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特開2024-38553機械式立体駐車装置の躯体構造、機械式立体駐車装置および防振装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038553
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】機械式立体駐車装置の躯体構造、機械式立体駐車装置および防振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20240313BHJP
   E04H 6/22 20060101ALI20240313BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E04H6/18 601Z
E04H6/18 606A
E04H6/22 B
F16F15/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142630
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237835
【氏名又は名称】富士変速機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 幸司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】西部 裕紀
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA01
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械式立体駐車装置において防振性と共に構造的強度をより効果的に発揮し得る躯体構造を提供する。
【解決手段】躯体構造100は、複数の駐車室14および格納空間11を内側に画定するとともに、格納空間11に複数の駐車室14および車両搬送機構15を支持するように構成され、格納空間11は、水平方向にxy平面をなすとともに互いに交差するx軸およびy軸と、xy平面に対して垂直なz軸を画定する。格納空間11の底部に立設され、z軸方向に延伸する柱材101と、柱材101から格納空間11の外側に向けてx軸およびy軸の少なくとも一方に沿って延びるとともに、柱材101を建造物20に対して連結する延設部104,106と、延設部104,106と建造物20との間に介在し、建造物20および延設部104,106の両方に固定され、延設方向に沿った内外方向に柱材101を防振する防振装置と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の内部に設置され、複数の階層の少なくとも一部に配置された複数の駐車室および前記各駐車室に車両を搬送するための車両搬送機構を備える機械式立体駐車装置の躯体構造であって、
前記躯体構造は、前記複数の駐車室および前記車両搬送機構を格納するための格納空間を内側に画定するとともに、前記格納空間に前記複数の駐車室および前記車両搬送機構を支持するように構成され、前記格納空間は、水平方向にxy平面をなすとともに互いに直交するx軸およびy軸と、xy平面に対して垂直なz軸を画定し、
前記躯体構造は、
前記格納空間の底部に立設され、z軸方向に延伸する柱材と、
前記柱材から前記格納空間の外側に向けてx軸およびy軸の少なくとも一方に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対して連結する延設部と、
前記延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記延設部の両方に固定され、前記延設部の延設方向に沿った内外方向に前記柱材を防振する防振装置と、を備えることを特徴とする躯体構造。
【請求項2】
前記延設部は、前記柱材から前記格納空間の外側に向けてx軸に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対してx軸方向に連結する第1延設部と、前記柱材から前記格納空間の外側に向けてy軸に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対してy軸方向に連結する第2延設部とから構成され、
前記防振装置は、前記第1延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記第1延設部の両方に固定され、前記柱材をx軸に沿った内外方向に防振する第1の防振装置と、前記第2延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記第2延設部の両方に固定され、前記柱材をy軸に沿った内外方向に防振する第2の防振装置とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の躯体構造。
【請求項3】
x軸方向に並ぶ柱材を互いに連結する梁材をさらに備え、y軸方向に並ぶ柱材は互いに連結されていないことを特徴とする請求項2に記載の躯体構造。
【請求項4】
前記防振装置は、
前記建造物に固定ボルトで固定されるベースプレートと、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の外側防振体であって、前記外側防振体の外面が前記ベースプレートに当接するように配置された、外側防振体と、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の内側防振体であって、前記内側防振体の外面が前記外側防振体の内面に部分的に当接するように配置された、内側防振体と、
前記内側防振体および前記外側防振体を互いに圧接させるように締結する締結部材と、を備え、
前記防振装置の前記内側防振体の外面および前記外側防振体の内面の間には、前記延設部の連結板が挟み込まれ、前記延設部が前記延設部の延設方向に沿った内外方向に防振状態で前記防振装置に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の躯体構造。
【請求項5】
前記締結部材は、前記ベースプレートから内向きに立設したボルト軸、および、前記ボルト軸に螺着されるナット体とから構成され、
