(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038591
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ターボ分子ポンプ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
F04D19/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142703
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】000149170
【氏名又は名称】株式会社大阪真空機器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 薫
(72)【発明者】
【氏名】ナン ティン ティン トゥエ
(72)【発明者】
【氏名】上原 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 拓也
(72)【発明者】
【氏名】桜井 充
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA03
3H131CA03
3H131CA34
3H131CA35
(57)【要約】
【課題】高い真空排気性能を実現することができるターボ分子ポンプを提供する。
【解決手段】ターボ分子ポンプ1には、回転の軸線Axに沿って複数段のロータ翼31aを有するロータ30と、軸線Axに沿って複数段のロータ翼31aの間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼14aと、それらのロータ30、及び複数段のステータ翼14aを内部に収容するケーシング11と、が設けられる。そして、それらの複数段のロータ翼31a、複数段のステータ翼14a、及びケーシング11を含むそのケーシング11の内部の少なくとも一部は、その素材に含まれるガスを放出させるための真空ベーキング処理が施された材料によって形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプであって、
前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部は、素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理が施された材料によって形成されている、ターボ分子ポンプ。
【請求項2】
前記材料として、所定の気体との反応を通じて表面にコーティングを形成するためのコーティング処理が施されたコーティング済の材料が用いられる、請求項1に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項3】
前記素材、及び前記材料は、チタンを含んでいる、請求項1に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項4】
前記材料として、当該材料のチタンと所定の気体との反応を通じて表面にコーティングを形成するためのコーティング処理が施されたコーティング済の材料が用いられる、請求項3に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項5】
前記所定の気体として、酸素が利用され、
前記コーティング済の材料には、前記コーティングとして酸化チタンの膜が形成されている、請求項4に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項6】
前記材料を加熱する加熱手段と、前記ロータを回転させるために当該ロータと接続され、駆動手段によって前記軸線の回りに回転する回転軸と、前記ロータと前記回転軸との間に介在するように配置される断熱手段と、が設けられ、
前記材料は、非蒸発型ゲッター材で構成され、
前記加熱手段は、ゲッター効果を生じさせるように前記非蒸発型ゲッター材を加熱する、請求項1~5のいずれか一項に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項7】
前記回転軸の軸受を収容する軸受収容部と、当該軸受収容部を冷却する冷却手段と、が更に設けられている、請求項6に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項8】
前記軸受収容部への熱の伝達を低減するように前記軸受収容部の周囲に配置される熱遮断手段が更に設けられている、請求項7に記載のターボ分子ポンプ。
【請求項9】
回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプの製造方法であって、
前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を形成すべき素材、又は当該一部を形成する素材に、当該素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理を実行する熱処理工程を含んでいる、製造方法。
【請求項10】
回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプであって、
前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、前記ロータを回転させるために当該ロータと接続され、駆動手段によって前記軸線の回りに回転する回転軸と、前記ロータと前記回転軸との間に介在するように配置される断熱手段と、が設けられ、
前記一部は、非蒸発型ゲッター材で構成され、
前記加熱手段は、ゲッター効果を生じさせるように前記非蒸発型ゲッター材を加熱する、ターボ分子ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、同様の軸線に沿って複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、ロータ、及び複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプ等に関する。
【背景技術】
【0002】
回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、同様の軸線に沿って複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、ロータ、及び複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプが知られている(例えば特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2~3、及び非特許文献1~4が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-370394号公報
【特許文献2】特表平7-509036号公報
【特許文献3】特表2022-534259号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Junichiro Kamiya, Yusuke Hikichi, Michikazu Kinsho, et al.,“Titanium alloy as a potential low radioactivation vacuum material”,Jourual of Vacuum Science & Technology A,2015年 4月7日,031605,A33
