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特開2024-38504MPC1抑制により皮膚幹細胞を活性化する方法および皮膚幹細胞活性化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038504
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】MPC1抑制により皮膚幹細胞を活性化する方法および皮膚幹細胞活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4172 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240312BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K31/4172 ZNA
A61K8/9789
A61K8/49
A61Q19/00
A61P17/00 101
A61P43/00 107
A61K36/48
A61K36/82
A61K36/185
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011232
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2019230655の分割
【原出願日】2019-12-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】入山 俊介
(57)【要約】
【課題】皮膚幹細胞を活性化する方法、皮膚幹細胞活性化剤、及び皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】MPC1抑制剤を適用すると皮膚幹細胞の活性化に有効である。かかるMPC1抑制剤として、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含む剤が挙げられる。また、MPC1抑制作用を指標として皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニングが可能である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPC1抑制剤の適用により皮膚幹細胞を活性化する美容方法。
【請求項2】
前記MPC1抑制剤が、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含む、請求項1に記載の美容方法。
【請求項3】
アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含むMPC1抑制剤。
【請求項4】
MPC1抑制剤を含む、皮膚幹細胞活性化剤。
【請求項5】
前記MPC1抑制剤が、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含む、請求項4に記載の皮膚幹細胞活性化剤。
【請求項6】
MPC1抑制作用を指標とする、皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
皮膚細胞を候補薬剤に接触させる工程、
候補薬剤に接触させた皮膚細胞におけるMPC1の活性、量、及び/又は発現量を測定する工程、
測定したMPC1の活性、量、及び/又は発現量から候補薬剤のMPC1抑制作用を決定する工程、
決定したMPC1抑制作用に基づき、皮膚幹細胞活性化剤を選択する工程、
を含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPC1抑制により皮膚幹細胞を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚幹細胞を活性化するために様々な方策が検討されている。例えば、特許文献1は、アスタキサンチンを含有する幹細胞の細胞老化抑制剤を開示する。特許文献2は、ヒドロキシプロリン又は薬理学的に許容されるその塩を有効成分として含有する、間葉系幹細胞の幹細胞性維持及び賦活化剤を開示する。
【0003】
分化細胞は、解糖系に加え電子伝達系を使いATPを産生させるため、活性酸素が細胞内に蓄積する。一方で、幹細胞は解糖系のみでATP産生を行うため、活性酸素は発生せず、細胞が守られる(非特許文献1)。ネズミ表皮では、NADH/NAD+比が高く解糖系が優勢な夜間にはS期にある幹細胞が増加するが、NADH/NAD+比が低く電子伝達系が優勢な昼間には減少するというサイクルを繰り返すことが報告されている(非特許文献2)。また、ミトコンドリアピルビン酸キャリア(mitochondrial pyruvate carrier (MPC1))の機能を欠失させ電子伝達系への経路をブロックするよう遺伝子操作した毛包細胞では幹細胞の増殖が活性化されヘアサイクルが促進されことが示された(非特許文献3)。
