IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038673
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
H01J65/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142876
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 清幸
(57)【要約】
【課題】発光管からより多くの光を取り出すことができる放電ランプを提供する
【解決手段】放電ランプは、誘電体で形成され、内部に発光ガスが封入された発光管と、前記発光管の管壁に配置された第一電極と、前記発光管の管壁のうちの、前記第一電極に対して離間した位置に配置された第二電極と、一部分が前記発光管の管壁に連結された導光部材とを備え、前記導光部材は、前記発光管の外側に位置する第一端と、前記第一端とは反対側の第二端とを含み、前記発光管の管壁に連結された連結箇所から前記第一端に向かって、前記発光管から遠ざかる方向に延在する構造を呈する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体で形成され、内部に発光ガスが封入された発光管と、
前記発光管の管壁に配置された第一電極と、
前記発光管の管壁のうちの、前記第一電極に対して離間した位置に配置された第二電極と、
一部分が前記発光管の管壁に連結された導光部材とを備え、
前記導光部材は、前記発光管の外側に位置する第一端と、前記第一端とは反対側の第二端とを含み、前記発光管の管壁に連結された連結箇所から前記第一端に向かって、前記発光管から遠ざかる方向に延在する構造を呈したことを特徴とする、放電ランプ。
【請求項2】
前記第二端は、前記発光管の内部空間に露出していることを特徴とする、請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記導光部材は、前記第一電極が配置されている前記発光管の壁面の法線方向に関して、前記第二端と前記第一電極とが重なり合うように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記第二端は、前記発光管の管壁と連結され、
前記発光管の内壁のうちの前記第二端に向かい合う領域が、前記第一電極が配置されている前記発光管の壁面の法線方向に関して、前記第一電極と重なり合うことを特徴とする、請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置されており、
前記第一電極と前記第二電極が配置されている前記発光管の前記壁面のうちの、前記第一電極と前記第二電極との間の位置において、前記導光部材と前記発光管とが連結されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記第二端は、前記内部空間を凸側とする曲面で構成されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記導光部材の延在方向に見て、前記発光管の内部空間の寸法と、前記導光部材の前記第二端の寸法とが、略同一であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項8】
前記第一電極は、前記発光管の壁面のうちの、前記発光管の内部空間を介して向かい合う領域に、連続的に又は電気的に接続された状態で分断して配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項9】
前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置されており、
前記第一電極と前記第二電極が配置されている前記発光管の前記壁面のうちの、前記第一電極と前記第二電極との間の位置において、前記発光管の管壁に、前記発光ガスが発する光を反射する反射層を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項10】
少なくとも前記発光管の管壁と前記第一電極の界面、又は前記発光管の管壁と前記第二電極の界面に、前記発光ガスが発する光に対する反射率が前記第一電極及び前記第二電極よりも高い反射層を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項11】
主たる発光波長が200nm以上240nm未満の範囲に属する紫外光を発することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項12】
前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置されており、
前記導光部材は、前記第一電極と前記第二電極とが離間する方向に関して、前記第二電極よりも前記第一電極に近い位置において、前記発光管の管壁と連結され、
前記第一電極は、前記第二電極よりも絶対値で低電位であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項13】
前記導光部材は、誘電体で形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示すように、光源が発する光を光ファイバからなる導光部材で導光する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-026898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された技術を用いて、内部空間で光を放射する発光管から光を取り出す場合に、発光管内の光を効率的に取り出せない場合があり、改良の余地が存在する。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、発光管からより多くの光を取り出すことができる放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放電ランプは、誘電体で形成され、内部に発光ガスが封入された発光管と、
前記発光管の管壁に配置された第一電極と、
前記発光管の管壁のうちの、前記第一電極に対して離間した位置に配置された第二電極と、
