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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038529
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008280
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 昭実
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA12
5E338AA16
5E338CC02
5E338CC06
5E338CD02
5E338CD12
5E338CD22
5E338EE11
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】特性インピーダンスの局所的な変動の抑制を図ることが可能な配線板を提供する。
【解決手段】ストリップ構造を有する配線板1は、信号線21と、上側ベースフィルム40を介して信号線21に対向する上側グランド層50と、信号線21に対して上側グランド層50とは反対側に位置して、下側ベースフィルム40を介して信号線21に対向する下側グランド層60と、を備え、上側グランド層50は、周期的に配置された複数の開口55を有するメッシュ形状51を有し、下側グランド層60は、周期的に配置された複数の開口65を有するメッシュ形状61を有しており、平面視において、開口55の中心CPと開口65の中心CPとが相互にずれている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ構造を有する配線板であって、
信号線と、
第1の絶縁層を介して前記信号線に対向する第1のグランド層と、
前記信号線に対して前記第1のグランド層とは反対側に位置して、第2の絶縁層を介して前記信号線に対向する第2のグランド層と、を備え、
前記第1のグランド層は、周期的に配置された複数の第1の開口を有する第1のメッシュ形状を有し、
前記第2のグランド層は、周期的に配置された複数の第2の開口を有する第2のメッシュ形状を有しており、
平面視において、前記第1の開口の中心と前記第2の開口の中心とが相互にずれている配線板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線板であって、
前記第1のメッシュ形状における前記第1の開口の配列方向と、前記第2のメッシュ形状における前記第2の開口の配列方向とが実質的に同一であり、
前記第1の開口間のピッチと、前記第2の開口間のピッチとが実質的に同一である配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線板において、
前記第1のメッシュ形状は、第1及び第2の細線を相互に交差させることで形成され、
前記第2のメッシュ形状は、第3及び第4の細線を相互に交差させることで形成されており、
前記信号線に対する前記第1の細線の交差角と、前記信号線に対する前記第3の細線の交差角とが実質的に同一であり、
前記信号線に対する前記第2の細線の交差角と、前記信号線に対する前記第4の細線の交差角とが実質的に同一であり、
前記第1の細線間のピッチと、前記第3の細線間のピッチが実質的に同一であり、
前記第2の細線間のピッチと、前記第4の細線間のピッチが実質的に同一である配線板。
【請求項4】
請求項3に記載の配線板であって、
前記第1~第4の細線の幅は、前記第1~第4の細線の幅の平均値に対して±20%の範囲内に含まれる配線板。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の配線板であって、
前記第1のグランド層は、前記第1及び第2の細線が交差する第1の交差部を有し、
前記第2のグランド層は、前記第3及び第4の細線が交差する第2の交差部を有しており、
平面視において、前記第1の交差部は、前記第1の交差部が前記第3及び第4の細線と重ならないように、前記第2の開口内に位置していると共に、
平面視において、前記第2の交差部は、前記第2の交差部が前記第1及び第2の細線と重ならないように、前記第1の開口内に位置しており、
下記(1)式を満たす配線板。
0.2×P≦D≦0.8×P …(1)
但し、上記の(1)式において、
は、前記第1の開口を介して相互に隣り合う前記第1の交差部間の前記信号線の延在方向に沿ったピッチであり、
は、前記信号線の延在方向に沿った前記第1の交差部に対する前記第2の交差部のずれ量である。
【請求項6】
請求項5に記載の配線板であって、
下記の(2)式を満たす配線板。