【0004】
特許文献3には、ミトコンドリアトランスファー促進剤を含有する美容組成物を開示し、係る組成物の皮膚線維芽細胞、表皮角化細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、表皮幹細胞及び真皮幹細胞への使用が記載されている。特許文献4は、角化細胞をストレッサーに暴露すること、解糖及び酸化的リン酸化のそれぞれと関連付けられる代謝指標を検出し、ストレッサーに対するそれぞれの応答を提供すること等を含む、角化細胞の代謝を改善するスキンケア活性剤として被検物質を特定する方法を開示する。特許文献5は、細胞を第1および第2被験物質と接触させること、解糖及び酸化的リン酸化のそれぞれと関連付けられる代謝指標を非致死的に検出して、被験物質に対する代謝経路に関する応答を提供すること等を含む、化粧品組成物に使用するための有効成分の相乗作用する組み合わせを特定又は評価する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-52879号公報
【特許文献2】特開2019-26617号公報
【特許文献3】特開2018-123130号公報
【特許文献4】特表2015-534644号公報
【特許文献5】特表2015-531881号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Cell Science 125(23), 5597-5608
【非特許文献2】Stringari et al., 2015, Cell Reports 10 , 1-7, January 6, 2015, http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.12.007
【非特許文献3】Nat Cell Biol. 2017 September ; 19(9): 1017-1026. doi:10.1038/ncb3575.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、皮膚幹細胞を活性化する方法、皮膚幹細胞活性化剤、及び皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、MPC1抑制により電子伝達系への経路を阻害することで皮膚幹細胞を活性化することに想到し、本発明を為すに至った。
【0009】
本願は下記の発明を包含する:
(1)MPC1抑制剤の適用により皮膚幹細胞を活性化する美容方法。
(2)前記MPC1抑制剤が、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含む(1)に記載の美容方法。
(3)アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含むMPC1抑制剤。
(4)MPC1抑制剤を含む、皮膚幹細胞活性化剤。
(5)前記MPC1抑制剤が、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの少なくともいずれかを有効成分として含む(4)に記載の皮膚幹細胞活性化剤。
(6)MPC1抑制作用を指標とする、皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニング方法。
(7)皮膚試料を候補薬剤に接触させる工程、
候補薬剤に接触させた皮膚試料におけるMPC1の活性、量、及び/又は発現量を測定する工程、
測定したMPC1の活性、量、及び/又は発現量から候補薬剤のMPC1抑制作用を決定する工程、
決定したMPC1抑制作用に基づき、皮膚幹細胞活性化剤を選択する工程、
を含む(6)に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MPC1抑制により皮膚幹細胞を活性化に有効な剤および方法が提供される。皮膚幹細胞が活性化されれば、皮膚の老化抑制に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実験1-1の結果であり、コントロール(Cont)、UK5099(10μM UK5099、20μM UK5099)、エキノマイシン(10nM Echinomycin、20nM Echinomycin)をそれぞれ添加した場合のMCSP/B2M値をコントロール(Cont)の結果を1とした相対値で示すグラフである。
図2図2は、実験1-2の結果であり、コントロール(Cont)、UK5099(20μM UK5099)をそれぞれ添加した場合のMCSP及びDAPIの発現を示す写真である。
図3図3は、実験1-2の結果であり、コントロール(Cont)、UK5099(20μM UK5099)をそれぞれ添加した場合のIntegrin β1及びDAPIの発現を示す写真である。
