(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038546
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】路面モデル自動計算システム及び路面モデル自動計算プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240313BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240313BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20240313BHJP
E01C 1/00 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10 100
G06F30/12
E01C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142621
(22)【出願日】2022-09-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月19日にウェブサイトにて発表 令和4年6月9日に苫小牧道路事務所インフラDX及びゼロカーボンマネジメント会議第5回にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】599143416
【氏名又は名称】株式会社 三英技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【テーマコード(参考)】
2D051
5B146
【Fターム(参考)】
2D051AH01
5B146AA04
5B146DG01
5B146DG02
5B146EA11
5B146EA17
(57)【要約】
【課題】本線及びランプの設計の際に整合の取れた3次元路面モデルが簡単に得られるようにする。
【解決手段】路面モデル自動計算システム1は、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力部10aと、ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算部10dと、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算部10eと、直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算部10fと、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点と、ゼブラ部の路面の3次元形状と、すり付け部の3次元形状と、重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成部10gとを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する路面モデル自動計算システムであって、
本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力部と、
ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算部と、
平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算部と、
直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算部と、
前記入力部により入力された前記本線の属性、前記ランプの属性及び前記ノーズ測点と、前記ゼブラ部路面計算部により計算された前記ゼブラ部の路面の3次元形状と、前記すり付け計算部により計算された前記すり付け部の3次元形状と、前記重なり計算部で計算された前記幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成部とを備えていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項2】
請求項1に記載の路面モデル自動計算システムにおいて、
前記入力部は、前記本線の属性として前記本線の中心線形、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付け、前記ランプの属性として前記ランプの中心線形、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付け可能に構成されていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項3】
請求項2に記載の路面モデル自動計算システムにおいて、
ノーズ引き出し勾配、本線の横断勾配を引き伸ばした縦断線形区間の勾配、折れ勾配の設定を実行する勾配設定部を備えていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項4】
請求項3に記載の路面モデル自動計算システムにおいて、
前記入力部は、ランプ縦断計画の数値による入力と、横断勾配のすり付けの数値による入力とを受け付け可能に構成されていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項5】
請求項4に記載の路面モデル自動計算システムにおいて、
