(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038616
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】シート巻取装置及びシート巻取方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/195 20060101AFI20240313BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20240313BHJP
B65H 18/20 20060101ALI20240313BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B65H23/195
B65H23/188
B65H18/20
B65H5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142748
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173646
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 桂子
(72)【発明者】
【氏名】末松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 和克
(72)【発明者】
【氏名】武藤 庄治
(72)【発明者】
【氏名】藤稿 壮士
【テーマコード(参考)】
3F049
3F055
3F105
【Fターム(参考)】
3F049AA10
3F049CA32
3F049DA12
3F049LA16
3F049LB07
3F049LB11
3F055AA05
3F055AA12
3F055CA01
3F055CA24
3F055DA01
3F055EA02
3F055EA06
3F055EA13
3F055EA17
3F105AA04
3F105AA11
3F105AB15
3F105BA00
3F105CA06
3F105CA07
3F105CA13
(57)【要約】
【課題】ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際に、幅方向の片側のみに波打ちが発生した場合でも、しわの発生を抑制することが可能なシート巻取装置及びシート巻取方法を提供する。
【解決手段】ロール状に巻回された帯状シート1を他の巻芯2に巻取る装置に、帯状シート1の巻取時に他の巻芯2の両端部を加圧する加圧部3a,3bと、他の巻芯2の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう加圧部3a,3bから他の巻芯2に付加される荷重を調整する加圧調整部4を設け、加圧調整部4により、帯状シート1に波打ちが発生している側の端部に印加される圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加される圧力よりも高くなるよう荷重を調整しながら巻取る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る装置であって、
前記帯状シートの巻取時に前記他の巻芯の両端部を加圧する加圧部と、
前記他の巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記他の巻芯に付加される荷重を調整する加圧調整部と、を有し、
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整するシート巻取装置。
【請求項2】
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力を、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも2.0N以上高くする請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項3】
前記加圧部は、前記他の巻芯の長さxmmに対して、加圧位置が前記他の巻芯の端縁から0.07x~0.14xmmになるよう配置されている請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項4】
更に、前記帯状シートを前記他の巻芯に案内する1対のガイドロールを有し、
該1対のガイドロールは、前記他の巻芯の手前に、軸が前記他の巻芯の軸と平行になるよう配置されている請求項1に記載のシート巻取装置。
【請求項5】
前記1対のガイドロールは、波打ちが発生している側の間隔が、波打ちが発生していない側の間隔よりも広くなるよう配置されている請求項4に記載のシート巻取装置。
【請求項6】
波打ちが発生している側のガイドロールの間隔は、前記帯状シートの厚さの0.1~0.8倍である請求項5に記載のシート巻取装置。
【請求項7】
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る方法であって、
前記他の巻芯の両端部を加圧しながら、前記帯状シートを前記他の巻芯に巻取る巻取工程を有し、