一部分が前記発光管の管壁に連結された導光部材とを備え、
前記導光部材は、前記発光管の外側に位置する第一端と、前記第一端とは反対側の第二端とを含み、前記発光管の管壁に連結された連結箇所から前記第一端に向かって、前記発光管から遠ざかる方向に延在する構造を呈したことを特徴とする。
【0007】
上記の放電ランプによれば、導光部材が発光管の管壁に連結されているため、発光管内で発生した光が導光部材に対して効率的に導かれる。その後、当該光は、導光部材によって伝搬され、発光管の外側に位置する導光部材の第一端から外部に取り出される。したがって、例えば導光部材が発光管から離間して配置されたり、導光部材が他の部材を介して発光管に連結される場合よりも、発光管内で発生した光をより多く取り出すことが可能となる。
【0008】
前記第二端は、前記発光管の内部空間に露出していても構わない。
【0009】
放電ランプは、誘電体で形成された発光管に発光ガスが封入されてなる。そして、発光管の管壁に配置された第一電極及び第二電極に、高周波の高電圧が印加されることによって、放電プラズマが発生して発光ガスの原子又は分子(以下、単純に「原子等」という。)が励起され、これが基底状態に戻る際に放射光が得られる。
【0010】
つまり、発光管内において、放電プラズマは第一電極及び第二電極の間で発生するため、主に、発光管内の第一電極及び第二電極に挟まれた空間(以下、便宜上「有効放電空間」という。)において光が放射される。したがって、有効放電空間に対してなるべく近い位置に、導光部材の第二端を配置することが好適である。上記の構成によれば、導光部材を発光管の内部に露出させることで、導光部材の第二端を有効放電空間に近づけることができ、発光管からより多くの光を取り出すことが可能となる。
【0011】
前記導光部材は、前記第一電極が配置されている前記発光管の壁面の法線方向に関して、前記第二端と前記第一電極とが重なり合うように配置されていても構わない。
【0012】
さらに、本発明者らは、発光管内に露出した導光部材の第二端と、発光管の管壁に配置される第一電極の位置に注目した。つまり、有効放電空間に前記第二端を近づけるだけでなく、有効放電空間と重なるように前記第二端を配置することで、発光管からより多くの光を取り出すことができる。
【0013】
また、前記第二端は、前記発光管の管壁と連結され、
前記発光管の内壁のうちの前記第二端に向かい合う領域が、前記第一電極が配置されている前記発光管の壁面の法線方向に関して、前記第一電極と重なり合っても構わない。
【0014】
導光部材の第二端が発光管の管壁に連結される場合には、発光管内で発生した光が、当該第二端の連結箇所と向かい合う内壁を介して導光部材に導かれる。したがって、当該内壁を、有効放電空間と重なるように配置することで、発光管からより多くの光を取り出すことができる。
【0015】
上記放電ランプにおいて、前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置されており、
前記第一電極と前記第二電極が配置されている前記発光管の前記壁面のうちの、前記第一電極と前記第二電極との間の位置において、前記導光部材と前記発光管とが連結されても構わない。
【0016】
上記の通り、導光部材の第二端、又は当該第二端が連結された箇所と向かい合う内壁を、有効放電空間に重なる位置に配置することが好ましい。したがって、第一電極と第二電極とが、発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置される場合には、当該第一電極と第二電極との間の位置において、導光部材を連結することも可能である。
【0017】
導光部材の第二端が発光管の内部空間に露出される場合には、前記第二端は、前記内部空間を凸側とする曲面で構成されても構わない。典型的には、この曲面は、球面又は楕円球面の一部であっても構わない。
【0018】
導光部材の第二端を上記の曲面で構成することで、第二端を平面形状とした場合と比べて、当該第二端の表面積を大きくすることができる。したがって、発光管内で発生した光が入射される当該第二端の表面積が大きくなるため、発光管からより多くの光を取り出すことが可能となる。
【0019】
また、光の入射面における拡散反射を抑制する観点から、導光部材の第二端の端面には鏡面加工が施されていても構わない。
【0020】
上記放電ランプにおいて、前記導光部材の延在方向に見て、前記発光管の内部空間の寸法と、前記導光部材の前記第二端の寸法とが、略同一であっても構わない。
【0021】
上記の構成によれば、発光管内で発生した光が入射される導光部材の第二端、又は当該第二端が連結された箇所と向かい合う内壁の面積を大きくすることができる。この結果、光取りこみ面積を拡大できるため、好適である。ここで、前記発光管の内部空間の寸法と、前記導光部材の前記第二端の寸法とが、略同一であるとは、両者の寸法の誤差が、20%以下の範囲内であることを意味するものとして構わない。
【0022】
上記放電ランプにおいて、前記第一電極は、前記発光管の壁面のうちの、前記発光管の内部空間を介して向かい合う領域に、連続的に又は電気的に接続された状態で分断して配置されても構わない。
【0023】
上述したとおり、発光管の第一電極及び第二電極に挟まれた空間において、放電プラズマが発生して光が放射される。したがって、例えば、第一電極が発光管の内部空間を介して向かい合う領域に配置されることで、有効放電空間において放電プラズマを全体的に発生することが可能となる。放電プラズマが全体的に発生することから、導光部材の第二端、又は当該第二端が連結された箇所と向かい合う内壁から、より多くの光を取り出すことが可能となる。
【0024】
上記放電ランプにおいて、少なくとも前記発光管の管壁と前記第一電極の界面、又は前記発光管の管壁と前記第二電極の界面に、前記発光ガスが発する光に対する反射率が前記第一電極及び前記第二電極よりも高い反射層を備えても構わない。
【0025】
発光管内で発生した光は、発光管内においてあらゆる方向に進行する。ここで、当該光に対して、第一電極及び第二電極は一定の反射率を示すものの、光の波長及び、各電極の材料並びに加工精度等の要因から、結果として、各電極の表面における光の反射率が低下する場合がある。これに対し、発光管の管壁と前記第一電極の界面、又は発光管の管壁と前記第二電極の界面に、上記反射層を備えることで、各電極に向かって進行する光の一部を、当該反射層において効率的に反射させ、より多くの光を導光部材に取り込むことが可能となる。
