(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038511
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20240312BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01L19/00 Z
G01L19/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014002
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2020070916の分割
【原出願日】2020-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(57)【要約】
【課題】圧力センサにおいて、センサチップの内部回路に悪影響を及ぼさないように、静電気放電に起因した放電電流を大幅に除去できること。
【解決手段】電位調整部材17のシールド板とダイヤフラム32との間の間隔(絶縁距離)Daは、所定の絶縁距離だけ離隔するように設定されており、最小の絶縁距離Daは、例えば、所定の耐電圧のもとで、静電気がシールド板からダイヤフラム32に対し放電するように設定されているもの。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力伝達媒体が満たされ圧力を検出するセンサチップが配される液封室を形成する金属製のダイヤフラムを支持するとともに、前記センサチップに電気的に接続される入出力端子群を、絶縁部材を介して内側に支持する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、
前記入出力端子群は放電用端子を含み、
前記センサチップを迂回するように、前記入出力端子群と前記導電性ハウジングとの間に印加された静電気を前記導電性ハウジングに対し放電する放電部を介してアースに逃がす放電経路と、
を具備し、
前記液封室内における前記センサチップの一方の端面と前記ダイヤフラムとの間に配され、該センサチップに作用する電界を遮断し、前記センサチップのグランド部と同一の電位とされる電位調整部材を、さらに備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記放電用端子は前記電位調整部材に電気的に接続され、前記放電部が、前記電位調整部材と前記ダイヤフラムとの間に前記圧力伝達媒体を介して形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記放電用端子が、前記入出力端子群のうちの接地用端子であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記放電用端子が、前記入出力端子群のうちの駆動電圧用端子であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップを有する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
液封型の半導体圧力センサに内蔵されるセンサユニットは、例えば、特許文献1に示されるように、継手部内に支持され圧力検出室と後述する液封室とを隔絶する金属製ダイヤフラムと、金属製ダイヤフラムの上方に形成され圧力伝達媒体としてのシリコーンオイルを貯留する液封室と、液封室内に配され金属製ダイヤフラムを介しシリコーンオイルの圧力変動を検出するセンサチップと、センサチップを支持するセンサチップマウント部材と、ハウジングの貫通孔におけるセンサチップマウント部材の周囲を密封するハーメチックガラスと、センサチップと金属製ダイヤフラムとの間に配される金属製の電位調整部材と、センサチップからの出力信号の送出およびセンサチップへの電力供給を行う端子群(リードピン)とを主な要素として含んで構成されている。上述のセンサユニットのセンサチップの内部回路の耐電圧は、比較的小さいのでセンサチップの内部回路が、例えば、帯電した作業者の人体を介して数(kv)以上の静電気放電に起因して破損する虞がある。このような場合、センサユニットを構成する絶縁物の材質の変更による絶縁耐力の改善、または、放電を発生させないように絶縁距離を十分にとることが有効とされる。絶縁距離についての放電防止対策としては、例えば、特許文献1に記載されるように、電位調整部材の溶接部とハウジングの内周部との間の距離を所定の距離以上に設定すること、または、電位調整部材の溶接部を圧力検出室に対しさらに遠ざかるように形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような絶縁距離についての放電防止対策は、電位調整部材の溶接部と他の部品との相互間距離を十分に確保するために液封室の内容積をより大きくすることが必要とされる。
【0005】
しかしながら、液封室の内容積をより大きくし、シリコーンオイルの充填量を増大させることは、圧力センサの応答精度(感度)が落ちるので液封室の内容積をより大きくし、電位調整部材の溶接部と他の部品との相互間距離を十分に確保することにも一定の限界がある。また、絶縁物の材質の変更による絶縁耐力の改善に関しても、静電気の電圧がより高くなればいずれ放電するので材質の変更にも一定の限界がある。さらに、上述の端子群のうちいずれの端子でアークが発生し、ダメージを受けるかがわからず、センサチップ側での対策が広範囲に必要となってしまうという問題点もある。
