(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003848
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】グラブバケット
(51)【国際特許分類】
E02F 3/47 20060101AFI20240109BHJP
B66C 3/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E02F3/47 E
B66C3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103144
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA36
3F004PA06
3F004PB01
3F004PC27
(57)【要約】
【課題】揚土の際に泥水を排出可能なグラブバケットを提供する。
【解決手段】本発明に係るグラブバケット1では、第1バケット61及び第2バケット62に、閉位置において水平方向又は鉛直下方へと開口する第1開口部618に、収容空間内に収容される土砂の流出を抑制しつつ、収容空間内に収容される土砂に含まれる水分(泥水)を排出可能な脱水スクリーン7が設けられている。これにより、揚土中に、収容空間内の土砂に含まれる水分(泥水)を、脱水スクリーン7を介して排出することができる。これにより、脱水スクリーン7を介して脱水した分、収容空間内に収容される泥水量を削減することが可能となり、水中掘削時における泥土(産業廃棄物)の排出を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを介して鉛直方向に昇降可能に吊り下げられる支持体と、
前記支持体に支持される一対のアームと、
前記一対のアームにそれぞれ回動可能に支持され、前記アームとの接続部を回動支点として互いに最も離間する開位置と密着する閉位置との間で開閉可能に構成されたものであり、前記閉位置において内側に土砂を収容する収容空間を形成する一対のバケットと、
前記一対のバケット同士を回動可能に連結する連結軸と、
前記一対のバケットの一方又は両方に設けられ、前記閉位置にて水平方向又は鉛直下方に開口する開口部と、
前記開口部に設けられ、前記収容空間の内部に収容される土砂の流出を抑制しつつ、前記収容空間の内部に収容される土砂に含まれる水分を排出する脱水スクリーンと、
を備えた、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項2】
請求項1に記載のグラブバケットであって、
前記開口部は、前記バケットにおいて、前記閉位置における鉛直上端部に配置されている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項3】
請求項2に記載のグラブバケットであって、
前記一対のバケットは、底壁と、この底壁の両側縁部から立ち上がる一対の側壁と、を有し、
前記開口部は、前記底壁に配置されている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項4】
請求項1に記載のグラブバケットであって、
前記開口部は、前記バケットにおいて、前記閉位置における鉛直下端部に配置されている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項5】
請求項4に記載のグラブバケットであって、
前記一対のバケットは、底壁と、この底壁の両側縁部から立ち上がる一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、前記一対のバケットの開閉方向における閉方向側に設けられた厚肉部と、前記一対のバケットの開閉方向における開方向側に設けられ、前記厚肉部よりも薄肉に形成されて外側面が前記厚肉部に対して段差状に凹む薄肉部と、を有し、
前記開口部は、前記薄肉部に配置されている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のグラブバケットであって、
前記脱水スクリーンは、メッシュ状のスクリーン部材と、前記開口部に着脱可能に設けられ、前記スクリーン部材を前記開口部に固定するための固定枠と、を有する、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項7】
請求項6に記載のグラブバケットであって、
前記スクリーン部材は、比較的太い格子で構成され、比較的粗いメッシュを有する第1スクリーン部材と、前記第1スクリーン部材よりも細い格子で構成され、前記第1スクリーン部材よりも細かいメッシュを有する第2スクリーン部材と、を有し、前記第1スクリーン部材と前記第2スクリーン部材とが重ね合わされている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【請求項8】
請求項7に記載のグラブバケットであって、
前記第2スクリーン部材は、10~30メッシュに設定されている、
ことを特徴とするグラブバケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧入式オープンケーソン工法やアーバンリング工法に係る立坑の沈下掘削に用いられ、掘削された土砂の揚土に供するグラブバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグラブバケットとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このグラブバケットは、開閉可能に設けられた左右一対のバケットを有し、当該バケットの側壁に、空気抜き用の貫通孔と、この貫通孔を開閉可能な開閉弁が設けられている。このように、当該グラブバケットは、バケットが開いた状態では開閉弁が貫通孔を開くように機能するのでバケット内部の空気は貫通孔から外部に抜ける一方、バケットが閉じた状態では開閉弁によって貫通孔が閉塞されるため、バケット内部の空気が浮上して土砂を舞い上がらせることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のグラブバケットの場合、バケットを閉じた状態で開閉弁によって貫通孔が閉塞される構成となっている。