(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038515
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】微生物検出タンパク質を使用して微生物を検出するための方法および細胞結合構成要素の他の用途
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240312BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20240312BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240312BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240312BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240312BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240312BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/33 20060101ALN20240312BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240312BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/66
C12P21/02 C
C12M1/34 B
G01N33/53 Y
G01N33/543 575
C07K14/005 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/53
C12N15/33
C07K19/00
C12N9/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014695
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2020546860の分割
【原出願日】2019-03-11
(31)【優先権主張番号】62/640,793
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/798,980
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
2.FIREWIRE
3.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エリクソン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ エス. ギル
(72)【発明者】
【氏名】ミン ミンディ バオ グエン
(72)【発明者】
【氏名】ドワイト エル. アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディ ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ポールソン
(57)【要約】
【課題】細胞結合構成要素(CBC)を使用する、微生物の迅速検出のための方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】微生物を結合するためのCBSの特異性は、目的の微生物の標的化されかつ高度に特異的な検出を可能にする。一局面において、本発明は、微生物検出プローブ(MDP)を使用して、目的の微生物の存在に関してサンプルを試験するための方法を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中のわずか1個の目的の微生物を捕捉および検出する方法を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年3月9日出願の米国仮特許出願第62/640,793号および2019年1月30日出願の同第62/798,980号に基づく優先権を主張する。米国特許出願第13/773,339号、同第14/625,481号、同第15/263,619号、同第15/409,258号および米国仮特許出願第62/616,956号、同第62/628,616号、同第62/661,739号、同第62/640,793号および同第62/798,980号の開示は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、組換えタンパク質および/または結合体化タンパク質を使用して目的の微生物を検出するための方法、装置、システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および臨床サンプル中の細菌、ウイルス、および他の微生物の検出のための速度および感度を改善することには、強い重要性がある。微生物病原体は、ヒトおよび家畜動物において実質的な病的状態、ならびに莫大な経済的損失を引き起こし得る。微生物の検出は、ある種の微生物(例えば、Staphylococcus spp.、Escherichia coliまたはSalmonella spp)で汚染された食品の摂取によって引き起こされる生命を脅かすもしくは致命的な病気の大流行を考慮すると、米国食品医薬品局(FDA)および疾病対策センター(CDC)にとっての優先順位は高い。
【0004】
細菌を検出するための旧来からの微生物学的試験は、非選択的および選択的な富化培養、続いて、選択培地にプレーティングし、さらに試験して、疑わしいコロニーを確認することに依拠する。このような手順には、数日を要し得る。種々の迅速な方法が研究されてきており、時間要件を低減するために、実務に導入されてきた。しかし、現在まで、時間要件を低減する方法には欠点がある。例えば、直接的イムノアッセイもしくは遺伝子プローブを伴う技法は、一般に、適切な感度を得るために、一晩の富化工程を要するので、同日に結果を出す能力に欠けている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験はまた、増幅工程を包含し、従って、非常に高い感度および選択性の両方の能力がある;しかし、経済的に、PCR試験に供され得るサンプルサイズは、制限される。PCRに供され得る薄い細菌懸濁物には、細胞がなく、従って、精製および/もしくは長々とした富化工程がなお必要とされる。
【0005】
旧来の生物学的富化のために必要とされる時間は、上記サンプルの標的細菌集団の増殖速度によって、上記サンプルマトリクスの効果によって、および必要とされる感度によって、規定される。実際には、大部分の高感度法は、一晩のインキュベーションを使用し、全体的には約24時間かかる。培養のために必要とされる時間に起因して、これらの方法は、同定される予定の生物および上記サンプルの供給源に依存して、最大で3日間かかり得る。この遅延時間(lag time)は、一般に、このような遅延により、汚染された食品
もしくは水または他の生成物が家畜もしくはヒトの中へと入り込んでしまうのを許容するので、不適切である。さらに、抗生物質耐性細菌および生体防御の懸念事項の増加により、水サンプル、食品サンプルおよび臨床サンプル中の細菌病原体の迅速同定が、世界的に欠くことのできない優先事項になっている。
【0006】
従って、微生物(例えば、細菌および他の潜在的に病原性の微生物)のより迅速で簡単かつ感度の高い検出および同定が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明の実施形態は、微生物の検出のための組成物、方法、装置、システムおよびキットを含む。ある種の実施形態において、細胞結合構成要素(CBC)は、目的の微生物を検出するために使用される。本発明は、種々の方法で具現化され得る。
【0008】
一局面において、本発明は、微生物検出プローブ(MDP)を使用して、目的の微生物の存在に関してサンプルを試験するための方法を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中のわずか1個の目的の微生物を捕捉および検出する方法を含む。例えば、ある種の実施形態において、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の微生物に結合する複数のMDPとともにインキュベートする工程であって、ここで上記MDPは、上記微生物が上記複数のMDPに結合するような条件の下で、インジケーター部分および細胞結合構成要素(CBC)を含む工程;結合していないMDPを、細胞に結合したMDPから分離する工程;ならびに上記細胞に結合したMDP上で上記インジケーター部分を検出する工程を包含し得る。さらなる実施形態において、上記インジケーター部分の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプル中に存在することを示す。いくつかの実施形態において、上記1個の微生物に結合した上記複数のMDPは、少なくとも1×106である。さらなる実施形態において、上記CBCは、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌に対して特異的である。上記グラム陰性細菌は、Salmonella sppまたはE.coli O157:H7であり得る。上記グラム陽性細菌は、Listeria sppまたはStaphylococcus sppであり得る。
【0009】
他のさらなるおよび/または代替の局面において、本発明は、過剰な結合していないMDPを細胞に結合したMDPから分離するための方法を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記分離する工程は、固体支持体上に上記目的の微生物を捕捉する工程を包含する。例えば、上記固体支持体は、マルチウェルプレート、フィルター、ビーズ、ラテラルフローストリップ、フィルターストリップ、フィルターディスク、およびフィルターペーパーのうちの少なくとも1種を含み得る。上記方法はさらに、上記捕捉された微生物を洗浄して、過剰な結合していないMDPを除去する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記MDPに結合した微生物は、蛍光顕微鏡法による検査のために固体支持体に固定される。
【0010】
他のさらなるおよび/または代替の局面において、本発明は、低レベルの微生物を検出するために、微生物を結合し得るMDPの高い特異性を利用する。いくつかの実施形態において、上記方法は、食品安全産業のための標準サイズのサンプル中のわずか10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の細菌を検出する。他の実施形態において、上記サンプルは、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、上記複数のMDPとのインキュベーション前に富化されない。
【0011】
別の局面において、本発明は、細胞結合構成要素(CBC)およびインジケーター部分を含む組換え微生物検出プローブ(MDP)を含む。いくつかの実施形態において、上記CBCは、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌に対して特異的である。上記CBCは、エンドリシン、またはスパニン、または上記目的の微生物に対して特異的な尾部繊維、もしくは尾部スパイクタンパク質から単離され得る。上記スパニンは、外膜スパニン(RZ1)またはその短縮型改変体であり得る。エンドリシンから単離されたいくつかのCBCは、細胞結合ドメイン(CBD)またはその短縮型改変体をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記MDPは、組換え遺伝子生成物または結合体化タンパク質である。さらなる実施形態において、上記組換えMDPは、以下のバクテリオファージ:SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージepsilon15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、またはEscherichia coli O157:H7ファージCBA120のうちのいずれかのCBCと≧95% 相同性を有する結合ドメインを含む。
【0013】
組換えMDPのある種の実施形態において、上記インジケーター部分は、内因性のシグナルを生成し得る。他の実施形態において、上記インジケーター部分は、基質との反応の際にシグナルを生成する酵素を含む。さらに他の実施形態において、上記インジケーター部分は、1種もしくはこれより多くのさらなるシグナル生成構成要素との反応の際にシグナルを生成する補因子を含む。例えば、上記インジケーター部分は、発蛍光団、蛍光タンパク質、粒子、および酵素のうちの少なくとも1種を含む。上記酵素は、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、およびグリコシダーゼのうちの少なくとも1種を含み得る。上記ルシフェラーゼ遺伝子は、天然に存在する遺伝子(例えば、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、またはRenillaルシフェラーゼ)であり得るか、またはそれは、遺伝子操作された遺伝子であり得る。
【0014】
本明細書においてまた、組換えMDPを調製する方法であって、上記方法は、野生型バクテリオファージまたは標的病原性細菌に特異的に感染するバクテリオファージの群のエンドリシン遺伝子、スパニン遺伝子、または尾部繊維遺伝子のうちの少なくとも1つに実質的に同一なCBCを生成する工程;上記CBCとインジケーター部分との融合遺伝子を調製する工程であって、ここで融合タンパク質生成物は、上記組換えMDPである工程;上記融合遺伝子を有する発現ベクターを形質転換して、上記組換えMDPを合成する工程;および上記組換えMDPを精製する工程、を包含する方法が開示される。
【0015】
さらなる実施形態は、組換えMDPを含む、Listeria、Salmonella、Staphylococcus、またはE.coli O157:H7を検出するためのシステムおよびキットを包含する。いくつかの実施形態は、上記MDPのインジケーター部分と反応するための基質をさらに含む。これらのシステムまたはキットは、本発明のバクテリオファージ、組成物、および方法に関して記載される特徴を含み得る。さらに他の実施形態において、本発明は、本発明による方法またはシステムとともに使用するための非一時的なコンピューター可読媒体を含む。
【0016】
別の局面において、サンプル中の1個またはこれより多くの目的の微生物を検出する上記方法は、上記サンプルと、装置の固体支持体と接触させる工程であって、ここで上記固体支持体は、あるとすれば、上記サンプル中の上記1個またはこれより多くの微生物を捕捉し、ここで上記装置は、バクテリオファージゲノムへと挿入された遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、ここで上記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含む、第1の区画を含む、工程;上記第1の区画からの上記組換えバクテリオファージと、上記サンプルとを接触させ、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプル中の上記1個またはこれより多くの微生物に感染し、それによって、インジケーター遺伝子生成物を生成する工程、ならびに上記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程、を包含する。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記装置は、基質を含む第2の区画をさらに含み、上記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程は、上記インジケーター遺伝子生成物と基質とを接触させることによるものである。いくつかの実施形態において、上記固体支持体はビーズである。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)およびポリビニルクロリド(PVC)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、細胞結合構成要素(CBC)の1またはこれより多くの分子を含み、ここで上記CBCは、上記サンプル中の上記1個またはこれより多くの目的の微生物を認識する。いくつかの実施形態において、上記CBCは、グラム陰性細菌に対して特異的である。いくつかの実施形態において、上記CBCは、グラム陽性細菌に対して特異的である。いくつかの実施形態において、上記グラム陰性細菌は、Salmonella sppまたはE.coli O157:H7である。いくつかの実施形態において、上記グラム陽性細菌は、Listeria sppまたはStaphylococcus sppである。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、エンドリシンまたはスパニンまたは上記目的の微生物に対して特異的なレセプター結合タンパク質(RBP)から単離される。いくつかの実施形態において、上記スパニンは、外膜スパニン(RZ1)またはその短縮型改変体である。いくつかの実施形態において、上記RBPは、尾部繊維タンパク質またはその短縮型改変体である。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、上記エンドリシンから単離される。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記エンドリシンから単離されたCBCは、細胞結合ドメイン(CBD)またはその短縮型改変体である。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記装置は、基質を含む第2の区画をさらに含み、上記方法は、上記第2の区画からの上記基質を、上記組換えバクテリオファージを添加すると同時にまたは添加した後に、上記サンプルに添加する工程、をさらに包含する。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記第1の区画はシールを含み、上記組換えバクテリオファージと上記サンプルとを接触させる工程は、上記シールを破損することによるものであり、ここで上記シールの破損は、上記第1の区画からの上記組換えバクテリオファージを、上記サンプルと接触させ、上記サンプル中の上記1個またはこれより多くの微生物に感染させ、それによって、インジケーター遺伝子生成物を生成する。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記バクテリオファージは凍結乾燥される。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記装置は、増殖培地を含む第3の区画を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記目的の1個またはこれより多くの微生物を捕捉した上記固体支持体を、上記増殖培地中で、上記組換えバクテリオファージを添加する前の一定期間にわたってインキュベートする工程を包含する。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記装置は、上記培地、上記組換えバクテリオファージ、および上記基質と上記サンプルとを段階的に混合するためのストップ-ロックを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを接触させる前に乾燥している。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを接触させる前に培地に浸漬されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記1個またはこれより多くの微生物を捕捉した上記固体支持体は、上記組換えバクテリオファージと接触させる前に、上記第3の区画における上記増殖培地とともにインキュベートされる。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記インキュベーションは、0~2時間である。いくつかの実施形態において、上記バクテリオファージは、上記インジケーター遺伝子生成物を検出する前に、上記サンプルと0.5~3時間にわたって接触する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子生成物は、発蛍光団、蛍光タンパク質、粒子、および酵素のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態において、上記酵素は、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、およびグリコシダーゼのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼは、遺伝子操作されたルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記方法は、食品安全産業のための標準サイズのサンプル中のわずか10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の細菌を検出する。いくつかの実施形態において、上記食品サンプルは、食肉または野菜を含む。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、食品サンプル、水サンプル、酪農食品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる。
【0034】
別の局面において、本開示は、サンプル中の目的の微生物を検出するためのシステムであって、上記システムは、バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、ここで上記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含み、ここで上記固体支持体は、細胞結合構成要素を含む、第1の区画、ならびにシグナル検出構成要素であって、ここで上記シグナル検出構成要素は、上記サンプルを上記組換えバクテリオファージに感染させたことから生じる上記インジケーター遺伝子生成物を検出し得る、シグナル検出要素、を含む装置を含む、システムを提供する。いくつかの実施形態において、上記シグナル検出構成要素は、携帯型ルミノメーターである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
サンプル中のわずか1個の目的の微生物を捕捉および検出する方法であって、前記方法は、
前記サンプルを、前記目的の微生物に結合する複数の微生物検出プローブ(MDP)とともにインキュベートする工程であって、ここで前記MDPは、前記微生物が前記複数のMDPに結合するような条件の下で、インジケーター部分および細胞結合構成要素(CBC)を含む工程;
結合していないMDPを、細胞に結合したMDPから分離する工程;ならびに
前記細胞に結合したMDP上の前記インジケーター部分を検出する工程であって、ここで前記インジケーター部分の陽性検出は、前記目的の微生物が前記サンプル中に存在することを示す工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記1個の微生物に結合した前記複数のMDPは、少なくとも1×106である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記CBCは、グラム陰性細菌に対して特異的である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記CBCは、グラム陽性細菌に対して特異的である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記グラム陰性細菌は、Salmonella sppまたはE. coli O157:H7である、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記グラム陽性細菌は、Listeria sppまたはStaphylococcu
s sppである、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記CBCは、エンドリシンまたはスパニンまたは前記目的の微生物に対して特異的なレセプター結合タンパク質(RBP)から単離される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記スパニンは、外膜スパニン(RZ1)またはその短縮型改変体である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記RBPは、尾部繊維タンパク質またはその短縮型改変体である、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記CBCは、エンドリシンから単離される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記エンドリシンから単離されたCBCは、細胞結合ドメイン(CBD)またはその短縮型改変体である、項目10に記載の方法。
(項目12)