0.4×P≦D≦0.6×P …(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストリップ構造のフレキシブルプリント配線板(FPC)は、信号線を有する信号配線層と、当該信号配線層の両側に絶縁体層を介して積層された一対のグランド層と、を備えている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフレキシブルプリント配線板では、上側のグランド層のメッシュ部の形状と下側のグランド層のメッシュ部の形状とが同一であると共に、平面視においてメッシュ部の網目が一致するように上下のグランド層が重ねられている。このため、上側のグランド層のメッシュ部の交点が信号線と重なる位置と、下側のグランド層のメッシュ部の交点が信号線と重なる位置とが一致し、この部分では信号線の特性インピーダンスが低下してしまう。一方で、上側のグランド層のメッシュ部の開口が信号線と重なる位置と、下側のグランド層のメッシュ部の開口が信号線と重なる位置とが一致し、この部分では信号線の特性インピーダンスが高くなってしまう。
【0005】
このように、上記のフレキシブルプリント配線板では、上下のグランド層が同一形状のメッシュ部を有すると共にメッシュ部の網目が一致するように重ねられているため、信号線の特性インピーダンスが局所的に大きく変動し、伝送特性が劣化してしまう場合がある、という問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、特性インピーダンスの局所的な変動の抑制を図ることが可能な配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る配線板は、ストリップ構造を有する配線板であって、信号線と、第1の絶縁層を介して前記信号線に対向する第1のグランド層と、前記信号線に対して前記第1のグランド層とは反対側に位置して、第2の絶縁層を介して前記信号線に対向する第2のグランド層と、を備え、前記第1のグランド層は、周期的に配置された複数の第1の開口を有する第1のメッシュ形状を有し、前記第2のグランド層は、周期的に配置された複数の第2の開口を有する第2のメッシュ形状を有しており、平面視において、前記第1の開口の中心と前記第2の開口の中心とが相互にずれている配線板である。
【0008】
[2]上記発明において、前記第1のメッシュ形状における前記第1の開口の配列方向と、前記第2のメッシュ形状における前記第2の開口の配列方向が実質的に同一であり、前記第1の開口間のピッチと、前記第2の開口間のピッチとが実質的に同一であってもよい。
【0009】
[3]上記発明において、記第1のメッシュ形状は、第1及び第2の細線を相互に交差させることで形成され、前記第2のメッシュ形状は、第3及び第4の細線を相互に交差させることで形成されており、前記信号線に対する前記第1の細線の交差角と、前記信号線に対する前記第3の細線の交差角とが実質的に同一であり、前記信号線に対する前記第2の細線の交差角と、前記信号線に対する前記第4の細線の交差角とが実質的に同一であり、前記第1の細線間のピッチと、前記第3の細線間のピッチが実質的に同一であり、前記第2の細線間のピッチと、前記第4の細線間のピッチが実質的に同一であってもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記第1~第4の細線の幅は、前記第1~第4の細線の幅の平均値に対して±20%の範囲内に含まれてもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記第1のグランド層は、前記第1及び第2の細線が交差する第1の交差部を有し、前記第2のグランド層は、前記第3及び第4の細線が交差する第2の交差部を有しており、平面視において、前記第1の交差部は、前記第1の交差部が前記第3及び第4の細線と重ならないように、前記第2の開口内に位置していると共に、平面視において、前記第2の交差部は、前記第2の交差部が前記第1及び第2の細線と重ならないように、前記第1の開口内に位置しており、下記(1)式を満たしてもよい。
【0012】
0.2×P≦D≦0.8×P …(1)
【0013】
但し、上記の(1)式において、Pは、前記第1の開口を介して相互に隣り合う前記第1の交差部間の前記信号線の延在方向に沿ったピッチであり、Dは、前記信号線の延在方向に沿った前記第1の交差部に対する前記第2の交差部のずれ量である。
【0014】
[6]上記発明において、下記の(2)式を満たしてもよい。
【0015】