このため、揚土の際に泥水を排出できず、当該泥水を含む泥土(産業廃棄物)の排出を低減することが困難となる点で改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであり、揚土の際に泥水を排出可能なグラブバケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る掘削機は、その一態様として、ワイヤを介して鉛直方向に昇降可能に吊り下げられる支持体と、前記支持体に支持される一対のアームと、前記一対のアームにそれぞれ回動可能に支持され、前記アームとの接続部を回動支点として互いに最も離間する開位置と密着する閉位置との間で開閉可能に構成されたものであり、前記閉位置において内側に土砂を収容する収容空間を形成する一対のバケットと、前記一対のバケット同士を回動可能に連結する連結軸と、前記一対のバケットの一方又は両方に設けられ、前記閉位置にて水平方向又は鉛直下方に開口する開口部と、前記開口部に設けられ、前記収容空間の内部に収容される土砂の流出を抑制しつつ、前記収容空間の内部に収容される土砂に含まれる水分を排出する脱水スクリーンと、を備えている。
【0008】
このように、本発明によれば、バケットの閉位置において水平方向又は鉛直下方へ開口する開口部に、バケットの収容空間内に収容される土砂の流出を抑制しつつ、バケットの収容空間内に収容される土砂に含まれる水分を排出する、脱水スクリーンが設けられている。これにより、揚土中において、バケットの収容空間に含まれる水分(泥水)を、脱水スクリーンを介して排出させることができる。
【0009】
また、脱水スクリーンがバケットに設けられていることにより、水中掘削にあたって、バケットを水中に沈める際、当該水没に伴う水中抵抗によって脱水スクリーンが自動的に水洗されることとなる。これにより、泥水の排出に伴う脱水スクリーンの目詰まり(泥水の排出に伴い当該泥水に含まれる土砂が脱水スクリーンに詰まること)が抑制され、脱水スクリーンの頻繁なメンテナンスを回避でき、グラブバケットによる掘削作業をより効率的に行うことができる。
【0010】
また、前記グラブバケットの別の態様として、前記開口部は、前記バケットにおいて、前記閉位置における鉛直上端部に配置されていることが望ましい。
【0011】
このように、開口部が、バケット閉位置の鉛直上端部に配置されていることによって、バケットの収容空間に収容された土砂(泥土)の上澄みに溜まる水分を効率よく排出することができる。
【0012】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記一対のバケットは、底壁と、この底壁の両側縁部から立ち上がる一対の側壁と、を有し、前記開口部は、前記底壁に配置されていることが望ましい。
【0013】
このように、開口部が、一対の側壁に対して比較的幅広に設定される底壁に設けられていることによって、開口部をより広く確保することが可能となり、水分の排出効率を高めることができる。
【0014】
また、開口部が配置される底壁の鉛直上端部は、掘削時に土砂と当接し得る鉛直下端部とは反対側に位置し、掘削時に土砂と当接するおそれがないため、開口部の変形や脱水スクリーンの破損等の不具合を抑制することができる。
【0015】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記開口部は、前記バケットにおいて、前記閉位置における鉛直下端部に配置されていることが望ましい。
【0016】
このように、開口部が、バケット閉位置の鉛直下端部に配置されていることによって、バケットの収容空間に収容された土砂(泥土)の底に溜まる水分を効率よく排出することができる。
【0017】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記一対のバケットは、底壁と、この底壁の両側縁部から立ち上がる一対の側壁と、を有し、前記一対の側壁は、前記一対のバケットの開閉方向における閉方向側に設けられた厚肉部と、前記一対のバケットの開閉方向における開方向側に設けられ、前記厚肉部よりも薄肉に形成されて外側面が前記厚肉部に対して段差状に凹む薄肉部と、を有し、前記開口部は、前記薄肉部に配置されていることが望ましい。
【0018】
このように、開口部がバケットの開方向側に位置する段差凹状の薄肉部に配置されていることで、当該開口部が配置される薄肉部が、掘削時に地盤(土砂)と直接当接する厚肉部に対して段差凹状に形成されている。これにより、薄肉部が掘削時に地盤(土砂)と直接当接せず、開口部の変形や脱水スクリーンの破損等の不具合を抑制することができる。
【0019】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記脱水スクリーンは、メッシュ状のスクリーン部材と、前記開口部に着脱可能に設けられ、前記スクリーン部材を前記開口部に固定するための固定枠と、を有することが望ましい。
【0020】
このように、脱水スクリーンは、固定枠を介して開口部に着脱が可能なスクリーン部材により構成されていて、メンテナンス可能となっている。このため、スクリーン部材に目詰まりや破損等が生じた場合には、当該スクリーン部材を交換することにより、脱水スクリーンにおける土砂の捕集性能と、水分の排出性能と、を長きにわたって維持することができる。
【0021】
なお、上記脱水スクリーンのメンテナンスに際して、スクリーンとして機能するスクリーン部材のみを単体で交換してもよく、また、固定枠を含めた脱水スクリーンをアッセンブリ状態で交換してもよい。
【0022】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記スクリーン部材は、比較的太い格子で構成され、比較的粗いメッシュを有する第1スクリーン部材と、前記第1スクリーン部材よりも細い格子で構成され、前記第1スクリーン部材よりも細かいメッシュを有する第2スクリーン部材と、を有し、前記第1スクリーン部材と前記第2スクリーン部材とが重ね合わされていることが望ましい。
