(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038622
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】光学データ取得装置および光学データ取得方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20240313BHJP
B64D 47/00 20060101ALI20240313BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20240313BHJP
G01W 1/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01V8/10 S
B64D47/00
G01W1/00 Z
G01W1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142763
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】513098341
【氏名又は名称】ANAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】須藤 洋志
(72)【発明者】
【氏名】久世 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】星野 千春
(72)【発明者】
【氏名】重藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】松本 紋子
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB16
2G105BB17
2G105BB18
2G105DD01
2G105EE06
2G105GG03
2G105LL01
(57)【要約】
【課題】本発明により、航空機を使用して、簡易な構成で、観測情報を計算するための光学データの取得が実現できる。
【解決手段】内部に処理回路を有し、航空機の座席の座面に載置されて押圧固定される筐体と、航空機の窓の視野を指向する検知面を有する集光部であって、検知面の視野の境界が窓の範囲内に収まる集光部と、集光部と処理回路とを電気的または光学的に接続する接続ケーブルと、を備え、処理回路は集光部から取得された光学データから観測情報を計算する光学データ取得装置により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓と、前記窓に並置され座面を有する座席と、を有する航空機の前記窓からの視野の中の光学データを取得する光学データ取得装置であって、
前記光学データ取得装置は、
内部に処理回路を有し、前記座席の前記座面に載置されて押圧固定される筐体と、
前記窓を介して前記窓の前記視野を指向する検知面を有する集光部であって、前記検知面の視野の境界が前記窓の範囲内に収まるように前記筐体に対しての固定がなされる集光部と、
前記集光部と前記処理回路とを電気的または光学的に接続する接続ケーブルと、を備え、
前記処理回路は前記集光部から取得された光学データから前記窓からの観測情報を計算する光学データ取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学データ取得装置であって、
前記窓は航空機の側面の窓またはコクピットの窓である光学データ取得装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学データ取得装置であって、
前記観測情報は、地表上の気体の成分の濃度と、植物が光合成時に発する蛍光の強度と、雲頂高度を含む雲特性と、のうちの一つである光学データ取得装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光学データ取得装置であって、
前記固定は、一端が前記筐体に取り付けられて前記窓に向かって延在し他端が前記集光部を保持するアームと、前記集光部に取り付けられている吸盤と、のいずれかによってなされる光学データ取得装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学データ取得装置であって、
前記集光部は、所定の基準軸に対する前記検知面の任意の軸に対する角度を測定可能な姿勢センサと、前記集光部の地球上の位置を測定する位置センサと、の少なくとも一方を備える光学データ取得装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学データ取得装置であって、
前記処理回路は、前記姿勢センサで取得したデータと前記位置センサで取得したデータとの少なくとも一方と前記光学データとを関連付けて処理を行う光学データ取得装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学データ取得装置であって、
前記座席は前記座面の一方の側から他方の側に向かって伸縮して対象物を前記座面へと押圧固定が可能なシートベルトを有し、
前記筐体は、前記シートベルトを懸架可能な懸架部を有し、前記懸架部に懸架された前記シートベルトにより前記押圧固定がなされる光学データ取得装置。
【請求項8】
光学データ取得装置により、窓と、前記窓に並置され座面を有する座席と、を有する航空機の前記窓からの視野の中の光学データを取得する光学データ取得方法であって、