【0026】
このような反射層としては、アルミニウムなどの金属からなるシート部材を用いることができる。当該シート部材を発光管の管壁と電極の間に挟んだり、電極表面に反射膜を形成したりすることで、上記構成に係る反射層は、簡略な製造工程で実現できるという効果も奏する。
【0027】
また、上記放電ランプにおいて、前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間して配置されており、
前記第一電極と前記第二電極が配置されている前記発光管の前記壁面のうちの、前記第一電極と前記第二電極との間の位置において、前記発光管の管壁に、前記発光ガスが発する光を反射する反射層を備えても構わない。なお、「光を反射する」とは、入射した光に対して40%以上の反射率を示すことをいう。
【0028】
前述したとおり、第一電極及び第二電極に挟まれた空間で放電プラズマが形成されるため、主として両電極の間の位置において光が発生する。したがって、当該位置において、発光管の管壁に上記反射層を備えることが好適である。
【0029】
このような反射層としては、前述したシート部材の他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂材料からなるシート部材が利用できる。例えば、発光管にPTFEからなるシート部材を巻き付けてもよいし、PTFEからなる筒状部材に発光管を挿入してもよい。このように、上記構成に係る反射層は、簡略な製造工程で実現できるという特徴がある。
【0030】
なお、上記反射層として、発光管の管壁に反射膜が形成されても構わない。当該反射膜としては、例えば、シリカ粒子、又はフッ素系樹脂材料の粒子等を含むセラミックのコート膜が利用できる。また、屈折率の異なる誘電体が積層されてなる誘電体多層膜を利用してもよい。反射膜は、発光管の外壁に形成されても構わないし、内壁に形成されても構わない。
【0031】
また、上記放電ランプは、主たる発光波長が200nm以上240nm未満の範囲に属する紫外光を発するものであっても構わない。典型的には、上記放電ランプは、KrCl又はKrBrを含む発光ガスが封入されたエキシマランプであっても構わない。
【0032】
上記の構成を用いることで、発光管から多くの紫外光を取り出すことができる。したがって、照射対象領域に当該紫外光を照射することで、物品表面及び空間中等に存在し得る、菌又はウイルスの不活化を効率的に行うことができる。なお、「不活化」とは、菌又はウイルスの少なくとも一部を死滅させる、又は感染力を低下させることを包含する概念を指す。ここで、「菌」とは細菌及び真菌(カビ)等の微生物を指す。
【0033】
また、本明細書において、「主たる発光波長」とは、光強度を波長別に分解して得られる発光スペクトルにおいて、最も高い光強度(ピーク強度)に対して40%以上の光強度を示す波長帯域をいう。
【0034】
上記放電ランプにおいて、前記第一電極と前記第二電極とは、前記発光管の同一の壁面上において相互に離間を有して配置されており、
前記導光部材は、前記第一電極と前記第二電極とが離間する方向に関して、前記第二電極よりも前記第一電極に近い位置において、前記発光管の管壁と連結され、
前記第一電極は、前記第二電極よりも絶対値で低電位であっても構わない。
【0035】
詳細は後述するように、第一電極が第二電極よりも絶対値で低電位となるように構成される場合には、第一電極に近い側に導光部材が配置されることが好ましい。この場合には、第二電極に近い側に導光部材が配置されるよりも、より多くの光を発光管から取り出すことが可能である。
【0036】
前記導光部材は、誘電体で形成されていても構わない。
【発明の効果】
【0037】
発光管からより多くの光を取り出すことができる放電ランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】放電ランプの第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1B図1Aに係る放電ランプを+X方向に見た時の平面図である。
図2】第一電極及び第二電極間に発生する放電プラズマを模式的に示す概念図である。
図3A】導光部材の第二端が取り込む光の角度範囲を示す概念図である。
図3B】導光部材の第二端を、図3Aよりも有効放電空間に近づけた場合の概念図である。
図3C】導光部材の第二端を、図3Bよりも有効放電空間に近づけて重ねた場合の概念図である。
図4A】検証で用いた実験系の概念図である。
図4B】検証における操作を示す概念図である。
図5】検証によって得られた光の照度をプロットしたグラフである。
図6A】発光管の-Z方向に係る壁面に加えて、+Z方向に係る壁面に第一電極及び第二電極が配置された場合の断面図である。
図6B図6Aに係る放電ランプを+X方向に見た時の平面図である。
図7A】発光管の-Z方向に係る壁面に第一電極を配置した場合において放電プラズマが主体的に発生する領域を模式的に示した概念図である。
図7B】発光管の-Z方向に係る壁面に加えて、+Z方向に係る壁面に第一電極を配置した場合において、放電プラズマが主体的に発生する領域を模式的に示した概念図である。
図7C】発光管の全周を覆うように第一電極が配置される場合の概念図である。
図8】第二端の端面の変形例を示す断面図である。
図9】導光部材の変形例を示す断面図である。
図10A】放電ランプの第二実施形態を模式的に示す断面図である。
図10B図10Aについて、発光管の内部空間から、入射領域を-X方向に見た時の平面図である。
図11】第二実施形態において、好適な構成を示す断面図である。
図12A】放電ランプの別実施形態の構造を示す断面図である。
図12B】放電ランプの別実施形態の構造を示す断面図である。
図12C図12Bに係る放電ランプの斜視図である。
図12D】発光管に反射層を形成する一態様を概念的に示す斜視図である。
図13A】放電ランプの別実施形態の構造を示す別の断面図である。
図13B図13Aに係る放電ランプを-Z方向に見た時の平面図である。
図14A】複数の導光部材が連結される場合を示す断面図である。
図14B図14Aに係る放電ランプを-Z方向に見た時の平面図である。
