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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038465
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】可動部品を有する小型時計装置
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/18 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A44C5/18 A
A44C5/18 K
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008094
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2019019240の分割
【原出願日】2019-02-06
(31)【優先権主張番号】18157057.3
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スラン, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン, マーティン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】案内要素の摩耗を制限し、その摩擦を減少し、こう着と腐食の危険性を減少させることを可能にする、小型時計装置を提供する。
【解決手段】互いに連結された2つの外部部品(1、21)を含み、第1部品(1)は第1案内要素(10)を含み、第2部品(21)は第2案内要素(30)を含み、2つの部品は、それぞれの案内要素(10、30)の協働により互いに可動に連結される、小型時計装置。具体的には外部小型時計装置であって、第1案内要素(10)は、第2案内要素(30)と少なくとも部分的に接触する案内表面を含み、案内表面は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む、小型時計装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結された第1部品(1)と第2部品(21)を含み、前記第1部品(1)は第1案内要素(10)を含み、前記第2部品(21)は第2案内要素(30)を含み、前記第1部品と前記第2部品は、前記第1案内要素(10)と前記第2案内要素(30)の協働により互いに可動に連結される、小型時計装置であって、
前記第1部品(1)の前記第1案内要素(10)と前記第2部品(21)の前記第2案内要素(30)は、前記第1部品と前記第2部品の相対的な滑動を可能にするよう適用され、
前記第1案内要素(10)は、前記第2案内要素(30)と少なくとも部分的に接触する第1の案内表面を含み、前記第1の案内表面は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含み、
前記第1案内要素(10)及びまたは前記第1部品(1)は、前記第2部品の第2割出要素(35)と協働するよう適合される、第1割出要素(15)を含み、
前記第1割出要素(15)は、前記第1案内要素(10)の上側の側面と下側の側面の間に形成されるとともに、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む接触表面を含む、
小型時計装置。
【請求項2】
前記第1部品(1)の前記第1案内要素(10)と前記第2部品(21)の前記第2案内要素(30)は、並進運動による相対的な滑動を可能にするよう適用される、
請求項1に記載の小型時計装置。
【請求項3】
前記第1案内要素は、ローラーまたはシューの形状であり、スライド、ランナ、切欠き、穴または溝の形状の前記第2案内要素と協働する、または前記第1案内要素はスライド、ランナ、切欠き、穴または溝の形状であり、ローラーまたはシューの形状の前記第2案内要素と協働する、
請求項1または2に記載の小型時計装置。
【請求項4】
前記第1案内要素は、PAEK族に属するポリマー素材から一体に形成された一体の部品である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項5】
前記第1案内要素(10)は、前記第1の案内表面を形成するPAEK族に属するポリマー素材を含むコーティングにより被膜されたコアを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項6】
前記第1部品(1)及び前記第1案内要素(10)は、PAEK族に属するポリマー素材の、一体の部品の組立体を形成する、
請求項4に記載の小型時計装置。
【請求項7】
前記第1部品(1)及び前記第1案内要素(10)は、2つの別個の要素である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項8】
前記第2案内要素(30)は、前記第1案内要素(10)と少なくとも部分的に接触する第2の案内表面を含み、前記第2の案内表面は、PAEK族に属するポリマー素材を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項9】
前記第1案内要素(10)及び前記第1割出要素(15)は、一体の部品の組立体を形成する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項10】
