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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038526
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】車載用電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20240313BHJP
   H05K 5/04 20060101ALI20240313BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240313BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20240313BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01R13/648
H05K5/04
B60R16/02 610A
H02G3/16
H02G3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001997
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 章
【テーマコード(参考)】
4E360
5E021
5G361
【Fターム(参考)】
4E360CA02
4E360EA03
4E360ED17
4E360GA31
4E360GB21
4E360GB91
4E360GC02
5E021FB02
5E021FB20
5E021FC17
5E021FC21
5E021LA10
5G361AA06
5G361AC03
5G361AD01
5G361BA01
5G361BA06
5G361BB01
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスが接続される際に回路基板に対して静電気が放電されることを簡易に防止することが可能な車載用電子装置を提供する。
【解決手段】車載用電子装置1は、ワイヤハーネス30が接続される車載用電子装置である。車載用電子装置1は、内部に回路基板20を収容し、ワイヤハーネス30が接続される正面部7を有する金属筐体2と、金属筐体2の内部において正面部7に対向して回路基板20に搭載され、ワイヤハーネス30のハーネスコネクタ32が挿抜される樹脂コネクタ22と、を備える。正面部7は、ハーネスコネクタ32の挿抜方向Pにおいて樹脂コネクタ22内の端子23から最も離れた部分である最遠部15を有する。樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dは、樹脂コネクタ22内の端子23とハーネスコネクタ32内の端子33との挿抜方向Pにおける空間絶縁距離Aよりも長い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスが接続される車載用電子装置であって、
内部に回路基板を収容し、前記ワイヤハーネスが接続される正面部を有する金属筐体と、
前記金属筐体の前記内部において前記正面部に対向して前記回路基板に搭載され、前記ワイヤハーネスのハーネスコネクタが挿抜される樹脂コネクタと、を備え、
前記正面部は、前記ハーネスコネクタの挿抜方向において前記樹脂コネクタ内の端子から最も離れた部分である最遠部を有し、
前記樹脂コネクタ内の前記端子と前記最遠部との前記挿抜方向における距離が、前記樹脂コネクタ内の前記端子と前記ハーネスコネクタ内の端子との前記挿抜方向における空間絶縁距離よりも長い
ことを特徴とする車載用電子装置。
【請求項2】
前記正面部は、前記挿抜方向に沿って前記金属筐体の外部に突出する突出部を有し、
前記最遠部は、前記突出部の先端部によって構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項3】
前記ハーネスコネクタは、前記樹脂コネクタに対する抜け止め機構であるラッチ部を有し、
前記突出部の前記先端部は、前記ラッチ部に対応する形状に形成された切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車載用電子装置。
【請求項4】
前記突出部の前記先端部は、前記金属筐体の前記外部に向けて尖った尖頭部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車載用電子装置。
【請求項5】
前記正面部は、前記挿抜方向において前記樹脂コネクタ内の前記端子から、前記空間絶縁距離よりも長い距離だけ離れて配置されており、
前記最遠部は、前記正面部の外表面によって構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項6】
前記ハーネスコネクタは、前記樹脂コネクタに対する抜け止め機構であるラッチ部を有し、