【0006】
以上の問題点を考慮し、本発明は、センサチップを有する圧力センサであって、センサチップの内部回路に悪影響を及ぼさないように、静電気放電に起因した放電電流を大幅に除去できる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力センサは、圧力伝達媒体が満たされ圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサチップが配される液封室を形成する金属製のダイヤフラムを支持するとともに、センサチップに電気的に接続される入出力端子群を、絶縁部材を介して内側に支持する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、センサチップの信号処理電子回路を迂回して形成され、入出力端子群のうち、他の端子よりも導電性ハウジングとの絶縁破壊電圧が低い放電用端子と、入出力端子群と導電性ハウジングとの間に印加された静電気を前記導電性ハウジングに対し放電する放電部を介してアースに逃がす放電経路と、を備えて構成される。
【0008】
また、放電用端子が、入出力端子群のうちの接地用端子であってもよく、あるいは、入出力端子群のうちの駆動電圧用端子であってもよい。放電経路が、絶縁距離によって絶縁破壊電圧を低くしたことにより形成されてもよい。加えて、液封室内におけるセンサチップの一方の端面とダイヤフラムとの間に配され、センサチップの信号処理電子回路部に作用する電界を遮断し、センサチップの信号処理電子回路のグランド部と同一の電位とされる電位調整部材を、さらに備えてもよい。
【0009】
放電部が、電位調整部材とダイヤフラムとの間に圧力伝達媒体を介して形成されてもよく、また、放電部が、導電性ハウジングの内側に配される接地用端子と導電性ハウジングとの間に形成されてもよい。さらに、放電部が、導電性ハウジングの上端部の一部に形成される張出部と接地用端子との間に形成されてもよく、あるいは、放電部が、導電性ハウジングの上端面と接地用接続端子の延在部との間に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る圧力センサによれば、放電経路が、センサチップの信号処理電子回路を迂回して形成され、電位調整部材に接続される入出力端子群の一部を構成する接地用端子または電位調整部材からの静電気を導電性ハウジングに対し放電する放電部を介してアースに逃がすことにより、センサチップの内部回路に悪影響を及ぼさないように、静電気放電に起因した放電電流を大幅に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、本発明に係る圧力センサの第1実施例におけるハウジング内の液封室を部分的に拡大して示す部分断面図であり、(B)は、(A)に示される要部を部分的に拡大して示す図である。
【
図2】本発明に係る圧力センサの第1実施例における構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明に係る圧力センサの第2実施例におけるハウジングおよび入出力端子群を示す断面図である。
【
図4】(A)は、本発明に係る圧力センサの第3実施例におけるハウジングおよび入出力端子群を示す断面図であり、(B)は、(A)におけるIVB-IVB線に沿って示される部分断面図である。
【
図5】
図3に示される例における電線、接続端子、各端子、センサチップ、電位調整部材等における電位差を模式的に示す図である。
【
図6】(A)は、本発明に係る圧力センサの第4実施例におけるハウジングおよび接続端子の部分断面図であり、(B)は、矢印VIBの示す方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は、本発明に係る圧力センサの第1実施例の構成を概略的に示す。
図2において、圧力センサは、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0013】
金属製の継手部材30は、上述の配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部30fsを内側に有している。雌ねじ部30fsは、矢印Pの示す方向から供給される流体を後述する圧力室28Aに導く継手部材30のポート30aに連通している。ポート30aの一方の開口端は、継手部材30のベースプレート28とセンサユニットのダイヤフラム32との間に形成される圧力室28Aに向けて開口している。
【0014】
センサユニット収容部の外郭部は、カバー部材としての円筒状の防水ケース20により形成されている。防水ケース20は、センサユニット、および、センサユニットの周囲に充填される封止材26が配される収容空間20Aを内側に有している。
【0015】
樹脂製の防水ケース20の下端部には、開口部20bが形成されている。内側となる開口部20bの周縁の段差部には、継手部材30のベースプレート28の周縁部が接着されている。
【0016】
圧力室28A内には、継手部材30のポート30aを通じて流体としての気体または液体、あるいは、冷媒が供給される。センサユニットのハウジング12の下端面は、ベースプレート28の周縁部に溶接されている。
