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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038624
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/02 20060101AFI20240313BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240313BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20240313BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01Q15/02
H01Q23/00
H01Q17/00
G01S7/03 230
G01S7/03 212
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142776
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竇 元珠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友貴
(72)【発明者】
【氏名】庄司 壮一
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB01
5J020BC03
5J020BC09
5J020BC10
5J020BC13
5J020BD02
5J020DA02
5J020EA09
5J021AA02
5J021AA11
5J021AB03
5J021AB04
5J021AB06
5J021BA03
5J021FA24
5J021HA04
5J021JA08
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD02
5J070AK07
(57)【要約】
【課題】多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、基板と、送信アンテナ及び受信アンテナを有し、基板に実装される集積回路チップと、基板側に設けられ開口面視で送信アンテナ及び受信アンテナを囲む第1開口部と、送信アンテナの放射方向において第1開口部よりも奥側に設けられる第2開口部と、第1開口部及び第2開口部を接続する第1内壁面とを有する導波管と、第2開口部に固定される電波レンズと、
第1内壁面の内側に設けられる筒状の電波吸収体とを備え、電波吸収体は、第1開口部側に設けられ、第1開口部の開口面視において第1開口部及び基板よりも小さく、送信アンテナ及び受信アンテナを囲む第3開口部と、放射方向において第3開口部よりも奥側に設けられ、第3開口部よりも大きい第4開口部と、第3開口部及び第4開口部を接続する第2内壁面とを有する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
送信アンテナ及び受信アンテナを有し、前記基板に実装される集積回路チップと、
前記基板側に設けられ開口面視で前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第1開口部と、前記送信アンテナの放射方向において前記第1開口部よりも奥側に設けられる第2開口部と、前記第1開口部及び前記第2開口部を接続する第1内壁面とを有する導波管と、
前記第2開口部に固定される電波レンズと、
前記第1内壁面の内側に設けられる筒状の電波吸収体と
を備え、
前記電波吸収体は、
前記第1開口部側に設けられ、前記第1開口部の開口面視において前記第1開口部及び前記基板よりも小さく、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第3開口部と、
前記放射方向において前記第3開口部よりも奥側に設けられ、前記第3開口部よりも大きい第4開口部と、
前記第3開口部及び前記第4開口部を接続する第2内壁面と
を有する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記電波吸収体の前記第4開口部は、前記放射方向において、前記導波管の前記第2開口部よりも前記第1開口部側に位置する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記送信アンテナから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記電波レンズの光軸を挟んで配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記電波レンズの焦点から見た前記電波レンズの開口角αは、前記電波レンズの直径をD、前記電波レンズの焦点距離をFPとすると、次式(1)で表され、
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記開口角αで表される領域の外側に位置する、請求項4に記載のアンテナ装置。
【数1】
【請求項6】
前記電波レンズの光軸と前記集積回路チップの表面との交点から見た前記第2開口部の開口角βは、前記第2開口部の直径をDd、前記交点と前記第2開口部の中心との間の距離をLとすると、次式(2)を満たす、請求項4に記載のアンテナ装置。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電波を送受信するアンテナと、前記アンテナを覆うレドームと、前記レドームの表面に配置された電波吸収体と、を備えたミリ波レーダ装置であって、前記電波吸収体は、前記アンテナから送信されてサイドローブとなる反射電波を低減させるような構成となっていることを特徴とするミリ波レーダ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-057483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のミリ波レーダ装置(アンテナ装置)は、レドームの電波通過端部を通過せずにミリ波レーダ装置の内部で複数回にわたって反射される多重反射を考慮していないため、多重反射の電波を電波吸収体で吸収できないおそれがある。多重反射による電波は、例えば、電波通過端部やアンテナの基板で反射されることや、電波吸収体によって反射されること等によって生じ、装置の検出性能を劣化させる。
【0005】
そこで、多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態のアンテナ装置は、基板と、送信アンテナ及び受信アンテナを有し、前記基板に実装される集積回路チップと、前記基板側に設けられ開口面視で前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第1開口部と、前記送信アンテナの放射方向において前記第1開口部よりも奥側に設けられる第2開口部と、前記第1開口部及び前記第2開口部を接続する第1内壁面とを有する導波管と、前記第2開口部に固定される電波レンズと、