前記正面部は、前記ラッチ部に対応する形状に形成された切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の車載用電子装置。
【請求項7】
前記正面部の前記外表面は、前記金属筐体の外部に向けて尖った尖頭部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の車載用電子装置。
【請求項8】
前記金属筐体は、車両のフレームグラウンドに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電子装置は、電子化が進み、外部との通信が多くなってきている。車載用電子装置では、金属筐体に回路基板を収容し、当該回路基板に外部との通信用のコネクタが搭載されている。車載用電子装置のコネクタに接続されるワイヤハーネス又は作業者には、車載用電子装置の梱包若しくは取り付け作業又は車両の保守点検作業等において、静電気が帯電することがある。車載用電子装置のコネクタにワイヤハーネスを接続する際、ワイヤハーネス又は作業者に帯電している静電気が回路基板に放電することによって、車載用電子装置が故障したり誤作動を起こしたりする可能性がある。よって、車載用電子装置には、回路基板への静電気放電を防止する対策が求められる。
【0003】
特許文献1に記載の車両電子制御ユニット用ケースは、電子制御ユニットを内部に収容し、下方及び一側方に開口を有するケース本体と、ケース本体の下方の開口を閉塞するカバーと、を備え、一側方の開口に電子制御ユニットのコネクタが収まって車両に搭載される車両電子制御ユニット用ケースであって、ケース本体のうち一側方の開口の上方に位置する上方部位から一側方に突出し、コネクタの被水を抑制する防水ひさしを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-105494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両電子制御ユニット用ケースは、ワイヤハーネスを接続する際、ケース本体の上方部位と防水ひさしとの接合部分を軸として、防水ひさしをケース上方に回動する必要がある。よって、特許文献1に記載の防水ひさしは、静電気の放電先として避雷針のような機能を有することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ワイヤハーネスが接続される際に回路基板に対して静電気が放電されることを簡易に防止することが可能な車載用電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車載用電子装置は、ワイヤハーネスが接続される車載用電子装置であって、内部に回路基板を収容し、前記ワイヤハーネスが接続される正面部を有する金属筐体と、前記金属筐体の前記内部において前記正面部に対向して前記回路基板に搭載され、前記ワイヤハーネスのハーネスコネクタが挿抜される樹脂コネクタと、を備え、前記正面部は、前記ハーネスコネクタの挿抜方向において前記樹脂コネクタ内の端子から最も離れた部分である最遠部を有し、前記樹脂コネクタ内の前記端子と前記最遠部との前記挿抜方向における距離が、前記樹脂コネクタ内の前記端子と前記ハーネスコネクタ内の端子との前記挿抜方向における空間絶縁距離よりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイヤハーネスが接続される際に回路基板に対して静電気が放電されることを簡易に防止することが可能な車載用電子装置を提供することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の車載用電子装置及びワイヤハーネスの構成を模式的に示す斜視図。
図2図1に示す車載用電子装置の分解斜視図。
図3図1に示す車載用電子装置及びワイヤハーネスの断面図。
図4図1に示す車載用電子装置及びワイヤハーネスの上面図。
図5】実施形態2の車載用電子装置の構成を模式的に示す上面図。
図6図5に示す突出部の拡大斜視図。
図7】実施形態3の車載用電子装置の構成を模式的に示す断面図。
図8図7に示す車載用電子装置及びワイヤハーネスの斜視図。
図9】実施形態4の車載用電子装置の構成を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の車載用電子装置1及びワイヤハーネス30の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す車載用電子装置1の分解斜視図である。図3は、図1に示す車載用電子装置1及びワイヤハーネス30の断面図である。図4は、図1に示す車載用電子装置1及びワイヤハーネス30の上面図である。なお、図2では、図1に示す金属ブラケット5及び突出部12の図示が省略されていると共に、図3に示す電子部品21の図示が省略されている。図3は、図1に示す車載用電子装置1及びワイヤハーネス30を、前後方向及び上下方向を含む平面によって切断した断面図である。
【0012】