図4図4は、実験1-3の結果であり、抗体を添加しない場合(Negative cont)、コントロールを添加した場合(Cont)、UK5099を添加した場合(20μM UK5099)のIntegrinβ1陽性細胞数を示す。
図5図5は、実験1-4の結果であり、コントロール(Cont)、UK5099(1μM UK5099,10μM UK5099)をそれぞれ添加し4日間培養した三次元培養皮膚モデルの組織切片におけるIntegrin α6、MCSP、及びDAPIの発現を示す写真である。
図6図6は、実験1-5の結果であり、コントロール(Cont)、UK5099(10μM UK5099)をそれぞれ添加し5日間培養したヒト皮膚器官培養モデル組織切片におけるIntegrin α6、MCSP、及びDAPIの発現を示す写真である。
図7図7は、実験2-2の一次スクリーニングの結果であり、コントロール(DMSO;Control)、各評価対象試料(薬剤No.1~124)を添加した場合のMPC1/B2M値を、コントロールの結果を1.0とした相対値で示す。
図8図8は、実験2-2の二次スクリーニングの結果であり、一次スクリーニングで選定された各評価対象試料(薬剤No.1~124のうち37品)を添加した場合のMPC1/B2M値を、コントロール(DMSO)の結果を100.0とした割合(% of control)で示す。
図9図9は、実験2-2の三次スクリーニングの結果であり、コントロール(DMSO;Cont)、二次スクリーニングで選定された各評価対象試料(薬剤No.1~124のうち15品)を添加した場合のMPC1/B2M値を、コントロールの結果を100.0とした割合(% of control)で示す。
図10図10は、図9の結果を、実験2-2の三次スクリーニングで選定した6品それぞれについてDunnett's testにより統計処理を施したグラフを示す(*P<0.05,**P<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、MPC1抑制により皮膚幹細胞が活性化されることに想到し、MPC1抑制作用を有する新規物質を発見した。とりわけ、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインには高いMPC1抑制作用があることを発見した。
【0013】
本発明はかかる知見に基づき、MPC1抑制剤および皮膚幹細胞活性化剤(以降これらを総称して「本発明の剤」という場合がある。)、そのスクリーニング方法、並びにそれらを適用することにより皮膚幹細胞を活性化する方法を提供する。本発明の方法は、美容を目的とする方法の場合があり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。
【0014】
MPC1は、MPC2とヘテロダイマーを形成し、ミトコンドリア内部へとピルビン酸を送達するトランスポーターであるミトコンドリアピルビン酸キャリアを形成するタンパク質である。MPC1抑制とは、MPC1の働き、産生、及び/又は翻訳を低減及び/又は阻害すること、並びに/或いは、MPC1の活性、量、及び/又は発現量を減少させることを指す。MPC1の働きとしては、例えば、MPC1がミトコンドリア内部へピルビン酸を送達する機能が挙げられる。ある実施形態では、MPC1抑制は、本発明の剤を付与していない状態(コントロール)に比べて、本発明の剤を付与した場合に、MPC1の活性、量、及び/又は発現量が、例えば有意水準を5%とした統計学的有意差(例えばDunnettの検定)をもって減少していること、あるいは、例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%減少していることを意味し得る。
【0015】
MPC1の発現量は、例えば、実施例のように定量PCR法を用いて遺伝子発現量を測定してもよく、抗体を用いて染色することによりタンパク質発現量を測定してもよく、市販のキットを用いて測定してもよく、あるいは特許文献3等の文献に記載の方法により求めることができるがこれらに限定されず、任意の公知技術が使用できる。
【0016】
本明細書において、皮膚幹細胞の活性化とは、角化細胞や線維芽細胞といった皮膚の細胞における幹細胞の増殖が促進することを指す。幹細胞の増殖は、幹細胞数の計数、integrin β1等の幹細胞マーカーの発現量の測定、等によって決定できる。皮膚幹細胞が活性化されれば、ターンオーバーの促進、肌の若返り、肌のキメの改善、ニキビや色素沈着といった好ましくない肌状態からの早期回復、等が期待できる。
【0017】
本発明のMPC1抑制剤は、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及び/又はエルゴチオネインからなってもよく、又は有効成分として含有してもよい。しかしながら、MPC1を抑制することができる物質であればこれらに限定されない。