前記光学データ取得装置は、
内部に処理回路を有し、前記座席の前記座面に載置されて押圧固定される筐体と、
前記窓の前記視野を指向する検知面を有する集光部であって、前記検知面の視野の境界が前記窓の範囲内に収まるように前記筐体に対して固定がなされる集光部と、
前記集光部と前記処理回路とを電気的または光学的に接続する接続ケーブルと、を備え、
前記処理回路は前記集光部から取得された光学データから前記窓からの観測情報を計算する光学データ取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光学データ取得方法であって、
前記窓は航空機の側面の窓またはコクピットの窓である光学データ取得方法。
【請求項10】
請求項8に記載の光学データ取得方法であって、
前記観測情報は地表上の気体の成分の濃度または植物が光合成時に発する蛍光の強度と、雲頂高度を含む雲特性と、のうちの一つである光学データ取得方法。
【請求項11】
請求項8に記載の光学データ取得方法であって、
前記固定は、一端が前記筐体から前記窓に向かって延在し他端が前記集光部を保持するアームと、前記集光部に取り付けられている吸盤と、のいずれかによってなされる光学データ取得方法。
【請求項12】
請求項8に記載の光学データ取得方法であって、
前記集光部は、所定の基準軸に対する前記検知面の任意の軸に対する角度を測定可能な姿勢センサと、前記集光部の地球上の位置を測定する位置センサと、の少なくとも一方を備える光学データ取得方法。
【請求項13】
請求項8に記載の光学データ取得方法であって、
前記集光部は、所定の基準軸に対する前記検知面の任意の軸に対する角度を測定可能な姿勢センサと、前記集光部の地球上の位置を測定する位置センサと、の少なくとも一方を備える光学データ取得方法。
【請求項14】
請求項13に記載の光学データ取得方法であって、
前記処理回路は、前記姿勢センサで取得したデータと前記位置センサで取得したデータとの少なくとも一方と前記光学データとを関連付けて処理を行う光学データ取得方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか一項に記載の光学データ取得方法であって、
前記座席は前記座面の一方の側から他方の側に向かって伸縮して対象物を前記座面へと押圧固定が可能なシートベルトを有し、
前記筐体は、前記シートベルトを懸架可能な懸架部を有し、前記懸架部に懸架された前記シートベルトにより前記押圧固定がなされる光学データ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機使用する光学データ取得装置および光学データ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学データから地球の気体の成分の濃度を遠隔的に測定するために装置を搭載した人工衛星は既に運用されている。たとえば、特許文献1には、人工衛星から地球上の二酸化炭素の濃度を補正して測定する装置が開示されている。このように、光学データから地球表面付近の気体の成分の濃度など、地球の観測を人工衛星により行うことは一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/090745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学データにより地球大気および表面の観測を人工衛星で行うと、人工衛星の費用、人工衛星の運用のための費用等、データを取得することに必要な費用が高額になる。また、人工衛星による観測は地球上の比較的広い地域での観測に適しているが、局所的な地域におけるコンパクトな観測には適していない。また人工衛星の速度は高速で局所的に詳細な観測には適していない。
【0005】
さらに、たとえば局所的な地表上の気体の成分の濃度の観測を行うための光学データを取得する光学データ取得装置および光学データ取得方法が求められる。光学データによる地球の観測、特に地表に近い地点の現象の観測を行うためには、その現象に応じた高度において直接観測を行うことが望ましい。人工衛星では地表から離れた高い高度からの観測となるので、なるべく地表に近い箇所で、その現象を観測するための光学データを取得できる光学データ取得装置および光学データ取得方法が望まれる。また、これにつき、小型の飛行機を使用した観測が行われることがあるが、従前は機体の外部に装置を取り付けるか、または機体に配置される孔から機体の下側での測定が行われており、測定器へのアクセス性が悪く、また、測定器が外部に露出する問題や、配置される孔による機体の剛性の低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
窓と、前記窓に並置され座面を有する座席と、を有する航空機の前記窓からの視野の中の光学データを取得する光学データ取得装置であって、前記光学データ取得装置は、内部に処理回路を有し、前記座席の前記座面に載置されて押圧固定される筐体と、前記窓を介して前記窓の前記視野を指向する検知面を有する集光部であって、前記検知面の視野の境界が前記窓の範囲内に収まるように前記筐体に対しての固定がなされる集光部と、前記集光部と前記処理回路とを電気的または光学的に接続する接続ケーブルと、を備え、前記処理回路は前記集光部から取得された光学データから前記窓からの観測情報を計算する光学データ取得装置により解決する。
【0007】