【0023】
このように、比較的太い格子からなる高剛性の第1スクリーン部材と、比較的細い格子からなる低剛性の第2スクリーン部材と、を重ね合わせることで、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材を第1スクリーン部材によって補強することが可能となる。これにより、スクリーン部材の捕集性能を確保しつつ、耐久性を向上させることができる。
【0024】
また、前記グラブバケットのさらに別の態様として、前記第2スクリーン部材は、10~30メッシュに設定されていることが望ましい。
【0025】
このように、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材が10~30メッシュに設定されていることで、比較的多くの土砂を捕集しながら、目詰まりを低減することが可能となり、土砂の捕集性能と、スクリーンの寿命との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バケットに設けられた脱水スクリーンによって、揚土中に、バケットの収容空間内に含まれる水分を排出させることができる。これにより、脱水スクリーンを介して脱水した分、バケットの収容空間内における泥水量を削減することが可能となり、水中掘削時における泥土(産業廃棄物)の排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係るグラブバケットと当該グラブバケットを吊るすクローラクレーンの概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るグラブバケットの開状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るグラブバケットの開状態を示す側面図であって、(a)は
図2のA方向から見た矢視図、(b)は
図2のB方向から見た矢視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るグラブバケットの閉状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るグラブバケットの閉状態を示す側面図であって、(a)は
図4のC方向から見た矢視図、(b)は
図4のD方向から見た矢視図である。
【
図6】
図4の要部拡大図であって脱水スクリーンの分解斜視図である。
【
図7】
図6に示す脱水スクリーンのスクリーン部材の斜視図であり、(a)はアッセンブリ状態、(b)は分解状態を示している。
【
図8】
図6に示す第2スクリーン部材の脱水量測定試験の結果を示すグラフである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るグラブバケットの開状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るグラブバケットの開状態を示す側面図であって、(a)は
図9のE方向から見た矢視図、(b)は
図9のF方向から見た矢視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るグラブバケットの閉状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るグラブバケットの閉状態を示す側面図であって、(a)は
図11のG方向から見た矢視図、(b)は
図11のH方向から見た矢視図である。
【
図13】
図11の要部拡大図であって、脱水スクリーンの分解斜視図を示している。
【
図14】
図13に示す第2スクリーン部材の脱水量測定試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るグラブバケットの実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、本発明を圧入式オープンケーソン工法に適用したものを例示する。
【0029】
[第1実施形態]
図1~
図8は、本発明に係るグラブバケットの第1実施形態を示している。
【0030】
(グラブバケットの構成)
図1は、本実施形態に係るグラブバケット1、及び当該グラブバケット1を吊るすクローラクレーンの概略図を示している。なお、
図1において、符号Gは地面を示し、符号WTは地中の水面を示している。
【0031】
グラブバケット1は、
図1に示すように、地上(地面G)に配置された揚重機であるクローラクレーン21のジブ22に支持される第1ワイヤW1を介して鉛直方向に昇降可能に吊り下げられていて、ケーソン3の圧入・沈設に伴う地中の立坑掘削に供すると共に、当該立坑掘削によって得られた掘削土の揚重に供する。なお、グラブバケット1によって揚重された土砂は、地上(地面G)に設けられた図示外の土砂ピットに運ばれる。
【0032】
具体的には、グラブバケット1は、クローラクレーン21のジブ22に第1ワイヤW1を介して吊り下げられる支持体4と、支持体4によって支持される一対のアームである第1支持アーム51及び第2支持アーム52と、第1支持アーム51及び第2支持アーム52を介して回動可能に支持される一対のバケットである第1バケット61及び第2バケット62と、支持体4に連係され、第1バケット61と第2バケット62とを開閉可能に連結する連結軸60と、を有する。
【0033】
図2は、開状態にあるグラブバケット1の斜視図を示している。
図3は、
図2に示すグラブバケット1の側面図であって、(a)は
図2のA方向から見た矢視図、(b)は
図2のB方向から見た矢視図を示している。また、
図4は、閉状態にあるグラブバケット1の斜視図を示している。
図5は、
図4に示すグラブバケット1の側面図であって、(a)は
図4のC方向から見た矢視図、(b)は
図4のD方向から見た矢視図を示している。
【0034】
支持体4は、特に
図2、