前記巻取工程では、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう前記他の巻芯に付加する荷重を調整するシート巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート巻取装置及びシート巻取方法に関し、より詳しくは、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布シートやプラスチックフィルムの製造工程では、ロール状に巻回された帯状のシートやフィルム(以下、これらをまとめて「帯状シート」という。)を、他の巻芯に巻替えることがある。また、カートリッジフィルタなどの円筒状積層体は、ロール状に巻回された帯状の不織布シートを巻芯に巻取り、各層を熱融着させることにより製造される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、不織布シートや薄厚のプラスチックフィルムのように剛性が低く伸びやすい帯状シートは、巻替えや他の巻芯に巻取りを行うと、原反から巻出す際に波打ちが生じ、巻取られたシートにしわや外観不良が発生するという問題がある。帯状シートを巻取る際にしわの発生を抑制する方法としては、例えば、張架区間内の張力変化に対応して速度差を自動的に変更し、巻取ローラーの巻取張力が一定になるようにした巻取装置(特許文献2参照)、及びエアーノズルから圧縮エアーを噴射することでシートの浮き上がりを抑制した巻取装置(特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-056446号公報
【特許文献2】特開2016-108075号公報
【特許文献3】特開2019-1611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の巻取方法には、以下に示す問題点がある。特許文献2に記載の装置のように巻取ローラーの巻取張力が一定になるように速度差を調整する方法は、例えば巻芯のように駆動系を取り付けることができない細長いものには適用できない。また、巻芯の回転速度はヒートロールの速度とほぼ同じであるため、ヒートロールの速度を制御することで巻芯の回転速度を制御することも考えられるが、その場合、巻芯の回転速度が変化すると、巻取る際に不織布がヒートロールから受ける熱履歴の度合が変わるため、安定して円筒体を生産できなくなる。
【0006】
また、特許文献3に記載の装置のように帯状シートに圧縮エアーを噴射する方法は、周囲の埃や塵が飛散して製品への異物混入の原因となる虞がある。更に、不織布シートや薄厚のプラスチックフィルムの場合、幅方向の全体に亘ってではなく、片側にのみ波打ちが発生することがあり、巻取中に波打ちが発生する側が替わることもあるが、特許文献2,3に記載の方法では、このような片側だけ波打つ場合に対応できず、しわの発生を抑制することができない。
【0007】
そこで、本発明は、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際に、幅方向の片側のみに波打ちが発生した場合でも、しわの発生を抑制することが可能なシート巻取装置及びシート巻取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート巻取装置は、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る装置であって、前記帯状シートの巻取時に前記他の巻芯の両端部を加圧する加圧部と、前記他の巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記他の巻芯に付加される荷重を調整する加圧調整部とを有し、前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整するものである。
前記加圧調整部は、例えば前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力を、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも2.0N以上高くてもよい。
また、前記加圧部は、例えば、前記巻芯の長さxmmに対して、加圧位置が、前記巻芯の端縁から0.07x~0.14xmmになるよう配置されている。
本発明のシート巻取装置は、更に、前記帯状シートを前記他の巻芯に案内する1対のガイドロールを有し、該1対のガイドロールは、前記他の巻芯の手前に、軸が前記他の巻芯の軸と平行になるよう配置されていてもよい。
前記1対のガイドロールは、波打ちが発生している側の間隔が、波打ちが発生していない側の間隔よりも広くなるよう配置することができる。
その場合、波打ちが発生している側のガイドロールの間隔は、前記帯状シートの厚さの0.1~0.8倍としてもよい。
【0009】
