(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038602
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】圃場水管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
A01G25/00 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142724
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 弘貴
(57)【要約】
【課題】利便性を向上することが可能な圃場水管理システムを提供する。
【解決手段】圃場Hの地表面H1への給水、及び圃場Hの地下H2への給水を管理可能な水管理装置10と、水管理装置10を制御可能な圃場管理サーバ70と、を具備し、圃場管理サーバ70は、水管理装置10を制御するための制御モードとして、地表面H1への給水を管理する表面灌漑モードと、地下H2への給水を管理する地下灌漑モードと、を切替可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の地表面への給水、及び前記圃場の地下への給水を管理可能な水管理装置と、
前記水管理装置を制御可能な制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記水管理装置を制御するための制御モードとして、前記地表面への給水を管理する第一制御モードと、前記地下への給水を管理する第二制御モードと、を切替可能に構成される、
圃場水管理システム。
【請求項2】
前記地表面の水位及び前記地下の水位をそれぞれ測定可能な水位計をさらに具備し、
前記制御部は、
前記第一制御モードにおいて、前記水位計により測定された前記地表面の水位に基づいて前記地表面への給水を管理し、
前記第二制御モードにおいて、前記水位計により測定された前記地下の水位に基づいて前記地下への給水を管理する、
請求項1に記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記水位計は、
前記地表面の水位を測定可能な第一位置、及び前記地下の水位を測定可能な第二位置に移動できるように構成される、
請求項2に記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第一制御モードにおいて、前記第一位置に応じて設定される第一の原点を基準として前記地表面の水位を算出し、
前記第二制御モードにおいて、前記第二位置に応じて設定される第二の原点を基準として前記地下の水位を算出する、
請求項3に記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
前記水位計は、
前記地表面の水位を測定可能な第一水位計と、
前記地下の水位を測定可能な第二水位計と、
を含む、
請求項2に記載の圃場水管理システム。
【請求項6】
前記水位計の測定結果を記憶する記憶部をさらに具備する、
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の圃場水管理システム。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記圃場で生育される作物の情報を記憶する、
請求項6に記載の圃場水管理システム。
【請求項8】
前記圃場の地表面の水温、及び前記圃場の地下の水温をそれぞれ測定可能な水温計と、
前記水温計の測定結果を記憶する記憶部と、
をさらに具備する、
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の圃場水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の水を管理する圃場水管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の水を管理する圃場水管理システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の自動水管理装置(圃場水管理システム)は、圃場の地表面への給排水を行う給水ポンプ及び排水ポンプと、給水ポンプ及び排水ポンプを制御して圃場の水位を調節する水位制御器と、水位制御器と接続されるコンピュータとを具備する。コンピュータは、作物の生育段階に適した水位を推測し、当該推測結果に基づいて水位制御器へ水位を調節するよう指示を出す。水位制御器は、当該指示に基づいて圃場の水位を調節する。これによって地表面への給水を管理して、稲作等を行うことができる。
【0004】
ここで圃場では、稲作を行った後で畑作を行う場合がある。畑作では、地表面ではなく地下に給水を行う必要がある。しかしながら、特許文献1の自動水管理装置は地下への給水を行うことができないため、1つの圃場で稲作及び畑作を行う場合、前記自動水管理装置と、地下への給水を管理する別の機器とを使い分ける必要があり、不便であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、利便性を向上することが可能な圃場水管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、圃場の地表面への給水、及び前記圃場の地下への給水を管理可能な水管理装置と、前記水管理装置を制御可能な制御部と、を具備し、前記制御部は、前記水管理装置を制御するための制御モードとして、前記地表面への給水を管理する第一制御モードと、前記地下への給水を管理する第二制御モードと、を切替可能に構成されるものである。
本開示の一態様によれば、共通の水管理装置によって、用途に応じて圃場の地表面への給水及び地下への給水をそれぞれ管理することができるため、利便性を向上することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記地表面の水位及び前記地下の水位をそれぞれ測定可能な水位計をさらに具備し、前記制御部は、前記第一制御モードにおいて、前記水位計により測定された前記地表面の水位に基づいて前記地表面への給水を管理し、前記第二制御モードにおいて、前記水位計により測定された前記地下の水位に基づいて前記地下への給水を管理するものである。
本開示の一態様によれば、水位計を用いることにより、地表面の水位及び地下の水位を適切な高さに調整することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記水位計は、前記地表面の水位を測定可能な第一位置、及び前記地下の水位を測定可能な第二位置に移動できるように構成されるものである。
本開示の一態様によれば、共通の水位計で地表面及び地下の水位をそれぞれ測定できるため、水位計の設置個数を減らしてコストの削減を図ることができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記制御部は、前記第一制御モードにおいて、前記第一位置に応じて設定される第一の原点を基準として前記地表面の水位を算出し、前記第二制御モードにおいて、前記第二位置に応じて設定される第二の原点を基準として前記地下の水位を算出するものである。
本開示の一態様によれば、水位計の位置に応じた原点を基準として、適切に水位を算出することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記水位計は、前記地表面の水位を測定可能な第一水位計と、前記地下の水位を測定可能な第二水位計と、を含むものである。
本開示の一態様によれば、第一水位計及び第二水位計により、地表面の水位及び地下の水位を容易に測定することができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記水位計の測定結果を記憶する記憶部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、地表面の水位及び地下の水位の履歴を残すことができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記記憶部は、前記圃場で生育される作物の情報を記憶するものである。
本開示の一態様によれば、圃場で生育した作物及び圃場(地表面及び地下)の水位の履歴を残すことができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記圃場の地表面の水温、及び前記圃場の地下の水温をそれぞれ測定可能な水温計と、前記水温計の測定結果を記憶する記憶部と、をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、地表面の水温及び地下の水温の履歴を残すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圃場水管理システムを示す説明図。
【
図4】(a)表面灌漑モードにおける水の流れを示す図。(b)表面灌漑モードにおける水位水温センサの高さ位置を示す断面図。
【
図5】(a)地下灌漑モードにおける水の流れを示す図。(b)地下灌漑モードにおける水位水温センサの高さ位置を示す断面図。
