(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038665
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/36 20060101AFI20240313BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240313BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20240313BHJP
B60T 13/122 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60T8/36
B60T17/18
B60T13/68
B60T13/122 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142864
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 千春
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広大
(72)【発明者】
【氏名】大澤 俊哉
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048HH26
3D048HH70
3D048HH75
3D049BB02
3D049CC02
3D049HH20
3D049HH51
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB01
3D246GB37
3D246LA17A
3D246LA17B
3D246LA18A
3D246LA18B
3D246LA20A
3D246LA20B
3D246LA33A
3D246LA33B
3D246MA19
3D246MA23
(57)【要約】
【課題】 必要なシステムのみの冗長化を行う場合に、コストの抑制と大型化の抑制とを両立できるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】 第1端子および第2端子が接続された第1コイルと、第3端子および第4端子が接続された第2コイルと、を並列に有する電磁弁と、電磁弁が配置されるハウジングと、ハウジングの一端面から第1コイルの巻回軸方向にオフセットして配置される1枚の制御基板と、を備え、全ての端子は、1枚の制御基板に接続されるようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子および第2端子が接続された第1コイルと、第3端子および第4端子が接続された第2コイルと、を並列に有する電磁弁と、
前記電磁弁が配置されるハウジングと、
前記ハウジングの一端面から前記第1コイルの巻回軸方向にオフセットして配置される1枚の制御基板と、を備え、
全ての前記端子は、前記制御基板に接続される、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のブレーキ制御装置において、
前記電磁弁は複数であり、ホイルシリンダに付与するブレーキ液圧を増圧可能な電磁弁と減圧可能な電磁弁である、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のブレーキ制御装置において、
前記電磁弁は複数であり、マスタシリンダとホイルシリンダを遮断可能な電磁弁と前記マスタシリンダとストロークシミュレータを遮断する電磁弁である、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項3記載のブレーキ制御装置において、
前記電磁弁は、更に車両の後輪ブレーキを増圧可能な電磁弁である、
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気系統の失陥への対応策として、冗長化を行うために電気系統を2重にして、それぞれ制御基板を備える2つのECUに接続するので、すべての電磁弁のコイルは2重の端子で構成され、1系統は一方のECUに接続され、他系統は他方のECUに接続されているブレーキ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、アンチロック制御等の必要なシステムの電磁弁のコイルのみ2重の端子で構成する場合には、コストが高くなり、大型化を招くという課題があった。