本発明に係るシート巻取方法は、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る方法であって、前記他の巻芯の両端部を加圧しながら、前記帯状シートを前記他の巻芯に巻取る巻取工程を有し、前記巻取工程では、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう前記他の巻芯に付加する荷重を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際に、幅方向の片側のみに波打ちが発生した場合でも、しわの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のシート巻取装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】Aは原反の状態を示す図であり、Bは巻出された帯状シートの状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す加圧部3a,3bの構成例を模式的に示す図である。
【
図4】A及びBは加圧部3a,3bの配置例を示す斜視図である。
【
図5】A及びBは加圧部3a,3bの配置例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[装置の全体構成]
先ず、本発明の実施形態に係るシート巻取装置について説明する。
図1は本実施形態のシート巻取装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態のシート巻取装置は、ロール状に巻回された帯状シート1を他の巻芯2に巻取る装置であって、通常の巻取機構に加えて、巻芯2の両端部を加圧する1対の加圧部3a,3bと、加圧部3a,3bから巻芯2に付加される荷重を調整する加圧調整部4が設けられている。
【0014】
また、本実施形態のシート巻取装置には、巻芯2の手前に帯状シート1を巻芯2に案内する1対のガイドロール7a,7bを、それぞれの軸が巻芯2の軸と平行になるよう配置すると共に、ガイドロール7aとガイドロール7bの間隔を、一方の端部側のみ広げる又は狭める間隔調整部(図示せず)が設けられていてもよい。
【0015】
不織布シートや薄厚のプラスチックフィルムなどの帯状シートを原反から他の巻芯に巻取る際に幅方向の片側のみに波打が発生するのは、原反に巻回されている帯状シートの伸びや厚みムラが原因であると考えられる。例えば、不織布シートの場合、幅方向における一端側の厚さが他端側の厚さよりも厚い状態が続いた場合、それを何周も巻回していくと、不織布ロール(原反)の両側面の外径は、他端側よりも一端側の方が大きくなると予想される。
【0016】
図2Aは原反の状態を示す図であり、
図2Bは巻出された帯状シートの状態を示す図である。
図2Aに示すように、帯状シートロール(原反10)の他端側(図示右側)の外径をR、一端側(図示左側)の外径をR+Δrとすると、他端側の周長はπR、一端側の周長はπ(R+Δr)で表され、Δrπで表される長さだけ一端側の周長が長くなる。このため、
図2Bに示すように、原反10から1周分繰り出した帯状シート1の長さも、他端側の長さL1(=πR)よりも一端側の長さL2(=π(R+Δr))の方がΔrπだけ長くなり、巻芯に巻取る際にあまりが生じる。そして、この余剰分が行き場を失い、波打ちが発生すると考えられる。
【0017】
この帯状シート1の幅方向両端縁の長さの差は、厚みムラがある場合だけでなく、伸びムラがある場合にも起こり得る。例えば、帯状シートロール(原反10)から1周分繰り出したとき、他端側は伸びから解放されて縮み、一端側はもともと伸びてないためさほど縮まなかったとすると、その縮み度合いの差が帯状シート1における両端縁の長さ差となり、巻取時の波打ち発生の原因となる。
【0018】
そこで、本発明者は、幅方向端縁の長さに差がある帯状シートでも、波打ちの発生を抑制でき、安定して巻芯に巻取れる方法について、鋭意検討を行い、帯状シート1の巻取時に他の巻芯2の両端部に印加する圧力を、一方の端部と他方の端部で同じにせず、差をつけることにより、波打ちの発生を抑制できることを見出した。更に、本発明者は、巻出された帯状シート1を案内する1対のガイドロールの間隔を一定にせず、一方の端部側と他方の端部側で差をつけることで、波打ちの抑制効果が高まることも見出した。
【0019】
そして、本実施形態のシート巻取装置では、加圧調整部4を設け、他の巻芯2の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう加圧部3a,3bによって他の巻芯2に付加される荷重を調整する。また、必要に応じて、間隔調整部(図示せず)により、ガイドロール7aとガイドロール7bとの間隔を、一方の端部側のみ広げる又は縮める。
【0020】
[加圧部3a,3b]
図3は加圧部3a,3bの構成例を模式的に示す図である。また、
図4及び
図5は加圧部3a,3bの配置例を示す図であり、
図4は斜視図、
図5A,Bは側面図である。
図3及び
図4に示すように、加圧部3a,3bは、例えばロードセル31と、円盤型又は円柱状の1対のベアリング32a,32bで構成することができる。ここで、ベアリング32a,32bを用いる理由は、帯状シート1を巻取る際、巻芯2は回転するため、接圧がかかる接触部分も回転させておかなければ、接触部分が擦れて金属粉が発生し、それらが製品に付着して外観不良の原因となるためである。