前記第1案内要素(10)は、潤滑油を導く要素(17)を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項11】
前記小型時計装置は、小型時計ブレスレットの延長装置であり、前記第1部品は延長リンクであり前記第2部品はカバーまたは留め金の部品である、またはその逆である、または
前記小型時計装置は、リンクであり、前記第1部品は前記リンクの第1ハーフリンクであり前記第2部品は前記リンクの第2ハーフリンクである、または
前記小型時計装置は、腕時計用外部小型時計装置であり、前記第1部品は小型時計の第1外部要素であり前記第2部品は小型時計の第2外部要素である、
請求項1に記載の小型時計装置。
【請求項12】
前記PAEK族に属するポリマー素材は、PEEK製である、及びまたは前記PAEK族に属するポリマー素材は、フィラーチャージを含み、前記フィラーチャージは少なくとも補強繊維及びまたは潤滑剤及びまたは黒鉛を含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項13】
前記第2部品(21)及びまたは前記第2案内要素(30)は、セラミック素材製または金属素材製または金属合金製または金製または白金製である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の小型時計装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の小型時計装置を含む、小型時計ブレスレット用の展開ブレードを有する留め金。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の小型時計装置を含む、ブレスレット。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の小型時計装置を含む、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して可動である、少なくとも2つの部品を含む小型時計装置に関する。当該小型時計装置は、小型時計ブレスレット用の留め金であってもよく、小型時計ブレスレットであってもよく、少なくとも1つの外部小型時計装置とも呼ばれる外部部品を含むあらゆる小型時計装置であってもよい。本発明はまた、当該小型時計装置を含む、小型時計に関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計ムーブメントと、当該小型時計ムーブメントが含むであろう多数の歯車及び機構に加えて、小型時計装置が互いに対して可動な2つの部品を含む、数多くの他の状況が存在する。
【0003】
例えば、留め金は、通常、小型時計ブレスレットの長さを調節するための装置が設けられている。この目的のため、留め金は、小型時計ブレスレットの異なる長さに対応する、留め金内で複数の異なる静止位置を取ることができる、留め金カバーに対して可動なリンケージまたはリンクを含んでもよい。
【0004】
特許文献1に開示される他の例において、小型時計ブレスレットリンクは、互いに対して可動な2つのハーフリンクの形状を取る構造を用いて調節可能である。
【0005】
より一般的に、外部小型時計部品を含む装置は、しばしば、2つの可動部品を含む。
【0006】
全ての場合において、小型時計装置の可動部品は、多数の以下のような荷重に曝される案内要素が設けられている。
- 部品の変位を案内する機能の過程の機械的応力、
- 落下、衝撃、引張り、ねじり等といった、特定の事象の過程の例外的機械的荷重、
- 腐食や酸化による劣化を引き起こす可能性のある、公害や装着者の発汗といった、環境的応力。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/114404号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0350785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の全体的な目的は、上述の荷重に最適な対応を可能にする解決策を提案することである。
【0009】
具体的には、本発明の第1の目的は、案内要素の摩耗を制限し、その摩擦を減少し、こう着と腐食の危険性を減少させることを可能にする、小型時計装置の可動部品を案内するための解決策を提案することである。
【0010】
加えて、本発明の第2の目的は、案内要素内での埃の堆積及びまたは蓄積を制限し、または防止することを可能にする、小型時計装置の可動部品を案内するための解決策を提案することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、装着者の快適性を改善する、小型時計装置の可動部品を案内するための解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明は、互いに連結された2つの外部小型時計部品を含み、前記第1部品は第1案内要素を含み、前記第2部品は第2案内要素を含み、前記2つの部品は、それぞれの前記案内要素の協働により互いに可動に連結される、小型時計装置、具体的には外部小型時計装置であって、
前記第1案内要素は、前記第2案内要素と少なくとも部分的に接触する案内表面を含み、前記案内表面は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む、小型時計装置に基づく。
【0013】
本発明は、より詳細には請求項で定義される。
【0014】
