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特開2024-38555電子装置の製造方法および素子転写用基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038555
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法および素子転写用基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
H05K3/34 504A
H05K3/34 507E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142633
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB05
5E319AC01
5E319AC11
5E319BB20
5E319CC46
5E319CD15
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】電子装置の性能を向上させる。
【解決手段】転写用基板70は、面71fおよび面71bを備えた基板71と、基板71の面71f上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材72と、を有している。複数の素子保持部材72は、弾性体であり、基板71の線膨張係数は、複数の素子保持部材72の線膨張係数よりも小さい。複数の素子保持部材72のそれぞれは、1個のLED素子20を接着させて保持することが可能な素子保持面72fと、素子保持面72fの反対側に位置し、基板71に接着された基板接着面72bと、を有している。基板接着面72bの面積は、素子保持面72fの面積よりも大きい。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、を備えた素子転写用基板を準備する工程、
(b)前記素子転写用基板の前記複数の素子保持部材と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極とをそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程、
を有し、
前記複数の素子保持部材は、弾性体であり、
前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さく、
前記複数の素子保持部材のそれぞれは、
1個の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、
前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、
を有し、
前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい、電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記素子保持面の面積は、前記素子の被接着面の2倍未満である、電子装置の製造方法。
【請求項3】
第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、
前記第1基板の第1面上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、
を有し、
前記複数の素子保持部材は、弾性体であり、
前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さく、
前記複数の素子保持部材のそれぞれは、
1個の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、
前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、
を有し、
前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい、素子転写用基板。
【請求項4】
請求項3において、
前記素子保持面の面積は、前記素子の被接着面の2倍未満である、素子転写用基板。
【請求項5】
(a)第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に固定された複数の素子保持部材と、を備えた素子転写用基板を準備する工程、
(b)前記素子転写用基板の前記複数の素子保持部材と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極とをそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程、
を有し、
前記複数の素子保持部材は、弾性体であり、
前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さく、
前記複数の素子保持部材のそれぞれは、
2個以上の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、
前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、
を有し、
前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積以上であり、
前記(d)工程では、
1個の素子保持部材に接着保持される前記2個以上の素子には、一括して前記レーザが照射される、電子装置の製造方法。
【請求項6】
第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、
前記第1基板の第1面上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、
を有し、
前記複数の素子保持部材は、弾性体であり、
前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さく、