結合ドメインは、以下のバクテリオファージ:SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージepsilon15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、またはEscherichia coli O157:H7ファージCBA120のうちの少なくとも1種のCBCと≧95% 相同性を有する、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記分離する工程は、固体支持体上に前記目的の微生物を捕捉することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記固体支持体は、マルチウェルプレート、フィルター、ビーズ、ラテラルフローストリップ、フィルターストリップ、フィルターディスク、およびフィルターペーパーのうちの少なくとも1種を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記捕捉された微生物を洗浄して、過剰な結合していないMDPを除去する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記MDPに結合した微生物は、蛍光顕微鏡法による検査のために固体支持体に固定される、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記MDPは、組換えタンパク質または結合体化タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記インジケーター部分は、発蛍光団、蛍光タンパク質、粒子、または酵素のうちの少なくとも1種を含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記酵素は、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、およびグリコシダーゼのうちの少なくとも1種を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ルシフェラーゼは、遺伝子操作されたルシフェラーゼである、項目19に記載の方
法。
(項目21)
前記サンプルは、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記方法は、食品安全産業のための標準サイズのサンプル中のわずか10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の細菌を検出する、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記食品サンプルは、食肉または野菜を含む、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記サンプルは、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記サンプルは、前記複数のMDPとのインキュベーション前に富化されない、項目1に記載の方法。
(項目26)
結果までの合計時間は、12時間未満である、項目1に記載の方法。
(項目27)
細胞結合構成要素(CBC)およびインジケーター部分を含む、組換え微生物検出プローブ(MDP)。
(項目28)
前記CBCは、グラム陰性細菌に対して特異的である、項目27に記載の組換えMDP。
(項目29)
前記CBCは、グラム陽性細菌に対して特異的である、項目27に記載の組換えMDP。
(項目30)
前記グラム陰性細菌は、Salmonella sppまたはE. coli O157:H7である、項目27に記載の組換えMDP。
(項目31)
前記グラム陽性細菌は、Listeria sppまたはStaphylococcus sppである、項目27に記載の組換えMDP。
(項目32)
前記CBCは、エンドリシンまたはスパニンまたは前記目的の微生物に対して特異的なRBPから単離される、項目27に記載の組換えMDP。
(項目33)
前記スパニンは、外膜スパニン(RZ1)またはその短縮型改変体である、項目32に記載の組換えMDP。
(項目34)
前記RBPは、尾部繊維タンパク質またはその短縮型改変体である、項目32に記載の組換えMDP。
(項目35)
前記CBCは、前記エンドリシンから単離される、項目32に記載の組換えMDP。
(項目36)
前記エンドリシンから単離されたCBCは、細胞結合ドメイン(CBD)またはその短縮型改変体である、項目27に記載の組換えMDP。
(項目37)
結合ドメインは、以下のバクテリオファージ:SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージepsilon15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、またはEscherichia coli O157:H7ファージCBA120のうちのいずれかのCBCと≧95% 相同性を有する、項目27に記載の組換えMDP。
(項目38)
前記インジケーター部分は、内因性のシグナルを生成するか、または前記インジケーター部分は、基質との反応の際にシグナルを生成する酵素を含むか、または前記インジケーター部分は、1種もしくはこれより多くのさらなるシグナル生成構成要素との反応の際にシグナルを生成する補因子を含む、項目27に記載の組換えMDP。
(項目39)
前記MDPは、組換え遺伝子生成物または結合体化タンパク質である、項目27に記載の組換えMDP。
(項目40)
前記インジケーター部分は、発蛍光団、蛍光タンパク質、粒子、および酵素のうちの少なくとも1種を含む、項目27に記載の組換えMDP。
(項目41)
前記酵素は、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、およびグリコシダーゼのうちの少なくとも1種を含む、項目27に記載の組換えMDP。
(項目42)
前記ルシフェラーゼは、遺伝子操作されたルシフェラーゼである、項目41に記載の組換えMDP。
(項目43)
組換えMDPを調製する方法であって、前記方法は、
野生型バクテリオファージまたは標的病原性細菌に特異的に感染するバクテリオファージの群のエンドリシン遺伝子、スパニン遺伝子、または尾部繊維遺伝子のうちの少なくとも1つに実質的に同一なCBCを生成する工程;
前記CBCとインジケーター部分との融合遺伝子を調製する工程であって、ここで融合タンパク質生成物は、前記組換えMDPである工程;
前記融合遺伝子を有する発現ベクターを形質転換して、前記組換えMDPを合成する工程;および
前記組換えMDPを精製する工程、
を包含する方法。
(項目44)
Listeria、Salmonella、Staphylococcus、またはE.coli O157:H7を検出するためのキットであって、前記キットは、項目29~45のいずれか1項に記載の組換えMDPを含むキット。
(項目45)
前記MDPのインジケーター部分と反応するための基質をさらに含む、項目44に記載のキット。
(項目46)
組換えMDPを含む、Listeria、Salmonella、Staphylococcus、またはE.coli O157:H7を検出するためのシステム。
(項目47)
サンプル中の1個またはこれより多くの目的の微生物を検出する方法であって、前記方
法は、
前記サンプルと、装置の固体支持体と接触させる工程であって、ここで前記固体支持体は、あるとすれば、前記サンプル中の前記1個またはこれより多くの微生物を捕捉し、ここで前記装置は、バクテリオファージゲノムへと挿入された遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、ここで前記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含む、第1の区画
を含む、工程;
前記第1の区画からの前記組換えバクテリオファージと、前記サンプルとを接触させ、前記組換えバクテリオファージは、前記サンプル中の前記1個またはこれより多くの微生物に感染し、それによって、インジケーター遺伝子生成物を生成する工程、ならびに
前記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程、
を包含する方法。
(項目48)
前記装置は、基質を含む第2の区画をさらに含み、前記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程は、前記インジケーター遺伝子生成物と基質とを接触させることによるものである、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記固体支持体はビーズである、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記固体支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)およびポリビニルクロリド(PVC)を含む、項目47~49のいずれかに記載の方法。
(項目51)
前記固体支持体は、細胞結合構成要素(CBC)の1またはこれより多くの分子を含み、ここで前記CBCは、前記サンプル中の前記1個またはこれより多くの目的の微生物を認識する、項目47~50のいずれかに記載の方法。
(項目52)
前記CBCは、グラム陰性細菌に対して特異的である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記CBCは、グラム陽性細菌に対して特異的である、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記グラム陰性細菌は、Salmonella sppまたはE.coli O157:H7である、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記グラム陽性細菌は、Listeria sppまたはStaphylococcus sppである、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記CBCは、エンドリシンまたはスパニンまたは前記目的の微生物に対して特異的なレセプター結合タンパク質(RBP)から単離される、項目51に記載の方法。
(項目57)
前記スパニンは、外膜スパニン(RZ1)またはその短縮型改変体である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記RBPは、尾部繊維タンパク質またはその短縮型改変体である、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記CBCは、前記エンドリシンから単離される、項目51に記載の方法。
(項目60)
前記エンドリシンから単離されたCBCは、細胞結合ドメイン(CBD)またはその短縮型改変体である、項目56に記載の方法。
(項目61)
前記装置は、基質を含む第2の区画をさらに含み、前記方法は、
前記第2の区画からの前記基質を、前記組換えバクテリオファージを添加すると同時にまたは添加した後に、前記サンプルに添加する工程、
をさらに包含する、項目47に記載の方法。
(項目62)
前記第1の区画はシールを含み、前記組換えバクテリオファージと前記サンプルとを接触させる工程は、前記シールを破損することによるものであり、ここで前記シールの破損は、前記第1の区画からの前記組換えバクテリオファージを、前記サンプルと接触させ、前記サンプル中の前記1個またはこれより多くの微生物に感染させ、それによって、インジケーター遺伝子生成物を生成する、項目47~61のいずれかに記載の方法。
(項目63)
前記バクテリオファージは凍結乾燥される、項目47に記載の方法。
(項目64)
前記装置は、増殖培地を含む第3の区画を含む、項目47に記載の方法。
(項目65)
前記方法は、前記目的の1個またはこれより多くの微生物を捕捉した前記固体支持体を、前記増殖培地中で、前記組換えバクテリオファージを添加する前の一定期間にわたってインキュベートする工程を包含する、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記装置は、前記培地、前記組換えバクテリオファージ、および前記基質と前記サンプルとを段階的に混合するためのストップ-ロックを含む、項目47または項目65に記載の方法。
(項目67)
前記固体支持体は、前記サンプルを接触させる前に乾燥している、項目47に記載の方法。
(項目68)
前記固体支持体は、前記サンプルを接触させる前に培地に浸漬されている、項目47に記載の方法。
(項目69)
前記1個またはこれより多くの微生物を捕捉した前記固体支持体は、前記組換えバクテリオファージと接触させる前に、前記第3の区画における前記増殖培地とともにインキュベートされる、項目64に記載の方法。
(項目70)
前記インキュベーションは、0~2時間である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記バクテリオファージは、前記インジケーター遺伝子生成物を検出する前に、前記サンプルと0.5~3時間にわたって接触する、項目47~70のいずれかに記載の方法。(項目72)
前記インジケーター遺伝子生成物は、発蛍光団、蛍光タンパク質、粒子、および酵素のうちの少なくとも1種を含む、項目47に記載の方法。
(項目73)
前記酵素は、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、およびグリコシダーゼのうちの少なくとも1種を含む、項目47に記載の方法。
(項目74)
前記ルシフェラーゼは、遺伝子操作されたルシフェラーゼである、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記サンプルは、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである、項目47に記載の方法。
(項目76)
前記方法は、食品安全産業のための標準サイズのサンプル中のわずか10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の細菌を検出する、項目47に記載の方法。
(項目77)
前記食品サンプルは、食肉または野菜を含む、項目47に記載の方法。
(項目78)
前記サンプルは、食品サンプル、水サンプル、酪農食品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである、項目47に記載の方法。
(項目79)
前記サンプルは、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる、項目47に記載の方法。
(項目80)
サンプル中の1個またはこれより多くの目的の微生物を検出する方法であって、前記方法は、
前記サンプルと、装置の固体支持体と接触させる工程であって、ここで前記固体支持体は、あるとすれば、前記サンプル中の前記1個またはこれより多くの微生物を捕捉し、ここで前記装置は、項目1に記載のMDPを含む第1の区画を含む、工程、
前記第1の区画からの前記MDPと前記サンプルとを接触させる工程、ならびに
前記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程、
を包含する方法。
(項目81)
サンプル中の目的の微生物を検出するためのシステムであって、前記システムは、
バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、ここで前記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含み、
ここで前記固体支持体は、細胞結合構成要素を含む、第1の区画、ならびに
シグナル検出構成要素であって、ここで前記シグナル検出構成要素は、前記サンプルを前記組換えバクテリオファージに感染させたことから生じる前記インジケーター遺伝子生成物を検出し得る、シグナル検出要素、
を含む装置を含む、システム。
(項目82)
前記シグナル検出構成要素は、携帯型ルミノメーターである、項目81に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、非限定的な図面を参照することによってよりよく理解され得る。
【0036】
【
図1】
図1は、MDPを使用して目的の細菌を検出するための方法の一実施形態を示す。
【0037】
【
図2】
図2は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に特異的なバクテリオファージによってコードされるエンドリシンの構造を示す。
【0038】
【
図3】
図3は、固体支持体としてスワブを伴う自給式装置を使用するL.monocytogenes培養物の検出の結果を示す。上記細菌の存在に相当するシグナルを、Hygienaルミノメーター、GloMaxルミノメーター、およびGloMax 20/20ルミノメーターによって検出した。表1は、対数増殖期培養物からの結果を示し、表2は、一晩培養物からの結果を示す。
【0039】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、表1に示されるデータから生成したプロットである。
図4Aは、Hygienaを使用して検出されるシグナルの測定を示す。スワブを、示されたCFUレベルにおいて対数増殖期の細胞に接種した。サンプルを直ぐに、Listeriaファージカクテルに4時間感染させた。基質を添加し、サンプルをHygienaルミノメーターで読み取った。>10 RLUのシグナルを陽性とみなす。この方法では、陽性結果を生成するために、およそ25,000 CFUが必要とされる。
【0040】
図4Bは、GloMax 20/20およびGloMax (別名、GloMax 96)ルミノメーターを使用して検出されるシグナルの測定を示す。スワブを、示されたCFUレベルにおいて対数増殖期の細胞に接種した。サンプルを直ぐに、Listeriaファージカクテルに4時間感染させた。基質を添加し、サンプルを、GloMax 20/20ルミノメーター(1mLのサンプル)またはGloMaxルミノメーター(150μlのサンプル)のいずれかで読み取った。シグナル/バックグラウンド比>3.0を、陽性とみなす。この方法では、陽性結果を生成するために、およそ5,000 CFUが必要とされる。
【0041】
【
図5】
図5は、Salmonellaを接種したシチメンチョウ挽肉中でのSalmonellaの検出の結果を示す。表3は、非接種コントロールサンプルを示し、表4は、接種したシチメンチョウサンプルを示す。試験を、種々のインキュベーションおよび感染時間で反復した。
【0042】
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、
図5のデータから生成したプロットである。
図4Aは、Salmonella接種したシチメンチョウサンプルが、試験したあらゆるインキュベーションおよび感染時間で陽性として検出されたことを示す。そのシチメンチョウサンプルを、本出願で開示される方法で試験する前に、接種後24時間、41℃で増殖させた。相対的シグナルに関して: 0時間インキュベーション、2時間感染>1時間インキュベーション、0.5時間感染>0時間インキュベーション、0.5時間感染。さらに、RLUシグナルの比較は、GloMaxルミノメーターが、Hygienaルミノメーターのものより遙かに高いシグナルを有することを示す。
【0043】
図6Bは、GloMax 20/20ルミノメーターおよびGloMaxルミノメーターを使用する検出が、同じサンプルに関して類似のシグナル/バックグラウンド比を生じたことを示す。GloMax 20/20は、より大きなシグナルを生じた(
図6A)が、そのバックグラウンドは、GloMaxでのものより有意に高かった。従って、シグナル/バックグラウンドを決定する場合、その2種のルミノメーターは同様に機能する。
【0044】
【
図7】
図7は、自給式装置を使用してアッセイする前にSalmonellaを接種した3つのシチメンチョウサンプル(サンプル21、24、および26)におけるSalmonellaの検出のデータを示す。上記サンプルを、シグナルを検出する前に、示されたとおりの継続時間にわたって感染させた。
【0045】
【
図8】
図8A~8Cは、
図7に示されるデータから生成したプロットである。
図8A~8Cは、3種の接種したシチメンチョウ挽肉サンプルを24時間にわたって富化し、スワブサンプルを採取およびアッセイした実験の結果を示す。サンプル24(
図8B)および26(
図8C)は、30分間ファージ感染を有したサンプルに関してはHygiena携帯型ルミノメーターでシグナルを示さなかったが、2時間感染を有したサンプルについてはシグナルを示した。GloMax 20/20ルミノメーターおよびGloMaxルミノメーターは、比較的低いシグナルを生成した。
【0046】
【
図9】
図9A~9Cは、
図7に示されるデータから生成したプロットである。上記プロットは、GloMax 20/20およびGloMaxの両方が、サンプル21(
図9A)および26(
図9B)を30分間感染で陽性として検出できた(シグナル/バックグラウンド比 >3.0は陽性である)が、サンプル24(
図9C)は、陽性結果を示すために2時間感染を要したことを示す。GloMax 20/20ルミノメーターおよびGloMaxルミノメーターの結果は同様であった。
【0047】
【
図10】
図10は、表面に接種し、24時間にわたって富化した、L.monocytogenes環境スポンジサンプルの検出のデータを示す。
【0048】
【
図11】
図11は、上記装置を使用して、Salmonella接種したシチメンチョウサンプル中の微生物の検出を示す。シグナルを、3種の異なるルミノメーター:GloMax、3M、およびHygienaを使用して測定した。
【0049】
【
図12】
図12Aおよび12Bは、3つの区画を含む容器に挿入された、スワブ(
図12A)または細胞結合構成要素(CBC)の分子で被覆されたビーズ(
図12B)を有する、微生物を検出するための自給式装置システムの一実施形態の図を示す。各区画は、スナップアクションシールによって分離される。第1の区画はファージを含み、第2の区画は基質を含み、第3の区画は培地を含む。全ての図中のパネルAは、固体支持体がスワブであるものを示す。
【0050】
【
図13】
図13Aおよび13Bは、3つの区画を含む容器に挿入された、スワブ(
図13A)または細胞結合構成要素(CBC)の分子で被覆されたビーズ(
図13B)を有する、微生物を検出するための自給式装置システムの一実施形態の図を示す。各区画は、スナップアクションシールによって分離される。第1の区画はファージを含み、第2の区画は培地を含み、第3の区画は基質を含む。ファージおよび培地とのインキュベーション後、上記第2の区画および第3の区画を分離するシールは、破損され得る。
【0051】
【
図14】
図14Aおよび14Bは、3つの区画を含む容器に挿入された、スワブ(
図14A)または細胞結合構成要素(CBC)の分子で被覆されたビーズ(
図14B)を有する、微生物を検出するための自給式装置システムの一実施形態の図を示す。各区画は、スナップアクションシールによって分離される。第1の区画は培地を含み、第2の区画はファージを含み、第3の区画は基質を含む。
【0052】
【
図15】
図15Aおよび15Bは、3つの区画を含む容器に挿入された、スワブ(
図15A)または細胞結合構成要素(CBC)の分子で被覆されたビーズ(
図15B)を有する、微生物を検出するための自給式装置システムの一実施形態の図を示す。各区画は、スナップアクションシールによって分離される。第1の区画は培地を含み、第2の区画はファージを含み、第3の区画は基質を含む。上記装置は、試薬を段階的に混合するためのストップ-ロック機構を有する。
【0053】
【
図16】
図16Aおよび16Bは、3つの区画を含む容器に挿入された、スワブ(
図16A)または細胞結合構成要素(CBC)の分子で被覆されたビーズ(
図16B)を有する、微生物を検出するための自給式装置システムの一実施形態の図を示す。各区画は、スナップアクションシールによって分離される。第1の区画は培地を含み、第2の区画はファージを含み、第3の区画は基質を含む。上記装置は、試薬を段階的に混合するためのストップ-ロック機構を有する。
【0054】
図17は、微生物を検出するための自給式装置システムを利用する実施形態のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。さらに、他に状況によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むべきであり、複数の用語は、単数を含むべきである。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、他に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法によって、および本明細書を通して考察される様々な一般のおよびより特定の参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験室の手順および技術に関連して使用される命名法は当技術分野で周知のものであり、一般に使用される。
【0056】
下記の用語は、他に示さない限り、下記の意味を有すると理解すべきである:
【0057】
本明細書において使用する場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0058】
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
【0059】
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、または試料の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0060】
「固体支持体」または「支持体」という用語は、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレートまたはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
【0061】
用語「インジケーター」または「インジケーター部分」または「検出可能な部分」または「検出可能な生体分子」または「レポーター」または「標識」とは、定性的または定量的なアッセイにおいて測定され得るシグナルを提供する分子に言及する。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ、HRPまたはAP)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種またはそれより多くを含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、該ウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。
