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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038627
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/185 20060101AFI20240313BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240313BHJP
   B41J 11/06 20060101ALI20240313BHJP
   B65H 5/22 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B41J2/185 101
B41J2/01 305
B41J11/06
B65H5/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142786
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】細江 祐規
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA33
2C056JC17
2C058AB17
2C058AC07
2C058AE02
2C058AE08
2C058AE13
2C058AF31
2C058DA13
2C058DA38
3F049FB00
3F049LA01
3F049LB03
3F049LB08
(57)【要約】
【課題】印刷媒体を安定して吸引搬送するとともに、ミストによる画質の劣化を防止することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】
印刷媒体Pを吸着して搬送する搬送ベルト11と、搬送ベルト11によって搬送される印刷媒体P上に載置される可撓性を有するシート部材30であって、印刷媒体Pに液滴を吐出する吐出部の周囲に対応する搬送ベルト11上の範囲を覆うシート部材30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を吸着して搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される印刷媒体上に載置される可撓性を有するシート部材であって、前記印刷媒体に液滴を吐出する吐出部の周囲に対応する前記搬送部上の範囲を覆うシート部材とを備えた搬送装置。
【請求項2】
前記シート部材が、前記吐出部から吐出された液滴を通過させる孔を有する請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記シート部材の前記搬送方向の上流側の端部を保持する保持部を有し、
前記保持部が、前記シート部材の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、前記シート部材が前記搬送部の搬送面に向けて付勢するように前記シート部材を保持する請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記シート部材と前記搬送部の間を前記印刷媒体が通過し、
前記シート部材の前記印刷媒体と接する面に凹凸が形成されている請求項1記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置における印刷媒体の搬送装置として、搬送ベルトを用いた搬送装置が提案されている。具体的には、搬送ベルトの印刷媒体の搬送面の裏側の面に吸引ファンを設け、吸引ファンの回転によって搬送ベルトに形成された多数の吸引孔に負圧を発生させ、これにより搬送ベルトに印刷媒体を吸着させる搬送装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-280321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような吸引搬送方式では負圧を生成するための吸引ファンの出力によって、印刷媒体を吸着する力(吸着力)が決まる。印刷媒体が搬送面から離れないように安定して印刷媒体を搬送するためには高い吸着力が求められるため、吸引ファンの出力はできるだけ高い出力であることが望ましい。
【0006】
しかしながら、吸引ファンの出力を高くした場合、搬送ベルトの上面に吸引による風(吸引風)が発生し、ファンの出力が高いほど、吸引風の速度は大きくなる。吸引搬送ではインク吐出時に発生するミスト(主滴以外の微小インク滴)が、上述した吸引風によって流されて、主滴とは離れた位置に着弾する現象が発生し、画像がぼやけて見える画像劣化が発生する。図11は、吸引風によって流されるミストを説明するための図である。
【0007】
