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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038620
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】基板の着脱部材および基板の着脱構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/12 20060101AFI20240313BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H05K7/12 L
H05K7/14 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142754
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田牧 雅大
【テーマコード(参考)】
4E353
5E348
【Fターム(参考)】
4E353AA16
4E353BB02
4E353CC01
4E353CC13
4E353CC32
4E353DD11
4E353DD17
4E353DR08
4E353DR23
4E353DR34
4E353DR55
4E353GG29
5E348AA03
5E348AA16
5E348AA40
(57)【要約】
【課題】基板を取り付けたり取り外す際にコネクタが破損されることを防止するとともに、基板に設ける電子部品の搭載スペースや回路パターンの形成スペースに制約を受け難い基板の基板着脱部材を提供する。
【解決手段】第2の基板4(基板)の厚み方向が着脱方向となる第2のコネクタ13(コネクタ)を有する第2の基板4に第2のコネクタ13とは反対側で架け渡される把持部21を有する。把持部21の長手方向の両端部から第2の基板4の厚み方向に延びて第2の基板4の両端部を保持する爪状の保持部22を有する。把持部21に第2の基板4へ向けて突設された押圧部23を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の厚み方向が着脱方向となるコネクタを有する基板に前記コネクタとは反対側で架け渡される把持部と、
前記把持部の長手方向の両端部から前記厚み方向に延びて前記基板の両端部を保持する爪状の保持部と、
前記把持部に前記基板へ向けて突設された押圧部とを備えていることを特徴とする基板の着脱部材。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の着脱部材において、
前記保持部は、前記厚み方向とは直交する方向であってかつ前記把持部の長手方向とも直交する方向の両側に、前記厚み方向に延びる突出部を有していることを特徴とする基板の着脱部材。
【請求項3】
請求項1に記載の基板の着脱部材において、
前記保持部は、
前記基板の前記コネクタが設けられる一方の面と対向する第1の爪片と、
前記一方の面とは反対側に位置する他方の面と対向する第2の爪片とを有していることを特徴とする基板の着脱部材。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載の基板の着脱部材において、
前記把持部と、前記保持部と、前記押圧部とは、合成樹脂材料によって一体に形成されていることを特徴とする基板の着脱部材。
【請求項5】
第1のコネクタに接続される第2のコネクタが基板に設けられ、前記第2のコネクタの第1のコネクタに対する着脱方向が前記基板の厚み方向となる基板の着脱構造であって、
前記基板に設けられた貫通孔からなるガイド孔に挿入されるガイド部材と、
前記第2のコネクタの近傍で前記基板に取り付けられた基板着脱部材とを備え、
前記基板着脱部材は、
前記基板に前記第2のコネクタとは反対側で架け渡された把持部と、
前記把持部の長手方向の両端部から前記厚み方向に延びて前記基板の両端部を保持する爪状の保持部と、
前記把持部に前記基板へ向けて突設された押圧部とを備えていることを特徴とする基板の着脱構造。
【請求項6】
請求項5に記載の基板の着脱構造において、
前記基板の前記両端部は、前記保持部が挿入される切り欠きを有し、
前記保持部における、前記厚み方向とは直交する方向であってかつ前記把持部の長手方向とも直交する方向の両側は、前記切り欠きの壁面との間に所定のクリアランスが形成される形状に形成されていることを特徴とする基板の着脱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器内部に搭載される基板の取り付け、取り外しの際に基板や基板上に配置されたコネクタ類の接続部が損傷することを防止する基板の着脱部材および基板の着脱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上のコネクタに対して他の基板を垂直に着脱することを可能にした従来の基板の着脱構造としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているものがある。特許文献1に開示された基板の着脱構造は、基板面にコネクタが取り付けられ、この基板のコネクタ取付部又はその近傍にコネクタ着脱用の取手が取り付けられている。取手は、基板の異端部から他端部まで延びるように形成され、両端部において基板に取り付けられている。
