(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038637
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】パッキン
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20240313BHJP
B21B 31/02 20060101ALI20240313BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20240313BHJP
F16C 13/02 20060101ALI20240313BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240313BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20240313BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
B21B31/02 A
F16C33/78 Z
F16C13/02
F16C33/66 Z
F16C19/26
F16J15/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142809
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000167196
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトシーリングテクノ
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】十川 恒一
(72)【発明者】
【氏名】杉 孝時
【テーマコード(参考)】
3J040
3J103
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J040BA03
3J040EA16
3J040EA22
3J040HA30
3J103AA02
3J103CA62
3J103DA07
3J103FA01
3J103GA02
3J103GA15
3J216AA03
3J216AA12
3J216AB25
3J216BA07
3J216BA30
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB04
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC09
3J216CC14
3J216CC33
3J216CC70
3J701AA15
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701CA08
3J701CA16
3J701FA32
3J701FA33
3J701GA34
(57)【要約】
【課題】軸箱とロールの軸方向端面との間の環状空間内にスケールが侵入するのを抑制することができるパッキンを提供する。
【解決手段】 本開示のパッキン30は、ロール60の軸方向端面2aから突出するロールネック3を支持する軸箱1用のパッキンである。パッキン30は、軸箱1が有する外周鍔部11であって軸方向端面2aに隣接して配置される前記外周鍔部11が嵌め込まれる内周溝42と、軸方向端面2aに対向する外周面34と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールの軸方向端面から突出するロールネックを支持する軸箱用のパッキンであって、
前記軸箱が有する外周鍔部であって前記軸方向端面に隣接して配置される前記外周鍔部に装着される装着部と、
前記軸方向端面に対向する外周面と、を備える
パッキン。
【請求項2】
前記ロールの軸方向端面は、前記ロールネックの基部に繋がる環状端面と、前記環状端面の外周縁から前記ロールネックの先端側に向かって立ち上がる端部内周面と、を含み、
前記外周面は、前記端部内周面に対向する
請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記端部内周面が、内周円筒面と、前記内周円筒面と前記環状端面とを繋ぐ内周凹曲面と、を含み、