本発明の目的の一つは、必要なシステムのみの冗長化を行う場合に、コストの抑制と大型化の抑制とを両立できるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態におけるブレーキ制御装置は、第1端子および第2端子が接続された第1コイルと、第3端子および第4端子が接続された第2コイルと、を並列に有する電磁弁と、電磁弁が配置されるハウジングと、ハウジングの一端面から第1コイルの巻回軸方向にオフセットして配置される1枚の制御基板と、を備え、全ての端子は、1枚の制御基板に接続される。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明によれば、必要なシステムのみの冗長化を行う場合に、コストの抑制と大型化の抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1のブレーキ制御装置の概略図である。
【
図2】実施形態1のブレーキ制御装置要部の分解斜視図である。
【
図3】(a)は、実施形態1の4本端子のソレノイドの断面斜視図であり、(b)は、実施形態1の2本端子のソレノイドの断面斜視図である。
【
図4】実施形態1の4本端子のソレノイドと2本端子のソレノイドの制御基板への取付状態を示す斜視図である。
【
図6】実施形態2のブレーキ制御装置の概略図である。
【
図8】実施形態3のブレーキ制御装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1のブレーキ制御装置1の概略図である。
【0009】
(ブレーキ制御装置の構成)
ブレーキ制御装置1は、車輪を駆動する原動機として内燃機関(エンジン)のみを備えた一般的な車両のほか、内燃機関に加えて電動式のモータ(ジェネレータ)を備えたハイブリッド車や、電動式のモータのみを備えた電気自動車等に搭載されている。
ブレーキ制御装置1は、各車輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)に設置され、ホイルシリンダ2の液圧に応じて作動するディスクブレーキを有する。
ブレーキ制御装置1は、ホイルシリンダ2の液圧を調整することにより、各車輪FL~RRに制動トルクを付与する。ブレーキ制御装置1は、2系統(プライマリP系統およびセカンダリS系統)のブレーキ配管を有する。ブレーキ配管形式は、例えばX配管形式である。
以下、プライマリ系統(以下P系統)に対応する部材とセカンダリ系統(以下、S系統)に対応する部材を区別する場合には、符号の末尾に添字P、Sを付す。また、各車輪FL~RRに対応する部材を区別する場合には、その符号の末尾に添字a~dを付す。
ブレーキペダル3は、ドライバのブレーキ操作の入力を受けるブレーキ操作部材である。プッシュロッド4は、ブレーキペダル3の操作に応じてストロークする。マスタシリンダ5は、プッシュロッド4のストローク量により作動し、ブレーキ液圧(マスタシリンダ液圧)を発生する。
【0010】
マスタシリンダ5は、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク6からブレーキ液が補給される。マスタシリンダ5は、タンデム型であり、プッシュロッド4のストロークに応じてストロークするPピストン51PおよびSピストン51Sを有する。
両ピストン51P、51Sは、プッシュロッド4の軸方向に沿って直列に並ぶ。Pピストン51Pはプッシュロッド4に接続されている。Sピストン51Sはフリーピストン型である。
マスタシリンダ5には、ストロークセンサ60が取り付けられている。ストロークセンサ60は、ブレーキペダル3のペダルストローク量として、Pピストン51Pのストローク量を検出する。
ストロークシミュレータ7は、ドライバのブレーキ操作に応じて作動する。ストロークシミュレータ7は、ドライバのブレーキ操作に応じてマスタシリンダ5の内部から流出したブレーキ液が流入することで、ペダルストロークを発生させる。
ストロークシミュレータ7のピストン71は、マスタシリンダ5から供給されたブレーキ液により、シリンダ72内をスプリング73の付勢力に抗して軸方向に作動する。これにより、ストロークシミュレータ7は、ドライバのブレーキ操作に応じた操作反力を生成する。
【0011】
液圧ユニット8は、ドライバのブレーキ操作とは独立して各車輪FL~RRに制動トルクを付与可能である。
液圧ユニット8は、マスタシリンダ5およびリザーバタンク6からブレーキ液の供給を受ける。液圧ユニット8は、マスタシリンダ5およびホイルシリンダ2間に設置されている。
液圧ユニット8は、制御液圧を発生するためのアクチュエータとして、ポンプ21のモータ211および複数の電磁弁(遮断弁12等)を有している。
ポンプ21は、リザーバタンク6からブレーキ液を吸入し、ホイルシリンダ2へ向けて吐出する。ポンプ21は、例えばプランジャポンプやギヤポンプである。モータ211は、例えばブラシ付きモータである。