前記複数の素子保持部材のそれぞれは、
2個以上の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、
前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、
を有し、
前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい、素子転写用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法および素子転写用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配列された複数の電極に電子部品(素子)を転写する電子装置の製造方法がある。例えば、特開2021-5632号公報(特許文献1)には、基板上にマイクロLED素子を転写するための転写用基板として、弾性体の第1面から突出した複数の突起部を備えた転写用基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-5632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に素子を転写する工程では、複数の素子保持部の先端に素子を保持した状態でレーザを照射することにより、基板上のバンプ電極と素子の電極との接触部分を加熱して基板上に素子が実装される。複数の素子保持部のそれぞれが一体に形成されている場合、以下の課題が生じることが判った。例えば、基板上のバンプ電極に接触する複数の素子のうちの一部に選択的にレーザを照射する場合、素子保持部を構成する樹脂の一部が熱収縮する。これにより、レーザが照射されていない領域に配置された素子保持部の位置がずれて、当該領域に保持された素子の電極と基板のバンプ電極とが接触しない状態になる場合がある。また例えば、複数の素子保持部のそれぞれが互いに離間するように基板(転写用基板の基材となる基板)上に接着固定する場合、素子保持部と基板との接着面積が小さいことにより、素子保持部材の接着強度が不足する懸念があることが判った。
【0005】
本発明の目的は、電子装置の性能を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る電子装置の製造方法は、(a)第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、を備えた素子転写用基板を準備する工程と、(b)前記素子転写用基板の前記複数の素子保持部材と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程と、(c)複数のバンプ電極が配列された第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極をそれぞれ接触させる工程と、(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程と、を有している。前記複数の素子保持部材は、弾性体である。前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さい。前記複数の素子保持部材のそれぞれは、1個の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、を有している。前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい。
【0007】
他の実施の形態に係る素子転写用基板は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、を有している。前記複数の素子保持部材は、弾性体であり、前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さい。前記複数の素子保持部材のそれぞれは、1個の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、を有している。前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい。
【0008】
他の実施の形態に係る電子装置の製造方法は、(a)第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に固定された複数の素子保持部材と、を備えた素子転写用基板を準備する工程と、(b)前記素子転写用基板の前記複数の素子保持部材と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程と、(c)複数のバンプ電極が配列された第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極をそれぞれ接触させる工程と、(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程と、を有している。前記複数の素子保持部材は、弾性体である。前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さい。前記複数の素子保持部材のそれぞれは、2個以上の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、を有している。前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積以上である。前記(d)工程では、1個の素子保持部材に接着保持される前記2個以上の素子には、一括して前記レーザが照射される。
【0009】
他の実施の形態に係る素子転写用基板は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材と、を有している。前記複数の素子保持部材は、弾性体である。前記第1基板の線膨張係数は、前記複数の素子保持部材の線膨張係数よりも小さく、前記複数の素子保持部材のそれぞれは、2個以上の素子を接着させて保持することが可能な素子保持面と、前記素子保持面の反対側に位置し、前記第1基板に接着された基板接着面と、を有している。前記基板接着面の面積は、前記素子保持面の面積よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。