前記外周面は、前記内周円筒面に対向する外周円筒面と、前記内周凹曲面に対向する外周凸曲面と、を含む
請求項2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記装着部は、前記外周鍔部が嵌め込まれる内周溝である
請求項1に記載のパッキン。
【請求項5】
前記内周溝の軸方向一方側に隣接する第1内周面と、
前記内周溝の軸方向他方側に隣接する第2内周面と、をさらに備え、
前記内周溝は、前記内周溝の溝内面に対して凹み、第1内周面から第2内周面に亘って前記内周溝を横断する溝内溝を有する
請求項4に記載のパッキン。
【請求項6】
前記内周溝よりも軸方向一方側の第1面と、前記内周溝よりも軸方向他方側の第2面と、
前記第1面と、前記第2面との間を貫通する貫通孔と、をさらに備える
請求項4に記載のパッキン。
【請求項7】
前記軸箱は、前記外周鍔部との間で外周溝を構成する段差部をさらに有し、
前記装着部は、
前記外周鍔部の外周面に当接する第3内周面と、
前記第3内周面の軸方向一方から径方向内方に突出し、前記外周溝に嵌め込まれる内周突起と、を含む
請求項1に記載のパッキン。
【請求項8】
前記内周突起は、前記内周突起の表面に対して凹み、前記パッキンの軸方向一方側の第1端面から前記第3内周面に亘って設けられた第1溝部を有し、
前記第3内周面は、前記第3内周面の周面に対して凹み、前記パッキンの軸方向他方側の第2端面から前記内周突起に亘って設けられた、前記第1溝部と繋がる第2溝部を有する
請求項7に記載のパッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼設備の軸箱に用いられるパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備等の鉄鋼設備には、多数のロールが用いられる。前記ロールは、前記ロールの両端に配置された一対の軸箱によって支持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は、軸箱の一例を示す要部断面図である。
図9に示すように、軸箱100は、軸箱本体102と、転がり軸受104とを備える。転がり軸受104はロール本体200の軸方向端面201に設けられたロールネック202に外嵌し、ロール本体200を回転自在に支持する。軸箱本体102は転がり軸受104を支持するとともに転がり軸受104を内部に収容する。軸箱本体102は、ロール側端部に円筒部106を有する。また、軸箱本体102は、孔部108を有する。孔部108は、円筒部106を貫通し、軸箱本体102の内部と外部とを連通する。孔部108にはロールネック202が差し込まれる。
また、軸箱本体102は、オイルシール110をさらに備える。オイルシール110は、孔部108の内周面とロールネック202との間に介在している。これにより、オイルシール110は、鉄鋼設備の操業時に生じるスケールが軸箱本体102内に侵入するのを防止する。
【0005】
しかし、
図9に示すように、ロール本体200の軸方向端面201が、ロールネック202の基部に繋がる環状端面201aと、環状端面201aの外周縁から軸方向に沿って立ち上がる内周面201bと、を含む場合、スケールが、円筒部106の外周面と内周面201bとの間の隙間を通過し、軸箱本体102と環状端面201aとの間の環状空間に侵入することがある。
【0006】
環状空間に大量のスケールが侵入すると、環状空間内からのスケールの除去が困難となり、スケールが環状空間内に残留してしまうことがある。環状空間内にスケールが残留すると、スケールが孔部108及びオイルシール110を通過し、転がり軸受104の寿命を低下させてしまうおそれがある。このため、環状空間内にスケールが侵入するのを抑制する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図9にて示した軸箱本体102において、環状空間内にスケールが侵入するのを抑制するために、円筒部106に外周鍔部112が設けられることがある。外周鍔部112を設けることで、スケールが円筒部106の外周面を伝って軸箱本体102と軸方向端面201との間に流入するのを堰き止めることができる。しかし、依然として外周鍔部112とロール本体200の軸方向端面201(内周面201b)との間には環状の隙間が存在する。