【0018】
本発明の剤は、上記の有効成分の何れか1種を単独で含有してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で含有してもよい。
【0019】
本発明の剤は、上記の有効成分を、1種又は2種以上の他の成分、例えば賦形剤、担体及び/又は希釈剤等と組み合わせてもよい。
【0020】
アケビ(Akebia quinata)は、アケビ科アケビ属に属する落葉低木である。アケビは、ヒアルロン酸生成促進効果、コラーゲン生成促進効果及びMMP阻害効果を有し、しわ形成防止・改善効果や、リパーゼ阻害活性、血中中性脂肪濃度上昇抑制活性、あるいは抗肥満活性を有することが報告されている(特開2015-17048号公報、特開2010-265182号公報等)。本発明に用いられるアケビ抽出物としては、アケビの茎の抽出物が好ましいが、アケビの果実、果皮、種子、葉、花、根等にも有効成分が含まれているので、これらのうちいずれか1又は2以上の抽出物を使用することもできる。
【0021】
黒豆(Glycine max 'Kuromame')は、マメ科の一年草であるダイズの品種であり、「丹波黒」、「和知黒」等の各品種を用いることができる。アントシアニン等のポリフェノールを豊富に含んでいること、黒豆由来成分には抗肥満作用、抗炎症作用、抗酸化作用、耐糖能改善作用等があることが報告されている(特開2015-140298号公報等)。黒豆抽出物は、黒豆の豆果の抽出物が好ましいが、黒豆の鞘、葉、茎、花、根等にも有効成分が含まれているので、これらのうちいずれか1又は2以上の抽出物を使用することもできる。
【0022】
シャクヤク(Paeonia lactiflora)は、ボタン科の多年草である。シャクヤクは、表皮肥厚抑制作用、VEGF産生促進作用、IGF-1産生促進作用、HGF産生促進作用、及びBMP-2産生促進作用等が報告されている(特開2019-11252号公報、特開2012-121856号公報等)。シャクヤク抽出物は、シャクヤクの根の抽出物が好ましいが、シャクヤクの葉、茎、花、果実、果皮、種子等にも有効成分が含まれているので、これらのうちいずれか1又は2以上の抽出物を使用することもできる。
【0023】
茶(Camellia sinensis)は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹であり、チャノキ(Camellia sinensis var. sinensis)、アッサムチャ(Camellia sinensis var. assamica)等の各品種を用いることができる。例えば、宇治茶等を使用できる。茶にはカテキン等のポリフェノールを豊富に含んでいること、脂質代謝改善作用、抗酸化作用、抗ガン作用、血圧上昇抑制作用等があることが知られている。茶抽出物は、茶の葉や茎の抽出物が好ましいが、茶の実、花、根、種子等にも有効成分が含まれているので、これらのうちいずれか1又は2以上の抽出物を使用することもできる。
【0024】
ホホバ(Simmondsia chinensis)は、ナデシコ目ホホバ科に属する常緑低木である。ホホバには、保湿作用、エモリエント作用、抗炎症作用、コラゲナーゼ阻害効果、エラスターゼ阻害効果、ヒアルロニダーゼ阻害効果等が知られている(特開2003-48846号公報、特開2003-048812号公報、特開2003-034644号公報等)。ホホバ葉抽出物は、ホホバの葉の抽出物であるが、ホホバの種子、実、花、根等にも有効成分が含まれているので、これらのうちいずれか1又は2以上の抽出物を使用することもできる。
【0025】
エルゴチオネイン(L-Ergothioneine)は以下の構造を有する分子量229.3のアミノ酸であり、抗酸化、抗炎症作用、エラスターゼ阻害作用、チロシナーゼ阻害作用等を有することが知られている(特開2019-149972号公報等)。エルゴチオネインは、化学的に合成してもよく、あるいは、担子菌類等の微生物や動植物等にも含まれているため、このような天然物の抽出物等の形態で用いてもよい。
【化1】
【0026】
上述の各種抽出物は、化粧品原料や健康食品材料として市販のものを使用してもよく、常法により得てもよい。抽出方法は特に限定されるものではないが、溶媒を用いた抽出法や加水分解による抽出法が挙げられる。溶媒を用いた抽出を行う際には、原料を抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬または加熱還流した後、加水分解による抽出を行う際には、例えば、アルカリ、酸等による化学的処理、熱、圧力等による物理学的処理、酵素等による生物学的処理等、任意の加水分解処理を行った後、濾過し、濃縮して得ることができる。原料をそのまま使用することもできるが、顆粒状や粉末状に粉砕して抽出に供した方が、穏和な条件で短時間に高い抽出効率で有効成分の抽出を行うことができる。抽出温度は特に限定されるものではなく、粉砕物の粒径や溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよい。通常は、室温から溶媒の沸点までの範囲内で設定される。また、抽出時間も特に限定されるものではなく、粉砕物の粒径、溶媒の種類、抽出温度等に応じて適宜設定すればよい。さらに、抽出時には、撹拌を行ってもよいし、撹拌せず静置してもよいし、超音波を加えてもよい。
