆進させることができる。
【0088】
ステップ710では、乗算信号の、二次的信号に対応している部分が乗算信号から減算され、又はそれ以外のやり方で除去されることになる。複数の二次的信号が考察されている場合、二次的信号のそれぞれについてステップ705及び710が実行され、乗算信号の残部分を使用して胎児信号が生成されることになる(ステップ715)。
【0089】
図8は、胎児信号を生成するための及び/又は妊娠哺乳動物の羊水中に胎便が存在するかどうかを判定するための或る例示としてのプロセス800を説明するフローチャートである。プロセス800は、例えば、システム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0090】
最初に、ステップ405、407、510、615、及び/又は715の被検出電子信号が受信されることになる。次いで、妊娠哺乳動物の羊水に胎便が存在するかどうかを判定するために被検出電子信号が分析されることになる(ステップ805)。この分析は、限定するわけではないが妊娠哺乳動物及び/又はそれの羊水に入射し及び/又は反射した光の波長及び/又は周波数及び/又は出射光の強度を求める段階を含んでいてもよい。幾つかの事例では、分析は、妊娠哺乳動物及び/又はそれの羊水を出射する光の異なる波長の及び/又は異なる周波数の強度を比較分析する段階を含んでいてもよい。
【0091】
幾つかの事例では、ステップ405、407、510、615、及び/又は715の被検出電子信号に対応する光の波長及び/又は波長範囲は胎便の存在を示唆する吸収特性及び/又は散乱特性を有していてもよく、第2の光信号は参照波長及び/又は参照波長範囲とされてもよい。例えば415nmの光は胎便によって吸収されることが知られており、そうすると被検出電子信号は、415nmのみを含む光の波長に又は415nmを含む波長範囲(例えば400nm~430nm)に対応している。
【0092】
ステップ805の分析に続き、羊水中に胎便が存在するかどうかが判定されることになる(ステップ810)。幾つかの実施形態では、この判定は、分析の結果を、羊水内に胎便が存在しているとき及び存在していないときの光の波長/周波数の強度についての既知の値と比較することによって容易になるだろう。例えば、胎便は415nmの光を吸収することが知られており、被検出電子信号は、どれほど多くの415nmの光が吸収され及び/又は検出されたかを求めるように分析されてもよい。
【0093】
胎便が検出されないとき、ユーザへの胎便が検出されなかったことの示度の提供が、例えば示度をディスプレイデバイス(例えばディスプレイデバイス155)へ伝達することを介して容易にされてもよい(ステップ815)。胎便が検出されたとき、胎便が検出されたことを示す二次的信号が調製され、ステップ440での受信に向けて、例えばプロセス400を実行するプロセッサ(場合によりプロセス800を実行するプロセッサ)へ伝達されることになる。追加的又は代替的に、胎便が検出されたとき、ユーザへの胎便が検出されたことの示度の提供が、例えば示度をディスプレイデバイス(例えばディスプレイデバイス155)へ伝達することを介して容易にされてもよい(ステップ825)。時として、ステップ820の二次的信号及び/又はステップ825の示度は、例えば検出された胎便の量及び/又は胎便の特性(例えば色)に関する情報を提供してもよい。この二次的信号は、例えば胎児信号生成時の被検出電子信号のためのフィルタとして使用されてもよい。
【0094】
幾つかの実施形態では、胎児信号を生成するため及び/又は胎児ヘモグロビンについての酸素飽和度のレベルを求めるために、本明細書に記載されているプロセスの2つ又はそれ以上が任意の順序でまとめて遂行されてもよい。
【0095】
図9は、本明細書に記載されているプロセスのための命令を記憶し及び/又は実行することのできるプロセッサベースのシステム900の一例を提供している。プロセッサベースのシステム900は、例えば、コンピューティングデバイス1450及び/又はハウジング125及び/又は605の諸構成要素を代表しているものである。なお、本発明の実施形態に従って採用され得る種々のプロセッサベースのシステム全てが、システム900の特徴全てを有しているとは限らないことに留意されたい。例えば、特定のプロセッサベースのシステムは、ディスプレイ機能がプロセッサベースのシステムへ通信可能に連結されたクライアントコンピュータによって提供されているとかディスプレイ機能が不要であるという理由でディスプレイを含んでいないこともあるだろう。その様な詳細事項は本発明にとって重要ではない。
【0096】
システム900は、バス902又は情報を伝達するための他の通信機構と、バス902と連結された、情報を処理するためのプロセッサ904とを含んでいる。システム900は更に、バス902へ連結された、情報及びプロセッサ904によって実行されるべき命令を記憶するためのランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的ストレージデバイスの様な主メモリ906を含んでいる。主メモリ906は、更に、プロセッサ904によって実行されるべき命令の実行中に一時的な変数及び/又は他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。システム900は更に、バス902へ連結された、プロセッサ904のための静的情報及び命令を記憶するための読み出し専用メモリ(ROM)908又は他の静的ストレージデバイスを含んでいる。フレキシブルディスク、ハードディスク、フラッシュメモリベースのストレージデバイス、磁気テープ又は他の磁気記憶媒体、コンパクトディスク(CD)-ROM、デジタル汎用ディスク(DVD)-ROM、又は他の光学式記憶媒体、又はプロセッサ904がそこから読み出すことのできる何れかの他の記憶媒体のうちの1つ又はそれ以上であってもよいとされるストレージデバイス910が、情報及び命令(例えばオペレーティングシステム、アプリケーションプログラムなど)を記憶するために提供されていて、バス902へ連結されている。
【0097】
システム900は、情報をユーザへ表示するためのフラットパネルディスプレイの様なディスプレイ912へ、バス902を介して連結されていてもよい。英数字や他のキーを含むキーボードの様な入力デバイス914が、情報及びコマンド選択をプロセッサ904へ伝達するためにバス902へ連結されていてもよい。別の型式のユーザ入力デバイスは、方向情報及びコマンド選択をプロセッサ904へ伝達するための及びディスプレイ912上のカーソルの動きを制御するためのマウス、トラックボール、又はカーソル方向キーの様なカーソル制御デバイス916である。詳細に示されていないが、マイク、スピーカなどの様な他のユーザインターフェースデバイスがユーザ入力の受信及び/又は出力の提示に関与していてもよい。
【0098】
本明細書で言及されるプロセスは、主メモリ906に記憶されたプロセッサ可読命令の適切なシーケンスを実行するプロセッサ904によって実施されてもよい。この様な命令は、ストレージデバイス910の様な別のプロセッサ可読媒体から主メモリ906の中へ読み出されるようになっていてもよく、主メモリ906に格納されている命令のシーケンスの実行がプロセッサ904に関連づけられているアクションを遂行させる。代わりの実施形態では、本発明を実施するのにハードワイヤード回路構成又はファームウェア制御型処理ユニット(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ)がプロセッサ904及びその関連づけられたコンピュータソフトウェアの代わりに又はそれらと組み合わせて使用されてもよい。プロセッサ可読命令は、何れのコンピュータ言語でレンダリングされていてもよい。
【0099】
システム900は、更に、バス902へ連結された通信インターフェース918を含んでいてもよい。通信インターフェース918は、以上に論じられているプラズマ処理システムへの接続性を提供するコンピュータネットワークとの双方向データ通信チャネルを提供することができる。例えば、通信インターフェース918は、互換性のあるローカルエリアネットワーク(LAN)へのデータ通信接続を提供するLANカードであってもよく、LAN自体は他のコンピュータシステムへ通信可能に連結されている。その様な通信経路の厳密な詳細は本発明にとって重要ではない。肝心なことは、システム900が通信インターフェース918を通じてメッセージ及びデータを送信及び受信することができ、そのやり方で他のコントローラなどと通信することができるということだ。
【0100】
本明細書に記載されている実施形態について、妊娠哺乳動物の腹部及び胎児へ方向決めされる光は、少なくとも2つの別々の波長及び/又は周波数(例えば赤色、赤外線、近赤外など)の光であってもよく、受信される被検出電子信号はこれらの異なる波長の光に対応しているとしてもよい。
【0101】
かくして、胎児の酸素レベルを求めるためのシステム、デバイス、及び方法がここに開示されている。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されているシステム、デバイス、及び方法の使用は、分娩及び娩出過程中の胎児の健康を評定することが難しいことから、特に胎児の分娩及び娩出中(例えば分娩第一期中及び/又は分娩第二期中)には有用であるだろう。
【0102】
図10は、広域スペクトル光を用いて胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセス1000を説明するフローチャートを提供している。プロセス1000は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって実行されてもよい。
【0103】
最初に、ステップ1005にて、被検出電子信号が検出器160の様な光検出器から受信されることになる。被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその胎児に入射しそこから出射する複数の波長(例えば複数波長の広域スペクトル)の光信号であって、所定の期間に亘って検出器によって検出された光信号に対応しているとしてもよい。光信号の検出は、検出器によって受信される及び/又は検出器へ連結された光ファイバに入射する異なる波長の光子を数える段階を含んでいてもよい。場合により、受信される被検出電子信号は、以上に論じられているプロセス400のステップ405で受信される被検出電子信号に似ていてもよい。
【0104】
随意的に、ステップ1007にて、被検出電子信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は(単数又は複数の)被検出信号の所望部分を増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407にて実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。
【0105】
ステップ1010にて、ステップ1005の被検出電子信号及び/又はステップ1007の前処理図視信号の胎児に入射した部分が、ステップ1005にて受信された被検出電子信号から単離されることになる。受信された被検出電子信号のこの単離された部分は本明細書では胎児信号と呼ばれることもある。ステップ1010は、被検出電子信号から胎児信号を単離する何れの適切な方法を用いて実行されてもよい。適切な方法は、限定するわけではないが、例えばフィルタリング技法又は増幅技法の適用を介して信号中のノイズを小さくすること、被検出電子信号の、妊娠哺乳動物によって寄与されている部分を求め、次いで被検出電子信号の当該部分を受信された被検出電子信号から減算し又はそれ以外のやり方で除去すること、及び/又は胎児の心拍数に関する情報を受信し、当該情報を使用して、受信された被検出電子信号の胎児によって生成された部分を(例えばロックインアンプを介して)ロックインすることを含む。幾つかの実施形態では、胎児信号は、例えば以上に
図4、
図5、
図6、
図7、
図8に関して個々に論じられているプロセス400、500、600、700、及び/又は800の実行を介して生成されてもよい。
【0106】
次いで、胎児信号に含まれる光信号の波長毎の光の強度が求められることになる(ステップ1015)。時として、強度は、所定の期間に亘って受信される各波長の各光子を数えることによって求められてもよい。幾つかの実施形態では、ステップ1015の実行は、例えば連続波光子移動モデル(continuous wave photon migration model)を用いて胎児信号を処理する段階を含んでいてもよい。
【0107】
ステップ1020では、胎児信号に含まれる光の各波長について較正係数(calibration factor)及び/又は微分経路長因子(DPF:Differential Path Length Factor)が求められることになる。幾つかの実施形態では、較正係数は実験データに基づいて経験的に求められてもよい。幾つかの事例では、較正係数を経験的に求めることは、被検出電子信号についての強度データを例えば曲線へ又は波長に亘ってDFPを抽出するための他の値へ当てはめることを伴っていてもよい。幾つかの事例では、DPFは、光の異なる波長の拡散経路長因子の差を補償するように設計された経験ベースのモデルから導出されてもよい。幾つかの実施形態では、経験ベースのモデルは、光が母体組織及び/又は胎児組織の層を通ってどのように進むか(例えば吸収及び散乱)のシミュレーションによって導かれてもよい。幾つかの事例では、経験ベースのモデルは、母体腹部、胎児、及び/又は組織層の構造的モデルによって情報を与えられるようになっていて、構造的モデルを使用して導出される1つ又はそれ以上の近似値(例えば深さ、密度など)及び/又は光学的特性(例えば吸収及び/又は散乱)を含むものであってもよい。幾つかの事例では(例えばステップ1020の実行前に)、経験ベースのモデルについての値の範囲がシミュレートされ又は試験されて、経路長因子を求めること及び/又は経路長のスペクトル依存性を補正することに対するそれらの個々の影響がどういうものかが調べられてもよい。これらのシミュレーション及び/又は試験は、例えば、被写体である妊娠哺乳動物及び/又は妊娠哺乳動物のグループの超音波画像化及び/又はMRI画像化によって情報を与えられてもよく、
図2A及び
図2Bに提供されている様な画像及び/又は本明細書でプロセス1100及び1200に関して記載されているような短い距離間隔における分析技法(short separation analysis techniques)を使用していてもよい。
【0108】
次いで、胎児信号の各波長についての吸収係数が、例えば以下に方程式1として表されている修正型ベール-ランベルトの法則を各波長について実行する段階を使用した計算を介して求められることになる(ステップ1025)。
【数1】
方程式1
ここに、
Δμ
a(λ)=所与の波長λについての決められた期間に亘る吸収係数の変化;
r=光源と検出器の間の距離;
DPF=所与の波長λについての微分経路長因子;
I
0=所与の波長λの発せられた光の強度(例えば広帯域光源によって発せられた光子の数)及び時間(t)=0;及び、
ΔI(λ)=所与の波長λについて決められた期間に亘って検出された光の計測光強度(例えば検出器によって検出される光子の数)の変化、である。
次に、例えば以下に提供されている方程式2を使用した計算を介して胎児ヘモグロビン酸素飽和度の示度が求められることになる(ステップ1030)。
【数2】
方程式2
ここに、
Δμ
a(λ)=所与の波長λについての決められた期間に亘る吸収係数の変化;
ΔC
HbO=決められた期間に亘る酸素化ヘモグロビン(HbO)の濃度の変化;
ΔC
Hb=決められた期間に亘る脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の濃度の変化;
ε
HbO(λ)=所与の波長についての酸素化ヘモグロビン(HbO)の吸光係数(extinction coefficient);及び、
ε
Hb(λ)=所与の波長についての脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の吸光係数、である。
【0109】
2つ又はそれ以上の波長対について、強度の変化を波長λの関数として入力することによって方程式1を解くことができる。これから、方程式2、Δμaを使用し、例えばコンピュータ150に記憶されている例えばルックアップ表でルックアップできる或る特定の波長についての既知の吸光係数εHbO(λ)及びεHb(λ)を入力することによって吸収係数の変化を求めることができる。方程式2の計算を行うために使用される波長対は、妊娠哺乳動物の腹部に入射した光信号の波長のスペクトルに含まれる何れかの波長対とすることができる。幾つかの実施形態では、ΔCHbO及びΔCHbについて複数の値に到達するために波長の異なる組合せで方程式2の計算が多数回(例えば10回、100回、又は1000回)行われ、それらの値はΔCHbO及びΔCHbとして堅牢な(統計学的に妥当な及び/又は信頼度及び誤り率の受容可能なレベルを有する)値に到達するように1つ又はそれ以上の判定基準に従って重みづけされ及び/又は平均されてもよい。追加的又は代替的に、方程式2の計算は、複数の波長を同時に方程式に当てはめるように多数回(例えば10回、100回、又は1000回)遂行されてもよい。
【0110】