図2図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
図3図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
図4図3のA-A線に沿った拡大断面図である。
図5図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
図6】電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
図7図5のB-B線に沿った拡大断面図である。
図8図6に示す転写用基板準備工程で準備する転写用基板の斜視図である。
図9図8のC-C線に沿った拡大断面図である。
図10図9に示す転写用基板の素子保持部材のそれぞれが、素子を保持した状態を示す拡大断面図である。
図11図10に示す転写用基板を図7に示す基板構造体に押し付けた状態を示す拡大断面図である。
図12図11に示す複数の接触部分の一部にレーザを照射した状態を模式的に示す拡大断面図である。
図13図12に対する検討例を示す拡大断面図である。
図14図12に示す複数の素子と素子保持部材とを剥離させた状態を示す拡大断面図である。
図15図14に示す素子保持部材を基板接着面側から視た平面図である。
図16図8に対する変形例である転写用基板の構成例を示す斜視図である。
図17図16のD-D線に沿った拡大断面図である。
図18図17に示す転写用基板を用いた電子装置の製造方法におけるレーザ照射工程を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
以下の実施の形態では、複数の電子部品を搭載するためのバンプ電極アレイが配列された電子装置の例として、複数のマイクロLED素子が搭載されたマイクロLED表示装置、およびマイクロLED素子が搭載される前のバンプ電極アレイ装置を取り上げて説明する。
【0013】
<電子装置>
まず、本実施の形態の電子装置であるマイクロLED表示装置の構成例について説明する。図1は、電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。図1では、表示領域DAと周辺領域PFAとの境界、制御回路5、駆動回路6、および複数の画素PIXのそれぞれを二点鎖線で示している。図2は、図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の表示装置DSP1は、表示領域DAと、表示領域DAの周囲を枠状に囲む周辺領域PFAと、表示領域DA内に行列上に配列された複数の画素PIXと、を有している。また、表示装置DSP1は、基板10と、基板10上に形成された制御回路5と、基板10上に形成された駆動回路6と、を有している。基板10はガラスまたは樹脂から成る。基板10は、面10tおよび面10tの反対側の面10bを備えている。
【0015】
制御回路5は、表示装置DSP1の表示機能の駆動を制御する制御回路である。例えば、制御回路5は、基板10上に実装されたドライバIC(Integrated Circuit)である。図1に示す例では、制御回路5は、基板10が備える4辺のうち、一つの短辺に沿って配置されている。また、本実施の形態の例では、制御回路5は、複数の画素PIXに接続される配線(映像信号配線)VL(図2参照)を駆動する信号線駆動回路を含んでいる。ただし、制御回路5の位置および構成例は、図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの回路基板が接続され、上記したドライバICは、回路基板上に搭載されている場合がある。また例えば、配線VLを駆動する信号線駆動回路は、制御回路5とは別に形成されている場合がある。
【0016】
駆動回路6は、複数の画素PIXのうち、走査信号線GL(後述する図2参照)を駆動する回路を含む。また、駆動回路6は、複数の画素PIXのそれぞれに搭載されたLED素子に基準電位を供給する回路を含む。駆動回路6は、制御回路5からの制御信号に基づいて、複数の走査信号線GLを駆動する。図1に示す例では、駆動回路6は、基板10が備える4辺のうち、二つの長辺のそれぞれに沿って配置されている。ただし、駆動回路6の位置および構成例は、図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの回路基板が接続され、上記した駆動回路6が回路基板上に搭載されている場合がある。
【0017】
次に、図2を用いて画素PIXの回路構成例について説明する。なお、図2では、4個の画素PIXを代表的に取り上げて図示しているが、図1に示す複数の画素PIXのそれぞれが、図2に示す画素PIXと同様の回路を備えている。以下では、画素PIXが備えるスイッチ、およびLED素子20を含む回路について、画素回路と呼称する場合がある。画素回路は、制御回路5(図1参照)から供給される映像信号Vsgに応じてLED素子20の発光状態を制御する電圧信号方式の回路である。
【0018】
図2に示すように、画素PIXは、LED素子20を備えている。LED素子20は、上記したマイクロ発光ダイオードである。LED素子20はアノード電極20EAおよびカソード電極20EKを有している。LED素子20のカソード電極20EKは、基準電位(固定電位)PVSが供給される配線VSLに接続されている。LED素子20のアノード電極20EAは、配線31を介してスイッチング素子SWのドレイン電極EDと電気的に接続されている。
【0019】
画素PIXは、スイッチング素子SWを備えている。スイッチング素子SWは、制御信号Gsに応答して画素回路と配線VL との接続状態(オンまたはオフの状態)を制御するトランジスタである。スイッチング素子SWは、例えば薄膜トランジスタである。スイッチング素子SWがオン状態の時、画素回路には、配線VL から映像信号Vsgが入力される。
