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  • 特開-胸腔鏡下手術用ポート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038659
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】胸腔鏡下手術用ポート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142849
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】小池 公洋
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA14
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】胸腔鏡下手術において一般的な5mm~12mm径の手術器具に幅広く適用可能で、かつ、該手術器具を操作するさいに支点となることができる胸腔鏡下手術用ポートを提供する。
【解決手段】体表から胸腔内にかけて位置する筒状のスリーブ20と、該スリーブ20の近位端に形成される挿入孔33を有するゴム弾性のヘッド30により構成され、ヘッド30の該挿入孔33周辺の胸腔鏡や手術器具等が接触する範囲に凹凸を設けて形成されている。該凹凸部は、前記ヘッド30の表面34や裏面35などに設ける同心円状、螺旋状、あるいは、放射状の連続する、あるいは、断続する突起や、ヘッド30の上部平坦面32に設ける複数の孔として形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腔鏡下手術に用いる胸腔鏡や手術器具等の通路となるポートであって、体表から胸腔内にかけて位置させる筒状のスリーブと、
該スリーブの近位端に形成される挿入孔を有するゴム弾性のヘッドを備えて構成し、
該ヘッドの挿入孔周辺の胸腔鏡や手術器具等が接触する範囲に凹凸を設けること特徴とする胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項2】
前記ヘッドの凹凸は、該ヘッドの表面、または/及び、裏面に該挿入孔と同心円状または螺旋状の連続または断続する突起を備える請求項1の胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項3】
前記ヘッドの凹凸は、該ヘッドの表面、裏面、または、前記挿入孔周面のうち少なくとも一つ以上に該挿入孔の中心から放射状の連続または断続する突起を備える請求項1の胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項4】
前記ヘッドは、該ヘッドの上部平坦面に挿入孔よりも小さな穴を複数設ける請求項1の胸腔鏡下手術用ポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸腔鏡下手術のさいに、胸腔内に胸腔鏡や鉗子などの手術器具を導入し、操作するための通路となる胸腔鏡下手術用ポートに関する。
【背景技術】
【0002】
胸腔鏡下手術は、肋間隙に設ける2cm程度の切開創に、体表から胸腔内に至る筒状のポートを挿着、固定し、該ポートの通路を通して胸腔鏡を挿入して、該胸腔鏡の映像を観察しながら、別のポートから導入される手術器具を操作して治療や検査を行う手術で、患者への侵襲性が小さく、整容性に優れた手術であることから、自然気胸や肺がんに対する肺葉切除などに広く適用される術式となっている。
【0003】
この胸腔鏡下手術は、腹腔鏡下手術とは異なり気腹ガスを導入する必要が無く、ガス漏れ防止のシールが不要である。そのため、前記ポートは、例えば特許文献1のように、前記手術器具が挿入可能で、肋間隙の切開創に固定できる筒体にフランジ等を備えた比較的単純な構成のポートが用いられる。
【0004】
しかし、前記特許文献1のポートには、前記手術器具に密着する弁がないため、前記ポート内での手術器具の動きを制限する支点がなく、操作が不安定となる。そこで、例えば非特許文献1のように、ポートの体外側に弾性変形可能なヘッドを設け、該ヘッドには、ポートの筒体と同軸上に手術器具が接触するサイズの挿入孔を形成することで、該手術器具の操作を安定させることが一般的に実施されている。