【非特許文献2】N. Ogiwara, K Suganuma, Y Hikichi, J Kamiya, M Kinsho,“Reduction of hydrogen content in pure Ti”,[online],Jourual of Physics,[令和4年8月24日検索],インターネット,<URL:https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742-6596/100/9/092024/pdf>
【非特許文献3】和田直之,栗巣普揮,村中武,山本節夫,松浦満,部坂正樹,“高強度低合金チタンの昇温脱離特性”,[online],第44回真空に関する連合講演会プロシーディングス,[令和4年8月24日検索],インターネット,<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj1958/47/3/47_3_112/_pdf/-char/ja>
【非特許文献4】“最新 実用真空技術総覧”,(株)エヌ・ティー・エス,2019年2月7日,P131-136,P175ー178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日、ターボ分子ポンプは低真空から超高真空、さらには極高真空までの広い圧力範囲における排気速度の安定性、大流量ガスの排気、運転維持のしやすさといった観点から各種真空装置における主流の真空ポンプとなっている。ターボ分子ポンプは、動翼の回転数を上げるほど排気速度および圧縮比を大きくできるが、一方で回転数の増加に伴い内部応力の増加や変位の増加が発生する。そのため、一般的に動翼の回転数は内部応力もしくは変位により上限値が決められている。動翼材料の比強度、すなわち耐力(引張強度)と密度の比、が大きいほど、この上限値を大きくできる。これは窒素に対してのみならず、気体分子速度の大きな水素やヘリウムなどの軽い分子の排気においても有効である。
【0006】
ターボ分子ポンプのロータ翼(動翼)にはアルミ合金が用いられるのが一般的である。比強度が比較的大きいことに加え、加工のしやすさなどが理由である。一方で、アルミ合金製の動翼での比強度で律速される回転数では、水素やヘリウムなどの軽い分子において排気速度、圧縮比の増加が難しい傾向にある。そのため、より大きな排気速度および圧縮比を得るため一般的な方法は動翼の大型化となるが、真空装置の大型化や既存の排気ポートへの接続不可といった問題があり、持続的な性能向上ができないという課題が生じている。
【0007】
特許文献1のターボ分子ポンプでは、ロータ翼にメッキまたは酸化膜で表面処理されたチタン合金が使用されている。チタン合金はアルミ合金よりも大きな比強度を持つ。このため、アルミ合金が使用される場合に比べて、回転数の増加が期待される。また、特許文献1のターボ分子ポンプでは、ステータ翼の内部に発熱線(加熱手段)が設けられ、いわゆるゲッター効果(気体分子を吸着することで排気を行う効果)が利用される場合もある。具体的には、発熱線による加熱を通じてステータ翼を構成するチタン合金の表面を昇華し、ロータ翼等の表面に付着したその昇華したチタン分子と水素等の軽いガスとの化学反応を利用してポンプ作用を生じさせる場合がある。
【0008】
しかし、引用文献1におけるゲッターポンプはチタンサブリメーションポンプ(蒸発型ゲッターポンプ)に過ぎず、非蒸発型ゲッターポンプ(NEGポンプ)ではない。チタンサブリメーションポンプ、及びNEGポンプについては非特許文献4に開示されているが、これらは利用するゲッター表面(活性表面)の生成方法等において全く相違する。また、ステータ翼を構成するチタン合金の表面を昇華するためには超高温が必要となる可能性があり、このような高温は軸受等の他の装置等に各種の影響を与え得るが、そのような影響について何ら言及がない。もちろん、そのような熱対策に関する言及もない。そもそも表面が昇華するほどの超高温であれば、それ以前にステータ翼自体に熱変形が生じる可能性もあるが、この点にも言及がない。ステータ翼の昇華はステータ翼を削っていくに等しく、それによる影響も想定され得るが、その影響に関する言及もない。つまり、引用文献1のターボ分子ポンプは各種の課題を含んでいる。
【0009】
特許文献2、及び3には非蒸発型ゲッター材(素材の表面が昇華しないタイプのゲッター材)のゲッター効果を利用したゲッターポンプが開示されている。例えば特許文献2には非蒸発型ゲッター材としてチタン合金に関する言及がある。また、特許文献3には非蒸発型ゲッター材がロータ等の表面に適用されたターボ分子ポンプが開示されている。しかし、特許文献3は非蒸発型ゲッター材としてチタンを利用する構成ではないし、当然チタンにゲッター効果を持たせるための温度も開示していない。一方、特許文献2のゲッターポンプでは非蒸発型ゲッター材としてのチタン合金の高温域での加熱が予定されているようであるが、そのチタン合金はターボ分子ポンプのロータ等に適用される構成ではない。
【0010】
一方、非特許文献3には、チタン合金のガス放出特性に関する実験結果等が開示されている。例えば、非特許文献3の
図4には、チタン合金における表面の酸化チタンの膜と温度との関係が示されている。
図4によれば、200℃程度から表面の酸化チタンが徐々に消失し始め、400℃以上、若しくは450℃以上においてほぼ消失することが把握される。非特許文献3を考慮すれば、特許文献1のステータ翼に形成された酸化膜等を除去する(ゲッター効果を持たせる)ためには400℃以上の高温域まで加熱する必要があると考えられる。仮にこのような高温域までステータ翼が加熱されると、例えば軸受等の他の機器等に不都合が生じてしまう可能性がある。ステータ翼の表面を昇華させるためには更なる高温が必要と想定され、それによる不都合が生じる可能性は更に高い。しかし、上述のとおり特許文献1では軸受等への加熱の影響が全く考慮されていない。特許文献3のターボ分子ポンプも同様である。実際、ステータ翼等にゲッター効果を生じさせるほど加熱する加熱手段が設けられたターボ分子ポンプの実用化はされていない。チタンに限らず、非蒸発型ゲッター材であれば加熱によるゲッター効果が期待できるが、その場合もやはり軸受等への加熱の影響を抑制する必要がある。
【0011】
また、非特許文献1及び2にもチタンのガス放出特性に関する各種の実験結果が開示されている。例えば、非特許文献1の
図8には、チタン合金(Ti-6Al-4V)に含まれる水素とバキュームファイアリングの温度との関係が示されている。バキュームファイアリングは、真空材料(真空装置の真空チャンバや部品等を構成する材料)を事前に高真空もしくは超高真空下において高温(例えば700~1000℃程度)に昇温し、材料中の水素等の放出ガスを低減させる手法である。非特許文献1の
図9には、水素等の気体の種類毎に放出ガスの量についてバキュームファイアリングが施されたチタン合金とバキュームファイアリングが施されていないチタン合金との間の相違が示されている。また、例えば非特許文献2の
