(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038588
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】交流モータ制御装置および電気車、交流モータの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20240313BHJP
【FI】
H02P21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142700
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 峻
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】安島 俊幸
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG01
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ22
5H505JJ26
5H505JJ28
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL58
5H505MM02
(57)【要約】
【課題】
電圧位相制御により交流モータを駆動制御する交流モータ制御装置において、電流の逆応答を抑制しつつ、全体として応答を高速化可能な交流モータ制御装置を提供する。
【解決手段】
電圧位相制御部から出力された電圧位相指令に基づいて直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を交流モータへ出力する交流モータ制御装置であって、前記電圧位相制御部は、前記電圧位相の変化量に制限を掛ける変化量制限部を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧位相制御部から出力された電圧位相指令に基づいて直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を交流モータへ出力する交流モータ制御装置であって、
前記電圧位相制御部は、前記電圧位相の変化量に制限を掛ける変化量制限部を備える交流モータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交流モータ制御装置であって、
前記変化量制限部は、前記電圧位相の変化量が所定の範囲内に入るように制御する交流モータ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の交流モータ制御装置であって、
前記変化量制限部は、前記交流モータの回転速度に比例して前記電圧位相の変化量の制限量を変更する交流モータ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の交流モータ制御装置であって、
前記交流モータの電流を検出する電流検出手段を備え、
前記変化量制限部は、前記電流検出手段を介して検出した電流指令値または電流検出値に基づき、前記電圧位相の変化量に制限を掛けるか否かを判定して前記変化量の制限量を変更する交流モータ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の交流モータ制御装置であって、
前記変化量制限部は、前記交流モータの回転方向に基づき、前記電圧位相の変化量に制限を掛けるか否かを判定して前記変化量の制限量を変更する交流モータ制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の交流モータ制御装置であって、
前記電圧位相制御部から出力された電圧位相指令に基づいて直流電力を交流電力に変換する電力変換器を備え、
前記電力変換器は、矩形波パルスを用いる交流モータ制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の交流モータ制御装置を備える電気車。
【請求項8】
交流モータの駆動を制御する交流モータの制御方法であって、
電圧位相制御部から出力された電圧位相指令の変化量に制限を掛ける交流モータの制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の交流モータの制御方法であって、
前記電圧位相指令の変化量が所定の範囲内に入るように制御する交流モータの制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の交流モータの制御方法であって、
前記交流モータの回転速度に比例して前記電圧位相指令の変化量の制限量を変更する交流モータの制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載の交流モータの制御方法であって、
前記交流モータの電流指令値または電流検出値に基づき、前記電圧位相指令の変化量に制限を掛けるか否かを判定して前記変化量の制限量を変更する交流モータの制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の交流モータの制御方法であって、
前記交流モータの回転方向に基づき、前記電圧位相指令の変化量に制限を掛けるか否かを判定して前記変化量の制限量を変更する交流モータの制御方法。
【請求項13】
請求項8に記載の交流モータの制御方法であって、
矩形波パルスを用いて直流電力を交流電力に変換し、前記交流モータへ供給する交流モータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流モータを駆動制御する交流モータ制御装置の構成とその制御方法に係り、特に、高応答性と振動抑制の両立が要求される電気車用交流モータに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle:電気自動車)など電気車の駆動システムには、軽量化、小型化、低コスト化と共に、低騒音・低振動が求められている。特に、高速回転時にはモータの振動やエネルギー損失が顕著となる課題があり、高速回転時のモータの振動を抑制するための様々な技術開発が進められている。