【0027】
抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水性溶媒、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、あるいは有機溶媒、例えばエタノール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0028】
このような抽出操作により、有効成分が抽出され、溶媒に溶け込む又は加水分解される。抽出物を含む溶媒又は加水分解物は、そのまま使用してもよいが、滅菌、洗浄、濾過、脱色、脱臭等の慣用の精製処理を加えてから使用してもよい。また、必要により凍結乾燥などにより濃縮あるいは任意の溶媒で希釈してから使用してもよい。さらに、溶媒又は加水分解物を全て揮発させて固体状(乾燥物)としてから使用してもよいし、該乾燥物を任意の溶媒に再溶解してから使用してもよい。
【0029】
また、原料を圧搾することにより得られる圧搾液にも抽出物と同様の有効成分が含まれているので、抽出物の代わりに圧搾液を使用することもできる。
【0030】
また、本願は、本発明の剤を含む組成物も提供する。本発明の組成物は、化粧品組成物又は食品組成物であってもよい。本発明の組成物は、例えば、MPC1抑制作用を介して皮膚幹細胞を活性化する組成物であってもよい。
【0031】
本発明の剤又は組成物を適用する対象は、例えば、肌のターンオーバーの滞り、皮膚老化、色素沈着といった客観的又は主観的な観点から皮膚幹細胞の活性化が必要である対象であっても、予防的に皮膚幹細胞の活性化を希望する対象であってもよい。
【0032】
本発明の剤又は組成物は、外用投与または経口投与など任意の経路により適用できるが、皮膚に直接適用することができる皮膚外用剤に配合することが好ましい。外用投与の形態としては、例えば、液状、乳液状、クリーム状、固形状、シート状、スプレー状、ゲル状、泡状、パウダー状等任意に選択することができる。乳液、クリーム、美容液、ローション、パック、洗顔料等の化粧品組成物であってもよい。経口投与の形態としては、例えば、錠剤、サプリメント、飲料、粉末など任意に選択することができる。本発明の剤又は組成物は、その効果を損なわない範囲で、化粧品や医薬品等の組成物に用いられる任意配合成分を、必要に応じて適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、賦形剤、担体、希釈剤、油分、界面活性剤、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤などが挙げられる。例えば、皮膚幹細胞の活性化を促進する他の薬効成分などが含まれていてもよい。
【0033】
また、投与頻度は、4週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、都度投与等任意に選択できるがこれらに限定されない。
【0034】
しかしながら、本発明の剤や組成物の採り得る形態は、上述の剤型や形態に限定されるものではない。
【0035】
本発明の剤又は組成物におけるアケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネイン等の有効成分の配合量は、種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及び/又はエルゴチオネインの配合量は、本発明剤又は組成物の総重量当たり0.0001~100重量%、0.0001~90重量%、0.001~50重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.1~0.5重量%、等とすることができるが、本発明の効果が発揮されれば限定されない。
【0036】
さらに、本願は、MPC1抑制作用を指標とする、皮膚幹細胞活性化剤のスクリーニング方法も提供する。本発明のスクリーニング方法は、皮膚試料を候補薬剤に接触させる工程;候補薬剤に接触させた皮膚試料におけるMPC1の活性、量、及び/又は発現量を測定する工程;測定したMPC1の活性、量、及び/又は発現量から候補薬剤のMPC1抑制作用を決定する工程;決定したMPC1抑制作用に基づき、皮膚幹細胞活性化剤を選択する工程;を含んでもよい。本発明の方法により,候補薬剤が皮膚幹細胞活性化作用を有するか否かについてのスクリーニングが可能となり,製品開発や新たな肌ケアの提案が可能になる。
【0037】
