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特開2024-38593重量物の位置調整システムおよび位置調整方法
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  • 特開-重量物の位置調整システムおよび位置調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038593
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】重量物の位置調整システムおよび位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/24 20060101AFI20240313BHJP
   E01D 21/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B66F3/24 C
E01D21/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142705
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 隆勝
(72)【発明者】
【氏名】枝元 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 盛
(72)【発明者】
【氏名】桐山 忍
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸二
(72)【発明者】
【氏名】星野 京延
(72)【発明者】
【氏名】相馬 健一
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA35
2D059CC12
2D059CC15
2D059DD07
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】狭隘箇所で使用でき、可搬性に優れ、遠隔操作可能な長尺重量物の位置調整技術を提供する。
【解決手段】長尺重量物の支持点に複数配置され、3次元位置調整可能な位置調整装置と、同期制御するための集中制御機器と、それらを連結する通信手段と、を備え、位置調整装置は、平面視矩形状で、設置面に二段重ねで載置され、上面板が水平面内の異なる方向に並進可能な二基の載置台と、載置台上に据え付けられ、重量物を扛上・下降する油圧式の鉛直ジャッキと、センサ群と、を有し、載置台は、水平基台と、その上に並進可能に配列された複数の円柱状転動子と、前記水平基台および上面板のいずれか一方に組付けられ、他方を水平方向に往復加力可能な水平ジャッキと、並進と直交する方向への運動を規制され、転動子上に載置された上面板と、を、持ち、集中制御機器は、通信手段を介してセンサ群から得られた情報に基づいて、通信手段を介して位置調整装置を同期制御するように構成されている、システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺重量物の支持点に複数配置され、前記長尺重量物を扛上・下降させ、3次元位置調整可能な位置調整装置と、
前記位置調整装置を同期制御するための集中制御機器と、
前記位置制御装置および前記集中制御機器を連結する通信手段と、を備え、
前記位置調整装置は、平面視矩形状を呈し、設置面である水平面に二段重ねで載置され、それぞれの持つ上面板が水平面内の異なる方向に並進可能に構成された二基の載置台と、載置台上に据え付けられ、重量物を扛上・下降する油圧式の鉛直ジャッキと、位置および荷重を含む情報を検出するセンサ群と、を有し、
前記載置台は、水平基台と、水平基台上に並進可能に配列された複数の円柱状転動子と、前記水平基台および上面板のいずれか一方に組付けられ、他方を水平方向に往復加力可能な水平ジャッキと、前記並進と直交する方向への運動を規制され、前記転動子上に載置された上面板と、を、持ち、
前記集中制御機器は、前記通信手段を介して前記センサ群から得られた情報に基づいて、前記通信手段を介して前記位置調整装置を同期制御するように構成されている、
重量物の位置調整システム。
【請求項2】
前記載置台の被転動面および転動子の表面は焼き入れ硬化処理されている、
請求項1に記載の重量物の位置調整システム。
【請求項3】
前記位置調整装置の一部が、
(1)前記載置台の一方または両方に替えて、水平方向に並進移動可能な従走架台を備えること、
(2)前記載置台の一方の下に、または、前記載置台と鉛直ジャッキとの間に、球面座を備えること、
(3)前記載置台の一方または両方に替えて、球面座を備えること、
から選ばれる1以上の構成を備える、
請求項1に記載の重量物の位置調整システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の重量物の位置調整システムを用い、
前記鉛直ジャッキにより重量物を扛上し、複数の位置調整装置で重量物支持する第一の工程と、
前記集中制御機器が、与えられた指令に基づき、位置情報および荷重情報を含む前記センサ群が収集した情報を考慮しながら、前記重量物を所定の位置に移動させる第二の工程と、