【0003】
一方、電圧位相制御による交流モータの制御(矩形波駆動等)においては、高速域での電圧利用率を向上するため、省パルス制御(例えば1パルス制御)の適用が検討されている。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1では、インバータの出力電圧制限に近い電圧を実現するために、トルクが指令値と一致するように電圧位相角を制御する電圧位相制御が提案されている。この制御では、電圧位相角が所定の範囲外に達して制御が破綻するのを防ぐために、電圧位相角にリミッタが付与されている。
【0005】
また、特許文献2では、トルク推定値の演算になまし処理を行うことで、d軸電流値が正常制御範囲から外れることを抑制する制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3746377号公報
【特許文献2】特開2010-183661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した省パルス制御(例えば1パルス制御)を適用した交流モータの電圧位相制御において、応答を速くする場合、応答が速すぎて電流が逆応答するケースがある。この逆応答は、交流モータの振動の発生に繋がる可能性があるため、逆応答をしないように全体的に応答を制限する必要がある。
【0008】
しかし、全体的に応答を制限すると、応答が遅くなりすぎてしまう。
【0009】
図1に、電圧位相制御における電流の逆応答の例を示す。
図1では、電流指令値61の入力に対する実電流値63の応答を表している。
【0010】
電圧位相制御では、応答を速くしていくと、
図1のように電流が指令値の変化とは逆方向に応答してから指令値に追従する逆応答の特性を示すことがある。
【0011】
このような逆応答に対して、特許文献1の電圧位相制御により電圧位相角に制限を掛けてもこれを抑制することができない。
【0012】
また、特許文献2では、d軸電流が逆応答する際には抑制可能であるが、q軸電流が逆応答するケースを想定していない。逆応答が発生して、特に問題が生じるのは、最大電流時に逆応答して過電流になるケースと、d軸電流が逆応答で正常範囲である負から正方向に達するような電流になるケースである。特許文献2は後者に対する対策であり、前者に対して作用しない。
【0013】
上記のように、従来技術ではq軸電流が逆応答して過電流になるケースを想定していない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、電圧位相制御により交流モータを駆動制御する交流モータ制御装置において、電流の逆応答を抑制しつつ、全体として応答を高速化可能な交流モータ制御装置及び交流モータの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、電圧位相制御部から出力された電圧位相指令に基づいて直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を交流モータへ出力する交流モータ制御装置であって、前記電圧位相制御部は、前記電圧位相の変化量に制限を掛ける変化量制限部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、交流モータの駆動を制御する交流モータの制御方法であって、電圧位相制御部から出力された電圧位相指令の変化量に制限を掛けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電圧位相制御により交流モータを駆動制御する交流モータ制御装置において、電流の逆応答を抑制しつつ、全体として応答を高速化可能な交流モータ制御装置及び交流モータの制御方法を実現することができる。
【0018】
これにより、EVなど電気車の高速域での振動抑制及び乗り心地向上に寄与できる。
【0019】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】電圧位相制御における電流の逆応答の例を概念的に示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る交流モータ制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の矩形波発生部15の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図2の電圧位相制御部13の一例を示すブロック図である。
【
図5】定常項による電流の動作軌跡を概念的に示す図である。
【
図6】正転時における電流の逆応答が発生する状況の例を示す図である。
【
図7】逆転時における電流の逆応答が発生する状況の例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る交流モータ制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図9】
図8の電圧位相制御部13Bの一例を示すブロック図である。
【
図10】
図9の制限値演算部49の入力と出力の関係対応表の例を示す図である。
【
図11】制限値演算部49の入力と出力の関係対応表の変形例を示す図である。
【
図12】制限値演算部49の入力と出力の関係対応表の変形例を示す図である。
【
図13】制限値演算部49の入力と出力の関係対応表の変形例を示す図である。
【
図14】本発明の実施例3に係る電気車の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0022】
