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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038651
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20240313BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240313BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240313BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20240313BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C08G18/40 072
C08G18/48 004
C08G18/48 033
C08G18/76 057
C08G18/63
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142841
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 みかげ
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA13
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC08
4J034CD04
4J034CE01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG08
4J034DG09
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC12
4J034HC35
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】高い通気量を確保しつつ、十分な硬さを有するポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールには、
ポリマーポリオールと、
EO率が60モル%以上であるポリエーテルポリオール(A)と、
EO率が60モル%未満であり、かつ重量平均分子量が300以上1500未満であるポリエーテルポリオール(B)と、が含まれ、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、
前記ポリマーポリオールの含有量は、10質量部より多く、
前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、20質量部以上であり、
前記イソシアネートには、ポリメリックMDIが含まれる、ポリウレタンフォーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールには、
ポリマーポリオールと、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリエーテルポリオール(A)と、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%未満であり、かつ重量平均分子量が300以上1500未満であるポリエーテルポリオール(B)と、が含まれ、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、
前記ポリマーポリオールの含有量は、10質量部より多く、
前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、20質量部以上であり、
前記イソシアネートには、ポリメリックMDIが含まれる、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
JIS K6400-3に準拠した反発弾性が、25%以下である請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS K6400-7 A法:2012に基づく通気量が50L/min以上である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K6400-2 D法:2012に基づく25%硬さが20N以上である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低いEO率のポリエーテルポリオールと、高いEO率のポリエーテルポリオールとを混合したものをポリオール成分として用いたポリウレタンフォームが開示されている。
特許文献1のウレタンフォームは、通気量を確保できることが開示されている。
しかし、特許文献1のポリウレタンフォームは、十分な硬さでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-33553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高い通気量を確保しつつ、十分な硬さを有するポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]ポリオール及びイソシアネートを含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオールには、
ポリマーポリオールと、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%以上であるポリエーテルポリオール(A)と、
アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60モル%未満であり、かつ重量平均分子量が300以上1500未満であるポリエーテルポリオール(B)と、が含まれ、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、
前記ポリマーポリオールの含有量は、10質量部より多く、
前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、20質量部以上であり、
前記イソシアネートには、ポリメリックMDIが含まれる、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高い通気量を確保しつつ、十分な硬さを有するポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[2]JIS K6400-3に準拠した反発弾性が、25%以下である[1]のポリウレタンフォーム。
【0008】
[3]JIS K6400-7 A法:2012に基づく通気量が50L/min以上である[1]のポリウレタンフォーム。
【0009】
[4]JIS K6400-2 D法:2012に基づく25%硬さが20N以上である[1]のポリウレタンフォーム。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.組成物
組成物は、ポリオール及びイソシアネートを含んでいる。組成物は、発泡剤、触媒、整泡剤、及び架橋剤から選択される少なくとも1種を任意の成分として含んでいてもよい。組成物の各成分について説明する。
