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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038564
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】塗膜の艶消し感定量評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01N21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142652
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 英治
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB10
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目視評価結果との相関性が高い、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法を提供すること。
【解決手段】艶消し塗膜面に光照射し、該照射光の正反射光が入射しない角度にて、光照射されている塗膜面をCCDカメラにて撮影して得られる画像を解析して得られる2次元パワースペクトル積分値から導出される値PVによる、塗膜の艶消し感定量評価方法、及び艶消し塗膜面に光を照射する光照射装置、光照射された塗膜面を該照射光が入射しない角度にて撮影して画像を形成するCCDカメラ、該CCDカメラに接続され該画像を解析する画像解析装置を具備し、該画像解析装置は、上記画像を2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、2次元パワースペクトル積分値を得る手段を有することを特徴とする塗膜の艶消し感定量評価装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
艶消し塗膜面に光照射し、該照射光の正反射光が入射しない角度にて、光照射されている塗膜面をCCDカメラにて撮影して得られるグレースケールの8ビット諧調の画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値から導出される値PV(Pattern Value)によって、塗膜の艶消し感を定量的に評価することを特徴とする塗膜の艶消し感定量評価方法。
【請求項2】
値PVは下記式により算出される請求項1に記載の塗膜の艶消し感定量評価方法。
PV=(IPSL-0.25)×1000
(式中、IPSLは2次元パワースペクトル積分値)
【請求項3】
2次元パワースペクトル積分値を測定するにあたり、空間周波数スペクトルの画像から抽出する低空間周波数成分の抽出領域を、解像度を表す線密度が、下限値0本/mm~上限値が0.1~6.2本/mmの範囲のいずれかの数値である領域とする、請求項1又は2に記載の塗膜の艶消し感定量評価方法。
【請求項4】
艶消し塗膜面に光を照射する光照射装置、光照射された塗膜面を該照射光が入射しない角度にて撮影して画像を形成するCCDカメラ、該CCDカメラに接続され該画像を解析する画像解析装置を具備し、該画像解析装置は、少なくとも画像解析時には、
上記画像を8ビット諧調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得る手段を有することを特徴とする塗膜の艶消し感定量評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法及びこの方法に用いられる艶消し感定量評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜の意匠性を高めるために、例えば、無機顔料や有機樹脂粒子等の艶消し剤を使用して凹凸形状を形成した艶消し塗料が多く採用されている。
【0003】
塗膜外観を評価するための基準として、例えば、A群:光沢感や平滑感などの表面形状と表面層物性、B群:透明感、深み感、2層感および肉持感などの塗膜の多層的構造、及びC群:陰影感や光輝感などの塗膜内の配向的構造などを挙げることができる。
【0004】
従来、上記のうち光輝材含有塗膜において重要なC群の「光輝感」の定量的評価方法として、特開2000-304696号公報には、光輝材含有塗膜面に光照射し、その正反射光が入射しない角度で、光照射されている塗面をCCDカメラで撮影した画像を2次元フーリエ変換し特有の周波数領域の積分値から評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-304696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法は、光輝材を含有するメタリック塗膜に関する評価方法であるが、艶消し塗膜も画像化すれば、不連続な輝度を有するため、画像による評価方法は、艶消し塗膜の評価方法としても適していると考えられる。