図4等には、純チタンに関する同様の傾向が開示されている。これらによれば、チタン合金、或いは純チタンにおいて材料の表面や内部に残留するガスの放出にバキュームファイアリング(特に700℃を超える高温域のバキュームファイアリング)が有効であると考えられる。バキュームファイアリングの有効性はチタンに限らず、アルミ合金を含む各種の他の素材においても同様であると考えられる。ただし、バキュームファイアリング後の素材は大気に暴露され、その表面に酸化膜が形成される可能性が高い(素材によっては酸化膜が生じない可能性もある)。この場合、やはりその酸化膜を除去するための加熱が必要となる。しかし、特許文献1~3のいずれにもバキュームファイアリング後の材料をターボ分子ポンプに適用する構成は開示されていない。このため、このようなバキュームファイアリング等の適用を通じてターボ分子ポンプの性能を向上させる余地がある。
【0012】
そこで、本発明は、高い真空排気性能を実現することができるターボ分子ポンプ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプは、回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプであって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部は、素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理が施された材料によって形成されている、ものである。
【0014】
一方、本発明の製造方法は、回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプの製造方法であって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を形成すべき素材、又は当該一部を形成する素材に、当該素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理を実行する熱処理工程を含んでいる。これにより、本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプを製造することができる。
【0015】
また、本発明の第2形態に係るターボ分子ポンプは、回転の軸線に沿って複数段のロータ翼を有するロータと、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシングと、が設けられるターボ分子ポンプであって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、前記ロータを回転させるために当該ロータと接続され、駆動手段によって前記軸線の回りに回転する回転軸と、前記ロータと前記回転軸との間に介在するように配置される断熱手段と、が設けられ、前記一部は、非蒸発型ゲッター材で構成され、前記加熱手段は、ゲッター効果を生じさせるように前記非蒸発型ゲッター材を加熱する、ものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】発明の一形態に係るターボ分子ポンプの概要を説明するためのブロック図。
【
図2】
図1の例におけるターボ分子ポンプの断面図。
【
図3】ケーシング等の製造方法に含まれる工程を示す図。
【
図4】第1の変形例に係るターボ分子ポンプの概要を説明するためのブロック図。
【
図5】第2の変形例に係るターボ分子ポンプの概要を説明するためのブロック図。
【
図6】第2の変形例に係るターボ分子ポンプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ターボ分子ポンプの概要)
以下、本発明の一形態に係るターボ分子ポンプの一例を説明する。まず、
図1を参照して、本発明の一形態に係るターボ分子ポンプの概要を説明する。
図1は、本発明の一形態に係るターボ分子ポンプの概要を説明するためのブロック図である。
図1に示すように、ターボ分子ポンプ1には、使用時において真空槽2、及び補助ポンプ3が接続される。真空槽2は、ターボ分子ポンプ1によって真空状態が作り出されるべき容器である。補助ポンプ3は、ターボ分子ポンプ1を補助するためのポンプである。ターボ分子ポンプ1はある程度の真空中での使用が好ましく、例えば補助ポンプ3はそのある程度の真空の形成を補助する(大気圧からターボ分子ポンプ1が作動可能な圧力まで減圧する)ように動作する。補助ポンプ3として、例えばドライポンプや油回転真空ポンプといった周知な適宜のポンプが使用されてよい。
【0018】
ターボ分子ポンプ1は、タービン型の翼を持つロータ、及びステータを利用して真空状態を形成するためのポンプである。ターボ分子ポンプ1には内部のロータ等を加熱するための加熱手段4が設けられる。加熱手段4として、回転するロータとの間の摩擦熱を利用して加熱を実現する不活性ガス(若しくはそれを供給する装置)、或いはマイクロ波(若しくはそれを発生させる発生器)といったロータ等を加熱可能な各種の手段が適宜に利用されてよいが、
図1の例ではヒータが利用されている。なお、ターボ分子ポンプ1には、その他にも例えば電源等の真空槽2の真空化に必要な適宜の周知な装置等が接続され得るが、
図1ではそれらの図示は省略されている。
【0019】
(ターボ分子ポンプの内部構造)
次に、
図2を参照して、ターボ分子ポンプ1の内部構造について説明する。
図2は、
図1の例におけるターボ分子ポンプ1の断面図である。
図2に示すように、ターボ分子ポンプ1は、ケーシング11と、本体部12とを有している。ケーシング11は、ロータ30、及びステータ14を収容する部分である。ロータ30は、本体部12の回転軸ROと接続され、軸線Axの回りに高速で回転する部分である。ケーシング11は、このようなロータ30を収容するために円筒状に形成される。ケーシング11には、吸気口11aが設けられる。吸気口11aは内部の気体を吸引するために真空槽2に接続される開口である。
【0020】
ロータ30には、主ロータ部31と、補助ロータ部32とが設けられる。主ロータ部31、及び補助ロータ部32は、いずれもロータ30の回転にともない軸線Axの回りに回転する部分であるが、主ロータ部31には軸線Axに沿って複数段のロータ翼31aが設けられる。各ロータ翼31aは、ケーシング11の内周壁面に向かって(軸線Axから見て外側に向かって)延びるように形成され、軸線Axの方向にそれぞれ層(段)を形成するように順に配置される。ロータ翼31aの段(層)の数は適宜であってよいが、
図2の例では九段のロータ翼31aが設けられている。一方、補助ロータ部32は軸線Axに沿って延びるように主ロータ部31の下側に設けられる部分である。ターボ分子ポンプ1には、気体分子の移動を促進ために補助的にねじ溝ポンプが設けられる。補助ロータ部32は、そのねじ溝ポンプにおいてロータの役割を担う。ねじ溝ポンプのステータの役割を担う部分は本体部12に設けられる。
【0021】
ステータ14はロータ30に対して固定的に配置される部分である。ステータ14には、軸線Axに沿って複数段のステータ翼14aが設けられる。各ステータ翼14aは、各ロータ翼31a間において各ロータ翼31aと並行する層をそれぞれ形成するように軸線Axの方向に順に配置される。つまり、ステータ14、及びロータ30は、各ロータ翼31aと各ステータ翼14aとが軸線Axの方向に交互に位置する(複数段のステータ翼14aの間に複数段のロータ翼31aがそれぞれ位置する)ように配置され、そのような配置状態においてケーシング11の内部に収容される。ステータ翼14aの数も適宜であってよいが、