所定の位置に移動した重量物を下降し、前記位置調整装置による支持を解放する第三の工程と、を含む、
重量物の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺重量物、たとえば、橋梁の橋桁などの位置合わせに用いられる重量物の位置調整システムおよび位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の橋桁は、架設時に高い精度で計画地点に位置合わせする必要がある。あるいは、隣接橋桁の架設時に一時的に退避することもある。図5に一例を示す。移動する橋桁Sは、重量が数百t、長さが数百mの長尺重量物となる場合もあり、多数の支持点で支えて移動させる場合には、図5(a)に示すように、局所的な加力Tによって、不等に変位させて座屈等の損傷CRを生じたり、ひび割れしたりする不具合を防止するために、図5(b)に示すように、初期位置SOから目標位置SAへの移動中は常に有害な局所変形を避けて長尺物全体の3次元形状を保持する必要がある。さらに、橋桁を支える支持点は、図6に示すように、橋脚Pや橋台上に突設された支承SPに支えられた頭上の橋桁Sと橋脚Pまたは橋台とに挟まれた狭隘な場所であるため、位置調整装置100は約50cm角、高さが40cm程度の小型のものを使用する必要がある。
【0003】
長尺重量物の位置調整装置として、特許文献1に記載の装置が開示されている。その装置は長尺重量物の下方に配設され、鉛直方向に伸縮して、長尺重量物を持ち上げるアクチュエータ本体と、持ち上げられている長尺重量物を水平方向に移動可能にするための、アクチュエータ本体の下面に設けられた球体接触ベアリングとを備えた構成をもつ。
【0004】
また、特許文献2には、橋桁等の重量物の位置調整装置及び位置調整方法が開示されている。その装置は載置台の上方に滑動可能に配置される鉛直ジャッキと載置台の外部から水平方向の押圧力を加える水平ジャッキとからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-261739号公報
【特許文献2】特開2021-134538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、高精度の移動を可能とするものの、複数の架台を自在に配設できる場所を前提としており、狭隘箇所では使用できない問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の装置は、水平移動が滑り材を用いた滑動であり、重量に比例して摩擦力が大きくなり、水平ジャッキが大型化することや滑り材の摩耗寿命の問題があった。静止摩擦が大きい場合には、円滑な摺動とならず脈動してしまい、停止位置精度が低下して安定制御ができない問題があった。さらに、水平移動が一方向の押動に限定されるため、逆方向あるいは別方向に移動するためには、水平ジャッキとジャッキブラケットを取外し、向きを変えて取付ける組替え工程が必要であり、かつ3次元同時の位置調整は不可能であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、小型で狭隘箇所に設置可能、かつ、組替える必要なく重量物を方向自在に移動できる位置調整装置を用い、広範囲に配設した複数の位置調整装置を遠隔で同期操作して、長尺重量物全体の3次元形状を保持しつつ、位置と姿勢を精度よく調整できる重量物の位置調整システムおよび位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる重量物の位置調整システムは、長尺重量物の支持点に複数配置され、前記長尺重量物を扛上・下降させ、3次元位置調整可能な位置調整装置と、前記位置調整装置を同期制御するための集中制御機器と、前記位置制御装置および前記集中制御機器を連結する通信手段と、を備え、前記位置調整装置は、平面視矩形状を呈し、設置面である水平面に二段重ねで載置され、それぞれの持つ上面板が水平面内の異なる方向に並進可能に構成された二基の載置台と、載置台上に据え付けられ、重量物を扛上・下降する油圧式の鉛直ジャッキと、位置および荷重を含む情報を検出するセンサ群と、を有し、前記載置台は、水平基台と、水平基台上に並進可能に配列された複数の円柱状転動子と、前記水平基台および上面板のいずれか一方に組付けられ、他方を水平方向に往復加力可能な水平ジャッキと、前記並進と直交する方向への運動を規制され、前記転動子上に載置された前記上面板と、を、持ち、前記集中制御機器は、前記通信手段を介して前記センサ群から得られた情報に基づいて、前記通信手段を介して前記位置調整装置を同期制御するように構成されていることを特徴としている。
【0010】
なお、本発明の重量物の位置調整システムは、
(a)前記載置台の被転動面および転動子の表面は焼き入れ硬化処理されていること、
(b)前記位置調整装置の一部が、(1)前記載置台の一方または両方に替えて、水平方向に並進移動可能な従走架台を備えること、(2)前記載置台の一方の下に、または、前記載置台と鉛直ジャッキとの間に、球面座を備えること、