図15A】放電ランプの別実施形態の構造を示す更に別の断面図である。
図15B図15Aに係る放電ランプをX方向に見た時の平面図である。
図16A】放電ランプの別実施形態の構造を示す更に別の断面図である。
図16B図16Aに係る放電ランプをX方向に見た時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第一実施形態]
本発明の放電ランプの第一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0040】
図1Aは、放電ランプ1の第一実施形態を模式的に示す断面図である。以下の各図では、X方向、Y方向及びZ方向が互いに直交する、X-Y-Z座標系が併記されている。この定義を用いて説明すると、図1Aは、放電ランプ1の断面を、Y方向に見たときの平面図に対応する。
【0041】
なお、以下の説明では、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0042】
図1Aに示すように、放電ランプ1は、発光管3と、発光管3の管壁に配置された第一電極7及び第二電極9と、一部分が発光管3の管壁に連結された導光部材10と、を備える。
【0043】
発光管3は石英ガラス等の誘電体で形成され、その内部空間30に、例えばKrClを含む発光ガスが封入されている。典型的には、発光管3は合成石英ガラス又は溶融石英ガラスで構成され、好ましくは合成石英ガラスで構成される。本実施形態において、発光管3は、X方向を長手方向とする長尺形状を呈している。
【0044】
図1Bは、図1Aに係る放電ランプ1を+X方向に見た時の平面図である。図1A及び図1Bに示すように、第一実施形態において、発光管3はX方向に見た際に円形を呈する丸管である。
【0045】
また、放電ランプ1は、一部分が発光管3の管壁に連結される導光部材10を備える。図1Aにおいて、導光部材10と発光管3との連結箇所13が、破線によって模式的に示されている。図1Aに示すように、第一実施形態においては、導光部材10は、発光管3に対して-X側の端部に対応する管壁に連結され、発光管3を基準として-X方向の外側に位置する第一端11に向かって-X方向に延在する。また、導光部材10の第一端11の反対側の第二端12は、発光管3の内部空間30に露出している。
【0046】
なお、製造を容易にする観点から、導光部材10は石英ガラス等の誘電体で構成されることが好ましく、発光管3と同じ材料で構成されることがより好ましい。
【0047】
さらに、発光管3の管壁には、第一電極7及び第二電極9が配置される(図1A参照)。なお、第二電極9は第一電極7から離間した位置に配置される。図1Aでは、第一電極7及び第二電極9が、発光管3の管壁の同一面(ここでは-Z側の壁面)に配置されるとともに、両者が発光管3の長手方向(X方向)に関して相互に離間する例が示されている。
【0048】
なお、第一電極7及び第二電極9を構成する主材料としては、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス、真鍮等の金属材料が利用できる。ここでいう、「主材料」とは、電極を構成する材料のうちの最も比率の高い材料を指す。
【0049】
第一電極7及び第二電極9に、高周波の高電圧が印加されることで、発光管3の内部空間30において放電プラズマが発生する。この放電プラズマによって、内部空間30に封入された発光ガスに含まれる原子等が励起され、この励起状態から基底状態に遷移する際に光が放射される。図2は、第一電極7及び第二電極9の間に高周波の高電圧を印加した際に発生する放電プラズマ20を模式的に示す概念図である。
【0050】
図2に示すように、放電プラズマ20は第一電極7及び第二電極9の間で発生する。図2では、発光管3の内部空間30において、第一電極7及び第二電極9に挟まれた空間(有効放電空間31)が点線によって模式的に図示されている。
【0051】
また、図2においては、放電プラズマ20によって励起された原子等が、基底状態に戻る際に放射される光L1の進行方向が破線で示されている。図2に示すように、光L1は、あらゆる方向に進行する。この光L1のうち、導光部材10の第二端12の設置箇所に向かって進行する光が導光部材10の第二端12に直接導かれる。その後、導光部材10に入射した光L1は、第一端11から外部に光L2として取り出される。
【0052】
なお、光L1の発光波長は、発光ガスに含まれる原子等の励起状態と基底状態のエネルギー準位に依存する。例えば、発光ガスがKrClを含む場合には、ピーク波長が222nm近傍に位置する紫外光を得ることができる。なお、「近傍」とは、発光管3に封入されるガスの分圧等の個体差によって生じる、±2nm程度の光L2のピーク波長の変動を許容する概念である。
【0053】
また、本発明者らは、発光管3の内部空間30に露出された導光部材10の第二端12と、第一電極7の位置に注目した。発光管3からより多くの光L1を取り出す観点から、放電プラズマ20が発生して、光L1が放射される有効放電空間31に対して、導光部材10の第二端12を近づけることが好ましい。
【0054】
図3A及び図3Bを用いて、導光部材10の第二端12を、有効放電空間31に近づけた場合について説明する。図3Aは、第二端12が直接取り込む光L1の角度範囲を示す概念図である。また、図3Bは、第二端12を図3Aよりも有効放電空間31に近づけた場合の概念図である。つまり、図3Bでは、図3Aの場合よりも、導光部材10の第二端12を+X側に配置した例が示される。
【0055】
図3A及び図3Bでは、有効放電空間31に対して同じ位置に光L1が放射される仮想点21が示され、仮想点21と第二端12とを結ぶ仮想線22が形成する角度範囲(以下、便宜上「取込角」という。)が示されている。つまり、図3Aにおいて、仮想点21から放射される光L1のうち、取込角23aに含まれる角度で進行する光L1が、第二端12に直接導かれる。なお、図3A及び図3Bにおいて、仮想線22は、一点鎖線で示されている。
【0056】
図3Bを参照すると、図3Bにおいて示された取込角23bの方が、図3Aにおいて示された取込角23aよりも大きくなることが見て取れる。すなわち、第二端12が有効放電空間31に近い程、より多くの光L1を取り込むことが可能となる。
【0057】