0.4×P≦D≦0.6×P …(2)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストリップ構造を有する配線板において、第1のグランド層の第1のメッシュ形状の第1の開口の中心と、第2のグランド層の第2のメッシュ形状の第2の開口の中心とが相互にずれているので、信号線の特性インピーダンスの局所的な変動の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態における配線板の一部を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態における下側グランド層を示す平面図であり、上側グランド層と下側グランド層の位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態における配線板の一部を示す平面図であり、図2図1のII-II線に沿った断面図であり、図3図1のIII-III線に沿った断面図である。また、図4は本発明の実施形態における下側グランド層を示す平面図であり、上側グランド層と下側グランド層の位置関係を説明するための図である。
【0020】
本実施形態におけるプリント配線板1は、ストリップ構造を有するフレキシブルプリント配線板(FPC)である。このプリント配線板1は、図1図4に示すように、下側ベースフィルム10と、信号層20と、接着層30と、上側ベースフィルム40と、上側グランド層50と、下側グランド層60と、を備えている。なお、図4では、下側グランド層60を実線で示し、上側グランド層50を破線で示している。
【0021】
本実施形態における下側ベースフィルム10が本発明における「第2の絶縁層」の一例に相当し、本実施形態における上側ベースフィルム40が本発明における「第1の絶縁層」の一例に相当する。また、本実施形態における上側グランド層50が本発明における「第1のグランド層」の一例に相当し、本実施形態における下側グランド層60が本発明における「第2のグランド層」の一例に相当する。
【0022】
下側ベースフィルム10は、可撓性を有するフィルムである。この下側ベースフィルム10は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。特に限定されないが、この下側ベースフィルム10を構成する材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、アラミド等を例示することができる。
【0023】
この下側ベースフィルム10の上面11に信号層20が形成されている。信号層20は、信号線21と、一対のグランド線22,23と、を備えている。本実施形態における信号線21が、本発明における「信号線」の一例に相当する。なお、信号層20が有する信号線21の数は特に限定されず、信号層20が複数の信号線を備えていてもよい。また、信号線21に要求される伝送特性に応じて、一対のグランド線22,23を省略してもよい。
【0024】
図1に示すように、信号線21は、図中のX方向に沿って直線状に延在している。本実施形態における信号線21は、シングルエンド信号伝送用の信号線(シングルエンドライン)であるが、特にこれに限定されない。信号層20が有する信号線が、差動信号伝送用の信号線(差動ペアライン)であってもよい。
【0025】
一対のグランド線22,23は、信号線21の両側に配置されている、この一対のグランド線22,23は、信号線21の幅よりも広い幅を有している。また、この一対のグランド線22,23は、信号線21と実質的に同一の方向(図中のX方向)に延在しており、信号線とグランド線22,23は実質的に平行に延在している。一方のグランド線22と信号線21との間隔と、他方のグランド線23と信号線との間の間隔とは実質的に同一となっている。特に図示しないが、これらのグランド線22,23は、特に図示しないスルーホール等を介してグランド層50,60に接続されており、信号線21から生じるノイズや外部から侵入するノイズを遮蔽する機能を有している。なお、グランド線22,23の幅は、特に上記に限定されず、信号線21の幅よりも狭くてもよい。
【0026】