方程式2を介して生成されるΔCHbO及びΔCHbの値は、胎児の胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを経時的にモニタリングするのに有用である胎児血液中の酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンの濃度についての相対値であり、絶対値ではない。幾つかの実施形態では、ステップ1030の決定は、更に、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの合計である総ヘモグロビンの濃度の変化に対する酸素化ヘモグロビンの濃度の変化の比を求めることによって、胎児のヘモグロビンについての全体としての酸素飽和度を求める段階を含んでいてもよい。
【0111】
図11は、広域スペクトル光を用いて胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるための或る例示としてのプロセス1100を説明するフローチャートを提供している。幾つかの実施形態では、プロセス1100は、光の広域スペクトルを用いて生成され得る妊娠哺乳動物のヘモグロビン飽和度の二次元マップ及び/又は三次元マップを生成するために実行されるものである。プロセス1100は、例えばシステム100及び/又はそのコンポーネントによって実行されてもよい。
【0112】
ステップ1105にて、検出器160の様な光検出器から被検出電子信号が受信されることになる。被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその胎児に入射しそこから出射する複数の波長(例えば4、8、20の波長、又は複数波長の広域スペクトル)の光信号であって、所定の期間に亘って検出器によって検出された光信号に対応しているとしてもよい。光信号の検出は、検出器によって受信される及び/又は検出器160の様な検出器へ連結された光ファイバに入射する異なる波長の光子を数える段階を含んでいてもよい。場合により、受信される被検出電子信号は、以上に論じられているプロセス400のステップ405で受信される被検出電子信号に似ていてもよい。
【0113】
随意的に、ステップ1107にて、第1及び/又は第2の被検出電子信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は第1及び/又は第2の被検出電子信号それぞれの所望部分を増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407にて実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。
【0114】
受信される被検出電子信号は、信号の部分が妊娠哺乳動物の腹部上のどこで検出されるか(例えば特定の光子がどこで検出されるか)についての位置(例えばx成分、y成分、z成分)及び/又は光子又は光子のビームの軌跡に関する情報を含んでいてもよく、場合により時間計測を含むこともある。追加的又は代替的に、受信される被検出電子信号及び/又はその部分(例えば特定の波長の光子又は強度)に関する位置情報は、例えば幾何学的決定又は確率的決定を介して数学的に求められてもよい。幾つかの実施形態では、妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその部分(例えば断面又は胎児が位置する領域)が、例えば画像中にピクセルとして表現され及び/又は再構成される特定の寸法(例えば2mm2、5mm2、10mm2、2mm3、5mm3、10mm3など)の領域へ分割されてもよい。追加的又は代替的に、被検出電子信号は、光検出器によって、区域の走査動作(例えばラスター走査)を介して検出され、数えられた各光子についての位置及び/又は光の1つ又はそれ以上の波長の被検出信号の強度が検出され、求められ、及び/又は記録されるようになっていてもよい。
【0115】
随意的に、被検出電子信号及び/又は前処理された被検出電子信号の波長についての光の強度が、母体腹部の領域毎に求められてもよい(ステップ1110)。幾つかの事例では、強度は、所定の期間に亘って妊娠哺乳動物の腹部の特定の領域と関連づけられる各波長の各光子を数えることによって求められてもよい。幾つかの実施形態では、ステップ1110の実行は、例えば連続波光子移動モデルを用いて胎児信号を処理する段階を含んでいてもよい。時として、ステップ1110の実行は、受信された被検出電子信号の部分(例えば所与の波長の光子又は光子のグループ)についての位置を、例えば被検出電子信号の当該部分がどこで受信されたか又はいつ受信されたかに関する情報を使用して求める段階を含んでいてもよい。
【0116】
追加的又は代替的に、被検出電子信号に含まれる被検出光子についての飛行時間が受信され及び/又は求められてもよい(ステップ1115)。幾つかの場合では、被検出光子についての飛行時間は、被検出光子の波長(又は波長範囲)に固有であるだろう。
【0117】
追加的又は代替的に、例えばプロセス1100及び/又はその一部分が周波数ドメイン分析を使用しているとき、被検出電子信号及び/又は被検出電子信号に対応する光信号の位相遅延が受信され及び/又は求められてもよい(ステップ1120)。幾つかの場合では、位相遅延は検出された光子の波長(又は波長範囲)に固有であるだろう。
【0118】
追加的又は代替的に、妊娠哺乳動物の腹部へ送達される光信号であって被検出光信号に対応する光信号を生成するのに使用されているレーザについての自己相関情報が受信され及び/又は求められてもよい(ステップ1125)。
【0119】
ステップ1130では、被検出電子信号中に含まれる光の各波長について微分経路長因子(DPF)が求められることになる。時として、ステップ1130はステップ1020の実行と同様の方式で実行されてもよい。幾つかの事例では、この決定は、例えば妊娠哺乳動物の腹部の生理学的特性及び/又は解剖学的特性を使用した局所的なものであってもよい(即ち、妊娠哺乳動物の腹部の各領域及び/又は各層について求められる)。
【0120】
次いで、胎児信号の各波長についての吸収係数が妊娠哺乳動物の腹部毎に求められることになる(ステップ1135)。時として、ステップ1135は、ステップ1025の実行と同様の方式で実行され、ステップ1135のために吸収係数を求めるのに方程式1が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、ステップ1130及び/又は1135の実行は、ステップ1110からステップ1125それぞれで受信され及び/又は求められた強度、飛行時間、位相遅延、及び/又はレーザ自己相関情報を使用することができる。
【0121】
次に、ヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度が、妊娠哺乳動物の腹部の領域毎に求められる(ステップ1140)。ステップ1140は、ステップ1045と同様の方式で実行され、妊娠哺乳動物の腹部の領域毎にヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度を求めるのに方程式2が使用されてもよい。
【0122】
次いで、胎児ヘモグロビン酸素飽和度の示度は、例えばディスプレイデバイス155上のディスプレイを介してユーザへ提供されてもよい(ステップ1145)。幾つかの事例では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度の示度は、妊娠哺乳動物の腹部の各領域について求められたヘモグロビン酸素飽和度レベルの二次元マップ及び/又は三次元マップとして提供/表示されてもよい。この二次元マップ及び/又は三次元マップは、一部の事例では、各ヘモグロビン酸素飽和度レベルを妊娠哺乳動物の腹部の個々の領域とマッピングすることによって生成され、妊娠哺乳動物の腹部内のヘモグロビン酸素飽和度の異なる領域が、例えば色分け及び/又はグレースケールを介して視覚的に表示されてもよい。ユーザがマップを眺めたとき、ユーザは、例えば超音波測定及び/又はMRI測定を通して知られている胎児の位置に対応しているマップの領域を見ることによって胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求めることができるだろう。
【0123】
図12は、経腹的胎児パルスオキシメトリを遂行するのに使用することのできるパルスオキシメータについて複数比のうちの個別化された比(R)値を求めるためのプロセス1200を説明するフローチャートである。プロセス1200は、例えばシステム100又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0124】
最初に、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から出射する第1の波長又は第1の波長範囲の光信号に対応している第1の被検出電子信号が、例えばコンピュータ150の様なコンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる(ステップ1205)。ステップ1210にて、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から出射する第2の波長又は第2の波長範囲の光信号に対応している第2の被検出電子信号が、例えばコンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる。第1及び第2の被検出電子信号は、光信号を受信し光信号を電子信号へ変換した検出器160の様な検出器によって/検出器から直接的又は間接的にコンピュータへ伝達されることになる。
【0125】
第1及び第2の光信号は、光源105の様な1つ又はそれ以上の光源によって妊娠哺乳動物の腹部に入射され及び/又は腹部の中へ方向決めされていてもよい。多くの事例では、第1及び第2の光信号は、同様の波長を有していて、電磁スペクトルの同じ帯域内にあってもよい。例えば第1の光信号と第2の光信号はどちらも、電磁スペクトルの赤色、NIR、又は赤外の帯域内にあってもよい。多くの事例では、第1の光信号と第2の光信号の波長は、第1及び第2それぞれの光信号の経路長が同じか又は数学的に無意味になるほど互いに十分に近いように選定されるものである。例えば、第1の光信号が790nmであり、第2の光信号が805nmであってもよいし、又は第1の光信号が780nmであり、第2の光信号が800nmであってもよい。別の例では、第1の光信号が810nmであり、第2の光信号が825nmであってもよいし、又は第1の光信号が820nmであり、第2の光信号が833nmであってもよい。多くの事例では、第1及び第2の光信号を生成するのに使用される光源は、レーザ又はLEDの様な、単色光及び/又は波長の狭帯域内の光を生成することのできる(単数又は複数の)光源とすることができる。幾つかの実施形態では、受信される被検出電子信号は、以上に論じられているプロセス400のステップ405で受信される被検出電子信号に似ていてもよい。幾つかの実施形態では、プロセス1200は、多くの(例えば4、5、10、15、40、400の、又は広帯域の、又は白色光などの)異なる光信号及び/又は対応する被検出電子信号を用いて実行されてもよい。
【0126】
随意的に、ステップ1212にて、第1及び/又は第2の被検出電子信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は第1及び/又は第2の被検出電子信号それぞれの所望部分を増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407にて実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的に又は代替的に、ステップ1212の前処理は、例えば第1及び第2の被検出電子信号が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、この同期は、ステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、第1及び第2の被検出電子信号の同期化は、第1及び第2の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0127】
ステップ1215にては、第1及び第2の被検出電子信号及び/又は前処理された第1及び第2の被検出電子信号の胎児に入射した部分(本明細書ではそれぞれ「第1の胎児信号」及び「第2の胎児信号」と呼ばれている)が、ステップ1205及びステップ1210でそれぞれ受信された第1及び第2の被検出電子信号から単離されることになる。ステップ1215は、第1及び第2の被検出電子信号から第1及び第2の胎児信号を単離する何れの適切な方法を用いて実行されてもよい。適切な方法は、限定するわけではないが、例えばフィルタリング技法又は増幅技法(本明細書に開示されているものなど)の適用を介して信号中のノイズを小さくすること、第1及び第2被検出電子信号の、妊娠哺乳動物によって寄与されている部分を求め、次いで第1及び第2の被検出電子信号の当該部分を第1及び第2の被検出電子信号から減算するか又はそれ以外のやり方で除去すること、及び/又は、胎児心拍数に関する情報を受信し、当該情報を使用して第1及び第2の被検出電子信号の胎児によって生成された部分を(例えばロックインアンプを介して)ロックインすることを含む。
【0128】
次に、ステップ1220にて、第1及び第2の胎児信号は、拡張終期のPPGパルス振幅の値を各胎児信号について求めるように分析及び処理され、それにより本明細書でlD1及びlD2とそれぞれ呼ばれる拡張終期の第1及び第2のPPGパルス振幅が求められることになる。幾つかの事例では、拡張終期のPPGパルス振幅は、AC信号又はAC値として理解され及び/又は呼称されることもある。次いで、ステップ1225にて、第1及び第2の胎児信号は、収縮期中のPPGパルス振幅の値を各胎児信号について求めるように分析及び処理され、それにより本明細書でlS1及びlS2とそれぞれ呼ばれる収縮期中の第1及び第2のPPGパルス振幅が求められることになる。幾つかの事例では、収縮期中のPPGパルス振幅は、DC信号又はDC値として理解され及び/又は呼称されることもある。第1の胎児信号の経路長と第2の胎児信号の経路長は同じか又は数学的に同等であるので、ID1、ID2、IS1、及びIS2の値は経路長のファクタリングなしに求めることができる。
【0129】
次いで、複数比のうちの比(「R」とも呼ばれる)が求められることになる(ステップ1230)。ステップ1230は、方程式3による以下の計算を遂行することを介して実行されてもよい。
【数3】
方程式3
幾つかの事例では、Rは、例えばステップ1205-ステップ1220を複数回実行してI
D1、I
D2、I
S1、及びI
S2の平均値を導出し、次いでこれらの平均値を方程式3に差し込むことによって求められる平均値とすることができる。追加的又は代替的に、Rは、プロセス1200を複数回(例えば20回、40回、50回など)実行して複数のR値を求め、次いで複数のR値を平均して平均R値を求めることによって決定されてもよい。
【0130】
幾つかの実施形態では、プロセス1200の実行を介して求められるR値は個々の妊娠哺乳動物及び/又は胎児それぞれについてケースバイケースベースで求められ、各状況、各妊娠哺乳動物、及び/又は各胎児についてR値をカスタマイズ又は個別化させることができる。この個別化されたR値の特異性は、Rの値がパルスオキシメータ製造者によって全ての状況に亘っての平均として求められる場合よりもいっそう高精度のR決定を提供するので、臨床的に重要なものとなり得る。典型的には、R値はパルスオキシメータ製造者によって提供されており、それは数多くの状況/個体に亘って平均される実験的に求められた結果の評価に基づいている。この手法の問題は、指や耳たぶがパルスオキシメトリ計測値が取られる身体上の伝統的な場所とされている様に、パルスオキシメータが使用されることになる条件が患者間及び状況間で比較的均一であることを想定していることである。しかしながら、その様な仮定は妊娠哺乳動物については適切でないだろう、というのも妊娠哺乳動物間及び胎児間の広範に様々なばらつきのせいで、それが全ての妊娠哺乳動物/胎児にとって十分に正確であるとは限らない可能性があるからだ。
【0131】
時として、プロセス1200は、R値を時間的な点又は状況に対して特異的にあつらえるために、モニタリングセッション中に例えば周期ベースで又は応需ベースで複数回実行されてもよい。例えば、プロセス1200は、胎児の分娩及び娩出中、例えば胎児及び/又は妊娠哺乳動物又はその子宮が動いたときにR値を調節するために、1時間毎、30分毎、又は1分毎に実行されてもよい。
【0132】
図13は、パルスオキシメータを使用して胎児ヘモグロビンについての酸素飽和度のレベルを求めるためのプロセス1300を説明するフローチャートである。プロセス1300は、例えばシステム100又はその構成要素によって遂行されてもよい。
【0133】
