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  • 特開-スプリングシートラバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003847
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】スプリングシートラバー
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240109BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F1/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103143
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】武知 桃李
(72)【発明者】
【氏名】神馬 弘至
【テーマコード(参考)】
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3J059BA01
3J059BD01
3J059CB18
3J059CC03
3J059GA02
3J069AA69
3J069CC02
3J069DD45
(57)【要約】
【課題】空間部での異音の発生を抑制できると共に、空間部内への水や塵などの侵入を防止することができるスプリングシートラバーを提供する。
【解決手段】スプリングシート10の環状溝10cの内面に当接する頂部の全周にわたって設けられ、内部に空間部22を形成する内側、外側リップ部24a、25aと、空間部の底壁であるゴム肉部23の下部に設けられ、コイルスプリング11の一端部を支持するスプリング保持溝21と、内側リップ部が設けられた内周部24と外側リップ部が設けられた外周部25のそれぞれの外面に周方向と直交する径方向に沿って形成され、空間部と外部とを連通する内側通路溝26及び外側通路溝27と、内周部と外周部のそれぞれの下端部に周方向に沿って円環状に設けられ、前記環状溝の内側内周面と外側内周面にそれぞれ弾接する内側のシールリップ28及び外側のシールリップ29と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラットサスペンションの上側に設けられたスプリングシートの断面半円形状の環状溝に収容配置されて、コイルスプリングの軸方向の一端部を支持する円環状のスプリングシートラバーであって、
前記環状溝の内面に当接する頂部の全周に沿って設けられ、前記環状溝の内面に当接して互いに内側に湾曲して内部に空間部を形成する内側リップ部及び外側リップ部と、
前記空間部と反対側の下部に設けられ、コイルスプリングの一端部が保持される断面半円形状の保持溝と、
前記空間部を中心として径方向内側と外側に有し、前記内側リップ部が設けられた内周部及び前記外側リップ部が設けられた外周部と、
前記内周部と外周部のそれぞれの外面に形成され、前記各リップ部側の各上端開口部が前記空間部に臨み、各下端開口部が外部に臨んだ内側通路溝及び外側通路溝と、
前記内周部の下端部の内周面と前記外周部の下端部の外周面からそれぞれ周方向に沿って円環状に突設され、それぞれの先端部が前記環状溝の内周面に弾接可能な内側のシールリップ及び外側のシールリップと、
を備えたことを特徴とするスプリングシートラバー。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリングシートラバーであって、
前記内側通路溝と外側通路溝は、前記内周部と外周部の各外面の円周方向に所定の間隔をもって複数形成されていることを特徴とするスプリングシートラバー。
【請求項3】
請求項2に記載のスプリングシートラバーであって、
前記内側のシールリップと外側のシールリップは、前記内周部の下端部内周面と外周部の下端部外周面に結合されたそれぞれの基端部を支点として撓み変形可能な傾斜状に形成されていると共に、互いの傾斜方向を逆向きに形成したことを特徴とするスプリングシートラバー。
【請求項4】
請求項3に記載のスプリングシートラバーであって、
前記内側のシールリップは、前記先端部が上向きとなる傾斜状に形成されて、上向き状態の前記先端部が前記環状溝の内側内周面に弾接している一方、前記外側のシールリップは、前記先端部が下向きとなる傾斜状に形成されて、下向き状態の前記先端部が前記環状溝の外側外周面に弾接していることを特徴とするスプリングシートラバー。
【請求項5】
請求項4に記載のスプリングシートラバーであって、