【
図6】地下灌漑ボタンがオン状態である場合の圃場設定画面を示す図。
【
図7】水稲ボタンがオン状態である場合の圃場設定画面を示す図。
【
図10】(a)高さ調整機構の別例を示す断面図。(b)複数の収容部材を示す断面図。
【
図11】(a)複数の受け部材を示す断面図。(b)地下に直接埋め込まれる水位水温センサの構成を示す断面図。
【
図12】第二実施形態に係るモード確認処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の第一実施形態に係る圃場水管理システム1について説明する。
【0019】
図1に示す圃場水管理システム1は、圃場Hの水を管理するためのものである。圃場水管理システム1は、水管理装置10、水位水温センサ20、高さ調整機構30、通信中継機40、操作者端末50、データセンター60及び圃場管理サーバ70を具備する。
【0020】
水管理装置10は、圃場Hの地表面H1及び地下H2への給水をそれぞれ管理するためのものである。水管理装置10は、複数の圃場Hにそれぞれ設置可能である。水管理装置10は、給水桝11、給水装置12、第一給水管13、板状部材14、蓋部15及び第二給水管16を具備する。
【0021】
図2に示す給水桝11は、上部が開口する略箱状の部分である。給水桝11は、圃場Hに隣接するように設けられる。給水桝11は、第一貫通孔11a及び第二貫通孔11bを具備する。第一貫通孔11a及び第二貫通孔11bは、給水桝11の底部を貫通するように形成される。
【0022】
給水装置12は、給水桝11に水を供給するためのものである。給水装置12は、給水桝11内に設けられる。給水装置12は、後述する通信中継機40と通信するための通信機器(不図示)と、開閉操作可能な給水栓(バルブ)12aと、給水栓12aを電動で操作可能な電動アクチュエータ12bとを具備する。給水装置12は、電動アクチュエータ12bで給水栓12aを開閉することによって、第一給水管13からの水を給水桝11へ給水可能な状態と給水不能な状態とを切り替えることができる。また給水装置12は、電動アクチュエータ12bで給水栓12aの開度を変えることによって、給水量を調整することができる。
【0023】
第一給水管13は、水源からの水を給水装置12へ供給するためのものである。第一給水管13の一端部は、第一貫通孔11aに挿通されると共に給水装置12に接続される。第一給水管13の他端部は、給水量を調整するための分水装置等を介して水源と接続される(不図示)。
【0024】
板状部材14は、給水桝11の側壁に設けられる略板状の部材である。本実施形態では、板状部材14の上端部の高さ位置まで給水桝11に水を貯留することができる。操作者(例えば圃場Hの管理者等)は、給水桝11に対する板状部材14の上下位置を変更することによって、給水桝11に貯留可能な水位を調整することができる。
【0025】
蓋部15は、必要に応じて第二貫通孔11bを塞ぐための部材である。操作者は、任意に蓋部15を取り外すことができる。
【0026】
第二給水管16は、給水桝11内の水を圃場Hの地下H2へ供給するためのものである。第二給水管16は、第一接続管16a、第二接続管16b及び有孔管16cを具備する。第一接続管16a及び第二接続管16bは、給水桝11と有孔管16cとを接続するための管である。第一接続管16aは、給水桝11の第二貫通孔11bに接続され、第二貫通孔11bから下方へ延出するように配置される。第二接続管16bは、第一接続管16aの下端部に接続され、水平方向に延出するように配置される。
【0027】
有孔管16cは、外周面に複数の孔部が形成される管である。有孔管16cは、第二接続管16bと接続され、水平方向(第二接続管16bに対して垂直な方向)に延出するように配置される。有孔管16cの他端部は、排水路と接続される(不図示)。有孔管16cは、第二接続管16bの延出方向(
図2における紙面奥行き方向)に所定の間隔をあけて複数設けられる。
【0028】
水管理装置10は、蓋部15が取り付けられた状態において、圃場Hの地表面H1に給水することができる。具体的には
図4(a)に示すように、蓋部15が取り付けられた状態において給水装置12から給水桝11内に水が供給された場合、給水桝11内で水位が上昇する。この水位の上昇により給水桝11内の水が板状部材14を乗り越えることで、給水桝11から圃場Hの地表面H1へ水が供給される。以下では、地表面H1に供給された水の水面の位置(地表面H1から水面までの高さ)を「表面水位W1」と称する。また地表面H1に供給された水の温度を「表面水温」と称する。
【0029】
水管理装置10は、蓋部15が取り外された状態において、圃場Hの地下H2に給水することができる。具体的には
図5(a)に示すように、蓋部15が取り外された状態において給水装置12から給水桝11内に水が供給された場合、給水桝11から第一接続管16aへと水が流入する。第一接続管16a内へ流入した水は、第二接続管16bを介して有孔管16cへと流通し、有孔管16cの孔部から圃場Hの地下H2へと供給される。これによって、給水桝11から圃場Hの地下H2へ水が供給される。以下では、地下H2に供給された水の水面の位置(地表面H1から水面までの深さ)を「地下水位W2」と称する。また地下H2に供給された水の温度を「地下水温」と称する。
【0030】
水管理装置10は、地表面H1や地下H2に供給された水を排水するための排水装置(不図示)を具備する。排水装置は、例えば圃場Hの排水口に設けられた昇降体を具備し、当該昇降体を超えた圃場Hの水を排水路へ排出する。排水装置の昇降体は、操作者により手動で、又は、後述する圃場管理サーバ70(
図1参照)からの信号により自動で昇降される。これにより、圃場Hに貯留可能な水の高さ(最大の水位)を調整することができる。
【0031】
図3に示す水位水温センサ20は、圃場Hの水位及び水温を測定するためのものである。水位水温センサ20は、圃場Hに設けられる。水位水温センサ20は、ケース21、キャップ22及び電極23等を具備する。
【0032】
ケース21は、電極23を収容するための部材である。ケース21は、軸線方向を上下方向に向けて配置されると共に上方が開口する有底略筒状に形成される。ケース21には、内部に水を導入するための通水孔が形成される(不図示)。またケース21の外周面には、第一標線L1及び第二標線L2が記される。なお第一標線L1及び第二標線L2については後述する。キャップ22は、ケース21の上部を塞ぐ部材である。電極23は、水位を測定するための部分である。電極23は、上下に延びる長手状に形成される。
【0033】
水位水温センサ20が圃場Hの水に浸かった場合、ケース21には前記通水孔を介して圃場Hの水が流入する。この際ケース21には、圃場Hの水位(表面水位W1や地下水位W2)と同じ高さまで水が流入する。この水に対する電極23の相対的な高さ位置(どの程度の高さまで水が浸かっているか)に応じて、電極23の静電容量は異なるものとなる。より詳細には電極23の静電容量は、電極23の上の方まで水が浸かるほど高いものとなる。水位水温センサ20は、この水と電極23との相対位置に応じた静電容量の違いに基づいて、圃場Hの水位を測定することができる。
【0034】
また水位水温センサ20は、温度を測定可能な温度測定部(不図示)を具備し、当該温度測定部に圃場Hの水が触れることにより、圃場Hの水温を測定することができる。こうして本実施形態では、水位水温センサ20による計測値として、圃場Hの水位及び水温を得ることができる。水位水温センサ20は、給水装置12(
図2参照)と接続され、圃場Hの水位及び水温の測定結果に関する情報を給水装置12へ送信することができる。
【0035】
ここで、表面水位W1及び地下水位W2を1つの水位水温センサ20でそれぞれ測定するためには、地表面H1よりも高いところから地下H2深くまで、広範囲に亘って電極23が水に浸かれる構成にする必要がある。仮に電極23を長くすれば広範囲に亘って電極23が水に浸かれるが、当該構成では水位水温センサ20の強度の低下が懸念される。
【0036】
そこで本実施形態では、水位水温センサ20の高さ位置を
図3に示す高さ調整機構30によって調整することにより、電極23が比較的短い水位水温センサ20で表面水位W1及び地下水位W2をそれぞれ測定可能に構成される。また高さ位置の調整により、水位水温センサ20は表面水温及び地下水温もそれぞれ測定可能に構成される。これによって水位水温センサ20の強度の低下を抑制することができる。また表面水位W1及び地下水位W2を別々の水位水温センサで測定する場合と比較して、水位水温センサ20の設置個数を減らしてコストの削減を図ることができる。以下、高さ調整機構30について説明する。高さ調整機構30は、収容部材31、受け部材32、支持部材33及び取付部材34を具備する。
【0037】
収容部材31は、水位水温センサ20を収容するための部材である。収容部材31は、軸線方向を上下方向に向けると共に上部が開口する有底略筒状に形成される。収容部材31は、上部が圃場Hの地表面H1から突出するように、圃場Hに埋め込まれる。これによって、後述する表面灌漑モードにおいて収容部材31内に土が流入するのを防止することができる。なお、
図1、