【0008】
(1)これに対して本開示のパッキンは、ロールの軸方向端面から突出するロールネックを支持する軸箱用のパッキンであって、前記軸箱が有する外周鍔部であって前記軸方向端面に隣接して配置される前記外周鍔部に装着される装着部と、前記軸方向端面に対向する外周面と、を備える。
【0009】
上記構成のパッキンは、軸箱の外周鍔部に装着されたときに、ロールの軸方向端面に対向する外周面を有する。このため、軸箱に装着されたパッキンは、外周鍔部とロールの軸方向端面との間に介在し、外周鍔部とロールの軸方向端面との間の環状の隙間を塞ぐ。
この結果、軸箱のロール側端部とロールの軸方向端面との間の環状空間内にスケールが侵入するのを抑制することができる。
【0010】
(2)上記パッキンにおいて、前記ロールの軸方向端面は、前記ロールネックの基部に繋がる環状端面と、前記環状端面の外周縁から前記ロールネックの先端側に向かって立ち上がる端部内周面と、を含む場合、前記外周面は、前記端部内周面に対向することが好ましい。
【0011】
(3)さらに、上記パッキンにおいて、前記端部内周面が、内周円筒面と、前記内周円筒面と前記環状端面とを繋ぐ内周凹曲面と、を含む場合、前記外周面は、前記内周円筒面に対向する外周円筒面と、前記内周凹曲面に対向する外周凸曲面と、を含むことが好ましい。
【0012】
上記ロールは、設備の操業に伴う熱によって軸方向に伸縮する。
このため、ロールを支持する軸箱のうちの一方は、ロールの伸縮に伴うロールネックの軸方向の移動を許容することができるように構成されている。この構成によって、一方の軸箱とロールの軸方向端面との軸方向の相対位置は、ロールの伸縮に応じて変化する。
この点、本実施形態では、外周面が内周円筒面に対向する外周円筒面と、内周凹曲面に対向する外周凸曲面とを含むので、軸箱とロールの軸方向端面との軸方向の相対位置が変化したとしても、外周円筒面と、内周円筒面とは、互いに対向した状態で維持される。この結果、軸箱と軸方向端面との軸方向の相対位置が変化したとしても、軸箱と軸方向端面との間の環状の隙間を塞いだ状態を維持することができる。
【0013】
(4)前記装着部は、前記外周鍔部が嵌め込まれる内周溝であることが好ましい。
【0014】
(5)また、軸箱がオイルエアーによって潤滑するように構成されている場合、オイルエアーによって軸箱内の圧力が上昇すると、軸箱内の雰囲気ガスが軸箱のロール側端部から排気されることがある。このため、上記パッキンによって、軸箱の外周鍔部とロールの軸方向端面との間の隙間が塞がれると、軸箱内の排気が妨げられるおそれがある。
このため、上記パッキンが、前記内周溝の軸方向一方側に隣接する第1内周面と、前記内周溝の軸方向他方側に隣接する第2内周面と、をさらに備える場合、前記内周溝は、前記内周溝の溝内面に対して凹み、第1内周面から第2内周面に亘って前記内周溝を横断する溝内溝を有していてもよい。
この場合、パッキンが外周鍔部に嵌め込まれたときに、溝内溝は、第1内周面と、第2内周面とを連通する連通路を構成する。
このため、軸箱がオイルエアーによって潤滑するように構成され、軸箱とロールの軸方向端面との間の環状空間の圧力がオイルエアーによる排気によって上昇したとしても、連通路によって、環状空間内の圧力を低下させることができる。この結果、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。
【0015】
(6)また、パッキンは、前記内周溝よりも軸方向一方側の第1面と、前記内周溝よりも軸方向他方側の第2面と、前記第1面と、前記第2面との間を貫通する貫通孔と、をさらに備えていてもよい。
この場合も、貫通孔によって、環状空間内の圧力を低下させることができる。この結果、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。
【0016】
(7)また、前記軸箱が、前記外周鍔部との間で外周溝を構成する段差部をさらに有する場合、前記装着部は、前記外周鍔部の外周面に当接する第3内周面と、前記第3内周面の軸方向一方から径方向内方に突出し、前記外周溝に嵌め込まれる内周突起と、を含むことが好ましい。