【0017】
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、円筒状のハウジング12と、圧力室28Aとハウジング12の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、圧力検出素子を有するセンサチップ16と、接着剤層50を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材18と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群40ai(i=1~8)と、入出力端子群40aiおよびオイル充填用パイプ45をチップマウント部材18の外周面とハウジング12の内周面との間に固定するハーメチックガラス14と、を主な要素として含んで構成されている。
【0018】
ダイヤフラム32は、上述の圧力室28Aに向き合うハウジング12の一方の下端面に支持されている。圧力室28Aに配されるダイヤフラム32を保護するダイヤフラム保護カバー34は、複数の連通孔を有している。ダイヤフラム保護カバー34の周縁は、ダイヤフラム32の周縁とともに溶接によりステンレス鋼製のハウジング12の下端面に接合されている。
【0019】
金属製のダイヤフラム32と向かい合うセンサチップ16およびハーメチックガラス14の端面との間に形成される液封室13には、例えば、圧力伝達媒体として所定量のシリコーンオイルPMがオイル充填用パイプ45を介して充填されている。なお、オイル充填用パイプ45の一方の端部は、オイル充填後、押し潰され閉塞される。シリコーンオイルは、例えば、シロキサン結合と有機質のメチル基とからなるジメチルポリシロキサン構造を持つシリコーンオイルとされる。
【0020】
ハーメチックガラス14の端部に形成される凹部に配されるセンサチップ16とダイヤフラム32との間には、さらに、金属製の電位調整部材17がハーメチックガラス14の下端面に支持されている。電位調整部材17は、例えば、特許第3987386号公報にも示されるような、フレームと、シールド板とを含んでなり、センサチップ16の内部回路のゼロ電位に接続される端子に接続されている。これにより、センサチップ16に対するEMC(Electromagnetic Compatibility)(電磁両立性)対策回路が設けられることとなる。
【0021】
電位調整部材17におけるグランド電位と上述の金属製のダイヤフラム32および継手部材30の電位とは、後述するような万一、放電現象により絶縁破壊する場合を除き、通常、シリコーンオイルPMにより絶縁されている。また、金属製のダイヤフラム32、ハウジング12、および、継手部材30は、所定のアースGND1に電気的に接続されている。
【0022】
入出力端子群40ai(i=1~8)は、共通の円周上に所定の間隔で配され、1本の駆動電圧用端子(Vcc)、1本の接地用端子(GND)と、1本の出力用端子(Vout)と、5本の調整用端子とから構成されている。各端子の両端部は、それぞれ、上述のハーメチックガラス14の端部に形成される凹部と後述する端子台24の孔24bとに向けて突出している。駆動電圧用端子(Vcc)、接地用端子(GND)、および、出力用端子(Vout)は、それぞれ、金属製の3本の接続端子36を介して各リード線38の芯線38aに接続されている。3本の接続端子36は、駆動電圧用端子(Vcc)、接地用端子(GND)、および、出力用端子(Vout)に対応して設けられている。各接続端子36には、それぞれ、リード線38の芯線38aが接続されている。3本のリード線38は、例えば、所定の圧力測定装置に接続される。接地用端子(GND)およびGND用リード線38は、所定の内部回路のグランド電位GND2に接続されている。
【0023】
上述の電位調整部材17のシールド板とダイヤフラム32との間の間隔(絶縁距離)Daは、
図1(B)に部分的に拡大されて示されるように、所定の絶縁距離だけ離隔するように設定されている。最小の絶縁距離Daは、例えば、所定の耐電圧のもとで、シリコーンオイルPMを介して静電気が放電経路の放電部としてのシールド板からダイヤフラム32に対し放電するように設定されている。このような場合、仮に静電気がシールド板からダイヤフラム32に対し放電されたとき、放電電流の大部分は、局所的にインピーダンスの低いところを選択して流れていくと考えられる。従って、上述のハーメチックガラス14および後述する被覆層10bの絶縁強さが電位調整部材17、ダイヤフラム32、および、ハウジング12の絶縁強さに比して強く、しかも、放電部としてのダイヤフラム32のインピーダンスが低いので静電気放電に起因した放電電流の大部分が、センサチップ16内の内部回路に流れ込むことなく、ダイヤフラム32、ハウジング12、ベースプレート28、および、継手部材30を経由し確実にアースGND1に逃がされる。
【0024】
なお、
図1および
図2においては、8本の端子のうちの4本の端子だけが示されている。入出力端子群40aiと後述するセンサチップ16との間は、ボンディングワイヤWiで接続されている。
【0025】
センサチップ16は、圧力検出素子を有し、例えば、チップマウント部材18の一端部に接着剤層50を介して接着されている。
【0026】