【0012】
(1)ポリオール
ポリオールは、ポリマーポリオール、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、エチレンオキサイド単位(以下、「EO単位」ともいう。)の含有量が60モル%以上であるポリエーテルポリオール(A)、及び、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、「EO単位」の含有量が60モル%未満(EO単位を含んでいなくてもよい)であるポリエーテルポリオール(B)が含まれる。ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール(A)、及び、ポリエーテルポリオール(B)は、それぞれ2種以上を含んでも良い。
【0013】
(1.1)ポリマーポリオール
ポリマーポリオールは、特に限定されない。ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール(ベースポリオール)に、スチレン及び/又はアクリロニトリル、などのビニルモノマーを重合したポリマーポリオールが挙げられる。ポリマーポリオールのポリマーコンテント(ポリマーポリオール全体に対するベースポリオール以外の部分の質量割合)は10質量%以上55質量%以下であることが好ましく、13質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
ポリマーポリオールの含有量は、25%硬さを確保する観点から、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、10質量部より多く、13質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。他方、圧縮残留ひずみの観点から、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、55質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、ポリマーポリオールの含有量は、10質量部より多く、かつ、55質量部以下が好ましく、13質量部以上45質量部以下がより好ましく、15質量部以上45質量部以下がさらに好ましい。
【0015】
ポリマーポリオールの粘度は、特に限定されない。ポリマーポリオールのB型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度は、好ましくは1500mPa・s以上10000mPa・s以下であり、より好ましくは3000mPa・s以上8000mPa・s以下であり、さらに好ましくは4000mPa・s以上6000mPa・s以下である。
【0016】
ポリマーポリオールの水酸基価は特に限定されない。ポリオールの水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、より好ましくは25mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、更に好ましくは30mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である。
【0017】
(1.2)ポリエーテルポリオール(A)
ポリエーテルポリオール(A)は、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、EO単位の含有量が60モル%以上のポリエーテルポリオールである。EO単位の含有量は、圧縮残留ひずみの観点から、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは75モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上である。EO単位の含有量の上限は、特に限定されず、100モル%であってもよい。ポリエーテルポリオール(A)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルポリオール(A)の製造に用いられるエチレンオキサイドを除く他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられるが、プロピレンオキサイドが用いられることが好ましい。ポリエーテルポリオール(A)として、EO単位の他は全量がプロピレンオキサイド単位(以下、「PO単位」と略記する。)であるポリオールを好適に用いることができる。
【0018】
ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、20質量部以上である。ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、通気量を向上する観点から、30質量部以上40質量部以上がより好ましい。ポリエーテルポリオール(A)の含有量の上限は、成形性、25%硬さの観点から、好ましくは70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(A)の含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、20質量部以上70質量部以下が好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましく、40質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオール(A)の重量平均分子量は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(A)の重量平均分子量は、低反発性を実現するという観点から、好ましくは20000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、6000以下がさらに好ましい。ポリエーテルポリオール(A)の重量平均分子量の下限は、高い通気量を有する観点から、1000以上が好ましく、2500以上が好ましく、4000以上がさらに好ましい。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(A)の重量平均分子量は、1000以上20000以下が好ましく、2500以上10000以下がより好ましく、4000以上6000以下がさらに好ましい。
ポリエーテルポリオール(A)の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
【0020】
ポリエーテルポリオール(A)の官能基数は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(A)の官能基数は、好ましくは2-5であり、より好ましくは2-4であり、さらに好ましくは2又は3である。
【0021】
ポリエーテルポリオール(A)の官能基数が上記の値であれば、ポリオールとイソシアネートが反応する際に網目構造の形成を抑制できる。このようにして形成されたポリウレタンフォームは、圧縮時における、ポリウレタン分子の絡み合いが抑制され、低い圧縮残留ひずみを有するポリウレタンフォームが得られると推測される。