図4に示すように、それぞれ平面視が概ね矩形状をなす矩形ブロック状に形成された上下一対の支持体である、第1支持体41と第2支持体42とで構成される。第1支持体41は位置が固定されている一方、第2支持体42は鉛直方向において第1支持体41に対し相対移動(接近又は離間)可能に対向して配置されていて、第1支持体41は第1ワイヤW1を介してジブ22に吊り下げ支持され、第2支持体42は第2ワイヤW2を介してジブ22に吊り下げ支持されている。
【0035】
第1支持体41は、第2支持体42の鉛直上方に配置されていて、一端側である第1側辺部411の端部に、一対の第1支持アーム511,512が回動可能に接続されると共に、第1支持体41の他端側である第2側辺部412に、一対の第2支持アーム521,522が固定的に接続される。また、第1支持体41には、上部中央位置の近傍に第1ワイヤ接続部410が設けられていて、第1ワイヤ接続部410には、第1ワイヤW1が接続される。すなわち、第1支持体41は、第1ワイヤW1が巻き上げられることによって鉛直上方へ移動し、第1ワイヤW1が巻き下げられることによって鉛直下方へ移動する。また、第1支持体41には、第1ワイヤ接続部410と隣接する位置に、第2ワイヤW2が貫通可能な第2ワイヤ貫通孔(図示外)が鉛直方向に沿って形成されている。
【0036】
一方、第2支持体42には、上部の中央位置の近傍に第2ワイヤ接続部420が設けられていて、この第2ワイヤ接続部420に、第1支持体41の前記第2ワイヤ貫通孔(図示外)を貫通した第2ワイヤW2が接続される。また、第2支持体42には、第1バケット61と第2バケット62とを連結して相対回動可能に支持する連結軸60が設けられる。これにより、第2ワイヤW2が巻き上げられて、第2支持体42が第1支持体41に接近する方向(鉛直上方)へ移動することにより、第1バケット61と第2バケット62が閉状態を構成する一方、第2ワイヤW2が巻き下げられて、第2支持体42が第1支持体41から離間する方向(鉛直下方)へ移動することにより、第1バケット61と第2バケット62が開状態を構成する。
【0037】
第1支持アーム511,512は、相互に同一形状をなす角柱状又は角筒状を呈し、それぞれ長手方向の一端部が、第1支持体41の第1側辺部411の端部に第1リンク(図示外)を介して接続され、第1支持体41に対して回動可能に支持される。また、第1支持アーム511,512は、それぞれ長手方向の他端部が、第1バケット61に設けられた第1被支持部613,614に第2リンク(図示外)を介して接続され、第1バケット61を回動可能に支持する。
【0038】
第2支持アーム521,522は、相互に同一形状をなす角柱状又は角筒状を呈し、それぞれ長手方向の一端部が、第1支持体41の第2側辺部412に延設された支持体延設部43に、例えば溶接等の所定の固定手段により固定的に接続される。また、第2支持アーム521,522は、それぞれ長手方向の他端部が、第2バケット62に設けられた第1被支持部623,624に第3リンク(図示外)を介して接続され、第2バケット62を回動可能に支持する。
【0039】
第1バケット61は、径方向外側へ膨出する湾曲状に形成された底壁610と、底壁610の両側縁から立ち上がり概ね扇形状をなす左右一対の側壁611,612と、を有する。底壁610の上端部には、第1支持アーム511,512によって支持される第1被支持部613,614が設けられている。一方、側壁611,612の頂部には、それぞれ連結軸60との連結に供する第2被支持部615,616が設けられている。また、底壁610の下端部には、爪状に形成された複数(本実施形態では3つ)の第1刃部617が、底壁610の幅方向に概ね等間隔に設けられている。なお、第1刃部617は、前記開状態では、
図2、
図3に示すように、鉛直下方へと指向することによって掘削可能となっていて、前記閉状態では、
図4、
図5に示すように、第2刃部627と互い違いに交差することにより、第1バケット61と第2バケット62の内側端面同士が密着可能となっている。
【0040】
同様に、第2バケット62は、径方向外側へ膨出する湾曲状に形成された底壁620と、底壁620の両側縁から立ち上がり概ね扇形状をなす左右一対の側壁621,622と、を有する。底壁620の上端部には、第2支持アーム521,522によって支持される第1被支持部623,624が設けられている。一方、側壁621,622の頂部には、それぞれ連結軸60との連結に供する第2被支持部625,626が設けられている。また、底壁620の下端部には、爪状に形成された複数(本実施形態では3つ)の第2刃部627が、底壁620の幅方向に概ね等間隔に設けられている。なお、第2刃部627は、前記開状態では、
図2、
図3に示すように、鉛直下方へと指向することにより掘削可能となっていて、前記閉状態では、
図4、
図5に示すように、第1刃部617と互い違いに交差することで、第1バケット61と第2バケット62の内側端面同士が密着可能となっている。
【0041】
このように、第1バケット61は第1支持アーム511,512との接続部(第1被支持部613,614)を回動支点として、第2バケット62は第2支持アーム521,522との接続部(第1被支持部623,624)を回動支点として、それぞれ互いに最も離間する開位置(
図2、
図3参照)と、密着する閉位置(
図4、
図5参照)と、の間で開閉可能に構成されている。そして、前記閉位置では、第1バケット61の内側端面と第2バケット62の内側端面とが密着することにより、第1バケット61と第2バケット62の内側に土砂を収容する収容空間が形成される。
【0042】
また、第1バケット61における底壁610の上端部には、前記閉位置にて水平方向又は鉛直下方へと開口する第1開口部618が設けられている。同様に、第2バケット62における底壁620の上端部にも、前記閉位置にて水平方向又は鉛直下方へと開口する第2開口部(図示外)が設けられている。そして、第1開口部618及び第2開口部(図示外)には、それぞれ収容空間の内部に収容される土砂の流出を抑制しつつ当該収容空間の内部に収容される土砂に含まれる水分(泥水)を排出する脱水スクリーン7が設けられている。
【0043】