図2の例では九段のロータ翼31aの間に位置するように八段のステータ翼14aが設けられている。なお、各ステータ翼14a間にはスペーサやシーリング、或いはその他の各種取付け用の部材等が適宜に設けられ得るが、それらの図示等は省略した。ロータ30、ケーシング11、及び後述の本体部12についても同様である。
【0022】
ロータ30(複数段のロータ翼31a等を含む)、ステータ14(複数段のステータ翼14aを含む)、及びケーシング11は、脱ガス処理が施された材料で形成される。脱ガス処理は、素材の表面や内部に残量するガス(気体分子)を予め放出させるための処理である。脱ガス処理は各種の熱処理を通じて適宜に実現され得るが、一例として真空チャンバにおいて実行される熱処理(真空ベーキング処理)を通じて実現される。つまり、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11は予め真空ベーキング処理(バキュームファイアリングの一例)が施された材料によって形成される。このような材料は、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11の適宜の一部に適用されてもよいが、一例としてそれらの全部に適用される。
【0023】
ロータ30、ステータ14、及びケーシング11は適宜の素材によって形成されてよく、例えば相互に或いは適宜の一部に異なる素材が適用されてもよいが、一例としていずれも非蒸発ゲッター(NEG)材によって形成される。また、非蒸発型ゲッター材として、例えばアルミ合金等の適宜の素材が利用されてよいが、一例としてチタンを含む素材(チタン、或いは適宜のチタン合金)が利用される。表面等に残留するガスが放出する温度域は素材に応じて相違するため、真空ベーキング処理は素材に応じた温度にて実行される。例えばチタンの場合、700度を超える高温域において十分にガスが放出される。このため、例えばロータ30、ステータ14、及びケーシング11がチタンで形成される場合、真空ベーキング処理における加熱温度は700度を超える高温域であることが好ましい。この例において真空ベーキング処理(脱ガス処理)が本発明の所定の熱処理として機能する。
【0024】
また、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11の素材には、真空ベーキング処理のみが実行されてもよいが、一例としてコーティング処理も実行される。コーティング処理は、真空ベーキング処理後(ガス放出後)の素材に気体(例えば水素等の軽い気体)が入り込むのを抑制するためのコーティング(膜)を形成するための処理である。コーティング処理は気体の侵入を防ぐことが可能なコーティングを形成できる限り適宜に実現されてよいが、一例として所定の気体と素材との反応を通じて表面にコーティングを形成する処理によって実現される。
【0025】
具体的には、コーティング処理は、真空ベーキング処理の後の真空チャンバ内に所定の気体を導入する(所定の気体に熱処理後の素材をさらす)ことにより実現される。所定の気体は素材と反応してコーティングを形成可能な適宜の気体(素材に応じた気体)であってよく、例えばチタンと反応して窒化チタンの膜を形成する窒素であってもよいが、一例として酸素が利用される。この場合、コーティング処理ではチタンとの反応を通じて酸化チタンの膜(コーティング)が材料の表面に形成される。アルミ等の他の素材の場合は、その素材と反応した酸化膜等が同様にコーティングとして形成される。そして、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11は、これらの真空ベーキング処理、及びコーティング処理の両方が施された材料(以下、処理済の材料と呼ぶ場合がある)によって形成される。この例において処理済の材料が本発明のコーティング済の材料として機能する。
【0026】
ケーシング11の外周には、加熱手段4(ヒータ)が設けられる。加熱手段4は、ケーシング11の内部の適宜の対象を加熱し得るが、一例として真空ベーキング処理、及びコーティング処理(いずれか一方のみが実行されている場合はその一方)が実行されている部分を対象に実行される。このため、加熱手段4は、例えばロータ30の全部、或いは補助ロータ部32以外(主ロータ部31のみ)等の適宜のロータ30の一部、複数段のステータ翼14aの一部等のステータ14の適宜の一部、或いは全部、又はケーシング11の全部、或いは適宜の一部といったロータ30、ステータ14、及びケーシング11の少なくとも一部を適宜に加熱してよいが、一例としてロータ30及びステータ14を収容した状態においてケーシング11の内部の全体を加熱するように配置される。
【0027】
加熱手段4は適宜の目的でケーシング11の内部を加熱してよく、例えば事前に真空チャンバにおいて真空ベーキング処理が行われていない場合には同様の熱処理を行うようにケーシング11の内部を加熱してもよいが、一例としてゲッター効果を生じさせるためにケーシング11の内部を加熱する。ロータ30、及びケーシング11はチタン合金等のチタンを含む材料(NEG材)によって形成されている。このような材料は所定の温度まで加熱されるとゲッター作用を奏し、ゲッターポンプの一種として機能し得る。ゲッター効果が生じる温度は素材の種類によって異なるが、例えば純チタンの場合、400度を超える高温域においてゲッター効果が得られる。このため、処理済の材料が純チタンである場合、加熱手段4は、このようなゲッター効果が生じるように400度を超える高温域までケーシング11の内部を加熱する。
【0028】
ケーシング11の内部にコーティング(酸化チタンの膜等)が存在すると素材が露出せず、素材のゲッター効果を期待できないが、加熱手段4による加熱に伴いコーティングも消失(酸素が母材に拡散していき、チタンに変化)する。このコーティングの消失も加熱手段4による加熱の目的の一つである。ただし、コーティングの消失は400度よりも低い温度域で生じる。つまり、ゲッター効果を得るための加熱によってコーティングは消失する。このため、コーティングを消失するために加熱する機会を別途設ける必要はない。
【0029】
本体部12は、ロータ30を回転させるための主要な機構等が設けられる部分である。本体部12にはロータ30を回転させるための各種の機構や装置等が適宜に設けられ得るが、
図2の例では回転軸RO、軸受収容部20、ステータ部21、コネクタ22、排気口23、断熱手段40、冷却手段41、及び熱遮断手段42が設けられている。回転軸ROは適宜の駆動手段(不図示)によって軸線Axの回りに回転する軸である。軸受収容部20は、回転軸ROの回転を支える軸受が収容される部分である。回転軸ROの軸受として転がり軸受、流体軸受等の各種の軸受が適宜に利用されてよく、軸受収容部20にはそれらが収容され得るが、一例として磁気軸受が利用され、軸受収容部20に収容される。磁気軸受は周知の構成であってよく、その図示は省略する。
【0030】
ステータ部21は、ねじ溝ポンプにおけるステータの役割を担う部分である。ステータ部21は、補助ロータ部32との組合せによって補助的なポンプとして機能するように補助ロータ部32と対応する位置に配置される。ステータ部21は適宜の素材によって形成されてよく、例えば補助ロータ部32と異なる素材によって形成されてもよいが、一例として同様にチタンを含む素材によって形成される。
【0031】