なお、本開示において、官能基数とは、ポリオールに含まれるそれぞれの成分が有する活性水素基の数の平均を意味する。ポリオールが市販品である場合には、カタログ値をポリエーテルポリオール(A)の官能基数として採用してもよい。
【0022】
(1.3)ポリエーテルポリオール(B)
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、EO単位の含有量が60モル%未満(EO単位を含んでいなくてもよい)であるポリエーテルポリオール(B)が含まれる。ポリエーテルポリオール(B)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリエーテルポリオール(B)として、例えば、EO単位を除く他のアルキレンオキサイド単位として、PO単位、ブチレンオキサイド単位等を含有するポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオール(B)は、EO単位の他は全量がPO単位であるポリエーテルポリオールを好適に用いることができる。
【0024】
ポリエーテルポリオール(B)のEO単位の含有量は60モル%未満である。例えば、ポリエーテルポリオール(B)のEO単位の含有量は、通気量を向上する観点から、30モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましい。ポリエーテルポリオール(B)のEO単位の含有量の下限は、特に限定されず、0モル%であってもよい。
【0025】
ポリエーテルポリオール(B)の重量平均分子量は、低い圧縮残留ひずみを有する観点から、300以上であり、400以上が好ましく、500以上がより好ましい。他方で、ポリエーテルポリオール(B)の重量平均分子量は、高い25%硬さを有する観点から、1500未満であり、1000未満が好ましく、800未満がより好ましい。これらの観点から、ポリエーテルポリオール(B)の重量平均分子量は、300以上1500未満であり、400以上1000未満が好ましく、500以上800未満がより好ましい。
ポリエーテルポリオール(B)の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
【0026】
ポリエーテルポリオール(B)の官能基数は特に限定されない。ポリエーテルポリオール(B)の官能基数は、好ましくは2-5であり、より好ましくは2-4であり、さらに好ましくは2又は3である。
ポリエーテルポリオール(B)の官能基数が上記の値であれば、ポリオールとイソシアネートが反応する際に網目構造の形成を抑制できる。このようにして形成されたポリウレタンフォームは、圧縮時における、ポリウレタン分子の絡み合いが抑制され、低い圧縮残留ひずみのウレタンフォームが得られると推測される。
ポリエーテルポリオール(B)としては、EO単位の含有量が60モル%未満のポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体又はポリプロピレングリコールが好ましく、EO単位の含有量が60モル%未満のポリオキシエチレン/プロピレングリコール共重合体がより好ましい。
【0027】
(2)イソシアネート
イソシアネートは、ポリメリックMDIが含まれる。ポリメリックMDIは、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの混合物である。ジフェニルメタンジイソシアネートは、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)が挙げられる。
ポリメリックMDIは、MDI合成反応により得られる未処理の粗(クルード)MDIであってもよく、また上記の粗(クルード)MDIから減圧蒸留により所望量のジフェニルメタンジイソシアネートを分離して組成を調整したものであってもよい。
本開示のポリメリックMDIには、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)が含まれていることが好ましい。
【0028】
ポリメリックMDIには、他のMDI系イソシアネートを含んでいてもよい。他のMDI系イソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体等、また、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらの変性体とポリオール類を反応させて得られるMDIプレポリマー等を挙げることができる。これらの中でも、他のMDI系イソシアネートとして、MDIプレポリマーを含んでいることが好ましい。他のMDI系イソシアネートは、2種類を含んでいてもよい。
【0029】
ポリメリックMDIの添加量は、ポリマーポリオール100質量部に対して、25質量以上80質量部以下が好ましく、30質量部以上75質量部以下が好ましく、35質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
【0030】
ポリメリックMDI全量におけるジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は、通気量の観点から、35質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。他方、25%硬さの観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、ポリメリックMDI全量におけるジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は、35質量%以上90質量%以下が好ましく、45質量%以上85質量%以下が好ましく、55質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
ポリメリックMDI全量におけるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの含有量は、圧縮残留ひずみの観点から、10質量%以上が好ましく、13質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。他方、通気量の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、10質量%以上50質量%以下が好ましく、13質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。ポリメリックMDI中に含まれるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの質量割合を適当な値とすることにより、低い圧縮残留ひずみと、通気量を有するポリウレタンフォームを得ることができる。
【0032】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、25%硬さの観点から、60以上が好ましく、70以上がより好ましく、75以上がさらに好ましい。他方、通気量の観点から、120以下が好ましく、105以下がより好ましく、95以下がさらに好ましい。これらの観点から、イソシアネートインデックス(INDEX)は、60以上120以下が好ましく、70以上105以下がより好ましく、75以上95以下がさらに好ましい。
イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0033】
(3)発泡剤
発泡剤は、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。発泡剤としては、特に水が好ましい。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上3.0質量部以下がさらに好ましい。
【0034】
(4)触媒
触媒は、ポリウレタンフォーム用の公知のものを使用することができる。触媒は、公知のウレタン化触媒、及び/または泡化触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロへキシルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。アミン触媒、及び金属触媒は併用してもよい。アミン触媒、及び金属触媒は、2種以上使用しても良い。触媒の量は、ポリオール全量100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.4質量部以上0.6質量部以下がさらに好ましい。
【0035】
(5)整泡剤
整泡剤は、ウレタンフォーム原料として通常に採用されるものであればよく、例えば、シリコーン系化合物、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。整泡剤の量は、ポリオール全量100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下が好ましく、0.2質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましい。
【0036】
(6)架橋剤
架橋剤は、ポリウレタンフォームの硬さ及び引裂強さを向上するために配合され、特に硬さを上げるために有効である。なお、架橋剤は、任意成分であり、添加しなくても反発弾性を低減できる。
架橋剤としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールや、エタノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類等のアミン等を挙げることができる。架橋剤は二種類以上使用してもよい。架橋剤の合計量は、ポリオール全量100質量部に対し、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上5.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がさらに好ましい。
【0037】
(7)その他の成分
その他に適宜配合される添加剤として、例えば、難燃剤、着色剤等を挙げることができる。
【0038】
難燃剤は、ポリウレタンフォームを低燃焼化するために配合される。難燃剤としては、公知の液体系難燃剤や固体系難燃剤等を挙げることができる。例えば、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、あるいはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤は、一種に限られず、二種以上を併用してもよい。難燃剤の合計量は、ポリオール全量100質量部に対して、0質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.05質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上6.0質量部以下がさらに好ましい。
着色剤は、ポリウレタンフォームを適宜の色にするために配合され、求められる色に応じたものが使用される。着色剤として、顔料、黒鉛等を挙げることができる。
【0039】
2.ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
【0040】
(1)見掛けコア密度
見掛けコア密度(JIS K7222)は、10kg/m以上100kg/m以下が好ましく、20kg/m以上75kg/m以下がより好ましく、30kg/m以上50Kg/m以下がさらに好ましい。
(2)25%硬さ
25%硬さ(JIS K6400-2 D法)は、20N以上200N以下が好ましく、30N以上150N以下がより好ましく、40N以上100N以下がさらに好ましい。
(3)反発弾性
反発弾性(JIS K6400-3)は、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。反発弾性は、通常0%以上である。
(4)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4 4.5.2 A法)は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 4.5.2 A法に準じて、サンプルを50%の厚みに圧縮した状態で70℃の乾燥炉に22時間放置した後、圧縮を解除して30分後の厚みを測定し、圧縮前の厚みに対する変形量(%)として算出した。
(5)通気量
通気量(JIS K6400-7 A法:2012)は、50L/min以上が好ましく、100L/min以上がより好ましく、150L/min以上が更に好ましい。通気量は、通常300L/min以下である。
【0041】
3.圧縮残留ひずみが低減する推測理由
本開示のポリウレタンフォームにおいて圧縮残留ひずみが低減する理由は定かではないが、次のように推測される。但し、本開示は、この推定理由によって何ら限定解釈されるものではない。
EO単位の含有量が60モル%以上であるポリエーテルポリオール(A)を用いることで、ポリウレタン分子中の側鎖を減らすことができ、ポリウレタンフォームが圧縮された際のポリウレタン分子の絡み合いが抑制される。すると、ポリウレタンフォームを圧縮した際に、ポリウレタン分子の絡み合いに起因した歪が生じ難くなり、低い圧縮残留ひずみを有すると推測される。
【0042】
4.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂組成物を攪拌混合してポリオールとイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡等があり、いずれの成形方法でもよい。
スラブ発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
他方、モールド発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。モールド発泡による成形方法は、複雑な立体形状を有する成形品に好適である。例えば、シートパッド等のクッション材、枕及びマットレス等の寝具、座布団、座椅子用パッド、衣料用パッドの成形に好適である。
【0043】
5.ポリウレタンフォームの用途
本開示のポリウレタンフォームが使用される物品は限定されない。ポリウレタンフォームは、マットレスに好適であり、特に日用品のシートパッドとして好適である。
日用品マットレスの性能として、体圧分散性が求められている。体圧分散性を向上するうえで、反発弾性の低減が有効である。
日用品マットレスの性能として、ムレの低減が求められている。通年使用によるムレを低減する上で、通気量の向上が有効である。