【0021】
ベアリングの数が1個の場合、巻芯2と1本の線で接触(線接触)することになるため、接触位置が少しずれるだけで、巻芯2に対して安定して接圧を加えることができなくなる。そこで、ベアリング32a,32bは、
図3及び
図4に示すように、巻芯2を斜め上方の二方向から押さえるように配置することが好ましい、これにより、摩擦を低減し、巻芯2に対して安定して接圧を印加することができる。
【0022】
加圧部3a,3bは、帯状シート1が巻回されない巻芯2の端部に配置されていればよいが、
図5A,Bに示すように、長さxmmの巻芯を用いる場合は、各ベアリング32a,32bの長さ又は厚さの中間点が、巻芯2の端縁から0.07x~0.14xmmの範囲に位置するよう配置することが好ましい。巻芯2の端縁から各ベアリング32a,32bの長さ又は厚さの中間点までの距離dが0.07xmmよりも小さいと、即ち中間点の位置が巻芯2の端縁から0.07xmmの位置よりも外側(端縁側)の場合、加圧により帯状シート1に及ぼす効果が低下すると共に、巻芯2が撓んで変形してしまう可能性がある。
【0023】
一方、巻芯2の端縁から各ベアリング32a,32bの長さ又は厚さの中間点までの距離dが0.14xmmよりも大きいと、即ち、中間点の位置が巻芯2の端縁から0.14xmmの位置よりも内側の場合、ベアリング32a,32bが巻取っている帯状シート1に近づくため、巻取位置が少しずれただけで帯状シート1とベアリング32a,32bとが接触し、巻取りできなくなる虞がある。
【0024】
[加圧調整部4]
加圧調整部4は、加圧部3aにより印加される圧力(接圧)が、加圧部3bにより印加される圧力(接圧)よりも大きく又は小さくなるように、各加圧部3a,3bの荷重を調整するものである。具体的には、巻芯2にかかる圧力(接圧)を、波打ちが発生している側が高く、波打ちが発生していない側が低くなるようにする。
【0025】
例えば、
図1に示す巻取装置により、不織布シートを巻取る場合、波打ちが発生している側の圧力(接圧)を高くして巻取ることで、波打ちしている部分はヒートロール6bに密着しながら巻かれる。一方、波打ちしていない部分は、比較的弱い圧力(接圧)とすることで、少し緩和された状態で巻取られる。これにより、波打ちが解消され、しわなどの外観不良がない、円筒体を製造することができる。
【0026】
ここで、接圧の差は、特に限定されるものではないが、例えば波打ちが発生している側の端部に印加される圧力(接圧)P1を、波打ちが発生していない側の端部に印加される圧力(接圧)P2よりも2.0N以上大きくする(P1≧P2+2.0N)ことが好ましい。このように、波打ちが発生している側では、接圧P1を高くして、不織布シートをヒートロール6bに密着しやすくすると共に、波打ちがない側では、接圧P2を低くして、不織布シートをある程度緩和された密着状態とすることで、全体では幅方向に伸ばされつつ不織布シートをしわなく巻芯2に巻取ることができる。
【0027】
なお、不織布シートを巻取る場合、接圧の差(P1-P2)が大きすぎると、波打ちが発生している側でヒートロール6bへの密着が強くなりすぎることがある。その場合、不織布の熱融着が進んで、隙間が小さくなり、円筒体としたときにエアーの通り道が少なくなって、フィルタ―性能を発揮できなくなる虞がある。そこで、不織布シートを巻取る場合は、接圧の差(P1-P2)は6N以下とすることが好ましい。また、各加圧部3a,3bにより印加される圧力(接圧)P1,P2の大きさは、特に限定されるものではなく、帯状シート1の厚さや巻取後の円筒体の外径などに応じて適宜設定することができるが、例えば0.2~35Nとすることができる。
【0028】
[間隔調整部]
間隔調整部(図示せず)は、ガイドロール7aとガイドロール7bとの間隔を、一方の端部側のみ広げる又は縮めるものである。具体的には、ガイドロール7aとガイドロール7bとの間隔を、波打ちが発生している側を、波打ちが発生していない側よりも広くする。これにより、厚みムラや伸びムラにより生じる帯状シート1の余剰分を横に逃がし、しわの発生を抑制することができる。
【0029】
その際、波打ちが発生している側のガイドロール7aとガイドロール7bの間隔は、帯状シートの厚さtに対して、0.1~0.8倍(0.1t~0.8t)とすることが好ましい。0.1倍未満の場合、隙間を空ける効果が十分に得られず、0.8倍を超えると、帯状シート1と繰り出しタッチロール5のシートとの接触がわずかになり、空回りが発生し、原反から安定して繰り出す事ができなくなる虞がある。
【0030】
なお、波打ちが発生している側のガイドロール7aとガイドロール7bの間隔は、帯状シートの厚さtに対して、0.43~0.658倍(0.43t~0.658t)とすることがより好ましい。これにより、タッチロール5との接触安定性を確保しつつ、しわの発生を抑制することができる。
【0031】
[シート巻取方法]
次に、本実施形態のシート巻取装置を用いて、帯状シート1を巻取る方法について説明する。本実施形態のシート巻取方法では、他の巻芯2の両端部を加圧しながら帯状シート1を巻芯2に巻取る巻取工程を有する。そして、この巻取工程において、巻芯2の一方の端部に印加される圧力が、他方の端部に印加される圧力よりも大きく又は小さくなるよう加圧部3a,3bが巻芯2に付加する荷重を調整する。