前記第1内壁面の内側に設けられる筒状の電波吸収体とを備え、前記電波吸収体は、前記第1開口部側に設けられ、前記第1開口部の開口面視において前記第1開口部及び前記基板よりも小さく、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第3開口部と、前記放射方向において前記第3開口部よりも奥側に設けられ、前記第3開口部よりも大きい第4開口部と、前記第3開口部及び前記第4開口部を接続する第2内壁面とを有する。
【発明の効果】
【0007】
多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態のアンテナ装置を示す図である。
図1B】実施形態のアンテナ装置を示す図である。
図1C】実施形態のアンテナ装置を示す図である。
図1D】実施形態のアンテナ装置の電波吸収体を示す斜視図である。
図2A図1AにおけるA-A矢視断面を示す図である。
図2B】実施形態のアンテナ装置の電波吸収体の内壁面の位置の一例を説明する図である。
図2C】実施形態のアンテナ装置の電波吸収体による反射波の吸収の一例を説明する図である。
図3】実施形態のアンテナ装置を用いて行った実験の結果の一例を示す図である。
図4A】実施形態の第1変形例のアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
図4B】実施形態の第1変形例のアンテナ装置の電波吸収体の構成の一例をそれぞれ示す図である。
図5A】実施形態の第2変形例のアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
図5B】実施形態の第2変形例のアンテナ装置の電波吸収体の構成の一例をそれぞれ示す図である。
図6A】実施形態の第3変形例のアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
図6B】実施形態の第3変形例のアンテナ装置の電波吸収体の構成の一例をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のアンテナ装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
<アンテナ装置100の構成>
図1A図1B、及び図1Cは、実施形態のアンテナ装置100を示す図である。図1Dは、実施形態のアンテナ装置100の電波吸収体140を示す斜視図である。図1Aは、斜視図であり、図1Bは、一部を半断面で示す図であり、図1Cは、正面図である。図2Aは、図1AにおけるA-A矢視断面を示す図であり、電波レンズ130の光軸を含むYZ平面で導波管110を切断して得る切断面を示す図である。ここでは、特に断らない限り、図1A図1B図1C図1D、及び図2Aを用いてアンテナ装置100の構成について説明する。
【0011】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、XZ面視することを平面視と称す。また、XZ面視で開口部を見ることを開口面視と称す。
【0012】
アンテナ装置100は、基板101、導波管110、送受信部120、電波レンズ130、及び電波吸収体140を含む。アンテナ装置100は、電波を送受信する装置であり、電波レンズ130で送信波の放射パターンを狭めるとともに、受信する電波をレンズで集束させる。また、アンテナ装置100は、内部で多重反射によって発生する多重反射波を電波吸収体140で吸収する。
【0013】
このようなアンテナ装置100は、一例として、送信波が測定対象物で反射されて戻ってくる反射波を受信し、測定対象物までの距離を測定するレーダ装置として利用可能である。電波を送信波として送信してから、反射波としての電波を受信するまでの往復の時間に基づいて、測定対象物までの距離を測定することができる。一般に、測定対象物までの距離を測定するレーダ装置では、測定対象物が近いほど、多重反射の影響によって検出精度が低下する。測定対象物が近いほど往復の時間が短く、多重反射ではない受信波と、多重反射波との区別がつき難くなるからである。検出精度が低下すると、検出可能な最短距離(最短検出距離)が長くなる。本実施形態のアンテナ装置100は、このような問題を解決する。
【0014】
多重反射波とは、基板101、導波管110、送受信部120、電波レンズ130、及び電波吸収体140によって囲まれる空間内において、2回以上反射された電波である。送受信部120から+Y方向に送信される電波については、例えば、電波レンズ130を透過せずに電波レンズ130の-Y方向側の表面によって反射されることによって多重反射波が生じることがある。電波レンズ130を-Y方向側に透過した電波については、例えば、送受信部120に直接的に到来せずに、導波管110の内壁面110A等で反射されることによって多重反射波が生じることがある。
【0015】
アンテナ装置100が送受信する電波は、一例としてミリ波帯の電波である。ミリ波は、30GHz~300GHzの周波数帯の電波であり、光と略同等に振る舞う。なお、アンテナ装置100が送受信する電波は、ミリ波帯以外の帯域に属する周波数の電波であってもよい。
【0016】
<基板101の構成>
基板101は、送受信部120を実装する基板であり、一例としてFR-4(Flame Retardant type4)規格の配線基板を用いることができる。基板101は、導波管110の-Y方向側に固定される。
【0017】
<導波管110の構成>
導波管110は、一例として円筒状で中空の円形導波管である。導波管110は、開口部111、開口部112、内壁面110A、及び取付部115を有する。導波管110の内部は、電波が伝搬する導波路である。内壁面110Aは第1内壁面の一例であり、開口部111は、第1開口部の一例であり、開口部112は第2開口部の一例である。導波管110の-Y方向側は、第1開口部側の一例であり、+Y方向側は、第2開口部側の一例である。また、+Y方向は、送受信部120の送信アンテナ120Txの放射方向の一例である。
【0018】
図1A図1B図1C、及び図2Aでは、XYZ座標の原点は開口部111の中心と一致しており、導波管110の中心軸Cは、Y軸と一致している。また、中心軸Cは、電波レンズ130の光軸と一致する。図中では、見えやすくするために、中心軸CとY軸をずらして示す。
【0019】
内壁面110Aは、円筒状で中空の導波管110の内壁面である。導波管110は、一例として、開口部111の開口径と開口部112の開口径とが等しい円筒状の形状を有する。このため、内壁面110Aは、直径が一定の円筒形状を有する。なお、開口部111の開口径の方が開口部112の開口径よりも大きくてもよく、開口部112の開口径の方が開口部111の開口径よりも大きくてもよい。
【0020】
開口部111は、導波管110の-Y方向側の端に位置する開口である。開口部111は、開口面視で円形である。
【0021】
開口部112は、導波管110の+Y方向側の端に位置する開口である。電波が伝搬する導波管110として機能する区間は、開口部111と開口部112との間の区間である。
【0022】
開口部112は、開口面視で円形である。開口部112の開口径は、一例として、開口部111の開口径と等しい。開口部112には、取付部117によって電波レンズ130が取り付けられる。
【0023】