前記勾配設定部で設定された各勾配と、前記入力部により入力された前記ランプ縦断計画の数値及び前記横断勾配のすり付けの数値とに基づいて、予め定められた設計規格を満たすか否かを判定する判定部を備えていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項6】
請求項5に記載の路面モデル自動計算システムにおいて、
前記判定部は、前記本線の縦断勾配及び合成勾配が前記設計規格を満たすか否か判定するように構成されていることを特徴とする路面モデル自動計算システム。
【請求項7】
インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する路面モデル自動計算プログラムであって、
本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力工程と、
ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算工程と、
平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算工程と、
直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算工程と、
前記入力工程で入力された前記本線の属性、前記ランプの属性及び前記ノーズ測点と、前記ゼブラ部路面計算工程で計算された前記ゼブラ部の路面の3次元形状と、前記すり付け計算工程で計算された前記すり付け部の3次元形状と、前記重なり計算工程で計算された前記幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする路面モデル自動計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路設計に用いられる平面図自動計算システム及び路面モデル自動計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で3次元CADシステムが導入されて設計業務が行われている。道路設計の分野でも3次元CADシステムが導入されており、例えば特許文献1には、3次元道路モデルに擁壁モデルを自動配置するための擁壁の自動配置装置が開示されており、また、特許文献2には、3次元道路モデル上で擁壁に対する安定性の照査のための処理を実行する擁壁の安定性照査装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の自動配置装置は、3次元道路モデル上のセンターラインと法面との距離に基づいて擁壁の配置区間を特定し、特定された配置区間を対象として、擁壁を配置するための基準線を設定し、配置候補とする擁壁形状を基準線に合わせて配置してから擁壁高の調整を自動で実行可能に構成されている。
【0004】
特許文献2の安定性照査装置は、3次元道路モデル上で安定性照査対象とする擁壁の選択を受け付けた後、対象の擁壁の安定性照査処理を実行し、安定性照査の結果に基づいて、3次元道路モデル上で擁壁の色を変更可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6848038号公報
【特許文献2】特許第6848031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば高速道路にはインターチェンジが設けられる。このインターチェンジの設計では本線の中心線形、縦断勾配、横断勾配、設計規格とランプの設計規格の情報を元にノーズ測点を決める必要がある。さらに、ランプ引出線勾配の設定、ECPP区間の設定、本線ランプの間のゼブラ部の勾配の設定も必要であり、多くの設定を伴う。
【0007】
上述したような多くの設定を行った上で、交差点などランプ起点から本線分合流部であるノーズまでの縦断勾配、合成勾配の確認を行い、不整合があった場合には上記の設定を全て修正した後、再びノーズまでの縦断勾配、合成勾配の確認が必要であり、非常に手間の掛かる作業であるとともに、間違いが起こりやすい。
【0008】
また、道路設計の分野においても、計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入し、設計後の施工段階及び管理段階でも3次元モデルを用いて情報共有を行い、事業の効率化や高度化を目的とした、いわゆるBIM/CIMが推進されている。
【0009】
BIM/CIMの3次元設計が主流となった際、既存技術では、本線及びランプなどの3次元路面モデルをそれぞれ単独で作成し、後から合成する必要が出てくるが、合成時に、ゼブラ部の路面や例えば直接式ランプの本線との重なり部等との整合を取るのが難しい。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、本線及びランプの設計の際に整合の取れた3次元路面モデルが簡単に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する路面モデル自動計算システムを前提とすることができる。路面モデル自動計算システムは、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力部と、ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算部と、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算部と、直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算部と、前記入力部により入力された前記本線の属性、前記ランプの属性及び前記ノーズ測点と、前記ゼブラ部路面計算部により計算された前記ゼブラ部の路面の3次元形状と、前記すり付け計算部により計算された前記すり付け部の3次元形状と、前記重なり計算部で計算された前記幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成部とを備えている。