【0063】
本明細書で使用される場合、「培養物富化」、「富化のために培養する」、「富化のために培養した」、または「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。短い期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得るが、必須ではなく、かつそれが少しでも使用されるならば、富化のための旧来からの培養より遙かに短い期間にわたる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは他の方法では見いだされ
ない遺伝的物質を一緒にするために、通常は実験室で行われる場合、遺伝的な(すなわち、核酸)改変をいう。この用語は、本明細書において用語「改変された」と交換可能に使用される。
【0065】
本明細書において使用する場合、「RLU」は、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する類似の機器によって測定される、相対発光量を指す。例えば、ルシフェラーゼと適当な基質(例えば、NANOLUC(登録商標)とNANO-GLO(登録商標))の間の反応物の検出が、検出されるRLUでしばしば報告される。
【0066】
概観
本発明は、サンプル中の特異的微生物の存在を検出および/または定量するために、高親和性で特定の微生物に結合し得る細胞結合構成要素(CBC)の高特異性を利用する。
【0067】
富化のための培養もなしに、もしくはいくつかの実施形態では最小限のインキュベーション時間(その間に、微生物が潜在的に増殖し得る)を伴って行われるアッセイを使用して、試験サンプル(例えば、食品サンプル、水サンプル、酪農製品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、臨床サンプル、または他の生物学的サンプル)中の目的の微生物の検出の驚くべき感度および速度を示す組成物、方法、キット、およびシステムが、本明細書で開示される。本明細書で開示される実施形態は、少なくとも細胞結合構成要素(CBC)およびインジケーター部分を含む微生物検出プローブ(MDP)を含む。これらの組成物、方法、キット、およびシステムは、微生物の検出が、以前に可能と考えられた時間枠より短い時間枠で達成されることを可能にする。
【0068】
本発明の組成物、方法、キット、およびシステムの実施形態は、食品サンプル、水サンプル、酪農製品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、臨床サンプル、または他の生物学的サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌、真菌、酵母)の検出に適用され得る。本明細書で開示されるMDPベースの検出実施形態は、任意の細菌または他の目的の微生物(例えば、病原性微生物)に適合され得、これは、CBCが利用可能であり、他の微生物と交差反応しない。本発明の方法は、高検出感度および特異性を迅速に提供し、旧来の生物学的富化(例えば、培養)の必要性がない。従って、種々の微生物は、本発明の方法を使用して検出され得る。
【0069】
本発明の方法およびシステムの実施形態は、食品サンプル、水サンプル、酪農製品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、臨床サンプル、または他の生物学的サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌、真菌、酵母)の検出および定量に適用され得る。本発明の方法は、高検出感度および特異性を迅速に提供し得、旧来の生物学的富化(例えば、培養)の必要性がなく、これは、所望の感度および特異性を有する全ての利用可能な方法が培養を要することから、驚くべき局面である。
【0070】
試験サンプル(例えば、食品サンプル、水サンプル、酪農製品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、臨床サンプル、または他の生物学的サンプル)中の微生物を検出するために、装置を使用するシステムおよび方法がまた、本明細書で開示される。その方法は、固体支持体を含み、サンプルを収集するために使用され得る自給式装置を使用する。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプル中の目的の微生物に高親和性で結合する細胞結合構成要素で被覆される。これは、上記より多くの細菌が上記固体支持体に結合することを可能にし、アッセイ感度および特異性を増大させる。上記装置は、バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を有するバクテリオファージを含む第1の区画をさらに含み、ここで上記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含む。上記方法は、その第1の区画からの組換えバクテリオファージとサンプルとを、上記組換えバクテリオファージが、上記サンプル中の1個またはこれより多くの微生物に感染するように接触させ、それによって、インジケーター遺伝子生成物(「インジケーター」)を生成する工程、および上記インジケーターを検出する工程を包含する。いくつかの局面において、上記装置は、第2の区画をさらに含み、上記区画は、上記インジケーターを検出するために特異的な基質を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記バクテリオファージが感染しているサンプルと、上記基質とを接触させ、それによって、上記インジケーターを検出する工程をさらに包含する。これらの実施形態において、各区画は、スナップアクションシールによって直ぐに隣り合う区画から分離される。上記スナップアクションシールは、破損の際に、上記区画の内容物が上記区画から出て、上記サンプルからの内容物または他の区画からのまたは内容物と混合することを可能にする。例えば、ユーザーは、上記スナップアクションシールを破損し得、その結果、上記第1の区画からの組換えバクテリオファージは、上記固体支持体上のサンプルと接触し、それによって、上記支持体に結合した微生物に感染する。上記微生物に感染すると、上記インジケーター遺伝子は、インジケータータンパク質を生成するように発現され、上記インジケータータンパク質は、種々の検出デバイスによって検出され得る。上記シグナルの存在は、上記サンプル中の微生物の存在を示す。
【0071】
本発明の装置、組成物、方法、キット、およびシステムの実施形態は、食品サンプル、水サンプル、酪農製品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、臨床サンプル、または他の生物学的サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌、真菌、酵母)の検出に適用され得る。本明細書で開示される検出実施形態は、任意の細菌または他の目的の微生物(例えば、病原性微生物)に適合され得、これは、CBCが利用可能であり、他の微生物と交差反応しない。本発明の方法は、高検出感度および特異性を迅速に提供し、旧来の生物学的富化(例えば、培養)の必要性がない。これは、所望の感度および特異性を有する全ての利用可能な方法が培養を要することから、驚くべき局面である。上記自給式装置(これは、検出時まで別個の区画において上記微生物を検出するために必要とされる試薬を収容する)を使用するサンプル中の微生物の検出は、便利で効率的である。上記装置は使用しやすく、広範な訓練を要しない。
【0072】
サンプル
本発明の組成物、方法、キット、およびシステムの実施形態の各々は、サンプル中の微生物の迅速な検出および/または定量を可能にする。例えば、本発明による方法は、優れた結果を伴って短期間で行われ得る。
【0073】
ある種の実施形態において、細胞結合構成要素(CBC)は、目的の微生物を検出するために使用される。本発明の組成物、方法、キット、およびシステムによって検出され得る微生物は、商業的、医学的、または獣医学的懸念のある病原体を含む。このような病原体としては、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、マイコプラズマ、真菌、原生動物、および酵母が挙げられる。特定の微生物に特異的な細胞結合構成要素(CBC)が同定されている任意の微生物は、本発明の方法によって検出され得る。当業者は、必要な特異的細胞結合構成要素/微生物対の利用可能性以外に、本発明の方法の適用に限定がないことを認識する。
【0074】
本発明によって検出可能な細菌細胞としては、食品由来または水由来の病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって検出可能な細菌細胞としては、Salmonellaの全ての種、E.coli O157:H7(およびE.coliの他の志賀毒素およびエンテロトキシン生成株)が挙げられるが、これらに限定されないEscherichia coliの全ての種、Listeriaの全ての種(L.monocytogenesが挙げられるが、これに限定されない)、およびCampylobacterの全ての種が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって検出可能な細菌細胞としては、医学的または獣医学的に重要な病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。このような病原体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Brucella spp.、Campylobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Clostridium botulinum、Enterobacter
spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Salmonella enteritidis、Shigella sonnei、Yersinia spp.、Vibrio spp. Staphylococcus aureus、およびStreptococcus spp。
【0075】
上記サンプルは、環境サンプルもしくは食品サンプルもしくは水サンプルであり得る。いくつかの実施形態は、医学的サンプルもしくは獣医学的サンプルを含み得る。サンプルは、液体、固体、もしくは半固体であり得る。サンプルは、固体表面のスワブであり得る。サンプルとしては、環境物質(例えば、水サンプル)、またはサイクロンコレクターからの空気サンプルもしくはエアロゾルサンプルに由来するフィルターが挙げられ得る。サンプルとしては、牛肉、家禽、加工食品、ミルク、チーズ、または他の酪農製品のサンプルであり得る。医学的または獣医学的サンプルとしては、血液サンプル、喀痰サンプル、脳脊髄液サンプル、および糞便サンプルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、サンプルは、種々のタイプのスワブであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、サンプルは、調製も、濃縮も、希釈もなしに、本発明の検出法において直接使用され得る。例えば、液体サンプル(ミルクおよびジュースが挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。他の実施形態において、サンプルは、緩衝化溶液もしくは細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない溶液中で希釈もしくは懸濁され得る。固体もしくは半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、上記宿主細菌細胞へのMDP付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。いくつかの実施形態において、好ましいpH範囲は、細菌細胞に付着したバクテリオファージに適切なものであり得る。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na+、Mg2+、およびK+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、上記サンプルに存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルは、バクテリオファージ活性を促進する温度で維持され得る。このような温度は、少なくとも約25℃であり、約45℃以下である。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、約37℃で維持される。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、MDPが結合または付着する間に、穏やかな混合または振盪に供される。
【0078】
微生物を検出するために組換えMDPを使用する方法
アッセイは、種々の適切な非接種コントロールサンプルを含み得る。例えば、MDPを含まないコントロールサンプルは、および/または細菌なしのMDPを含むコントロールサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルに関するコントロールとしてアッセイされ得る。
【0079】
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、微生物を検出するために、修飾またはシグナル付加した微生物検出プローブ(MDP)を使用する方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法で具現化され得る。
【0080】
いくつかの局面において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含する。上記方法は、上記目的の微生物を検出するために、組換えMDPまたは結合体化MDPを使用し得る。例えば、ある種の実施形態において、上記目的の微生物は細菌であり、上記細胞結合構成要素(CBC)は、上記目的の細菌を特異的に認識するバクテリオファージに由来する。ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルを、目的の細菌に結合し得る複数の組換えMDPとともにインキュベートすることによって、サンプル中の目的の細菌の検出を包含し得る。1個の微生物に結合される複数のMDPは、1より大きい任意の数であるが、好ましくは少なくとも5×104、または少なくとも1×105、または少なくとも1×106、または少なくとも1×108、または少なくとも1×109、または少なくとも1×1010 MDPである。
【0081】
ある種の実施形態において、上記組換えMDPは、インジケーター部分を含む。上記方法は、上記MDPのインジケーター部分を検出する工程を包含し得、ここで上記インジケーター部分の陽性検出は、上記目的の細菌が前記サンプル中に存在することを示す。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中のわずか1個の目的の微生物を検出する方法を包含し得、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の微生物に結合する複数のMDP(ここで上記MDPは、インジケーター部分およびCBCを含む)とともに、上記微生物が上記複数のMDPに結合するような条件下でインキュベートする工程;結合していないMDPを細胞に結合したMDPから分離する工程;ならびに上記インジケーター部分を上記細胞に結合したMDP上で検出する工程であって、ここで上記インジケーター部分の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプル中に存在することを示す工程を包含する。上記サンプルとともにインキュベートするMDPの量は、1ng、または10ng、または100ng、または250ng、または500ng、または1000ngであり得る。上記サンプルとともにインキュベートするMDPの量は、少なくとも5×108、または少なくとも5×109、または少なくとも5×1010、または少なくとも5×1011、または少なくとも5×1012、または少なくとも5×1013であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記検出工程は、インジケーター酵素が作用する基質の添加を要する。他の実施形態において、上記検出工程は、酵素および上記インジケーター補因子が作用する基質の添加を要する。特定のインジケーターの選択は、本発明にとって重要ではなく、上記インジケーターは、それ自体が検出可能なシグナルを生成し得るか、または機器が検出可能であり得るか、1もしくはこれより多くのさらなるシグナル生成構成要素(例えば、酵素/基質シグナル生成システム)とともに検出可能であり得るかのいずれかである。
【0084】
いくつかの実施形態において、複数のMDPは1個の細菌に結合する。1個の微生物に結合した複数のMDPは、1より大きい任意の数であるが、好ましくは少なくとも5×104、または少なくとも1×105、または少なくとも1×106、または少なくとも1×108、または少なくとも1×109、または少なくとも1×1010 MDPである。
【0085】
ある種の実施形態において、上記アッセイは、MDPを利用して、特異的微生物の存在を同定するために行われ得る。上記アッセイは、種々のサンプルタイプまたはサイズ、およびアッセイフォーマットに合わせるために改変され得る。本発明の組換えMDPを使用する実施形態は、サンプルタイプまたはサンプルサイズ、およびアッセイフォーマットに応じて、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7.0時間、7.5時間、8.0時間、8.5時間、9.0時間、9.5時間、10.0時間、10.5時間、11.0時間、11.5時間、または12時間未満の全アッセイ時間で、特定の細菌株の迅速検出を可能にし得る。例えば、必要とされる時間量は、上記MDPの親和性ならびに/または上記アッセイにおいて検出される細菌のタイプ、試験されるサンプルのタイプおよびサイズ、物理的/化学的環境の複雑性、ならびに内因性の非標的混在細菌の濃度に応じて、若干より短いかまたは長くてもよい。
【0086】
図1は、本発明の実施形態によるMDP112を使用して目的の細菌を検出するためのアッセイの実施形態を図示する。MDPは、インジケーター部分120(例えば、NANOLUC(登録商標))およびCBC121を含む。既知の量の細菌111を含む試験サンプルアリコートを、マルチウェルプレート104の個々のウェル102に分配する。MDP112のアリコートを個々のウェル102に添加し、一定期間(例えば、37℃で5~60分間)インキュベートする202。この実施形態において個々のウェルに添加したMDP112のアリコートは、少なくとも1×10
9 MDPである。複数のMDPは、1個の細菌116に結合する。この実施形態において1個の目的の細菌に結合した上記複数のMDPは、少なくとも1×10
6である。固体表面上の上記細菌の捕捉および上記捕捉した細菌203の洗浄は、過剰な結合していないMDP113の除去を可能にする。上記標的細菌に結合したMDPを含むプレートウェルを、上記プレート104上のMDPインジケーター活性を測定するためにアッセイし得る204(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)。この方法を利用する実験を、本明細書に記載する。いくつかの実施形態において、上記試験サンプルは濃縮されない(例えば、遠心分離によって)が、MDPとともに一定期間にわたって直接インキュベートされ、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ活性)に関してその後アッセイされ得る。他の実施形態において、種々のツール(例えば、遠心分離またはフィルター)を使用して、上記サンプルを濃縮してもよいし、富化する前にまたは試験する前に、サンプル中の微生物を捕捉してもよい。例えば、調製したサンプルの10mL アリコートを抽出し得、遠心分離して、細胞および大きなデブリをペレット化し得る。上記ペレットを、試験のために、より小さな容積で再懸濁し得る。いくつかの実施形態において、微生物細胞の再懸濁したペレットを、試験する前に富化してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明は、試験サンプルを、組換えまたは結合体化MDPとともにインキュベートする工程を包含する、目的の細菌を検出するための方法を包含する。いくつかの実施形態において、上記試験サンプルを、非常の高濃度のMDPまたは過剰なMDPとともにインキュベートする。驚くべきことに、高濃度のMDPは、目的の微生物に結合するために適している。
【0088】
本発明の方法は、感度を増大させるために種々の他の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、捕捉するための工程、およびその捕捉しかつ結合した細菌を洗浄して、過剰なMDPを除去し、シグナル対ノイズ比を増大させる工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分の陽性検出は、上記インジケーター部分を検出することによって生成されるシグナル対バックグラウンドの比は、少なくとも2.0または少なくとも2.5であることを要する。
【0089】
サンプルを試験するための方法のいくつかの実施形態において、大過剰なMDPの使用は、上記サンプル中の任意のMDP結合した細菌または他のより大きな実体を、上記過剰な結合していないMDPから分離することを要する。これは、当業者によって概して公知の多くの異なる方法において達成され得る。微生物細胞は、遠心分離、サイズによる濾過、または選択的固定化を通じて分離され得る。いくつかの実施形態において、サイズによる濾過は、フィルターウェルを通じて達成される。他の実施形態において、選択的固定化のために磁性分離が使用され得る。例えば、上記サンプルを、上記MDPとともにインキュベートする前または後のいずれかに、0.45μmまたは0.22μm膜を通じて濾過して、標的微生物(例えば、細菌)を固体支持体上に捕捉し得る。次いで、上記捕捉された微生物を、上記固体支持体上で1回またはこれより多く洗浄して、特異的に結合したMDPのみが残ることを確実にし得る。あるいは、特異的または非特異的結合の機構は、上記微生物をマイクロビーズまたは別の固体表面に捕捉するために使用され得る。標的微生物を修飾またはシグナル付加するための他のフォーマットおよび過剰な結合していないMDPを除去するために洗浄するための方法は、可能である。
【0090】
種々の固体支持体が使用され得る。ある種の実施形態において、上記固体支持体は、マルチウェルプレート、フィルター、ビーズ、ラテラルフローストリップ、フィルターストリップ、フィルターディスク、フィルターペーパー、または細胞を培養するためにデザインされた薄いフィルム(例えば、3MによるPetriFilm)を含み得る。他の固体支持体がまた、適切であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記試験サンプル微生物は、プレートの表面に結合することによって、または上記サンプルを細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズスピンフィルターまたはプレートフィルター)を通して濾過することによって捕捉され得る。一実施形態において、上記フィルターまたはプレート表面上で捕捉された微生物は、その後、過剰な結合していないMDPを除去するために、1回またはこれより多く洗浄される。
【0091】
あるいは、いくつかの実施形態において、上記捕捉する工程は、上記目的の微生物の他の特長(例えば、サイズ)に基づき得る。サイズベースの捕捉を利用する実施形態において、上記固体支持体は、スピンカラムフィルターであり得る。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレートを含む。あるいは、上記捕捉するための固体支持体は、アレイ、または可動式支持体(例えば、ビーズ)上の位置であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、成長を促進する条件においてインキュベートすることによって、試験前に富化され得る。このような実施形態において、上記富化期間は、上記サンプルタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間まで、またはこれより長時間であり得る。
【0093】
他の実施形態において、上記サンプルは、固体支持体上の細菌の捕捉後に富化され得る。このような実施形態において、上記富化期間は、上記サンプルタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間まで、またはこれより長時間であり得る。
【0094】
従って、いくつかの実施形態において、上記MDPは、検出可能なインジケーター部分を含み、1個の病原性細胞(例えば、細菌)への結合は、上記インジケーター部分を介して生成された、増幅されたシグナルによって検出され得る。従って、上記方法は、上記MDPのインジケーター部分を検出する工程を包含し得、ここで上記インジケーターの検出は、上記目的の細菌が前記サンプル中に存在することを示す。
【0095】