なお、第1開口部618及び第2開口部(図示外)は、底壁610,620に設けられていればよく、前記底壁610,620の上端側位置に配置されることに限定されるものではない。換言すれば、第1開口部618及び第2開口部(図示外)は、前記底壁610,620の上端側位置のほかに、例えば底壁610,620の下端側位置に配置することも可能である。かかる構成の場合には、収容空間内に収容された土砂(泥土)の底に溜まる水分(泥水)を効率よく排出できるメリットがある。
【0044】
(脱水スクリーンの構成)
図6は、
図4の要部拡大図であって、脱水スクリーンの分解斜視図を示している。
図7は、
図6に示す脱水スクリーンのスクリーン部材の斜視図を示し、(a)はアッセンブリ状態、(b)は分解状態を示している。なお、以下では、便宜上、
図6を参照することによって第1バケット61に配置された脱水スクリーン7についてのみ説明するが、第2バケット62側においても、当該第2バケット62の底壁620(
図2~
図5参照)に設けられた図示外の第2開口部に、第1バケット61と同様の構成をもって脱水スクリーン7が設けられている。
【0045】
図6に示すように、脱水スクリーン7は、メッシュ状のスクリーン部材70と、このスクリーン部材70を第1開口部618に固定するための固定枠73と、で構成される。換言すれば、スクリーン部材70は、スクリーン部材70と固定枠73とが別体となる2ピース構造を有していて、固定枠73を介して第1開口部618に着脱可能に構成されている。
【0046】
スクリーン部材70が配置される第1開口部618は、
図6に示すように、底壁610の外側面が段差凹状に窪み形成されていて、底部の中央寄りに概ね矩形状をなす複数の開口窓が開口している。具体的には、第1開口部618の底部には、4つの第1開口窓618aが、第1開口部618の幅方向に並列に開口している。また、第1開口部618の底部には、幅方向両端部となる第1開口窓618aの両端外側部に、後述する固定枠73の取り付けに供する第1貫通孔618bが、片側に2つずつ貫通形成されている。
【0047】
スクリーン部材70は、第1開口部618の幅方向における第1開口窓618aの形成領域に相当する幅方向寸法に設定されていて、
図7に示すように、比較的粗いメッシュからなる一対の第1スクリーン部材71,71と、これら第1スクリーン部材71,71よりも細かいメッシュからなる第2スクリーン部材72と、を重ね合わせて構成される。すなわち、スクリーン部材70は、第2スクリーン部材72の両側に一対の第1スクリーン部材71,71が配置され、当該一対の第1スクリーン部材71,71によって第2スクリーン部材72を挟み込むことにより構成される。なお、一対の第1スクリーン部材71と第2スクリーン部材72は、それぞれ同じ幅方向寸法を有していて、互いに過不足なく重なり合う構成となっている。これにより、スクリーン部材70は、比較的細かいメッシュからなる剛性の低い第2スクリーン部材72が、比較的粗いメッシュからなり第2スクリーン部材72に対し相対的に剛性の高い第1スクリーン部材71,71によって補強されている。
【0048】
具体的には、第1スクリーン部材71については、概ね3メッシュ程度に設定されていることが望ましい。しかし、当該第1スクリーン部材71は、第2スクリーン部材72を補強可能な剛性を備えていれば足り、前記3メッシュに限定されるものではない。他方、第2スクリーン部材72は、概ね10~30メッシュに設定されていることが望ましい。しかし、当該第2スクリーン部材72は、グラブバケット1が揚土する土粒子の大きさに応じて最適なメッシュ数が異なるため、前記10~30メッシュには限定されず、揚土する土粒子の大きさに応じて任意に選択可能である。
【0049】
固定枠73は、スクリーン部材70よりも幅広に形成されていて、第1開口部618との間にスクリーン部材70を挟み込んで保持するための枠体74と、第1開口部618に対する枠体74の固定に供する一対の当て板75,75と、で構成される。そして、枠体74と一対の当て板75,75とは、ボルト76及びナット77を介して第1開口部618に締結される。このように、固定枠73は、例えばボルト76とナット77からなる締結手段を介して第1開口部618に締結されることにより、第1開口部618に対しスクリーン部材70を着脱可能に固定する。なお、前記一対の当て板75,75については、省略することも可能である。
【0050】
枠体74は、金属材料からなり、第1開口部618の底部に対応する概ね矩形板状を呈し、第1開口部618の底部に対して概ね過不足なく重なり合う形状に形成されている。具体的には、枠体74は、第1開口窓618aに対して概ね過不足なく重なる複数(本実施形態では4つ)の枠体開口窓741が開口すると共に、枠体74の幅方向両端部に、それぞれ第1開口部618の第1貫通孔618bと合致する枠体貫通孔742が、片側に2つずつ設けられている。
【0051】
一対の当て板75は、金属材料によってそれぞれ同一形状を有する矩形板状に形成されていて、それぞれ片側一対の枠体貫通孔742,742に対応する一対の板貫通孔750,750が貫通形成されている。すなわち、この一対の当て板75,75は、枠体74の両側端部にそれぞれ配置されていて、複数(本実施形態では4組)のボルト76及びナット77によって枠体74と共に第1開口部618に共締めにより固定される。具体的には、枠体貫通孔742及び板貫通孔750を貫通したボルト76の軸部(雄ねじ部)にそれぞれ第1貫通孔618bに挿通した状態でナット77がねじ込まれることにより、枠体74及び一対の当て板75,75がそれぞれ第1開口部618に共締め固定される。
【0052】
(スクリーン部材の脱水量測定試験)
図8は、
図6に示す第2スクリーン部材72の脱水量測定試験の結果を示すグラフを示している。このグラフは、縦横200(mm)の正方形のメッシュについて、メッシュ数(25.4mm中に配置される鋼線の数)毎に8分間の脱水量を測定したものであり、横軸にメッシュ数、縦軸に脱水量(cm
3)を示している。
【0053】