【0005】
そして、本発明が適用となる胸腔鏡下手術用ポートに挿入される手術器具の太さは、一般的に直径5mmから12mm程度と幅広いため、該ポートは、手術器具の太さに応じて、筒体径の異なる複数の仕様がラインナップされる。一方、前記筒体径の広いポートにも細径な手術器具を挿入するケースがあるため、ポートのいずれの仕様の挿入孔も、細径な手術器具に接触する孔径5mmに形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-99475号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】インターネットURL:https://www.medtronic.com/content/dam/covidien/library/jp/ja/product/trocars-and-access/thoraco-port-sales-sheet.pdf コヴィディエンジャパン株式会社ソラコポート/ソフトソラコポートカタログ 検索日:2022年8月23日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記非特許文献1の器具では、細径な手術器具に対し接触して支点となりうる直径5mm程度の挿入孔に対し、より太い12mm程度の手術器具を挿入する場合、該挿入孔を押し広げて密着するため、手術器具挿抜時の摺動抵抗が大きく、操作ミスや操作者に対するストレスの要因となる。一方、12mm程度の手術器具と挿入孔との摺動抵抗を低減すべく、該挿入孔径を12mm程度とすると、細径な手術器具を挿入するさいに支点となることができず、やはり操作が不安定となる。
【0009】
そこで、本発明は、胸腔鏡下手術において一般的な5mm~12mm径の手術器具に幅広く適用可能で、かつ、該手術器具を操作するさいに支点となることができる胸腔鏡下手術用ポートを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の胸腔鏡下手術用ポートは、胸腔鏡や手術器具等の通路となるポートであって、体表から胸腔内にかけて位置させる筒状のスリーブと、該スリーブの近位端に形成される挿入孔を有するゴム弾性のヘッドとを備えて構成し、該ヘッドの挿入孔周辺の胸腔鏡や手術器具等が接触する範囲に凹凸を設けて形成した。
【0011】
また、前記ヘッドの凹凸は次のように形成されることが好ましい。
・該ヘッドの表面、または/及び、裏面に前記挿入孔と同心円状または螺旋状の連続または断続する突起として備える。
・該ヘッドの表面、裏面、または、前記挿入孔周面のうち少なくとも一つ以上に該挿入孔の中心から放射状の連続または断続する突起として備える。
・該ヘッドの上部平坦面に前記挿入孔よりも小さな穴として複数設ける。
これらの手段により、手術器具とポートの接触面積が小さくなったり、ヘッドの上部平坦面の柔軟性が高まったりすることにより、手術器具の挿抜操作における摺動抵抗が軽減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、胸腔鏡下手術において一般的な5mm~12mm径の手術器具に幅広く適用可能で、かつ、該手術器具を操作するさいに支点となることができる胸腔鏡下手術用ポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施の形態を示す平面図及び正面図。
図2】従来の胸腔鏡下手術用ポート及び第一の形態の胸腔鏡下手術用ポートと手術器具との接触状態を示す断面図。
図3】本発明の第二の実施の形態を示す平面図及び正面図。
図4】本発明の第三の実施の形態を示す平面図及び正面図。
図5】本発明の第四の実施の形態を示す平面図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の胸腔鏡下手術用ポートの実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。図1は第一の実施の形態の胸腔鏡下手術用ポートを示す図で、Aは平面図、Bは正面図を示している。