図2、
図4(a)及び
図5(a)では、収容部材31の記載が省略されている。
図3に示すように、収容部材31は、通水孔31aを具備する。
【0038】
通水孔31aは、収容部材31の外周面と内周面とを貫通するように形成される。通水孔31aは、上下方向に間隔をあけて複数形成される。圃場Hに供給された水は、通水孔31aを介して収容部材31内に流入される。こうして収容部材31の内側には、表面水位W1又は地下水位W2と同じ高さ位置まで水が流入する(
図4(b)及び
図5(b)参照)。
【0039】
受け部材32は、収容部材31に入り込んだ土等を受けるためのものである。受け部材32は、上部が開口する有底略筒状に形成される。受け部材32は、収容部材31の底部に載置される。受け部材32には取っ手32aが形成される。操作者は、取っ手32aを使って受け部材32を引き上げることにより収容部材31から受け部材32を容易に取り出すことができる。これによって受け部材32に溜まった土等を容易に排出することができる。
【0040】
支持部材33は、取付部材34を支持するためのものである。支持部材33は、軸線方向を上下方向に向けた略円筒状に形成される。支持部材33は、収容部材31の外側に配置される。支持部材33は、上部が圃場Hの地表面H1から突出するように、圃場Hに埋め込まれる。
【0041】
取付部材34は、水位水温センサ20を取り付けるためのものである。取付部材34は、軸線方向を上下方向に向けた略円筒状に形成される。取付部材34は、第一取付部34aを介して支持部材33に固定される。取付部材34には、第二取付部34bを介して水位水温センサ20が取り付けられる。第二取付部34bは、取付部材34に対して着脱可能、かつ取付位置(取付部材34に対する上下位置)を変更可能に構成される。
【0042】
高さ調整機構30は、第二取付部34bの取付位置を変更することによって、水位水温センサ20の高さ位置を調整することができる。この高さ位置の調整によって高さ調整機構30は、水位水温センサ20の高さ位置を第一位置P1及び第二位置P2に切り替えることができる。
【0043】
図4(b)に示す第一位置P1は、表面水位W1及び表面水温を測定可能な位置である。ここで、水位水温センサ20には、表面水位W1を測定する際に基準(水位が0cm)となる部分として、第一の原点G1が予め設定されている。本実施形態では、水位水温センサ20のケース21の下部が第一の原点G1として設定されている。水位水温センサ20のケース21に記される第一標線L1は、この第一の原点G1を示す線である。操作者は、第一標線L1(第一の原点G1)と地表面H1とが一致するように水位水温センサ20の高さ位置を調整することによって、水位水温センサ20を第一位置P1に移動させることができる。
【0044】
水位水温センサ20が第一位置P1に移動された場合、電極23の大部分が地表面H1よりも高い位置に配置される。これによって地表面H1に水が供給される場合に電極23が水に浸かるため、水位水温センサ20は、表面水位W1を測定することができる。また水位水温センサ20は、前記温度測定部が水に触れるため、表面水温を測定することができる。
【0045】
図5(b)に示す第二位置P2は、地下水位W2及び地下水温を測定可能な位置である。水位水温センサ20には、地下水位W2を測定する際に基準(水位が0cm)となる部分として、第二の原点G2が予め設定されている。本実施形態では、水位水温センサ20のケース21の上部が第二の原点G2として設定されている。水位水温センサ20のケース21に記される第二標線L2は、この第二の原点G2を示す線である。操作者は、第二標線L2(第二の原点G2)と地表面H1とが一致するように水位水温センサ20の高さ位置を調整することによって、水位水温センサ20を第二位置P2に移動させることができる。
【0046】
水位水温センサ20が第二位置P2に移動された場合、電極23の大部分が地表面H1よりも低い位置に配置される。これによって地下H2に水が供給される場合に電極23が水に浸かるため、水位水温センサ20は、地下水位W2を測定することができる。また水位水温センサ20は、地下水温も測定することができる。
【0047】
図1に示す通信中継機40は、無線通信可能な機器である。通信中継機40は、無線通信により、給水装置12及び後述する圃場管理サーバ70との間で情報をやり取りすることができる。
【0048】
操作者端末50は、操作者が所有する端末である。操作者端末50は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置、情報を入力可能な入力装置及び演算処理の結果等を表示可能な出力装置等を具備する。操作者端末50は、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等によって構成される。
【0049】
データセンター60は、圃場Hや圃場水管理システム1に関する種々の情報を記憶するための施設である。データセンター60には、情報を記憶するための記憶装置(例えば、大容量ストレージ)が設けられ、当該記憶装置に水位水温センサ20の測定結果や圃場Hの場所の情報(緯度や経度)等が記憶される。データセンター60では、圃場管理サーバ70から送信された情報を前記記憶装置に記憶させることができる。またデータセンター60では、圃場管理サーバ70から要求があった場合に、前記記憶装置に記憶された情報を圃場管理サーバ70へ送信することができる。
【0050】
圃場管理サーバ70は、圃場Hの給水に関する処理を行うためのものである。圃場管理サーバ70は、クラウドサーバ(厳密にはクラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)により構成される。圃場管理サーバ70は、通信中継機40を介して給水装置12との間で相互に情報をやり取りすることができる。圃場管理サーバ70は、給水装置12から信号を受信することで、種々の情報を取得することができる。例えば圃場管理サーバ70は、給水装置12からの信号に基づいて、給水栓12aの開度や水位水温センサ20の測定結果等を取得することができる。
【0051】
また圃場管理サーバ70は、水管理装置10を制御することができる。例えば圃場管理サーバ70は、給水装置12へ信号を送信することで給水栓12aを開閉し、給水桝11へ給水可能な状態と給水不能な状態とを切り替えたり、開度を調整して給水量を制御することができる。圃場管理サーバ70は、水管理装置10を制御するためのモードとして、表面灌漑モード及び地下灌漑モードを切替可能に構成される。なお表面灌漑モード及び地下灌漑モードについては後述する。
【0052】
また圃場管理サーバ70は、インターネット回線等を介して操作者端末50との間で相互に情報をやり取りすることができる。例えば圃場管理サーバ70は、操作者端末50に操作者が操作可能な画面(
図1に示す圃場設定画面80及びグラフ表示画面90等)を表示させることができる。操作者は、操作者端末50(画面)を操作することで、圃場管理サーバ70から信号を受信して圃場Hの水位等を確認することができる。また操作者は、操作者端末50を操作することで、圃場管理サーバ70へ信号を送信し、圃場Hへの給水を遠隔で操作することができる。なお、操作者端末50に表示される画面については後述する。
【0053】
また圃場管理サーバ70は、所定のサーバと通信することによって、圃場Hを含む地域の気象情報(例えば気温や降水量等)を取得可能に構成される。
【0054】
以下では、表面灌漑モード及び地下灌漑モードについて説明する。
図4に示すように、表面灌漑モードは、地表面H1への給水を管理するためのモードである。表面灌漑モードは、例えば稲作等、地表面H1に水を貯留して作物を生育する際に実行される。表面灌漑モードでは、蓋部15が取り付けられ、地表面H1へ給水可能な状態に切り替えられる。また表面灌漑モードでは、水位水温センサ20が第一位置P1に移動される。
【0055】
圃場管理サーバ70は表面灌漑モードにおいて、第一位置P1に応じて設定される第一の原点G1を基準として表面水位W1を算出する。例えば圃場管理サーバ70は、電極23の静電容量に基づいて電極23のどの部分まで水が浸かっているか検知し、この検知した部分から第一の原点G1までの距離を算出することで表面水位W1を算出する。表面灌漑モードにおいて圃場管理サーバ70は、こうして算出した表面水位W1が圃場Hの作物の生育に適した水位(設定水位)となるように水管理装置10を制御する。
【0056】
例えば圃場管理サーバ70は、算出した表面水位W1が設定水位よりも所定以上低い場合に、表面水位W1が上昇するように水管理装置10を制御する。この際圃場管理サーバ70は、例えば給水栓12aを開いて地表面H1への給水量を増加させる。また例えば圃場管理サーバ70は、算出した水位が設定水位よりも所定以上高い場合に、表面水位W1が下降するように水管理装置10を制御する。この際圃場管理サーバ70は、例えば給水栓12aを閉じて地表面H1への給水量を減少させる。これによって圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20による表面水位W1の測定結果に基づいて、表面水位W1が設定水位となるように圃場Hへの給排水を管理し、作物の生育を適切に行うことができる。例えば、水稲の生育を適切に行うことができる。