車載用電子装置1は、ワイヤハーネス30が接続される車載用電子装置である。車載用電子装置1は、車載用電子装置1の外郭を構成する金属筐体2と、金属筐体2に収容される回路基板20とを備える(図2を参照)。
【0013】
回路基板20は、半導体素子又はコンデンサ等の複数の電子部品21を搭載すると共に、ワイヤハーネス30のハーネスコネクタ32に嵌合する樹脂コネクタ22を搭載する(図3を参照)。実施形態1では、車載用電子装置1の樹脂コネクタ22をオス型コネクタとし、ワイヤハーネス30のハーネスコネクタ32をメス型コネクタとして説明する。樹脂コネクタ22はメス型コネクタであり、ハーネスコネクタ32はオス型コネクタであってもよい。
【0014】
樹脂コネクタ22は、外部通信用又は電力供給用等の各種用途の規格に適合する端子23と、端子23を覆って保持する樹脂製のハウジング24とを有する。図3に示すように、端子23の一端は、ハウジング24から露出し、金属筐体2の外部を向くように配置される。端子23の他端は、回路基板20にはんだ等によって接合されている。すなわち、樹脂コネクタ22は、金属筐体2の内部において後述する金属筐体2の正面部7に対向して回路基板20に搭載され、ハーネスコネクタ32が挿抜される。
【0015】
ワイヤハーネス30は、樹脂コネクタ22内の端子23の規格に適合するワイヤ31と、ワイヤ31の端部に設けられたハーネスコネクタ32とを備える。ハーネスコネクタ32は、樹脂コネクタ22内の端子23に対応する端子33と、端子33を覆って保持する樹脂製のハウジング34とを有する。図3に示すように、端子33の一端は、ワイヤ31に接続される。端子33の他端は、ハウジング34のワイヤ31が貫通する面とは反対側の面と、同一平面上に形成される。ハウジング34の、ワイヤ31及び端子33が設けられた面以外の面の1つには、樹脂コネクタ22に対する抜け止め機構である爪状のラッチ部36が設けられる。図1では、ラッチ部36は、ハウジング34の上面部35に設けられる。ラッチ部36は、ハーネスコネクタ32の挿抜時に作業者の指が接触する部分である。
【0016】
金属筐体2は、金属筐体2の底面部を構成する板状の金属ベース3と、金属ベース3を覆う箱状の金属カバー4とを備える。金属筐体2は、金属カバー4の後述する側面部9,10に取り付けられた金属ブラケット5を介して、車両のフレームグラウンドに接続される。
【0017】
金属カバー4は、図1に示すように、金属ベース3に対向配置される板状の上面部6を有する。更に、金属カバー4は、上面部6に連接しワイヤハーネス30が接続される板状の正面部7と、上面部6に連接し正面部7に対向配置される板状の背面部8とを有する。更に、金属カバー4は、上面部6、正面部7及び背面部8のそれぞれに連接し互いに対向配置される板状の側面部9,10を有する。
【0018】
正面部7は、樹脂コネクタ22と対向する位置に形成された開口部11を有する。開口部11は、ハーネスコネクタ32を樹脂コネクタ22に挿し込むために形成された貫通孔である。開口部11は、金属筐体2の内部に配置された樹脂コネクタ22を金属筐体2の外部に露出させる。すなわち、正面部7は、金属筐体2においてワイヤハーネス30が接続される接続面を構成する部分である。
【0019】
正面部7は、ハーネスコネクタ32の挿抜方向Pに沿って金属筐体2の外部に突出する板状の突出部12を有する。挿抜方向Pとは、ハーネスコネクタ32を樹脂コネクタ22に挿し込んだり、ハーネスコネクタ32を樹脂コネクタ22から引き抜いたりする際に、ハーネスコネクタ32が移動する方向である。挿抜方向Pは、図1に示す前後方向に対応する。突出部12は、ハーネスコネクタ32のラッチ部36が設けられた面に対応する正面部7の一辺と開口部11の周縁との間に位置する正面部7の部分を基端として、挿抜方向Pに沿って金属筐体2の外部に突出するように設けられる。図1では、突出部12は、開口部11の周縁と正面部7の上側の一辺との間に位置する正面部7の部分を基端として突出するように設けられる。開口部11の周縁より上側の正面部7の部分は、ハーネスコネクタ32の挿抜時に作業者の指が接近し易い部分である。突出部12は、正面部7(金属カバー4)と一体的に形成されてもよいし、正面部7(金属カバー4)と別個に形成された後に正面部7(金属カバー4)に接合されてもよい。突出部12は、開口部11に対するひさしを構成してもよい。
【0020】
突出部12の先端部13には、ハーネスコネクタ32のラッチ部36に対応する形状に形成された切り欠き部14を有する。切り欠き部14は、ハーネスコネクタ32が樹脂コネクタ22に挿し込まれた状態において、ラッチ部36及び作業者の指先と干渉しない形状に形成される。図4に示すように、ラッチ部36の左右方向の寸法がL1であり前後方向の寸法がL2である場合、切り欠き部14の左右方向の寸法はL1より大きく、切り欠き部14の前後方向の寸法はL2より大きくてもよい。
【0021】