本発明の目的、特徴及び利点は、添付の図面に関して限定することなく与えられる、特定の実施形態についての以下の説明で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の第1実施形態にかかる、小型時計ブレスレットの長さを調節する装置を包含する留め金カバーの斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態にかかる、小型時計ブレスレットの長さを調節する装置の領域の、留め金カバーの横断面にかかる断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態にかかる小型時計装置の第1部品の各種実施形態の図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態にかかる小型時計装置の第2部品の各種実施形態の図である。
図5図5は、第1実施形態の変形にかかる小型時計装置の第1部品の図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態の変形にかかる小型時計装置の第2部品の図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態にかかる小型時計装置の図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態にかかる小型時計装置の図である。
図9図9は、本発明の第4実施形態にかかる小型時計ブレスレットの長さを調節する装置の領域の、留め金カバーの横断面にかかる断面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態にかかる小型時計ブレスレットの長さを調節する装置を包含する留め金カバーの斜視図である。
図11図11は、本発明の第5実施形態にかかる小型時計ブレスレットの長さを調節する装置の案内要素の斜視図である。
図12図12は、本発明の第5実施形態にかかる小型時計ブレスレットの長さを調節する装置の留め金カバーの縦断面にかかる断面図である。
図13図13は、本発明の実施形態にかかる、潤滑油を導く要素を包含する案内要素の、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第一実施形態は、図1及び2に示すように、留め金内で小型時計ブレスレットの長さの調節を可能にする小型時計装置に基づく。このような小型時計装置は、留め金カバーである第2部品21に対して可動に搭載される、当該第1実施形態ではリンケージである第1部品1を含む。
【0017】
本実施形態にかかる小型時計装置の第1部品1は、ばねバー3周りに回転運動可能に配置された、2つの横方向延長リンク2を含む。当該ばねバー3の先端は、留め金カバーのランナに位置される、第1案内要素10を含む。
【0018】
具体的には図1に図示される、本第1実施形態にかかる小型時計装置の第2部品21は、上述のようにそれぞれがランナを含む2つの側壁22を含む留め金カバーである。各ランナは、第1案内要素10と協働する、第2案内要素30を形成する。
【0019】
当該第1実施形態において、第1案内要素10は、有利にはシューまたはローラーの形状であり、第2案内要素30は、当該シューを受けるように構成されたランナまたはスライド、または穴の形状である。ばねバー3の各先端に配置されたシューは、実質的に並進に対応する運動に従い、平行の態様で、それぞれ対向するランナ内を滑る。
【0020】
当該第1実施形態において、第1案内要素10は、第1部品1の別個の要素の形状である。この特定の構造において、わずかなアーチ状の側面を有する2つのシューは、2つの横方向延長リンク2を含むリンケージの両側にそれぞれ配置され、ばねバー3を用いて当該延長リンクに取付けられる。この目的において、シューは、特に図2で認識できるように、ばねバー3の先端の円筒受入れ領域4周りに位置決めするために設けられた、中央穴11を含む。
【0021】
当該実施形態において、第1案内要素10、すなわちシューまたはローラーは、一体の部品である。加えてこれらは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する高性能高分子で、具体的にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で、全体が構成される。
【0022】
出願人による研究により、当該ポリマーは、具体的には損耗と摩耗への耐性を向上させ、部品の信頼性と耐久性を最適化するという利点があることが判明した。特に、ポリアセタール族のポリマーに比べて、数ある優れた性能の中でも特に、滑りと耐久性の点で優れている。
【0023】
代替として、第1案内要素10は単に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する高性能高分子製の、具体的にはPEEK製の部分を含んでもよい。具体的には、当該部分は、第2案内要素30と、すなわちスライダーと接触することが意図される、案内表面の範囲にあってもよい。当該部分は、接触区域または摩擦区域の範囲の表面コーティングの形状をとってもよい。具体的には、PEEK製の構造が、シュー上にオーバーモールドされてもよい。例として第1案内要素10は、案内表面の全体または部分を形成する、PAEK族に属するポリマー素材を含むコーティングにより被膜されたコアを含んでもよい。
【0024】
図3は、第1案内要素10を含む部品が第1部品1に直接固定される、変形実施形態を図示する。当該変形実施形態において、当該部品は、取付スタッド12をその側面に含み、取付スタッド12は、第1部品1の横方向延長リンク2の穴に押し込まれるために設けられる。当該取付けは、例えば、押し込み、リベット止め、接着、溶接またはろう付けにより実施されてもよい。当該部品は、その第2側面上に案内表面13を有する案内要素10を含む。