前記外側防振体は、所定の厚みを有する板状の外側防振ゴムと、前記外側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記ボルト軸を内挿する剛性の外側筒材と、を備え、
前記内側防振体は、所定の厚みを有する板状の内側防振ゴムと、前記内側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記ボルト軸を内挿する剛性の内側筒材と、を備え、
前記外側防振ゴムの内面と前記内側防振ゴムの外面とが面で接触し、前記外側筒材および前記内側筒材が互いに内外方向に連続するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の躯体構造。
【請求項6】
前記内側防振体は、前記締結部材が貫通する貫通孔を有し、前記内側防振ゴムの内面に当接するように配置された剛性の内側プレートをさらに備え、前記締結部材が前記内側プレートの内面に圧接していることを特徴とする請求項5に記載の躯体構造。
【請求項7】
前記躯体構造は、xy平面に複数の格納空間を画定し、前記複数の格納空間は、前記建造物の隔壁または鉄骨によって互いに仕切られており、前記隔壁または鉄骨に前記第1または第2の防振装置が固定され、前記複数の格納空間の各々には、同一xy平面上に前記第1および第2の防振装置が4つずつ設けられていることを特徴とする請求項2に記載の躯体構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の躯体構造を備えることを特徴とする機械式立体駐車装置。
【請求項9】
建造物の内部に設置される機械式立体駐車装置の躯体構造を、前記建造物に対して防振状態で連結するための防振装置であって、
前記躯体構造は、前記機械式立体駐車装置の車両搬送機構および駐車室を少なくとも格納するための格納空間の底部に立設され、高さ方向に延伸する柱材と、前記柱材から前記格納空間の外側に向けて延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対して連結する延設部と、を備え、
前記防振装置は、
前記建造物にボルトで固定されるベースプレートと、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の外側防振体であって、前記外側防振体の外面が前記ベースプレートに当接するように配置された、外側防振体と、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の内側防振体であって、前記内側防振体の外面が前記外側防振体の内面に部分的に当接するように配置された、内側防振体と、
前記内側防振体および前記外側防振体を互いに圧接させるように締結する締結部材と、を備え、
前記内側防振体の外面および前記外側防振体の内面の間に、前記延設部の連結板を挟み込むことで、前記延設部を内外方向に防振状態で支持するように構成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項10】
前記締結部材は、前記ベースプレートから内向きに立設したボルト軸、および、前記ボルト軸に螺着されるナット体とから構成され、
前記外側防振体は、所定の厚みを有する板状の外側防振ゴムと、前記外側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する剛性の外側筒材と、を備え、
前記内側防振体は、所定の厚みを有する板状の内側防振ゴムと、前記内側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する剛性の内側筒材と、を備え、
前記外側防振ゴムの内面と前記内側防振ゴムの外面とが面で接触し、前記外側筒材および前記内側筒材が互いに内外方向に連続するように配置されていることを特徴とする請求項9に記載の防振装置。
【請求項11】
前記内側防振体は、前記締結部材が貫通する貫通孔を有し、前記内側防振ゴムの内面に当接するように配置された剛性の内側プレートをさらに備え、前記締結部材が前記内側プレートの内面に圧接していることを特徴とする請求項10に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルなどの建造物内部に設置される機械式立体駐車装置の躯体構造に関する。さらには、本発明は、当該躯体構造を含む機械式立体駐車装置、および、当該躯体構造に用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式立体駐車装置は、複数の階層に亘って車両を駐車するための複数の駐車室と、車両を複数の駐車室の各々へと搬送する車両搬送機構とから少なくとも構成される。これら駐車室および車両搬送機構は、機械式立体駐車装置の骨組みをなす躯体構造の内部に設けられて支持される。そして、機械式立体駐車装置の躯体構造は、ビルなどの建造物内部に設置されることが多く行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、ビル内エレベータ式機械駐車装置を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。ビル内エレベータ式機械駐車装置は、本体建物(1)内に、その内壁面の近くに配置された複数本の鉄骨柱(11A~11D)と、受柱(12A~12D)と、ガイドレール(13A~13D)を備え、駐車車両を格納するために受柱(12A~12D)の長手方向に沿って多段の格納スペースを形成し、ガイドレール(13A~13D)に沿って昇降しながら本体建物(1)の出入口を有する乗込面と格納スペース間で駐車車両の移動を行うものである。各鉄骨柱(11A~11D)間は、本体建物(1)の梁(1A)に対向する部分で、受柱(12A~12D)およびガイドレール(13A~13D)の外周部を包囲するように井桁状または四角形状に構成した上部支持体(32)によって結合されている。上部支持体(32)は、ほぼ同一水平面上で鉄骨柱(11A)と鉄骨柱(11B)間を結合した連結部材(33A)と、鉄骨柱(11A)と鉄骨柱(11C)間を結合した連結部材(33B)と、鉄骨柱(11C)と鉄骨柱(11D)間を結合した連結部材(33C)と、鉄骨柱(11D)と鉄骨柱(11B)間を結合した連結部材(33D)を有して構成されている。また上部支持体(32)は、その四隅に前後方向で梁(1A)の内面に接する防振ゴム装置(21A)と、その四隅に左右方向で梁(1A)の内面に接する防振ゴム装置(21B)がそれぞれ配置されている。