この場合も、軸箱のロール側端部とロールの軸方向端面との間の環状空間内にスケールが侵入するのを抑制することができる。
【0017】
(8)さらに、前記内周突起は、前記内周突起の表面に対して凹み、前記パッキンの軸方向一方側の第1端面から前記第3内周面に亘って設けられた第1溝部を有し、前記第3内周面は、前記第3内周面の周面に対して凹み、前記パッキンの軸方向他方側の第2端面から前記内周突起に亘って設けられた、前記第1溝部と繋がる第2溝部を有することが好ましい。
この場合、第1溝部と第2溝部とが互いに繋がっているので、パッキンが外周鍔部に嵌め込まれたときに、第1溝部及び第2溝部は、第1内周面と、第2内周面とを連通する連通路を構成する。よって、この場合も、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、軸箱とロールの軸方向端面との間の環状空間内にスケールが侵入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るパッキンが装着された軸受装置の要部断面図である。
【
図3】
図3は、パッキンのみを示した斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るパッキンが装着された軸受装置の要部断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るパッキンの断面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7中、VIII-VIII線矢視断面図、
図8(b)は、パッキンの第1端面側の外観図である。
【
図9】
図9は、軸箱の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。
〔第1実施形態の全体構成について〕
図1は、第1実施形態に係るパッキンが装着された軸受装置の要部断面図である。
図1中、軸箱1は、連続鋳造設備のロール60を支持するための装置である。
軸箱1は、ロール60の軸方向両端に一対配置される。ロール60は、一対の軸箱1によって支持される。
ロール60は、ロール本体2と、一対のロールネック3とを有する。
一対のロールネック3は、ロール本体2の両端に設けられる。軸箱1は、ロールネック3を支持する。なお、
図1では、一方側の軸箱1を示している。ロールネック3は、ロール本体2の軸方向端面2aから突出している。
なお、以下の説明では、ロール本体2(ロールネック3)の中心軸C1に沿う方向を軸方向という。また、中心軸C1に直交する方向を径方向という。
【0021】
軸箱1は、軸箱本体4と、転がり軸受6と、オイルシール8とを備える。
転がり軸受6は、ロールネック3に外嵌し、ロールネック3を回転自在に支持する。これにより、軸箱1はロール60を回転自在に支持する。
転がり軸受6は、内輪6aと、外輪6bと、複数の円筒ころ6cとを備える。複数の円筒ころ6cは、内輪6aと外輪6bとの間に転動自在に介在する。
内輪6aは、ロールネック3に外嵌する。
外輪6bは、本体輪6b1と、調心輪6b2とを有する。本体輪6b1は、軸箱本体4内の円筒面5に保持される。
調心輪6b2は、本体輪6b1と複数の円筒ころ6cとの間に配置される。調心輪6b2の外周面は凸球面である。また、調心輪6b2の外周面に当接する本体輪6b1の内周面は凹球面である。転がり軸受6は、本体輪6b1及び調心輪6b2を有することで調心機能を有する。
【0022】
軸箱本体4は転がり軸受6を支持するとともに転がり軸受6を内部に収容する。軸箱本体4は、箱部9と、円筒部10とを有する。箱部9は、内部に上述の円筒面5を有しており、転がり軸受6を内部に収容し保持する。円筒面5の中心軸は、ロール本体2及びロールネック3の中心軸C1と一致する。
円筒部10は、箱部9の側面9aから突出している。側面9aは箱部9のロール本体2側に向く面である。
また、軸箱本体4は、孔部12を有する。孔部12は、円筒部10の端面10aに開口している。孔部12は、円筒部10を貫通し、軸箱本体4の内部と外部とを連通する。孔部12は、中心軸C1に沿っており、中心軸C1を中心としている。