最初に、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から出射する第1の波長の又は第1の波長範囲の光信号に対応している第1の被検出電子信号が、例えばコンピュータ150の様なコンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる(ステップ1305)。ステップ1310にて、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から出射する第2の波長の又は第2の波長範囲の光信号に対応している第2の被検出電子信号が、コンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる。この第1及び第2の被検出電子信号は、検出器160の様な検出器によって/検出器から直接的又は間接的にコンピュータへ伝達されてもよい。
【0134】
第1及び第2の光信号は、光源105の様な1つ又はそれ以上の光源によって妊娠哺乳動物の腹部に入射され及び/又は腹部の中へ方向決めされてもよい。多くの事例では、第1の光信号と第2の光信号の波長は、第1及び第2それぞれの光信号の経路長が同じか又は数学的に無意味になるほど互いに十分に近いように選定されるものである。例えば、第1の光信号が790nmであり、第2の光信号が810nmであってもよいし、又は第1の光信号が795nmであり、第2の光信号が815nmであってもよい。多くの事例では、第1及び第2の光信号を生成するのに使用される光源は、レーザ又はLEDの様な、単色光及び/又は波長の狭帯域内の光を生成することのできる(単数又は複数の)光源とすることができる。随意的に、ステップ1312にて、第1の被検出電子信号及び/又は第2の被検出電子信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は第1及び/又は第2の被検出電子信号の所望部分を増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407にて実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1312の前処理は、例えば第1及び第2の被検出電子信号が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、この同期は、ステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、第1及び第2の被検出電子信号の同期化は、第1及び第2の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0135】
ステップ1315にて、第1及び第2の被検出電子信号の胎児に入射した部分(本明細書ではそれぞれ「第1の胎児信号」及び「第2の胎児信号」と呼ばれている)が、ステップ1305及びステップ1310でそれぞれ受信された及び/又はステップ1307で前処理された第1及び第2の被検出電子信号から単離されることになる。ステップ1315は、第1及び第2の被検出電子信号から第1及び第2の胎児信号を単離する何れの適切な方法を用いて実行されてもよい。適切な方法は、限定するわけではないが、例えばフィルタリング技法又は増幅技法の適用を介して信号中のノイズを小さくすること、第1及び第2の被検出電子信号の、妊娠哺乳動物によって寄与されている部分を求め、次いで第1及び第2の被検出電子信号の当該部分を減算するか又はそれ以外のやり方で除去して第1及び第2の被検出電子信号から第1及び第2の胎児信号を単離すること、及び/又は、胎児心拍数に関する情報を受信し、当該情報を使用して第1及び第2の被検出電子信号の胎児によって生成された部分をロックインすることを含む。
【0136】
ステップ1320にて、胎児及び/又はパルスオキシメトリデバイス(例えば胎児プローブ115)についてのR値が受信されることになる。幾つかの事例では、胎児についてのR値は、プロセス1200の実行を介して生成され、ステップ1230で求められるR値であってもよい。追加的又は代替的に、R値はまた、パルスオキシメトリデバイスの製造者によって提供されていてもよいし、又はそれ以外に既知のR値であってもよい。
【0137】
次に、ステップ1325にて、第1及び第2の胎児信号が分析及び処理されて、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルが求められることになる。幾つかの事例では、ステップ1325の実行は、第1及び第2の胎児信号について酸素化ヘモグロビン(ε
0)及び脱酸素化ヘモグロビン(ε
d)の吸光係数(extinction coefficient)を求める段階を含んでいてもよい。ヘモグロビンの吸光係数は、試料の吸収係数(absorption constant)をヘモグロビン濃度で除算したものと理解されてもよい。吸光係数が求められたら、それらを以下の方程式(方程式4)へ差し込んで胎児についてのヘモグロビン酸素飽和度(SpO
2)を求めることができる。
【数4】
方程式4
ここに、
ε
d1=λ
1についての脱酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
ε
d2=λ
2についての脱酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
ε
01=λ
1についての酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
ε
O2=λ
2についての酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
l
1=λ
1についての経路長;及び、
l
2=λ
2についての経路長、である。
ただし、λ
1についての経路長とλ
2についての経路長が同じであるか又は十分に近いとき、l
2/l
1の計算は1の値又は1に近い値をもたらし、そうすると方程式4から除去されてもよく、その結果、方程式5がもたらされる。
【数5】
方程式5
決定後、ユーザ(例えば医師、看護師、又は患者)への胎児酸素ヘモグロビン飽和度(SpO
2)値の提供が、例えば示度をディスプレイデバイス(例えばディスプレイデバイス155)へ又はコンピュータ(例えばコンピュータ150)のスクリーン又はデバイス(例えば胎児プローブ)のスクリーンへ提供することを介して容易にされてもよい(ステップ1330)。
【0138】
図14Aは、
図3に示されているものと同様の方式で妊娠哺乳動物の腹部と接触している或る例示としての胎児プローブ115Bを描いている。
図14Aでは、例えば
図2A及び
図2Bに示されている母体組織の層が、検討中の組織の複数層の特性を近似した母体組織1405の簡略化された層に解像され又は簡略化されている。他の実施形態では、母体組織層は2つ又はそれ以上の簡略化された層(図示せず)へ解像されてもよい。胎児プローブ115Bは、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられる光の短い距離間隔(SS:Short Separation)における分析を可能にするように構成されている。
【0139】
胎児プローブ115Bは、第1の光信号315を発する第1の光源105Aと、第2の光信号320を発する第2の光源105Bと、検出器160とを含んでいる。第1の光ビーム315及び/又は第2の光ビーム320は、単一波長又は複数波長の光を含み、例えば赤色、NIR、又は赤外のスペクトル内であってもよい。一部の状況では、2つの光源から投射された光が検出器160によって受信されここに説明されているプロセスの1つ又はそれ以上に従って処理されるときに光同士を区別できるようにするために、光信号315の特性は、光信号320の波長と異なっていてもよいし、及び/又は異なる時点にて妊娠哺乳動物の腹部へ投射されてもよい。幾つかの実施形態では、胎児プローブ115Bは、例えば検出器160が第1の光源105Aと第2の光源105Bから同等量の光を検出するように減衰させることのできる検出器160用フィルタ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0140】
多くの事例では、妊娠哺乳動物の腹部を通る光伝搬の深さは、光源と検出器の間の距離に依存する。幾つかの実施形態では、例えば光源から発せられる光について伝搬の深さを適応させるように第1の光源105A及び/又は第2の光源105Bの位置は調節される(例えば検出器160に近づけられる又は遠ざけられる)ことができる。調節は、例えば胎児プローブ115Bに含まれる軌道又は他の位置決めデバイス(図示せず)によって容易にされてもよい。幾つかの事例では、第1の光源105A及び/又は第2の光源105Bの位置決めは、妊娠哺乳動物の腹部内の胎児310の深さ(即ち胎児プローブ115Bと胎児310の間に位置する母体組織1405の幅の計測値)に応じて調節されてもよい。妊娠哺乳動物の腹部内の胎児310の深さの計測値は、例えば、ドップラー/超音波プローブ135の様な超音波又はドップラープローブ及び/又は説明
図201及び202の様なMRI画像によって提供されてもよい。
【0141】
幾つかの実施形態では、第1の光源105Aは、第1の光源から発せられる光(即ち光信号315)が母体組織1405のみを通って伝搬し胎児310には到達しないように、検出器160に対して位置決めされてもよい。第2の光源105Bは、第2の光源105Bによって投射される光(即ち光信号320)が妊娠哺乳動物の腹部の中へ光信号315より深く射し込み、そこからの後方散乱及び/又はそれを通る透過が検出器160によって検出されるように、(第1の光源105Aに対比して)検出器160からより離れて位置決めされてもよい。別の言い方をするなら、光源105Aは、光信号315が母体組織1405にのみ射し込み、その結果、検出器160によって検出される光信号315の部分が母体組織1405からしか後方散乱せず胎児310からは後方散乱しないように及び/又は母体組織1405だけを透過し胎児310を透過しないように位置決めされるのに対し、光源105Bは、光信号320が母体組織1405と胎児310の両方に射し込み、その結果、検出器160によって検出される光信号320の部分が母体組織1405及び胎児310から後方散乱するように及び/又は母体組織1405及び胎児310を透過するように位置決めされてもよい、ということである。第1の光源105Aのこの位置決めは短い距離間隔(SS)における計測を容易にし、第1の光信号315の経路及び/又は検出器160による第1の光信号315の検出量は本明細書ではSSチャネルと呼ばれることもある。第2の光源105Bのこの位置決めは長い距離間隔(LS)における計測を容易にし、第2の光信号320の経路及び/又は検出器160による第2の光信号320の検出量は本明細書ではLSチャネルと呼ばれることもある。
【0142】
図14Bは、
図14Aと同様のセットアップを提供しているが、但し組織の層が母体組織1405の簡略化された層に解像されているのではなく、代わりに母体及び胎児組織の個々それぞれの層の近似が示されていることを別にしてということである。より具体的には、
図14Bは、母体皮膚層1415を表現/近似する第1の層、母体皮下脂肪層1420を表現/近似する第2の層、母体腹筋(骨格筋)層1425を表現/近似する第3の層、母体腹腔内脂肪層1430を表現/近似する第4の層、子宮壁(平滑筋)層1435を表現/近似する第5の層、羊水層1440を表現/近似する第6の層、及び胎児310を表現/近似する第7の層を示している。幾つかの実施形態では、これらの組織層の表現及び/又は近似は、層が各組織層を通過する光及び/又は光子の挙動(例えば散乱及び/又は吸収)に影響を及ぼし得る様態を含んでいてもよい。時として、これらの近似及び/又は表現は、例えばMATLAB(登録商標)又は他のコンピュータモデル化ソフトウェアを介したコンピュータモデル化技法の助けを借りて作られてもよい。
【0143】
幾つかの実施形態では、組織層の特徴の表現及び/又は近似を発展させるために使用される母体組織及び/又は胎児組織の実際の計測値及び/又は近似寸法は、例えば超音波画像、MRI画像、説明
図201又は202の様な説明図、及び/又は妊娠哺乳動物及び/又は胎児に関する他の情報(例えばメラニン含有量、体重、体格指数、胎児の在胎年齢など)に基づいていてもよい。
【0144】
図14Bの実施形態では、第1の光ビーム1415は層1415-1440に浸透し、したがってこれらの層のそれぞれに関する情報を別々に及び/又はまとめて提供することができる。幾つかの実施形態では、第1の光ビーム1415は、例えば関心の組織層の特質及び/又は特性(例えば光の散乱、又は光の吸収、及び/又はヘグロビン飽和度レベル)を確定するために母体組織の検討中の層(例えば1415、1420、1425、1430、1435)の深さまでしか浸透しないように調節されてもよい。
【0145】
図15Aは、
図3、
図14A、及び
図14Bに示されているものと同様の方式で妊娠哺乳動物の腹部と接触している或る例示としての胎児プローブ115Cを描いている。
図15Aに示されている実施形態は、母体組織1405の簡略化された層を利用しており、胎児プローブ115Cは、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から後方散乱した及び/又はそれらを透過した光の二重の短い距離間隔(SS)における分析を可能にさせるように構成されている。
【0146】
胎児プローブ115Cは、第1の光信号315を発する第1の光源105Aと、小型検出器1510と、第2の光信号320を発する第2の光源105Bと、検出器160とを含んでいる。第2の光信号320Aの第1の部分が小型検出器1510によって検出され、第2の光信号320Bの第2の部分は検出器160によって検出されてもよい。第1の光ビーム315及び/又は第2の光ビーム320は、単一波長又は複数波長の光を含み、例えば赤色、近赤外、及び/又は広帯域のスペクトル内であってもよい。状況により、2つの光源から投射された光が検出器160によって受信されここに説明されているプロセスの1つ又はそれ以上に従って処理されるときの光同士の差別化を可能にさせるために、光信号315の波長は光信号320の波長と異なっていてもよいし、及び/又は異なる時点に妊娠哺乳動物の腹部へ投射されてもよい。小型検出器1510は検出器160と同様であってもよいが、例えばより小さいサイズ及び/又は低い感受性を有していてもよい。幾つかの事例では、小型検出器1510は小型ファイバ検出器であってもよい。幾つかの実施形態では、胎児プローブ115Cは、検出器160が第1の光源105A及び第2の光源105Bから同等量の光を検出するように減衰させることのできる検出器160用フィルタ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0147】
幾つかの実施形態では、例えば検出器160によって検出される光源からの光の深さを適応させるように第1の光源105A及び/又は第2の光源105Bの位置は調節される(例えば検出器160に近づけられる又は遠ざけられる)ことができる。調節は、例えば検出器の手動操作及び/又は設置によって、及び/又は検出器を胎児プローブ115C(図示せず)内に含まれる及び/又は関連づけられる軌道又は他の位置決めデバイスに沿って動かすことによって容易にされてもよい。幾つかの事例では、第1の光源105A及び/又は第2の光源105Bの位置決めは、妊娠哺乳動物の腹部内の胎児310の深さ(即ち胎児プローブ115Cと胎児310の間に位置する母体組織1405の幅の計測値)に応じて調節されてもよい。妊娠哺乳動物の腹部内の胎児310の深さの計測値は、例えば、ドップラー/超音波プローブ135の様な超音波又はドップラープローブ及び/又は説明
図201及び202の様な妊娠哺乳動物の腹部の画像によって提供されてもよい。
【0148】
幾つかの実施形態では、第1の光源105Aは、第1の光源から発せられる光(即ち光信号315)が母体組織305のみを通って伝搬し胎児310には到達しないように、検出器160に対して位置決めされてもよい。第2の光源105Bは、第2の光源105Bによって投射される光(即ち光信号320)が妊娠哺乳動物の腹部の中へ光信号315より深く射し込み、胎児から後方散乱した及び/又は胎児を透過した光が検出器160によって検出されるように、(第1の光源105Aに対比して)検出器160からより離れて位置決めされてもよい。第1の光源105Aと第2の光源105Bの間には小型検出器1510が配置され、光(即ち光信号320)が小型検出器1510によって検出される前に母体組織1405だけを通って伝搬し胎児310には至らないようになっていてもよい。第1の光源105Aのこの位置決めは短い距離間隔(SS)における計測値の第1のセットの収集を容易にし、第1の光信号315の経路及び/又は検出器160による第1の光信号315の検出量は本明細書では第1のSSチャネルと呼ばれることもある。第2の光源105Bのこの位置決めは長い距離間隔(LS)における計測を容易にし、第2の光信号320の経路及び/又は検出器160による第2の光信号320の検出量は本明細書ではLSチャネルと呼ばれることもある。小型検出器1510のこの位置決めは、短い距離間隔(SS)における計測値の第2のセットの収集を容易にし、第1の光信号315の経路及び/又は検出器160による第1の光信号315の検出量は本明細書では第2のSSチャネルと呼ばれることもある。こうして、胎児プローブ115Cは、第1の光源105Aと第2の光源105Bの両方のSS計測を提供する。
【0149】