【0012】
この構成によれば、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付けることで、本線とランプとの相対的な位置関係や本線分合流部であるノーズの位置が特定される。これにより、ゼブラ部、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部、直接式ランプと本線の幅員重なり部の特定も可能になる。そして、ゼブラ部の路面の3次元形状がゼブラ部路面計算部により計算され、また、平行式ランプにおけるすり付け部がすり付け計算部により計算され、また、直接式ランプにおける幅員重なり部が重なり計算部により計算される。これらの3次元形状に基づいて、本線及びランプが一体となった道路の3次元路面モデルが作成されるので、従来の本線とランプをそれぞれ単独で作成した後に合成する手法のように、後から整合を取る必要がなくなるとともに、各種の確認も自動で行うことが可能になり、ユーザの負担が軽減される。
【0013】
本開示の他の態様に係る入力部は、前記本線の属性として前記本線の中心線形、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付け、前記ランプの属性として前記ランプの中心線形、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付け可能に構成されている。
【0014】
この構成によれば、本線及びランプの形状を具体的に特定することが可能になるので、ゼブラ部、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部、直接式ランプと本線の幅員重なり部等を詳細に特定でき、その結果、3次元路面モデルの精度が向上する。
【0015】
本開示の他の態様では、ノーズ引き出し勾配、本線の横断勾配を引き伸ばした縦断線形区間の勾配、折れ勾配の設定を実行する勾配設定部を備えていてもよい。
【0016】
本開示の他の態様に係る入力部は、ランプ縦断計画の数値による入力と、横断勾配のすり付けの数値による入力とを受け付け可能に構成されていてもよい。
【0017】
本開示の他の態様では、前記勾配設定部で設定された各勾配と、前記入力部により入力された前記ランプ縦断計画の数値及び前記横断勾配のすり付けの数値とに基づいて、予め定められた設計規格を満たすか否かを判定する判定部を備えていてもよい。この場合、判定部は、前記本線の縦断勾配及び合成勾配が前記設計規格を満たすか否か判定してもよい。
【0018】
また、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する路面モデル自動計算プログラムは、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力工程と、ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算工程と、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算工程と、直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算工程と、前記入力工程で入力された前記本線の属性、前記ランプの属性及び前記ノーズ測点と、前記ゼブラ部路面計算工程で計算された前記ゼブラ部の路面の3次元形状と、前記すり付け計算工程で計算された前記すり付け部の3次元形状と、前記重なり計算工程で計算された前記幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成工程とをコンピュータに実行させることができる。
【0019】
また、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する路面モデル計算方法を前提とすることもできる。この方法は、本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点の入力を受け付ける入力工程と、ゼブラ部の路面の3次元形状を計算するゼブラ部路面計算工程と、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算するすり付け計算工程と、直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する重なり計算工程と、前記入力工程で入力された前記本線の属性、前記ランプの属性及び前記ノーズ測点と、前記ゼブラ部路面計算工程で計算された前記ゼブラ部の路面の3次元形状と、前記すり付け計算工程で計算された前記すり付け部の3次元形状と、前記重なり計算工程で計算された前記幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成するモデル作成工程とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、ゼブラ部、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部、直接式ランプと本線の幅員重なり部等の3次元形状に基づいて、本線及びランプが一体となった道路の3次元路面モデルを作成できるので、本線及びランプの設計の際に整合の取れた3次元路面モデルを簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る路面モデル自動計算システムの構成図である。