取付部115は、導波管110の-Y方向側の端において、平面視で外側に向かって延在する部分であり、一例として平面視で正方形の外縁を有する。取付部115は、基板101を導波管110に取り付けるために設けられている。取付部115は、基板101の背面側(-Y方向側)を覆うカバー105の枠部105Bによって平面視における外縁が保持されている。取付部115は、一例として樹脂製である。
【0024】
取付部117は、導波管110の+Y方向側の端部において、電波レンズ130を導波管110に取り付ける枠状の部材である。取付部117は、平面視で円環状であり、導波管110の+Y方向側の外周面に嵌め込まれ、開口部112の+Y方向側の位置において、電波レンズ130を保持する。電波レンズ130が取付部117によって保持された状態で、電波レンズ130の光軸は、導波管110の中心軸Cと一致する。取付部117は、一例として樹脂製である。
【0025】
以上のような導波管110に取付部117によって電波レンズ130を取り付けた状態で、電波レンズ130の焦点は、開口部111の開口面視における中心に位置する。すなわち、中心軸Cの延在方向における導波管110の長さは、電波レンズ130の焦点が開口部111の開口面上に位置するように設定されている。
【0026】
<送受信部120の構成>
送受信部120は、基板101の+Y方向側の表面に実装されている。送受信部120は、集積回路チップの一例である。送受信部120は、基板121、送信アンテナ120Tx、及び受信アンテナ120Rxを有する。基板121は、平面視で基板101よりも小さく、一例として正方形である。基板121は、平面視で開口部111の中央部に位置するように設けられており、より具体的には、基板121の平面視における中心が中心軸C上に位置するように配置されている。また、基板121の+Y方向側の表面のY方向の位置は、開口部111のY方向の位置と一致している。
【0027】
送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、基板121の+Y方向側の表面において、Z方向に間隔を空けて設けられている。送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、一例として同一形状で同一サイズのアンテナである。送信アンテナ120Txは、導波管110を介して電波を送信し、受信アンテナ120Rxは、導波管110を介して電波を受信する。
【0028】
送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、平面視で中心軸Cに対して点対称になるように配置されている。送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを平面視で視ることは、開口部111の開口面視(平面視)で送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを視ることと同義である。
【0029】
送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxが平面視で中心軸Cに対して点対称になるとは、平面視における送信アンテナ120Txの中心と、平面視における受信アンテナ120Rxの中心とが、平面視で中心軸Cに対して点対称な配置になることである。平面視における送信アンテナ120Txの中心と、平面視における受信アンテナ120Rxの中心とは、ともにZ軸上に位置する。中心軸Cは、電波レンズ130の光軸と一致するため、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、電波レンズ130の光軸からずらして配置されている。
【0030】
また、平面視における送信アンテナ120Txの中心と、平面視における受信アンテナ120Rxの中心とは、ともにZ軸上に位置し、且つ、平面視で中心軸Cに対して点対称になるように配置されているため、電波レンズ130の光軸を含むYZ平面で導波管110を切断して得る切断面において、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、中心軸Cに対して点対称になるように配置されていることになる。
【0031】
送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxをともに中心軸C上(電波レンズ130の光軸)に配置することはできないため、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxの送受信特性を揃えるために、このように配置している。なお、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、例えば、ループアンテナ、パッチアンテナ、モノポールアンテナ、又はダイポールアンテナ等で実現可能である。
【0032】
中心軸Cの延在方向における導波管110の長さは、電波レンズ130の焦点が開口部111の開口面上に位置するように設定されているため、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxの電波レンズ130の光軸(導波管110の中心軸C)の延在方向における位置は、電波レンズ130の焦点位置と等しい。また、基板121の+Y方向側の表面のY方向の位置は、開口部111のY方向の位置と一致しているため、電波レンズ130の焦点は、基板121の+Y方向側の表面上における送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxの中心同士の中心(中心軸C上の点)と一致する。
【0033】
送信アンテナ120Txから放射される電波(送信波)の強度は、送信アンテナ120Txの中心と電波レンズ130の中心とを結ぶ方向において最も強くなり、受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)の強度は、受信アンテナ120Rxの中心と電波レンズ130の中心とを結ぶ方向において最も強くなる。電波レンズ130の中心は、電波レンズ130の光軸(導波管110の中心軸C)上において、電波レンズ130のY方向の厚さの中心に位置する。
【0034】
<電波レンズ130の構成>
電波レンズ130は、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxで送受信する電波を双方向に集束させることができるレンズであればよく、一例として平面視で円形の両凸レンズである。ただし、電波レンズ130は、片凸レンズであってもよい。両凸レンズ及び片凸レンズは凸レンズの一例である。また、電波レンズ130は、フレネルゾーンを有する平板レンズ、又は、メタマテリアルを有する平板レンズ等の平板レンズであってもよいが、ここでは両凸レンズである形態について説明する。
【0035】
<電波吸収体140の構成>
電波吸収体140は、導波管110の内部のうち、-Y方向側の約半分の空間内に配置されている。電波吸収体140は、一例として、磁性体や誘電体の粉末等を混合した樹脂を成型した部材であり、電波の損失を生じさせる部材である。電波吸収体140は、開口部141、開口部142、及び内壁面143を有する。開口部141は第3開口部の一例であり、開口部142は第4開口部の一例であり、内壁面143は第2内壁面の一例である。