こうした信号線21とグランド線22,23を含む信号層20は、金属又はカーボン等の導電性材料から構成されている。この信号層20を構成する金属としては、例えば、銅、銀、金を例示することができる。本実施形態では、信号層20を構成する材料として銅を用いる。特に限定されないが、この信号層20は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等の方法を用いて形成されており、下側ベースフィルム10に積層された銅箔を所定の形状にエッチングすることで形成されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、この信号層20を覆うように下側ベースフィルム10の上に上側ベースフィルム40が積層されている。この上側ベースフィルム40は、上述の下側ベースフィルム10と同様に、可撓性を有すると共に電気絶縁性を有するフィルムである。この上側ベースフィルム40を構成する材料としては、上述した下側ベースフィルム10を構成する材料と同様のものを例示することができる。なお、上側ベースフィルム40を、下側ベースフィルム10を構成する材料と同じ材料で構成してもよいし、下側ベースフィルム10を構成する材料とは異なる材料で構成してよい。
【0028】
この上側ベースフィルム40は、接着層30を介して下側ベースフィルム10に固定されている。この接着層30を構成する接着剤としては、特に限定されないが、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m-PPE)からなる接着剤を用いることができる。なお、接着層30を構成する接着剤として、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等を用いてもよい。
【0029】
この上側ベースフィルム40の上面41には上側グランド層50が形成されている。なお、この上側グランド層50を覆うように上側ベースフィルム40の上面41にカバーレイを積層してもよい。
【0030】
この上側グランド層50は、図1に示すように、図中X方向に沿って直線状に延在する帯状の形状を全体として有しており、平面視において、当該上側グランド層50の中心線が信号線21の中心線と実質的に一致するように配置されている。また、この上側グランド層50は、周期的に配置された複数の開口55を有するメッシュ形状51を有している。この上側グランド層50は、信号線21から生じるノイズや外部から侵入するノイズを遮蔽する機能を有している。
【0031】
この上側グランド層50は、メッシュ形状51を構成する2種類の細線52,53を含んでいる。本実施形態におけるメッシュ形状51が本発明における「第1のメッシュ形状」の一例に相当し、本実施形態における細線52が本発明における「第1の細線」の一例に相当し、本実施形態における細線53が本発明における「第2の細線」の一例に相当する。
【0032】
一方の細線52は、幅Wを有していると共に、第1の方向Uに沿って直線状に延在している。これに対し、他方の細線53は、幅Wを有していると共に、第1の方向Uに対して実質的に直交する第2の方向Vに沿って直線状に延在している。本実施形態では、一方の細線52の幅Wと他方の細線53の幅Wは実質的に同一となっている(W=W)。なお、本実施形態において、「実質的に同一」とは、誤差が±5%の範囲内にあることを意味する。
【0033】
また、第1の方向Uは、上述の信号線21の延在方向(図中のX方向)に対して52°であるのに対し、第2の方向Vは、当該信号線21の延在方向に対して-38°である。すなわち、本実施形態では、信号線21に対する一方の細線52の交差角θが52°となっている(θ=52°)のに対し、信号線21に対する他方の細線53の交差角θが-38°となっている(θ=-38°)。なお、本実施形態では、基準線(本例では+X方向)に対して時計回りの回転方向を正の角度で示し、基準線に対して反時計回りの回転方向を負の角度で示す。
【0034】
また、複数の細線52は、第2の方向Vに沿って実質的に等間隔に並べられており、相互に隣り合う細線52間の第2の方向Vに沿ったピッチ(中心間距離)はPとなっている。同様に、複数の細線53も、第1の方向Uに沿って実質的に等間隔に並べられており、相互に隣り合う細線53間の第1の方向Uに沿ったピッチはPとなっている。本実施形態では、細線52のピッチPと、細線53のピッチPとは実質的に同一となっている(P=P)。
【0035】
従って、細線52,53が交差部54で相互に交差することで、複数の開口55を有するメッシュ形状51を形成している。それぞれの交差部54は正方形の形状を有していると共に、それぞれの開口55も正方形の形状を有している。また、この上側グランド層50のメッシュ形状51は、複数の開口55が第1及び第2の方向U,Vに沿って並べられた配列を有している。すなわち、当該上側グランド層50のメッシュ形状における開口55の配列方向は、第1及び第2の方向U,Vとなっている。因みに、開口55を介して相互に隣り合う交差部54間の図中X方向に沿ったピッチはPとなっている。
【0036】