【
図2】路面モデル自動計算システムのブロック図である。
【
図6】平行式ランプのすり付け部の一例を示す平面図である。
【
図7】直接式ランプの幅員重なり部の一例を示す平面図である。
【
図8】路面モデル自動計算の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】ECPP区間設定用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【
図12】折れ勾配設定用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【
図13】ランプ縦断計画と、横断勾配のすり付けを示す図である。
【
図14】ランプ縦断計画の入力用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【
図15】横断勾配のすり付けの入力用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【
図16】設計規格の入力用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【
図17】FIG.17Aは、本線とランプが同勾配である場合の横断図を示し、FIG.17Bは、本線とランプが折れ勾配である場合の横断図を示している。
【
図18】本線幅員のすり付け部設定用ユーザインタフェース画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る路面モデル自動計算システム1の構成図であり、
図2は、路面モデル自動計算システム1のブロック図である。路面モデル自動計算システム1は、インターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを計算する際に使用されるシステムであり、パーソナルコンピュータで構成されている。路面モデル自動計算システム1は、本体部10と、表示部11と、操作部12と、記憶装置13とを備えている。本体部10は、制御部10Aと通信モジュール10Bを有している。制御部10Aは、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAM(メモリ)等で構成されており、プログラムに従って動作する。メモリは、CPUが路面モデル自動計算プログラムを実行する際に当該プログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記憶するためのバッファメモリである。また、通信モジュール10Bは、例えばインターネット等を介して外部の端末と通信する部分であり、データの送信、データの受信等が行えるように構成されている。
【0024】
制御部10Aにより、後述する入力部10a、勾配設定部10b、判定部10c、ゼブラ部路面計算部10d、すり付け計算部10e、重なり計算部10f、モデル作成部10g等が構成されている。入力部10a、勾配設定部10b、判定部10c、ゼブラ部路面計算部10d、すり付け計算部10e、重なり計算部10f及びモデル作成部10gは、制御部10Aを構成しているハードウェアのみで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。例えば、CPUが路面モデル自動計算プログラムを実行することで、入力部10a、勾配設定部10b、判定部10c、ゼブラ部路面計算部10d、すり付け計算部10e、重なり計算部10f及びモデル作成部10gの各機能を制御部10Aが実現可能になる。
【0025】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。表示部11は、制御部10Aに接続されており、制御部10Aによって制御され、各種設定画面、入力画面、設計画面、解析画面等の表示が可能になっている。
【0026】
操作部12は、ユーザが路面モデル自動計算システム1を操作するための機器で構成されている。操作部12には、例えばキーボード12a及びマウス12bが含まれているが、これら以外にも表示部11に組み込まれたタッチ操作パネルや、各種ポインティングデバイス等が含まれていてもよい。操作部12は、制御部10Aに接続されており、ユーザの操作部12による操作が制御部10Aで検出可能になっている。
【0027】
記憶装置13は、各種データやプログラム等を記憶可能なハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置13は制御部10Aに接続されており、制御部10Aからの指示に従い、送られてきたデータの記憶、及び記憶されているデータの読み出しを実行する。記憶装置13は、本体部10に内蔵されていてもよいし、本体部10の外部に設けられていてもよい。また、記憶装置13は、外部のサーバや、いわゆるクラウド型のストレージシステムであってもよい。また、記憶装置13の一部のみ本体部10に内蔵し、他を外部に設けてもよい。
【0028】
記憶装置13には、後述する各工程をコンピュータに実行させる路面モデル自動計算プログラムが記憶されている。この路面モデル自動計算プログラムのユーザへの提供形態は特に限定されるものではなく、例えば