コネクタ22は、回転軸ROを回転駆動させる駆動手段の動力源が接続される部分である。回転軸ROを回転駆動させる駆動手段として各種の要素が適宜に利用され得るが、一例としてモータ(不図示)が利用される。また、モータは適宜に配置されるが、一例として軸受収容部20の内部に配置される。この場合、モータにはコネクタ22を介して電力源(動力源)から電力が供給される。
【0032】
排気口23は、吸気口11aから吸引した気体を外部に排出するための開口である。排気口23は適宜の対象に気体を排出してよく、例えば大気に開放するように気体を排出してもよいが、一例として補助ポンプ3に接続され、補助ポンプ3を介して気体を外部に排出する。
【0033】
断熱手段40、冷却手段41、及び熱遮断手段42は、いずれも加熱手段4による加熱が軸受収容部20(例えばモータステータ、タッチダウンベアリングといった内部の各種装置等)に与える影響を抑制するための手段である。本体部12は周知のターボ分子ポンプと同様に適宜に構成されてよいが、加熱手段4が設けられる場合、これらの少なくともいずれか一つが設けられる。ただし、ロータ30と回転軸ROとが直接的に接触する場合、加熱手段4によって生じた熱が接触による熱伝達を通じて回転軸ROを加熱し、軸受収容部20まで伝わる可能性が高いため、少なくとも断熱手段40は設けられた方がよい。
【0034】
断熱手段40は、ロータ30と回転軸ROとの間の熱伝達を抑制するための手段である。断熱手段40は、ロータ30と回転軸ROとの間の熱伝達を抑制可能な適宜の位置に配置されてよいが、
図2の例ではロータ30と回転軸ROとの間に介在するように配置される。この場合、ロータ30は、断熱手段40を介して回転軸ROに接続される。ロータ30は加熱手段4によって加熱されるため、その熱はロータ30を介して回転軸ROに伝わり、回転軸ROから更に軸受収容部20に伝達する可能性がある。断熱手段40は、ロータ30と回転軸ROとの間に介在するように配置され、このような熱伝達を抑制する。断熱手段40は熱伝達を抑制可能な適宜の素材によって構成されてよいが、加熱手段4による加熱が高温域で実行される場合、高温域において断熱可能な素材が好ましい。また、そのような素材には例えばセラミック、シリカウール、ロックウール、或いはそれらの複合素材といった素材が含まれるが、例えばマシナブルセラミック等の取付け強度を確保できる素材がより好ましい。
【0035】
冷却手段41は、軸受収容部20を冷却するための手段である。冷却手段41は軸受収容部20の全部、或いは一部を適宜に冷却するように配置されてよいが、
図2の例では上部を冷却するように軸受収容部20の周囲に配置される。また、冷却手段41は軸受収容部20を冷却するための適宜の構成を有してよいが、
図2の例では媒体流路41a、及び流路ガード部材41bを有している。流路ガード部材41bは、媒体流路41aをガード(保護)するように軸受収容部20に取り付けられる部材である。媒体流路41aは、軸受収容部20を冷却するための冷却媒体が流れる流路である。冷却媒体として各種の流体(気体を含む)が適宜に利用されてよいが、一例として水が利用される。また、媒体流路41aは適宜の形状に形成されてよく、例えば外壁が流路ガード部材41bとして機能する一つの流路として形成されてもよいが、
図2の例ではチューブ状に形成されている。同様に、媒体流路41a、及び流路ガード部材41bは適宜の素材によって形成されてよく、例えば熱伝達率の高い銅、或いは鉄といった素材によって形成されてもよいが、一例としてアルミによって形成される。
【0036】
熱遮断手段42は、軸受収容部20への熱伝達を遮断するための手段である。熱遮断手段42は軸受収容部20に伝達し得る適宜の熱を遮断するように配置されてよいが、
図2の例では補助ロータ部32の延びる範囲を包含するように冷却手段41(流路ガード部材41b)の周囲に配置されている。軸受収容部20の周囲には、例えば補助ロータ部32を介して物質移動(気体)に伴う熱伝達、或いは電磁波の放射等による放射熱による熱伝達といった熱伝達が生じ得る。熱遮断手段42は、このような熱伝達を遮断するように補助ロータ部32に対応する位置に配置される(換言すれば、冷却手段41も補助ロータ部32の延びる範囲を包含するように軸受収容部20の上部に配置される)。熱遮断手段42は放射熱等を遮断可能な適宜の素材によって形成されてよいが、例えば放射熱を反射可能なアルミ箔等を含む素材によって形成される。
【0037】
以上に説明したように、この形態によれば、ケーシング11の内部(ロータ30、及びステータ14を含む)は、真空ベーキング処理を通じて素材に含まれるガスが放出された後の材料によって形成される。事前にガスを放出させるための処理が実行された材料は、稼働時において放出ガスが低減される傾向にある。このため、そのような処理が実行されていない材料(未処理の素材)に比べて排気性能を向上させることができる。さらに、ケーシング11の内部には真空ベーキング処理に加えてコーティング処理も施される。つまり、ケーシング11の内部は真空ベーキング処理、及びコーティング処理の両方が施された材料によって形成される。この場合、コーティングを通じてガスが放出された状態(真空ベーキング処理の効果)を維持することができる。結果として、このような処理済の材料をケーシング11の内部に適用することにより、両方、或いはいずれか一方の処理が施されていない材料(素材)が適用される場合に比べて高い真空排気性能を実現することができる。
【0038】
さらに、ケーシング11には内部を加熱するための加熱手段4が配置される。このため、この加熱手段4を通じてケーシング11の内部に更にゲッター効果(ゲッターポンプの効果)を持たせることができる。一方で、本体部12には断熱手段40等の各種の熱対策用の手段が設けられる。このため、例えば断熱手段40を通じて加熱手段4による加熱がロータ30を介して軸受収容部20(例えば駆動手段、或いは回転軸ROの軸受といった熱の影響を受ける他の機器)に与える影響を抑制することができる。また、例えば処理済の材料の表面に酸化チタン膜等のコーティングが生じている場合でも、そのコーティングを加熱手段4による加熱で消失させることができる。これにより、コーティング処理が施されている材料においてもゲッター効果を生じさせることができる。
【0039】
特にチタンを含む材料の場合、ゲッター効果が得られる温度は400℃以上等の高温域が想定される。この場合、断熱手段40等の他の機器への熱伝達を抑制する手段がなければ安定的な運転に影響が生じる可能性がある。換言すれば、断熱手段40等の他の機器への熱伝達を抑制する手段を通じて、チタンを含む材料をロータ30等の素材として活用することができる。これらにより、同サイズの他のターボ分子ポンプと比べて排気性能を更に向上させることができる。このため、省電力化、及び省スペース化を実現することができる。また、チタンを含む材料が利用される場合、従来のターボ分子ポンプに比べて耐腐食性を飛躍的に向上させることができる。これにより、安全性、及び保守性の改善を図ることもできる。
【0040】
(製造方法)
次に、
図3を参照して、ターボ分子ポンプ1の製造方法の一例について説明する。
図3は、ターボ分子ポンプ1のうちロータ30、ステータ14、及びケーシング11の製造方法に含まれる工程を示す図である。ケーシング11等は上述のとおり脱ガス処理(真空ベーキング処理)及びコーティング処理が施された材料を含んでいる。ターボ分子ポンプ1の製造方法は各種の工程を適宜に含み得るが、
図3の例はそれらのうちロータ30、ステータ14、及びケーシング11の脱ガス処理及びコーティング処理に関する工程を示している。
