(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038598
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240313BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142717
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】本間 史也
(72)【発明者】
【氏名】三村 博
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA03
3E096BA16
3E096BB04
3E096CA02
3E096DA01
3E096DC01
3E096EA02X
3E096FA07
3E096GA03
5F131BA13
5F131CA37
5F131CA49
5F131GA12
5F131GA24
5F131GA30
5F131GA33
5F131GA53
5F131GA54
5F131GA99
(57)【要約】
【課題】容器本体内のアダプタに搭載されたレチクル収容容器の浮き上がりや脱落を抑制し、レチクル収容容器のレチクル損傷を防止できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】 複数枚の半導体ウェーハを上下方向に収納可能な容器本体1と、容器本体1の開口した正面に嵌合される蓋体と、容器本体1に収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタ40とを備えたFOUPであり、容器本体1の内部両側に、半導体ウェーハを水平に支持可能な一対の支持片2を対設し、一対の支持片2を上下方向に所定の間隔で複数配列し、アダプタ40を容器本体1の一対の支持片2に支持される円板に形成し、アダプタ40の搭載面41に、レチクル収容容器を位置決めする複数の位置決めバー43を配設するとともに、複数の位置決めバー43の一部に、レチクル収容容器に係止して固定するクランプ50を回転可能に支持させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタとを含んでなる基板収納容器であって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持可能な一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で複数配列し、
アダプタを容器本体内の一対の支持片に支持される形状に形成し、このアダプタのレチクル収容容器を搭載する搭載面に、レチクル収容容器を位置決めする複数の位置決め部材を配設し、アダプタの搭載面と位置決め部材の少なくともいずれか一方に、レチクル収容容器に係止するクランプ部材を取り付けたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
アダプタのレチクル収容容器を搭載する搭載面に、レチクル収容容器を包囲してその周縁部の前後左右に近接する複数の位置決め部材を所定の間隔をおいて配列し、アダプタ、複数の位置決め部材、及びクランプ部材の少なくともいずれかを樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
複数の位置決め部材のうち、レチクル収容容器の周縁前部に近接する前部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁側部に近接する側部位置決め部材の少なくともいずれか一方に、レチクル収容容器の周縁部に上方から係止するクランプ部材を回転可能に支持させた請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
複数の位置決め部材のうち、レチクル収容容器の周縁後部に近接する後部位置決め部材を断面略逆L字形に形成し、この後部位置決め部材を、レチクル収容容器の周縁後部に横方向から対向する起立部と、この起立部に着脱自在に取り付けられてレチクル収容容器の周縁後部に上方から係止する係止被覆部とに分割した請求項2又は3記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの他、レチクル用のレチクル収容容器を収納可能な基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインのリソグラフィ工程においては、半導体ウェーハに電子回路を形成するため、複数枚のレチクルが使用されるが、半導体ウェーハとレチクルとでは、一度に搬送できる枚数が異なり、1枚の半導体ウェーハに電子回路を形成するために複数枚のレチクルを何回も搬送する必要があるので、半導体ウェーハの搬送効率の向上に支障を来すことがある。また、半導体ウェーハ用の基板収納容器とレチクル用の収容容器とは、大きさや搬送形態が相違し、別々の搬送ラインが要求されるので、複数の搬送ラインを設置しなければならず、設備やコスト、スペース占有等の点で問題が生じる。
【0003】
これらの問題を解消するため、従来においては、図示しないが、半導体ウェーハ用の基板収納容器の容器本体にレチクル用のレチクル収容容器を専用のアダプタを介して収納し、一種類の基板収納容器を用いて搬送する技術が提案されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐58192号公報