図16は、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルを求めるのに使用することのできる胎児信号を生成するために短い距離間隔(SS)における信号のセットを使用するための或る例示としてのプロセス1600を説明するフローチャートである。プロセス1600は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって実行されてもよい。具体的には、プロセス1600は、
図14A及び
図14Bに描写され以上に論じられている胎児プローブ115B及び/又は115Cの様な胎児プローブから情報を受信することによって実行されてもよい。
【0150】
最初に、ステップ1605にて、短い距離間隔における被検出電子信号が、例えばコンピュータ150の様なコンピュータ及び/又はプロセッサによって受信されることになる。短い距離間隔における被検出電子信号(本明細書では「短い距離間隔における信号」又は「SS信号」とも呼ばれる)は、短い距離間隔チャネルの1つ又はそれ以上の光信号に対応しているとしてもよい。SS信号は、光源105の様な1つ又はそれ以上の光源から妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、腹部から、より具体的には母体組織1405から、例えば透過及び/又は後方散乱を介して出射する光学信号のセットに由来するものである。SS信号は、
図14A及び/又は
図14Bに示されている検出器160の様な検出器によって検出される第1の光信号315の部分と同様であるとしてもよい。
【0151】
SS信号は、2つ又はそれ以上の異なる波長又は波長範囲つまり例えば電磁スペクトルの赤色及び/又は近赤外の部分にある光信号であって、例えば検出器160の様な検出器によって検出され、コンピュータ又はプロセッサへ伝達される電気信号(即ちSS信号)へと変換される光信号に対応しているとしてもよい。SS信号を生成する光信号のための光源は、例えば光源と検出器との距離に因り、母体組織に入射した光だけが検出器によって検出されるように十分に検出器に近接していてよい。
【0152】
ステップ1610にて、長い距離間隔における被検出電子信号が、例えばコンピュータ及び/又はプロセッサによって受信されることになる。長い距離間隔における被検出電子信号(本明細書では「長い距離間隔における信号」又は「LS信号」とも呼ばれる)は、長い距離間隔チャネルの1つ又はそれ以上の光信号に対応しているとしてもよい。LS信号は、光源105Bの様な光源から妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、腹部から、より具体的には母体組織及びその中に入っている胎児から後方散乱し、及び/又は腹部を通って、より具体的に母体組織及びその中に入っている胎児を通って透過し、検出器160の様な検出器によって検出され、コンピュータ又はプロセッサへ伝達される電気信号(即ちLS信号)へ変換される第2の光信号に由来するものであるとしてもよい。LS信号は、第2の光信号320の様な光信号であってLSチャネルに沿って進む光信号に対応しているものである。LS信号は、例えば赤色及び/又はNIRのスペクトル内の第2の波長又は第2の波長範囲とすることができ、場合により、SS信号の波長又は波長範囲とは異なっていてもよい。この違いは、SS光信号及び/又はLS光信号及び/又は被検出電子信号の差別化を支援することができるだろう。(単数又は複数の)SS及び/又はLS信号は、以上に
図4に関連して論じられているプロセス400のステップ405で受信される被検出電子信号と幾つかの類似点を有していてもよい。
【0153】
随意的に、ステップ1612にて、(単数又は複数の)SS及び/又はLS信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は第1の(単数又は複数の)被検出電子信号及び/又は第2の(単数又は複数の)被検出電子信号の所望部分をそれぞれ増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407で実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1612の前処理は、SS信号とLS信号が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階及び/又は相関づける段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、この同期化はステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。時として、SS信号とLS信号の同期化は、SS信号及びLS信号内に存在するタイムスタンプであって、例えばSS信号とLS信号の検出の同時開始又はほぼ同時の開始を提供するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えば以上に論じられているものと同様の方式でタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0154】
ステップ1615では、LS信号が、SS信号及び/又は前処理されたSS信号及び/又は前処理されたLS信号を使用して処理されることになる。この処理の目的は、SS信号によって表されている妊娠哺乳動物の組織から後方散乱した及び/又は妊娠哺乳動物の組織のみを透過した信号の特徴を理解することであるとしてもよい。母体組織に関する更なる情報及び母体組織の例示としての寸法は、
図2A及び
図2Bの説明
図201及び202に示され、
図14B及び
図15B並びに関連の論考によって提供されている。SS信号の処理の結果は、LS信号に存在し得るSS信号と同様の情報の除去又は減算ということになるだろう。このやり方では、LS信号に対する母体の寄与が除去されることになり、LS信号の胎児に入射した光を表している部分、即ち本明細書で胎児信号と呼ばれる部分を単離するのに役立つ。追加的又は代替的に、ステップ1615の処理は、LS信号中の汚染(例えば子宮収縮によって生じる光散乱の様な母体の生理学的信号、母体血液から散乱した光及び/又は母体血液を透過した光など)を低減するので、LS信号中に存在していて胎児からの後方散乱光によって生じている胎児信号がより簡単に識別可能となる。
【0155】
ステップ1615の処理は多くの形態を取ることができる。時として、SS光信号及びLS光信号が複数波長の光を含んでいるとき、1615の処理は、SS光信号及びLS光信号の諸部分を複数波長のそれぞれに対応する部分へ分離する段階を含んでもよく、そうすれば例えば各波長を別々に処理することができるだろう。
【0156】
幾つかの事例では、ステップ1615の処理は、後方反射幾何学の使用を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1615の処理は、LS信号からSS信号を減算する段階を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1615の処理は、LS信号処理時にSS信号をリグレッサーとして使用する段階を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1615の処理は、SS信号及び/又はLS信号へ1つ又はそれ以上の増幅を(例えばロックインアンプを介して)及び/又はフィルタリングを(例えばバンドパスフィルタ又はカルマンフィルタを介して)適用する段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、このフィルタリングの実行は、以上に
図4に関連して論じられているステップ435の実行に似ていてもよい。
【0157】
1つの実施例では、(単数又は複数の)SS信号が分析されて、第1の光信号の光が母体組織とどのように相互作用するかが求められることになる。この情報は、LS信号の妊娠哺乳動物及び胎児との類似の相互作用を探すのに使用され、そうするとこれらの類似の相互作用が妊娠哺乳動物を透過したものである及び/又は妊娠法乳動物から後方散乱したものであると分かるのである。LS信号のこれらの類似の相互作用と関連づけられる部分が、LS信号から減算され又はそれ以外のやり方で除去されることになる。これは、LS信号中の、妊娠哺乳動物によって引き起こされている汚染を除去することを支援し、LS信号の胎児によって寄与されている部分を識別、解明、及び/又は分析しやすくすることができる。
【0158】
ステップ1620にて、二次的信号(例えば母体心拍数信号、胎児心拍数信号、妊娠哺乳動物の腹部内の胎児の深さ、母体呼吸信号、子宮収縮情報、光散乱情報、信号中のノイズに関する情報など)が受信されたかどうかが判定されることになる。二次的信号が受信されていない場合、処理済みLS信号を使用して胎児信号が生成されることになる(ステップ1625)。胎児信号は、LS信号の、胎児から後方散乱した光及び/又は胎児を透過した光によって寄与されている部分を表しているものである。
【0159】
二次的信号が受信された場合、二次的信号は、例えば更に信号からノイズを除去するために及び/又はLS信号の胎児によって寄与されている部分を単離するために、ステップ1615の処理済みLS信号へ適用されることになる(ステップ1625)。
【0160】
ステップ1630にて、ステップ1615又は1625の処理済みLS信号を使用して胎児信号が生成されることになる(ステップ1630)。一部の場合では、ステップ1630で更なる処理又は分析が遂行されることなしに、ステップ1615又は1625の処理済みLS信号が胎児信号となることもある。追加的又は代替的に、例えばLS信号を更に精錬するために、LS信号への胎児の寄与を増幅するために、及び/又は胎児信号を明確にするために、1つ又はそれ以上の追加のプロセス(例えばプロセス400、500、600、700、及び/又は800)がLS信号へ適用されてもよい。
【0161】
次いで、胎児信号が分析されて、例えば本明細書に記載されている1つ又はそれ以上のプロセスを使用し及び/又はベール・ランベルトの法則及び/又は修正型ベール・ランベルトの法則を伴う計算を遂行して胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルが求められ(ステップ1635)、ユーザ(例えば医師、看護師、妊娠哺乳動物など)への胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度の提供が、例えばディスプレイデバイス155の様なディスプレイデバイスを介して容易にされる(ステップ1640)。
【0162】
最初に、ステップ1705にて、第1のSS信号が例えばコンピュータ150の様なコンピュータ及び/又はプロセッサによって受信されることになる。第1のSS信号は、光源105A(以上に
図15A及び
図15Bに関して示され論じられている)の様な光源から妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、腹部から、より具体的には母体組織(その諸例は、
図2A、
図2B、
図14A、
図14B、
図14A、及び
図15B及びそれらの関連づけられた論考によって提供されている)から後方散乱し及び/又は腹部を通って、より具体的には母体組織を通って透過し、検出器160の様な検出器によって検出される第1の光信号315の様な第1の光信号に由来するものであるとしてもよい。第1の光信号は、検出器160の様な検出器によって検出され、電気信号(即ち第1のSS信号)へ変換され、それがコンピュータ又はプロセッサへ伝達されてステップ1705で受信されるものである。第1の光SS信号は、例えば赤色及び/又はNIRSのスペクトルである第1の波長又は第1の波長範囲であってもよい。
【0163】
ステップ1710にて、LS信号が、例えばコンピュータ及び/又はプロセッサによって受信されることになる。LS信号は、第2の光源105Bの様な光源から妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、妊娠哺乳動物の腹部及び/又は胎児(例えば母体組織1405及び/又は胎児310)から後方散乱し及び/又はそれらを透過した第2の光信号の第2の部分320Bの様な第2の光信号の第2の部分に由来するものであるとしてもよい。第2の光信号の第2の部分は、検出器160の様な検出器によって検出され、電気信号(即ちLS信号)へ変換され、それがコンピュータ又はプロセッサへ伝達されるものである。LS信号は、第1の光信号及び/又はSS信号の波長又は波長範囲とは異なるNIRSスペクトル内にある第2の波長又は第2の波長範囲とすることができる。
【0164】
ステップ1715にて、第2のSS信号が、例えばコンピュータ及び/又はプロセッサによって受信されることになる。第2のSS信号は、第2の光源105Bの様な光源から妊娠哺乳動物の腹部へ投射され、腹部から、より具体的には母体組織1405から後方散乱し、及び/又は腹部を通って、より具体的に母体組織を通って透過した第2の光信号の第1の部分に由来するものであるとしてもよい。光信号は、小型検出器1510の様な検出器によって検出され、電気信号(即ち第2のSS信号)へ変換され、それがコンピュータ又はプロセッサへ伝達されるものである。第2のSS信号は、小型検出器1510の様な検出器によって検出される第2の光信号の第1の部分320Aの様なSS光信号に対応しているとしてもよい。第2のSS信号は、LS信号と同じ波長及び/又は波長範囲であってもよい。
【0165】
随意的にステップ1717にて、例えばノイズを除去するため及び/又は第1のSS信号、LS信号、及び/又は(単数又は複数の)第2のSS信号それぞれの所望部分を増幅するために、第1のSS信号、LS信号、及び/又は第2のSS信号は前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407で実行され以上に
図4に関して論じられている前処理と同じであってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1717の処理は、例えばSS信号、LS信号、及び/又は第2のSS信号が時間ドメインで整列するように、それらを同期させる段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、この同期化は、ステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、SS信号、LS信号、及び/又は(単数又は複数の)第2のSS信号の同期化は、SS信号、LS信号、及び/又は第2のSS信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0166】
ステップ1720にて、LS信号が、第1のSS信号と第2のSS信号の両方を使用して処理されることになる。ステップ1720の処理の目的は、妊娠哺乳動物の腹部上の2つの異なる場所の母体組織から後方散乱した及び/又は母体組織を透過した信号の特徴を理解することであり、その結果、これらの特徴をLS信号から除去してLS信号の胎児から後方散乱した及び/又は胎児を透過した光に対応している部分を明らかにすることができるだろう。幾つかの実施形態では、ステップ1720の処理は、妊娠哺乳動物から後方散乱した及び/又は妊娠哺乳動物を透過した光によって及び/又はノイズによって引き起こされる胎児信号の汚染(例えば子宮収縮又は呼吸によって生じる散乱の様な母体の生理学的信号、母体血液からの後方散乱及び/又は母体血液を通る透過など)を低減することができる。SS信号を2つの異なる場所から受信することは、入射光(例えば第1及び第2の光信号)に対する妊娠哺乳動物の腹部の空間的非均一的反応のより深い理解を促すことができる。例えば、妊娠哺乳動物の子宮の厚さが一方の場所ではもう一方の場所より大きいこともあり、この差が、第1及び第2の検出器を収納している胎児プローブの設置に及び/又はプローブ内の検出器及び/又は光源の配置に依存し得る2通りのSS信号と共に勘案されてもよいだろう。
【0167】
ステップ1720の処理は多くの形態を取ることができる。時として、処理は後方反射幾何学を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1720の処理はLS信号から両方のSS信号を減算する段階を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1720の処理は、LS信号処理時に第1及び/又は第2のSS信号をリグレッサーとして使用する段階を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、ステップ1720の処理は、被検出電子信号へ1つ又はそれ以上の増幅を(例えばロックインアンプを介して)及び/又はフィルタリングを(例えばバンドパスフィルタ又はカルマンフィルタを介して)適用する段階を含んでいてもよい。幾つかの事例では、2つのSS信号は線形に組み合わされ、次いでLS信号の処理のためのカルマンフィルタリングアルゴリズムへのリグレッサー入力として使用されてもよい。
【0168】
ステップ1725にて、二次的信号が受信されたかどうかが判定されることになる。二次的信号が受信されていない場合、処理済みLS信号を使用して胎児信号(幾つかの実施形態では、ステップ1720の処理済みLS信号と同じであってもよい)が生成されることになる(ステップ1735)。胎児信号は、胎児から後方散乱した光及び/又は胎児を透過した光を表しているものである。