本体建物(1)の他の梁(1B~1N)に対向する部分の各鉄骨柱(11A~11D)に、上部支持体(32)の場合と同様に前後方向および左右方向に延びた複数の防振ゴム装置(21A,21B)を配置し、各防振ゴム装置(21A,21B)の先端部に設けられた防振ゴムが、本体建物(1)における他の梁(1B~1N)の内面にそれぞれ接触するようにされて、多段構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-19515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のビル内エレベータ式機械駐車装置(機械式立体駐車装置)の躯体構造は、その4隅に前後左右方向で本体建物(建造物)に接する防振ゴム装置を複数設けることによって、エレベーター式機械式駐車装置側から本体建物側に伝播される振動および固体伝播音を抑制するものである。しかしながら、このような従来の躯体構造では、4本の鉄骨柱(柱材)を井桁状または四角形状に組まれた梁材で連結し、箱状の骨組みを形成することにより、躯体構造自体の構造的強度を確保する必要がある。特に、ビルや駐車装置が高層になるにつれ、その構造的強度を確保するために、躯体構造には、多数の梁材を使用してそれ自体を補強することが必要であった。このように多数の補強材(梁材)を躯体構造に設けることにより、結果として、材料コストが上がったり、格納空間の有効面積が狭まって、例えば、ビル内エレベータ式機械駐車装置が巨大化するなどの設計上の制限が生じることが問題であった。発明者らは、上記問題点に着目し、躯体構造を防振状態で建造物内部に設置するとともに、躯体構造の構造的強度をより効果的に確保し、必要な補強材の量を削減することを課題とした。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、機械式立体駐車装置において防振性とともに構造的強度をより効果的に発揮し得る躯体構造を提供することにある。さらに、本発明は、当該躯体構造を含む機械式立体駐車装置、および、当該躯体構造に用いられる防振装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の躯体構造は、建造物の内部に設置され、複数の階層の少なくとも一部に配置された複数の駐車室および前記各駐車室に車両を搬送するための車両搬送機構を備える機械式立体駐車装置の躯体構造であって、
前記躯体構造は、前記複数の駐車室および前記車両搬送機構を格納するための格納空間を内側に画定するとともに、前記格納空間に前記複数の駐車室および前記車両搬送機構を支持するように構成され、前記格納空間は、水平方向にxy平面をなすとともに互いに交差するx軸およびy軸と、xy平面に対して垂直なz軸を画定し、
前記躯体構造は、
前記格納空間の底部に立設され、z軸方向に延伸する柱材と、
前記柱材から前記格納空間の外側に向けてx軸およびy軸の少なくとも一方に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対して連結する延設部と、
前記延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記延設部の両方に固定され、前記延設部の延設方向に沿った内外方向に前記柱材を防振する防振装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の躯体構造によれば、防振装置が延設部と建造物との間に介在し、建造物および延設部の両方に固定され、柱材を延設部の延設方向に沿った内外双方に防振するように配置されている。すなわち、躯体構造の柱材は、防振装置を介して建造物に一体的に連結され、x軸およびy軸方向の少なくとも一方から建造物によって支持されていることから、柱材における十分な構造的強度を確保し得る。さらに、防振装置が、それぞれ、x軸またはy軸に沿った内外方向において、柱材を建造物に対して防振状態で弾性的に連結することによって防振性を発揮し得る。したがって、本発明の躯体構造は、機械式立体駐車装置において防振性とともに構造的強度をより効果的に発揮し得るものである。
【0009】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、前記延設部は、前記柱材から前記格納空間の外側に向けてx軸に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対してx軸方向に連結する第1延設部と、前記柱材から前記格納空間の外側に向けてy軸に沿って延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対してy軸方向に連結する第2延設部とから構成され、
前記防振装置は、前記第1延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記第1延設部の両方に固定され、前記柱材をx軸に沿った内外方向に防振する第1の防振装置と、前記第2延設部と前記建造物との間に介在し、前記建造物および前記第2延設部の両方に固定され、前記柱材をy軸に沿った内外方向に防振する第2の防振装置とから構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の躯体構造によれば、第1の防振装置が第1延設部と建造物との間に介在し、建造物および第1延設部の両方に固定され、柱材をx軸に沿った内外方向に防振し、かつ、第2の防振装置が第2延設部と建造物との間に介在し、建造物および第2延設部の両方に固定され、柱材をy軸に沿った内外方向に防振するように配置されている。すなわち、躯体構造の柱材が、第1および第2の防振装置を介して建造物に一体的に連結され、x軸およびy軸方向の両方から建造物によって支持されていることから、より効果的に躯体構造の構造的強度を確保し得る。さらに、第1および第2の防振装置が、それぞれ、x軸に沿った内外方向およびy軸に沿った内外方向において、柱材を建造物に対して防振状態で弾性的に連結することによって必要な防振性をも有している。したがって、本発明の躯体構造は、機械式立体駐車装置において防振性とともに構造的強度をより効果的に発揮し得るものである。