【0057】
図5に示すように、地下灌漑モードは、地下H2への給水を管理するためのモードである。地下灌漑モードは、例えば畑作等、地下H2に水を供給して作物を生育する際に実行される。地下灌漑モードでは、蓋部15が取り外され、地下H2へ給水可能な状態に切り替えられる。また地下灌漑モードでは、水位水温センサ20が第二位置P2に移動される。
【0058】
圃場管理サーバ70は地下灌漑モードにおいて、第二位置P2に応じて設定される第二の原点G2を基準として地下水位W2を算出する。例えば圃場管理サーバ70は、電極23の静電容量に基づいて電極23のどの部分まで水が浸かっているか検知し、この検知した部分から第二の原点G2までの距離を算出することで地下水位W2を算出する。地下灌漑モードにおいて圃場管理サーバ70は、こうして算出した地下水位W2が圃場Hの作物の生育に適した水位(設定水位)となるように水管理装置10を制御する。
【0059】
例えば圃場管理サーバ70は、算出した地下水位W2が設定水位よりも所定以上低い場合に、給水栓12aを開いて地下H2への給水量を増加させる。また圃場管理サーバ70は、例えば算出した地下水位W2が設定水位よりも所定以上高い場合に、給水栓12aを閉じて地下H2への給水量を減少させる。これによって圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20による地下水位W2の測定結果に基づいて、地下水位W2が設定水位となるように圃場Hへの給排水を管理し、作物の生育を適切に行うことができる。例えば、大豆等の生育を適切に行うことができる。
【0060】
以下では、圃場管理サーバ70により作成される画面(
図1に示す圃場設定画面80及びグラフ表示画面90)について説明する。
図6から
図8に示す圃場設定画面80及びグラフ表示画面90は、CGI(Common Gateway Interface)プログラム等による動的なWebページである。圃場設定画面80及びグラフ表示画面90は、操作者端末50のブラウザで表示することができる。
【0061】
図6に示す圃場設定画面80は、圃場Hに関する情報を設定するための画面である。圃場設定画面80は、静的表示部81、動的表示部82及びボタン表示部83を具備する。
【0062】
静的表示部81は、後述する地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bの状態に関わらず、表示内容が変わらない(共通の情報を表示する)部分である。静的表示部81は、圃場設定画面80の略上半分に表示される。静的表示部81では、圃場Hの名称(「圃場名」)等を設定することができる。また静的表示部81には、地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bが配置される。
【0063】
地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bは、地下灌漑モード及び表面灌漑モードを切り替えるためのボタンである。地下灌漑ボタン81aは、地下灌漑モードを実行するためのボタンである。水稲ボタン81bは、地表面H1への給水を行う表面灌漑モードを実行し、水稲を生育するためのボタンである。地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bは、オン状態及びオフ状態を切替可能に構成される。
図6及び
図7では、オン状態のボタンが黒塗りで示されると共に、オフ状態のボタンが白塗りで示されている。
【0064】
地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bは、一方のボタンがオン状態に切り替えられた場合に、他方のボタンがオフ状態に自動的に切り替えられるように構成される。操作者は、操作者端末50を操作して地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bの状態を切り替えることで、表面灌漑モード及び地下灌漑モードのうち、実行したい一方の制御モードを選択することができる。
【0065】
動的表示部82は、地下灌漑ボタン81a及び水稲ボタン81bの状態によって表示内容が変わる部分である。動的表示部82は、圃場設定画面80の略下半分に表示される。
【0066】
図6に示すように、地下灌漑ボタン81aがオン状態である場合、動的表示部82には、深さ設定部82a、グラフ設定部82b及びメモ82cが表示される。
【0067】
深さ設定部82aは、水位水温センサ20の深さに関する情報を設定する部分である。深さ設定部82aでは、最大深さ及び最小深さを圃場Hごとに設定することができる。ここで、本実施形態の圃場管理サーバ70は、電極23の中の一部の範囲R(
図3参照)において、水位水温センサ20からの出力値に基づいて圃場Hの水位を算出可能に構成される。深さ設定部82aの最大深さは、上記範囲Rの下限を設定するためのものである。最小深さは、上記範囲Rの上限を設定するためのものである。最小深さは、最大深さが設定された場合に、当該最大深さ(設定値)に応じて自動的に設定される。操作者は、最大深さ及び最小深さを設定することにより、
図3に示す範囲Rを任意に規定することができる。圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードにおいて、こうして規定された範囲Rの中で、地下水位W2を算出する。
【0068】
図6に示すグラフ設定部82bは、後述するグラフ表示画面90に表示される水位グラフ91の水位の上限値及び下限値を設定するための部分である。グラフ設定部82bでは、制御モードごとに上限値及び下限値を設定することができる。
図6に示すように、地下灌漑ボタン81aがオン状態である場合、グラフ設定部82bでは、地下灌漑モードにおける上限値及び下限値を設定することができる。メモ82cは、操作者が任意の情報を入力するための部分である。
【0069】
図7に示すように、水稲ボタン81bがオン状態である場合、動的表示部82には、グラフ設定部82bが表示される。グラフ設定部82bでは、表面灌漑モードにおける水位グラフ91の水位の上限値及び下限値を設定することができる。
【0070】
なお本実施形態の圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードにおいて、どの圃場Hでも同じ範囲R(
図3参照)で表面水位W1を算出するように構成される。このため水稲ボタン81bがオン状態である場合、圃場設定画面80に深さ設定部82aが表示されることはない。
【0071】
ボタン表示部83は、各種ボタンを表示する部分である。ボタン表示部83には、戻るボタン83a及び設定ボタン83bが配置される。
【0072】
戻るボタン83aは、前の画面に戻るためのボタンである。設定ボタン83bは、圃場設定画面80で設定された内容を反映させるためのボタンである。設定ボタン83bが押下された場合、圃場管理サーバ70は、圃場設定画面80で設定された内容をデータセンター60へ送信する。これによってデータセンター60の記憶装置には、圃場設定画面80の設定内容(圃場Hの名称や選択された制御モード等)が記憶される。
【0073】
また圃場管理サーバ70は設定ボタン83bが押下された場合に、
図9に示すフローチャートを実行する。
図9に示すフローチャートは、制御モードを実行するためのものである。以下では制御モードを実行するための処理(フローチャート)を、「モード実行処理」と称する。以下、モード実行処理について説明する。
【0074】
モード実行処理の実行を開始すると、圃場管理サーバ70はステップS110へ移行する。ステップS110において圃場管理サーバ70は、選択されたモードが表面灌漑モードであるか否かを判定する。すなわち圃場管理サーバ70は、
図6及び
図7に示す圃場設定画面80で設定ボタン83bが押下された際に、水稲ボタン81bがオン状態であったか否かを判定する。圃場管理サーバ70は、水稲ボタン81bがオン状態である(表面灌漑モードが選択された)場合に、ステップS120へ移行する。一方圃場管理サーバ70は、水稲ボタン81bがオン状態でない(地下灌漑モードが選択された)場合に、ステップS130へ移行する。
【0075】
ステップS120において圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードを実行する(
図4参照)。圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードを実行することにより、第一の原点G1に基づいて表面水位W1を算出し、当該表面水位W1が設定水位となるように水管理装置10を制御する。圃場管理サーバ70は、ステップS120の処理が終了すると、モード実行処理を終了する。
【0076】
ステップS130において圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードを実行する(