孔部12には、ロールネック3が差し込まれている。また、孔部12にはオイルシール8が装着されている。
【0023】
円筒部10の先端には、外周鍔部11及び内周鍔部13が設けられている。
内周鍔部13は、円筒部10の先端縁から径方向内方に環状に突出している。内周鍔部13は、オイルシール8のロール本体2側の端面に当接し、オイルシール8を軸方向に保持する。
外周鍔部11は、円筒部10の先端から径方向外側に環状に突出している。よって、外周鍔部11は、軸方向端面2aに隣接して配置される。
外周鍔部11には、環状のパッキン30が装着されている。
パッキン30については後に説明する。
【0024】
オイルシール8は、孔部12とロールネック3との間に介在している。オイルシール8は、金属環8aと、2つのシールリップ8bとを有する。金属環8aは、孔部12に内嵌固定されている。2つのシールリップ8bは、金属環8aに固定されたゴム等の弾性素材からなる環状の部材である。2つのシールリップ8bは、金属環8aから径方向内方へ延び、ロールネック3に外嵌されたスリーブ14に摺接する。
オイルシール8は、2つのシールリップ8bによって、孔部12とロールネック3との間の環状の隙間を塞ぐ。これにより、オイルシール8は、鉄鋼設備の操業時に生じるスケールが、前記隙間から軸箱本体4内に侵入するのを防止する。
【0025】
ロール本体2の軸方向端面2aは、第1環状端面16と、端部内周面18と、第2環状端面20とを有する。第1環状端面16は、径方向に沿う面であり、ロールネック3の基部3bに繋がっている。
端部内周面18は、第1環状端面16の外周縁16aからロールネック3の先端側(紙面左側)に向かって軸方向に沿って立ち上がっている。端部内周面18は、第1環状端面16の外周縁16aと第2環状端面20とを繋いでいる。
第2環状端面20は、径方向に沿う面であり、第1環状端面16と同心である。第2環状端面20の外周縁は、ロール本体2の外周面2bに繋がっている。
【0026】
図2は、
図1の要部拡大図である。
図2に示すように、第2環状端面20は、端面部20aと、面取部20bとを含む。面取部20bは、端面部20aと端部内周面18とを繋いでいる。
【0027】
端部内周面18は、内周円筒面18aと、内周凹曲面18bとを有する。
内周円筒面18aは、第2環状端面20との境界縁18cから第1環状端面16へ向かって延びている。内周円筒面18aは、中心軸C1を中心とする円筒面である。
内周凹曲面18bは、内周円筒面18aの内端縁18a1から第1環状端面16の外周縁16aに亘って設けられている。よって、内周凹曲面18bは、内周円筒面18aと第1環状端面16とを繋いでいる。内周凹曲面18bは、内周円筒面18aと第1環状端面16とを凹曲面によって滑らかに繋いでいる。
【0028】
ここで、本実施形態では、ロール本体2の軸方向端面2aが、第1環状端面16と、第1環状端面16の外周縁16aから軸方向に立ち上がる端部内周面18とを有しているため、軸箱本体4と、第1環状端面16との間には、環状空間Sが形成されている。
軸箱本体4の円筒部10の先端に設けられた外周鍔部11は、外部のスケールが円筒部10の外周面10bを伝って環状空間Sに流入するのを堰き止めるために設けられている。
外周鍔部11の外周面11aと、端部内周面18とは、所定の間隔をおいて互いに対向している。よって、外周面11aと、端部内周面18との間には、環状の隙間が存在する。
外周鍔部11に装着されたパッキン30は、外周面11aと、端部内周面18との間の環状の隙間を塞いでいる。
【0029】
〔パッキンについて〕
図3は、パッキン30のみを示した斜視図である。
パッキン30は、弾性素材により形成された環状部材である。パッキン30の素材は、例えば、ニトリルゴム等である。
図3中、パッキン30の中心軸C2に平行な方向を軸方向という、また、中心軸C2に直交する方向を径方向という。
【0030】
図3及び
図2を参照して、パッキン30は、外周面34と、第1端面38と、第2端面40と、内周溝42とを有する。第1端面38は、外周面34の軸方向一方側に位置する端面である。第2端面40は、外周面34の軸方向他方側に位置する端面である。
【0031】
内周溝42は、パッキン30の内周側に設けられている。また、パッキン30の内周側には、第1内周面44と、第2内周面46とが設けられている。