【0011】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、x軸方向に並ぶ柱材を互いに連結する梁材をさらに備え、y軸方向に並ぶ柱材は互いに連結されていないことを特徴とする。すなわち、柱材をx軸方向にのみ梁材で連結することで、躯体構造の強度を効果的に向上させる一方で、格納空間の有効面積がy軸方向に狭まることが抑えられる。
【0012】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、前記防振装置は、前記建造物に固定ボルトで固定されるベースプレートと、前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の外側防振体であって、前記外側防振体の外面が前記ベースプレートに当接するように配置された、外側防振体と、前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の内側防振体であって、前記内側防振体の外面が前記外側防振体の内面に部分的に当接するように配置された、内側防振体と、前記内側防振体および前記外側防振体を互いに圧接させるように締結する締結部材と、を備え、前記防振装置の前記内側防振体の外面および前記外側防振体の内面の間には、前記延設部の連結板が挟み込まれ、前記延設部が前記延設部の延設方向に沿った内外方向に防振状態で前記防振装置に支持されていることを特徴とする。すなわち、第1および第2の防振装置が、固定ボルトで建造物に固定され、かつ、内側防振体および外側防振体の間に延設部の連結板を挟持することにより、柱材を建造物に対して近接および離間方向の両方において防振状態で連結することが可能である。
【0013】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、前記締結部材は、前記ベースプレートから内向きに立設したボルト軸、および、前記ボルト軸に螺着されるナット体とから構成され、前記外側防振体は、所定の厚みを有する板状の外側防振ゴムと、前記外側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する外側金属筒と、を備え、前記内側防振体は、所定の厚みを有する板状の内側防振ゴムと、前記内側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する内側金属筒と、を備え、前記外側防振ゴムの内面と前記内側防振ゴムの外面とが面で接触し、前記外側金属筒および前記内側金属筒が互いに内外方向に連続するように配置されていることを特徴とする。すなわち、ボルト軸が内側金属筒および外側金属筒を貫通した状態でナット体がボルト軸に締結されるとき、ナット体が内側防振ゴムを局所的に押圧して内側防振ゴムを歪んだ状態で弾性変形させることが防止される。
【0014】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、前記内側防振体は、前記締結部材が貫通する貫通孔を有し、前記内側防振ゴムの内面に当接するように配置された剛性の内側プレートをさらに備え、前記締結部材が前記内側プレートの内面に圧接していることを特徴とする。すなわち、ナット体と内側防振ゴムとの間に内側プレートが介在することで、ナット体の締結力を、内側防振ゴムにより均一にかけることが可能である。
【0015】
本発明のさらなる形態の躯体構造は、上記形態の躯体構造において、xy平面に複数の格納空間を画定し、前記複数の格納空間は、前記建造物の隔壁または鉄骨によって互いに仕切られており、前記隔壁または鉄骨に前記第1または第2の防振装置が固定され、前記複数の格納空間の各々には、同一xy平面上に前記第1および第2の防振装置が4つずつ設けられていることを特徴とする。すなわち、本発明の躯体構造は、xy平面に複数の格納空間を設けた場合であっても同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0016】
本発明の一形態の防振装置は、建造物の内部に設置される機械式立体駐車装置の躯体構造を、前記建造物に対して防振状態で連結するための防振装置であって、
前記躯体構造は、前記機械式立体駐車装置の車両搬送機構および駐車室を少なくとも格納するための格納空間の底部に立設され、高さ方向に延伸する柱材と、前記柱材から前記格納空間の外側に向けて延びるとともに、前記柱材を前記建造物に対して連結する延設部と、を備え、
前記防振装置は、
前記建造物にボルトで固定されるベースプレートと、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の外側防振体であって、前記外側防振体の外面が前記ベースプレートに当接するように配置された、外側防振体と、
前記建造物側を向く外面および前記柱材側を向く内面を有する板状の内側防振体であって、前記内側防振体の外面が前記外側防振体の内面に部分的に当接するように配置された、内側防振体と、
前記内側防振体および前記外側防振体を互いに圧接させるように締結する締結部材と、を備え、
前記内側防振体の外面および前記外側防振体の内面の間に、前記延設部の連結板を挟み込むことで、前記延設部を内外方向に防振状態で支持するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の防振装置によれば、防振装置が、固定ボルトで建造物に固定され、かつ、内側防振体および外側防振体の間に延設部の連結板を挟持することにより、柱材を建造物に対して近接および離間方向の両方において防振状態で弾性的に連結することが可能である。すなわち、防振装置は、躯体構造の柱材を建造物に一体的に連結することで、躯体構造の建造物への支持を形成し、(梁材で補強する以外の手段によって)躯体構造が十分な構造的強度を確保することを補助するものである。したがって、本発明の防振装置は、機械式立体駐車装置において躯体構造の防振性とともに構造的強度を向上させるものである。
【0018】
本発明のさらなる形態の防振装置は、上記形態の防振装置において、前記締結部材は、前記ベースプレートから内向きに立設したボルト軸、および、前記ボルト軸に螺着されるナット体とから構成され、前記外側防振体は、所定の厚みを有する板状の外側防振ゴムと、前記外側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する外側金属筒と、を備え、前記内側防振体は、所定の厚みを有する板状の内側防振ゴムと、前記内側防振ゴムを内外方向に貫通し、前記締結部材を内挿する内側金属筒と、を備え、前記外側防振ゴムの内面と前記内側防振ゴムの外面とが面で接触し、前記外側金属筒および前記内側金属筒が互いに内外方向に連続するように配置されていることを特徴とする。すなわち、ボルト軸が内側金属筒および外側金属筒を貫通した状態でナット体がボルト軸に締結されるとき、ナット体が内側防振ゴムを局所的に押圧して内側防振ゴムを歪んだ状態で弾性変形させることが防止される。