また、吸引風の速度が大きくなると、ミストが流される距離が大きくなり、主滴からより離れた位置にミストが着弾するため、画像品質のさらなる劣化が生じる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、印刷媒体を安定して吸引搬送することができるとともに、ミストによる画質の劣化を防止することができる搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送装置は、印刷媒体を吸着して搬送する搬送部と、搬送部によって搬送される印刷媒体上に載置される可撓性を有するシート部材であって、印刷媒体に液滴を吐出する吐出部の周囲に対応する搬送部上の範囲を覆うシート部材とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送装置によれば、吸着搬送される印刷媒体上に載置される可撓性を有するシート部材であって、吐出部の周囲に対応する搬送部上の範囲を覆うシート部材を設けるようにしたので、印刷媒体を安定して吸引搬送することができるとともに、ミストによる画質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の搬送装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2】搬送ユニットおよびシート部材を上方から見た図
図3】1つのラインヘッドに含まれる6つのインクジェットヘッドの配置を示す図
図4】インクジェットヘッドから吐出されたインクが、シート部材に形成された孔を通過して印刷媒体に着弾する様子を示す図
図5図2に示す保持機構のA-A線断面図を示す図
図6】インクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図7】保持機構のその他の実施形態を示す図
図8図7に示す保持機構の開口部のB-B線断面図を示す図
図9】保持機構のその他の実施形態を示す図
図10図9に示す保持機構のC-C線断面図
図11】従来のインクジェット印刷装置の課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の搬送装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、図1に矢印で示す上下左右が、本実施形態のインクジェット印刷装置1における上下左右方向とする。また、図1の紙面に対して手前側を前方向、奥側を後方向とする。また、本実施形態においては、左から右へ向かう方向が、印刷媒体Pの搬送方向である。
【0013】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、搬送ユニット10と、画像形成部20とを備えている。
【0014】
搬送ユニット10は、搬送ベルト11と、プラテンローラ12と、吸引ファン13と、搬送ローラ14とを備えている。本実施形態においては、搬送ユニット10が、本発明の搬送部に相当する。
【0015】
搬送ベルト11およびプラテンローラ12は、インクジェット印刷装置1の筐体から直接または筐体に設けられた筐体以外の部材から間接的に吊り下げられて支持されている。
【0016】
搬送ベルト11は、環状ベルトであって、印刷媒体Pを吸着するための多数の吸引孔11a(図2に示す白丸)が形成されている。プラテンローラ12は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(前後方向)に延設されるローラである。本実施形態では、図1に示すように、4本のプラテンローラ12が設けられている。
【0017】
搬送ベルト11は、上述した4つのプラテンローラ12に掛け渡されている。4つのプラテンローラのうちの1つのプラテンローラが駆動ローラであり、残りの3つのプラテンローラは従動ローラである。駆動ローラのプラテンローラ12が回転することによって、搬送ベルト11が移動し、搬送ベルト11と一緒に従動ローラのプラテンローラ12が回転する。これにより、搬送ベルト11に吸着された印刷媒体Pが搬送される。本実施形態では、プラテンローラ12は、図1における時計回り回転する。これにより搬送ベルト11に吸着された印刷媒体Pが、図1における左から右に向かって搬送される。図1に示す左側が搬送方向上流側であり、右側が搬送方向下流側である。
【0018】
搬送ベルト11における印刷媒体Pの搬送面の裏側には、上流側と下流側とで2つの吸引ファン13が設けられている。吸引ファン13が回転することによって、搬送ベルト11の吸引孔11aに負圧が発生し、これにより搬送ベルト11に印刷媒体Pが吸着する。
【0019】
搬送ベルト11の上方には、7本の搬送ローラ14が設けられている。搬送ローラ14は、搬送ベルト11の上方近傍に設けられ、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるローラである。搬送ローラ14は、搬送方向について所定の間隔を空けて配置される。具体的には、後述する各ラインヘッド21の搬送方向両側にそれぞれ設けられる。各搬送ローラ14は、図1における時計回りに回転し、その直下で搬送される印刷媒体Pを上方から押圧しながら下流側に送り出すローラである。
【0020】
ここで、上述したように印刷媒体Pが搬送面から離れないように安定して印刷媒体Pを搬送するためには高い吸着力が求められるため、吸引ファン13の出力はできるだけ高い出力であることが望ましい。しかしながら、吸引ファン13の出力を高くした場合、搬送ベルト11の上面に吸引による風(吸引風)が発生し、インクミスト(主滴以外の微小インク滴)が、吸引風によって流され、画像品質が劣化する問題がある。
【0021】
そこで、本実施形態のインクジェット印刷装置1は、ラインヘッド21と搬送ベルト11の搬送面との間に、シート部材30が設けられる。図2は、図1に示す搬送ユニット10およびシート部材30を上方から見た図である。
【0022】