(3)前記載置台の一方または両方に替えて、球面座を備えること、から選ばれる1以上の構成を備える、こと、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0011】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる重量物の位置調整方法は、上記いずれかにかかる重量物の位置調整システムを用い、前記鉛直ジャッキにより重量物を扛上し、複数の位置調整装置で重量物を支持する第一の工程と、前記集中制御機器が、与えられた指令に基づき、位置情報および荷重情報を含む前記センサ群が収集した情報を考慮しながら、前記重量物を所定の位置に移動させる第二の工程と、所定の位置に移動した重量物を下降し、前記位置調整装置による支持を解放する第三の工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる重量物の位置調整システムおよび位置調整方法は、水平方向の並進のために転動子を用いたので、動作に必要な加力をより小さくでき、水平ジャッキを小型化でき、摺動抵抗の変化が小さいため、精度よく位置調整できる。また、転動子を複数として小径とすることで装置の高さを抑制することができる。もって、小型の軽量な装置となって可搬性が増し、狭隘な設置空間で使用することが可能となる。載置台を2段重ねとし、上面板を異なる方向に並進するように構成したので、鉛直ジャッキの上下動と合わせて、重量物の3次元位置を調整できる。そのため、長尺重量物の変形を避けて動作ができる。センサ群による位置情報や荷重情報を位置調整装置の制御に用いることで安全に精度よくかつ同期して位置調整し、長尺重量物を変形やひび割れすることなく、所定の位置に移動できる。
【0013】
さらに、転動面と転動子との表面を焼き入れ硬化処理すれば、大重量に耐えられるほか、飛来砂が侵入しても摺砕することができ、操作に支障をきたさないので屋外工事に好ましい。水平ジャッキは、水平基台と上面板の一方に組付けられ、他方に加力するようにすれば、装置をより小型化できるので好ましい。
【0014】
必要に応じて、位置調整装置に従走架台や球面座を用いたり、載置台の一部などを置換したりすれば、さらに装置を小型化できるうえ、水平ジャッキ等の動力源を削減出来て好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本発明の一実施形態にかかる重量物の位置調整システムに用いる位置調整装置の構成を示す縦断面図であり、(b)は、(a)のA-A視断面図であり、(c)は、(b)のB-B視断面図である。
図2】上記実施形態にかかる位置調整装置の部品構成を示す分解断面図である。
図3】本発明にかかる重量物の位置調整システムの一例を示す模式図であって、(a)は、ある区間の橋桁の全長架設後の位置調整の例を示す概念図であり、(b)は同じく隣接橋桁の架設時に一時移動する様子を示す概念図である。
図4】本発明にかかる重量物の位置調整方法を示すフローの概念図であって、(a)は重量物の下に位置調整装置を配置した状態を示し、(b)は鉛直ジャッキで重量物を扛上している状態を示し、(c)は水平ジャッキで重量物を水平移動している状態を示す。
図5】(a)は、長尺構造物の一部を加力して損傷が生じる一例を示す模式図であって、(b)は、長尺構造物の初期形状を保持して位置調整を行う例を示す概念図である。
図6】橋梁の橋桁の支持点に位置調整装置を設置した一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は本発明の一実施形態にかかる重量物の位置調整システムに用いる位置調整装置の構成を示す縦断面図である。図2は上記実施形態にかかる位置調整装置の部品構成を示す分解断面図である。図3は、本発明にかかる重量物の位置調整システムの一例を示す模式図であって、(a)は、ある区間の橋桁の全長架設後の位置調整の例を示す概念図であり、(b)は同じく隣接橋桁の架設時に一時移動する様子を示す概念図である。
【0018】
図1の例では、位置調整装置100は水平面である設置面BLに載置され、たとえば橋桁のような重量物Sの下方に設置される。位置調整装置100は、図1の例では、平面視矩形状を呈し、設置面BLに載置された二段重ねの載置台1,2と、上段載置台1上に据え付けられ、重量物Sを下方から扛上・下降する油圧式の鉛直ジャッキ3とを備える。
【0019】
図1の例では、上段載置台1と下段載置台2とは、それぞれの上面板12、22が異なる方向、つまり、直交する方向に並進するように重ねて載置されている。それぞれの載置台1、2は同一の構成部品を有する。上段載置台1は、水平基台11と、水平基台11上に並進可能に配列された複数の円柱状転動子4と、水平方向に往復加力可能な水平ジャッキ5と、転動子4の並進方向と直交する方向への運動を規制され、転動子4上に載置された上面板12と、を有する。水平基台11の転動子4が配列された転動面と、転動子4との表面は焼き入れ硬化処理されている。水平ジャッキ5は水平基台11または上面板12のいずれかに組付けられており、他方に水平加力を加えるように構成されている。図1の例では、水平基台11の溝状凹部11aに水平ジャッキ5のロッド51に備えた突条51aが嵌合している。一方、上面板12の溝状凹部12aに水平ジャッキ5のシリンダ52に備えた突条52aが嵌合している。同様に、下部載置台2では、水平基台21の溝状凹部21aに水平ジャッキ5のロッド51に備えた突条51aが嵌合している。一方、上面板22の溝状凹部22aに水平ジャッキ5のシリンダ52に備えた突条52aが嵌合している。