【0020】
駆動回路6は、図示しないシフトレジスタ回路、出力バッファ回路等を含んでいる。駆動回路6は、制御回路5(図1参照)から伝送される水平走査スタートパルスに基づいてパルスを出力し、制御信号Gsを出力する。
【0021】
複数の走査信号線GLのそれぞれは、X方向に延びている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極に接続されている。走査信号線GLに制御信号Gsが供給されると、スイッチング素子SWがオン状態となり、LED素子20に映像信号Vsgが供給される。
【0022】
<LED素子の周辺構造>
次に、図1に示す複数の画素PIXのそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造について説明する。図3は、図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。図3では、図4に示す無機絶縁層14の図示を省略している。図3では、半導体層、電極、および走査信号線の輪郭を点線で示している。図4は、図3のA-A線に沿った拡大断面図である。図5は、図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
【0023】
図3に示すように、表示装置DSP1は、画素PIX1を含む複数の画素PIX(図4に示す例では画素PIX1,PIX2,およびPIX3)を有している。複数の画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWと、LED素子(発光素子)20と、配線31と、配線32と、を有している。なお、画素PIX1,PIX2,およびPIX3のそれぞれには、例えば赤、緑、および青のうち、いずれか一色の可視光を出射するLED素子20が搭載され、LED素子20を駆動するスイッチング素子SWが形成されている。画素PIX1,PIX2,およびPIX3のLED素子から出射される可視光の出力およびタイミングを制御することにより、カラー表示が可能となる。このように互いに異なる色の可視光を出射する複数の画素PIXを組み合わせる場合、各色用の画素PIXを副画素と呼び、複数の画素PIXのセットを画素と呼ぶ場合がある。本実施の形態では、上記副画素に相当する部分が画素PIXと呼ばれる。
【0024】
配線31は、スイッチング素子SWのドレイン電極EDおよびLED素子20のアノード電極20EAのそれぞれに電気的に接続されている。配線32は、スイッチング素子SWのソース電極ESに接続されている。図3に示す例では、配線32は屈曲した構造を備え、一方の端部がスイッチング素子SWのソース電極ESに接続され、他方の端部は、配線VL に接続されている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGとして利用される。
【0025】
表示装置DSP1は、Y方向に沿って複数の画素PIX(図2参照)に亘って延び、かつ、配線32と電気的に接続される配線VL と、Y方向に交差(図3では直交)するX方向沿って複数の画素PIXに亘って延び、かつ、LED素子20のカソード電極20EKに電気的に接続された配線VSLと、を更に有している。配線VLと配線VSLとは、図3に示す配線交差部LXPにおいて、絶縁層41を介して交差している。配線VLと配線VSLとの間に絶縁層41が介在しているので、配線VLと配線VSLとは電気的に離間されている。なお、図3に示すレイアウトは、一例であって、種々の変形例がある。例えば、図3に対する変形例の一つとして、スイッチング素子SWが図示しないゲート電極を有し、ゲート電極が走査信号線GLと接続された構造であってもよい。この変形例では、走査信号線GLが、半導体層50と重ならない位置に配置される場合がある。
【0026】
図4に示すように、表示装置DSP1は、ガラスまたは樹脂から成る基板10と、基板10上に積層された複数の絶縁層とを含む電子装置である。表示装置DSP1が有する複数の絶縁層は、基板10上に積層される無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14を含む。基板10は面10fおよび面10fの反対側の面10bを有している。無機絶縁層11,12,13、および14のそれぞれは、基板10の面10f上に積層されている。
【0027】
スイッチング素子SWは、基板10上に形成された無機絶縁層12と、無機絶縁層12上に形成された半導体層50と、半導体層50のドレイン領域に接続されたドレイン電極EDと、半導体層50のソース領域に接続されたソース電極ESと、半導体層50を覆う無機絶縁層13と、を含んでいる。配線31および配線32のそれぞれは、例えば、チタンまたはチタン合金から成る導体層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る導体層と、の積層膜である。チタン層の間にアルミニウム層が挟まれた積層膜は、TAT積層膜と呼ばれる。
【0028】
図4に示す例は、ゲート電極EGが半導体層50と基板10との間にある、ボトムゲート方式の例である。ボトムゲート方式の場合、無機絶縁層12のうち、ゲート電極EGと半導体層50との間にある部分がゲート絶縁層として機能する。また、無機絶縁層12は、半導体層50を形成するための下地層としても機能する。なお、ゲート電極EGの位置は図4に示す例には限定されず、例えば変形例として後述するトップゲート方式であってもよい。
【0029】
無機絶縁層11,12,13,および14のそれぞれを構成する材料は特に限定されない。例えば、酸化ケイ素(SiO)や窒化ケイ素(SiN)などを例示することができる。また、半導体層50は、例えばケイ素から成るシリコン膜にP型またはN型の導電型の不純物がドープされた半導体膜である。
【0030】