突出部12の先端部13は、ハーネスコネクタ32の挿抜方向Pにおいて樹脂コネクタ22内の端子23から最も離れた部分である最遠部15を構成する。すなわち、突出部12を有する正面部7は、最遠部15を有する。ワイヤハーネス30が車載用電子装置1に接続される際(ハーネスコネクタ32が樹脂コネクタ22に挿し込まれる際)、最遠部15は、ハーネスコネクタ32又は作業者の指先が最初に接近する車載用電子装置1の部分である。
【0022】
ここで、図3に示すように、樹脂コネクタ22内の端子23とハーネスコネクタ32内の端子33との挿抜方向Pにおける空間絶縁距離を、Aとする。ハーネスコネクタ32内の端子33と金属筐体2との距離を、Bとする。ハーネスコネクタ32のラッチ部36と金属筐体2との距離を、Cとする。樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離を、Dとする。
【0023】
このとき、車載用電子装置1では、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dが、樹脂コネクタ22内の端子23とハーネスコネクタ32内の端子33との挿抜方向Pにおける空間絶縁距離Aよりも長くなるように構成される。この空間絶縁距離Aは、空気の絶縁耐力(3.0MV/m)と、車載用電子装置1の動作電圧及び使用環境等に基づいて予め決定される。樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dは、実施形態1では、樹脂コネクタ22内の端子23と突出部12の先端部13との挿抜方向Pにおける距離に相当する。
【0024】
上記のように、車載用電子装置1の取り付け作業又は車両の保守点検作業等において、ワイヤハーネス30又は作業者には静電気が帯電することがある。ワイヤハーネス30が車載用電子装置1に接続される際、この静電気は、次の2通りのパターンによって車載用電子装置1に放電する可能性がある。すなわち、ワイヤハーネス30に帯電した静電気が、ハーネスコネクタ32の端子33から車載用電子装置1に放電するパターン(以下「放電パターンA」とも称する)と、作業者に帯電した静電気が作業者の指先から車載用電子装置1に放電するパターン(以下「放電パターンB」とも称する)とがある。
【0025】
車載用電子装置1において、ワイヤハーネス30が接続される際にハーネスコネクタ32又は作業者の指先が最初に接近する車載用電子装置1の部分は、最遠部15であり、実施形態1では突出部12の先端部13である。車載用電子装置1は、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dが、空間絶縁距離Aよりも長い。これにより、車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際、ハーネスコネクタ32内の端子33と金属筐体2との距離Bは、ハーネスコネクタ32内の端子33と突出部12との距離となり、空間絶縁距離Aよりも短くなる。同様に、ハーネスコネクタ32のラッチ部36と金属筐体2との距離Cは、ラッチ部36と突出部12との距離となり、空間絶縁距離Aよりも短くなる。そして、ワイヤハーネス30が接続される際、ハーネスコネクタ32内の端子33は、樹脂コネクタ22内の端子23よりも早く突出部12に接近し、作業者の指先は、樹脂コネクタ22内の端子23よりも早く突出部12に接近する。したがって、車載用電子装置1では、放電パターンAにおいて、ハーネスコネクタ32の端子33から放電した静電気が最初に到達する車載用電子装置1の部分(以下「放電先」とも称する)は、樹脂コネクタ22内の端子23ではなく、突出部12(の先端部13)となる。更に、車載用電子装置1では、放電パターンBにおいて、作業者の指先から放電した静電気の放電先についても、樹脂コネクタ22内の端子23ではなく、突出部12(の先端部13)となる。すなわち、車載用電子装置1では、放電パターンA及びBの何れにおいても、静電気の放電先を、最遠部15である突出部12の先端部13とすることができる。最遠部15に到達した静電気は、金属筐体2の側面部9,10及び金属ブラケット5を通過して、車両のフレームグラウンドに放出される。
【0026】
このように、実施形態1の車載用電子装置1では、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dを空間絶縁距離Aよりも長くするだけで、最遠部15に静電気の放電先として避雷針の機能を付加することができ、回路基板20への静電気放電を防止することができる。よって、実施形態1の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを簡易に防止することができ、故障又は誤作動を防止することができる。
【0027】