第1内周面44は、内周溝42の軸方向一方側(第1端面38側)に隣接する。第2内周面46は、内周溝42の軸方向他方側(第2端面40側)に隣接する。
内周溝42は、中心軸C2を中心として環状に設けられており、第1内周面44及び第2内周面46に対して径方向外側に凹んでいる。
内周溝42には、軸箱本体4の外周鍔部11が嵌め込まれる。パッキン30が外周鍔部11に嵌め込まれたとき、パッキン30の中心軸C2は、ロール本体2の中心軸C1とほぼ一致する。
内周溝42は、外周鍔部11が嵌め込まれることで外周鍔部11に装着される装着部を構成する。
【0032】
外周面34は、第1端面38と第2端面40との間に設けられている。外周面34は、パッキン30が外周鍔部11に嵌め込まれたときにロール本体2の軸方向端面2a(の端部内周面18)に対向する。
【0033】
外周面34は、外周円筒面34aと、外周凸曲面34bとを有する。
外周円筒面34aと、外周凸曲面34bとは、軸方向に並んでいる。外周円筒面34aは、第1端面38側に設けられている。外周円筒面34aは、中心軸C2を中心とする円筒面である。外周円筒面34aの外径は、ロール本体2の端部内周面18の内周円筒面18aの内径と同じ値、又は、内周円筒面18aの内径よりも僅かに小さい値に設定される。
外周円筒面34aの外径が、内周円筒面18aの内径と同じ値である場合、外周円筒面34aと、内周円筒面18aとは、互いに摺接する。
【0034】
外周凸曲面34bは、外周円筒面34aの端縁34a1から第2端面40に亘って設けられている。外周凸曲面34bは、外周円筒面34aと第2端面40とを凸曲面によって滑らかに繋いでいる。
外周凸曲面34bは、ロール本体2の端部内周面18の内周凹曲面18bに沿う凸曲面とされている。よって、外周凸曲面34bと、内周凹曲面18bとを僅かな隙間を置いて接近させたとき、両者の間には、軸方向に一様な隙間が形成される。
【0035】
ところで、ロール60は、連続鋳造設備の操業に伴う熱によって軸方向に伸縮する。このため、ロール60を支持する一対の軸箱1のうちの一方は、ロール60の伸縮に伴うロールネック3の軸方向の移動を許容することができるように構成されている。
本実施形態の軸箱1は、ロールネック3の軸方向の移動を許容することができるように構成されているものとする。このため、軸箱本体4と、ロール本体2の軸方向端面2aとの軸方向の相対位置は、ロール60の伸縮に応じて変化する。
【0036】
図2では、ロール60が最も収縮している場合を示している。
この場合、端部内周面18の境界縁18cの軸方向位置は、パッキン30の外周凸曲面34bの範囲内となっている。この場合、外周凸曲面34bと、端部内周面18とが対向する。なお、外周凸曲面34bと、境界縁18cとの間隔は、極めて狭くなっている。
【0037】
また、
図2中、2点鎖線Dは、ロール60(ロール本体2)が最も伸長している場合の軸方向端面2aの位置を示している。
この場合、パッキン30の外周凸曲面34bと、端部内周面18の内周凹曲面18b(2点鎖線Dのd1)とは互いに接近する。この場合、端部内周面18の境界縁18c(2点鎖線Dのd2)の軸方向位置は、パッキン30の外周円筒面34aの範囲内となっている。
つまり、外周円筒面34aと、内周円筒面18aとは、互いに対向している。よって、ロール60の伸縮に応じて軸箱本体4と軸方向端面2aとの軸方向の相対位置が変化したとしても、外周円筒面34aと、内周円筒面18aとは、互いに対向した状態で維持される。
【0038】
本実施形態によれば、パッキン30が、軸箱本体4の外周鍔部11に嵌め込まれたときに、ロール本体2の軸方向端面2aに対向する外周面34を有する。このため、上述したように、パッキン30は、外周鍔部11と軸方向端面2aとの間に介在し、外周鍔部11と軸方向端面2a(の端部内周面18)との間の環状の隙間を塞ぐ。
軸箱1は、連続鋳造設備のロール60を支持している。よって、軸箱1は、連続鋳造設備の操業時に生じるスケールに曝されることがある。