【0036】
電波吸収体140は、開口部141及び開口部142の間で内壁面143に囲まれる略円錐台状の空間のY軸に平行な中心軸が、導波管110の中心軸Cと一致するように配置されている。また、導波管110の中心軸Cは、電波レンズ130の光軸と一致するため、電波吸収体140の中心軸は、導波管110の中心軸Cと、電波レンズ130の光軸と一致する。
【0037】
開口部141は、開口部111側に設けられ、開口部111の開口面視において開口部111及び基板101よりも小さく、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを囲む開口部である。また、開口部141は、開口面視で開口部142よりも小さく、同心円状に配置されている。開口部141は、一例としてY方向の位置を導波管110の開口部111と合わせてあり(図2A参照)、開口面視で開口部141と開口部111の中心同士が一致する。
【0038】
開口部142は、放射方向において開口部141よりも奥側(開口部112側)に設けられ、開口部141よりも大きい開口部である。開口部142は、開口面視で開口部141よりも大きく、同心円状に配置されている。開口部142のY方向の位置は、図2Aに示すように、導波管110の開口部111及び112の中央よりも少し+Y方向側である。電波吸収体140の開口部141及び142の間の長さは、導波管110のY方向の長さや内壁面143の形状等に応じて決定すればよい。
【0039】
内壁面143は、開口部141及び開口部142を接続する内壁面である。内壁面143は、-Y方向側から+Y方向側にかけて配置される、内壁面143A、内壁面143B、内壁面143Cを有する。
【0040】
内壁面143Aの-Y方向側の端は、開口部141である。内壁面143Aは、開口部141から+Y方向に向かって円錐台状に延在する壁面(円錐台の外周面に相当する壁面)であり、内壁面143Aの+Y方向側の端には、内壁面143Bが接続されている。内壁面143Aは、一例として、電波吸収体140のY方向の長さの約半分の区間にわたって設けられている。
【0041】
内壁面143Bは、直径が一定の円筒状の壁面(円筒の内周面に相当する壁面)である。内壁面143Bは、一例として、電波吸収体140のY方向の長さの約1/3の区間にわたって設けられている。内壁面143Bの+Y方向側の端には、内壁面143Cが接続されている。
【0042】
内壁面143Cの+Y方向側の端は開口部142である。内壁面143Cは、開口部142から-Y方向に向かって円錐台状に延在する壁面(円錐台の外周面に相当する壁面)であり、内壁面143Cの-Y方向側の端には、内壁面143Bが接続されている。内壁面143CのY方向の長さは、一例として、内壁面143A及び143Bよりも短く、電波吸収体140のY方向の長さの約1/10の区間にわたって設けられている。
【0043】
電波吸収体140は、上述のような内壁面143に囲まれる空間を有することで、送信アンテナ120Txから+Y方向(放射方向)に放射される一次放射波が内壁面143に接触しないように構成されている。すなわち、内壁面143は、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置する。一次放射波とは、送信アンテナ120Txから放射され、反射されずに伝搬する電波である。このような構成の詳細については、図2Bを用いて説明する。
【0044】
<内壁面143の位置>
図2Bは、電波吸収体140の内壁面143の位置の一例を説明する図である。図2Bは、図2Aに対して、送信アンテナ120Txから放射される電波(送信波)、受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)、電波レンズ130の開口角α、電波レンズ130の直径D、及び、電波レンズ130の焦点距離FPを追加した図である。送信アンテナ120Txから放射される電波(送信波)は、一次放射波である。なお、図2Bでは、見やすさを優先して、一部の符号を省略する。
【0045】
電波レンズ130の開口角αは、電波レンズ130の焦点から見た電波レンズ130の開口角であり、電波レンズ130の焦点に送受信アンテナを置いて、一次放射器となる送受信アンテナの一次電波放射角度に相当する角度である。
【0046】
電波レンズ130の開口角αは、電波レンズ130の直径D、電波レンズ130の焦点距離FPを用いると、次式(1)で表される。開口角αは、送受信部120の送受信アンテナ(送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rx)の種類と具体的な構造に依存する。
【0047】
【数1】
【0048】
電波吸収体140の内壁面143は、開口角αで表される領域の外側に位置する。開口角αで表される領域は、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路に含まれるため、内壁面143は、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置することになる。電波吸収体140は、開口角αで表される領域の外側に位置する形状の内壁面143を有することで、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路を妨げないように構成されている。また、電波吸収体140は、開口角αで表される領域の外側に位置することで、アンテナ装置100の外部から電波レンズ130を通過し受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)の経路を妨げないよう構成されている。このため、アンテナ装置100は、放射経路の内部で送信波及び受信波が減衰することで検出感度低下することがなく、測定対象物を高精度に検出することができる。
【0049】
図2Bには、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波としての電波(送信波)を太い破線で示し、受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)を太い一点鎖線で示す。一次放射波は、太い破線で示すように、電波レンズ130の開口角αの範囲内で放射され、内壁面143に到達せずに電波レンズ130を透過する。また、受信波は、太い一点鎖線で示すように、電波レンズ130を透過して、内壁面143に到達せずに受信アンテナ120Rxに到達する。
【0050】
なお、図2Bでは、電波レンズ130の焦点から見て、導波管110の開口部112よりも電波レンズ130の開口角の方が小さい。しかしながら、電波レンズ130の焦点から見て、導波管110の開口部112の開口角の方が電波レンズ130の開口角よりも小さい場合には、内壁面143が次式(2)で求まる開口部112の開口角βで表される領域の外側に位置する形状を有するようにすればよい。
【0051】
図2Bでは、電波レンズ130の焦点の位置は、電波レンズ130の光軸と送受信部120の基板121の表面との交点である。このため、電波レンズ130の光軸と送受信部120の基板121の表面との交点から見た開口部112の開口角βは、開口部112の直径をDd、交点と開口部112の中心との間の距離をLとすると、次式(2)を満たせばよい。