【0025】
図5は、変形実施形態にかかる第1部品1を図示する。当該第1部品1は、シューの役割を果たす突起、具体的には円形または楕円形の突起を有するリンク2を含む。当該円形突起は、前記リンク2の側面に形成され、第1部品の案内要素10を形成する。この場合、リンク2は一体の部品であり、すなわち高性能高分子製であり、具体的にはポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材製、具体的にはPEEK製である。代替として、突起は、リンク2の側面にオーバーモールドされてもよい。更に代替として、突起は、その表面の全体または一部を、PAEKにより、例えばPEEKにより、コーティングされてもよい。
【0026】
第1実施形態は、少なくとも部分的にポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材で構成される案内要素10を含む第1部品1を基に説明された。もちろん、第2部品21の案内要素30もまた、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材を含んでもよい。換言すれば、小型時計装置の2つの可動部品のいずれも、全体でも部分でも、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材を、その案内表面の全体または一部に含んでもよい。代替として、小型時計装置の2つの可動部品は、当該素材を含んでもよい。
【0027】
第2案内要素30は、鋼製または金や白金のような貴重な素材製であってもよい。代替として、第2案内要素30は、セラミック素材製であってもよい。具体的には、第2案内要素は、セラミック素材製のまたは鋼製のまたは金や白金のような貴重な素材製の部品と一体の部品として一体に形成されてもよい。上述のように、代替として第2案内要素30は、高性能高分子製、具体的にはポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材製、具体的にはPEEK製であってもよい。具体的には、第2案内要素は、全体がPEEK製の第2可動部品と一体の部品として一体に形成されてもよい。代替として、図4に示すように、第2案内要素30は、好ましくは鋼製または金や白金のような貴重な素材製の部品に取付けられてもよい。更に代替として、第2案内要素30は、セラミック素材製の部品に取付けられてもよい。
【0028】
例として、図6は、前述の第1実施形態の態様に類似の態様で、カバーの両側の側壁に配置されたスライドが備えられた留め金カバーを図示する。この場合、カバーは、全体が高性能高分子で、具体的にはPEEKで構成された、一体の部品である。代替として、スライドのみが、その表面の全体または一部を、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材で、具体的にはPEEKで被膜されてもよい。
【0029】
本発明は、小型時計装置が留め金用の小型時計ブレスレットを延長するための装置である、説明した実施形態に限定されるものではない。本発明は、あらゆる小型時計装置に、具体的には第2部品がその内部で、ローラーまたはシューといった第1部品の案内要素を受けるよう構成される、少なくとも1つの外部小型時計部品を含む外部小型時計装置に、適用可能である。当該第2部品は、例えば穴や溝といった、切欠きを含んでもよい。当該切欠きは、開口してもしなくてもよい。
【0030】
加えて、小型時計装置の2つの部品の相対変位は、有利には並進運動であり、任意で具体的には留め金カバーの曲率に対応するわずかに湾曲したスライド運動である。変形として、当該変位は、例えば回転といった関節接合でもよい。
【0031】
このように、可動部品の案内要素は、第1部品1の第2部品21に対する相対変位を可能にするあらゆる手段であってよい。
【0032】
図7に図示する第2実施形態によれば、第1部品1は、特許文献2に開示する留め金ブレードのように、第2部品21を意味する第2留め金ブレードに対して実質的に並進運動するために配置される、留め金ブレードである。
【0033】
図8に図示する第3実施形態によれば、特許文献1に開示するハーフリンクと同様の態様で、第1部品1は、第2部品21を意味するリンクの第2ハーフリンクに対して動くように設けられた、当該リンクのハーフリンクの形態であってもよい。
【0034】
上述の実施形態は、最終的に上述のように、案内要素の全体または部分にポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材を利用することにより、求められる目的を達成可能にする。
【0035】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族において、選択された素材は、充填剤がなくてもあってもよい。フィラーチャージは、数あるなかで、部品の特徴的なトライボロジー及び機械的性質を最適化することを可能にする。例として、フィラーチャージは、少なくとも補強繊維及びまたは潤滑剤及びまたは黒鉛を含んでもよい。変形として、フィラーチャージは、同様に、具体的には部品の着色を目的として、少なくとも顔料を含んでもよい。
【0036】
