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  • 特開-中質繊維板の製造装置および製造方法 図1
  • 特開-中質繊維板の製造装置および製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038576
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】中質繊維板の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B27N3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142679
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000113300
【氏名又は名称】ホクシン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 茂
(72)【発明者】
【氏名】井後 博和
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA18
2B260CB01
2B260EA01
2B260EB13
2B260EB19
(57)【要約】
【課題】従来のMDFの製造装置の構成を大幅に変更することなく、消費電力を節減することができるMDFの製造装置および製造方法を開示する。
【解決手段】木質チップを製造ラインに供給するための供給工程と、この供給工程から供給した前記木質チップの異物を除去する異物除去工程と、この異物除去工程から後ラインに木質チップを搬送する搬送工程と、この搬送工程から搬送される木質チップを蒸解する蒸解工程と、蒸解された木質チップを解繊する解繊工程と、前記解繊された木質チップに接着剤を添加する接着剤添加工程と、前記接着剤を添加した木質繊維を乾燥させる乾燥工程と、通常の用法からなるフォーミング工程とからなるとともに、前記異物除去工程と前記蒸解工程との間に木質ペレットを投入する工程からなる製造装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質チップを製造ラインに供給するための供給工程と、この供給工程から供給した前記木質チップの異物を除去する異物除去工程と、この異物除去工程から後ラインに木質チップを搬送する搬送工程と、この搬送工程から搬送される木質チップを蒸解する蒸解工程と、蒸解された木質チップを解繊する解繊工程と、前記解繊された木質チップに接着剤を添加する接着剤添加工程と、前記接着剤を添加した木質繊維を乾燥させる乾燥工程と、通常の用法からなるフォーミング工程とからなるとともに、前記異物除去工程と前記蒸解工程との間に木質ペレットを投入する工程を有することを特徴とする中質繊維板の製造装置。
【請求項2】
木質ペレットの投入工程は、木質ペレットの投入機と、この木質ペレットを前記コンベアの途中に供給するフィーダからなる請求項1記載の中質繊維板の製造装置。
【請求項3】
木質ペレットの混合は、木質チップの質量に対して20~50質量%とする請求項1~3のいずれか記載の中質繊維板の製造装置。
【請求項4】
木質チップを製造ラインに供給し、この供給した前記木質チップの異物を除去し、この異物を除去した木質チップを後ラインに搬送し、前記搬送された木質チップを蒸解、解繊して木質繊維を得、この木質繊維に対して接着剤を混合して乾燥させ、これら混合して乾燥させた木質繊維と接着剤を通常の用法に従ってフォーミングする方法に対して、さらに前記異物を除去する工程と木質チップを蒸解する工程の間に木質ペレットを投入して混合する工程を備えたことを特徴とする中質繊維板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中質繊維板(以下、MDFという。)の製造方法に係り、特に原材料として一部にペレットを採用したMDFを効率よく製造する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MDF自体は従来から周知であり、木質チップを解繊したものに接着剤として作用する合成樹脂を加えて板状に熱圧成形して得られる繊維板である。そして、その製造装置としては、図2に示したように、木質チップ供給機20からフィーダ21によって木質チップが異物除去装置22に供給されて異物を取り除く。この異物除去装置22は一般的には水洗式選別機によって異物を選別および除去することによって木質チップのみを得るものである。次に、選別された木質チップは蒸解機23において蒸解工程を経て、解繊機24によって解繊されて木質繊維となり、ドライヤー26によって乾燥させて解繊状態の木質繊維を得る。