ソース電極ESおよびドレイン電極EDのそれぞれは、半導体層50のソース領域およびドレイン領域のいずれか一方との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトプラグである。コンタクトプラグの材料は、例えばタングステンなどを例示できる。なお、図4に対する変形例として、無機絶縁層13に半導体層50のソース領域およびドレイン領域を露出させるコンタクトホールが形成され、コンタクトホール内に配線31の一部分および配線32の一部分がそれぞれ埋め込まれている場合がある。この場合、配線31および配線32のうち、コンタクトホール内に埋め込まれた部分が半導体層50に接触し、配線31および配線32と半導体層50との接触界面をドレイン電極EDおよびソース電極ESと見做すことができる。
【0031】
また、図5に示すように、表示装置DSP1は、平面視において規則的に配列された複数のバンプ電極33を備えている。バンプ電極33は、基板10(図4参照)上に電子部品を実装するための端子である。本実施の形態の場合、バンプ電極33は、図4に示すLED素子20を搭載するための端子である。このため、2個のバンプ電極の一方は、LED素子20のアノード電極20EAに接続され、他方はLED素子20のカソード電極20EKに接続されている。このため、本実施の形態の場合、複数のバンプ電極33は、LED素子20(図3参照)の実装予定領域に2個隣り合って配列されている。
【0032】
図4に示すように、バンプ電極33は、無機絶縁層14に形成された開口部14Hと重なる位置で配線31に接続され、かつ、無機絶縁層14から突出している。また、バンプ電極33は、例えば、錫を含む半田から成る。あるいは、バンプ電極33は、銅など、半田よりも電気伝導度が高い金属材料からなる金属層と、半田層との積層体である場合がある。
【0033】
<電子装置の製造方法>
次に、図3に示す表示装置DSP1の製造方法を代表例として、本実施の形態の電子装置の製造方法について説明する。なお、以下では、図4に示す開口部14Hにバンプ電極33を形成する工程を中心に説明する。図6は、電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
【0034】
図6に示すように、本実施の形態の電子装置の製造方法は、基板構造体準備工程と、転写用基板準備工程と、素子保持工程と、素子押付工程と、レーザ照射工程と、素子剥離工程と電子装置取得工程と、を有している。
【0035】
図6に示す基板構造体準備工程では、図5に示す基板構造体SUB1を準備する。図7は、図5のB-B線に沿った拡大断面図である。図7に示すように、基板構造体準備工程では、ガラスまたは樹脂から成る基板10と、基板10上に形成された配線31と、配線31を覆う無機絶縁層14と、を備えた基板構造体SUB1を準備する。図7に示す例では、基板10上には、無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14が積層され、配線31は、無機絶縁層13と無機絶縁層14との間に配置されている。基板構造体SUB1の大部分は無機絶縁層14に覆われている。無機絶縁層14には、配線31と重なる位置および配線VSLと重なる位置に開口部14Hが形成されている。開口部14Hの底部において、配線31および配線VSLのそれぞれは、無機絶縁層14から露出している。
【0036】
複数のバンプ電極33のそれぞれは、開口部14H内に埋め込まれ、開口部14Hの底部において、配線31または配線VSLに接続されている。図5に示すように、平面視において、複数のバンプ電極33のそれぞれは、電子部品(図3に示すLED素子20)を搭載する予定領域に、規則的に配置されている。
【0037】
バンプ電極33は、図7に示すように、無機絶縁層14の上方に突出するように形成されている。上記したように、配線31の一部分および配線VSLの一部分が開口部14Hにおいて無機絶縁層14から部分的に露出しているので、バンプ電極33は例えば、電気メッキ法により選択的に形成することができる。なお、バンプ電極33の突出高さを高くするために、レジスト膜を用いてバンプ電極33を形成する場合もある。
【0038】
次に、図6に示す転写用基板準備工程では、図8に示す転写用基板を準備する。図8は、図6に示す転写用基板準備工程で準備する転写用基板の斜視図である。図9は、図8のC-C線に沿った拡大断面図である。
【0039】
図8および図9に示す転写用基板(素子転写用基板)70は、面71fおよび面71fの反対側の面71b(図9参照)を備えた基板71と、基板71の面71f上に、互いに離間するように固定された複数の素子保持部材72と、を有している。複数の素子保持部材72のそれぞれは、基板71の面71fに貼り付けられている。また、複数の素子保持部材72は互いに離間して配置されている。
【0040】
基板71は、転写用基板70の剛性を確保するための支持基板である。基板71は、例えば、石英、ガラスなど、酸化ケイ素を主成分とする合成基板である。また、複数の素子保持部材72のそれぞれは、弾性体である。素子保持部材72を構成する材料の例としては、例えば、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、フッ素ゴム(FPM)などを例示することができる。またこれらのゴムを単独で用いる場合の他、混合して用いる場合もある。
【0041】
図9に示すように、複数の素子保持部材72のそれぞれは、1個の素子(本実施の形態の場合にはLED素子)を保持することが可能な素子保持面72fと、素子保持面72fの反対側に位置し、基板71の面71fに接着された基板接着面72bと、を有している。基板71と素子保持部材72の基板接着面72bとは接着剤を介して接着されている。接着剤には、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はウレタン系樹脂などを用いることができる。同様に、素子保持部材72の素子保持面72fには、素子を保持するための粘着層が配置されている。粘着層は、例えば上記した接着剤と同様のものを用いることができる。ただし、素子保持部材72に保持された素子を基板10上に実装した後、素子と素子保持部材72とを剥離させる必要があるので、素子に粘着させる粘着層の接着強度は、素子保持部材72と基板71とを接着させる接着剤よりも接着強度が低いことが好ましい。なお、本実施の形態に対する変形例として、素子保持部材72自体を上記したような粘着性の樹脂で構成する場合がある。