【特許文献2】特開2011‐3723号公報
【特許文献3】特開2013‐239507号公報
【特許文献4】特開2013‐239643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体ウェーハ用の基板収納容器にレチクル収容容器を専用のアダプタを介して収納する場合には、半導体ウェーハの搬送効率を向上させたり、設備、コスト、スペース占有等の問題を解消することができる。
しかしながら、アダプタにレチクル収容容器が単に搭載される場合、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がって位置ずれしたり、脱落したりし、その結果、レチクル収容容器内のレチクルが損傷するおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、容器本体内のアダプタに搭載されたレチクル収容容器の浮き上がりや脱落を抑制し、レチクル収容容器内のレチクルが損傷するおそれを払拭することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の半導体ウェーハを上下方向に並べて収納可能な容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体と、容器本体に収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタとを含んでなるものであって、
容器本体の内部両側に、半導体ウェーハを略水平に支持可能な一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で複数配列し、
アダプタを容器本体内の一対の支持片に支持される形状に形成し、このアダプタのレチクル収容容器を搭載する搭載面に、レチクル収容容器を位置決めする複数の位置決め部材を配設し、アダプタの搭載面と位置決め部材の少なくともいずれか一方に、レチクル収容容器に係止するクランプ部材を取り付けたことを特徴としている。
【0008】
なお、アダプタのレチクル収容容器を搭載する搭載面に、レチクル収容容器を包囲してその周縁部の前後左右に近接する複数の位置決め部材を所定の間隔をおいて配列し、アダプタ、複数の位置決め部材、及びクランプ部材の少なくともいずれかを樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形することができる。
また、複数の位置決め部材のうち、レチクル収容容器の周縁前部に近接する前部位置決め部材と、レチクル収容容器の周縁側部に近接する側部位置決め部材の少なくともいずれか一方に、レチクル収容容器の周縁部に上方から係止するクランプ部材を回転可能に支持させることができる。
【0009】
また、複数の位置決め部材のうち、レチクル収容容器の周縁後部に近接する後部位置決め部材を断面略逆L字形に形成し、この後部位置決め部材を、レチクル収容容器の周縁後部に横方向から対向する起立部と、この起立部に着脱自在に取り付けられてレチクル収容容器の周縁後部に上方から係止する係止被覆部とに分割することもできる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハには、少なくともφ300mmやφ450mmのシリコンウェーハ等が含まれる。また、容器本体や蓋体の少なくとも一部は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。容器本体における支持片の表面の少なくとも前部には、半導体ウェーハやアダプタ用のストッパを形成することができる。また、レチクル収容容器は、5~7インチのレチクルを収容する平面多角形の箱型でも良いし、カセット型等でも良い。
【0011】
アダプタは、平面円形、楕円形、矩形、多角形、正方形等に適宜形成することができる。また、クランプ部材は、アダプタの搭載面、位置決め部材、あるいはアダプタの搭載面及び位置決め部材に必要数取り付けることが可能である。このクランプ部材の「回転」という用語には、回動や揺動が含まれる。後部位置決め部材の「断面略逆L字形」には、断面逆L字形と、おおよそ断面逆L字形と認められる類似形(例えば、断面逆J字形や断面逆Γ字形等)のいずれもが含まれる。さらに、基板収納容器は、半導体工場用のFOUPが主ではあるが、出荷・輸送用のFOSBでも良い。
【0012】
本発明によれば、基板収納容器の容器本体にレチクル収容容器をアダプタを介して収納する場合には、先ず、アダプタを用意してその搭載面の複数の位置決め部材の間にレチクル収容容器を嵌めて位置決めする。レチクル収容容器を嵌めて位置決めしたら、アダプタのクランプ部材をレチクル収容容器に係止させてレチクル収容容器が浮き上がらないようにし、容器本体内にアダプタを収納してその両側部を容器本体の対向する一対の支持片に支持させ、容器本体の開口した正面に蓋体を嵌め合わせれば、容器本体にレチクル収容容器をアダプタを介して収納することができ、レチクル収容容器を安全に保管したり、搬送することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器本体内のアダプタに搭載されたレチクル収容容器の浮き上がりや脱落を抑制し、レチクル収容容器内のレチクルが損傷するおそれを払拭することができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、アダプタ、複数の位置決め部材、及びクランプ部材の少なくともいずれかを樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形するので、導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防ぐことができる。