前記内周部の前記内側シールリップ側の下端部に、前記内側シールリップの反り返り方向の撓み変形を吸収する環状凹部が形成されていることを特徴とするスプリングシートラバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットサスペンションのコイルスプリングの上端部を支持するスプリングシートラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ストラットサスペンションにおいては、ストラットサスペンションの上側、つまり、車体側連結部分のスプリングシートにスプリングシートラバーを介在させて、このスプリングシートラバーで防振効果を得るようになっている。
【0003】
図1はストラットサスペンションの上端部の構造を示し、図6は特許文献1に記載された従来のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図である。
前記ストラットサスペンションは、ショックアブソーバ1のシリンダ2の上端部から突出したピストンロッド3の上端部に、内部にゴム材のインシュレータ4がナット5によって締結固定されていると共に、前記インシュレータ4が収容固定されたシェル6が配置されている。このシェル6は、植設ボルト7とナット8によって車体パネル9に締結固定されている。
【0004】
また、シェル6の下端部中央には、スプリングシート10が固着されており、このスプリングシート10とシリンダ2との間にコイルスプリング11が圧縮状態で配設されている。
【0005】
前記スプリングシート10は、金属板材によって一体に形成されており、ピストンロッド3が挿入される中央の本体10aと、該本体10aの外周部に設けられて、断面半円形状のスプリング支持部10bと、を有し、このスプリング支持部10bの下面に有する環状溝10c内にゴム材からなるスプリングシートラバー12が収容嵌合されている。
この従来のスプリングシートラバー12は、図6に示すように、断面半円形状に形成されて、下端内面に前記コイルスプリング11の上端部を弾性的に支持するスプリング保持溝13が形成されている。
【0006】
また、スプリングシートラバー12は、スプリングシート10の環状溝10cに嵌合保持されていると共に、その頂部の全周にわたって空間部14が形成されており、かつ、この空間部14の開口部を両側から対向して延出されて、前記環状溝10cの内周面に密着状態に配置された一対の内側リップ部12aと外側リップ部12bが設けられている。空間部14は、横断面ほぼ繭状に形成されて、底壁となる部位がゴム肉部12cになっている。
【0007】
そして、スプリングシートラバー12は、コイルスプリング11からの振動入力によって空間部14が潰れるまではスプリング保持溝13の上方に位置するゴム肉部12cが剪断変形することによってバネ定数が小さくなって、高周波振動を防振することができる。
【0008】
このように、空間部14が潰れるような大きな入力に対しては、前記ゴム肉部12c及び両リップ部12a、12bが撓み変形(圧縮変形)して荷重を受けるようになり、大きなばね荷重を確保することができるようになっている。
【0009】
なお、図1中、付番15はスプリングシート10の下部に配置されたバンプラバーであって、このバンプラバー15は、ショックアブソーバ1の過度なストローク時に車体パネル9との干渉による衝撃を緩和するものである。また、このバンプラバー15の外周側には、シリンダ2とピストンロッド3を囲繞する蛇腹部16が配置されている。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載の従来のスプリングシートラバー12にあっては、車両の上下動に伴うコイルスプリング11の伸長、圧縮変形により、空間部14内の空気がスプリングシート10の環状溝10cの内面との間を通って出入りすることで、異音が発生するおそれがある。
【0011】
そこで、特許文献2に記載された従来のスプリングシートラバー(スプリング座部)は、上面側の第2面からコイルスプリング側の第1面に向かって形成される複数の非貫通穴(空間部)が設けられ、この各非貫通穴とスプリング座部の外表面のうち相手部材側の第2面以外の面との間を連通する空気流路が設けられている。
【0012】
所定の非貫通穴が圧縮変形された場合は、前記非貫通穴の内部の空気は空気流路を介してスプリングシートの外部に流出し、一方、非貫通穴が圧縮変形された状態から復元する場合には、スプリングシートの外部から空気流路を介して非貫通穴の内部に空気が流入する。これによって、非貫通穴が密閉することがなく、この結果、異音の発生を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平06-280913号公報
【特許文献2】特開2007-253926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、特許文献2に記載の従来のスプリングシートラバーにあっては、前記空気通路がスプリング座部の上面にほぼ水平に形成されていると共に、内側開口が外部に常に開放された状態になっていることから、車両の走行中に内側開口から水や塵などが入り込み易くなる。また、前記各空気通路から流入した水や塵などが非貫通穴の内部に溜まってしまうおそれがある。