特に、実施形態1の車載用電子装置1では、最遠部15が、ハーネスコネクタ32の挿抜方向Pに沿って金属筐体2の外部に突出する突出部12の先端部13によって構成される。すなわち、実施形態1の車載用電子装置1では、既存の金属筐体2の正面部7に対して突出部12を設けるだけで、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dを空間絶縁距離Aよりも長くすることができる。実施形態1の車載用電子装置1は、最遠部15である突出部12の先端部13に静電気の放電先として避雷針の機能を付加することができ、回路基板20への静電気放電を防止することができる。よって、実施形態1の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを更に簡易に防止することができ、故障又は誤作動を防止することができる。
【0028】
更に、実施形態1の車載用電子装置1は、突出部12の先端部13は、ハーネスコネクタ32のラッチ部36に対応する形状に形成された切り欠き部14を有するので、ハーネスコネクタ32の挿抜時に、ラッチ部36及び作業者の指先が突出部12に干渉することを防止することができる。実施形態1の車載用電子装置1は、切り欠き部14を設けるだけで、ハーネスコネクタ32の挿抜時の作業性を向上させることができる。よって、実施形態1の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを更に簡易に防止することができ、故障又は誤作動を防止することができる。
【0029】
更に、実施形態1の車載用電子装置1は、金属筐体2が車両のフレームグラウンドに接続されているので、突出部12に放電された静電気をフレームグラウンドに確実に放出することができる。これにより、実施形態1の車載用電子装置1は、最遠部15である突出部12の先端部13の電位を下げることができ、静電気の放電先としての避雷針の機能を向上させることができ、回路基板20への静電気放電を更に防止することができる。よって、実施形態1の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを確実に防止することができ、故障又は誤作動を防止することができる。
【0030】
[他の実施形態]
図5図9を用いて、実施形態2~4の車載用電子装置1について説明する。実施形態2~4の説明において、従前の実施形態と同様の構成及び動作の説明については省略する。
【0031】
図5は、実施形態2の車載用電子装置1の構成を模式的に示す上面図である。図6は、図5に示す突出部12の拡大斜視図である。
【0032】
実施形態2の車載用電子装置1において、実施形態1と異なる点は、突出部12の先端部13が、金属筐体2の外部に向けて尖った尖頭部16を有する点である。尖頭部16は、先端部13の挿抜方向Pに交差する端面(前端面)に設けられる。尖頭部16は、図6に示すように、例えば、ハーネスコネクタ32を引き抜く方向(前方)に向かうに従って尖るような三角柱形状に形成されてもよい。尖頭部16の先端16aは、面取りされ、丸みを帯びて形成される。これにより、ハーネスコネクタ32の挿抜時に作業者の指先が尖頭部16に触れても切創等の怪我には至らず、安全性を確保することができる。実施形態2の車載用電子装置1では、最遠部15が尖頭部16によって構成される。
【0033】
この構成により、実施形態2の車載用電子装置1は、尖頭部16において電界集中を発生させることができるので、ハーネスコネクタ32又は作業者の指先から放電された静電気が、最遠部15である突出部12の先端部13に到達し易くなる。実施形態2の車載用電子装置1は、最遠部15である突出部12の先端部13が有する避雷針の機能を、実施形態1よりも向上させることができ、回路基板20への静電気放電を更に防止することができる。よって、実施形態2の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを実施形態1よりも確実に防止することができ、故障又は誤作動を実施形態1よりも確実に防止することができる。
【0034】
図7は、実施形態3の車載用電子装置1の構成を模式的に示す断面図である。図8は、図7に示す車載用電子装置1及びワイヤハーネス30の斜視図である。なお、図7は、図3に対応する図である。
【0035】
実施形態3の車載用電子装置1において、実施形態1と異なる点は、突出部12を有しておらず、正面部7の配置が変更されている点である。実施形態3の正面部7は、挿抜方向Pにおいて、樹脂コネクタ22内の端子23から空間絶縁距離Aよりも長い距離だけ離れて配置されている。この正面部7の配置は、回路基板20における樹脂コネクタ22の搭載位置を、ハーネスコネクタ32を挿し込む方向(後方)に移動させることによって実現されてもよい。或いは、この正面部7の配置は、金属筐体2の寸法を、ハーネスコネクタ32を引き抜く方向(前方)に伸ばすことによって実現されてもよい。実施形態3の車載用電子装置1では、最遠部15が正面部7の外表面7aによって構成される。正面部7の外表面7aは、正面部7の樹脂コネクタ22に対向する面とは反対側の面である。
【0036】
ここで、図7に示すように、樹脂コネクタ22内の端子23とハーネスコネクタ32内の端子33との挿抜方向Pにおける空間絶縁距離を、Aとする。ハーネスコネクタ32内の端子33と金属筐体2との距離を、B’とする。ハーネスコネクタ32のラッチ部36と金属筐体2との距離を、C’とする。樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離を、Dとする。
