(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003861
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】出隅コーナー材および出隅構造
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E04F19/04 101D
E04F19/04 102D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103171
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】稲木 翔一
(57)【要約】
【課題】見栄えの良い取付状態が得られると共に、巾木または廻り縁が過度に差し込まれないようにして変形や破損を防止できる出隅コーナー材を提供する。
【解決手段】平面視湾曲状の表面中央部11aと、その両側から互いに直交する方向に延長する一対の表面平板部11b,11cとからなる表面板と、一対の表面平板部の各々に対して巾木1a,1bの厚さに相当する間隔を配して平行に延長する一対の裏面平板部12a,12bからなる裏面板12とを有する出隅コーナー材において、表面中央部と裏面平板部との間の間隔が巾木の厚さより小さくなる位置より手前に突当面14c,14dが位置するように設けられる突当部14a,14bを有する。突当部は、巾木の凹溝2a,2bに嵌合するように表面板の裏面側に形成した凸条11dから突出するように設けることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の出隅において巾木または廻り縁の端部同士が直交するコーナー部に設置して該端部をカバーして仕上げるために用いられる出隅コーナー材であって、平面視湾曲状または傾斜面状の表面中央部と、該表面中央部の両側から互いに直交する方向に延長する一対の表面平板部とからなる表面板と、表面平板部に対して巾木または廻り縁の厚さに相当する間隔を配して平行に延長する少なくとも一の裏面平板部からなる裏面板と、表面平板部と裏面平板部の間に挿入された巾木または廻り縁の端部が当接する突当面を有する突当部と、を有してなり、突当部の突当面は、表面中央部と裏面平板部との間の間隔が巾木または廻り縁の厚さより小さくなる位置より手前に設けられることを特徴とする、出隅コーナー材。
【請求項2】
表面板の一対の表面平板部および表面中央部の裏面側に、巾木または廻り縁に形成される凹溝に嵌合する凸条が連続して形成され、前記突当部は該凸条から突出して設けられることを特徴とする、請求項1記載の出隅コーナー材。
【請求項3】
表面板の表面中央部が、該出隅コーナー材が設置される壁の出隅形状に略合致する形状を有することを特徴とする、請求項1または2記載の出隅コーナー材。
【請求項4】
壁と床との取り合い部に設けられる巾木または壁と天井との取り合い部に設けられる廻り縁と、壁の出隅において巾木または廻り縁の端部同士が直交するコーナー部に設置して該端部をカバーして仕上げるために用いられる出隅コーナー材と、を有してなる出隅構造であって、該出隅コーナー材が請求項1ないし3のいずれか記載の出隅コーナー材であることを特徴とする、出隅構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の出隅において巾木または廻り縁の端部同士が直交するコーナー部に設置して該端部をカバーして仕上げるために用いられる出隅コーナー材に関し、さらに、該出隅コーナー材を用いて形成される出隅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
壁と床との取り合い部に設けられる巾木または壁と天井との取り合い部に設けられる廻り縁は、壁の出隅において2つの部材の端部同士が直交状態に突き合わされることになるため、該端部同士の間隔や継目を隠蔽して見栄え良く仕上げるために出隅コーナー材が用いられる。
【0003】
また、安全性やデザイン性などを考慮して、壁の出隅を直角ではなく丸みを帯びた形状や鈍角に付き合わせた形状などにすることがあり、その際には、壁の出隅形状と略同形状の出隅コーナー材を用いることが好ましい。たとえば、特許文献1には、略直交して配置される一対の平板部(第1の帯状部2)の間に平面視略1/4半円状であって曲率半径が巾木または廻り縁の厚みと略同等である湾曲部(第2の帯状部3)が形成された出隅コーナー材が記載されている。この出隅コーナー材は、両面テープや接着剤などを用いて平板部の裏面を巾木または廻り縁の表面に貼着することによって固定される(段落0014)。
【0004】