入出力端子群40aiを整列又は囲繞する端子台24は、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を主な成分として成形されている。端子台24は、入出力端子群40aiが挿入される複数個の孔24bとともに、内側に所定の容積の空洞部24Aを有している。所定の容積を有する空洞部24Aは、端子台24における円筒状の基端部の内周面と、その基端部を連結する連結部24Tにおけるハーメチックガラス14の上端面14UEに向き合う面と、ハーメチックガラス14の上端面14UEとにより囲まれて形成されている。
【0027】
連結部24Tにおけるハーメチックガラス14の上端面に向き合う内周面には、ハーメチックガラス14に向けて突出する環状の突起部が形成されている。突起部の突出長さは、後述する被覆層10bの粘性等に応じて設定されている。このように環状の突起部が形成されることにより、被覆層10bが形成されるとき、塗布された被覆層10bの一部が、表面張力により突起部と端子台24の空洞部24Aを形成する内周面であってハーメチックガラス14の上端面に略直交する内周面との間の狭い空間内に引っ張られ保持されるので被覆層10bが端子台24の空洞部24A内における一方側に偏ることなく均一に塗布されることとなる。
【0028】
端子台24の基端部の下端面と基端部の内周面とが交わる環状の交線の位置は、ハウジング12の内周面よりも入出力端子群40aiに対しより近い内方に位置している。
【0029】
接着面としての端子台24の基端部の下端面24TSは、被接着面としてのハウジング12の上端面12TSに、シリコーン系接着剤により接着されている。これにより、所定の厚さを有する環状の接着層10aが、ハウジング12の上端面12TSに形成されることとなる。
【0030】
また、入出力端子群40aiが突出するハーメチックガラス14の上端面全体には、シリコーン系接着剤からなる被覆層10bが所定の厚さで形成されている。そのシリコーン系接着剤は、上述の接着層10aを形成するシリコーン系接着剤と同様な接着剤とされる。被覆層10bの厚さは、入出力端子群40aiの周囲から離隔し基端部の内周面に近づくにつれて入出力端子群40aiの周囲の厚さに比して徐々に大となっている。被覆層10bの上方には、空洞24A内の空気層が形成されている。
【0031】
端子台24の外周面、および、端子台24に連結され上述の連結部24Tの孔24bおよび端子台24の上部の開口端を覆うエンドキャップ22の外周面と防水ケース20の内周面との間、また、防水ケース20の内周面とハウジング12の外周面との間には、封止材26が、所定量、充填されている。端子台24およびエンドキャップ22は、上述のセンサユニットを挟んで継手部材30のベースプレート28と向き合って防水ケース20内に配置されている。
【0032】
エンドキャップ22の上端面は、防水ケース20の開口端から上方に向けて突出している。即ち、エンドキャップ22の上端面の位置は、防水ケース20の開口端面の位置よりも高い位置となる。
【0033】
図3は、本発明に係る圧力センサの第2実施例の要部を示す。
【0034】
図1および
図2に示される例においては、入出力端子群40aiの一部を構成する接地用端子(GND)の直径は、他の端子の直径と同一の直径に設定されているが、
図3に示される例においては、接地用端子40´ai(GND)の直径R1は、他の端子の直径R2に比して大に設定されている。なお、
図3に示される例においても、図示が省略されるが、
図2に示される圧力センサの他の構成要素と同一の構成要素を備えるものとされる。
【0035】
図3において、入出力端子群は、共通の円周上に所定の間隔で配され、1本の駆動電圧用端子40ai(Vcc)、1本の接地用端子40´ai(GND)と、1本の出力用端子40ai(Vout)と、5本の調整用端子40aiとから構成されている。
これにより、ハウジング12の内周面と放電用端子としての接地用端子40´ai(GND)との間の相互間距離L1が、ハウジング12の内周面と他の複数の端子40aiとの間の相互間距離L2よりも小となる。
【0036】
従って、仮に接地用端子40´ai(GND)を通じて静電気放電の放電電流が流れ込んだ場合、以下に述べる理由により、静電気放電に起因した放電電流は、センサチップ16の内部回路を通過することなく、放電用端子としての接地用端子40´ai(GND)の放電部、および、ハーメチックガラス14を介してハウジング12、継手部材30、および、アースGND1を通じて逃がされる。なお、
図5は、電線38、接続端子36、各端子40ai、40´ai、センサチップ16、電位調整部材17等における電位差を模式的に示す。
【0037】
図5から明らかなように、各電線38およびセンサチップ16の内部回路の電位差(Va1)が最大値をとり、接続端子36の電位差(Va2)が各電線38およびセンサチップ16の内部回路の電位差(Va1)よりも若干小さく、電位調整部材17のシールド板の電位差Va4は、接続端子36の電位差(Va2)よりもさらに小さい。接地用端子40´ai(GND)の電位差(Va3)、他の駆動電圧用端子40ai(Vcc)、出力用端子40ai(Vout)、および、5本の調整用端子40aiの電位差(Va3)は、互いに同一である。しかし、ハウジング12の内周面に相互間距離L1で向き合う接地用端子40´ai(GND)とハウジング12の内周面との間に形成される放電部の電位差Va3´は、最小値をとる。従って、静電気放電による放電電流は、センサチップ16の内部回路を通過することなく、インピーダンスが低いところである放電経路の放電部を経由して逃がされるのである。