【0037】
このとき、実施形態3の車載用電子装置1では、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dが、空間絶縁距離Aよりも長くなるように構成される。樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dは、実施形態3では、樹脂コネクタ22内の端子23と正面部7の外表面7aとの挿抜方向Pにおける距離に相当する。
【0038】
実施形態3の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際、ハーネスコネクタ32内の端子33と金属筐体2との距離B’は、ハーネスコネクタ32内の端子33と正面部7との距離となり、空間絶縁距離Aよりも短くなる。同様に、ハーネスコネクタ32のラッチ部36と金属筐体2との距離C’は、ラッチ部36と正面部7との距離となり、空間絶縁距離Aよりも短くなる。そして、ワイヤハーネス30が接続される際、ハーネスコネクタ32内の端子33は、樹脂コネクタ22内の端子23よりも早く正面部7に接近し、作業者の指先は、樹脂コネクタ22内の端子23よりも早く正面部7に接近する。したがって、実施形態3の車載用電子装置1では、ハーネスコネクタ32又は作業者の指先から放電された静電気の放電先が、最遠部15である正面部7(の外表面7a)となる。
【0039】
この構成により、実施形態3の車載用電子装置1は、突出部12を設けなくても、樹脂コネクタ22内の端子23と最遠部15との挿抜方向Pにおける距離Dを空間絶縁距離Aよりも長くすることができる。実施形態3の車載用電子装置1は、最遠部15である正面部7の外表面7aに静電気の放電先として避雷針の機能を付加することができ、回路基板20への静電気放電を更に簡易に防止することができる。よって、実施形態3の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを実施形態1よりも簡易に防止することができ、故障又は誤作動を実施形態1よりも簡易に防止することができる。
【0040】
また、図8に示すように、実施形態3の車載用電子装置1は、正面部7及び上面部6は、ハーネスコネクタ32のラッチ部36に対応する形状に形成された切り欠き部14を有する。これにより、実施形態3の車載用電子装置1は、ハーネスコネクタ32の挿抜時に、ラッチ部36及び作業者の指先が正面部7及び上面部6に干渉することを防止することができる。よって、実施形態3の車載用電子装置1は、実施形態1と同様に、ハーネスコネクタ32の挿抜時の作業性を向上させることができる。
【0041】
図9は、実施形態4の車載用電子装置1の構成を模式的に示す上面図である。
【0042】
実施形態4の車載用電子装置1において、実施形態3と異なる点は、正面部7の外表面7aが、金属筐体2の外部に向けて尖った尖頭部16を有する点である。実施形態4の尖頭部16は、実施形態2の突出部12が設けられた位置と同様の位置に設けられてもよい。実施形態4の尖頭部16は、実施形態2の尖頭部16と同様に、例えば、ハーネスコネクタ32を引き抜く方向(前方)に向かうに従って尖るような三角柱形状に形成されてもよい。実施形態4の尖頭部16の先端16aは、面取りされ、丸みを帯びて形成されてもよい。実施形態4の車載用電子装置1では、最遠部15が尖頭部16によって構成される。
【0043】
この構成により、実施形態4の車載用電子装置1は、実施形態2と同様に、尖頭部16において電界集中を発生させることができるので、ハーネスコネクタ32又は作業者の指先から放電された静電気が、最遠部15である正面部7の外表面7aに到達し易くなる。実施形態4の車載用電子装置1は、最遠部15である正面部7の外表面7aが有する避雷針の機能を、実施形態3よりも向上させることができ、回路基板20への静電気放電を更に防止することができる。よって、実施形態4の車載用電子装置1では、ワイヤハーネス30が接続される際に回路基板20に対して静電気が放電されることを実施形態3よりも確実に防止することができ、故障又は誤作動を実施形態3よりも確実に防止することができる。
【0044】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0046】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…車載用電子装置、2…金属筐体、7…正面部、7a…外表面、12…突出部、13…先端部、14…切り欠き部、15…最遠部、16…尖頭部、20…回路基板、22…樹脂コネクタ、23…端子、30…ワイヤハーネス、32…ハーネスコネクタ、33…端子、36…ラッチ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9