図5参照)。圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードを実行することにより、第二の原点G2に基づいて地下水位W2を算出し、当該地下水位W2が設定水位となるように水管理装置10を制御する。圃場管理サーバ70は、ステップS130の処理が終了すると、モード実行処理を終了する。
【0077】
図8に示すグラフ表示画面90は、圃場Hに関するグラフを表示するための画面である。グラフ表示画面90には、水位グラフ91、水温グラフ92、気温グラフ93、降水量グラフ94及び開度グラフ95が表示される。水位グラフ91等は、横軸が時間、縦軸が水位等の各種情報となっている。
【0078】
水位グラフ91は、水位水温センサ20での水位の測定結果(より詳細には圃場管理サーバ70による水位の算出結果)を示すグラフである。水位グラフ91の縦軸の範囲は、
図6及び
図7のグラフ設定部82bで設定された範囲となる。こうしてグラフ設定部82bにより縦軸の範囲を可変とすることで、表面水位W1や地下水位W2を見易くなるように縦軸の範囲を変更でき、利便性を向上させることができる。
【0079】
水温グラフ92は、水位水温センサ20での水温の測定結果を示すグラフである。気温グラフ93は、気温を示すグラフである。降水量グラフ94は、降水量を示すグラフである。圃場管理サーバ70は、気象情報に基づいて気温グラフ93及び降水量グラフ94を作成して表示する。開度グラフ95は、給水栓12aの開度を示すグラフである。
【0080】
操作者は、グラフ表示画面90を視認することにより、表面水位W1や地下水位W2等の各種情報の履歴をまとめて確認することができる。これによって利便性を向上させることができる。
【0081】
以下では、表面灌漑モードから地下灌漑モードへ切り替える場合を例に挙げ、制御モードを切り替える手順の具体例を説明する。表面灌漑モードから地下灌漑モードへの切り替えは、例えば水稲の収穫が完了した圃場Hで畑作を行う場合等に行われる。
【0082】
操作者は、制御モードを切り替える前に、
図4(a)に示す蓋部15を取り外し、給水桝11から第二給水管16へ水が流通可能な状態に切り替える。また操作者は、制御モードを切り替える前に、水位水温センサ20の位置を第一位置P1から
図5(b)に示す第二位置P2へ切り替えて、水位水温センサ20が地下水位W2を測定可能な状態に切り替える。
【0083】
その後操作者は、操作者端末50を操作することによって制御モードを切り替える。より詳細には操作者は、
図6に示す圃場設定画面80を操作者端末50に表示させる。そして操作者は、圃場設定画面80の地下灌漑ボタン81aをオン状態に切り替えて、設定ボタン83bを押下する。これによって
図9に示すモード実行処理が実行され、地下灌漑モードが実行される(ステップS110:No、ステップS130)。
【0084】
なお操作者は、表面灌漑モードから地下灌漑モードへ切り替える場合と概ね同様の手順により、地下灌漑モードから表面灌漑モードへの切り替えを行うことができる。具体的には操作者は、制御モードを切り替える前に、
図4に示す蓋部15を取り付けると共に、水位水温センサ20を第二位置P2から第一位置P1へ移動させる。そして操作者は、
図6に示す圃場設定画面80の水稲ボタン81bをオン状態にして設定ボタン83bを押下する。
【0085】
このように、本実施形態では、圃場設定画面80の操作を行うことによって、制御モードの切り替えを行うことができる。また表面灌漑モード及び地下灌漑モードにおいて、共通の機器(水管理装置10)を用いて地表面H1及び地下H2に水を供給することができる。これによって操作者は地表面H1及び地下H2の給水を容易に切り替えることができ、利便性を向上させることができる。
【0086】
以上の如く、本実施形態に係る圃場水管理システム1は、圃場Hの地表面H1への給水、及び前記圃場Hの地下H2への給水を管理可能な水管理装置10と、前記水管理装置10を制御可能な圃場管理サーバ70(制御部)と、を具備し、前記圃場管理サーバ70は、前記水管理装置10を制御するための制御モードとして、前記地表面H1への給水を管理する表面灌漑モード(第一制御モード)と、前記地下H2への給水を管理する地下灌漑モード(第二制御モード)と、を切替可能に構成されるものである(
図4及び
図5参照)。
【0087】
このように構成することにより、共通の水管理装置10によって、用途に応じて圃場Hの地表面H1への給水及び地下H2への給水をそれぞれ管理することができるため、利便性を向上することができる。
【0088】
また、前記地表面H1の水位及び前記地下H2の水位をそれぞれ測定可能な水位水温センサ20(水位計)をさらに具備し、前記圃場管理サーバ70は、前記表面灌漑モードにおいて、前記水位水温センサ20により測定された前記地表面H1の水位に基づいて前記地表面H1への給水を管理し、前記地下灌漑モードにおいて、前記水位水温センサ20により測定された前記地下H2の水位に基づいて前記地下H2への給水を管理するものである。
【0089】
このように構成することにより、水位水温センサ20を用いて地表面H1の水位及び地下H2の水位を適切な高さに調整することができる。
【0090】
また、前記水位水温センサ20は、前記地表面H1の水位を測定可能な第一位置P1、及び前記地下H2の水位を測定可能な第二位置P2に移動できるように構成されるものである(
図4(b)及び
図5(b)参照)。
【0091】
このように構成することにより、水位水温センサ20の設置個数を減らしてコストの削減を図ることができる。
【0092】
また、前記圃場管理サーバ70は、前記表面灌漑モードにおいて、前記第一位置P1に応じて設定される第一の原点G1を基準として前記地表面H1の水位を算出し、前記地下灌漑モードにおいて、前記第二位置P2に応じて設定される第二の原点G2を基準として前記地下H2の水位を算出するものである。
【0093】
このように構成することにより、水位水温センサ20の位置に応じた原点を基準として、適切に水位を算出することができる。
【0094】
また、前記水位水温センサ20の測定結果を記憶するデータセンター60の記憶装置(記憶部)をさらに具備するものである。
【0095】
このように構成することにより、地表面H1の水位及び地下H2の水位の履歴を残すことができる。
【0096】
また、前記圃場Hの地表面H1の水温、及び前記圃場Hの地下H2の水温をそれぞれ測定可能な水位水温センサ20(水温計)と、前記水温計の測定結果を記憶するデータセンター60の記憶装置(記憶部)と、をさらに具備するものである。
【0097】
このように構成することにより、地表面H1の水温及び地下H2の水温の履歴を残すことができる。
【0098】
なお、本実施形態に係る圃場管理サーバ70は、制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る水位水温センサ20は、水位計及び水温計の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るデータセンター60の記憶装置は、記憶部の実施の一形態である。
【0099】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、本実施形態では圃場Hの水位の測定結果に基づいて圃場Hへの給水を管理するものとしたが、これに限定されるものではなく、本実施形態とは異なる方法で給水を管理してもよい。例えば、降水量や減水深(単位時間あたりにどの程度圃場Hの水位が減少するか)等に基づいて圃場Hへの給水を管理してもよい。
【0101】
また水位水温センサ20は、第一位置P1及び第二位置P2に移動可能に構成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、移動不能に構成されてもよい。例えば、本実施形態よりも上下幅が長い電極23を用いることによって、上下に移動することなく1つの水位水温センサ20で表面水位W1及び地下水位W2をそれぞれ測定してもよい。また、比較的高い位置に配置されて表面水位W1(地表面H1の水位)を測定可能な第一水位水温センサと、比較的低い位置に配置されて地下水位W2(地下H2の水位)を測定可能な第二水位水温センサとをそれぞれ用いることによって、上下に移動することなく表面水位W1及び地下水位W2を測定してもよい。このように第一水位水温センサと第二水位水温センサとを別途設置することで、制御モードに応じた水位水温センサ20の移動を行う必要がなくなり、両制御モードにおいて表面水位W1及び地下水位W2を容易に測定することができる。
【0102】
またデータセンター60の記憶装置には、水位及び水温等が記憶されるものとしたが、前記記憶装置に記憶される情報は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更可能である。例えばデータセンター60の記憶装置には、水位や水温等に加えて、圃場Hで生育される作物の情報が記憶されてもよい。
図6に示すように、本実施形態の圃場設定画面80には任意に情報を入力可能なメモ82cが表示されるため、このメモ82cを利用して作物の情報をデータセンター60の記憶装置に記憶させることができる。これにより、水位、水温及び作物の履歴を残すことができるため、例えば過去に生育した作物をもう一度生育する場合に履歴を用いて圃場Hの水位を容易に決定することができる。