【0015】
本形態の胸腔鏡下手術用ポート1は、肋間隙に設ける2cm程度の切開創に該ポート1を挿着したとき、胸腔内から体外まで連通する通路を形成し、手術器具を胸腔内へ導入する通路となるスリーブ20と、スリーブ20の近位端に設けられ、手術器具に接触し、該手術器具の操作を安定させる挿入孔33を備えたヘッド30により基本構成される。
【0016】
前記スリーブ20は、前記切開創より挿入可能で、かつ、直径12mm程度の手術器具を挿通可能な円筒形状(本形態においては、外径15mm、内径13mm)の筒体部21と、筒体部21の近位端より外周方向に突出したフランジ22とからなる。該筒体部21の外面には、切開創からの抜け防止のため螺旋状(本形態においては、高さ1mm、6mm間隔の突出部)の係止部23を備える。スリーブ20は、弾性変形可能なスチレン系熱可塑性エラストマーや、硬質のポリアセタール等の熱可塑性樹脂により形成される。
【0017】
前記ヘッド30は、弾性変形可能な樹脂(本形態においては、スチレン系熱可塑性エラストマー)により円筒キャップ状に形成され、前記スリーブ20の前記フランジ22に円筒部内面31が嵌合して接続される。また、上部平坦面32は薄い(本形態においては、厚さ1mm)シート状で、前記スリーブ20と同軸上に挿入孔33が形成される。該挿入孔33の内径は、本発明に適合する一般的な手術器具のなかで細径な手術器具に周面が接触するように設定される(本形態においては、直径5mm)。
【0018】
また、前記ヘッド30の挿入孔33周辺の表面34、または/及び、裏面35には、各面に対して垂直方向に立ち上がるリブ36を設ける。該リブ36は断面が半円形(本形態においては、半径1~3mm)の突起で、前記挿入孔33の周縁と、該周縁と同心円状に複数本(本形態においては、2mm間隔に3本)配置される。なお、前記ヘッド30の柔軟性によって手術器具が挿入された際のリブ36の形状や接触箇所は変化するため、該ヘッド30の柔軟性に応じて適切なリブ36の形状、及び、配置は異なる。また、該リブ36は挿入孔33を中心とした螺旋状でも良く、該リブ36は一部が途切れている形状でも良い。さらに、該リブ36の断面形状は、矩形や、リブ36の頂部に向けて細くなる形状でも良い。
【0019】
図2は、従来の胸腔鏡下手術用ポート4、及び、前記第一の形態の胸腔鏡下手術用ポート1と手術器具5の接触状態を示す断面図である。図2のAは、従来の胸腔鏡下手術用ポート4の挿入孔43に挿入された直径12mm程度の手術器具5を抜去する際の様子で、該手術器具5の円筒側面に前記挿入孔周囲面46が密着し、摺動抵抗が大きくなるため、操作ミスや操作者に対するストレスの要因となる。
【0020】
一方、図2のBは、第一の実施の形態の胸腔鏡下手術用ポート1の挿入孔33に挿入された直径12mm程度の手術器具5を抜去する際の様子で、該手術器具5の円筒側面には前記裏面35に配置される前記リブ36の頂点近傍のみが接触するため、前記従来の胸腔鏡下手術用ポート4に比べ手術器具との接触面積が小さく、摺動抵抗を軽減する。また、該手術器具5を逆方向に摺動させる場合には、前記表面34に配置される該リブ36が同様に作用する。これにより、本例の小さな挿入孔でも大きな径の手術器具を容易に挿抜できるため、胸腔鏡下手術において一般的な5mm~12mm径の手術器具に対し、一つのポートで幅広く適用可能で、かつ、どの手術器具に対しても操作時に支点となることができる胸腔鏡下手術用ポートが提供される。
【0021】
図3は本発明の第二の実施の形態を示す図で、Aは平面図、Bは正面図を示している。本実施の形態を含む以降全ての実施の形態の胸腔鏡下手術用ポートのヘッドは、第一の実施の形態と同様のスリーブ20(図示省略)に嵌合して接続される。また第一の実施の形態と同様の構成要素には第一の実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