特許文献2に示す基板の着脱構造は、基板が着脱されるコネクタケースにレバーが取り付けられ、レバーを回動させることでレバーが基板の下面を上方へ押し出して基板を外すことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-283696号公報
【特許文献2】特開2013-222546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す取手は、基板上に固定されていて基板面上を塞ぐために、電子部品を搭載するスペースや、回路パターンを形成するスペースに制約を受けることになる。また、基板を取り付ける場合には取手の両端から基板に力が加えられるために、コネクタに直接力が加えられず接続し難い。さらに、取手の両端から基板に力が加えられて基板が撓むと、コネクタを曲げてしまう可能性がある。
【0005】
特許文献2に示す基板の着脱構造では、コネクタケースとレバーが基板上に取り付けられているため、特許文献1と同様に基板上にデッドスペースを形成してしまい、電子部品の搭載や回路パターンの配置に支障をきたすという問題がある。さらに、回動式のレバーを備えているために構成が複雑であり、しかも、二つのレバーを同時に回動させて基板の両端を同時に押さないと、コネクタを曲げてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、基板を取り付けたり取り外す際にコネクタが破損されることを防止するとともに、基板に設ける電子部品の搭載スペースや回路パターンの形成スペースに制約を受け難い基板の着脱部材および基板の着脱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る基板の着脱部材は、基板の厚み方向が着脱方向となるコネクタを有する基板に前記コネクタとは反対側で架け渡される把持部と、前記把持部の長手方向の両端部から前記厚み方向に延びて前記基板の両端部を保持する爪状の保持部と、前記把持部に前記基板へ向けて突設された押圧部とを備えているものである。
【0008】
本発明は、前記基板の着脱部材において、前記保持部は、前記厚み方向とは直交する方向であってかつ前記把持部の長手方向とも直交する方向の両側に、前記厚み方向に延びる突出部を有していてもよい。
【0009】
本発明は、前記基板の着脱部材において、前記保持部は、前記基板の前記コネクタが設けられる一方の面と対向する第1の爪片と、前記一方の面とは反対側に位置する他方の面と対向する第2の爪片とを有していてもよい。
【0010】
本発明は、前記基板の着脱部材において、前記把持部と、前記保持部と、前記押圧部とは、合成樹脂材料によって一体に形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る基板の着脱構造は、第1のコネクタに接続される第2のコネクタが基板に設けられ、前記第2のコネクタの第1のコネクタに対する着脱方向が前記基板の厚み方向となる基板の着脱構造であって、前記基板に設けられた貫通孔からなるガイド孔に挿入されるガイド部材と、前記第2のコネクタの近傍で前記基板に取り付けられた基板着脱部材とを備え、前記基板着脱部材は、前記基板に前記第2のコネクタとは反対側で架け渡された把持部と、前記把持部の長手方向の両端部から前記厚み方向に延びて前記基板の両端部を保持する爪状の保持部と、前記把持部に前記基板へ向けて突設された押圧部とを備えているものである。
【0012】
本発明は、前記基板の着脱構造において、前記基板の前記両端部は、前記保持部が挿入される切り欠きを有し、前記保持部における、前記厚み方向とは直交する方向であってかつ前記把持部の長手方向とも直交する方向の両側は、前記切り欠きの壁面との間に所定のクリアランスが形成される形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着脱部材を押して押圧部を基板に押し付けることにより、基板をコネクタが接続する方向に押すことができる。また、着脱部材を把持して基板とは反対方向に引くことにより、基板をコネクタの近傍でコネクタが外れる方向に引くことができる。このため、コネクタの着脱方向に引っ張り力や押圧力を加えることができる。また、把持部は基板の部品実装面から離間させて配置することができ、保持部は、基板の部品実装面の端部に配置できるから、着脱部材で部品実装面が狭められる範囲は僅かである。