【0041】
図3に示すように、ターボ分子ポンプ1の製造方法は、加工工程~取付け工程までの五つの工程を含んでいる。加工工程(S1)は、素材の加工を通じてロータ30、ステータ14、及びケーシング11(ロータ30等を含まない外周部分)といった各種の部品等が成型される工程である。素材の加工には、切削、加熱といった周知に技術が適宜に含まれる。
【0042】
脱ガス工程(S2)は、脱ガス処理が実行される(施される)工程である。脱ガス処理は、適宜に実行されてよく、例えば加工前の素材に実行され、処理後の素材が加工工程にて加工されてもよいし、成型後のロータ30、及びステータ14を収容した状態のケーシング11に実行されてもよいが、
図3の例では別々の部品の状態のロータ30、ステータ14、及びケーシング11に実行される。この脱ガス処理は、ロータ30、或いはステータ14といった部品毎に別々に実行されてもよいが、一例として一度に実行される。具体的には、互いに分離した状態のロータ30、ステータ14、及びケーシング11が真空チャンバに入れられ(三つを平置き可能な大きさの真空チャンバが用意されてもよいし、上下に各部品を分けて配置可能な適宜のラック等を介して収容されてもよい)、そこで所定温度(チタンの場合の700度を超える温度等、素材に応じた温度)にてベーキング(熱処理)が施される。つまり、脱ガス工程において、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11のそれぞれに真空ベーキング処理(脱ガス処理)が施される。そして、この真空ベーキング処理(バキュームファイアリング)を通じてロータ30等の素材に含まれる水素等のガスが放出される(ロータ30等の表面には酸化チタンの膜が自然に形成されている場合があるが、その場合も真空ベーキング処理によってそれは消失し、材料中の水素等のガスは放出される)。この例において脱ガス工程が本発明の熱処理工程として機能する。
【0043】
続く温度低下工程(S3)は、脱ガス工程(真空ベーキング)にて上昇した材料(ケーシング11等)の温度の低下が図られる工程である。温度低下工程は適宜に実現され得るが、一例として真空チャンバ内における待機によって実現される。つまり、温度低下工程では、ケーシング11等の温度が十分に低下するまで真空チャンバ内に放置される。待機時間(温度低下工程)は省略されてもよいが、
図3の例ではその後の工程における温度変化で生じ得る熱変形等を抑制するために設けられる。
【0044】
コーティング工程(S4)は、コーティング処理が実行される工程である。例えば所定の気体と素材との反応を通じてコーティングが形成される場合、コーティング処理では素材と反応するようにケーシング11等が所定の気体にさらされる。具体的には、所定の気体として酸素が利用される場合、その酸素と反応して酸化チタンの膜(コーティング)が形成されるように、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11(いずれも十分な温度まで低下済)が収容されている真空チャンバ内に大気(酸素)が導入される。
【0045】
続く取付け工程(S5)は、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11が本体部12に取り付けられる工程である。この取付けは適宜の周知な手順によって実現され得るが、例えば本体部12の回転軸ROとロータ30とを接続する手順が含まれる。本体部12の回転軸ROには断熱手段40が設けられる。このため、取付け工程においてロータ30は断熱手段40を介して回転軸ROに接続される。また、この取付けは、例えばそのほかにも、各ロータ翼31a間に各ステータ翼14aが位置するように順に層毎にスペーサ等を介して積み上げられてステータ14が形成され、次いでその状態のロータ30及びステータ14を周囲が覆われるようにケーシング11の内部に入れ込むといった手順も含んでいる。
【0046】
以上に説明したように、この形態の製造方法によれば、ロータ30、ステータ14、及びケーシング11には本体部12への取付け前に脱ガス処理及びコーティング処理が施される。つまり、ケーシング11等は、これらの処理が施された処理済の材料によって形成される。このため、取付け工程の後に、脱ガス処理及びコーティング処理が施されたケーシング11を含むターボ分子ポンプ1が製造される。つまり、この製造方法を通じて、上述のターボ分子ポンプ1を製造することができる。
【0047】
なお、S2~S4の工程は製造時に限定されず、例えば各種リペアやオーバーホール等の適宜のメンテナンス時や運転毎等の所定の周期にて実行されてもよい。この場合、このようなメンテナンス等の後にターボ分子ポンプ1が製造される。また、
図3の例の手順は一例に過ぎず、適宜に変更されてよく、例えばコーティング工程は温度低下工程の前に実行されてもよい。つまり、真空ベーキング処理(脱ガス工程)の後に高温(若しくは数百℃程度)の状態のロータ30等がガスにさらされ(真空チャンバ内にガスが導入されて)コーティングが形成されてもよい。この場合、温度低下工程は省略されてもよい。
【0048】
本発明は上述した形態に限定されず、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。また、本発明は、上述の形態、及び以下の変形等が施された形態に含まれる各種の技術的手段が適宜に組み合わされて得られる形態にて実施されてもよい。例えば、上述の形態では、加熱手段4としてヒータが利用されている。しかし、本発明は、このような形態に限定されない。加熱手段4として上述のとおり各種の手段が利用されてよい。
【0049】
(加熱手段の変形例)
図4は、第1の変形例に係るターボ分子ポンプ1の概要を説明するためのブロック図である。
図4に示すように、第1の変形例ではターボ分子ポンプ1に加熱手段4としてヒータの代わりに不活性ガス供給装置が設けられる。不活性ガス供給装置は不活性ガスを供給するための装置である。不活性ガス供給装置はケーシング11の内部に不活性ガスを供給するようにターボ分子ポンプ1に接続される。不活性ガスには各種のガスが含まれ、それらが適宜に使用されてよいが、熱伝導率が低く、摩擦熱を生じさせる程度に重い気体(圧力差の関係から圧力の低いロータ30の付近に導かれる)が好ましく、その一例としてアルゴンが使用される。不活性ガスは加熱対象に応じてケーシング11の適宜の内部に供給されてよいが、一例としてロータ30、及びステータ14が加熱されるようにそれらの周辺に供給される。また、不活性ガス供給装置とターボ分子ポンプ1との間には第1可変流量弁50が設けられる。第1可変流量弁50は流量を調整可能な弁である。不活性ガスの供給量は目標の温度帯や加熱状況等に応じて第1可変流量弁50によって適宜に調整される。
【0050】
また、第1の変形例では、
図1の例と比べてターボ分子ポンプ1と他の装置との間に弁が設けられる。具体的には、真空槽2とターボ分子ポンプ1との間には、バルブ51が設けられる。同様に、ターボ分子ポンプ1と補助ポンプ3との間には、第2可変流量弁52が設けられる。これらの弁は適宜に使用され得るが、一例としてケーシング11の内部の加熱時において次の手順で使用される。
【0051】