図1に示すようにCD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体Aに記録された状態でユーザに提供されてもよいし、インターネット等を介して外部サーバからダウンロード可能な形態でユーザに提供されてもよい。提供された路面モデル自動計算プログラムを汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることで、当該パーソナルコンピュータを路面モデル自動計算システム1として使用することが可能になる。
【0029】
尚、汎用のパーソナルコンピュータに路面モデル自動計算プログラムをインストールする際には記憶装置13にインストールすればよい。また、汎用のパーソナルコンピュータを、路面モデル自動計算プログラムがインストールされた外部サーバにアクセスさせることで、路面モデル自動計算システム1として使用することも可能であり、路面モデル自動計算プログラムのインストール場所は特に限定されるものではない。
【0030】
路面モデル自動計算システム1は、道路設計を支援するためのソフトウェアを使用し、
図3~
図5に一例を示すような3次元路面モデル100を作成することができるシステムである。3次元路面モデル100を構成するデータは、例えば記憶装置13に記憶されている。記憶装置13から読み出したデータを制御部10Aが
図3に示すような3次元路面モデル100を表す画像に変換して表示部11に表示させる。これにより、ユーザは表示部11上で3次元路面モデル100を確認できる。3次元路面モデル100は、斜視図、平面図、側面図、横断図、縦断図で示すことが可能になっている。尚、3次元路面モデルはカラー画像で表されている。
【0031】
3次元路面モデル100は、本線(本線道路)101と、ランプ(連結道)102とを含んでおり、例えば高速道路や自動車専用道路等のモデルである。本線101は、例えば上り線と下り線とが存在している。
図3に示すように、ランプ102は、本線101の上り線と下り線とにそれぞれ接続されている。各ランプ102の起点は交差点103であり、各ランプ102は起点から本線101まで延びている。ノーズ測点104は、本線101の中心線形、縦断勾配、横断勾配、設計規格と、ランプ102の中心線形、縦断勾配、横断勾配、設計規格とに基づいて決定することが可能であるが、道路設計時にユーザが決定してもよい。ランプ102と、本線101におけるランプ102が接続された部分とにより、インターチェンジの分合流部105が構成される。
【0032】
インターチェンジの分合流部105には、所定の範囲にゼブラ部106が形成される。ゼブラ部106は、ゼブラゾーンとも呼ばれており、いわゆる導流帯である。
【0033】
ランプ102には、平行式ランプ102A(
図5の下側に示す)と、直接式ランプ102B(
図5の上側に示す)とが含まれている。平行式ランプ102Aは、本線101からの分流、本線101への合流に平行な変速車線であり、加速車線として用いられる場合が多い。直接式ランプ102Bは、本線101からの分流時に直接流出の自動車軌跡の特性に合わせて設けられる車線であり、減速車線として用いられる場合が多い。
【0034】
図6に一例を示すように、平行式ランプ102Aでは、本線101への接続を滑らかにするために、本線幅員のすり付け部102a(斜線で示す領域)が設けられている。一方、
図7に一例を示すように、直接式ランプ102Bでは、幅員重なり部102bが存在することになる。
図7における符号102Lは、直接式ランプ102Bの中心線形を示している。
【0035】
次に、路面モデル自動計算システム1を用いた路面モデル自動計算の手順について
図8に示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSA1では、本線の属性のユーザによる入力を受け付ける。このステップSA1は、入力工程の一部である。
【0036】
本線の属性には、本線の設計規格、中心線形、縦断勾配、横断勾配が含まれており、設計規格により本線の幅員構成が確定される。本線の属性を入力する際には、本線の設計規格、中心線形、縦断勾配、横断勾配をそれぞれ入力可能なユーザインタフェース画面(図示せず)を入力部10aが生成して、表示部11に表示させる。本線の中心線形は、道路計画線とも呼ばれており、例えば
図9に一例を示すように、直線、円弧、クロソイド曲線等の要素の組み合わせによって構成されるものであり、起点と終点が固定されていて、その間の必ず通過したい通過点も固定されている。固定された点の間が上記要素の組み合わせで構成される。尚、設計規格の入力方法については後述する。
【0037】
本線の中心線形の入力する際にはユーザが操作部12を操作する。操作部12でどのような操作が行われたかは、制御部10Aの入力部10aで検出される。入力部10aは、操作部12の操作を検出することで、本線の中心線形の入力を受け付ける。
【0038】
また、本線の縦断勾配及び横断勾配の入力は、縦端面形状を示した図及び横断面形状を示した図から入力する画面入力方法であってもよいし、測定点ごとに勾配を数値で入力する数値入力方法であってもよい。いずれの方法であっても、入力部10aは、操作部12の操作を検出することで、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付ける。
【0039】
ステップSA2では、ランプの属性のユーザによる入力を受け付ける。このステップSA2も入力工程の一部である。尚、ステップSA1、SA2は、どちらが先であってもよい。また、ステップSA1、SA2を同工程で行ってもよい。
【0040】