また、この出隅コーナー材には、一方の平板部と湾曲部との境目にリブ10が内方に向けて突出するように形成されており、該一方の平板部の裏面側に挿入された一方の巾木の先端はリブの側面に突き当たり、他方の平板部の裏面側に挿入された他方の巾木の先端はリブの先端に突き当たって位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-203645号公報
【特許文献2】特開2014-070360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術による出隅コーナー材は、巾木に対して両面テープや接着剤で固定されるものであるため、掃除機の先端が強く衝突したようなときに剥がれて外れてしまうことがあった。また、これらの粘着力・接着力が経年劣化によって低下したときに脱落しやすくなる。
【0007】
また、出隅コーナー材は、巾木に対する取付作業の容易性、巾木との馴染み性、加工の容易性、軽量性などの要請から、一般にプラスチックを原料として一体成型されることが多いところ、上記従来技術による出隅コーナー材が同様にして作製される場合、一方の平板部と湾曲部との境目から内方に所定長さ(その先端が他方の巾木に対する突き当て部となる位置まで)突出するように形成しなければならないリブの強度が不十分となる。このため、該一方の平板部の裏面側に一方の巾木を挿入したときに過度に強くリブ側面に押し付けたときに、リブが変形または破損する恐れがあり、巾木を挿入したときの位置決め機能が損なわれてしまう。
【0008】
従来技術による出隅コーナー材の中には、特許文献2に例示されるように、巾木の厚さに略相当する間隔を配して略平板状の表面板と裏面板とを有し、これらの間に巾木の端部を挿入して挟持するように構成されたものがあるが、このような構成の出隅コーナー材において、出隅に相当する部分が湾曲状に形成されたものは従来技術に存在しない。また、壁の出隅が平面視直角ではなく湾曲状や傾斜面状などに形成されている場合において、これに合致するように形成された出隅コーナー材も、従来技術には存在しない。
【0009】
特許文献1記載のように表面板において一対の平板部の間に湾曲部が形成された出隅コーナー材について、特許文献2記載のように裏面板を設け、表面板(平板部)と裏面板との間に巾木の端部を挟持するようにした場合、巾木の端部を差し込んでいくと、表面板(平板部)と裏面板との間に所定の間隔(巾木の厚さと略同一または若干広い)が保持されている領域においてはスムーズに差し込むことができるが、その先端が表面板の平板部と湾曲部との境界を越えた時点から裏面板との間の間隔が徐々に狭くなり、ある時点で巾木の厚さより小さくなる。したがって、巾木を差し込み過ぎると、出隅コーナー材が変形して表面板と幅木表面との間に間隔が生じて見栄えが低下したり、出隅コーナー材が破損する恐れがある。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上記した従来技術の不利欠点を解消して、見栄えの良い取付状態が得られると共に、巾木または廻り縁が過度に差し込まれないようにして変形や破損を防止できる出隅コーナー材を提供し、さらにこの出隅コーナー材を用いて形成される出隅構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、壁の出隅において巾木または廻り縁の端部同士が直交するコーナー部に設置して該端部をカバーして仕上げるために用いられる出隅コーナー材であって、平面視湾曲状または傾斜面状の表面中央部と、該表面中央部の両側から互いに直交する方向に延長する一対の表面平板部とからなる表面板と、表面平板部に対して巾木または廻り縁の厚さに相当する間隔を配して平行に延長する少なくとも一の裏面平板部からなる裏面板と、表面平板部と裏面平板部の間に挿入された巾木または廻り縁の端部が当接する突当面を有する突当部と、を有してなり、突当部の突当面は、表面中央部と裏面平板部との間の間隔が巾木または廻り縁の厚さより小さくなる位置より手前に設けられることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の出隅コーナー材において、表面板の一対の表面平板部および表面中央部の裏面側に、巾木または廻り縁に形成される凹溝に嵌合する凸条が連続して形成され、前記突当部は該凸条から突出して設けられることを特徴とする。
【0013】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の出隅コーナー材において、表面板の表面中央部が、該出隅コーナー材が設置される壁の出隅形状に略合致する形状を有することを特徴とする。
【0014】