複数の電磁弁(遮断弁12等)は、制御信号に応じて開閉動作し、液路11等の連通状態を切り替えることにより、ブレーキ液の流れを制御する。液圧ユニット8は、マスタシリンダ5およびホイルシリンダ2間の連通を遮断した状態で、ポンプ21が発生するブレーキ液圧によりホイルシリンダ2を加圧する。また、液圧ユニット8は、各所の液圧を検出する液圧センサ35~37を有する。
【0012】
マスタシリンダ5の両ピストン51P、51S間には、P液圧室52Pが画成されている。P液圧室52Pには、圧縮コイルスプリング53Pが設置されている。Sピストン51Sおよびシリンダ54の底部541間には、S液圧室52Sが画成されている。S液圧室52Sには、圧縮コイルスプリング53Sが設置されている。各液圧室52P、52Sには、液路(接続液路)11が開口する。各液圧室52P、52Sは、液路11を介して液圧ユニット8に接続すると共に、ホイルシリンダ2と連通可能である。
ドライバによるブレーキペダル3の踏み込み操作によって両ピストン51P、51Sがストロークし、両液圧室52P、52Sの容積の減少に応じてマスタシリンダ液圧が発生する。両液圧室52P、52Sには略同じマスタシリンダ液圧が発生する。
これにより、両液圧室52P、52Sから各液路11P、11Sを介して各ホイルシリンダ2a~2dへ向けてブレーキ液が供給される。
すなわち、マスタシリンダ5は、P液圧室52Pに発生したマスタシリンダ液圧によりP系統の液路(液路11P)を介してP系統のホイルシリンダ2a、2dを加圧する。また、マスタシリンダ5は、S液圧室52Sに発生したマスタシリンダ液圧によりS系統の液路(液路11S)を介してS系統のホイルシリンダ2b、2cを加圧する。
【0013】
ストロークシミュレータ7は、シリンダ72、ピストン71およびスプリング73を有する。
シリンダ72は円筒状の内周面を有し、ピストン収容部721およびスプリング収容部722を有する。
ピストン収容部721はスプリング収容部722よりも小径である。スプリング収容部722の内周面には、後述する液路27が常時開口する。
ピストン71は、ピストン収容部721内を軸方向に移動可能である。ピストン71は、シリンダ72内を正圧室711と背圧室712とに分離する。
正圧室711には、液路26が常時開口する。背圧室712には、液路27が常時開口する。
ピストン71の外周には、ピストンシール75が設置されている。ピストンシール75は、ピストン収容部721の内周面に摺接し、ピストン収容部721の内周面およびピストン71の外周面間をシールする。ピストンシール75は、正圧室711および背圧室712間をシールすることでこれらを液密に分離する分離シール部材であり、ピストン71の機能を補完する。
スプリング73は、背圧室712内に設置された圧縮コイルスプリングであり、ピストン71を背圧室712側から正圧室711側へ向かって付勢する。スプリング73は、圧縮量に応じて反力を発生する。
また、スプリング73は、第1スプリング731および第2スプリング732を有する。第1スプリング731は、第2スプリング732よりも小径かつ短尺であり、線径が小さい。第1スプリング731および第2スプリング732は、ピストン71およびスプリング収容部722間に、リテーナ部材74を介して直列に配置されている。
【0014】
液路11は、マスタシリンダ5の液圧室52およびホイルシリンダ2間を接続する。液路11Pは液路11aと液路11dに分岐する。液路11Sは液路11bと液路11cに分岐する。
遮断弁(電磁弁)12は、液路11に設けられた常開型の(非通電状態で開弁する)電磁比例弁である。電磁比例弁は、ソレノイドに供給される電流に応じて任意の開度を実現できる。
液路11は、遮断弁12によって、マスタシリンダ5側の液路11Aとホイルシリンダ2側の液路11Bとに分離されている。
ソレノイドイン弁(電磁弁)13は、液路11における遮断弁12よりもホイルシリンダ2側(液路11B)に、各車輪FL~RRに対応して(液路11a~11d)設けられた常開型の電磁比例弁である。液路11には、ソレノイドイン弁13をバイパスするバイパス液路14が設けられている。バイパス液路14には、ホイルシリンダ2側からマスタシリンダ5側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁15が設けられている。
【0015】
吸入配管16は、リザーバタンク6と内部リザーバ17とを接続する。液路18は、内部リザーバ17とポンプ21の吸入側とを接続する。液路19は、ポンプ21の吐出側と、液路11Bにおける遮断弁12とソレノイドイン弁13との間とを接続する。液路19は、P系統の液路19PとS系統の液路19Sとに分岐する。両液路19P、19Sは液路11P、11Sに接続する。両液路19P、19Sは、液路11P、11Sを互いに接続する連通路として機能する。連通弁(電磁弁)20は、液路19に設けられた常閉型の(非通電状態で閉弁する)オンオフ弁である。オンオフ弁は、ソレノイドに供給される電流に応じて開閉が2値的に切り替えられる。