スクリーン部材70は、比較的低剛性となる第2スクリーン部材72を補強する補強材としての第1スクリーン部材71,71と、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材72と、によって構成される。そこで、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材72に適用するメッシュの選定にあたり、10~50メッシュの第2スクリーン部材72について脱水量測定を行い、
図8に示す試験結果に基づき、第2スクリーン部材72に最適なメッシュを分析した。
【0054】
図8に示すように、脱水量は、40メッシュ及び50メッシュについては、ほとんど変わらない一方、10~30メッシュについては、40メッシュ及び50メッシュのものよりも明らかに増大すると共に、メッシュ数に反比例して増大する結果となった。この結果から、第2スクリーン部材72は、前述したように、10~30メッシュに設定されることが望ましい、という結論が得られた。
【0055】
一方で、第2スクリーン部材72のメッシュ数が少なく設定した場合には、排出可能な水分量(脱水量)は増大するものの、当該第2スクリーン部材72を通過する土粒子量も増大することになる。そこで、第2スクリーン部材72のメッシュ数については、10~30メッシュの範囲内において、掘削する地盤の土質(土粒子の大きさ)に応じてメッシュを選定することが望ましい。
【0056】
(本実施形態の作用効果)
以下、本実施形態に係るグラブバケット1により奏される特徴的な作用効果について、具体的に説明する。
【0057】
前記従来のグラブバケットは、バケットを閉じた状態で開閉弁によって貫通孔が閉塞される構成となっている。このため、揚土の際に泥水を排出できず、当該泥水を含む泥土(産業廃棄物)の排出を低減することが困難となる点で改善の余地を残していた。
【0058】
これに対し、本実施形態に係るグラブバケット1は、第1バケット61及び第2バケット62に、閉位置において水平方向又は鉛直下方へと開口する第1開口部618に、収容空間内に収容される土砂の流出を抑制しつつ、収容空間内に収容される土砂に含まれる水分(泥水)を排出することが可能な脱水スクリーン7が設けられている。これにより、揚土中において、収容空間内の土砂に含まれる水分(泥水)を、脱水スクリーン7を介して排出することができる。これにより、脱水スクリーン7を介して脱水した分、収容空間内に収容される泥水量を削減することが可能となり、水中掘削時における泥土(産業廃棄物)の排出を抑制することができる。
【0059】
なお、脱水スクリーン7は、第1バケット61と第2バケット62の少なくとも一方に設けられていればよく、本実施形態のような、第1バケット61と第2バケット62の両方に配置される態様に限定されるものではない。一方で、本実施形態のように、脱水スクリーン7を、第1バケット61と第2バケット62の両方に配置されていることによって、収容空間内の土砂に含まれる水分(泥水)の効率的な排出に供し、短時間でより多くの水分(泥水)を排出することができる。
【0060】
さらに、脱水スクリーン7が第1バケット61(及び第2バケット62)に設けられていることにより、水中掘削にあたって、グラブバケット1を水中に沈める際、当該水没に伴う水中抵抗によって脱水スクリーン7が自動的に水洗される。これにより、泥水の排出に伴う脱水スクリーン7の目詰まり(泥水の排出に伴い当該泥水に含まれる土砂が脱水スクリーン7に詰まること)が抑制されて、脱水スクリーン7の頻繁なメンテナンスを回避することが可能となり、グラブバケット1による掘削作業をより効率的に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、第1開口部618(図示外の第2開口部)が、第1バケット61(第2バケット62)の閉位置における鉛直上端部に配置されている。このため、収容空間内に収容された土砂(泥土)の上澄みに溜まる水分を効率よく排出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1開口部618(図示外の第2開口部)が、それぞれ一対の側壁611,612(側壁621,622)に対して比較的幅広に設定される底壁610(底壁620)に設けられている。このため、第1開口部618(図示外の第2開口部)をより広く確保することが可能となり、水分(泥水)の排出効率を高めることができる。
【0063】
しかも、第1開口部618(図示外の第2開口部)が配置される底壁610(底壁620)の鉛直上端部は、掘削時に地盤と当接する第1刃部617及び第2刃部627とは反対側の端部であって、掘削時に土砂と当接するおそれがないため、第1開口部618(図示外の第2開口部)の変形や脱水スクリーン7の破損等の不具合を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、脱水スクリーン7が、固定枠73を介して第1開口部618(図示外の第2開口部)に着脱が可能なスクリーン部材70によって構成され、メンテナンス可能となっている。このため、スクリーン部材70に目詰まりや破損等が生じた場合には、当該スクリーン部材70を交換することで、脱水スクリーン7における土砂の捕集性能と、水分(泥水)の排出性能と、を長きにわたって維持することができる。
【0065】
また、本実施形態では、スクリーン部材70が、比較的粗いメッシュの第1スクリーン部材71と、第1スクリーン部材71よりも細かいメッシュの第2スクリーン部材72と、を重ね合わせることによって構成されている。これにより、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材72を第1スクリーン部材71により補強することが可能となり、スクリーン部材70の捕集性能を確保しつつ、当該スクリーン部材70耐久性を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、実質的なスクリーンとして機能する第2スクリーン部材72が10~30メッシュに設定されている。これにより、比較的多くの土砂を捕集しつつ、第2スクリーン部材72の目詰まりを低減することが可能となり、第2スクリーン部材72について、土砂の捕集性能と寿命との両立を図ることができる。