光学データ取得装置により、窓と、前記窓に並置され座面を有する座席と、を有する航空機の前記窓からの視野の中の光学データを取得する光学データ取得方法であって、前記光学データ取得装置は、内部に処理回路を有し、前記座席の前記座面に載置されて押圧固定される筐体と、前記窓の前記視野を指向する検知面を有する集光部であって、前記検知面の視野の境界が前記窓の範囲内に収まるように前記筐体に対して固定がなされる集光部と、前記集光部と前記処理回路とを電気的または光学的に接続する接続ケーブルと、を備え、前記処理回路は前記集光部から取得された光学データから前記窓からの観測情報を計算する光学データ取得方法により解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、航空機を使用して、簡易な構成で航空機の窓の視野の中の観測対象の観測情報を計算するための光学データの取得が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の構成のブロック図である。
【
図2A】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の設置の代表的な一の例の斜視図である。
【
図2B】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の設置の他の例の斜視図である。
【
図2C】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の設置の更なる例の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の航空機と地表との間の観測概念を示した図である。
【
図4】本発明の実施の形態である光学データ取得装置1の観測概念の機内の詳細を示した図であって、
図3の機内部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
(光学データ取得装置1の構成)
図1から
図2Bを参照して、光学データ取得装置1の構成について説明する。
図1は光学データ取得装置1の構成のブロック図である。
図2Aから
図2Cは、光学データ取得装置1の設置状態を示した図である。光学データ取得装置1は、筐体11と、筐体11の内部に配置される処理装置12と、集光部14と、接続ケーブル15とを備える。光学データ取得装置1の筐体11は、少なくとも1個からなるが複数個の筐体から構成されるものであってもよい。また、筐体11は、複数個から構成され複数個の筐体間がケーブルで電気的に接続されて構成される筐体11も含む。
【0011】
光学データ取得装置1は、旅客機に代表される航空機2を使用して、航空機2の航路に沿った観測対象の観測情報を計算する。ここで「観測情報」は、航空機2の窓22の視野から観測可能な地球上の地球上の現象であって、航空機2の窓22から取得される光学データから計算することで観測される情報である。代表的には、特には、地表付近の「気体の成分の濃度」,「蛍光の強度」,「雲頂高度を含む雲特性」である。ここで、「気体の成分」は、代表的には、二酸化炭素と、メタンと、二酸化窒素と、の少なくとも一つである。また、「光学データ」は航空機2の窓22から取得される光に関するデータである。「気体の成分の濃度」,「蛍光の強度」,「雲頂高度を含む雲特性」のそれぞれについては後述する。
【0012】
光学データ取得装置1が適用される航空機2は、窓22と、窓22に並置して配置される座席21と、が配置されている航空機が対象である。窓22には窓枠内に透明な窓素材がはめ込まれている構造である。座席21は座面21aを有する。特に、具体的な例としては、窓22は航空機2の胴体部の側面の窓またはコクピットの窓のように航空機2の全面の窓である。窓22と窓22に並置される座席21とを備えていない航空機は光学データ取得装置1の対象ではない。逆に、旅客輸送ではなく貨物輸送のために使用される航空機であっても、座席21が並置してされる窓22が配置されている航空機は、光学データ取得装置1の適用の対象となる。光学データ取得装置1は、航空機2の窓22に並置される座席21の座面21aの上に載置される。
【0013】
座席21は、シートベルト23を有している。シートベルト23は、結合止を有し、座面21aの一方の側の巻取固定部に固定されている。座面21aの他方の側にはシートベルト23の結合止を受容して結合される結合受容部が配置される。シートベルト23が座面21aの巻取固定部から座面21aの他方の側の結合受容部まで伸長して対象物を前記座面へと押圧固定が可能なシートベルト23を有し、シートベルト23の結合止が結合受容部に受容されると、シートベルト23の両端が固定されシートベルト23と座面21aとの間に人または対象物を固定可能である。
【0014】
シートベルト23は、1本のシートベルト部材のみではなく、1本以上の延長シートベルト部材を含めて構成される場合を含む。すなわち、延長シートベルト部材の一端に結合受容部が配置され他端に結合止が配置され、座面21aの巻取固定部に固定される定設のシートベルト部材の結合止に延長シートベルト部材の結合受容部が嵌合され、延長シートベルト部材の結合止が座面21aの他方の側の結合受容部と嵌合して固定される場合も含まれる。
【0015】