ポンプ21は、リザーバタンク6から供給されるブレーキ液により液路11に液圧を発生させてホイルシリンダ液圧を発生させる。ポンプ21は、液路19P、19Sおよび液路11P、11Sを介してホイルシリンダ2a~2dと接続しており、液路19P、19Sにブレーキ液を吐出することでホイルシリンダ2を加圧する。
【0016】
液路22は、両液路19P、19Sの分岐点と液路23とを接続する。液路22には、調圧弁(電磁弁)24が設けられている。調圧弁24は、常開型の電磁比例弁である。液路23は、液路11Bにおけるソレノイドイン弁13よりもホイルシリンダ2側と、内部リザーバ17とを接続する。ソレノイドアウト弁(電磁弁)25は、液路23に設けられた常閉型のオンオフ弁である。
液路26は、P系統の液路11Aから分岐してストロークシミュレータ7の正圧室711に接続する。なお、液路26が、液路11P(11A)を介さずにP液圧室52Pと正圧室711とを直接的に接続するようにしてもよい。
【0017】
液路27は、ストロークシミュレータ7の背圧室712および液路11間を接続する。具体的には、液路27は、液路11P(11B)における遮断弁12Pとソレノイドイン弁13との間から分岐して背圧室712に接続する。
ストロークシミュレータイン弁(電磁弁)28は、液路27に設けられた常閉型のオンオフ弁である。液路27は、ストロークシミュレータイン弁28によって、背圧室712側の液路27Aと液路11側の液路27Bとに分離されている。
ストロークシミュレータイン弁28をバイパスして液路27と並列にバイパス液路29が設けられている。バイパス液路29は、液路27Aおよび液路27B間を接続する。バイパス液路29にはチェック弁30が設けられている。チェック弁30は、液路27Aから液路11(27B)側へ向うブレーキ液の流れを許容し、逆方向へのブレーキ液の流れを抑制する。
液路31は、ストロークシミュレータ7の背圧室712および液路23間を接続する。ストロークシミュレータアウト弁(電磁弁)32は、液路31に設けられた常閉型のオンオフ弁である。ストロークシミュレータアウト弁32をバイパスして、液路31と並列にバイパス液路33が設けられている。バイパス液路33には、液路23側から背圧室712側へ向うブレーキ液の流れを許容し、逆方向へのブレーキ液の流れを抑制するチェック弁34が設けられている。
【0018】
液路11Pにおける遮断弁12Pとマスタシリンダ5との間(液路11A)には、この箇所の液圧(マスタシリンダ液圧および正圧室711内の液圧)を検出するマスタシリンダ液圧センサ35が設けられている。液路11における遮断弁12とソレノイドイン弁13との間には、この箇所の液圧(ホイルシリンダ液圧)を検出するホイルシリンダ液圧センサ(P系統圧センサ、S系統圧センサ)36が設けられている。液路19におけるポンプ21の吐出側と連通弁20との間には、この箇所の液圧(ポンプ吐出圧)を検出する吐出圧センサ37が設けられている。
遮断弁12が開弁した状態で、マスタシリンダ5の液圧室52およびホイルシリンダ2間を接続するブレーキ系統(液路11)は、第1の系統を構成する。この第1の系統は、踏力を用いて発生させたマスタシリンダ液圧によりホイルシリンダ液圧を発生させることで、踏力ブレーキ(非倍力制御)を実現可能である。一方、遮断弁12が閉弁した状態で、ポンプ21を含み、リザーバタンク6およびホイルシリンダ2間を接続するブレーキ系統(液路19、液路22、液路23等)は、第2の系統を構成する。この第2の系統は、ポンプ21を用いて発生させた液圧によりホイルシリンダ液圧を発生させる、いわゆるブレーキバイワイヤ装置を構成し、ブレーキバイワイヤ制御として倍力制御等を実現可能である。ブレーキバイワイヤ制御時、ストロークシミュレータ7は、ドライバのブレーキ操作に伴う操作反力を生成する。
【0019】
(コントロールユニットの構成)
コントロールユニット9は、1枚の制御基板40(
図2参照)に配置された第1CPU(CPU1)9a、第2CPU(CPU2)9bと、を備え、液圧ユニット8の作動を制御する。
コントロールユニット9には、ストロークセンサ60および液圧センサ35~37から送られる検出値に加え、車両側から送られる走行状態に関する情報(車輪速等)が入力される。
【0020】
(コントロールユニットの作動)
コントロールユニット9は、入力された各種情報に基づき、内蔵されるプログラムに従って情報処理を行い、ホイルシリンダ2の目標ホイルシリンダ液圧を演算する。コントロールユニット9は、ホイルシリンダ2のホイルシリンダ液圧が目標ホイルシリンダ液圧となるように液圧ユニット8の各アクチュエータに指令信号を出力する。
これにより、各種ブレーキ制御(倍力制御、アンチロック制御、車両運動制御のためのブレーキ制御、ブレーキバイワイヤ制御、自動ブレーキ制御および回生協調ブレーキ制御等)を実現できる。