【0019】
本発明のさらなる形態の防振装置は、上記形態の防振装置において、前記締結部材が貫通する貫通孔を有し、前記内側防振ゴムの内面に当接するように配置された剛性の内側プレートをさらに備え、前記締結部材が前記内側プレートの内面に圧接していることを特徴とする。すなわち、ナット体と内側防振ゴムとの間に内側プレートが介在することで、ナット体の締結力を、内側防振ゴムにより均一にかけることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の躯体構造は、建造物の内部に設置される機械式立体駐車装置において、防振性とともに構造的強度をより効果的に発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の機械式立体駐車装置を模式的に示す概略斜視図。
図2図1の機械式立体駐車装置を正面から見た模式図。
図3図1の機械式立体駐車装置を側面から見た模式図。
図4図1の機械式立体駐車装置の所定の階層における平面模式図。
図5図4の機械式立体駐車装置の格納空間の角隅部を示す部分拡大図。
図6】本発明の一実施形態の躯体構造のブラケットを示す(a)斜視図、(b)正面図、(c)側面図および(d)平面図。
図7】本発明の一実施形態の躯体構造の防振装置の概略斜視図。
図8図7の防振装置の分解斜視図。
図9図8の防振装置の外側または内側防振体の分解斜視図。
図10】本発明の一実施形態の躯体構造の第1延設部と建造物との連結構造を示す平面図。
図11図10の連結構造の正面図。
図12図10のA-A断面図。
図13図10のB-B断面図。
図14】本発明の別実施形態の機械式立体駐車装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図または概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態の躯体構造100は、ビル等の建造物20内に設置された櫛歯(フォーク)式の立体駐車場である機械式立体駐車装置10に例示的に組み込まれた。図1は、建造物20内部に設置された機械式立体駐車装置10を模式的に示す概略斜視図である。図2は、機械式立体駐車装置10を正面から見た模式図である。図3は、機械式立体駐車装置10を側面から見た模式図である。図4は、機械式立体駐車装置10の所定の階層における平面模式図である。なお、建造物20の外壁や構造材の一部について、説明の便宜上、その描写を省略した。
【0024】
機械式立体駐車装置10は、複数の階層に車両を駐車可能である櫛歯式の機械式立体駐車場である。図1図3に示すように、機械式立体駐車装置10は、ユーザーが車両から乗り降りするための乗降領域12と、乗降領域12から車両を他の階層に昇降させるように昇降方向に延びる昇降空間13と、昇降空間13から車両を横行させて収容すべく昇降空間13に対して横行方向に隣接配置された複数の駐車室14と、車両Vを乗降領域12から各駐車室14へと搬送する車両搬送機構15と、これら各構成要素を格納する格納空間11を内側に画定する躯体構造100と、を備える。機械式立体駐車装置10は、電力供給のために電源に接続されているとともに、その動作は、制御部によって制御される。以下、機械式立体駐車装置10の各構成要素についてより詳細に説明する。
【0025】
乗降領域12は、車両から乗り降りするように格納空間11の地上1階に配置されている。乗降領域12の床面には、車両を載置可能な櫛歯状フレームが配置され、その下には、昇降リフト16を収容するための収容部12aが凹設されている。当該乗降領域12の外部には、車路に隣接した外部領域が配置されている。外部領域は、出入口扉を介して乗降領域12に連通する領域である。乗降領域12は、車両が車路から乗り入れまたは車路に出庫可能であるように、車路と同じレベルの階層に配置されている。また、建造物20の外部には、出入口扉に隣接して操作盤が設けられている。ユーザーは、入庫のために車両を外部領域に一旦車両を停車させて、操作盤に必要な情報を入力することにより、出入口扉を開閉し、車両を所定の駐車室14に搬送して入庫処理することができる。あるいは、ユーザーは、出庫のために操作盤に必要な情報を入力することにより、出入口扉を開閉し、車両を所定の駐車室14から乗降領域12に搬送して出庫処理することができる。なお、乗降領域12には、車両を停車する規定の停車領域として回転床が設けられてもよい。回転床は、停車した車両を支持し、回転することにより、車両の向きを変更するものである。
【0026】
昇降空間13は、昇降リフト16が昇降するための空間であり、全階層に亘って延びている。昇降空間13の高さは、所望の駐車室14の数、すなわち、駐車塔の階層数によって設定される。当該昇降空間13において、昇降リフト16の櫛歯と、横行トレイ17の櫛歯とがすれ違うことにより、昇降リフト16および横行トレイ17間の車両の受け渡しが行われる。
【0027】
各駐車室14は、乗降領域12と異なる各階層で昇降空間13の横行方向の両側に対となるように配置されている。各駐車室14は、1台の車両を駐車可能な空間である。各駐車室14には、車両が載置される横行トレイ17が配置される。
【0028】
車両搬送機構15は、昇降空間13を昇降する昇降リフト16と、対応する駐車室14に格納されるとともに、駐車室14と昇降空間13との間を略水平に横行レールに沿って横行する横行トレイ17と、これらを駆動させる駆動手段(図示略)とを備える。昇降リフト16は、車両を載置可能な櫛歯状フレームを有し、乗降領域12の床面の櫛歯状フレームに対して昇降方向にすれ違い可能に形成されている。一例として、昇降リフト16は、左右一対に分割されたフレームからなり、外側フレームから内側へ櫛歯が延びている。横行トレイ17は、車両を載置可能な櫛歯状フレームを有し、該フレームは昇降リフト16の櫛歯状フレームに対して昇降方向にすれ違い可能に形成されている。一例として、横行トレイ17は、中央フレームから左右外方に櫛歯が延びる櫛歯形状を有する。横行トレイ17は、各駐車室14にそれぞれ格納されている。横行トレイ17は、駐車室14から昇降空間13に横行レールに沿って駆動されるが、該横行レールにリミットスイッチ(図示せず)を設けることにより、その位置をより正確に制御することができる。なお、車両搬送機構15は、制御部の指令に基づいて、モータや滑車などの一般的な駆動手段によって駆動するが、ここではその説明を省略する。