筐体11は、シートベルト23により、座席21の座面21aに載置されて押圧固定される。筐体11は懸架部11aを有する。懸架部11aは、筐体11が座面21aに載置された状態で、座面21aから離れた位置の筐体11上に配置される。代表的には、座席21の座面21aと座席21の背もたれと、の少なくとも一方と反対側の筐体11上に配置される。懸架部11aは、切り欠き、突起、孔または溝など、シートベルト23が通過して懸架される形状である。シートベルト23が懸架部11aに懸架されることにより、筐体11が座席21の座面21aと座席21の背もたれとの少なくとも一方に押圧固定される。これにより、光学データ取得装置1は、航空機に対して、強固に固定される。
【0016】
処理装置12は筐体11内に格納され、集光部14は筐体11に対して固定されている。処理装置12は、内部に、たとえば分光部(不図示)と、検出部(不図示)と、処理回路(不図示)と、を備えている。集光部14は、代表的には光学センサやマイクロ波センサである。光学センサは、地表からの太陽光の反射光などの紫外域から近赤外域にいたるまでの光の観測、または対象物からの輻射熱などの赤外域の観測が可能な光学センサである。マイクロ波センサは、対象物が放射する赤外線よりも長波長のマイクロ波を観測するセンサである。
【0017】
図4を参照して、集光部14の観測領域について説明する。集光部14は光を検知する検知面14aを備えている。検知面14aは、一定の方向を指向軸とし、指向軸から所定の拡がりの範囲を検知可能である。指向軸は一般には検知面14aと垂直な方向である。検知面14aは窓22の領域内において窓22を介して航空機2の窓22からの視野内にある航空機2の外部の観測対象の光学データの観測光源を指向する。集光部14は検知面14aの視野の最外境界が窓22の範囲S内に収まるように取り付けられる。集光部14の取り付け方法は、後述する。集光部14は検知面14aの視野の最外境界が窓22の範囲内に収まるということは、集光部14の検知面14aの最大の視野角αの範囲が、窓22の範囲S内になるということであって、検知面14aが検知する領域に窓22の枠外の航空機2の壁の領域の映り込みがないということである。
【0018】
集光部14は、航空機2の窓22を介して、航空機2の外側の光を取得して、処理装置12でその光に対応する光学データとして光の強度に基づいて演算処理できるようにする機器である。集光部14は、
図3および
図4に示すように、航空機2の機軸から所定の距離だけ離れた地表上の観測領域3aを狙って設定される。観測領域3aは、航空機2が水平および離着陸飛行をしている状態において、水平方向から下側に航空機2の飛行方向に沿った航空機2の側方に位置する領域である。地表上の観測領域3aとなるように集光部14の検知面14aの指向軸が画定される。アーム13の指向方向調整機能により、地表上の観測領域3aを確実に狙って設定できる。地表上の観測領域3aは、集光部14の視野角αに基づいて、集光部14の検知面14aの指向方向と水平方向とがなす傾斜角βを設定して、一定の観測幅で観測できるように設定される。たとえば、視野角αが25度から30度の角度のとき、地表上の観測領域3aの幅Lは40キロメートルから50キロメートルとなる。
【0019】
集光部14は、
図2Aに示すようにアーム13により筐体11に固定してもよい。また、
図2Bに示すように筐体11に直接固定してもよい。前者の場合には、アーム13は、アーム13の一端13aが筐体11に固定され、アーム13の他端13bが集光部14を保持するように、筐体11から窓22に向かって延在する部材である。アーム13の他端13bは集光部14を互いに垂直な3軸周りに可動なように集光部14の検知面14aの指向方向を集光部14の首振機能として調整可能な指向方向調整機能を有していてもよい。または、集光部14が、検知面14aを互いに垂直な3軸周りに可動なような指向方向調整機能を有する機構を持つ形態とすることもできる。さらに、
図2Cに示すように、集光部14に窓22に吸着する吸盤16に取り付けることで、窓22に集光部14を固定することもできる。このとき、窓22に取り付けられた集光部14と筐体11(処理装置12)とが接続ケーブル15で接続される。以下、集光部14は、
図2Aに示すように、アーム13により筐体11に固定される例で説明する。
【0020】
この場合は、筐体11が座面21aから窓22に至るまでの高さを有していないため、アーム13によって集光部14を窓22の適切な高さまで懸架するものである。後者の場合には、筐体11が集光部14を直接保持するように集光部14が筐体11に直接取り付けられている。この場合は、筐体11が座面21aから窓22に至るまでの高さを有し、筐体11で集光部14を窓22の適切な高さで固定可能である。筐体11が座席21に対して固定されている状態において、集光部14は、集光部14の検知面14aが窓22の領域内において窓22を介して航空機2の側面の地表の観測領域3aを指向するように配置される。集光部14は、検知面14aの視野の境界が窓22の範囲内に収まるように筐体11に対して固定される。
【0021】