さらに、この上側グランド層50は、帯状の形状の両縁(図中の上下縁)を画定する一対の外縁線56を備えている。この外縁線56は、図中X方向に沿って直線状に延在しており、メッシュ形状51を構成する細線52,53の端部を図中X方向に沿って接続している。なお、上側グランド層50が外縁線56を備えていなくてもよい。
【0037】
なお、細線52の幅Wと細線53の幅Wとが相違していてもよい。また、第1及び第2の方向U,Vは、上記に特に限定されない。特に限定されないが、例えば、第1の方向Uが信号線21の延在方向に対して45°であるのに対し、第2の方向Vが信号線21に対して-45°であってもよい。
【0038】
さらに、第1の方向Uと第2の方向Vとの交差角は90°に限定されない。また、細線52のピッチPと、細線53のピッチPとが相違していてもよい。第1の方向Uと第2の方向Vとの交差角が直角でない場合や、細線52のピッチPと細線53のピッチPが相違する場合には、開口55の形状は正方形以外の四角形となる。
【0039】
この上側グランド層50を構成する材料としては、上述した信号層20を構成する材料と同様の材料を例示することができる。なお、上側グランド層50を、信号層20を構成する材料と同じ材料で構成してもよいし、信号層20を構成する材料と異なる材料で構成してよい。また、この上側グランド層50の製法としては、上述した信号層20の製法と同様の製法を例示することができる。なお、上側グランド層50を、信号層20の製法と同じ製法で形成してもよいし、信号層20の製法とは異なる製法で形成してもよい。
【0040】
これに対し、下側グランド層60は、図2及び図3に示すように、下側ベースフィルム10の下面12に形成されている。なお、この下側グランド層60を覆うように下側ベースフィルム10の下面12にカバーレイを積層してもよい。
【0041】
この下側グランド層60は、図1に示すように、図中X方向に沿って直線状に延在する帯状の形状を全体として有しており、上側グランド層50の幅と実質的に同一の幅を有している。また、この下側グランド層60は、平面視において、当該下側グランド層60の中心線が信号線21の中心線と実質的に一致するように配置されている。さらに、図4に示すように、この下側グランド層60は、周期的に配置された複数の開口65を有するメッシュ形状61を有している。この下側グランド層60は、信号線21から生じるノイズや外部から侵入するノイズを遮蔽する機能を有している。
【0042】
この下側グランド層60は、メッシュ形状61を構成する2種類の細線62,63を含んでいる。本実施形態におけるメッシュ形状61が本発明における「第2のメッシュ形状」の一例に相当し、本実施形態における細線62が本発明における「第3の細線」の一例に相当し、本実施形態における細線63が本発明における「第4の細線」の一例に相当する。
【0043】
一方の細線62は、幅Wを有していると共に、第1の方向Uに沿って直線状に延在している。これに対し、他方の細線63は、幅Wを有していると共に、第2の方向Vに沿って直線状に延在している。本実施形態では、一方の細線62の幅Wと他方の細線63の幅Wは実質的に同一となっている(W=W)。なお、細線62の幅Wと細線63の幅Wとが相違していてもよい。
【0044】
また、複数の細線62は、第2の方向Vに沿って実質的に等間隔に並べられており、相互に隣り合う細線62間の第2の方向Vに沿ったピッチはPとなっている。同様に、複数の細線63も、第1の方向Uに沿って実質的に等間隔に並べられており、相互に隣り合う細線63間の第1の方向Uに沿ったピッチはPとなっている。本実施形態では、細線62のピッチPと、細線63のピッチPとは実質的に同一となっている(P=P)。
【0045】
従って、細線62,63が交差部64で相互に交差することで、複数の開口65を有するメッシュ形状61を形成している。それぞれの交差部64は正方形の形状を有していると共に、それぞれの開口65も正方形の形状を有している。また、この下側グランド層60のメッシュ形状61は、複数の開口65が第1及び第2の方向U,Vに沿って並べられた配列を有している。すなわち、当該下側グランド層60のメッシュ形状における開口65の配列方向は、第1及び第2の方向U,Vとなっている。
【0046】
さらに、この下側グランド層60は、帯状の形状の両縁(図中の上下縁)を画定する一対の外縁線66を備えている。この外縁線66は、図中X方向に沿って直線状に延在しており、メッシュ形状61を構成する細線62,63の端部を図中X方向に沿って接続している。なお、下側グランド層60が外縁線66を備えていなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、下側グランド層60の一方の細線62の幅Wと、上側グランド層50の一方の細線52の幅Wとが実質的に同一となっている(W=W)と共に、下側グランド層60の他方の細線63の幅Wと、上側グランド層50の他方の細線53の幅Wとが実質的に同一となっている(W=W)。従って、上側グランド層50の細線52,53及び下側グランド層60の細線62,63の全ての幅W~Wが実質的に同一となっている(W=W=W=W)。