なお、図3A及び図3Bにおいては、有効放電空間31の中心近傍に仮想点21が定義された例が示されている。しかし、仮想点21が定義される位置は限定されず、有効放電空間31内の全ての位置において、当該議論が可能である。また、念のために付言すると、図3A及び図3Bにおいては、理解を容易にする観点から、発光管3及び導光部材10の寸法等が誇張して表現されている。
【0058】
図3Cは、図3Bの場合よりも、第二端12を+X側に配置して、有効放電空間31に重なるように導光部材10を配置した場合の概念図である。より詳細には、導光部材10は、第一電極7が配置される管壁の法線方向に対応するZ方向に関して、第二端12と第一電極7とが重なり合うように配置される。このように配置することで、導光部材10の第二端12を有効放電空間31に重ねることができる。
【0059】
前述した議論と同様に、導光部材10の第二端12を有効放電空間31に重なるように配置することで、図3Cにおいて示された取込角23cは、図3Bにおいて示された取込角23bよりも大きくなり、より多くの光L1を取り込むことが可能となる。
【0060】
[検証]
本発明者らは、有効放電空間31と、導光部材10の第二端12との位置関係が、第一端11から得られる光L2の照度に及ぼす影響に関して、下記の検証を行った。
【0061】
図4Aは、本検証で用いた実験系の概念図である。また、図4Bは、後述する発光管40に対して行った操作を模式的に示す概念図である。なお、図示の便宜上、図4Aにおいては、後述するステージ43が省略されている。また、図4Bにおいては、後述する電源42の図示が省略されている。
【0062】
まず、図4Aに示すように、第二端12が内部空間30に露出するように、導光部材10が連結された発光管40が準備された。また、第一電極7及び第二電極9として、予めステージ43に配置された一対の電極が利用された。このステージ43に発光管40を配置することで、発光管40の-Z側の管壁に両電極(7,9)を接触させた(図4B参照)。
【0063】
本検証では、図4Bに示すように、各電極(7,9)が配置されたステージ43に対して、導光部材10が連結された発光管40を+X方向に移動させることで、第二端12を第一電極7に対して相対的に移動させた。図4Bでは、+X方向に移動された発光管40及び第二端12の位置が二点鎖線で示されている。
【0064】
なお、第一電極7及び第二電極9の双方はステージ43に固定されているため、発光管40が+X方向に移動されると、第二電極9の+X側に係る端部9aよりも+X側における、内部空間30のX方向に関する長さD3(図4A参照)が大きくなる。このため、発光管40を+X方向に移動することで、有効放電空間31と第二端12との位置関係を異ならせると、当該長さD3も異ならせてしまうという事情がある。この事情に鑑みると、厳密に、有効放電空間31と第二端12との位置関係を異ならせた検証を行うためには、内部空間30内の第二端12の露出距離を異ならせた発光管(図3A図3Cも参照)を複数、それぞれ用意することが理想的である。
【0065】
この点に関し補足すると、前述したとおり、放電プラズマ20は主に両電極(7,9)に挟まれた有効放電空間31において発生するため、長さD3の違いは、光L2の照度に大きく影響しないと考えられる。つまり、両電極(7,9)に対して発光管40を相対的に移動させることで、内部空間30内の第二端12の露出距離を異ならせた発光管を、模擬的に再現することができる。したがって、検証に要する時間やコストを低減する観点から、本検証方法が採用された。
【0066】
本検証において、発光管40及び導光部材10は合成石英ガラスで構成され、内部空間30には、KrClを含む発光ガスが、19kPaの圧力で封入された。すなわち、本実験では、第一端11から出射される光L2のピーク波長が222nm近傍のエキシマランプが用いられた。
【0067】
また、丸管形状を呈する発光管40の内径は4.5mmとされ、略円柱状を呈する導光部材10の外径は4mmとされた。さらに、発光管40のX方向に係る寸法D1は65mmとされ、導光部材10のX方向に係る寸法D2は30mmとされた。したがって、発光管40の内径に対する導光部材10の外径の寸法比率は、0.9となる。なお、典型的には、発光管40の内径は、内部空間30の寸法に対応し、導光部材10の外径は、第二端12の寸法に対応する。
【0068】
第一電極7及び第二電極9は、アルミニウムを主材料とし、それぞれのX方向に係る寸法は15mmとされた。また、両電極(7,9)のX方向に係る離間距離は6mmとされた。すなわち、有効放電空間31のX方向に係る長さは36mmとされた。
【0069】
図4Aでは、第一電極7は1kHz~5MHz程度の高周波を示す交流電源42のグラウンド側に接続されている。つまり、図4Aは、第二電極9よりも絶対値で低電位となるように構成される第一電極7に近い側に導光部材10が配置された場合に対応する。一方で、後述するように、電源42の低電位側と高電位側を反転させた検証も行われた。
【0070】
なお、光L2の照度は、ウシオ電機社製の紫外線積算光量計(UIT-250)と、波長222nmの光で校正済のウシオ電機社製のセパレート型受光器(VUV-S172)とを含んで構成された照度計41を用いて測定された。光L2の照度の測定の際には、照度計41と第一端11の離間距離(X方向に係る距離)は一定とされた。
【0071】
図5は、第一電極7の-X方向に係る端部7aと、導光部材10の第二端12がX方向に関して同じ位置にあるとき(図4A参照)を初期位置の0mmとして、第二端12の+X方向に係る移動距離を横軸にとり、縦軸に第一端11から出射された光L2の照度をプロットしたグラフである。なお、図2を参照して上述したように、放電プラズマ20は第一電極7及び第二電極9の間で発生する。つまり、Z方向に関して導光部材10と第一電極7とが重なり合う領域が多くなることは、発光管40の内側における有効放電空間31を狭くすることを意味する。
【0072】
上記の仮説に基づけば、グラフの0mmに対応する初期位置から、導光部材10の第二端12を第一電極7に対して+X方向に移動させると、移動距離に従って発光量が低下して、照度が低下するものと考えられる。しかしながら、実際には、図5に示すように、初期位置から導光部材10の第二端12を第一電極7に対して+X方向に移動させるのに伴い、第一端11から出射された光L2の照度が上昇する結果となった。この結果から、第二端12を有効放電空間31に重なるように配置することで、より多くの光を取り出せることがわかる。