本発明の方法のうちのいくつかの実施形態において、上記微生物は、サンプルからの上記微生物のいかなる単離も精製もなしに検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1個またはこれより多くの目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、マイクロタイターウェル、またはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイはそのアッセイ容器中で行われる。すなわち、微生物は、上記微生物が通過することを可能にするには小さい孔サイズを有する膜上に捕捉される。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書に開示される。
【0096】
試験サンプルアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、MDPが添加され得、そして結合のための十分な期間の後、上記細胞は、固体表面(例えば、プレート、ビーズ、またはフィルター基材)上に捕捉され得、その結果、過剰な結合していないMDPは、1回またはこれより多くのその後の洗浄工程において除去され得る。次いで、インジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)が添加され、インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされる。上記方法のうちのいくつかの実施形態は、フィルタープレート上で行われ得る。上記方法のうちのいくつかの実施形態は、MDPと結合する前に、上記サンプルの濃縮ありまたは濃縮なしで行われ得る。
【0097】
例えば、多くの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。一般に、概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。他の色のプレートは、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度を有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルは、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れから生じ得る。いくつかのプレートは、白色のウェルを有する一方で、上記プレートの残りは黒色であり、従って、ウェルからウェルへの光の漏れを防止すると同時に、上記ウェル内部の高いシグナルを可能にする。白色ウェルと黒色プレートとのこの組み合わせは、バックグラウンドシグナルを減少させ得る。従って、プレートまたは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイに関する感度およびバックグラウンドシグナルに影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の検出は、上記サンプルを培養する必要性なく完了し得る。例えば、ある種の実施形態において、検出するために必要とされる総時間は、12.0時間未満、11.0時間未満、10.0時間未満、9.0時間未満、8.0時間未満、7.0時間未満、6.0時間未満、5.0時間未満、4.0時間未満、3.0時間未満、2.5時間未満、2.0時間未満、1.5時間未満、1.0時間未満、45分間未満、または30分間未満である。結果までの時間を最小化することは、病原体に関する食品試験および環境試験において重要である。
【0098】
当該分野で公知のアッセイとは対照的に、本発明の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の≦10個の細胞(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の微生物)または≦20個の細胞、または≦30個の細胞、または≦40個の細胞、または≦50個の細胞、または≦60個の細胞、または≦70個の細胞、または≦80個の細胞、または≦90個の細胞、または≦100個の細胞、または≦200個の細胞、または≦500個の細胞、または≦1000個の細胞を検出し得る。例えば、ある種の実施形態において、上記MDPは、S.Aureus、Listeria、Salmonella、またはE.coliに対して非常に特異的である。一実施形態において、上記MDPは、100個より多くの他のタイプの細菌の存在下で、S.Aureus、Listeria、Salmonella、またはE.coliを区別し得る。一実施形態において、上記MDPは、100個より多くの他のタイプの細菌の存在下で、細菌の種内の特定の血清型(例えば、E.coli O157:H7)を区別し得る。ある種の実施形態において、上記MDPは、上記サンプル中の特定のタイプの1個の細菌を検出するために使用され得る。ある種の実施形態において、上記組換えMDPは、サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特定の細菌を検出する。
【0099】
従って、本発明の局面は、インジケーター部分を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケーター部分は、MDPと関連づけられ得る。上記インジケーター部分は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、蛍光タンパク質)を放射してもよい。蛍光タンパク質は、電子を含む蛍光部分が光子を吸収する場合に、光子としてエネルギーを放射することによって天然に蛍光を発する(内因性の蛍光または自家蛍光)。蛍光タンパク質(例えば、GFP)は、融合タンパク質として発現され得る。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の100個、50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。
【0100】
特定のインジケーター部分の選択は、本発明にとって重要ではなく、上記インジケーター部分は、それ自体が検出可能なシグナルを生成し得るか、または機器が検出可能であり得るか、1もしくはこれより多くのさらなるシグナル生成構成要素(例えば、酵素/基質シグナル生成システム)とともに検出可能であり得るかのいずれかである。多くのMDPは、上記インジケーター部分および/または上記MDPの特異的CBCのいずれかを変動させることによって形成され得る;上記選択が、検出される微生物および所望の検出手段の懸念事項を含むことは、当業者によって認識される。
【0101】
例えば、1またはこれより多くのシグナル生成構成要素は、検出可能なシグナルを生成するために、インジケーター部分と反応され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、生物発光化合物であり得る。上記インジケーター部分が酵素である場合、上記検出可能なシグナルの増幅は、検出可能な反応生成物を生じるために、上記酵素と1種もしくはこれより多くの基質、またはさらなる酵素および基質とを反応させることによって得られる。代替のシグナル生成システムにおいて、上記インジケーターは、上記検出可能なシグナルを生成するために上記インジケーターの酵素操作が要求されない蛍光化合物であり得る。例えば、フルオレセインおよびローダミンならびにそれらの誘導体およびアナログが挙げられる蛍光分子は、このようなシステムにおけるインジケーターとしての使用に適している。さらに別の代替の実施形態において、上記インジケーター部分は、補因子であり得、上記検出可能なシグナルの増幅は、上記補因子と上記酵素および1もしくはこれより多くの基質またはさらなる酵素および基質とを反応させて、検出可能な反応生成物を生じることによって得られる。いくつかの実施形態において、上記検出可能なシグナルは、発色性である。
【0102】
上記検出可能なインジケーター部分は、MDPの重要な特徴であり、それは、直接的にまたは間接的に検出され得る。上記インジケーター部分は、検出可能なシグナルであって、それによって、上記結合反応がモニターされ、定性的および/または定量的な測定を提供するものを提供する。上記修飾されたまたはシグナル付加された微生物によって生成されるシグナルの相対的量および位置は、上記微生物の存在および/または量を示すように働き得る。上記インジケーター部分はまた、フローソーティングによって、または磁性分離媒体を使用して、修飾されたかまたはシグナル付加された微生物を選択および単離するために使用され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記MDPのインジケーター部分は、直接的にまたは基質のインキュベーション後に検出可能であり得る。インジケーター部分としての使用に適切な、多くの異なるタイプの検出可能な生体分子が当該分野で公知であり、多くは、市販されている。いくつかの実施形態において、上記MDPは、上記インジケーター部分として働く酵素を含む。いくつかの実施形態において、上記MDPは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーター部分は、光を放射し得るおよび/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、またはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0104】
従って、いくつかの実施形態において、上記方法、システムまたはキットの組換えMDPは、野生型バクテリオファージの一部と、インジケータータンパク質(例えば、蛍光タンパク質またはルシフェラーゼタンパク質)の配列との融合物から調製される融合タンパク質である。
【0105】
バクテリオファージは、特定の細菌に感染し、これを溶解し得る。バクテリオファージゲノムは、3種のタンパク質をコードする;ホリン(holin)、エンドリシン、およびスパニン。これらは一緒に、ファージ溶解サイクルの間の子孫放出を担う。
図2に示されるように、エンドリシン(ペプチドグリカンヒドロラーゼまたはムレインヒドロラーゼともいわれる)は、バクテリオファージが感染する細菌の特定のタイプの細胞壁に結合し、溶解する。ホリン分子は、細胞膜を破壊し、エンドリシンが細胞壁におけるペプチドグリカンにアクセスすることを可能にする。グラム陽性細菌では、エンドリシンは、上記細胞のペプチドグリカンに接触し得る;しかし、グラム陰性細菌の外膜は、エンドリシンと上記細胞壁との間の結合を防止する。概して、グラム陰性細菌に特異的なファージによって生成されるエンドリシンは、溶解を担う1個の触媒ドメインのみを有する。対照的に、グラム陽性細菌に特異的なファージによって生成されるエンドリシンは、2個のドメインを有する:溶解に関する酵素活性ドメイン(EAD)、ならびに宿主認識および高親和性結合に関する細胞壁結合ドメイン(CBD)。より具体的には、上記エンドリシンのCBDは、上記バクテリオファージが上記細菌を高特異性で認識することを可能にする(溶解機能は必要とされない)。いくつかの実施形態において、野生型バクテリオファージの一部は、エンドリシン配列、具体的には細胞結合ドメイン、またはその短縮型部分である。代表的には、上記CBDは、C末端に位置するが、N末端に、または場合によっては中心ドメインとして見出され得る。
【0106】
感染性因子の他のタイプは、特異性のために、細胞結合タンパク質を同様に使用する。いくつかの場合には、細胞結合を担う核酸配列は、グラム陰性細菌に特異的なバクテリオファージによってコードされるエンドリシンの1個の球状EAD内で見出されている。第3のタイプのタンパク質であるスパニンは、グラム陰性宿主における外膜の破壊を担う。RZ1は、スパニン複合体の外膜リポタンパク質である。溶解サイクルの間に、上記スパニン複合体は、上記エンドリシンによる細胞壁の破壊後に、外膜を破壊する。いくつかの実施形態において、上記細胞結合構成要素は、エンドリシンまたはスパニンのうちの少なくとも一方に由来する結合機能性を有する、保存されたアミノ酸配列を含む。
【0107】
場合によっては、ファージは、レセプター結合タンパク質(RBP)を通じて特定の細菌に結合する。RBPと細菌の細胞表面との間の相互作用は、RBP特異性を決定する。いくらかのファージでは、RBPは、テールシャフト、尾部繊維、またはテールスパイクに位置する。ファージ尾部繊維タンパク質は、細胞表面への吸着およびポリサッカリド分解の両方において役割を果たす。テールスパイクタンパク質は、多くのバクテリオファージのテールの構成要素である。テールスパイクタンパク質は、細菌宿主の細胞表面に結合し、細菌宿主認識を媒介する。
【0108】
本発明がグラム陰性細菌を検出するために使用され得ることは、可能である。概して、グラム陰性細菌の外膜は、エンドリシンが細胞壁と接触しないように妨げる。しかし、上記外膜は破壊され得(例えば、EDTA、界面活性剤など…)、その結果、MDPは、グラム陰性細菌の細胞壁に付着し結合し得る。いくつかの実施形態において、CBCは、グラム陰性細菌に特異的なバクテリオファージによってコードされるエンドリシンの酵素ドメインから単離される。いくつかの実施形態において、酵素ドメイン内のアミノ酸の保存された配列は、細胞結合を担い、従って、CBCとして使用され得る。他の実施形態において、野生型バクテリオファージの一部は、o-スパニン(RZ1)、テールスパイク、または尾部繊維である。他の実施形態において、上記CBCは、以下のタンパク質のうちの少なくとも1種に由来する細胞結合機能性を有する保存されたアミノ酸配列を含む:エンドリシン、ホリン、スパニン、尾部繊維、またはテールスパイク。
【0109】
生物の特定のタイプに結合するCBCは、特定の感染性因子に由来し得、試験サンプル中のその生物の存在を同定するためにインジケーターの一部として使用され得る。従って、本発明は、微生物細胞を修飾するかまたはシグナル付加するためにMDPの使用を提唱する。MDPは、組換えタンパク質または結合体化タンパク質であり得るか、そうでなければ付着したインジケーター部分を有し得る。従って、本明細書で開示される発明の実施形態は、細胞結合部分およびインジケーター部分を有する修飾分子またはシグナル付加分子を含む。
【0110】
上記エンドリシンの溶解機能は、必要とされない-細胞結合機能のみを必要とする。従って、いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分は、CBDに融合され、内因性のシグナル(例えば、蛍光タンパク質または生体発光タンパク質)を放射するタンパク質を含む。上記インジケーターは光を放射し得るおよび/または色の変化によって検出可能であり得る。例えば、蛍光タンパク質は、基質を必要とするのではなく、適切な装置(例えば、蛍光顕微鏡または蛍光活性化セルソーティング(FACS))で直接検出可能である。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、基質と相互作用してシグナルを発生する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、External Gaussiaルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼまたは工学技術で作製されたルシフェラーゼ、例えばNANOLUC(登録商標)、Rluc8.6-535またはオレンジナノ-ランタンのうちの1つである。
【0111】
上記インジケーターを検出する工程は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、基質とのインジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)の反応を検出するために使用され得る。RLUの検出はルミノメーターで達成することができ、または、他の機械もしくはデバイスもまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラが、色の変化および他の光の放射を検出し得る。検出にとって絶対RLUが重要であるが、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比も高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。
【0112】
いくつかの実施形態において、インジケーター部分(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分またはそれより長くにわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、固体支持体として96ウェルフィルタープレートをおよび上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および反応が完了するまで3分間隔、または5分間隔、または10分間隔、または15分間隔で行われ得る。
【0113】
従って、MDPを利用するいくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法であって、少なくとも1種のサンプル細菌を捕捉する工程;上記少なく
とも1種の細菌を、複数のMDPとともにインキュベートする工程;上記サンプル中の標
的微生物へのCBPの結合のための時間を与える工程;および上記インジケーター部分を検出する工程であって、ここで上記インジケーター部分の検出は、上記細菌が前記サンプル中に存在することを示す工程を包含する方法を含む。
【0114】
例えば、いくつかの実施形態において、上記試験サンプル細菌は、プレートの表面への結合によって、または細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズスピンフィルターまたはプレートフィルター)を通じてサンプルを濾過することによって、捕捉され得る。一実施形態において、上記MDPは、最小限のまたは若干の体積で、上記フィルター上に直接捕捉したサンプルに添加される。一実施形態において、上記フィルターまたはプレート表面に捕捉された微生物は、その後、過剰な結合されていないMDPを除去するために1回またはこれより多く洗浄される。
【0115】
いくつかの実施形態において、細菌を含む試験サンプルのアリコートは、組換えMDPとのインキュベーションおよび任意の過剰なMDPを除去するために1回またはこれより多く洗浄した後に、スピンカラムに適用され得、検出されるインジケーターの量は、前記サンプル中に存在する標的化細菌の量に比例する。
【0116】
上記細菌に結合したインジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、次いで、測定され得、定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、フィルターを通して遠心され、その濾液はアッセイ(例えば、ルミノメーターでの)のために新しい容器に収集され、その後、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。あるいは、インジケーターシグナルは、フィルター上で直接測定され得る。
【0117】
一実施形態において、上記微生物は細菌であり、上記MDPは、バクテリオファージに由来するCBCを含む。一実施形態において、上記インジケーター部分は、ルシフェラーゼである。従って、代替の一実施形態において、上記インジケーター基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)は、フィルター上にあるままであるかまたはプレート表面に結合したままである上記サンプルの一部とともにインキュベートされ得る。よって、いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレート(もしくは通常の96ウェルプレート)であり、上記基質反応は、上記プレートを上記ルミノメーターの中に直接置くことによって検出され得る。
【0118】
例えば、一実施形態において、本発明は、目的の病原性細菌を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルフィルタープレート上で捕捉された細胞を複数のMDPと結合させる工程;過剰なMDPを洗い流す工程;および基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、酵素活性を測定することによって、上記インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出する工程であって、ここで酵素活性の検出は、上記目的の細菌が上記サンプル中に存在することを示す工程を包含する。
【0119】
別の実施形態において、本発明は、目的の微生物(例えば、S.Aureus)を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルプレート中の液体溶液もしくは懸濁物中の細胞を、複数のMDPと結合させる工程;結合していないMDPを、結合したMDPを有する細胞から洗い流す工程;および基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、酵素活性を測定することによって、上記インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出する工程であって、ここで酵素活性の検出は、上記目的の細菌(例えば、S.Aureus)が上記サンプル中に存在することを示す工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物は、固体支持体上に(例えば、ビーズまたはフィルター上に)捕捉され得る。この捕捉する工程は、上記MDPとのインキュベーション間またはその後のいずれかに起こり得る。いくつかの実施形態において、捕捉する工程は、必須ではない。
【0120】
いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、消費可能な試験サンプル(例えば、野菜洗浄液)であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、濃縮されたLBブロス、Tryptic/Tryptone Soyブロス、ペプトン水または栄養ブロスで強化した野菜洗浄物であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、TSBブロス中で希釈した細菌であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、標的微生物細胞は、適切な検出のために無傷である必要がある。すなわち、上記細胞は、生存している必要はないが、上記細胞壁は、構造的に無傷でなければならない。従って、上記検出工程の前に、上記細菌の溶解を最小限にすることは望ましい。
【0122】
いくつかの実施形態において、上記サンプルの最初の濃縮工程は、有用である。すなわち、上記サンプル中の任意の微生物または他の相対的に大きな物質は、過剰な液体を除去するために濃縮される。しかし、最初の濃縮工程なしでアッセイを行うことは可能である。いくつかの実施形態は初期濃縮工程を含み、いくつかの実施形態において、この濃縮工程はより短い富化インキュベーション時間を可能にする。他の実施形態において、富化期間は不要である。
【0123】
試験方法のいくつかの実施形態は、確認アッセイをさらに含み得る。初期の結果を、通常は後の時点で確認するために、様々なアッセイが当該分野で公知である。例えば、上記サンプルが培養され得、(例えば、CHROMAGAR(登録商標)/DYNABEADS(登録商標)アッセイ)、PCRは、上記微生物DNAの存在を確認するために利用され得るか、または他の確認アッセイが、最初の結果を確認するために使用され得る。
【0124】
食品安全性アッセイの実施形態は、サンプル調製工程を包含する。いくつかの実施形態は、富化工程を包含し得る。例えば、サンプルタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間の富化が必要とされ得る。これらのサンプル調製工程の後に、レポーターまたはインジケーターを含む高濃度の組換えMDPとの結合は、種々のアッセイフォーマット(例えば、
図1に示されるもの)で行われ得る。
【0125】
食品アッセイの実施形態は、サンプルタイプおよびサイズに応じて、少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%の結果までの時間の低減を伴って、産業標準に相当するサンプルサイズにおいて1個の病原性細菌を検出し得る。
【0126】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、細菌の存在を示す検出可能なシグナルを増幅するための組換えタンパク質ベースの方法を使用することによって必要性を解決する。ある種の実施形態において、わずか1個の細菌が検出される。本明細書で適用される原理は、種々の微生物の検出に適用され得る。微生物の表面上のシグナル生成MDPのための多くの結合部位が原因で、多くのMDPの上記インジケーター部分は、上記微生物自体より容易に検出可能であり得る。このようにして、本発明の実施形態は、上記目的の微生物の実に1個の細胞からの非常に大きなシグナル増幅を達成し得る。
【0127】
本発明の局面は、サンプル中の特異的微生物を検出および/または定量する手段として、特定の微生物に結合し得る結合構成要素(例えば、感染性因子の認識および結合構成要素)の高い特異性を利用する。いくつかの実施形態において、本発明は、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)の細胞結合ドメインの高い特異性を利用する。
【0128】
本明細書で開示されかつ記載される発明のいくつかの実施形態は、1個の微生物が非常に多くのMDPに結合し得るという発見を利用する。この原理は、多くの小さなタンパク質による微生物表面の特異的認識に基づいて、1個または数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、実に1個の細菌細胞を複数のMDPへと曝すことによって、上記インジケーターシグナルが増幅され、その結果、1個の細菌が検出可能である。
【0129】