したがって、基板を取り付けたり取り外す際にコネクタが破損されることを防止できるとともに、基板に設ける電子部品の搭載スペースや回路パターンの形成スペースに制約を受け難い基板の着脱部材および基板の着脱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る基板の着脱構造によって基板が取り付けられた基板組立体の斜視図である。
図2図2は、第2の基板を外した状態を示す基板組立体の斜視図である。
図3図3は、第2の基板の斜視図である。
図4図4は、基板着脱部材の斜視図である。
図5図5は、基板着脱部材の斜視図である。
図6図6は、基板着脱部材の正面図である。
図7図7は、基板組立体の断面図である。
図8図8は、基板着脱部材の保持部と第2の基板の一部を拡大して示す斜視図である。
図9図9は、図7における基板着脱部材と第2の基板のIX-IX線断面図である。
図10図10は、基板組立体の一部の斜視断面図である。
図11図11は、基板組立体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る基板の着脱部材および基板の着脱構造の一実施の形態を図1図11を参照して詳細に説明する。
図1に示す基板組立体1は、図示していない電子機器の一部を構成するもので、図1において最も下に描かれている筐体2と、この筐体2の内部に上下方向に並ぶ状態で収容された第1の基板3および第2の基板4とを備えている。基板組立体1を有する電子機器とは、例えば電話機やネットワーク機器などである。
【0016】
筐体2は、図1において上方に向けて開口する箱状に形成されており、図2に示すように箱の底となる底壁2aを有している。底壁2aには、複数の支柱5が立設されている。これらの支柱5は、本発明でいう「ガイド部材」に相当するものである。支柱5は、底壁2aに接続された本体部5aと、本体部5aの先端から突出する先端部5bとから形成されている。先端部5bは本体部5aより細くなる形状に形成されており、本体部5aと先端部5bとの境界部分には段差部6が形成されている。
【0017】
第1の基板3と第2の基板4とのうち、筐体2の底壁2aに近接する第1の基板3は、支柱5の本体部5aが通される貫通孔7を有し、貫通孔7に支柱5が通された状態で底壁2aの上に設置されている。第1の基板3は、底壁2aに設けられた台座8(図7および図10参照)に載せられて所定の位置に位置決めされた状態で固定用ねじ9(図7参照)によって底壁2aに固定されている。
【0018】
第1の基板3には、図2に示すように第1のコネクタ11が実装されている。第1のコネクタ11は、詳細には図示してはいないが、列をなして並ぶ多数の接触端子を有し、多数の接触端子が並ぶ方向が第1の基板3の端縁と平行になる状態で第1の基板3の端部に実装されている。以下において、基板組立体1の各構成部品を説明する上で方向を示すにあたっては、便宜上、第1のコネクタ11の多数の接触端子が列をなして並ぶ方向を左右方向といい、第1の基板3に沿う方向であって左右方向とは直交する方向を前後方向という。この場合、第1のコネクタ11は、図1および図2に示す第1の基板3の左右方向の中央部であって後側の端部に配置されることになる。なお、図示してはいないが、第1の基板3には、多数の電子部品が実装されている。
【0019】
第2の基板4は、着脱可能な機能部品を構成するもので、本発明に係る基板の着脱構造12によって第1の基板3に対して着脱可能に取り付けられている。第2の基板4を第1の基板3に取り付けることにより、電子機器に新たな機能を追加することができる。また、第2の基板4を第1の基板3から取り外すことにより、電子機器の機能を減らすことができる。第2の基板4の表面4aと裏面4bの少なくともいずれか一方の面には、図示していない多数の電子部品が実装されている。
【0020】
この実施の形態においては、第2の基板4が本発明でいう「基板」に相当する。この実施の形態による第2の基板4は、前後方向に長い長方形状に形成されており、後側の端部であって第1の基板3と対向する裏面4bに第2のコネクタ13が実装されている。第2のコネクタ13は、第1のコネクタ11に着脱可能に接続されるものである。
着脱構造12は、第2のコネクタ13と、筐体2に立設された支柱5と、第2の基板4に設けられた基板着脱部材14などによって構成されている。
【0021】
第2のコネクタ13は、第1のコネクタ11の多数の接触端子に電気的に接続される多数の接触端子(図示せず)を有している。第2のコネクタ13の第1のコネクタ11に対する着脱方向は、図10中に二点鎖線の矢印Aで示すように、第2の基板4の厚み方向である。
第2の基板4は、上述した複数の支柱5の先端部5bが挿入される貫通孔からなるガイド孔15を有している。複数のガイド孔15に複数の支柱5の先端部5bを挿入することにより、第2の基板4が第1の基板3に対して位置決めされる。
【0022】