【0169】
二次的信号が受信されている場合、二次的信号はステップ1720の処理済みLS信号へ適用されて(ステップ1730)、胎児信号が生成されることになる(ステップ1735)。例示としての二次的信号は、限定するわけではないが、母体心拍数信号、胎児心拍数信号、妊娠哺乳動物の腹部内の胎児の深さ、母体呼吸信号、子宮収縮情報、光散乱情報、信号中のノイズに関する情報などを含む。
【0170】
次いで、胎児信号が分析されて、例えば本明細書に記載されている1つ又はそれ以上のプロセスを使用し及び/又はベール・ランベルトの法則及び/又は修正型ベール・ランベルトの法則を伴う計算を遂行して胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルが求められる(ステップ1740)。ステップ1745では、例えばディスプレイデバイス155の様なディスプレイデバイスを介しての、ユーザ(例えば医師、臨床医学者、看護師、妊娠哺乳動物など)への胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度の提供が容易にされてもよい。幾つかの実施形態では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度の決定及び/又は示度の提供は、以上に論じられているステップ1635及び/又は1640の実行と同様であってもよく、中でも特に、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルについてTWAの決定及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルと胎児心拍数及び/又は胎児心拍数のTWAとの同時表示を含んでもよい。
【0171】
図18は、拡散光トモグラフィ(DOT)を使用して妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児の画像を生成し、そこから胎児組織酸素飽和度レベルを求めるためのプロセス1800を説明するフローチャートを提供している。プロセス1800は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。DOTが遂行される場合、システム100は、レーザ(例えば同期ピコ秒パルス式ダイオードレーザ)又は1つ又はそれ以上のレーザへ連結された光ファイバであってもよいとされる複数の光源105と、検出器160の様な複数の高感度光電検出器(例えば単一光子感応検出器)と、光電検出器16の出力を処理するように構成されたプロセッサと、を含むものとすることができる。幾つかの実施形態では、複数のレーザ又は光ファイバ及び複数の光電検出器は、妊娠哺乳動物の腹部の中の胎児を画像化できるように腹部の部分をカバーし沿うように構成されたアレイ状に配置されていてもよい。
【0172】
最初に、複数の被検出電子信号が複数の光検出器(例えば検出器160)から、コンピュータ150の様なプロセッサ及び/又はコンピュータによって受信されることになる(ステップ1805)。被検出電子信号は、光検出器によって、検出器へ連結されたトランシーバによって、及び/又は胎児プローブ115の様な胎児プローブによって、プロセッサ又はコンピュータへ直接的に送信されるようになっていてもよい。妊娠哺乳動物の腹部に入射しそこから出射する光は、光源105の様な複数の光源によって生成されることができ、何れの受容可能な周波数又は波長(例えば赤色及び/又は近赤外(NIR))であってもよい。場合により、受信される被検出電子信号は、以上に論じられているプロセス400のステップ405にて受信される被検出電子信号に似ていてもよい。幾つかの実施形態では、受信される被検出電子信号は、特定の被検出電子信号の位置を知ることができるように、検出器識別子(例えば識別スタンプ)を含んでいてもよく、及び/又は検出器識別子と関連づけられていてもよい。この位置特定は、一部の場合では、検出された光及び/又は画像化された組織の様々な因子を求めるために受信された被検出電子信号が処理及び分析される(ステップ1810)ときに使用することができるだろう。
【0173】
時には、ステップ1810の処理及び分析は、例えば、特定の光子を検出した特定の検出器によって検出された光子の数、特定の被検出電子信号を提供している検出器の場所又は位置、特定の被検出電子信号によって検出された光の強度、光散乱、入射光の角度、出射光の角度、光子の経路長、光子の飛行時間などを使用して遂行されてもよい。ステップ1810の実行を介して求めることのできる例示としての因子は、限定するわけではないが、光吸収、光散乱、組織密度、及び組織酸素飽和度を含む。被検出電子信号がどのように処理及び分析され得るかに関する更なる詳細がここに提供されている。
【0174】
随意的に、ステップ1810の実行は、例えばノイズを除去するために及び/又は第1及び/又は第2の被検出電子信号それぞれの所望部分を増幅するために、受信された複数の被検出電子信号のうちの1つ又はそれ以上を処理する段階を含んでいてもよい。この処理は、プロセス400のステップ407で実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1810の処理は、複数の被検出電子信号が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階を含んでいてもよい。幾つかの場合では、この同期化はステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。時として、複数の被検出S信号の同期化は、複数の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0175】
ステップ1815にて、妊娠哺乳動物の腹部又はその一部分の画像が、ステップ1810にて遂行された処理/分析の結果を用いて生成されることになる。画像は、例えば、母体腹部及び/又は胎児に含まれている組織(例えば皮膚、脂肪、子宮、羊水、胎児皮膚、胎児脳、胎児筋肉など)の様々な層についての密度及び/又は組織酸素飽和度の示度を示すことができる。妊娠哺乳動物の腹部の画像が組織酸素濃度の局所的ばらつきに関する情報を用いて生成される実施形態では、ステップ1815は、母体組織及び/又は胎児組織の様々な層及び/又は胎児組織のみの様々な層についての組織酸素飽和度を示すために、例えば、色分けされた画像(例えば組織酸素飽和度の異なるレベルを示すグレースケール又は異なる色の使用を介して)を生成することによって実行されてもよく、胎児組織のみというのは例えば以下に解説されている様にステップ1820がステップ1815に先んじて遂行される場合である。ステップ1815の実行を介して生成される画像2300の一例が
図23に提供されており、この画像は、ミリワットで計測される被検出光子の強度/数量のグレースケールで色分けされた局所的ばらつきを示しており、スケール2310に従って、より明るい影付きはより高い強度を示し、より暗い影付きはより低い強度を示す。幾つかの実施形態では、これらの強度値は、画像内での組織酸素化のレベルを求めるのに使用される光吸収特性を求めるのに使用することができる。追加的又は代替的に、強度値は、画像内の組織酸素化のレベルを直接的に求めるのに使用されてもよい。
【0176】
幾つかの実施形態では、胎児に入射した被検出光子は、飛行時間つまり発せられた光子が光子検出のための光検出器によって検出されるのにかかる時間を使用して、妊娠哺乳動物に入射した被検出光子から差別化されることができる。この飛行時間は、例えば胎児の場所、深さ、及び/又は位置を用いて求めることができる。胎児に入射したと判定された被検出光子は、胎児の組織酸素化をそこから求めることができるように画像2300の様な画像を生成するのに使用することができる。
【0177】
ステップ1820にて、胎児の場所及び/又は位置に関する情報が受信されることになる。この情報は、例えば超音波デバイス又はMRI画像を介して受信されてもよい。時として、胎児の位置及び/又は深さは、ユーザ及び/又は医療提供者(例えば医師及び/又は看護師)による例えば超音波又はMRI画像の分析に続いてユーザ及び/又は医療提供者によってコンピュータへ直接入力されてもよい。
【0178】
幾つかの実施形態では、ステップ1820はステップ1815に先んじて実行されることもあり、そうすると、妊娠哺乳動物の腹部の画像の生成より前に、例えば胎児の場所及び/又は位置に関する情報を関心の胎児組織に焦点を絞って使用し、胎児及び/又は胎児組織の画像のみを生成することができるようになる。これは、例えば胎児に対応している画像の部分のみ(母体腹部全体及び/又はその一部分とは対照的である)が生成されるので、ステップ1820の前にステップ1815を実行する場合に比べてかなりの時間と処理パワーを節約することができるだろう。
【0179】
随意的に、ステップ1825にて、胎児組織酸素飽和度レベルを求めるために胎児の場所及び/又は位置に対応する画像の部分が調べられ又は分析されてもよい。ステップ1825は、例えば、ステップ1815で生成された画像、画像と関連づけられる強度値、及び/又はステップ1810の処理及び分析済み信号に基づいて胎児組織酸素飽和度についての数値を求めることによって実行されてもよい。次いで、ステップ1830にて、生成された画像及び/又は求められた胎児組織酸素飽和度レベルの示度が、例えばディスプレイデバイス155の様なディスプレイデバイスへの画像/胎児組織酸素飽和度レベルの伝達を介してユーザへ提供されることになる。ステップ1825が遂行されない場合、胎児組織酸素飽和度レベルは、例えばステップ1830の実行を介して提供される母体腹部及び/又は胎児の画像を視覚的に観察するユーザ(例えば医師又は技術者)によって求められてもよい。
【0180】
図19は、DOTを使用して妊娠哺乳動物の腹部及び/又はその中に入っている胎児の画像を生成し、そこから胎児組織酸素飽和度レベルを求めるためのプロセス1900を説明するフローチャートを提供している。プロセス1900は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。DOTが遂行される場合、システム100は、レーザ(例えば同期ピコ秒パルス式ダイオードレーザ)又は1つ又はそれ以上のレーザへ連結された光ファイバであってもよいとされる複数の光源105と、検出器160の様な複数の高感度光電検出器(例えば単一光子感応検出器)と、光電検出器16の出力を処理するように構成されたプロセッサと、を含むものとすることができる。幾つかの実施形態では、複数のレーザ又は光ファイバ及び複数の光電検出器は、妊娠哺乳動物の腹部の中の胎児を画像化できるように腹部の部分をカバーし沿うように構成されたアレイ状に配置されていてもよい。
【0181】
最初に、複数の被検出電子信号が複数の光検出器(例えば検出器160)から、コンピュータ150の様なプロセッサ及び/又はコンピュータによって受信されることになる(ステップ1905)。複数の電子信号を検出するのに使用することのできる胎児プローブの例は
図1B及び
図1Cに提供されている。被検出電子信号は、光検出器によって、被検出電子信号へ連結されたトランシーバによって、及び/又は胎児プローブ115の様な胎児プローブによって、プロセッサ又はコンピュータへ直接的に送信されるようになっていてもよい。妊娠哺乳動物の腹部に入射しそこから出射する光は、光源105の様な複数の光源によって生成されることができ、何れの受容可能な周波数又は波長(例えば赤色及び/又は近赤外(NIR))であってもよい。受信される被検出電子信号は、検出器識別子(例えば変調フォーマット;波長;検出器の場所、向き、及び/又は位置、など)を含んでいてもよく及び/又は検出器識別子と関連づけられていてもよく、及び/又は、受信される被検出電子信号は、電子信号を検出している特定の検出器の位置及び/又は被検出電子信号の光子を投射している光源を知ることができるように、特定の時点にて投射されてもよい。
【0182】
1つ又はそれ以上の短い距離間隔における信号が、例えば、一例として胎児プローブ115、115B、及び/又は115Cからの(単数又は複数の)短い距離間隔における信号の伝達を介してステップ1910で受信されることになる。以上に指摘されている様に、短い距離間隔における信号は、複数の被検出電子信号への妊娠哺乳動物の組織の寄与に関する情報を提供することができる。2つ又はそれ以上の短い距離間隔における信号が受信される実施形態では、この複数の短い距離間隔における信号は、複数の被検出電子信号への妊娠哺乳動物の寄与及び/又は母体腹部の異なる場所の母体組織の特徴又は特性に関する情報を判定するのに使用することができる。
【0183】
幾つかの実施形態では、短い距離間隔における信号は、母体組織の1つ又はそれ以上の層及びその特性(例えば吸収、散乱、場所、幅など)に関する情報を含んでいてもよい。例えば、複数の短い距離間隔における信号が受信され、各短い距離間隔における信号が、異なる層(例えば皮膚、腹筋、脂肪、子宮壁、及び/又は羊水)に関する情報を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、短い距離間隔における信号は、本明細書で
図16及び
図17に関連して論じられているプロセス1600及び/又は1700のステップ1605、1705、及び/又は1715で受信される短い距離間隔における信号に似ていてもよい。
【0184】
次いで、ステップ1915又は1935の何れかが実行されることになる。ステップ1915が実行される場合、受信された被検出電子信号が1つ又はそれ以上の短い距離間隔における信号を使用して処理及び分析されて、例えば、複数の被検出電子信号のどの部分が、妊娠哺乳動物によって寄与されているのか及び/又は胎児から反射されていない又は胎児を透過していないのかが求められることになる。次に、例えば複数の被検出電子信号の妊娠哺乳動物によって寄与されている部分の示度又は近似を含む、被検出電子信号に対する減算又はフィルタの適用を介して、複数の被検出電子信号の妊娠哺乳動物によって寄与されている部分が被検出電子信号から除去されることになる(ステップ1920)。
【0185】
随意的に、ステップ1925にて、画像2300の様な胎児及び/又は胎児組織の画像が、被検出電子信号の残部分を使用して生成されてもよい。画像は、例えば、胎児組織(例えば皮膚、脂肪、脳など)の1つ又はそれ以上の層の密度及び/又は組織酸素飽和度の示度を示すことができる。妊娠哺乳動物の腹部の画像が組織酸素濃度の局所的ばらつきに関する情報を用いて生成される実施形態では、ステップ1925は、例えば胎児組織の1つ又はそれ以上の層についての組織酸素飽和度を示すために、色分けされた画像(例えば組織酸素飽和度の異なるレベルを示すグレースケール又は異なる色の使用を介して)を生成することによって実行されてもよい。ステップ1925で生成された画像が、胎児組織の1つ又はそれ以上の層についての組織酸素飽和度を視覚的に示している場合、ステップ1930は実行されず、プロセス1900はステップ1960へ進むことができ、それにより生成された画像は、例えばディスプレイデバイス155の様なディスプレイデバイスへの画像/胎児組織酸素飽和度レベルの伝達を介してユーザへ提供されることになる。
【0186】
ステップ1925が実行される場合、胎児及び/又は胎児組織の画像が分析されて、胎児及び/又は画像化された胎児組織の組織酸素飽和度レベルが求められ(ステップ1930)、次いでステップ1960にて、求められた胎児組織の酸素飽和度レベルの示度が、例えばディスプレイデバイス155の様なディスプレイデバイスへの画像/胎児酸素飽和度レベルの示度の伝達を介してユーザへ提供されることになる。
【0187】
ステップ1925が実行されない場合、複数の被検出電子信号の残部分が分析されて、胎児組織酸素飽和度レベルの示度が求められ、この求められた胎児組織酸素飽和度レベルの示度がステップ1960の実行を介してユーザへ提供されることになる。
【0188】
スップ1935にて、受信された被検出電子信号が、ステップ1810の実行と同様の方式で処理及び分析されることになる。次いで、ステップ1940にて、妊娠哺乳動物の腹部又はその一部分の画像が、ステップ1815の実行と同様の方式でステップ1935にて遂行された処理/分析の結果を用いて生成されることになる。以上に
図23に関連して論じられた画像2300は、ステップ1940で生成される様な例示としての一画像である。
【0189】
随意的に、ステップ1935及び/又は1915の実行は、例えばノイズを除去するため及び/又は複数の被検出電子信号それぞれの所望部分を増幅するために、複数の被検出電子信号を前処理する段階を含んでいてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407で実行され以上に
図4に関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1935及び/又は1915の実行は、複数の被検出電子信号の2つ又はそれ以上が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階を含んでいてもよい。一部の場合では、同期化はステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、複数の被検出電子信号の同期化は、複数の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0190】