【0073】
前記移動距離を上昇させながら光L2の照度を引き続き計測すると、図5に示すように前記移動距離が5.4mmの時点で照度が最大となり、前記移動距離を6.7mm、8.0mmと増加させていくと前記光L2の照度がわずかながら低下傾向を示した。
【0074】
図5には、移動距離をちょうど5mm、6mmとした場合の結果は示されていないが、0mm~5.4mmにかけて上昇傾向を示し、6.7mm~8.0mmにかけてわずかながらも低下傾向を示していることを踏まえると、移動距離を5mm~6mmとすると、光L2の照度を大きく高める効果が得られることが理解される。上記の通り、第一電極7のX方向に係る寸法は15mmである。したがって、図5の結果に基づけば、第一電極7のX方向に係る寸法に対して、Z方向に関して導光部材10と第一電極7とが重なり合う領域のX方向に係る長さの比率が、0.33~0.4となるように、第二端12を配置することで、発光管3から多くの光L2が取り出されることが理解される。
【0075】
なお、図5において、移動距離を6.7mm、8.0mmと増加させていくことで、光L2の照度がわずかながらも低下傾向を示した理由としては、上述したように、Z方向に関して導光部材10と第一電極7とが重なり合う領域が多くなり、有効放電空間31が狭くなったことによる影響が考えられる。つまり、導光部材10の第二端12の位置が、初期位置から5mm~6mmの位置に達するまでの領域においては、有効放電空間31が狭くなる影響よりも、導光部材10の第二端12が放電プラズマ20に接近しやすくなることによる作用が相対的に高く、この結果、取り出される光L2の照度が向上したものと推察される。他方、導光部材10の第二端12の位置が、前記位置を超えて、更に第二電極9側に近づくようになると、有効放電空間31が狭くなる影響が大きくなり、移動距離が増えるに伴って光L2の照度が低下傾向を示し始めたものと推察される。導光部材10の第二端12の位置を更に第二電極9に近づけていくと、有効放電空間31は更に狭まり、発光量自体が低下することで、取り出される光L2の照度は低下することが理解できる。図5では結果として表記していないが、導光部材10の第二端12の位置を更に第二電極9に近づけていくと、光L2の照度が、8mmの時点よりも更に低下することが確認されている。
【0076】
一方で、電源42のグラウンド側を第二電極9に接続し、高電位側と低電位側を反転した別の検証を行った。つまり、第二電極9よりも絶対値で高電位である第一電極7に近い側に導光部材10が配置された場合を検証したところ、光L2は全体的に低照度であった。例えば、図5では、第二端12の移動距離が5.4mmの時点で、約23mW/cm2の照度が得られたのに対し、当該別の検証では、同位置における光L2の照度は20mW/cm2にも及ばなかった。
【0077】
このことから、導光部材10が、絶対値で低電位とされた電極に近い側に配置される場合の方が、絶対値で高電位とされた電極に近い側に配置される場合よりも、より多くの光L2を発光管40から取り出せることが確認された。
【0078】
この理由は明らかではないが、例えば、高電位側の電極付近においては、放電プラズマ20の発生に寄与する電子や、発光ガスに含まれる原子等由来のイオンが多く存在し、低電位側の電極よりも放電プラズマ20が電極付近に発生しやすいことが、一つの理由であると推察される。つまり、図4Aを参照すると、高電位側の第二電極9付近では、放電プラズマ20が、発光管40の-Z側の管壁付近に形成されやすい。一方で、低電位側の第一電極7付近では、高電位側と比較して、放電プラズマ20が、Z方向に関して発光管40の中央付近に形成されやすい。このため、導光部材10を低電位側とされた第一電極7に近い側に配置した場合(図4Aの実験系)の方が、導光部材10を高電位側とされた第一電極7に近い側に配置した場合(不図示)よりも、第二端12に取り込まれる光量が増加し、大きな照度が得られたのではないかと、本発明者らは推察している。
【0079】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0080】
〈1〉上記においては、発光管3の-Z方向に係る壁面に第一電極7及び第二電極9が配置される例が示された(図1A参照)。しかし、例えば図6A及び図6Bに示すように、発光管3の-Z方向に係る壁面に加えて、+Z方向に係る壁面に第一電極7及び第二電極9を配置しても構わない。図6Aは、この別構成例の放電ランプの構造を、図1Aにならって模式的に示した断面図である。図6Bは、図6Aを+X方向に見た平面図である。図6Aに示すように、第二電極9は、第一電極7よりも+X側に位置しているため、図6Bでは第一電極7のみが図示されている。実際には、図6Bで図示されている箇所よりも+X側の位置において、第二電極9が第一電極7と同様の態様で配置されている。
【0081】
前述したとおり、第一電極7及び第二電極9に挟まれた有効放電空間31において放電プラズマ20が発生する。したがって、図6A及び図6Bに示すように、例えばZ方向に関して発光管3を挟むように第一電極7を配置することで、有効放電空間31において放電プラズマ20が発生する空間を拡げることができる。なお、図6Bに示すように、第一電極7が分断されて配置される場合には、例えば導電部材8によって電気的に接続されて、第一電極7の全体が等電位と構成される。
【0082】
また、図6Bに示すように、Z方向に関して発光管3を挟むように第一電極7を配置する場合は、発光管3の公差の影響を比較的少なくして、発光管3に対して第一電極7を密着させやすいという効果も有する。
【0083】
図7A図7Cを参照しながら、この別構成例の構造を採用することの効果について説明する。図7Aは、比較のために、図1Aに示す放電ランプ1の構造の下で、すなわち、発光管3の-Z方向に係る壁面に第一電極7を配置した構造の下で(図1Bも参照)、有効放電空間31において放電プラズマ20が主体的に発生する領域を模式的に示した概念図である。図7Aにおいては、発光管3の内部空間30をX方向に見た際の概念図が示されており、放電プラズマ20が主体的に発生する空間(以下、便宜上「仮想放電領域50」という。)には、破線によるハッチングが施されている。一方、図7Bは、図6Aに示す別構成例の構造の下で、すなわち、発光管3の-Z方向に係る壁面に加えて、+Z方向に係る壁面に第一電極7を配置した構造の下で、有効放電空間31において放電プラズマ20が主体的に発生する領域を示した図面に対応する(図6Bも参照)。