第2のコネクタ13を第1のコネクタ11に接続する際には、支柱5とガイド孔15とによって第2の基板4を第1の基板3に対して位置決めした状態で行う。支柱5の段差部6は、第2のコネクタ13が第1のコネクタ11に接続された状態で更に第2の基板4が第1の基板3側に押されることにより第2の基板4と接触し、第2の基板4の過度な変形を阻止する。第2の基板4は、第1、第2のコネクタ11,13と支柱5とによって筐体2に対して保持された状態で、図示していないねじ部材によって筐体2に固定される。
【0023】
基板着脱部材14は、第2の基板4を第1の基板3に取り付けたり、第2の基板4を第1の基板3から取り外す際に、作業者が第2の基板4の代わりに把持するものである。この基板着脱部材14は、図1図4図6に示すように、第2の基板4に第2のコネクタ13とは反対側で架け渡される把持部21と、把持部21の長手方向の両端部に設けられた保持部22と、把持部21の長手方向の中央部に設けられた押圧部23などを備えている。把持部21と、保持部22と、押圧部23とは、合成樹脂材料によって一体に形成されている。
【0024】
把持部21は、第2の基板4の左側端部から右側端部まで延びる長さに形成されている。図4に示すように、把持部21の長手方向の中央部であって第2の基板4とは反対側には、平坦な表示面24が形成されている。この表示面24には、第2の基板4を着脱する際の注意事項が印刷されたラベル(図示せず)を貼り付けることができる。例えば、第2の基板4が高温になるものである場合は、高温になっていることについての注意喚起を行う内容の印刷が施されたラベルを貼り付けることができる。
【0025】
把持部21の長手方向の中央部であって第2の基板4と対向する部分には、図5および図6に示すように押圧部23が突設されている。押圧部23は、第2のコネクタ13を第1のコネクタ11に接続するときに第2の基板4を押すためのものである。
押圧部23が第2の基板4の表面4aに接触することにより、把持部21と第2の基板4との間に指挿入用のスペースS(図7参照)が形成される。
【0026】
保持部22は、図5図7に示すように把持部21の長手方向の両端部から第2の基板4の厚み方向に延びており、第2の基板4の両端部を保持する爪状に形成されている。詳述すると、保持部22は、図7に示すように、第2の基板4の厚み方向に延びる基部22aと、基部22aの先端から第2の基板4の左右方向の中央に向けて突出する第1の爪片22bと、基部22aの中間部から第2の基板4の左右方向の中央に向けて突出する第2の爪片22cとを有している。
【0027】
基部22aは、図3に示すように第2の基板4の左右方向の両端に形成された切り欠き25に挿入されている。切り欠き25は、第2の基板4の前後方向において、第2のコネクタ13の近傍であって僅かに前側に位置付けられている。このため、基板着脱部材14の把持部21および押圧部23は、図10に示すように、第2の基板4の表面4aにおける、第2のコネクタ13の前側近傍の部位と対向している。
【0028】
第1の爪片22bは、図5に示すように、基部22aから離れるにしたがって次第に薄くなる形状に形成されており、前後方向(図5においては左上から右下に向かう方向)において基部22aの一端部から他端部まで延びている。また、第1の爪片22bは、図7に示すように、第2の基板4の第2のコネクタ13が設けられる裏面4b(一方の面)と対向する。この実施の形態による第1の爪片22bは、図7に示すように、押圧部23が第2の基板4の裏面4bとは反対側に位置する表面4a(他方の面)に接触する状態で、第2の基板4の裏面4bに接触するように形成されている。この構成を採ることにより、基板着脱部材14が第2の基板4に対して第2の基板4の厚み方向に不必要に遊動することが抑えられ、電子機器を運ぶときに基板着脱部材14が振動で第2の基板4に当たって異音が生じることを防ぐことができる。
【0029】
第2の爪片22cは、図5に示すように、前後方向において基部22aの中央部に形成されており、図7に示すように第2の基板4の表面4aと対向する。第2の爪片22cと第2の基板4の表面4aとの間には、第1の爪片22bが第2の基板4の裏面4bに接触している状態で所定の間隔の隙間が形成されている。この第2の爪片22cは、基板着脱部材14の長手方向の端部が第2の基板4に向けて押されて把持部21が撓むことによって第2の基板4の表面4aに接触し、把持部21がそれ以上撓むことを阻止する。
【0030】
図8に示すように、基部22aの両側部、言い換えれば第2の基板4の厚み方向とは直交する方向であってかつ把持部21の長手方向とも直交する方向の両側には、第2の基板4の厚み方向に延びる突出部26が形成されている。突出部26の厚みt(図9参照)は、基部22aの厚みTより小さい。第2の基板4の厚み方向における突出部26の長さL(図4参照)は、基板着脱部材14の長手方向の端部が押されて把持部21が撓み、第2の爪片22cが第2の基板4に接触する過程で、突出部26が切り欠き25を越えて第2の基板4の裏側に進むことがない長さである。