【0007】
本発明は、艶消し塗膜の中でも特に、ミクロな凹凸形状の集合体の陰影による模様(「柄」と称する)を有する艶消し塗膜について、目視評価結果との相関性が高い、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、上記艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法を行うことができる艶消し感定量評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこれまで、目視観察による官能評価結果との相関性が高い、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法について鋭意研究を行ってきており、目視観察による官能評価から艶消し塗膜の模様を「柄」(塗膜表面の数十から数百ミクロンの凹凸形状の集合体が表すランダムな陰影に対する知覚)として捉え、艶消し塗膜の「柄」の官能評価を行った結果、個人差によるバラツキが小さく、一致した結果を得ることができることが分かった。
【0010】
そこで、前記光輝材含有塗膜の光輝感の定量化方法を応用して、目視観察による官能評価結果との相関性が高い、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法を得るため、艶消し塗膜の「柄」を定量的に評価することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0012】
1.艶消し塗膜面に光照射し、該照射光の正反射光が入射しない角度にて、光照射されている塗膜面をCCDカメラにて撮影して得られるグレースケールの8ビット諧調の画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値から導出される値PV(Pattern Value)によって、塗膜の艶消し感を定量的に評価することを特徴とする塗膜の艶消し感定量評価方法。
【0013】
2.値PVは下記式により算出される上記項1に記載の塗膜の艶消し感定量評価方法。
【0014】
PV=(IPSL-0.25)×1000
(式中、IPSLは2次元パワースペクトル積分値)
3.2次元パワースペクトル積分値を測定するにあたり、空間周波数スペクトルの画像から抽出する低空間周波数成分の抽出領域を、解像度を表す線密度が、下限値0本/mm~上限値が0.1~6.2本/mmの範囲のいずれかの数値である領域とする、上記項1又は2に記載の塗膜の艶消し感定量評価方法。
【0015】
4. 艶消し塗膜面に光を照射する光照射装置、光照射された塗膜面を該照射光が入射しない角度にて撮影して画像を形成するCCDカメラ、該CCDカメラに接続され該画像を解析する画像解析装置を具備し、該画像解析装置は、少なくとも画像解析時には、
上記画像を8ビット諧調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得る手段を有することを特徴とする塗膜の艶消し感定量評価装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、艶消し塗膜面の艶消し感を、定量評価して艶消し感を評価することによって目視による官能評価によく対応した評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の塗膜の艶消し感の定量的評価方法について具体的に説明する。
【0018】
艶消し塗膜を得る手法としては、例えば、無機顔料(シリカ、クレー等)、有機樹脂粒子等の艶消し剤を塗膜に適用する手法、塗膜を構成する樹脂成分の極性差により艶消しを形成する手法、塗膜の硬化過程における不均一硬化(例えば塗膜表層の硬化を促進し、塗膜バルクの硬化を遅延)により艶消しを形成する手法等を挙げることができる。
【0019】
本発明の方法に適用できる「艶消し塗膜」としては、例えば上記いずれかの手法により、形成された単層塗膜(1)、プライマー塗膜上に上記単層塗膜(1)を積層してなる複層塗膜(2)、上記単層塗膜(1)又は複層塗膜(2)の塗膜面上にさらにクリヤー塗膜が積層されてなる複層塗膜(3)などを挙げることができる。
【0020】
上記艶消し塗膜の単層塗膜(1)は、例えば、それ自体既知の熱硬化性、熱可塑性、常温硬化性の樹脂組成物に必要に応じて着色顔料などを混合分散してなる有機溶剤系または水系塗料を、金属製又はプラスチック製の被塗物に直接、又は下塗塗装さらには中塗塗装を介して塗装することによって得ることができる。
【0021】
上記単層塗膜(1)の下層側にプライマー塗膜を形成しておくことによって複層塗膜(2)を得ることができ、また、上記単層塗膜(1)の上層側にクリヤー塗料を塗装することによって複層塗膜(3)を得ることができる。