【0029】
次いで、機械式立体駐車装置10の入出庫運転の際の搬送機構の動作について説明する。車両を所定の駐車室14に入庫する場合、ユーザーが車両で乗降領域12に乗り込み、停車する。そして、昇降リフト16が上昇すると、車両が乗降領域12の床から昇降リフト16へと移載される。車両を搭載した積載状態の昇降リフト16が所定の駐車室14の床面よりも上方に引き上げられ、横行トレイ17が昇降空間13内に横行して昇降リフト16の下方に配置される。そして、昇降リフト16が下降し、昇降リフト16および横行トレイ17の櫛歯状フレーム同士が互いにすれ違うことにより、昇降リフト16から横行トレイ17へと車両が移載される。移載後、車両を搭載した横行トレイ17が横行レールに沿って駐車室14に横行することにより、車両が駐車室14に収容される。他方、指定された車両を所定の駐車室14から出庫する場合、車両を搭載した横行トレイ17が駐車室14から昇降空間13に横行するとともに、空車状態の昇降リフト16が乗降領域12から上昇する。そして、昇降リフト16および横行トレイ17の櫛歯状フレーム同士がすれ違うように昇降リフト16が上昇して横行トレイ17の上方で停止し、横行トレイ17から昇降リフト16に車両が移載される。次に、空の横行トレイ17が横行して元の駐車室14に収容される。続いて、積載状態の昇降リフト16が地上1階まで下降して、車両が昇降リフト16から乗降領域12の床面に載置される。
【0030】
次に、本実施形態の躯体構造100について説明する。躯体構造100は、建造物20内に設置され、建造物側支持体としての構造壁21によって、x軸方向およびy軸方向から支持されている。また、躯体構造100は、少なくとも、複数の駐車室14および車両搬送機構15を格納するための格納空間11を内側に画定するとともに、格納空間11に複数の駐車室14および車両搬送機構15を支持するように構成されている。格納空間11は、水平方向にxy平面をなすとともに互いに直交するx軸およびy軸と、xy平面に対して垂直なz軸を画定する。すなわち、格納空間11は、機械式立体駐車装置10(または建造物20)の地上部分(床)から天井部分まで複数の階層を形成する高さ(z軸の長さ)を有するとともに、各階層において、1または複数の駐車室14および車両搬送機構15等の必要な設備を格納可能な有効面積(xy平面の面積)を有する空間である。本実施形態において、x軸方向が駐車室14の左右(車幅)方向を示し、y軸方向が駐車室14の前後(車長)方向を示している。なお、格納空間は、直交するx軸およびy軸を画定するが、その平面領域は矩形状に限定されるものでなく、任意の平面形状で設計され得る。また、x軸およびy軸は、直交に限定されず、所定の角度で交差するように画定されてもよい。
【0031】
躯体構造100は、xy平面において、建造物20の矩形状の構造壁21によって囲まれている。躯体構造100は、格納空間11のxy平面の4隅に立設され、z軸方向に延伸する複数の柱材101(本実施形態では4本)を備える。本実施形態では、各柱材101は、建造物20の4隅近くで底部に強固に固定された鉄骨柱である。つまり、各柱材101は、建造物20の4隅で構造壁21に近接配置されている。また、躯体構造100は、その構造を補強するために、x軸方向に並ぶ2本の柱材101,101を互いに連結する梁材103を備える。梁材103は、一般的な鉄骨材からなる。格納空間11内の2本の梁材103,103は、駐車室14および車両搬送機構15に干渉するため、これらの内側に格納空間11の有効面積が定められる。つまり、x軸方向に並ぶ2本の柱材101,101の間の空間は、格納空間11の有効面積に該当しない。一方で、y軸方向に並ぶ2本の柱材101,101は互いに連結されていない。つまり、y軸方向の柱材101,101の間の空間は、駐車室14および車両搬送機構15を格納することに利用可能である。すなわち、図4に示すように、格納空間11のxy平面において、x軸方向の柱材101,101間の連結する梁材103によって、格納空間11の有効面積がy軸方向に狭まっている一方で、有効面積はx軸方向に最大限に確保されている。そして、本実施形態の躯体構造100は、柱材をy軸方向に連結する梁材が省略されているが、以下に説明するとおり、十分な構造的強度を発揮するものである。
【0032】
また、躯体構造100は、複数の柱材101の各々から格納空間11の外側に向けてx軸およびy軸の両方に沿って延びるとともに、各柱材101を建造物20に対して連結する複数の延設部104,106と、各延設部104,106と建造物20との間に介在し、建造物20および延設部104,106の両方に固定され、延設部104,106の延設方向に沿った内外方向に柱材101を防振する複数の防振装置110(1101,1102)と、を備える。
【0033】
より具体的には、躯体構造100は、図5に示すように、複数の柱材101の各々から格納空間11の外側に向けてx軸に沿って延びるとともに、各柱材101を建造物20の構造壁21に対してx軸方向に連結する複数の第1延設部104と、複数の柱材101の各々から格納空間11の外側に向けてy軸に沿って延びるとともに、各柱材101を建造物20の構造壁21に対してy軸方向に連結する複数の第2延設部106とをさらに備える。各延設部104,106は、梁材103と同様に鉄骨材から形成され得る。そして、第1の防振装置1101が第1延設部104と建造物20の構造壁21との間に介在するように設けられ、かつ、第2の防振装置1102が第2延設部106と建造物20の構造壁21との間に介在するように設けられている。第1の防振装置1101は、構造壁21および第1延設部104の両方に固定され、柱材101をx軸に沿った内外方向に防振するように機能する。第2の防振装置1102は、構造壁21および第2延設部106の両方に固定され、柱材101をy軸に沿った内外方向に防振するように機能する。すなわち、躯体構造100の各柱材101は、第1および第2の防振装置1101,1102を介して建造物20の構造壁21に一体的に連結され、x軸およびy軸方向の両方から構造壁21によって支持されていることから、より効果的に構造的強度を確保し得る。なお、本実施形態の躯体構造100では、図2および図3に示すように、各階層に8つで1組の防振装置110が設けられているが、機械式立体駐車装置10の高さ等の設計に依存する所望の構造強度に基づいて増減されてもよい。