ランプの属性には、ランプの設計規格、中心線形、縦断勾配、横断勾配が含まれており、設計規格によりランプの幅員構成が確定される。ランプの属性を入力する際には、本線の属性を入力する場合と同様に入力部10aにより入力可能である。
【0041】
ステップSA3は、ユーザによるノーズ測点の入力入力を受け付ける。このステップSA3も入力工程の一部である。ステップSA1、SA2と、ステップSA3とは、同工程で行ってもよい。入力部10aでは、ノーズ測点として、例えば1mごとの任意の測点を入力することが可能になっている。ノーズ測点も、入力部10aが生成したユーザインタフェース画面(図示せず)上で行うことができる。
【0042】
ステップSA4では、勾配設定部10bによって勾配設定を実行する。このステップSA4は勾配設定工程であり、ノーズ引き出し勾配、ECPP区間勾配、折れ勾配等を設定する。ノーズ引き出し勾配、ECPP区間勾配、折れ勾配は、ユーザが入力部10aを操作して入力した各種数値や条件に基づいて、勾配設定部10bが算出し、設定する。
【0043】
ノーズ引き出し勾配を設定する際には、まず、例えば
図11に示すように各条件を設定する。設定した各条件に基づいて所定の計算式を利用してノーズ引き出し勾配を計算する。ノーズ引き出し勾配の計算手法は従来から周知の手法を用いることができる。ステップSA4では、このようにして計算したノーズ引き出し勾配を設定する。
【0044】
また、ECPP(Elevation Calculated Pint by Point)区間は、本線の横断勾配を引き伸ばした縦断線形区間である。ECPP区間勾配を設定する際には、まず、勾配設定部10bが、
図11に示すようなECPP区間設定用ユーザインタフェース画面200を生成し、表示部11に表示させる。ECPP区間設定用ユーザインタフェース画面200には、中心線形の選択を行うための選択領域201と、出発点側の設定領域202と、終点側の設定領域203とが設けられている。
図11の下側には、ECPP区間設定用ユーザインタフェース画面200で設定可能な箇所を示す模式図を記載しており、この模式図に示すように、所定の長さのECPP区間勾配を設定できる。
【0045】
また、折れ勾配を設定する際には、まず、勾配設定部10bが、
図12に示すような折れ勾配設定用ユーザインタフェース画面210を生成し、表示部11に表示させる。勾配設定用ユーザインタフェース画面210は、ランプ勾配に折れがある場合に片勾配の折れ線位置を設定することができ、さらに離れを暫定中心からの距離(オフセット)として指定することもできる。この勾配設定用ユーザインタフェース画面210には、線形の選択を行うための選択領域211と、ノーズ部の設定を行うためのノーズ設定領域212と、片勾配の折れ線の設定を行うための折れ線設定領域213と、オフセットの設定を行うためのオフセット設定領域214とが設けられている。ヘルプ画面220に示しているように、オフセット、ノーズ幅、離れ等が定義されている。
【0046】
ステップSA5では、ランプ縦断計画の数値による入力と、横断勾配のすり付けの数値による入力とをユーザから受け付ける。このステップSA5は、ランプ縦断計画及び横断勾配のすり付けを入力する工程であり、具体的には、ランプ縦断計画の数値による入力と、横断勾配のすり付けの数値による入力とを入力部10aが受け付ける。
【0047】
図13は、ランプ縦断計画と、横断勾配のすり付けを示す図であり、縦断図、曲率、横断勾配を関連付けた状態で表している。この図は一例である。
図14は、ランプ縦断計画を数値で入力するためのランプ縦断計画入力用ユーザインタフェース画面240である。入力部10aは、ランプ縦断計画入力用ユーザインタフェース画面240を生成して表示部11に表示させる。ランプ縦断計画入力用ユーザインタフェース画面240には、測点、高さ(Z)、勾配%(計算値)等をユーザが操作部12によって入力可能になっている。
【0048】
図15は、横断勾配のすり付け入力用ユーザインタフェース画面250である。入力部10aは、すり付け入力用ユーザインタフェース画面250を生成して表示部11に表示させる。すり付け入力用ユーザインタフェース画面250には、測点、主要点名、横断勾配等をユーザが操作部12によって入力可能になっている。
【0049】
ステップSA6では、勾配設定部10bで設定された各勾配と、入力部10aにより入力されたランプ縦断計画の数値及び横断勾配のすり付けの数値とに基づいて、予め定められた設計規格を満たすか否かを判定する。この判定は、判定部10cが実行する。
図16は、設計規格の入力用ユーザインタフェース画面260を示しており、設計規格を入力する際には、入力部10aが入力用ユーザインタフェース画面260を生成して表示部11に表示させる。この入力用ユーザインタフェース画面260には、設計速度や車線数等を入力するための全般入力領域261と、平面線形/縦断線形等を入力する線形入力領域262とが設けられている。線形入力領域262には、最大縦断勾配の入力領域262a、最大合成勾配の入力領域262bとが含まれている。判定部10cは、まず、勾配設定部10bで設定された各勾配と、入力部10aにより入力されたランプ縦断計画の数値及び横断勾配のすり付けの数値とに基づいて、最大縦断勾配と最大合成勾配を算出する。その後、判定部10cは、算出した最大縦断勾配が、最大縦断勾配の入力領域262aに入力された値未満であるか否かを判定する。また、判定部10cは、算出した最大合成勾配が、最大合成勾配の入力領域262bに入力された値未満であるか否かを判定する。