【0052】
【数2】
【0053】
<電波吸収体140による反射波の吸収>
図2Cは、電波吸収体140による反射波の吸収の一例を説明する図である。図2Cでは、図2Bに示した受信波や角部の寸法を省略し、一部の符号も省略する。図2Cには、送信アンテナ120Txから放射され、電波レンズ130の中央部を透過する送信波1と、送信アンテナ120Txから放射され、電波レンズ130の中央部よりも外側を透過する送信波2及び3とを示す。
【0054】
送信波1は、電波レンズ130の-Y方向側の表面で殆ど反射されずに透過する。送信波2は、電波レンズ130の中央部よりも外側を透過する際に、一部が反射されて反射波2が生じる。反射波2は、導波管110の内壁面110Aに向かって反射されるが、電波吸収体140の内壁面143に到達するため、電波吸収体140によって吸収される。なお、仮に電波吸収体140が存在しない場合には、反射波2は、電波レンズ130の-Y方向側の表面で反射された後に細い破線で示すように導波管110の内壁面110Aで反射され、多重反射波として送受信部120に到達する場合がある。
【0055】
また、送信波3は、送信波2と同様に、電波レンズ130の中央部よりも外側を透過する際に、一部が反射されて反射波3が生じる。反射波3は、導波管110の内壁面110Aに向かって反射されるが、電波吸収体140の内壁面143に到達するため、電波吸収体140によって吸収される。なお、仮に電波吸収体140が存在しない場合には、反射波3は、電波レンズ130の-Y方向側の表面で反射された後に細い破線で示すように導波管110の内壁面110Aで反射され、多重反射波として送受信部120に到達する場合がある。
【0056】
このような送信波2及び3の他に、送信波1のように送信波2及び3よりも電波レンズ130の中央部に到達する送信波が電波レンズ130の-Y方向側の表面で反射される場合や、送信波2及び3よりも電波レンズ130の外側に到達する送信波が電波レンズ130の-Y方向側の表面で反射される場合がある。仮に電波吸収体140が存在しない場合には、これらの反射波がさらに反射されることで多重反射波が生じ、送受信部120に到達する場合がある。
【0057】
また、仮に電波吸収体140が存在しない場合には、基板101の表面で反射されることによって、多重反射波が生じる場合もある。
【0058】
しかしながら、実際には、図2Cに示すように電波吸収体140が配置されているため、殆どの多重反射波を吸収することができる。このように、多重反射波を電波吸収体140で吸収できるため、受信アンテナ120Rxで多重反射波が受信されることを抑制できる。
【0059】
受信アンテナ120Rxで多重反射波が受信されると、電波レンズ130を透過して直接的に受信アンテナ120Rxに到来する受信波と区別が付かなくなり、電波レンズ130を透過して直接的に受信アンテナ120Rxに到来する受信波の検出精度が低下する。測定対象物が近いほど、多重反射の影響によって検出精度が低下するため、最短検出距離が長くなる。
【0060】
実施形態のアンテナ装置100は、上述のような電波吸収体140を含むので、受信アンテナ120Rxで多重反射波が受信されることを抑制できる。実施形態のアンテナ装置100は、受信アンテナ120Rxでの受信波の検出精度を向上させることで、最短検出距離の短縮化を実現し、検出性能を向上させることができる。
【0061】
<実験結果>
図3は、アンテナ装置100を用いて行った実験の結果の一例を示す図である。図3の実験結果は、アンテナ装置100と測定対象物との間の距離に対する受信アンテナ120Rxの受信強度の一例を表す図である。図3には、比較用のアンテナ装置についての実験結果の一例も示す。比較用のアンテナ装置は、アンテナ装置100から電波吸収体140を省いた構成を有する。
【0062】
図3において、横軸は、アンテナ装置100及び比較用のアンテナ装置と測定対象物との間の距離(mm)を表し、縦軸は、アンテナ装置100及び比較用のアンテナ装置の受信アンテナ120Rxの受信強度(単位なし)を表す。受信アンテナ120Rxの受信強度は、受信波のみの強度に限らず、多重反射波の強度を含み得る。
【0063】
図3には、アンテナ装置100の受信アンテナ120Rxの受信強度を実線で示し、比較用のアンテナ装置の受信アンテナ120Rxの受信強度を破線で示す。また、ノイズのレベルを一点鎖線で示す。
【0064】
また、図3には、受信強度の閾値を二点鎖線で示す。受信強度の閾値は、アンテナ装置100又は比較用のアンテナ装置に接続されたコンピュータが、測定対象物の有無を判定する際に用いる閾値であり、受信強度が閾値以上になると、測定対象物が有ると判定される。図3では、閾値は、一例として、アンテナ装置100とコンピュータとの間に設けられたADC(Analog to Digital Converter)の出力データの値で200である。
【0065】
また、図3には、一例として、測定対象物が有る場合の受信強度を示すために、測定対象物を2000mmの位置に置いて、アンテナ装置100の受信アンテナ120Rxで受信した受信強度を示す。このため、実線の特性の受信強度は、1600mmの位置でADCの出力データにピークが現れ、出力データが約1600に増大している。
【0066】
アンテナ装置100と比較用のアンテナ装置の受信強度を比べると、距離が長い側では、ともに閾値未満であるが、距離が短くなるにつれて、ともに増大する。比較用のアンテナ装置の受信強度は、距離が400mmくらいから急激に増大し、ピークは約9500である。これは、多重反射波の影響である。実際に、比較用のアンテナ装置の最短検出距離は400mmであった。すなわち、比較用のアンテナ装置では、距離が400mmのときに受信アンテナ120Rxの受信強度が閾値以上になっている。なお、最短検出距離は、検出可能な最も短い距離である。すなわち、比較用のアンテナ装置において検出可能な距離は400mm以上に制限される。
【0067】
これに対して、アンテナ装置100の受信強度は、距離が400mmよりも短くなっても閾値以下であり、受信強度が閾値以上になるのは、距離が160mmのときである。すなわち、アンテナ装置100の最短検出距離は160mmであった。また、距離が160mmよりも短くなっても、ピークは約2100であり、比較用のアンテナ装置のピーク(約9500)よりも大幅に低減されていることを確認できた。
【0068】
以上のように、図3の実験結果から、比較用のアンテナ装置に対して電波吸収体140を追加した構成のアンテナ装置100は、多重反射波の影響を大幅に軽減でき、最短検出距離は400mmから160mmへと大幅に短縮化された。すなわち、電波吸収体140で多重反射波を吸収することで、検出性能を大幅に改善できることを確認できた。検出性能は、一例として最短検出距離である。
【0069】
<効果>