【0084】
図7Aでは、第一電極7は発光管3の-Z方向に係る壁面にのみ配置されているため、放電プラズマ20は、主に-Z方向側に偏在した位置で発生する。一方で、図7Bでは、第一電極7は発光管3の-Z方向及び+Z方向に係る壁面に配置されているため、放電プラズマ20が、内部空間30において偏在せず、Z方向に関して全体的に広がるように発生する。
【0085】
このように、第一電極7が発光管3の内部空間30を介して向かい合う(ここではZ方向に関して)領域に配置されることで、放電プラズマ20が有効放電空間31において全体的に発生するため、導光部材10からより多くの光を取り込むことが可能となる。この点は、前述した検証において、放電プラズマ20がZ方向に関して発光管3の中央付近に形成されることが好ましいとの推察とも整合する。
【0086】
同様の観点から、図7Cに示すように、第一電極7が、発光管3の周方向に関して全周を覆うように配置されても構わない。有効放電空間31において放電プラズマ20を全体的に発生させる観点からは、第一電極7が発光管3の全周を覆うことがより好適である。
【0087】
なお、上記においては第一電極7を用いて議論を行ったが、第二電極9においても同様の議論が可能である。つまり、有効放電空間31において、放電プラズマ20を有効に発生させる観点からは、図6Aに示すように、第一電極7及び第二電極9の双方を、発光管3の-Z方向に係る壁面に加えて、+Z方向に係る壁面に配置することが好適である。
【0088】
〈2〉上記においては、導光部材10の第二端12の端面が平面形状である例が示されたが、図8に示すように、第二端12の端面を、内部空間30を凸側とする曲面で構成することもできる。このような曲面の例として、球面又は楕円球面の一部が挙げられる。
【0089】
〈3〉また、発光管3からより多くの光L1を取り出す観点から、例えば図9に示すように、Z方向に関して、発光管3の内部空間30の寸法と、導光部材10の第二端12の寸法とを略同一にすることが好適である。具体的には、両者の寸法の誤差が、20%以下の範囲内とされることが好ましい。
【0090】
[第二実施形態]
本発明の放電ランプの第二実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。図10Aは、本実施形態の放電ランプ1を、図1Aにならって表記したものである。
【0091】
図1Aを参照して上述したように、第一実施形態においては、導光部材10の第二端12が発光管3の内部空間30に露出する例が示された。しかし、図10Aに示すように、導光部材10の第二端12が発光管3の管壁に連結されても構わない。
【0092】
つまり、図10Aにおいては、発光管3で発生した光L1は、発光管3の内壁のうち、導光部材10の第二端12と向かい合う領域(以下、便宜上「入射領域14」という。)を介して導光部材10に導かれる。この場合でも、導光部材10は、発光管3の管壁に連結されているため、入射領域14を介して、光L1を効率的に取り出すことが可能である。図10Bは、発光管3の内部空間30から、入射領域14を-X方向に見た時の平面図であり、入射領域14に対応する領域に、破線によるハッチングが施されている。
【0093】
本実施形態においては、有効放電空間31を入射領域14に近づけるのが好ましい(図11参照)。より詳細には、導光部材10の第二端12に対して向かい合う位置に対応する発光管3の内壁(入射領域14)と、第一電極7とがZ方向に関して重なり合うように構成するのが好ましい。これにより、有効放電空間31に対して、入射領域14が重なるように配置され、発光管3から光を更に効率的に取り出すことが可能となる。
【0094】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。なお、以下の別実施形態で説明する構造は、適宜上述した各実施形態と組み合わせことが可能である。
【0095】
〈1〉図12Aに示すように、第一電極7と発光管3の管壁との界面、及び第二電極9と発光管3の管壁との界面のそれぞれに反射層16を備えてもよい。ここで、光L1に対して、第一電極7及び第二電極9は一定の反射率を示すものの、光L1の波長及び、各電極(7,9)の材料並びに加工精度によっては、各電極(7,9)の表面における光L1の反射率が低下する場合がある。例えば、電極表面に微細な凹凸が形成されている場合には、各電極(7,9)の表面に入射した光が拡散反射を生じ、結果として、発光管3の内部に戻り光として戻る比率が低下する可能性がある。これに対し、図12Aに示すように、第一電極7と発光管3の管壁との界面、及び第二電極9と発光管3の管壁との界面にそれぞれ反射層16を設けることにより、発光管3内で発生されて第一電極7又は第二電極9に向かって進行する光L1の多くを、発光管3の内部に戻し、導光部材10に好適に入射させることが可能となる。
【0096】
反射層16としては、アルミニウムなどの金属からなるシート部材が利用できる。当該シート部材を発光管の管壁と電極の間に挟んだり、電極表面に反射膜を形成したりすることで、上記構成に係る反射層は、簡略な製造工程で実現できる。
【0097】
なお、発光管3の管壁、又は第一電極7もしくは第二電極9の表面にシリカ粒子等を含むセラミックのコート膜や、屈折率の異なる誘電体が積層されてなる誘電体多層膜等の反射膜を形成することによって、反射層16が構成されてもよい。
【0098】
つまり、各電極(7,9)に採用された材料や、光L1の波長に応じて、適宜、反射層16の設計が可能である。
【0099】
また、本発明は、いずれか一方の電極と発光管3の管壁との界面にのみ反射層16を設ける構造を排除するものではない。
【0100】
〈2〉図12Bは、別実施形態〈2〉に係る放電ランプの断面を図12Aに倣って示した図である。また、図12Cは、図12Bに係る放電ランプ1の斜視図である。図12B及び図12Cに示すように、反射層16は、X方向に関して、第一電極7と第二電極9との間の位置に配置しても構わない(図12B参照)。なお、本実施形態において、反射層16は、発光管3の周方向に関して全周を覆うように形成される(図12C参照)。