【0031】
この突出部26は、下記の二つの機能を有している。
第1の機能は、第2の基板4の切り欠き25との間のクリアランスC(図9参照)を適正値とする機能である。ここでいう適正値とは、基板着脱部材14が第2の基板4に対して前後方向に傾斜するときの角度が予め定めた角度以下となる値である。クリアランスCが適正値となることにより、基板着脱部材14が第2の基板4に対して前後方向に不必要に傾斜することがなくなる。
【0032】
第2の機能は、基板着脱部材14が前後方向に傾いた状態で基板着脱部材14の長手方向の端部が第2の基板4に向けて押されたときに保持部22が第2の基板4の切り欠き25に食い込むことを防ぐ機能である。
突出部26と切り欠き25の壁面との間には上述したクリアランスCがあるため、基板着脱部材14の長手方向の端部が第2の基板4に向けて押されたときにクリアランスC分だけ基板着脱部材14が前後方向に傾斜することがある。このように傾斜した状態で把持部21の端部が第2の基板4に向けて押されたとしても、突出部26は第2の基板4の厚み方向において長さLとなるように形成されているから、保持部22の変位量が増えてもクリアランスCは殆ど変わることがない。このため、保持部22の基部22aが切り欠き25に斜めに無理に押しこまれるようなことがないから、保持部22が切り欠き25に食い込むことを防ぐことができ、基板着脱部材14の押圧を止めると保持部22は速やかに初期の位置に復帰する。
【0033】
このように構成された基板着脱部材14を有する基板の着脱構造12において、第2の基板4を第1の基板3に接続するためには、先ず、支柱5を第2の基板4のガイド孔15に挿入して第2の基板4を第1の基板3に対して位置決めする。この位置決めにより、第2のコネクタ13の接続方向に第1のコネクタ11が位置するようになる。そして、基板着脱部材14の把持部21を第2の基板4に向けて押す。把持部21には平坦な表示面24が形成されているから、このときに押す場所が把持部21の中央部分であると認識され易い。なお、把持部21の長手方向の端部が押された場合は、押圧力で把持部21が撓んで保持部22が変位する。このときは、保持部22の第2の爪片22cが第2の基板4の表面4aに接触することにより、それ以上の変位が規制される。このため、保持部22が過度に変位して破損することはない。
【0034】
把持部21の長手方向の中央部分が押されることにより、押圧部23が第2の基板4を第1の基板3に向けて押し、押圧力が第2の基板4から第2のコネクタ13に伝達される。この結果、第2のコネクタ13が接続方向に押されて第1のコネクタ11に接続される。この取付工程においては、第2のコネクタ13の近傍を押圧部23によって押すことができ、第1、第2のコネクタ11,13の接続方向と平行な方向に押圧力を加えて第2のコネクタ13を第1のコネクタ11に接続することができる。
【0035】
一方、第2のコネクタ13を第1のコネクタ11から外す場合は、基板着脱部材14の把持部21を把持して基板着脱部材14を支柱5に沿って第2の基板4とは反対方向に引く。このように基板着脱部材14が引かれると、引っ張り力が基板着脱部材14の保持部22から第2の基板4の左右方向の両端部に伝わり、第2の基板4が第2のコネクタ13の近傍で第2のコネクタ13の取り外し方向に引かれるようになる。このため、第2のコネクタ13が取り外し方向に平行移動して第1のコネクタ11から外れる。
【0036】
基板着脱部材14の把持部21を把持して第2の基板4とは反対方向に引くときは、把持部21が図7中に二点鎖線で示すように第2の基板4から離れる方向に僅かに撓み、これに伴って保持部22が変位して傾くようになる。このときに保持部22が変位する方向は、図7中に二点鎖線の矢印Bで示すように、第2の基板4と第1の基板3との間に向かう方向である。この方向は、一方の保持部22の第1の爪片22bと、他方の保持部22の第1の爪片22bとによって第2の基板4が抱え込まれるような方向である。このため、基板着脱部材14を把持して第2の基板4を取り外すときは、第2の基板4を確実に保持することができ、基板着脱部材14が第2の基板4から外れてしまうようなことがない。
【0037】
このように、この実施の形態によれば、第2の基板4を第1の基板3に取り付けるときと取り外すときとの両方において、第2のコネクタ13の着脱方向に押圧力や引っ張り力を加えることができる。押圧力や引っ張り力が作用する方向を図10中に二点鎖線の矢印Cによって示す。
【0038】
基板着脱部材14の把持部21は、第2の基板4の表面4aや裏面4bなどの部品実装面から離間させて配置することができ、保持部22は、第2の基板4の部品実装面の端部に配置できるから、基板着脱部材14で部品実装面が狭められる範囲は、主に押圧部23が接触する部位となる。
したがって、基板を取り付けたり取り外す際にコネクタが破損されることを防止できるとともに、基板に設ける電子部品の搭載スペースや回路パターンの形成スペースに制約を受け難い基板の基板着脱部材および基板の着脱構造を提供することができる。