【0034】
また、第1および第2延設部104,106は、それぞれ、第1および第2の防振装置1101,1102に固定されるブラケット108を備えている。図6(a)~(d)は、ブラケット108の概略図である。ブラケット108は、コ字状の肉厚の鋼板からなる。ブラケット108は、延設部104,106の延設方向に延びる一対の延設板108a,108aと、該一対の延設板108a,108aに直交して結合された連結板108bとを備える。また、連結板108bには、2つの長円状の孔108cが穿設されている。当該連結板108bは、後述するように、防振装置110の外側防振体113および内側防振体115によって挟持されるように構成されている。
【0035】
防振装置110は、建造物20の構造壁21およびブラケット108の両方に固定され、x軸またはy軸方向に沿った内外方向に防振状態で、柱材101と構造壁21とを弾性的に連結するものである。図7は、防振装置110の概略斜視図である。図8は、当該防振装置110の分解斜視図である。図9は、当該防振装置110を構成する防振体113,115の分解斜視図である。
【0036】
防振装置110は、図7および図8に示すように、建造物20に固定されるベースプレート111と、該ベースプレート111の内側に隣接配置された外側防振体113と、外側防振体113の内側に隣接配置された内側防振体115と、ベースプレート111、外側防振体113および内側防振体115を一体的に締結する締結部材117とを備える。締結部材117は、ボルト軸117aおよびナット体117bから構成される。ここで、建造物20側を向く方向または面を外側または外面とし、柱材101側を向く方向または面を内側または内面と定める。
【0037】
ベースプレート111は、鋼鉄製のプレートである。また、ベースプレート111には、構造壁21に埋め込まれたインサートナット23にねじ込まれる固定ボルト119が貫通する2つの固定孔111aが設けられている。また、ベースプレート111の内面から柱材101側に向けて2本のボルト軸117aが立設している。当該ボルト軸117aの基端は、ベースプレート111に溶接により固定されている。
【0038】
外側防振体113および内側防振体115は、建造物20側を向く外面および柱材101側を向く内面を有する板状をなしている。外側防振体113は、外面に金属表面が露出し、内面に防振ゴム表面が露出している。他方、内側防振体115は、内面に金属表面が露出し、外面に防振ゴム表面が露出している。そして、外側防振体113および内側防振体115は、その厚み方向において防振ゴムによる防振性能を発揮するものである。なお、外側防振体113および内側防振体115は、同じ形状を有し、互いに対称に向かい合うように配置される。
【0039】
より具体的には外側防振体113および内側防振体115の構造は、図9に示されている。図9に示すように、外側防振体113は、所定の厚みを有する板状の外側防振ゴム113aと、該外側防振ゴム113aを内外方向に貫通し、ボルト軸117aを内挿する剛性の外側筒材113bと、ボルト軸117aが貫通する貫通孔を有し、外側防振ゴム113aの外面に当接するように配置された剛性の外側プレート113cとを備える。同様に、内側防振体115は、所定の厚みを有する板状の内側防振ゴム115aと、該内側防振ゴム115aを内外方向に貫通し、ボルト軸117aを内挿する剛性の内側筒材115bと、ボルト軸117aが貫通する貫通孔を有し、内側防振ゴム115aの内面に当接するように配置された剛性の内側プレート115cとを備える。剛性の筒材113b,115bおよびプレート113c,115cは鋼鉄などの金属や硬質樹脂によって形成され得る。防振ゴム113a,115bの防振性能(材料特性や形状寸法)は、躯体構造100や建造物20の規模等に応じて適宜選択され得る。また、各部材は、内外方向において接着剤等によって一体的に結合されてもよい。
【0040】
防振装置110において、外側防振体113の外面がベースプレート111に当接するように配置され、内側防振体115の外面が外側防振体113の内面に当接するように配置される。このとき防振ゴム表面同士が接触している。そして、防振装置110は、外側防振体113の内面と内側防振体115の外面との間にブラケット108の連結板108bを挟み込み、ブラケット108を内外方向に防振状態で保持するように構成されている。このとき、外側防振体113および内側防振体115は、締結部材117の強い締結力(トルク)によって内外方向に圧接するが、剛性の筒材113b,115bおよびプレート113c,115cによって、防振ゴム113a,115aが局所的に潰れて変形することが防止される。これにより、防振装置110は、その防振性能を確実に発揮することができる。
【0041】
続いて、図10乃至図14を参照して、本実施形態の躯体構造100の第1延設部104と建造物20の構造壁21との連結構造について説明する。図10は、第1延設部104と構造壁21との連結構造の正面図である。図11は、該連結構造の平面図である。図12および図13は、A-A断面図およびB-B断面図である。なお、第2延設部106と構造壁21との連結構造は、図10図13に示される連結構造とほぼ同様であり、その説明を省略する。
【0042】
図10図13に示すように、第1の防振装置1101が建造物20の構造壁21に固定ボルト119によって固定されている。固定ボルト119がベースプレート111の固定孔111aを貫通し、構造壁21に埋め込まれたインサートナット23にねじ込まれている。本実施形態では、建造物側支持体としての構造壁21は、鉄筋コンクリート壁から構成されたが、該建造物側支持体は、建造物20を構成する鉄骨材などであってもよい。そして、ベースプレート111から内側に向けて立設し、外側防振体113、ブラケット108および内側防振体115を貫通するボルト軸117aに対してナット体117bが強固に締め付けられている。このナット体117bの締結力によって、外側防振体113および内側防振体115の防振ゴム面同士が、互いに圧接するとともにブラケット108の連結板108bを挟圧している。このように、連結板108bの内面および外面の両方が防振ゴムによって挟まれていることから、ブラケット108(または第1延設部104)は、第1延設部104の延設方向(x軸方向)に沿った内外方向に防振状態で第1の防振装置1101に支持されている。一方で、第2の防振装置1102もまた同様に建造物20の構造壁21に固定ボルト119によって固定され、ブラケット108(または第2延設部106)は、第2延設部106の延設方向(y軸方向)に沿った内外方向に防振状態で第2の防振装置1102に支持されている。したがって、本実施形態の躯体構造100において、各柱材101が、建造物20の構造壁21によって、x軸方向およびy軸方向の両方向において防振状態でしっかりと支持されることで、十分な構造的強度が確保されている。