【0015】
本発明は、前記各従来のスプリングシートラバーの技術的課題に鑑みて案出されたもので、空間部内の空気が各通路溝を自由に通流することによって、空間部での異音の発生を抑制できると共に、空間部内への水や塵などの侵入を防止することが可能なスプリングシートラバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願請求項1に係る発明は、ストラットサスペンションの上側に設けられたスプリングシートの断面半円形状の環状溝に収容配置されて、コイルスプリングの軸方向の一端部を支持する円環状のスプリングシートラバーであって、
前記環状溝の内面に当接する頂部の全周に沿って設けられ、前記環状溝の内面に当接して互いに内側に湾曲して内部に空間部を形成する内側リップ部及び外側リップ部と、
前記空間部と反対側の下部に設けられ、コイルスプリングの軸方向の一端部が保持される断面半円形状の保持溝と、
前記空間部を中心として径方向内側と外側に有し、前記内側リップ部が設けられた内周部及び前記外側リップ部が設けられた外周部と、
前記内周部と外周部のそれぞれの外面に形成され、前記各リップ部側の各上端開口部が前記空間部に臨み、各下端開口部が外部に臨んだ内側通路溝及び外側通路溝と、
前記内周部の下端部の内周面と前記外周部の下端部の外周面からそれぞれ周方向に沿って円環状に突設され、それぞれの先端部が前記環状溝の内周面に弾接可能な内側のシールリップ及び外側のシールリップと、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空間部内の空気が各通路溝を介して自由に通流することによって、空間部での異音の発生を抑制できると共に、空間部内への水や塵などの侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るスプリングシートラバーと従来のスプリングシートラバーが適用される車両のアッパーマウントの要部縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスプリングシートラバーの斜視図である。
図3】本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合される前の状態を示す断面図である。
図4】本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図である。
図5】本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図である。
図6】従来のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るスプリングシートラバーを車両のアッパーマウントに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係るスプリングシートラバーを示す斜視図、図3は本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合される前の状態を示す断面図、図4は本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図、図5は本実施形態のスプリングシートラバーがスプリングシートの環状溝に収容嵌合された状態を示す断面図である。
【0021】
図1に基づいて説明したように、ストラットサスペンションの上端部は、ショックアブソーバ1のピストンロッド3の上端部に、内部にゴム材のインシュレータ4が収容固定されたシェル6がボルト7とナット8によって車体パネル9に締結固定されている。シェル6の下端部中央に固着されたスプリングシート10は、外周部の半円形状のスプリング支持部10bの下部内に環状溝10cが形成されており、この環状溝10c内に円環状のスプリングシートラバー20が嵌合保持されている。
【0022】
このスプリングシートラバー20は、図2図5に示すように、断面半円形状に形成されて、下端内面に前記コイルスプリング11の上端部を弾性的に支持するスプリング保持溝21が形成されていると共に、その頂部の全周にわたって空間部22が形成されている。また、スプリングシートラバー20は、前記空間部22の底壁であるゴム肉部23を中心として内側の内周部24と外側の外周部25とを有し、この内周部24と外周部25の空間部22側の先端部に互いに対向方向に延出された一対の内側リップ部24aと外側リップ部25aがそれぞれ設けられている。この各リップ部24a、25aは、スプリングシートラバー20がスプリングシート10の環状溝10cに嵌合保持された際に、内周部24と外周部25の各外面とともに前記環状溝10cの内面に密着するようになっている。