本願の請求項4に係る発明は、壁と床との取り合い部に設けられる巾木または壁と天井との取り合い部に設けられる廻り縁と、壁の出隅において巾木または廻り縁の端部同士が直交するコーナー部に設置して該端部をカバーして仕上げるために用いられる出隅コーナー材と、を有してなる出隅構造であって、該出隅コーナー材が請求項1ないし3のいずれか記載の出隅コーナー材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に係る発明によれば、表面平板部と裏面平板部との間に巾木または廻り縁の端部を挟んで納めるように構成された出隅コーナー材において、平面視湾曲状または傾斜面状に形成された表面中央部と裏面平板部との間の間隔が巾木または廻り縁の厚さより小さくなる位置より手前に突当面が位置するように突当部が設けられるので、巾木または廻り縁を差し込んでいったときに適正な位置でその先端が突当面に突き当たり、それ以上に差し込まれることがない。したがって、出隅コーナー材を変形させてしまうことによって表面板と巾木または廻り縁の表面との間に間隔が生じて見栄えが低下したり、出隅コーナー材が破損したりすることを未然に防止することができると共に、巾木または廻り縁を施工する際の作業性が向上する。
【0016】
本願の請求項2に係る発明によれば、突当部が表面板裏面側の凸条に設けられるので、表面平板部と裏面平板部との間に巾木または廻り縁を差し込んでいったときに大きな荷重が突当面に作用しても、これに耐える十分な強度を与えることができ、出隅コーナー材の変形や破損を効果的に防止することができる。
【0017】
本願の請求項3に係る発明によれば、壁の出隅が平面視湾曲状や傾斜面状などの形状を有する場合に、該出隅形状に略合致する表面中央部を有する出隅コーナー材が用いられるので、壁の出隅形状とのデザイン性に統一感を持たせることができる。
【0018】
本願の請求項4に係る発明によれば、壁の出隅形状との関係においてデザイン性を高めた出隅構造を得ることができる。たとえば、壁の出隅が平面視湾曲状または傾斜面状に形成されている場合において、この出隅形状に略合致する表面中央部を有する出隅コーナー材を用いることにより、壁の出隅において壁面から床面または天井にかけてデザイン性に統一感を持たせた出隅構造が得られる。また、出隅コーナー材の表面中央部を、壁の出隅形状とは異なる形状に形成することにより、出隅コーナー材が装飾材としての機能を兼ね備えたものとなり、斬新なデザイン性を有する出隅構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による巾木用出隅コーナー材を表面側から見下ろした斜視図である。
【
図2】同巾木用出隅コーナー材を反対側(壁内)から見下ろした斜視図である。
【
図3】同巾木用出隅コーナー材を巾木が挿入される一端側から見た斜視図である。
【
図4】同巾木用出隅コーナー材の水平断面図である。
【
図5】
図4矢印方向から見た同巾木用出隅コーナー材の端面図である。
【
図6】同巾木用出隅コーナー材を用いた巾木出隅構造を表面側から見下ろした斜視図である。
【
図7】同巾木出隅構造を反対側(壁内)から見下ろした斜視図である。
【
図8】同巾木出隅構造の施工方法を水平断面図で示す説明図である。
【
図9】本発明の他の実施形態(実施例2)による廻り縁用出隅コーナー材を表面側から見上げた斜視図である。
【
図10】同廻り縁用出隅コーナー材を反対側(壁内)から見上げた斜視図である。
【
図11】同廻り縁用出隅コーナー材を用いた廻り縁出隅構造を表面側から見上げた斜視図である。
【
図12】同廻り縁出隅構造を反対側(壁内)から見上げた斜視図である。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態(実施例3)による巾木用出隅コーナー材水平断面図である。
【
図14】
図13矢印方向から見た同巾木用出隅コーナー材の端面図である。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態(実施例4)による巾木用出隅コーナー材水平断面図である。
【
図16】
図15矢印方向から見た同巾木用出隅コーナー材の端面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に幾つかの実施例を挙げて、本発明の出隅コーナー材について詳しく説明する。
【実施例0021】
本発明の一実施形態(実施例1)による巾木用出隅コーナー材(以下、単に「コーナー材」と言う。)について、
図1ないし
図7を参照して以下に説明する。
【0022】
このコーナー材10は、厚さ7mm、高さ51mmであって、その全長に亘って水平方向に連続する凹溝2a,2bが表面に形成された巾木1a,1bの出隅を納めるために用いるものであり、概して、表面板11と、裏面板12と、上面板13と、一対の突当部14a,14bと、を有してなる。
【0023】
表面板11は、厚さ0.8mm、高さ52mmの薄板から形成され、平面視にて外側に膨らむ湾曲状(半径15mmの1/4円弧状)の表面中央部11aと、表面中央部11aの両側から互いに直交する方向に延長する一対の表面平板部11b,11cとからなる。表面板11の裏面側には、巾木1a,1bの凹溝2a,2bに嵌合する形状および寸法を有する凸条11dが、表面中央部11aおよび表面平板部11b,11cに亘って連続して形成されており、表面板11の表面側には、この凸条11dに対応する凹条11eが現出している。