【0022】
艶消しの一例として、いわゆる「縮み模様」が知られており、例えば、建材や金属化粧板及び車両用装飾資材や飲料用金属缶などに用いられている。
【0023】
ちぢみ模様を施すと、従来の単純な塗装を施した被塗物に比して、縮みのミクロな凹凸により、「柄」が形成され、艶消し感やソフトフィール感(柔らかいしっとり感)が顕出されて、独特な意匠が形成され、高級感等を有する商品感覚を呈する意匠塗装板となる。
【0024】
縮み模様において形成される縮み形状として、例えば、倍率20倍程度の画像で観察される格子状の凸部分(「おね」という。肉眼でも確認可能)と倍率150倍程度の画像で観察される格子状(おね)内部の凸凹部分(「うね」という。肉眼では確認困難)が形成される縮み形状がある(図1)。
【0025】
本発明方法は、特に縮み模様(「柄」を形成)による艶消し感定量評価において、好適に使用することができる。
【0026】
縮み模様(柄)を形成する塗料組成物としては、具体的には例えば、水酸基含有塗膜形成性樹脂とアミノ樹脂架橋剤とを含有する樹脂バインダを含有し、さらに有機スルホン酸化合物及びアミン化合物を含有する塗料組成物が知られており、例えば、プレコート鋼板等の艶消し塗装板として、広く利用されている。
【0027】
本発明方法において、まず該艶消し塗膜面に光照射する。この光は擬似(人工)太陽光が好ましく、この光源としては、例えばLEDライト、ハロゲンランプ、メタルハライドランプなどが適している。艶消し塗膜面への光照射角度は塗面の鉛直線に基いて、5~60度、好ましくは30~60度の範囲内が適しており、特に鉛直線に対して45度が好適である。また、光の照射領域の形状は特に限定されるものではないが、通常、円形であり、塗膜面上における照射面積は通常、該塗膜面の1~10,000mm の範囲内が適しているが、この範囲に制限されるものではない。照射光の照度は、通常、100~2,000ルクス(lux)の範囲内が好ましい。
【0028】
このように艶消し塗膜面に光照射し、それに基づく反射光のうち、正反射光が入射しない角度で、光が照射されている塗膜面をCCD(Charge Couple Device)カメラで撮影する。この撮影角度は正反射光が入射しない角度であればよいが、塗膜面に対して鉛直方向が特に好ましい。また、CCDカメラの撮影方向と正反射光との角度は10~60度の範囲内にあることが好ましい。光照射された塗膜面におけるCCDカメラでの測定範囲は、均一に光が照射されている範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、照射部分の中央部を含み、測定面積が1~10,000mm、好ましくは500~5000mmの範囲内であることが適当である。
【0029】
本発明方法においては、CCDカメラで撮影された画像を画像解析し、艶消し感を定量的に評価する。
【0030】
本発明方法の好適な方法について以下に説明する。
【0031】
本発明の好適な方法において、CCDカメラで撮影された画像は、2次元画像であり、多数(通常10,000~10,000,000個)の区画(ピクセル、画素)に分割され、それぞれの区画における輝度を測定する。本発明においては、「輝度」とは、「CCDカメラによって撮影して得られた2次元画像の区画毎の濃淡値を示すデジタル階調であり、被写体の明るさに対応するデジタル量」を意味する。8ビット分解能のCCDカメラから出力される区画毎の輝度を意味するデジタル階調(グレースケールの8ビット諧調)は0~255の値を示す。
【0032】
上記CCDカメラで撮影された2次元画像において、艶消し塗膜の反射光が強い部分に相当する区画は凹凸形状で凸の部分で形状が平であり、反射が強いので輝度が高く、そうでない部分に相当する区画では当然ながら輝度は低くなる。また凹凸形状の反射光が強い部分に相当する区画であっても、凹凸の高低差、形状、連続性などによって輝度が変化する。つまリ区画ごとに輝度を表示でき、本発明ではそれぞれの区画における輝度に基いてCCDカメラで撮影した2次元画像の輝度分布を三次元に表示することが可能である。この輝度の三次元分布図(図2)は、山及び谷に分けられ、山の高さと谷の深さの差が大きくなるほど艶消し感が顕著であることを示している。
【0033】
上記CCDカメラで撮影された画像の解析は、CCDカメラに接続された画像解析装置によって行うことができる。この画像解析装置に用いられる画像解析ソフトとしては、例えば三谷商事(株)の「WINROOF」(商品名)が好適である。
【0034】
上記方法においては、画像を解析して得られた区画毎の輝度を基礎にして、艶消し塗膜の艶消し感(柄)を定量的に評価する。
【0035】
艶消し感の「柄」の定量的測定方法は、前記のようにして、光照射された艶消し塗膜面をCCDカメラで撮影して2次元画像を得て、この2次元画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値を得て、この2次元パワースペクトル積分値から塗膜の艶消し感の「柄」を定量的に評価する方法である。