これに対して、上述のように、パッキン30が、外周面11aと、端部内周面18との間の環状の隙間を塞いでいるので、環状空間S内にスケールが侵入するのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、外周面34が、内周円筒面18aに対向する外周円筒面34aと、内周凹曲面18bに対向する外周凸曲面34bとを含んでいる。これにより、軸箱本体4と軸方向端面2aとの軸方向の相対位置が変化したとしても、外周円筒面34aと、内周円筒面18aとは、互いに対向した状態で維持される。この結果、軸箱本体4と軸方向端面2aとの軸方向の相対位置が変化したとしても、軸箱本体4と軸方向端面2aとの間の環状の隙間を塞いだ状態を維持することができる。
【0040】
図3に示すように、パッキン30の内周溝42は、溝内面43と、複数の溝内溝50を有する。
図4は、パッキン30の断面図である。
図4は、パッキン30の中心軸C2を含む断面を示している。また、
図5は、
図4中、V-V線矢視断面図である。
【0041】
図5に示すように、複数の溝内溝50は、周方向に8箇所等間隔に設けられている。
溝内面43は、複数の分割面43a(図例では8個)を含む。8個の分割面43aは、周方向に並んでいる。複数の分割面43aのうち、互いに隣り合う一対の分割面43aの間には、溝内溝50が配置されている。
【0042】
図4に示すように、各分割面43aは、第1環状壁43a1と、第2環状壁43a2と、底面43a3とを有する。第1環状壁43a1は、第1内周面44に繋がる環状壁である。第2環状壁43a2は、第2内周面46に繋がる環状壁である。
溝内溝50は、第1環状壁43a1及び第2環状壁43a2に対して軸方向に凹んでいる。溝内溝50は、底面43a3に対して径方向外側に凹んでいる。
よって、溝内溝50は、分割面43a(溝内面43)に対して凹んでいる。また、溝内溝50は、第1内周面44から第2内周面46に亘って内周溝42を横断している。
さらに、溝内溝50は、第1内周面44を切り欠くように第1環状壁43bに対して凹んでいる。同様に、溝内溝50は、第2内周面46を切り欠くように第2環状壁43cに対して凹んでいる。
【0043】
よって、内周溝42に外周鍔部11が嵌め込まれたときに、溝内溝50は、第1内周面44及び第2内周面46に開口し、第1内周面44と第2内周面46とを連通する連通路Rを構成する。
【0044】
軸箱1がオイルエアーによって転がり軸受6を潤滑するように構成されている場合、オイルエアーによって軸箱1(軸箱本体4)内の圧力が上昇すると、軸箱本体4内の雰囲気ガスが軸箱本体4の孔部12から排気されることがある。このため、パッキン30によって、外周鍔部11と軸方向端面2aとの間の隙間が塞がれると、軸箱本体4内の排気が妨げられるおそれがある。
この点、本実施形態では、パッキン30が外周鍔部11に嵌め込まれたときに、溝内溝50が、第1内周面44と、第2内周面46とを連通する連通路Rを構成するので、軸箱1がオイルエアーによって潤滑するように構成され、環状空間Sの圧力がオイルエアーによる排気によって上昇したとしても、連通路Rによって、環状空間S内の圧力を低下させることができる。この結果、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。
【0045】
〔第2実施形態について〕
図6は、第2実施形態に係るパッキンが装着された軸受装置の要部断面図である。
本実施形態のパッキン30は、上記実施形態の内周溝42に代えて、外周鍔部11の外周面11aに当接する第3内周面70と、第3内周面70の軸方向一方から径方向内方に突出し、外周溝72に嵌め込まれる内周突起74と、を含む点において上記実施形態と相違する。その他の点については、上記実施形態と同様である。
円筒部10は、外周鍔部11よりも軸箱本体4側に段差部76を有する。段差部76は、外周鍔部11との間で外周溝72を構成する。
【0046】
内周突起74は、外周溝72の内側面に当接している。よって、パッキン30は、第3内周面70及び内周突起74によって外周鍔部11に装着される。
本実施形態において、第3内周面70、及び、内周突起74は、外周鍔部11に装着される装着部を構成する。
本実施形態においても、パッキン30が、外周面11aと、端部内周面18との間の環状の隙間を塞いでいるので、環状空間S内にスケールが侵入するのを抑制することができる。
【0047】