アンテナ装置100は、基板101と、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを有し、基板101に実装される送受信部120と、基板101側に設けられ開口面視で送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを囲む開口部111と、送信アンテナ120Txの放射方向において開口部111よりも奥側に設けられる開口部112と、開口部111及び開口部112を接続する内壁面110Aとを有する導波管110と、開口部112に固定される電波レンズ130と、内壁面110Aの内側に設けられる筒状の電波吸収体140とを備える。電波吸収体140は、開口部111側に設けられ、開口部111の開口面視において開口部111及び基板101よりも小さく、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを囲む開口部141と、放射方向において開口部141よりも奥側に設けられ、開口部141よりも大きい開口部142と、開口部141及び開口部142を接続する内壁面143とを有する。このため、基板101の表面での反射を抑制して、多重反射波の発生を抑制することができる。
【0070】
したがって、多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0071】
また、電波吸収体140の開口部142は、放射方向において、導波管110の開口部112よりも開口部111側に位置するので、電波レンズ130に近い側において、電波吸収体140が送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路上に位置しない構成を実現でき、多重反射の影響をより低減し、検出性能をより向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0072】
また、電波吸収体140の内壁面143は、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置するので、電波吸収体140が送信アンテナ120Txから放射される一次放射波の放射経路上に位置しない構成をより確実に実現でき、多重反射の影響をより確実に低減し、より確実に検出性能を向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0073】
また、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxは、電波レンズ130の光軸を挟んで配置されている。このため、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを中心軸C上に配置することが難しいという制約の下で、送信アンテナ120Tx及び受信アンテナ120Rxを中心軸Cに対して対称的に配置することで、送信波及び受信波の多重反射の影響をより確実に低減し、より確実に検出性能を向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0074】
また、電波レンズ130の焦点から見た電波レンズ130の開口角αは、電波レンズ130の直径をD、電波レンズ130の焦点距離をFPとすると、次式(3)で表され、電波吸収体140の内壁面143は、開口角αで表される領域の外側に位置する。
【0075】
【数3】
【0076】
このため、電波吸収体140は、開口角α(図2B参照)で表される領域の外側に位置することで、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波(送信波)と、アンテナ装置100の外部から電波レンズ130を通過し受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)との経路を妨げないよう構成されている。このため、アンテナ装置100は、放射経路の内部で送信波及び受信波が減衰することで検出感度低下することがなく、測定対象物を高精度に検出することができる。また、電波レンズ130の焦点から見て、導波管110の開口部112よりも電波レンズ130の開口角αの方が小さい場合に、電波レンズ130の開口角αで表される領域の外側に位置する内壁面143を有する電波吸収体140を用いて、多重反射の影響をより確実に低減し、より確実に検出性能を向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0077】
また、電波レンズ130の光軸と送受信部120の表面との交点から見た開口部112の開口角βは、開口部112の直径をDd、前記交点と開口部112の中心との間の距離をLとすると、次式(4)を満たす。
【0078】
【数4】
【0079】
このため、電波レンズ130の光軸と送受信部120の表面との交点から見た開口部112の開口角βの方が電波レンズ130の開口角αよりも小さい場合に、開口部112の開口角βで表される領域の外側に位置する内壁面143を有する電波吸収体140を用いて、多重反射の影響をより確実に低減し、より確実に検出性能を向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0080】
<第1変形例>
図4A及び図4Bは、実施形態の第1変形例のアンテナ装置100M1及び電波吸収体140M1の構成の一例をそれぞれ示す図である。アンテナ装置100M1は、実施形態のアンテナ装置100の電波吸収体140を電波吸収体140M1に置き換えた構成を有する。その他の構成は同様であるため、ここでは電波吸収体140M1について説明する。
【0081】
電波吸収体140M1は、開口部141及び142と、内壁面143M1とを有する。開口部141及び142は、開口面視で矩形状であり、開口部141の方が開口部142よりも小さい。開口部141の開口サイズは、送受信部120の外縁のサイズに合わせられており、開口部141は、送受信部120の外縁との間に僅かな隙間を空けて外縁を囲むように設けられる。
【0082】
内壁面143M1は、-Y方向側から+Y方向側にかけて、内壁面143A及び内壁面143Bを有する。内壁面143Aの-Y方向側の端は開口部141であり、内壁面143Aは、四角筒の内側面に相当する形状を有し、+Y方向側の端には内壁面143Bが接続されている。
【0083】
内壁面143Bは、内壁面143Aの+Y方向側の端から四角錐台状に延在する側面であり、内壁面143Bの+Y方向側の端は、開口部142である。
【0084】
このような電波吸収体140M1を用いるアンテナ装置100M1は、実施形態のアンテナ装置100と同様に、基板101の表面での反射を抑制して、多重反射波の発生を抑制することができる。
【0085】
したがって、多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置100M1を提供することができる。また、開口部141の開口サイズは、送受信部120の外縁のサイズに合わせられているため、開口部141と送受信部120との間にある基板101の表面における反射を低減することができ、多重反射を効果的に抑制することができる。また、電波吸収体140M1は、開口角α(図2B参照)で表される領域の外側に位置することで、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波(送信波)と、アンテナ装置100の外部から電波レンズ130を通過し受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)との経路を妨げないよう構成されている。このため、アンテナ装置100M1は、放射経路の内部で送信波及び受信波が減衰することで検出感度低下することがなく、測定対象物を高精度に検出することができる。