【0036】
2次元フーリエ変換後の空間周波数スペクトルの画像から低空間周波数成分を抽出して、積分及び直流成分での正規化を行なって得られる2次元パワースペクトル積分値を測定するにあたり、空間周波数スペクトルの画像から抽出する低空間周波数成分の抽出領域を、解像度を表す線密度が、下限値0本/mm~上限値が0.1~6.2本/mmの範囲のいずれかの数値である領域、好ましくは下限値0.03本/mm~上限値が1.55本/mmの領域とすることが、目視観察による「艶消し感」の官能評価結果との相関性を高いものとする観点から適している。
【0037】
2次元パワースペクトル積分値は次式によって求めることができる。
【0038】
【数1】
【0039】
(式中、νは空間周波数、θは角度、Pはパワースペクトル、0~Lは抽出した低空間周波数領域であり、Lは抽出した周波数の上限を意味する)
上記のようにして得られる2次元パワースペクトル積分値と目視観察による「艶消し感」の官能評価結果との相関性は高いものである。
【0040】
本発明方法において採用される値PV(Pattern Value)は、上記2次元パワースペクトル積分値をIPSLとすると、次式により導出されるパラメータ値である。
【0041】
IPSLとは、Integration of Power Spectrum of Low frequency の略である。
【0042】
PV=(IPSL-0.25)×1000
2次元パワースペクトル積分値、IPSLが概ね0.25~0.35の値となるので、パラメータ値として、わかりやすい値の範囲(0(小)~100(大)の範囲)とするために設定したパラメータ値である。
【0043】
次に本発明装置について詳細に説明する。
【0044】
本発明装置は、上記本発明の塗膜の艶消し感定量評価方法を行うことができる装置であり、後記図3に示すように、艶消し塗膜面に光を照射する光照射装置(1)、光照射された塗膜面を該照射光が入射しない角度にて撮影して画像を形成するCCDカメラ(2)、該CCDカメラに接続され該画像を解析する画像解析装置(3)を具備する艶消し感定量評価装置である。
【0045】
画像解析装置(3)は、少なくとも画像解析時には、上記画像を8ビット諧調のグレースケールに変換した画像から2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を求める手段、例えば画像解析ソフト及びコンピュータを有する。
【0046】
上記画像解析装置によって得られるデータから算出した値PVを求めることができる。
【0047】
値PVは、上記画像解析装置を構成するコンピュータなどの手段によって得てもよく、得ることが好ましい。この艶消し感定量評価装置によって、前記値PVを求めることができる。
【0048】
光照射装置としては、擬似(人工)太陽光を照射できる装置であり、その光源として、例えばLED、ハロゲンランプ、メタルハライドランプなどを挙げることができる。画像解析装置の画像解析ソフトとしては、例えば、三谷商事(株)製の「WINROOF」(商品名)などを挙げることができる。画像解析ソフトに加えて、それ自体既知の計算ソフトを使用することができる。
【0049】
上記画像解析装置は、少なくとも画像解析時には、さらにCCDカメラによって撮影された上記光照射された塗膜面の画像を8ビット諧調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得て、該スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得る手段を有することができる。該手段としては、例えば画像解析ソフト及びコンピュータを挙げることができる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例
水酸基含有塗膜形成性樹脂とアミノ樹脂架橋剤とを含有する樹脂バインダを含有し、さらに有機スルホン酸化合物及びアミン化合物を含有する塗料組成物を使用して、凹凸形状のある艶消し塗膜10枚のテストパネルを用意した。この10枚のパネルはアミンの添加量や水酸基含有塗膜形成性樹脂の分子量を変えて凹凸形状の大きさが異なっており、柄を変動させた塗膜である。テストパネルの断面図を図4に示した。塗膜の色は黒色とした。着色顔料に赤顔料と緑色顔料を使用した補色とした。柄がある塗膜である上塗塗膜と、下塗塗膜及び裏面塗膜とからテストパネルは構成され、上塗塗料、下塗塗料、裏面塗料とも熱硬化性樹脂塗料である。
【0052】
上記10枚のテストパネルについて、柄の官能評価を行った。評価条件としては、擬似(人工)太陽灯の下で上記テストパネルに正反射光が入射しない角度で、10名の塗装関係者各人がテストパネルを評価し、柄の大きさの順(10段階)に並べた。その結果を正規化順位法(正規化順位法については日本放射線技術学会雑誌、2000、56(5)、p725、中前光弘の文献を参照した。)により順位付けを行い、それを官能評価の柄の大きさランクとした。この結果を図5に示した。