【0023】
そして、前記スプリングシートラバー20は、内周部24の外面と外周部25の外面のそれぞれに複数の内側通路溝26と外側通路溝27が形成されている。この内周部24の各内側通路溝26と外周部25の各外側通路溝27は、スプリングシートラバー20の周方向に直交する径方向、つまり放射方向に沿って複数形成されている。また、内側、外側通路溝26,27は、スプリングシートラバー20の円周方向のほぼ等間隔位置に形成されて、内周部24の外面の円周方向と外周部25の外面の円周方向で同じ位置に形成されているとともに、各上端開口部26a、27aがそれぞれ空間部22に臨んでいる一方、各下端開口部26b、27bがスプリングシート10の下部内面を介して外部に臨んでいる。したがって、空間部22は、内部が各内外側通路溝26,27を介してスプリングシートラバー20の外部と連通している。
【0024】
内側通路溝26は、図2及び図3図4に示すように、それぞれの幅長さWが同じ長さに設定されていると共に、深さDが内周部24の内側リップ部24a側の上端開口部26aから下端開口部26bまで漸次深くなるように形成されている。
一方、外側通路溝27は、同じく図2及び図3図4に示すように、それぞれの幅長さW1が同じ長さに設定されているが、内周部24の内側通路溝26の幅長さWよりも大きく形成されている。また、外側通路溝27の深さD1は、内側通路溝26と同じく外周部25の外側リップ部25a側の上端開口部27aから下端開口部27bまで漸次深くなるように形成されている。
【0025】
また、前記内周部24の下端部内周と外周部25の下端部外周には、図2図5に示すように、スプリングシートラバー20の円周方向に沿って円環状の内側のシールリップ28と外側のシールリップ29がそれぞれと突設されている。内側のシールリップ28は、自由状態では内周部24の内周下端縁に結合された基端部28aから先端部28bの方向に向かって上方へ立ち上がり傾斜状に形成され、スプリングシートラバー20が環状溝10cに嵌合された状態では、先端部28bが環状溝10cの内側内周面10dに弾接するようになっている。一方、外側のシールリップ29は、自由状態では外周部25の下端部に結合された基端部29aから先端部29bの方向に向かって下方へ立下り傾斜状に形成され、スプリングシートラバー20が環状溝10cに嵌合された状態では、先端部29bが環状溝10cの外側内周面10eに弾接するようになっている。
【0026】
また、内周部24の下端部の内側のシールリップ28よりも上側の位置には、第1環状凹部30が形成されている。この第1環状凹部30は、内周部24の円周方向に沿って形成されて、内側のシールリップ28が内周部24方向へ撓み変形した際に、この変形部を吸収するようになっている。
外側のシールリップ29の下端部にも、第2環状凹部31が形成されている。この第2環状凹部31は、外周部25の円周方向に沿って形成されて、前記外周部25の外側通路溝27を通流した空気を下端開口部27bから傾斜状の外面に沿って速やかに排出させるようになっている。
【0027】
前記内側のシールリップ28と外側のシールリップ29は、後述する作用の項でも説明するように、逆止弁としての機能を有し、スプリングシートラバー20のゴム肉部23が撓み変形した際に、空間部22内の圧力変化(負圧)に伴って外部外側の空気が内側のシールリップ28を上方へ押し開いて内周部24側の内側通路溝26を介して空間部22に流入すると該空間部22内から空気圧によって閉じて逆流を規制する。一方、空間部22内の空気は、その圧力(正圧)によって外周部25側の外側通路溝27に流入して外側のシールリップ29を押し開いて外部に排出されるが、空気が排出されると外側のシールリップ29が閉じるようになっている。つまり、内側のシールリップ28と外側のシールリップ29が、一方向への空気の流入を許容し、他方向への流入を規制する逆止弁の弁体として機能するようになっている。
[本実施形態に係るスプリングシートラバー20の作用効果]
以下、本実施形態に係るスプリングシートラバー20の作用効果について説明する。
【0028】
本実施形態のスプリングシートラバー2によれば、頂部に空間部22を設けたことから、コイルスプリング11の伸縮変形に伴うゴム肉部23のせん断変形などによる高周波振動を抑制できると共に、ゴム肉部23や両リップ部24a、25aの圧縮変形により荷重を受けて大きなバネ定数を確保することが可能になる。
【0029】
また、本実施形態では、内周部24と外周部25の各外面に、前記空間部22と外部とを連通する内側通路溝26と外側通路溝27をそれぞれ設けたことから、車両の上下動に伴うコイルスプリング11の伸縮変形(弾性反力)によってゴム肉部23が撓み変形すると、前記空間部22内の空気が圧力変化して該空気が各通路溝26,27を介して外部との間を自由に通流する。これによって、空間部22での異音の発生を抑制することが可能になる。