図7は、第2実施形態に係るパッキン30の断面図である。
図7は、パッキン30の中心軸を含む断面を示している。また、
図8(a)は、
図7中、VIII-VIII線矢視断面図、
図8(b)は、パッキン30の第1端面38側の外観図である。
【0048】
図7及び
図8(a)に示すように、第3内周面70は、軸方向他方側の端面である第2端面40と内周突起74との間に設けられた円筒面である。第3内周面70は、第2端面40と内周突起74とを繋ぐ。
また、内周突起74は、軸方向一方側の端面である第1端面38と第3内周面70との間に設けられている。内周突起74は、第1端面38と第3内周面70とを繋ぐ。
【0049】
内周突起74は、第1溝部78を有する。第1溝部78は、内周突起74の表面74aに対して凹んでいる。第1溝部78は、第1端面38から第3内周面70に亘って延びている。第1溝部78は、第1端面38側の第1溝部分78aと、内周側の第2溝部分78bと、第3内周面70側の第3溝部分78cとを有する。第1溝部分78a及び第3溝部分78cは、径方向に沿って延びている。第2溝部分78bは、軸方向に沿って延びている。
第1溝部分78aの端部78a1は、内周突起74が外周溝72に嵌め込まれたときに、段差部76の外周面76aよりも径方向外側に位置する。よって、端部78a1は外部に露出する。
【0050】
第3内周面70は、第2溝部80を有する。第2溝部80は、第3内周面70の周面70aに対して凹んでいる。第2溝部80は、軸方向に延びている。第2溝部80の第2端面40側の端部80bは、第2端面40に開口する。
第2溝部80の内周突起74側の端部80aは、第3溝部分78cの端部78c1に繋がっている。よって、第1溝部78と、第2溝部80とは、繋がっている。
第1溝部78及び第2溝部80は、周方向に8箇所等間隔に設けられている。
【0051】
ここで、上述したように、第1溝部分78aの端部78a1は、段差部76の外周面76aから露出する。また、第2溝部80の端部80bは、第2端面40に開口する。
よって、パッキン30が外周鍔部11に装着されたときに、第1溝部78及び第2溝部80は、第1端面38と第2端面40とを連通する連通路Rを構成する。
従って、本実施形態においても、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。
【0052】
〔その他〕
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記第1実施形態では、パッキン30が、内周溝42に外周鍔部11が嵌め込まれたときに、連通路Rを構成する溝内溝50を有する場合を例示したが、例えば、溝内溝50に代えて、又は、溝内溝50に加えて、第1端面38又は第1内周面44と、第2端面40又は第2内周面46との間を貫通する貫通孔をパッキンに設けてもよい。
この場合も、貫通孔によって、環状空間内の圧力を低下させることができる。この結果、オイルエアーの排気が妨げられるのを抑制することができる。なお、この場合、第1端面38と、第1内周面44とは、内周溝42よりも軸方向一方側に位置している。よって、第1端面38と、第1内周面44とは、内周溝42の軸方向一方側に位置する第1面を構成する。また、第2端面40と、第2内周面46とは、内周溝42よりも軸方向他方側に位置している。よって、第2端面40と、第2内周面46とは、内周溝42よりも軸方向他方側に位置する第2面を構成する。
【0053】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 軸箱
2 ロール本体
2a 軸方向端面
2b 外周面
3 ロールネック
3a 外周面
3b 基部
5 円筒面
10a 端面
10b 外周面
11 外周鍔部
11a 外周面
12a 内周面
16 第1環状端面
16a 外周縁
18 端部内周面
18a 内周円筒面
18b 内周凹曲面
30 パッキン
34 外周面
34a 外周円筒面
34b 外周凸曲面
38 第1端面
40 第2端面
42 内周溝(装着部)
43 溝内面
44 第1内周面
46 第2内周面
50 溝内溝
60 ロール
70 第3内周面(装着部)
72 外周溝
74 内周突起(装着部)
76 段差部
78 第1溝部
80 第2溝部