集光部14は、さらに、所定の基準軸に対する検知面14aの任意の軸に対する角度を測定可能な姿勢センサ(不図示)と、集光部14の地球上の位置を測定する位置センサ(不図示)と、の少なくとも一方を備えている。姿勢センサは、アーム13の他端13bまたは集光部14が指向方向調整機能を有する場合には、集光部14の検知面14aの指向方向が検出できるようになっている。位置センサは、集光部14の地球上の位置および高度の3次元空間位置の情報を取得可能なセンサであって、代表的には全地球測位システム(GPS)である。位置センサは集光部14ではなく、光学データ取得装置1のいずれかの箇所に配置させることもできる。姿勢センサと位置センサの出力との少なくとも一方のデータは、処理回路が集光部14から取得されたデータから計算された窓の視野からの観測対象の分光情報の結果と関連付けて処理する。すなわち、姿勢センサと位置センサとから取得されたデータで、集光部14の検知面14aが指向する地表上の位置および高度がわかるので、光学データ取得装置1の観測結果と地表上の位置および高度とが特定できることになる。また、位置センサを光学データ取得装置1に配置しない場合、光学データ取得装置1が搭載される航空機により航空機の位置と高度を測定してその測定値を処理回路に送る、またはその航空機の飛行終了後に航空機の位置と高度の測定値を光学データ取得装置1の観測結果が取得された地点として関連付けてもよい。
【0022】
すなわち、集光部14には、所定の基準軸の座標系に対する検知面14aの任意の軸に対する角度を測定可能な姿勢センサが取り付けられている。所定の基準軸は、たとえば、航空機2を水平に置いた場合に、航空機2の長手方向である機軸(ロール軸)、機軸に垂直な水平面内の軸(ピッチ軸)、機軸と水平面に垂直な鉛直軸(ヨー軸)、である。所定の基準軸の座標系は、たとえばこれらの軸で画定される3次元座標系である。姿勢センサは、集光部14の検知面14aの指向方向が、これらの座標系のそれぞれの基準軸に対して、どれだけの偏差角をもっているかの姿勢データを取得することができる。
【0023】
処理装置12と集光部14とは接続ケーブル15により接続される。接続ケーブル15は処理装置12と集光部14とを電気的または光学的に接続するケーブルである。集光部14または処理装置12は光学センサを備えている。集光部14が光学センサを備えている場合には、集光部14の検知面14aで集められた光を電気信号に変換して、電気的なケーブルである接続ケーブル15を介して電気信号が処理回路に送信される。処理装置12が光学センサを備えている場合には、集光部14の検知面14aで集められた光を代表的には光ファイバである接続ケーブル15を介して光信号として処理回路に送信される。これらは、窓22からの視野の中の観測対象の光学データに応じて、選択的にいずれも選択できる。接続ケーブル15が電気的なケーブルである場合には、集光部14の位置センサと姿勢センサにより取得された情報は電気情報に変換され、接続ケーブル15を介して処理回路に伝送されて、処理回路内で演算される。
【0024】
処理装置12の処理回路は、集光部14から取得された光学データから窓22からの視野内の観測対象の観測情報を計算する処理を行う。処理回路および処理回路で実行されるソフトウェアは、従来の人工衛星での地球観測に使用される窓からの視野内の観測対象の観測情報を測定する電気的回路およびソフトウェア構造を有している。すなわち、処理回路は、集光部14で電気信号に変換されて伝送されたデータ、または集光部14から伝送された光学データを電気信号に変換したデータを処理して、窓からの視野内の観測対象の観測情報を計算する。処理回路は、さらに、姿勢センサにより取得される姿勢の情報、または位置センサにより取得される位置の情報などの関連情報を処理保存する回路である。そして、処理回路は、前記姿勢センサで取得したデータと前記位置センサで取得したデータとの少なくとも一方と、集光部14から取得された光学データとを関連付けて窓からの視野内の観測対象の分光情報を計算するための処理を行う。
【0025】
たとえば、観測対象が地球の大気中の気体であり観測情報が気体の成分の濃度の場合には、集光部14から取得された光学データを分光して、各波長に対する光の強度のデータに変換し、処理装置12において、各波長に対する光の強度のデータにおいて減衰している波長域を計算する。そして、地球の大気中に存在する二酸化炭素、二酸化窒素、メタンなどの成分や大気汚染物質であるエアロソルなどの微粒子を観測対象の波長別の吸収および散乱特性を特定する。これにより、大気中の気体の成分の濃度を遠隔測定することができる。
【0026】
また、観測対象が地球の蛍光であり観測情報が植物の光合成量の場合には、気体の成分の濃度の観測の場合と同様に、集光部14から取得された光学データを分光して、各波長に対する光の強度のデータに変換し、処理装置12において、各波長に対する光の強度のデータにおいて減衰している波長域を計算して、太陽光や人口光に対する植物からの蛍光を識別して植物の光合成量を計算する。これにより、太陽の照射により植物が光合成時の光合成量を観測することができる。
【0027】
また、観測対象が雲であり観測情報が雲の高度などの雲特性の場合には、気体の成分の濃度や蛍光の観測の場合と同様に、集光部14から取得された光学データを分光して、各波長に対する光の強度のデータに変換し、処理装置12において、各波長に対する光の強度のデータにおいて減衰している波長域を計算して、太陽光の雲による反射光の波長別光の強度を観測することで雲と飛行機の間になる酸素量を計算する。これにより、雲と飛行機の間の酸素量を測定し、雲頂の気圧から高度などの雲の特性を観測することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 光学データ取得装置
11 筐体
11a 懸架部
12 処理回路
13 アーム
14 集光部
14a 検知面
15 接続ケーブル
16 吸盤
2 航空機
21 座席
21a 座面
22 窓
23 シートベルト
3 地表
3a 測定領域