図3に示す本発明の第二の実施の形態は、ヘッド130の表面34、裏面35、及び、挿入孔133周面にリブ136を備えるものである。該リブ136は、ヘッド130の表面34、裏面35、及び、挿入孔133の周面に対し垂直方向に立ち上がる突起で、断面形状は矩形に形成され、該挿入孔133の中心から放射線状に配置される。該リブ136は挿入孔133の円周上に等間隔に複数設けることが好ましく(本形態においては、リブ本数8本)、該リブ136の幅及び高さは1mm以上3mm以下、半径方向への長さは3mm以上が好ましい(本形態においては、リブ幅及び高さ2mm、半径方向への長さ13mm)。該リブ136の高さが前記下限以上では、手術器具と挿入孔133のリブ136以外の箇所との接触を回避し、前記上限以下ではリブ136の過度の変形を抑制する。さらに、半径方向への長さを前記下限以上とすることで挿入孔136の直径5mm程度に対して直径12mm程度の手術器具が挿入された状態でもリブ136以外の箇所との接触を回避できる。また、一般的にリブ136の本数及び幅を必要最低限とすることで、挿通される手術器具との摩擦を軽減でき、該リブ136の本数を多く、幅を広くするほど操作時の支点としての保持力が高まる。
【0023】
なお、前記ヘッド130の柔軟性によって手術器具が挿入された際の前記リブ136の形状や接触箇所は変化するため、該ヘッド130の柔軟性に応じて適切なリブ136の形状、及び、配置は異なる。また、該リブ136は一部が途切れている形状でも良い。さらに、該リブ136の断面形状は、半円形や、リブ136の頂部に向けて細くなる形状でも良い。
【0024】
図4は本発明の第三の実施の形態を示す図で、Aは平面図、Bは正面図を示している。本実施の形態は、ヘッド230の表面34、裏面35、及び、挿入孔233周面に凸点236を設けるものである。該凸点236は半球形状(本形態においては、ヘッド230の表面34及び裏面35は直径2mm、挿入孔233周面は直径1mm)の突起で、該凸点236は、ヘッド230の表面34、裏面35、及び、挿入孔233周面に、該挿入孔233の同心円上に等角度に複数個(本形態においては、8個)、さらにヘッド230の表面34、及び、裏面35に、放射状に間隔をあけて複数個(本形態においては、1mm間隔で3個)配置した。これにより、直径12mm程度の手術器具が挿入された状態でも凸点236の頂点のみが該手術器具に接触するため、摺動抵抗を軽減する。
【0025】
なお、前記凸点236の形状、及び、配置については、前記ヘッド230の柔軟性により最適な条件は異なるが、該凸点236の形状としては直径1mmから3mm程度の半球、円錐または角錐形状が好ましく、また該凸点236の配置は、挿入された手術器具を該凸点236が均等に支持するように、前記挿入孔233の同心円上に等角度であることが好ましい。
【0026】
図5は本発明の第四の実施の形態を示す図で、Aは平面図、Bは正面図を示している。本実施の形態は、ヘッド330の上部平坦面32に、複数の穴部336を設けるものである。該穴部336は円形(本形態においては、直径2mm)で、挿入孔333の周縁から円周方向に均等に複数個(本形態においては、8個)、さらに半径方向に間隔をあけて複数個(本形態においては、1mm間隔で3個)配置した。これにより、直径12mm程度の手術器具が挿入された状態でも該穴部336は該手術器具に接触しないため、摺動抵抗を軽減する。加えて、該穴部336を有することで、手術器具を挿入するさいに挿入孔333は柔軟に拡張されるため、この作用も摺動抵抗軽減に寄与する。
【0027】
なお、前記穴部336の形状、及び、配置については、前記ヘッド330の柔軟性により最適な条件は異なるが、該穴部336の形状としては直径1mmから3mm程度が好ましく、また該穴部336の配置は、挿入された手術器具をヘッド330が均等に支持するように前記挿入孔333の同心円上に等間隔であることが好ましい。また、孔部は上部平坦面32を貫通するものであっても良いが、貫通しない陥凹部としても良い。
【符号の説明】
【0028】
1. 胸腔鏡下手術用ポート
20. スリーブ
21. 筒体部
22. フランジ
23. 係止部
30. ヘッド
31. 円筒部内面
32. 上部平坦面
33. 挿入孔
34. 表面
35. 裏面
36. リブ
4. 胸腔鏡下手術用ポート
43. 挿入孔
46. 挿入孔周辺
5. 手術器具
130.ヘッド
133.挿入孔
136.リブ
230.ヘッド
233.挿入孔
236.凸点
330.ヘッド
333.挿入孔
336.穴部
図1
図2
図3
図4
図5