本実施形態のシート部材30は、ラインヘッド21を構成する各インクジェットヘッド21aの周囲に対応する搬送ベルト11上の範囲を覆うシート状の部材である。具体的には、シート部材30は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(前後方向)について搬送ベルト11と同等の幅を有するとともに、搬送方向について搬送ベルト11の下流端部まで延設された矩形状のシート状の部材である。そして、シート部材30には、各インクジェットヘッド21aのインク吐出範囲に対応する範囲に孔30aが形成されており、各インクジェットヘッド21aから吐出されたインクは、この孔30aを通過して印刷媒体Pに着弾する。
【0023】
本実施形態では、各ラインヘッド21は、6つのインクジェットヘッド21aを備えている。図3は、1つのラインヘッド21が有する6つのインクジェットヘッド21aの配置を示す図である。図3に示すように、本実施形態のラインヘッド21は、6つのインクジェットヘッド21aが千鳥配置されて構成されている。
【0024】
したがって、シート部材30に形成される孔30aも、各ラインヘッド21の千鳥配置された各インクジェットヘッド21aのインク吐出範囲にそれぞれ形成されている。
【0025】
図4は、インクジェットヘッド21aから吐出されたインクが、シート部材30に形成された孔30aを通過して印刷媒体Pに着弾する様子を示す図である。図4に示すように、シート部材30は、印刷媒体Pの範囲以外の部分では、搬送ベルト11の吸引孔11aに吸着する。これにより、搬送ベルト11にシート部材30が常に吸着されていることで、搬送ベルト11とシート部材30の間を搬送される印刷媒体Pがシート部材30によって押えられ、搬送ベルト11から離れるのを防ぐことができる。これにより、印刷媒体Pの反りなどによって印刷媒体Pがインクジェットヘッド21aに接触するのを防止することができる。
【0026】
また、シート部材30に開けられた孔30aは、インクジェットヘッド21aのノズルの直下に位置しており、インクジェットヘッド21aのインク吐出範囲の周囲の搬送ベルト11をシート部材30で覆うようにしたので、ミストを主滴から離れた位置に流すような吸引風が、インクジェットヘッド21a下に発生しなくなる。これにより、吸引搬送で発生するインクミストによる画像劣化を防止することができる。
【0027】
また、搬送ベルト11上にシート部材30を設けることで、搬送ベルト11上の吸引孔11aの大部分が塞がれるので、生成する負圧のロスが少なくなる。これにより、シート部材30を設けていない構成の時よりも、吸引ファン13の出力を下げることができ、消費電力を下げることができる。
【0028】
なお、シート部材30に開けられた孔30aの搬送方向の幅は、インクジェットヘッド21aのノズル列分の僅かな幅であるため、孔30aの存在によって印刷媒体Pが搬送面から離れることはない。
【0029】
シート部材30は、たとえばPET(polyethylene terephthalate)から形成され、0.2mm程度の厚さである。シート部材30の材料としては、PETに限らず、シート部材30が自重によって撓む程度の可撓性を有する材料であれば、その他の樹脂などの材料を用いてもよい。また、シート部材30として、たとえばビーズフィルムのような表面に凹凸を有するフィルムを用いることが好ましい。特に、シート部材30と印刷媒体Pとが接触する面に上述した凹凸を形成することが好ましい。
【0030】
このようなシート部材30を用いることによって、印刷媒体Pの印字面がシート部材30の表面に接触することによってインクがシート部材30に付着し、これが印刷媒体Pに再転写されて印刷媒体Pを汚染するのを防止することができる。
【0031】
また、シート部材30のラインヘッド21側の面を吸収材のような材質にしてもよい。吸収材としては、インクが毛管力で浸透するフェルト状(布状)、スポンジ状の部材、綿状の部材を用いることができる。これにより、インクミストをシート部材30で吸収することができ、交換周期を長くすることができる。
【0032】
また、シート部材30の上流側の端部は、保持機構31によって保持される。保持機構31は、搬送方向に直交する方向(前後方向)に延設される細長い長方形の板状部材である。保持機構31は、搬送ベルト11の搬送方向に直交する方向の両側に設けられた金属部材32に対してネジ止めされる。
【0033】
図5は、図2に示す保持機構31周辺のA―A線断面を示す図である。図5に示すように、本実施形態の保持機構31は、断面くの字形に形成され、傾斜部35aおよび平坦部35bを有する。保持機構31の傾斜部35aは、印刷媒体Pの搬送方向上流側に向けて鉛直方向上方に上がるように形成されており、傾斜部35aの最も低い部分が平坦部35bに接続されている。傾斜部35aの搬送面に対する傾斜角度は、20度程度である。
【0034】
このように傾斜部35aを形成することによって、保持機構31と搬送ベルト11の搬送面との間に形成される印刷媒体Pの挿入口の上下方向の間隔を大きくすることができる。これにより、印刷媒体Pの保持機構31への衝突を抑制することができる。
【0035】
そして、図5に示すように、シート部材30の上流側端部は、たとえば両面テープや糊などによって平坦部35bの上面に取り付けられる。
【0036】
保持機構31は、搬送ベルト11の搬送面から所定の距離だけ上方に設置されており、上述したように保持機構31の平坦部35bの上面にシート部材30の上端部を接着することによって、そのシート部材30の上端部から下流側に向けて延びる部分を撓ませて傾斜させるよう構成されている。このようにシート部材30を傾斜させることによって、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢し、これにより印刷媒体Pを搬送面に押圧することができる。