微生物をMDPで検出する前例のない速度および感度は、予測外の結果である。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、目的の微生物の検出のために、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、または2時間未満しか要しない。これらは、以前に考えられていたより短い時間枠である。いくつかの実施形態において、上記方法は、100個、50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個程度の少なさの上記目的の細菌を検出し得る。いくつかの実施形態において、上記細菌の実に1個の細胞が検出可能である。さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で開示される方法を行う、および/または本明細書で記載されるMDPを使用するための構成要素を含むシステム(例えば、コンピューターシステム、自動化システムまたはキット)を含む。
【0130】
食品中の病原性細菌の検出のための既存のプロトコールは、複雑で、高価で、時間が遅く、労働集約的で、偽陽性を生じやすい。さらに、ファージベースの検出方法は、感染性試薬の追加された複雑性および関係規則を含む。所定の病原体に特異的な組換えMDPでの検出は、有効で迅速、かつ単純な試験代替手段を提供する。
【0131】
組換えMDPを調製する方法
MDPを作製するための方法のいくつかの実施形態は、上記細胞結合ドメインの配列のために野生型バクテリオファージの選択で開始する。いくつかのバクテリオファージは、標的細菌に高度に特異的である。このことは、高度に特異的な検出の機会を提供する。
【0132】
従って、本発明の方法は、特定の目的の微生物を認識し、結合する感染性因子と関連付けられた結合因子の高い特異性を利用する。多数のMDP分子が1個の微生物に結合する可能性は、インジケーターシグナルを増幅する手段を提供し、それによって、サンプル中に存在する低レベルの微生物(例えば、1個の微生物)の検出を可能にする。
【0133】
バクテリオファージは、特定の細菌に感染し、溶解し得る。バクテリオファージゲノムは、3種のタンパク質をコードする;ホリン、エンドリシン、およびスパニン。これらは一緒に、ファージ溶解サイクルの間の子孫放出を担う。
図2に示されるように、エンドリシン(ペプチドグリカンヒドロラーゼまたはムレインヒドロラーゼともいわれる)は、バクテリオファージが感染する細菌の特定のタイプの細胞壁に結合し、溶解する。ホリン分子は、細胞膜を破壊し、エンドリシンが細胞壁におけるペプチドグリカンにアクセスすることを可能にする。グラム陽性細菌では、エンドリシンは、上記細胞のペプチドグリカンに接触し得る;しかし、グラム陰性細菌の外膜は、エンドリシンと上記細胞壁との間の結合を防止する。概して、グラム陰性細菌に特異的なファージによって生成されるエンドリシンは、溶解を担う1個の触媒ドメインのみを有する。グラム陽性細菌に特異的なファージによって生成されるエンドリシンは、2個のドメインを有する:溶解に関する酵素活性ドメイン(EAD)、ならびに宿主認識および高親和性結合に関する細胞壁結合ドメイン(CBD)。より具体的には、上記エンドリシンのCBDは、上記バクテリオファージが上記細菌を高特異性で認識することを可能にする(溶解機能は必要とされない)。他のタイプの感染性因子は、特異性のために細胞結合タンパク質を同様に使用する。いくつかの場合には、細胞結合を担う核酸配列は、グラム陰性細菌に特異的なバクテリオファージによってコードされるエンドリシンの1個の球状EAD内で見出されている。
【0134】
第3のタイプのタンパク質であるスパニンは、グラム陰性宿主における外膜の破壊を担う。RZ1は、スパニン複合体の外膜リポタンパク質である。溶解サイクルの間に、上記スパニン複合体は外膜を破壊し、続いて、上記エンドリシンによる細胞壁を破壊する。いくつかの実施形態において、上記CBCは、以下のタンパク質:
エンドリシンホリン、スパニン、テールスパイク、または尾部繊維のうちの少なくとも1種に由来する細胞結合機能性を有する、保存されたアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、上記CBCは、エンドリシンに由来する細胞結合機能性を有する保存されたアミノ酸配列、およびホリン、スパニン、テールスパイク、または尾部繊維のうちの少なくとも1種に由来する保存されたアミノ酸配列を含む。
【0135】
場合によっては、ファージは、レセプター結合タンパク質(RBP)を通じて特定の細菌に結合し得る。RBPと、細菌の細胞表面との間の相互作用は、RBP特異性を決定する。いくらかのファージでは、RBPは、テールシャフト、尾部繊維、またはテールスパイクに位置する。ファージ尾部繊維タンパク質は、細胞表面への吸着およびポリサッカリド分解の両方において役割を果たす。テールスパイクタンパク質は、多くのバクテリオファージのテールの構成要素である。テールスパイクタンパク質は、細菌宿主の細胞表面に結合し、細菌宿主認識を媒介する。ファージテールスパイクおよび/または尾部繊維タンパク質は、ファージを細菌に付着させることによって、細胞表面への吸着およびポリサッカリド分解の両方において役割を果たす。
【0136】
いくつかのファージ(CBA120、Vil、およびP22が挙げられる)は、テールスパイクを有する。他のファージ(例えば、T4、JG04、SEA1、Saka2、およびSaka4)は、尾部繊維を有する。細菌の特定のタイプに結合するCBCは、特定の感染性因子に由来し得、試験サンプル中のその生物の存在を同定するために、インジケーターの一部として使用され得る。従って、本発明は、MDPを使用して、吸着によって微生物細胞を修飾またはシグナル富化することが提唱される。MDPは、組換えタンパク質または結合体化タンパク質であり得るか、またはそうでなければ、付着したインジケーター部分を有し得る。他の実施形態において、上記CBCは、エンドリシンに由来する細胞結合機能性を有する保存されたアミノ酸配列、およびホリン、スパニン、テールスパイク、または尾部繊維のうちの少なくとも1種に由来する保存されたアミノ酸配列を含む。従って、本明細書で開示される発明の実施形態は、細胞結合部分およびインジケーター部分を有する修飾分子またはシグナル付加分子を含む。
【0137】
感染性因子は、特定のタイプの微生物に非常に特異的であり得る。例えば、バクテリオファージは、特定の細菌属(例えば、Listeria)に特異的であり得る。例えば、A511バクテリオファージは、Listeria属に特異的である。あるいは、バクテリオファージは、特定の細菌種(例えば、E.coli)に特異的であり得る。細菌のいくつかのタイプに関しては、バクテリオファージは、その生物の特定のサブタイプを高い特異性で認識し得ることすらある。例えば、CBA120バクテリオファージは、E.coli O157:H7に対して非常に特異的であり、φYeO3-12バクテリオファージは、Y.enterocolitica 血清型O:3に対して非常に特異的である。
【0138】
本明細書で記載されるMDPのいくつかの実施形態において、上記CBCは、組換えタンパク質または結合体化タンパク質の一局面である。エンドリシンをコードするバクテリオファージ遺伝子の特定のセグメントによってコードされる、特定のアミノ酸ストレッチは、高度に特異的な細胞タイプ標識の一部として働き得る。上記CBCは、以下に由来し得る:T7、T4、T4様、ViI、ViI様、AR1、A511、A118、A006、A500、PSA、P35、P40、B025、B054,A97、phiSM101、phi3626、CBA120、SPN1S、10、epsilon15、P22、LipZ5、P40、vB_LmoM_AG20、P70、A511、P4W、K、Twort、またはSA97。MDPはまた、上記MDPがシグナルを生成することを可能にするインジケーター部分(例えば、蛍光部分、蛍光タンパク質、生体発光タンパク質、または酵素)を含む。組換えMDPにおいて、種々のタイプのレポーターが、インジケーター部分として働くために、CBPに付着され得る。いくつかの実施形態において、上記MDP融合タンパク質は、酵素(例えば、ルシフェラーゼ)のアミノ酸配列を含む。これは、適切な基質の添加の際に検出可能であるに過ぎない。例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、および他のレポーター酵素は、適切な基質と反応して、検出可能なシグナルを提供する。組換えMDPのいくつかの実施形態は、野生型ルシフェラーゼまたは工学技術で作製された(engineered)ルシフェラーゼ(例えば、NANOLUC(登録商標))を含む。他の実施形態は、蛍光タンパク質または別のレポータータンパク質を含む。
【0139】
種々の感染性因子が、研究され得る、および/または上記CBCの細胞結合ドメインのモデルとして役立ち得る。代替の実施形態において、バクテリオファージ、ファージ、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関して)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関して)、マイコプラズマファージ、ならびに生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、真菌および他の顕微鏡的な生きている生物に侵入し得る任意の他のウイルスは、目的の微生物を標的化するために研究され得るかまたはコピーされ得る。一実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記CBCは、バクテリオファージに由来する細胞結合ドメインを含み得る。例えば、E.coliの十分に研究されたファージとしては、T1、T2、T3、T4、T5、T7、およびラムダが挙げられる;ATCCコレクションにおいて入手可能な他のE.coliファージとしては、例えば、phi×174、S13、Ox6、MS2、phiV1、fd、PR772、およびZIK1が挙げられる。Salmonellaファージとしては、SPN1S、10、epsilon15、SEA1、およびP22が挙げられる。Listeriaファージとしては、LipZ5、P40、vB_LmoM_AG20、P70、およびA511が挙げられる。Staphylococcusファージとしては、P4W、ウイルスK、Twort、phi11、187、P68、およびphiWMYが挙げられる。
【0140】
組換えMDPを調製するための方法のいくつかの実施形態は、それらの細胞結合構成要素の正確な位置および配列を確認するために、種々のバクテリオファージの公開された配列を配列決定するかまたは研究することを含む。上記配列は、既知の細胞結合構成要素と上記ファージ配列との間の相同性を見出すために特徴づけられる。例えば、Listeriaファージのエンドリシンは、他のエンドリシン配列と比較した場合に、Listeriaファージ配列から推測される。従って、Listeria特異的細胞結合ドメインの配列は、選択されるかまたはデザインされ、Listeriaを検出するためのMDPの一局面として使用される。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態は、目的の細菌を結合しその検出を促進するために、迅速かつ感度の高い標的化のための組換えMDPの結合の特異性を利用する。
【0142】
組換え微生物検出プローブ
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、病原性微生物の検出における使用のために、微生物検出プローブ(MDP)を含み得る。ある種の実施形態において、本発明は、細胞結合構成要素(CBC)およびインジケーターまたはレポーター遺伝子を有する組換えMDPを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、CBCをコードする遺伝子フラグメントは、検出の標的に特異的なバクテリオファージから単離される。いくつかの実施形態において、CBCは、バクテリオファージ(例えば、T7、T4または別の類似のファージ)に由来する。バクテリオファージCBCはまた、T4様、T7様、ViI、ViI-like、AR1、A511、A118、A006、A500、PSA、P35、P40、B025、B054、A97、phiSM101、phi3626、CBA120、SPN1S、10、epsilon15、P22、LipZ5、P40、vB_LmoM_AG20、P70、A511、P4W、K、Twort、またはSA97に由来し得る。いくつかの実施形態において、上記CBCは、エンドリシンのCBDまたは機能的結合ドメインとして作用するその一部であり得る。機能的結合ドメインは、結合機能/細菌特異性を担う上記CBD内の保存されたアミノ酸配列であり得る。他の実施形態において、上記CBCは、機能的結合ドメインまたはバクテリオファージゲノムによってコードされる別のタイプのタンパク質(o-スパニン、テールスパイク、および尾部繊維が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。いくつかの実施形態において、上記o-スパニンはRZ1であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、DNAへと逆翻訳され得、インジケーター融合タンパク質へとクローニングするために合成され得る。小さなMDPは、より多くの分子が1個の細胞に結合し、シグナルを生成することを可能にする。これを考慮すると、より小さなインジケーター遺伝子生成物が好ましいこともある(しかし、実に大きなMDPが抗体より遙かに小さい可能性があることに注意のこと)。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、約20kDa(コードするのにおよそ500~600bp)に過ぎない一方で、FLucは、約62kDaであり、コードするのにおよそ1,700bpを要する。比較のために、T7のゲノムは、およそ40kbpである一方で、T4ゲノムは、約170kbpである。いくつかの実施形態において、上記CBCは、NANOLUC(登録商標)融合プラスミドへとクローニングされる。いくつかの実施形態において、上記融合プラスミドは、停止コドンの変異および部位指向性変異誘発を介する制限エンドヌクレアーゼ部位の挿入によって作製される。いくつかの実施形態において、上記CBC遺伝子フラグメントは、上記融合プラスミドの制限酵素部位へとクローニングされ、上記MDP構築物を生じる。上記MDP構築物は、E.coliへと形質転換され、LB培地中で培養される。上記MDPの発現は、適切な誘導因子の添加によって誘導され得る。一実施形態において、イソプロピル1 β-D-1チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加を使用して、上記MDPの発現を誘導し得る。いくつかの実施形態において、上記培養物は、上記MDPの発現を誘導するために振盪され得る。
【0145】
さらに、上記インジケーターは、高いシグナル対バックグラウンド比を生じるべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO-GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0146】
いくつかのMDP実施形態において、インジケーター部分は、上記CBCに融合される。インジケーターは、種々の生体分子のうちのいずれかであり得る。上記インジケーターは、検出可能な生成物、または検出可能な生成物を生じる酵素または検出可能な生成物を生じる酵素の補因子であり得る。いくつかの実施形態において、MDPの上記インジケーター部分はレポーター(例えば、検出可能な酵素)である。上記インジケーター遺伝子生成物は、光を放射し得るおよび/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素が市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、またはルシフェラーゼ(Luc))。例えば、一実施形態において、上記インジケーターは、ルシフェラーゼ酵素である。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、上記ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、または工学技術で作製されたルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼは、Oplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、NANOLUC(登録商標)などの遺伝的に改変されたルシフェラーゼである。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼまたは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケーター部分であり得る。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として役立ち得る。
【0147】
代替のMDP実施形態は、結合体化インジケーター部分を含む。例えば、FITCは、機能的MDPを作製するためにCBCに結合体化され得る。いくつかの実施形態において、MDPは、さらなる部分またはセグメント(例えば、結合したMDPを結合していないMDPから分離することを促進する固体支持体への結合のためのセグメント)を含み得る。インジケーター部分との結合体化は、上記CBDの、微生物に対する親和性に影響を及ぼさない。
【0148】
本発明の組成物は、1個またはこれより多くの野生型感染性因子(例えば、バクテリオファージ)および1個またはこれより多くのインジケーター部分に由来する1個またはこれより多くのMDPを含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケーターシグナルを生成し得る種々のMDPのカクテルを含み得る。すなわち、微生物を検出するための組成物は、全て同じまたは異なるMDPを含み得る。
【0149】
上記で記載されるように適用されるMDPは、細胞結合構成要素(CBC)の特異性に基づいて微生物の特異的検出を促進するCBCを含む。特異性のためにCBCを利用し得る別のアプローチにおいて、特定の細菌を認識および結合する組換えバクテリオファージを使用する以前に記載されたアッセイが、使用され得る。上記組換えバクテリオファージアッセイは、本明細書でさらに記載されるとおりの装置において行われ得る。
【0150】
組換えバクテリオファージ
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明の装置、方法、システムおよびキットは、目的の微生物の検出における使用のための組換えバクテリオファージを含む。上記組換えバクテリオファージは、上記で開示される装置の第1の区画の中に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明は、上記バクテリオファージのゲノムに組み込まれたインジケーター遺伝子を有する組換えバクテリオファージを含む組成物を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの天然のプロモーターでないプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの天然のプロモーターに作動可能に連結される。上記インジケーターまたはレポーター遺伝子を含む上記組換えバクテリオファージはまた、本開示においてインジケーターバクテリオファージとして言及される。
【0151】
組換えバクテリオファージは、レポーターまたはインジケーター遺伝子を含み得る。上記バクテリオファージのある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得る。後期遺伝子は構造タンパク質をコードするので、他のファージ遺伝子より高レベルで一般的に発現される。後期遺伝子領域はクラスIII遺伝子領域であってよく、主要カプシドタンパク質のための遺伝子を含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態は、上記主要カプシドタンパク質遺伝子の下流に相同組換えのための配列を設計する(および、必要に応じて調製する)ことを含む。他の実施形態は、主要カプシドタンパク質遺伝子の上流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。いくつかの実施形態において、上記配列は、非翻訳領域の後にコドン最適化レポーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含み得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは、A511、P100、ListeriaファージLMTA-94、LMA4、LMA8、T7、T4または別の類似のファージに由来する。インジケーターバクテリオファージはまた、T7、T7様、T4、T4様、P100virus、Cronobacter特異的、Salmonella特異的、Listeria特異的もしくはStaphylococcus特異的なバクテリオファージ、ViI、またはViI様(またはVi1ウイルス様(GenBank/NCBIによれば)バクテリオファージと少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99% 相同性を有するゲノムを有するP100virus、T4様、T7様、ViI、ViI様、Cronobacter特異的、Salmonella特異的、Listeria特異的もしくはStaphylococcus特異的なバクテリオファージ、または別のバクテリオファージに由来し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、特定の病原性微生物に高度に特異的なバクテリオファージに由来する。遺伝的改変は、野生型遺伝子の欠失を回避し得、従って、上記改変されたファージは、多くの市販のファージより野生型バクテリオファージにより類似のままであり得る。環境に由来するバクテリオファージは、上記環境の中で見出される細菌に対して特異的であり得、よって、市販されるファージとは遺伝的に異なる。
【0154】
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能など、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。それゆえ、遺伝子を欠失させてインジケーターを挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500~600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。比較のために、T7のゲノムは約40kbpである一方で、T4ゲノムは、約170kbpであり、Cronobacter、SalmonellaまたはStaphylococcus特異的なバクテリオファージのゲノムは約157kbpである。さらに、レポーター遺伝子は細菌によって内因的に発現されるべきでなく(すなわち、細菌ゲノムの一部でない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO-GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0155】
いくつかのインジケーターファージ実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され得、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームに終止コドンを含めることは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。このストラテジーはまた、上記ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる融合タンパク質が低レベルで作られるという可能性を排除し得る。
【0156】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子もしくは検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、一実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは工学技術で作製された(engineered)ルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子はOplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)などの遺伝的に改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。
【0157】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記後期(クラスIII)遺伝子領域において非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝的に改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子もしくはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
【0158】
いくつかの実施形態において、上記後期プロモーターは、P100virus、T4様、T7様もしくはViI様プロモーター、または選択された野生型ファージにおいて見いだされる、すなわち、遺伝的改変なしの、プロモーターに類似の別のファージプロモーターである。上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり得、上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、ViI、ViI様、Cronobacter、Salmonella、Staphylococcus、ListeriaもしくはS.aureus特異的バクテリオファージ、またはT7、T4、T4様、ViI、ViI様もしくはCronobacter、Salmonella、Staphylococcus、ListeriaもしくはS.aureus特異的バクテリオファージと少なくとも70、75、80、85、90もしくは95%の相同性を有するゲノムを有する別の天然のバクテリオファージに由来し得る。