【0024】
裏面板12は、厚さ0.8mm、高さ38mmの薄板から形成され、表面平板部11b,11cに対してそれぞれ巾木1a,1bの厚さに相当する間隔15(=7.1mm)を配して平行に延長する一対の裏面平板部12a,12bからなる。裏面板12の下端は表面板11の下端と略同じ高さ位置にあり、その高さの違い(14mm)により上端は表面板11の上端より低い位置にあって、この実施例では表面板裏面側の凸条11dをわずかに超えた上方位置で終端している。また、裏面平板部12aと裏面平板部12bは幅(水平方向長さ)が異なっており、裏面平板部12bの幅(水平方向長さ)は33mmであって、その表面側に位置する表面平板部11cから外方への突出幅は3mmにすぎないが、裏面平板部12aの幅は46.2mmであって、その表面側に位置する表面平板部11bから外方への突出幅が16mmとされている。裏面平板部12bを表面平板部11cより幅方向外側に突出させているのは、巾木1bの差込作業(
図8(d))を容易にするためであり、上記例(3mm)のようにわずかな突出寸法であってもこの目的を達成することができる。また、裏面平板部12aを表面平板部11bより大きく幅方向外側に突出させているのは、
図8を参照して後述するように、巾木1aと共に出隅コーナー材10を壁の出隅に固定する際(
図8(c))にフィニッシュネイル8,8を打ち込むスペースを確保するためである。
【0025】
上面板13は、厚さ0.5mm、幅7.1mmの薄板から形成され、表面板11の全幅に亘ってその上端から裏面方向に突出延長している。上面板の内縁は、壁3の出隅形状に略合致した形状を有しており、施工状態(
図6,
図7)において、巾木1a,1bの上端を覆って、このコーナー材10の内部を隠蔽する役割を果たす。
【0026】
突当部14a,14bは、表面平板部11b,11cと裏面平板部12a,12bの間に挿入された巾木1a,1bの端部が当接する突当面14c,14dを有する。この実施例では、突当部14a,14bは、水平断面が各辺2mmの二等辺三角形であり、高さが2mmの略三角柱の形状を有する部材であって、該三角柱形状において直角をなす側面の一方を表面平板部11b,11cに当接させ、他方の側面(突当面14c,14d)が巾木挿入方向(
図4矢印方向)の反対方向に向かって表面平板部11b,11cに対して略垂直面となる向きで、下記の所定位置に設けられる。
【0027】
すなわち、突当部14a,14bは、その突当面14c,14dが、表面中央部11aと裏面平板部21a,21bとの間の間隔が巾木1a,1bの厚さより小さくなる位置より手前に設けられる。表面中央部11aは断面1/4円弧状に形成されているので、巾木1a,1bが挿入される表面板11と裏面板12との間の間隔15は、平行に設けられる表面平板部11b,11cと裏面平板部12a,12bとの間の領域においては同一寸法であるが、表面中央部11aの領域に入ると、巾木挿入方向Xに向かうにつれて徐々に裏面平板部12a,12bとの間の間隔が狭くなる。この実施例では、表面平板部11b,11cと裏面平板部12a,12bとの間の間隔15が7.1mm、巾木1a,1bの厚さが7mmであるから、この差の0.1mm分だけ、表面平板部11b,11cから表面中央部12aに入り込んだ位置を突当面14c,14dの最奥位置とする範囲内で、突当部14a,14bが配置される。図示では、表面平板部11b,11cと表面中央部12aとの略境界地点に突当面14c,14dが配置されるように、突当部14a,14bが設けられている。
【0028】
次に、このコーナー材10を用いて巾木1a,1bを壁3と床4の出隅に納めて巾木出隅構造(
図6,
図7)を仕上げる際の施工について、
図1~
図7と共に
図8を参照して説明する。
【0029】
図8(a)のコーナー材10を用意して、その一端から、一方の巾木1aを、コーナー材10の表面平板部11bと裏面平板部12aの間の間隔15に差し込み、その先端を、突当部14aの突当面14cに突き当てて、接着などで固定する。この状態が
図8(b)に示されており、コーナー材10の一端に巾木1aが固定されて一体となっているが、他端には巾木1bがセットされていない。
【0030】
次いで、巾木1aが一端に固定されたコーナー材10を壁3の出隅に設置する。図示の例では、下地桟5の両側面にそれぞれ石膏ボード6a,6bが貼り付けられると共に、これら石膏ボード6a,6bの間の出隅には断面1/4円弧状の湾曲面を有する長尺状のスペーサ7が床面から天井面にかけて配置されて断面略1/4円弧の湾曲状の出隅を有する壁3が構成されており、コーナー材10の裏面平板部12aを石膏ボード6aの外側面に当接し、表面中央部12aの湾曲面がスペーサ7の湾曲面と略同心状になる位置に位置決めし、巾木1aの表面凹溝2a内の任意箇所において、任意数のフィニッシュネイル8,8を巾木1a、表面平板部12bおよび石膏ボード6aに順次に貫通させて下地桟5に打ち込むことにより、コーナー材10と巾木1aが壁3に固定される(