【0086】
<第2変形例>
図5A及び図5Bは、実施形態の第2変形例のアンテナ装置100M2及び電波吸収体140M2の構成の一例をそれぞれ示す図である。アンテナ装置100M2は、実施形態のアンテナ装置100の電波吸収体140を電波吸収体140M2に置き換えた構成を有する。その他の構成は同様であるため、ここでは電波吸収体140M2について説明する。
【0087】
電波吸収体140M2は、開口部141及び142と、内壁面143M2とを有する。開口部141は開口面視で矩形状であり、開口部142は、開口面視で円形であり、開口部141の方が開口部142よりも小さい。開口部141及び142の開口面視における中心は、中心軸C上に位置する。開口部141の開口サイズは、送受信部120の外縁のサイズに合わせられており、開口部141は、送受信部120の外縁との間に僅かな隙間を空けて外縁を囲むように設けられる。
【0088】
内壁面143M2は、-Y方向側から+Y方向側にかけて、内壁面143A、143B、143C、143D、及び143Eを有する。内壁面143Aの-Y方向側の端は開口部141であり、内壁面143Aは、四角筒の内側面に相当する形状を有し、+Y方向側の端には内壁面143Bが接続されている。
【0089】
内壁面143Bは、内壁面143Aの+Y方向側の端から四角錐台状に延在する側面であり、+Y方向側の端には内壁面143Cが接続されている。内壁面143Cは、XZ平面に平行な平面であり、外縁は円形で、電波吸収体140M2の開口面視における中央には、内壁面143Bの+Y方向側の端が開口部として接続されている。内壁面143Cの外縁には、内壁面143Dが接続される。
【0090】
内壁面143Dは、内壁面143Cの外縁から円筒状に延在する側面であり、Y方向において直径は一定である。内壁面143Dの+Y方向側の端には、内壁面143Eが接続される。
【0091】
内壁面143Eは、内壁面143Dの+Y方向側の端から円錐台状に延在する側面であり、内壁面143Eの+Y方向側の端は、開口部142である。
【0092】
このような電波吸収体140M2を用いるアンテナ装置100M2は、実施形態のアンテナ装置100と同様に、基板101の表面での反射を抑制して、多重反射波の発生を抑制することができる。
【0093】
したがって、多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置100M2を提供することができる。また、開口部141の開口サイズは、送受信部120の外縁のサイズに合わせられているため、開口部141と送受信部120との間にある基板101の表面における反射を低減することができ、多重反射を効果的に抑制することができる。また、電波吸収体140M2は、開口角α(図2B参照)で表される領域の外側に位置することで、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波(送信波)と、アンテナ装置100の外部から電波レンズ130を通過し受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)との経路を妨げないよう構成されている。このため、アンテナ装置100M2は、放射経路の内部で送信波及び受信波が減衰することで検出感度低下することがなく、測定対象物を高精度に検出することができる。
【0094】
<第3変形例>
図6A及び図6Bは、実施形態の第3変形例のアンテナ装置100M3及び電波吸収体140M3の構成の一例をそれぞれ示す図である。アンテナ装置100M3は、実施形態のアンテナ装置100の電波吸収体140を電波吸収体140M3に置き換えた構成を有する。その他の構成は同様であるため、ここでは電波吸収体140M3について説明する。
【0095】
電波吸収体140M3は、開口部141及び142と、内壁面143M3とを有する。開口部141及び142は開口面視で円形であり、開口部141の方が開口部142よりも小さい。開口部141及び142の開口面視における中心は、中心軸C上に位置する。
【0096】
内壁面143M3は、-Y方向側から+Y方向側にかけて、内壁面143A、143B、143C、143D、143E、及び143Fを有する。内壁面143Aの-Y方向側の端は開口部141であり、内壁面143Aは、円筒の内側面に相当する形状を有し、+Y方向側の端には内壁面143Bが接続されている。
【0097】
内壁面143Bは、内壁面143Aの+Y方向側の端から円錐台状に延在する側面であり、+Y方向側の端には内壁面143Cが接続されている。内壁面143Cは、XZ平面に平行な平面で構成され、開口面視で円環状である。電波吸収体140M3の開口面視における内壁面143Cの中央には、内壁面143Bの+Y方向側の端が開口部として接続されている。内壁面143Cの外縁には、内壁面143Dが接続される。
【0098】
内壁面143Dは、内壁面143Cの+Y方向側の端から円錐台状に延在する側面であり、+Y方向側の端には内壁面143Eが接続されている。内壁面143Eは、内壁面143Dの+Y方向側の端から円筒状に延在する側面であり、Y方向において直径は一定である。内壁面143Eの+Y方向側の端には、内壁面143Fが接続される。
【0099】
内壁面143Fは、内壁面143Eの+Y方向側の端から円錐台状に延在する側面であり、内壁面143Fの+Y方向側の端は、開口部142である。
【0100】
このような電波吸収体140M3を用いるアンテナ装置100M3は、実施形態のアンテナ装置100と同様に、基板101の表面での反射を抑制して、多重反射波の発生を抑制することができる。
【0101】
したがって、多重反射の影響を低減し、検出性能を向上させたアンテナ装置100M3を提供することができる。また、内壁面143M3は、第1変形例及び第2変形例の電波吸収体140M1及びM2の内壁面143M1及び143M2よりも、中心軸Cから離れる方向により拡がっており、図2Bに示す開口角αで表される領域のより外側に位置する。このため、第3変形例のアンテナ装置100M3は、第1変形例及び第2変形例のアンテナ装置100M1及び100M2よりも多重反射を抑制でき、多重反射の影響をより低減し、検出性能をより向上させたアンテナ装置100M3を提供することができる。また、電波吸収体140M3は、開口角α(図2B参照)で表される領域の外側に位置することで、送信アンテナ120Txから放射される一次放射波(送信波)と、アンテナ装置100M3の外部から電波レンズ130を通過し受信アンテナ120Rxで受信される電波(受信波)との経路を妨げないよう構成されている。このため、アンテナ装置100M3は、放射経路の内部で送信波及び受信波が減衰することで検出感度低下することがなく、測定対象物を高精度に検出することができる。
【0102】