請求項3記載の発明によれば、アダプタの搭載面に搭載したレチクル収容容器の周縁前部と周縁側部の少なくともいずれか一方にクランプ部材を係止させるので、アダプタからレチクル収容容器が浮き上がって位置ずれしたり、脱落するのを有効に防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、後部位置決め部材を、一体品ではなく、分解可能な起立部と係止被覆部とから構成するので、後部位置決め部材の組み立てが容易となる。また、アダプタの搭載面に搭載したレチクル収容容器の周縁後部を後部位置決め部材に位置決めしながら係止させるので、レチクル収容容器がアダプタの前後方向にずれるのを抑制することができ、しかも、アダプタからレチクル収容容器の後部が浮き上がって位置ずれしたり、脱落するのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体内に収納された複数のアダプタを模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタに搭載されたレチクル収容容器を模式的に示す斜視説明図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるレチクル収容容器を模式的に示す説明図で、(a)図は平面図、(b)図は側面図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタにレチクル収容容器を搭載する作業状態を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタの後部位置決めバーを模式的に示す要部説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるアダプタ、複数の位置決めバー、及び複数のクランプの関係を模式的に示す分解斜視図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるレチクル収容容器の周縁部にクランプが係止する状態を模式的に示す要部斜視図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における容器本体とアダプタの関係を模式的に示す斜視説明図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態における容器本体とアダプタの関係を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図8に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納可能な容器本体1と、この容器本体1の開口した正面に嵌合される蓋体10と、半導体ウェーハWの代わりに容器本体1に必要数が収納されるレチクル収容容器搭載用のアダプタ40とを備えた半導体工場用のFOUPであり、アダプタ40のレチクル収容容器30を搭載する搭載面41に、レチクル収容容器30を位置決めする複数の位置決めバー43を配設し、この複数の位置決めバー43に、レチクル収容容器30に係止可能なクランプ50を支持させることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0018】
複数枚の半導体ウェーハWは、
図1に示すように、例えばφ300mmの丸いシリコンウェーハからなり、容器本体1の内部に25枚が上下方向に並べて整列収納され、各半導体ウェーハWが水平に支持される。
【0019】
容器本体1と蓋体10とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。熱可塑性樹脂には、導電性を付与するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が添加される。
【0020】
容器本体1は、
図1や
図2に示すように、正面が横長に開口した背の高いフロントオープンボックスに成形され、内部の両側、換言すれば、左右両側壁の内面に、半導体ウェーハWの周縁側部を下方から水平に支持する一対の支持片2が対設されており、この一対の支持片2が上下方向に所定の間隔で複数配列される。この容器本体1は、例えば25枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて整列収納可能な大きさに形成される。また、各支持片2は、例えば容器本体1の前後方向に伸びる平坦な棚板に形成され、表面の前後部のうち、少なくとも前部に、収納された半導体ウェーハWが正面方向に位置ずれするのを防止するストッパ3が隆起して一体形成される。
【0021】