【0020】
載置台1、2の上面板12、22の上面は、水平基台11、21の上端より上にある。図1の例では、下段載置台の水平基台21が設置面BLに載置され、上段載置台1は下段載置台2の上面板22とともに水平移動する。鉛直ジャッキ3は据え付けられた上段載置台1の上面板12とともに水平移動する。
【0021】
本実施形態の鉛直ジャッキ3は、1台あたり最大100tにもなる重量物Sを扛上し、下降することから、油圧式とする。油圧式の鉛直ジャッキ3は、鉛直ジャッキシリンダ31と、鉛直ジャッキピストン32と、鉛直ジャッキ油室33とで構成される。
【0022】
本実施形態の水平ジャッキ5は、油圧式や電動式が用いられる。水平移動には転動子を用いていることから、少ない加力で重量物を水平並進させることができる。図1の例では、電動アクチュエータを用いている。
【0023】
本実施形態の位置調整装置100は、鉛直ジャッキや水平ジャッキの移動量から位置座標を捕捉する変位計、電流計、荷重センサなどを含むセンサ群を有している。
【0024】
本実施形態にかかる重量物の位置調整システムは、図3に示すように、たとえば、橋桁などの重量物Sの複数の支持点にそれぞれ上記の位置調整装置100を配置する。そして、重量物Sを扛上・下降できるようにする。それらの位置調整装置100は、集中制御機器6と無線や有線などの通信手段61で連結されている。
【0025】
集中制御機器6は位置調整装置100や別途重量物Sに設置したセンサ群から情報を収集する。集中制御機器6は与えられた指令と、センサ群から得られた情報とに基づき、位置調整装置100を同期制御して、重量物Sの位置や向きを調整する。
【0026】
集中制御機器6は、制御部、記憶部、操作部、表示部、通信部等を備えていてもよく、各部をバスによって接続していてもよい。
【0027】
制御部は中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるコンピュータである。制御部のCPUは、操作部の操作に応じて、記憶部、たとえば、記憶部内のプログラムを記憶する記憶領域に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読みだしてRAMの作業領域に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する各種処理を実行し、集中制御機器6の各機能を実現する。また、CPUは、バスを介して他の構成部から信号やデータを受け取ったり、制御信号や命令を送ったりするほか、通信部を介して外部のセンサ群から情報を受け取ったり、位置調整装置6に制御信号を送受信したりする。通信部は、他の機器や装置と有線または無線で通信するように構成される。
【0028】
記憶部は、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性の半導体メモリやハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)等により構成される。記憶部は着脱可能なフラッシュメモリ等を含んでいてもよい。記憶部は、制御部において各種処理を実行するためのプログラムをはじめとする各種プログラムや、プログラムによる処理の実行に必要なパラメータ、または、処理結果等のデータを記憶する。記憶部に記憶されている各種プログラムはコンピュータにより読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部は当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0029】
通信部は、LAN(Local Area Network)アダプターやモデム、無線通信装置などを備え、通信手段61により接続された各位置調整装置100との間の送受信を制御する。通信部は、たとえば、ネットワークカード等の通信用のインターフェースを備えるものであってもよい。通信部は、外部装置との間で各種データを送受信できるようになっており、たとえば、センサ群が検出した情報は、この通信部を介して集中制御機器6に入力される。操作部は、カーソルキー、数字入力キーおよび各種機能キーを備えたキーボードやマウス、タッチパネルなどのポインティングデバイスやスティックコントローラを備え、キー操作やマウス操作などにより入力された指令信号を制御部に出力する。
【0030】
表示部は、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)やCRT、有機発光ダイオード(LED)などのモニターが例示される。各センサ群が検出した情報や位置調整装置100の動作状況、重量物の位置座標などを表示し、同期制御の状態を監視することができる。
【0031】