【0032】
<帯状シート1>
本実施形態のシート巻取方法で巻取られる帯状シート1は、特に限定されるものではなく、厚さ0.2~3.0mmの薄厚のプラスチックフィルムや、引張伸度が100%以下かつ引張り強度が3N/50mm以上のシートのように、容易に折り曲げることができ、ロール状に巻くことのできるものであればよい。帯状シート1の具体例としては、不織布、紙、ゴム状シート、フィルム及び薄膜金属などが挙げられる。
【0033】
<巻芯2>
巻芯2も特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択して使用することができ、例えば外径が4~45mmで、ステンレスや鉄などの金属製又はセラミックス製で150℃程度の高温に加熱したり、接圧をかけたりしても変形しないものを使用することができる。
【0034】
本実施形態のシート巻取方法では、帯状シート1を巻芯2に巻取る際に、例えば波打ちが発生している側の圧力(接圧)を高くして巻取る。その際、波打ちが発生している側の端部に印加される圧力(接圧)P1を、波打ちが発生していない側の端部に印加される圧力(接圧)P2よりも2.0N以上大きくする(P1≧P2+2.0N)ことが好ましい。これにより、波打ちの影響が解消され、しわの発生を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態のシート巻取方法では、前述した接圧の調整に加えて、ガイドロール7aとガイドロール7bとの間隔を、一方の端部側のみ広げる又は縮めてもよい。具体的には、ガイドロール7aとガイドロール7bとの間隔を、波打ちが発生している側を、波打ちが発生していない側よりも広くする。その際、波打ちが発生している側のガイドロール7aとガイドロール7bの間隔は、帯状シートの厚さtに対して、0.1~0.8倍(0.1t~0.8t)とすることが好ましい。これにより、厚みムラや伸びムラにより生じる帯状シート1の余剰分を横に逃がし、しわの発生を抑制する効果を高めることができる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態のシート巻取装置及びシート巻取方法は、巻芯の一方の端部と他方の端部で印加する圧力に差をつけているため、波打ちの影響を緩和し、しわの発生を抑制することができる。本実施形態のシート巻取装置及びシート巻取方法は、巻出された帯状シートを案内する1対のガイドロールの間隔も、一方の端部側と他方の端部側で差をつけることで、波打ちの影響を更に軽減し、しわ発生抑制効果を高めることができる。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法で不織布シートの巻取りを行い、シワ発生の有無を確認した。
【0038】
(比較例1)
厚さ約0.7mm不織布シートがロール状に巻回された原反を用いて、
図1に示す巻取装置で、加圧部3a,3bにより巻芯2の両端部に均等に圧力を印加し(接圧差0)、ガイドロール7a,7bの間隔は共に0mmとして、巻芯2に不織布シートを巻取った。その際、ヒートロール6aとヒートロール6bの間まで、不織布シートを繰り出し、その上に加熱済みの巻芯2を置いて、巻取りを開始した。
【0039】
この比較例1の方法では、不織布シートの繰り出し時に一方の側のみ波打ちが発生したが、その状態のまま不織布シートからなる円筒体を99本形成したところ、39本にシワが発生しており、シワ発生率は39.4%であった。
【0040】
(比較例2)
波打ちが発生した側の接圧を13.0N、波打ちが発生していない側の接圧を14.0N、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を-1.0とし、それ以外は前述した比較例1と同様の方法で、不織布シートを巻取った。この比較例2の方法で、不織布シートからなる円筒体を70本形成したところ、41本にシワが発生し、シワ発生率は58.6%であった。
【0041】
(実施例1)
波打ちが発生した側の接圧を13.8N、波打ちが発生していない側の接圧を11.0N、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を2.8とすると共に、波打ちが発生した側のガイドロール7a,7bの間隔を0.3~0.4mm(不織布シートの厚さの0.43~0.57倍)とし、それ以外は前述した比較例1と同様の方法で、不織布シートを巻取った。この実施例1の方法で、不織布シートからなる円筒体を545本形成したところ、16本にシワが発生し、シワ発生率は2.9%であった。
【0042】
(実施例2)
波打ちが発生した側の接圧を20.0N、波打ちが発生していない側の接圧を17.2N、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を2.8とした以外は、前述した比較例1と同様の方法で、不織布シートを巻取った。この実施例2の方法で、円筒体を560本形成したところ、65本にシワが発生しており、シワ発生率は11.6%であった。
【0043】