倍力制御は、ドライバのブレーキ踏力では不足するブレーキ液圧を発生してブレーキ操作を補助する。アンチロック制御は、各車輪FL~RRの制動スリップ(ロック傾向)を抑制する。車両運動制御は、横滑り等を防止する車両挙動安定化制御である。ブレーキバイワイヤ制御は、ドライバによるブレーキペダル3のブレーキ操作を電気的に検出し、液圧ユニット8を制御するブレーキ制御である。なお、フェールセーフのため、マスタシリンダ5と各車輪FL~RRのホイルシリンダ2とは接続している。自動ブレーキ制御は、先行車追従制御や自動緊急ブレーキ等である。回生協調ブレーキ制御は、回生ブレーキと協調して目標減速度を達成するようにホイルシリンダ液圧を制御する。
【0021】
実施形態1では、冗長化を行う必要なシステムとしてアンチロック制御を設定している。
このため、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1と第2CPU(CPU2)9bの制御信号S2の両方を、ポンプ21のモータ211および各ホイルシリンダ2a~2dに付与するブレーキ液圧を増圧可能な各ソレノイドイン弁13a~13dと各ホイルシリンダ2a~2dに付与するブレーキ液圧を減圧可能な各ソレノイドアウト弁25a~25dに伝達可能に設定し、2系統に冗長化している。
なお、遮断弁12、連通弁20、調圧弁24、ストロークシュミレータイン弁28、ストロークシュミレータアウト弁32には、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1のみを伝達可能に設定している。
【0022】
図2は、実施形態1のブレーキ制御装置要部の分解斜視図である。
【0023】
液圧ユニット8は、液圧ユニットハウジング80、モータケース81、ストロークシミュレータケース82を有する。
液圧ユニットハウジング(以下、ハウジング)80は、例えばアルミ合金製であって、正面801、背面802、上面803、底面804、左側面805および右側面806を有する略直方形状の筐体である。ハウジング80は、その内部に各液路(液路11等)が形成されている。
また、ハウジング80は、その内部にポンプ21、各電磁弁(遮断弁12等)および各液圧センサ(マスタシリンダ液圧センサ35等)を収容する。
ハウジング80の上面803には、4個のホイルシリンダポート8031が形成されると共に、ニップル8032が取り付けられている。
ホイルシリンダポート8031は、図外のホイルシリンダ配管を介してホイルシリンダ2と接続されている。ニップル8032には吸入配管16が接続されている。ハウジング80の背面802には、15個のバルブ収容孔8021および4個のセンサ収容孔8022が形成されている。各バルブ収容孔8021には、各電磁弁(遮断弁12等)の弁部38が収容されている。各センサ収容孔8022には、各液圧センサ(マスタシリンダ液圧センサ35等)が収容されている。
【0024】
モータケース81は、金属製の円筒部材であって、その内部にモータ211を収容する。モータケース81は、ハウジング80の正面801に固定されている。
ストロークシミュレータケース82は、アルミ合金製であって、その内部にストロークシミュレータ7を収容する。ストロークシミュレータケース82は、図外のスクリュによりハウジング80の右側面806に締結されている。
【0025】
コントロールユニット9は、コントロールユニットケース83を有する。
コントロールユニットケース83は、樹脂材料により成形され、各電磁弁(遮断弁12等)のソレノイド39、2つの第1CPU(CPU1)9a、第2CPU(CPU2)9bが設置された制御基板40を収容する。
コントロールユニットケース83は、本体部831およびカバー832を有する。本体部831は、正面側(ハウジング80側)が凹状に形成され、各ソレノイド39を覆う。
本体部831は、図外のスクリュによりハウジング80の背面802に締結されている。
本体部831は、その背面側(ハウジング80の側と反対側)に制御基板収容部8311を有する。制御基板収容部8311には、制御基板40が取り付けられている。
カバー832は、本体部831に固定され、制御基板収容部8311を覆う蓋部材である。
【0026】
制御基板40は、2つの第1CPU(CPU1)9a、第2CPU(CPU2)9bにより、モータ211および各ソレノイド39への通電状態を制御する。制御基板40は、背面802と平行に制御基板収容部8311に取り付けられている。
なお、前述したように、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1と第2CPU(CPU2)9bの制御信号S2の両方が、ポンプ21のモータ211および各ホイルシリンダ2a~2dに付与するブレーキ液圧を増圧可能な各ソレノイドイン弁13a~13dと各ホイルシリンダ2a~2dに付与するブレーキ液圧を減圧可能な各ソレノイドアウト弁25a~25dに伝達可能に設定し、2系統に冗長化している。