なお、木質繊維を板状に接着するための接着剤は接着剤添加装置25において添加される。そして通常の用法に従って圧熱、調湿を行って両側表面を平滑になるよう研削して最終的に所望するMDFを完成するという一連の工程からなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-311718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された図1は、背景技術として説明したMDFの従来の典型的な製造方法である。ところで、原材料である木質チップから木質繊維を得るためには蒸解工程、解繊工程が必須であるが、これらの工程では大量の電力消費が要求される。また、ドライヤー6における乾燥工程においても大量の熱エネルギーが消費される。しかしながら、近年のエネルギー資源の高騰や、二酸化炭素排出量の規制などの制約によって、自由にこれらで使用する熱エネルギーを得ることは困難である。
【0005】
そこで、特に解繊機24における電力の消費削減のために木質繊維からなるペレットを原材料として利用することが考えられる。ペレットは特にサイズを限定する必要はないが、予め木質繊維を好ましい大きさ、例えば直径6~8mm程度、長さ30~40mm程度の乾燥した円柱形状に圧縮成形したものである。したがって、木質ペレットを利用すれば木質チップから木質繊維を得るための工程を省略することができる。しかしながら、ペレットの状態では水洗式などのような公知の異物除去装置を通過させることはできないし、元々ペレット自体にはその製造段階で大きい支障を来す異物が混入している可能性は低い。一方、念のためにペレットを異物除去装置に通した場合には、ペレットの比重が大きいので現状で採用する異物除去装置3において異物として除去されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、従来のMDFの製造装置の一連のラインを大幅に変更することなく、木質ペレットを原材料の一部として利用することができ、熱エネルギーの消費を節減することができるMDFの製造装置および製造方法を開示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では従来の課題を解決するために、木質チップを製造ラインに供給するための供給工程と、この供給工程から供給した前記木質チップの異物を除去する異物除去工程と、この異物除去工程から後ラインに木質チップを搬送する搬送工程と、この搬送工程から搬送される木質チップを蒸解する蒸解工程と、蒸解された木質チップを解繊する解繊工程と、前記解繊された木質チップに接着剤を添加する接着剤添加工程と、前記接着剤を添加した木質繊維を乾燥させる乾燥工程と、通常の用法からなるフォーミング工程とからなるとともに、前記異物除去工程と前記蒸解工程との間に木質ペレットを投入する工程を有することとした。ここで、特徴的なことは、主ラインの途中に木質ペレットを供給することであるが、木質ペレットはそれ自体が十分に乾燥していることを前提とするので、乾燥工程などのようにドライヤーの消費電力を抑制することになる。
【0008】
また、木質ペレットを投入する装置としては、木質ペレットの投入機と、この木質ペレットを前記コンベアの途中に供給するフィーダからなることとした。フィーダとしては好ましくは定量供給ができる構成であり、木質チップの総質量に対して好適な配合量を設定することができる。木質ペレットの混合は、一例として木質チップの質量に対して20~50質量%としている。
【0009】
さらに、製造方法としては、木質チップを製造ラインに供給し、この供給した前記木質チップの異物を除去し、この異物を除去した木質チップを後ラインに搬送し、搬送された木質チップを蒸煮、解繊して木質繊維を得、接着剤を混合して乾燥させ、これら混合して乾燥させた木質繊維と接着剤を圧熱する工程を有し、さらに前記工程の異物を除去する工程と木質チップを蒸解する工程の間に木質ペレットを混合する工程を備えるという手段を用いることとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造装置および製造方法では上述した手段を用いたので、特に大量の電力消費を必要とする解繊工程における電力の消費を節減することができるので、近年求められている二酸化炭素排出量の削減に資すると同時に、製造工程における廃棄物を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のMDFの製造方法を示した工程図