なお、実施形態のアンテナ装置100の電波吸収体140は、第3変形例のアンテナ装置100M3の電波吸収体140M3よりも、中心軸Cから離れる方向により拡がっており、図2Bに示す開口角αで表される領域のより外側に位置する。このため、実施形態のアンテナ装置100は、第3変形例のアンテナ装置100M3よりも多重反射を抑制でき、多重反射の影響をより低減し、検出性能をより向上させたアンテナ装置100を提供することができる。
【0103】
以上、本開示の例示的な実施形態のアンテナ装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0104】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
基板と、
送信アンテナ及び受信アンテナを有し、前記基板に実装される集積回路チップと、
前記基板側に設けられ開口面視で前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第1開口部と、前記送信アンテナの放射方向において前記第1開口部よりも奥側に設けられる第2開口部と、前記第1開口部及び前記第2開口部を接続する第1内壁面とを有する導波管と、
前記第2開口部に固定される電波レンズと、
前記第1内壁面の内側に設けられる筒状の電波吸収体と
を備え、
前記電波吸収体は、
前記第1開口部側に設けられ、前記第1開口部の開口面視において前記第1開口部及び前記基板よりも小さく、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第3開口部と、
前記放射方向において前記第3開口部よりも奥側に設けられ、前記第3開口部よりも大きい第4開口部と、
前記第3開口部及び前記第4開口部を接続する第2内壁面と
を有する、アンテナ装置。
(付記2)
前記電波吸収体の前記第4開口部は、前記放射方向において、前記導波管の前記第2開口部よりも前記第1開口部側に位置する、付記1に記載のアンテナ装置。
(付記3)
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記送信アンテナから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置する、付記1又は2に記載のアンテナ装置。
(付記4)
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記電波レンズの光軸を挟んで配置されている、付記1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
(付記5)
前記電波レンズの焦点から見た前記電波レンズの開口角αは、前記電波レンズの直径をD、前記電波レンズの焦点距離をFPとすると、次式(1)で表され、
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記開口角αで表される領域の外側に位置する、付記4に記載のアンテナ装置。
【0105】
【数5】
(付記6)
前記電波レンズの光軸と前記集積回路チップの表面との交点から見た前記第2開口部の開口角βは、前記第2開口部の直径をDd、前記交点と前記第2開口部の中心との間の距離をLとすると、次式(2)を満たす、付記4又は5に記載のアンテナ装置。
【0106】
【数6】
【符号の説明】
【0107】
100、100M1、100M2、100M3 アンテナ装置
101 基板
110 導波管
110A 内壁面(第1内壁面の一例)
111 開口部(第1開口部の一例)
112 開口部(第2開口部の一例)
120 送受信部(集積回路チップの一例)
120Tx 送信アンテナ
120Rx 受信アンテナ
121 基板
130 電波レンズ
140、140M1、140M2、140M3 電波吸収体
141 開口部(第3開口部の一例)
142 開口部(第4開口部の一例)
143、143M1、143M2、143M3 内壁面(第2内壁面の一例)
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
送信アンテナ及び受信アンテナを有し、前記基板に実装される集積回路チップと、
前記基板側に設けられ開口面視で前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第1開口部と、前記送信アンテナの放射方向において前記第1開口部よりも奥側に設けられる第2開口部と、前記第1開口部及び前記第2開口部を接続する第1内壁面とを有する導波管と、
前記第2開口部に固定される電波レンズと、
前記第1内壁面の内側に設けられる筒状の電波吸収体と
を備え、
前記電波吸収体は、
前記第1開口部側に設けられ、前記第1開口部の開口面視において前記第1開口部及び前記基板よりも小さく、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを囲む第3開口部と、
前記放射方向において前記第3開口部よりも奥側に設けられ、前記第3開口部よりも大きい第4開口部と、
前記第3開口部及び前記第4開口部を接続する第2内壁面と
を有する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記電波吸収体の前記第4開口部は、前記放射方向において、前記導波管の前記第2開口部よりも前記第1開口部側に位置する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記送信アンテナから放射される一次放射波の放射経路よりも外側に位置する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、前記電波レンズの光軸を挟んで配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記電波レンズの焦点から見た前記電波レンズの開口角αは、前記電波レンズの直径をD、前記電波レンズの焦点距離をFPとすると、次式(1)で表され、
前記電波吸収体の前記第2内壁面は、前記開口角αで表される領域の外側に位置する、請求項4に記載のアンテナ装置。
【数1】
【請求項6】
前記電波レンズの光軸と前記集積回路チップの表面との交点から見た前記第2開口部の開口角βは、前記第2開口部の直径をDd、前記交点と前記第2開口部の中心との間の距離をLとすると、次式(2)を満たす、請求項4に記載のアンテナ装置。
【数2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
【数1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
【数2】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
【数3】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
【数4】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
【数5】
(付記6)
前記電波レンズの光軸と前記集積回路チップの表面との交点から見た前記第2開口部の開口角βは、前記第2開口部の直径をDd、前記交点と前記第2開口部の中心との間の距離をLとすると、次式(2)を満たす、付記4又は5に記載のアンテナ装置。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
【数6】