【0067】
[第2実施形態]
図9~
図14は、本発明に係るグラブバケットの第2実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態の脱水スクリーン7の配置を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。このため、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0068】
(グラブバケットの構成)
図9は、開状態にあるグラブバケット1の斜視図を示している。
図10は、
図9に示すグラブバケット1の側面図であって、(a)は
図9のE方向から見た矢視図、(b)は
図9のF方向から見た矢視図を示している。また、
図11は、閉状態にあるグラブバケット1の斜視図を示している。
図12は、
図11に示すグラブバケット1の側面図であって、(a)は
図11のG方向から見た矢視図、(b)は
図11のH方向から見た矢視図を示している。
【0069】
本実施形態に係るグラブバケット1は、とりわけ
図9、
図11に示すように、第1バケット61の両側壁611,612について、前記開位置における下端側が比較的厚肉となる厚肉部611a,612aとして構成され、前記開位置における上端側が比較的薄肉となる薄肉部611b,612bとして構成されている。これにより、本実施形態に係るグラブバケット1では、第1バケット61の両側壁611,612における前記開位置の上端側の外側面が、内側へと窪むような段差状を呈している。
【0070】
また、第2バケット62についても同様、前記開位置における下端側が比較的厚肉となる厚肉部621a,622aとして構成され、前記開位置における上端側が比較的薄肉となる薄肉部621b,622bとして構成されている。これにより、本実施形態に係るグラブバケット1は、第2バケット62の両側壁621,622における前記開位置の上端側の外側面が、内側へ窪むような段差状を呈している。
【0071】
このように、本実施形態では、第1バケット61の両側壁611,612及び第2バケット62の両側壁621,622について、前記開位置の下端側が肉厚に形成されることで、当該開位置の下端側が補強されている。これにより、グラブバケット1の第1バケット61及び第2バケット62が地盤に当接した際に、掘削により地盤から受ける力に十分に対抗可能となっている。
【0072】
また、第1バケット61の両側壁611,612の薄肉部611b,612bには、前記閉位置の下端部に相当する位置に、概ね矩形窓状に開口して第1バケット61の内外を連通する第1開口部619が設けられている。同様に、第2バケット62の両側壁621,622の薄肉部611b,612bには、前記閉位置の下端部に相当する位置に、概ね矩形窓状に開口して第2バケット62の内外を連通する第2開口部(図示外)が設けられている。そして、第1開口部619及び第2開口部(図示外)には、それぞれ収容空間内に収容される土砂の流出を抑制しつつ、収容空間内に収容される土砂に含まれる水分(泥水)を排出する脱水スクリーン7が設けられている。
【0073】
なお、第1開口部619及び第2開口部(図示外)は、それぞれ側壁611,612の薄肉部611b,612b及び側壁621,622の薄肉部611b,612bに設けられていればよく、前記側壁611,612の薄肉部611b,612b及び側壁621,622の薄肉部611b,612bにおける閉位置の下端部に相当する位置に配置されることに限定されない。換言すれば、第1開口部619及び第2開口部(図示外)については、前記側壁611,612の薄肉部611b,612b及び側壁621,622の薄肉部611b,612bの閉位置の下端部相当位置のほかにも、例えば側壁611,612の薄肉部611b,612b及び側壁621,622の薄肉部611b,612bの閉位置の上端側まで延長する、或いは、前記閉位置の上端部に相当する位置に配置することも可能である。かかる構成の場合には、収容空間内に収容された土砂(泥土)の上澄みに溜まる水分を効率よく排出できるメリットがある。
【0074】
(脱水スクリーンの構成)
図13は、
図11の要部拡大図であって、脱水スクリーンの分解斜視図を示している。なお、以下では、前記第1実施形態と同様に、便宜上、
図13を参照することによって第1バケット61に配置された脱水スクリーン7についてのみ説明するが、第2バケット62側においても、当該第2バケット62の側壁621,622(
図9~
図12参照)に設けられた図示外の第2開口部に、第1バケット61と同様の構成をもって脱水スクリーン7が設けられている。
【0075】
図13に示すように、脱水スクリーン7は、メッシュ状のスクリーン部材70と、このスクリーン部材70を第1開口部619及び第2開口部(図示外)に固定する固定枠73´と、で構成される。換言すれば、スクリーン部材70は、スクリーン部材70と固定枠73´とが別体となる2ピース構造を有し、固定枠73´を介して第1開口部619及び第2開口部(図示外)にそれぞれ着脱可能に構成されている。
【0076】
固定枠73´は、第1バケット61の側壁611,612の薄肉部611b,612bの各外側面に溶接等により固定され、前記閉位置において鉛直上側に開口する矩形U字状の第1枠体78と、この第1枠体78の外側面に溶接等により固定され、全周が途切れなく連続して中央位置に開口窓790が開口する矩形環状(矩形O字状)の第2枠体79と、により構成される。
【0077】
第1枠体78は、スクリーン部材70よりも僅かに大きな厚さをもってスクリーン部材70の三辺を包囲可能に形成され、内側にスクリーン部材70の外形よりも若干大きな切欠部780を有する。他方、第2枠体79は、第1枠体78よりも幅広に形成され、かつ、平面視において内側縁部がスクリーン部材70の外周縁部と重なるように形成されていて、中央部にスクリーン部材70の外形よりも若干小さい開口窓790を有する。
【0078】