容器本体1の底板下面にはボトムプレート4が選択的に装着され、容器本体1の天井中央部には、自動搬送用の搬送具である平面矩形のロボティックフランジ5が着脱自在に装着されており、このロボティックフランジ5が半導体工場の天井搬送装置に把持して吊持された後、半導体の製造ラインを搬送される。また、容器本体1の内部背面には、非常時に半導体ウェーハWの周縁後部を挟持可能な複数のリアサポートが並設される。容器本体1の正面周縁部は幅方向外側に屈曲して膨出形成されており、この正面周縁部の内面における上部両側と下部両側とには、蓋体10用の施錠穴6がそれぞれ凹み形成される。
【0022】
容器本体1の両側壁の外面には、手動操作用の操作ハンドル7がそれぞれ着脱自在に装着され、各側壁の下部には、自動搬送具である搬送レール8が必要に応じ着脱自在に装着されて前後方向に水平に指向する。
【0023】
蓋体10は、
図1に示すように、容器本体1の正面に着脱自在に嵌合される断面略皿形の蓋本体11と、この蓋本体11の開口した表面を覆うカバープレート14とを備え、これら蓋本体11とカバープレート14との間に施錠機構16が内蔵される。蓋本体11は、横長の略矩形に形成され、裏面の中央部に、半導体ウェーハWの周縁前部を弾性片で弾発的に保持するフロントリテーナ12が着脱自在に装着される。また、蓋本体11の周壁には、容器本体1の正面内周に圧接変形する枠形のガスケットが嵌合され、蓋本体11の周壁における上部両側と下部両側とには、施錠機構16用の出没孔13がそれぞれ貫通して穿孔される。
【0024】
カバープレート14は、透明、半透明、あるいは不透明の板に形成され、両側部に、施錠機構16用の操作孔15がそれぞれ貫通して穿孔されており、各操作孔15を蓋体開閉装置の回転可能な操作キーが外部から貫通する。
【0025】
施錠機構16は、
図1に示すように、カバープレート14の操作孔15を貫通した蓋体開閉装置の操作キーに回転操作される左右一対の回転プレート17と、各回転プレート17の回転に応じて上下方向にスライドする複数のスライドバー19と、各スライドバー19の先端部に連結軸支され、蓋本体周壁の出没孔13を貫通して容器本体1の施錠穴6に嵌合係止する出没可能な複数の施錠爪20とを備えて構成される。
【0026】
施錠機構16は、容器本体1や蓋体10と同様の成形材料により成形される。複数の回転プレート17とスライドバー19とは、蓋本体11内に設けられる支持リブを介して軸支されたり、支持されたりし、各回転プレート17の周縁部寄りの一対の円弧溝孔18にスライドバー19の末端部がピンを介しそれぞれ遊嵌される。また、各施錠爪20は、例えば断面略L字形に屈曲形成され、自由端部に摩擦軽減用のローラが回転可能に軸支される。
【0027】
このような基板収納容器は、容器本体1内に複数枚の半導体ウェーハWが順次収納され、容器本体1の正面に蓋体10が蓋体開閉装置により圧入して嵌合されるとともに、各半導体ウェーハWの周縁前部をフロントリテーナ12が保持し、施錠機構16が蓋体開閉装置に施錠操作されて蓋体10を強固に固定する。蓋体10が強固に固定されると、容器本体1のロボティックフランジ5が半導体工場の天井搬送装置に吊持され、次の加工処理工程に搬送されて各半導体ウェーハWに加工と処理とが順次施され、半導体ウェーハWの表面に電子回路が形成されることとなる。
【0028】
レチクル収容容器30は、特に限定されるものではないが、
図3ないし
図5に示すように、例えば6インチのレチクルを1枚収容してアダプタ40に搭載される平面矩形の底板31と、この底板31にシールガスケットを介し上方から着脱自在に嵌合される平面略矩形の上蓋32とを備えたレチクルSMIFポッド(RSP)である。このレチクル収容容器30の底板31と上蓋32とは、例えば静電気によるレチクルの損傷を防止する観点から、カーボン等の導電材料を含有する所定の成形材料(例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の各種合成樹脂)によりそれぞれ成形される。
【0029】
底板31は、相対向する平面略矩形の上板と下板とを備え、これら上板と下板との間に隙間が区画形成されており、この隙間に施錠用のロック機構が内蔵される。上板の上面には、1枚のレチクルの周縁部を水平に支持する一対の支持部材が間隔をおいて敷設され、各支持部材がレールに形成されており、上板の上面周縁部付近には、弾性変形可能な平面枠形のシールガスケットが装着される。
【0030】
上蓋32は、例えば透明あるいは半透明の断面略ハット形に形成され、底板31との嵌合時に幅方向外側に水平に突出するフランジにより、シールガスケットを圧接変形してシール性を確保する。この上蓋32の内部天井には、レチクルの上面周縁部に接触して保持する一対の保持部材が間隔をおいて対設され、各保持部材が例えばレールに形成されて支持部材に上方から対向する。
【0031】
上蓋32の幅方向外側に突出するフランジは、その周縁部33の先端が下方に短く屈曲形成されて底板31の周面に対向し、この先端の内面に、ロック機構の出没バーの先端部に嵌合されるロック溝がそれぞれ凹み形成される。また、上蓋32の外面天井には、搬送装置等に把持される搬送用フランジ34が装着される。
【0032】
レチクル収容容器30の製品例としては、RSP‐150、RSP‐200〔大日商事株式会社製:製品名〕、レチクルケース〔ナガセエンジニアリング株式会社製:製品名〕、レチクルカセット〔三洋マテリアル株式会社製:製品名〕等があげられる。
【0033】
アダプタ40は、
図2、
図3、
図5ないし