また、以下の説明では、永久磁石同期モータ(Permanent Magnet Synchronous Motor:PMSM)を対象としているが、本発明は永久磁石同期モータに限定されるものではなく、シンクロリラクタンスモータや永久磁石同期発電機、巻線型同期機といった同期機であれば同様の効果が得られる。
【0023】
また、インバータ装置の半導体スイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)でも良く、その他の電力用半導体素子でも良い。
【実施例0024】
図2から
図7を参照して、本発明の実施例1に係る交流モータ制御装置について説明する。
【0025】
図2は、本実施例の交流モータ制御装置10の全体構成を示すブロック図である。
図3は、
図2の矩形波発生部15の一例を示すブロック図であり、
図4は、
図2の電圧位相制御部13の一例を示すブロック図である。
図5は、定常項による電流の動作軌跡を概念的に示す図である。
図6は、正転時における電流の逆応答が発生する状況の例を示す図であり、
図7は、逆転時における電流の逆応答が発生する状況の例を示す図である。
【0026】
本実施例の交流モータ制御装置10は、
図2に示すように、主要な構成として、電力変換器2と、相電流検出手段3と、磁極位置検出器4と、周波数演算部5と、座標変換部7と、トルク演算部11と、電圧位相制御部13と、矩形波発生部15とを備えている。
【0027】
電力変換器2は、直流電圧源9(例えばバッテリ)からの直流電力を、後述するゲート信号(例えば矩形波パルス信号)に従って交流電力に変換して永久磁石同期モータ(PMSM)1を駆動する。
【0028】
相電流検出手段3は、ホールCT(Current Transformer)等で構成され、電力変換器2からPMSM1に流れるU相,V相,W相の3相の電流波形Iuc,Ivc,Iwcを検出する。
【0029】
磁極位置検出器4は、レゾルバ等で構成され、PMSM1の磁極位置を検出して磁極位置情報θ*を出力する。
【0030】
周波数演算部5は、磁極位置検出器4で検出された磁極位置情報θ*から、例えば微分演算によって速度情報ω1*を出力する。
【0031】
座標変換部7は、相電流検出手段3で検出したIuc,Ivc,Iwcを、磁極位置検出器4で検出した磁極位置情報θ*で座標変換して、dq軸電流検出値Idc,Iqcを出力する。
【0032】
トルク演算部11は、dq軸電流検出値Idc,Iqcを用いて、トルクTを演算する。トルク演算部11は、例えば式(1)を用いて演算する。
【0033】
【0034】
ここで、Ld,Lqはdq軸インダクタンス、φmは磁石磁束係数、Nは極対数をそれぞれ表す。
【0035】
なお、数式ではなく、ルックアップテーブルを用いて演算しても良い。
【0036】
電圧位相制御部13は、トルクTがトルク指令値T*と一致するように電圧位相角θvを出力する。本機能は、発明のポイントとなる機能であるため、詳細は後述する。
【0037】
矩形波発生部15は、例えば、
図3に示すように、磁極位置情報θ*に電圧位相角θvとπ/2を加算器81で加算して、電圧位相信号を生成し、剰余演算部87で2πで割った剰余を計算した後、さらに減算器93でπを減算し、減算器93の出力に対して符号判定器96で符号(正負)を判定し、その符号に応じてパルス信号Suを演算する。
【0038】
同様に、電圧位相信号に、加算器83,85でそれぞれ4π/3,2π/3を加算し、剰余演算部89,91でそれぞれ2πで割った剰余を計算した後、さらに減算器94,95でそれぞれπを減算し、減算器94,95の出力に対して符号判定器97,98で符号(正負)を判定し、その符号に応じてパルス信号Sv,Swを演算する。パルス信号Su,Sv,Swからデッドタイムを考慮してゲート信号が生成され出力される。
【0039】
以下で、先ず、本発明のポイントとなる電圧位相制御部13の詳細を説明する。
【0040】
【0041】
減算器51でトルク指令値T*とトルクTの差分を演算し、ゲイン53で応答を考慮したゲインを乗算して、電圧位相角の変化量Δθvをリミッタ55へ出力する。一方、周波数演算部5で演算した速度情報ω1*にゲイン52を掛けて得られた制限値Δθlimをリミッタ55へ出力する。
【0042】
リミッタ55は、電圧位相角の変化量Δθvが±Δθlimの範囲になるように出力を制限する。
【0043】
積分器57は、リミッタ55で制限された電圧位相角の変化量Δθvを積分してリミッタ59へ出力する。
【0044】
リミッタ59は、出力された電圧位相角θvが不安定領域に入らないように制限する。
【0045】
次に、電圧位相制御部13による電圧位相制御の原理を説明する。
【0046】
電圧位相操作量δθvに対するdq軸電圧δvd,δv qの応答は式(2)となる。
【0047】
【0048】
dq軸電圧δvd,δv qに対するdq軸電流δid,δi qの応答は式(3)となる。
【0049】
【0050】
式(2)及び式(3)より、電圧位相操作量δθvに対するdq軸電流δid,δiqの応答は式(4)となる。但し、R<<Lqω1より抵抗Rを無視する。
【0051】
【0052】
式(4)のうち、s=0とした式(5)に示す定常項によって
図5に示すような定電圧楕円31に沿うように電流32が動き、式(6)に示す過渡項によって、定電圧楕円31から外れる動きをする。
【0053】
【0054】
【0055】
ここで、想定の動作から外れる方向に作用する過渡項に着目して、電圧に電流を代入すると式(7)となる。
【0056】
【0057】
Idの式より、φmとLdは正なので、Idが0近傍において、d軸電流が正方向に逆応答するのは正転(ω1>0)においてΔθv(=s×θv)が正の時、即ち、トルクが減少する方向に回転する時である。Idが負の方向に増加すると、Id0+φm/Ldは減少していくので、電圧位相角の変化量Δθv(=s×θv)によってd軸電流が定電圧楕円31から外れる方向に作用する効果は小さくなる。