【0101】
前述した通り、発光管3の内部空間30のうち、X方向に関して第一電極7と第二電極9との間の位置において放電プラズマ20が発生して光L1が放射される。したがって、図12Bに示すように、X方向に関して両電極(7,9)の間の位置に反射層16を設けることで、第二端12の設置箇所とは異なる方向に向かって進行し、典型的には発光管3を透過する光L1の一部を、導光部材10に好適に入射させることが可能となる。
【0102】
このような反射層16は、例えば、アルミニウム製のシート部材や、PTFEなどのフッ素系樹脂材料からなるシート部材を発光管3に巻き付けることで構成できる。また、図12Dに示すように、例えばPTFEなどのフッ素系樹脂材料からなる筒状部材17に、発光管3を挿入することで構成してもよい。このように、反射層16は、前述したシート部材や筒状部材を利用することで、簡略な工程で実現できる。図12Dは、導光部材10が連結された発光管3を、筒状部材17に挿入する態様を概念的に示す斜視図である。
【0103】
また、発光管3の管壁に、前述したコート膜や誘電体多層膜を形成しても構わない。なお、図12B及び図12Cでは、反射層16が発光管3の外壁に形成された例が示されているが、反射層16は、発光管3の内壁に形成されても構わない。例えば、シリカ粒子、又はPTFE粒子等を含むコート膜を発光管3の内壁に形成することができる。
【0104】
〈3〉反射層16は、第一電極7と第二電極9の形成領域、及び両電極(7,9)に挟まれた領域の双方に配置されていても構わない。なお、これらの領域の他の領域に、反射層16を配置することもできる。例えば、図12Bを例にとると、発光管3の管壁において、第一電極7から-X側の管壁、又は第二電極9から+X側の管壁に反射層16が配置されても構わない。
【0105】
〈4〉上記の各実施形態では、発光管3の長手方向(X方向)に係る端部において、導光部材10が発光管3に連結される場合について説明した。しかし、本発明は、このような構造には限定されない。例えば、図13Aに示すように、発光管3の長手方向とは異なる方向(ここではY方向)に係る端部において、導光部材10が発光管3に連結されても構わない。また、図13Bは、図13Aに係る放電ランプ1を-Z方向に見た際の断面図である。
【0106】
具体的には、第一電極7と第二電極9とが、発光管3の同一の壁面上においてX方向に関して相互に離間して配置されており、導光部材10は、X方向に関してこれら第一電極7と第二電極9とに挟まれた位置において、発光管3に連結している。この構成によれば、導光部材10の第二端12が、有効放電空間31内に配置されるため、光L1を効率的に導光部材10に取り込むことが可能となる。なお、導光部材10の第二端12を、第一電極7と第二電極9とに挟まれた位置における発光管3の壁面に連結させた場合においても同様である。
【0107】
なお、図14Aに示すように、複数の導光部材10が、発光管3に対して配置されても構わない。図14では、発光管3の-X側の端部に対応する管壁、及び発光管3の-Y側の端部に対応する管壁のそれぞれに導光部材10が連結された例が示されている。また、図14Bは、図14Aに係る放電ランプ1を-Z方向に見た際の平面図である。このように、導光部材10を異なる方向に連結することで、内部空間30から放射される光L1を好適に取り込むことが可能である。
【0108】
〈5〉上記においては、第一電極7及び第二電極9がX方向に関して相互に離間して配置される例が示された。この構造とは異なり、図15Aに示すように、第一電極7及び第二電極9がZ方向に関して相互に離間して配置されても構わない。また、図15B図15Aに係る放電ランプ1をX方向に見た時の平面図である。図15Bに示すように、発光管3は扁平管であってもよい。この場合においても、有効放電空間31と、導光部材10の第二端12が近い位置に配置されることが好適であり、両者が重なることがより好適である。この点については上記と同様の議論が可能である。
【0109】
〈6〉また、図16Aに示すように、放電ランプ1は二重管構造であっても適用が可能である。図16Aは、本実施形態の放電ランプ1を、図1Aにならって表記したものである。また、図16Bは、図16Aに係る放電ランプ1をX方向に見た時の平面図である。図16Bに示すように、本実施形態に係る発光管3はX方向に見てリング状を呈する。本実施形態では、導光部材10は、発光管3に対して-X側の端部に対応する管壁に連結され、第二端12が発光管3の内部空間30に露出する例が示されている。
【0110】
また、図16Bに示すように、発光管3(便宜上、図16Bでは3aの符号を付した。)の外周面60の全周に第一電極7が配置される。また、発光管3(便宜上、図16Bでは3bの符号を付した。)の内周面61の全周に第二電極9が配置される。この場合においても、有効放電空間31と、導光部材10の第二端12の位置関係について、上記と同様の議論が可能である。
【0111】
〈7〉上記の実施形態では、発光ガスがKrClである場合を例に挙げたが、本発明において発光ガスの種類には限定されない。典型的な例として、発光ガスは、KrCl、Ar2、Kr2、Xe2、KrBr、XeCl、XeBrからなる群に属する1種以上とすることができる。
【0112】
〈8〉上記した各実施形態及び変形例の構成は、適宜組み合わせて実現することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 : 放電ランプ
3 : 発光管
7 : 第一電極
7a,9a : 端部
8 : 導電部材
9 : 第二電極
10 : 導光部材
11 : 第一端
12 : 第二端
13 : 連結箇所
14 : 入射領域
16 : 反射層
17 : 筒状部材
20 : 放電プラズマ
21 : 仮想点
22 : 仮想線
23a,23b,23c : 取込角
30 : 内部空間
31 : 有効放電空間
40 : 発光管
41 : 照度計
42 : 交流電源
43 : ステージ
50 : 仮想放電領域
60 : 外周面
61 : 内周面
L1,L2 : 光
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B