図8に示すように、容器本体1内の一対の支持片2に支持される略板形に成形され、レチクル収容容器30を搭載する平坦な上面の搭載面41に、レチクル収容容器30の四隅部以外の大部分を包囲する複数の位置決めバー43が配設されており、この複数の位置決めバー43の一部に、レチクル収容容器30に係止する複数のクランプ50が回転可能に支持される。このアダプタ40は、所定の成形材料により、基本的には容器本体1の隣接する支持片2と支持片2との間に挿入可能な厚さと大きさを有する円板に成形され、容器本体1の正面側に位置する前部42が位置方向を示す観点から左右方向に直線的に切り欠かれており、両側部が容器本体1の一対の支持片2に水平に支持される。
【0034】
アダプタ40の所定の成形材料としては、例えば耐薬品性・耐摩耗性・耐衝撃性・汎用性等に優れる軽量のポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の各種合成樹脂、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーがあげられる。この成形材料には、導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防止するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が好ましくは添加される。
【0035】
アダプタ40は、例えば半導体ウェーハWと略同じ大きさに形成され、搭載面41の周縁部付近に、レチクル収容容器30の上蓋周縁部33に前後左右から近接して位置決めする複数の位置決めバー43が平面矩形の搭載領域49を描くよう間隔をおいて螺着されており、各位置決めバー43が平面略半円形等に形成される。複数の位置決めバー43は、アダプタ40と同様の成形材料により成形され、この成形材料には導電性を付与してレチクルの静電気破壊を防止するため、適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が好ましくは添加される。
【0036】
複数の位置決めバー43は、
図3、
図5、
図7に示すように、レチクル収容容器30の上蓋32の周縁前部に近接して位置決めする前部位置決めバー44と、レチクル収容容器30の上蓋32の周縁後部に近接して位置決めする後部位置決めバー45と、レチクル収容容器30の周縁両側部に近接して位置決めする左右一対の側部位置決めバー48とを備え、これら44・45・48の間に隙間がそれぞれ区画形成されており、後部位置決めバー45がやや背の高い断面略逆L字形に屈曲形成される。
【0037】
複数の位置決めバー43のうち、後部位置決めバー45は、製造作業や組立作業を容易にする観点から、
図5や
図6に示すように、上蓋32の周縁後部に横方向から対向近接するブロック形の起立部46と、この起立部46に螺子等の複数の締結具を介し着脱自在に螺着されて上蓋32の周縁後部に上方から係止する平面略半円形でL字形の係止被覆部47とに分割され、位置決め機能の他、係止機能を発揮する。
【0038】
複数(本実施形態では3個)のクランプ50は、
図3、
図5、
図7、
図8に示すように、前部位置決めバー44と一対の側部位置決めバー48の中央部にそれぞれボルト52を介して支持され、水平横方向に回転する。各クランプ50は、アダプタ40や位置決めバー43と同様の成形材料により略倒L字形に成形され、レチクル収容容器30の上蓋周縁部33に長片部を上方から係止してZ方向への浮き上がりを防止したり、長片部の係止を解除してレチクル収容容器30の取り外しを可能にするよう機能する。
【0039】
クランプ50の成形材料には、レチクルの静電気破壊を防止する観点から、好ましくは適量のカーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性高分子、金属繊維、金属酸化物等が添加される。また、ボルト52は、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性や機械特性等に優れる高機能のポリエーテルエーテルケトン樹脂等により成形され、クランプ50の短片筒部51に上方から螺挿される。
【0040】
上記構成において、基板収納容器の容器本体1にレチクルを収容したレチクル収容容器30をアダプタ40を介して収納する場合には、先ず、アダプタ40を用意してその複数のクランプ50の長片部を位置決めバー43の長手方向に向け(
図5参照)、アダプタ40の搭載面41に傾けたレチクル収容容器30の後部を接触させ、このレチクル収容容器30を後方にスライドさせてその上蓋32の周縁後部を後部位置決めバー45の係止被覆部47に係止させるとともに、前部位置決めバー44、後部位置決めバー45、及び一対の側部位置決めバー48の間の搭載領域49にレチクル収容容器30を嵌入して位置決めする。
【0041】
レチクル収容容器30を嵌入して搭載したら、各クランプ50の長片部をアダプタ40の中心部方向に回転させ(
図8参照)、クランプ50の長片部をレチクル収容容器30の周縁部33に係止させてレチクル収容容器30がZ方向に浮き上がらないようにし(
図3参照)、空の容器本体1内に複数のアダプタ40を順次収納してその両側部を容器本体1の対向する一対の支持片2にそれぞれ支持させ、アダプタ40の位置や姿勢を安定させた後、容器本体1の開口した正面に蓋体10を圧入して嵌合すれば、容器本体1にレチクル収容容器30をアダプタ40を介し安全に収納することができる。この際、アダプタ40とアダプタ40の間隔を空け、アダプタ40の下面にレチクル収容容器30が衝突しないようにすることが好ましい。