【0103】
また水位及び水温等の各種情報が記憶される機器は、データセンター60の記憶装置に限定されるものではなく、必要に応じて変更可能である。例えば水位等の各種情報は、操作者端末50や圃場管理サーバ70等に記憶されてもよい。
【0104】
また高さ調整機構30の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
図10(a)には、高さ調整機構30の別例が示される。
図10(a)に示す高さ調整機構30は、第一部材131、第二部材132及び不織布133を具備する。
【0105】
第一部材131は、開口部を上部に向けた有底略筒状に形成される。第一部材131は、地下H2に設置される。第二部材132は、軸線方向を上下方向に向けた略筒状に形成される。第二部材132は、下端面が第一部材131の底部に載置され、第一部材131から上方へ延出するように配置される。第二部材132の内径は、水位水温センサ20のケース21の外径よりも大きく、かつキャップ22の外径よりも小さい。第二部材132の上端面132aは、地表面H1よりも高い位置に位置する。第二部材132には、上下に間隔をあけて複数の通水孔132bが形成される。不織布133は、第一部材131及び第二部材132の外周に巻き付けられる。なお
図10(a)に示す符号Uは、第一部材131及び第二部材132が設置される際に圃場Hに埋め戻された土(埋戻し部分)を示している。
【0106】
図10(a)に示すように、水位水温センサ20は、キャップ22が第二部材132の上端面132aに当接するまで第二部材132に挿入されることにより、第二標線L2が地表面H1と同じ高さに位置するように配置される。これによって水位水温センサ20を容易に第二位置P2に移動させることができる。なお水位水温センサ20は、第一標線L1が地表面H1と同じ高さとなるまで第二部材132から引き抜かれることによって、第一位置P1に移動される。第一位置P1に移動された水位水温センサ20は、所定の保持部材によって保持される。なお不織布133は、必ずしも第一部材131等に巻き付けられる必要はなく、必要に応じて不織布133を巻き付けることなく第一部材131等を圃場Hに埋め込むことも可能である。
【0107】
また
図10(b)に示すように、水位水温センサ20を収容するための部材(
図10(b)では第一収容部材231)をさらに別の部材に収容することも可能である。
図10(b)には、水位水温センサ20を収容する第一収容部材231と、当該第一収容部材231を収容する第二収容部材232とが記載される。これら第一収容部材231及び第二収容部材232には、地下H2の水を内側に流入させるための通水孔231a・232aが形成される。こうして第一収容部材231が第二収容部材232に収容されることにより、第一収容部材231内に土等が入り難くなるため、水位水温センサ20に土等が付着するのを効果的に抑制することができる。
【0108】
また
図11(a)に示すように、土等を受けるための受け部材331~333を水平方向に並べて配置することも可能である。
図11(a)には、通水孔330aが形成される収容部材330が地下H2に設置され、当該収容部材330の内側に第一受け部材331、第二受け部材332及び第三受け部材333が設置される構成が記載される。収容部材330内に流入した水は、第一受け部材331、第二受け部材332及び第三受け部材333の順に流入する。
【0109】
水位水温センサ20は、3つの受け部材331~333のうち、最後に水が流入する(通水孔330aから最も遠い)第三受け部材333の上に配置される。このような構成により、水位水温センサ20の下(第三受け部材333)に土等が溜まるのを抑制し、水位水温センサ20に土等が付着するのを効果的に抑制することができる。
【0110】
また水位水温センサ20は、必ずしも他の部材(
図3に示す収容部材31や
図10(a)に示す第二部材132等)に収容される必要はなく、
図11(b)に示すように、圃場Hに直接埋め込まれてもよい。こうして水位水温センサ20が圃場Hに直接埋め込まれる場合、水位水温センサ20に不織布431又はもみ殻の層等、透水性のある素材が巻き付けられてもよいし、他の部材が巻き付けられることなく圃場Hに埋め込まれてもよい。また水位水温センサ20の下にもみ殻やチップ432等が敷き詰められてもよい。なお
図11(b)に示す符号Uは、水位水温センサ20が埋め込まれる際に圃場Hに埋め戻された土(埋戻し部分)を示している。
【0111】
また本実施形態では、板状部材14は、給水桝11に対する上下位置が手動で調整されるものとしたが、これに限定されるものではなく、圃場管理サーバ70等からの信号に基づいて上下位置が自動で調整されるものであってもよい。
【0112】
また蓋部15は、手動により第二貫通孔11bを開閉するものとしたが、これに限定されるものではなく、圃場管理サーバ70等からの信号に基づいて自動で第二貫通孔11bを開閉するものであってもよい。蓋部15が自動で開閉される場合、圃場設定画面80で選択された制御モードに連動して蓋部15が開閉する構成としてもよい。例えば圃場設定画面80で表面灌漑モードが選択された場合に蓋部15が第二貫通孔11bを閉塞し、地下灌漑モードが選択された場合に蓋部15が第二貫通孔11bを開放する構成としてもよい。
【0113】
次に、第二実施形態に係る圃場水管理システム1について説明する。
【0114】
第二実施形態に係る圃場水管理システム1は、第一実施形態と同様に構成される水管理装置10、水位水温センサ20、高さ調整機構30、通信中継機40、操作者端末50、データセンター60及び圃場管理サーバ70を具備する。第二実施形態では、モード実行処理の後で
図12に示すモード確認処理を行う点で第一実施形態と相違する。以下、相違点について説明する。
【0115】
第一実施形態の具体例で説明したように、水位水温センサ20は、制御モードが切り替えられる前に、高さ位置が変更される。また、制御モードは操作者により手動で選択される。この場合、操作ミス等により水位水温センサ20の高さ位置に対して誤った制御モードが選択されるおそれがある。
【0116】
具体的には、表面水位W1を測定するための第一位置P1(
図4(b)参照)に水位水温センサ20が移動されたにも関わらず、地下H2に給水するための地下灌漑モードが選択されるおそれがある。また、地下水位W2を測定するための第二位置P2(
図5(b)参照)に水位水温センサ20が移動されたにも関わらず、地表面H1に給水するための表面灌漑モードが選択されるおそれがある。
【0117】
そこで本実施形態に係る圃場管理サーバ70は、
図12に示すモード確認処理において、水位水温センサ20の高さ位置に対して誤った制御モードが選択されていると考えられる場合に、操作者に対して所定の報知を行うように構成される。以下、具体的に説明する。
【0118】
圃場管理サーバ70は、
図12に示すモード確認処理の実行を開始すると、ステップS210へ移行する。ステップS210において圃場管理サーバ70は、所定時間が経過するまで圃場Hの水温を算出しながら待機する。ステップS210の待機中、圃場Hの水温は、気温(外気温)の変化に伴って変化する。圃場管理サーバ70は、この水温の変化に基づいて、後述するステップS230・S260で制御モードが適切かどうかを判断する。
【0119】
ここで、地表面H1は、地下H2に比べて気温の変化に応じて水温が変化し易いと考えられる。そこで本実施形態では、ステップS230・S260において、水温の変化量に応じて、水位水温センサ20が地表面H1と地下H2のどちらの水温を測定しているかを推定する。
【0120】
上述のような水温の変化量を算出するために、ステップS210の待機時間として、ある程度気温が変化する時間が設定される。例えば、昼夜の気温の寒暖差に基づく水温の変化量を算出するために、待機時間として少なくとも24時間程度の時間が設定される。ステップS210において圃場管理サーバ70は、前記待機時間が経過するとステップS220へ移行する。
【0121】
ステップS220において圃場管理サーバ70は、
図9に示すステップS110と同様に、選択されたモードが表面灌漑モードであるか否かを判定する。圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードが選択された場合(ステップS220:Yes)、ステップS230へ移行する。一方圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードが選択された場合(ステップS220:No)、ステップS260へ移行する。
【0122】
ステップS230において圃場管理サーバ70は、水温の所定期間における変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。例えば圃場管理サーバ70は、データセンター60と通信することによって、現在(直近)からステップS210で待機を開始した時点(所定時間前)までの水温の測定結果を取得する。そして圃場管理サーバ70は、取得した測定結果の最大値と最小値との差を求めることによって、水温の所定期間における変化量を算出する。