【0038】
なお、斯かる例に限られることなく、例えば、駆動電圧用端子(Vcc)が、放電用端子として構成されてもよい。
【0039】
図4(A)および(B)は、本発明に係る圧力センサの第3実施例の要部を示す。
【0040】
図3に示される例においては、ハウジング12の内周面と接地用端子40´ai(GND)との間の相互間距離L1が、ハウジング12の内周面と他の複数の端子40aiとの間の相互間距離L2よりも小となるように、接地用端子40´ai(GND)の直径が他の端子の直径に比して大に設定されているのに対し、一方、
図4(A)に示される例においては、放電部としての張出部12´Pが、接地用端子40ai(GND)に向き合うハウジング12´の内周部の上端部の一部に形成されるものとされる。円弧状の張出部12´Pは、ハウジング12´の中心軸線Cから所定距離、半径方向に離隔しており、ハウジング12´の内周面から放電用端子としての接地用端子40ai(GND)に向けて所定量、突出している。これにより、ハウジング12の張出部12´Pと接地用端子40ai(GND)との間の相互間距離L1が、ハウジング12の内周面と他の複数の端子40aiとの間の相互間距離L2よりも小となる。従って、仮に接地用端子40ai(GND)を通じて静電気放電による放電電流が流れ込んだ場合、静電気に起因した放電電流は、センサチップ16の内部回路を通過することなく、接地用端子40ai(GND)、張出部12´P、および、ハーメチックガラス14を介してハウジング12´、継手部材30、および、アースGND1を通じて逃がされる。
【0041】
なお、
図4(A)に示される例においても、図示が省略されるが、
図2に示される圧力センサの他の構成要素と同一の構成要素を備えるものとされる。
【0042】
図6(A)および(B)は、本発明に係る圧力センサの第4実施例の要部を示す。
【0043】
図4(A)および(B)に示される例においては、放電経路の放電部としての張出部12´Pが、接地用端子40ai(GND)に向き合うハウジング12´の内周部の上端部の一部に形成されるが、一方、
図6(A)および(B)に示される例においては、接地用接続端子46が、接地用端子40ai(GND)に接続される端子部46Gbと、ハウジング12の上端面に向かって突出する延在部46Gaとを有するものとされる。なお、
図6に示される例においても、図示が省略されるが、
図2に示される圧力センサの他の構成要素と同一の構成要素を備えるものとされる。
図6(A)においては、
図2に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付しており、その重複説明を省略する。
【0044】
入出力端子群の一部を構成する駆動電圧用端子(Vcc)、接地用端子(GND)、および、出力用端子(Vout)は、それぞれ、金属製の2本の接続端子36(不図示)、1本の接地用接続端子46を介して各リード線38の芯線38aに接続されている。3本のリード線38は、例えば、所定の圧力測定装置に接続される。接地用接続端子46およびGND用リード線38は、所定の内部回路のグランド電位GND2に接続されている。
【0045】
放電部として接地用接続端子46とハウジング12との間に形成される接地用接続端子46の延在部46Gaの下端は、ハウジング12の上端面に対し所定距離Lだけ離隔している。その所定距離Lは、絶縁耐力、絶縁抵抗が確保できる程度に設定されている。
【0046】
斯かる構成においても、仮に接地用端子40ai(GND)を通じて静電気放電による放電電流が流れ込んだ場合、静電気放電による放電電流の大部分は、センサチップ16の内部回路を通過することなく、接地用端子40ai(GND)、および、放電経路の放電部としての接地用接続端子46の延在部46Gaを介してハウジング12、継手部材30、および、アースGND1を通じて逃がされる。
【0047】
従って、上述の各実施例においては、
図5に示されるように、絶縁耐力を1端子(接地用端子)だけ下げることで、静電気対策が必要な回路を限定でき、センサチップ16側での対策を局所化でき、耐力向上、サイズ縮小が可能となる。また、その1端子をGND端子とすることで、GND端子とその他の端子間の静電気対策回路とすることができ、他のEMC対策回路と共通化ができ、耐力が上がり、サイズとコストとが抑えられる。
【0048】
なお、上述の圧力センサの一例においては、センサユニットが、各リード線38および接続端子により所定の圧力測定装置に接続されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、センサユニットが、着脱可能な雄型コネクタ、雌型コネクタ、および、コンタクト端子により、所定の圧力測定装置に接続されるように構成されても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
12 ハウジング
12´P 張出部
13 液封室
14 ハーメチックガラス
16 センサチップ
17 電位調整部材
30 継手部材
32 ダイヤフラム
36、46 接続端子
40ai 入出力端子群
40ai(GND) 接地用端子
40´ai(GND) 接地用端子
46Ga 延在部
GND1 アース