最大縦断勾配及び最大合成勾配が両方とも、設計規格を満たす場合には、ステップSA6でYESと判定されてステップSA8に進む。一方、最大縦断勾配及び最大合成勾配の少なくとも1つが設計規格を満たさない場合には、ステップSA6でNOと判定されてステップSA7に進む。ステップSA7では、ノーズ測点を変更する。ノーズ測点の変更は路面モデル自動計算システム1が自動で実行してもよいし、ユーザが実行してもよい。路面モデル自動計算システム1が自動で実行する場合には、所定距離(例えば5m、10m、20m等)だけ、ノーズ測点を移動させる。手動で実行する場合には、ユーザが操作部12等を操作して同様に所定距離だけ、ノーズ測点を移動させる。ノーズ測点の移動距離は任意の距離であってもよい。ノーズ測点を変更した後、ステップSA4に進み、新たに勾配設定を行う。ノーズ測点が変更になっているので、ステップSA4で設定される勾配設定は、前回の設定とは異なることになる。
【0050】
ステップSA8では、ゼブラ部路面計算部10dが、ゼブラ部の路面の3次元形状を計算する。このステップSA8は、ゼブラ部路面計算工程である。
図5にはゼブラ部106を示しており、また、
図17のFIG.17Aには、本線101とランプ102が同勾配である場合の横断図を示し、FIG.17Bには、本線101とランプ102が折れ勾配である場合の横断図を示している。本線101とランプ102の間にノーズ測点104が位置しており、その近傍の領域がゼブラ部106となっている。ゼブラ部の路面の3次元形状は、これまでに入力または設定された縦断勾配や横断勾配等に基づいて計算できる。
【0051】
ステップSA9では、すり付け計算部10eが、平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部の3次元形状を計算する。このステップSA9は、すり付け計算工程である。
図6に平行式ランプにおける本線幅員のすり付け部102aを示している。本線幅員のすり付け部102aの3次元形状は、これまでに入力または設定された縦断勾配や横断勾配等に基づいて計算できる。
【0052】
例えば
図18に示すようなすり付け部設定用ユーザインタフェース画面290をすり付け計算部10eが生成して表示部11に表示させる。すり付け部設定用ユーザインタフェース画面290には、線番の指定が可能な線番指定領域291と、すり付け番号を指定可能なすり付け番号指定領域292と、左右のすり付け測定及び幅視点を入力可能な測定及び幅視点入力領域293とが設けられている。本線幅員のすり付け方法は、線番指定領域291で線形番号を指定するとともに、すり付け番号指定領域292ですり付け幅員を指定し、さらに、測定及び幅視点入力領域293ですり付け測定及び幅視点を入力する工程を含んでいる。すり付け部設定用ユーザインタフェース画面290の下側には、図面表示領域294が設けられている。図面表示領域294には、本線幅員すり付け部とランプ線形とが表示される。
【0053】
ステップSA10では、重なり計算部10fが、直接式ランプと本線の幅員重なり部の3次元形状を計算する。このステップSA10は、重なり計算工程である。
図7に直接式ランプと本線の幅員重なり部102bを示している。直接式ランプと本線の幅員重なり部102bの3次元形状は、これまでに入力または設定された中心線形、縦断勾配、横断勾配、設計規格に基づいて計算された本線、ランプの3次元路面モデルもしくは3次元幅員線の交差計算により、本線およびランプの不要幅員部を除去することで求めることができる。このとき、幅員重なり部102bの不要幅員線を表示することができる。
【0054】
ステップSA11では、モデル作成部10gが、
図3~
図5に示すようにインターチェンジの分合流部を含んだ道路の3次元路面モデルを作成する。このステップSA11は、モデル作成工程である。具体的には、モデル作成部10gは、入力部10aにより入力された本線の属性、ランプの属性及びノーズ測点と、ゼブラ部路面計算部10dにより計算されたゼブラ部の路面の3次元形状と、すり付け計算部10eにより計算されたすり付け部の3次元形状と、重なり計算部10fで計算された幅員重なり部の3次元形状とに基づいて、本線及びランプの路面の形状を含んだ3次元路面モデルを作成する。
【0055】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、モデル作成部10gは、ゼブラ部の路面の3次元形状、すり付け部の3次元形状及び幅員重なり部の3次元形状に基づいて、3次元路面モデルを作成する。したがって、本線及びランプの路面の3次元形状を同時に計算することができるので、重なりが無くなり、整合の取れた3次元路面モデル(サーフェース)を作成できる。
【0056】
さらに、判定部10cが、設計データが設計規格を満たしているか否かを自動で判定し、縦断勾配、合成勾配の不整合があった場合、ノーズ測点を自動で変更して設計データを再度作成し、設計規格を満たしているか否かを再度判定することで、ユーザの負担を軽減しながら、最適なノーズ測点を計算できる。
【0057】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係る路面モデル自動計算システム及び路面モデル自動計算プログラムは、例えば道路設計CADシステムで利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 路面モデル自動計算システム
10a 入力部
10b 勾配設定部
10c 判定部
10d ゼブラ部路面計算部
10e すり付け計算部
10f 重なり計算部
10g モデル作成部