図8(c))。裏面平板部12aは表面平板部11bより大きく外側に張り出しているので、フィニッシュネイル8,8を打ち込むスペースが十分に確保される。
【0031】
次いで、他方の巾木1bを石膏ボード6bの外側面に当接させてスライドさせながら、上記のようにして壁3の出隅に固定されたコーナー材10の他端、すなわち、表面平板部11cと裏面平板部12bの間から差し込み、その先端が、突当部14bの突当面14dに突き当たった位置で、巾木1bの表面凹溝2b内の任意箇所において、任意数のフィニッシュネイル9,9を巾木1bおよび石膏ボード6bに順次に貫通させて下地桟5に打ち込むことにより、巾木1bが壁3およびコーナー材10に対して固定される(
図8(d))。巾木1bを表面平板部11cと裏面平板部12bの間に差し込む際には、木質や合成樹脂などの可撓性材料で形成されている巾木1bを撓ませながらその先端を差し込むことができる。
【0032】
図8(c)の時点で、既にコーナー材10は巾木1aと共にフィニッシュネイル8,8で壁3の出隅に固定されているので、
図8(d)ではコーナー材10を固定する必要はなく、巾木1bを固定することによって、裏面平板部12bは巾木1bと石膏ボード6bの間に挟まれて固定され、表面平板部11bは巾木1bの端部表面の上に実質的に間隔なく覆い被さった状態となる。すなわち、裏面板12の一対の裏面平板部12a,12bのうち、後に施工する巾木1bを収める側の裏面平板部12bについては、フィニッシュネイルを打ち込む必要がなく、したがって、裏面平板部12aのように表面平板部11aから大きく張り出させてフィニッシュネイル打ち込みのためのスペースを確保する必要もない。このため、図示実施例では、裏面平板部12bは、表面平板部11bからの張り出しがほとんど無い幅として、材料コストを抑えているが、裏面平板部12bについても、裏面平板部12aと同様に、表面平板部11bから大きく側方に張り出させて、この張り出し部にフィニッシュネイル9,9を打ち込んで、巾木1bと共に裏面平板部12aを固定するようにしても良い。
このコーナー材30は、厚さ7mm、高さ35mmであって、その全長に亘って水平方向に連続する凹溝22a,22bが表面に形成された廻り縁21a,21bの出隅を収めるために用いるものであり、概して、表面板31と、裏面板32と、下面板33と、一対の突当部34a,34bと、を有してなる。
表面板31は、厚さ0.8mm、高さ36mmの薄板から形成され、平面視湾曲状(半径15mmの1/4円弧状)の表面中央部31aと、表面中央部31aの両側から互いに直交する方向に延長する一対の表面平板部31b,31cとからなる。表面板31の裏面側には、廻り縁21a,21bの凹溝22a,22bに嵌合する形状および寸法を有する凸条31dが、表面中央部31aおよび表面平板部31b,31cに亘って連続して形成されており、表面板31の表面側には、この凸条31dに対応する凹条31eが現出している。
突当部34a,34bは、表面平板部31b,31cと裏面平板部32a,32bの間に挿入された廻り縁21a,21bの端部が当接する突当面34c,34dを有する。この実施例では、突当部34a,34bは、水平断面が各辺2mmの二等辺三角形であり、高さが2mmの略三角柱の形状を有する部材であって、該三角柱形状において直角をなす側面の一方を表面平板部31b,31cに当接させ、他方の側面(突当面)が廻り縁挿入方向の反対方向に向かって表面平板部31b,31cに対して略垂直面となる向きで、下記の所定位置に設けられる。
すなわち、突当部34a,34bは、その突当面34c,34dが、表面中央部31aと裏面平板部32a,32bとの間の間隔が廻り縁21a,21bの厚さより小さくなる位置より手前に設けられる。表面中央部31aは断面1/4円弧状に形成されているので、廻り縁21a,21bが挿入される表面板31と裏面板32との間の間隔は、平行に設けられる表面平板部31b,31cと裏面平板部32a,32bとの間の領域においては同一寸法であるが、表面中央部31aの領域に入ると、廻り縁挿入方向に向かうにつれて徐々に裏面平板部32a,32bとの間の間隔が狭くなる。この実施例では、表面平板部31b,31cと裏面平板部32a,32bとの間の間隔が7.1mm、廻り縁21a,21bの厚さが7mmであるから、この差の0.1mm分だけ、表面平板部31b,31cから表面中央部32aに入り込んだ位置を突当面34c,34dの最奥位置とする範囲内で、突当部34a,34bが配置される。図示では、表面平板部31b,31cと表面中央部32aとの略境界地点に突当面34c,34dが配置されるように、突当部34a,34bが設けられている。