ステップ1945にて、生成された画像及び/又は受信された被検出電子信号は、ステップ1910で受信された短い距離間隔における信号を用いて更に処理及び分析されて、例えば画像及び/又は被検出電子信号のどの部分が妊娠哺乳動物によって寄与されているかが求められることになる。次いで、画像及び/又は受信された被検出電子信号の妊娠哺乳動物によって寄与されている部分がステップ1940の画像から及び/又はステップ1905の受信された被検出電子信号から除去され(ステップ1950)、画像及び/又は受信された被検出電子信号の残部分が分析されて、胎児組織酸素飽和度のレベルが求められることになる(ステップ1955)。次いで、ステップ1960が実行されることになる。
【0191】
幾つかの実施形態では、胎児組織の酸素飽和度の決定及び/又は示度の提供(例えばステップ1930、1955、及び1960)は、以上に論じられているステップ1825及び/又は1830の実行と同様であってもよく、中でも特に、本明細書で論じられている様に、胎児組織酸素飽和度レベルについての時間加重平均(TWA)の決定、及び/又は、胎児組織酸素飽和度レベルと胎児心拍数及び/又は胎児心拍数のTWAとの同時表示を含んでいてもよい。
【0192】
時として、ステップ1915、1930、1935、1945、及び/又は1955の処理及び分析は、例えば、特定の光子又は光子のグループを検出した特定の検出器によって検出された光子の数、特定の被検出電子信号を提供している検出器の場所又は位置、特定の検出器によって検出された光の強度(又は光子の数)、特定の検出器によって検出された特定の波長又は波長範囲の光の強度(又は光子の数)、光散乱の程度、入射光の角度、出射光の角度、光子の経路長、光子の飛行時間などに関する情報を使用して遂行されてもよい。被検出電子信号がどのように処理され分析されるかに関する更なる詳細は以下に提供されている。
【0193】
プロセス1800及び1900のDOT画像化は、例えば時間ドメイン(TD)システム、周波数ドメイン(FD)システム、及び/又は定常状態ドメイン(SSD)システムを使用して遂行されてもよい。TDシステムが使用される場合、短い(例えば10ps~50ps)光パルスが、例えば100MHz~1000MHzの間の周波数で正弦波変調され、それが妊娠哺乳動物の腹部に例えば1MHz~50MHzの繰返し率で投射されてもよい。これらのパルスは、画像化される組織内部に光子密度波を現出させるだろう。そこから、入射光と被検出光の間の振幅差及び位相シフトが時間の関数として求められてもよい。発せられた光子(例えば後方散乱又は透過した)は、その後、光ファイバによって収集され、検出器160の様な検出器(例えば光電子倍増管)へ案内されるか、又は一部の実施形態ではマイクロチャネルプレート光電子倍増管(MCP-PMT)である検出器160の様な検出器によって直接検出されることになる。次いで、MCP-PMT信号が増幅され及び/又は減衰され、コンスタントフラクション弁別器(CFD:Constant Fraction Discriminator)へ入力され、その出力が時間-振幅変換器(TAC)へ提供されるようになっていてもよい。TACの出力は、パルス-高さ分析器(PHA)によって個別イベントとして数えられ、ピークカウント(例えば100,000カウント、1,000,000カウントなど)に達するまで累積されることになる。この情報は、妊娠哺乳動物の腹部の画像を生成するために及び/又は胎児組織ヘモグロビン酸素飽和度を求めるために用いられる時間応答曲線を生成するのに使用することができる。
【0194】
プロセス1800及び/又は1900のDOT画像化がFDシステムを用いて遂行される場合、妊娠哺乳動物の腹部へ光を投射するのに正弦波振幅変調光源が使用されてもよい。変調周波数は、例えば100MHz~1000MHzの間とすることができる。FDシステムの計測されるパラメータは、位相シフト(φ)と、入射光と比較させる組織を透過した光の復調と、を含んでいてもよい。復調(M)は、以下に再現されている方程式6を介して理解されることができる。
【数6】
方程式6
ここに、
AC
i=入射光の強度のAC振幅オフセット;
DC
i=入射光の強度のDCオフセット;
ACo=出射光のAC振幅;及び、
DCo=出射光のDCオフセット、である。
【0195】
位相シフト(φ)及びMが全周波数について計測されてもよく、一部の事例では、φ及びMを推定するために収集されたデータに対してフーリエ変換が遂行されてもよい。
【0196】
TDシステムは、位相シフトと変調を計測するのに使用することのできる相互相関技法を遂行するため、光源(例えばレーザ)(例えば光源105)と、強度変調器と、光送達システム(例えば胎児プローブ115)と、光収集/検出システム(例えば検出器160)と、プロセッサ(コンピュータ150など)とを含むことができる。
【0197】
プロセス1800及び/又は1900のDOT画像化がSSDシステムを用いて遂行される場合、光源が、例えば2つの異なる波長(例えば700nmと850nmの間)の光を妊娠哺乳動物の腹部上の様々な点に継続的に発し、妊娠法乳動物の腹部を出射する光の強度が検出器160の様な1つ又はそれ以上の検出器を介して計測されてもよい。検出器の出力電圧が計測され、次いで、例えば検出された光の局所的強度を示すことのできる妊娠哺乳動物の腹部の画像を生成するように処理されてもよい。
【0198】
時として、DOTシステムによって取得されたデータの処理は、被検出電子信号が吸収μa及び輸送散乱μ’sの係数を与えるために拡散理論に基づく分析式へ当てはめられるというバックプロジェクションアルゴリズムの適用を伴うこともある。その様な処理は、妊娠哺乳動物の腹部内部の空間依存性の光学的特性のマップを現出させることができる。空間依存性の光学的特性は、光が通過してゆく組織の種類(例えば皮膚、筋肉、胎児など)の間の違いを示し、これは胎児組織酸素飽和度を理解する又は求めるのに使用することができる。時として、これらの計算は更に、検出された光子が組織の特定の場所又は特定の層を通過した確率を考慮に入れてもよい。これらの確率は、妊娠哺乳動物の腹部組織の異なる領域又は異なる層へ異なる特性(例えば重み)を割り当てるのに使用することができるだろう。
【0199】
追加的又は代替的に、DOTシステムによって取得されたデータの処理は、モデルベースの反復画像再構成(MO-BIIR)アルゴリズムのデータへの適用を伴っていてもよい。このプロセスは3つの段階を伴い、第1の段階は、異なる組織層、組織の種類、組織の場所、胎児の場所などについて、μa及びμ’sの様なシステムパラメータの近似値に基づく被検出電子信号及び/又は計測値の予測を提供するフォーワードモデルの適用である。幾つかの実施形態では、これらの予測パラメータは、典型的な妊娠哺乳動物の標準値又は平均値によって情報提供され、妊娠哺乳動物の腹部又は胎児の位置、場所、又は光学的特性についての典型的な値に基づくものであってもよい。追加的又は代替的に、これらの予測パラメータは、例えば或る特定の妊娠哺乳動物の腹部の特徴(例えば子宮の厚さ、皮膚の厚さ、胎児組織の種類、胎児組織の厚さ、胎児の深さなど)を示す超音波及び/又は短い距離間隔における信号情報を使用し、特定の状況に合わせてカスタマイズされてもよい。
【0200】
第2の段階は、予測データを受信データと比較することである。この比較は、目的関数又はノルムとも呼ばれる誤差関数をもたらすだろう。第3の段階は、第1段階(即ちフォーワードモデル)のシステムパラメータを更新して予測データの新たなセットを提供することである。この処理は、例えば誤差関数が受容可能な値になるまで反復的に繰り返されてもよい。
【0201】
場合により、プロセス700及び/又は1900で受信された被検出電子信号が、母体腹部へ投射された2つの異なる波長の光の結果であるかもしれない。第1の波長(λ1)についての一例として値は760nmと805nmの間の範囲にあり、第2の波長(λ2)についての例示としての値は808nmと830nmの間の範囲にある。多くの場合、λ1とλ2の光は単色であるか又は電磁スペクトルの狭帯域内にあるだろう。両方の波長の光が妊娠哺乳動物の腹部に入射し、光ケーブルを介して収集され、検出器160の様な1つ又はそれ以上の検出器へ送られ、及び/又は検出器160によって直接検出されることになる。検出器によって収集されたデータは、次いで、例えばベール-ランベルトの法則を介して処理されて、各検出器での吸収係数の変化及び酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[HbO])並びに脱酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[Hb])が求められてもよい。
【0202】
再構成アルゴリズムは、様々な光源位置と検出器位置の間の経路長の差を勘案するように適用され、各検出器での吸収係数の予測差Δμaを再構築するのに使用することができる。次いで、方程式8a及び方程式8bが解かれて、酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[HbO])及び脱酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[Hb])が求められることになる。次いでこれらの値は、酸素化ヘモグロビン飽和度の局所的ばらつき(Δ[HbO])及び脱酸素化ヘモグロビン飽和度の局所的変化(Δ[Hb])を示す妊娠哺乳動物の腹部の二次元マップ又は三次元マップを生成するのに使用することができる。酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[HbO])及び脱酸素化ヘモグロビン飽和度の変化(Δ[Hb])は、例えばグレースケール、色分けを使用して示されてもよく、画像は、地形図的、断面的、及び/又は体積的であってもよい。このプロセスは胎児ヘモグロビン酸素飽和度としての絶対値を提供するものではないが、急速に又はゆっくりと下降してゆく胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの場合がそうであるように胎児が仮死状態にあることを示唆し得る胎児ヘモグロビン酸素飽和度に対する変化を判定するべく胎児ヘモグロビン酸素飽和度を経時的にモニターするのに使用することのできる、胎児ヘモグロビン酸素飽和度についての相対値をまさに提供するものである。
【0203】
図20は、マルチソース周波数ドメインスペクトロメータを使用して胎児ヘモグロビン酸素飽和度を非侵襲的に求めるためのプロセス2000のフローチャートを提供している。プロセス2000は、例えばシステム100又はその何れかの構成要素又は構成要素の何れかの組合せによって遂行されてもよい。
【0204】
最初に、プロセス400、500、600、700、1000、1200、1300、1600、1700、1900によって生成された胎児信号の様な複数の胎児信号が受信されることになる(ステップ2005)。受信された胎児信号は、2つ又はそれ以上の波長であり、光源105の様な複数の光源から投射され検出器160の様な検出器によって検出された光に対応しているとしてもよい。胎児プローブ115、115A、115A’、115B、及び/又は115Cの様なプローブ内の各光源の位置及び/又は各光源と検出器の間の距離(r)は既知であってもよい。胎児信号を生成するのに使用される光(即ち妊娠哺乳動物の腹部へ投射される光)は正弦波変調されていてもよい。光は、光源のそれぞれから連続式に(即ち一度に1つずつ)発せられるようになっていて、一部の事例では、例えば各光源からの光が別々に検出/分析できるようにマルチプレクサ回路によって調整されてもよい。一部の場合では、光源のそれぞれは、所望の期間数について所望周波数(例えば300MHz、400MHz、又は500MHz)の倍数である時間に亘って光を発するように設定されてもよい。これはマルチプレクサ回路によって調整されてもよい。
【0205】
随意的に、ステップ2007にて、複数の胎児信号は、例えばノイズを除去するために及び/又は胎児信号の所望部分を増幅するために前処理されてもよい。この前処理は、プロセス400のステップ407で実行され以上に
図4関連して論じられている前処理と同様であってもよい。追加的又は代替的に、ステップ1935及び/又は1915の実行は、例えば胎児信号の2つ又はそれ以上が時間ドメインで整列するようにそれらを同期させる段階を含んでいてもよい。一部の場合では、この同期化はステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、複数の胎児信号の同期化は、第1及び第2の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して行われてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。
【0206】
受信された及び/又は前処理された胎児信号は、光源と検出器の間の位相ラグ(φ)、DC強度、及びAC振幅についての値をもたらすように処理(例えば高速フーリエ変換)されることになる(ステップ2010)。
【0207】
これらの値は、検出器からの距離rの関数として個別にプロットされ、各グラフの勾配が求められ、それによりSac、Sdc、及びSφの値がもたらされることになる(ステップ2015)。
【0208】
S
ac、S
dc、及びS
φの値を使用して、各胎児信号について吸収係数μ
a及び等価散乱係数μ
sが求められることになる(ステップ2020)。S
ac、S
dc、及びS
φを使用してμ
s及びμ
aを求める1つのやり方は、以下に提供されている方程式7、方程式8、及び/又は方程式9を用いる無限幾何学計算を介する。
【数7】
方程式7
ここに、
U
dc=平均光子密度;
S
dc=DC強度勾配;
r=光源と検出器の間の距離;及び、
K
dc=rから独立したDC強度定数、である。
【数8】
方程式8
ここに、
U
ac=光子密度振動の振幅;
S
ac=AC振幅勾配;及び、
K
ac=rから独立したAC振幅定数、である。
【数9】
方程式9
ここに、
φ=光源による発光と検出器による検出の間の位相ラグ;
S
φ=位相ラグ勾配;及び、
K
φ=rとは独立した位相ラグ定数、である。
計測された数量(DC強度、AC振幅、又は位相ラグ)のうちの2つを使用し、位相ラグとDC強度の値を使用する以下の方程式10及び方程式11の様な方程式を介してμ
s及びμ
aの解を求めることができる。
【数10】
方程式10
ここに、
ω/2Π=変調周波数;及び、
v=媒体中の光の速度、である。
【数11】
方程式11
【0209】
このやり方で散乱係数を求めることで、経路長に関係なく胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求めることが可能になる。これは、実質的に妊娠哺乳動物間で経路長に差があり、よって標準経路長に基づく近似値は正確でない可能性があることから、経腹的胎児オキシメトリを行う際に役立つだろう。胎児ヘモグロビン酸素飽和度の計算から経路長を除去することで、経路長を勘案して較正する必要のない胎児ヘモグロビン酸素飽和度の計算が可能になる。これにより、これらの決定からかなりの複雑さが取り除かれ、更にはこれらの決定から潜在的な誤差源が取り除かれる。
【0210】
μ
s及びμ
aの解が求められたら、次いで胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルが、例えば以下の方程式12及び方程式13を用いて求められてもよい(ステップ2025)。
【数12】
方程式12
ここに、
HbO
2=酸素化ヘモグロビンの濃度値;
μ
a
λ1=第1の波長の吸収係数;
μ
a
λ2=第2の波長の吸収係数;
ε
HbO2
λ1=第1の波長についての酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
ε
HbO2
λ2=第2の波長についての酸素化ヘモグロビンの吸光係数;
ε
Hb
λ1=第1の波長についての脱酸素化ヘモグロビンの吸光係数;及び、
ε
Hb
λ2=第2の波長についての酸素化ヘモグロビンの吸光係数、である。
吸光係数は、第1及び第2の波長の検討中の組織又は血液への投射時のモル吸光係数であり、既知の数量である。
【数13】
方程式13
ここに、
Hb=脱酸素化ヘモグロビンの濃度値、である。
【0211】
決定後、Hb濃度とHbO濃度の比が計算されて、胎児についてのヘモグロビン酸素飽和度レベルが求められることになる。次いで、この求められた胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度が、例えばディスプレイデバイス155の様なコンピュータディスプレイデバイス上の胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルのディスプレイを容易にする段階を経てユーザへ提供されることになる(ステップ2030)。
【0212】
幾つかの実施形態では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度の決定(ステップ2025)及び/又は示度の提供(ステップ2030)は、以上に論じられているステップ240及び/又はステップ245の実行と同様であり、中でも特に、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルについてのTWAの決定及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルと胎児心拍数及び/又は胎児心拍数のTWAとの同時表示を含んでいてもよい。