【0159】
バクテリオファージに対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、もしくは置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。非天然のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記野生型のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明は、目的の細菌を検出するための方法を包含し、上記方法は、試験サンプルをこのような組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程を包含する。
【0160】
いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおけるインジケーター遺伝子の発現は、遊離の可溶性タンパク質生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。カプシドタンパク質への検出部分の融合物(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性インジケーターまたはレポーター(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)を発現する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターまたはレポーターは、理想的には、上記バクテリオファージ構造を含まない。すなわち、上記インジケーターまたはレポーターは、上記ファージ構造に結合されない。よって、上記インジケーターまたはレポーターの遺伝子は、上記組換えファージゲノムにおける他の遺伝子と融合されない。これは、上記アッセイの感度を大いに増大させ得(単一の細菌まで)、上記アッセイを単純化し得、上記アッセイが、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物で必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては、1時間未満で完了することを可能にする。さらに、融合タンパク質は、例えば、酵素活性部位のコンホメーションもしくは基質へのアクセスを変化させ得るタンパク質折り畳みの制約に起因して、可溶性タンパク質より活性が低い場合がある。
【0161】
さらに、定義による融合タンパク質は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記検出部分(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド-ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、可溶性の非融合インジケーター遺伝子生成物が好ましいものであり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素などのレポーターをコードする。上記インジケーター遺伝子産物は、光を生じ得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、可溶性検出部分の使用は、汚染している親ファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から除去する必要性を排除する。融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着される検出部分を有し、上記検出部分も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)検出部分の検出に依拠するので、融合構築物の使用は、古い(親)部分を新たに作り出された(娘バクテリオファージ)部分から分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰な親ファージを不活性化する工程、および/または上記親バクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、除去時にすべてのこれら試みを使用したとしても、親ファージは、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高濃度の親ファージが使用される場合に残存することができ、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
【0164】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性検出部分を用いると、最終溶解物からの上記親ファージの精製は不要である。なぜなら上記親ファージは、付着されるいかなる検出部分をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意の検出部分は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならない。この利益を利用するために、親ファージの生成および調製は、細菌培養物中での親バクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離検出部分からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度(isopycnic)密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロ
マトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 - Millipore, Inc.)。塩化セシウム等密度超遠心分離は、親ファージ粒子を、上記細菌宿主中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するために、本発明の組換えファージの調製の一部として用いられ得る。このようにして、本発明の親組換えバクテリオファージは、上記細菌における生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的ない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
【0165】
改変されたバクテリオファージのいくつかの実施形態において、上記後期プロモーター(クラスIIIプロモーター、例えば、Listeria特異的ファージ、T7、T4、もしくはViI由来のもの)は、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じバクテリオファージのRNAポリメラーゼに対して高いアフィニティーを有する。これらのタンパク質は、各バクテリオファージ粒子が、これら分子の数十個もしくは数百個ものコピーを含むので、上記ファージによって作られる最も豊富なタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、上記ルシェラーゼ検出部分の発現の高レベルを確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型バクテリオファージ(例えば、T4、T7もしくはViIベースのシステムを有するListeria特異的ファージ、T4、T7もしくはViI後期プロモーター)に由来するか、これに特異的か、またはこの下で活性な後期ウイルスプロモーターの使用は、上記検出部分の最適な発現をさらにさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しないゲノム内での配置を用いて、可溶性(遊離)インジケーター部分をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
【0166】
本発明の組成物は、1種または複数種の野生型または遺伝的に改変されたバクテリオファージ(例えば、バクテリオファージ)および1種または複数種のインジケーター遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードおよび発現し得る、異なるインジケーターファージのカクテルを含み得る。いくつかの実施形態において、バクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含む。
【0167】
装置
本発明の実施形態は、自給式装置を使用して目的の微生物を検出する方法に関する。上記装置は、上記目的の微生物を含むサンプルを集めるために使用され得る固体支持体を含む。いくつかの実施形態において、本発明による装置は、別個の区画(連続的にまたは分枝状の構成(例えば、チューブの「耳」)いずれかにおいて配置される)を有するチューブを含む。上記装置は、試薬の混合および方法の工程のタイミングの変動のために構成され得る多くの区画を含み得る。いくつかの実施形態において、上記チューブの最も上または上側の区画は、組換えバクテリオファージを含み、基質区画は、上記バクテリオファージ区画の下にある。いくつかの実施形態において、上記チューブは、増殖培地を含む。
【0168】
最も単純な実施形態において、第1の区画は、組換えバクテリオファージを含み、第2の区画は、基質または発色試薬を含む。いくつかのこのような実施形態において、両方の試薬が、サンプル(上記固体支持体上で捕捉される)と同時に混合される。他の実施形態において、サンプルは、感染を開始するために、上記第1の区画に最初に添加される。一定期間の後、上記第2の区画への導管は、上記感染サンプルへと上記基質または発色試薬を添加し、混合することを可能にするために開かれる。
【0169】
代替の実施形態において、上記第1の区画は、微生物検出プローブ(MDP)を含み、第2の区画は、基質または発色試薬を含む。いくつかのこのような実施形態において、両方の試薬は、サンプル(上記固体支持体上に捕捉される)と同時に混合される。他の実施形態において、サンプルは、上記第1の区画に最初に添加される。一定期間の後に、上記第2の区画への導管は、上記感染サンプルへと上記基質または発色試薬を添加し、混合することを可能にするために開かれる。
【0170】
いくつかの実施形態において、シールは、隣接する区画を分離し、上記ユーザーは、上記シールを破損し、基質およびファージの両方が、上記スワブに同時に遭遇する。ルシフェラーゼが生成され、上記基質と反応して、検出可能なシグナルを生じる。
【0171】
いくつかの実施形態において、上記基質区画は、培地区画と組換えバクテリオファージ区画との間に配置され得る。ユーザーが上記シールを破損して、上記固体支持体に捕捉されたサンプルに試薬を適用する場合、両方の試薬が、同時に適用される。
【0172】
代替の実施形態において、上記基質区画は、培地区画とMDP区画との間に配置される。ユーザーが、上記シールを破損して、上記固体支持体上に捕捉されたサンプルに試薬を適用する場合、両方の試薬は、同時に適用される。
【0173】
いくつかの実施形態において、固体支持体は、チューブであって、上記基質または発色剤が上記チューブの底にあるものに添加される;上記固体支持体は、上記酵素と基質または他のレポーターおよび対になった試薬との間の反応を開始するために、上記底へと押し込まれる。上記固体支持体は、取り扱いの容易さのために、シャフトへと付着されていてもよい。
【0174】
以下の図は、本発明の実施形態の例証的な例を提供する。
【0175】
一実施形態において、本開示は、自給式微生物検出装置システムを提供する。
図12は、装置100という一実施形態を示す。上記装置は、固体支持体16、および3つの区画を含む容器を含む。上記区画の各々は、スナップアクションシールによって分離される。上記第1の区画10はファージを含み、上記第2の区画12は基質を含み、上記第3の区画14は培地を含む。この装置は、上記ファージおよび基質が、上記サンプルとともに同時にインキュベートされることを可能にする。
【0176】
図13は、装置200という第2の実施形態を示す。上記装置は、固体支持体26および3つの区画を含む容器を含む。上記区画の各々は、スナップアクションシールによって分離される。上記第1の区画20はファージを含み、上記第2の区画22は培地を含み、上記第3の区画24は基質を含む。実施形態において、
図13に示される装置を使用して、上記サンプルは、上記基質とともにインキュベートする前に、上記ファージとともに最初にインキュベートされる。
図13に示される装置を使用するさらなる実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを収集する前に、培地に浸漬される。
【0177】
図14は、装置300という第3の実施形態を示す。上記装置は、固体支持体36および3つの区画を含む容器を含む。上記区画の各々は、スナップアクションシールによって分離される。上記第1の区画30は培地を含み、上記第2の区画32はファージを含み、上記第3の区画34は基質を含む。実施形態において、
図14に示される装置を使用して、上記サンプルは、上記基質とともにインキュベートする前に、上記ファージとともに最初にインキュベートされる。
図14に示される装置を使用するさらなる実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを収集する前に、乾燥されている。
【0178】
図15は、装置400という第4の実施形態を示す。上記装置は、固体支持体46および3つの区画を含む容器を含む。上記区画の各々は、スナップアクションシールによって分離される。上記第1の区画40は培地を含み、上記第2の区画42はファージを含み、上記第3の区画46は基質を含む。上記装置は、試薬を段階的に混合するためのストップ-ロック機構を有する。実施形態において、
図15に示される装置を使用して、上記サンプルは、上記基質とともにインキュベートする前に、上記ファージとともに最初にインキュベートされる。
図15に示される装置を使用するさらなる実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを収集する前に、培地に浸漬される。
【0179】
図16は、装置500という第5の実施形態を示す。上記装置は、固体支持体56および3つの区画を含む容器を含む。上記区画の各々は、スナップアクションシールによって分離される。上記第1の区画50は培地を含み、上記第2の区画52はファージを含み、上記第3の区画54は基質を含む。上記装置は、試薬を段階的に混合するためのストップ-ロック機構を有する。実施形態において、
図16に示される装置を使用して、上記サンプルは、上記基質とともにインキュベートする前に、上記ファージとともに最初にインキュベートされる。
図16に示される装置を使用するさらなる実施形態において、上記固体支持体は、上記サンプルを収集する前に、乾燥されている。
【0180】
図17は、微生物を検出するための方法を記載し、上記方法は、(i)サンプルを一晩富化する工程、(ii)自給式装置からの固体支持体を使用して、上記一晩富化されているサンプルを集める工程、(iii)上記サンプルを上記自給式装置の区画内に含まれるファージに感染させる工程、および(iv)上記感染工程によって生成されるシグナルを読み取る/検出することによって、微生物の存在を検出する工程、を包含する。
【0181】
いくつかの実施形態において、上記中心チューブからの突出部または枝に含まれる区画は、例えば、「耳」の形態において2より多くの方向からの試薬の混合を可能にする。例えば、2つのスクイーズバルブ(squeeze bulb)を使用して、培地を添加し得、次いで、ファージを、主要な区画に逐次的にまたは同時に添加し得るか、または他の試薬を添加し得る。中心区画に関する他の区画の種々の配置は、より大きな隣接する区画への異なる試薬の添加および混合を可能にする。
【0182】
細胞結合構成要素で被覆された固体支持体
上記で考察されるように、本開示の装置は、固体支持体を含み得る。種々の固体支持体が使用され得る。ある種の実施形態において、上記固体支持体は、スワブ、フィルター、ビーズ、ラテラルフローストリップ、フィルターストリップ、フィルターディスク、フィルターペーパー、または細胞を培養するためにデザインされた薄いフィルム(例えば、3MによるPetriFilm)を含み得る。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、プラスチック材料を含む。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)およびポリビニルクロリド(PVC)を含む。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、検出される微生物に対して高親和性を有する細胞結合構成要素で被覆される。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、ポリスチレンビーズまたは類似のまたは他の材料(例えば、ポリ乳酸)で作製されたビーズであり、その結果、上記ビーズは、タンパク質でコーティングされ得るが、上記アッセイにおいて他の構成要素と反応しない。
【0183】
いくつかの実施形態において、上記ビーズは、特定の微生物に結合する複数の細胞結合構成要素(CBC)は、上記ビーズに付着され得るように十分大きい。上記ビーズはまた、これが最初に上記装置のチューブの中に嵌まるように、適切なサイズのものであるべきである。例えば、上記ビーズは、直径が、0.1~100mm、1~10mm、または4~8mm、または6~7mmのサイズ範囲に及び得る。上記固体支持体あたりのCBCの量は、変動し得る。それは概して上記ビーズのサイズ、および上記サンプル中の上記最近の濃度にも依存する。いくつかの実施形態において、各ビーズ上のCBCの量は、少なくとも5×107、または少なくとも5 ×108、または少なくとも5×1010、または少なくとも5×1013、または少なくとも5×1014、または少なくとも5×1016個の分子であり得る。
【0184】
上記装置の固体支持体上に被覆されたCBCは、高親和性で目的の微生物に結合し得、従って、上記固体支持体が捕捉し得る微生物の量を富化し得る。例えば、ある種の実施形態において、上記CBCは、S.aureus、Listeria、Salmonella、またはE.coliに高度に特異的である。一実施形態において、上記CBCは、100種を超える細菌の他のタイプの存在下で、S.aureus、Listeria、Salmonella、またはE.coliを区別し得る。一実施形態において、上記CBCは、100種を超える細菌の他のタイプの存在下で、細菌の種内の特定の血清型(例えば、E.coli O157:H7)を区別し得る。ある種の実施形態において、上記CBCで被覆した固体支持体を含む装置を使用する方法は、上記サンプル中の特定のタイプの1個の細菌を検出するために使用され得る。ある種の実施形態において、上記CBCは、上記サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特定の細菌を検出する。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の≦10個の細胞(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個の微生物)、または≦20個、または≦30個、または≦40個、または≦50個、または≦60個、または≦70個、または≦80個、または≦90個、または≦100個、または≦200個、または≦500個、または≦1000個の細胞を検出し得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、タンパク質であり、本開示において微生物検出タンパク質ともいわれる。いくつかの実施形態において、CBCは、グラム陽性細菌の細胞壁に結合するタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記CBCは、特異的微生物(グラム陰性細菌を含む)の外側表面に付着させるために使用されるファージテールタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記ファージテールタンパク質は、ファージラムダテールタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記CBCは、上記微生物の検出に特異的なバクテリオファージから単離された遺伝子フラグメントを発現させることによって生成されるタンパク質である。
【0186】
いくつかの実施形態において、特定のタイプの微生物を捕捉するために使用されるCBCは、特定のバクテリオファージ、例えば、T7、T4または別の類似のファージに由来し得る。いくつかの実施形態において、上記CBCは、上記細菌のファージによってコードされ、発現されるリシン(lysin)であり得る。バクテリオファージCBCはまた、T4様、T7様、ViI、ViI様、AR1、A511、A118、A006、A500、PSA、P35、P40、B025、B054、A97、phiSM101、phi3626、CBA120、SPN1S、10、epsilon15、P22、LipZ5、P40、vB_LmoM_AG20、P70、A511、P4W、K、Twort、またはSA97に由来し得る。
【0187】
場合によっては、上記CBCは、レセプター結合タンパク質であって、これを通じてファージが特定の細菌を結合し得るものであり得る。RBPと細菌の細胞表面との相互作用は、RBP特異性を決定する。いくつかのファージにおいて、RBPは、テールシャフト、尾部繊維またはテールスパイクに位置する。ファージ尾部繊維タンパク質は、細胞表面への吸着およびポリサッカリド分解の両方において役割を果たす。テールスパイクタンパク質は、多くのバクテリオファージのテールの構成要素である。テールスパイクタンパク質は、細菌宿主の細胞表面に結合し、細菌宿主認識を媒介する。従って、いくつかの実施形態において、上記CBCは、上記微生物に特異的なバクテリオファージの尾部繊維、テールスパイクであり得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、エンドリシン、ホリン、スパニン、または高親和性で上記微生物に結合し得るその機能的結合ドメインのうちの1種またはこれより多くであり得る。これらの3種のタンパク質は、バクテリオファージによってコードされ、一緒に、ファージ溶解サイクルの間の子孫放出を担う。いくつかの実施形態において、上記CBCは、エンドリシンの細胞壁結合ドメイン(「CBD」)を含み、これは、上記バクテリオファージが高親和性で上記細菌を認識することを可能にする。いくつかの実施形態において、上記CBCは、上記微生物を結合することを担う保存されたアミノ酸配列を含む。代表的には、上記CBDは、C末端に位置するが、N末端またはいくつかの場合には中央のドメインとしても見出され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、エンドリシン、ホリン、スパニン、o-スパニン(例えば、RZ1)、テールスパイク、および尾部繊維、またはその機能的結合ドメインからなる群より選択されるタンパク質と実質的アミノ酸配列同一性を共有するタンパク質であり得る。機能的結合ドメインは、結合機能/細菌特異性を担うポリペプチド内の保存されたアミノ酸配列であり得る。例えば、上記CBCは、エンドリシン(配列番号1;またはYP_001468459)もしくはエンドリシンのCBD(配列番号2)、または上記目的の微生物に対して高親和性を有することは公知のタンパク質のうちのいずれかと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。上記エンドリシンのCBDを発現する例示的方法は、実施例6に示される。
【0190】
いくつかの実施形態において、上記CBCは、DNAへと逆転写され得、発現ベクターへとクローニングするために合成され得る。上記CBC発現ベクターは、E.coliへと形質転換され得、LB培地中で培養され得る。上記CBCの発現は、適切な誘導因子の添加によって誘導され得る。一実施形態において、イソプロピル1 β-D-1チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加が、上記CBCの発煙を誘導するために使用され得る。
【0191】
固体支持体を被覆するための種々の方法は、当該分野で周知である。一実施形態において、上記固体支持体は、ストレプトアビジンおよびビオチン化CBCを含み得、上記固体支持体の被覆は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を含む。場合によっては、上記CBCは、上記固体支持体の表面に付着されているアビジンへの結合を促進するために、アミンへと結合体化され得る。
【0192】
微生物を検出するための装置を使用する方法
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、上記微生物を検出する方法を包含し得、上記方法は、上記サンプルと固体支持体とを接触させ、その結果、上記微生物が上記固体支持体上に捕捉される工程、上記第1の区画からの組換えバクテリオファージと上記固体支持体上に捕捉された微生物とを、例えば、上記第1の区画のスナップアクションシールを破損することによって、接触させる工程を包含する。上記感染の間および/または後に、上記バクテリオファージは、上記インジケーター遺伝子を発現して、インジケーターを生成し、このインジケーターは、種々の検出デバイスによって検出され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターの検出は、上記インジケーターと反応して、検出可能なシグナルを生成する基質の添加を要し得る。上記シグナルの存在は、上記サンプル中の上記微生物の存在を示す。