皮膚試料は、採取後の皮膚試料、例えば、ヒト等の動物から採取された後のex vivoの状態の皮膚試料であってもよいし、培養皮膚細胞、例えば、培養角化細胞又は培養線維芽細胞といったin vitroの状態であってもよい。あるいは、三次元皮膚モデルなどの人工皮膚試料であってもよい。皮膚試料は、MPC1抑制作用を測定することができれば限定されない。
【0038】
また、本願は、MPC1抑制を介して、皮膚幹細胞を活性化するアケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及び/又はエルゴチオネインも提供する。
【実施例0039】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0040】
実験1:MPC1抑制による幹細胞への影響
実験1-1:PCR法によるMCSPの遺伝子発現解析
MPC1を阻害することによる幹細胞への影響を調べるために、MPC1阻害剤として公知のUK5099を用いて、表皮幹細胞マーカーであるMelanoma-associated chondroitin sulfate proteoglycan (MCSP)の発現を解析した。
【0041】
細胞培養
正常ヒト胎児由来表皮角化細胞(ScienCell社、Cat No.2120)を表皮角化細胞培養培地(クラボウ社、KK-2150S)にて培養した。継代後に2.5×105 cells/well/2mLになるように6well plateへ播種し、24時間後にUK5099、コントロール、エキノマイシンをそれぞれ添加した。エキノマイシンは、MPC1と同様にミトコンドリア活性を制御するHIF-1αの阻害剤であるがミトコンドリア内におけるピルビン酸からアセチルCoAへの変換阻害を行う物質である点で異なる。ミトコンドリア内へのピルビン酸送達を阻害する経路と、それとも、ミトコンドリア内におけるピルビン酸からアセチルCoAへの変換を阻害する経路のいずれが、表皮角化細胞の幹細胞を活性化するのかを検討するためにエキノマイシンを使用した。UK5099(メルク社製:カタログ番号504817)は、あらかじめ10mM及び20mMの濃度になるようにDMSOで希釈したストック溶液を作成し、1000倍希釈で培地に添加することで最終濃度10μM及び20μMとした。コントロールはDMSOを1000倍希釈で添加した。エキノマイシン(Abcam社製Echinomycin:製品番号ab144247)は、あらかじめ10μM及び20μMの濃度になるようにDMSOで希釈したストック溶液を作成し、1000倍希釈で培地に添加することで最終濃度10nM及び20nMとした。これらの物質を添加24時間後にmRNAを回収した。
【0042】
定量PCR法による遺伝子発現解析
薬剤添加24時間後の細胞からRNAの回収は、Quiagen Rneasy mini Kit(Quiagen社)を用い、cDNAの合成はSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて行った。MCSPおよびB2Mの遺伝子発現量は、Platinum SYBR Green qPCR superMix-UDG (Invitrogen Japan, Tokyo, Japan)を用いてSyber Green法にて行った。使用したプライマーは以下の通りである。
B2M forward: 5’-GTGGGATCGAGACATGTAAGCA-3’ (配列番号1)
B2M reverse: 5’-CAATCCAAATGCGGCATCT-3’ (配列番号2)
MCSP forward: 5’-CACGGCTCTGACCGACATAG-3’ (配列番号3)
MCSP reverse: 5’-CCCAGCCCTCTACGACAGT-3’ (配列番号4)
【0043】
結果を図1に示す。UK5099を添加すると濃度依存的にMCSPの発現が増加していた。一方、エキノマイシを添加するとMCSPの発現は減少していた。これらの結果より、MCP1抑制により幹細胞が活性化することが示唆される。
【0044】
実験1-2:細胞染色によるMCSPおよびIntegrin β1のタンパク質発現解析
更に、MCSPのみならず、別の幹細胞マーカーであるIntegrin β1について細胞染色し解析を行った。
実験1-1と同様に継代した表皮角化細胞をUK5099を20μMとなるように添加し、対照にはUK5099で処理せず同量のDMSOを添加して1.0×104 cells/well/0.5mLで4well chamber slide(Falcon社、354114)に播種し48時間培養した。添加48時間後に細胞を4%PFAにて10分反応させ、固定した。その後0.01% Triton-X100/PBSにて15分反応させ、細胞膜を部分的に溶解させた。12% BSA/PBSでブロッキング後、1次抗体として抗MCSP抗体(Millipore, MAB2029, mouse mAb)、抗β1 integrin抗体(Santa Cruz, sc-13590, mouse mAb)にて4℃で一晩反応させた。翌日、PBSで5分で3回洗浄後、二次抗体としてAlexa488-anti-mouse IgG抗体にて室温、1時間反応させた。PBSで5分、3回洗浄後、DAPIを含む封入剤(Vectashield, H-1200)にて封入し、顕微鏡観察を行った。