【0213】
図21は、受信されたTD-DCS信号を処理して胎児信号を生成するためのプロセス2100を説明するフローチャートである。プロセス2100は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されてもよい。TDシステムが使用される場合、システム100は、1つ又はそれ以上の光源105に、例えば100MHzと1000MHzの間の周波数で正弦波変調させることのできる短い(例えば10ps~50psの)光パルスを発するように仕向けることによってDCSを遂行するように構成されてもよい。これらの光パルスは、妊娠哺乳動物の腹部へ例えば1MHz~50MHzの繰返し率で投射されてもよい。これらのパルスは画像化される組織内部に光子密度波を現出させるだろう。そこから、入射光と被検出光の間の振幅差及び位相シフトが時間の関数として求められることになる。発せられた光子(例えば後方散乱又は透過した)は次いで光ファイバによって収集され、検出器(例えば光電子倍増管)へ案内されるか又はマイクロチャネルプレート光電子倍増管(MCP-PMT)である検出器によって直接検出されることになる。次いでMCP-PMT信号が増幅され及び/又は減衰され、コンスタントフラクション弁別器(CFD:Constant Fraction Discriminator)へ入力され、その出力が時間-振幅変換器(TAC)へ提供されるようになっていてもよい。TACの出力は、パルス-高さ分析器(PHA)によって個別イベントとして数えられ、ピークカウント(例えば100,000カウント、1,000,000カウントなど)に達するまで累積されることになる。この情報は、妊娠哺乳動物の腹部の画像を生成するために及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度を求めるために用いられる時間応答曲線を生成するのに使用することができる。
【0214】
幾つかの事例では、システム100は、光を組織へ送達するようにNIRで動作する長いコヒーレンス長さ(>5m)のレーザである光源105を含み、検出器160は受信される光子1つ1つについて電子パルスを出力する単一光子計数型アバランシェフォトダイオード(SPAD)検出器とすることができる。システムは、更に、APDによって検出される全ての光子の到着時間を追跡し、全ての光子対の時間的隔たりから強度相関関数を導出する光子相関器(独立型デバイスであってもよく及び/又はコンピュータ150に含まれていてもよい)を含むことができる(
図1参照)。相関器は、時間的相関関数の演算を遂行するように構成されたハードウェア及び/又はソフトウェアとすることができる。
【0215】
最初に、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児に入射しそこから出射する光信号に対応しているTD-DCS信号が、例えばコンピュータ150の様なコンピュータ又はプロセッサによって受信されることになる(ステップ2105)。被検出電子信号は、検出器160の様な検出器によって/検出器から直接的又は間接的にコンピュータへ伝達されてもよい。
【0216】
ステップ2110にて、胎児心拍数信号が例えばドップラー/超音波プローブ135から受信されることになる。ステップ2115にて、母体心拍数信号が、例えばパルスオキシメトリプローブ130、NIRS成体ヘモグロビンプローブ125、及び/又は血圧感知デバイスから受信されることになる。随意的に、二次的信号がステップ2120にて受信されてもよい。例示としての二次的信号は、限定するわけではないが、妊娠哺乳動物についての呼吸信号、妊娠哺乳動物の羊水中に胎便が検出されたかどうかの示度、子宮緊張を示す信号、妊娠哺乳動物のヘモグロビン酸素飽和度レベルを示す信号、妊娠哺乳動物のパルスオキシメトリ信号、及びそれらの組合せを含む。
【0217】
ステップ2125にて、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は二次的信号を相関づける及び/又は同期させるべきかどうかが判定されることになる。そうするべきという場合には同期化及び/又は相関づけのプロセスが遂行されることになる(ステップ2130)。時として、ステップ2130の実行は、時間ドメインでの信号の同期化及び/又は信号を記録させる計測の1つ又はそれ以上のスケールの相関を含んでもよい。幾つかの事例では、この同期化はステップ425の相関づけ及び/又は同期化と同様であってもよい。幾つかの事例では、複数の胎児信号の同期化は、第1及び第2の被検出電子信号内に存在するタイムスタンプを使用して遂行されてもよい。これらのタイムスタンプは、例えばタイムスタンプ刻印デバイス185によって生成されていてもよい。信号が同期化又は相関づけられなくてもよいとなった場合、プロセス2100はステップ2135へ進むことができる。
【0218】
ステップ2135では、胎児信号が、受信された信号の2つ又はそれ以上を使用して生成され、それら信号のうちの少なくとも1つは被検出電子信号とすることができる。多くの事例では、ステップ2135の実行は、胎児心拍数信号、母体心拍数信号、及び/又は1つ又はそれ以上の二次的信号を使用して、受信された被検出電子信号の胎児によって寄与されている部分の様な信号部分を単離し又はそれ以外のやり方で抽出する段階を伴う。ステップ2135の実行は、本明細書でプロセス400、500、600、700、1000、1200、1300、1600、1700、1900に関連して説明されている胎児信号の単離と同様であってもよい。幾つかの実施形態では、ステップ2130及び/又は2135の実行は、例えば信号対ノイズ比を小さくするため又は信号を増幅するための1つ又はそれ以上の手続きの実行を含んでいてもよく、その様な手続きは、限定するわけではないが、フィルタの適用、既知のノイズ成分の減算、2つの信号の乗算、正規化などを含む。幾つかの事例では、ステップ2135の実行は、信号の選好部分を増幅するため及び/又は信号中のノイズを小さくするためにロックイン増幅器を用いて被検出電子信号を処理する段階を含んでいてもよい。信号の選好部分は、一部の事例では、妊娠哺乳動物の腹部に入射する光の既知の数量(例えば波長又は周波数)に対応しているとしてもよい。
【0219】
図22は、TD-DCS及び/又は胎児信号を用いて胎児の血流及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度の示度を求めるためのプロセス2200のフローチャートを提供している。プロセス2200は、例えばシステム100及び/又はその構成要素によって遂行されることができ。
【0220】
ステップ2205にて、妊娠哺乳動物の腹部及びその胎児に入射しそこから出射する光信号に対応しているTD-DCS及び/又は胎児信号が受信されることになる。胎児信号は、TD-DCS信号であり、プロセス400、500、600、700、1000、1200、1300、1600、1700、1900、及び/又は2100のうちの1つ又はそれ以上のプロセスの実行を介して生成されていてもよい。時として、ステップ2205で受信されたTD-DCS信号は、例えばノイズを除去するため及び/又は例えばTD-DCS信号から妊娠哺乳動物の1つ又はそれ以上の交絡効果を除去することによってTD-DCS信号の胎児に入射した光に対応している部分を単離するために前処理されてもよい。
【0221】
ステップ2210にて、TD-DCS/胎児信号の数えられた光子毎に飛行時間が求められることになる。幾つかの実施形態では、飛行時間(TOF)は発光の時点と検出の時点の差として計測されてもよい。他の実施形態では、飛行時間は相対論的決定(例えば比較的短い又は長い飛行時間)であってもよい。一部の事例では、絶対飛行時間及び/又は相対飛行時間は、TD-DCS/胎児信号への時間ゲート戦略の適用を介して及び/又はTD-DCS/胎児信号の例えばDCS自己相関関数による数学的分析を介して求められてもよい。飛行時間情報を用いると、妊娠哺乳動物の組織及び/又は胎児組織を通る短い光子経路と長い光子経路を差別化し、それを使用して、例えば妊娠哺乳動物/胎児組織の異なる深さ及び/又は層についての血流指数及び/又はヘモグロビン飽和度レベルを求めることが可能になる。光子についての飛行時間を使用することができる。
【0222】
幾つかの実施形態では、TD-DCS/胎児信号は、時間相関単一光子計数(TCSPC:Time-Correlated Single-Photon Counting)を介して実現され、それを使用して、それぞれの検出された光子に2つの値、即ちTPSFを得るための光源から検出器までのTOFと絶対到着時間の時間タグをつけることができる。絶対到着時間は、DCSについての時間的自己相関関数を計算するのに使用することができる。これらの実施形態では、ステップ2210は、時間的点像分布関数(TPSF:Temporal Point-Spread Function)の異なる時間又はゲートに亘る相関関数を分析することによって遂行されてもよく、複数の光子についての短い飛行時間と長い飛行時間の間の差別化を可能にすることができる。これは次いで、組織の異なる深さの特性(例えば血流の速度、ヘモグロビン飽和度など)を評価するのに使用することができる。一部の事例では、TPSF情報は、妊娠哺乳動物の腹部の組織の異なる層について散乱係数及び/又は吸収係数を求めるのにも使用することができる。時として、組織の異なる深さ及び/又は層の特性の評価は、以上に
図11のプロセス1100及び
図12のプロセス1200に関連して解説されている様に単一離隔分析及び/又は二重離隔分析を使用して得られた情報を組み入れてもよい。
【0223】
ステップ2215にて、受信されたTD-DCS/胎児信号が、例えば信号中に含まれる光子についての選好TOF、選好TOF範囲、及び/又はTOF情報(例えば最も速いTOF又は最も遅いTOF)を使用してフィルタリングされるべきかどうかが判定されることになる。受信されたTD-DCS/胎児信号がフィルタリングされないことになった場合、プロセス2200はステップ2225へ進むことができる。
【0224】
ステップ2215の判定が肯定である場合、受信されたTD-DCS/胎児信号は、1つ又はそれ以上のTOFベースの判定基準を使用してフィルタリングされることになる。一部の事例では、ステップ2220で使用されるTOFベースのフィルタリング判定基準は、選択された範囲内のTOFを有する光子だけが考察されるように、最小TOF閾値及び/又は最大TOF閾値であってもよい。幾つかの事例では、短いTOFと長いTOFの間の差別化は、DCS自己相関関数への時間ゲート戦略の適用によって容易にされてもよい。
【0225】
一般に、より長いTOFを有する光子は組織の中へより深く浸透している。母体組織の様々な層の深さが既知である場合、及び/又は母体組織の様々な層の深さが近似され得る場合、即ち、例えば、
図2Aの画像201及び
図2Bの画像202の様な超音波及び/又はMRI画像によって提供される妊娠哺乳動物の解剖学に関するデータを介して、以上に
図14A、
図14B、
図15A、及び
図15Bに関連して論じられている妊娠哺乳動物の組織の層によって提供されるものとしての組織の場所、密度、又は他の光学的特性の近似値を介して、以上にプロセス1600及び1700に関して説明されている様な短い距離間隔における分析技法を介して、及び/又は、例えば拡散方程式によって容易になる組織又は組織層モデル化を介して、近似され得る場合、フィルタリングされるべきTOFの範囲は、胎児の深さと一致するTOFへ設定されてもよく、及び/又は妊娠哺乳動物の組織のみを通過した光子を除外するように設定されてもよい。このやり方では、受信されたTD-DCS/胎児信号は、例えば妊娠哺乳動物のみを通過したことを示すTOFを有する光子を除去するようにフィルタリングされてもよい(ステップ2220)。そうすると、TD-DCS/胎児信号の残部分は胎児に入射した光子に関する情報を担持しているということになる。TD-DCS/胎児信号の残部分は、フィルタリング済みTD-DCS/胎児信号と呼ばれることもある。
【0226】
幾つかの事例では、ステップ2220のフィルタリングは、組織の上層部を通過する光が組織の深層部を通過する光よりも短いTOFを有するはずであるとの理解に基づくことができる。TOFの差は、組織内の赤血球の動きによって引き起こされることもあり、それは検出される被検出強度(即ち光子の数)に流れ依存性の変動を生じさせる可能性がある。これは、胎児に入射して胎児の血流によって影響を受けるように十分に深く妊娠哺乳動物の腹部の中へ進んだことと整合するTOFを有する光子を全体TD-DCS及び/又は胎児信号から分離することを可能にする。
【0227】
ステップ2225にて、TD-DCS/胎児信号及び/又は改善されたTD-DCS/胎児信号の更なる処理が所望及び/又は必要であるかどうかが判定されることになる。この決定は、例えば、信号対ノイズ比、胎児信号の明瞭さ、及び/又は胎児信号の強さ又は強度に基づいていてもよい。フィルタリング済みTD-DCS/胎児信号及び/又はTD-DCS/胎児信号の更なる処理が所望及び/又は必要でない場合、プロセス2200はステップ2235へ進むことができる。そうでない場合はステップ2230にて、改善された胎児信号を生成するようにTD-DCS及び/又は胎児信号は更に処理されることになる。ステップ2230の処理は、限定するわけではないが、フィルタリング、増幅などを含むことができる。ステップ2230での受信された信号に対する更なる処理の種類の例は、本明細書で
図4、
図5、
図6、
図7、
図10、
図12、
図13、
図16、
図17、
図19、
図20、及び
図21に関してそれぞれ論じられているプロセス400、500、600、700、1000、1200、1300、1600、1700、1900、2000、2100に関連して以上に提供されている。
【0228】
次に、TOF、TD-DCS/胎児信号、及び/又は改善されたTD-DCS/胎児信号が分析されて、限定するわけではないがベール・ランベルトの法則を含む何れかの適切な方法を使用して胎児血流及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの示度が求められることになる(ステップ2235)。ステップ2240にて、ユーザ(例えば臨床医学者、医師、看護師など)への示度の提供が、例えばディスプレイデバイス155上のGUI又は他の表示器としてのディスプレイを介して容易にされてもよい。幾つかの実施形態では、受信されたTD-DCS/胎児信号は、胎児組織を通って動く赤血球によって生じるスペックルパターン及び/又はスペックルパターンの変化の示度を含んでいてもよい。時として、プロセス2200の実行は、スペックルのばらつきを定量化する段階と単一スペックルの時間的強度自己相関曲線を計測する段階を含んでいる。この自己相関曲線の経時的減衰は、プロセス2200又はその一部分に適合させた拡散方程式のバージョンへ入力されて、血流の指数(BFi)をもたらすことができる。
【0229】
幾つかの実施形態では、胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの決定(即ちステップ440、1030、1325、1635、1740、1825、1930、1955、及び/又は2235の実行)及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルのユーザへの提示(即ちステップ440、1035、1330、1640、1745、1830、1960,及び/又は2240の実行)は、胎児血流及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの移動平均、及び/又は、胎児血流及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの1つ又はそれ以上の期間(例えば5分、10分、15分、30分、60分など)に亘る時間加重平均(TWA)を計算する段階を含んでいてもよく、その結果、臨床医学者は、胎児血流及び/又は胎児ヘモグロビン酸素飽和度の平均値を観察し、それらが経時的にどのように変化し得たのか及び/又は胎児が特定の血流及び/又はヘモグロビン酸素飽和度をどれほど長く有していたのかを判定することができるだろう。このやり方では、臨床医学者は、胎児に顕著な代謝性アシドーシスの危険があるかどうかを判定することが可能になるだろう。TWAは方程式16を介して計算されてもよい。
【数14】
方程式16
ここに、
t=持続時間;及び、
l=胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベル、である。
例えば、検討中の持続時間が15分で、胎児が胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベル70を7分間、61を5分間、55を3分間有した場合、方程式1によるこの期間についてのTWAは、
15分間についてのTWA=[(7*70)+(5*61)+3*55)]/(7+5+3)=64
となるだろう。
【0230】