【0193】
代替の実施形態において、本発明は、上記微生物を検出する方法を包含し得、上記方法は、上記サンプルと固体支持体とを接触させ、その結果、上記微生物が上記固体支持体上に捕捉される工程、上記第1の区画からのMDPと、上記固体支持体上に捕捉された微生物とを、例えば、上記第1の区画のスナップアクションシールを破損することによって、接触させる工程を包含する。上記MDPのインジケーター部分は、種々の検出デバイスによって検出され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターの検出は、上記インジケーターと反応して、検出可能なシグナルを生成する基質の添加を要し得る。上記シグナルの存在は、上記サンプル中の上記微生物の存在を示す。
【0194】
サンプリング
いくつかの実施形態では、サンプルは、調製も、濃縮も、希釈もなしに、本発明の検出法において直接使用され得る。例えば、液体サンプル(ミルクおよびジュースが挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。他の実施形態において、サンプルは、緩衝化溶液または細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない溶液中で希釈または懸濁され得る。固体または半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、上記宿主細菌細胞へのCBC付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。いくつかの実施形態において、好ましいpH範囲は、細菌細胞へのバクテリオファージ付着に適したものであり得る。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na+、Mg2+、およびK+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。
【0195】
好ましくは検出アッセイ全体を通じて、上記サンプルは、上記サンプル中に存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ活性を促進する温度で維持することは、好ましい。このような温度は、少なくとも約25℃および約45℃以下である。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、約37℃で維持される。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、CBC結合または付着の間に、穏やかな混合または振盪に供される。
【0196】
アッセイは、種々の適切な非接種コントロールサンプルを含み得る。例えば、細菌のない非接種コントロールサンプル、例えば、食品サンプルは、バックグラウンドシグナルレベルのコントロールとしてアッセイされ得る。
【0197】
サンプリングは、種々の方法を使用して行われ得る。いくつかの実施形態において、上記サンプル、例えば、食品サンプルは、最初に液化され、上記固体支持体、例えば、上記固体支持体またはビーズは、上記液体サンプルに浸漬される。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、サンプリングの前に、チューブ中の培養培地中に最初に浸漬される。いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、サンプリングの前に乾燥している。いくつかの実施形態において、上記液体サンプルは、ある期間にわたって、例えば、24時間未満、12時間未満最初に培養され(「培養富化」)、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間より短い。
【0198】
他の実施形態において、上記サンプルは、上記固体支持体上での上記微生物の捕捉後に富化され得る。いくつかの実施形態において、微生物を有する上記固体支持体は、上記微生物が数において拡大することを可能にするために。上記装置の第3の区画中の増殖培地中でインキュベートされる。この工程は、インキュベーション富化といわれる。このような実施形態において、上記富化期間は、上記サンプルタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間までまたはこれより長い可能性がある。
【0199】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、上記微生物は、サンプルからの上記微生物のいかなる単離も精製もなしに検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1個またはこれより多くの目的の微生物を含むサンプルは、上記固体支持体に直接適用され得、上記アッセイは、上記装置において行われる。
【0200】
感染
本明細書で開示される方法は、上記装置を作動させて、上記組換えバクテリオファージに上記目的の微生物と接触させる工程を包含する。上記微生物の接触の際に、上記バクテリオファージは複製し、上記インジケーター遺伝子またはレポーター遺伝子を発現させる。「組換えバクテリオファージ」という標題の節を参照のこと。感染時間、すなわち、上記サンプルが最初にバクテリオファージと接触される時点と、上記基質が上記混合物に添加される時点との間の期間は、バクテリオファージのタイプおよび上記サンプル中の微生物の濃度に依存して変動し得る。上記細菌が固体支持体上に捕捉される装置を使用すると、感染に必要とされる時間が有意に低減され得る。例えば、上記感染時間は、1時間またはこれ未満であり得る一方で、固体支持体が上記細菌を捕捉するために使用されない標準的なアッセイでは、上記感染は、代表的には、少なくとも4時間であり、ある種の実施形態において、本明細書で開示される方法の感染時間は、6.0時間未満、5.0時間未満、4.0時間未満、3.0時間未満、2.5時間未満、2.0時間未満、1.5時間未満、1.0時間未満、45分未満、または30分未満である。いくつかの実施形態において、上記感染時間は、約1時間、約2時間、または約3時間である。
【0201】
シグナルの発生
上記インジケーターは、上記インジケーター遺伝子の発現によって生成され、当業者に周知の方法を使用して検出され得る。例えば、1個またはこれより多くのシグナル生成構成要素は、検出可能なシグナルを生成するために上記インジケーターと反応させられ得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、生体発光化合物であり得る。上記インジケーターが酵素である場合、上記検出可能なシグナルの増幅は、上記酵素と1種もしくはこれより多くの基質またはさらなる酵素および基質とを反応させて、検出可能な反応生成物を生成することによって得られる。代替のシグナル生成システムにおいて、上記インジケーターは、上記検出可能なシグナルを生成するために上記インジケーターの酵素操作が要求されない蛍光化合物であり得る。例えば、フルオレセインおよびローダミン、ならびにこれらの誘導体およびアナログが挙げられる蛍光分子は、このようなシステムにおいてインジケーターとしての使用に適している。さらに別の代替の実施形態において、上記インジケーター部分は、補因子であり得、上記検出可能なシグナルの増幅は、上記補因子と上記酵素および1種もしくはこれより多くの基質またはさらなる酵素および基質とを反応させて、検出可能な反応生成物を生成することによって得られる。いくつかの実施形態において、上記検出可能なシグナルは、発色性である。特定のインジケーターの選択は、本発明によって重要ではなく、上記インジケーターは、それ自体が検出可能なシグナルを生成し得るか、または機器が検出可能であり得るか、または1もしくはこれより多くのさらなるシグナル生成構成要素(例えば、酵素/基質シグナル生成システム)とともに検出可能であり得るかのいずれかであることが注記される。
【0202】
いくつかの実施形態において、上記検出する工程は、上記インジケーター酵素が作用する基質の添加を必要とする。基質は、種々の方法で添加され得る。いくつかの実施形態において、上記基質は、上記装置の第2の区画に含まれ、上記スナップアクションシールを破損すると、上記ファージ(上記装置における第1の区画の中にある)および基質が、上記微生物(上記固体支持体上に捕捉される)と同時に接触することを引き起こす。
図12を参照のこと。いくつかの実施形態において、上記スナップアクションシールは、逐次的に破損され、上記基質と接触させる前に、上記微生物を上記バクテリオファージと接触させる。
図13Aおよび13Bを参照のこと。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記ストップ-ロックを、段階的な混合を可能にするように操作して、その結果、上記微生物が、上記基質と接触させる前に、バクテリオファージと接触させる工程を包含する。
【0203】
いくつかの実施形態において、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分またはこれより長く継続し得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいものであり得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および反応が完了するまで3分間隔、または5分間隔、または10分間隔、または15分間隔で行われ得る。
【0204】
シグナルの検出
上記インジケーターによって生成されるシグナルの検出は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記基質が上記試験サンプルと混合される装置の区画は、透明であり、その結果、上記感染およびその後の基質とのインキュベーションから生じる任意のシグナルは、目に見える。この場合に、上記シグナルは、上記区画の壁を通して検出され得る。いくつかの実施形態において、上記反応したサンプルを含む装置は、上記生じるシグナルを検出するための機器へと挿入される。他の実施形態において、検出機器は、上記反応したサンプルを含む装置をスキャンするために使用される。
【0205】
いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、上記インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出するために使用され得る(例えば、Promega(Madison, WI)のGloMax(登録商標) 20/20およびGloMax(登録商標))。いくつかの実施形態において、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラが、色の変化および他の光の放射を検出するために使用され得る。検出にとって絶対RLUが重要であるが、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比も高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。上記バックグラウンドシグナルは、上記で記載されるものと同じ手順を使用して、微生物を含まない非接種コントロールサンプルを測定することによって得られ得る。いくつかの実施形態において、上記レポーターまたはインジケーター遺伝子からのシグナルの検出は、例えば、フォトダイオードまたはPMT(光電子倍増管)技術を使用する機器の使用を含み得る。いくつかの実施形態において、シグナルの検出のために携帯型ルミノメーターが使用され得る。適切なPMT携帯型ルミノメーターは、3M(Maplewood, MN)、BioControl(Seattle, WA)、およびCharm Science(Lawrence, MA)から入手可能である。適切なフォトダイオード携帯型ルミノメーターは、Hygiena(Camarillo, CA)およびNeogen(Lansing, MI)から入手可能である。これらの携帯型ルミノメーターは、代表的には、同じサンプルに関して、旧来のルミノメーター(GloMaxまたはGloMax 20/20)と比較して、遙かに低い読み取りを生じる。実施例に示されるように、多数の実験から、上記反応によって生成されるシグナルが、これらの携帯型ルミノメーターによって検出されるために十分であったことが示される。上記アッセイを、L.monocytogenesおよびSalmonellaを含む異なるタイプの微生物で複数回反復したところ、類似の結果が毎回観察された。これは、上記装置を使用する検出方法が、十分に感度が高くかつ頑強であることを示す。これらの携帯型デバイスを使用して、上記微生物を検出できることはまた、旧来の非携帯型検出デバイスを使用する検出方法ではしばしば欠いている、便利さおよび融通性を提供する。
【0206】
本発明のシステムおよびキット
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含むシステム(例えば、自動化システムもしくはキット)を含む。いくつかの実施形態において、本発明によるシステムまたはキットには装置が含まれる。本明細書に記載される方法は、このようなシステムまたはキットも利用し得る。本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、上記方法を行うために必要とされる試薬および材料の最小限の量を考慮すると、自動化もしくはキットに特に適している。ある種の実施形態において、上記キットの構成要素の各々は、第1の部位から第2の部位へと送達可能である自己充足式ユニットを含み得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムもしくはキットを含む。上記システムまたはキットは、ある種の実施形態において以下を含み得る:上記で記載されるとおりの装置であって、ここで上記固体支持体は、上記で記載されるとおりの細胞結合構成要素を含む装置、およびシグナル検出構成要素であって、ここで上記シグナル検出構成要素は、上記サンプルに上記組換えバクテリオファージを感染させることから生成される上記インジケーター遺伝子生成物を検出し得るシグナル検出構成要素。いくつかの実施形態において、上記シグナル検出構成要素は、携帯型デバイスである。いくつかの実施形態において、上記シグナル検出構成要素は、携帯型ルミノメーターである。
【0208】
従って、ある種の実施形態において、本発明は、以下を含むサンプル中の目的の微生物の迅速な検出のためのシステムまたはキットを含み得る: バクテリオファージゲノムに挿入される遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画を含む装置であって、ここで上記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含む装置。上記システムまたはキットは、基質を含む第2の区画および/または培地を含む第3の区画をさらに含む。これらの区画のうちの1つまたはこれより多くは、シールされ、上記装置の他の部分からスナップアクションシールによって分離され、上記スナップアクションシールを破損させると、上記区画からの内容物が上記区画から出て、上記サンプルと混合される。
【0209】
いくつかの実施形態において、上記システムは、上記目的の微生物を、上記サンプル中の他の構成要素から単離するための構成要素を含み得る。
【0210】
いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、同じ構成要素は、複数工程(multiple steps)のために使用され得る。いくつかのシステムおよび/またはキットにおい
て、上記工程は、ユーザーによってコンピューター入力を介して自動化もしくは制御され、そして/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う。コンピューター化システムにおいて、上記システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、もしくはコンピューターを介してユーザーによって指示されてもよい(もしくはこれらのいくつかの組み合わせ)。
【0211】
本発明のこれらのシステムおよびキットは、種々の構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」とは、広く定義され、記載される方法を実施するための任意の適した装置もしくは適した装置の集まりを含む。上記構成要素は、いかなる特定の方法においても互いに関して一体的に接続される必要も据え付けられる必要もない。本発明は、互いに関して上記構成要素の任意の適切な配置を含む。例えば、上記構成要素は、同じ空間の中に存在する必要はない。しかしいくつかの実施形態において、上記構成要素は、一体ユニットにおいて互いに接続される。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、複数機能を実行し得る。
【0212】
コンピューターシステムおよびコンピューター可読媒体
ある種の実施形態において、本発明は、システムを含み得る。上記システムは、本発明の組成物のうちの少なくともいくつかを含み得る。また、上記システムは、上記方法を行うために上記構成要素のうちの少なくともいくつかを含み得る。ある種の実施形態において、上記システムは、キットとして編成される(formulated)。従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムを包含し得る。上記システムは、本発明の組成物のうちの少なくともいくつかを含み得る。また、上記システムは、上記方法を行うための構成要素のうちの少なくともいくつかを含み得る。ある種の実施形態において、上記システムは、キットとして編成される(formulated)。従って、ある種の実施形態において、本発明は、上記に記載されるとおりの装置を含む、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムを包含し得る。例えば、上記装置は、バクテリオファージゲノムに挿入される遺伝子構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、ここで上記構築物は、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含み;ここで上記固体支持体は細胞結合構成要素を含む第1の区画を含み得る。いくつかの実施形態において、上記システムはまた、携帯型検出デバイスを含む。
【0213】
上記システムは、現在の技術もしくはその構成要素のうちのいずれかにおいて記載されるように、コンピューターシステムの形態で具現化され得る。コンピューターシステムの代表例としては、汎用コンピューター、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実装し得る他のデバイスもしくはデバイスの配置が挙げられる。
【0214】
コンピューターシステムは、コンピューター、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/もしくはインターネットを含み得る。上記コンピューターは、マイクロプロセッサをさらに含み得る。上記マイクロプロセッサは、通信バスへと接続され得る。上記コンピューターはまた、メモリを含み得る。上記メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含み得る。上記コンピューターシステムは、記憶デバイスをさらに含み得る。上記記憶デバイスは、ハードディスクドライブもしくはリムーバル記憶デバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)であり得る。上記記憶デバイスはまた、コンピュータープログラムもしくは他の指示を上記コンピューターシステムへとロードするための他の類似の手段であり得る。上記コンピューターシステムはまた、通信ユニットを含み得る。上記通信ユニットは、I/Oインターフェイスを通じて、上記コンピューターが他のデータベースおよびインターネットに接続することを可能にする。上記通信ユニットは、他のデータベースへの転送、ならびに他のデータベースからのデータの受領を可能にする。上記通信ユニットは、モデム、Ethernet(登録商標)カード、もしくは上記コンピューターシステムをデータベースおよびネットワーク(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含み得る。上記コンピューターシステムは、従って、I/Oインターフェイスを介して上記システムへとアクセス可能な入力デバイスを通じてユーザーからの入力を容易にし得る。
【0215】
コンピューティングデバイスは、代表的には、そのコンピューティングデバイスの一般管理およびオペレーションのための実行可能なプログラム指示を提供するオペレーティングシステムを含み、代表的には、サーバーのプロセッサによって実行される場合に、上記コンピューティングデバイスにその意図された機能を行わせる指示を記憶するコンピューター可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなど)を含む。上記オペレーティングシステムに適した実装および上記コンピューティングデバイスの一般的な機能性は、公知であるかもしくは市販されており、当業者によって、特に本明細書の開示に鑑みて、容易に実装される。
【0216】
上記コンピューターシステムは、入力データを処理するために、1以上の記憶素子の中に記憶される一群の指示を実行する。上記記憶素子はまた、記載されるとおりのデータもしくは他の情報を保持し得る。上記記憶素子は、処理機械に存在する情報ソースもしくは物理的メモリ素子の形態にあり得る。
【0217】
環境は、上記で考察されるとおりの種々のデータストアならびに他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、種々の位置に存在し得る(例えば、上記コンピューターのうちの1以上にローカルな(および/もしくは中に存在する)、またはネットワーク全体にわたって記コンピューターのうちのいずれかもしくはすべてから遠隔にある記憶媒体において)。実施形態の特定の一群において、情報は、当業者が精通しているストレージエリアネットワーク(「SAN」)に存在し得る。同様に、上記コンピューター、サーバー、もしくは他のネットワークデバイスに帰した機能を行うための任意の必須のファイルは、適切な場合、ローカルにおよび/もしくは遠隔に保存され得る。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、各々のこのようなデバイスは、バスを介して電気的に連結され得るハードウェア要素を含み得、上記要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーン、もしくはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、もしくはスピーカー)を含む。このようなシステムはまた、1つ以上の記憶デバイス(例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)もしくはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。
【0218】
このようなデバイスはまた、コンピューター可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、赤外線通信デバイスなど)、および上記のとおりのワーキングメモリを含み得る。上記コンピューター可読記憶媒体リーダーは、遠隔、ローカル、固定、および/もしくはリムーバブル記憶デバイスを代表するコンピューター可読記憶媒体、ならびにコンピューター可読情報を一時的におよび/もしくはより恒久的に含む、記憶する、伝達する、および検索するための記憶媒体と接続され得るかまたはこれらを受容するように構成され得る。上記システムおよび種々のデバイスはまた、代表的には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム(例えば、クライアントアプリケーションもしくはウェブブラウザ)を含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス内に位置した多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、もしくは他の要素を含む。代替の実施形態が、上記のものからの多くのバリエーションを有し得ることは認識されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアがまた使用され得る、および/または特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(ポータブルソフトウェア(例えば、アプレット)を含む)、または両方において実装され得る。さらに、他のコンピューティングデバイス(例えば、ネットワーク入力/出力デバイス)への接続が使用され得る。
【0219】
コード、もしくはコードの一部を含むための非一時的な記憶媒体およびコンピューター可読媒体としては、当該分野で公知であるかもしくは使用される任意の適切な媒体(記憶媒体および通信媒体(例えば、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュール、もしくは他のデータなどの情報の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術において実装される、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む)が挙げられ得、これらとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶するために使用され得、上記システムデバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体が挙げられる。上記開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、上記種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を認識する。