【0123】
例えば、
図12に示すモード確認処理の開始時に水位水温センサ20が第一位置P1に移動されていた場合、ステップS230において圃場管理サーバ70は、地表面H1の水温(表面水温)の変化量を算出する。また例えばモード確認処理の開始時に水位水温センサ20が第二位置P2に移動されていた場合、ステップS230において圃場管理サーバ70は、地下H2の水温(地下水温)の変化量を算出する。
【0124】
ステップS230において圃場管理サーバ70は、こうして算出した水温の変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。上述の如く、表面水温は地下水温よりも気温の変化に伴って変化し易いと考えられる。したがってステップS230で水温の変化量が所定の閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS230:Yes)、水位水温センサ20は、表面水温を測定可能な第一位置P1に配置されると考えられる。この場合圃場管理サーバ70は、ステップS240へ移行する。
【0125】
一方ステップS230で水温の変化量が所定の閾値以下であると判定された場合(ステップS230:No)、水位水温センサ20は、地下水温を測定可能な第二位置P2に配置されると考えられる。この場合圃場管理サーバ70は、ステップS250へ移行する。
【0126】
ステップS240において圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードを継続して実行する。より詳細には、圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20が表面水位W1を測定可能な第一位置P1に配置されると考えられる場合に、地表面H1に給水する表面灌漑モードを実行すべきと判断する。圃場管理サーバ70は、この判断した制御モードと操作者が選択した制御モードとが一致する場合(ステップS220:Yes、ステップS230:Yes)、その制御モード(表面灌漑モード)を実行する。これによって水位水温センサ20が第一位置P1に移動される場合に表面灌漑モードを実行することができる。圃場管理サーバ70は、ステップS240の処理が終了すると、モード確認処理を終了する。
【0127】
ステップS250において圃場管理サーバ70は、モードについての報知を行う。より詳細には、圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20が第二位置P2に配置されると考えられるにも関わらず、地表面H1に給水する表面灌漑モードが選択された場合(ステップS220:Yes、ステップS230:No)、ステップS250へ移行する。この場合、水位水温センサ20の高さ位置に対して誤った制御モードが選択されていると考えられるため、圃場管理サーバ70は、ステップS250において、例えば制御モードの選択内容を確認することを促すメッセージ等を操作者端末50に表示させる。これによって操作者に選択ミスを気づかせることができる。圃場管理サーバ70は、ステップS250の処理が終了すると、モード確認処理を終了する。
【0128】
地下灌漑モードが選択される場合(ステップS220:No)に移行するステップS260において圃場管理サーバ70は、水温の所定期間における変化量が所定の閾値以下であるか否かを判定する。圃場管理サーバ70は、水温の変化量が所定の閾値以下である場合(ステップS260:Yes)、ステップS270へ移行する。一方圃場管理サーバ70は、水温の変化量が所定の閾値よりも大きい場合(ステップS260:No)ステップS250へ移行する。
【0129】
ステップS270において圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードを継続して実行する。より詳細には、圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20が第二位置P2に配置されると考えられる場合に、地下灌漑モードを実行すべきと判断する。圃場管理サーバ70は、この判断した制御モードと操作者が選択した制御モードとが一致する場合(ステップS220:No、ステップS260:Yes)、その制御モード(地下灌漑モード)を実行する。これによって水位水温センサ20が第二位置P2に移動される場合に地下灌漑モードを実行することができる。圃場管理サーバ70は、ステップS270の処理が終了すると、モード確認処理を終了する。
【0130】
一方圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20が第一位置P1に配置されると考えられるにも関わらず、地下灌漑モードが選択された場合(ステップS220:No、ステップS260:No)、ステップS250へ移行する。この場合、水位水温センサ20の高さ位置に対して誤った制御モードが選択されていると考えられるため、圃場管理サーバ70は、モードについての報知を行う。当該報知により操作者に選択ミスを気づかせることができる。
【0131】
本実施形態に係るモード確認処理を実行することにより、水位水温センサ20の高さ位置に合った適切な制御モードを実行することができ、利便性を向上することができる(ステップS240・S270)。また圃場管理サーバ70は、制御モードの選択ミスが疑われる場合に報知を行うことができる(ステップS250)。また圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20が移動されることなく制御モードが切り替えられようとした場合にも、報知を行うことができる(ステップS250)。
【0132】
なお圃場管理サーバ70は、ステップS250へ移行した場合、報知を行うのではなく、水温の変化量に基づいて制御モードを切り替えてもよい。例えば、ステップS230において水温の変化量が小さい場合(ステップS230:No)、水位水温センサ20が第二位置P2(
図5(b)参照)に配置された状態で表面灌漑モードが実行されていると考えられる。この場合、ステップS250において圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードを継続するのではなく、地下灌漑モードを実行してもよい。また例えば、ステップS260において水温の変化量が大きい場合(ステップS260:No)、ステップS250において圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードを継続するのではなく、表面灌漑モードを実行してもよい。
【0133】
こうして水温の変化量に基づいて制御モードを切り替えることによって、圃場管理サーバ70は、制御モードの選択ミス等が疑われる場合でも、水位水温センサ20の高さ位置に合った適切な制御モードを自動的に実行することができる。なお圃場管理サーバ70は、水温の変化量に基づいて制御モードを実行した場合、操作者に所定の報知を行ってもよい。例えば、操作者が選択した制御モードとは異なる制御モードが実行されたことを伝えるメッセージを、操作者端末50に表示させてもよい。
【0134】
また圃場管理サーバ70は、
図12に示すモード確認処理が終了し、水位水温センサ20の高さ位置に合った制御モードが実行された後で、水温を利用して水位水温センサ20の異常を検知可能である。例えば、制御モードの実行中に何らかの理由(例えば地震や悪戯等)により水位水温センサ20の位置がずれると、水温の測定結果も変化すると考えられる。
【0135】
そこで圃場管理サーバ70は、制御モードにおいて圃場Hの水位を設定水位に調整する際に、所定期間における水温の変化量を算出し、当該変化量と所定の閾値とを比較する。そして圃場管理サーバ70は、閾値の比較結果と制御モードとに基づいて、水位水温センサ20の異常を検知する。
【0136】
例えば表面灌漑モードでは、水位水温センサ20が第一位置P1に移動されるため(
図4参照)、通常であれば水温の変化量が比較的大きいと考えられる。当該表面灌漑モードにおいて水位水温センサ20に異常が生じ、水位水温センサ20の位置が低くなった(地中に埋もれた)場合、水温の変化量が小さくなると考えられる。したがって圃場管理サーバ70は、表面灌漑モードにおいて水温の変化量が所定の閾値以下である場合、水位水温センサ20の異常を検知する。
【0137】
また例えば地下灌漑モードでは、水位水温センサ20が第二位置P2に移動されるため(
図5参照)、通常であれば水温の変化量が比較的小さいと考えられる。当該地下灌漑モードにおいて水位水温センサ20に異常が生じ、水位水温センサ20の位置が高くなった(地表面H1に露出した)場合、水温の変化量が大きくなると考えられる。したがって圃場管理サーバ70は、地下灌漑モードにおいて水温の変化量が所定の閾値よりも大きい場合、水位水温センサ20の異常を検知する。
【0138】
圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20の異常を検知した場合に、操作者に異常を報知することにより、水位水温センサ20を速やかに適切な位置に戻すことができる。
【0139】