【0037】
シート部材30の傾斜面CLの搬送面に対する傾斜角度θは、30度程度であるが、20度以上40度以下であることが好ましい。傾斜角度θを20度以上とすることによって、シート部材30の押圧力をより大きくすることができる。また、傾斜角度θを40度以下とすることによって、シート部材30の傾斜面CLへの印刷媒体Pの先端の衝突を抑制することができ、印刷媒体Pの先端をシート部材30と搬送面との間にスムーズに送ることができる
【0038】
そして、シート部材30と搬送面との間に挿入された印刷媒体Pは、所定の搬送速度で画像形成部20に向けて搬送される。
【0039】
画像形成部20は、図1に示すように、搬送ユニット10の搬送ベルト11に対向する位置に設けられ、6つのラインヘッド21と、ヘッドホルダ22とを備えている。
【0040】
各ラインヘッド21は、インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッド21aを複数備えている。
【0041】
各ラインヘッド21は、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ユニット10によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。6つのラインヘッド21は、図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。6つのラインヘッド21は、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、グレーおよび上記の色以外の特殊な色)のインクを吐出するものである。
【0042】
ヘッドホルダ22は、各ラインヘッド21が設置される部材である。ヘッドホルダ22は、箱型の支持部材から構成されており、ヘッドホルダ22の底面には、各ラインヘッド21が有する各インクジェットヘッド21aが嵌め込まれて設置される複数の設置孔が形成されている。設置孔は貫通孔であって、各インクジェットヘッド21aのインク吐出面がヘッドホルダ22の底面外側に露出して配置されるように形成されている。
【0043】
そして、上述したように印刷媒体Pがシート部材30によって押圧されながら、画像形成部20の直下を搬送される。各ラインヘッド21から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、各インクジェットヘッド21aから吐出されたインクは、シート部材30の孔30aを通過して印刷媒体Pに着弾し、これにより印刷処理が施される。
【0044】
図6は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部50は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
【0045】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1における保持機構31のその他の実施形態について説明する。図7は、その他の実施形態の保持機構41およびシート部材30を取り外した状態を示す外観斜視図である。なお、図7においては、シート部材30における孔30aを図示省略している。
【0046】
保持機構41は、搬送方向に直交する方向に延設される細長い長方形の板状部材である。保持機構31には、シート部材30を取り付けるための開口部43,44が形成されている。
【0047】
図8は、図7に示す保持機構41の開口部43のB-B線断面図を示す図である。保持機構41の開口部43には、保持機構41の上面41aから少し下がった位置に段差が形成されている。この保持機構41の段差の下側の面がシート取り付け面41bであり、シート取り付け面41b上に、シート部材30の端部が取り付けられる。シート部材30の端部は、たとえば両面テープや糊などによってシート取り付け面41b上に取り付けられる。
【0048】
また、保持機構41の開口部43には、搬送方向に直交する方向に延設されたスリットSが形成されている。シート部材30の上流側の端部(シート取り付け面41bに取り付けられた部分)から延びる部分がスリットS内を通されて、保持機構41の下側に配置される。
【0049】
保持機構41は、上述したようにスリットS内を通してシート部材30の上流側の端部をシート取り付け面41bで保持し、シート部材30の上流側の端部から延びる部分を保持機構41の下側に配置することによって、シート取り付け面41bと保持機構41の下面41cとの段差により、シート部材30の上流側の端部から延びる部分を撓ませ傾斜面CLを形成する。本実施形態においては、スリットSの搬送方向の幅は、6mm程度であり、シート取り付け面41bと保持機構41の下面41cとの段差は、2mm程度である。
【0050】
保持機構41は、シート部材30の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢するようにシート部材30を保持する。このように、シート部材30が搬送ベルト11の搬送面に向けて付勢することによって、シート部材30が重なる印刷媒体Pの端部に対する押圧力をより大きくすることができる。
【0051】