すなわち、まずバルブ51が、不活性ガスの供給時に真空槽2への流入を避けるために閉じられる。続いて第2可変流量弁52が流量ゼロとするように完全に閉じられる。次に第1可変流量弁50が開けられ、ケーシング11の内部に不活性ガスが導入される。一方で、バルブ51及び第2可変流量弁52はいずれも完全に閉じられている。このため、不活性ガスはケーシング11の内部に滞留する。この状況でロータ30が回転すると不活性ガスとの間に摩擦熱が生じる。つまり、不活性ガスとロータ30等との間の摩擦熱を通じて加熱が実現される。一方、不活性ガスの供給に伴いケーシング11の内部の圧力は上昇する。このため、圧力状況に応じて不活性ガスの供給量が減るように第1可変流量弁50が適宜の量だけ絞られたり、第2可変流量弁52が適宜の量だけ開けられたりする。つまり、第1可変流量弁50、及び第2可変流量弁52の流量を通じてケーシング11内の圧力及び加熱状況が調整される。第1の変形例では、このような流れで加熱が実現される。
【0052】
なお、
図4では図示が省略されているが、圧力計や温度計等がターボ分子ポンプ1には必要に応じて適宜に設置される。また、バルブ51等の開閉等は圧流計等の計測結果に応じてコンピュータ等を通じて適宜に制御されてよい。さらに、加熱手段4は複数の手段を含んでいてよく、例えば第1の変形例において加熱手段4はヒータを含んでいてもよい。つまり、不活性ガス供給装置はヒータの代わりではなく、
図1の例に追加されるように設けられてもよい。これにより、ケーシング11の内部をより効果的に加熱することができる。
【0053】
図5は、第2の変形例に係るターボ分子ポンプ1の概要を説明するためのブロック図である。
図5に示すように、第2の変形例ではターボ分子ポンプ1に加熱手段4としてヒータの代わりにマイクロ波発生器が設けられる。マイクロ波発生器はマイクロ波を発生させる装置である。マイクロ波発生器はマイクロ波にてケーシング11の内部を加熱するように導波管61を介してターボ分子ポンプ1に接続される。
【0054】
図6は、第2の変形例に係るターボ分子ポンプ1の断面図である。
図6の例は、軸線Axの回りに
図2の例と異なる中心角(位相)に対応する位置(コネクタ22とは別の導波管61が接続される位置)における断面を示している。また、
図6の例において
図2と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、第2の変形例に係るターボ分子ポンプ1では、
図2の例と比べて導波管接続口62、導波管導入路63、マイクロ波吸収体64、及びマイクロ波シールド材65が設けられる。
【0055】
導波管接続口62は、導波管61が接続される開口である。導波管導入路63は、マイクロ波を加熱対象の部分に導くための経路である。加熱対象は適宜に設定されてよく、その対象に応じた導波管導入路63が設けられてよいが、
図6の例ではロータ30の各ロータ翼31a、及び各ステータ翼14aが加熱対象に設定され、そこにマイクロ波を導くように導波管導入路63が形成されている。具体的には、導波管導入路63は下方から上方に向かって回転軸ROに沿って延びるように軸受収容部20の周囲に配置される。そして、導波管接続口62、及びケーシング11の内部において開口し、それら接続する。
【0056】
マイクロ波吸収体64は、積極的にマイクロ波を吸収する部材である。マイクロ波吸収体64は、各ロータ翼31a等の加熱を促進するために使用される。マイクロ波吸収体64は加熱対象に応じて適宜の位置に配置にされてよいが、
図6の例では本体部12の補助ロータ部32に対応する位置に補助ロータ部32と同様に軸線Axに沿って延びるように設けられている。さらに、マイクロ波吸収体64は上部において軸線Axに近づくように湾曲し、主ロータ部31の底面部分と接触するように横方向に延びる部分を有している。この場合、マイクロ波吸収体64は、マイクロ波を積極的に吸収して発熱し、ヒータと同様の役割を担い、主ロータ部31、及び補助ロータ部32を加熱する。マイクロ波吸収体64は、マイクロ波を吸収して自己発熱する性質を有する適宜の物質であってよいが、例えば金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、クロミア、ジルコン等)の粉末(例えば直径10-45μm程度の球状粉末等)を溶射する等により、マイクロ波を吸収して自己発熱する被膜として構成される。
【0057】
マイクロ波シールド材65は、マイクロ波を遮断する(あるいは反射する)素材である。マイクロ波シールド材65は適宜に使用されてよく、用途に応じた位置に配置されてよいが、
図6の例では軸受収容部20の周囲、及び吸気口11aに配置されている。具体的には、吸気口11aのマイクロ波シールド材65は真空槽2へのマイクロ波の侵入を抑制するために吸気口11aを覆うように配置される。マイクロ波シールド材65として適宜の材料が使用され得るが、この場合、保護金網を兼務するように金属メッシュ(吸気は可能であるが、マイクロ波は阻むタイプの物)が使用される。
【0058】
一方、軸受収容部20の周囲のマイクロ波シールド材65は、軸受収容部20へのマイクロ波の影響を抑制するために配置される。具体的には、マイクロ波シールド材65は、軸受収容部20を保護するように導波管導入路63に沿って軸受収容部20の周囲に配置される。また、マイクロ波シールド材65は、排気口23へのマイクロ波の侵入を抑制するために一部において湾曲し、軸線Axから離れるように水平方向に延びる部分(例えば
図6の例の右側部分を参照)を有している。マイクロ波シールド材65としてマイクロ波を反射等する各種の材料が適宜に利用されてよいが、一例としてこの場合も金属メッシュが利用される。なお、マイクロ波吸収体64、及びマイクロ波シールド材65は適宜に省略されてもよい。例えば、軸受収容部20が金属で形成され、光沢が生じる程度にその周囲が仕上げられている場合、軸受収容部20自体がマイクロ波を反射する材料として機能する。この場合、マイクロ波シールド材65は省略されてもよい。
【0059】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する部材を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0060】
本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプは、回転の軸線(Ax)に沿って複数段のロータ翼(31a)を有するロータ(30)と、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼(14a)と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシング(11)と、が設けられるターボ分子ポンプ(1)であって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部は、素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理が施された材料によって形成されている、ものである。
【0061】
本発明の第1形態によれば、ケーシングの内部の少なくとも一部は、所定の熱処理を通じて素材に含まれるガスが放出された後の材料によって形成される。事前にガスを放出させるための処理が実行された材料は、ターボ分子ポンプの稼働時において放出ガスが低減される傾向にある。このため、そのような処理が実行されていない材料(未処理の素材)に比べて排気性能を向上させることができる。結果として、このような材料をケーシングの内部に適用することにより、未処理の素材が適用される場合に比べて高い真空排気性能を実現することができる。なお、熱処理によって耐久性等に影響が生じる素材の場合、ロータへの適用は好ましくない可能性があるが、そのような素材でもステータ翼、或いはケーシングであれば適用できる可能性がある。