なお本実施形態では、
図12に示すモード確認処理や異常検知において、水温の変化量が大きいか否かを判定する際に静的な閾値を用いるものとしたが、これに限定されるものではなく、各種情報に基づいて動的に変更された閾値を用いることも可能である。例えば圃場管理サーバ70は、予め過去(1年前等)における圃場Hの水温の変化量を算出し、当該算出結果に基づいて閾値を補正する。これにより圃場管理サーバ70は、水温の履歴を考慮して、水温の変化量が大きいか否かを圃場Hごとに適切に判定することができる。
【0140】
また、水温の履歴ではなく、気象情報に基づいて前記閾値を補正することも可能である。より詳細には最高気温と最低気温の差が比較的小さい場合、水温の変化量は比較的小さいと考えられる。また最高気温と最低気温の差が比較的大きい場合、水温の変化量は比較的大きいと考えられる。そこで、圃場管理サーバ70は、水温の変化量が大きいか否かを判定する際に所定のサーバと通信し、水温の変化量と同一期間(例えば過去24時間)における最高気温及び最低気温を取得する。圃場管理サーバ70はこうして取得した最高気温と最低気温との差を用いて、水温の変化量が大きいか否かを判定する際の閾値を補正する。これにより圃場管理サーバ70は、気象情報に基づいて補正した閾値を用いて水温の変化量が大きいか否かを精度よく判定することができる。
【0141】
また圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20の異常検知において、水温の変化量と閾値とを比較するのではなく、その他の手法を用いることによって水温の変化量が大きいか否かを判定することも可能である。例えば圃場管理サーバ70は、機械学習や、過去の水温の変化量との乖離度合いに基づいて、水温の変化量が大きいか否かを判定することも可能である。
【0142】
まず、機械学習による水温の変化量の判定の一例について説明する。水位水温センサ20に異常がある場合の水温の変化量と、水位水温センサ20に異常がない場合の水温の変化量とを準備し、これら水温の変化量と異常の有無との関係を予め教師あり学習により圃場管理サーバ70に学習させる。これによって圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20に異常がある場合の水温の変化量の特徴と、異常がない場合の水温の変化量の特徴とを学習する。圃場管理サーバ70は、こうして学習した特徴を利用して水位水温センサ20に異常があるか否かを判定することにより、水位水温センサ20の異常を精度よく検知することができる。
【0143】
次に、水温の変化量の乖離度合いによる水温の変化量の判定の一例について説明する。圃場管理サーバ70は、予め過去(1年前等)の水温の変化量を算出する。そして圃場管理サーバ70は、算出した過去の水温の変化量と現在の水温の変化量とを比較して、現在の水温の変化量が過去の水温の変化量に対して大きく異なる場合に、水位水温センサ20に異常が生じていると判定する。これによって圃場管理サーバ70は、水位水温センサ20の異常を精度よく検知することができる。
【0144】
以上の如く、本実施形態に係る圃場水管理システム1は、圃場Hの地表面H1への給水、及び前記圃場Hの地下H2への給水を管理可能な水管理装置10と、前記地表面H1の水位及び水温を測定可能な第一位置P1、並びに前記地下H2の水位及び水温を測定可能な第二位置P2に移動できるように構成される水位水温センサ20(測定装置)と、前記水位水温センサ20の測定結果に基づいて前記水管理装置10を制御可能な圃場管理サーバ70(制御部)と、を具備し、前記圃場管理サーバ70は、前記水管理装置10を制御するための制御モードとして、前記地表面H1への給水を管理する表面灌漑モードと、前記地下H2への給水を管理する地下灌漑モードと、を実行可能に構成され、前記水位水温センサ20による水温の測定結果に基づいて、実行する制御モードを判断するものである。
【0145】
このように構成することにより、水位水温センサ20の位置に合った制御モードを自動的に実行することができ、利便性を向上することができる。また水位水温センサ20の測定結果に基づいて地表面H1及び地下H2への給水を適切に行うことができる。
【0146】
また、前記圃場管理サーバ70は、前記水位水温センサ20により測定される水温の所定期間における変化量に基づいて、実行する前記制御モードを判断するものである(ステップS230・S260)。
【0147】
このように構成することにより、水位水温センサ20の位置を精度よく判定できるため、水位水温センサ20の位置に合った制御モードを実行し易くなる。これによって圃場Hへの給水をより適切に管理することができる。
【0148】
また、操作者の操作によって前記制御モードを選択可能な操作者端末50(操作部)をさらに具備し、前記圃場管理サーバ70は、前記操作者端末50で選択された制御モードと、前記水温の測定結果に基づいて判断した制御モードと、が互いに異なるモードである場合に所定の報知を行うものである(ステップS250)。
【0149】
このように構成することにより、操作者端末50で選択された制御モードと圃場管理サーバ70で判断された制御モードとが異なる場合に報知を行える。
【0150】
また、操作者の操作によって前記制御モードを選択可能な操作者端末50(操作部)をさらに具備し、前記圃場管理サーバ70は、前記操作者端末50で選択された制御モードと、前記水温の測定結果に基づいて判断した制御モードと、が互いに異なるモードである場合、前記水温の測定結果に基づいて判断した制御モードを実行するものである。
【0151】
このように構成することにより、操作者端末50で選択された制御モードに関わらず、圃場管理サーバ70で判断された制御モードを実行することができる。
【0152】
また、前記圃場管理サーバ70は、前記表面灌漑モード及び前記地下灌漑モードにおいて、前記水温の測定結果に基づいて前記水位水温センサ20の異常を検知するものである。
【0153】
このように構成することにより、水温の測定結果を利用して水位水温センサ20の異常を確認できる。
【0154】
なお、本実施形態に係る水位水温センサ20は、測定装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る圃場管理サーバ70は、制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る操作者端末50は、操作部の実施の一形態である。
【0155】
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0156】
例えば本実施形態では、水温の変化量に基づいて制御モードの選択ミスを判定するものとしたが、この選択ミスの判定に用いる情報は水温の変化量に限定されるものではない。例えば圃場管理サーバ70は、水温の平均値や最大値や最小値等に基づいて選択ミスを判定してもよい。
【0157】
また水位水温センサ20の設置場所は、定期的に変更されてもよい。また水位水温センサ20の設置場所が変更される場合、圃場管理サーバ70は、
図12に示すモード確認処理(ステップS230・S260)や水位水温センサ20の異常検知において、水位水温センサ20の設置場所を考慮して水温の変化量が大きいか否かを判定してもよい。以下、
図13を例に挙げて具体的に説明する。
【0158】
図13に示す水位水温センサ20は、過去に地点A及び地点Bに設置されていたものが、地点Cへと移動されたものである。
図13では地点Bは、地点Aよりも地点Cに近いものとなっている。データセンター60の記憶装置には、地点Aにおける水温の測定結果、地点Bにおける水温の測定結果、及び地点A~Cの場所の情報(緯度や経度)がそれぞれ記憶される。これによって水温の履歴を場所ごとに管理することができる。また本実施形態では、水位水温センサ20によって圃場Hの水位も測定されている。当該水位の測定結果(測定値)も、データセンター60の記憶装置に記憶される。これによって、水位及び水温の履歴をそれぞれ管理することができる。
【0159】
圃場管理サーバ70は、過去の水位水温センサ20が設置されていた地点A及び地点Bのうち、地点Cに近い一方(地点B)における過去の水温の変化量を算出し、当該算出結果に基づいて水温の変化量が大きいか否かを判定する際の閾値を補正する。これにより、圃場管理サーバ70は、
図12に示すモード確認処理や水位水温センサ20の異常検知において、過去の設置場所を考慮して水温の変化量が大きいか否かを適切に判定することができる。
【0160】
以上の如く、前記圃場管理サーバ70は、過去に記憶した、前記水位水温センサ20による水温の測定結果、又は、前記水位水温センサ20により水温が測定された場所(水位水温センサ20の設置場所)の情報の少なくとも一方に基づいて、前記水位水温センサ20の異常を検知するものである。
【0161】
このように構成することにより、履歴(データセンター60の記憶装置の情報)を用いて水位水温センサ20の異常を検知することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 圃場水管理システム
10 水管理装置
70 圃場管理サーバ
H 圃場
H1 地表面
H2 地下