例示的実施形態によれば、選択された素材は、PAEK製、具体的にはPEEK製、ポリエーテル・エーテル・エーテル・ケトン(PEEEK)製、ポリエーテルケトン(PEK)製、ポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)製または後者のコポリマー及びまたはポリマーの混合物製である。一方で、当該ポリマー素材は、有利には、少なくともポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の、二硫化モリブデンの、二硫化タングステンの、六方晶窒化ホウ素の、炭素繊維の、アラミド繊維の、ガラス繊維の、黒鉛の、グラフェンの、カーボンナノチューブの、ポリイミドの、ポリフェニレンスルファイドの、ダイヤモンドナノ粒子の、ポリシルセスキオキサンの、ボロン繊維の、または後者の2つ以上の混合物の、フィラーチャージを含んでもよい。上述のリストはもちろん非限定的である。
【0037】
一特定実施形態によれば、素材は20%のPTFEを含むPEEKであり、例えばVictrex(登録商標) 450FE20である。他の実施形態によれば、素材は30%の添加剤を、具体的には炭素繊維及びまたは黒鉛及びまたはPTFEを含む、PEEKである。他の実施形態によれば、素材は30%の炭素繊維と追加の添加剤、具体的には黒鉛及びまたはPTFEを含む、PEEKである。炭素繊維の代替またはそれに追加して、PEEK内に含まれる繊維は、アラミド繊維またはボロン繊維であってもよい。利用可能なPAEKまたはPEEKの例として、数ある中で、以下の物も含む。Victrex(登録商標) PEEK 450FC30、Ketron(登録商標) HPV、Tekapeek(登録商標) PVX、KetaSpire(登録商標) KT-820 SL30、AKROTEK(登録商標) PAEK CF30、AvaSpire(登録商標) AV-651 CF30、AvaSpire(登録商標) AV-722 SL30、AvaSpire(登録商標) AV-755 SL45。全ての場合において、また具体的には全ての上述の実施形態において、ポリマーPEEKは、PAEK族のその他のポリマーのいずれでも代替可能であることを注記する。
【0038】
一特定実施形態によれば、部品は、65%のPEEK、15%の炭素繊維、10%のPTFE、8%のカーボンナノチューブ、及び2%のナノダイヤモンドを含む。
【0039】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材製の要素または要素の部分は、当業者に既知のあらゆる方法または方法の組み合わせで製造される。変形実施形態として、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材製の部品の表面または部品の一部は、具体的にはトリボロジー挙動及びまたはPAEK製の表面の摩耗を最適化する目的で、または潤滑油の改善された分布を可能にする目的で、第1要素を組み立てる目的で、構造化、特に微細構成化されてもよい。当該構造化は、部品の鋳造中に、またはその後の機械加工またはマイクロマシニング、例えばレーザーテクスチャリング(英語で、laser surface texturingまたはLST)または化学エッチングにより直接得られてもよい。機械加工または微細構造を得るために、その他の技術または技術の組み合わせを実施してもよい。
【0040】
本発明の一特定実施形態によれば、ポリマーまたは金属製の部品であってもよい案内要素または案内要素の一部は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材、特にPEEKを含むコーティングにより少なくとも一部分が被膜されることが明らかである。当該実施形態において、コーティングは、分散による噴霧、静電投射技術、またはオーバーモールドといった従来の技術を用いて適用されてもよい。同様に、例えば、DLCコーティングまたは他の適切な被膜技術によるコーティングは、当該部品の表面に微細構造化がなされているまたはなされていない、上述の実施形態の一つにかかる要素に適用されてもよい。表面の微細構造化は、同様に、コーティングの適用後に実施されてもよい。
【0041】
加えて、小型時計装置の2つの可動部品の相対変位はまた、有利には、2つの可動部品に対してあらかじめ定める特定の静止位置を可能にする割出装置を必要とする。当該割出装置は、2つの可動部品のそれぞれについての割出要素を用いて実施される。生じる技術的問題の一つは、当該割出装置を、2つの可動部品の案内用装置と最適に組み合わせることができるようにすることである。
【0042】
図9及び10は、第1部品1を案内するための要素10が、第2部品21の第2割出要素35と協働するために設けられる、少なくとも第1割出要素15を含む、本発明の第4実施形態を図示する。当該第4実施形態は、第1実施形態と同様の、小型時計ブレスレット用の延長装置に関するが、割出装置を含む。この目的において、第1部品1の延長リンク2は、留め金カバーに対して可動である。リンクの端部には、留め金カバーのランナに隣接する切込みと協働するために、弾力的に付勢されたボールが設けられる。各切込みは、弾性ボールを一時的に収容する能力のため、カバーに対する調整用のリンクの所定の位置に対応する。当該装置は、2つの部品の位置の割出を効果的に実施する。
【0043】
当該実施形態において、PEEK製のシューは、常時第1部品の案内要素を形成する。当該シューはU字型であり、その2つの側面は、それぞれが、上側及び下側の2つの平行溝の形状のスライダーの2つの上側と下側部分内で移動するために設けられる。割出要素を形成するボールは、U字の2つの側面の間に配置され、第2案内要素30を形成する2つの溝間に配置される切込みに収容されるように適合される。これら切込みは、第2割出要素を形成する。
【0044】