なお、遮断弁12、連通弁20、調圧弁24、ストロークシュミレータイン弁28、ストロークシュミレータアウト弁32には、第1CPU(CPU1)19aの制御信号S1のみが伝達可能に設定している。
これにより、冗長化を行う必要なシステムとしてアンチロック制御を設定し、1枚の制御基板40のみで構成したので、ブレーキ制御装置1のコストの抑制と大型化の抑制とを両立することができる。
【0027】
図3の(a)は、実施形態1の4本端子のソレノイドの断面斜視図であり、(b)は、実施形態1の2本端子のソレノイドの断面斜視図であり、
図4は、実施形態1の4本端子のソレノイドと2本端子のソレノイドの制御基板への取付状態を示す斜視図である。
【0028】
4本端子のソレノイド39aを巻回軸P方向から見たとき、各端子3911a、3912a、3921a、3922aは、第2正極端子3921a、第1正極端子3911a、第2負極端子3912a、第1負極端子3922aの順に直線状に並ぶ。各端子3911a、3912a、3921a、3922aは、第1コイル391a、第2コイル392aを巻きつけている図外の樹脂製のボビンおよび端子保持部481aに保持されている。
なお、第1正極端子3911a、第1負極端子3922aは第1コイル391aに、第2正極端子3921a、第2負極端子3912aは第2コイル392aに接続されている。
また、第1正極端子3911a、第1負極端子3922aは第1CPU(CPU1)9aに接続され、第2正極端子3921a、第2負極端子3912aは第2CPU(CPU2)9bに接続されるように、各端子3911a、3912a、3921a、3922aを制御基板40に設置する。
各電磁弁のソレノイド39aは、第1コイル391aに電流を流したときに発生する磁界の向きと、第2コイル392aに電流を流したときに発生する磁界の向きが一致するように電流の流れる方向が設定されている。なお、モータ211のコイルについても、ソレノイド39と同様であるため、図示並びに説明は省略する。
【0029】
2端子のソレノイド39bを巻回軸P方向から見たとき、各端子3911b、3922bは、正極端子3911b、負極端子3922bの順に直線状に並ぶ。各端子3911b、3922bは、コイル391bを巻きつけている図外の樹脂製のボビンおよび端子保持部481bに保持されている。
同様に、各端子3911b、3922bは、コイル391bに接続され、各端子3911b、3922bを第1CPU(CPU1)9aに接続されるように、制御基板40に設置する。
【0030】
【0031】
ポンプ21のモータ211および各ソレノイドイン弁13a~13dと各ソレノイドアウト弁25a~25dを制御する複数の4本端子のソレノイド39aを、制御基板40のアンチロック制御用電磁弁装着部Aに装着し、各遮断弁12P、12S、各連通弁20P、20S、調圧弁24、ストロークシュミレータイン弁28、ストロークシュミレータアウト弁32を制御する複数の2本端子のソレノイド39bを、制御基板40のその他制御用電磁弁装着部Bに装着する。
【0032】
次に、作用効果を説明する。
実施形態1のブレーキ制御装置にあっては、以下に列挙する作用効果を奏する。
【0033】
(1)冗長化を行う必要なシステムとしてアンチロック制御を設定し、1枚の制御基板40のみで構成するようにした。
よって、制御基板40を1枚に抑えることで、コストの抑制と大型化の抑制とを両立できるとともに、必要なシステムであるアンチロック制御の冗長化を可能とすることができる。
【0034】
〔実施形態2〕
図6は、実施形態2のブレーキ制御装置の概略図であり、
図7は、実施形態2の制御基板の平面図である。
【0035】
実施形態1では、冗長化を行う必要なシステムとしてアンチロック制御を設定していたが、実施形態2では、冗長化を行う必要なシステムとしてブレーキバイワイヤ制御を設定している。
図6に示すように、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1と第2CPU(CPU2)9bの制御信号S2の両方を、ポンプ21のモータ211およびマスタシリンダ5と各ホイルシリンダ2a~2dとを遮断可能な各遮断弁12P、12Sと、制御液圧を発生し各ホイルシリンダ2a~2dを加圧するポンプ21と各ホイルシリンダ2a~2dとを連通可能な各連通弁20P、20Sと、調圧弁24と、マスタシリンダ5とストロークシュミレータ7を遮断可能なストロークシュミレータイン弁28とストロークシュミレータアウト弁32に伝達可能に設定し、2系統に冗長化している。