図2】従来のMDFの製造方法を示した工程図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態のMDFの製造方法を実現するための一連の装置を示したもので、1は木質チップを後段の工程に搬送するための供給機を含む木質チップの供給工程であり、一例としてはホッパにて貯蔵した木質チップをチップビンによって一定量ごとに払い出す。2は例えばフィーダやベルトコンベアなど、供給工程1から排出される木質チップの搬送工程である。3は木質チップに含まれた金属片や小石などの不要物を取り除くための異物除去工程であり、本実施形態では水洗式のチップ水洗機であっても、木質チップと比較して比重が重い不要物を下方に向かって沈み込ませて除去する比重差選別機であっても、目的が異物を除去するための工程であればいずれを利用してもよい。4は不要物を取り除いた木質チップを次工程に送り出すための搬送路として機能するコンベアである。5は選別された木質チップを蒸解する工程を実現するための蒸解機であって、木質チップなどを貯蔵するためのフィードビン、チップを定量払い出すためのメタリングスクリュー、およびチップを蒸煮するためのダイゼスターからなっている。6はチップなどの繊維を解繊する工程を実現するための解繊機であり、ダイゼスターから送られた繊維を送り込むクロススクリューとチップを繊維化するための解繊機からなっている。7は接着剤の添加装置を含む接着剤添加工程であり、例えばブロー配管などから接着剤を繊維に噴霧する。8は乾燥工程であって、接着剤を噴霧した繊維を乾燥させるためにドライヤー、集塵機などを備えている。なお、図示していないが、接着剤を複数種類用いる場合には接着剤添加工程と乾燥工程は同様に複数段をラインに沿って接続することもある。このようにして得られた製品は、通常の用法に従ってフォーミング工程9、熱圧締工程を経て所望の時間養生し、最終工程として表面の研削工程10(サンダー)、適切な寸法のMDFを得るためのカット工程11を経て最終的な製品が完成する。これら一連の工程は、従来例を示した図2と基本的には変わるところはない。
【0013】
本発明では、図1に示した一連の工程の途中に、木質ペレットを投入する工程を導入した。ペレット投入装置12はそのために設けられた工程であり、木質ペレットはフィーダ13によってコンベア4の途中に投入する。なお、フィーダ11は木質ペレットを蒸解工程5の手前に供給することができればコンベア4のどの位置に供給してもよいが、定量ずつ供給できるように具体的にはロータリフィーダを用いることが好ましい。ただし、フィーダはロータリフィーダに限定するものではなく、搬送手段はフィーダに限るものではない。ただし、木質ペレットを投入する位置は、異物除去工程3より後段であることが必要である。異物除去工程3より前で投入した場合には、水洗選別式の装置を用いた場合には水洗時に解繊されてしまい、解繊工程への搬送が困難である。一方、異物除去装置として比重差選別機を用いた場合には、一般に木質ペレットの比重が木質チップに対して比較的重いので、木質ペレットそのものが異物として除去されるおそれがある。いずれにしても、木質ペレットを投入する場所については異物除去工程3より後段であり、蒸解工程よりも前であることが必要である。
【0014】
木質ペレットは、予め木質チップを蒸煮したうえで解繊した繊維を直径6~8mm程度、長さ30~40mm程度の乾燥した円柱形状に圧縮成形したものである。この木質ペレットは既に製造工程で不要物である金属片や小石を除去したものであるから、基本的には異物除去工程3を通過させる必要がない。従って、木質ペレットを蒸解し、解繊する際の熱エネルギーを必要としないので、MDFの製造工程における省エネルギー化が可能になった。また、木質ペレットは乾燥度が高いので、ドライヤーなどによる乾燥工程8の前段階に投入すれば乾燥のために必要な電力の消費を抑制することもできる。なお、木質ペレットの大きさについては上記数値は単に一例であって、これに限定されるものではない。
【0015】
木質ペレットの混合率については比較的自由に選択することができるが、本発明では原材料である木質チップに対して20~50質量%の範囲で適宜調整する。ただし、この混合率はあくまでも一例であって、50質量%を超えることを排除するものではない。この調整の目的は、MDFの用途や物理的特性に応じて変更することができる。
【0016】
本発明では、従来からのMDFの製造ラインを有効に利用しながら、解繊工程で消費する電力の消費を抑制することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 木質チップの供給工程
2 木質チップの搬送工程
3 異物除去工程
4 コンベア
5 蒸解工程
6 解繊工程
7 接着剤添加工程
8 乾燥工程
9 フォーミング工程
10 研削工程
11 カット工程
12 木質ペレット投入工程
図1
図2