当該実施形態において、割出要素は、案内要素の近傍に、統合されるが比較的独立した態様で配置されることを注記する。
【0045】
代替的にまたは追加的に、第1割出要素15は、第1案内要素10で支持されてもよい。例として、図11は、案内要素上に直接実施された突起の、具体的には一体の部品のシューの形状の、割出要素15を含む、第1部品1用の案内要素10を図示する。図9に図示するように、突起は半球状の構成を示してもよい。代替として、突起は、長方形及びまたは楕円形形状など、その他の形状を示してもよい。突起は、図12に図示するように、留め金カバーのスライダー内に配置された切込みの連続の形状の第2割出要素35と協働するために設けられる。当該実施形態において、突起は案内要素の素材製であり、例えばPAEK製であり、組立体が一体の部品であるため、具体的にはPEEK製である。代替として、突起は他の素材製であってもよく、特に少なくともその一部がPAEK製またはPAEKで被膜されたシュー上に形成されてもよい。
【0046】
上述の割出装置は、留め金カバーに対する小型時計ブレスレットリンク用の追加の割出装置または固定装置と組み合わせてもよいことを注記する。すなわち、割出装置は、ばねバーを有する割出システムや、ボールを有する割出システム、特に図12に図示するような歯列35’を実施する割出システムといった、従来の割出システムを補完してもよい。こうした従来の割出装置は、実際には、固定機能を補完する固定装置を形成する。
【0047】
このため、本発明はまた、小型時計装置に、具体的には互いに連結され、少なくとも1つが外部部品である2つの外部部品1、21を含む、外部小型時計装置に関し、第1部品1は、第1案内要素10を含み、第2部品21は第2案内要素30を含み、2つの部品は、それぞれの案内要素10、30の協働により互いに可動に連結され、第1部品1は、第2部品21の第2割出要素と協働する第1割出要素15を含む。
【0048】
第1割出要素を形成する切込みは、従来技術から既知の歯列を、例えば図10の歯列35’を補完するまたは歯列の代替の役割を果たすことを注記する。
【0049】
割出要素は、案内要素と一体の部品の組立体を形成してもよく、例えば2つの案内リブ間に配置された弾性ボールまたは突起により、案内要素の近傍に配置された別個の要素を形成してもよい。
【0050】
これら割出要素は、案内要素が経験する荷重に非常に近い荷重に曝されることが明らかである。このため、割出要素は、有利には、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む。
【0051】
代替として、第1割出要素15は、第1案内要素10と独立して実施されてもよい。
【0052】
このため、本発明はまた、小型時計装置、具体的には互いに連結された2つの部品1、21を含む外部小型時計装置に関し、第1部品1は第1割出要素15を含み、第2部品21は第2割出要素35を含み、2つの部品は互いに可動に連結され、第1割出要素15及びまたは第2割出要素35は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む接触表面を含む。
【0053】
前述の解決策の補完として、第1案内要素10は、少なくとも1つの潤滑油を導く要素17を含んでもよい。例として、図13は、潤滑油で満たされるために設けられた水路または溝を含む、本発明の第5実施形態の第1部品の案内要素10の側面を図示する。これら溝は、潤滑油を導く要素17を形成する。当該実施形態によれば、これら水路は、第1部品用の案内要素を形成するシュー上に直接機械加工され、その結果、少なくとも部分的にPEEK製であり、または少なくとも部分的にPEEKで被膜される。代替として、これら水路は、異なる手段で得られてもよく、その他の素材製の案内要素上に配置されてもよい。最後に、本発明にかかる案内要素は、潤滑油が注されても注されなくてもよい。有利には、案内要素に潤滑油が注される場合は、全フッ素置換潤滑油を用いてもよい。
【0054】
このため、本発明はまた、小型時計装置、具体的には互いに連結された2つの部品1、21を含む外部小型時計装置に関し、第1部品1は第1案内要素10を含み、第2部品21は第2案内要素30を含み、2つの部品は、それぞれの案内要素10、30の協働により互いに可動に連結され、第1部品1の案内要素10は、潤滑油を導く要素17を含む。
【0055】
本発明は、小型時計ブレスレット用の延長装置を基に説明されてきた。既に述べた通り、本発明は、当然2つの可動部品を含むあらゆる小型時計装置に適用可能である。
【0056】
加えて、本発明はまた、少なくとも上述の小型時計装置を統合する少なくとも1つの外部部品を含む、小型時計ブレスレット及びまたは留め金及びまたは腕時計及びまたは外部小型時計装置に関する。外部小型時計装置は、少なくとも1つの外部部品を含む装置が意図され、例えば互いに連結された第1及び第2外部小型時計部品である。例として、このような小型時計部品は、ブレスレットストランドのリンクまたはリンケージ、シューまたはローラーであってもよい。このような小型時計部品は、ブレスレット留め金のカバー、またはブレスレット留め金ブレード、または小型時計ケースの胴、または小型時計ケースのベゼルであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 第1部品
2 延長リンク
3 ばねバー
10 第1案内要素
15 第1割出要素
17 潤滑油を導く要素
21 第2部品
30 第2案内要素
35 第2割出要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13