【0048】
なお、細線52,53,62,63の幅W~Wの関係は、特に上記に限定されず、細線52,53,62,63の幅W~Wが、当該幅W~Wの平均値Waveの±20%の範囲内に含まれていてもよい。すなわち、細線52,53,62,63の幅W~Wが、下記の(3)~(7)式を満たしてもよい。
ave×0.8≦W≦Wave×1.2 …(3)
ave×0.8≦W≦Wave×1.2 …(4)
ave×0.8≦W≦Wave×1.2 …(5)
ave×0.8≦W≦Wave×1.2 …(6)
ave=(W+W+W+W)/4 …(7)
【0049】
また、下側グランド層60の一方の細線62間のピッチPが、上側グランド層50の一方の細線52間のピッチPと実質的に同一となっている(P=P)と共に、下側グランド層60の他方の細線63間のピッチPが、上側グランド層50の他方の細線53間のピッチPと実質的に同一となっている(P=P)。すなわち、下側グランド層60において第2の方向Vに沿って相互に隣り合う開口65間のピッチPが、上側グランド層50において第2の方向Vに沿って相互に隣り合う開口55間のピッチPと実質的に同一となっていると共に、下側グランド層60において第1の方向Uに沿って相互に隣り合う開口65間のピッチPが、上側グランド層50において第1の方向Uに沿って相互に隣り合う開口55間のピッチPと実質的に同一となっている。従って、上側グランド層50の細線52,53及び下側グランド層60の細線62,63の全てのピッチP~Pが実質的に同一となっている(P=P=P=P)。
【0050】
上記に加えて、信号線21に対する一方の細線62の交差角θが、上側グランド層50の一方の細線52の交差角θと実質的に同一となっている(θ=θ)と共に、信号線21に対する他方の細線63の交差角θも、上側グランド層50の他方の細線53の交差角θと実質的に同一となっている(θ=θ)。すなわち、上側グランド層50のメッシュ形状51における開口55の配列方向と、下側グランド層60のメッシュ形状61における開口65の配列方向とが実質的に同一となっている。従って、本実施形態では、上側グランド層50のメッシュ形状51と、下側グランド層60のメッシュ形状61とが実質的に同一の形状を有している。
【0051】
そして、本実施形態では、上側グランド層50の開口55の中心CPと、下側グランド層60の開口65の中心CPとが相互にずれるように、上側グランド層50と下側グランド層60が配置されている。特に限定されないが、図4に示すように、平面視において、下側グランド層60の開口65の中心CPが、上側グランド層50の開口55の中心CPに対して、図中+X方向に沿ってズレ量Dだけずれている場合において、下記の(8)式を満たしていることが好ましく、下記の(9)式を満たしていることがより好ましい。
【0052】
0.2×P≦D≦0.8×P …(8)
【0053】
0.4×P≦D≦0.6×P …(9)
【0054】
但し、上記の(8)及び(9)式において、Pは、上側グランド層50において開口55を介して相互に隣り合う交差部54間のピッチであって、図中X方向に沿ったピッチである。換言すれば、このPは、信号線21の延在方向(図中X方向)に対して交差角θから45°を減じた角度(θ-45°)で延在する方向に沿って相互に隣り合う交差部54間のピッチであって、図中X方向に沿ったピッチである。また、Dは、上側グランド層50の交差部54に対する下側グランド層60の交差部64のずれ量であって、図中X方向に沿ったずれ量である。
【0055】
このように下側グランド層60の開口65の中心CPを上側グランド層50の開口55の中心CPに対してずらして上側グランド層50と下側グランド層60を配置することで、図2に示すように、上側グランド層50の交差部54が下側グランド層60の細線62,63と重ならないように、当該交差部54が下側グランド層60の開口65内に位置している。また、図3に示すように、下側グランド層60の交差部64が上側グランド層50の細線52,53と重ならないように、当該交差部64が上側グランド層50の開口55内に位置している。
【0056】