図3は、本実施形態にかかる重量物の位置調整システムの使用例である。図3(a)は、ある区間の橋桁の全長架設後の位置調整の例を示す概念図である。往復矢印で示した橋脚位置を支持点として、本実施形態にかかる位置調整装置100を複数配置した。この形態では、各位置調整装置100に位置センサを搭載し、位置調整装置100による重量物の移動量を計測した。計測した移動量は通信手段61によって集中制御機器6に伝送し、橋軸方向LT(実線矢印)および橋軸直角方向WT(点線矢印)それぞれ同期させながら橋桁の全長が所定の位置に収まるように制御した。
【0032】
図3(b)は、隣接橋桁の架設時に架設済みの橋桁を一時移動する様子を示す概念図である。たとえば、交差点直上の橋桁部分の重量物Sを吊り上げるなどして上昇し(UW)移動して(FW)所定の位置・姿勢に揃えたうえで、下降して(DW)橋脚上に架設する。その際、前後に既設の橋桁に本実施形態の位置調整装置100を配置し、一次後退(BW)させ、その後前進(FW)させる。
【0033】
位置調整装置100の載置台1、2の一方または両方を従走架台に替えることもできる。従走架台は、たとえば、載置台1から水平ジャッキを取り外すことで構成することができる。より装置を軽く、小型に構成でき、可搬性に優れる。
【0034】
位置調整装置100の載置台1、2の一方または両方に替えて、または、水平面BLと載置台2の間、載置台1、2の間、載置台1と鉛直ジャッキ3との間に球面座を設置することもできる。より装置を軽く、小型に構成でき、可搬性に優れる。たとえば、支持点が回転中心に位置する場合に好ましい。
【0035】
本実施形態にかかる重量物の位置調整システムを用いた重量物の位置調整方法の一例を、図4をもとに説明する。図4(a)に示すように、設置面BL、たとえば橋脚の上面に仮受台8を介して重量物Sである橋桁を載置する。重量物Sの下方の設置面BL上に位置調整装置100を載置する。
【0036】
図4(b)に示すように、位置調整装置100の鉛直ジャッキ油室33に、油圧回路7の油圧ポンプユニット71により作動油タンク72から作動油が供給される。作動油によって、鉛直ジャッキ油室33に作動油が充満し、油圧ジャッキピストン32を押し上げる。油圧ジャッキピストン32の上昇に伴い、重量物Sが初期位置Oから扛上される(UW)。油圧回路7の油圧ポンプユニット72の起動・停止や電磁弁73の動作は集中制御機器6から通信手段61を介して送られる制御信号で制御される。
【0037】
図4(c)に示すように、位置調整装置100の水平ジャッキ5としての電動アクチュエータがロッド52を引っ張ることにより上段載置台1の上面板12の並進FWを実施する。上面板12に載置された鉛直ジャッキ3および重量物Sも同方向に並進する。集中制御機器6は、通信手段61を介してセンサ群からの位置情報等を参照しながら、水平ジャッキ5用の電気回路62に信号を送る。電気回路62は信号に基づき、電動アクチュエータが所定の駆動力を加え、所定量だけ上面板12が並進するように制御する。下段載置台2も同様に位置制御する。
【0038】
たとえば、橋脚上で橋桁を支えるための位置調整装置100を設置可能な範囲は、500mm角程度である。したがって、載置台1、2は水平動作の空間を確保するために、400mm角の矩形状とすることが好ましい。載置台1、2は1段あたり100mm程度であることが好ましい。転動子は10mm径の円筒状フラットローラーで構成することが好ましい。転動面は焼き入れ加工して硬化させるか、焼き入れ鋼板を取り付けることが好ましい。水平ジャッキ5は50mm程度の高さとすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の重量物の位置調整システムおよび位置調整方法によれば、狭隘箇所で使用可能、かつ、簡便に持ち運び可能な装置で重量物の位置調整でき、複数の支持点を精度よく同期制御できるので、施工期間の短縮が可能となり、省力・省資源が図れるので産業上有用である。
【符号の説明】
【0040】
100 位置調整装置
1 上段載置台(載置台)
11 上段ベース(水平基台)
11a (水平基台の)溝状凹部
12 上段トレイ(上面板)
12a (上面板の)溝状凹部
2 下段載置台(載置台)
21 下段ベース(水平基台)
21a (水平基台の)溝状凹部
22 下段トレイ(上面板)
22a (上面板の)溝状凹部
3 鉛直ジャッキ
31 鉛直ジャッキシリンダ
32 鉛直ジャッキピストン
33 鉛直ジャッキ油室
4 ローラーベアリング(転動子)
5 水平ジャッキ(アクチュエータ)
51 水平ジャッキシリンダ(シリンダ)
51a シリンダ凸部(突条)
52 水平ジャッキピストンロッド(ロッド)
52a ロッド凸部(突条)
6 集中制御機器
61 通信手段(無線通信、有線通信)
62 電気回路
7 油圧回路
71 油圧ポンプユニット
72 作動油タンク(タンク)
73 電磁弁
8 仮受台
S 橋桁(重量物)
BL 載置面(水平面)
UW 扛上(上昇)
DW 下降
FW (前進)移動(摺動)
BW (後退)移動(摺動)
O 初期位置
LT 橋軸方向
WT 橋軸直角方向
SO 橋桁(初期位置)
SA 橋桁(目標位置)
P 橋脚(橋台)
SP 支承
T 加力
CR 損傷
図1
図2
図3
図4
図5
図6