かかる構成から、固定枠73´は、第1バケット61の側壁611,612の薄肉部611b,612bの外側面に取り付けられることにより、第1枠体78と第2枠体79との間に、スクリーン部材70を収容可能な図示外のスクリーン収容部を画定する。すなわち、固定枠73´は、第1枠体78の切欠部780を介してスクリーン部材70を受容し、第1バケット61の側壁611,612の薄肉部611b,612bと第2枠体79とでスクリーン部材70を挟み込むことにより、スクリーン部材70を挟持状態に収容保持する。
【0079】
このように、本実施形態に係るグラブバケット1では、前記第1実施形態のように第1バケット61及び第2バケット62に対する固定枠73を着脱することによってスクリーン部材70を着脱するのではなく、固定枠73´は第1バケット61及び第2バケット62にそれぞれ固定された状態のまま、上記のスロット状に構成された固定枠73´に対して第1枠体78の切欠部780を介してスクリーン部材70を抜き差しすることによって、スクリーン部材70のみを着脱可能な構成となっている。
【0080】
(スクリーン部材の脱水量測定試験)
図14は、
図13に示す第2スクリーン部材72の脱水量測定試験の結果を示すグラフを示している。このグラフは、前記第1実施形態と同様の条件で、縦横200(mm)の正方形のメッシュについて、メッシュ数(25.4mm中に配置される鋼線の数)毎に8分間の脱水量を測定したものであり、横軸にメッシュ数、縦軸に脱水量(cm
3)を示している。
【0081】
図14に示すように、脱水量は、40メッシュ及び50メッシュについては、ほとんど変わらない一方、10~30メッシュについては、40メッシュ及び50メッシュと比べて明らかに増大すると共に、メッシュ数に反比例して増大する結果となった。この結果から、本実施形態でも、第2スクリーン部材72は、10~30メッシュに設定されることが望ましい、という結論が得られた。
【0082】
また、
図8及び
図14を参照して、本実施形態に係る脱水量の測定結果と、前記第1実施形態に係る脱水量の結果とを比較してみると、脱水スクリーン7が第1バケット61の側壁611,612及び第2バケット62の側壁621,622に配置される本実施形態は、脱水スクリーン7を第1バケット61及び第2バケット62の底壁610,620に配置される前記第1実施形態と比較して、脱水量が20%程度増大する結果となった。
【0083】
なお、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第2スクリーン部材72のメッシュ数が少なく設定した場合、排出可能な水分量(脱水量)が増大する一方で、第2スクリーン部材72を通過する土粒子量も増大することになるため、第2スクリーン部材72のメッシュ数は、10~30メッシュの範囲内において、掘削する地盤の土質(土粒子の大きさ)に応じてメッシュを選定することが望ましい。
【0084】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、第1開口部619(図示外の第2開口部)が、第1バケット61(第2バケット62)における前記閉位置の鉛直下端部に配置されている。このため、グラブバケット1の収容空間に収容された土砂(泥土)の底に溜まる水分を効率よく排出することができる。
【0085】
また、本実施形態では、第1開口部619(図示外の第2開口部)が、第1バケット61の側壁611,612(第2バケット62の側壁621,622)の開方向側に位置する段差凹状の薄肉部611b,612b(薄肉部621b,622b)に配置されている。このように、第1バケット61の側壁611,612(第2バケット62の側壁621,622)の各外側面は、第1開口部619(図示外の第2開口部)が配置される薄肉部611b,612b(薄肉部621b,622b)が、掘削時に地盤(土砂)と直接当接する厚肉部611a,612a(厚肉部621a,622a)に対して段差凹状に窪んだ構成となっている。これにより、薄肉部611b,612b(薄肉部621b,622b)が掘削の際に地盤(土砂)と直接当接せず、第1開口部619(図示外の第2開口部)の変形や脱水スクリーンの破損等の不具合を抑制することができる。
【0086】
(変形例)
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0087】
また、前記実施形態では、第2ワイヤW2を介して第1バケット61と第2バケット62の開閉を行うロープ式の態様について例示したが、第1バケット61と第2バケット62を開閉する動力源としては、前記ロープ式に限られず、例えば、油圧シリンダによって第1バケット61と第2バケット62の開閉を行う油圧式や、電動モータによって第1バケット61と第2バケット62の開閉を行う電動式など、グラブバケット1の仕様等に応じていかなる動力源を採用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…グラブバケット
21…クローラクレーン
22…ジブ
3…ケーソン
4…支持部
41…第1支持部(支持部)
42…第2支持部(支持部)
511…第1支持アーム(一対のアーム)
512…第1支持アーム(一対のアーム)
521…第2支持アーム(一対のアーム)
522…第2支持アーム(一対のアーム)
60…連結軸
61…第1バケット(一対のバケット)
610…底壁
611…側壁(一対の側壁)
611a…厚肉部
611b…薄肉部
612…側壁(一対の側壁)
612a…厚肉部
612b…薄肉部
618…第1開口部(開口部)
619…第1開口部(開口部)
62…第2バケット(一対のバケット)
620…底壁
621…側壁(一対の側壁)
621a…厚肉部
621b…薄肉部
622…側壁(一対の側壁)
622a…厚肉部
622b…薄肉部
628…第2開口部(開口部)
629…第2開口部(開口部)
7…脱水スクリーン
70…スクリーン部材
71…第1スクリーン部材
72…第2スクリーン部材
73、73´…固定枠
74…枠体(固定枠)
75…当て板(固定枠)
76…ボルト
77…ナット
78…第1枠体(固定枠)
79…第2枠体(固定枠)
W1…第1ワイヤ(ワイヤ)
W2…第2ワイヤ(ワイヤ)