【0220】
コンピューター可読媒体は、プロセッサにコンピューター可読指示を提供することができる電子式、光学式、磁気、もしくは他の記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリ(「CAM」)、DDR、フラッシュメモリ(例えば、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ、ASIC、構成されたプロセッサ、光学記憶媒体、磁気テープもしくは他の磁気記憶媒体、またはコンピュータープロセッサが指示を読み得る任意の他の媒体。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))の単一タイプを含み得る。他の実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュ)のうちの2またはそれより多くのタイプを含み得る。上記コンピューティングデバイスは、1またはそれより多くの外付けのコンピューター可読媒体(例えば、外付けハードディスクドライブ、または外付けDVDもしくはブルーレイドライブ)と通信状態にあり得る。
【0221】
上記で考察されるように、上記実施形態は、コンピューター実行可能なプログラム指示を実行および/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されているプロセッサを含む。上記指示は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems, Mountain View, Calif.)が挙げられる)で書かれたコードから、コンパイラおよび/もしくはインタープリターによって生成されたプロセッサ特異的指示を含み得る。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、上記デバイスは、2またはそれより多くのプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス(例えば、PLC)、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電子的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(electronically programmable read-only memory)(EPROMもしくはEEPROM)
、または他の類似のデバイスをさらに含み得る。
【0222】
上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスを含む。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、有線もしくは無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、上記ネットワークインターフェイスは、Ethernet(登録商標)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、802.16(Wi-Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワーク上での通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、ネットワーク(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、もしくは他の携帯通信ネットワーク(cellular communication network))上での通信を可能にし得る。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、別のデバイスでの、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394
FireWire、シリアル接続もしくはパラレル接続、または類似のインターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1以上のネットワーク上での通信のための2以上のネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスに加えてもしくはその代わりに、データストアを含み得る。
【0223】
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けもしくは内部デバイス(例えば、マウス、CD-ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディースピーカー、1以上のマイクロフォン、または任意の他の入力もしくは出力デバイス)を含み得るかまたはこれらと通信状態にあり得る。例えば、上記コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェイスデバイスおよびディスプレイと通信状態にあり得る。上記ディスプレイは、任意の適切な技術(LCD、LED、CRTなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用し得る。
【0224】
上記コンピューターシステムによる実行のための指示セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を行うための処理機械を指示する種々のコマンドを含み得る。上記指示セットは、ソフトウェアプログラムの形態にあり得る。さらには、上記ソフトウェアは、本技術におけるように、別個のプログラムの集まり、より大きなプログラムを有するプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態にあり得る。上記ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュラープログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、もしくは別の処理機械によって作成されたリクエストに応じ得る。
【0225】
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されてきた一方で、記載される実施形態に対する多くの改変、変化および変更は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく可能である。よって、本発明は、上記記載される実施形態に限定されないことは意図されるが、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義される全範囲を有する。
【実施例0226】
以下の実施例は、結果までの時間が短縮された、少数の細胞、さらに単一細菌の検出を記載し、本発明を例証するが、限定しない。
【0227】
実施例1. Staphylococcus aureusを検出するための組換えMDPの作製
CBCをコードする遺伝子フラグメントを、StaphylococcusファージTwort(GenBank: CAA 69021.1)から単離し、DNAへと逆翻訳し、NANOLUC(登録商標)融合プラスミドへのクローニングのために商業的に合成した。His-NANOLUC-pET-15b融合プラスミドを、停止コドンの変異および部位指向性変異誘発を介する制限エンドヌクレアーゼXhoI部位の挿入によって作製した。次いで、75アミノ酸をコードする上記CBC遺伝子フラグメントを、HIS-NANOLUC-pET15bプラスミドのBamHI-XhoI制限酵素部位へとクローニングしたところ、N末端NANOLUC(登録商標)-S.Aureus CBC構築物(MDP)が生じた。上記NANOLUC(登録商標)-CBC構築物を、E.coli BL21株(DE3) pLysSへと形質転換した。上記形質転換した細胞を、液体Luria-Bertani(LB)培地中、37℃において光学密度(OD)0.5~1.0になるように培養した。上記MDPの発現を、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導した。上記培養物を、37℃で5時間、インキュベートしながら振盪した。
【0228】
実施例2. スピンカラムフィルターを使用した、MDPを介する細菌検出
例示的実験において、S.aureus A300を、Luria-Bertaniブロス(LB)中、37℃で振盪しながら増殖させた。NANOLUC(登録商標)-CBCを、1μg/mlに希釈した。
【0229】
サンプル各1mLにつき、0.1mLをフィルターに三連で添加した。フィルターを600gで1分間遠心した。次に、NANOLUC(登録商標)-CBC融合タンパク質の各々40μLを、各フィルターに添加し、続いて、室温において15分間インキュベートした。フィルターを、400μL PBSを添加することによって2回洗浄し、続いて、600gにおいて1分間遠心分離した。次に、150μL LBを添加し、懸濁物をLUMITRAC(登録商標) 200 96ウェルルミノメータープレートに移し、ルシフェラーゼアッセイを、100μL NANO-GLO(登録商標)を注入して、Promegaルミノメーターにおいて行った。シグナル対バックグラウンド比を、各ウェルのシグナルをゼロ細胞コントロールのシグナルの平均によって除算することによって得た。
【0230】
実施例3 96ウェルフィルタープレートを使用した、MDPを介する細菌検出
NANOLUC(登録商標)-CBC融合タンパク質を、1μg/mlに希釈した。各サンプルにつき、0.150mLを96ウェルフィルタープレートの多数のウェルに添加した。上記96ウェルフィルタープレートを、1200rpm(263rcf)において3分間遠心した。次に、100μLの1μg/ml NANOLUC(登録商標)-CBC MDPを各フィルターに添加し、室温において15分間インキュベートした。上記細胞を、300μL PBSの添加によって2回洗浄し、続いて、600gにおいて1分間遠心分離して、結合していないMDPを除去した。上記ルシフェラーゼアッセイを、100μL NANO-GLO(登録商標)を注入して、Promegaルミノメーターを使用して、元のフィルタープレートの中で直接行い、プレートを、NANO-GLO(登録商標)基質の添加の3分後に読み取った。シグナル対バックグラウンド比を、各ウェルのシグナルをゼロ細胞コントロールのシグナルの平均によって除算することによって得た。
【0231】
実施例4 96ウェルプレートを使用した、MDPを介するListeria検出
NANOLUC(登録商標)-CBC融合タンパク質を、1μg/mlに希釈する。100μL サンプルを、GtxListeriaで被覆した96ウェルプレートに移す。サンプルの最小細胞濃度は、10細胞/mlである。10細胞/mL未満の細胞濃度を有するサンプルを、試験する前に富化する。次いで、サンプルを、上記96ウェルプレートにおいて30分間、30℃でインキュベートする。インキュベーション後、上記プレートを、300μl PBSで3回洗浄する。次に、100μLの1μg/ml NANOLUC(登録商標)-CBC MDPを各ウェルに添加し、室温において15分間、インキュベートする。上記細胞を、300μL PBSを添加することによって2回洗浄して、結合していないMDPを除去する。上記ルシフェラーゼアッセイを、100μL NANO-GLO(登録商標)を注入して、Promegaルミノメーターを使用して、元のプレートの中で直接行い、プレートを、NANO-GLO(登録商標)基質の添加の3分後に読み取る。シグナル対バックグラウンド比を、各ウェルのシグナルをゼロ細胞コントロールのシグナルの平均によって除算することによって得る。
【0232】
実施例5.細菌培養物中の目的の微生物の検出
この実施例は、上記装置の使用が、細菌培養物中に存在する細菌を検出し得ることを実証する。
【0233】
装置のアセンブリ
100μl A511/P100ファージカクテル(1.2×10e9 Pfu/mL)および100μl BHI培地 +1mM CaCl2を、上記装置の一番上のバルブ(第1の区画)に添加した。A511/p100ファージは、Listeria moncytogenesを標的化するファージである。固体支持体プレスを使用して、上記装置の一番上の構成要素を一緒に押し込んだ。上記装置チューブに、900μl BHI培地 + 1mM CaCl2を満たした。次いで、上記固体支持体を上記装置チューブの中に配置して、いくらかの培地を吸収した。次いで、上記アセンブリした装置(培地中に浸漬した固体支持体を含む)を、4℃で一晩維持した。
【0234】
細菌培養物の増殖
Listeria moncytogenesを、振盪インキュベーターにおいて、BHI培地(Beckton Dickinson, Sparks, MD, USA)中で一晩増殖させた。次いで、上記一晩培養物を、BHI培地中で対数増殖期まで37℃において継代した。次いで、対数増殖期の細胞を、適切な細胞数へと希釈した(
図3を参照のこと)。上記固体支持体を上記装置から除去し、希釈した培養物を、示されたCFUレベルで上記固体支持体上に添加した。次いで、細菌または培地単独(コントロール)を添加した上記固体支持体を、装置チューブの中に戻し、上記チューブを穏やかに振盪して、内容物を混合した(
図3, 表1)。
【0235】
類似の実験において、2つの固体支持体に、各々10 CFUの上記細菌を添加した。非接種サンプルをコントロールとして使用した。これらのサンプルを35℃で一晩インキュベートして、感染および基質曝露の前に細菌数を拡大させた(
図3, 表2)。
【0236】
感染
次いで、スナップ-バルブを、固体支持体を固く保持し、拇指と示指とでバルブを破損することによって破損させた。ファージ(6×10e8 Pfu/mLが200μl)を、固体支持体チューブの上で上記バルブを絞ることによって排出させた。上記固体支持体チューブ中の内容物を、くるくると渦を巻かせることによって穏やかに混合した。次いで、上記固体支持体を、上記細菌のファージ感染のために30℃のインキュベーター中に4時間置いた。上記NanoGlo基質(Promega, Madison, WI)を、70% エタノールで1:4希釈し、10μlの希釈した基質を固体支持体チューブに添加した。上記装置チューブの内容物を、ボルテックスにかけることによって混合し、次いで、3分間静置した。
【0237】
検出
3種の検出方法を使用した。上記固体支持体チューブを、Hygiena携帯型ルミノメーターへと挿入した。上記感染混合物のうちの1mLを取り出し、1.5mL 微小遠心分離チューブに移して、GloMax 20/20ルミノメーター(「GloMax 20/20」)で読み取り、上記感染混合物のうちの150μlを、96ウェルプレートに移して、GloMaxルミノメーター(「GloMax」)で読み取った。
【0238】
次いで、検出を、培地中に一晩浸漬した固体支持体で、感染時間2時間で行った。上記結果を
図5、表1および表2に示し、結果のグラフ表示を、
図4Aおよび4Bに示す。上記結果は、増殖富化なし(上記固体支持体で捕捉する前に上記サンプルの一晩培養なし)で、上記試験が、Hygiena携帯型ルミノメーターで25,000 CFUを検出し(
図4A)(細菌接種サンプルの読み取りは、陽性サンプルに関する10 相対発光単位(RLU)基準という検出閾値を全て上回った)、GloMax 20/20またはGloMaxでおよそ5,000 CFUを検出する(
図4B)ために十分感度が高いことを示す。
【0239】
実施例6.シチメンチョウサンプル中での微生物の検出
装置のアセンブリ
上記装置を、一番上のバルブを100μl SEA1/TSP1ファージカクテル(1.2×10e7 Pfu/mL)および100μl TSB培地(ThermoFisher Oxoid, Grand Islan, NY USA)で満たし、上記装置チューブを1mL TSB培地で満たしたことを除いて、実施例1に記載されるようにアセンブリした。SEA1/TSP1ファージは、Salmonellaを標的化するファージである。
【0240】
シチメンチョウ挽肉の細菌接種
Salmonella培養物を一晩増殖させ、以下で記載されるように高CFUサンプルおよび低CFUサンプルのために希釈した。
【0241】
シチメンチョウ挽肉の試験部分25gを、3群に分けた:: 非接種群(5サンプル)、高接種群(5サンプル)、および低接種群(20サンプル)。上記高接種群の25g サンプルの各々に、2~10 CFUのSalmonellaを接種し、上記低接種群の各サンプルに、0.2~2 CFUのSalmonellaを接種した。次いで、サンプルを、濾過した(filtered)サンプルバッグに入れ、4℃において48~72時間貯蔵した。
【0242】
接種したシチメンチョウ挽肉における細菌の富化
予め加温したTSB培地(41℃)を、サンプル対培地比1:3において各サンプルに添加した。次いで、上記サンプルを、STOMACHER(登録商標)で、30秒間highでブレンドし、次いで、振盪することなく24時間、41℃においてインキュベートして、上記サンプルにおいて細菌を富化した。
【0243】
サンプリング
上記試験サンプルを、上記固体支持体を各富化したサンプルへと浸し、10秒間くるくると渦を巻かせて、サンプルの最大量を吸着させることによって得た。上記固体支持体を、TSB培地で満たした装置チューブへと入れた。上記チューブを穏やかに振盪して、上記チューブ中の内容物を混合し、次いで、直ぐに感染させるか、または感染前に37℃にさらに1時間置くかのいずれかを行った。
【0244】
感染
次いで、上記バクテリオファージを収容する区画のスナップバルブを、固体支持体をしっかりと保持し、拇指と示指とでバルブを破損することによって破損した。上記ファージ(6×10e6 Pfu/mLを200μl)を、上記バルブを装置チューブの一番上で絞ることによって、上記チューブの中に出した。上記装置チューブ中の内容物を、くるくると渦を巻かせることによって穏やかに混合した。次いで、上記固体支持体を、上記細菌のファージ感染のために、37℃のインキュベーター中に30分間または2時間置いた。NanoGlo基質(Promega, Madison, WI)を、70% エタノールで1:4希釈し、10μlの希釈した基質を上記装置チューブへと添加した。上記装置チューブの内容物を、ボルテックスにかけることによって混合し、次いで、3分間静置した。シグナルを、実施例1に記載されるように検出した。非接種サンプル(コントロール群)からの結果を表3に示し、接種サンプル(実験群)からの結果を表4に示す。上記結果のグラフ表示を、
図6Aおよび
図6Bに示す。
【0245】
上記結果は、上記使用した3種の検出デバイスの各々が、24時間培養富化の後にSalmonellaに関して陽性であった全シチメンチョウサンプルを検出できたことを示す。GloMaxおよびGloMax 20/20のシグナルは、Hygienaルミノメーターより遙かに高かった。インキュベーション時間(すなわち、上記細菌を捕捉している上記固体支持体と感染前の培地とのインキュベーション)および感染時間は、シグナル強度に影響を及ぼし得る要因である。試験した種々のさらなるインキュベーション時間および感染時間のうち、0時間のインキュベーション時間および2時間の感染時間が、最高のRLUを生じ、続いて、1時間のインキュベーション時間および0.5時間の感染時間を有するサンプル、次いで、0時間のインキュベーション時間および0.5時間の感染時間を有するサンプルが続いた。上記結果はまた、0時間のインキュベ-ションおよび2
時間の感染が、最低のバックグラウンドシグナルを有することを示す。
【0246】
実施例7.アッセイの感度に対する感染時間の影響を試験するためのさらなる研究
実験を、上記固体支持体を上記細菌のシチメンチョウサンプルに浸した後に、上記固体支持体を培地中に置き、直ぐに感染を行う、すなわち、上記固体支持体上の細菌を増殖させるためのインキュベーション時間がないことを除いて、実施例2に記載されるように設定した。感染時間は、30分間から2時間まで変動させた。シグナルを、上記のように検出した。3種のサンプルの結果を
図7に示し、データを
図8A~8Cにプロットする。上記結果は、2時間の感染がサンプル24およびサンプル26に示されるようにシグナルを増大させ得ることを示し、30分間では、Hygienaにおいてシグナルを示さなかったが、2時間の感染に関しては示した。
【0247】
図9A~9Cは、GloMaxデバイスとGloMax 20/20の異なるデバイスとの間での比較を示す。GloMaxおよびGloMax 20/20は、類似の結果を示した。
【0248】
実施例8.L.monocytogenes 19115環境スポンジサンプルの試験
L.monocytogenesを、セラミックタイル表面に接種し、乾燥させ、室温において18~24時間静置した。サンプルスポンジを使用して、上記セラミックタイルを拭い、スポンジを、35℃で24時間にわたって富化のためにバッグの中に入れた。次いで、上記固体支持体を使用して、実施例2に記載されるように上記富化したサンプルをサンプリングした。100μl Listeriaファージ(濃度1.2×10e8 PFU/ml)を使用して、30℃において1時間、上記細菌のシチメンチョウ培養物に感染させた。シグナルを、GloMaxおよびHygienaを使用して検出した。結果を
図10に示した。上記結果は、Hygiena携帯型が、L.moncytogenes汚染された環境サンプルを検出し得ることを示す。
【0249】
実施例9.異なる検出デバイス
実験を、実施例2に記載されるように設定した。ファージ感染時間は、37℃において1時間であった。シグナルを、GloMax、3M携帯型ルミノメーター(「3M」)、およびHygienaで読み取った。結果を
図11に示す。3Mが、シグナルを検出するにあたってより高感度であることを示す。
【0250】
実施例10.微生物を検出するためのCBCの作製
エンドリシンのCBDをコードする遺伝子フラグメント(NCBIアクセッションYP_001468459)を、A511ファージのゲノムDNAに対して正方向プライマー: tttagcgggcagtagcggagggTATGCTTACTTAAGCTCATGおよび逆方向プライマー: tcgtcagtcagtcacgatgcTTATTTTTTGATAACTGCTCCTGを使用してPCRを行うことによって得た。次いで、上記配列を、pGEX4T-3発現ベクターへとGibson Assemblyを使用して製造業者の説明書に従ってサブクローニングして、GST-A511-CBD融合タンパク質を生成した。上記GST-A511-CBD発現プラスミドのマップを、
図16に示す。次いで、エンドリシンのCBDをコードする構築物を、E.coli BL21株(DE3) pLysSへと形質転換した。上記形質転換した細胞を、液体Luria-Bertani(LB)培地中、37℃において光学密度(OD)0.5~1.0になるように培養した。上記CBCの発現を、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導した。上記培養物を、振盪しながら25℃において5時間インキュベートした。
【0251】
細胞を上記培養物から採取し、溶解し、上記GST-A511-CBD融合タンパク質を、GEグルタチオンセファロース4B樹脂を使用して精製した。上記樹脂からの溶離画分をプールし、タンパク質濃度を280nmにおいて検出し、アリコートに分け、-20℃で貯蔵した。
【0252】
次いで、上記GST-A511-CBDタンパク質をビオチン化し、ストレプトアビジン磁性ビーズ(Dynabead M-280 Streptavidin beads)に結合させるために使用した。
【0253】
実施例11.上記固体支持体としてビーズを使用する微生物の検出
実施例1に記載されるように調製した1~2mlのListeria monocytogenes汚染されたシチメンチョウサンプルを、チューブへと移す。上記で記載されるように上記エンドリシンタンパク質のCBDで被覆したビーズを、上記サンプルへと浸す。上記ビーズを、細菌の最大量を捕捉するために、一定期間にわたって上記サンプル中に保持する。次いで、上記ビーズを上記装置チューブへと戻し、培地を添加する。固体支持体を、細菌の数を拡大するために培地中でインキュベートし得るか、またはファージを、感染サイクルを開始するために添加し得るかのいずれかである。感染サイクルが完了した後、基質を添加し、サンプルを携帯型ルミノメーターで読み取る。
【0254】
例証的な配列
配列番号1 エンドリシン(YP_001468459)
【化1】
配列番号2 エンドリシンのCBDドメイン
【化2】
前記装置は、基質を含む第2の区画をさらに含み、前記インジケーター遺伝子生成物を検出する工程は、前記インジケーター遺伝子生成物と基質とを接触させることによるものである;ならびに/あるいは前記固体支持体はビーズである;ならびに/あるいは前記固体支持体は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)およびポリビニルクロリド(PVC)を含む、請求項1に記載の方法。
前記サンプルは、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである;ならびに/あるいは前記方法は、食品安全産業のための標準サイズのサンプル中のわずか10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の細菌を検出する;ならびに/あるいは前記サンプルは、食肉または野菜を含む;ならびに/あるいは前記サンプルは、食品サンプル、水サンプル、酪農食品サンプル、環境サンプル、商業サンプル、または臨床サンプルである;ならびに/あるいは前記サンプルは、9時間もしくはこれ未満、8時間もしくはこれ未満、7時間もしくはこれ未満、6時間もしくはこれ未満、5時間もしくはこれ未満、4時間もしくはこれ未満、3時間もしくはこれ未満、または2時間もしくはこれ未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。