【0039】
この実施の形態による基板着脱部材14の保持部22は、第2の基板4の厚み方向とは直交する方向であってかつ把持部21の長手方向とも直交する方向の両側に、第2の基板4の厚み方向に延びる突出部26を有している。
このため、第2の基板4に形成された切り欠き25に保持部22を通す構成を採るにあたって、突出部26によって保持部22と切り欠き25との間に適正なクリアランスCを形成することができ、基板着脱部材14が第2の基板4に対してがたつくことを防ぐことができる。また、基板着脱部材14の端部が押されて基板着脱部材14が前後方向に傾いた状態で保持部22が変位するような場合であっても、突出部26が十分に長く形成されていて切り欠き25との間のクリアランスCが略一定に保たれるから、保持部22の側部が切り欠き25の側面に食い込むようなことを防ぐことができる。
【0040】
この実施の形態による保持部22は、第2の基板4の第2のコネクタ13が設けられる裏面4b(一方の面)と対向する第1の爪片22bと、裏面4bとは反対側に位置する表面4a(他方の面)と対向する第2の爪片22cとを有している。
第1の爪片22bは、第2の基板4を取り外すときに引っ張り力を第2の基板4に伝える。第2の爪片22cは、把持部21の長手方向の端部が押されて保持部22が変位したときに第2の基板4に接触してそれ以上の変位を規制する。このため、第2の基板4を取り外すときに第2の基板4を引くための保持部22が第2の基板4を取り付けるときに誤って押されたとしても、第2の爪片22cがストッパーになって保持部22の過度の変位が規制され、保持部22が破損することを防ぐことができる。
【0041】
この実施の形態による把持部21と、保持部22と、押圧部23とは、合成樹脂材料によって一体に形成されている。このため、第2の基板4を第1の基板3から取り外すために把持部21を引っ張って把持部21が撓むと、これに伴って保持部22が第2の基板4を抱え込むように変位する。したがって、第2の基板4を外すときに基板着脱部材14が第2の基板4から外れることを確実に防ぐことができる。
【0042】
この実施の形態による基板の着脱構造12は、第2の基板4のガイド孔15に挿入される支柱5(ガイド部材)と、第2のコネクタ13の近傍で第2の基板4に取り付けられた基板着脱部材14とを備えている。このため、基板着脱部材14を押したり引いたりすることによって第2の基板4が支柱5に案内されながら第2のコネクタ13の着脱方向に平行移動する。したがって、第2の基板4の着脱を円滑に行うことが可能になる。
【0043】
この実施の形態による第2の基板4の両端部は、基板着脱部材14の保持部22が挿入される切り欠き25を有している。保持部22における、第2の基板4の厚み方向とは直交する方向であってかつ把持部21の長手方向とも直交する方向の両側は、切り欠き25の壁面との間に所定のクリアランスCが形成される形状に形成されている。このため、第2の基板4の切り欠き25によって基板着脱部材14の取付位置を規定することができる。第2の基板4が複数種類ある場合、各基板の左右方向の幅を同一として第2のコネクタ13の近傍に切り欠き25を形成しておくことによって、複数の第2のコネクタ13に組み付ける基板着脱部材14の種類を1種類とすることができる。この構成を採ることにより、設計の共通化を図ることができるとともに、基板着脱部材14を一度に大量生産することができるから生産コストの低減を図ることができる。
【0044】
第2の基板4の切り欠き25に基板着脱部材14を取り付ける構成を採ることにより、例えば図11に示すように複数の第2の基板4をコンパクトに搭載することができるようになる。図11に示す基板組立体1は、2枚の第2の基板4を備えている。これらの第2の基板4は、左右方向に隣り合うように並べられ、それぞれ本発明に係る基板の着脱構造12によって第1の基板3に着脱可能に取り付けられている。これらの第2の基板4の切り欠き25に基板着脱部材14が取り付けられていることにより、基板着脱部材14が第2の基板4の側方に大きく突出することがないから、2つの第2の基板4どうしの間隔を狭くしてこれらの第2の基板4を第1の基板3にコンパクトに搭載することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1…基板組立体、4…第2の基板(基板)、4a…表面(他方の面)、4b…裏面(一方の面)、5…支柱(ガイド部材)、11…第1のコネクタ、12…基板の着脱構造、13…第2のコネクタ、14…基板着脱部材、15…ガイド孔、21…把持部、22…保持部、22b…第1の爪片、22c…第2の爪片、23…押圧部、25…切り欠き、26…突出部、C…クリアランス。
図1
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