この下側グランド層60を構成する材料としては、上述した信号層20を構成する材料と同様の材料を例示することができる。なお、下側グランド層60を、信号層20を構成する材料と同じ材料で構成してもよいし、信号層20を構成する材料とは異なる材料で構成してよい。また、この下側グランド層60の製法としては、上述した信号層20の製法と同様の製法を例示することができる。なお、下側グランド層60を、信号層20の製法と同じ製法で形成してもよいし、信号層20の製法とは異なる製法で形成してもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態では、ストリップ構造のプリント配線板1において、上側グランド層50のメッシュ形状51の開口55の中心CPと、下側グランド層60のメッシュ形状61の開口65の中心CPとが相互にずれている。これにより、上側グランド層50の交差部54と下側グランド層60の交差部64とが一致せず、上側グランド層50の交差部54が下側グランド層60開口65と重なると共に、下側グランド層60の交差部64が上側グランド層50の開口55と重なるので、信号線21の特性インピーダンスの局所的な変動の抑制を図ることができる。
【0058】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0059】
上述の実施形態では、下側グランド層60の開口65の中心CPを上側グランド層50の開口55の中心CPに対して図中+X方向に沿ってずらした場合について説明したが、開口65,55を相対的にずらす方向は、特にこれに限定されない。
【0060】
例えば、開口65の中心CPを開口55の中心CPに対して図中-X方向に沿ってずらしてもよい。或いは、開口65の中心CPを開口55の中心CPに対して図中Y方向に沿ってずらしてもよい。或いは、開口65の中心CPを開口55の中心CPに対して図中X及びY方向に沿ってずらしてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、上側グランド層50の細線52,53及び下側グランド層60の細線62,63の全ての幅W~Wが実質的に同一となっているが、特にこれに限定されない。例えば、上側グランド層50の細線52の幅Wと下側グランド層60の細線62の幅Wが相違してもよいし、上側グランド層50の細線53の幅Wと下側グランド層60の細線63の幅Wが相違してもよい。或いは、上側グランド層50の細線52,53及び下側グランド層60の細線62,63の全ての幅W~Wが相違していてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、上側グランド層50のメッシュ形状51と、下側グランド層60のメッシュ形状61とが実質的に同一の形状を有しているが、メッシュ形状51とメッシュ形状61の関係は、特にこれに限定されない。例えば、上側グランド層50の開口55の中心CPと下側グランド層60の開口65の中心CPとが相互にずれているのであれば、上側グランド層50のメッシュ形状51と、下側グランド層60のメッシュ形状61とが異なる形状を有していてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、上側グランド層50のメッシュ形状51の開口51が四角形を有しているが、当該開口51の形状は、特にこれに限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、六角形等であってもよい。同様に、上述の実施形態では、下側グランド層60のメッシュ形状61の開口61が四角形を有しているが、当該開口61の形状は、特にこれに限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、六角形等であってもよい。
【0064】
また、プリント配線板1の層構造に関して、信号線21と上側グランド層50との間に少なくとも1つの絶縁層が介在していると共に、信号線21と下側グランド層60との間に少なくとも1つの絶縁層が介在していれば、特に上記の層構造に限定されない。
【0065】
また、上記実施形態では、プリント配線板1としてFPCを例示したがこれに限定されず、プリント配線板1がリジッド基板であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…配線板
10…下側ベースフィルム
11…上面
12…下面
20…信号層
21…信号線
22…グランド線
23…グランド線
30…接触層
40…上側ベースフィルム
41…上面
42…下面
50…上側グランド層
51…メッシュ形状
52,53…細線
54…交差部
55…開口
CP…開口の中心
56…外縁線
60…下側グランド層
61…メッシュ形状
62,63…細線
64…交差部
65…開口
CP…開口の中心
66…外縁線
図1
図2
図3
図4