【0042】
次に、図6に示す素子保持工程では、図10に示すように複数の素子保持部材72のそれぞれにLED素子20を保持させる。図10は、図9に示す転写用基板の素子保持部材のそれぞれが、素子を保持した状態を示す拡大断面図である。本工程では、転写用基板70の複数の素子保持部材72と、複数のLED素子20とをそれぞれ貼り付けて転写用基板70により複数のLED素子20を保持する。詳しくは、LED素子20のうち、アノード電極20EAおよびカソード電極20EKが形成された面の反対側の面が素子保持部材72の素子保持面72fに粘着保持される。これにより、次に説明する図11に示すように、複数のアノード電極20EAおよび複数のカソード電極20EKのそれぞれを、基板構造体SUB1と対向させることができる。
【0043】
図10に示す複数のLED素子20のそれぞれは、例えばサファイア基板上に形成される。完成した複数のLED素子20のそれぞれは、サファイア基板上から図示しない第1転写基板に転写され、その第1転写基板から図10に示す転写用基板70に転写される。このように、複数のLED素子20のそれぞれを形成するためのサファイア基板から図示しない第1転写基板を介して転写用基板70に転写することで、図10に示すようにLED素子20のアノード電極20EAおよびカソード電極20EKが素子保持部材72の先端に位置した状態で保持される。
【0044】
次に、図6に示す素子押付工程では、図11に示すように、複数のバンプ電極33が配列された面SUBfを備えた基板構造体SUB1を準備して、転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付ける。図11は、図10に示す転写用基板を図7に示す基板構造体に押し付けた状態を示す拡大断面図である。
【0045】
本工程では、複数のバンプ電極33と、転写用基板70に保持された複数のLED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とが対向した状態で転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付ける。これにより、複数のバンプ電極33と、転写用基板70に保持された複数のLED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とをそれぞれ接触させる。
【0046】
次に、図6に示すレーザ照射工程では、図12に示すように、複数のバンプ電極33と、複数のLED素子20の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザLZを照射し、レーザLZが照射されたLED素子20の電極とバンプ電極33とを接合する。図12は、図11に示す複数の接触部分の一部にレーザを照射した状態を模式的に示す拡大断面図である。図13は、図12に対する検討例を示す拡大断面図である。
【0047】
本工程では、アノード電極20EAまたはカソード電極20EKと、バンプ電極33との接触部分にレーザLZを照射することで、接触部分を加熱する。これにより、バンプ電極33に含まれる半田がアノード電極20EAまたはカソード電極20EKに接合される。
【0048】
なお、本工程の前に、LED素子20のアノード電極20EAおよびカソード電極20EKのそれぞれに、予め半田膜が形成されている場合もある。この場合、半田を含むバンプ電極33と電極に形成された半田膜とを容易に一体化させることができるので、バンプ電極33とカソード電極20EK(またはアノード電極20EA)とを確実に接続することができる。
【0049】
図12に示すように、複数のバンプ電極33と、複数のLED素子20の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザLZを照射する場合、レーザLZの照射範囲を小さくすることができる。例えば、図12に示すように、隣り合うバンプ電極33の間に回路部品35(例えば図3に示す配線VLやスイッチング素子SW等が回路部品35に相当する)が配置されている場合、レーザLZの照射範囲を小さくすることで、回路部品35がレーザLZにより受ける熱影響を低減させることができる。
【0050】
なお、図12では、小型のレーザ光源LZSから照射範囲の狭いレーザLZが照射されている例を示しているが、レーザLZの照射範囲を小さくする方法には種々の変形例がある。例えば、図示しない遮光膜の一部にレーザLZの透過可能な開口部を設けることにより、レーザLZの照射範囲を狭くすることができる。
【0051】
ここで、図13に示す検討例の転写用基板70Aの場合、複数の素子保持部材72Aのそれぞれが弾性体を介して一体化されている点で図12に示す転写用基板70と相違する。詳しくは、図13に示す転写用基板70Aの場合、基板接着面72b面を持つ基板接着部73が基板71の面71f全体を覆うように形成されている点で、図12に示す転写用基板70と相違する。素子保持面72fを持つ複数の素子接着部74は、基板接着部73を介して一体に形成されている。転写用基板70Aを用いて本実施の形態と同様のレーザ照射工程を実施した場合、図13に矢印を付して模式的に示すように、素子保持部材72Aの熱膨張に起因する力F1が作用する。本願発明者の検討によれば、この力F1に起因して、レーザLZを照射されているLED素子20の隣に配置されているLED素子20の位置がずれてしまう場合があることが判った。レーザ照射を停止すれば、素子保持部材72Aの基板接着部73は収縮する。ただし、レーザ照射工程では、転写用基板70Aを基板構造体SUB1に押し付けられた状態で、基板接着部73が収縮するので素子押付工程と同じ位置(LED素子20の電極とバンプ電極33とが接触する位置)に戻るとは限らない。
【0052】