日用品マットレスの性能として、へたりにくいことが求められている。へたりにくさには、高い25%硬さと、低い圧縮残留ひずみが必要である。
【実施例0044】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。
1.ポリウレタンフォームの製造
表1,2の割合で配合した組成物を調製し、スラブ発泡により、実施例及び比較例のポリウレタンフォームを製造した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
2.ポリウレタンフォームの調製(実施例1-6、及び比較例1-5)
各原料の詳細は以下の通りである。なお、ポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド単位の全量を100モル%とした場合に、EO単位の含有量(モル%)を「EO率」、PO単位の含有量(モル%)を「PO率」として表に記載した。
・ポリマーポリオール:旭硝子ウレタン社製 エクセノール941WF(ポリエーテルポリオールにアクリロニトリルとスチレンの固形分をグラフト重合したエーテル系ポリマーポリオール、官能基3、粘度5100mPa・s・25℃、水酸基価32mgKOH/g)
・ポリエーテルポリオール(A):住化コベストロウレタン社製、SBU ポリエーテルポリオール S240(官能基数3、重量平均分子量 5000、EO率60モル%以上、PO率40モル%以下:EO率とPO率の合計を100モル%とする。)
・ポリエーテルポリオール(B):(株)旭電化工業社製、G-700(官能基数3、重量平均分子量670、水酸基価250mgKOH/g、EO率0モル%、PO率100モル%)
・ポリエーテルポリオール(C):三洋化成工業株式会社製、GP3050NS(官能基数3、重量平均分子量3000、水酸基価56mgKOH/g、EO率10モル%、PO率90モル%)
・発泡剤:水
・触媒-1:アミン触媒1:エボニックジャパン社製 DABCO NE300
・触媒-2:アミン触媒2(トリエチレンジアミン 33質量%):エボニックジャパン株式会社製 DABCO 33LSI
・整泡剤:シリコーン系整泡剤:東レダウコーニング社製 SZ2904
【0048】
・MDI-1:ポリメリックMDI(4,4’-MDI 58質量%、2,4’-MDI 20質量% ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート 20質量%の混合物)
・MDI-2:モノメリックMDI(4,4’-MDI、2,4’-MDIの混合物)、日本ポリウレタン社製 ミリオネートNM
・TDI:トルエンジイソシアネート、東ソー社製 コロネートT-80
【0049】
(1)実施例1-6の各要件の充足状況
実施例1-6のポリウレタンフォームを構成する組成物は、下記要件(a)-(d)を全て満たしている。
・要件(a):ポリマーポリオールの添加量が10質量部より多い。
・要件(b):ポリエーテルポリオール(A)の添加量が20質量部以上である。
・要件(c):ポリエーテルポリオール(B)の重量平均分子量が300以上1500未満である。
・要件(d):ポリメリックMDIを含んでいる。
【0050】
(2)比較例1-5の各要件の充足状況
これに対して、比較例1-5のポリウレタンフォームを構成する組成物は、以下の要件を満たしていない。
比較例1は、要件(c)を満たしていない。
比較例2は、要件(a)を満たしていない。
比較例3は、要件(a)を満たしていない。
比較例4は、要件(d)を満たしていない。
比較例5は、要件(d)を満たしていない。
【0051】
3.評価方法
上記原料を用いて製造されたポリウレタンフォームから試験片を切り出し、下記の方法により見掛けコア密度、25%硬さ、反発弾性、圧縮残留ひずみ、通気量を測定した。
(1)見掛けコア密度(Kg/m
見掛けコア密度(Kg/m)は、JIS K7222に準じて測定した。
見かけコア密度の評価は以下の基準とした。
「A」:25(Kg/m)以上45(Kg/m)以下である。
「C」:25(Kg/m)未満、又は、45(Kg/m)より大きい。
(2)25%硬さ(N)
25%硬さ(N)は、JIS K6400-2 D法に準じて測定した。
25%硬さ(N)の評価は以下の基準とした。
「A」 :40(N)以上である。
「B」 :20(N)以上40(N)以下である。
「C」 :20(N)未満である。
(3)反発弾性
反発弾性(%)は、JIS K6400-3に準じて測定した。
反発弾性(%)の評価は以下の基準とした。
「A」 :15(%)以下である。
「B」 :15(%)より大きく25(%)以下である。
「C」 :25(%)より大きい。
(4)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみ(%)は、JIS K6400-4 4.5.2 A法に準じて測定した。
圧縮残留ひずみ(%)の評価は以下の基準とした。
「A」 :5(%)以下である。
「B」 :5(%)より大きく10(%)以下である。
「C」 :10(%)より大きい。
(5)通気量
通気量(L/min)は、JIS K6400-7 A法:2012に準じて測定した。
通気量評価(L/min)の評価は以下の基準とした。
「A」 :150(L/min)以上である。
「B」 :50(L/min)以上である。
「C」 :50(L/min)未満である。
(6)総合評価
「A」 :(1)-(5)の評価項目において全てA評価である。
「B」 :(1)-(5)の評価項目において「A」又は「B」評価である。
「C」 :(1)-(5)の評価項目のいずれかが「C」評価である。
【0052】
4.結果
結果を表1、2に併記する。
【0053】
要件(a)-(d)をすべて充足する実施例1-6のポリウレタンフォームの総合判定の結果は、A又はBであった。
要件(a)-(d)をすべて充足する実施例1-6のポリウレタンフォームの反発弾性は、いずれも25%以下であった。
要件(a)-(d)をすべて充足する実施例1-6のポリウレタンフォームの通気量は、いずれも50L/min以上であった。
要件(a)-(d)をすべて充足する実施例1-6のポリウレタンフォームの25%硬さは、いずれも20N以上であった。
【0054】
5.考察
実施例1は、比較例5よりも、25%硬さ、反発弾性、圧縮残留ひずみが改善された。本開示のウレタンフォームは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むことにより、各特性値が大幅に改善される。特に、本開示のウレタンフォームは、ポリメリックMDIにポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、ポリメリックMDI全量に対して15%質量以上30%質量以下含んでいることがより好ましい。
実施例1、2、3は、実施例4、5、6よりも、通気量が改善された。本開示のウレタンフォームのイソシアネートINDEXは75以上95以下であることがより好ましい。
【0055】
6.実施例の効果
以上の実施例によれば、高い通気量を確保しつつ、十分な硬さを有する、ポリウレタンフォームを提供できる。
【0056】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。