(実施例3)
波打ちが発生した側の接圧を21.9N、波打ちが発生していない側の接圧を21.0N、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を0.9とした以外は、前述した比較例1と同様の方法で、不織布シートを巻取った。この実施例3の方法で、円筒体を97本形成したところ、35本にシワが発生しており、シワ発生率は35.1%であった。
【0044】
(実施例4)
波打ちが発生した側の接圧を14.4N、波打ちが発生していない側の接圧を13.4N、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を1.0とすると共に、波打ちが発生した側のガイドロール7a,7bの間隔を0.3~0.4mm(不織布シートの厚さの0.43~0.57倍)とし、それ以外は前述した比較例1と同様の方法で、不織布シートを巻取った。この実施例4の方法で、不織布シートからなる円筒体を499本形成したところ、113本にシワが発生し、シワ発生率は22.6%であった。
【0045】
以上の結果を、下記表1に示す。
【0046】
【0047】
上記表1に示すように、巻芯に印加する接圧を両端部で同じにした比較例1及び波打ちなし側を高くした比較例2ではシワ発生率が高かった。これに対して、巻芯に印加する接圧を波打ちあり側を高くした実施例1~4では、シワ発生率を低下させることができた。また、接圧差(波打ちあり-波打ちなし)を2.0N以上にした実施例1及び実施例2ではシワ発生率が大幅に低下しており、特に、接圧の調整に加えて、波打ちあり側のガイドロールのみ間隔を広げた実施例1ではシワ発生率を2.9%にまで低下させることができた。
【0048】
以上の結果から、本発明によれば、ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る際に、幅方向の片側のみに波打ちが発生した場合でも、しわの発生を抑制できることが確認された。
【0049】
なお、本発明は、以下の形態をとることもできる。
(1)
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る装置であって、
前記帯状シートの巻取時に前記他の巻芯の両端部を加圧する加圧部と、
前記他の巻芯の一方の端部にかかる圧力が、他方の端部にかかる圧力よりも大きく又は小さくなるよう前記加圧部から前記他の巻芯に付加される荷重を調整する加圧調整部と、を有し、
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう荷重を調整するシート巻取装置。
(2)
前記加圧調整部は、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力を、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも2.0N以上高くする(1)に記載のシート巻取装置。
(3)
前記加圧部は、前記他の巻芯の長さxmmに対して、加圧位置が前記他の巻芯の端縁から0.07x~0.14xmmになるよう配置されている(1)又は(2)に記載のシート巻取装置。
(4)
更に、前記帯状シートを前記他の巻芯に案内する1対のガイドロールを有し、
該1対のガイドロールは、前記他の巻芯の手前に、軸が前記他の巻芯の軸と平行になるよう配置されている(1)~(3)のいずれかに記載のシート巻取装置。
(5)
前記1対のガイドロールは、波打ちが発生している側の間隔が、波打ちが発生していない側の間隔よりも広くなるよう配置されている(4)に記載のシート巻取装置。
(6)
波打ちが発生している側のガイドロールの間隔は、前記帯状シートの厚さの0.1~0.8倍である(4)又は(5)に記載のシート巻取装置。
(7)
ロール状に巻回された帯状シートを他の巻芯に巻取る方法であって、
前記他の巻芯の両端部を加圧しながら、前記帯状シートを前記他の巻芯に巻取る巻取工程を有し、
前記巻取工程では、前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力が、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも高くなるよう前記他の巻芯に付加する荷重を調整するシート巻取方法。
(8)
前記帯状シートに波打ちが発生している側の端部に印加する圧力を、波打ちが発生していない側の端部に印加する圧力よりも2.0N以上高くする(7)に記載のシート巻取方法。
(9)
前記他の巻芯の長さxmmに対して、加圧位置が前記他の巻芯の端縁から0.07x~0.14xmmになるようにする(7)又は(8)に記載のシート巻取方法。
(10)
前記帯状シートを前記他の巻芯に案内する1対のガイドロールを、前記他の巻芯の手前に、軸が前記他の巻芯の軸と平行になるよう配置すると共に、前記1対のガイドロールにおける波打ちが発生している側の間隔を、波打ちが発生していない側の間隔よりも広くなるように調整する(7)~(9)のいずれかに記載のシート巻取方法。
(11)
波打ちが発生している側のガイドロールの間隔を、前記帯状シートの厚さの0.1~0.8倍にする(10)に記載のシート巻取方法。