20μMのUK5099、コントロールをそれぞれ添加した結果を図2、3に示す。UK5099を添加するとMCSPおよびIntegrin β1のいずれも発現量が増加しており、実験1-1の結果と一致する結果となった。
【0045】
実験1-3: Integrinβ1陽性細胞のFACS解析
次に、Integrinβ1陽性細胞数のFACS解析を行った。実験1-1と同様に継代した表皮角化細胞をUK5099を20μMとなるように添加し、対照にはUK5099で処理せず同量のDMSOを添加して48時間培養した。これらの細胞を、Trypsinで剥がし、1.0×106 cells/500uLの濃度で細胞懸濁液を調整した。遠心で上清を除去後に、0.5% BSA/PBS on iceで10分ブロッキングした。遠心で上清除去後、IgG抗体、Pacific blue-標識抗β1 integrin抗体(BioLegend, 313620)を細胞懸濁液に加え氷上で1時間反応させ、0.1% BSA/PBSで3回遠心洗浄し、セルソーターSH800でFACS解析を行った。また、陰性対照(Negative cont)には抗体を添加せず、同様の処理を行った。
【0046】
結果を図4に示す。UK5099を添加するとIntegrin β1陽性細胞数が増加しており、実験1-1および実験1-2の結果と一致する結果となった。
【0047】
実験1-4;組織染色によるMCSPおよびIntegrin β1のタンパク質発現解析
次に、MatTeK社製皮膚モデルEFT-400を用いて、培地にUK5099を1μMおよび5μMとなるように添加し、対照にはUK5099で処理せず同量のDMSOを添加して2.5mL/wellで皮膚モデルを培養した。2日後に培地を交換し、培養開始から4日後に冷蔵アセトンに浸漬させ脱水固定した。その後、室温アセトン、室温の安息香酸メチルで2回、室温のキシレンで2回溶媒置換を行い、パラフィン包埋することでパラフィンブロックを作成した。ミクロトームを使い3μmの厚さで切片を作成した。キシレンを用いて脱パラフィンを行い、12% BSA/PBSでブロッキング後、1次抗体として抗MCSP抗体(Millipore, MAB2029, mouse mAb)、抗α6 integrin抗体(Santa Cruz, sc-19622, rat mAb)にて4℃で一晩反応させた。翌日、PBSで5分で3回洗浄後、二次抗体としてAlexa488-anti-mouse IgG抗体およびAlexa594-anti-rat IgG抗体にて室温、1時間反応させた。PBSで5分、3回洗浄後、DAPIを含む封入剤(Vectashield, H-1200)にて封入し、顕微鏡観察を行った。
【0048】
1μMおよび5μMのUK5099、コントロールをそれぞれ添加した結果を図5に示す。UK5099を添加するとMCSPおよびIntegrin β1発現細胞が増加しており、三次元皮膚モデルを使用しても実験1-1、1-2、1-3の結果と一致する結果となった。
【0049】
実験1-5;組織染色によるMCSPおよびIntegrin β1のタンパク質発現解析
次に、BioPredic社から購入した新鮮ヒト腹部皮膚を用いて、培地にUK5099を10μMとなるように添加し、対照にはUK5099で処理せず同量のDMSOを添加して3mL/wellで培養した。2日後、4日後に培地を交換し、培養開始から5日後に冷蔵アセトンに浸漬させ脱水固定した。その後、室温アセトン、室温の安息香酸メチルで2回、室温のキシレンで2回溶媒置換を行い、パラフィン包埋することでパラフィンブロックを作成した。ミクロトームを使い3μmの厚さで切片を作成した。キシレンを用いて脱パラフィンを行い、12% BSA/PBSでブロッキング後、1次抗体として抗MCSP抗体(Millipore, MAB2029, mouse mAb)、抗α6 integrin抗体(Santa Cruz, sc-19622, rat mAb)にて4℃で一晩反応させた。翌日、PBSで5分で3回洗浄後、二次抗体としてAlexa488-anti-mouse IgG抗体およびAlexa594-anti-rat IgG抗体にて室温、1時間反応させた。PBSで5分、3回洗浄後、DAPIを含む封入剤(Vectashield, H-1200)にて封入し、顕微鏡観察を行った。
【0050】
10μMのUK5099、コントロールをそれぞれ添加した結果を図6に示す。UK5099を添加するとMCSPおよびIntegrin β1発現細胞が増加しており、ex vivoのヒト皮膚試料を用いても実験1-1、1-2、1-3、1-4の結果と一致する結果となった。