【0030】
しかも、内側と外側の各シールリップ28、29は、各通路溝26,27を通る空気に対する逆止弁の弁体として機能することから、各通路溝26,27内に空気は通過させるものの水や塵などの侵入を規制することが可能になる。
【0031】
すなわち、車両の上下動に伴ってコイルスプリング11が伸縮変形してスプリングシートラバー20が弾性変形することにより、空間部22内の空気が圧力変化を繰り返すと、内側と外側の各シールリップ28、29が開閉して各通路溝26,27を介して外部の空気を空間部22に流入させると共に、同時に空間部22内の空気を外部へ排出させる。つまり、図4の矢印に示すように、内側のシールリップ28が開いて外部の空気が下端開口部26bから内側通路溝26に流入し、さらに上端開口部26aから空間部22内に流入する。そして、この空間部22内の空気が内側通路溝26に逆流しようとすると、その空気圧で内側のシールリップ28の先端部28bがスプリングシート10の環状溝10cの内面に圧接して内側通路溝26の下端開口部26bを閉止することから、空気の逆流を規制することができる。
一方、空間部22内の空気は、その圧力によって上端開口部27aから外側通路溝27内を通流しつつ下端開口部27bから外側のシールリップ29を押し開いて外部に排出される。このとき、外部の空気が外側通路溝27に入り込もうとすると、外側のシールリップ29が下端開口部27bを閉じて、外部の空気が空間部22へ流入するのを規制する。
【0032】
このように、内外2つのシールリップ28,29は、空気に対する逆止弁として機能し、つまり、内外側の各通路溝26,27に対する弁体(蓋体)として機能することから空間部22への水や塵などの侵入を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、内側のシールリップ28が、開き方向である反り返り方向へ撓み変形すると、この撓み変形分を第1環状凹部30が吸収することから、内側通路溝26内への空気の流入作用に影響を与えることない。つまり、撓み変形した内側のシールリップ28が空気の流動抵抗とならないので、流入作用を円滑に行うことができる。
【0034】
さらに、前記内側通路溝26と外側通路溝27を形成したことによって、スプリングシートラバー20全体の軽量化が図れると共に、反力調整をすることが可能になる。この反力調整とは、スプリングシートラバー20が、コイルスプリング11の弾性反力によって撓み変形すると、この撓み変形移動を各通路溝26,27内に吸収することから、この各通路溝26,27の存在及び幅長さW、W1や数によってゴムの反力を任意に強弱調整することができることをいう。
【0035】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、前記実施形態では外部の空気が内側のシールリップ28を押し開いて空間部22内に流入し、空間部22内の空気が外側のシールリップ29を押し開いて外部に排出させるようになっているが、内側のシールリップ28と外側のシールリップ29の構成及び作用を逆にすることも可能である。つまり、外側のシールリップ29を上方へ傾斜状に形成して外部からの空気を外側通路溝27に流入させ、内側のシールリップ28を下方へ傾斜状に形成して空間部22内の空気を外部に排出するようにすることも可能である。
【0036】
また、各通路溝26,27は、その数や幅長さW、W1を任意に変更できることが可能であり、変更することによって前述したようにスプリングシートラバー20のゴム反力を仕様や大きさなどによって任意に調整することができる。
【0037】
さらに、各通路溝26,27は、内周部24の外面や外周部25の外面を径方向(放射状)ではなく、傾斜方向に形成することも可能であり、また、径方向と傾斜方向を混合して形成することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ショックアブソーバ
2…シリンダ
3…ピストンロッド
10…スプリングシート
10b…支持部
10c…環状溝
10d…内側内周面
10e…外側内周面
11…コイルスプリング
20…スプリングシートラバー
21…スプリング保持溝(保持溝)
22…空間部
23…ゴム肉部
24…内周部
24a…内側リップ部
25…外周部
25a…外側リップ部
26…内側通路溝
26a…上端開口部
26b…下端開口部
27…外側通路溝
27a…上端開口部
27b…下端開口部
28…内側のシールリップ
29…外側のシールリップ
30…第1環状凹部
31…第2環状凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6