【0053】
図5において、横軸は柄の大きさを示す。プロットされた試料の位置が目視距離尺度になる。
【0054】
目視距離尺度とは、目視評価で各パネラーにつけてもらった順位付けデータは順位尺度であり、平均順位を出しても意味が無く、試料間に有意差があるのかを解析するためには、より高度な距離尺度に変換する必要がある。つまり目視距離尺度とは試料間の順位と有意差の距離を表した尺度である。正規化順位法で表すことができる。
【0055】
欄外に両端に矢印をもつ記号は判別距離(l.s.d(least significant different))であり、判別距離とは、どの試料とどの試料の間に有意差があるかを知るために,t分布を用いて有意差があるといえる差の最小値(least significant different :以下、l.s.d)のことである。
【0056】
この距離間隔より短い試料は目視評価で柄の大小の判別が困難な試料である。例としてBとIや、AとC、DとE等が、判別が困難な試料である。
【0057】
このような組合せから10枚中7枚のテストパネルが判別可能なパネルであることが分かった。
【0058】
次に、前記7枚のテストパネルについて、柄の定量的測定を、下記測定装置を用いて行った。
【0059】
測定装置としては図3に示すと同様のものであり、光源としてLEDライト、光照射された塗膜面の画像を取り込むCCDカメラ、画像解析装置を有し、画像解析装置は、画像解析ソフトである「WINROOF」(三谷商事(株)製)と制御、管理を行うパーソナルコンピュータを有する。
【0060】
測定条件はLEDライトからの照射光とCCDカメラへの入射光との角度を45度とし、CCDカメラはテストパネルの塗膜面に対して鉛直とした。照度はテストパネルの塗膜面で500ルクス(lux)となるようにした。
【0061】
CCDカメラの明るさの条件はテストパネルJを撮影した時の画像のグレーレベルが66になるように設定した。
【0062】
光照射されたテストパネルの塗膜面をCCDカメラで撮影して画像を得た(図6)。その画像は8ビット諧調のグレースケールに変換し、画像解析装置にて解析を行った。画像解析にあたり、黒色の艶消し塗膜のパネルの平均輝度を66とした。また、画像解析する画像の測定面は33mm×33mmの大きさとし、これを2048×2048個の区画(ピクセル)に分解して柄に相当する値PVを得るためのデータ処理を行った。
【0063】
テストパネルAについて、光照射された塗膜面をCCDカメラで撮影した画像を8ビット諧調のグレースケールに変換した画像を、2次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを得た。この空間周波数スペクトルから解像度を表す線密度が0~31.03本/mmとなる領域の低空間周波数成分(0~1.55本/mm)のパワーを積分し、ついで直流成分で正規化して2次元パワースペクトル積分値を得た。上記領域の2次元パワースペクトル積分値は、2次元パワースペクトル積分値を得るための前記式
【0064】
【数2】
【0065】
において、0~Lを、解像度を表す線密度が0~3.2本/mmとなる周波数領域として計算することによって得た。サンプルNo.Aにおける2次元パワースペクトル積分値は、0.313(PV値は63.0)であった。
【0066】
上記サンプルNo.Aの場合と同様にして、他の6枚のテストサンプルについても2次元パワースペクトル積分値を算出した。各テストサンプルについて求めた各2次元パワースペクトル積分値(PV値)と官能評価による艶消し感(柄の大小)ランクとの対応関係を示したグラフを図7に示す。このグラフにおける相関係数は0.98であり非常に良い対応関係を示した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】縮み模様(柄)の観察画像の一例である。
図2】2次元画像の輝度分布の3次元分布図の一例である。
図3】本発明の艶消し感定量評価装置の一例を示す図である。
図4】本発明の実施例におけるテストパネルの構成を示すモデル断面図である。
図5】本発明の実施例における目視評価を正規化順位法で示す目視評価尺度図である。
図6】CCDカメラによって撮影された光照射された塗膜面の画像である。
図7】本発明の実施例における目視評価尺度と値PVの関係を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
目視評価結果との相関性が高い、艶消し塗膜の艶消し感を定量的に評価する方法、及び該方法を行うことができる艶消し感定量評価装置を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7