代謝性アシドーシスの1つ又はそれ以上の指標(例えば軽度、中等度、重度など)及び/又は(単数又は複数の)変曲点が、胎児の血流及び/又はヘモグロビン酸素飽和度及び/又は胎児の血流及び/又はヘモグロビン酸素飽和度レベルの平均と共に臨床医学者へ提供されてもよい。これらの指標/変曲点は、例えば以前に行われた胎児代謝実験及び/又は臨床研究/臨床試験中に集められた情報に基づいていてもよい。幾つかの実施形態では、(単数又は複数の)指標/(単数又は複数の)変曲点は、例えば、グラフ上に1つ又はそれ以上の指標又は変曲点を示す胎児の血流/ヘモグロビン酸素飽和度レベル及び/又は胎児の血流/ヘモグロビン酸素飽和度レベルの平均のグラフを介して、又は胎児の血流/ヘモグロビン酸素飽和度レベル及び/又は胎児の血流/ヘモグロビン酸素飽和度レベルの平均が臨床医学者へ表示される仕方(例えば色、フォント、など)の変化を介して、臨床医学者へ提供されてもよい。追加的又は代替的に、胎児の血流及び/又はヘモグロビン酸素飽和度レベルが臨界閾値より下であると判定された場合、又は臨界持続時間に亘って臨界TWAより下である判定された場合、これは代謝性アシドーシスについての変曲点を表現している及び/又は重大な代謝性アシドーシスが起こりつつあることを示唆しているのだが、その様な場合にはアラーム又はその他の表示が臨床医学者へ提供されるようになっていてもよい。
【0231】
追加的又は代替的に、ステップ2235及び/又は2240の実行は、胎児の心拍数と胎児ヘモグロビン酸素飽和度レベルの時間加重平均との同時提供、例えばそれら両方の値を1つ又はそれ以上のグラフにプロットしそれらが同時に視覚的に表示されるようにすることを介しての同時提供を含んでいてもよい。追加的又は代替的に、胎児の血流及び/又はヘモグロビン酸素飽和度レベルのTWAが胎児心拍数のTWAと組み合わされてもよく、例えばグラフ又は表を介した表示のためにそれらを同時に提供することによって組み合わされてもよい。
【0232】
本明細書に記載のシステム、方法、デバイス、及び装置は、妊娠哺乳動物に対し、限定するわけではないが、分娩及び娩出中の胎児の健康をモニターすること、分娩開始前の胎児の健康をモニターすること、子宮内胎児処置中の胎児の健康をモニターすること、及び/又は医療処置(例えば手術、投薬など)の施行中の胎児の健康をモニターすることを含む多くの様々な適応について、妊娠中の胎児の組織及び/又はヘモグロビン酸素化を評定するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0233】
100 胎児ヘモグロビン酸素飽和度を検出し及び/又は求めるためのシステム
105、105A、105B 光源
111 ハウジング
115、115A、115’、115B、115C 胎児プローブ
120 電気アイソレータ
121 電源
125 NIRS成体ヘモグロビンプローブ
130 パルスオキシメトリプローブ
131 通信ポート
135 ドップラー及び/又は超音波プローブ
140 子宮収縮計測デバイス
141 パワーポート
145 受信器
150 コンピュータ
151 プロセッサ
155 ディスプレイデバイス
160、160A-160V 検出器
170 データベース
175 心電図(ECG)機械
180 換気/呼吸信号源
185 タイムスタンプ刻印デバイス
201、202 母体組織の層の説明図
205A、205B 皮下脂肪層
210A、210B 腹筋(骨格筋)層
215A、215B 腹腔内脂肪層
220A、220B 子宮壁(平滑筋)層
225A 羊水層
230A、230B 胎児
305 妊娠哺乳動物の腹部
310 胎児
315 第1の光信号
320 第2の光信号
320A 第2の光信号の第1の部分
320B 第2の光信号の第2の部分
330 母体組織
340 子宮
900 プロセッサベースのシステム
902 バス
904 プロセッサ
906 主メモリ
908 読み出し専用メモリ(ROM)
910 ストレージデバイス
912 ディスプレイ
914 入力デバイス
916 カーソル制御デバイス
918 通信インターフェース
1405 母体組織
1415 母体皮膚層
1420 母体皮下脂肪層
1425 母体腹筋(骨格筋)層
1430 母体腹腔内脂肪層
1435 子宮壁(平滑筋)層
1440 羊水層
1450 コンピューティングデバイス
1510 小型検出器
2300 画像例
2310 スケール
【手続補正書】
【提出日】2024-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサによって、当該プロセッサへ通信可能に連結された検出器からの複数の被検出電子信号を受信する段階であって、前記複数の被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光であって前記検出器によって検出され当該被検出電子信号へ変換された光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、複数の被検出電子信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信する段階と、
前記複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルを求める段階と、
前記プロセッサによって、ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にする段階と、
を備えている方法。
【請求項2】
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成する段階、
を更に備えている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、二次的信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記胎児についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0232
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0232】
本願発明の実施態様は、例えば、次のとおりである。
[実施態様1]
プロセッサによって、当該プロセッサへ通信可能に連結された検出器からの複数の被検出電子信号を受信する段階であって、前記複数の被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光であって前記検出器によって検出され当該被検出電子信号へ変換された光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、複数の被検出電子信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の腹部内の前記胎児の深さの示度を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記胎児の深さの示度に応じて、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している単離された前記部分を使用して胎児組織酸素飽和度レベルを求める段階と、
前記プロセッサによって、ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にする段階と、
を備えている方法。
[実施態様2]
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成する段階、
を更に備えている実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、実施態様2に記載の方法。
[実施態様4]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、二次的信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様5]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様6]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記胎児についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記短い距離間隔における信号に対応している部分を除去する段階と、
を更に備えている、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様11]
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様12]
プロセッサによって、当該プロセッサへ通信可能に連結された検出器からの複数の被検出電子信号を受信する段階であって、前記複数の被検出電子信号は、妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光であって前記検出器によって検出され当該被検出電子信号へ変換された光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、複数の被検出電子信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信する段階と、
前記複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を単離する段階と、
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記単離された部分を使用して、胎児組織酸素飽和度レベルを求める段階と、
前記プロセッサによって、ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にする段階と、
を備えている方法。
[実施態様13]
前記プロセッサによって、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成する段階、
を更に備えている実施態様12に記載の方法。
[実施態様14]
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、実施態様13に記載の方法。
[実施態様15]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、二次的信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の処理された部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様12に記載の方法。
[実施態様16]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様12に記載の方法。
[実施態様17]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様12に記載の方法。
[実施態様18]
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求める前記段階は、
前記プロセッサによって、前記胎児についての心拍数信号を受信する段階と、
前記プロセッサによって、前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離する段階と、
を更に備えている、実施態様12に記載の方法。
[実施態様19]
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、実施態様12に記載の方法。
[実施態様20]
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、実施態様12に記載の方法。
[実施態様21]
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、実施態様12に記載の方法。
[実施態様22]
複数の光信号を受信し、前記複数の光信号を個々の複数の被検出電子信号へ変換し、前記複数の被検出電子信号をプロセッサへ伝達するように構成された検出器であって、前記複数の光信号は妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児から発せられた光に対応しており、前記発せられた光は光源によって前記妊娠哺乳動物の腹部及びその中に入っている胎児へ投射された光の一部分である、検出器と、
前記検出器及びメモリへ通信可能に連結されたプロセッサと、
前記メモリであって、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物の腹部内の前記胎児の深さの示度を受信するように、
前記胎児の前記深さの前記示度に応じて、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している部分を求めるように、
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して胎児組織酸素飽和度レベルを求めるように、及び、
ユーザへの前記胎児組織酸素飽和度レベルの提供を容易にするように、仕向ける命令のセットを記憶させた前記メモリと、
を備えているシステム。
[実施態様23]
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに、
前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を使用して前記胎児又はその一部分の画像を生成するように仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様24]
前記画像は胎児組織酸素飽和度レベルの局所的ばらつきを示している、実施態様23に記載の方法。
[実施態様25]
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
二次的信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記二次的信号を使用して分析して、前記受信された複数の被検出電子信号の前記分析した部分のうちの、前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様26]
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物についての心拍数信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様27]
前記命令のセットは、更に、前記プロセッサに前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物についての呼吸信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記妊娠哺乳動物についての前記呼吸信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様28]
前記命令のセットは、更に、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記胎児についての心拍数信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記胎児についての前記心拍数信号を使用して分析して、前記複数の被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を単離するように、更に仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様29]
前記命令のセットは、更に、前記被検出電子信号の前記胎児に入射した光に対応している前記部分を求めるように仕向けて、前記プロセッサに、
前記妊娠哺乳動物の前記腹部にのみ入射した光に対応している短い距離間隔における信号を受信するように、及び、
前記受信された複数の被検出電子信号を、前記短い距離間隔における信号を使用して分析して、前記被検出電子信号の前記短い距離間隔における信号に対応している部分を除去するように、更に仕向ける、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様30]
前記胎児の前記深さは、超音波デバイス、ドップラーデバイス、及び前記妊娠哺乳動物の腹部の画像のうちの少なくとも1つから受信される、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様31]
前記複数の被検出電子信号は複数の検出器から受信される、実施態様22に記載のシステム。
[実施態様32]
前記受信された複数の被検出電子信号は時間ドメインで同期される、実施態様22に記載のシステム。
本明細書に記載のシステム、方法、デバイス、及び装置は、妊娠哺乳動物に対し、限定するわけではないが、分娩及び娩出中の胎児の健康をモニターすること、分娩開始前の胎児の健康をモニターすること、子宮内胎児処置中の胎児の健康をモニターすること、及び/又は医療処置(例えば手術、投薬など)の施行中の胎児の健康をモニターすることを含む多くの様々な適応について、妊娠中の胎児の組織及び/又はヘモグロビン酸素化を評定するのに使用することができる。
【外国語明細書】