なお、各ソレノイドイン弁13a~13d、各ソレノイドアウト弁25a~25dには、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1のみを伝達可能に設定している。
【0036】
また、
図7に示すように、ポンプ21のモータ211および各遮断弁12P、12S、各連通弁20P、20S、調圧弁24、ストロークシュミレータイン弁28、ストロークシュミレータアウト弁32を制御する複数の4本端子のソレノイド39aを、制御基板40のブレーキバイワイヤ制御用電磁弁装着部Cに装着し、各ソレノイドイン弁13a~13d、各ソレノイドアウト弁25a~25dを制御する複数の2本端子のソレノイド39bを、制御基板40のアンチロック制御用電磁弁装着部Dに装着する。
その他の構成は、実施形態1と同じであるため、実施形態1と共通する構成については実施形態1と同じ符号を付して、説明を省略する。
【0037】
次に、作用効果を説明する。
実施形態2のブレーキ制御装置にあっては、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0038】
〔実施形態3〕
図8は、実施形態3のブレーキ制御装置の概略図であり、
図9は、実施形態3の制御基板の平面図である。
【0039】
実施形態2では、冗長化を行う必要なシステムとしてブレーキバイワイヤ制御を設定していたが、実施形態3では、さらに、アンチロック制御失陥時にブレーキバイワイヤ制御による各車輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)同時増減圧の簡易アンチロック制御を行う場合、増圧制御時に、各後輪(左後輪RL、右後輪RR)がロックする可能性があるため、各後輪(左後輪RL、右後輪RR)側の増圧弁である各ソレノイドイン弁13c、13dを加えて冗長化を行う必要なシステムを設定している。
図8に示すように、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1と第2CPU(CPU2)9bの制御信号S2の両方を、ポンプ21のモータ211およびマスタシリンダ5と各ホイルシリンダ2a~2dとを遮断可能な各遮断弁12P、12Sと、制御液圧を発生し各ホイルシリンダ2a~2dを加圧するポンプ21と各ホイルシリンダ2a~2dとを連通可能な各連通弁20P、20Sと、調圧弁24と、マスタシリンダ5とストロークシュミレータ7を遮断可能なストロークシュミレータイン弁28とストロークシュミレータアウト弁32、各ソレノイドイン弁13c、13dに伝達可能に設定し、2系統に冗長化している。
なお、各ソレノイドイン弁13a~13b、各ソレノイドアウト弁25a~25dには、第1CPU(CPU1)9aの制御信号S1のみを伝達可能に設定している。
【0040】
また、
図9に示すように、ポンプ21のモータ211および各遮断弁12P、12S、各連通弁20P、20S、調圧弁24、ストロークシュミレータイン弁28、ストロークシュミレータアウト弁32を制御する複数の4本端子のソレノイド39aを、制御基板40のブレーキバイワイヤ制御用電磁弁装着部Fに装着し、各ソレノイドイン弁13c、13dを制御する複数の4本端子のソレノイド39aを、制御基板40の後輪ロック制御用電磁弁装着部Eに装着し、各ソレノイドイン弁13a~13b、各ソレノイドアウト弁25a~25dを制御する複数の2本端子のソレノイド39bを、制御基板40のアンチロック制御用電磁弁装着部Gに装着する。
その他の構成は、実施形態2と同じであるため、実施形態2と共通する構成については実施形態1と同じ符号を付して、説明を省略する。
【0041】
次に、作用効果を説明する。
実施形態3のブレーキ制御装置にあっては、実施形態2の作用効果に加え、ブレーキバイワイヤ制御による各車輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)同時増減圧の簡易アンチロック制御を行う場合、増圧制御時に、各後輪(左後輪RL、右後輪RR)がロックするのを回避できるという作用効果を奏する。
【0042】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 ブレーキ制御装置、2 ホイルシリンダ、12 遮断弁(電磁弁)、13 ソレノイドイン弁(電磁弁)、20 連通弁(電磁弁)、24 調圧弁(電磁弁)、25 ソレノイドアウト弁(電磁弁)、28 ストロークシュミレータイン弁(電磁弁)、32 ストロークシュミレータアウト弁(電磁弁)、40 制御基板、80 液圧ユニットハウジング(ハウジング)、391a 第1コイル、392a 第2コイル、3911a 第1正極端子(第1端子)、3922a 第1負極端子(第2端子)、3921a 第2正極端子(第3端子)、3912a 第2負極端子(第4端子)