【0062】
所定の熱処理が施された材料はそのままロータ等の材料として使用されてもよいし、メッキ等を含む適宜にコーティングがそこに更に施されてもよい。また、ケーシングの内部の少なくとも一部を形成する材料の素材として、アルミ合金等を含む各種の素材が適宜に利用されてよい。例えば、このような素材として酸素(大気)を含む所定の気体と反応するタイプの素材が使用されてもよいし、反応しないタイプの素材が使用されてもよい。所定の気体と反応するタイプの場合、その反応を通じて表面にコーティングが形成されてもよい。具体的には、例えば、本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプの一態様において、前記材料として、所定の気体との反応を通じて表面にコーティングを形成するためのコーティング処理が施されたコーティング済の材料が用いられてもよい。この場合、コーティングを通じてガスが放出された状態を維持することができる。なお、所定の気体として素材の種類に応じてその素材と反応可能な適宜の気体(例えば酸素、或いは窒素等)が利用されてよい。
【0063】
上述のとおりケーシングの内部の少なくとも一部を形成する材料の素材は適宜の素材であってよい。例えば、このような素材は、純チタン、或いは適宜の他の金属を含むチタン合金といったチタンを含む各種の素材であってもよい。例えば、本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプの一態様において、前記素材、及び前記材料は、チタンを含んでいてよい。また、この態様において、前記材料として、当該材料のチタンと所定の気体との反応を通じて表面にコーティングを形成するためのコーティング処理が施されたコーティング済の材料が用いられてもよい。さらに、この態様において、前記所定の気体として、酸素が利用され、前記コーティング済の材料には、前記コーティングとして酸化チタンの膜が形成されていてもよい。
【0064】
また、本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプの一態様として、前記材料を加熱する加熱手段(4)と、前記ロータを回転させるために当該ロータと接続され、駆動手段によって前記軸線の回りに回転する回転軸(RO)と、前記ロータと前記回転軸との間に介在するように配置される断熱手段(40)と、が設けられ、前記材料は、非蒸発型ゲッター材で構成され、前記加熱手段は、ゲッター効果を生じさせるように前記非蒸発型ゲッター材を加熱する態様が採用されてもよい。この場合、加熱手段を通じてケーシングの内部の少なくとも一部に更にゲッター効果(ゲッターポンプの効果)を持たせることができる。一方で、断熱手段を通じて加熱手段による加熱がロータを介して駆動手段、或いは回転軸の軸受といった他の機器(特に熱の影響を受ける機器)に与える影響を抑制することができる。これにより、ターボ分子ポンプの排気性能を更に向上させることができる。また、例えば材料の表面に酸化膜等のコーティングが生じている場合でも、そのコーティングを加熱手段による加熱で消失させることができる。これにより、コーティング処理が施されている材料においてもゲッター効果を生じさせることができる。
【0065】
加熱手段による加熱の他の機器への影響は適宜に抑制されてよい。例えば、断熱手段のみによって抑制されてもよいし、その他の各種の手段が設けられていてもよい。例えば、加熱手段が設けられる場合において、ターボ分子ポンプには他の機器を冷却するための手段が設けられていてもよい。あるいは、他の機器への熱伝達を遮断(或いは反射)するための手段が設けられてもよい。当然、これらの全てが設けられていても、一部が適宜に組み合わされて設けられていてもよい。具体的には、例えば、加熱手段が設けられる第1形態の態様において、前記回転軸の軸受を収容する軸受収容部(20)と、当該軸受収容部を冷却する冷却手段(41)と、が更に設けられていてもよい。また、この態様において、前記軸受収容部への熱の伝達を低減するように前記軸受収容部の周囲に配置される熱遮断手段(42)が更に設けられていてもよい。これらの場合、加熱手段の加熱による他の機器への影響を更に抑制することができる。特にチタンを含む材料の場合、ゲッター効果が得られる温度は400℃以上等の高温域が想定される。この場合、断熱手段等の他の機器への熱伝達を抑制する手段がなければ安定的な運転に影響が生じる可能性がある。換言すれば、断熱手段等の他の機器への熱伝達を抑制する手段を通じて、チタンを含む材料をロータ等の素材として活用することができる。
【0066】
一方、本発明の製造方法は、回転の軸線(Ax)に沿って複数段のロータ翼(31a)を有するロータ(30)と、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼(14a)と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシング(11)と、が設けられるターボ分子ポンプ(1)の製造方法であって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を形成すべき素材、又は当該一部を形成する素材に、当該素材に含まれるガスを放出させるための所定の熱処理を実行する熱処理工程を含んでいる。これにより、本発明の第1形態に係るターボ分子ポンプを製造することができる。
【0067】
また、本発明の第2形態に係るターボ分子ポンプは、回転の軸線(Ax)に沿って複数段のロータ翼(31a)を有するロータ(30)と、前記軸線に沿って前記複数段のロータ翼の間にそれぞれ配置される複数段のステータ翼(14a)と、前記ロータ、及び前記複数段のステータ翼を内部に収容するケーシング(11)と、が設けられるターボ分子ポンプ(1)であって、前記複数段のロータ翼、前記複数段のステータ翼、及び前記ケーシングを含む当該ケーシングの内部の少なくとも一部を加熱する加熱手段(4)と、前記ロータを回転させるために当該ロータと接続され、駆動手段によって前記軸線の回りに回転する回転軸(RO)と、前記ロータと前記回転軸との間に介在するように配置される断熱手段(40)と、が設けられ、前記一部は、非蒸発型ゲッター材で構成され、前記加熱手段は、ゲッター効果を生じさせるように前記非蒸発型ゲッター材を加熱する、ものである。
【0068】
本発明の第2形態によれば、加熱手段を通じてケーシングの内部の少なくとも一部にゲッター効果(ゲッターポンプの効果)を持たせることができる。一方で、断熱手段を通じて加熱手段による加熱がロータを介して駆動手段、或いは回転軸の軸受といった他の機器(特に熱の影響を受ける機器)に与える影響を抑制することができる。これにより、これらが設けられていない場合に比べて、高い真空排気性能を実現することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ターボ分子ポンプ
4 加熱手段
11 ケーシング
14 ステータ
20 軸受収容部
30 ロータ
40 断熱手段
41 冷却手段
42 熱遮断手段
14a ステータ翼
30a ロータ翼
Ax 軸線
RO 回転軸