図12に示す本実施の形態の転写用基板70の場合、上記したように複数の素子保持部材72は互いに離間されている。言い換えれば、複数の素子保持部材72のそれぞれは、基板接着部73および素子接着部74を備え、複数の基板接着部73のそれぞれは、互いに離間され、素子保持部材72よりも線膨張係数が小さい基板71に貼り付けられている。さらに言い換えれば、隣り合う素子保持部材72の間では、基板71の面71fが露出している。基板接着部73および素子接着部74は同じ材料から成り、一体に形成されている。
【0053】
本実施の形態の場合、複数の素子保持部材72が互いに離間されているので、レーザ照射工程においてレーザLZを選択的に照射した場合でも、素子保持部材72の熱膨張の影響は、他の素子保持部材72には及ばない。また、基板71は、上記したように、基板71は、例えば、石英、ガラスなど、酸化ケイ素を主成分とする合成基板であり、部分的に加熱された場合でも、熱膨張の影響は無視できる程小さい。このため、複数のLED素子20と複数のバンプ電極33との位置関係は、素子押付工程が完了した後と同じ位置で維持される。したがって、レーザLZの照射位置を順次変更することにより、複数のLED素子20と複数のバンプ電極33とを順番に接合させることができる。本実施の形態の場合、複数のLED素子20のうち、1個ずつ順番にレーザを照射する。
【0054】
次に、図6に示す素子剥離工程では、図14に示すように、複数のLED素子20と、複数の素子保持部材72の素子保持面72fとを剥離させる。図14は、図12に示す複数の素子と素子保持部材とを剥離させた状態を示す拡大断面図である。図15は、図14に示す素子保持部材を基板接着面側から視た平面図である。
【0055】
本工程では、転写用基板70と基板構造体SUB1との距離を遠ざける。この時、複数のLED素子20の電極は、バンプ電極33に接合されている。言い換えれば、複数のLED素子20は、基板構造体SUB1に実装されており、LED素子20とバンプ電極33の固定強度は、LED素子20と素子保持部材72との接着強度よりも高い。このため、転写用基板70を引き上げれば、素子保持部材72の素子保持面72fとLED素子20との界面が剥離する。
【0056】
ここで、本願発明者の検討によれば、互いに離間された複数の素子保持部材72のそれぞれを独立して基板71に貼り付けている場合、素子剥離工程において素子保持部材72と基板71との接着界面が剥離しないようにする必要があることが判った。すなわち、図13に示す転写用基板70Aのように、基板71の面71fの全面に亘って基板接着部73が接着されている場合、基板71と素子保持部材72Aとの接着強度は十分に高いので、素子剥離工程において剥離するのは、素子保持部材72Aの素子保持面72fとLED素子20との界面である。
【0057】
ところが、本実施の形態の素子保持部材72のそれぞれを離間した場合、素子保持部材72と基板71との接着面積が小さくなる。このため、基板接着面72bと基板71との接着強度が、素子保持面72fとLED素子20との接着強度よりも小さい場合には、素子保持部材72がLED素子20に貼り付けられたまま基板71から剥離してしまう懸念がある。
【0058】
そこで、転写用基板70の場合、図15に示すように、基板接着面72bの面積は、素子保持面72fの面積よりも大きい。基板接着面72bの面積は、素子保持面72fの面積よりも大きいことにより、基板接着面72bと基板71との接着強度が、素子保持面72fとLED素子20との接着強度よりも大きい状態を維持することができる。この結果、素子剥離工程において、素子保持部材72がLED素子20に貼り付けられたまま基板71から剥離してしまう現象を防止できる。
【0059】
基板接着面72bの面積は、素子保持面72fの面積に対して1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることが特に好ましい。なお、図15に示す例では、基板接着面72bおよび素子保持面72fのそれぞれは、四角形になっているが、種々の変形例を適用できる。例えば、円形、三角形、あるいは5角形以上の多角形とすることができる。また、本実施の形態の場合、素子保持部材72は、直方体形状から成る基板接着部73および直方体形状から成る素子接着部74を組み合わせた形状を成す。ただし、基板接着面72bの面積が素子保持面72fの面積よりも大きければ、上記した課題は解決できるので、素子保持部材72の形状は種々の変形例がある。例えば、円錐台形、あるいは角錐台形の素子保持部材72として、台形の天面および底面のうち、相対的に面積が大きい方を基板接着面72bとする方法がある。
【0060】
ところで、素子保持面72fの面積は、以下の観点から小さくすることが好ましい。すなわち、上記した素子押付工程やレーザ工程において、素子保持部材72の素子保持面72fのうち、LED素子20に接着されていない部分が、基板構造体SUB1のうち、バンプ電極33以外の部分に接触することを回避することが好ましい。同様に、上記した素子保持工程において、図示しない第1転写基板から図10に示す転写用基板70に複数のLED素子20を転写する際に、素子保持面72fの一部が第1転写基板の予定外の部分に接触することを回避することが好ましい。したがって、素子保持面72fの面積は、LED素子20の被接着面の面積と、位置合わせのマージンを考慮した範囲内において出来る限り小さくすることが好ましい。本実施の形態の場合、素子保持面72fの面積は、1個のLED素子20を接着して保持することが可能な程度の大きさである。素子保持面72fの面積は、LED素子20の被接着面の面積の2倍未満である。一つの素子保持面72fには、2個のLED素子20を保持することはできない。言い換えれば、素子保持面72fの面積は、LED素子20の被接着面の面積よりも大きく、かつ、LED素子20の被接着面の2倍未満である。
【0061】
本実施の形態の場合、基板接着面72bの面積が素子保持面72fの面積よりも大きいので、基板71と素子保持部材72との接着強度に関わらず素子保持面72fの面積を小さくすることが可能である。
【0062】
<変形例>