【0058】
一方、Iqの式より、正転(ω1>0)においてΔθv(=s×θv)が正の時、即ち、トルクが減少する方向に回転する時、Iqが増加する方向に作用する。このケースではIqが正の時には、過電流の発生につながる可能性がある。一方、正転(ω1>0)においてΔθv(=s×θv)が負の時、即ち、トルクが増加する方向に回転する時、Iqが減少する方向に作用する。このケースではIqが負の時には、過電流の発生につながる可能性がある。
【0059】
以上を纏めると、
図6のようになる。
図6は、正転時における電流の逆応答が発生する状況の例を示す図である。図中で「ステップ」は、トルク指令が変化した時(特に、ステップ状に変化した時)を表し、「ゼロクロス」はトルクが0を通過する時を表す。
図6に示すように、逆応答が大きく発生するシチュエーションとしては、全部で6パターンが考えられる。
【0060】
図7は、逆転(ω1<0)において同様に検討した結果である。Iqに関しては、トルクの変化方向にΔIqが発生するため逆応答にはならない。Idに関しては、正転の時とは逆に、トルクが増加する方向に回転する時(Δθvが負の時)に逆応答が発生する可能性がある。
【0061】
ここで、逆応答を抑制するためには、電圧位相角の変化量Δθvを制限すれば良いことが分かる。また、逆応答の量は速度ω1に反比例するので、電圧位相角の変化量Δθvの制限値Δθlimは、速度ω1に比例して決定すれば良い。
【0062】
さらに、ゲイン52で乗算するゲインについては、式(7)に基づいて決定する。d軸電流の変化量制限値をΔId_limとすると、Id=0での電圧位相角の変化量Δθvの制限値Δθlimは式(8)で示される。
【0063】
【0064】
一方、q軸電流の変化量制限値をΔIq_limとすると、電圧位相角の変化量Δθvの制限値Δθlimは式(9)で示される。
【0065】
【0066】
Iq0は、現在のIqを用いても良いし、最大トルク時のq軸電流から演算しても良い。或いは、q軸電流指令値に応答を考慮したフィルタを入れたものを用いても良い。
【0067】
以上の式(8),式(9)のうち、小さい方の値をΔθlimの演算に用いるゲインとして用いれば、逆応答を想定した変化量制限値ΔId_lim及びΔIq_lim以内に抑えることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施例の交流モータ制御装置10は、電圧位相制御部13から出力された電圧位相指令に基づいて直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力をPMSM1へ出力する交流モータ制御装置であって、電圧位相制御部13は、電圧位相指令の変化量に制限を掛ける変化量制限部を備えている。
【0069】
そして、変化量制限部は、電圧位相指令の変化量が所定の範囲内に入るように制御する。
【0070】
また、変化量制限部は、PMSM1の回転速度ω1に比例して電圧位相指令の変化量の制限量を変更する。
【0071】
また、変化量制限部は、相電流検出手段3を介して検出した電流指令値または電流検出値に基づき、電圧位相指令の変化量に制限を掛けるか否かを判定して変化量の制限量を変更する。
【0072】
また、変化量制限部は、PMSM1の回転方向に基づき、電圧位相指令の変化量に制限を掛けるか否かを判定して変化量の制限量を変更する。
【0073】
なお、ゲイン52で乗算するゲインは、数式から決定するのではなく、実機試験やシミュレーションによってステップ応答を基に調整しても良い。
【0074】
また、本実施例では、d軸電流が逆応答によって正の領域に達しないことと、q軸電流が逆応答によって過電流にならないように電圧位相角の変化量Δθvの制限値Δθlimを設定したが、どちらか一方の事象を抑えるために利用することも可能である。
【0075】
また、本実施例では、トルクTとトルク指令値T*が一致するように電圧位相角θvを操作する方式の例を示したが、q軸電流とq軸電流指令値が一致するように電圧位相角θvを操作する方式や、d軸電流とd軸電流指令値が一致するように電圧位相角θvを操作する方式のように、電圧位相角θvを操作する方式であれば本発明を適用可能である。
【0076】
また、本実施例では、省パルス制御として、1パルス制御の例を示したが、3パルス制御等であっても電圧位相角θvを操作するトルク制御方式を採用していれば本発明を適用可能である。
Idsetには例えば0を設定し、Idsetより大きい時にはd軸電流Idcが正の領域に逆応答するのを抑制するように電圧位相変化量リミット+Δθlim,-Δθlimを設定する。
また、Iqsetには例えばq軸電流Iqcの最大値の90%を設定し、Iqsetよりも大きい時には逆応答して過電流に達するのを抑制するために電圧位相変化量リミット+Δθlim,-Δθlimを設定する。
これにより、逆応答が発生する状況の時にのみ電圧位相角の変化量Δθvを制限することで、逆応答を抑制しつつ、それ以外の領域では電圧位相角の変化量Δθvに制限が無くなることで応答を高速化することが可能になる。
また、本実施例では、q軸電流Iqcを判定に用いたが、q軸電流Iqcを判定に用いる代わりに、トルク指令値T*にトルク指令値の変化量ΔT*のステップ応答が入ってからt秒間というように判定しても良い。
なお、本実施例では、トルクTとトルク指令値T*が一致するように電圧位相角θvを操作する方式の例を示したが、q軸電流とq軸電流指令値が一致するように電圧位相角θvを操作する方式や、d軸電流とd軸電流指令値が一致するように電圧位相角θvを操作する方式のように、電圧位相角θvを操作する方式であれば本発明を適用可能である。
また、本実施例では、省パルス制御として、1パルス制御の例を示したが、3パルス制御等であっても電圧位相角θvを操作するトルク制御方式を採用していれば本発明を適用可能である。