【0043】
また、本実施形態の躯体構造100(または防振装置110)は、防振装置110のメンテナンス性においても利点を有している。一般的に、機械式立体駐車装置10において、長時間の経過により、防振ゴム113a,115aが硬化したり、破損したりすることがあるため、安全性の確保のために定期的な点検や交換が必要となる。本実施形態の構成では、ボルト軸117aが構造壁21から手前側に延びていることにより、作業者が正面側からナット体117bを緩めて、(ベースプレート111を構造壁21から取り外すことなく)防振ゴム113a,115aを構造壁21から簡単に分離することができる。さらに、防振装置110のメンテナンス終了後、防振ゴム113a,115aをベースプレート111に対して取り付けて、ナット体117bを締め付けることで、防振状態の連結構造を容易に再構築することも可能である。
【0044】
したがって、本実施形態の躯体構造100は、機械式立体駐車装置10において防振性とともに構造的強度をより効果的に発揮し得るものであり、結果的に、必要な補強材の量を相対的に軽減することを可能とする。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態を説明する。
【0046】
(1)本発明の躯体構造は上記実施形態の構成に限定されることはない。上記実施形態の躯体構造は、xy平面において、1つの格納空間を有するように構成されたが、1つの建造物内に複数の格納空間を有してもよい。例えば、図14に示す躯体構造100’は、第1の格納空間11Aおよび第2の格納空間11Bを内部に画定するものである。2つの格納空間11A,11Bは、建造物20の隔壁22(または鉄骨)によって互いに仕切られている。隔壁22には、構造壁21と同様に、第1または第2の防振装置1101,1102が固定されている。そして、複数の格納空間11A,11Bの各々には、同一xy平面上に第1および第2の防振装置1101,1102が4つずつ(合計8つ)設けられている。本実施形態の躯体構造100’においても同様に、柱材をy軸方向に連結する梁材が省略されているが、十分な構造的強度が発揮されている。
【0047】
(2)本発明の躯体構造は上記実施形態の構成に限定されることはない。上記躯体構造では、梁材がx軸方向に並ぶ柱材を互いに連結し、y軸方向に並ぶ柱材を連結する梁材が省略されたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の躯体構造において、さらなる構造的強度の向上を目的として、x軸方向およびy軸方向の両方で隣接する柱材が梁材によって連結されてもよい。あるいは、x軸方向およびy軸方向の両方で梁材が省略されてもよい。
【0048】
(3)本発明の躯体構造は上記実施形態の構成に限定されることはない。上記躯体構造では、各柱材が、x軸方向およびy軸方向の両方で延設部および防振装置を介して建造物に連結されるように構成されたが、本発明はこれに限定されない。複数の階層のうち一部のみに連結構造が構築されてもよい。すなわち、各柱材が、x軸方向およびy軸方向の少なくとも一方で延設部および防振装置を介して建造物に連結されるように構成されてもよい。また、複数の柱材のうち第1の柱材がx軸方向のみで延設部および防振装置を介して建造物に連結され、第2の柱材がy軸方向のみで延設部および防振装置を介して建造物に連結されるように構成されてもよい。
【0049】
(4)本発明の躯体構造は上記実施形態の構成に限定されることはない。上記躯体構造では、各階層の4隅の柱材の全てに延設部および防振装置による連結構造が構築されたが、本発明はこれに限定されない。複数の階層のうち一部のみに連結構造が構築されてもよい。また、4隅の柱材の一部のみに連結構造が構築されてもよい。すなわち、少なくとも1つの連結構造が構築されることで、(延設部および防振装置を設置しない場合と比べて)躯体構造の構造的強度を効果的に増加させることできる。
【0050】
(5)本発明の機械式立体駐車装置は、上記実施形態の構成に限定されることはない。例えば、本発明の躯体構造はパレット式立体駐車装置に導入されてもよい。また、躯体構造は、電気自動車を充填するための充電設備等を内部に支持してもよい。さらには、乗降領域が、地上1階でなく、地下階や2階以上に設けられてもよい。
【0051】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明の技術的範囲の下で、本実施形態の一部の構成が省略または修正されてもよく、あるいは、他の構成が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 機械式立体駐車装置
11 格納空間
12 乗降領域
12a 収容凹部
13 昇降空間
14 駐車室
15 車両搬送機構
16 昇降リフト
17 横行トレイ
20 建造物
21 構造壁
22 隔壁
23 インサートナット
100 躯体構造
101 柱材
103 梁材
104 第1延設部
106 第2延設部
108 ブラケット(第1および第2延設部の一部)
108a 延設板
108b 連結板
110 防振装置(1101 第1の防振装置、1102 第2の防振装置)
111 ベースプレート
111a 固定孔
113 外側防振体
113a 外側防振ゴム
113b 外側筒材
113c 外側プレート
115 内側防振体
115a 外側防振ゴム
115b 外側筒材
115c 外側プレート
117 締結部材
117a ボルト軸
117b ナット体
119 固定ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14