次に、図8に示す素子保持部材に対する変形例およびこれを用いた電子装置の製造方法の変形例について説明する。図16は、図8に対する変形例である転写用基板の構成例を示す斜視図である。図17は、図16のD-D線に沿った拡大断面図である。図18は、図17に示す転写用基板を用いた電子装置の製造方法におけるレーザ照射工程を示す拡大断面図である。なお、以下では、図8図15を用いて説明した転写用基板70およびこれを用いた電子装置の製造方法との相違点を中心に説明し、共通する部分に関しては重複する説明を原則として省略する。
【0063】
図16および図17に示す転写用基板70Bは、素子保持部材72が直方体形状になっている点、および素子保持面72fの面積が大きい点で図8および図9に示す転写用基板70と相違する。詳しくは、転写用基板70Bの素子保持部材72の素子保持面72fの面積は、2個以上(図7に示す例では2個)のLED素子20(図18参照)を接着させて保持することが可能な程度の大きさである。言い換えれば、転写用基板70Bの素子保持部材72の素子保持面72fの面積は、LED素子20の被接着面の2倍よりも大きい。
【0064】
本変形例の場合、1個の素子保持面72fに2個以上のLED素子20(図18参照)が保持されている。また、本変形例の場合、素子保持部材72の形状は直方体であり、基板接着面72bの面積と素子保持面72fの面積とは互いに等しい。本変形例の場合、複数のLED素子20のそれぞれと、素子保持部材72との接着面積は、基板接着面72bと基板71との接着面積に対して半分未満である。このため、基板接着面72bの面積と素子保持面72fの面積とが等しい場合でも図6に示す素子剥離工程において基板接着面72bが剥離してしまう事を防止できる。
【0065】
なお、本変形例では、一例として、基板接着面72bの面積と素子保持面72fの面積とが等しい場合について取り上げたが、本変形例に対してさらに変形例を適用することができる。例えば、図17に示す基板接着面72bの面積が素子保持面72fの面積よりもさらに大きい場合がある。基板接着面72bの面積が素子保持面72fの面積以上であれば、図6に示す素子剥離工程において基板接着面72bが剥離してしまう事を防止できる。
【0066】
また、本変形例の場合、一つの素子保持部材72に2個以上のLED素子20が接着されているので、図12を用いて説明した例とはレーザ照射工程が相違する。すなわち、図18に示すように、本変形例の電子装置の製造方法に含まれるレーザ照射工程では、1個の素子保持部材72に接着保持される2個以上のLED素子20には、一括してレーザLZが照射される。
【0067】
1個の素子保持部材72に接着保持される全てのLED素子20に対して同時にレーザLZを照射した場合、複数のLED素子20のそれぞれが備える電極は、同じタイミングで複数のバンプ電極33に接合される。このため、仮に素子保持部材72が熱膨張した場合でも熱膨張の影響により、LED素子20とバンプ電極33との位置がずれる前に接合を完了させることができる。また、図18に示すように、レーザLZが照射されていない素子保持部材72は、レーザLZが照射されている素子保持部材72とは離間されている。このため、レーザLZが照射されていない素子保持部材72に熱膨張の影響が及ぶことを防止できる。
【0068】
また、本変形例の場合、複数のバンプ電極33に一括してレーザLZが照射されるので、隣り合うバンプ電極33の間に回路部品35が配置されている場合、回路部品35にもレーザLZによる熱影響が及ぶ。熱影響による回路部品35の損傷を抑制する観点からは、図12に示すように、1個のLED素子20に選択的にレーザLZを照射する方法が特に好ましい。また、本変形例を適用する場合、レーザLZの照射範囲内に回路部品35が配置されていない場合が特に好ましい。レーザLZの照射範囲内に回路部品35が配置されている場合には、当該回路部品35が、比較的配線幅の広い配線パターンなど、熱影響による損傷を生じにくいものであることが好ましい。
【0069】
本変形例では、1個の素子保持部材72に2個のLED素子が接着保持されている例について説明した。図示は省略するが、本変形例に対する更なる変形例として、1個の素子保持部材72に3個以上のLED素子が接着保持されている場合もある。ただし、一括しレーザLZが照射されるLED素子20の個数が増加するとレーザLZの照射範囲が広くなる。この場合、レーザLZの照射範囲内における加熱温度のバラつきを考慮する必要が生じる可能性がある。したがって、1個の素子保持部材72に保持されるLED素子20の個数は2個または3個程度が特に好ましい。
【0070】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。
【0071】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、表示装置や表示装置が組み込まれた電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
5 制御回路
6 駆動回路
10 基板
10b,10f 面
11,12,13,14 無機絶縁層
14H 開口部
20 LED素子(発光素子,素子)
20EA アノード電極
20EK カソード電極
30Bt1,30Bt2 面
31,32,34,VL,VSL 配線
33 バンプ電極
35 回路部品
41 絶縁層
50 半導体層
70,70A,70B 転写用基板(素子転写用基板)
71 基板
71b,71f 面
72 素子保持部材
72b 基板接着面
72f 素子保持面
73 基板接着部
74 素子接着部
DA 表示領域
DSP1 表示装置(電子装置)
ED ドレイン電極
EG ゲート電極
ES ソース電極
F1 力
GL 走査信号線
Gs 制御信号
LXP 配線交差部
LZ レーザ(レーザ光)
LZS レーザ光源
PFA 周辺領域
PIX,PIX1,PIX2 画素
PVS 基準電位(固定電位)
SUB1 基板構造体
SW スイッチング素子
Vsg 映像信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18