傾斜面CLの搬送面に対する傾斜角度θは、上記実施形態と同様に、30度程度であるが、20度以上40度以下であることが好ましい。
【0052】
搬送ベルト11に供給された印刷媒体Pは、その下流側の端部が、保持機構41と搬送ベルト11の搬送面との間に挿入される。保持機構41の上流側の下面には、図7に示すように傾斜面41dが形成されている。傾斜面41dは、下流側から上流側に向けて上がるような傾斜面である。傾斜面41dの搬送面に対する傾斜角度は、20度程度である。このように傾斜面41dを形成することによって、保持機構41と搬送ベルト11の搬送面との間に形成される印刷媒体Pの挿入口の上下方向の間隔を大きくすることができる。これにより、印刷媒体Pの保持機構41への衝突を抑制することができる。
【0053】
そして、保持機構41と搬送ベルト11の搬送面との間に挿入された印刷媒体Pは、搬送ベルト11によって下流側に搬送され、シート部材30と搬送面との間に挿入される。シート部材30が下方に配置される保持機構41の下面41cの上流端には、下面41cに連続する傾斜面41eが形成されている。傾斜面41eは、傾斜面41dと同様に、下流側から上流側に向けて上がるような傾斜面である。傾斜面41eの搬送面に対する傾斜角度は、45度程度である。
【0054】
このようにシート部材30の上面と保持機構41との接触部分を直角ではなく傾斜面とすることによって、シート部材30の上面に対する単位面積当たりの圧力を小さくすることができるので、シート部材30に対する負荷を小さくし、シート部材30の耐久性を向上させることができる。
【0055】
図9は、上述した保持機構41のようにスリットSではなく、傾斜面を有する2枚の板部材を用いてシート部材30に傾斜面CLを形成する保持機構60の構成を示す外観斜視図である。なお、図9では、シート部材30における孔30aを図示省略している。
【0056】
保持機構60は、具体的には、搬送ベルト11の搬送面に対して鉛直方向に所定の間隔を空けて重ねて設置される第1の板部材51と第2の板部材52を有する。第1の板部材51の上に、所定の間隔を空けて第2の板部材52が配置される。
【0057】
図10は、図9に示す保持機構60のC-C線断面図である。第1の板部材51と第2の板部材52との鉛直方向の間隔は、シート部材30の厚さよりも広い間隔に設定されており、第1の板部材51と第2の板部材52との間をシート部材30が通過可能に構成されている。
【0058】
第1の板部材51は、シート部材30の上流側の端部が取り付けられるシート取り付け面51aを有する水平部分51bと、その水平部分51bから上流側に向けて延設される斜面部分51cと、水平部分51bから下流側に向けて延設される斜面部分51dとから構成されている。斜面部分51cおよび斜面部分51dは、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面を有する。
【0059】
第2の板部材52は、第1の板部材51の水平部分51bに対向して設けられた水平部分52aと、その水平部分52aから下流側に向けて延設される斜面部分52bとから構成されている。斜面部分52bは、上流側から下流側に向けて下がるように傾斜する傾斜面を有する。
【0060】
そして、シート部材30は、第1の板部材51と第2の板部材52の間を通され、その上流側の端部が第1の板部材51のシート取り付け面51a上に取り付けられる。シート部材30の上流側の端部は、たとえば両面テープや糊などによってシート取り付け面51a上に取り付けられる。
【0061】
そして、シート部材30の上流側の端部から延設される部分が、第1の板部材51の斜面部分51dと第2の板部材52の斜面部分52bとの間を通されることによって、シート部材30の上流側の端部から延びる部分が撓み、傾斜面CLが形成される。傾斜面CLの搬送面に対する傾斜角度θは、20度以上40度以下であることが好ましい。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0063】
本発明の搬送装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0064】
本発明の搬送装置において、シート部材は、吐出部から吐出された液滴を通過させる孔を有することができる。
【0065】
本発明の搬送装置においては、シート部材の搬送方向の上流側の端部を保持する保持部を有し、保持部は、シート部材の上流側の端部から延びる部分を撓ませて傾斜させることによって、シート部材が搬送部の搬送面に向けて付勢するようにシート部材を保持することができる。
【0066】
本発明の搬送装置においては、シート部材と搬送部の間を印刷媒体を通過させ、シート部材の印刷媒体と接する面に凹凸を形成することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 インクジェット印刷装置
10 搬送ユニット
11 搬送ベルト
11a 吸引孔
12 プラテンローラ
13 吸引ファン
14 搬送ローラ
20 画像形成部
21 ラインヘッド
21a インクジェットヘッド
22 ヘッドホルダ
30 シート部材
30a 孔
31 保持機構
32 金属部材
35a 傾斜部
35b 平坦部
41 保持機構
43,44 開口部
50 制御部
60 保持機構
CL 傾斜面
P 印刷媒体
S スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11