【0042】
上記構成によれば、アダプタ40の搭載面41にレチクル収容容器30を安定して搭載するだけではなく、レチクル収容容器30の周縁部33に複数のクランプ50をそれぞれ係止させるので、例え基板収納容器が衝突して外力が作用しても、アダプタ40からレチクル収容容器30が浮き上がってZ方向に位置ずれしたり、がたついたり、脱落するのを有効に防止することができる。したがって、レチクル収容容器30内のレチクルの損傷防止が大いに期待できる。また、アダプタ40、複数の位置決めバー43、及び複数のクランプ50を樹脂と導電フィラー含有の成形材料によりそれぞれ成形するので、導電性の付与によりレチクルの静電気破壊を防止することができる。
【0043】
また、アダプタ40の搭載面41に搭載されたレチクル収容容器30の周縁後部に後部位置決めバー45の起立部46を近接させて位置決めするとともに、後部位置決めバー45の係止被覆部47を係止させるので、レチクル収容容器30がアダプタ40の前後方向にずれるのを抑制することができ、しかも、アダプタ40からレチクル収容容器30の後部が浮き上がって位置ずれしたり、がたついたり、脱落するのを防ぐことが可能となる。さらに、別体の起立部46と係止被覆部47とを組み立てて後部位置決めバー45を構成するので、形状が複雑な後部位置決めバー45を容易に組み立てて使用することができる。
【0044】
次に、
図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、前部位置決めバー44の中央部に、水平横方向に回転可能なクランプ50をボルト52を介して支持させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、各側部位置決めバー48のクランプ50を省略するので、部品点数の削減が大いに期待できるのは明らかである。
【0045】
次に、
図10は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、前部位置決めバー44に、水平横方向に回転可能な左右一対のクランプ50をボルト52を介しそれぞれ支持させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、各側部位置決めバー48のクランプ50を省略するので、部品点数の削減が期待できる。また、一対のクランプ50を用いるので、例え一方のクランプ50が外れても、他方のクランプ50により、レチクル収容容器30の位置ずれやがたつき、脱落等を確実に防止することができる。
【0046】
なお、上記実施形態ではアダプタ40、複数の位置決めバー43、及び複数のクランプ50を樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形したが、これらの少なくともいずれかを樹脂と導電フィラー含有の成形材料により成形しても良い。また、アダプタ40の下面における両側部周縁に、支持片2のストッパ3に近接する切り欠きを他の部分よりも厚さが薄くなるようそれぞれ形成し、各切り欠きを支持片2のストッパ3に接触させてアダプタ40が前後方向、特に前方向に位置ずれしたり、がたつくのを防止するようにしても良い。
【0047】
また、アダプタ40の径方向に複数の位置決めバー50用の取付孔を複数穿孔し、レチクル収容容器30の大きさに応じ、複数の取り付け孔に位置決めバー50を選択的に螺着しても良い。また、上記実施形態ではアダプタ40の前部位置決めバー44と一対の側部位置決めバー48のうち、少なくとも前部位置決めバー44にクランプ50を支持させたが、一対の側部位置決めバー48のみに必要数のクランプ50を回転可能に支持させても良い。また、特に支障を来さなければ、アダプタ40の搭載面41に複数のクランプ50を回転可能に支持させることができる。
【0048】
また、アダプタ40の搭載面41に必要数の凹凸を配列形成してレチクル収容容器30の底面との間に隙間を形成可能とし、レチクル収容容器30の取り付け取り外しを容易にすることができる。また、アダプタ40の搭載面41に、レチクル収容容器30用の浅底の収容穴等を選択的に穿孔することもできる。また、後部位置決めバー45の係止被覆部47のレチクル収容容器30に対向する起立面を傾斜させてレチクル収容容器30の上方への傾斜角を拡大可能とし、レチクル収容容器30の取り外しを円滑にすることが可能である。さらに、各位置決めバー43に可撓性やバネ性を付与してレチクル収容容器30の周縁部33に密接させ、レチクル収容容器30の位置ずれや脱落を防止することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る基板収納容器は、半導体やレチクルを取り扱う分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 容器本体
2 支持片
5 ロボティックフランジ
8 搬送レール
10 蓋体
11 蓋本体
14 カバープレート
16 施錠機構
30 レチクル収容容器
31 底板
32 上蓋
33 周縁部
40 アダプタ
41 搭載面
43 位置決めバー(位置決め部材)
44 前部位置決めバー(位置決め部材、前部位置決め部材)
45 後部位置決めバー(位置決め部材、後部位置決め部材)
46 起立部
47 係止被覆部
48 側部位置決めバー(位置決め部材、側部位置決め部材)
49 搭載領域
50 クランプ(クランプ部材)
W 半導体ウェーハ