【0051】
実験2: MCP1抑制作用を有する物質のスクリーニング
実験1より、MCP1を抑制すると幹細胞が活性化することが示唆された。そこで、MCP1抑制作用を有する物質のスクリーニングを行った。
実験2-1:試料の調製
MPC1抑制作用の評価対象試料として以下を用いた。
【表1】
【0052】
その他動植物の抽出物といった天然由来成分や合成成分を含め、合計124種類の候補試料を調製した。
【0053】
実験2-2: MCP1抑制作用の評価
実験1-1と同様に正常ヒト胎児由来表皮角化細胞を培養し、播種24時間後に各薬剤を添加した。候補試料は、あらかじめDMSOにて10%にしたものを一次、二次スクリーニングでは1000倍希釈で培地に加え最終濃度0.01%とし、三次スクリーニングでは10000倍、1000倍、100倍希釈で培地に加え最終濃度が0.001%、0.01%、0.1%となるようにした。陽性対照として実験1と同様の方法でUK5099を20μMとなるように添加した。陰性対照としてDMSOを1000倍希釈で添加した。各薬剤を添加24時間後にmRNAを回収した。
【0054】
定量PCR法による遺伝子発現解析
薬剤添加24時間後の細胞からRNAの回収は、Quiagen Rneasy mini Kit(Quiagen社)を用い、cDNAの合成はSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて行った。MPC1およびB2Mの遺伝子発現量は、Platinum SYBR Green qPCR superMix-UDG (Invitrogen Japan, Tokyo, Japan)を用いてSyber Green法にて行った。使用したプライマーは以下の通りである。
B2M forward: 5’-GTGGGATCGAGACATGTAAGCA-3’ (配列番号1)
B2M reverse: 5’-CAATCCAAATGCGGCATCT-3’ (配列番号2)
MPC1 forward: 5’-GTGCGGAAAGCGGCGGACTA-3’ (配列番号5)
MPC1 reverse: 5’-GGCAGCAATGGGAAGACCCCA-3’ (配列番号6)
【0055】
一次スクリーニングはN=1、薬剤濃度0.01%で行った。一次スクリーニングの結果を図7に示す。MPC1抑制作用を有する物質の候補として124品から37品(図7に示すライン以下の物質)を選定した。
一次スクリーニングで選定された37品につき、薬剤濃度0.01%でN=3で二次スクリーニングを行った。二次スクリーニングの結果を図8に示す。濃度依存的にMPC1抑制作用を有する物質の候補として37品から15品(図8に示す濃いグレーの物質)を選定した。
二次スクリーニングで選定された15品につき、薬剤濃度0.001%、0.01%、0.1%、各N=3で三次スクリーニングを行った。三次スクリーニングの結果を図9に示す。再現性を持って濃度依存的にMPC1抑制作用を有する物質の候補として15品からアケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインの6品(図9に示す濃いグレーの物質)を選定した。
【0056】
選定した6品それぞれについて、図9の結果にDunnett's testにより統計処理を施したグラフを図10に示す。図10に示すように、全ての物質が濃度依存的に統計的有意差をもってMPC1抑制作用を奏していた。
【0057】
以上の結果により、MCP1抑制により皮膚幹細胞が活性化されること、及び、アケビ抽出物、黒豆抽出物、シャクヤク抽出物、茶抽出物、ホホバ葉抽出物、及びエルゴチオネインには、MCP1抑制作用があることがわかった。本発明のMCP1抑制剤により皮膚幹細胞が活性化されれば、皮膚の老化抑制に有効である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024038504000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネイン、茶抽出物、黒豆抽出物、及びホホバ葉抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含むMPC1抑制剤。
【請求項2】
MPC1抑制剤を含む、皮膚幹細胞活性化剤であって、
前記MPC1抑制剤が、エルゴチオネイン、茶抽出物、黒豆抽出物、及びホホバ葉抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含む、皮膚幹細胞活性化剤。
【請求項3】
MPC1抑制剤の適用により皮膚幹細胞を活性化する美容方法であって、
前記MPC1抑制剤が、エルゴチオネイン、茶抽出物、黒豆抽出物、及びホホバ葉抽出物の少なくともいずれかを有効成分として含む、美容方法。